「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

10/30(第60回) 競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 天皇賞・秋」
10/28(第59回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第5週分・合同)
10/23(第58回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 菊花賞」
10/22(第57回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第4週分・合同)
10/16(第56回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 秋華賞」
10/15(第55回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第3週分・合同)
10/8(第54回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月2週分・合同)
10/3(第53回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 スプリンターズS」
10/1(第52回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・合同)

 

2004年第60回講義
10月30日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 天皇賞・秋」

 今日は予想が難解過ぎて、あれこれ考えている間に時間が全く足りなくなりました。取り急ぎ、予想をお届けします。


第130回天皇賞・秋 東京2000芝

馬  名 騎 手
ヴィータローザ 小牧太

昨年のセントライト記念勝ち馬だが、古馬になってからの実績はG3を境に壁が。道悪の紛れ生かしてどこまでか。

テレグノシス 勝浦

府中コースのスペシャリスト。上がり3F33秒4の豪脚で全てを呑み込んだ毎日王冠は圧巻だった。力関係よりも重・不良まで悪化した馬場がどう堪えるかが焦点に。

シェルゲーム 岡部幸

藤沢和厩舎3頭出しの一角。実力的に勝ち目は薄く、ここは逃げ馬を突付いて僚馬のレースをやり易くするのが役目か。

ダンスインザムード ルメール

秋華賞の敗因はイレコミとのことだが、オークス以来、最後に後続を突き放すような強さが影を潜めているのも確か。諸条件も厳しく、今回は様子見か。

ツルマルボーイ 蛯名

前年度2着馬がG1タイトルを引っさげてリベンジに挑む。いかにも府中向きの脚質は魅力で、実力的にも遜色無いが、極悪馬場になったのは非常に痛い。

トーセンダンディ 江田照

人気馬の不振を尻目にまんまと逃げ切った前走・オールカマーだったが、更なるメンバー強化と揃った同型の前に苦戦は必至。

マイソールサウンド 本田

ムラっ気があるものの、G2クラスでも強い勝ち方をする意外性は魅力ではある。ただ、2000mを境にして戦績がガクンと落ちるのは、やはり懸念材料だろう。

アドマイヤグルーヴ 武豊

昨年の牝馬No.1も、牡馬相手では劣勢気味。陣営の「昨秋の出来には今一歩」というコメントも気になるところで、ここは調整の場と見るのが妥当か。

サクラプレジデント 松永

G2クラスでの強さは特筆モノ。スーパーホース不在の今回は地力の上ではトップクラスだが、調教の動きはいかにも復調途上。道悪も堪えるか。

10 ローエングリン 横山典

昨年の大敗は馬ではなく騎手の大暴走ゆえに度外視。距離・コース問わず安定したパフォーマンスは馬券的に魅力だが、そろそろ疲れが溜まって来た様子なのがきになるところ。

11 ナリタセンチュリー 田島裕

無念の乗り替わりから半年、田島裕騎手に待望の大舞台。前哨戦の勢いをそのままに、トニービン産駒有利の府中コースで大暴れなるか。問題はやはり馬場だろう。

12 シルクフェイマス 四位

相手に恵まれての重賞制覇を重ねる内に地力も身に付き、最高の春シーズンを全う。休養明けも仕上がりは良好で、あとは道悪で自分のケイバが出来るかどうか。

13 ゼンノロブロイ ペリエ

切れ味、持続力に欠ける末脚が災いしてか、1年以上未勝利に甘んじる。今回は菊花賞の汚名返上を誓うペリエを背に、待望のG1初制覇へ向けて万全の態勢。

14 ヒシミラクル 角田

数多くの“ミラクル”を成し遂げて来たこの馬も、1年以上の休養明けとなる今回はさすがに劣勢が否めず。ここを叩いて次走以降が狙いか。

15 バランスオブゲーム 田中勝

お馴染、究極のG2大将&G1善戦マン。毎回今一歩のところまで健闘するが、今回は果たして……?

16 リンカーン 安藤勝

休養明けも仕上げは良好。能力十分、脚質自在、道悪にも実績アリとセールスポイントは多いが、この馬もG1では勝ち運に恵まれていない。外枠も心配だが。

17 ダイワメジャー 柴田善

アッと言わせた皐月賞の後は尻すぼみの否めぬ現状。大幅馬体減の前走から、どれくらい筋肉が戻っているかがカギだろう。ただ、大外枠はやはり痛い。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 レース2週間前にキングカメハメハが無念の戦線離脱。これについて調教師があれこれ言われてましたが、「これから」という馬が屈腱炎を起こして引退したり、絶頂を極めた馬がレース中に4コーナーで脚を文字通りぶっ壊して散っていくのが日常茶飯事だった頃に競馬を覚えた年代としては、「まぁよくある事だよ」で済ませたい気分だったりします。同じように直前に屈腱炎で戦線離脱した大本命馬としては93年のメジロマックイーンがいますが、当時はそういう馬が余りにも多かったので「またか」の一言で片付けられたり、整備が行き届いてタイムの出るようになった“高速馬場”のせいにされたりしておりました。
 それにしても、これで一気に予想が難しくなったのは事実であり、「カンベンしてくれ」と泣きを入れたい気分にもなります。オマケに不良馬場必至の雨と来ては……。不確定要素が多過ぎて、有力馬の絞込みが本当に難しいったらありゃしないですね。

 ステップとしては概ね、毎日王冠、京都大賞典の2レースと、宝塚記念以来のぶっつけ本番という3パターンに分かれていますね。
 まず同じ府中の毎日王冠は、絶妙のペースで逃げ切りを図ったローエングリンを、テレグノシスが豪脚で捻じ伏せた格好。この条件での勝負付けは完全についてしまったような、そんなレースでした。3着、4着馬が出走を回避し、5着のヴィータローザは展開恵まれての凡走でしたので、このレースについては「テレグノシスが強かった」という結論になりますね。
 一方の京都大賞典も、直線半ばで抜け出して完全に勝ちパターンにハマったと思われたゼンノロブロイを、ナリタセンチュリーが直線で強襲して小波乱に。スローペースで脚を貯めてラストで一気に爆発させる…という、いかにも勝ち馬向けのレースになりましたが、春に比べると完全に一皮剥けた感のある戦い振りが印象的でした。また、このレースではアドマイヤグルーヴが4着に入っていますが、これは5馬身ほどの差をつけられた完敗でした。
 宝塚記念からの直行組は、シルクフェイマス、リンカーン、ツルマルボーイ。どの馬も調教本数は足りており、どの馬も一応は9割以上の仕上がりと考えて良いのではないでしょうか。

 次は展開について。ローエングリンが逃げるのはほぼ確実ですが、他に7頭ほど前々でレースを進めたい馬がいるため位置取りは流動的に。有力先行馬の中には自分向きのポジションを確保出来ず、後手に回る馬もいるでしょう。ペースはやや速めで、展開による紛れは少ないレースになるでしょう。
 ただ、今週から仮柵が設置されてラチ沿いがやや走り易くなった事、そして不良馬場必至の天候面を考えると、先行馬も脚が止まるが差し馬も伸びあぐねるという、文字通りの泥仕合になってしまいそうです。一応、有力馬の中で重・不良馬場で実績のある馬を挙げておきますと、ゼンノロブロイ(重馬場のダービー2着)、リンカーン(未勝利を不良馬場で脱出)、ローエングリン(重馬場の中山記念で優勝)の3頭。ただし、テレグノシスやツルマルボーイも稍重でなら好走歴がありますし、ナリタセンチュリーも全くこなせないわけでは無さそうです。もうこればっかりは出たとこ勝負としか言いようがないですね。

 ……さて、それでは苦心惨憺して付けた印を紹介します。

◎ 2 テレグノシス
○ 11 ナリタセンチュリー
▲ 16 リンカーン
△ 12 シルクフェイマス
× 13 ゼンノロブロイ
× 5 ツルマルボーイ
× 16 バランスオブゲーム

 一応序列は付けましたが、印を打った馬はほぼ横一線。ハッキリ言って、こうして結論を出した今でもまだ悩んでいます(苦笑)。ここまで馬券の買い辛いG1レースはあんまり記憶にありません。
 一応の本命はテレグノシス。府中だと走りが段違いですし、ここ最近の充実振りは3歳頃のひ弱な印象を覆すに十分足るものです。問題は道悪ですが、もうそれでダメならダメで仕方が無いといったところですね(笑)。
 対抗はナリタセンチュリーを。府中は初めてですが、脚質や血統(トニービン産駒)を考慮すると適性が無いはずが無いでしょう。後は天運が味方するかどうか。
 3番手にはリンカーン。ここまでが単圏内です。この馬は地力・道悪実績共にあり、アッサリ勝ってしまってもおかしくはないのですが、外枠不利な中での16番枠ですし、後々のローテーションを考えるとどこまで高いモチベーションで調整して来たのか未知数という点が嫌気しました。
 2着圏内1頭目はシルクフェイマス。さすがにG1で連続好走されては実力を認めないわけには行きませんが、勝ち味の遅さがどう出ますか。
 人気を集めているゼンノロブロイですが、最近この馬が一昔前の善戦マン・ホワイトストーンにダブって見えて仕方が無いです(笑)。同一厩舎3頭出し、しかもペリエ鞍上とセールスポイントだらけではあるのですが、1番人気のこの馬を買い被りたくないなぁ…というところです。
 ツルマルボーイは良馬場なら◎も考えたくらいなんですが、やはりこの馬場では評価が落ちます。出遅れの多い騎手がテン乗りとあって、「最後方待機からの追い込み→惜しくも届かず」といういつものパターンに終始するのではないかと思ってしまうのです。
 最後にバランスオブゲーム。なんか93年の“戦国天皇賞”で言うところのセキテイリュウオーみたいな存在なので気になってしまいました。

 ……うーん、全く説得力の無い予想ですね(苦笑)。こりゃあ当たらんなあ(笑)。
 というわけで、印は派手に打ったものの馬券は当たる気が全くしないので、フォーメーション(2、11)−(2、11、16)−(2、11、16)の4点と、あと馬単の2-15だけ買って夢を見る事にします。なんか3連単は700倍とか900倍とかついてるんですが、どうしましょうか(笑)。
 まぁ皆さんも、くれぐれも大勝負は避けるよう、ご忠告申し上げます。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議書き置き」 

 受講生の皆さん今晩は、栗藤珠美です。
 今日も駒木博士の講義実施が朝方まで伸びてしまい、順子ちゃんとリサちゃんがとうとう「もう待ち切れないから帰る」と言って本当に帰ってしまいました(苦笑)。ま、確かに毎週集まっては「時間が無いから予想だけ」では、張り合いが無くなってしまいますよね……。
 来週以降の事はまた駒木博士と相談することにしまして、とりあえず今日は順子ちゃんとリサちゃんから伝言メモを預かっているので、そちらを紹介したいと思います。

 ──では、まずは順子ちゃんから。

 3連単だと大抵の組み合わせで万馬券になるので、予想がとてもやり易かったです(笑)。重馬場得意そうな先行馬を中心に、ボックスみたいなフォーメーションで手広く勝負してみます!

(12,13,16,17)−(12,13,15,16,17)−(12,13,15,16,17)の48点。ボックスにしなかったのは、バランスオブゲームの1着は色々な意味でありえないと思ったからです。具体的には田中勝春騎手に悪いので書きません。

 ……順子ちゃん、それは具体的に言っているのと同じ事だと思うのだけれど(汗)。

 ──では、次はリサちゃんの伝言を。まだ来日1年なので原文はちょっと日本語が怪しい所がありましたので、私が添削して読み易いようにしておきました。

 少し前、9.・11テロの年のグランプリ(有馬記念)で、マンハッタンカフェとアメリカンボスの2頭で決まったそうですね。じゃあ、大統領選挙のある今年はサクラプレジデントとリンカーンで決まりです(笑)

 …ということで、馬連、ワイドの9-16にしておきます。

 馬連の9-16のオッズを確かめてみたら、意外と倍率が低いんですね。やっぱり皆さん考えてらっしゃることは同じなんでしょうね。スプリンターズSでも、イチロー選手にちなんだ馬単5−1で決まったりしていますし……。

 さて、最後に僭越ながら私のフォーカスを紹介して、講義を締め括りたいと思います。
 私は、先行馬がハイペースで競り合って潰しあい、中位につけたリンカーンが荒れた馬場でもお構いなしに突き抜けて来る…と見ました。馬連13-16、2-16、2-13、5-16、11-16、8-16の6点ということで。

 ……それでは、粗略ながら今回はこれで失礼させて頂きます。では、また来週も宜しくお願いしますね。

 


 

2004年度第59回講義
10月28日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第5週分・合同)

 昼の仕事で心身の疲労は溜まる一方ながら、こちらのモチベーションは復活気味…といった感じの10月第5週分「現代マンガ時評」をお送りします。
 しかし振り返ってみますと、ここ最近の当講座はマンガ、マンガ、競馬、マンガ……。まるで就職活動を忘れたバカ学生の脳ミソの中身みたいで、恐縮することしきりであります。
 今一度もう少しモチベーションを上げて、近い内には何とか1〜2週に1度くらいは気の利いた講義を出来るよう、気持ちを盛り上げていきたいと思いますので、どうか何卒。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(49号)に読み切り『退魔師 ネネと黒影』作画:蔵人健吾)が掲載されます。
 今週号に新作を発表した吉川雅之さんに続いて、前作が打ち切りに終わった作家さんの復帰作掲載…という事になりました。次号予告ページのカットを見る限りでは、以前よりも絵柄が洗練されている気がするのですが、果たして?

