「社会学講座」アーカイブ(競馬学関連・13)

※検索エンジンから来られた方は、トップページへどうぞ。


講義一覧

10/21 競馬学特論 「ディープインパクト三冠なるか? 菊花賞直前プレビュー」

 

2005年第38回講義
10月21日(金) 競馬学特論
「ディープインパクト三冠なるか? 菊花賞直前プレビュー」

珠美:「講義の場では、随分とご無沙汰しておりました。当講座助手の栗藤珠美です。
 今週はディープインパクトの三冠達成が懸った菊花賞が行われるということで、当講座でも久々に競馬学講義を実施することになりました。今日は最後まで宜しくお願い申し上げます」

駒木:「どうも駒木です。……なんか、久しぶりにこういうトーク形式の講義をやると、何だか落ち着かないもんだね。心細いっていうか、足元覚束ないっていうか(苦笑)。
 ……なので、今日は他の研究室メンバーも交えようと──」
順子:「はーい、一色順子です! 今日はディープインパクトを外した馬券が買えないか研究しに来ました(笑)」
駒木:「なんだその空気読めてない第一声は(苦笑)。……ていうか、リサちゃんも呼んだはずだけど来てないのかな?」
順子:「あ、あの子、大学の仲間と昨日から京都競馬場に並びに行ってます(笑)。だから今日は欠席させて下さい、ですって」
珠美:「き、昨日から?」 
駒木:「それは麗しき学生生活だねぇ(笑)。でも徹夜組の一番乗りは、秋華賞が終わった直後から並んでいるそうだ(笑)。凄いと言うのかバカと言うのか。
 でもそんな事、競馬ブームの頃でもなかなか無かった事だよね。まぁ盛り上がらないより余程マシじゃないのかな。2年前のネオユニヴァースの時とは大違いだ。ネオと違って無敗だから、とかバカみたいに強いから、というんじゃなくて、これはディープインパクトが持ってる得体の知れないカリスマ性の所為のような気もするね。
 これが一過性の“熱病”で終わっちゃうのか、それともオグリキャップみたいに、10年規模の競馬ブームを起こさせる起爆剤になるのか。まぁそういう辺りも注目ってところなんだろうね」
珠美:「……ところで博士は、11年前のナリタブライアンの三冠達成をリアルタイムでご覧になってるんですよね。その時の盛り上がり方はいかがでしたか?」
駒木:「そうだなぁ……。これは人によって感じ方も違うかも知れないけど、取り立てて『ついに三冠!』という感じじゃなかったような気がするね。勿論、競馬マスコミはそれなりに盛り上げてはいたし、ファンも盛り上がってはいたけれども、普段のG1と全く別物って感じじゃなかった」
順子:「そんなもんだったんですか? 菊花賞のビデオ観ると、杉本(清アナウンサー)さんが『10年ぶり! 10年ぶりの三冠馬!』って叫んでたんで、てっきり物凄く盛り上がってるもんだと……」
駒木:「まぁあの場面でアナウンサーが白けてちゃどうしようもない(笑)。…んー、何て言うのかな、ブライアンの場合は漠然と三冠達成が規定路線みたいな感じだったからね。『トライアルは2着だったけど、まぁ普通に三冠獲るんだろうなぁ』みたいなね」
順子:「普通に三冠獲るだろうって(笑)」
駒木:「それくらい強かったって事だよ。ファンの興味は三冠獲った後、暮れの有馬記念で兄貴のビワハヤヒデと対決する所に飛んでたからねぇ。しかもそれが1週間前の天皇賞でハヤヒデが怪我して引退してダメになったばかりだったから、むしろ少し盛り下がってたかも知れない。杉本さんの実況の『弟は大丈夫だ!』ってフレーズも、ここだけの話、ちょっとスベってた。宝塚記念の『アイルトンセナ、いやアイルトンシンボリ』ほどじゃないけど(笑)」
珠美:「そういう意味では、ナリタブライアンと同様に三冠達成が濃厚だと思われるディープインパクトが、これほど注目されるのは興味深いですね」
駒木:「本当にね。まぁタイミングもあるんだろうけど、さっき言ったようにディープインパクトそのものに魅力があるんだろうね。これほど1頭の馬で盛り上がってるのって、多分ハルウララ以来じゃないかと思うんだけど」
順子:「最弱か最強か、ですか(笑)」
珠美:「どちらにしろ、競馬界全体が注目されるのは良い事ですよね」
