駒木博士の社会学講座
仁川経済大学社会学部インターネット通信課程
開講2周年記念式典

第2回仁川経済大学
コミックアワード
Nigawa University of Economics 
Comic Award'03

2003年12月21日(日)〜22日(月)

珠美:「本日はご来場いただき、誠に有難うございます。仁川経済大学社会学部インターネット通信課程でアシスタントを務めております栗藤珠美です。
 01年11月末に開講致しました当社会学講座も、お蔭さまで2周年の節目を迎えることが出来ました。これも皆様のご愛顧があってこそ。当講座一同、心から御礼申し上げます。
 さて、本年度の記念式典は昨年度に引き続きまして、当講座の主要講義の1つである「現代マンガ時評」の年間総括イベント・『仁川経済大学コミックアワード』を実施します。これは、昨年12月から今年11月までの間に当講座のゼミ・「現代マンガ時評」の中でレビューを行った作品のうち、特に優秀(もしくは最悪)だった作品を、当講座の専任講師・駒木ハヤトが独断で選定・表彰する…というものです。
 毎回講義を受講なさっている受講生の皆さんは勿論のこと、今回初めてここにいらっしゃったというビジターの方にも楽しんで頂けるよう、アシスタントの私たちも一生懸命お手伝いさせて頂きますので、この2日間、どうかよろしくお願い申し上げます」

順子:「駒木研究室の非常勤アシスタント・一色順子です! わたしも今回の『仁川経済大学コミックアワード』では、色々とお手伝いさせてもらいます。まだまだ至らない所もあると思いますけれど、どうかよろしくお願いします!」
リサ:「プライベートで駒木研究室にお世話になってます、仁川経済大学付属高校2年生で留学生のリサ=バンベリーです。正式なスタッフでもないワタシですが、今回のイベントに参加出来ることになりました。駒木博士や皆さんに迷惑をかけないようにガンバリますのでヨロシクです」
珠美:「……なお、今回も記念品と致しまして壁紙を頒布致しますので、どうぞご自由にお持ち帰り下さい。それでは、これより2周年記念式典を開会致します。皆様、最後までごゆっくりお楽しみ下さいませ……」

 

第2回仁川経済大学コミックアワード 
スケジュール

初日
12/21

(Sun)

「ジャンプ」&「サンデー」年間総括
「コミックアワード」優秀作品賞発表

※「現代マンガ時評」で追って参りました、「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」のこの1年間について回顧すると共に、「仁川経済大学コミックアワード」の各部門賞について優秀作品賞(最終ノミネート作品)を発表します。
 「ジャンプ」&「サンデー」の回顧では、ここ1年で発表された読み切りや新規連載作品を振り返りつつ、様々な観点から各誌の現状や近い将来についての分析や考察を行います。雑誌を“深く読み込む”習慣の無い貴方も、これを機に認識を深めて頂ければ幸いです。

2日目
12/22

(Mon)
「第2回仁川経済大学コミックアワード」
表彰式

※マンガの賞なのに何故か無名の経済大学の冠を戴くという「日本で最も権威・格式・価値の低い漫画賞」が、晴れて今年も開催の運びとなりました。今回は新たにギャグ作品部門も新設。より充実した今年度の「コミックアワード」を心行くまでご堪能下さい。
 審査を務めるのは勿論、当講座の専任講師・駒木ハヤト。そして当講座が誇る“3人娘”が、普段は着慣れないセレブなドレスに身を包み、プレゼンテーターを務めます。

 ※両日とも、イベントは深夜23時30分頃より開始予定です。
 ※記念式典は12/25深夜まで、このページでお楽しみ頂けます。


記念品(社会学講座開講2周年記念壁紙)頒布会場

(ご使用の解像度をお選び下さい)

800x600(100KB)
1024x768
(146KB)

◎この壁紙は、3人のトータルコーディネートをお願いしている藤井ちふみさんに製作して頂きました。有難うございました。(藤井さんのウェブサイト=Winter GardenAngelCase


仁川経済大学社会学部インターネット通信課程
開講2周年記念式典

第2回仁川経済大学
コミックアワード

初日(12月21日) 
「ジャンプ」&「サンデー」年間総括
「コミックアワード」優秀作品賞発表

 ──どうも、当講座専任講師の駒木ハヤトです。今日の年間総括とノミネート作品発表は、駒木が“ピン”でお送りさせて頂きます。華が無いとお嘆きの方も多数いらっしゃるでしょうが、明日までどうかご辛抱下さい。
 しかし、前々から「やってやろう」とは思っていましたが、こうして実際に第2回の「コミックアワード」当日を迎えますと、いくばくかの感慨を禁じ得ません。この流行廃りの激しいインターネット界隈で、よくぞ2年保ったものだ、いや2年も受講生の皆さんが支え続けて頂いたものだ……と。本当に感謝の一言に尽きます
 相変わらず脆弱な運営体制が続く当講座ではありますが、今後も余程の事情が無い限り、「コミックアワード」を年末の風物詩的イベントとして続行させていくつもりです。分不相応な希望ではありますが、ゆくゆくはこの「コミックアワード」が“マンガ界の東スポ映画大賞”みたいなポジションに出世(?)出来れば……などと思っておりますので、これからも末永いご支援を賜りたい所存であります。

 さて、挨拶はこれくらいにしておきまして、本日の最初のプログラムであります「『ジャンプ』&『サンデー』年間総括」に参りましょう。
 このプログラムについては、昨年の末から今年の年始にかけて通常講義の形でお届けしました、「『週刊少年ジャンプ』この1年」「『週刊少年サンデー』この1年」の03年度版…と解釈して頂くと話が早いかと思います。ただ、今回は単純計算で“昨年度版”よりボリュームを1/6に抑えねばならないため、昨年に詳しくお話した部分など若干端折り気味になる部分もあるかと思います。ですので、プログラムの内容により深いご理解を頂くためにも、是非とも“昨年度版”のレジュメを片手にお聴き頂きたいと思っております。

 なお、この場における“〜年度”とは、原則として前年の12月から当年の11月までとします。そうしないと、開始されて間もない、またはまだ始まっていない新連載作品まで今年度扱いでお話しなければならなくなるからです。
 そういうわけですので、02年末に連載が開始された作品は「今年度新連載作品」という扱いになり、その代わり03年末に連載開始となった作品は次年度扱いとなります。多少複雑ですが、学年の早生まれと遅生まれみたいなモノだとお考え下されば有り難いです。

 ──それでは、まずは発行部数順ということで「週刊少年ジャンプ」関連の年間回顧から。そして「ジャンプ」といえば新連載…というわけで(?)、今年度に立ち上げられた新連載作品の総括からお送りしましょう。
 では、皆さんにはとりあえず、今年度の新連載作品を一覧にしたモノをご覧頂きましょう。

 ※02年年末シリーズ
『グラナダ─究極科学特捜隊─』作画:いとうみきお
『TATTOO HEARTS』作画:加治佐修

 ※03年春シリーズ
『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』作画:加地君也
『★SANTA!★』作画:蔵人健吾

 ※03年夏シリーズ
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之
『ごっちゃんです!』作画:つの丸
『武装錬金』作画:和月伸宏
『神奈川磯南風天組』作画:かずはじめ

 ※03年秋シリーズ
『戦国乱波伝 サソリ』作画:内水融
『サラブレッドと呼ばないで』作:長谷川尚代/画:藤野耕平
『神撫手』作画:堀部健和

 通常、「週刊少年ジャンプ」では毎年5回の連載改変が実施されるのですが、今年は98、99年以来4年ぶりの変則スタイル──改変4回となりました。
 変則スタイルが採られた理由としては、長期連載作品の終了に合わせた臨時措置新連載候補作家の“タマ”不足高橋編集長(当時)の急逝→茨城新編集長体制への移行など、様々な事柄が考えられます。が、結局のところ、それらの要因が複合したために結果としてそうなった…といったところではないでしょうか。

 今年度の新連載は11本。夏シリーズに新連載4本の“大盤振る舞い”があったため、変則スタイルにしては平年並みの数は確保出来たという事になります。
 ただし、その11本の内容の方はお寒い限りで、短期打ち切りの目安とされる2クール(=連載開始から次回の連載改変までで1クール)を突破出来た作品は、『ごっちゃんです!』『武装錬金』の、ベテラン作家さんによる2本だけ。“半年(2クール)生存率”18.1%で、これは過去10年間で最悪の数字となりました。また、これら2作品にしても、人気の目安となる掲載順位は中位〜下位といったところで、「何とか生き残った」という表現が良く似合うのが悲しい現状です。数少ない救いなのは、この2作品の内容についての具体的な評判は決して悪くない事で、特に“打ち切り回避安全圏”に抜けたと思われる『武装錬金』の和月伸宏さんには、来年度以降もベテランの味で誌面を引き締める役割を果たしてもらいたいものです。
 また、今年度は初めて「ジャンプ」で週刊連載を持った若手作家さんの作品が全滅という結果に終わりました。これも最近では例が無い出来事で、ここしばらく囁かれて来た“『ジャンプ』新作・新人不況”が、いよいよ本格化して来たように感じられます

 そして、4つの新連載シリーズの中で、そんな“新作・新人不況”の現状を象徴していたのは秋シリーズと言えそうです。新連載3本全てを“初連載組”の若手で揃え、更には「ストーリーキング・ネーム部門出身」という切り札まで投入したにも関わらず、結果は全作品1クール打ち切りに終わってしまいました
 同種の“悲劇”としては、99年の春シリーズ(5本中、1クール打ち切り4本&2クール打ち切り1本)がありますが、長らくメガヒット作不在の現状で起こった出来事だけに、より一層悲壮感が増したような気もしました。
 
