「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

11/27(第69回) 競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 ジャパンCダート&ジャパンC」
11/26(第68回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(11月第4週分・合同)
11/21(第67回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(11月第3週分・後半)
11/20(第66回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 マイルCS」
11/18(第65回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(11月第3週分・前半)
11/13(第64回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 エリザベス女王杯」
11/12(第63回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(11月第2週分・合同)
11/5(第62回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第6週/11月第1週分・合同)
11/2(第61回) 
歴史学(一般教養) 「緊急企画・アメリカ大統領選挙“名勝負”選」

 

2004年第69回講義
11月27日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 ジャパンCダート&ジャパンC」

 朝からバタバタしまくって何とか表紙データを入稿完了。ここの所、馴れない事の連続で神経が参りまくっている駒木ハヤトがお送りする競馬学特論であります。

 さて、この週末はご存知の通り、例年は土・日に分けて開催している「ジャパンカップ」の名の付くG1レース2競走を、より集客と売上げが見込める日曜日に施行してしまうという“ゴールデンジュビリーデー”が開催されます。
 本来ならば、こんなお祭り的なイベントは当講座でもそれなりの大きな扱いで採り上げなければならないのでしょうが、残念ながら物理的事情の制約が厳しいのが現状です。というか、普段1レース分の予想をお送りするだけでも日曜早朝までかかっているのに、2レースの予想をどうしろと言うのか…という感じです(苦笑)。
 ……というわけで、今回は準備時間圧縮のため、出走各馬の短評を省略した上で、駒木による単独講義の形式でお届けしたいと思います。何卒ご了承下さい。


第5回ジャパンカップダート 東京2100ダ

馬  名
(赤字は外国調教馬)
騎 手
ナイキアディライト 石崎隆
クーリンガー 和田
スナークレイアース 小野
ジンクライシス 蛯名
ユートピア デムーロ
イーグルカフェ 田中勝
オミクロン スボリッチ
シロキタゴッドラン 柴田善
ハードクリスタル 岡部幸
10 アドマイヤドン 安藤勝
11 トータルインパクト スミス
12 ヴォルテクス ファロン
13 トップオブワールド 四位
14 タイムパラドックス 武豊
15 ホーマンベルウィン ペリエ
16 ローエングリン 横山典

 1番人気の馬が3年連続で変わらないという、新鮮味と層の厚さに欠ける日本勢と、これまた相変わらず質・量・信頼感に欠ける外国勢が、普段は重賞はおろかオープン特別ですら滅多に使われない東京2100mコースで相見えるという不確定要素の権化のようなレース。出走各馬の地力差が大きいので人気は偏るだろうが、同じようなパターンで行われた過去のこのレースでは人気薄が上位に突っ込んで来ているケースが目立つ。人気馬に対する過度の信頼は禁物と言える。
 日本勢はジャパンブリーダーズC組が実績も含めて優勢で、馬券作戦もやはりこのレースの上位馬が中心という事になるだろう。未知の魅力という点で、ダート経験が3歳の下級条件時代以来というローエングリンに注目が集まっているが、「明らかに通用しない実力のダート馬よりは期待出来る」程度の認識で留め置くのが妥当ではないだろうか。
 外国勢は、そもそもダート競走自体が発展途上のヨーロッパ勢は論外。期待をかけるならダート競馬の“本家”アメリカ勢という事になるのだが、これも3年前に強豪リドパレスが良い所無く惨敗しているように、日本独特の砂馬場適性によって結果が大きく左右される傾向にあるようだ。今回出走するトータルインパクトは「前年優勝馬のフリートストリートダンサーより数段格上」という理由で支持されているようだが、そのフリートストリートダンサーと第1回3着馬のロードスターリングは、下馬評の段階では「これまでの実績から見ると地力に劣るため苦戦」と言われていた馬だった。このレースに限っては外国におけるダート実績は一切信頼出来ない。アメリカ馬ならどの馬も均等にチャンスとリスクがあると見るべきだ。

 さて展開だが、逃げ馬はナイキアディライト、ユートピア、ローエングリンの3頭だが、9度の連対が全て逃げで占められているナイキアディライトが最内の枠順も利してハナを切りそう。ペースは速めの平均〜ハイペースか。しかし、有力とされるアドマイヤドンやトータルインパクトなど、先団〜好位でレースを進めたい馬が半数以上を占めるメンバー構成ゆえ、逃げ馬にとってはかなり過酷な流れになる事は間違いない。
 また、先行馬の中には注文通りにレースを進められない馬も相当数出そうで、展開はかなり流動的。501メートルの長い直線では壮絶な消耗戦が展開される事になるだろう。こういう場合、本来なら差し・追込馬の出番になるのだが、今回のメンツを見るといかにも力不足。敢えて1頭挙げるなら、一昨年の覇者・イーグルカフェだが、この馬が勝った時は「中団から追込馬の決手を発揮して勝つ」というデットーリの美技が冴えてこそのものだった。

 そういうわけで、余りにも不確定要素が大きいレースではあるのだが、ではそういったレースを予想する際に何が一番の拠り所になるかと言えば、これはやはり地力と騎手の腕という事になってしまう。パチンコで釘を見て台を選ぶように、より高い確率で勝利の見込めるチョイスをしてみたい。

◎ 10 アドマイヤドン
○ 5 ユートピア
▲ 11 トータルインパクト
△ 16 ローエングリン
★ 14 タイムパラドックス

 ……ということで、本命はやはりアドマイヤドン。このレースでは勝ち運に恵まれていない印象があるし、競り合いに弱く、時折コロッと負けてしまう悪癖があるのだが、やはり確率論的に考えるとこの馬以外に本命を任せられる馬は見出し難い。負けるにしても2着か3着で、馬券の軸馬として外すわけにはいかないだろう。
 対抗格にはユートピアを推す。3歳秋以降の長期不振と、芝レースにおける頼りない戦績が嫌気されて人気をやや落としているが、2走前に当時交流重賞無敗だったアドマイヤドンを破るなど、伏兵に留まらないだけの力は持っている。デムーロ騎手の豪腕にも期待。
 アメリカのトータルインパクトが単穴。先述の理由からして、アメリカ馬はこれぐらいが適切な評価と考える。
 未知の魅力からローエングリンも一応印を打っておく。展開は厳しいが、ダート適性如何によっては大変身も考えられる。穴人気気味のタイムパラドックスは3連単の3着要員だが、前売段階のオッズを見る限りでは期待値が余りにも低すぎて買い辛い。
 馬券は2連勝式なら馬連で5-10、10-11、5-11、10-16の4点3連単は(5、10、11)の3頭ボックス6点+フォーメーション(5、10)−(5、10、16)−(5、10、16)4点の計10点

 ちなみに、研究室メンバーのフォーカスは以下の通り。

 栗藤珠美…やはり実績上位のアドマイヤドンから。馬連10-14、10-11、11-14、5-10、10-16、6-10の6点。
 一色順子…デムーロ効果に期待してユートピアに期待。3連単フォーメーション(5、10)−(5、10)−(1、4、6、9、14、16)の12点。
 リサ=バンベリー…いつも芝のレースで頑張る姿が気になっているローエングリンを応援。馬連10-16、11-16、10-11、14-16、5-16の5点


第24回ジャパンカップ 東京2400芝

馬  名
(赤字は外国調教馬)
騎 手
ポリシーメイカー パスキエ
リュヌドール ジャルネ
ハーツクライ 武豊
ナリタセンチュリー 柴田善
フェニックスリーチ ドワイヤー
マグナーテン 岡部幸
デルタブルース 安藤勝
エルノヴァ 藤田
ゼンノロブロイ ペリエ
10 コスモバルク ルメール
11 ヒシミラクル 角田
12 ハイアーゲーム デムーロ
13 トーセンダンディ 江田照
14 ホウキパウェーブ 横山典
15 パワーズコート スペンサー
16 ウォーサン ファロン

 日本勢が掲示板独占を果たした01年以来の低レヴェルとも言われる今年の外国勢ではあるが、ホスト国日本も、ここ10年では96年(バブルガムフェローが大将格で惨敗し、秋華賞馬ファビラスラフィンがまさかの2着好走)か99年(スペシャルウィークが孤軍奮闘)と匹敵する質・量に欠けるメンバー構成で、1着賞金2億5000万の国際G1とは名ばかりの低調な一戦。よってダートに引き続き、こちらも不確定要素満載で予想者泣かせのレースと言っていいだろう。
 日本馬にとってのステップレースは天皇賞と菊花賞だが、どちらも確固たる本命不在のメンバー構成だった上に、有力馬の相次ぐ凡走と人気薄の台頭によって実力査定が極めて困難な内容になってしまった。まるで宝塚記念2着馬候補とステイヤーズS1着馬候補のお披露目会のようだ(笑)。敢えて言うなら、今の馬場状態から勘案して菊花賞上位組に注目といったところだが。
 外国勢5頭は、海外での実績だけなら日本勢と比べても見劣りしないが、スピード競馬適性の面で疑問符が付く馬ばかり。好走するとすれば8枠の2頭だろうが……。

 展開は、コスモバルク陣営が「今回は控えさせる」と明言しているため、順当に行けばマグナーテンが逃げるだろう。僚馬・ゼンノロブロイのペースメーカー役を務める。道中は、やや遅めの平均ペースになるのではないか。
 好位に控えるのはパワーズコート、コスモバルク、デルタブルースあたり。ゼンノロブロイはそれらを見る形で中団を追走か。その他の有力馬は直線一気のタイプが多く、ハイアーゲーム、ホウキパウェーブが10番手前後、ハーツクライ、ナリタセンチュリーは最後方付近からのレースになるだろう。
 直線は決め手よりも底力勝負のサバイバルゲーム。昨年は“行った行った”のレースになったが、本来は好位〜中位から差脚を伸ばす馬の活躍が目立つ。 

 ……さて、そういうわけでフォーカスは以下の通り。

◎ 7 デルタブルース
○ 15 パワーズコート
▲ 9 ゼンノロブロイ
△ 12 ハイアーゲーム
× 14 ホウキパウェーブ
× 16 ウォーサン

 本命には菊花賞馬・デルタブルースを抜擢。最近の傾向として、混戦ムードのレースではステイヤータイプの馬がバテない強みを活かして上位に食い込むケースが多く、今回もそういう諸条件が揃っている感がある。
 外国馬からは人気しているがパワーズコートを挙げておく。気性難が懸念材料だが、ほぼ3着を外さないという堅実さも併せ持つ。
 天皇賞を制したゼンノロブロイだが、前走は相手と展開に恵まれた感が強い。1番人気は人気過剰とも思えるが、果たして? 
 3歳馬からは、まずはハイアーゲーム。菊花賞は11着惨敗だったが、これは出遅れとチグハグなレース運びが全て。名手・デムーロが乗って巻き返すか。ホウキパウェーブは今回が菊花賞の走りがホンモノかどうかを知るための試金石。菊花賞以外の実績は今一つだが?
 最後に外国馬からもう1頭、ウォーサン。日本でもお馴染のカーリアン産駒。カーリアンの仔と言えば、1800m前後のレース、しかも休み明けに強いという印象があったが、この馬は母系の影響か距離が長い方が良いスタミナタイプ。デルタブルースを推す以上、この馬にも印を打っておくべきだろう。
 2連勝式なら馬単で勝負。7番1着流しで9、12、14、15、16へ5点。3連単はほとんどの組み合わせが万馬券と、かなりの割れ方をしているが、これはそれだけ当たり難いという事で多点買いは逆に禁物。ここは宝くじを買うような気持ちでフォーメーション(7、15)−(7、9、15)−(7、9、15)の4点としよう。

 なお、研究室メンバーのフォーカスは以下の通り。

 栗藤珠美…展開有利。実績とペリエ騎手を信頼してゼンノロブロイ中心。馬連9-10、9-15、10-15、7-9、3-9、9-16の6点。
 一色順子…困った時のガイジン騎手頼み。3連単軸2頭流しマルチ(12、16)−(2、7、9、10)の24点。
 リサ=バンベリー…外国馬が活躍するところを見てみたいので、外国馬5頭のボックス買い。馬連ボックス1、2、5、15、16の10点


 ──と、駆け足で2つのレースを採り上げてみました。如何だったでしょうか? ただ、ジャパンカップはメチャクチャ相性の悪いレースなので、実は全く自信がありません(笑)。いつも通り理屈だけ当たって予想は大ハズレになるような気がしてなりませんが、祈るような気持ちで馬券を買ってみたいと思います。
 それでは、皆さんの健闘を祈りつつ、今日の講義を終わります。

 


 

2004年度第68回講義
11月26日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第4週分・合同)

 季節外れの小学館の人事異動に思いを馳せる、11月最後の「現代マンガ時評」を始めます。
 以前から、この冒頭のコーナーでそれとなくほのめかしてましたが、遂に「週刊少年サンデー」の編集長が交代となりました。駒木が小耳に挟んだ話によると、前任者の時代に連載が始まった『ガッシュ』が大ブレイクする幸運がありながら、在職の2年弱で雑誌の部数が10万部単位(しかも1単位じゃなく)で暴落していったとかどうとか。300万部越えの「ジャンプ」、「マガジン」ではなく、公称130万部台の雑誌での話ですから、それだけ数字を下げたとすれば、この“短期政権”も致し方無いところではないかと。
 ……駒木も三上前編集長の在職中は色々な事を言いましたが、三上氏も与えられた状況の中で出来る限りの善処を施したには違いありませんので、今となっては「お疲れ様でした」と手を振ってお見送りしたい気持ちです。思えば、本来なら編集部内の“秘密兵器”的な役割を果たすような独特の感性の持ち主(例えば、あの島本和彦さんを担当したのが若手編集時代の三上氏です)が、編集部全体の舵とり役を任されてしまったのが、そもそも悲劇の始まりだったのでしょう。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(53号)より『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』作画:西義之)が新連載となります。
 この作品は、「赤マル」04年春号でプロトタイプが掲載され、その後に今夏開催された「金未来杯」のエントリー作品として“第2話”が掲載されていた同名タイトル作品の連載化です。西さんは、4人組ユニット・多摩火薬時代も含めてこれが初の週刊連載獲得となります。
 ところで、この作品が連載決定との情報がネット上に流れてから、「『金未来杯』で優勝できなかった作品が何故、優勝作品より先に連載化?」…という声があがっていますね。中には真偽不明のインサイダー情報まで流れている始末ですが、これと同じような出来事は、以前開催された「黄金の女神杯」の際にもありましたので、個人的には別にどうって事じゃないと思ってます(笑)。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(新年1号)に読み切り『TWIN-kle STAR』作画:谷古宇剛)が掲載されます。
 谷古宇さんは02年前期の「新人コミック大賞」少年部門で入選しプロ入り。03年から04年初頭にかけて、増刊号に4回も読み切りを発表している若手作家さん。増刊の隔月刊化に伴って活動の場を制限される格好になっていましたが、週刊本誌抜擢で新作発表となりました。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り2本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年52号☆

 ◎読み切り『よしっ!!』作画:福島鉄平) 

 作者略歴
 79年4月23日生まれの現在25歳
 マンガ家としてのデビューは00年に「コミックフラッパー」誌にて。翌年まで同誌などで活動していたが、その後はキャリアを捨てて「ジャンプ」への投稿を開始し、03年1月期「天下一漫画賞」最終候補で“新人予備軍”入り。加地君也さんのスタジオでアシスタントを務めつつ、デビューのタイミングを窺う。
 「ジャンプ」デビュー作品は「赤マル」03年夏号に掲載された『red』で、その後「赤マル」には04年冬(新年)号にも『ナイン』を発表。今夏には「第1回ジャンプ金未来杯」にエントリーされ、『プルソウル』を週刊本誌04年34号に発表した。

 についての所見
 『red』以来、少年マンガ風に絵柄をモデルチェンジさせていた福島さんですが、今回は再び「コミックフラッパー」時代のそれに戻したような感じですね。
 さすがに経験豊かな作家さんですから画力そのものは問題ないレヴェルなのですが、リアルなようでリアルでない人物造型や、動きの感じられ難い独特の画風には、やはり若干の違和感を覚えてしまいます。有り体に言うと好感度の高くない絵柄かな…といった印象です。