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(49号)に読み切り『BooTa』作画:河北タケシ)が掲載されます。
 河北さんは若手のギャグ系作家さん。週刊本誌では04年19号に『犬ちゃん』が掲載されて以来、2度目の登場となります。

 ★新人賞の結果に関する情報

少年サンデーまんがカレッジ
(04年8月期)

 入選=1編(週刊本誌または増刊に掲載決定)
  ・『佐助君の憂鬱』
   石井あゆみ(19歳・埼玉)  
 
《あらすじ&講評:名字が『服部』という理由だけで忍者の末裔と信じている一家に生まれた佐助が主人公の変則ラブコメディー。ユニークなキャラクターとセンス抜群の構成・セリフ回しが素晴らしく、満場一致での入選となった》
 佳作=1編
  ・『サイの河原』
   飯沼深弥子(25歳・東京)
 努力賞=3編
  ・『怪盗アルペジオ』
   新井淳也(19歳・神奈川)
  ・『Griffon(グリフォン)』
   栗山裕史(24歳・大阪)
  ・『エンシエント・カラー』
   宮武祐典(19歳・大阪)
 あと一歩で賞(選外)=1編
  ・『青春』
   魔王源(25歳・愛知県)

 今回は、受賞者の過去のキャリアに関する情報は得られませんでした。
 入選受賞作は、受賞作紹介のカットを見る限りでは、かなり独特の絵柄…というか、普段の「サンデー」では受賞まで辿り着かないような画力に思えるのですが、それでいて入選ですから、それ以外の部分で相当に高いクオリティがあったのでしょう。講評を読む限りでは、「ジャンプ」で言うところの空知英秋さんのような作風と推察出来るのですが、実際のところはどうなんでしょうね。

 ★その他公式アナウンス情報

 今夏に実施された「第1回 ジャンプ金未来杯」の結果発表があり、投票結果1位の「金未来杯」受賞作には『タカヤ −おとなりさんパニック!!−』(作画:坂本裕次郎)が選出されました。なお、この結果を受け、坂本さんの週刊連載獲得が内定した模様です。

 今回の結果発表では、2位以下の作品の順位や得票数などの細かいデータは公開されませんでした。以前の「黄金の女神杯」では上位3作とか、全順位発表とかやってたんですが……。
 ただ、
もそも得票数の順位と支持率(「支持する」得票数/投票総数)の順位が一致しない可能性があるという欠陥ルールですから、具体的な数字を発表する事にどれだけ意義があるか…と考えると、まぁこれもアリかなと。バカ正直に全順位を発表した場合、下位に終わった作家さんの経歴にキズをつけてしまうので、確かにこれも一つの見識ではあるんですよね。特に今回参加した5人の若手作家さんは、誰が次に連載を獲得してもおかしくない“有望株”の人たちばかりだったわけですし……。

 今更どうでもいいんですが、駒木の受賞作予想──『切法師』(作画:中島諭宇樹)──は予想通り大外れでした(苦笑)。見た目絵が綺麗で、比較的とっつき易い話の作品を…と思って推したんですが、どうやらその傾向がもっと極端に反映された作品が選ばれた感じですね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本/代原読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年48号☆

 ◎読み切り『マッストレート』作画:吉川雅之 

 ●作者略歴
 手持ちのデータが不足しており、生年月日・年齢は確認出来ず。
 98年に「天下一漫画賞」で入選を受賞し、その受賞作『テコンドー師範!! 鏡くんのカカト落とし』週刊本誌98年35号に掲載され、デビュー。それ以来、テコンドーを題材にした作品にこだわり続け、「赤マル」00年冬号、週刊本誌01年29号に読み切りを発表。そして、03年には週刊本誌に掲載された作品『キックスメガミックス』が連載化されるものの、残念ながら1クール14回で打ち切り終了
 今回は、連載終了以来、約1年ぶりの復帰作となる。

 についての所見
 相変わらず線が洗練されておらず、各所でデッサンから粗い部分が見受けられますが、それでも以前に比べると、明らかに見苦しい場面は大分減ったように思えます。決して上手いとは言えないものの、マンガを成立させる上で最低限の水準には達しているでしょう。
 ボクシング関連の描写についても、ボクシングそのものより既存のボクシングマンガを意識しているような印象で、若干の違和感を禁じ得ませんでしたが、それなりに研究した上での“ボクシング挑戦”だったのだな…というのは伝わって来ました。当たり前のように思える事ですが、本質的にボクシングはマイナースポーツなので、余程のボクシングマニアが作者でもない限り、リアルなボクシングシーンを描くのは難しいんですよね。

 ストーリー&設定についての所見
 これはボクシングマンガ共通の課題と言えるのですが、ボクシングを題材にした読み切りは、プロットがどうしても手垢の付いたワンパターンなもの──色々な意味で不器用ながら図抜けた潜在能力を持った主人公が、小器用な小悪人ボクサーを逆転パンチでやっつける/八百長を要求された実力者ボクサーが、最後の最後で本気のパンチで逆転勝ちする──になってしまいがちです。起承転結の構成と、読者にカタルシスを与えるという課題をクリアするためには、どうしてもこうなってしまうんでしょうか。
 ……で、この作品もボクシングとボディビルの融合という、凄まじく男臭い新機軸を打ち出したものの、ストーリーの“手垢感”を打ち消すには至らなかったように思えます。ボディビルの筋肉がボクシングには通用しない…という所に目をつけたのは上手いと思いましたが、それも最後のトンデモな必殺パンチ(いくら脇を締めても、あんな体重の乗ってないパンチで威力が出るのは……?)でウヤムヤになっていて、それが作品の“軸”になり得なかったのは残念でした。

 また、前作以来の課題である、感情移入し易いキャラクター作りが、今回も上手くいっていないようで、これも作品全体のクオリティに響いている感じです。過去編を挿入するなど、工夫された面も窺えるのですが、そもそものキャラクター造型の中に、読み手が好感を抱く要素が余りにも少なかったんじゃないでしょうか。

 今回の評価
 無残に終わった前作のような失敗作ではありませんが、それでも凡作の域を脱する事は出来なかったような印象で、評価は少し厳しめですがB−としたいと思います。

 ◎代原読み切り『ハピマジ』作画:KAITO

 ●作者略歴
 作者本人運営のウェブサイト掲載のプロフィールによると、1984年8月15日生まれの現在20歳
 プロへのステップとしての同人活動を経て、03年より「ジャンプ」への投稿活動を開始。04年4月期「十二傑」では最終候補に残っている。
 今回は『HUNTER×HUNTER』休載に伴う代原掲載で、これが暫定デビュー作となる。 

 についての所見
 率直に言って、ギャグ作品だという事を抜きにしても相当高いレヴェルの絵だと思います。デビュー以前のアマチュア活動の賜物か、線が既に洗練されていますし、ディフォルメや各種表現・特殊効果についても全く見苦しい点がありません。「ジャンプ」のギャグ系若手作家さんは画力に課題を抱えている人が多いですから、このアドバンテージは出世争いをしていく中でかなり大きいのでは…と思います。
 ただし、今回は(ご本人のウェブ日記の記述から推測すると)1人での作業だったようですので仕方が無いとはいえ、背景やモブシーンが少なく、全体的にページが白っぽくなったのがやや気になりました。今度は、時間と折り合いをつけながらでも、必要な描き込みは欠かさないようにしてもらいたいものです。

 ギャグについての所見
 こちらも、これが代原暫定デビューとは思えない確かなテクニックが光っていますね。意識的に多く挟んでいると思われる、“間”で笑わせるギャグが冴えていますし、「ツッコミを無視したボケの畳み掛け」や「長いネタ振りからページを跨いでの大ゴマでオチ」などの技術も身に付いており、将来有望といったところでしょうか。
 欠点を指摘するとすれば、“間”のギャグが多過ぎ、かつ何度も続き過ぎたため、展開がやや単調になってしまったところでしょうか。あとは、最近の「ジャンプ」でトレンドになりつつある、長いセリフの応酬で笑わせるギャグも欲しかったですね。

 今回の評価
 まだ未完成な所があるとはいえ、全体的に見て代原にしておくのは惜しいくらいのクオリティですね。「赤塚賞」なら準入選〜佳作クラスには達しているんじゃないですか。もう少し暫定デビューが早ければ、間もなく発売のギャグ増刊に載るチャンスもあったと思うのですが、残念でしたね。
 評価は十分B+はあるでしょう。次回作が楽しみです。

 あと余談ですが、作者略歴のところでリンクを張ったKAITOさんのウェブサイト内の日記に、作品掲載が決まった喜びをストレートに表現した記述があるのですが、その中に「担当さんが凄く〆切ギリギリらしくテンパってらっしゃっていつ載るのかは聞けなかったのですが……」というくだりがあって、その生々しさに思わず笑ってしまいました。確かに、代原載せないといけない状況なんですからテンパってて当たり前なんですがね。
 ちなみに、その作品掲載が決定したのは今月の14日。発売日の1週間ほど前には関係者筋から2chに掲載順や誌面内容についてのネタバレがありますから、印刷とかを考えると多分本当にギリギリなんでしょうね。まぁ一読者からすれば、「どうせ落ちるんだからギリギリまで待つなよ」とツッコみたいところではありますが。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 まずは先週のゼミで『Wāqwāq』のモチーフについて言及しましたが、この際、駒木は浅薄で的外れな推測をカマしただけでなく、根拠の薄い推測を断定に近いニュアンスで決め打ちするという愚行を犯してしまいました。先週のこのコーナーで発言した内容を撤回すると共に、お詫び申し上げます。本当にすいません。このバカは定期的にこういう大恥をかく本当に懲りない野郎です。
 談話室(BBS)等でご指摘を受けた通り、この作品のモチーフになっているのはゾロアスター教神話で、それに諸々のオリジナル又は別モチーフの設定を絡めている…と解釈するのが妥当のようですね。

 さて、今週個人的にガツーンとヤラレたのが『アイシールド21』でした。もう何か執念としか思えないストーリーの超高速展開といい、余韻残りまくりのラストといい、平成の「ジャンプ」作品とは到底思えない異色の仕上がりになってましたね。長期連載の軌道に乗った途端に展開が間延びする作品が多い中、緊張感を絶やさない姿勢は素直に凄いと思うのですよ。
 それにしても、葉柱ルイの「テメェと俺と何が違う?」という涙の叫びは胸にグッと来るものがありました。確かに何も違わないんですよね。現実の無常さが自然に滲み出ていて良いです。これがセンスの無い作家さんだとヒル魔の替わりにセナを出して、「僕にはかけがえの無い仲間がいるんです」とかに言わせちゃって、陳腐な友情賛歌に持っていったりするんでしょう。

 『いちご100%』は、話のメインから外れた者同士のカップル成立、しかも随分なやっつけ仕事…という、作者の意図を掴みかねる展開でした(笑)。さつきの“敗者復活”もそうですし、何か最近、このマンガのストーリーが『デスノート』並にイレギュラーになってるんですが、一体何があったんでしょうか……。掲載順も実質最後尾ですし、色々な意味で先が読めません。

 そして、巻末で貫禄を見せ付けてくれたのが『ピューと吹く! ジャガー』。やっぱりハマーが出て来るとクオリティが一気に上がりますね。
 それにしても、小ネタをいくつも挟みつつ、最後のコマまでの全てが大きなネタ振りになってるとは……。うすた京介さんは、時々思い出したようにこんな凄まじい大ネタを持って来るから油断出来ません。

「週刊少年サンデー」2004年48号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「今まで観た映画の中で一番怖かったのは?」。
 んー、この質問も1〜2年くらい前にあったような気がしますね。講義レジュメ漁って調べるのも面倒なのでうろ覚えのまま喋りますが、確かその時は『女優霊』が最多回答だった気が。今回も『呪怨』と共に2票入ってますね。
 前の時とダブってるかも知れませんが駒木の答えも一応。6歳の時に予備知識無しで見せられたアニメ『はだしのゲン』は未だに忘れられません。

 さて、マンガの方では新キャラ・新設定続出の『結界師』が、いかにも「勝負に出てるなぁ」…という感じですね。雰囲気を作り上げながらも、コメディの要素も忘れないというバランス感覚も見事です。地味ですが、キチンと読ませてくれますね。

 あと『いでじゅう!』ですが、このマンガには、どうしてこう不憫なキャラが多いんでしょうね。……というかまぁ、他のラブコメ系マンガが敢えて触れない、本来なら“バックステージ”の部分を積極的に描いているからなんでしょうけど。でも担当の市原さん、最終ページ柱の「朔美の願いが、届きますように!」…というのは、気休め言うにも程があると思うんですが(笑)。

 ……といったところで今週のゼミはこの辺で。一気に秋めいて来ましたが、皆さんも体調には気をつけて下さい。ではでは。

 


 

2004年第58回講義
10月23日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 菊花賞」

 さて、今週もG1予想のお時間がやって参りました。
 しかしこの秋のG1シリーズ、駒木の予想自体はそれほど的外れでないと思うんですが、何故か本命馬が直線半ばで綺麗に吹っ飛んでいくんですよねぇ……。杉本清さんは、いつもこんな感じで宝塚記念を眺めているのか…などと考えてしまいました。
 ──というわけで、今週は菊花賞です。ただ、ここ10年、駒木がこのレースの馬券を当てたのは馬連3ケタ配当で収まった3回と馬連17.6倍の96年(ダンスインザダーク−ロイヤルタッチ)だけで、トータルの収支から考えるとかなりの大赤字。相性悪いんですよね(苦笑)。う〜む、果たしてどうなることやら……。


第65回菊花賞 京都3000芝外

馬  名 騎 手
オペラシチー 佐藤哲

夏の小倉でレコード勝ち。今シーズン最大の昇り馬……になるはずが、秋緒戦の朝日チャレンジCで予期せぬ惨敗。この中間で巻き返すもどこまでか。

カンパニー 柴原

ラジオたんぱ賞でケイアイガードの少差2着が勲章。力関係は見劣りせぬが、叩き2走目の有力馬を相手に4ヶ月休養明けで相対するのは不利が否めず。

グレイトジャーニー 小牧太

絶好の展開で逃げを打った神戸新聞杯が4着完敗。再び差し脚質に転じて大舞台に挑むも、トップクラスとは地力で少々差がついた感じ。

スズカマンボ 安藤勝

調整途上の段階で古馬相手に朝日チャレンジCを制し、この中間は調教でも動いてまさしく意気軒昂。春とは全く印象が違う力強さが窺えるが、怖いのは鉄砲激走後の二走ボケ。

ホオキパウェーブ 横山典

セントライト記念でコスモバルクに詰め寄った、息の長い末脚はいかにも長丁場向き。ただし、春の時点ではダービー9着と、やや地力の差が見えた敗戦。どこまで成長したか?

シルクディレクター 熊沢

実績不足も然る事ながら、距離経験が1800までというのが致命的。後方で脚を貯め、直線で何頭交わせるか。

エーピースピリット 吉田豊

ダートの条件戦を2戦連続で大差圧勝。一夏越しての成長は見られるが、いかにもスピード不足。芝と距離の適性にも疑問があって……。

ケイアイガード 松永

神戸新聞杯では、ダービー1、2着コンビに割り込む大健闘。好位からコスモバルクに肉薄する展開か。問題は距離。現状は1800がベストのような感もあって……。

トゥルーリーズン 四位

セントライト記念で粘りに粘って3着確保、出走権を得た。しかし、今回のメンバーはいかにも骨っぽく……。

10 ハーツクライ 武豊

強力な末脚が不発に終わった前走がやや心配も、ハイペースでも衰えない威力抜群の末脚が魅力。広い京都コースも魅力タップリ。

11 ストラタジェム 福永

収得賞金800万の身で出走枠掴んだが、その幸運もここに入ってどこまで? 地力不足と休み明け緒戦のハンデは余りにも大きくて……。

12 ブルートルネード 池添

1000万条件で2戦、気性の若さとスタミナ不足を露呈する完敗続き。菊花賞を目指す馬にとっては余りにもお粗末で。

13 コスモステージ 小池

自己条件すら勝ちきれぬ状況では、この馬の逃げ切りは望み薄。果たすべき役割は、同一オーナーのコスモバルクのペースメーカーか。

14 ハイアーゲーム 蛯名

前走は休み明け緒戦で仕上がり切れず不本意な結果に。ケイコで動いた今回は、青葉賞1着&ダービー3着の実績通りの活躍が期待出来るが、府中限定の性質もあり?

