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講義一覧
7/29(第47回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(7月第5週/8月第1週分・前半)
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2003年第47回講義 |
ウィンドウズの宿痾と言うべき強制終了により、2度目の講義準備中、駒木ハヤトです(苦笑)。 ちなみに最初に準備した冒頭挨拶は、斗貴子さんの「エロスは程々に」発言についてでした。 それにしても、斗貴子さんに世界史教えてる学校の先生は大変です。多分、あのキャラなら、 …………………… ──と、妄想はこれくらいにしまして(笑)、また強制終了にならない内にゼミの本題へと話を変えていきたいと思います。 まずは今日も情報系の話題から。「ジャンプ」の読み切りに関する情報が1つ入って来ています。 来週発売の36号において、『ヒカ碁』の小畑健さんが早くも再始動。『DEATH NOTE』というホラー作品の作画を担当します。ちなみに原作者の大場つぐみさんは、Googleで検索しても情報がまるで出て来ない謎の人物。恐らくは、36号で作品と併せてプロフィールが公開されると思いますが、こちらについても注目ですね。 ……さて、次に話は変わって「赤マルジャンプ」夏号について。いよいよ今週号の「ジャンプ」35号でラインナップが発表になりましたが、やはり今回は絵が比較的達者な若手・新人さんが揃っているみたいですね。他の企画モノもヴィジュアル重視の構成になってしますし、今の時点で恐ろしいほど『ボーボボ』番外編が浮きそうなのが、駒木的には大変に気になるところです(笑)。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年35号☆ ◎読み切り『ボウボウHEAD☆カウボーイ』(作画:森田雅博) 今週の読み切り作品は競馬モノ。競馬学が専門の当社会学講座としては厳しくも暖かい目で見たいところではありますが……。 作者の森田雅博さんは、1979年6月16日生まれの24歳。00年12月期の「天下一漫画賞(現:十二傑新人漫画賞)」で審査員(尾田栄一郎)特別賞を受賞し、翌01年の「赤マルジャンプ」夏号にて『ペース・メーカー』でデビューしました。 ではまず絵からですが、前作に比べてかなりの進歩が窺えます。新人特有の無駄な線が消え、垢抜けた見栄えのする絵が描けるようになったのではないかと思います。マンガ的表現もソツなくこなせており、基本的な力そのものは即連載クラスと申し上げて良いのではないでしょうか。 …………しかし。ここに来て重大な“疑惑”が持ち上がっています。 ──これは週明けから2ch掲示板などで話題になっているのですが、この作品のいくつかのシーンが、『焼きたて!! ジャぱん』や『はじめの一歩』の中のシーンと酷似している…というのです。 ……実際に見ていただけると分かるんですが、これはどれだけ贔屓目で見たとしても、“既製の作品から非常に強い影響を受けた”ものであると思って間違いないでしょう。真偽はどうあれ、読者から「パクりじゃねぇの、これ?」…などと疑われても致し方ないのではないかと駒木は考えます。 ……さて、すっかりミソが付いてしまった感がありますが、ストーリー&設定についてもお話しておきましょう。 今回のお話、確かに勢いがあって読後感も良く、いわゆる好感度の高いストーリーであるとは思います。そのためでしょう、ネット界隈での評価も印象度の上ではそれほど悪くはないようです。 中でも最も大きなミステイクは、5億円馬・ジュテーム号が高い素質を持っているという伏線が全く無しに(それどころか「調教でも走らない」と明記されてます)、精神的な絆が生まれた“だけ”の進斬の馬を破壊する豪腕に耐えて激走してしまった…という矛盾でしょうね。 あと、競馬マンガでありながら、競馬に関するディティールの大半が間違っているというのも大きな減点材料ですね。