 ストーリー&設定についての所見
 「ジャンプ」では珍しい(ここしばらくでは『こち亀』でネタにされた程度でしょうか)弓道を題材にした作品。マンガならではの無茶も数ヶ所見られるようですが、全体的には部活経験者らしいきめ細かな専門的な描写が嫌味無く為された作品だと思います。
 そういう意味ではバックボーンの確かな作品ではあるのですが、ただこの作品の場合、キャラクター設定がお世辞にもよく出来ているとは言えず、結果的に作品のクオリティがガクンと下がってしまったように思えます。読み手に好かれる要素(憧れるほどの“強さ”&共感できる“弱さ”)の少ない主人公と、見苦しいほどスケールの矮小な小悪党の敵役が織り成す学園ドラマから、どうやって魅力を見出せば良いのか判らない…というのが正直な所です。そんな中でもヒロインに関しては少ない出番の中で上手く好人物ぶりを演出出来ていただけに、これをあと2人分引き出せれば良かったんですけどね。せめて主人公の内面描写をもう少し深くやるだけでも印象が変わったんじゃないでしょうか。
 あと、ストーリーに関しては、敢えて「ジャンプ」の王道的シナリオ(例:売り言葉に買い言葉から、大事なモノを賭けての弓道対決)を避けて独自色を出そうとした意気込みは認められるのですが、先述のキャラクター設定の失敗もあって、それが上手くエンターテインメント性に繋がりきらなかった感じですね。

 あ、なんか全編貶しっ放しになってしまいましたが、全体的な構成などに関しては「さすが」と思わせるだけのモノがあったと申し添えておきます。決して成功したと思えない設定・ストーリーでも、最後までスンナリと読ませてしまうのですから地力は確かなのでしょう。ただ、その力の使い所を間違えているような気がするのです。 

 今回の評価
 評価はBとします。色々考えた末でご自分が専門的な知識を持つ分野の作品にチャレンジしたのでしょうが、結局は題材云々といった以外の部分で躓いてしまった感じですね。

 ◎読み切り『HALLOO SUNSHINE』作画:西公平

 作者略歴
 81年生まれ。生年月日は非公開で現在22〜3歳
 00年9月期の「天下一漫画賞」で最終候補に残って“新人予備軍”入りし、「赤マル」01年夏号にて『GREADOKURO DEAD』でデビューを果たす。その後、「赤マル」01年冬号、週刊本誌02年31号、03年50号で、それぞれ読み切りを発表。今回が1年ぶりの復帰作となる。
 なお、03年の本誌掲載の時は、『神奈川磯南風天組』を連載中だった、かずはじめさんのスタジオでアシスタントを務めていた。(追記:現在は島袋光年さんのアシスタントを務めているそうです)

 についての所見
 以前に比べると絵の密度が濃くなり、動的表現の拙さが解消されて来た感じですね。また、人物の表情が実に豊かなのに好感が持てました。
 ただ、密度の濃くなった絵を太い線で描いたためにややゴチャゴチャした感じがするのと、人物の描写などで所々で明らかに歪んだ箇所があるなど、完成度としては「なかなかの水準まで辿り着きながらも今一歩」…といったところではないでしょうか。

 ストーリー&設定についての所見
 ストーリーについては、一昔前の現代劇でよく使われた“地上げ屋VS小商店”のプロットを上手くファンタジー系にアレンジされており、よくまとめられているとは思います。演出面も、特に達者とまでは行きませんが、読み進める上で不快感の無い程度のクオリティは確保出来ているでしょう。
 しかしながら、この作品の場合、没落した王家、またはそれによって発生した無法地帯などといった世界観や、“グラスゴーの呪い”などの主要設定がストーリーと全く噛み合っていないのが大きな欠点になってしまっています。それらの世界観や設定にリアリティを持たせる配慮を怠っているのもそうですが、そもそもそんな世界観や“グラスゴーの呪い”が無くてもこのお話が十分に成立してしまうのが致命的です。バトルシーンのハイライトが蛇足になってしまったのでは、かなり厳しいですね。
 また、ストーリー進行上、途中で主人公の存在感が薄くなってしまっており、いわゆるキャラ立ちが中途半端に終わってしまったのも残念な点でした。

 今回の評価
 「雑誌の一作品として読み飛ばすには問題なし」ということで、評価はBとします。奇抜な設定よりも人間ドラマを描く事に留意して、次回作に臨んでもらいたいと思います。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 『ONE PIECE』は良い所まで来て、今週は作者結婚のため“取材”休暇。本人欠席のまま、巻末コメント欄では結婚式に出席した和月組ご一同様より祝辞が掲載されました。
 尾田さんの奥さんになられたのは、結婚直前までタレント・モデルとして活動されてらっしゃった方。今は一般人なのでネット上で情報公開をするのは差し控えますが、まだネット上に残されていた写真でご尊顔を拝見しましたところ、なるほど和月伸宏さんのコメントの通り“ナミ系”の顔をした美人さんでした。……しかし、人生ここまで上手く行くもんなんですねぇ(笑)。

 『こち亀』新発売の関連書籍との連動企画。駒木も夏の東京旅行で亀戸から東武亀戸線に乗る機会があったのですが、程好い寂れっぷりにしみじみしたのを思い出します。一旅行者としては、東京という所は何かにつけて両極端な感じがします。
 ところで、一応は都会の部類に入り、JR・私鉄の洗練されっぷりが光る神戸にも、実は神戸電鉄や山陽電車といった寂れ系私鉄がいくつかあり、中には1日の平均乗降者数が少な過ぎて来春限りで廃止が決まった駅なんてのも。夜になったら突然無人駅になる所も存在しており、神戸も思えば結構極端から極端ですね。

 いよいよ終幕間近かと思われる『未確認生物ゲドー』今週出て来たフェニックス細胞に侵食された異形の怪物にはちょっと「ウゥッ」と来るものが(苦笑)。少し前に一部で流行った“蓮コラ”みたいな、異形の集合物が生理的に受け付けないんです。理科の教科書の口絵にあった蜂の巣のアップ写真もダメだったなぁ……。
 ただ、逆に言えばそこまで生理的嫌悪感を喚起させる絵が描けるのも、やっぱり実力なのかも知れませんね。まぁ、そういう実力を認めちゃったりしてるから、当ゼミの評価と巷の人気がシンクロしないんですが(笑)。

 ☆「週刊少年サンデー」2004年52号☆

 ◎読み切り『あるふぁ!』作画:桜河貞宗

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 年齢と新人賞受賞歴は未判明

 デビュー前後の経歴も不明だが、資料の揃っている03年以後の動向に限れば、月刊増刊03年3月号から8月号まで短期連載していた『バトルゲージ』がある。今回はそれ以来1年3ヶ月ぶりの“戦線復帰”となる。

 についての所見
 
線がスッキリと洗練されて“プロ仕様”の絵になっていますし、背景処理や特殊効果も概ね出来ていますね。欲を言えば、もう少し動的表現を自然に描ければ申し分無いのですが、これは次回作への課題という事にしておきましょう。
 しかし、絵の上手・下手を抜きにしての話ですが、人物造型や構図の取り方、表情やポーズの取り方などが妙に古臭いというか、今風で無いのが気にかかります。「サンデー」でたまにいらっしゃる、陰で結構なキャリアを積んだ“新鋭”さんなのかも知れないですね。よう知らんけど、ですが(笑)。

 ストーリー&設定についての所見
 古くは『GU-GUガンモ』、最近では『タキシード銀』など、「サンデー」では以前から前例の多い擬人動物同居モノ(?)の作品ですね。今のところは“空席”になっている枠ですから、目の付け所は悪くないですね。
 あと、冒頭から自然な流れでページを費やさずに主要登場人物紹介をこなしたり、限られたページ数の中で伏線を張ってストーリーにアクセントをつけたりする構成力には非凡なモノがあると思います。キチンと理詰めでお話を組み上げて行こうとする姿勢が窺えて好もしいですね。

 ただ今回に限って言えば、ストーリーテリングを理詰めでカツカツに構成し過ぎてしまった嫌いがありますね。登場人物の設定や言動に“遊び”(いわゆる裏設定など、ストーリーに関係ない部分)が無いため、話の流れがいちいち段取り臭く、キャラ立ちも弱いままになってしまいました。
 他の方はどうか判りませんが、駒木の場合は、いくら登場人物が親切な事や良い事をしても、そのキャラがやりたくてその行動をしたのではなく、ストーリー進行上やらされてるような錯覚を覚えてしまいました。ましてや、町中でいきなり落石注意で通行止めという設定の不自然さと来たら……。

 これも程度の問題なのですが、桜河さんの場合、理屈に頼らない話作りをする訓練というのも必要なのかも知れませんね。とりあえずキャラクターを作ってみて、それらがアドリブで動いていくうち、勝手にストーリーが出来ていた…みたいな事を試してみるのも一策でしょう。 

 今回の評価
 今週はB評価ばっかりなのですが、この作品も加点・減点を激しく相殺させて評価Bとさせてもらいます。
 それにしても、「サンデー」の若手作家さんが描く読み切りは微妙な作品が多くて困ります^^;;

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「現在、注目している人物」。
 なかなか漠然としたテーマで答えも割れ気味。ただ、大きくは芸能系、スポーツ系、身の回りの変人系に三分されるみたいですが……。
 駒木は、スポーツ系はプロボクシング界から、来年にも世界タイトル挑戦と言われている長谷川穂積選手と、全日本新人王戦にコマを進めた磯道鉄平選手を挙げておきましょう。

 さて、今週から新展開なのは『クロザクロ』。しかし、この無国籍っぷりは凄いですなぁ(笑)。何だか三池崇史監督の映画みたいな雰囲気が漂って来て、いよいよ「週刊少年サンデー」じゃなくなって来たような感じですね。
 しかし、キャラ立ちしてた女の子キャラを総員一時退場させての男2人組でどうやってストーリーを盛り上げようという考えなのか、非常に気になるところです。三振かホームランかの大振りをしようとしているんでしょうか……?

 一方、いよいよ完結へ向けて最終エピソードに突入したのが『モンキーターン』。連載開始当時は賞金王決定戦の常連だった洞口父とデビュー前の新人だった青島が、揃って賞金王シリーズに斡旋されて同じ場所でモニターテレビを眺めてる…というあたりに時の流れを感じてしまいます。
 恐らくこれが最後になるであろうレースシーンは、まず6枠・波多野の乾坤一擲・超抜トップスタート炸裂からスタート。現実でこんなスタートになったら、舟券買ってる人たちの心臓が大変な事になるでしょうね(笑)。

 今週『ハヤテのごとく!』とネタが被るという異次元殺法が炸裂したのは『からくりサーカス』。それにしても、わざわざミンシアにコスプレさせる理由をどこに見出したのか、藤田和日郎さんに是非とも伺ってみたい気分であります(笑)。
 ……でも、こういう出発点からとんでもない傑作を作り上げてしまうのが、藤田さんの恐ろしい所でもあるんですよね。

 
 ──といったところで今週はこれまで。
 明日の競馬学特論ですが、ひょっとすると1週お休みになるかも分かりません。何とか簡単にでも講義をやりたいとは思ってるのですが……。

 


 

2004年度第67回講義
11月21日(日) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第3週分・後半)

 今週のゼミ後半分は、かねてから予告しておりました通り、「読書メモ」「少年ジャンプ・ギャグスペシャル’05」(←12月1日発行扱いで、雑誌業界的には新年増刊号なんですね)のレビューをお送りします。

 それでは、まずは「読書メモ」の方から。今回は“玉石混交、但し殆ど石”といった状況の「週刊少年サンデー」の隔月刊増刊の中で、キラリと光る“玉”を掘り出してみました。単行本のこととなるとケチ臭い小学館が増刊連載にも関わらず単行本を出し、間もなく週刊本誌にも登場予定のこの作品です。では、どうぞ。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

◇駒木博士の読書メモ(11月第3週)◇

 ◎『あやかし堂のホウライ』作画:金田達也《原案協力:藤田和日郎》/増刊「少年サンデー・スーパー」連載中

 作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 生年月日、年齢は未判明。
 藤田和日郎さんのスタジオで6年以上もの間アシスタントを務め、チーフ格として作画を支えるベテランスタッフ。詳細なデータは不明ながら、過去(02年以前)に増刊号で読み切りを発表した経歴があるとのこと。 

 についての所見
 一箇所で長年アシスタントを務めていると、師匠格の作家さんの画風に似て来る事はよくある話ですが、金田さんの場合は特にその傾向が強いようですね。正直言って、「原案協力:藤田和日郎」のクレジットが無ければ色眼鏡をかけて見てしまうほど似ています。厳しい事を言いますが、こういう“藤田和日郎”色を全面に出しても大丈夫なケースでないと、大手を振って表に出る事の出来ない絵柄かも知れません。
 藤田さんの絵柄との相違点を挙げるとすれば、金田さんの絵柄の方がややマンガっぽいという所でしょうか。藤田さんの絵柄をややディフォルメして、線をスッキリさせたら金田さんの絵になる…という感じですね。もっとも、藤田さんの絵自体がマンガ的なタッチとの相性があまり良くない気もしますので、それをマンガ的タッチにした金田さんの絵柄が好感度の高いモノかというと、これは疑問であると思います。
 ただし、長年アシスタントで揉まれた経験と鍛えられた腕の賜物でしょう、背景処理や動的表現など基本的な表現技法については連載作家クラスの域に達しています(まぁ連載作品の背景や特殊効果を担当しているわけですから当たり前ですが)全体的に見れば、マンガの絵としては問題ない水準に達していると言って良いでしょう。

 ストーリー&設定についての所見
 この作品を読んで驚かされたのが、このストーリーテリング系ファクターのレヴェルの高さでした。絵とは違い、ストーリーテリング力は技術だけでなくセンスが要求されるために弟子が師匠を真似る事はなかなか出来ないのですが、なんのなんの、金田さんは立派に師匠・藤田和日郎さんの超高水準の領域に肉薄しています
 間もなく単行本が発売されますので、これは是非とも実際に確かめて頂きたいのですが、まず第1話の前半部分、冒頭から怒涛のように畳み掛ける濃密な内容のプロローグが素晴らしいです。ストーリーを本筋まで巧みに誘導しながら、主人公・アヤカのキャラクターを読み手の頭へ明確に焼き付ける事に成功しており、これが後半の修羅場シーンでのアヤカの献身的な行動に説得力が生まれ、その結果としてストーリーの完成度も非常に高い水準まで押し上げられています。また、その後の第2話以降でも脚本・構成・演出の上手さは光っており、特に第3話は脚本力(鋭い決めゼリフ)で“説得力十分の自己犠牲”という高難度の課題をクリアするなど、現役連載作家顔負けの実力を披露してくれました。

 ただ、課題も無いわけではありません。第4話は第3話までとは異なり、コメディ色の強い趣向のお話だったのですが、これはやや不発気味だったように思えました。今後、週刊連載も念頭に置くとすれば、この辺の配慮も必要になって来るでしょう。
 何しろ重い感動系ストーリーの次回に軽いコメディを持って来るのは、それだけでも肩透かし気味だったりするわけで、それで成功を収めようとするなら余程の構成力──回の冒頭から「今回は番外編ですよ」的な雰囲気を漂わせるなど──とギャグセンスが必要になって来ます。そういう意味では、こういう“箸休め”的な回にまで最高級のクオリティを求めるのは酷だとも思うのですが、それくらいの要求をしたくなるような作品だったりするのです。