15 コスモバルク 五十嵐冬

道営の雄のクラシック挑戦最終章。セントライト記念完勝も、行きたがる気性は長丁場の舞台ではいかにも不安。倒すべき敵は、他の17頭よりむしろ己の逸る心か。

16 ブラックコンドル 赤木

芝の勝ち鞍は2歳夏競馬の未勝利戦のみ。重賞2戦の戦績も今一つで、強調材料が全く欠けている現状。

17 モエレエルコンドル 田中剛

格上挑戦で懸命に食い下がったセントライト記念(4着)は好感も、メンバー強化した中でどこまで健闘出来るかは疑問符が。あくまで入着候補としての扱い。

18 デルタブルース 岩田

実績には乏しいものの、スタミナに富んだ生粋のステイヤーとして穴人気を集める。斤量4キロ増と一気の相手強化は堪えそうな気もするが……。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 皐月賞馬とダービー馬を欠き、更にはこれといった新勢力も無く、微妙に層の薄さが気になる菊花賞となりました。こういう時は思わぬ伏兵が大駆けしたりするものなのですが、さてどうなりますか。

 前哨戦では、やはりダービー1、2着馬がそれなりのレースを見せた神戸新聞杯が一番高いレヴェルだったと考えて良いでしょう。実績馬の一角を崩したケイアイガードの健闘が光りますが、ただ少頭数・超スローペースの中距離戦の内容が、果たしてどこまでこのレースの参考になるかは未知数です。速めの平均ペースが予想される今回では、むしろ同レース3着のハーツクライの巻き返しに注目が集まりそうです。
 一方、やや寂しいメンバー構成となったセントライト記念では、権利獲りの為に勝負駆けを強いられたコスモバルクが、気性の問題もあって早め早めのケイバになりましたが、レコードタイムで後続を完封する強い内容。ただ、最後の要所で格下馬をもう一度突き放せない辺りに、過去のスーパーホースとの格差を感じさせられる内容だった…とも言えるかも知れません。
 古馬混合重賞をステップに選んだ馬の中では、朝日チャレンジCを調整途上のコンディションでキッチリ勝ち切ったスズカマンボのパフォーマンスが出色。ただし、例年の有力馬が札幌記念や京都大賞典で、古馬の一線級を相手に互角以上の戦いを見せるのに比べると、やや小粒な感は否めません。比較的メンバーに恵まれたオールカマーで惨敗を喫したハイアーゲームも、前哨戦としては落第の体たらくでした。
 以上のように、前哨戦でリズムに乗り切れなかった馬が多く、これが余計に本番の混戦模様に拍車をかけている印象がありますね。結局は秋緒戦の不出来には目を瞑り、改めて春の実績馬を狙ってみる…という流れになるのでしょうが、「どうせ確実じゃないのなら…」と、格上挑戦の条件馬からステイヤー型の晩成馬を抜擢する一手もあるでしょう。

 展開は、例年思わぬ馬が思わぬ位置取りをするレースだけに流動的ではあるのですが、人気薄の先行馬4〜5頭が速めの平均ペースでレースを引っ張り、そんな先行勢を見る、もしくは混じってしまうぐらいの位置取りでコスモバルクが正攻法の構え。有力馬ではケイアイガードもこのグループでしょう。
 有力馬の多くは、その先行集団をマークする形で中位からやや後方でレースを進めるはず。ハーツクライは更にそれらをマークするように最後方からのレースになるでしょうね。
 直線では、まず堂々とコスモバルクが先頭に立つも差し馬が次々と襲い掛かり、更にハーツクライが強襲…という攻防戦になるでしょう。どちらかと言うと差し勢有利ですが、直線一気の追い込みが決まった例は余り無いだけに、ハーツクライも楽なレースにはならないはず。1、2番人気に厳しい展開になりそうですね。

 ……さて、それでは相変わらず全く参考にならないフォーカスをお届けして、このコーナーを締め括りたいと思います。

◎ 4 スズカマンボ
○ 10 ハーツクライ
▲ 14 ハイアーゲーム
△ 15 コスモバルク
× 8 ケイアイガード
× 5 ホオキパウェーブ

 実力最右翼のコスモバルクですが、気性面の問題を抱えた上に展開が酷とあっては評価を控えめにせざるを得ませんでした。ただ、一競馬ファンとして、この馬をアタマにした応援馬券も買っておきたいと思います。
 代わって本命に抜擢したのは、一夏越して明らかにパワーアップしたスズカマンボ。春シーズンでは事あるごとにハーツクライの後塵を拝して来たこの馬ですが、今回は展開面で有利な上に人気面の気楽さもあり、一発大仕事をキメるには最適の条件が整ったといえます。乗り替わった安藤勝己騎手の騎乗振りにも注目です。
 この馬に続く存在なのが、やはりハーツクライハイアーゲームのダービー2、3着馬。2頭とも前哨戦でコケてしまったのですが、いずれも力負けといった内容ではなく、むしろ本番に向けて陣営の気持ちが引き締まった効果に期待したいところです。
 勿論、トライアルで健闘したケイアイガードホオキパウェーブも無視できない存在ではあるのですが、こちらは逆にレース振りが典型的なトライアル・ホースのそれだったのが気になるところ。中途半端にマークされる存在になってしまった感もありますし、買い被りは禁物です。
 馬券は3連単フォーメーションで(4、10)−(4、10、14、15)−(4、10、14、15)の12点としておきます。ただ、こんな不確定要素が大きなレースで多点買いするのは愚の骨頂ですので、当日の気配を見極めつつ、もうちょっと絞ってみるつもりでいます。

 ──それでは、後は女の子たちにバトンタッチして、駒木は寝ます。おやすみなさい(笑)。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

順子:「……(「週刊競馬ブック」を読みながら)それにしても変わるもんですねー」
珠美:「あら、どの馬のこと?」
順子:「いや、馬じゃなくて人。今週から記者の人たちのコメント欄に載ってる顔写真が変わったじゃないですか」
珠美:「あー……(笑)」
順子:「競馬記者って、ストレスで太ったりハゲたりする大変なお仕事なんですねー」
リサ:「あー、このハシモトさん……」
順子:「こらこらリサちゃん、実名出して写真に指差さない。せっかくわたしが実名伏せてんのに(苦笑)」
珠美:「──ささ、そろそろお馬さんのお話を始めましょうか」
リサ:「はーい」
順子:「……けど、それにしても先週は惜しいんだか酷いんだか分かんない結果でしたよねー。わたしは惜しいところでヤマニンアラバスタが届かずで、珠美先輩とリサちゃんは駒木博士の不調に引っ張られるようにハズれて……」
珠美:「ま、私は自分なりに考えて下した結論だから良いんだけど、リサちゃんは博士の×印2頭から、他の印の馬に流してたのよね」
リサ:「そしたら、博士の○と△で決まっちゃいました(苦笑)」
順子:「まったく駒木博士の負のパワー恐るべしですよ(苦笑)。その点、今回は中途半端な穴予想してくれたので、気兼ねしなくていいですね(笑)」
珠美:「そうね、って言ったらダメなんだけど(苦笑)。……さて、今日も時間が余り無いから早速フォーカスを発表していきましょう。私はセントライト記念の強さと、春から積み重ねて来た実績を信じてコスモバルク中心。人気サイドの予想なので、馬券的に面白くはないのだけれど、馬連で10-15、14-15、10-14、4-15、5-15、8-15の6点
順子:「わたしは思い切ってホオキパウェーブから。去年は馬単で万馬券当てたんですけど、今年は3連単で10万馬券を目指します! 3連単軸1頭1着・2着流しで5−(10、14、15、17)。12点×2で計24点。17番が来たら100万馬券です(笑)」
リサ:「100円が100万円ですか? うわー……」
順子:「まあ、ダメだと思うけどね(笑)。で、リサちゃんはどうするのかな?」
リサ:「コスモバルクにガンバって欲しいので、コスモバルクの単勝で応援します」
順子:「うわー、健全!(笑) なんだか私が意地汚いみたいでヤだなー」
珠美:「ギャンブルは性格が出るって言うものね(笑)」
順子:「ちょっ…それ、フォローになってないですよ〜」
珠美:「……ま、駒木博士がおっしゃりそうなことを代弁したということで、ね(笑)。それじゃ、もう夜も明けて来そうだし、私たちも失礼しましょうか」
順子:「はーい、お疲れでした〜」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは、今日の講義を終わります。皆さんも予想、頑張って下さいね♪ では、失礼します」

 


 

2004年度第57回講義
10月22日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第4週分・合同)

 いきなりでアレですが、今週も相変わらず不調です。
 しかしこういう活動って、損ですね。不調でも不調なりに体裁を整えないと、全く形になりませんから。

 ……などと、今週の『HUNTER×HUNTER』を読みながら考えてみたりした、台風一過の夜でありました。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(48号)に読み切り『マッストレート』作画:吉川雅之)が掲載されます。
 あの、昨年度ラズベリーコミック賞の候補にも挙がった『キックスメガミックス』でお馴染の吉川雅之さんが、今度はボクシングを題材にした作品で登場です。
 最近、特にボクシング観戦にハマりつつある駒木としては、期待と不安が半分半分……というより二分八分くらいなのですが(笑)、果たしてどんな作品になるんでしょうか。1年以上の雌伏を経て、吉川さんがどれくらい真っ当な格闘技マンガを描けるようになったのか、ジックリ確かめさせてもらおうかなと思います。

 なお、次号の「ジャンプ」では、「金未来杯」の結果発表があるようです。既に2ch界隈では優勝者の情報が流れていますが、そこで挙がっている話が本当だとすれば、「意外ではあるものの、冷静にこの手の読者投票コンペの傾向を考えたら納得」といったところでしょうか。……まぁ詳しくは、また来週のこの時間にて。

 

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」:新連載第3回1本/読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年47号☆

 ◎読み切り『湖賊』作画:久世蘭

 ●作者略歴
 1980年12月25日生まれの現在23歳
 04年8月期「十二傑新人漫画賞」にて佳作(十二傑賞)を受賞。今回は、十二傑賞の受賞特典を行使しての受賞作掲載デビューとなる。
 なお、未確認ながらアシスタント経験があるらしいとの情報も。

 についての所見
 「十二傑」で佳作受賞の最大の決め手となったのが画力というだけあって、構図の取り方、ディフォルメ表現、動的表現、各種特殊効果や背景処理など、マンガを描く上で大事になるテクニックは既に一通り習得出来ているように思えます。連載作家にとっては出来て当たり前の事ですので、週刊本誌に載ってしまうと「これで『絵が◎評価?』」…という印象を抱いてしまうかも知れませんが、これがデビュー作と考えると、やはり上々のデキにあると思います。
 ただ惜しむらくは、人物描写が全体的に線が弱々しく、デッサン等もやや粗く見える事。また、色々な造型の顔を描き分けようと意識する余り、キャラごとの美醜の格差が極端過ぎたように思えました。これで“ソコソコ綺麗な顔”と“ソコソコ醜い顔”のバリエーションがついてくると、随分と印象が変わって来ると思うのですが。

 絵についての総合的なジャッジは、「新人としては十分合格点、『ジャンプ』作家としてなら及第点以上合格点未満」というところになりますかね。

 ストーリー&設定についての所見
 まず、いわゆる起承転結の構成やシナリオ上の“静”と“動”のコントラストがキチンと出来ている事に好感が持てます。ページ配分のバランスが良いですね。
 また、戦闘シーンでは“主人公陣営のピンチ→起死回生の挽回策→逆転勝利”…という流れが一定の説得力を持たせる形で描かれており、これもポイントは高いです。

 ただ、この作品には少なからず欠点もあり、特に主人公やヒロインのキャラクターが弱く、バトルに勝った際のカタルシスが得られ難い形になってしまったのは残念でした。悪役がかなりドギツい“悪”だったため、登場人物の相対的な位置関係において主人公に感情移入出来るようにはなっているのですが……。
 また他にも、シナリオ自体も内容が薄く、凝ったバトルシーンとストーリーの主客が転倒してしまっている感も否めなかったように思えます。例えば、敵役と主人公に個人的な因縁を含ませるとか、工夫次第でもう少しお話に深みを持たせる事も出来たはずです。
 あと気になった点としては、セリフで状況説明しなくては判り辛い場面に限ってセリフが無く、逆に絵だけで十分伝わる場面で余分な説明的セリフが目立った事が挙げられます。文字情報の使い方について、もう少し気を遣って欲しかったですね。

 今回の評価
 プロのマンガ家としての基礎的な技術については一通り備わっており、デビューする資格は十分にあると思います。ただ、シナリオや設定といった、作品のクオリティを大きく左右する要素にいかにも不安があり、“プロの作家”にはなれても“優れたプロの作家”になれるかどうかは、現状では未知数といったところでしょう。
 評価は難しいところですが、B寄りB+としておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 それにしても、この状況で冨樫義博さんに表紙絵を発注できる編集部の度胸に乾杯! ……といった感じの今週号ですが、表紙絵が落っこちたらどうしたんでしょうね。過去の原稿から引っ張って来たりしたんでしょうか。

 さて、連載作品についてもコメントを少しずつ。

 『NARUTO』はリタイアした仲間たちを復活させつつ、シカマルにクローズアップ…という、話を転がしつつ挿話も入れるという、岸本さんの構成力が光る回でした。……にしても、「ジャンプ」作品でも死亡状態の仲間を復活させるにも手間がかかるようになったもんですね。こういうのもやはり時代ごとのトレンドというヤツでしょうか。

 今回あたりで、ようやく作品世界の全体像が明らかになりつつある『Wāqwāq』ですが、これらの設定、よくよく考えてみたら、あの『Fate/Staynight』の聖杯戦争と類似点が多いんですよね。願望をかなえる装置を巡って7組が戦うとか、その装置を作ったのが3人の能力者とか。ここまで具体的な数字まで合致してしまうと、完全オリジナルの設定が偶然一致したとは考え難いような。
 まぁ、ベースは同じでもディティールは随分と変えてますので、『Fate』をモチーフに使ったとしても上手いことアレンジしたな…という感じではあるんですが、ただ、こういう洒落たマネが出来るのなら、中途半端じゃなく、使える所は全部モチーフにしちゃえば良かったのに…などと思ってしまいました。今のままだと、『Fate』の難解な部分ばかり似てしまっているような気も……。

 『武装錬金』久々にコメディ要素急増の回。ただちょっと唐突過ぎた感も。ここ最近、シリアス方向に針が大きく振れていた分、突然コメディの方に針が反動すると戸惑ってしまうんですよね。
 まぁそれはそれで別に構わないんですが、ただ、こういう違和感について和月さんが鈍感になっているのがちょっと心配ではあります。

 最後に『いちご100%』。また後述しますが、「サンデー」の『モンキーターン』で青島が“脱落”したのと入れ替わるように、こちらのサブヒロインのさつきが“敗者復活”したというのが何となく趣深かったです(笑)。
 ……しかしこのマンガ、本当にギャルゲーになっちゃうんですねぇ。これまで多くのギャルゲーっぽい作品が敢えて踏み越えなかった一線だったんですが、越える時は本当にアッサリ越えるもんですね。

「週刊少年サンデー」2004年47号☆

 ◎新連載第3回『ハヤテの如く』作画:畑健二郎)【第1回時点での評価:B−寄りB

 ●についての所見(第1回時点からの推移)
 