逐一指摘する時間がありませんが、実在しないデザインの勝負服や馬運車を見ただけで脱力モノですし、何よりもストーリーの根幹である“レース飛び入り参加”が実際は問題外で不可能(出走馬がパドックに出る時点で到着していない場合、無条件で出走取消&関係者はキッツーイ処分が確定)というのが致命傷です。 まとめますと、この作品はストーリーの必然性を全く考慮する事無くシナリオを組まれているわけです。設定の後付けは、話の最初に遡った上で矛盾点の無いように行うのは最低限のルール。これが守れていないようでは、ちょっと……といったところですね。 評価ですが、絵の“パクり”疑惑を抜きにして考えた場合、絵は合格点もストーリーテリング力に大きな問題アリということで、B寄りB−という評価になるでしょう。ただし、本音を言えば、文字通りの「論外」という評価こそ正当のような気がします。 今週は久々に『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合の休載。ということで、巻末にショートギャグの代原が掲載されました。 作者の夏生尚さんは、02年度上期の赤塚賞で佳作を受賞。その受賞作が代原として本誌02年31号に掲載され、デビューとなりました。今回は、またしても代原ながら約1年ぶりの再登場になります。 しかし今回の作品、代原ゆえに執筆時期が判らないのですが、1年前のデビュー作と絵、ギャグ共に進歩が全く無く、非常に物足りない仕上がりとなってしまいました。 前回は新人賞への応募作、かつデビュー作でしたから大目に見なくてはならない要素もあったでしょうが、今回は新人とは言え、プロ作家として描いた作品なわけですから、擁護出来る材料は全くありません。残念ですが、駄作と言わざるを得ないでしょう。 評価は前作と同じくC寄りB−。近頃は実力派の若手ギャグ作家さんの頭数が揃って来ていますから、このままでは夏生さんの前途は非常に厳しいものになってしまうでしょうね。
では、後半のゼミもどうぞよろしく。 |
2003年第46回講義 |
今年の夏のトレンドは、カメラ目線でお茶の間の皆さんに向かって「グルービー!」(挨拶) しかし、少年マンガ史上初めてじゃないでしょうか、闘ってる当の本人をバックに押しやっておいて、しっかりカメラ目線で決めゼリフ叫んでる人ってのは。何て言うか、究極の美味しいトコ取りテクニック。 「グルービー!!」 ……これです、これ。今年の夏はこれですよ皆さん。
今日は情報系の話題も特に有りませんので、いきなりレビューから。新連載1本と、新連載第3回後追いレビュー1本の、計2本となります。続いてチェックポイントも宜しく。 ☆「週刊少年サンデー」2003年34号☆ ◎新連載『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦) 今年3作目の本格新連載が開始されました。この後、後追いレビューでお送りする『ロボットボーイズ』の上川敦志さんと同様、これが初連載となる若手作家さんの登場です。 その作者の中井邦彦さんは今年なんと35歳。随分と遅い連載デビューですが、どうやら中井さんは一昨年まで長年江川達也さんのアシスタントを務めていたらしく、そのために本格的なマンガ家としての活動開始が遅れていたようです。 では、内容をチェックしてゆきましょう。 まず絵ですが、いかにも今の「サンデー」っぽい、好感度の高い明るいタッチの絵で良いんじゃないでしょうか。(もっとも、「またこの絵柄かよ」という声も聞こえて来そうですが……) 次にストーリー&設定について。 今回の第1回は60ページ以上の長丁場になったわけですが、ややプロットがオーソドックス過ぎる嫌いはあるものの、ダレ場を作る事も無く手堅くまとめられているとは思います。が、そのストーリーの見せ方にかなり大きな矛盾点があり、これは大きな減点材料です。 他にも設定面で矛盾点──ハユマはデビPとD−メンしか描けないはずなのに、やけにスンナリと化物のラクガキを描いている──が見られるなど、どうも全般的にツメの甘さが目立ちます。クライマックスの見せ方が非常に上手くキマっているので、読後感は良い仕上がりになっているのですが、この調子で粗の多い話作りをされてしまうと、破綻したストーリーが半年以上続く惨事になってしまいそうで怖いです。 それにしても、マンガに出て来る小動物は、どうして口が悪くて関西弁なのが多いんでしょうか(苦笑)。