 ……とまぁそういうわけで、第1話を一読した段階では、その余りの技術水準の高さに「藤田さんが事実上の原作者ではないか?」…と邪推したりもしたのですが、藤田さんの公式コメントからすると、藤田さんはあくまで原案段階で関わっているだけの模様。どうやら金田さんは“藤田流”の免許皆伝・正当後継者とも言うべきテクニシャンのようですね。
 これだけの実力者がこれまで表に出て来なかったのは不思議なのですが、ひょっとすると、これまでは師と己との差別化のために独自色を出そうとする余り、(『H×H』で言うところの)強化系念能力者が具現化系能力で戦うような真似をしていたのかも知れませんね。

 今回の評価
 ほとんど満点に近いストーリーテリング力から細々とした問題点を差し引いても、十分にA寄りA−の評価は出せる良作です。作風的には「原案協力:藤田和日郎」だからこそ許されるという特殊な作品ではありますが、そこに施されたテクニックはホンモノ。今後の展開が非常に楽しみな作品です。

◆「少年ジャンプ・GAG Special '2005」レビュー◆

 ……というわけで、後半戦は「ジャンプ」ギャグ増刊のレビューをお送りします。ただし、今回は新人・若手作家さんの作品を中心に、内容もいつもより若干短めでお送りします。他意は無く、「嫌事ばかり延々と聞きたくないでしょう?」…という話ですのでご理解の程を。

 なお、今回は雑誌の目玉が低年齢層を“顧客”にしている『ボーボボ』だったためか、全体的に男子小・中学生をメインターゲットにしたと思われる(もっと言えばウンコネタなど下ネタ中心の構成の)作品が目立ちました。このため、当講座の受講生さんのように「ジャンプ」読者としては高年齢層にあたる方々にとっては「他愛が無さ過ぎる」もしくは「チープで下品過ぎて、笑えるかどうかは別にして不快だ」と思われる作品も多かったのではないかと思います。
 これは実を言うと駒木もそうでした(笑)。ただ、個人的な“面白い、面白くない”は極力除外するのが当ゼミの評価基準ですので、レビュー及び評価はそういった個人的な感情は度外視してテクニカル面を中心に行いました。「ひょっとしたら、お子様はこういう作品も受け入れられるのかな」…と思った作品にはそれなりの評点をつけてますので、それを承知の上で受講して頂くようお願い申し上げます。

 ◎読み切り『おれたちのバカ殿』作画:ポンセ前田

 作者略歴
 
生年月日は未公開だが、「赤塚賞」受賞時の年齢から推測すると現在25歳前後
 03年下期「赤塚賞」にて、水溜三太夫名義で佳作を受賞。その後現在のペンネームに改名し、週刊本誌04年33・34号に2週連続掲載された『機動球児山田 〜めぐりあい稲木〜』でデビュー。今回はそれ以来のデビュー2作目となる。

 についての所見
 相変わらず動的表現や描き込みの甘さなど気になる点も多いものの、全体的に見ればギャグ作品として及第点の出せる水準にはありそうです。
 ただ欲を言えば、もう少し見た目でインパクトを与えられるくらいのアクの強さが欲しい所です。

 ギャグについての所見
 今回は完全に『魁!!クロマティ高校』の亜流といった感じの作風になりました。ただ、それにしてはキャラクターのインパクトが弱いですし、ギャグの密度も薄くネームの練りこみも不足しているため、全体的に物足りなさは否めません。とりあえずは、もう少しコマ割りを細かくして内容を充実させるべきではないかと思います。
 ただ、最後のオチは上手く決まっており、良い読後感だけは確保出来たかな…というところ。ギャグセンスが無いわけではないでしょうから、とにかくネーム段階でもう少し熟考してもらいたものです。

 今回の評価
 評価はB寄りB−。今回は本誌代原レヴェルの域を超えないデキに終わってしまった感じですね。

 ◎読み切り『LUCKY☆CHILDタケル』作画:後藤竜児

 作者略歴
 
資料不足のため、生年月日・年齢は未判明。
 デビューは週刊本誌99年6号掲載の『はだしの教師』で、これは代原掲載による暫定デビューの可能性が高い。また、01年29号にも同タイトルの代原を発表している。
 その後、「赤マル」01年夏号にこれも同タイトルの『はだしの教師』を発表しており、これが正式デビューか。
 それからは2年半のブランク(高橋和希さんのスタジオでアシスタントを務めていた)があって、週刊本誌04年13号で『ハッピー神社♥コマ太』で復帰、「赤マル」04年夏号にも『冒険王』を掲載している。

 についての所見
 以前と変わらず高橋和希門下特有の大袈裟な作風で、不自然なシーンも見受けられるのですが、今回は動的表現に若干の改善が認められたこともあり、やや見易くなったかな…という印象です。ひょっとしたら今回のようなナンセンス系のギャグとは相性の良い絵柄なのかも知れないですね。

 ギャグについての所見
 もうあざといまでにウンコネタ尽くし(笑)。「そこまでして男子小学生を笑わせたいか」と言いたくなるようなネタの連発に、閉口された受講生さんも多かったと思います。墨汁で汚した体操服を着て、集団で「ジャンプ」を回し読みしては笑ってるような小学生以外は相手にしてないんだ…という感じですもんね(笑)。でも、そういう小学生読者の何割がこの増刊を買ってアンケートを出すのかと考えるとアレですが。

 とはいえ、ギャグの見せ方については随分と手慣れてきたなぁ…といった印象です。テクニックだけなら若手作家さんの中でも上位クラスに入って来たのではないかと思わせてくれました。
 ただ、問題はお話を成立させるための必要最低限のシナリオすらマトモに構成出来ないほどのストーリーテリング力の乏しさ。ナンセンスギャグにしては展開がマトモで、普通のギャグにしてはナンセンス過ぎる中途半端なお話になってしまっています。これでは自然と論理的に物事を判断出来てしまう年齢に達した読み手には違和感と不快感しか与えられないんじゃないでしょうか。

 今回の評価
 技術点などを考慮して一応評価はBをつけておきます。今の作風を活かすなら、『ボーボボ』くらいハジけた方が可能性がありそうです。

 ◎読み切り『一九ポンチ咄』作画:大亜門

 作者略歴
 
 1977年5月29日生まれの現在27歳
 持ち込み活動の末、02年4月期「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りした後、週刊本誌02年34号にて代原で暫定デビュー。同年44号に2度目の代原掲載を果たした後、「赤マル」03年春号にて『スピンちゃん試作型』で正式デビュー。
 この『スピンちゃん』シリーズは、週刊本誌でも03年40号と48号の2回、それぞれ題名を微妙に変えつつ新作が掲載され、最終的に04年16号から『無敵鉄姫スピンちゃん』のタイトルで週刊連載化。ただし、この連載は人気不振のため1クール11回で打ち切り終了となる。
 その後、週刊本誌04年44号で復帰を果たし、今回はそれから間髪入れず、2ヶ月弱の間隔での新作発表。

 についての所見
 インパクトに欠ける単調なタッチは相変わらずですが、随分と絵柄が安定して来た印象を受けました。欲を言えばもう少し見た目に映える絵柄にして欲しい所ですが、減点材料とすべき要素はほとんどありません。

 ギャグについての所見
 こちらも相変わらずの高度なテクニックと脚本力に支えられた、濃密な31ページだったと思います。全編を通じて安定したクオリティを維持させる技術の確かさは、他の新人・若手作家さんの追随を許さない“格の差”を感じさせてくれました。さすがは(曲がりなりにも)連載経験者といったところでしょう。
 ただ、今回は過去作に比べて登場人物のキャラクターが弱く、その分だけギャグの方も大人しめに終始した感もありました。また、低年齢層を意識したためか、大亜門さんの持ち味の1つであるマニアックなパロディネタがほとんど見られなかったのも残念でしたね。“脱パロディ”を図るのではなく、お子様にも判るパロディを追求する方が良いのではないかと思うのですが……。

 今回の評価
 今回は良作評価には今一歩足らず、最大限技術点を加味してもA−寄りB+が精一杯といったところ。次回作での巻き返しに期待です。

 ◎読み切り『多摩川キングダム』作画:風間克弥

 作者略歴
 78年9月22日生まれの現在26歳。

 02年9月期の「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りした後、「赤マル」03年春号にて『ドスコイン〜遊星から来たあんちくしょう〜』でデビュー。その後、「赤マル」04年冬(新春)号に『部活王なぱた』を発表し、今回がデビュー3作目となる。

 についての所見
 全体的に稚拙な印象が否めません。人物の表情のバリエーションに乏しく、また、ポーズの付け方が微妙に不自然なために違和感があります。更にはコマ内の構図の取り方にも課題が残っているようで、絵の面ではややセンスを疑われるような水準に留まっているような印象ですね。

 ギャグについての所見
 いきなりアップでインパクトのあるビジュアルを見せる、いわゆる“出オチ”のようなギャグは(クオリティの高低は別にして)決まっているのですが、他の系統のギャグについては全くお粗末です。ボケは言葉で表現するシュール系のギャグに挑んでいるものの違和感が足りずに不発気味、以前から弱い印象のあったツッコミは今回も弱く、ボケに対してただ叫びながら状況を説明しているだけ。これではせっかくの31ページも間延びを助長するだけで終わっているのではないでしょうか。
 風間さんはこれで3度目の増刊登場を果たしたわけですが、3度目にしてこの低調な内容では、今後の展開も厳しかろうと思います。

 今回の評価
 評価はC寄りB−。有り体に言って、何とかマンガの体を成しただけの失敗作といったところです。


 ◎読み切り『ネコタ!』作画:夏生尚

 作者略歴
 生年月日は不詳だが、「赤塚賞」受賞時の年齢から換算すると、現在24歳前後
 02年上期「赤塚賞」で佳作を受賞し、その受賞作『白い白馬から落馬』が週刊本誌02年31号に代原として掲載され、暫定デビュー。
 それから更に1度の代原掲載を挟んだ後、03年下期「赤塚賞」にて『BULLET CATCHERS』で準入選を受賞し、これが04年14号に掲載されて正式デビュー
 この後、04年19号、44号に代原として読み切りが掲載掲載されているが、“正規枠”としては今回が2作目となる。

 についての所見
 夏生さんの作品はデビュー作から拝見していますが、絵の上達ぶりは目覚しいものがありますね。線もすっかり洗練されて来て、ストーリー作家としても通用する高い水準に達しています。今回掲載の新人・若手の中では1、2を争うデキでしょう。
 しかしながら、この絵の上手さがギャグを引き立てる方向に働いていないのが気掛かりです。何と言うか、デビューしたてのジャニーズJr.がしょうもないコントをやっているような違和感を感じてしまうんですよね。

 ギャグについての所見
 絵とは対照的に、こちらは夏生さんのギャグが以前から抱える問題点である“ムリヤリ感”が全く解消されておらず、残念でした。普通全くギャグとは結び付かないシチュエーションから、段階を踏まずにいきなり間の悪い大ネタへ持って行くので笑う以前に戸惑ってしまいます。
 また、ボケ役のキャラクターが今一つ定まっておらず、「ただ無闇矢鱈にギャグを連発する子供」だったというのも、作品の内容が散漫になった原因かも知れないですね。「自分はこれが当たり前だと思って行動しているが、他人から見たらどう考えてもボケ」ぐらいの天然ボケキャラが出て来ると、もっと印象が違って来たと思うのですが。 

 今回の評価
 評価はB−とします。これだけの画力があるのなら、ギャグにこだわらずストーリー系作家への転身を図ってみるのも良いのでは……? とも思えてしまう、デビュー6作目でした。

 ◎読み切り『ループ☆魔法典』作画:岩淵成太郎

 作者略歴
 1982年11月21日生まれの現在22歳(本日誕生日!)
 03年上期の「赤塚賞」で佳作を受賞し、“新人予備軍”入り。「赤マル」04年春号にて『爆走妖精ロンタ』でデビューを飾り、今回がデビュー2作目となる。

 についての所見
 デビュー2作目になりますが、まだ稚拙な面が目立ちますね。基礎的な画力が伴わない上に、ペンとトーンを使わず描かれているため、絵柄そのものが何となく素人臭く感じます。
 ただまぁそれは個人的な主観ですから置いておくにしても、人物のポーズの半分以上が不用意にただ突っ立っているだけで、まるで学芸会の三文芝居のようになっているのは閉口してしまいました。登場人物にはその場に応じてもっと必然性のある動きをさせてあげなければ、マンガではなく単なるイラストです。
 こういう絵柄は素人さんが描くイラストや4コママンガなんかではよく見受けられる構図だったりするのですが、いくら新人とは言えプロがそれやっちゃイカンでしょう。

 ギャグについての所見
 長ゼリフを多用したり、1つのコマに複数のセリフの遣り取りを入れるなど、『銀魂』を意識したと思われる演出が多数目に付きます。ただし、それも演出技法を真似てみているだけで、セリフそのものにトンチが利いておらず、全くと言って良いほど笑いに繋がっていない印象を受けました。もっと物事を必要以上に回りくどく説明するなり、キャラクターとそぐわない鋭い毒を吐かせるなり、読み手に大きな違和感を与えるようなセリフを練ってもらいたかったですね。

 今回の評価
 全体的に見て、『銀魂』から画力とストーリー構成力と国語力を骨抜きにしたような失敗作といったところ。評価はC寄りB−が精一杯ですね。

 ◎読み切り『黒子女子』作画:梅尾光加

 作者略歴
 1981年2月11日生まれの現在23歳
 01年前後から投稿活動を開始。当時の月例賞「天下一漫画賞」では01年1月期、7月期、02年2月期で最終候補に残っている。
 その後、02年下期「手塚賞」で佳作を受賞、その受賞作『甲殻キッド』が「赤マル」03年春号に掲載され、デビューを果たす。「赤マル」には03年夏号にも『オウタマイ』が掲載され、異例の増刊連続掲載を果たすも、その後は今回まで約1年のブランクを作った。

 についての所見
 ストーリー系出身の作家さんだけあって、若手ギャグ作家陣に混じると、さすがに腕達者ぶりが際立っていますね。ただし、今回“ギャグ仕様”で強めに施したディフォルメがやや粗く、次回作以降に課題も残した感じです。

 ギャグ(及びストーリー&設定)についての所見
 49ページというギャグ作品では普通あり得ないページ数、作品のキャッチコピーにギャグ作品を示すフレーズが入っていない事、更には作品中のギャグの密度の薄さからして、この作品は純粋なギャグ作品ではなく、コメディ(ギャグ要素を多く盛り込んだストーリー作品)と見た方が良いのかも知れません。
 ただ、それにしてもギャグの質・量共、物足りなさが否めませんでした。また、ストーリー系作品としてもシナリオが極めて平板でキャラクターも全然立っておらず、全体的な内容の乏しさは如何ともし難いものがあります。とりあえず1つの作品として成立はしているものの、一体何が表現したかったのかが全く伝わって来ない凡作と言わざるを得ないでしょう。

 今回の評価
 絵の完成度が高いので一応“読める”のですが、「ただそれだけ」といった印象。B寄りB−としておきます。
 梅尾さんはこれまで若手では上位級のエンタメ系ストーリー作品を描いていた作家さんだけに、今回の停滞はかなり気掛かりです。今一度、ストーリー系作品で再出発を図って欲しいところですが……。

 ◎読み切り『影武者』作画:菅家健太

 作者略歴
 生年月日は未公開。「赤塚賞」受賞当時の年齢から推測して、現在21〜22歳。
 02年上期「赤塚賞」で佳作を受賞、その受賞作『あつがり』が代原ながら週刊本誌02年29号に掲載されて暫定デビュー。代原としては翌03年にも31号に作品を発表している。
 今回は久々の新作発表、そして初の“正規枠”掲載で正式デビュー作ということになる。

 についての所見
 動的表現に違和感が残っていたり、背景と人物キャラのバランスが狂っているなど、有り体に言ってまだまだ稚拙な面が目立ちます。が、代原作家時代のロクに画材も選ばない“プロ以前”の絵柄よりは格段に洗練されて来た印象です。この調子で修練を重ねれば、遠くない内に「ジャンプ」でも立派に通用する画力になることでしょう。