全体的な印象としては「特に大きな変化は見られない」といったところでしょうか。ただ、ここまでの3週で技術の拙さに目が慣れて来ると、「意外と好感度の高い絵なのかな」…と思えるようになりました。
 失礼ながら畑さんの画力のバックボーンの頼りなさからして、とても作為的に高い好感度を演出しているとは思えないのですが、少なくとも結果的に「上手くはないけど、見てて楽しい絵」にはなっていると言えそうです。

 ストーリー&設定についての所見
 こちらのファクターについては、随分と思い切ったなぁというか、そうするしか道がないだろうなぁという方向性に流れて行きつつありますね。即ち、元々からして脆弱なストーリー性をほぼ完全にオミットし、主人公と“萌え”の塊であるような美少女キャラとのラブコメ(もどき)要素に特化して読者のご機嫌を伺う…という方針です。
 似たような方向性の作品としては一連の赤松健作品(『ラブひな』、『魔法先生ネギま!』)がありますが、まだ一応は一本筋の通ったプロットが組まれている赤松作品とは違い、この作品は本当に人気取りの要素だけに完全に特化された感がありますね。とりあえず読者ウケしそうな場面を繋ぎ合わせてページを埋めてみました…みたいな感じです。その結果、主人公もヒロインも影が薄くなってしまい、“萌え”担当要員の脇役・マリアが出ずっぱり。おかげで主人公を中心とするストーリーがほとんど描かれないという事になってしまったわけでしょうね。
 これは恐らく、第1回のレビューで指摘した、マンガの世界でありがちな光景を抽出・強調して作品作りをするという手法の産物ということになりますか。まぁ確かに、人気商売として読者ウケを最優先するのは決して間違っておらず、むしろ第1話よりも良化の兆しさえ窺えるわけですが、ただ、ここまでストーリー性が欠如してしまうと、当ゼミの評価基準からすれば高い点はつけられないんですよね。メロンパンの端がいくら美味いからといって、それだけを固めたモノはパンとは言えないわけですから……。 

 今回の評価
 本来、この手の作品は「名作崩れの人気作」ということでB+の評価をつけることにしているのですが、この作品はストーリーの弱さを鑑みるに、「『名作崩れの人気作』崩れ」と言った方が良いような気がします。よって評価は「単なる雑誌の中の1作品として割り切って読む分には、さほど問題の無い作品」に出すBということにします。

 ◎読み切り『ジンの怪』作画:大須賀めぐみ

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 資料不足のため、生年月日及び年齢は不明。
 
02年春発売のルーキー増刊でデビュー。これまでに月刊増刊で02年11月号、03年2月号に読み切りを発表、03年12月号から04年2月号まで短期連載を経験している。
 週刊本誌は今回が初登場。 

 についての所見
 「サンデー」系の若手作家さんとしては十分過ぎるくらいのキャリアを積んでいるだけあって、人物造型、各種の表現技法や特殊効果など、あらゆるの要素においてレヴェルの高い絵柄だと思います。線も見事に洗練されていますし、他の本誌連載作家さんの絵と見比べても全く遜色ありません。まさに即戦力級の画力と言えるでしょう。
 ただ、絵柄がやや洗練され過ぎて逆にインパクトに欠ける印象が無きにしも非ずで、もう少し陰陽のコントラストをつけられるようになれば更に良くなるのではないでしょうか。

 ストーリー&設定についての所見
 冒頭の“掴み”で伏線を張ってみたり、主要キャラの過去回顧を挿入してシナリオに深みを出す試みを実践してみたり、更には小ギャグも挟んでみたりと、随所でストーリーテリングのテクニックをアピールするべく頑張ってみた…という作品ですが、残念ながらそのいずれもが取って付けたような感じで、成功したとは言えないクオリティに甘んじているように思います。
 これには色々な要因があると思いますが、ページ数の割に設定過多で、シナリオのメイン部分よりも設定提示に関する遣り取りの方が主になってしまったのが一番大きかったのではないかと考えています。設定だけヤヤコシい割に、ストーリーは随分とアッサリしたモノになってしまいましたしね。
 また、全体的にセリフで話を進め過ぎではなかったでしょうか。マンガを読んでいるというより、延々と字面を追いかけるついでに絵を見ているような感覚で、演出力が弱いように感じてしまいました。

 ……批判するばかりになってしまいましたが、創作の方向性自体は間違っていないと思うんですよね。ただ、「良い作品にするために、こういう要素を入れなきゃいけないんだ」という気持ちが先走り過ぎて、いわゆる“遺伝子組み替えマンガ”になってしまったような気がします。

 今回の評価
 この作品も評価が難しいですね(苦笑)。最近の「サンデー」読み切りは、褒めきれないし、かといって貶しきれない作品ばかりで困ってしまいます。んー、本当に迷うところなんですが、最近レビューした作品とのバランスも考えつつ、B+寄りBということにしておきましょうか。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「1日だけ別人になれるとしたら?」。
 橋口たかしさんが言うように、あんまり遠くない以前に同じような質問があった記憶が。ただ、その時とは少なからずメンツも変わってますし、まぁ良いんじゃないでしょうか。
 ……で、連載作家の皆さんの答えは真面目なものからウケ狙いまで、もうゴチャゴチャといった感じ。全く傾向とか掴めませんね(笑)。印象に残った答えとすれば、師匠譲りの無鉄砲さで(『デスノート』の)ワタリ」と答えた畑健二郎さんなったところで一体何をするのか教えて欲しい「ワカパイ」夏目義徳さんあたりでしょうか。
 駒木は、フサイチの馬で有名な関口房朗氏と答えておきます。競馬を馬主席で観戦した後、六本木ヒルズの最上階の自室に戻って銀座から寿司屋ごと出前…ってのを一度やってみたいです(笑)。

 さて、時間も無いのでアレですが、連載作品についてもコメントを。
 今週号は、「DVDをカバンに入れる作業だけで早くもパンパンに膨らました、思春期丸出しの股間」というフレーズが不覚にもツボにハマった『ミノル小林』とか、どこまで校則緩いんだ県立井手高校…などと学校関係者の端くれとして呆然とした『いでじゅう!』など、小ネタは結構あったのですが、やはり「これだ!」と1つ採り上げるなら『モンキーターン』という事になるでしょうね。
 ……今、手元の「サンデー」を読み返しているのですが、本当に今回の『モンキーターン』は河合克敏、渾身の一編という趣で、本当に素晴らしいデキでした。まるで良質の映画を見ているようなカット割り、練りに練られた、かといって芝居臭さを感じさせない脚本。出来る事なら少年誌の巻末じゃなくて、青年誌の巻頭カラーで読みたかった…と言えば贅沢過ぎでしょうか。
 いよいよストーリーは賞金王決定戦での最終決戦に向けて佳境に突入していくようですね。足掛け8年の長期連載、終わってしまう事に対する名残惜しさはありますが、ここまで来たら最高のクオリティでの結末を期待して待ちたいと思います。

 ……それでは今週はこれまで。来週は昼間の仕事が本当にキツくなりそうなので、ゼミのクオリティはあんまり期待しないで下さいね(苦笑)。
 では、また明日、菊花賞予想でお会いしましょう。

 


 

2004年第56回講義
10月16日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 秋華賞」

 いよいよ今週から秋のG1シリーズが本格スタートとなりました。毎週毎週G1レースを追いかけていく内に、気が付いたら年が暮れている…という、競馬ファンにとっては毎年経験している短い秋の始まりですね。
 そしてその第1弾は堅く収まったかと思えば荒れ、荒れるかと思えば1、2番人気で決着…という、掴み所の無さでは他のレースの追随を許さない秋華賞。今年も一筋縄じゃいかないメンバーが揃いましたが、さてどうなりますか。
 ……「どうなりますか」じゃなくて、どうにかしないとアカンのですけどね。


第9回秋華賞 京都2000芝内

馬  名 騎 手
サイレントアスク 赤木

前走大敗にも臆せず強気の挑戦だが、紫苑Sと1000万条件戦で連続完敗では……。

ダンスインザムード 武豊

名手・武豊痛恨の騎乗ミスで2着に終わった米遠征から3ヵ月半、万全のコンディション調整で秋緒戦を迎えた。もはや問題は力関係ではなく、アクシデントがあるか無いか。

ドルチェリモーネ 高田

高田騎手、一世一代の大舞台。多頭数の馬群を突き抜けるだけの切れ味に欠ける面が、一夏越えてどれだけ解消されているかがカギ。

フレンチアイディア 秋山

実績乏しい上に、「何とか間に合った」という感の拭えぬ調整過程はどうにも不満。ここは後方から8着目指して流れ込みか。

ウイングレット 田中勝

前走は力の要る馬場が堪えたか。調教からは復調が窺えるが、展開恵まれて7着に終わったオークスを考えると、強調材料は見出し難い。

グローリアスデイズ 柴原

ローズSは強豪を相手に善戦健闘。あと一歩で勝ち切れぬ面が目立ってしまうが、相手なりに走れば馬券の対象にも。

フェミニンガール 岩田

距離にメド立った前走のパフォーマンスも、今回は展開に恵まれそうに無い。果敢に行ってどこまで粘れるか……?

ヒカルドウキセイ 佐藤哲

前走の4着で、牝馬限定重賞のメンバーに混じっても勝負になるメドは立った。苦手のスタートを克服して、競り合いに持っていきたいところだが。

メイショウオスカル 後藤浩

展開に恵まれるはずだったローズSで不可解な凡走。馬体の成長も感じられぬし、トップ圏内からは一歩後退の現状か?

10 フィーユドゥレーヴ 熊沢

桜花賞以来の復帰戦。事前の調教量は足りているが、体調は未だピークには程遠い様子。春の時点で既に頭打ち感は否めず、今回は特に苦戦か。

11 スイープトウショウ 池添

同世代牝馬では随一の末脚を備えるも、乗り難しさも桁違い。能力面は勝ち負けだけに、仕掛け所を間違えず、落ち着いて仕掛けて欲しいところ。3戦3勝の京都コースも魅力。

12 ヤマニンアラバスタ 柴田善

前走は痛恨の1位入線降着も、指定オープンクラスとは格の差を見せつける好パフォーマンス。小細工無しの真っ向勝負で上位進出を窺う。

13 バレエブラン 芹沢

500万条件戦勝利から果敢なる挑戦。春のスイートピーS6着時よりは成長しただろうが、さて先行してどこまで粘れるか。

14 インゴット 福永

脚質転換を図った前走で幸運な繰上ながら堂々の2段階格上挑戦成功。同厩のダンスインザムードをサポートしつつ、自身も上位進出するだけの態勢は整った。

15 レクレドール 小牧太

多少の恵まれはあったにせよ、昇級&格上挑戦でローズSを鮮やかな差し切り勝ちした実力は確か。兄ステイゴールドに似ない決定力で強豪に再び挑む。

16 ヤマニンシュクル 四位

2歳チャンプも春から夏にかけてはやや苦戦気味。京都の軽い馬場を味方につけて、あとは少しでも展開の恵まれが欲しいところ。

17 アズマサンダース 蛯名

上位常連の強豪が秋緒戦で予期せぬ躓き。気性面の不安定さが気掛かりだが、体調は万全で桜花賞の再現狙う。数少ない先行馬だけに、展開に恵まれれば勝ち負けも十分。

18 マルカフローリアン 川原

権利確定のための強行ローテーションも不発に終わり結局は逆効果。53キロのハンデで1000万条件を勝ち切れぬ現状を考えると、オークス6着とは言え強くは推し辛い。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 いきなりですが、大嫌いなレースなんですよ秋華賞(笑)。大損こいたか、ガチガチの本命馬券で儲け損なったか、どちらかの思い出しか無いんですよね。事実このレースは、後々一時代を築いた名牝たちが思わぬ大敗を喫している鬼門だったりするわけで。
 果たして今年の1番人気はファインモーションなのかエアグルーヴなのか、どっちなんでしょうね。

 ……まぁそんな事はさておき、まずはトライアルレースの簡単な回顧から。
 “正統”トライアルのローズSには、オークスの1、2着馬や桜花賞2着馬など、なかなかの好メンバーが揃いました。有力馬で参加していないのはダンスインザムード、ヤマニンシュクル、ヤマニンアラバスタくらいで、前哨戦としては、やはり最も重要なレースと言えるでしょう。
 ただ、レース内容は参考になるかどうか微妙なものに。有力視された先行勢が実力通りとは思えない急ブレーキで、3コーナーから早仕掛けしたスイープトウショウまでもが抜け出した後にソラを使った事もあって失速。有力馬の自滅による伏兵的存在の差し馬のワン・ツーでは、スンナリ上位馬を信頼というわけにはいかないでしょう。
 次に紫苑Sですが、こちらはオークス3着のヤマニンアラバスタが出走して彩りを添えたものの、レヴェルは1000万条件特別といったところ。そして内容はと言えば、実績上位のヤマニンが余裕を持って1位入線を果たしたものの、5着降着という締まらない内容に。2〜3位入線の2頭が優先出走権を獲得しましたが、本番で通用するメドは全く立っていない状況です。
 別路線組としては、米G1のアメリカンオークスで2着惜敗したダンスインザムードと、牝馬限定G3の常連メンバーが揃ったクイーンSでそれぞれ3着、8着に終わったヤマニンシュクルとウイングレットの2頭。どちらも春のパフォーマンスを上回るだけのインパクトを残したとは言い難く、春同様の能力水準で秋戦線に挑む…といったところでしょうか。
 ──そういうわけで、今年の秋華賞は前哨戦がレース検討の上でほとんど役に立たないという極めて珍しいケースになってしまいました。秋からの新勢力にしても、特に目立ったのはローズS1着のレクレドールくらいなもので、あとは“穴馬の宝庫”である賞金800万組から無理を承知で馬券候補に抜擢するくらいしかなく、結局は揃いも揃ってムラッ気が強い春路線組を中心に考えるしかないという、苦渋の決断を強いられそうです。

 ちなみに展開ですが、逃げ馬候補は3〜4頭いるものの、どこをどう考えても直線半ばまで保ちそうにない馬ばかり。先頭グループのペースは若干速くなりそうですが、それを見ながらレースを進める中団以降の有力馬たちにとっては、縦長隊列・平均ペースの実力通りに決まり易い流れになるのではないでしょうか。差し・追込脚質の有力馬が多く、正念場で不利を受ける馬もいるでしょうが、中団からレースを進めるダンスインザムードという共通の目標がいますので、過度の牽制はないものと考えられます。
 なお、これは去年のレース予想でも述べたと思いますが、重要な事なので今年も言っておきます。京都2000mの芝内回りコースは本来内枠・先行やや有利なのですが、この秋華賞に限って言えば、外枠有利で差し・追込の穴馬がたびたび突っ込んで波乱の立役者になっています。距離損よりもスムーズにレースを進められるという意味で外枠も決して不利ではないようです。

 さて、前置きが長くなりましたが、最後に駒木のフォーカスです。

◎ 2 ダンスインザムード
○ 11 スイープトウショウ
▲ 17 アズマサンダース
△ 16 ヤマニンシュクル
× 12 ヤマニンアラバスタ
× 15 レクレドール