たまには博多弁をガナりたてる、新日本プロレスのマスクマン・魔界2号みたいな小動物がいても面白いと思うんですが。 当講座BBSでは、このところ連日この作品に関しての書き込みがあり、もはやここがネット界隈で一番『ロボットボーイズ』に注目しているウェブサイトになりつつあるわけですが(笑)、謹んで第3回の後追いレビューをお届けしましょう。 第1回では、孤独な主人公に1人“仲間候補”が出来て…というところで「続く」になったわけですが、第2回、第3回もそのエピソードの延長上でストーリーが展開されてゆきました。 「ロボットを作るのは楽しい」 ……というものであるように思われます。 あと、第1回で見られたような大きな矛盾点などは、第2回以降では見受けられませんでした。ただ駒木は、第1話の前半であれほどロボット作りが下手だった主人公が、第2話以降では立て板に水の如く、ロボットに関する知識とノウハウをベラベラと語っている事に未だにシックリ来ないんですれどもね(苦笑)。 評価はまだ未知数の要素が多いながらも、今後において失敗する可能性が高い…ということでB−という事にしておきましょう。 巻末コメントのテーマは、「重要視しているイベント」。誰一人として、「嫁さん(彼氏・彼女)の誕生日」という言葉が出て来ないあたり、皆さん不器用な人生を過ごされているようで(苦笑)。 ◎『うえきの法則』(作画:福地翼)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 運試しで2次予選って、ウルトラクイズかい(笑)。 ………………………… ……ひょっとしたら!?(ねぇよ) ◎『俺様は?』(作画:杉本ペロ)【現時点での評価:B−】 うはは、最高だ阪神君。 とりあえず、阪神の選手の皆さんは、誰かお調子者が日本シリーズで三連勝しても「○○(パ・リーグ優勝チーム)はオリックスより弱い」とか言い出さないように気をつけて頑張って下さい(笑)。 ◎『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫)【現時点での評価:B/雑感】 駒木の母校は中・高ともにブレザーだったので、第二ボタン系の話には縁遠かったんですよね。だから、こういう話を見るとちょっと羨ましかったり。 ところで、ここ数週間「すわ、次号で最終回?」と言いたくなるような“引き”のこの作品ですが、果たしてどうなりますか……。既に“定員オーバー”の状態だけに、そろそろ危ういと思ってるんですけどね。
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2003年第45回講義 |
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もう至る所でお礼を言ってますが、こういうものは言っても言い足りない事は無いので、ここでも言っておきましょう。延べ受講者数100万人突破となりました。これまでのご愛顧に感謝いたします。今後ともどうか何卒。 ……さて、今週末も公私共にハードスケジュールのため、講義もスピード進行で参りましょう。「その割には講義が1日遅れてるじゃないかよ」ってのは、三瓶とかダンディ坂野とかに「あなたの将来の展望は?」という質問をするくらい禁句です。 まずは「週刊少年ジャンプ」の情報系の話題から。読み切りについては既に前回の講義で述べていますので、今日は34号で発表になった「ジャンプ漫画アイディア杯」の審査結果を紹介します。
……というわけで、今回は膨大な応募数に恵まれながらも、佳作以上の入賞作ゼロという非常に厳しい結果になりました。 これは恐らく、応募者の大半が「絵が描けなくても気軽に応募できるマンガ賞」と考えていたのに対し、編集部側は「プロのマンガ家を凌ぐ知識・ストーリーテリング力を持つ即戦力を発掘するための賞」と考えていた…という認識のミスマッチのために起こった現象でしょうね。その結果、プロ意識に欠ける応募者の群れが死屍累々の山を築いたと。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年34号☆ ◎読み切り『Continue』(作画:星野桂) 延々と続きます、「ジャンプ」の若手・新人育成シリーズ。