 ギャグについての所見
 菅家さんの作品は、「赤塚賞」の受賞作『あつがり』以来ずっと、全編通じて1つのテーマ(お題?)にこだわったギャグ作りをしており、今回は「影」でした。
 しかし、そういうこだわりは悪くないのですが、そのこだわった結果がダジャレ連発では……。「影」だからこそ、または「影」でしか出来ないギャグをもっと出してこそ、こだわりが生きて来るのではないかと思うのですが……。

 今回の評価
 前作に比べて絵が上手くなった代わりに、肝心のギャグの方が平凡になってしまった感じですね。マンガって難しいですねぇ……。
 評価はB−としておきましょう。ただ、ダジャレ連発がツボにハマった人がジャッジすると、もっと評点が跳ね上がるんでしょうね。
 

 ◎読み切り『大石浩二ってアレでしょ? 尿検査でいつも引っかかる人でしょ?』作画:大石浩二

 作者略歴
 プロフィール未公開のため、生年月日は不明。
 週刊本誌04年24号にて、代原掲載による暫定デビューを果たし、それ以後も26号、31号にそれぞれ代原掲載を果たしている。
 正式デビューは「赤マル」04年夏号。今回はデビュー2作目で、最近の「ジャンプ」では珍しいオール4コマ作品。

 についての所見
 戦隊モノからデューク更家まで(あ、これじゃ1本分だけだ)、老若男女、人外も含めて幅広い人物の描き分けが出来ており、線も洗練されて来ました。今回は4コマでしたから細かい部分は判りかねる面もありましたが、少なくともギャグ作家としては合格点の画力と言えるでしょう。
 欲を言えば、トーン処理や背景にもう少し手を加えて欲しいかな…といったところで、これは次回作以降の課題としましょう。

 ギャグについての所見
 扉の1ページネタ+4コマ24本4コマ作品は編集サイドからのダメ出し・ボツが多いと聞きますから、これだけの分量を埋めるまでには凄まじいまでのネタ出しがあったでしょうね。まずはお疲れ様と申し上げたいです(笑)。
 で、ネタの方ですが、中には技術・センスを感じさせるモノがあったものの、やや“打率”が伸び悩んだかな…といったところです。各ネタで入れ代り立ち代りするキャラクターの数が多過ぎてやや散漫な印象がありましたし、ネタそのものも、大石さんの持ち味である“間”で笑わせるギャグと『兄弟仁義』シリーズで多く見られるシュール系ギャグの割合が低く、そのため“不発”が増えてしまったような印象です。
 4コマの場合、5W1H(特に登場人物のキャラクター)をしっかり確定し、コメディタッチのストーリーを展開させながら、個性豊かな登場人物のキャラクターを手がかりにしてネタを量産するパターン(過去作で言うと『幕張サボテンキャンパス』『あずまんが大王』など)でないと、安定して質の高いネタを並べる事は難しいような気がします。
 で、今回の場合、ちょうどそのパターンの逆を行ってしまったように思え、そういう意味では微妙に伸び悩んだのも致し方無いかな…という気がします。もし次回作でも4コマ作品で勝負するのならば、まずはそれに適したキャラクターを生み出すところから始めてみてはどうでしょうか。

 今回の評価
 評価はとしておきましょうか。“瞬間最大風速”には非凡なモノを感じさせてくれる作家さんだけに、いつも厳しめの評点をつけるのが心苦しかったりするのですが……。

 ◎読み切り『猫又マタムネ』作画:降矢大輔

 作者略歴
 少なくとも降矢大輔名義では、過去の経歴等のデータは全く不明。別名義での活動が無ければ、今回が編集部への直接持ち込み等、非公開のルートを経てのデビュー作ということになる。

 についての所見
 極太でいかにも洗練されていない線や人物デザインの垢抜けなさにキャリアの浅さを感じさせますが、それでも表現的に押さえるべきところは押さえている感じです。それに背景処理など、連載作品ではアシスタントが担当する部分のクオリティも高く、ひょっとすると降矢さんは現役アシスタントなのかも知れませんね。

 ギャグ(ストーリー&コメディ)についての所見
 内容を見る限りでは、純粋なギャグ作品と言うよりも、ギャグ要素の高いラブコメ作品と言えそうですね。ギャグもストーリーも新鮮味に欠けた平凡なものでしたが、“間”の取り方や演出が達者で、非常にスムーズに読み進める事が出来ました。ことテクニック面で言えば、今回の増刊に掲載された新人・若手作家さんの中では随一とも言える水準ではないでしょうか。
 これでシナリオやキャラクターがもう少し充実してくれば、一気にクオリティが上がって来ると思います。次回作に期待です。 

 今回の評価
 評価はB+とします。しかし、これくらいの水準の作品がマシに見えるというのも、やや悲しいものがありますね。

 ※総評…A−以上の評価をつけられた作品はゼロ。B+評価も10作品中僅かに2作品で、やはりこれは低調な結果と言わざるを得ません。いくら過去の実績が乏しいメンバー中心のラインナップとは言え、わざわざ代金を支払ってまで代原クラスの作品を読まされるのは、一読者として堪らないモノがありました。


 何やかんやといって、結構なボリュームになってしまいましたが、如何だったでしょうか。酷評続きでストレスが溜まり気味の受講生さんもおられるかと思いますが、“仕様”という事でどうかご容赦下さい。

 それでは今日の講義を終わります。次回講義をお楽しみに。

 


 

2004年第66回講義
11月20日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 マイルCS」

 どうも、当講座専任講師の駒木ハヤトです。
 今週も張り切って、研究室総出で競馬学特論の講義……といきたいところなのですが、今週は諸般の事情により駒木1人の“簡易版”講義とさせて頂きます。
 また、来週は同日にG1が2レースという“ジャパンカップ・デー”なのですが、そちらの方も十分な時間を確保出来るかは微妙な情勢となっております。
 この埋め合わせは年末にさせて頂くつもりでおりますので、今しばらくご辛抱下さい。


第21回マイルチャンピオンシップ 京都1600芝外

馬  名 騎 手
ギャラントアロー

昨年は人気薄を利して3着逃げ粘り。春以降の不振が気になる所だが、今回は久々に人気薄のレースになりそう。マイペースなら怖さはある。

フォルクローレ 佐藤哲

オープン2戦は健闘するも一線級との差を感じさせられる内容。無心の差しがどこまで届くか?

ラクティ(外国調教馬) ロビンソン

欧州現役最強クラスが堂々登場。固い馬場への適性もあり、ファルブラヴ相手とも互角に戦い、日本でも通用するだけの実力も証明済み。折り合いさえつけば好勝負は間違いない。

マイネルソロモン 小牧太

嵌ったとはいえ、前走の差し脚は立派の一言。更なる相手強化で課題は山積みだが、展開に恵まれればチャンスはあるはず。

ファインモーション 武豊

前年2着馬。北海道シリーズでリズムを取り戻し、3ヶ月の待機で満を持した。調教の動きは申し分無く、あとは馬群をどう捌くかがカギ。

マイソールサウンド 本田

ムラ脚ゆえ大敗続きでも侮れぬが、掴み所の無い馬だけにセールスポイントを探すのが難しい。諸々の懸念材料に目を瞑り、ヒモ穴として買うだけの価値はあると思うが……。

デュランダル 池添

ディフェンディングチャンピオンが一叩きして堂々たる参戦。本来はマイラーだけに、マトモなら前走以上のパフォーマンスは必至。日本古馬勢の中では地力が頭一つ抜けている印象。

テレグノシス 横山典

言わずと知れた府中巧者の名マイラー。他の競馬場でも入着経験はあり、京都コースも全く苦手というわけではないが、同型の強豪相手と差し比べでどこまで伍することが出来るか。

バランスオブゲーム 田中勝

マイルG1で3、4、3着という究極の善戦マンが今年もこの舞台に登場。ただし今年は相手も強化された印象で、この馬に連対圏へ突っ込めるだけのパワーがあるかどうかは……?

10 プリサイズマシーン 藤田

芝へダートへと転戦するゼネラリストも、G2級で入着一杯の実績では、ここで強く推せるはずも無く。

11 メイショウボーラー 福永

秋緒戦のスワンSでは、ハイペースに泣きながらも古馬勢と戦える地力は誇示した。しかし、G1戦績を顧みると、入着以上の活躍を果たすには何かと恵まれが必要のようで。

12 アドマイヤマックス 武幸

昨年の安田記念で2着馬が富士Sで完全復活。体調のピークを過ぎたとは関係者の弁だが、調教の動きは以前絶好。相手なりに流れ込んでしまう詰めの甘さが心配だが地力はある。

13 マイネルモルゲン 後藤浩

現状はハンデG3専門のクセ馬。正攻法では通じる可能性は低く、アッと言わせるなら意表を突いた奇襲戦法ということになるだろうが。

14 ナイトフライヤー 柴原

条件戦を勝ち上がり、今回が富士Sに続くオープン挑戦2戦目。休み明けを叩いた上積みはあろうが、それ以上に相手強化の荷が重そう。

15 ダンスインザームード ルメール

気性難の収まった天皇賞では古馬・牡馬相手に堂々の2着。やはり並の牝馬ではない。ただ、トゥザヴィクトリーを思わせるゴール前の失速癖がやや気になるところで。

16 ロードフラッグ 松永

オープン特別・G3を主戦場にする馬が、7歳にしてG1初挑戦。果敢なチャレンジ精神は認めるが、ここで通用する見込みは……?

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎駒木ハヤトのレース展望

 明らかにG1上級の実力を持つ馬が数頭による上位拮抗の組み合わせ。ただし、有力各馬はそれぞれ無視できない不安を抱え、波乱の目も否定出来ず。一方でワンチャンス・ツーチャンスがあれば馬券圏内に届く馬も多数おり、油断のならないメンバー構成と言える。

 主な前哨戦は、スワンS、富士S、そして今年はマイラーの出走が多かった天皇賞・秋の3レース。
 スワンSはメイショウボーラーやシーイズトウショウなど、G1で2〜3着を争うクラスのメンバーが集まったが、緩い馬場な上にハイペースで先行馬総崩れで実力通りの決着には程遠いレース内容。そんな中、好位で上手く立ち回り、古馬相手のレースにメドの立ったメイショウボーラーだけが収穫を得た感じ。2着のマイネルソロモンに関しては、この馬が強かったというより、この馬が来る位荒れた実力測定には参考外のレースだった…という印象だ。
 富士Sは、G1で2着、3着の経験があるアドマイヤマックスが久々の勝ち鞍を挙げたが、他はG3クラスのメンバーだっただけに、これは順当勝ちか。故に、他の出走馬については語る必要も有るまい。
 天皇賞組は人気を背負って敗れたテレグノシスと、人気薄で好走したダンスインザムードの明暗がクッキリ分かれたレースとなった。チャンピオン級の集う中距離G1としては余りに寂しいレヴェルではあったが、マイルCSの前哨戦としてはやはり価値のあるレースと言えるのではないか。
 別路線からは極悪条件のスプリンターズSから直行したデュランダル、札幌記念で超G2級のマイラー2頭を相手に完勝したファインモーション、そしてイギリスのクイーンエリザベス2世Sを手土産に来日した外国調教馬のラクティ。いずれも実力・実績共に十二分であるが故の“オレ流”臨戦過程という事になるか。これらの馬が真っ当なステップレースを使わなかった事に何ら問題は無く、逆にそのせいでステップレースの価値が落ちただけ…とさえ言える。

 展開はギャラントアローが強引にハナを切り、それをメイショウボーラー、ダンスインザムード、ラクティといった有力先行馬が追いかける展開。ファインモーションは中位から馬群の外へ馬を持ち出して4コーナー捲り、デュランダルやテレグノシスはいつも通りに直線一気の追込戦法。
 ペースは先頭を走るギャラントアローが飛ばすため記録上はハイペースのレースになるだろう。ただ、全体的に見れば、速めの平均ペースで縦長の隊列という展開の紛れが少ない流れになるのではないか。
 ちなみに、ここ10年の傾向を見ると差し・追込勢が有利とのデータが出ている。3〜4コーナーの下りでつけた勢いが平坦な直線では目減りせず、一気に前を捕まえてしまうのだろうか。先行・好位グループから粘りこむには相当の実力か展開の恵まれが必要で、逃げ粘りは至難の業。7年前にキョウエイマーチがタイキシャトルの2着に粘って以来連対例は無く、3着にしても去年のギャラントアローと8年前のエイシンワシントンのみ。

 さて、前置きはこれくらいにしておいて、フォーカスを披露してみよう。

◎ 7 デュランダル
○ 3 ラクティ
▲ 5 ファインモーション
△ 15 ダンスインザムード
× 12 アドマイヤマックス
× 11 メイショウボーラー

 地力的にはデュランダルとラクティの2頭が抜けている感じ。実力通りに走る事さえ出来れば(それが難しいのだが)、この2頭のうちどちらかが勝ち馬になるのではないか。ただ、ラクティは折り合いを欠いて大敗するケースが近3走で2度もあり、環境の変化などを考慮すると今回は軸馬には推し辛く対抗の扱いとした。
 これに続くのは、昨年2着のファインモーション。同じ牝馬なら天皇賞2着のダンスインザムードの方を上位に据える手もあったが、あのゼンノロブロイにキッチリ差し切られるという味わい深い負けっぷりを考えると、最後の直線で甘くならないか心配になる。
 伏兵は復活なったアドマイヤマックス。実績の割に人気が薄く、馬券的な妙味も膨らむところ。メイショウボーラーも実績馬の凡走があれば浮上する。また、印は打たなかったが、テレグノシスもワイド・3連単の一角としてなら考慮する余地もあるだろう。

 1番人気に◎を打ってしまったので馬単は妙味が薄く、2連勝式なら馬連だろう。手堅く行くなら3-7、5-7、3-5、7-15、7-11の5点3連単なら絞り込んでフォーメーション(3、7)−(3、5、7)−(3、5、7、15)の8点としたい。人気馬同士の組み合わせだが、3連単は1番人気でも45倍近くあるので狙う価値はあるだろう。印通り手広くいくなら(3、7)−(3、5、7、11、15)−(3、5、7、11、12、15)だが、これだと32点にもなり、費用対効果はガクンと落ちる。

 なお、参考までに他の研究室メンバーのフォーカスも紹介しておくと、

 栗藤珠美…馬連5-7、5-15、7-15、3-5、3-8、3-12
 一色順子…3連単軸2頭流しマルチ(7、8)−(4、5、9、12)の24点。
 リサ=バンベリー…単勝3&馬連流し3−(1、5、7、8、11、15)

 ……といったところ。詳しいコメントが紹介できないのが残念だが、受講生さんには、何故こういう予想になったのか想像するする事も含めて楽しんで頂く事にしよう。


 それでは、手短ながら、今週の競馬学講義を終わります。日曜日は金曜日に間に合わなかったゼミ後半分をお送りする予定です。

 


 

2004年度第65回講義
11月18日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第3週分・前半)

 公式発表ではありませんが、『絶対可憐チルドレン』の来春からの本格連載開始が、作者・椎名高志さんご本人から発表されましたね。増刊掲載の読み切り版から追いかけて来た者としては嬉しい限りです。
 掲載誌については、一旦発表されたものが編集部側からNGが出て(そりゃまぁ、半年フライングされたら編集部も『カンベンしてくれ』でしょう)伏せられてしまいましたが、まぁ「GX」転出じゃなくて良かったね…ということで(笑)。
 どうしてこれまで長々と飼い殺しにされていた作品が一気に日の目を見たのか…という訳は、もうすぐしたら目に見える形で分かるはずなんですが、それにしても本当に分かり易い方向転換ですね。レビュアーの立場から離れて言わせて頂くと、「喜べ! 俺たちの『サンデー』が帰って来た!」…ってなところでしょうか。

 ところで今週は、その「サンデー」は先週号が一足早い合併号だったため、1週休み。とりあえず今日は「ジャンプ」分、ひょっとしたら実施できるかも知れない明日の後半分は「ジャンプ」のギャグ増刊関連分と「読書メモ」特集ということになるかと思います。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(52号)に読み切り『よしっ!!』作画:福島鉄平)が掲載されます。
 福島さんは、今夏開催の「金未来杯」にもエントリーしていた有望若手作家さん。前作は広く支持を集める事が出来ませんでしたが、早々のリスタートとなりました。今回は現代劇の弓道モノということで、これまでとは一風違った福島さんの作品を読む事が出来そうですね。

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(52号)に読み切り『HALLOO SUNSHINE』作画:西公平)が掲載されます。
 西公平さんは01年デビューの若手作家さんで、過去2回週刊本誌掲載の経験があります。そろそろキャリア的にもこのチャンスを連載へ結び付けたいところでしょう。次号予告を見た限りでは少年マンガでは“鬼門”とも言うべきファンタジー系作品のようですが、さて、どうなるでしょうか──?