 また、今年度の「ジャンプ」の新連載作品全体の傾向としては、下積み期間の長い若手作家さんたちの初連載作品が多かった…という事も挙げられます。中には数年前の読み切り作品を今になって連載化するという、これまた前例の乏しい試みが多く為されたのも、03年度「ジャンプ」編集方針の大きな特徴の1つでした。
 ただ、この試みが功を奏したかと言えば、「No」と申し上げる他無く、むしろ読者に「『ジャンプ』は大丈夫なのか?」という不信感を植え付けてしまったのではないかと危惧するほどです。
 確かに“現有戦力”が乏しい現状では、このような苦肉の策も致し方ないのかも知れません。が、そういう苦しい時だからこそ、新連載作品の厳選を行ってもらいたいというのが実感でもあります。明らかにストーリーや設定に問題のある作品でも「ダメなら打ち切ればいい」という、言わば見切り発車でゴーサインを出す編集方針は、少なくとも現状においては限界が来ているのではないかとも思うのです。
 積極的に新連載を立ち上げると同時に、将来性の乏しい作品は短期打ち切りも厭わないという、いわゆる「ジャンプシステム」には功罪様々ありますが、次年度は是非とも“功”の部分が目立つような有望新連載ラッシュを見てみたいと願う次第です。

 ──では次に、読み切り作品についてお話をしてゆきましょう。
 今年度のジャンプの編集方針の特徴を1つ挙げよ、と言われれば、真っ先に「読み切り作品の積極掲載」という事になるでしょう。いわゆる代原や番外編の類を除いても、実に約30本の作品が誌面を飾った計算になります。
 それでは改めて、今年度の「ジャンプ」系読み切り作品をリストアップしてみましょう。

 ※正規枠(既にデビュー済みの作家が連載枠獲得にむけて発表した新作)
『少年守護神』作画:東直輝
『神撫手(※読切版)作画:堀部健和
『しろくろ』作画:空知英秋
『野球狂師の詩』作画:郷田こうや
『LIVEALIVE 〜はじまりの歌〜』作画:天野洋一
『キャプテン』作画:鉄チン28cm
『dZi:s』作画:樋口大輔
『GRAND SLAM』作画:杉本洋平
『World4u_』作画:江尻立真
『ゴールデンシュート鳥越』作画:郷田こうや
『未確認少年ゲドー』作画:岡野剛
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司) 
『Continue』作画:星野桂
『ボウボウHEAD☆カウボーイ』作画:森田雅博
『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健
『LIKE A TAKKYU !!』作画:高橋一郎
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ
『人造人間ガロン』作画:中島諭宇樹) 
『NOW AND ZEN』作画:加治佐修
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『KING CRIMSON』作画:西公平
『家庭教師ヒットマン REBORN』作画:天野明
『ぷーやん』作画:霧木凡ケン

 ※代原枠(連載作家の都合や急病による急な休載で空いた枠を埋めるため掲載された、正規デビュー前の新人の習作原稿)
『みんなで暮らせばいいじゃない』作画:ゴーギャン
『スレンダー』作画:菅野健太
『白い白馬から落馬』作画:夏生尚
『世界しーん』作画:浅上えっそ
『ハガユイズム』作画:越智厚介

 ※受賞作掲載(新人賞の受賞作が、正規枠に準ずる形で掲載されたもの)
『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『SELF HEAD』作画:原哲也
『そーじの時間』作画:桜井のりお
『KING OR CURSE』作画:坂本裕次郎
『URA BEAT』作画:田村隆平

 ※その他企画モノ(現役連載作家による特別読み切りや連載作品の番外編など、後の新連載に繋がらない読み切り作品)
『はじめ』作:乙一/画:小畑健
『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛
『ヒカルの碁・特別番外編』作:ほったゆみ/画:小畑健) 
『ネコマジンみけ』作画:鳥山明
『エキゾチカ』作画:武井宏之

 ……今年度の読み切り作品で特に目立ったのが、これまでなら活躍の場を「赤マルジャンプ」に限定されていたような新人・若手作家さんたちの抜擢でした。これには、やはり現状の“新人不況”を一刻も早く打破したいという、編集サイドの願いが容易に見てとれます。
 ただ、この願いが実ったかというと、これまた極めて微妙と言わざるを得ません。正規枠から連載に昇格した作品は『神撫手』『DEATH NOTE』の2作品だけで、他には『しろくろ』の空知英秋さんが別の作品で年末シリーズの連載枠を獲得しただけ。例年の傾向からして、来年度にもこのリストの中から1〜2作品の連載昇格が考えられますが、既に『神撫手』が1クール打ち切りに終わった事も重ねて考慮すると、作品数の割には“不作”だったという感は拭えません。今年ラインナップに名を連ねた新人作家さんの中には近い将来に活躍が期待出来そうな人も数人いるのですが、先ほど述べた新連載の不振続きと相まって、不安の方が先立ってしまいますね。
 何と言いますか、「とりあえず載せてみて、その後はアンケート結果が出てから」…という「ジャンプシステム」のいい加減な部分が、ここにおいても悪い方へ作用したような気がします。「新人にチャンスを与える」事と、「読者が面白いと思う作品を掲載する」事とのバランスを、もうちょっと考えて欲しいと思わせる、今年の「ジャンプ」読み切り作品でした。

 ──では最後に、昨年度から続行中の長期連載作品についても振り返っておきましょう。

☆2004年に越年を果たした連載作品
 ◎95年度以前連載開始
 『こちら亀有区葛飾公園前派出所』
作画:秋本治/1976年連載開始)
 ◎96年度連載開始
 『遊☆戯☆王』作画:高橋和希
 ◎97年度連載開始
 『ONE PIECE』作画:尾田栄一郎
 ◎98年度連載開始
 『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博
 『シャーマンキング』作画:武井宏之
 ◎99年度連載開始
 『テニスの王子様』作画:許斐剛
 『NARUTO─ナルト─』作画:岸本斉史
 ◎00年度連載開始
 『BLACK CAT』作画:矢吹健太朗
 『ピューと吹く! ジャガー』作画:うすた京介
 ◎01年度連載開始
 『ボボボーボ・ボーボボ』作画:澤井啓夫
 『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也
 『BLEACH』作画:久保帯人
 ◎02年度連載開始
 『いちご100%』作画:河下水希
 『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介

☆2003年度中に連載終了した長期連載作品
 ◎98年度連載開始
 『ROOKIES』作画:森田まさのり/39号までで円満終了)
 ◎99年度連載開始 
 『ヒカルの碁』作:ほったゆみ/画:小畑健/22・23合併号までで円満終了)
 ◎00年度連載開始
 『ストーンオーシャン』作画:荒木飛呂彦/『ジョジョの奇妙な冒険』としては87年から19号までで円満《?》終了)
 ◎02年度連載開始
 『プリティフェイス』作画:叶恭弘/28号までで円満《?》終了)
 『Ultra Red』作画:鈴木央/29号までで打ち切り)

 ……先に述べたように、勢いの落ちた長期連載作品に取って代わるはずの新連載が不振だったため、今年度はいわゆる円満終了(編集と作家の同意に基づく終了)が中心となりました。
 なお、生き残った新連載作品の数と終了作品の数が合わないのは、既に次年度にカウントされる年末の新連載シリーズが開始されている事と、読み切りのための枠を1つ確保しているからですね。
 
 さて、これら長期連載作品の動向ですが、誌面構成を全体的に俯瞰すれば、“大関”格の一角である『ヒカルの碁』を失いながらも、何とか1年間現状維持で持ち堪えた…といったところでしょうか。
 まず看板作品であるところの“一人横綱”・『ONE PIECE』は、絶えず失速を危惧されながらも、依然として人気・商業的貢献共に堅調で推移しています。作品のクオリティにしても、連載開始当初の凄みは消えたとはいえ、良い意味での現状維持といったところではないでしょうか。ただ、さすがに今後更なる躍進というのは考え難く、来年度以降、早い段階でのこの作品と並ぶ“二枚目の看板”の誕生が望まれるところです。

 これに続く残りの“大関”格として挙げられるのは、99年組の2作品、『テニスの王子様』『NARUTO─ナルト─』でしょう。アニメ化もされ、単行本の売上げも好調で、「ジャンプ」を代表する作品とまでは言えないものの、層の分厚さを演出する役割は十分に果たしていると思われます。
 しかし、このクラスの作品は得てして内容のクオリティにキズを抱えているケースが多く(だから看板作品になれないのですが)、それが明らかに目立ち始めたある瞬間から、急に読者の支持を失う傾向が見受けられます。共に連載5年目となる来年度は、そういう意味でも正念場と言え、その動向に注目したいところです。

 ピークを過ぎた長期連載と言えば、長らく「ジャンプ」を支えて来た90年代生まれの作品・『遊☆戯☆王』『シャーマンキング』といったところも様々な面においてスローダウンの傾向にあります。前者は(あくまで噂レヴェルではありますが、)円満終了へ具体的な動きを見せていると言われ、後者も今後の新連載の動向次第ではいつ肩叩きに遭ってもおかしくない掲載順に甘んじています。
 もっとも、5年、6年と続いた作品の勢いが落ちるのはある意味致し方ないところで、これらの作品にはせめて実績に見合った華々しい幕引きを…とも思います。
 そんな90年代デビューで唯一気を吐く、と言っていいのが『HUNTER×HUNTER』でしょう。ただ、この作品は現状としてあくまで“客員待遇”であるため、いくら活躍しても「ジャンプ」全体の利益に繋がり難いのが惜しまれるところです。
 最長老の『こち亀』に関しては、相変わらずネット界隈では「自分たちが好きだった『こち亀』じゃない」という不評の声が上がる一方で、連載開始時の読者層のジュニア世代にあたる(!)若年齢読者層をガッチリと固めており、未だに健在です。この作品、「ジャンプ」内の番付的に言えば、横綱どころか大関クラスにも就いた事の無い“永遠のバイプレイヤー”ではありますが、そんな求められる物の少ない地位にいたからこそ、浮き沈みも小さく、今でも健闘出来ているのかも知れません。