今週は新人・星野桂さんの登場です。 ……というわけで、内容の方へ。 まず、ついさっきにも言及した絵についてですが、これはデビュー2作目の新人さん…というのを抜きにしても立派なものです。前作に比べれば絵柄も少年マンガ対応に変わりつつありますし、これでもう少し線にメリハリがつけばもっと良くなるでしょう。 一方、ストーリー&設定の方は、まだまだ発展途上という感じだと思います。 この作品は「空想(ゲーム)上の死と現実の死は違うんだよ」…という、シビアかつデリケートなテーマの上に乗っかっていますが、そのテーマそのものが上手く描き切れていないために、ストーリー全体の説得力が無くなってしまいました。 あと、ストーリーの展開の仕方で言えば、次から次へと後出しジャンケンのように新しい設定が出て来て勝手に話が進んでいくパターンも頂けません。特に主人公のピンチの際に設定の後出しをして、「実はこうだったので大丈夫なんです!」…とやってしまうと、話のヤマ場がヤマ場にならないんですよね。そのため、読者が一番興奮すべきところで白けてしまう。これは非常に残念な事です。 まとめると、星野さんは、まだ自分の作品が不特定多数の人に読まれているという事実に対しての自覚が足りない。もっと端的に言えば、独り善がりで、客観的な視点で物を考える訓練が不足している…ということになるんでしょうね。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 今回で連載1周年。そういや、昨年連載開始の作品は、既に『いちご100%』とこの作品しか残っていないんですよねぇ。 さて、今週で太陽スフィンクス戦が終了。ちなみに、正式なアメフトルールでは、最終クォーター終了時に同点の場合は、「オーバータイム」と呼ばれる15分の延長戦に入ります。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 受講生の方から矢のようなツッコミが入りましたね、キャプテン牛尾の「これが僕たちも初の公式戦」発言。本当なら、前年の秋季県大会から新チームになっているはずですし、春休みにも春季大会がありますので、本来ならばこれが3回目の公式戦になるわけです。 |
2003年第44回講義 |
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受講生の皆さん、ご無沙汰&ご迷惑をおかけしました。本日から講義に関する業務を再開致します。
今回、各賞で最終候補以上に残った皆さんの過去のキャリアについては以下の通りです。 ◎十二傑賞受賞の相模恒大さん…02年6月期&03年1月期「天下一漫画賞」で最終候補。 ところで、今回の「十二傑」は3度目の最終候補入りとなる相模恒大さんがデビュー権を獲得しました。「天下一」時代の基準なら特別賞止まりでデビューを果たせなかったでしょうから、まさに「十二傑」の狙いが形となりましたね。 まずは「ジャンプ」から。新連載シリーズが一段落ついた後も、読み切りシリーズは引き続き継続中です。既に発売になった34号の『Continue』(作画:星野桂)に続いて、35号でも競馬マンガ・『ボウボウHEAD☆カウボーイ』(作画:森田雅博)が掲載されます。 そして「サンデー」では新連載の話題を。日付から言えば明日発売の34号から『楽ガキFighter
〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)が始まります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年33号☆ ◎新連載第3回『神奈川磯南風天組』(作画:かずはじめ)【第1回時点での評価:B+】 「ジャンプ」の大規模新連載シリーズのレビューも、今回でいよいよ最後となりました。『神奈川磯南風天組』の第3回後追いレビューです。 さてこの作品、第1回の時点では「問題点は残されているものの、絵柄やネーム、作品を描くにあたっての姿勢などに評価できる点が多い」…として暫定評価B+としました。が、そこから2回分の展開を見る限りでは、ネガティブな要素ばかりが膨らんでいっている感が否めません。 