 ※今週前半のレビュー&チェックポイント
 ●今週前半のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り2本/代原読み切り1本
 ※「チェックポイント」は時間の都合で休みます。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年51号☆

 ◎読み切り『スーパーメテオ』作画:高橋一郎 

 ●作者略歴
 1983年1月26日生まれの現在21歳
 02年下期「手塚賞」で準入選を受賞、その受賞作・『ドーミエ〜エピソードI〜』が週刊本誌03年16号に掲載され、デビュー。この年は39号にも読み切り『LIKE A TAKKYU!!』を発表している。
 今回は約1年ぶり、3度目の週刊本誌登場となる。

 についての所見
 前作でもそうだったのですが、高橋さんの絵は線が非常に粗く、時には手抜きとも思えるような雑な箇所も多く見受けられるものの、マンガの記号としてのツボはキチンと押さえられているのが特徴です。意外と見苦しさは感じられない絵柄に仕上がっていると言えます。
 前作から1年経っても絵柄を変えないということは、もうずっとこのタッチで行くという意思表示なのかも知れませんね。ただ、クオリティ云々は別にして、少年誌で人気を獲ろうとするならば、せめて雑に思える箇所は修正した方が良いような気もします。
 あと、これは評価云々と関係ないですが、そういう粗いタッチの絵にも関わらず、主人公の眉毛の剃り跡を執拗に細かく描写していたのには笑ってしまいました。何か物凄いこだわりがあったみたいですね(笑)。

 ストーリー&設定についての所見
 プロットそのものは、どこにでもよくあるような学園の部活動を舞台にした勧善懲悪モノですね。ただ、そこへSFじみた手の込んだ設定と演出力に支えられて、既存の作品とは一味違った中身の濃い作品に仕上がっています。
 特に優れているのが“キャラクター&設定描写力”ですね。凡百の作品ならダラダラと間延びしたセリフ劇で設定を説明してしまうような場面でも、上手に挿話を挟みながら必要最低限のページ数で読み手に情報を与える事が出来ています。例えば冒頭数ページで主人公の身体的特徴と性格を見事に描写しきった場面など、既に新人・若手の域を超えたレヴェルに達していると言えるでしょう。
 で、そういうパワーに支えられたおかげで、この作品はどんな突拍子も無い設定にも説得力を持たせられてますし、間延びを防ぎ、密度の高いストーリーを展開させることも出来ているわけですね。
 ただ、惜しむらくはメインプロットが陳腐で御都合主義な事。先述の良く出来た要素と余りにもアンバランスに映ってしまい、作品の完成度がやや落ちてしまった感は否めません。もう少しその辺を練りこんでいれば、本当に素晴らしい作品に仕上がったはずだと思うのですが……。

 今回の評価
 それでも評価は十分A−に値する良作です。高橋さんはデビュー作以来、荒削りな面ばかりが目立っていましたが、いよいよその才能も洗練されて来たかな…といったところでしょうか。あとは良い題材とプロットに恵まれれば、きっと「ジャンプ」の中核を担う作家さんになれると思います。

 ◎読み切り師匠とぼく作画:川口幸範

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 79年4月3日生まれの現在25歳
 「天下一漫画賞」の時代から月例賞で最終候補や特別賞受賞を繰り返し、2年以上にも及ぶ“新人予備軍”暮らしが続いていたが、04年4月期「十二傑新人漫画賞」にて十二傑賞を受賞。今回は受賞作デビューの権利を行使しての週刊本誌登場となった。

 についての所見
 
人物の造型、ペンタッチ、構図など、いかにも「ジャンプ」らしくない要素が満載…といった感じですが、基礎的な画力はこれがデビュー作とは思えない程。各種表現技法や背景処理、シリアスとディフォルメの使い分け、登場人物の描き分けなど、既に即連載級の実力と言えるでしょう。
 雌伏期間の長い人が表に出た時のインパクトが大きいのは世の常ですが、2年以上も諦めずにコツコツと投稿活動を重ねて来た意志の強さが絵にも反映されているという感じですね。「ジャンプ」で成功するためにはもう少しアクを抜くべきなのかも知れませんが、画力そのものは申し分無しです。

 ストーリー&設定についての所見
 先程の『スーパーメテオ』と同じく、若手としては卓越した才能が光る佳作です。
 まず特筆すべきなのが、先程の『スーパーメテオ』同様の“設定描写力”。本来なら果てしなく掴み所の無いキャラクターであるはずの主役級2人(“師匠”と“ぼく”)の人となりが、しばらく読み進めている内に自然と把握出来てしまうのには唸らされました。何しろ登場人物の大半が氏名不詳なのに、話を追うのに何ら支障が無いんですからね。
 また、何気ない遣り取りを1つの見せ場に仕上げる演出力も、これがデビュー作の新人さんとは思えない水準に達しています。これは来るべき週刊連載の際には大きな武器となる事でしょう。

 ただしこの作品、プロットやストーリーそのものは非常に弱く、有り体に言うと「有って無きが如しのストーリー」という感じになっています。ストーリー全体と登場人物ごとの5W1Hが曖昧なため、作品のテーマがぼやけてしまったのも、その一因でしょう。
 この作品が「十二傑賞」で受賞した際の編集部講評が「ストーリーの展開がまるでわからない」…という、職責をブン投げたようなモノだったのが気になっていたのですが、なるほど、人気作を輩出するために子供にも分かり易いお話を追求している編集者さんにとって、この作品は異次元のモノに見えたことでしょう。分かり易いキャラクターが紡ぎ出すストーリーではなくて、作品全体から漂う雰囲気を楽しむ性質の作品など、少なくとも「ジャンプ」系の新人が描くべき作品じゃありませんからね。 

 今回の評価
 高い演出力とストーリーの弱さをどう判断するか、非常に迷うところです。まるでボクシングの採点で手数と強打、どちらを重視するかみたいな話で、確固たる判断基準に欠ける難しいジャッジになりました。多分、この作品は読んだ人によって評価が大きくバラけるでしょう。
 とりあえず駒木が下したジャッジはA−寄りB+。演出力よりストーリーの中身を重視した上での判断です。

 ◎代原読み切り『スクールバトル’04』作画:前田竜幸

 ●作者略歴
 
生年月日・年齢は資料不足のため未判明。
 01年9月期「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入り。しかしその後の投稿成績は振るわず、03年9月期「十二傑」で「最終候補まであと一歩」リストに名を連ねたのみ。
 今回が代原掲載による暫定デビュー。

 についての所見
 意識的に“豪快さ”を出そうという狙いのペンタッチではありますが、結果として“荒っぽさ”の目立つタッチになってしまったかな…という印象ですね。丁寧に描くべき箇所が粗雑になっている点がいくつか見受けられました。
 とはいえ、ギャグ作品としてなら十分及第点の出せる水準ではあると思います。あとはもう少し“出オチ”がカマせるくらいアクの強いデザインの人物が描けるようになると、更に良いですね。

 ギャグについての所見
 第一印象は「うわー、『ジャンプ』なのに島本和彦みたいなの出たー!」でした(笑)。多分、同じ印象を抱いた方もいらっしゃったことでしょう。まぁパクリではなくてモチーフの範疇でしょうから、オリジナリティに欠けるという面を除けば、評価にネガティブな影響を与えるには至らないと思います。
 それよりむしろ、何でもない事を大袈裟に表現して違和感を滲み出し笑いを誘う…という、島本和彦(っぽい)作品の魅力を上手に再現できている点、これは逆に高く評価出来る点とさえ言えます。一見「ただ島本和彦の真似をしているだけ」に見えるかも知れませんが、その「ただ真似をする」だけでも高い脚本力と演出力が必要なわけで、それを見事にクリア出来ているこの作品は、やはりそれなりのクオリティに達した佳作と言うべきだと思います。
 とはいえ、全体を俯瞰すると、ギャグの密度を濃くしようとしたためか、やや“ハズし”気味のボケまで濫発してしまったように思えるのも確か。全編通して安定したギャグの水準を維持できなかったのは残念でした。 

 今回の評価
 この作品も評価が難しいところなんですが、とりあえず今回はB+としておきます。今回も素質は感じられるような作品でしたので、あとは全ページを通じ、安定して読み手を笑わせられるようなシビアな構成を心掛けれてもらえれば…と思います。

 

 ……というわけで、何とか3作品のレビューを間に合わせる事が出来ました。後半も早い時期に実施できるよう頑張ります。

 


 

2004年第64回講義
11月13日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 エリザベス女王杯」

 2週間ぶりの競馬学講義をお届けします。
 今週も時間に追われておりますので、早速講義に参りましょう。
 しかし、こんなに競馬学講義をやるのが苦痛なシーズンは初めてです(苦笑)。


第29回エリザベス女王杯 京都2200芝外

馬  名 騎 手
メモリーキアヌ 秋山

軽ハンデの愛知杯では見事な奇襲成功だが、広いコースでの正攻法では入着クラスに甘んじる現状。昨年の秋華賞(8着)以来のG1挑戦で、果たしてどこまで……?

マイネヌーヴェル 佐藤哲

2歳秋〜3歳春までに3連勝、桜花賞で穴人気したのも最早過去の話か。愚直に差し一辺倒で活路を探るが、マトモに行けば入着一杯の気配。

グローリアスデイズ 小牧太

前走秋華賞はスタート直前に気性難が出てレースにならず。トライアル重賞で連続好走した実績は侮れぬが……?

オースミハルカ 川島信

クイーンS→府中牝馬Sと前哨戦連続制覇はフロックでは不可能。メンバー強化、400mの距離延長は相当に厳しいが、昨年(9着)より上積みはありそうで。

ドルチェリモーネ 岩田

休養明けいきなりのG1挑戦は無謀に過ぎた前走、体調面での上積みはあるだろうが、まだピークには届かぬ気配。歴戦の古馬相手ではセールスポイントが見出せぬ。

レクレドール 渡辺

6着に終わった秋華賞は格負けの印象。G1ホース3頭とは差をつけられた感有るが、人気上位馬凡走の際の“リザーバー”としての資格は有。先行馬ペースを捌けるかがカギだが

スイープトウショウ 池添

完璧な追込が決まって悲願のG1制覇を果たした前走だが、余りにも上手く行き過ぎた感も。1度有る事は2度有るか……?

ヤマニンアラバスタ 松永

牝馬三冠を9→3→5着で完走。牝馬G3クラスでは上位の実力だが、G1を狙うにはいささかパンチに欠ける感も。展開に恵まれての3着候補までか。

オースミコスモ 本田

G1指定オープン2勝、重賞3勝の実績は光るが、実績はほぼ1600〜1800mに限定。この距離は余りにも微妙で。

10 メイショウバトラー 武幸

「メイショウホムラ産駒の記念参戦」の趣が強かった昨年から一転、伏兵的存在ながら勝負権を持って登場。斤量56キロ、距離延長、詰めの甘さなど課題は多いが展開利して粘込む。

11 シンコールビー 四位

果敢なオープン挑戦続けるも、今年は8戦して全て着外。前走は準オープンでも見せ場無く、ここはもはや場違いの様相。

12 アドマイヤグルーヴ 武豊

ディフェンディグチャンピオン登場。3着激走の天皇賞からの強硬日程で反動が懸念されるが、実力は文句ナシで最右翼。敵は己だ。

13 レマーズガール 赤木

交流重賞を転戦中のダート馬が突然の芝G1挑戦。馬場悪化に一縷の望みをかけたが、良馬場では苦戦必至だろう。

14 エリモピクシー 福永

5歳にしてオープン昇格、6歳の今年から重賞戦線に登場した遅咲きの馬。手堅い走りからワイド・3連単要員としての期待高まるが、勝ち負け争うに一枚落ちそう。

15 スティルインラブ

史上2頭目の三冠牝馬も今年は突然の大スランプ。崩したリズムを懸命に建て直し、捲土重来を期す。ここ一本に絞ったローテーと先行馬有利の展開は大きなアドバンテージ。

16 ウォートルベリー(外国調教馬) ルメール

昨年3着のタイガーテイルと互角以上の潜在能力も、堅い馬場は大の苦手の様子。展開利は見込めるも、良馬場・高速コースでは持ち時計的にかなり厳しそう。

17 エルノヴァ ペリエ

格上挑戦で激走したクイーンSは記憶に新しいが、府中牝馬Sの走りを見る限りでは、G1級相手には今一歩足りなさそう。ペリエマジックでどこまで迫れるか?

18 ブライアンズレター 川原

芝未勝利・1000万条件の身でこの舞台は余りにも場違い。力は出せそうだが、常識的に考えて通用する地力はあるまい。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎駒木研究室・合同作戦会議