 さて、昨年度まではそんな古参の連載作品に押されっ放しだった00年度以降に連載開始の作品たちですが、『BLEACH』『ボボボーボ・ボーボボ』といった辺りが“関脇”または“小結”くらいのポジションにまで成長し、ようやくピークを過ぎた90年代組との世代交代が果たせそうな情勢になって来ました。両作品共に、知名度や商業的な実績ではトップクラスに及ばないものの、勢いが上向きという点では来年度以降に期待出来るようになったと言えるでしょう。
 また、前年度開始の生き残り・『アイシールド21』も当初編集サイドが期待したほどの快進撃とは行きませんでしたが、掲載順の上位をしっかりと固めており、次年度以降に希望を繋ぎました。
 他の作品については、これまた“客員待遇”の『ピューと吹く! ジャガー』以外は不安定なポジションでの戦いを強いられていますが、それでも生半可な新連載を1クールで跳ね返すくらいの余力は残っており、「ジャンプ」の地盤沈下を防ぐための最終ラインとしての役割は何とか果たせています。

 昨年度の年間回顧において、駒木は「現在の『ジャンプ』は“ポスト暗黒期”を過ぎ、新たな過渡期に突入している……」と述べました。そして今年もまた、同じ言葉を申し上げなければならないでしょう。いや、よくぞ1年保たせたと言うべきかも分かりません。
 ただし、“新人・新作不況”がこれ以上長引いた場合、本気で“第2暗黒期”への突入を覚悟しなくてはならなくなるでしょう。次期看板作品候補の一刻も早い登場が望まれるところです。ただし、焦るがあまり有望新人作家さんの才能の芽を摘んでしまう(早すぎる週刊連載の強行→短期打ち切り)ような事があっては何をしているか分かりません。「ジャンプ」編集部の皆さんには、短期的展望の中でも長期的展望を忘れないように配慮して頂いて、次年度もよりよい雑誌作りを目指して頑張ってもらいたいと思います。

 
 ……というわけで、「ジャンプ」の年間総括をお送りしました。辛気臭い話ばかりで閉口気味の方もいらっしゃるかも知れませんが、これからお話する「サンデー」の現状も色々あったりするんです(苦笑)。
 今年の「サンデー」がどんな有様だったのか、これからジックリとお送りしますので、お聞きの皆さんも今一度気合を入れ直して頂ければ…と思います。

 では、「サンデー」もまずは今年度の新連載作品から振り返っておきましょう。ただし短期集中連載は“長編読み切り”扱いとし、ここからは除外しています。

『ワイルドライフ』作画:藤崎聖人
『MAR(メル)』作画:安西信行
『俺様は?(なぞ)』作画:杉本ペロ
『売ったれダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治
『ロボットボーイズ』作:七月鏡一/画:上川敦志) 
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)
『結界師』作画:田辺イエロウ

 ……今年度は、年度の前半に短期集中連載を多く打った、極めて変則的な編集方針だったため、新連載作品は7本だけとなりました。ただし、このうち『俺様は?』は、作家据え置きで連載作品だけ取り替えたものですので、純粋な新連載と認めて良いかは判断が分かれそうですが……。
 そして、これら7本の新連載のうち、12月に入ってから終了した『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』を除く6本が翌年への越年を果たしています。連載は原則として半年以上続けて様子を見る「サンデー」伝統の編集方針が現れた格好ですね。
 とはいえ、諸々のファクターから判断するに、『売ったれダイキチ!』『ロボットボーイズ』は、この年末年始に始まる新連載と入れ替わりに打ち切られそうな情勢(少なくとも長期連載化は難しいでしょう)実質的上、来年度以降で生き残る作品は、今年度前半に開始された3本+連載開始間もない『結界師』…ということになりそうです。
 新連載の本数が少なかったので止む無しとも思いますが、これでは数字だけ見れば近年稀に見る“大不作”の惨状と言わざるを得ません(注:新陳代謝が過剰に激しい「ジャンプ」とは基準がまるで違います)後は何とかこの数少ない“タマ”から次期看板作品候補が出て来るのを祈るのみ…といったところでしょうか。その可能性が最も高いのは『結界師』のように思われますが、未だ連載開始から1ヶ月では不確定要素の方が大き過ぎますね。
 既に始まった年末・年始の新連載シリーズも、今一つ頼りないラインナップの上にシリーズ初っ端の1作目が第1回で大コケという有様に。ベテラン作家の大量離脱、そしてここでも“新人・新作不況”と、「ジャンプ」同様に新たな大ヒット作が待望される「サンデー」の前途も、なかなか厳しいモノがありそうです。

 ──さてさて、続きましては「サンデー」本誌に掲載された短編作品──読み切りと短期集中連載──の総括です。こちらも先に全作品リストからご覧下さい。

 ※短期集中連載(数回で終了する事が連載開始時から確定している作品)
『少年サンダー』作画:片山ユキオ
『電人1号』作画:黒葉潤一
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『ビープ!』作画:しょうけしん
『ふうたろう忍法帖』作画:万乗大智

 ※読み切り・正規枠(既にデビュー済みの作家が連載枠獲得にむけて発表した新作)
『竹の子ドクター十五郎』作画:川久保栄二) 
『結界師(読切版)作画:田辺イエロウ
『暗号名はBF』作画:田中保左奈
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
『PUMP☆IT★UP』作画:大和八重子
『大蛇(オロチ)』作画:夏目義徳

 ※読み切り・受賞作掲載(新人賞の受賞作が、正規枠に準ずる形で掲載されたもの)
『ゴッドルーキー』作画:宇佐美道子

 今年度の作品数は、短期集中連載5本と読み切り7本でした。昨年度は読み切り(前・後編モノ含)24本、短期集中連載1本でしたから、ボリュームを別にして、本数そのものは半減した計算になりますね。
 こうなった原因は色々あります。まず1つ目が、ベテランの読み切りは、増刊の“目玉”として本誌との棲み分けが図られたため。そして2つ目には、若手作家さんは、増刊等で(アンケート等の)実績を残した人だけしか本誌に短編を発表出来なくなったためです。これは恐らく、読み切りを多く載せた割には実りの少なかった昨年度の編集方針から来る反省だと思われ、その迅速な行動に関してだけは一定の評価を与える事が出来るでしょう。

 また、今年度後半から“正規枠”で読み切りを発表した週刊連載未経験の若手作家さん(但し、川久保栄二さんには“過去”があるとの未確認情報もあるのですが)が、その後全員長期連載を獲得しているという事も興味深いですね。
 というのも、昨年度では、たとえ本誌で読み切りが掲載されたとしても、余り連載に結びつかなかったんですよね。それが今年度後半に入ってコレですから、どうやら認識を改めなければならないようです。今後、本誌で読み切りを発表出来る若手作家さんは、「増刊号で人気上位になった事により、長期連載がほぼ内定している状態」…と解釈しなければならないのかも知れません

 ただ、どうなんでしょう。いくら増刊号で人気を獲得したとは言っても、それはあくまで若手・新人中心のラインナップの中での出来事であって、言わば“2部リーグ”での成績です。「サンデー」本誌と増刊号の読者層も明らかに違うでしょうし、「増刊で実績を挙げた若手作家を優遇」という新システムがどこまで効果的であるのかは、「大変に疑問」と言わざるを得ないでしょう。
 この疑問の答えは、現在進行中の新連載シリーズの行く末によって明らかになるはずです。果たしてどうなる事やら、色々な意味で注目ですね。

 あ、蛇足ながら付け加えますが、ラインナップの中に混じっている元・連載作家さんによる読み切りは、掲載のタイミングが余りにも唐突な事から考えても、どうやら文字通りの“特別読切”なんじゃないかと思われます。もっとも、アンケートの動向次第ではそうじゃなくなる場合もあるのでしょうが……。

 ──う〜ん、段々話している事に締まりが無くなって来ましたが(苦笑)、最後に長期連載作品の動向を振り返って、「サンデー」の年間回顧を締めたいと思います。
 では、こちらも例によって一覧表を……。

☆2004年度に越年を果たした連載作品
 ◎94年度連載開始
 
『名探偵コナン』作画:青山剛昌
 『MAJOR』
作画:満田拓也
 ※95年度連載開始作品はゼロ
 ◎96年度連載開始
 『犬夜叉』作画:高橋留美子
 ◎97年度連載開始
 『からくりサーカス』作画:藤田和日郎
 『モンキーターン』作画:河合克敏
 ◎98年度連載開始
 『かってに改蔵』作画:久米田康治
 ◎99年度連載開始
 『ファンタジスタ』作画:草場道輝
 ※00年度連載開始作品はゼロ
 ◎01年連載開始
 『金色のガッシュ !!』作画:雷句誠
 『うえきの法則』作画:福地翼
 『KATSU!』作画:あだち充
 ◎02年度連載開始 
 『焼きたて!! ジャぱん』作画・橋口たかし
 『史上最強の弟子ケンイチ』作画:松江名俊
 『いでじゅう!』作画:モリタイシ
 『美鳥の日々』作画:井上和郎
 『D−LIVE』作画:皆川亮二
 『きみのカケラ』作画:高橋しん)は、16号までで年度内一杯連載休止→04年4・5合併号から再開
 ※『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫)は、越年直後の04年1号で打ち切り終了。