駒木:「そうだね。例えば最近僕がハマってるプロボクシングの業界なんか、世界チャンピオンが日本のジムに何人もいるのに、世間的には全然盛り上がってないわけだよ。一応、業界一の人気選手扱いの亀田興毅にしたって、試合会場はガラガラだし、新聞記事ももっぱら格闘技欄の穴埋め記事がせいぜいだ。
 そういう意味では、業界を代表する最強の存在が正しい形で大きくクローズアップされるという事だけでも恵まれてるとは思うよ。プロ野球とかと違って、いつも注目されてるとは限らないスポーツだしね、競馬って。こういう時に思う存分注目されておいた方が良い」
珠美:「……となると、ディープインパクトには是非とも三冠を達成してもらわないと、そこで話題が終わってしまいますね」
駒木:「そうだろうなぁ。とりあえず、競馬界全体の事を考えると、この馬にはしばらく勝ち続けて貰わないとね。最低でも菊花賞は勝ってもらわないとシャレにならない。……まぁディープインパクトなら、三冠馬になる必要条件をクリアしてるから大丈夫だとは思うけど」
順子:「三冠馬になる条件ですか? それはローテーションとか、G1の勝ち方とか?」
駒木:「いや、そういうのじゃなくて、もっと基本的な所」
順子:「……?」
珠美:「それでは質問を変えましょうか。博士がお考えになっている、『三冠馬になるために最も重要な条件』とは何になりますか?」
駒木「ケガとか病気しない事。夏に体調崩さない事
順子:「そ、そんな当たり前過ぎる……(笑)」
駒木:「結果になってからでは当たり前だけど、それ以前なら真面目な話。皐月賞、ダービーと勝った二冠馬で三冠を獲り損ねた理由として一番多いのがコレだからね。実力的には三冠馬になってもおかしくなかった馬が、菊花賞に出られなかったり、出て来ても勝ち負け以前の状態だったり。『無事是名馬』とはよく言ったもんだよ」
珠美:「それでは、次に重要な条件は何でしょう?」
駒木:「次かい? その次は『ライバルに恵まれない』こと。特にひと夏越して力をつけて来るステイヤー系のライバルは三冠の大敵だね」
順子:「ミもフタもないこと言いますね(苦笑)」
駒木:「いやだって、勝ったり負けたりの力関係の相手とG1の度に激しく競り合って、それで全く違う条件で3連勝するなんて至難の業だよ。第一、三冠馬なんてのは、一世代内の相対的なNo.1なんだから、絶対的な強さは必要ない。要はその年のクラシック戦線に出て来る馬の中で一番強ければ問題ない」
順子:「それはそうですけど……」
駒木:「僕は、これが本当に重要な条件だと思ってる。過去の三冠馬の3歳時のライバルホースって、どれもG1級のレースは無冠のままで、変則的な例外は三冠牝馬のスティルインラヴぐらい。だいたい三冠馬の元・ライバルは、古馬になったらG2勝ちも覚束ないままフェードアウトしてゆく。追記:ミスターシービーの場合、クラシックでは“ライバル未満”の存在ながら、古馬になってから立場が逆転したカツラギエースという、扱いの難しい対抗馬が居た事を特記しておきます)
 だから、楽に勝てる相手しか相手にしない、これが三冠達成の秘訣だったりする。
 逆に、ライバルに恵まれちゃうと、いくら力があっても三冠は至難の業。ビワハヤヒデとか、スペシャルウィークとか、実力的には三冠獲ってても不思議じゃなかったはずだよ。けど、運悪くこれらの馬と、特定の条件でなら勝ち負け出来る“刺客”馬が1〜2頭いたために1冠だけで終わっちゃった。
 あと、菊花賞になって能力が開花したライバルにぶつかったミホノブルボンとかネオユニヴァースとかね。秋の昇り馬ってのは、それまで散々勝って来た相手が突然変貌するだけに、油断してる分だけ余計にタチが悪い。
 更に逆に言えば、エアシャカールなんて下手したらあの実力で三冠馬だったわけ(笑)。幸か不幸か、アグネスフライトという、この馬の強さなりのライバルがいたお陰で“三冠馬版・オペックホース”にならなくて済んだわけだけど。
 ……んー、そういう意味で言えば、やっぱりある程度強くないと三冠は難しいとも言えるかな。『G2が精一杯クラスの馬が相手なら難なく勝てる』ぐらいの実力があった方が良い。勿論それが無くても可能性はあるけどね。強い馬が三冠馬になるんじゃなくて、三冠レースを全勝した馬が三冠馬になるわけだから」
順子:「だんだん聴くのがイヤになって来ました(苦笑)。博士、そんな盛り下がることばかり言ってるから、いつまで経っても彼女できないんですよ」
駒木:「ほっとけ(笑)」