 色々考えたんですが、結局は駒木が考えた地力の順番通りに印をつけました。特に差し馬は瞬発力というか、馬込みを突き抜けられるだけの決定力を重視した序列です。
 本命はダンスインザムード。地力最上位の馬に明快な不安材料が無い以上、この馬を1番手から外すわけには行きません。この馬の場合は、相手関係よりも自分が実力通り走れるかどうかの一点だけ。走れれば1着でしょうし、ダメならオークスのように着外でしょう。海外遠征から体調を崩す馬というのも少なからずいますが、遠征慣れしている藤沢和雄厩舎のことですから、出す以上は体調万全と思いたいです。
 迷いに迷った2番手評価はスイープトウショウ。凡走と好走を繰り返す困った馬ですが、好走時のパフォーマンスから考えると、他の2番手候補たちより力が半枚から一枚上ではないかという見立てです。ただ、今回はかなり後方から捲り気味に仕掛け、ギリギリ差し届くようなレース運びになると思いますので応援する立場からすると心臓に良くないかも知れないですね(笑)。
 3番手評価はアズマサンダース。この馬も自分の力が発揮できるかどうかが焦点です。有力馬の中では唯一の先行脚質だけに、「前でレースをする」という事自体が大きなアドバンテージになります。目指すは桜花賞の再現でしょう。
 印をつける上で迷ったのがヤマニンシュクルヤマニンアラバスタの序列。一応、春の実績通りにしましたが、どちらもほぼ確実に長く脚を使えるタイプの差し馬です。ただ、連対圏に突き抜けるには展開や他の有力馬の凡走待ちということになるでしょう。
 新勢力からは一応レクレドール。あのトライアルの内容だけでは「即、通用」とは言い難いのですが、土曜のデイリー杯2歳Sで強烈なデモンストレーションを見せた小牧太騎手の存在がいかにも不気味です。個人的には十中八九は通用しないと思っているのですが、「終わってみれば……」という可能性も無きにしも非ず。困った存在ですね(苦笑)。
 ※肝心のフォーカスを入れ忘れていました。フォーメーションで2−(11,16,17)−(11,12,15,16,17)の12点を基本に、そこから削って10点以内に収めようと思います。(17日午後2時40分追記)

 というわけで、ここまで駒木がお届けしました。この後は3人娘たちの登場です。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

リサ:「……えー、付き合ってる人とか、そういうの無いですよー!」
順子:「それよりわたしね、珠美先輩がちょっとだけ怪しいんだよねー」
珠美:「(苦笑)……で、何が怪しいの? 順子ちゃん」
順子:「あ、いや、昨日のゼミで駒木博士が言ってたから、とりあえずやってみようかなって(笑)。」
珠美:「リサちゃんはともかくとして、そういうのは10代で卒業しましょうね、順子ちゃん」
順子:「ええまあ、言っててかなり恥ずかしかったんですけどね(笑)。……で、競馬の話ですけど、スプリンターズSは参りましたねー」
珠美:「そうね(苦笑)。まさかまさかの2、3着馬だったわね。結局、本当に予想をパスしたリサちゃんが一番賢いってことになってしまったし」
リサ:「でも、ワタシも狙おうとしてた香港の馬が3着に来て、ちょっと複雑でした」
順子:「もう本当にガックリでした。カルストンライトオがどんどん差を広げていって、あとは2着と3着ーッって注目してたら馬券に番号が書いてない馬ばかり(苦笑)」
珠美:「ま、ただでさえ難しい競馬で、更に不確定要素が重なってしまったら、ああいう結果になるのも仕方ない話ではあるのよね。
 ……じゃあ、とりあえず暗い過去は忘れてしまって、秋華賞の予想に行きましょう。もう詳しい事は駒木博士が第1部で話して下さってるから、それを参考にね」

順子:「駒木博士の第1部の準備が遅れたので、わたしたち、正直眠いんです(苦笑)」
リサ:「徹夜でーす(笑
)」
珠美:「じゃあ、早速フォーカスを発表していきましょうか。私は勿論、2番のダンスインザムードから」
順子:「博士の予想を見た上で『勿論』って言えるあたり、珠美先輩も懲りないですね(笑)」
珠美:「(苦笑)。でもあとの印は大分違うのよ。……私は展開的に好位・中団からレースを進める馬が有利と考えました。アズマサンダースとグローリアスデイズの粘りに期待して、馬連2-17、2-6が本線。あとは2-11、2-15、2-16を押さえて6-17も少しだけ
順子:「わたしはダンスが先に抜け出した所を、追込馬が大外から奇襲するって狙いで、6枠の2頭が中心です。大穴は賞金800万のヒカルドウキセイですねー。3連単流しで11、12の軸2頭マルチ・相手が2、8、16、17の24点で勝負します」
珠美:「リサちゃん、今日は予想を考えてみたの?」
リサ:「えーとですねー、さっきまでヒマで去年と今年の予想大会の記録を見てたんですね。そうしたら、駒木博士が×印つけた馬と、◎印じゃない別の印の馬で決まって、博士の予想が外れるパターンが多いって気がついたんです」
珠美:「(笑)」
順子
:「(爆笑)」
リサ:「なので、12番と15番の馬から、それぞれ11、16、17の3頭に馬連で流してみようかなって」
順子:「珠美先輩、この娘は侮れませんね(笑)」
珠美:「オッズも手頃だし、ひょっとするかも知れないわね(笑)。……といったところで、予想も出揃いましたし、今日は短いですけど、これで私たちも失礼しましょうか。」
順子:「お疲れでした。受講生の皆さんも頑張ってくださいね〜」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは講義を終わります。有難うございました」

 


 

2004年度第55回講義
10月15日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第3週分・合同)

 何やかんやで、今回も金曜に合同版実施となってしまいました。今週は時間に余裕があるはずだったんですが、先週ちょっと気合を入れた反動で気が緩んでしまったのか、今週も授業が無いだけで結構仕事の多い日々が続いたせいなのか、体調の方が微妙に堪えてしまってまして……。ただでさえスランプ気味のところへコレというのはキツかったです。
 こういう事があると、いつも思い出すんですが、開講当初、週6〜7ペースで講義をしてた頃の自分って一体何だったんでしょうね。年が今より3つ若かった事を差し引いても、我ながらちょっと異常な頑張りだったような気がします。しかも報われない頑張りでしたし(笑)。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報
 

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(47号)に読み切り『湖賊』作画:久世蘭)が掲載されます。
 この作品は、今週号で選考結果が発表になった、「十二傑新人漫画賞」04年8月期の佳作&十二傑賞受賞作。作者の久世さんは勿論これがデビュー作となります。講評を読む限りでは、多少画力偏重の嫌いがあるようですが、いきなり週刊本誌に掲載されるという事は、それだけ編集部の期待が大きいという事なのでしょう。
 また、名前をgoogleで検索してみたところ、久世さんのお兄さんと思われる人がとあるBBSに宣伝書き込みをしていたのを発見しました。それによると久世蘭という名前はペンネームで、さらに久世さんはこのお兄さんの妹さん、つまりは女流作家であるようです。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(47号)に読み切り『ジンの怪』作画:大須賀めぐみ)が掲載されます。
 大須賀さんは02年春発売のルーキー増刊でデビュー。これまでに月刊増刊で02年11月号、03年2月号に読み切りを、03年12月号から04年2月号まで短期連載を経験しています。週刊本誌は今回が初登場で、最近「サンデー」で目立つ、連載を目指す若手作家さんのトライアル的な新作掲載のようですね。

 ★新人賞の結果に関する情報

第17回ジャンプ十二傑新人漫画賞(04年8月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作&十二傑賞=1編
(週刊本誌47号に掲載決定)
  ・『湖賊』
   久世蘭(23歳・神奈川)
 《村田雄介氏講評:画力があり、仕上げも非常に丁寧。主人公たちの動機付けがもっと明確に示されていると、さらに話の中に入りやすかったように思う。》
 《編集部講評:セリフ、解説など文字が多いためにテンポ良く読み進められない印象がある。作った設定に振り回されるのではなく、思い切って削ぎ落とす努力もしていきたい。》
 最終候補(選外佳作)=11編

  ・『革命時代』(=審査員特別賞)
   柏原風太(17歳・大阪)
  ・『忘れていたモノ』
   杉田尚(22歳・北海道)
  ・『桃鉄』
   横田卓馬(18歳・静岡)
  ・『火星遊記』
   高山憲弼(23歳・大阪)
  ・『探偵野郎』
   手羽先チキン(21歳・東京)
  ・『Carry Out!!』
   よーし(23歳・京都)
  ・『天使たちの本音』
   桜井竜矢(19歳・宮城)
  ・『人助 -じんすけ-』
   杉江翼(17歳・富山)
  ・『ハゲたあの日』
   三原健(17歳・群馬)
  ・『BEYOND』
   早川魚兎(17歳・宮城)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎最終候補の杉田尚さん…03年10月期「十二傑」でも最終候補。04年3月期「十二傑」にも投稿歴あり。
 ◎最終候補の高山憲弼さん…03年8月期「十二傑」で最終候補、03年2月期「天下一漫画賞」で編集部特別賞
 ◎最終候補の三原健さん…04年1月期「十二傑」にも投稿歴あり。

 8月期は佳作1編の他に、最終候補11編という“大盤振る舞い”。ただ、10代後半の若い応募者を他誌に奪われないために、最終候補のボーダーラインを下げて囲い込んだような節もありますね。まぁ編集部サイドにしてみれば、ここから1人モノになれば御の字…ということなんでしょうが。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…1本
 「ジャンプ」:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年46号☆

 ◎読み切り『セイテン大帝』作画:草薙勉

 ●作者略歴
 資料不足のため、生年月日・年齢は未確認。
 確認出来る範囲での「週刊少年ジャンプ」系マンガ誌における最古のキャリアは「赤マル」99年春号掲載の『P.K. ―アタッキングキーパー―』。しかしこの時にはデビュー作家紹介のページが無く、別ペンネームでの活動歴の存在も考えられる。(「赤マル」97年冬号に草薙奈央というペンネームの作家がデビューしているが、関連性は不明)
 その後、週刊本誌00年52号に『バンドネオン☆ヘッド』を発表するも、以後はキャリアが途絶えていた。今回は約4年ぶりの復帰作ということになる。

 についての所見
 まず、背景処理や動的表現など、マンガの記号としての絵を描くだけの基本的技術はちゃんと備わっていると思います。キャラクターの描き分けも出来ていますし、コマ割りや構図の取り方も“年の功”でしょうか、随分と手慣れているように感じました。

 ただ、この作品に関しては、そのような作者の持つスキルの高さの割に違和感が否めない絵柄でもあり、手放しで高い評価をつけるのには躊躇を覚えます。
 まず人物キャラの造型。どのキャラも顔の輪郭と目・鼻・口のバランスが合っていない上、アングルによっては輪郭のデッサンが狂って見える場面もありました。喩えは悪いですが、モチベーションの下がったベテラン作家が中途半端にアシ任せにしたような絵柄に見えて仕方ありませんでした。
 そしてそれ以上に気になるのがディフォルメ表現や各種特殊効果のセンスが余りにも古臭いという事。果たしてこれを作品の良し悪しを判断する材料に入れて良いのかどうかは難しいところですが、それでも全編に渡って最近のトレンドでは“悪しき旧習”としてオミットされてしまった技法を全編で矢継ぎ早にカマされては、さすがに食傷してしまうというものです。

 ストーリー&設定についての所見
 絵と同様、こちらもマンガのストーリーテリングにおける基本的なスキルは感じられる作品ではあります。プロット、挿話の挟み方、見せ場での演出など、いくつかの箇所では「お、この辺はさすがにプロだな」と思わせる点がありました。

 しかし、それらの長所を帳消しにして余りある大きな欠点が3つばかりあり、そのため結果的にこの作品を失敗作たらしめてしまっているように思えます。
 まず1点目は主人公とヒロインのキャラクター設定。読み手の感情移入を喚起したり、思わず応援したくなるような要素──端的に言うと「憧れるほどの強さと、共感出来るような弱み」──が相当不足しているような気がするのです。乱暴でバカで作者の都合の良い時だけ察しが良い主人公と、さとう珠緒並に計算高い腹黒ヒロインで、魅力的なお話を作るのは至難の業でしょう。
 で、次の点は脚本の拙さ。回りくどい説明的セリフの連発もそうですが、言語センスがいかにも泥臭いというか、どうにも工夫が無いように思えてなりません。もっと短いセンテンスの決めゼリフを練りに練る必要があるでしょう。
 そして最後の3点目はドタバタ系ボケ・ツッコミギャグの量的過剰です。このドタバタ劇がまたいかにも古臭いという事はとりあえずさておいても、これに費やしたページそのものが多過ぎではないでしょうか。そのせいで51ページ作品にも関わらず、ストーリーそのものは酷く単純なパワープレイに終始してしまいましたし、何よりも主人公の擬似スーパーサイヤ人化に説得力を持たせるための“ミニ過去編”が不十分になってしまったように感じられます。
 この他にも、メイン設定を敢えてヤヤコシくしてまで『西遊記』に絡める事に果たして意義があったのかどうかなど、疑問点を挙げれば枚挙に暇がありません。正直な所、新人賞の講評でありがちな「ストーリーや設定に凝るのも良いが、まずは魅力的なキャラクターを」という注文を敢えてつけなければならないほど、クオリティの低い作品と言わざるを得ないでしょう。

 今回の評価
 最低限のスキルは身に付いているものの、全体の完成度としては新人賞最終候補クラスの失敗作…という事で、評価はB−とさせてもらいます。しかし、4年のブランク故にこうなったのか、それとも4年間の雌伏をもってしてもここまでだったのか……。どちらにしろ、過ぎ去った年月は余りにも重いですね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 何か、今週号の掲載順はかなりトリッキーですねぇ。いくらなんでも『銀魂』『リボーン』は高過ぎるような……。「ジャンプ」では、アンケート結果の精度を増すために、たまに掲載順を普段以上にランダムなものにする時があるようですが、果たしてどうなんでしょうね。

 そんな中、連載5周年記念の巻頭カラー『NARUTO』。いやでも、もう5年ですか。まったく、最近の「ジャンプ」作品はストーリー展開が遅くなりましたよね。5年234回の連載で、未だに佳境どころか話全体のヤマ場すら見えて来ないというのは、一体どんなもんなんでしょうか(笑)。この作品、似たタイプのシナリオである『聖闘士星矢』で言うと、まだ十二宮編に入ってない感じですからね。ここから最後、ちゃんと幸せな形で完結出来るのか、やや心配では有ります。

 心配といえば『BLEACH』。いつも言ってますが、この見せ場でこれ程にぞんざいな扱いを受けるメインヒロインってのもどうかと思うんですけどね(笑)。折角の主人公との再会シーンがあんなにアッサリ……。

 『アイシールド21』では、食い放題のコスプレ焼肉屋という、全く採算性を無視した有り得ない設定が実に羨ましい(笑)。現実にあったら、今回の件が無くても絶対1年保たないような店ですね絶対。
 しかし、ノーモーションでいきなり恋愛話始めてる“女子マネ卓”が妙に生々しいと言うか、新鮮と言うか。ウチの3人娘も、駒木の見てない所ではあんな風に盛り上がってるんでしょうかね(笑)。