☆2003年度に連載終了した長期連載作品
 ◎99年度連載開始
 『天使な小生意気』作画:西森博之/36・37合併号までで円満終了)
 ◎00年度連載開始
 『DANDOH !! Xi』作:坂田信弘/画:万乗大智『DANDOH』としては95年から19号までで円満終了)
 ◎02年度連載開始
 『旋風(かぜ)の橘』作画・猪熊しのぶ/1号までで打ち切り)
 『一番湯のカナタ』作画:椎名高志/2号までで打ち切り)
 『鳳ボンバー』作画:田中モトユキ/21号までで打ち切り)

 ……例年ならダイナミックな連載作品入れ替えがある「サンデー」ですが、新連載不振のアオリを受けて、必要最小限規模・5作品終了の“小型人事”となりました。
 終了した連載のうち、円満終了と断言できる作品は2本。いずれもかなりの長期連載でしたが、シナリオの露骨な引き伸ばしの無い“ソフトランディング”での完結に。いつまで経ってもケリのつけられない“二枚看板”を尻目に、週刊連載マンガとしては極めて幸福な幕引きになりましたね。
 一方、打ち切りになった作品は、どれも大なり小なり打ち切られても仕方の無い要素をずっと抱えて来たモノばかりでしたので、「残念だが、致し方ない」という一言に尽きると思われますね。まぁ、『旋風の橘』と他の打ち切られた作品を一緒にしてくれるな」という意見は全面的に認めますが(笑)。

 そして、生き残った作品たちに目を向けてみますと、やはり嫌でも目に付くのが『名探偵コナン』『犬夜叉』の2枚看板ですね。さすがに“引き伸ばし臭”がキツくなり、往時の勢いは完全に無くなりましたが、それでもこの1年間を安定水平飛行で乗り切ってしまいました。
 しかも、長期安定飛行は“両横綱”だけでなく、他の超長期連載作品についても同じ事が言えます。中には『からくりサーカス』のように、連載丸6年にして安定どころか上昇しようかという勢いの作品もあり、正直驚きを隠せません。2枚看板との商業的貢献度における格の差は否めませんが、「サンデー」の固定ファンを掴んで離さないだけの魅力は十分過ぎるほど維持出来ています。
 ただ、よく考えてみれば、これらの作品を描いている作家さんは、ほぼ全員が長期連載2回目以上というベテランの方ばかり。長年の作家生活で甘いも酸いも噛み分け、更には週刊連載を少なくとも2度成功させたという猛者揃いなのですから、当たり前と言えば当たり前なのかも知れません。
 これは、「サンデー」独特のシステムが、知らず知らずの内に少数精鋭の人材を育てていた…という事なんでしょうね。多くの若手・新人を育成する余裕が無い代わりに、そんな厳しい環境で育った、年に1人いるかいないかの人材は総じて能力が高いと。そして、そんな逸材たちによって、「『ジャンプ』ほど派手ではない代わり、ジックリと読ませる良作・佳作が多い」…という、「週刊少年サンデー」の誌風めいたモノが出来上がったのではないでしょうか。
 ただ、そういう事に気付いてしまうと、ここ最近の性急な“新人促成栽培”の行く末が余計に危ぶまれてしまうのですが……。新連載を立ち上げるにあたっては、本当に“使えそう”な若手だけを厳選して新戦力とし、他の連載枠は連載2回目、3回目の中堅作家さんに振り分けた方がよっぽど「サンデー」らしいと思いますね。もっとも、『旋風の橘』『きみのカケラ』のような、中堅・ベテラン作家による失敗作を次々と立ち上げてはコケさせてしまうような編集長では、何をどうやっても同じなのかも知れませんが。

 ……無駄話が過ぎました。話を戻しましょう。
 そういった90年代生まれの超安定株に支えられながら、01年〜02年組の連載作品も、着実に「サンデー」内での地位を伸ばしていっています。特に躍進著しいのは、アニメ化もされ、単行本や関連商品の売上げが急上昇した『金色のガッシュ!!』でしょう。先程から使っている大相撲番付の喩えで言うなら“東の正大関”まで出世したと言えそうです。作品のクオリティも“横綱”2作品に勝るとも劣らないレヴェルを維持していますし、あと一押しで看板作品の世代交代という、歴史的瞬間が訪れるかも知れません
 ただ、気になるのはストーリーの展開ですね。どうやら既に話は佳境に入っている感もありますし、ここからシナリオの露骨な引き伸ばし無しで、どこまでこの作品を引っ張れるかが、大袈裟じゃなく「サンデー」の将来像を占うカギになりそうです。

 他の連載期間1〜2年の作品も、小粒ながらも手堅くまとまった佳作揃いで、長期連載の安定株と共に、非常に分厚い“中堅グループ層”を形成しています。これらの作品に“横綱”・“大関”クラスの代わりをせよと言うのは酷ですが、「さすがはメジャー誌」と言わしめるだけの力は見せ付けていると思います。促成栽培に対する、露地栽培組の底力というヤツでしょうか。


 ……というわけで、長々と喋らせてもらいましたが、そろそろ年間回顧についての結論を。
 「ジャンプ」にしろ「サンデー」にしろ、内部事情はそれぞれ違えど、どちらも賞味期限切れ寸前の看板作品を抱え、それでいて若手・新人作家や新連載作品の不調という悩みを抱えている……という共通点が、今回の回顧で浮き彫りになった気がします。今年度こそ長期連載作品に支えられて乗り切りましたが、来年度は両誌ともに、この問題の解決が最重要課題になって来るでしょう。長期連載作品が持ち応えている今だからこそ、課題は解決させなくちゃならんのです。“暗黒期”に突入してからでは遅過ぎるのですから……。


 ……というわけで、「ジャンプ」と「サンデー」の年間回顧でした。本来なら「コミックアワード」の審査対象作品を紹介するための前置き代わりだった企画なんですが、相変わらずの行き当たりばったりで相当な時間オーバーになってしまいましたね(苦笑)。
 最後に蛇足ながら、この年間総括の中で紹介出来なかった、当ゼミにおける今年度の「コミックアワード」審査対象作品──増刊号や他誌で発表されたもの──を、こちらも一覧表の形で紹介しておきましょう。

☆赤マルジャンプ掲載作品
 ※03年冬号
『ゲット☆ア☆ラック』作画:キユ
『蹄鉄ジョッキーっ!』作画:森田雅博
『マルジャガルダ』(作画:安藤英)
『SPARE DRAGON』作画:小椋おぐり
『レインボー侍』作画:やまだたけし
『神様のバスケット!』作画:及川友高
『激 !! 深紫高校ウォッポ部』作画:草壁達也
『ZONE』作画:星野桂
『サクラサク、15』作画:藤嶋マル
『メガ高野球部』作画:郷田こうや
『獏』作画:田中靖規
『ホイッスル!(特別編)作画:樋口大輔
 ※03年春号
『沙良羅』作画:やまもとかずや
『バクハツHAWK !!』作画:天野明
『少年青春卓球漫画ぷーやん。』作画:霧木凡ケン
『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『甲殻キッド』作画:梅尾光加
『あかねの纏』作画:落合沙戸
『SECOND SWIMMER』作画:後藤真
『詭道の人』作画:内水融
『Play StYle ANTHEM』作画:中山敦支
『ドスコイン〜遊星から来たあんちくしょう〜』作画:風間克弥
『二山高Cメン』作画:瀬戸蔵造
『天上都市』作画:中島諭宇樹
 ※03年夏号
『脱走屋鉄馬』作画:小林ゆき
『双龍伝』作画:山田隆裕
『SEA SIDE JET CITY』作画:北嶋一喜
『オウタマイ』作画:梅尾光加
『Z−XLダイ』作画:暁月あきら
『黄金の暁』作画:岩本直輝
『HEAVY SPRAY』作画:相模恒大) 
『ゲームブレイカー』作画:村中孝
『アシハラ戦記 トウタ』作画:ゆきと
『red』作画:福島鉄平
『肉虎(マッスルタイガー)!』作画:山田一樹
『プリティフェイス 番外編』作画:叶恭弘

☆世界漫画愛読者大賞最終候補作品
『軍神の惑星』作画:谷川淳) 
『鬼狂丸』作画:新堂まこと
『摩虎羅』作:茜色雲丸/画:KU・SA・KA・BE) 
『華陀医仙 Dr.KADA』作画:曾健游
『極楽堂運送』作画:佐藤良治) 
『大江戸電光石火』作画:弾正京太) 
『東京下町日和』作画:山口育孝) 
『ちゃきちゃき江戸っ子花次郎の基本的考察』作画:赤川テツロー) 

☆「読書メモ」枠
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行/「ビッグコミックオリジナル」連載中
『美食王の到着』作画:藤田和日郎/「少年サンデー超増刊」2月号掲載
『魔法先生ネギま!』作画:赤松健/「週刊少年マガジン」連載中
『覇王〜Mahjong King's Fighters〜』作画:木村シュウジ/『近代麻雀』連載中
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志/『少年サンデー超増刊』7月号掲載
『ツバサ』作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中
『河児』作画:四位晴果/03年度「週刊少年サンデーR」掲載
『PLUTO』作《原案》:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中

 ……中には皆さんにとっては馴染みの薄い作品もあるかと思いますが、もしお時間に余裕をお持ちならば、過去の講義レジュメを読み返して記憶を新たにして頂きたいですね。


 さぁ、それではお待ちかね、明日の「コミックアワード」で表彰いたします、各部門賞の最終ノミネート作品をここで発表します
 では、皆さんには、もう1度改めて、今回の「第2回仁川経済大学コミックアワード」でノミネートの資格を得た作品のリストをご覧頂きましょう。