珠美:「(苦笑)。……えーと、他に三冠馬に必要な条件を挙げるとすれば、どんなものがありますか?」
駒木:「次は距離適性だろうね。当たり前だけど、ベスト距離が1200じゃタイキシャトルぐらい強くても三冠は無理(笑)。2000がベストだと、ダービーは何とかなっても流石に3000mで勝ち負けはキツい。逆に菊花賞がベストという馬だと、春シーズンに間に合わなくて、これはむしろ三冠馬を阻止するような馬になってしまう。やっぱり2400m前後がベスト距離の馬が良いね。距離適性から微妙に外れた皐月賞と菊花賞は実力差で捻じ伏せるしかない。ライバル不在の状況に恵まれないと三冠は難しいってのはそういう意味もあるんだ。
 あとは早熟すぎず、晩成過ぎないこと。クラシックシーズンに入った頃に成長が止まっちゃう早熟さじゃ厳しい。かと言って、いくら将来活躍出来る素質は有っても、3歳春のトライアルシーズンまでに新馬・2戦目を勝って、弥生賞あたりから本格化出来るようじゃないと、皐月賞にすら出られない。当たり前だけど三冠レースに全部出走しないと三冠は不可能だからねぇ。
 あと最後に、その競走能力が人間の力でコントロール出来るタイプであること。気性であり、脚質の融通性かな。いつ好走出来るのか計算できない馬じゃ、G1レース3連勝は難しい。追込脚質で破天荒なイメージのミスターシービーも、あれで凡走らしい凡走が少ないタイプだったし、菊花賞は3コーナー大捲りをこなすような器用さもあった」
珠美:「まとめますと、『リタイヤするようなケガ・病気をしない』、『同世代にG1級のライバルが不在』、『2400m前後がベストの距離適性』、『クラシックシーズンに合わせて成長する』、『安定してポテンシャルを発揮できる』、そして出来れば『G2クラスの馬なら問題にしないぐらいの強さ』があれば更に良い…と」
駒木:「そういう事だね」
珠美:「ディープインパクトや他の三冠馬を見ていると、当たり前のように思える条件ばかりですけど、別にこれらを全て兼ね備えた馬を探そうとすると難しいですね」
駒木:「馬の絶対的な強さ・速さに関係ないから余計にね。これが“○○ぐらい強い馬”って括りだと、逆にたくさん出て来るんじゃないかな。幅が狭い条件とか、他力本願な条件があるからレアなんだよ」
順子:「……ということは、三冠って、純粋な強さだけじゃどうにもならないから価値がある、ってことなんでしょうか?」
駒木:「うん、そうだろうねぇ。強さよりもレアさってところかな。いや、三冠馬にケチつけてるわけじゃないよ。単純に強い馬より三冠獲った馬の方に値打ちがあるのは事実だしね」
順子:「それじゃ、ディープインパクトも思ってるほど強くないってこと……に?」
駒木:「いや別に三冠馬が強くないって言ってるわけじゃない。絶対的な能力が高い馬は相対的にもそうなり易いんだからね。特にディープインパクトは、必ず出遅れるっていう致命的な欠点を格段の能力差でフォローして来た馬だから弱いはずが無い。レースのビデオ観る度に思うもの。『反則だ』って(笑)。
 ただ、ディープインパクトのライバル不在は徹底してるからなぁ。古馬のエース級との能力比較になると、まだ確信めいた事は言えそうにない。ジャパンCなり、有馬記念で手合わせしてみないと判らないね。ゼンノロブロイとタップダンスシチーを相手にダービーみたいなレースが出来たら、それはルドルフ以上の専制皇帝が誕生する事になるんだろうけど、その保証は全く出来ないからね。
 まぁでも、天下のルドルフでも3歳のジャパンCは3着に負けてるんだから、本当の実力査定は4歳になってからだろう」
順子:「かなり強いけど、とびきり強いかは来年次第、と。博士と話してるとテンション下がりますね(苦笑)」
駒木:「競走馬の“強さ”の源って、幻想というか最大限楽観的な期待に負う所が大きいからね。馬券の予想でもそうだけど『これくらい強かったらいいなぁ』が、知らない内に『これくらい強いはず』に変わってる。だから至極真っ当な現実を述べただけで、そういう事になっちゃうんだよ。駒木研究室で勉強してる以上は、その辺は割り切れ(笑)」
順子:「まぁディープインパクト外しで馬券買っても良さそうって気にはなりましたけど(苦笑)」
珠美:「話が徐々に馬券の方へ向いて来たところで、そろそろレース展望へ移りましょうか。既に出走表が発表されています」


