2月25日付講義の続き

 さて、今回紹介する「カラフルトライアル」の講評は第4回の分になります。
 この第4回では2つの入選作が出て、しかも、もう1作品が入選まであと一歩というところまで来たということで、比較的“豊作”の回だったようです。まずは、その総評から紹介しましょう。

 『入選作は必ず掲載』のカラフルBeeオリジナルマンガ賞「カラフルトライアル」。第4回には13作品の応募があり、千葉哲太郎さんの「がんばる女のコ」と、翻田亜流さんの「DELI−NURSE」の2本を入選とさせていただきました。この2本は、次ページ以降に掲載させていただき、当社規定の原稿料をお支払いさせていただきます。
 実は両者の方とも、第2回では準入選とさせていただきました。今回そのおふたりがそろって入選ということで、編集部が無理矢理入選にしたのでは、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが(汗)、純粋に今回の13本の中で1、2を争う完成度でした。もちろん、まだまだ商業作品としては未熟な点も多いのですが、これからのがんばりに期待したいと思います!
 入選の2作品とともに、九頭人さんの「ドレイドー」も最終候補に残ったのですが、Hシーンが散発的でページ数も少なかった点で入選には至りませんでした。本当に惜しかったです。
(以下略)

 誰もそんな事気にしてないのに、わざわざ「無理矢理入選にしたのでは、と思う方がいらっしゃるかも……」と述べている辺り、余計に疑わしい気持ちを抱いてしまいますが。何だか、喋りすぎて墓穴を掘った、『警部(補)・古畑任三郎』での明石家さんま演じる弁護士みたいな言い訳です。
 また、作品全体のバランスはそっちのけで、Hシーンの絶対量が足りないだけで最終候補作を選外に叩き落してしまうという点で、逆に明確な選考基準が浮き彫りになっていますね。ちなみに、この号の『ゲノム』では、パクマンという名の、どこかで聞いた事あるような名前のロボットが、「あーわかったわかった !! お前らとか純愛エロゲーを勧めるやつとかもう知らん !!」とブチギレるシーンがあるのですが、編集部員の思いは、電波として発信され、ギャグマンガ担当の作家さんの脳にまで届いてしまうようです
 少なくとも、この雑誌の編集部で「ビジュアルノベル『AIR』をプレイして泣いた」などと告白しようものなら、編集部員全員から、『鉄鍋のジャン』の主人公のような勢いで罵倒される事でしょう。

 もうこの時点で腹八分目以上の感がありますが、今日の講義は「COCO壱番屋」の1300gカレー級と認識して頂いて、さらに続けたいと思います。次はいよいよ、入選2作品の講評を紹介します。
 まずは、千葉哲太郎さんの『がんばる女のコ』の講評から。

 タイプの違う2人の女の子のH。おっぱいを責めるところから始まるHや、Hの最中の表情なども良く、オーソドックスですが濃厚で読者好みの作品に仕上がったと思います。ただ、キャラの描き分けがうまくできておらず、絡みのシーンでは2人の区別がつきづらかったです。また、全体的に原稿が白っぽく見えたので、背景にもっと力を入れてほしかったと思います。今度はこのHシーンを活かして、例えば「強気の剣道少女と弱気なんだけど天才少年剣士のH」といった、もっともっとHな要素を盛り込んだ作品を期待します!

 この講評を書いた編集者は胸から責めるのがお好きなようですね。それはそれで結構な事でしょう。
 しかし、自分の好きなパターンの作品が来たからといって、勝手に「読者好み」と断じるのはどうかと思う
のですが。また、我々読者は、編集者の性生活まで知りたくありませんので、せめて自分の趣味嗜好くらいは、もう少しボカシを入れて書いて頂きたいと願う所存です。
 それにしても、「キャラの描き分けが不完全」とか「背景が真っ白」という、マンガにとって致命的な欠陥が2点あるにも関わらず、Hシーンが「胸を責めるところから始まる濃厚なH」だっただけで、それを帳消しにしてしまうところに、ある種の開き直りが見えて、非常に清清しいですね。この辺り、Hが散発的でボリューム不足だっただけで落選した最終候補作品と好対照です。
 しかし、ここで講評の書き手が勧めている「強気の剣道少女と弱気なんだけど天才少年剣士のH」、これなんですが、実は駒木、以前この雑誌でまさにこのシチュエーションと同じ作品を読んだ事があるのです。
 編集部員がネタ被らせてどうする、とツッコミを入れたくなる一方で、「そういや、その作品は、輪にかけて実用性が高かったなあ」などと、思いを巡らしたりしました。やはり恐るべきは電波の力でしょうか。

 しかし、この講評もまだ“トリ前”であります。
 さぁ、次はいよいよ大トリ翻田亜流さんの「DELI−NURSE」に対する講評です。

 キャラクターのかわいさは応募作品の中で随一でした。ただ、やはり弱いのはHシーン。フェラチオをしてから挿入、というだけでは「Hシーンを定番どおりに入れてみました」というふうに見えてしまいます。この作品でしたら、フェラチオシーンでも「最初は舌先で、おずおずとペニスの先端をなめる」とすれば初々しい女の子が恥ずかしながらフェラをしてくれる雰囲気が出ますし、「おま○こをいじられた女の子の目がトローンとして無抵抗になる」ようにすれば挿入時のH度も上がると思います。もっと細かくHのことを考えれば、絶対にもっと良くなると思います。

 やはり胸から責めないと、評価は低いようですね。「カラフルトライアル」に応募する作品は、まず第一に胸から責めるHを! …という事でしょうか。何せ、背景やキャラ描き分けも無視しての選考基準ですからね。胸からH。
 しかし、それにしても、この具体的なアドバイスの数々はどうでしょうか。まるで新人ホテトル嬢にアドバイスするマネージャー、もしくはイメクラ嬢に注文をつける客のような趣がありますね。多分、イメクラ嬢の中では一番嫌われるタイプの客だと思われます。ロッカールームで「あのバカ」扱いされている悲しい絵柄が目に浮かんでは消えてゆきます
 この講評を書かれた編集者さんには、せめて実生活では大人しく寡黙に過ごされるよう、僭越ながら助言申し上げます。
 
 ……いやはや、さすがに駒木も満腹になりました。
 この「カラフルトライアル」、実は雑誌「カラフルBee」の全面リニューアルが近いため、次回以降の実施が微妙になっております。しかし、せっかく出来た独創的な新人賞なのですから、リニューアル後も是非、この企画は継続される事を祈りたいと思います。それでは、今日はこれまで。 (この項終わり)


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