 当講座の談話室(BBS)でも話題になった『D.gray−man』の新展開、いかにもテコ入れしてみました、みたいな感じのエピソードですが、連載当初のアレな設定に固執されるよりは随分マシなんじゃないでしょうか。
 しかし、『銀魂』といい『リボーン』といい、最近の「ジャンプ」新連載作品は2クール〜3クール目あたりでのテコ入れと軌道修正が実に巧みで頼もしいですね。そういう作品が3年、4年と続いてしまうのは勘弁して欲しいですが、どうせ長いこと読まされるのなら、一定以上のクオリティは保った状態で読みたいですしね。

☆「週刊少年サンデー」2004年46号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「生きている間に『これだけはやっておきたい!』という事は?」。
 当然と言うか、回答はバラバラになりましたね。スケールの大きなものから小さなものまで、まさに十人十色といった感。にしても、「身辺整理」ってのは、まるでもうすぐ死にに行くようで少し怖いですよ高橋留美子さん(苦笑)。
 ちなみに駒木は……候補は結構あるんですが、とりあえずさしあたっては「万馬券的中」「天和または地和和了」の2つを挙げておきます。まぁ前者の方は3連単が導入されてからグッとハードルが低くなったんですけどね。麻雀では、かつて配牌3面待ちテンパイであわや地和…という事があったんですが、残念ながら第一ツモが“前後賞”でダブリー止まり。あれは悔しかったですね。

 さて、今週で『うえきの法則』が遂に最終回となってしまいました。しかし最近の「サンデー」は、まだ余力の残ってる中堅どころをガンガン切っていきますね。まるでそれほど古くない家がシロアリに柱を食われてガタガタになっていくような……。まぁまだ大黒柱が残ってるのが救いではありますが。
 で、『うえき』ですが、序盤から中盤にかけては、シナリオの中身やキャラクターの心情描写そっちのけの“底抜け脱線ゲーム”的戦闘ばかりが目立って、正直言って薄っぺらい印象が否めませんでした。が、ここ最近は徐々にではありますが、キチンとした人間ドラマを描かれるようになっていただけに、このタイミングでの打ち切りっぽい流れでの最終回は残念でなりません。ましてや、すぐ後から新連載があるというわけでも無いのに……。福地さんも今回は本当に無念だったでしょうが、是非とも次回作では、『うえき』を通じて身につけた実力を遺憾なく発揮してもらいたいものです。
 最後に総括評価。連載当初から2年ぐらい続いた“低迷期”の分を減殺しなきゃならないので、ここは厳しくB+寄りとしておきます。

 ……他の作品についても色々述べたかったんですが、ちょっと余裕が無くなりました。とりあえずは、また来週という事で。では。
 あ、勿論、土曜深夜には競馬学特論がありますので、そちらも宜しく。

 


 

2004年度第52回講義
10月8日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第2週分・合同)

 今週も講義が遅くなってすいません。この講座以外の生活で疲れ果ててしまってました(苦笑)。最近は4月当初のような深刻な精神的ストレスからは解放されつつあるのですが、この度は中間考査直前の修羅場にヤラれてしまいました。「試験問題作成も同時に3つ以上抱えると脳味噌が悲鳴を上げる」というトリビアを発見したのが収穫といえば収穫ですが、明日どころかずっと役に立たないダメ知識です。
 1年前にモデム配りをやってた頃も色々と疲れてた記憶はあるんですが、やっぱり頭の使う頻度と密度が余りにも違うと疲労の度合いも違って来るようで。
 巷には「ゲーム脳」だの「メール脳」だの妄言をのたまわってらっしゃる学者さんがいらっしゃいますが、次は「モデム配り脳」の研究を進めて欲しいところであります。脳波測定したら、多分期待通りの結果が出て来ると思います(笑)。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報
 

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(46号)に読み切り『セイテン大帝』作画:草薙勉)が掲載されます。
 当講座の開講以来、聞いた事の無い作家さんの名前だなぁ…などと思ってちょっと調べてみますと、前回の作品掲載は週刊本誌00年52号に掲載された『バンドネオン☆ヘッド』とのこと。言われてみれば、確かにそういうタイトルのサッカーマンガを読んだ記憶がありますが、約4年ぶりの復帰作という事になるんですね。

 なお、「ジャンプ」では来週号から『スティール・ボール・ラン』が2週間だけ復帰するようです。

 

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」:新連載1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

「週刊少年ジャンプ」2004年45号☆

 ◎読み切り『みえるひと』作画:岩代俊明

 ●作者略歴
 1977年12月11日生まれの現在26歳
 同人での創作活動を経て、03年下期「ストーリーキング」マンガ部門で準キングを受賞し、今作と同タイトルの受賞作が04年2月発売の「青マルジャンプ」に掲載され、デビュー。
 その後は「赤マル」04年夏号にを発表。
今回はデビュー作のリメイクで初の週刊本誌登場となる。

 についての所見
 残念ながら今回は「時間が厳しくキツかった(巻末コメントより)」ためなのか、前作・『狗童』に比べると全体的に仕上がりが粗かったように思えます。各所に微妙なデッサンの歪みや動的表現の甘さなどが見え隠れし、中でも人物の表情の変化もぎこちなかったのが気になりました
喩えて言うなら、東南アジアに発注した動画枚数の足りてないアニメみたいな感じで、「もう少し手間をかければキチンと出来るはずなのになぁ」…というのが実感ですね。
 あと、これは全く個人的な主観になりますが、敵役である悪霊のデザインの“異形”っぷりが、デビュー作のそれと比べると迫力不足だったような感も。絵柄の変化と(中途半端な)実力の向上が、こういう画力よりもセンスが要求される部分で良くない影響を与えているのかも知れません。

 ストーリー&設定についての所見
 まず特筆すべき点は、作品全体の“柱”ともなっている高度なビジュアル&叙述トリックでしょう。序盤から巧みに伏線を張り巡らし、「意図的に読者に誤解を与える」という難しい課題をクリアしました。
 それに加え、キャラクターの描写や設定の提示を全てストーリーの中で消化しようとする姿勢にも好感が持てます。(もっとも、そのために主人公のセリフがやや説明的で長くなり過ぎた嫌いもあるのですが……)

 しかし今回の作品に関しては、大掛かりなトリックを成功させるために相当の無茶をやってしまったような感があります。まず、悪霊が姫乃の親戚を装う必然性がありませんし、OL・美也子の地縛霊の言動もトリックのネタバレを避け、更にホラー独特の“雰囲気”を出すためとは言え、余りにも不自然で回りくど過ぎた印象が強く残りました。この辺り、エンターテインメント要素(分かり易い“面白さ”)とミステリ要素(謎めいた“面白さ”)との相性の悪さがモロに出てしまったのかな…という感じです。

 今回の評価
 トリックそのものの発想は非常に良かったと思うのですが、それを成立させるための手法が、腰の曲がった老人の背を伸ばすために背骨をバキバキに折ってしまうような強引なものだったのが……。結果、全体的な完成度としては物足りないものになってしまったように思えます。
 今回の評価は絵の減点分を少し差し引いてB寄りB+。岩代さんは演出面では高い才能を持っているのですから、ミステリ系よりも純粋なエンターテインメント系の作品を描いた方が存分にポテンシャルを発揮出来るような気がします。次回作は『狗童』路線の作品でチャレンジしてもらいたいですね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週号の私的ハイライトは、「なんか明らかに後付けっぽい設定出たー!」…などと、大亜門さんのマンガのような雄叫びが出そうな『アイシールド21』でした。
 何事にも用意周到な稲垣理一郎さんですから、こんな伏線を張った以上は後々の事までキッチリと考えてるんでしょうが、それにしてもこのタイミングで提示する必要のある事なのか、ちょっと今後に注目です。
 注目と言えば、各チームのマネージャーの描写を必要以上に頑張ってるのも注目と言うか、「村田さん、アンタも好きねえ」と言うか(笑)。でも、こういうレヴェルの高い遊び心は駒木も嫌いじゃありません。

 あと巻末コメントでは、連載作家さんたちの相変わらずの日常生活の不健康さ&慎ましさに思わず苦笑い。特に澤井啓夫さん「唐揚げ弁当とサラダ」あたりはヤフーのモデム配ってる人間がよくやる組み合わせなんで、懐かしかったりも(笑)。でも、唐揚げどころか、この手の店屋物の弁当はそもそも体に良くないので気をつけた方が宜しいかと。
 そういや、クソゲーム屋のクソ三男は毎日近くの弁当屋のカレー弁当を食ってました。相当栄養のバランスが悪かったのか知りませんが、日に日に情緒不安定になっていったのを思い出します。カレーの具以外の野菜食ってる所を見た事無かったです。多分、彼の脳の細胞は1人前350円のカレーで構成されてたんでしょう。

 

「週刊少年サンデー」2004年45号☆

 ◎新連載『ハヤテの如く』作画:畑健二郎

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 資料不足のため、生年月日及び年齢は不明。
 久米田康治さんのスタジオでアシスタントを務めながら作家を志し、02年10月発売のルーキー増刊に読み切りを発表し、これがデビュー作と思われる。
 03年に入ってからは月刊増刊での活動を本格化し、2月号で読み切りを、7月号から11月号までは『海の勇者ライフセイバーズ』を短期連載した。
 週刊本誌には04年10号に今作と同タイトルの読み切りを発表しており、今回はこれが連載化された形になる。

 についての所見
 
2月の読み切り版と見比べてみたのですが、絵柄に大きな変化はありませんでした。短期連載も経験しているだけあって必要最低限の描写は出来ており、決して落第点というわけではないのですが、線が未だ洗練されておらず、やはり他の連載陣に混じると見劣りしてしまいまう印象です。
 具体的に気になるポイントを挙げるとすれば、少年・少女キャラの頭部(顔を含む)の造型が余りにも“マンガチック”で不自然という事でしょうか。しかも、そんな不自然なところから更に粗っぽいディフォルメを施したりしているものですから、駒木の目には余計不自然なモノに映ってしまいました。
 これは恐らく標準的な手法──リアルタッチの顔をディフォルメしてマンガ的な顔の絵にする──で描いたのではなく、いきなり初めからマンガ的な人間の絵を描こうとした結果でしょう。専門的な絵の修養を積んだ形跡が殆ど感じられない、絵描きとしてのバックボーンが脆弱な絵であるように思えてしまいました。
 あと、これも読み切り版からの課題なのですが、スクリーントーンの使い方がとても雑なのが気になって仕方ありません。トーンのチョイスを間違っているのか、処理が甘いのか、ともかくも平板な絵に見えてしまいます。一方でカラーの着色はアニメのセル画っぽく上手く塗れているのが色々な意味で不思議なんですが……。

 ストーリー&設定についての所見
 とりあえず作品の全体像を一言で表すと、「肩の力を抜いて読める、大変軽いノリのラブ(?)コメディ」…という事になるのでしょうか。一応、ストーリーは破綻の無い程度に転がっており、「七面倒臭い事を考えずにマンガを楽しみたい」という読者層には、丁度心地良い“軽さ”なのかも知れません。
 ……とはいえ、当ゼミはマンガについて積極的に七面倒臭い事を考えて楽しむ事を旨としているわけですから、評価も自ずと異なって来ます。すなわち、「肩の力を抜いて読める」と言うよりも、「余りにもヌル過ぎて物足りない」という風に。

 普通、この手のノリの軽いコメディは、実際の日常生活でありがちな光景、つまりベタな部分を抽出・強調してシナリオを作ってゆくものです。そうやって、あり得ない出来事を描きつつ現実感をなるべく損ねないお話を作ってゆくわけですね。
 しかし、この作品のシナリオ・設定はちょっと違います。実際の日常生活でありがちな光景ではなく、マンガの世界でありがちな光景を抽出・強調して作り上げられているため、今度は物凄くありがちでベタベタな割に現実感が極めて薄くなってしまっているのです。それこそ先に「絵に関しての所見」で述べた、余りにもマンガ的過ぎて逆に不自然になってしまった登場人物の顔の造型のように。
 ……こういうお話の作り方、他の作品でも全く無いわけではありません。ただそれは、その「マンガとして余りにもベタベタな話」や、それを描く事自体を笑いのネタにしてしまう、つまりパロディとして描く場合がほとんどで、だからこそ許されるやり方でもあります。例えばラブコメマンガの世界には、

“遅刻しそうな主人公(♂)が食パン加えながら疾走
 ↓
 曲がり角で同じように走って来た女の子と出会い頭に衝突、ついでに主人公が勢い余って女の子の股間に顔を埋めたりする
 ↓
 女の子が「この痴漢!」とかブチ切れて言い争いに ↓
 主人公、その場は何とか振り切って教室に着いてみると、転校生がやって来るという話で持ちきり
 ↓
 そこへ担任が大人しそうな女の子を連れて教室に 
 ↓
 その女の子が一通り自己紹介を終えた辺りで、「あー! アンタ朝の痴漢!」”

  ……という、かの『エヴァンゲリオン』TV版最終回でも使われた黄金パターンがありますが(しかしこれ、喋ってて恥ずかしくなりますなぁ)、現在のマンガを取巻く状況では、このストーリー展開は「うわー、まるでマンガみたいなお話ね」と登場人物に言わせるなりして“ネタ認定”させないと使えません。何故なら、元々は日常の光景をディフォルメして作られたこのパターンも、マンガのパターンとして余りにも定着してしまったがために現実感が全くなくなってしまったからです。
 で、もし普通に1つのお話としてこういうベタベタなパターンを使ってしまうと、それは現実感もオリジナリティも全く無い「“寒い”作品」になってしまいます。そして、話のベタさの程度はここまで極端ではありませんが、この『ハヤテの如く』も、多分にその「“寒い”作品」の要素を満たしてた作品になってしまっているように思えてならないのです。
 そう言えば、畑さんの師匠である久米田康治さんは、“ネタ認定”させたベタベタな話で笑いを獲ったり、実在する「“寒い”作品」を暗に「これ、ネタですか?」と皮肉ってみたりする達人でした。そんな師匠から、まさかこういう「“寒い”作品」を描いてしまう弟子が現れるとは……。師匠のテクニックの本質を理解出来なかったのか、それとも師匠を真似しようとしてどこかで歯車が狂ってしまったのか、ともかくも久米田さんに『かってに改蔵』の中でイジってもらいたい作品が、ひょんな所からまた1つ増えてしまいましたね(笑)。 

 今回の評価
 色々と厳しい事を言いましたが、それでも当ゼミ評価基準・B評価の「単なる雑誌の中の1作品として割り切って読む分には、さほど問題の無い作品」という要素は満たしていると思われますので、絵の稚拙な部分を差し引いてもB−寄りBくらいは出せるんじゃないでしょうか。ただ、現状を鑑みるに、ここから大化けする可能性は低いとしか言いようが無く、これでもかなり弱含みな評価という事になりますね。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「最近、テンパったこと」。
 週刊連載作家さんに訊いても、そりゃ「いつもテンパってます」という答えが返って来るだろうな…と思ってたら、やっぱりそうなりましたね(笑)。
 駒木も基本的には仕事で麻雀で毎日テンパってますが、最近で一番“高目”のテンパイはこの前の日曜日、起きてみたら中山競馬場が不良馬場になってて急遽G1予想を差し替えなくてはならなくなった時ですかね。