第66回菊花賞 京都3000芝

馬  名 騎 手
コンラッド 小牧太
ヤマトスプリンター 池添
ミツワスカイハイ 渡辺
ローゼンクロイツ 安藤勝
アドマイヤフジ 福永
アドマイヤジャパン 横山典
ディープインパクト 武豊
シャドウゲイト 佐藤哲
エイシンサリヴァン 吉田豊
10 レットバトラー
11 シックスセンス 四位
12 ピサノパテック 岩田
13 ディーエスハリアー 石橋脩
14 フサイチアウステル 藤田
15 マルブツライト 松岡
16 マルカジーク 角田

珠美:「まずは博士、このメンバーを俯瞰しての雑感をお願いします」
駒木:「いやぁ、三冠達成濃厚ですね、って感じかな(笑)。勝負付けの終わった馬と、登録頭数が少ないから出走出来た条件クラスの馬だらけ。セントライト記念組と別路線組の何頭かに僅かな希望があるけど……それを『危うしディープインパクト』なんて言うほどスポーツ新聞に毒されちゃいないよ僕は」
順子:「じゃあやっぱりディープインパクトに死角なし、ですか?」
駒木:「いや、あくまで『濃厚』。『確定』じゃないよ。競馬がギャンブル・スポーツたる所以というか、まだ未確定の要素が残っている以上は何が起こるか判らない。
 よく僕たちは『死角なし』なんて軽はずみに言うけれども、ディープインパクトだって所詮は1頭のお馬さんなんだから、どこかに死角はあるはずなんだ。例えば、この馬はロングスパートを仕掛けておいて、ラスト2ハロンから更に加速するのが一番凄い所なんだけど、これがもしかしたら3000m以上のレースでは不発に終わるのかも知れない。そうなると、外から一気に追込馬がやって来て、これまで経験した事の無い追われる恐怖に苛まれたら……まぁあくまで仮定の話だよ。
 だから死角は無いんじゃなくて見えてないだけ。ひょっとしたら、ディープインパクト陣営にも見えてない死角が、他の馬の陣営や騎手には判ってるかも知れない。もしそうだとしたら大波乱の可能性は大だね。実際、大本命がコケるレースというのは、死角が無いように見えて実はあった…というケースが殆どだ。勿論、『もしも』が2つ3つ重なった上での結論だから、実際の可能性は僅かだろうけど。でもゼロじゃないよ」
順子:「分かりました。博士の言葉で、泥舟に乗ったつもりで穴狙いします!(笑)」
珠美:「ところで、展開はどうなるのでしょう? ディープインパクトが出遅れて最後方近くから発進するのは分かるのですが……(笑)」
駒木:「菊花賞はイレギュラーな展開が起こりやすいから予想し難いよね。ナリタブライアンの時もスティールキャストが大逃げしたし、差し馬が押し出されて先行、なんてレースも珍しくない。ただ、このレースにしても、ディープインパクトの勝ちパターンにしても、展開云々で決まる要素が低いから、それほど展開は重要視しなくても良いんじゃないかと思う。どうせ勝つ時は3コーナーからバーッと上がって直線でチュドーン! だから」
珠美:「(笑)
 