※各部門ノミネート(資格保持)作一覧※

◆仁川経済大学賞(グランプリ)
 …“グランプリ”という名の通り、この1年の間に当ゼミでレビューした作品の中で最も優秀な作品に送られる賞。
 ノミネート資格は、“ジャンプ&サンデー”の名の付く各部門賞の受賞作と、「ジャンプ」、「サンデー」両誌以外のレビュー対象作の中でA評価(但し、連載作品については最新に発表された評価)を獲得した作品。

●(ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞受賞作)
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行/「ビッグコミックオリジナル」連載中)
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中)

◆ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌で長編連載されたストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は対象作品の内、A−以上の評価(但し、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『武装錬金』作画:和月伸宏
  《以上、「週刊少年ジャンプ」連載》
『結界師』作画:田辺イエロウ
  《以上、「週刊少年サンデー」連載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された読み切り、または短期集中連載のストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は、長編作品賞と同じく評価A−以上。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『ヒカルの碁・特別番外編』作:ほったゆみ/画:小畑健
『オウタマイ』作画:梅尾光加
『プリティフェイス 番外編』作画:叶恭弘
『NOW AND ZEN』作画:加治佐修
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『美食王の到着』作画:藤田和日郎
『結界師(本誌掲載読切版)作画:田辺イエロウ
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志
『河児』作画:四位晴果
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された全ギャグ作品が対象。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表した読み切り・短期集中連載作品または初の長期連載作品が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『オウタマイ』作画:梅尾光加
  《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『結界師(週刊本誌読切版)作画:田辺イエロウ
『結界師』作画:田辺イエロウ
『河児』作画:四位晴果
  《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に連載または掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表したギャグ作品(初の長期連載作品含む)が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◎ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
…映画のアカデミー賞に対するゴールデンラズベリー賞をモチーフにした、最悪な作品を表彰する賞。対象作はレビュー対象にした全作品で、あらゆる意味において“最悪”(not最低)な作品を選出する。ただし、ノミネート及び審査基準は駒木ハヤトの独断。

『少年守護神』作画:東直輝/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之/「週刊少年ジャンプ」連載)
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦/「週刊少年サンデー」連載中)
『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『ツバサ』作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中)

 ……では、もう時間もありませんし、全部門の最終ノミネート作品を一気に発表してしまいましょう。なお、各部門で最終ノミネート作品として選出された作品は、各部門の“優秀作品賞”を受賞したという事になります。レコード大賞みたいなモノですね(笑)。
 ちなみに、ギャグ系作品を対象にした2部門に関しましては、ノミネート資格保持作品がそれぞれ全く同じでありますので、ここでは自動的に両部門Wノミネートとさせて頂きます。
 それでは、参りましょう。ノミネート作品の発表です。

 

各部門・最終ノミネート作品
(優秀作品賞受賞作一覧・順不同)

◆ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞
『武装錬金』作画:和月伸宏
『結界師』作画:田辺イエロウ

◆ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『美食王の到着』作画:藤田和日郎
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志
『河児』作画:四位晴果

◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『結界師』作画:田辺イエロウ
『河児』作画:四位晴果

◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞
『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 


主要賞・最終ノミネート作品
(既に発表済み)

仁川経済大学賞(グランプリ)
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行/「ビッグコミックオリジナル」連載中)
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中)
◎(ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞受賞作)
◎(ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞受賞作)
◎(ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞受賞作)
◎(ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞受賞作)
◎(ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞受賞作)

◆ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
『少年守護神』作画:東直輝/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之/「週刊少年ジャンプ」連載)
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦/「週刊少年サンデー」連載)
『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『ツバサ』作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中)

 ──と、こういう結果となりました。
 勿論、選考から漏れた作品も大変素晴らしい作品ばかりでしたし、諸々の事情によって切るには惜しい作品を候補から外したケースもありました。応援していた作品が落選してしまった方には、申し訳無いとしか言い様が無いですが、どうか勘弁して下さい。

 さて、いよいよ明日は各部門賞、そして「ラズベリーコミック賞」とグランプリの発表です。あと24時間、賞レースの行方をあれこれと予想しながらお待ち頂けると幸いです。では、また明日深夜にお会いしましょう。(式典2日目へ続く)

 

2日目(12月22日) 
「第2回仁川経済大学コミックアワード」表彰式

珠美:「(深く一礼)場内にお越しの皆様、大変お待たせ致しました。ただ今より、当社会学講座開講2周年記念式典・第2日のプログラム、『第2回仁川経済大学コミックアワード』の表彰式を執り行います。
 私、この式典の総合司会、並びに表彰のプレゼンテーターを務めさせていただきます、当社会学講座・助手の栗藤珠美です。本日は最後までよろしくお願い申し上げます(改めて、深く一礼)。
 ……さて、それでは皆様に、本日の表彰式に彩りを添えます、当講座のスタッフ2名を紹介させて頂きます。一色順子、並びにリサ=バンベリーです」

順子:「一色順子です。今日は部門賞のプレゼンテーターと、『ラズベリーコミック賞』の司会を担当します。ちょっと慣れないような堅い雰囲気で緊張していますけど、ミスをしないように頑張りますので、よろしくお願いします」
リサ:「リサ=バンベリーです。部門賞のプレゼンテーターをやらせてもらいます。
 今日はこんなスゴいイベントに参加できて、とても幸せです! ワタシもがんばりますので、ヨロシクお願いします」

珠美:「……そして、この『仁川経済大学コミックアワード』の審査委員長を務めます、当社会学講座専任講師・駒木ハヤトからも挨拶がございます」
駒木:「どうも皆さん、駒木ハヤトです。今日はお忙しい中にも関わらず大勢の方にご来場頂き、大変に感激しております。そしてまた、今年もこの『コミックアワード』を開催できた事を、非常に嬉しく思います。
 普段、マンガのレビュー活動を行っておりますと、どうしても批判めいた事を口にしなければならない場面が多くあります。勿論、それは必要に応じて止むを得ずやっておる事でありますが、それでもプロの作家さんが全身全霊を込めて──まぁ稀にどう考えても『やっつけ仕事でやりやがったな、こりゃあ』というのもありますが、それはまぁ置いておきまして(笑)、そうやって力を振り絞って描かれた作品に、ある意味ケチをつけなければならないというのは、実は殆どのケースにおいて非常に辛い作業であるのが本当の所であります。それがたとえ、マンガの体を成していないような“駄作”と呼ぶべき作品であってもです。
 しかしそういった中でも、せめて1年に1度だけでも、素晴らしい作品に対して心から「素晴らしい!」…と言える日があっても良いんじゃないか。そして、そのついでにコッソリと、トンデモナイ作品に対しても心からブーイングを浴びせて良いんじゃないかと(笑)。それをやる場が、この『コミックアワード』なんではないかと、そう思ったりしております。
 もっとも、審査員が審査委員長である駒木1人という、まるで零細企業の取締役会のような貧相な舞台裏で成り立っている賞でありますので、色々と皆様の意に添わない部分もあるかと思います。ですが、この賞の結果も、数多にある意見のワン・オブ・ゼムである事、そして、この賞自体が権威も格式も価値もヘッタクレも無い賞である事を改めて認識して頂いて、最後までお付き合い願えると幸いです。今日は本当に有難うございました」
珠美:「──では、これから各賞の発表並びに表彰へと移らせて頂きますが、その前に昨年度・第1回の『コミックアワード』受賞作を簡単に振り返っておきましょう。

「第1回(02年度)仁川経済大学コミックアワード」
受賞作品一覧

 仁川経済大学賞(グランプリ) 
 『ブラックジャックによろしく』
 
作画:佐藤秀峰

 ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞
 ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
 『アイシールド21』

 (作:稲垣理一郎/画:村田雄介

 ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞
 『CRIME BREAKER !!』
 
作画:田坂亮
 『だんでらいおん』
 
作画:空知英秋) 

 ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
 『エンカウンター 〜遭遇〜』
 
作画:木之花さくや

 ……このように、昨年度は“ワイルドカード枠”からのグランプリ受賞となりましたが、果たして今年はどうなりますでしょうか。こちらも注目ですね。
 それでは各部門賞の発表からお送りします。初めは、今年から新設されました、ギャグ系作品に贈られる2つの部門賞の表彰からです。
 それでは、この部門のプレゼンターを務めます、リサ=バンベリーに進行をバトンタッチさせて頂きます。……それではリサちゃん、よろしくお願いしますね」

リサ:「──ハイ、ガンバリます(微笑)。……では、『ジャンプ&サンデー最優秀ギャグ作品賞』と、『ジャンプ&サンデー最優秀新人ギャグ作品賞』の2部門について、受賞作の発表と表彰をしてゆきたいと思います。
 今年、この2つの部門はノミネートの資格を持った作品がまったく同じでしたので、表彰も2部門まとめて…ということになりました。ですので、これから紹介するノミネート作品は、両方の部門賞のノミネート作品というコトになります。ちょっとヤヤコシイ話ですけど、ヨロシクお願いしますね(苦笑)。
 ──それでは、改めてこの2つの部門賞の最終ノミネート作品を紹介します。どれも、日本人じゃないワタシでも十分に笑えたイイ作品ばかりでした。
 …まず最初は
『スピンちゃん試作型』作画:大亜門。『スピンちゃん』シリーズは3作品エントリーされましたが、第1作になるこの作品が選ばれました。バツグンのキャラクター設定と、そのキャラクターたちに作られた世界観の完成度、そしてマニア心をくすぐる絶妙のギャグが高い評価を受けての最終ノミネートです。
 2つ目は
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司独特の間から次々と繰り出される質の良いギャグ、さらには35ページを上手くまとめた構成力が最終ノミネートへの決め手となりました。
 最後は『サンデー』で短期集中連載された
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹です。“動”と“静”のコントラストで演出された高水準のギャグコマ割りの妙で作り出されたギャグなど、マンガならではの表現を駆使したテクニックが非常に印象的でした。
 ……というわけで、この3作品がこの2つの部門で最終ノミネートされた作品でした。
 ──あ、今、審査委員長の駒木博士から結果の入った封筒がこちらに来ました。では、発表しますね♪
 今年の『ジャンプ&サンデー最優秀ギャグ作品賞』、そして『ジャンプ&サンデー最優秀新人ギャグ作品賞』の受賞作は……