 さて、では連載作品についても軽く触れてゆきましょう。

 まず、最近はネット界隈で評価が赤マル急降下中の『東遊記』について少々。確かにここ最近のテーマ性・ストーリー性の希薄なバトルに突入してからというもの、急に内容がチープになった印象は否めませんね。第2回辺りまでの内容なら、もう少しやれるかと思ったのですが……。
 この辺りが経験の浅い若手作家が見切り発車で連載をスタートさせた弱味なのか、それとも企画モノしか作れないくせに創作の主導権を放したがらない担当の作品故なのか、一度迷走を始めると打開策が見出せないで入るようです。「サンデー」のメイン読者である小・中学生のウケが果たしてどうなのかがイマイチ掴めないのですが、もし今の内容で人気も頭打ちという状況なのであれば、作品の寿命もそう長くないでしょうね。
 評価の再検討については、11月末の“年度末”に行う予定です。

 次に『いでじゅう!』。ここしばらくでは久々に林田×桃里がストロベリってるお話でした。それはそれで悪くないんですが、ただモリさんの本来の実力からすれば、そういうラブコメっぽい雰囲気の中でもキッチリと笑いを獲れるはずなんですが……。それなりのクオリティは維持出来てはいるんですが、ナニゲにスランプ気味なのかも知れません。

 で、最後は今週も『モンキーターン』。凡百のマンガなら洞口に勝たせるところで波多野2着・洞口4着という極めて微妙な結果に持ち込ませるあたり、さすがというか何と言うか。いつの間にか主役が交代してるのには思わず笑ってしまいました。しかし、このレースで一番災難なのは、選手の色恋沙汰に巻き込まれた舟券買ってる客でしょうね(苦笑)。
 さて次号からは、また波多野の女性関係をめぐるソープオペラが再開でしょうか。競艇かドロドロした色恋沙汰か。どうしてこのマンガ、「週刊少年サンデー」でやってるんでしょう?(笑)。

 ……といったところで今週はこれまで。来週は昼間の仕事が多少楽になるので、あんまり酷いスケジュールにはならないと思います。

 


 

2004年第53回講義
10月3日(日) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 スプリンターズS」

 いよいよ秋のJRA・G1シリーズが開幕ということで、当講座も久し振りに競馬学特論講義をお送りします。
 最近はすっかりマンガ評論の方に研究活動の重点がシフトしてしまいましたが、そもそもこの講座は競馬学とギャンブル社会学がメイン。今シーズンもG1レース予想は研究室メンバー総出で華やかにお送りしたいと思っております。
 ──さて、昨秋と今春の競馬学特論講義では研究室メンバーによる予想コンテストを実施して来ましたが、これは労力の割に余りにも報われない企画でしたので、一旦終了(笑)。今回からは装いも新たに、「G1予想勉強会」という新企画で皆さんのご機嫌を窺う事となりました。実際に講義を受講してもらえれば分かると思いますが、お堅いタイトルとは裏腹に、かなり脱力系の内容になっておりますので、肩の力を抜いて楽しんで頂ければと。

 ……それでは、ボチボチ講義を始めたいと思います。最後までどうぞ宜しく。


第38回スプリンターズS 中山1200芝外

馬  名(赤字は外国調教馬) 騎 手
デュランダル 池添

昨秋の短距離戦線統一王者が満を持して復活。またしても休み明けで、マイルCSにピークを合わせた調整が気になるが、地力は勿論首位争い。

シルヴァーゼット 吉田豊

クラシック戦線からスプリントに転じてから順調にキャリアを積み重ねて来た。ただし、3歳秋の休み明けでこのメンバーはいかにも厳しいか。

サニングデール 福永

前哨戦はスローペースに泣かされ3着も、一時の不振からの脱却が窺える好気配。今回がピークの仕上げで、目指すはトロットスター以来のスプリント春・秋統一王者。

ナムラビッグタイム 江田照

テンのスピードには見所あるが、3歳限定戦でも詰めの甘さが目立つ。日本を代表する快速自慢が揃ったここでは苦戦は免れまい。

カルストンライトオ 大西

勝ち鞍全てが平坦コースという超スピードタイプ。急坂の中山コースはいかにも厳しい。とにかくハナを切って離し逃げを打ちたい。

アシュダウンエキスプレス 後藤浩

今期は英G1ジュライC2着と好調。軽い馬場得意との触れこみだが、持ち時計とは4秒違う異次元の日本スプリント競馬に戸惑わないか?

カフェボストニアン 岡部幸

G1レースでの実績は物足りないが、1200mのG2、G3では2着が3回あり地力そのものは侮れず。今回は厳しい展開をどう捌くかがカギになりそう。

タマモホットプレイ 和田

年明けはクラシック候補の声も上がったが、その後は伸び悩み。夏場からスプリント戦線に転じ、ハンデ戦ながらオープンで勝ち鞍も。今回初のG1挑戦で己の真価を問う。

ゴールデンキャスト 武豊

長い低迷を脱し、小倉の夏シリーズで一気にブレイク。今回はハイペースになってどうかだが、春までとは全く別の馬である以上、無視は出来ぬ存在だ。

10 ワンダーシアトル 北村宏

重賞初挑戦がいきなりのG1とは余りにも酷。放牧明けで急仕上げ気味でもあり、今回は大舞台を体験するだけで終わりそう。

11 フェアジャグ 横山典

今期英国でG1タイトル奪取も、キャリアの大半は直線コース。小回りの中山コースに戸惑わねば良いのだが……。

12 ケープオブグッドホープ プレブル

香港ローカルG1の上位常連馬。持ち時計も外国調教馬の中では図抜けており警戒要だが、今回は大型馬の休み明け。調教の動きも目立たぬし過信は禁物だろう。

13 シーイズトウショウ 中館

調整途上の段階で完勝した函館SSは圧巻の内容。1200mでは実に安定した内容を残しており、今回も当然主力の一角。懸念材料は2戦して未勝利の中館Jとの相性。

14 キーンランドスワン 四位

相手なりの走りで勝ち切れない面もあるが、一度ハマった時の末脚は驚異的。展開にも融通が利き、鞍上の作戦次第で結果は大きく変わりそう。注目。

15 シルキーラグーン 柴田善

時折穴を開けてアッと言わせるが、ここに入るといかにもスピード・瞬発力不足。超ハイペースが予想される中で脚を貯め切れるか?

16 ウインラディウス 田中勝

ここ2戦期待を裏切り人気を落としたが、上がり3F33秒台の末脚はやはり魅力的。東京コース以外の実績乏しいのが心配ではあるが……。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 ……まずは、これまでと同じように駒木がレース展望と予想をお送りします。なお、賢明な受講生の皆さんならお分かりかと思いますが、駒木の冴えない予想に乗っかって馬券を買う事は「週刊少年マガジン」の『M・I・Q』を参考に株を買うくらい無謀ですので、どうか無茶はしないようにお願い申し上げます。

 ──というわけで、秋のG1緒戦となるスプリンターズSですが、気が付いたら主力は高松宮記念とよく似た構成になっていますね。
 叩いて復調気配のサニングデールと休み明けのデュランダルの対決というシチュエーションも同じなら、抜けたギャラントアローとテンシノキセキの替わりに、それぞれ同型のカルストンライトオとゴールデンキャストが加わって、どうやら差し・追込有利のハイペースの展開まで似たような事になりそうな感じ。しかもコースが坂のある中山に変わって、この傾向は更に強くなりそうです。逃げ馬は苦戦必至、先行馬も中団から差せる位の瞬発力があるタイプじゃないと厳しいでしょうね。
 今年は3頭参戦があった外国馬ですが、過去の実績を振り返ってみた限りでは、やはりスピードとコースの違いに戸惑って実力を発揮できずに終わってしまうケースが多いようです。特に今回のメンバーは、日本のG1に参戦して来た外国調教馬としては小粒といった印象もあり、馬券に絡める争いが出来るかどうかは極めて微妙といったところです。

 さて、次に駒木のフォーカスですが、こんな感じになりました。(注:この予想は土曜日時点のものです。雨が降ってしまったので、随分と様相が異なってしまいました。詳しくはこの後の追記を参照下さい)

◎ 3 サニングデール
○ 1 デュランダル
▲ 9 ゴールデンキャスト
△ 13 シーイズトウショウ
× 14 キーンランドスワン
× 16 ウインラディウス

 前哨戦のセントウルSでは3着に終わったサニングデールですが、敗因はスローペースと59kgの斤量によるものとハッキリしていますので、ここでは度外視して良いでしょう。また、1200mのスペシャリストであるこの馬にとって、このレースは秋シーズン最大の目標で、ここはメイチの勝負気配で挑んで来るのは明らか。中山コースに変わってデュランダルの末脚が脅威を増しますが、コンディションの差からもスプリントG1春秋連覇は濃厚と言って良いでしょう。
 ここ1年ばかり、体調に恵まれないデュランダル。しかしそんな中でも戦績が実に安定しているのは立派の一言。本質的にはマイラーで、それ故に目標は11月のマイルCSという事になるのでしょうが、ここも地力だけで勝ち切ってしまう可能性も大いにあります。
 この2強に迫る可能性を秘めているのが、前哨戦の勝ち馬・ゴールデンキャスト。春まではオープン特別で2ケタ着順を連発する頼りない馬でしたが、この夏、先行脚質にモデルチェンジしてから一気にブレイク。あれよあれよという間に重賞初制覇まで果たしてしまいました。今回はハイペースをどう捌くかという大きな課題が待ち受けていますが、未だ底が見えない現況だけに何があっても驚けません。典型的な単穴タイプの馬と言えそうです。
 4番手評価はシーイズトウショウ。1200m戦における堅実さは周知の通り。先行タイプながら脚質面でも比較的融通が効きますので、中団に追いやられても挽回出来る余地があるのが強みです。ただ、G1勝ち馬2頭を逆転するまでの地力は無いようで、余程の恵まれが無い限りは3着争いまでが精一杯のような気がします。
 その他、1着を争うまでは行かないものの、末脚勝負で馬券の圏内に紛れ込む可能性がある馬としてキーンランドスワンウインラディウスの2頭を挙げておきます。
 穴人気しているカルストンライトオは、やはり超ハイペースと最後の坂が堪えて苦戦を強いられそうです。大西騎手が他の先行馬を捌きつつ上手く御せればギリギリ3着はあるかも知れませんが……。
 馬券的には、やはり3連単を中心に。最終的にはもう少し絞りたいですが、とりあえずはフォーメーションで(1、3)−(1、3)−(13、14、16)の6点に、1、3、9のボックス6点の計12点としておきます。結構堅めのフォーカスですが、これでも万馬券になる組み合わせはゴロゴロしています。

追記:レース当日・中山競馬場ではドバっと雨が降って、なんと不良馬場になってしまいました。予想の時点では良馬場で行われるものと思い込んでいましたので、これは「エライこっちゃ」です(苦笑)。
 予想でピックアップした馬のうち、◎サニングデールは道悪巧者で全く問題無いのですが、○デュランダルと▲ゴールデンキャストは切れ味勝負のタイプだけに、不良まで悪化するとかなり厳しいと思われます。取捨選択の再検討が必要でしょう。
 また、△シーイズトウショウと×キーンランドスワンは道悪馬場での連対経験有り。×ウインラディウスは今年の京王杯SCでは稍重馬場でレコード勝ちしています。
 そして、道悪と言えば逃げ馬。ハナを切る事が予想されるカルストンライトオは昨年不良馬場でシーイズトウショウ、サーガノベル相手に逃げ切っており、これは要注意。後続が末脚を殺がれて苦しむようなら1、2着争いまで持ち込む可能性もあります。あとは外国馬ですが、最近の外国の調教師たちは日本の軽い馬場に適性がありそうな馬を連れて来る傾向があるため、この馬場はかえってマイナスではないかと考えています。

 ──それでは、駒木の出番はここまで。この後は今回からスタートする珠美ちゃんたち当講座が誇る3人娘の“勉強会”の様子をご覧頂きます。……まぁ珠美ちゃんはともかくとして、あとの2人が素直に“勉強”してくれるとは思えないんですが、とりあえずは駒木も楽しみながら様子を眺めてみたいと思います。では。