駒木:「ただ、これまでのレースを見る限りでは、ディープインパクトは自分の後ろから迫る差し馬は全く問題にしないんだけど、直線の時点で内ラチ沿いで先に抜け出している馬にはちょっと苦戦している。弥生賞のクビ差もそれだね。
 だから、波乱を呼ぶ展開としては、ステイヤーの資質があるけど注目されて来なかったダークホースが大逃げを打つとか、先行馬がディープインパクトのスパートに合わせて最内からロングスパートを仕掛ける『ナリタブライアンを倒したスターマン』パターンとか。ともかく、直線入口で“貯金”を作るのが必須条件。それが守れるかどうかは二の次。瞬発力勝負で敵うはず無いんだから。
 あとはそれこそ、さっきの仮定の話みたいにディープインパクトの距離適性が3000mに合わない事を祈る他力本願作戦ぐらいか。でもまぁどの馬も負けて元々なんだから、他の騎手にはアグレッシブな騎乗を期待したい」
珠美:「では、具体的に“打倒・ディープインパクト”が僅かでも期待できる馬を挙げて下さい」
駒木:「一番期待できるのはゲートで落馬かな(笑)」
珠美:「…………!(3年前、ノーリーズンに賭けて財布にあるだけ負けた事を思い出して物凄い顔をしている)」
駒木:「その顔見せると婚期が遅れるから隠した方が良いよ、珠美ちゃん(笑)。……まぁ悪質な冗談はさておき、神戸新聞杯組のシックスセンスローゼンクロイツは能力的にも脚質的にも逆転は難しそうだなぁ。ラジオたんぱ賞のコンラッドも、余程思い切った乗り方をしない限りはこのカテゴリ。まぁこれらの馬は順当な展開になった時の2、3着候補としては有力だけどね。
 僅かでもジャイアントキリングの可能性がある馬を探すと、セントライト記念組のフサイチアウステルピサノパテック。4角先頭型の先行馬だから出し抜けをカマすとしたらこのどちらか。ただ、この2頭、揃いも揃ってズブいしジリ脚なんだよね。それでセントライト記念でもキングストレイルにやられちゃってるし。それが今度はディープインパクトだから、まぁ難しいだろうね。むしろ大逃げ打った方が面白い。
 あとは実際に弥生賞でクビ差まで追い詰めたアドマイヤジャパンだけど、この馬はまず自分自身が万全にならなきゃね。神戸新聞杯(5着)みたいなレースだと勝負以前の問題だ」
順子:「じゃあ、スピードよりもスタミナ、みたいなステイヤー型の馬はいそうですか?」
駒木:「最近の長距離レースの傾向としては、スピードはスタミナを駆逐するからねぇ。抜群のスピードと、その距離をこなすのに必要最低限なスタミナを持った馬がまず最上位に来て、次に“そういう馬が居ない時に限り”で、決してバテないスタミナを武器にロングスパートで捻じ伏せるタイプが台頭する。
 今回はディープインパクトがいるからね。ディープインパクトがガス欠起こさない限りはそういう馬に出番が無いし、そうなった時はディープインパクトじゃなくてアルマゲドン(最終戦争)状態だよ」
順子:「その『上手い事言った』みたいな話の締め方、なんかヤですね(笑)。……まあとにかく、常識的に考えて全く予想出来ないことが起こらない限りはディープインパクトが勝ちそう、で良いんですね?」
駒木:「そういう事だね。だからディープインパクトを外して馬券を買う場合は、むしろディープインパクトがいないつもりで予想するのが良いんじゃないかな」
珠美:「まだ語り足りない部分もあるかと思いますが、そろそろお時間が来たようです。一応、現時点でのフォーカスを挙げて頂けますか?」
駒木:「常識的に考えると、ディープインパクト軸しかないだろうねぇ(苦笑)。馬単オッズと大して変わらないし、保険の意味でも馬連で。儲け出そうと思ったら4-7、7-11、1-7の3点で留めないと厳しいか。
 大波乱の時は前残りか、中団の最内で様子眺めしてた馬が有利かな。6、12、14のボックス。どれも万馬券だから、100円ずつでも十分楽しめそうだ」
順子:「わたしはセントライト記念組の2〜4着馬の馬連ボックスと、この3頭を軸に3連複と3連単を狙ってみます」
珠美:「私は、やはりディープインパクトから、オッズとお財布と相談しながら色々と楽しんでみたいと思います。
 ……それでは、久し振りで最後まで勘が戻らない所もあったかと思いますが、今日の競馬学講義を終わります。最後までご清聴有難うございました」


トップページへ