珠美:「受講生の皆様、こんばんは。栗藤珠美です」
順子:「一色順子でーす」
リサ
:「リサ=バンベリーです!」
駒木
:「……というわけで、今回から4人で一緒に予想ミーティングをやる事にしたよ。最近は色々あって毎回準備が遅れ気味で、二部構成じゃキツくなって来てね。苦肉の策だけど、これもまぁ仕方ないかなと」
順子:「当たらない予想を延々と二部構成で聞かされる受講生さんも迷惑ですしねー(笑)」
珠美:「博士も私たちも、的中させようと頑張ってはいるのですが……(苦笑)」
リサ:「待ってる間は研究室にあった『じゃじゃ馬グルーミンup!』で競馬の勉強をしてたんですけど、この前の天皇賞の時でとうとう読み切っちゃいました」
順子:「小学館コミックス全26巻(笑)」
駒木:「いやー、申し訳無い。これでも春までに比べると楽ではあるんだけど、思ったよりも作業時間が短縮出来なくてね。とりあえず、もっと良い企画が思い浮かぶまでは暫定的にこのスタイルで行こうかなと思ってるよ。
 ……まぁそういうわけで、そろそろ本題に移ろうか。珠美ちゃん、進行頼む」
珠美:「ハイ。出走各馬の評価については掲示してある出馬表をご覧頂くとしまして、まずは前哨戦の分析からですね」
順子:「えーと博士、やっぱり3歳が秋華賞で、古馬は府中牝馬Sってとこですか?」
駒木:「まぁそうなるね。今なんか2レース同日開催で、世代別合同トライアルみたいなもんだし。過去のデータを調べても、このレースが古馬混合になってからはずっとこの傾向が続いてるね。
 まぁ例外としては、牝馬限定のカテゴリに収まらない馬が一旦京都大賞典とか毎日王冠から天皇賞を目指しておきながら、『やっぱりメンバー楽な方へ』って路線変更して来たパターン。で、こういう時は“格下挑戦”だから、アッサリと上位に食い込むパターンも多いね」
珠美:「今回はアドマイヤグルーヴがその別路線組に該当でしょうか?」
駒木:「まぁそういう事になるね。ただ、天皇賞を断念せずに、出走してから中1週で参戦ってパターンは初めてだから、これは例外中の例外と言えるかも知れない」
順子:「結局のとこ、アドマイヤグルーヴはどうなんですか? 反動出ません?」
駒木:「それが簡単に判るなら苦労はしないよ(苦笑)。まぁ、よっぽど調子が良いから出走させるんだろうけど、競馬には“見えない疲れ”っていうヤツがあるからねぇ」
順子:「まあ確かに、それが判ったらギャンブルになりませんもんねー(笑)」
珠美:「それで博士、今年の前哨戦の水準はどのくらいだと思われますか?」
駒木:「そうだねぇ。まず3歳の秋華賞、これは三冠レースのG1だけあってなかなかの水準だ。4着のダンスインザムードが天皇賞で2着して一気に値打ちが上がったね。ただ、スイープトウショウ以外の馬は一枚から二枚格下で、牝馬限定G2〜G3クラスかな、といった感じ。
 府中牝馬Sの方は、去年のエリザベス女王杯で惨敗した2頭が上位を占めてて微妙かな。3着のスティルインラブをどう評価するかで扱いが変わって来るだろうけど。これはもう予想する人によって見解が大きく分かれるだろうね」
順子:「なんだか今年は『これ!』って馬があんまりいない感じですね」
駒木:「そうだねぇ。どの有力馬も凡走する要素がある感じだから、地力はともかく信頼感に欠ける馬ばかりのレースって感じだね」
順子:「これは穴党の出番かなー(ニヤリ)」
リサ:「あ、博士、しつも〜ん(手を挙げて)」
駒木:「(苦笑)……はい、どうぞ」
リサ:「牝馬ばっかりのG1レースに出た馬って、牡馬と一緒に走ると負けちゃうこと多いですよね?」
駒木:「そうだね。中距離以上だと明らかに牡馬有利の傾向があるね」 
リサ:「牡馬と一緒にこれくらい走れたら牝馬のG1で通用する……みたいなボーダーラインってありますか?」
駒木:「んー、良い質問だけど難しいなぁ(笑)。まぁ、僕は一応『56〜57kg背負ってG3完勝』というのを一つの基準にしてるけどね。10年前のオークスを勝って、秋には名牝・ヒシアマゾンと好勝負したチョウカイキャロルがちょうどそんな感じだった。
 これが別定のG2を勝つだとか、G1で勝ち負け争いまでいった馬になると、もう牝馬限定では明らかに別格だね。無条件で本命つけても良い位」
リサ:「なるほど〜」
珠美:「今回の場合はアドマイヤグルーヴがそんな感じなんでしょうか?」
駒木:「一応はそういう事になるね。ただ、そうなるとこの馬と互角の勝負をしたスティルインラブの扱いが異様に難しくなってくるだろうけど。4歳になって成績に差が開いた理由づけをどうするか…ね。単なるスランプだったんなら、スティルインラブもアドマイヤと同じく牝馬では別格の扱いになるだろうし、もし早熟ゆえの能力減退だとしたらそうはいかないはずだから」
順子:「なんか、煮え切らない話ばっかりですね(苦笑)」
珠美:「……さて、それでは次に展開についてですが、今回は先行馬が少ないメンバー構成になりましたね」
駒木:「そうだね。逃げ含みの先行馬が2頭で、あと好位からレースを進める馬が3頭ほど。あとは中位から様子を窺う馬が5頭ほどいて、典型的な差し・追い込みタイプが7〜8頭ばかり。極端な頭数の差では無いけれども、先行馬の方がレースをやり易いのは事実だろうね。
 ペースは遅めの平均ペースくらいかな。メイショウバトラーがマイペースで逃げて、それをオースミハルカが追走。更にそれをスティルインラブが好位からマークと。馬群は割と縦に長いんだけど、その割には力勝負じゃなくて決め脚勝負になりそうな感じ。コースも今週から仮柵設置のBコースだし、やっぱり先行馬やや有利かな。
 アドマイヤグルーヴは中位からちょっと早めに仕掛けて出る形で、スイープトウショウはいつも通り最後方からジックリと。この馬の場合はもう、とことん自分に合ったレースをして、それに結果がついてくるかどうかだろう。ただ、今回は大分人気しちゃってるから、それを意識して早めに仕掛けるかも知れないなあ。そうなったら逆にヤバいと思うんだけど……」
順子:「博士の話を聞いていると、なんだか微妙に危なそうですね。でも逆に、博士が危ないって言ってる馬だからビュンと飛んで来そうな気もしますけど(笑)」
駒木:「うん、自分でもそう思う(苦笑)」
珠美:「さて、それではいよいよフォーカスを伺います。私たちも順番に発表していきましょうね」
順子:「了解です」
リサ:「ハーイ」
駒木:「じゃあ僕からか。とりあえず印はこんな感じ」

◎ 15 スティルインラブ
○ 12 アドマイヤグルーヴ
▲ 7 スイープトウショウ
△ 10 メイショウバトラー
× 6 レクレドール
× 4 オースミハルカ

 ……結局は人気3頭を上位に持って来たんだけど、ローテーション、展開からスティルインラブが一番確実性があると見て本命。何ていうのかな、一番エリザベス女王杯を勝ちに来てる感じだよね。
 他の2頭は勿論、凡走する可能性も少なくないんだけど、やっぱり地力が地力だから“正選手”の座は譲れないね。△印以下は、上位馬がコケた時のための“リザーバー”。要は補欠だね。
 講義用の当てに行くフォーカスとしては、馬連・馬単で15を軸にして印のついた5頭へ流しと7-12の組み合わせ。まぁ◎○▲で決まったら配当つかないけど(苦笑)。
 プライベート用の3連単は、×印の2頭は無視して、(15)-(7、10、12)−(7、10、12)と(7、12)−(7、12、15)−(7、12、15)の計10点としておこう。でも、こんなレースで10点買いしてちゃイカンので、当日の気配見ながら点数減らす事も考えます」
珠美:「私はアドマイヤグルーヴの反動が最小限に留まると信じて、12番を中心に。馬連12-15、7-12、7-15、10-12、4-12、6-12の6点です。でも、配当的にはちょっと……ですね(苦笑)」
順子:「わたしは3番グローリアスデイズ、8番ヤマニンアラバスタ、17番のエルノヴァの3頭を中心に……」
駒木:「おいおい、ここまでで一言も喋ってない馬ばっかりじゃないか(笑)」
順子:「だって博士と同じ馬買ってたら、いつまでたっても当たりませんから(笑)。最近日和り気味だったんで、今回はアグレッシブに行きます。3連単で(3、8、17)−(3、8、17)−(3、7、8、12、15、17)の24点。平気で1万倍とかありますから凄いですよ。当たったら帯封付きの札束です」
駒木:「100万馬券かぁ。確かに夢はあるけどなぁ……。じゃあ最後にリサちゃんだね」
リサ:「この秋になってから、博士も珠美サンも順子サンも予想当たってないですよね?」
駒木:「ん〜……まぁ遺憾ながら(苦笑)」
リサ:「なので、誰も本命にしてない7番スイープトウショウの単勝と、7番馬連流しで1、2、5、9、11、13、14、16、18の9点買いで」
駒木:「おいおい、じゃあさっきの質問は何だったんだ(笑)。みんな無茶苦茶だなぁ」
珠美:「……そ、それは、私たちが全くノーマークにしている馬ばかり狙うってこと?(汗)」
順子:「……リサ、怖い子──!!」
駒木:「しかし、これでまた4人ともハズレだったら悲惨だなぁ(苦笑)」
順子:「わたし、それに1000円賭けたいくらいです(笑)」
駒木:「まぁそういう予想なんで、またダメだったとしても笑って許して下さい。……それじゃ、終わろうか。みんな、お疲れ様」
リサ:「オツカレでしたー」
順子:「お疲れでーす」
珠美:「それでは、今日の講義を終わります。最後まで有難う御座いました」

 


 

2004年度第63回講義
11月12日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第2週分・合同)

 アニメ『げんしけん』を観ながら、「この絵は『ナディア』の島編か」…などと呟きたくなる秋の夜長、いかがお過ごしでしょうか、当講座専任講師の駒木ハヤトです。
 ところで今週は「サンデー」がメジャー各誌より一足先に合併号シーズンに突入。もうそんな時期なんですねぇ。もうあの『十五郎』からもう1年と思うと、月日が流れるのは早いもんですね(笑)。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(51号)に読み切り『スーパーメテオ』作画:高橋一郎)が掲載されます。
 高橋さんは02年下期「手塚賞」で準入選を受賞し、『ドーミエ〜エピソードI〜』で03年に本誌デビュー。その後、03年にもう1作、週刊本誌に読み切りを発表していますが、今回はそれから1年以上のブランクを経てのデビュー3作目ということになります。
 今回はバレーボール物のようですが、一筋縄ではいかない作風の作家さんだけに、どういった作品になるかは未知数。とにかく楽しみではありますね。

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(51号)に読み切り『師匠とぼく』作画:川口幸範)が掲載されます。
 この作品は、04年4月期の「十二傑賞」受賞作。タイミングに恵まれず、ここまで掲載が見送られて来たようですが、今回晴れて週刊本誌掲載と相成りました。
 川口さんは、「十二傑賞」受賞までに月例賞の審査員・編集部特別賞(=デビュー確約の賞より1ランク下の次点)を受賞する事3回という苦労人タイプの新人作家さん。この作品は長年の投稿生活の集大成という事になるのでしょうね。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(52号)に読み切り『あるふぁ!』作画:桜河貞宗)が掲載されます。
 桜河さんは増刊で03年3月号から8月号まで短期連載を経験済みの若手作家さん。今回が初の週刊本誌登場となります。(12日午後から夜にかけて、謝った情報を掲示していました事をお詫びいたします)

 ★新人賞の結果に関する情報

第18回ジャンプ十二傑新人漫画賞(04年9月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
 十二傑賞=1編
(週刊本誌or増刊に掲載決定)
  ・『バスチル』
   木村泰幸(26歳・神奈川)
 《岡野剛氏講評:結局主人公が何をやりたいのかがよく判らないものの、髪型を含めた主人公のキャラの面白さで最後まで読ませてくれた。》
 《編集部講評:セリフやキャラ作りに対して高い意識を感じる。勢いもあって一気に読ませるが、主人公のバスケットの思い入れに説得力が無かった》
 最終候補(選外佳作)=5編

  ・『砂人』(=審査員特別賞)
   小倉裕也(25歳・東京)
  ・『バーリトゥーダー』
   中田毅(23歳・千葉)
  ・『カケル、かける』
   大前貴史(23歳・兵庫)
  ・『書家』
   鈴木まど香(18歳・東京)
  ・『雄材大流』
   河合浩平(21歳・和歌山)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎十二傑賞の木村泰幸さん…03年11月期「十二傑」で最終候補。
 ◎最終候補の大前貴史さん…03年8月期「十二傑」で審査員
(許斐剛)特別賞、03年10月期「十二傑」にも投稿歴あり。また、「ウルトラジャンプ」の新人賞(03年前期)にも入賞の経験あり

 先月(佳作1作品、最終候補11作品)の反動でしょうか、今月は佳作ナシで最終候補作品も少なく、やや寂しい審査結果発表となりました。新人さんの層が特に分厚いと思われる「ジャンプ」でもこういう事があるものなんですね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り2本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年50号☆

 ◎読み切り『ストライカー義経』作画:加地君也 

 ●作者略歴
 1977年9月7日生まれの現在27歳
 97年3月期「天下一漫画賞」で佳作を受賞、その受賞作『天翔騎馬』が「赤マル」97年夏号に掲載されてデビューを果たす。
 その後は「赤マル」99年春号(三条陸さん原作の漫画担当)00年冬(新年)号、週刊本誌00年18号にそれぞれ読み切りを発表。それから2年のブランクを経て、週刊本誌02年43号に『暗闇にドッキリ』を発表すると、これが翌年連載化される(03年18号〜35号まで1クール半17回で打ち切り)。
 今回は連載終了後、約1年ぶりの復帰作となる。

 についての所見
 1年余のブランクがありましたが、「悪い意味で以前と比べて変化のない絵柄」…といったところでしょうか。
 まず、加地さんの描く絵は、全体的に線が細い割に緻密さに欠けており、どことなく雑に見えてしまいます。その上、人物(の顔)ごとの造型や美醜のコントラストが弱い(特に美形キャラを描く事が苦手な様子な)ため、インパクトまで不足している感も有ります。インパクトが弱い上に雑に見える絵柄では、読み手にはネガティブな印象しか与える事が出来ないでしょう。 

 ストーリー&設定についての所見
 まずストーリーですが、これ自体は失点がなるべく少なくなるように手堅くまとめられていると思います。ただ、見方を変えると、セールスポイントとオリジナリティに欠ける、無難過ぎでベタな勧善懲悪の話──つまりは、失点が少ない代わりに得点も少ない話になってしまったかも知れませんね。

 一方、明らかに失点の材料と思われるのが各種設定です。特にメインアイディアであるはずの“義経(牛若丸)&弁慶+サッカー”が、極めて中途半端なこじつけに終わってしまったのは致命的な欠陥と言わざるを得ないでしょう。“単なる高さのある垂直飛び=八艘飛び”で“顔面ブロック=弁慶仁王立ち”程度の結びつきでは、敢えて現実感の無いこの設定を採用した意義は薄く、まだ普通のサッカーマンガにして普通の青春ドラマにした方が無理がない分だけマシだったかも知れません。
 また、義経と弁慶のどちらが主役なのかが曖昧で、これは読み手の感情移入を阻害する要因だったのではないでしょうか。どうせベタなストーリーなら、弱々しい“義経”を、突如現れた強い“弁慶”が体を張ってサポートし、その頑張りで闘志に火を点けた“義経”が火事場のクソ力的に才能を発揮して八艘飛びシュート(?)を披露……といったパターンの方が、まだ筋が通っていたような気もします(それはそれでエラいベタさですが、あくまで「まだマシ」という例えで)。有り体に言って企画倒れに終わってしまった作品という感ですね。

 それでもまだ登場人物のキャラクターが上手く出来ていれば、キャラクター主導型の作品として評価する余地は有ったと思うのですが、残念ながら……。
 この作品の登場人物は、まるでストーリー進行上必要な設定が人間の姿を動いているようで、動機付けや性格形成の背景が極めて希薄。“(作者に)やらされている感”が非常に強かったです。

 今回の評価
 評価は赤点寸前のC寄りB−。判り易い奇抜な設定も良いですが、もっと読み手の心を惹き付ける人間やドラマを中に入れて欲しかったですね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週は時間も足りないので控えめに。

 まずは今週で第1部完となった『NARUTO』。個人的にはタイミング的にも「何故今に?」という思いが先に来てしまうのですが、良い余韻の残る演出はお見事でした。
 前から思っていた事なんですが、岸本さんはラストシーン(っぽいシーン含)を描くのが巧いなあと。近日再開するであろう第2部は、是非とも読後感の良い大団円でお願いしたい所です。『マキバオー』『ヒカ碁』など、第二部に突入した長編作品は失速してラストも尻すぼみになってしまう事も少なくないのですが、この作品は余力を残している内に上手く完結させてもらいたいなぁと思いますね。

 さて、そろそろ打ち切りサバイバルレースの行く末が気になる時期ですが、今週遂に『Wāqwāq』が実質最下位に転落。これは厳しいですね。これに加えてあと1作品打ち切りとなれば、往年の『ノルマンディーひみつ倶楽部』のように打ち切り圏内ギリギリで渋太く生き残って来た『未確認生物ゲドー』でしょうか。
 掲載順で言えば当然『武装錬金』も候補になるんでしょうが、連載1周年を過ぎ、単行本も中堅クラスと互角の部数で推移している現状を鑑みると、そうそう簡単には打ち切られないんじゃないかと思っています。今は毎週50ページ以上の読み切りを乗せないと誌面が埋まらないような状態ですし、敢えて単行本の売上げが伸びて来た作品に引導を渡してまで3作品を打ち切る必要性が見出せませんからね。
 まぁ単行本で作者自ら人気低迷を暴露している作品ですから予断を許さない情勢ではあるのでしょうが、今期を無事に乗り越えたなら、商業的な成績や今後の“伸びしろ”を考えた場合、年明け以降は『ミスフル』の方が危ないような気がしています。トーナメントの途中でバッサリ打ち切った『ホイッスル!』の前例がありますし、起死回生のサプライズが無ければ、近い内に苦しい立場に追い込まれるのではないでしょうか……とか、去年の今頃から同じ事を言ってるような(笑)。「ジャンプ」作品って、3クールを突破したら必要以上に打ち切られなくなるんですよねぇ。
 