 

 


ジャンプ&サンデー最優秀ギャグ作品賞
 該当作なし

◎ジャンプ&サンデー最優秀新人ギャグ作品賞
 『スピンちゃん試作型』作画:大亜門


 ……と、いう結果になりました。片方が『受賞作なし』という結果になってしまいましたが、新人ギャグ作品賞を受賞した大亜門サン、おめでとうございました!
 ──では、ここで審査委員長の駒木博士から審査内容の説明をしてもらいます」 

駒木:「はい、駒木です。まずは“新人”のつかないギャグ作品賞の方の『該当作なし』という結果についてですが、これは当然ながら非常に迷いました。ただ、今回は競争相手が全て若手・新人作家さんの短編作品で、真の意味で『最優秀ギャグ作品』を選ぶ状況に無かった事、そしてノミネートされた作品のクオリティも、“新人”という括りを外してしまうと若干の物足りなさを抱いてしまう…という事情により、新人賞のみの授賞とさせて頂きました。
 で、その新人ギャグ作品賞の審査の決め手ですが、これは『スピンちゃん』のキャラクターと世界観の完成度、あとは言葉にし難いんですが、作品全体の安定感みたいなモノですね。ギャグ作品というと、その瞬間その瞬間で読者を笑わせる事を優先するために、どうしても設定に歪みが生じてしまうものなのですが、この作品・シリーズに関してはそれが感じられなかったんですね。ギャグそのものの“破壊力”は3作品とも互角だったんですが、この部分で優位に立った『スピンちゃん』を上位と見て、受賞作としました。
 また、作者重複ということで最終ノミネートからは外したんですが、水口尚樹さんの『フェニックス学園』の本誌読み切り版も素晴らしい出来だったと思います。連載中の作品の“週刊本誌出張版”という微妙なポジションの作品でなければ、こっちをノミネートさせても良かったんですが、こればかりは巡り合わせという事で……。
 水口さんは来年度も両部門ともに有資格者ですので、第3回でリベンジしてもらいたいと思います。以上です。」
リサ:「ハイ、駒木博士、ありがとうございました。……というわけで、ギャグ作品部門の発表でした!」
珠美
:「……ハイ、リサちゃん、ありがとうございました。
 ──それでは続きまして、『ジャンプ&サンデー最優秀新人作品賞』の発表、並びに表彰です。
 この賞は、『週刊少年ジャンプ』または『週刊少年サンデー』において長編連載経験のない若手作家さんの描いたストーリー系作品を対象にしたものです。審査対象となりますのは、読み切りや短期集中連載などの短編作品、そして若手作家さんが初めて手がけた週刊連載作品です。
 この部門賞のプレゼンテーターは一色順子が務めます。それでは順子ちゃん、よろしくお願いします」

順子:「了解です(笑)。それでは、この部門の最終ノミネート作品を紹介しますね。こちらもノミネートされた作品数は3つです。
 まずは
『天上都市』作画:中島諭宇樹これがデビュー作とは思えない世界観のスケールの大きさには、駒木博士も賛辞を惜しみませんでした。昨年の村田雄介さんに続く“師弟受賞”となるか、こちらも注目ですね。
 次は『結界師』作画:田辺イエロウ。読み切り版とのWエントリーでしたが、現在連載中の“長編バージョン”が最終ノミネートとなりました。作・画ともにキャリアの浅さを感じさせない高い完成度が評価のポイントになりました。
 最後に紹介するのは、滑り込みでエントリーを果たした
『河児』作画:四位晴果この作品のウリは、何と言っても新人作家離れした高い演出力。週刊本誌未登場ながらの最終ノミネートも納得のクオリティでした。
 ……以上、最終ノミネートを果たした3作品の紹介でした。そして、手元に今、審査結果が届きました。ハサミで中身まで切らないよう慎重に……と(笑)。ハイ、それでは発表です! 

 

 

 

 

◎ジャンプ&サンデー最優秀新人作品賞
 『結界師』作画:田辺イエロウ


 ……というわけで、今年度の“新人賞”は田辺イエロウさんの『結界師』でした! 
 うーん、わたしは『駒木博士なら『天上都市』じゃないかなー』と思っていたんですけど、そのへんも含めて説明してもらいたいと思います。博士、お願いします」

駒木:「この賞が全部門で一番の“激戦区”でした。いやー、最後まで迷いましたよ(苦笑)。もうね、甲乙付け難いとはこの事だと身に沁みて感じさせられた選考になりましたねぇ。
 本当は、去年の短編賞みたいに複数作品同時でも良いかな、とも思ったんです。ただ、さすがに3作品同時っていうのはマズいだろうと。で、絞込みを行う以上は1作品に絞るのがスジだろうと、そう思ったので1作品授賞という事にしました。断腸の思いですが、そうしました。
 で、絞込みの過程なんですが、設定・ストーリーに関しては本当に互角。3作品とも一長一短あって、しかもそれぞれに長所と短所が違うんです。直接比較不可能(苦笑)。で、こうなっちゃうと、普通は審査員の好き嫌いで選んでしまうものなんですが、このゼミでは『好き嫌いは排した評価を』がモットーでレビューをやってるのでそれだけはNG。ですから、この賞に関しては、設定・ストーリーは決め手にしませんでした。好き嫌いなら順子ちゃんの言うように『天上都市』を選ぶんですが、これは駒木ハヤトの意地でもあります。単純な好き嫌いだけでは絶対に優劣付けません!
 ……そういうわけで、最後は現時点での画力の完成度で勝負をつけました。これもウチのゼミのスタンスからしたらアレなんですが、好き嫌いで決めるよりはマシでしょう。まぁ、サッカーのPK合戦みたいなものだと考えて頂ければ……と。奇しくも、賞から漏れたお二方は来年以降もチャンスがありますので、ここは今年が最後のチャンスになる田辺さんに譲っていただこうかなと。以上です」
順子:「はーい、富士鷹ジュビロ先生並のテンションで苦しい弁明、ありがとうございましたー(笑)。以上、新人作品賞でした。珠美先輩、お返しします」
珠美:「……ハイ、順子ちゃん、お疲れ様でした。
 ──では、発表を続けます。次は『ジャンプ&サンデー最優秀短編作品賞』。この賞は、『週刊少年ジャンプ』、『週刊少年サンデー』の本誌やその系列誌で発表された全ての読み切り・短期集中連載作品が審査対象となります。ベテラン作家さんもデビュー作を発表したばかりの新人作家さんも関係の無い、完全実力主義のマンガ業界を反映したオールカマーの賞。
 この賞のプレゼンテーターは、またリサ=バンベリーが務めます。よろしくお願いしますね」

リサ:「ハイ、またガンバリます!(笑)
 ……ではでは、この賞にノミネートされた作品を紹介してゆきますね。
 まずは
『美食王の到着』作画:藤田和日郎『美食王』と書いて『グルメキング』って読ませるんですね(注:『ガストキング』の誤りでした。頭がアレ状態だった駒木が書いたカンペのルビが間違ってたのです^^;;日本語って面白いです(笑)。……あ、作品の紹介ですね(苦笑)。『からくりサーカス』を連載中の藤田和日郎サンが久々に描いた読み切りが、作品中の随所からあふれ出る非常に高度なテクニックが評価されて堂々のノミネートです。他に類を見ない“ミステリー仕立ての舞台演劇風活劇”という不思議なジャンルのこの作品、果たしてどのような評価を受けるのでしょうか?
 次に紹介するのは
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志。全国の椎名高志ファンが連載化を熱望していると言われる傑作短編が『コミックアワード』に登場です。“椎名版『パワー・パフ・ガールズ』”というキャッチフレーズの通り、パワフルでキュートで魅力的なキャラクターが、そのまま作品全体の魅力となりました
 これに、『最優秀新人作品賞』でも最終ノミネートされた
『天上都市』作画:中島諭宇樹)と『河児』作画:四位晴果を含めた4作品が、この部門の最終ノミネート作品です。
 ……そして、どうやら審査結果が出たみたいですね。それでは発表します!