 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

順子:「3・連・単! 3・連・単! イエー!」
リサ:「イエー!(片手を突き上げて)」
順子:「リサちゃん、ノリ良いな(笑)、イエー!」
リサ:「だってオーストラリアの馬券は3連単がメインですからね、Ya----ha----!」
珠美:「…………。(「これか。私が失った“若さ”というモノはこれなのか」という思いをしみじみと噛み締めている)」
順子:「……いやー、ついにG1でも3連単ですよ。ワクワクしますねー」
リサ:「しちゃいますねー」
順子:「わたしの場合、もうどこから買っても万馬券って感じで、オッズを見るのが楽しくて楽しくて」
リサ:「ワタシなんか、イギリスと香港の馬を組み合わせに入れたらオッズが1000倍超えてましたイエー!(笑)」
順子:「イエー!(笑)」
珠美:「(机を叩いてドンドン! という音を立てて)……ハイ、そこまで! ハシャぎたくなる気持ちは分かるけど、もうちょっと真面目に勉強しましょうね」
順子:「はーい。……なんか、付属高校時代に戻った気分(苦笑)」
リサ:「ワタシも教室にいる気分です(笑)」
珠美:「駒木博士も高校でお仕事している時にはこんな苦労をしてらっしゃるのかしら(苦笑)。……ま、そういうわけで、今日からは私たち3人がG1予想の勉強会をして、その模様を受講生の皆さんにご覧頂くことになりました」
順子:「要は、これまでバラバラに予想コラムを載せていたのを1つにまとめたってことですね(笑)」
珠美:「基本的にはそういう事になるわね。でも、回を重ねていく内に、私たち3人だからこそ出来ることを色々と模索してみたいと思っているのだけれど」
順子:「珠美先輩だけならともかく、わたしとリサちゃんが入って大丈夫かな〜(苦笑)。わたしが出来ることと言ったら、博士の予想にイチャモンつけるくらいしかないですし、リサちゃんはビギナーだから座ってるだけだろうし(笑)。……あ、博士の予想はもう出てるんですよね。さっそくイチャモンつけてみようかな」
珠美:「(苦笑)……えーと、これね(と、ペーパーを手渡す)」
順子:「おーおーおーおー、相変わらず面白みの無い予想(笑)。当てに行ってるようで中途半端に穴も狙うから、結果も中途半端なんですよねー……って、ウソ、中山雨なんですか?」
珠美:「そうみたい。芝もダートも不良馬場みたいよ」
順子:「えー? わたし、ゴールデンキャストから狙おうと思ってたんですけど……」
珠美:「私だってデュランダルが本命だったのよ(苦笑)」
リサ:「ワタシはデュランダルとゴールデンキャストから狙うつもりでした(苦笑)」
順子:「うわー、幸先悪! ……どうしましょう。用意してた予想が完全に狂っちゃいましたよ」
珠美:「これは本当に作戦会議をやらなくちゃならなさそうね(笑)」
順子:「ですねー。じゃあ、とりあえず展開予想からやり直します?」
珠美:「そうしましょうか。……まず、何としても逃げたい馬はナムラビッグタイムとカルストンライトオだけど、スピードはカルストンの方ね。これがハナを切って、『行ける所まで行く』という感じで逃げるでしょうね。そして、それを追いかける、本当なら3〜4番手までにつけたい先行タイプの馬が、2番手待機になるはずのナムラビッグタイムも含めて7頭」
順子:「それじゃあ超のつくハイペースですね」
珠美:「常識的に考えたらそうなるわね。12〜3番手からサニングデールが差して来て、更にその後ろ、最後方からデュランダルが追い込んで来る……という感じかしら。でも、馬場がここまで悪くなったら、ハイペースだからと言って絶対に不利というわけでは無くなるから、色々と考えなきゃならないでしょうね」
リサ:「色々と?」
珠美:「ええ、各馬の道悪適性にもよるけど、一般的には逃げ・先行が有利で差し・追込は不利になるわね。だから私が本命にしたデュランダルはちょっと厳しそうね(苦笑)」
順子:「ゴールデンキャストはどうでしょう?」
珠美:「本格化・先行脚質になってから道悪の経験が無いので断言できないけれど、関係者の人たちは『良馬場で』と願ってたみたいね。博士のおっしゃる通り、デュランダルとゴールデンキャストを本命にするのはかなりの冒険じゃないかしら」
順子:「……となると、やっぱりサニングデールですか?」
珠美:「あとはカルストンライトオ、シーイズトウショウ、ウインラディウスね。人気薄ではシルヴァーゼット、シルキーラグーン、ナムラビッグタイムあたりも稍重までなら好走したことがあるわね」
リサ:「イギリスと香港の馬はどうですか?」
珠美:「やっぱり日本の競馬に合うように良馬場向きの馬が来てるみたいね。道悪になると厳しいんじゃないかしら」
リサ:「ワタシ、今週はギブアップです(苦笑)。狙ってたほとんどの馬が道悪苦手みたいですから、もう諦めた方が良さそうですね〜」
順子:「じゃあ、わたしはゴールデンキャストの評価を下げて、カルストンライトオ、シーイズトウショウから狙ってみます。もちろん3連単で、フォーメーション(5、13)−(3、5、9、13)−(3、5、7、9、13、14)の24点。全部万馬券です!(笑)」
珠美:「私はサニングデールから……」
順子:「あ、駒木博士と一緒の本命ですね(笑)」
珠美:「……順子ちゃん、世の中には思っていても口にしてはいけない事があると思うの(笑)」
順子:「失礼しました(苦笑)」
珠美:「私は手堅く馬連で、3-5、3-13、5-13、1-3、3-9、3-14の6点。こういう不安要素の多い条件だから、順子ちゃんもあんまりお小遣い張り込んだらダメよ。今日の場合は、リサちゃんが一番賢いのかも知れないわね(笑)」
リサ:「ほめられちゃいました(笑)」
順子:「というか、控除率25%弱のギャンブルやってる時点で、もう不安要素満載なんですけどねー(笑)」
珠美:「ま、それも言わない約束よね(笑)。……というわけで、一応の結論も出たし、今日はここまでということにしましょうか。お疲れ様でした」
リサ:「オツカレサマでしたー」
順子:「おつかれでしたー」
珠美:「それでは受講生の皆様、失礼致します。最後まで有難うございました」


スプリンターズS 成績

1着 カルストンライトオ
2着 1 デュランダル
3着 12 ケープオブグッドホープ
4着 16 ウインラディウス
5着 15 シルキーラグーン
以下、おもな人気上位馬着順
7着 13 シーイズトウショウ
9着 サニングデール
11着 ゴールデンキャスト

単勝5 850円/馬連1-5 2400円/馬単5-1 4010円/3連複1-5-12 22570円/3連単5-1-12 109810円

 レース解説》
 果敢にハナに立ったカルストンライトオが、先行集団にやや絡まれながらも1馬身弱のリードを保ったまま直線へ。内ラチ沿いに待機していた差し勢が追撃を開始しようとしたところ、失速した先行・好位勢が壁になってしまい、サニングデールやアシュダウンエキスプレスといったあたりはここで万事休す。
 このゴタゴタの間に悠々とセーフティリードを確保したカルストンライトオは楽々と逃げ切り。3コーナー辺りから大外捲りのロングスパートでデュランダルも懸命に迫ったが、ビハインドはあまりにも大きく、4馬身遅れの2着を確保するのが精一杯。3着には馬群を割って突っ込んだ香港のケープオブグッドホープ。4着、5着は外から流れ込み。
 シーイズトウショウは道悪云々よりパワーが要求される馬場になったのが堪えたようだ。ゴールデンキャストはスパートしようとしてノメったとの事で、やはり道悪は良くないのだろう。

 


 

2004年度第52回講義
10月1日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・合同)

 1週間のご無沙汰でした。何とか週末実施が出来ましたが、週前半は久々に極度の大不調に陥りまして、比較的余った時間を完全に棒に振ってしまいました。
 今週は週末に久々の競馬G1予想もありますし、早いところゼミの方を片付けてしまいたいと思っていたのですが……。何か最近気力がめっきり減退してしまったように思えます。やらなくてはいけない事はたくさん残っているんですけどねぇ。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報
 

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(45号)に読み切り『みえるひと』作画:岩代俊明)が掲載されます。
 この作品は、今年2月発売の「青マルジャンプ」に掲載された、岩代さんの「ストーリーキング」準キング受賞作と同タイトルの新作。ただ、予告カットのキャラは“旧版”では見かけなかったものですので、ある程度の設定変更が施されていると思われます。
 なお、岩代さんは「青マル」、「赤マル」04年夏号に続く3度目の読み切り掲載で今回が週刊本誌初登場。連載獲得へ向けてのチャンス&正念場となりましたね。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(45号)より『ハヤテの如く』作画:畑健二郎)が新連載となります。
 畑さんは元・久米田康治さんのアシスタント。月間増刊で短期連載を経験した後、今年2月に今作と同タイトルの読み切りを週刊本誌に発表。今回はその作品の連載化という事になります。
 ただ、2月に掲載された読み切りは、お世辞にも週刊連載に相応しいクオリティにあるとは思えなかっただけに、今回の抜擢は正直驚きです。言葉を選ばずに言えば、「『改蔵』打ち切ってこれですか」と(苦笑)。
 まぁ読み切り版で露呈した画力とストーリーテリング力の拙さが、この半年余りの間にどこまで修正出来ているか、お手並み拝見といったところですね。「先週は的外れで失礼な事言って申し訳有りませんでした」と謝らなくちゃならないくらいの作品であって欲しいんですが……。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り1本/代原読み切り1本
 「サンデー」:読み切り1本
 《お断り》今週の「チェックポイント」は時間等の都合により休みます。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

「週刊少年ジャンプ」2004年44号☆

 ◎読み切り『伝説のヒロイヤルシティー』作画:大亜門

 ●作者略歴
 1977年5月29日生まれの現在27歳
 持ち込み活動の末、02年4月期「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りした後、週刊本誌02年34号にて代原で暫定デビュー。同年44号に2度目の代原掲載を果たした後、「赤マル」03年春号にて『スピンちゃん試作型』で正式デビュー。
 この『スピンちゃん』シリーズは、週刊本誌でも03年40号と48号の2回、それぞれ題名を微妙に変えつつ新作が掲載され、最終的に04年16号から『無敵鉄姫スピンちゃん』のタイトルで週刊連載化。ただし、この連載は人気不振のため1クール11回で打ち切り終了となる。
 今回は『スピンちゃん』終了以来の復帰作。

 についての所見
 全体的な印象は『スピンちゃん』の頃と変わりませんね。ストーリー系の連載作品に混じるとさすがに見劣りしますが、それでもギャグ系作品としてなら十分及第点の出せるクオリティだと思います。
 今回気が付いた点としては、主要登場人物のデザインを極端に差別化した所ですね。これはペンタッチが単調でインパクトに欠けるという短所を補うためだと思うんですが、ギャグ系作品の持つ“非常識の許容範囲の広さ”を上手く活用しているんじゃないでしょうか。まぁ、本当は短所そのものを解消させる努力をするのが一番なのですが……。

 ギャグについての所見
 テクニック面については何も口を挟む事が無いくらい良く出来ていると思います。大亜門さんは暫定デビュー当時から、既に新人離れした熟練度の高い技術を身に付けた作家さんだった記憶があるのですが、ここに至って早くも完成の域に達したとさえ言えそうです。
 
“間”の取り方やセリフ回しの上手さ、インパクトを持たせる演出技術の高さなど、とても1クール打ち切り作家とは思えない程。また、ページ辺りの“ネタ密度”も凄まじいまでに濃く、「キツめのスケジュール」(作者巻末コメントより)を全く感じさせない、質・量共に兼ね備えた一級品に仕上がっていますね。
 そして、もはや大亜門さんのアイデンティティとも言えるパロディの冴えも健在「天下一漫画賞」で最終候補に残った際、月替り審査員の矢吹健太朗さんから「既存の作品の影響が強すぎる」という、趣深い講評を頂戴した事のある大亜門さんですが、今やそれすらもギャグになってしまった感もありますね(笑)。

 ただ、大亜門さんの作品の場合、長所がそのまま短所に直結してしまう面も否定し切れません。
 例えば、完成度・安定性の高いテクニックは“レヴェルの高いワンパターン”となってメリハリを欠く結果に繋がっているように思えますし、作風が完全に固定されているため、「良し悪しは別にして、この作風についていけない」という読者を延々と放置してしまう事になるでしょう。また、マニアックなパロディの連発は、コアな読者から強い支持を集めると同時に、ライト読者層の支持を不用意に落とす“副作用”も生じるはずです。(『プリキュア』と『三つ目がとおる』のネタなんて、全読者の何%が理解出来たんでしょうね^^;)
 この辺りの、読者層を不用意に限定してしまう要素を如何に削っていくかが、今後、大亜門さんが「ジャンプ」週刊本誌で活躍するためのカギとなるのではないでしょうか。

 今回の評価
 欠点も認められるものの、それも「過ぎたるは及ばざるが如し」的な短所であって、高い評点を与えるのに躊躇するものではありません。
 今回の評価はA寄りA−としておきます。先に述べた通り、作品のクオリティと人気が整合しない作品の典型例になりそうな気もしますが、大亜門さんには是非とも実力相応のヒットをブチかましてもらいたいものです。


 ◎代原読み切り『メガネ侍』作画:彰田櫺貴

 ●作者略歴
 今回が代原による暫定デビューとなる新人という以外、詳細なデータは不明。「ジャンプ」系新人賞の受賞者(最終候補者等含む)にも名前は確認できず。

 についての所見
 人物キャラの造型そのものがギャグのネタになっている分、画力をアピールしきれなかったかも知れませんが、線そのものは安定していますし、女の子キャラもなかなか可愛く描けていると思います。ギャグ系作品に求められる画力は十分保てていると言って良いでしょう。
 欲を言えば、もうちょっと背景処理や特殊効果の技術をつけてもらいたいですね。しばらくアシスタント修行するなどして技術に磨きをかけてもらいたいところです。

 ギャグについての所見
 大亜門さんの『ヒロイヤルシティー』を先に読んだせいかも知れませんが、15ページの割にネタの密度が薄いのが、まず気になりました。これは多分、1コマあたりの情報量が少ないためだと思われるのですが、全体的に随分と淡白な印象を受けてしまいましたね。
 また、ギャグそのものに関しては、ツッコミのタイミングが悪い上に単調だったように思えるのと、ネタとネタの連携が唐突で強引過ぎるところの2点に物足りなさを感じました。ネタの繋がりが無茶苦茶な不条理系ギャグを志向するなら、下手にストーリー仕立てにしてページを浪費するのではなく、腹を括って最初から『ボーボボ』のようにハジケてみた方が良かったのでは…と思います。

 とはいえ、“間”の取り方やシュールっぽいネタ運び、更には何気なく挟まれている小ネタなど、ギャグセンスが窺える部分も随所に見受けられます。単なる「載っただけ」の代原とは一味違うような気もしますね。もっとも、幅広い支持を得るためには、もう少し理詰めで読者を笑わせる配慮が必要だとも思いますが。

 今回の評価
 商業誌掲載作品としての及第点には少々足りないという事で、B寄りB−としておきましょうか。ただ、荒削りなセンスが磨かれて来ると、大化けする可能性もある作家さんだとは思います。

「週刊少年サンデー」2004年44号☆

 ◎読み切り『88の陣八』作画:桜井亜都

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 資料不足のため、生年月日及び年齢は不明。

 桜井崇子名義で月刊増刊03年6月号&9月号に読み切りを発表しており、今回が週刊本誌初登場となる。

 についての所見
 
これが週刊本誌初登場の新人さんとは思えない、無駄な線を排した完全“プロ仕様”の絵ですね。老若男女の描き分けもバッチリ出来ていますし、背景処理や特殊効果にもソツがありません。これであと少し“陰陽”のコントラストがあれば完璧なのですが、現状でも連載作家級、新人・若手としてはトップクラスのクオリティは既にあると思います。

 ストーリー&設定についての所見
 まず特筆すべきなのは、伏線を巧みに使いこなし、やや複雑なストーリーラインをほぼ矛盾無くまとめた高い技術でしょう。今回のシナリオは下手をすると悪性の御都合主義にハマってしまう危険性もあっただけに、このファインプレーは見逃せない部分でした。
 あと、バトルシーンの駆け引きも凝っていて良かったですね。バトルに限って言えば、今回のレヴェルを維持できるなら連載でも十分やっていけると思います。

 ただ、これらの長所を打ち消して余りある欠点だと思えたのが、プロットの貧弱さと登場人物のキャラクターの弱さ。ページとエピソードの分量のバランスを考えたら止む無くこうなってしまったのだと思うのですが、ヒトダヌキとその妖術の設定説明と、その設定を踏まえたバトルを1戦やっただけで終わってしまったような印象がありました。
 もしここに、登場人物のそれぞれの行動に対する動機付け(が出来る程度のキャラ立ち)と、作品全体を通じたテーマに基づく一本筋の通ったプロットがあれば、それこそ年間を通じての傑作になるくらいのポテンシャルはあったと思うのですが……。非常に惜しいですし、残念です。

 今回の評価
 評価はA−寄りB+。ただし、素質・実力は間違いなくA級です。あとは、桜井さんの才能をフルに発揮できるだけのシチュエーションに恵まれるかどうかといったところで、未だやや停滞気味の「サンデー」で、近い内に活躍してくれる事を期待したいと思います。


 ……といったところで、今週はここまで。(あんまり楽しみにしてらっしゃる方はいないと思いますが)「チェックポイント」お休みして申し訳有りません。10月からは何とかもう少し頑張れるよう、努力してみます。では。


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