☆「週刊少年サンデー」2004年50・51合併号☆

  ◎読み切りMAXI作画:佐藤周一郎

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 年齢と新人賞受賞歴は未判明
。以前増刊号の「新人コミック大賞」募集ページにカットを描いていたとの情報があり、同賞出身作家の可能性が高い。
 確認できた限りで一番古い掲載歴は月刊増刊01年9月号に掲載された読み切り『アルプスの闘魂 カンジ!』。デビュー当時はギャグ作家で、その後月刊増刊02年3月号、週刊本誌02年12号に発表した読み切りはいずれもギャグ作品だった。
 その後、週刊本誌02年34号に初のストーリー系作品『カラス〜the master of GAMES〜』を発表し、翌03年には月刊増刊で『PEACE MAKER』を短期連載する(03年12月号〜04年2月号)
 今回は短期連載終了以来の新作発表で、週刊本誌には2年ぶりの復帰作となる。

 についての所見
 美術的な画力や描き込みの精度に関してはお世辞にも高いとは言えません。しかし、線がスッキリと洗練されており、また、キャラの描き分けやディフォルメ、メカ(魔騎士)描写や動的表現など、マンガの絵として必要な要素においては軒並みプロの仕事が出来ている印象です。絵そのものが作品のクオリティを上げるところまではいきませんが、それでもマンガの記号としては全く問題なく機能している、「上手くはないが、よく出来ている絵」であると思います。
 蛇足ながら具体的に1つ注文を出させてもらうと、もう少しアクの強い造型の顔が描けるようになれば、更にメリハリがついて良いんじゃないかな…といったところでしょうか。

 ストーリー&設定についての所見
 この作品は良きにつけ悪しきにつけ、謎の巨大生物・魔騎士を巡るスケールの大きな世界観に尽きると思います。どことなく過去の名作アニメなどからモチーフを推測できそうではありますが、オリジナルの設定も絡めて上手くモチーフを融合させており、「サンデー」作品としてはなかなか新鮮ではなかったかな…と思います。
 ただ、余りにも惜しいことに、この世界観の中心的存在である魔騎士についての設定や作品内の歴史的背景が完全に説明不足で、そのために登場人物の言動、心理描写が全てピンボケになってしまいましたね。特に主人公と敵役の行動に関する動機付けが伝わって来ないのが痛く、これではストーリーや登場人物に感情移入のしようがありません。お話の内容を語る以前のところで躓いてしまった感があります。
 何と言いますか、「ダイヤの原石は宝石に非ず」という感じで、ただただ勿体無い作品でしたね。

 今回の評価
 ポテンシャル自体はA評価までいくような素材の作品だと思うのですが、完成度がゼロに近い低さでは失敗作の評価を出さざるを得ないといったところ。泣く泣くB−とさせてもらいます。

 ◎読み切り『二九球さん』作画:大塚じんべい

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 
年齢と新人賞受賞歴は未判明。
 デビューは週刊本誌04年21号に掲載の『もみあげキャプテン』。その直後に発売された増刊04年GW号にも読み切りを掲載しており、今回がデビュー3作目となる。

 についての所見
 デビュー作のレビューで「全体的に見て稚拙な部分が目立つものの、不思議と読み辛さは感じさせない」と述べたのですが、今回も同じ印象を抱きました。ギャグ作品ですから高い水準を求める事はしませんが、今はまだ“ヘタウマ”ではなく“ヘタウマっぽいヘタ”といったところですので、せめてもう少し丁寧に描く努力はしてもらいたいです。

 ギャグについての所見
 基本的なギャグの組み立て方やギャグのバリエーションの持たせ方については、必要最低限の基準をクリア出来ている
と思います。ギャグの密度についてもデビュー作以来の高い水準を保っていますね。
 ただ、今回はボケ、ツッコミ、リアクションのバランスが狂っていて、結果的にギャグの完成度が低く留まってしまったようでした。具体的に言うと、弱いボケに対して強いツッコミ、強いボケに弱いツッコミ、弱いボケに対して大き過ぎるリアクション…という、笑い所と白け所が併設されているパターンのギャグが多く、これでは笑おうと思った人でも笑い難くて仕方がないのではないでしょうか。失礼ながら、売れない若手お笑いグループのコントを見ているような感覚に囚われました。

 今回の評価
 今回はいかにも“笑いの歯車”が空回りしてしまった感があり、技術点を考慮してもB−評価に留めざるを得ません。いつになるか判りませんが、持ち前の技術をフルに活かし切った作品でリベンジしてもらいたいと思います。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「今、一番食べたいもの」。
 「食欲の秋」ということで、連載作家陣の最多回答は「松茸」でした。そうそうどこでも売っているというような物でもなく、更には自分で食べるためだけに買うには躊躇するような値段設定というところがミソなのでしょうか。
 ……しかし、「サンデー」作家の皆さんは分かってらっしゃらない。ここで企業名と商品名をバシっと出しておけば、その企業から商品がダンボール箱一杯にビシッと届くというのに、何故それをなさらないのか?(笑)。

 駒木は、「ステーキハウス・ミスターデンジャー」の肉をむせっかえる程食いたいですねぇ。12月には2回東京行く予定なんですが、最低1回は450gステーキセットを平らげに訪れたいと思ってます。
 ……ただ、予算を考えずというのなら、ここに一度で良いから行ってみたいです。恐ろしいほど旨いとは聞いているのですが、薦められるままに飲み食いしたら軽く5万は逝くという、同じ神戸にある店とはいえ、駒木の稼ぎでは皇居に入るのと同じ位敷居が高い所です(^^;;)。

 連載作品については、今週特に演出の良かった『結界師』を。何気ない会話の中に、これからのシナリオの伏線提示やキャラ設定の解説・描写を可能な限り詰め込んだと思われる、渾身の労作ネームですね。当講座昨年度の“新人賞”受賞作ですが、いよいよ新人の域を超えた本格的で骨太の作品に仕上がりつつあるようで、大変頼もしく思います。

 来週は「サンデー」が休みの分、「ジャンプ」のギャグ増刊や、これまでレビュー出来なかった「サンデー」増刊号の作品の「読書メモ」などがお送り出来れば…と思っています。まぁ、年末の事もありますので、時間と相談しながらになりますが、期待せずにお待ち下さい。

 


 

2004年度第62回講義
11月5日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第6週/11月第1週分・合同)

 この週末は色々な仕事にカタがつき、久々にちょっとだけ気楽な日々を過ごしております。とはいえ、11月という時期から色々とやるべき事を考えると、そうそう安閑とはしていられないわけですが……。
 何だか嫌な事ばかりある今日この頃ですが、もうしばらく某誌の背表紙に注目しておくと良い事があるそうなんで、とりあえずその日のすべき事を頑張ってやっておきたいと思います。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(50号)に読み切り『ストライカー義経』作画:加地君也)が掲載されます。
 どうやら本格的に開催中らしい“突き抜け作家復活サバイバルシリーズ(仮)”の第3弾は、『闇神コウ〜暗闇にドッキリ!〜』の加地君也さんが登場です。
 今回は源義経の生まれ変わりがサッカーをする…という、作品を読む前には言っちゃいけない類のツッコミを今にでも吐き出したくなりそうな内容みたいですが、果たしてどうなる事でしょうか(苦笑)。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(50・51合併号)に読み切り『MAXI』作画:佐藤周一郎)が掲載されます。
 佐藤さんは、02年に2度週刊本誌登場を果たしている若手作家さんですが、最近では一旦増刊に活動の場を移し、03年12月号から04年2月号まで短期連載を獲得。“週刊連載獲得まであと一歩”というポジションをキープしつつ、今回久々の週刊本誌進出となりました。
 最近、特に“連載予備軍”の若手作家さんの作品掲載が目立つ「サンデー」ですが、佐藤さんはその中でも“チーフ格”と言って良いポジションでしょう。過去に本誌掲載になった2作品は完成度の面であと一歩という感じでしたが、2年を経てどれくらい成長が見られたか、注目しておきたいところですね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年49号☆

 ◎読み切り『退魔師ネネと黒影』作画:蔵人健吾 

 ●作者略歴
 1975年4月12日生まれの現在29歳
 95年に「第31回MJ少年漫画大賞」で佳作を受賞、この受賞作『SINCE2030』「月刊少年ジャンプ」の95年8月増刊に掲載され、デビュー
 その後は週刊の方に活動の場を移し、97年上期「赤塚賞」で最終候補、そして翌98年上期では「赤塚賞」で準入選、「手塚賞」で佳作を同時受賞。「赤塚賞」の受賞作『世界平和と僕』「赤マル」98年夏号に掲載され、これが“週刊”デビュー。週刊本誌にも98年41号に初掲載を果たす。
 しかし、その後は年に1〜2度、増刊で新作を発表するペースとなり伸び悩み。01年には別ペンネームで「ガンガン」誌への移籍を模索する時期もあったとのこと。
 しかしその矢先、「赤マル」02年春号『SANTA! -サンタ-』掲載されると、これが『★SANTA!★』に改題の上、03年より連載化される。デビュー以来8年目での嬉しい初の連載となったが、1クール12回で無念の打ち切りとなった。
 今回は連載終了以来、1年数ヶ月ぶりの復帰作となる。

 についての所見
 『★SANTA!★』連載中は絵柄の荒れが特に目立っていた蔵人さんの絵ですが、時間に追われなければそれなりのクオリティは提供出来るのは以前からの作品でも実証済みで、今回も全体的な完成度はそれほど悪くは無いと思います。
 ただ、基本的にデッサンの出来てない絵だけに、アングルによって顔のパーツのバランスが狂ったり、人間の全身像がやや不自然だったりする所が見受けられ、曲りなりにも連載経験作家さんが描く絵としては物足りなさが残りますね。現在の連載陣と比較すれば、やはり見劣りは否めないところです。

 ストーリー&設定についての所見
 結論から先に言うと、こちらは落第点をつけなければならないクオリティでしょう。ストーリーは一応作品の体を成していますが、そこでギリギリ精一杯という感がありました。

 まず、以前からの課題である脚本の拙さがほとんど修正されていないのが大変気になりました。全編、長々とした説明的セリフのオンパレードで、しかもそれが場面転換や効果的な演出をほとんど施さずに延々と続いているため、作品半ばの中弛みが酷かったように思えます。「橋田寿賀子が脚本描いたアクション映画ってこうなるのかな」…などと考えながら読んでました(笑)。
 あと蛇足ながら蔵人さんの脚本力の無さを象徴しているシーンなので指摘しておきますと、80年前の回想シーンで「リスク」という言葉が出て来るというのは如何なものかと。そりゃ1920年代の日本でも英語は使って構わないんですが、“80年前の日本”という設定を強調しなければならない場面でそりゃないよなぁと。

 また、シナリオの流れも、キャラクターの描写を全くないがしろにして設定の説明が延々と続く…というメリハリを欠いたものになってしまっています。それどころか、キャラクターたちに必然性の無い、動機不明の行動が目立っていて理解に苦しみます。
 
まぁこれは、話の終盤で伏線が処理されれば一応理屈は判るようにのですが、それで果たしてシナリオの完成度が高まったり、読み手へに与えるカタルシスが増したりしたかどうかというと……。個人的には効果が無かったどころか逆効果とさえ映ります。厳しい論調になりますが、本末転倒・独り善がり・自己満足的な趣向の凝らし方に終始し、作品のクオリティを上げるにあたって、もっと大事にしなければならない所を疎かにしていると言わざるを得ません。

 今回の評価
 評価はC寄りB−とします。脚本、演出のスキルがもう少し上がって来ないと、今後の展開も厳しいものになるでしょう。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 まず今週は『銀魂』から。駒木が記憶する限りでは、連載開始以来初の3話構成の今エピソードも滞りなく幕。どうも地下闘技場の真上には野球場があるような気がして仕方が無いのは、多分駒木が最近雀荘の順番待ちで『グラップラー刃牙』を1巻から通し読みしているからでしょう(笑)。
 お話の方は、久々に空知さんの持ち味が出た人情噺でしたね。脚本力のある作家さんだけあって、ラストも決まってました。ただ、もうちょっとプロット・シナリオから予定調和や手垢の付いた感じを拭って欲しかった気もします。良い所が一杯ある作家さんだけに、余計に頑張って欲しいと思ってしまうのですよ。

 『家庭教師ヒットマンREBORN!』は、またまた新キャラ登場。作品の行き詰まりを打破するために新キャラを投入するのは確かに効果が有るのですが、それにしてもここまで無軌道に登場人物を増やし過ぎるのは悪性のインフレという気もして来ます。
 掲載順を考慮すると2クール突破も濃厚で、いよいよ年単位の長期連載も視野に入って来た現状、今この作品に必要なのは新キャラよりも、一本筋の通った中身の濃いストーリーではないのかな…などと思ったりもします。まぁ、覚えてられないくらい設定とシナリオの複雑なマンガが増えている昨今、クオリティを抜きにして考えると、こういう肩の力を抜いて流せる作品が1つ、2つ有っても良いとは思うのですけれどもね。

 で、制約された中の工夫も遂に行き着く所まで行ったな、という感じの『いちご100%』。もうこの歳になると極めて客観的に「よくやるなぁ」と眺めるだけなのですが、免疫の出来てない男子中学生とかはたまらんでしょうなぁ(笑)。
 しかし、大増23ページにしてまでやる事がコレというのは……この作品的には正着なんでしょうな、やっぱり。

「週刊少年サンデー」2004年49号☆

 ◎読み切り『BooTa』作画:河北タケシ

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 
年齢と新人賞受賞歴は未判明。
 デビューは02年春の増刊号「サンデーR」のルーキートライアルにて。その後、増刊03年4月号週刊本誌04年19号にて読み切りを発表。

 についての所見
 前作の時点でも既にそうでしたが、“ギャグ作品としてなら連載級”の水準には達しているでしょう。今回は前作では見られなかった非美形キャラもキチンと描かれていますし、シリアスとディフォルメの使い分けも(やや粗が目立ちますが)出来ています。全体的に見て、合格点のデキだと言えるのではないでしょうか。

 ギャグについての所見
 まず、ギャグの見せ方については上手く出来ていると思います。ボケとツッコミのテンポが軽妙ですし、セリフもなかなか上手に練られている感じですね。“間”の持たせ方も理に適ったテクニックが認められます。
 ただ、今回の作品の場合、ラストのオチが余りにもミエミエで意外性が無く、それまで地道に積み重ねて来た前フリが全て台無しになってしまったような気がしますし、何の落ち度も無く壊されてしまう豚の貯金箱・ブー太が余りに哀れで笑うに笑えない…という構造的欠陥も有りました。これでブー太が壊されても仕方ないような腹黒キャラ(例えばモリタイシさんの『茂志田☆諸君!!』に出て来るピエール=ホソナガみたいな)だったなら、まだ素直に笑えたと思うのですが……。

 今回の評価
 諸々の問題点は否定出来ませんが、絵やギャグの技術点を重視してB評価としておきたいと思います。作者コメントを読むと、今回はスランプ脱出の契機となった作品だそうですので、今度は絶好調期に新作を読んでみたいものです。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「アルバイト経験」。
 これはマンガ家さんに限らず、激しく個人差がありますよね。皆無に近い人もいれば腐るほどある人もいると。要は大学行ってる頃の生活スタイルと、学校を卒業してから定職に就く(マンガ家の場合は連載獲得)までの期間次第という事なんでしょうが……。
 連載作家陣の中で気になる回答としては、藤崎聖人さんの「夜のウェイター」というもの。駒木の聞いた話では、確か藤崎さんって男のペンネームを使っている女流作家だったような……。そう考えると、何やら深い答えのような気も。