 

 

 

 

◎ジャンプ&サンデー最優秀短編作品賞
 『美食王の到着』作画:藤田和日郎

 ……というわけで、最優秀短編賞は『美食王の到着』が受賞となりました。駒木博士、解説ヨロシクです」
駒木:「はいはい。……えーと、こういう結果になりましたが、5つある部門賞の中で、この部門が一番レヴェルが高かったです。こう言っちゃなんですが、最終ノミネートの4作品は、去年の第1回ならどれも受賞まで行ってたくらいのデキでした。まぁ今年は『ジャンプ』も『サンデー』も読み切りに力を入れていたので、その分がこうして形に現れたのかな…というところですね。
 さて、審査自体はスムーズでした。まず地力に勝るベテランお2人の一騎討ちになって、そこからゴール前にガストキングが力強く抜け出して来た…といったところでしょうか。何だか競馬のレース回顧みたいですね(笑)。
 まぁ何やかんや言っても、『美食王の到着』が凄過ぎた…の一言に尽きます。長年の作家活動の中で磨き上げて来た技術の粋を、たった1本の短編の中に凝縮して注ぎ込んで来られたら、これはもう評価しなければ失礼だろうという感じです。しかも週刊連載の合間を縫って描かれた作品ですからねコレ。さすがは富士鷹ジュビロ(のモデルになった方)ですよね(笑)。
 あ、くれぐれも誤解の無いように言っておきますが、この結果が『藤田和日郎>椎名高志』を現しているわけではありませんよ。今年度に限って言えば、藤田さんの方が自分の実力をより反映した作品を描いていた…ということですから、どうかご理解下さい。多分、10回同じような短編作品競作をやったら、10回とも勝敗が違ったりするんじゃないでしょうか。いや、冗談じゃなく来年からも“名勝負数え歌”をやって欲しいと思わせてくれるような、審査する方としては大変に幸せな一騎討ちでした。以上です」
リサ:「ハイ、博士、ありがとうございました! 以上、短編作品賞の発表でした!」
珠美:「リサちゃんはこれで御役御免ですね。本当にお疲れ様でした♪
 ──さて、いよいよ部門賞もあと1つとなりました。週刊マンガ誌の華とも言うべき、長編連載作品の新作を対象にした『ジャンプ&サンデー最優秀長編作品賞』の発表です。
 そして、この賞のプレゼンテーターは、不肖私、栗藤珠美が担当することになりました。どうぞよろしくお願いします。
 ……では、この部門に最終ノミネートされております作品を紹介させて頂きます。長編作品賞は『ジャンプ』、『サンデー』から各1作品ずつ、2作品での少数激戦となりました。
 まず『週刊少年ジャンプ』からは
『武装錬金』作画:和月伸宏。『るろうに剣心』の大ヒットで知られるベテラン・和月伸宏さんが、前作の短期打ち切りを乗り越えて見事な復活を遂げられました。緻密に計算の上に構築された設定、エンターテインメントに徹した爽快なストーリーは、今年不作の『ジャンプ』新連載の中で出色の出来であったのは間違いありません。
 そして『週刊少年サンデー』からは、先ほど『ジャンプ&サンデー最優秀新人作品賞』を受賞したばかりの
『結界師』作画:田辺イエロウがノミネート。昨年の『アイシールド21』に続く、新人・長編の二冠なるか、こちらも注目です。
 ……以上が、今年度の『ジャンプ&サンデー最優秀長編作品賞』に最終ノミネートされました2作品でした。
 そして、私の手元にありますのが、受賞作が書かれた紙が入っている封筒です。これを……開けますね……。さぁ、それでは発表です!

 

 

 

 

 

◎ジャンプ&サンデー最優秀長編作品賞
 『武装錬金』作画:和月伸宏

 ……以上のように、最優秀長編作品賞は『武装錬金』が受賞となりました。ゼミで実施したレビューでの評価とは序列が逆転した形になりますが、その点も含めて駒木博士に解説して頂きます」
駒木:「えーと、まず残念だったのが、ノミネート作品がここまで少なくなってしまった事ですね。昨日の年間総括で言った事と重なるんでここでは言いませんが、来年度には審査に困るくらいの傑作揃いになってほしいものです。
 で、審査の過程についてですが、この部門も悩ましかったですね。サッカーのチームに喩えると、1−0でキッチリ守り切ろうとするイタリア型の『結界師』に対して、3点取られても4点取りゃあ勝てるんだと言って、本当に勝つ寸前まで来てる『武装錬金』ですから、これまた直接比較がし難いわけで(苦笑)。ゼミで評価した時は、『結界師』が1−0でリード、『武装錬金』が3−3に追いついたばかりって感じだったので、評価に差がついてますが、今は『武装錬金』も4点目を入れて完全に並んでいます。
 ただ、両作品を見ていて決定的に違うのは、決め台詞のセンスと『ここぞ』という時での“爆発力”。これは、パピヨン編のラストシーンを見ても判りますように、『武装錬金』が一枚上手です。やはりエンターテインメントというのは決めるべき所をカッコよく決めてナンボですから、これが受賞の決め手になっても良いんじゃないかと思います。まぁ、『武装錬金』は他にも言いたい事はありますが、『やっぱりコイツ、好き嫌いで決めてるじゃねぇか』とか誤解されると心外なので、この場では止めておきます(笑)。……そういうわけで、以上です」
珠美:「……ハイ、ありがとうございました。
 ──というわけで、以上をもちまして全ての部門賞の結果が出揃いました。そして、これから発表になります『仁川経済大学賞』の最終ノミネート作品もこれで全て確定したことになります。
 ではここで、会場の皆様には改めまして、『仁川経済大学賞』の最終ノミネート作品を紹介させて頂きます。

仁川経済大学賞(グランプリ)
最終ノミネート作品

『武装錬金』作画:和月伸宏
『美食王の到着』作画:藤田和日郎
『結界師』作画:田辺イエロウ
『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹

 ……この中から、当社会学講座が選定する、今年度最優秀作品が誕生します。発表まで、今しばらくお待ち下さいませ。
 それでは、グランプリの審査発表まで、皆様には『ラズベリーコミック賞』の発表・表彰式で楽しんで頂きましょう。ではここで一旦私は失礼し、一色順子と司会を一時交代させて頂きます。ここまで有難うございました」

順子:「──はーい、そういうわけでバトンタッチしました、一色順子です! いきなりテンション上がり過ぎって言われそうですけど、『ラズベリーコミック賞』なんて、こんなテンションじゃないと毒が強すぎてシャレにならないので、この調子で行きます!(笑)
 でも、今年は司会を任せてもらったんですけど、やりたかった『打ち切り作品大賞』は今年もボツになっちゃいました。今年なんかせっかく“大豊作”だったのに、もったいない話ですよね〜(笑)。
 でもとりあえず、司会の特権で発表しちゃいます! わたしが決めた今年度の『ベスト・オブ・打ち切り』
『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』作画:加地君也ですね。
 題名からして何だか突き抜けそうで、連載前から打ち切り候補に挙がってて、そんなに内容が酷いわけでもないのにやっぱりすぐ終わりそうな雰囲気は変わらなくて、1クール乗り切っても全然乗り切ったように認めてくれなくて、で、実際に余りにも人気が無くて2クール目の途中で打ち切りが前倒しで執行。そして果てには、2ch掲示板の『ジャンプ打ち切りサバイバルレース』スレで“ドッキリポジション”
(=打ち切り確定作品が掲載される巻末間際の位置)って新語まで生まれるオマケつき。まるで打ち切られるためだけに連載が始まったような、そんな因果な作品でしたよね(苦笑)。
 ……あー、審査委員長席の駒木博士が『失礼な事言ってないで早く進行しろ』って言ってますから、進行しますね(笑)。ていうか、これから発表する『ラズベリーコミック賞』が一番失礼な気がするんですけど……。
 まあいいや、進行、進行(笑)。この賞は、映画の『ゴールデンラズベリー賞』をモチーフにしたモノで、駒木博士がここ1年間でレビューした中で最悪だった作品に与えられる賞です。ピンと来ない人は、去年はブッチギリで
『エンカウンター 〜遭遇〜』が選ばれたって部分で大体の所をつかんでもらえればと思います(笑)。
 で、くれぐれも言っておきますけど、この賞はあくまでも“ちょっとキツ目のシャレ”ですから、自分の好きな作品がケチョンケチョンに言われてもあんまり怒らないで下さいね。特に今年のラインナップ見てると、ヤバそうなタイトルがいくつかありそうですし(苦笑)。
 ──では、今年の『ラズベリーコミック賞』にノミネートされた6作品を紹介してゆきますね。
 まず、トップバッターは
『少年守護神』作画:東直輝。『ジャンプ』に載った読み切りですね。『ソワカ』が2クールで打ち切りになった東直輝さんの復帰作ですが、そんなジャンプ作家にとって今後を占う重要なタイミングでやらかしてくれました。
 戦国時代を舞台にしているのに、主人公とかの服装が何故か意味もなくバリバリ今風。しかもそうやって世界観をグチャグチャにしたところでストーリーもグチャグチャという、何て言うか、斗貴子さんに嬲り殺しにされたホムンクルスみたいな作品でした。