 駒木のアルバイト経験については、イチから喋ってると日が暮れるどころか年が明けますので、労働経済論「役に立たない? アルバイト時給案内」、及び社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト潜入レポ」の講義レジュメをご覧下さい。
 ……そういや、今日、近所のショッピングセンター前で久々にハンドインをやってるモデム配り要員に出くわしました。どうも今度は光用のモデムを配ってるようでした。進歩の無さもここまで来ると、何だか『キン肉マン』か『テニスの王子様』を見るようで逆に清々しいような。

 『ワイルドライフ』何か物凄く唐突に無意味なタイミングで女医さんの着替えシーン(しかも赤レース下着)が挿入されてたんですが、これは単なるサービスカットなのか、それともあだち充さんへのオマージュなのか。しかしこれ、完膚なきまでに萌えませんなあ

 ところで『ハヤテのごとく!』、先日の第3回レビューでは『ネギま!』を更に人気獲り要素だけに特化したものじゃないのか…とお話したんですが、どうもここ2回を見てると、むしろ『スピンちゃん』−ギャグ+萌え)というような気がしてきました。まぁどっちにしろ、「それってどうなの?」という話ではあるんですが(笑)。

 話が一気に盛り上がって来たのが『クロザクロ』。遂に“擬似スーパーサイヤ人化”炸裂です。
 ただ、こういう“最後の手段”発動は、もうちょっと主人公サイドがピンチに陥ってから(というか死ぬ一歩手前まで追い詰められてから)じゃないと効果半減なので、非常に惜しいと思ってしまいました。ギリギリの状況に置かれてこそ、読み手の感情に訴える諸々に説得力が持たせられると思うんですが、どうでしょうか。

 ……といったところで今週はこれくらいに。そういや、「ジャンプ」でギャグ増刊が発売されるんですが、これをどうしたものか、現在考慮中です。とりあえず読んでみて、全作品レビューする価値があると思えばする…という感じになると思いますが……。
 何はともあれ、それでは、また来週。

 


 

2004年第61回講義
11月2日(火) 
歴史学(一般教養)
「緊急企画・アメリカ大統領選挙“名勝負”選」

 いきなりですが、一夜限りの歴史学講義復活です。
 実は今回の講義内容は、講師先の高校で必要に迫られて作ったレジュメなんですが、時期的にタイムリーな話題ですし、そこだけで使い捨てるには余りに勿体無いので、こちらでも講義を実施し、アーカイブに収録させておく事にしました。
 まぁそういう事情ですので、いつもとは若干違う雰囲気の講義に違和感を感じる方もいらっしゃるでしょうが、気楽に聞いてもらえればと思います。本音を言えば、こちら用にもう少し加筆修正したいんですが、それはまた別の機会に増補版をやるということでご勘弁ください。

 ──では、最後までどうか何卒。


 1800年/制度の欠陥が生んだ軋轢と悲劇

主要候補者名

政党

選挙人

下院票

トーマス・ジェファーソン

反連邦

73

10

アーロン・バー

反連邦

73

ジョン・アダムズ

連邦

65

───

 アメリカ独立以来4度目の大統領選。当時は州議会で大統領選挙人を指名する方式が一般的で、選挙人は各2票を投じ、得票数1位が大統領、同じく2位が副大統領に選出されるルールだった。
 しかしこの制度では、政党制度が整備されると大統領候補と副大統領候補が組織票によって同票数で並んでしまうので、混
乱を引き起こす原因となった。事実、この時は反連邦派の代表2人が同票数で並び、勝敗の帰趨は国会議員らによる決選投票(州ごとに意見を統一して1票を投じる形式)に委ねられる事に。本来なら副大統領候補だったバーは決選投票を辞退すべきであったが、彼もここに至って野心を抱いたため、状況は更に混迷の度を深めた。
 野党・連邦派が優勢の州ではバーを当選させようという動きもあったが、結局、秩序を重んじた連邦派の大物・ハミルトンの「連邦派もジェファーソンを支持すべき」という鶴の一声で大勢は決し、決選投票はジェファーソンが10対4の大差で勝利するところとなった。これ以後、バーは政界内で徐々に孤立し、1804
年には因縁のハミルトンと深刻な対立の末、決闘で彼を射殺してしまう。当時はこれで罪に問われる事はなかったが、バーは世論の支持を失い事実上失脚する。挙句の果てには流れ着いた西部で反乱未遂まで起こして晩節を汚した。
 この時の混乱を受け、選挙制度は次期大統領選を前に、副大統領候補は大統領候補と別枠で扱われるように変更されたが、もしもこの改正が4年前に行われていれば、1800年の選挙が生んだ諸々の軋轢と悲劇も避けられたに違いない。
 

1824年/空前絶後のバトルロワイヤル

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

下院票

ジョン・Q・アダムズ

反連邦

113,112

84

13

アンドリュー・ジャクソン

反連邦

151,271

99

7

ウィリアム・クロフォード

反連邦

40,856

41

4

ヘンリー・クレイ

反連邦

47,531

37

0

 連邦派が崩壊し、二大政党制が崩壊。ところが今度は反連邦派内の派閥争いから主要4候補が乱立する事態となった。この頃から導入された一般投票(注:導入当初は制限選挙制で、段階的に普通選挙制へ移行。19世紀までは一部州で一般投票を実施せず、州議会で選挙人を選出するところもあった)の結果はジャクソンが1位だったが、獲得選挙人数が全体の過半数131人)に達しなかったため、24年ぶりに下院議員による決戦投票が実施された。
 決選投票の行方は、一般投票上位の2人、ジャクソンとアダムスが下位候補の票をどれだけ吸収出来るかにかかっていたが、クレイ派の議員が政策の近かったアダムスを支持。これが決め手となって史上唯一の
“ワイルドカード”からの逆転当選が実現することとなった。

 1844年/それは“自明の運命”のままに

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

ジェームズ・ポーク

民主党

1,339,494

170

ヘンリー・クレイ

ホイッグ党

1,300,004

105

 当時のアメリカは、アメリカ人による独立国が作られていたテキサス地方をはじめとする西部地方の併合・領土拡大が最大の関心事で、当然のようにこれが大統領選の争点となった。
 ホイッグ党(現在の共和党に繋がる、反民主党の政党)の候補者は知名度抜群の大物政治家・クレイ。一方の民主党は現職大統領のビューレンを引っ込めて、当時無名の領土拡大論者・ポークを擁立してイチかバチかの勝負に出る。ホイッグ党は「ポーク? それは誰だい?」という対立候補を小馬鹿にしたような、それでいて的確なキャッチフレーズをぶつけたが、フタを開けてみれば史上に残る大番狂わせに。結果として獲得選挙人数では大差がついたが、一般投票は僅差の接戦だった。
 こうして大統領になったポークは「マニフェスト・ディスティニィ(自明の運命)のフレーズの下にテキサスをはじめ、オレゴン、カリフォルニアなどを次々と併合。この領土拡大は現在のアメリカ領の基盤を築き、多くの歴史的出来事の遠因となった。まさにこの国の「自明の運命」を象徴する選挙戦だと言える。

1860年/国民の選択は“南北分裂”

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

エイブラハム・リンカーン

共和党

1,865,908

180

ジョン・ブレッキニリッジ

南部民主党

848,019

72

ジョン・ベル

連合

590,901

39

ステファン・ダグラス

民主党

1,380,202

12

  奴隷制廃止問題や貿易政策を主な原因とする南北対立は年を追うごとに深刻化してゆき、ついに南部諸州が合衆国離脱も辞さぬという最終段階へ突入した。また、この南北対立は政党の分裂・再編成を引き起こし、この年の大統領選は、反奴隷制の旗印の下に結成された共和党や南北に分裂した民主党2派など、有力4者による大混戦となった。
 選挙戦は、骨肉相食む分裂選挙を強いられた民主党2派を尻目に、ベル派の共和党離脱の影響を最小限度に留めた共和党のリンカーンが北部諸州を手堅くまとめ、
40%に満たない一般投票得票率ながら約6割の選挙人を押さえる効率的な戦い振りで勝利した。
 しかしこの直後、この結果に絶望した南部諸州はついに合衆国を離脱してアメリカ連合国独立を宣言。かの『風と共に去りぬ』でも知られる、血みどろの南北戦争へと突入してゆくのである。
 

1876年/19世紀のブッシュVSゴア

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

ラザフォード・ヘイズ

共和党

4,034,311

185

アミュエル・ティルデン

民主党

4,288,546

184

 史上稀に見る大接戦、そして不手際の重なった選挙として“名高い”大統領選がこれだ。後述する2000年の大統領選との共通点を指摘する向きも多く、まさに「19世紀のブッシュVSゴア」である。
 選挙戦は共和・民主両党がそれぞれの地盤を固めていく形で平穏に推移していたが、オレゴン・フロリダなど4州において、選挙人に対する暴力的な干渉による不正投票という前代未聞の不祥事が判明。しかもこの4州の選挙人票の行方が当選を左右するという状況となり、選挙結果は選挙管理委員会がどのような結論を下すかによって決定されるという、これまた前代未聞の事態に発展した。
 結局は「民主党はヘイズの当選を認め、そのかわりに共和党は南北戦争後から続く南部諸州への強硬な政治干渉を止める」という“政治取引”で決着。ただ、これにより民主党勢力の揺り戻しが起こった南部諸州では、南北戦争後向上したはずの黒人の地位が再び後退を始めるという“副作用”を引き起こす結果ともなった。

 1892年/つかぬ間の“三大政党制”

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

グロバー・クリーブランド

民主党

5,553,898

277

ベンジャミン・ハリソン

共和党

5,190,819

145

ジェームズ・ウィーバー

人民党

1,026,595

22

 西部開拓も終わりを告げた19世紀末、アメリカは産業革命によって国力を高め、世界の強国としての地位を固めつつあった。しかし、そんなアメリカで無視された存在であったのが西部・南部の農民らで、彼らは既存の二大政党が自分たちの望む政策を採ってくれないと悟ると独自の政治活動へと動き出した。
 18
90年の中間選挙で複数の国会議席を確保したことに勢いを得た彼らは、大統領選を目前にした1892年7月、ついに共和・民主に次ぐ第3の政党・人民党を結成するに至った。
 しかし二大政党制が骨の髄まで浸透した大統領選の壁は厚く、第三勢力としては異例である
100万票強の一般票を獲得するが、選挙人獲得数は6州の計22人にとどまり大敗。4年後の大統領選では政策を同じくする民主党と共闘するも、新興勢力の出現に警戒心を強めた大実業家から莫大な経済的支援を受けた共和党の前に敗北してしまう。これで人民党は事実上崩壊し、三大政党制への夢は儚く散ったのである。

 1960年/テレビジョンが産んだ時代の寵児

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

ジョン・F・ケネディ

民主党

34,220,984

303

リチャード・ニクソン

共和党

34,108,157

219

 40年以上経った現在でも未だに語り草になっている大逆転劇で、当選を目指すために求められる候補者の素質が大きく変化したという意味では、大統領選挙史の画期ともなった選挙でもある。
 2期の人気を全うしたアイゼンハワー大統領の後継候補としてスンナリ選出された共和党の候補者はニクソン。対するは、若さと豊富な資金力に恵まれて民主党予備選を戦い抜いたジョン・
F・ケネディ。選挙戦前半はニクソンが優勢、しかし史上初めて開催されたテレビ中継の候補者討論会の映像が情勢を一変させる。
 テレビ討論当日、若さと情熱を己の体に宿らせてエネルギッシュな印象を振りまいたケネディとは対照的に、ニクソンはテレビ映えするための顔のメイクを拒否し、地味な色の服を身にまとい、さらには直前に故障したヒザの痛みに耐えかねて顔を歪めているという“三重苦”の状態。
 果たして、電波に乗って全米中に放映されたニクソンの姿は、対立候補の活き活きとした様子と比べると余りにも無残であった。結局、この日を境に情勢は一変。前半の劣勢を完全に跳ね返したケネディが勝利を収めることとなる。彼は史上初のカトリック教徒の大統領、そして史上初のテレビ討論での好印象が選挙での勝因となった大統領になったわけである。
 そして一方、敗れたニクソンは8年後の大統領選に再挑戦し当選するが、この時は徹底してテレビ討論への出演を拒否したことでも知られている。この時の手痛い失敗がよほど懲りたのであろう。
 3年後、ケネディは遊説先のダラスで暗殺されるが、その模様は初の衛星中継として日本でも報じられた。大統領の第一歩と最後の瞬間を共にテレビで放映されたケネディは、まさにテレビ時代の象徴といえる人物であった。

 1992年/政党VS政党VS1人 

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

ビル・クリントン

民主党

 44,909,806

370

ジョージ・ブッシュSr.

共和党

39,104,550

168

H・ロス・ペロー

無所属

19,743,821

0

レーガン時代から通算して12年もの長期に及んだ共和党政権だったが、大統領選を前にして経済の低迷から支持率は低下。以前の勢いは衰えていた。一方、ブッシュ大統領の支持率が高かった湾岸戦争当時に予備選挙を迎えた民主党は、敗戦を恐れた有力政治家が早々にリタイヤしており、候補者に指名されたのはまだ46歳の若きアーカンソー州知事・クリントンであった。
 そんな中、テキサスの大実業家・ペローが無所属、つまり単なる一個人として大統領選に出馬表明。莫大な財産を選挙運動に投じ、低迷した経済の立て直しに関する諸政策を公約に引っ提げて強大なる二大政党に挑んだ。
 この一見無謀とも言える挑戦は予想外に有権者の支持を集め、なんと世論調査で
15%を越える支持率をマーク。通常は二大政党に属する候補しか参加出来ないテレビ討論への出場を果たし、大物2人を相手に堂々と渡り合った。
 しかし、州単位で得票第1位を獲らなければ得票が全て死票となる大統領選は、一個人が戦うには余りにも厳しい舞台だった。ペローは全国から約
2000万票を得ながらも、肝心の選挙人獲得数はゼロ。結局のところ彼の挑戦は、共和党支持層の票を奪って、民主党に1976年にカーターが当選して以来となる勝利を提供した立役者を演じただけに終わる。ペローは4年後の選挙でも再挑戦するが得票を大きく減らし、2000年の選挙では立候補せず。事実上政界の表舞台から退場した。 

2000年/そして、歴史は繰り返す。

主要候補者名

政党

一般投票得票

選挙人

ジョージ・ブッシュJr.

共和党

50,460,110

271

アルバート・ゴア

民主党

51,003,926

266

 未だ記憶に新しい前回選挙。2期8年の任期を全うしたクリントンに代わる新大統領を選ぶ戦いは、共和・民主両党とも政策の相違点があまり無く、選挙戦は前半戦から史上稀に見る大接戦ムードのまま投票日に突入した。巷では「ターミネーターとチャーリー・ブラウン(スヌーピーの飼い主の少年)の戦い」と言われ、争点は政策でも政党でもなく「どっちの人物がマシか」であったと言える。
 そして選挙当日。開票が進む中でも大接戦は続き、
49州とコロンビア特別区の開票結果が確定しても両候補は過半数の選挙人を獲得できず、勝負の行方は残るフロリダ州の開票結果に委ねられた。だが、このフロリダ州の開票結果が数百票差の大接戦であった上、有効か無効かの判断が困難な票が多数見受けられたことから、得票の再審査・再集計を巡って裁判所まで巻き込んだ大騒動となる。
 
1876年以来の泥仕合となった選挙戦の結末は、約1ヶ月にも及ぶ裁判の末にブッシュの勝利で決着したが、混乱を招くような投票制度の是非を含め、様々な禍根を残す結果になってしまったのは周知の通りである。


 ……ということで、いかがでしたか? 本当は、20世紀前半からもいくつか採り上げたかったのですが、ワンサイドゲームが多かった時期で、更には物理的な余裕が無かった事から諦めた次第です。

 そして2004年の大統領選挙は、日本時間の明日投票・開票されます。アメリカを4年間引っ張るのはアホアゴか分かりませんが、せっかく日本の祭日に選挙をやってくれるのですから、スポーツ中継を観るように楽しみたいと思ってます。ではでは。


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