 次に、『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛。まだ2番目なんですが、『イヨッ! 待ってました!』とか言いたくなっちゃいません?(笑)
 ……タイトル通り、作品のクオリティは別にして大人気連載中『テニスの王子様』が連載4周年を迎えたということで描かれた特別編です。連載開始前のお話ということで“第0話”という設定になっていましたが、レギュラー版と同時進行で描かれたせいか、話数だけでなく内容もゼロ、しかもテニス業界のディティールが、ことごとく信じられないくらい間違ってるという、極めてシュールな作品に仕上がりました。駒木博士に「許斐剛という作家のポテンシャルを遺憾なく発揮した駄作」と言わしめたこの作品、ライバルを蹴散らして受賞なるでしょうか?
 3番目に紹介するのは
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之。ベテラン揃いの『ジャンプ』・秋の新連載シリーズに放り込まれてしまったという、生まれながらにして微妙なポジションにいた連載作品ですが、“デビュー以来、テコンドーマンガ一筋”という作家さんの作品にも関わらず、悲しいくらいにテコンドーが描かれていないという気持ちの良いダメっぷりが光る作品でした。
 結局、一番話題になったのが『ヒカルの碁』連載終了騒動の時に『韓国側からの猛プッシュでテコンドーマンガ連載開始』と言われた頃で、しかも猛プッシュの形跡など微塵も感じさせない1クール打ち切りで自らの潔白を証明したことも印象的でしたね。
 続きましては、唯一の『サンデー』系作品からのエントリー・
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦昨年も『旋風の橘』『365歩のユウキ!!!』を生み出した『サンデー』ですが、今年も期待に応えて(?)、ラズベリー賞候補作を提供してくれました。三上編集長、ありがとうございます!(笑) でも『きみのカケラ』は無かったことにした方が良かったと思いますよ?
 ……『サンデー』としては異例の短期・19回打ち切りという悲惨な運命を辿ったこの作品ですが、内容はそれ以上に悲惨。バトルに使われる特殊能力が『うえきの法則』の超劣化コピー、しかも悪の軍団の目的が『サイレントナイト翔』のまんまコピーという、誌面のそこら中から溢れ出る痛々しさが隠そうにも隠し切れないアレな作品でした。
 そして当ゼミ2人目となる“逆殿堂入り”・レビュー拒否作家となった
イワタヒロノブさんの『AX 戦斧王伝説』も当然のようにノミネートされました。
 作品中の歴史に関する考証が完璧に間違っているという至らなさが駒木博士の逆鱗に触れ、この作品がレビューされたゼミの雰囲気が非常にマズくなったのは記憶に新しいところです(笑)。デビューから数年を経て進歩が見られないどころか、ここに来てデビュー作のリメイクに走った後ろ向きさ振りも低い評価に繋がりました。今後、イワタさんの作品は『余程の進歩がない限りレビューしない(駒木博士)』という事情により、事実上これが『ラズベリーコミック賞』受賞のラストチャンス。果たして、命運やいかに?
 最後に紹介しますのは、
『ツバサ』作画:CLAMP。駒木博士がこの賞にノミネートするためにわざわざレビューしたという、今年度『ラズベリーコミック賞』の大本命が堂々の登場です!
 壮大なスケール、自己中心的な設定とストーリー、ただ読者が混乱するだけの奇抜な企画、大々的に話題にして連載を始めてしまったため、なかなか打ち切るに打ち切れない…など、昨年度受賞作・『エンカウンター』との共通点がやけに多いのもポイントですね。まさにこの賞に相応しい迷作という気がするんですが……。
 ……以上、これだけでも“お腹イッパイ”って感じのノミネート作品紹介でした。ね、わたしが司会じゃないとシャレにならないでしょ?(苦笑)。珠美先輩がこんな紹介したら、作家さん自殺しちゃいますよ(笑)。
 ──と、言ってるところに、やって来ましたよ審査結果が。では、さっそく発表です! 今年度の最悪作品賞に輝いたのは……

 

 

 

 

 

第2回ラズベリーコミック賞
受賞作

 

 『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛

 ……ということになりました。って、博士、『ツバサ』じゃないんですか?(苦笑) キチンと説明して下さいねー」
駒木:「……はいはい。しかしまぁ、好き放題喋ったもんだなー、順子ちゃんは(笑)。この司会の人選は間違ってなかったとも言えるし、間違ってたとも言えるなぁ。
 ……まぁいいや、それは打ち上げの席で話をするとして、『ラズベリーコミック賞』の話をしよう。この賞についてだけ、僕もフランクな口調に改めさせてもらうよ。こういうのはやっぱりノリが大事だしね。
 で、受賞作誕生までの経緯だけれども、確かにギリギリまでは『ツバサ』にしようと思っていたんだけどね。でも、審査のためにもう一度ノミネート作品を読み返したり、資料調べをしていたら考えが改まった(笑)。
 普通の作品だとね、本編の過去を舞台にした特別編っていうのは、本編でさりげなくばら撒いておいた設定を強化するために描かれるもんなんだよ。読んだ後で『あぁ、単行本1巻に出てたあの設定は、実はこういう事情があったのかー』って思ってもらえるようにね。
 ところがこの作品は凄い。なんと昔に描いていた設定を根底から覆す特別編が描かれてる(笑)。しかもリョーマの母親とか、南次郎が引退に至る経緯とか、結構大事な設定までが本編と全然違うんだから恐れ入る。何かね、日本の弥生時代の遺跡から北京原人の人骨化石が出て来たような違和感があるっていうかね(笑)。まぁそういうわけで、この作品が逆転受賞となったわけです。……これで良かったかな?」
順子:「……はーい、ありがとうございました。でも、『好き放題喋ってた』って駒木博士に言われたくないですよ(笑)。
 ……というわけで、『ラズベリーコミック賞』の発表でした。そして、また司会を珠美先輩にバトンタッチしたますので、わたしの出番はここでオシマイです。皆さん、ありがとうございました!」

珠美:「……ハイ、順子ちゃん、お疲れさまでした。では、また雰囲気を変えまして(笑)、いよいよグランプリ・『仁川経済大学賞』の発表へと参りましょう。
 では、ここで改めまして、最終ノミネートされました6作品を紹介致します。
 まずは各部門で最優秀賞を受賞した4作品は以下の通りです。

◎ジャンプ&サンデー最優秀長編作品賞
 『武装錬金』作画:和月伸宏

◎ジャンプ&サンデー最優秀短編作品賞
 『美食王の到着』作画:藤田和日郎

◎ジャンプ&サンデー最優秀新人作品賞
 『結界師』作画:田辺イエロウ

◎ジャンプ&サンデー最優秀新人ギャグ作品賞
 『スピンちゃん試作型』作画:大亜門

 ……そして、『週刊少年ジャンプ』、『週刊少年サンデー』の系列誌以外からも、所定の基準(ゼミ内のレビューで評価A以上)を満たした2作品が最終ノミネートされています。
 まずは「ビッグコミックオリジナル」誌連載の
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行。ギャンブルを題材にした作品を多数手がけている福本伸行さんが、敢えてギャンブルをテーマから外して世に問うた異色作です。平凡以下の中年男を主人公に日常内の非日常をコミカルかつシリアスに描く…というストーリーテリング上の難題に真正面から挑戦し、そして見事に成功に導いた高度なテクニックが高く評価されました。
 そして、これも「ビッグコミックオリジナル」誌から。クレジットのビッグネームに思わず目を奪われてしまう
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹が最後のノミネート作品となりました。
 手塚治虫さんの名作・『鉄腕アトム』の中のエピソードを原作としながらも、作品のタッチは完全な“浦沢ワールド”。既に円熟の域に達した高度な世界観描写力、ミステリーの要素を交えた巧みなシナリオ構成力は、読者を作品世界に強く引き込んで放しません。各出版社の漫画賞を総ナメにして来た浦沢直樹さんですが、果たして『コミックアワード』グランプリも獲得なるのでしょうか?
 ……以上、グランプリの名に恥じない、素晴らしい作品が出揃いました。当社会学講座が選ぶ、今年度の最優秀作品はどの作品に輝くのでしょうか? それでは、いよいよ発表です!
 『第2回仁川経済大学コミックアワード』グランプリ、『仁川経済大学賞』に輝いたのは──

 

 

 

 

 

第2回・仁川経済大学コミックアワード
仁川経済大学賞
(グランプリ)

 

『美食王の到着』
作画:藤田和日郎

 ……と、決定しました。藤田和日郎さん、おめでとうございます。そして、素晴らしい作品を有難うございました!
 ──では駒木博士、選考過程についてコメントをお願いします」

駒木:「えー、やはりグランプリも接戦でした。各部門賞の中の序列は比較的アッサリ決まったんですが、ワイルドカードの2作品がまた凄い作品ばかりでしたからね。
 ただ、これが普通なら、『短編よりも長編の方が、ハイクオリティを維持し続けるために要するエネルギーが大きい』という話になるところが、『これだけの内容を短いページ数に凝縮したのは素晴らし過ぎる』…という方向に持っていってしまうだけのクオリティが、『美食王の到着』にはありました。それがグランプリの決め手です。
 また、この作品の凄い点を更に強調するならば、マンガの短編読み切り作品が抱える構造的な欠陥を逆に“味”にしてしまった事、そして、『こればかりはマンガには真似できまい』と言われていた本格ミステリの高等技術・叙述トリックを完璧にマンガの中に取り込んでしまった事が挙げられるでしょう。こんなエポックメイキングの極致を見せられたんでは、感嘆するしかないんですよね。
 増刊号にしか載っていなくて、しかも単行本に収録される目処も立ってないというマイナーな作品ではありますが、そんな作品がグランプリを獲ってしまうのも、またこの賞らしくて良いんじゃないかと思います。珠美ちゃんも言ってましたが、僕からも言います。藤田和日郎さん、素晴らしい作品を有難うございました!
珠美:「……以上、駒木博士の解説をお送りしました。
 ──さて、お送りして参りましたこの記念式典もこれで全てのプログラムを消化しました。それでは最後に、全ての受賞作を振り返っておきましょう。

「第2回仁川経済大学コミックアワード」
受賞作一覧

 仁川経済大学賞(グランプリ)
 
ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞 
 
『美食王の到着』
 
作画:藤田和日郎

 ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞 
 
『武装錬金』

 
作画:和月伸宏

 ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
 『結界師』
 
作画:田辺イエロウ

 ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞
 
『スピンちゃん試作型』

 
作画:大亜門

 ※ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞は該当作なし。

 ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
 『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』

 (作画:許斐剛

 ……今年度の結果は以上のようになりました。皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか?
 さて、そろそろ閉会のお時間です。また来年も、この場でこうやって皆様とお会いすることをお約束して、この式典を終わらせて頂きます。本日は本当に最後まで有難うございました(深く一礼)」

(※以上をもちまして、「仁川経済大学社会学部インターネット通信過程・開講2周年式典」を終わります。なお、通常カリキュラムの再開は25日深夜を予定しています)


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