まず、主役格のワル2人(天堂寺&風間)のキャラ作りに成功していないところが気になります。前回のレビューでも述べた通り、“悪属性”のキャラクターを読者に受け入れられるようにするためには、“ただの悪人ではない魅力的な何か”を提示する必要があります。(最近の「ジャンプ」作品の中でそれを最も成功させている)『アイシールド21』のヒル魔で言えば、不言実行型の努力家である所や、心の深い部分では意外と情が深い所がそれにあたりますね。 そのストーリーも、現在のところは一話完結型で進行中ですが、早くもワンパターン・マンネリの兆しが窺え、状況はあまり良いとは言えません。せめて1つ、漠然としたものでも良いですから、何か作品全体のテーマ的なモノを呈示できれば流れも変わって来ると思うのですが……。 評価の方は下方修正してBということにしましょう。ハッキリ言って現時点では失敗作の範疇に入る作品ではありますが、マンガ作りの技術はしっかりしていますので、これ以上評価を落とすわけにはいかないところです。 それでは続いて、いつの間にか当ゼミと随分関わりが深くなってしまいました(苦笑)、『ヒカルの碁』のレビューです。 今回は番外編2本立てということで、1本目には本編の序盤に登場した、佐為(ヒカル)VSアキラの非公式対局第2戦を佐為からの視点で描いたもの、2本目にはヒカルの後輩にあたる小学生院生2人を主人公にした短編と、共にサイドストーリー的な作品となりました。 ただしそうは言っても、様々なシーンで施されたほったさんのストーリーテリングの技術には、やはり見逃せないものがあります。省略すべきシーンの略し方や、場面設定についても説明じゃなくてちゃんと描写になっている点など、まさにお手本。マンガ家やマンガ原作者を目指している人なら、それこそ穴が開くほど読み込むべき作品でしょう。 そういうわけで、余り語るべき所もありませんので、もう評価に行きましょう。先に述べた通り、シナリオ自体はごくありふれた“後日談対応”のモノですが、そこに施されたほったゆみさんの技術や小畑健さんの卓越した画力の分だけ加点して、A−ということにしておきます。
今日のレビュー3本目は若手作家さんのギャグ読み切りです。正直、休み明けでここまでジャンルの違う作品を3つレビューするのは疲れますね(苦笑)。 この『──マダムーン』の作者・藤田健司さんは、00年25号に『ハンター×ハンター』の代原として発表した『エゴの代償』でデビュー。その後、第54回(01年上期)赤塚賞で佳作を受賞し、その受賞作『チャタニイズム』で01年33号に“正式デビュー”を果たし、3週後の36・37合併号でも代原としてですが4コマの習作・『分割笑い』を発表しています。 ──それでは、レビュー本題へ。 まず絵ですが、パッと見では汚く感じるかも知れませんが、ギャグ作家さん、それも若手としては相当高い技術水準にあるのではないでしょうか。老若男女&人間以外の描き分けもキチンと出来ていますし、細かい部分の演出なども良いです。即連載レヴェルと申し上げてよいでしょう。 ギャグのデキ具合もかなり良いですね。一発ギャグがあったと思えば次は1〜2ページ引っ張ってオチに持っていくパターン…のように上手く緩急がついていますし、何よりも間の取り方が秀逸です。また、動的表現をフルに活かしたコマと止め絵のコマの使い分けも抜群に上手く、効果をあげています。 あと、ネット界隈では他の作家さんの影響が濃いとする声も若干ありましたが(駒木も『高校アフロ田中』に雰囲気が似ていると思いました)、少なくともこの作品においては、他の作家さんの影響を受けつつも、そこから一皮剥けたオリジナルの作風になっていると思いますので、この件に関しては不問とします。 評価はA寄りA−としておきましょう。今後の活躍に期待したい、実力派「ジャンプ」系若手ギャグ作家さんの1人だと思います。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週は『ヒカ碁』番外編が掲載ということで、「ストーリーキング」の募集ページに、ほったゆみさんの『ネームの日々』が出張して来ました。その内容を要約すると、 「絵はグダグダでいいから、ネーム力が判るように描きましょう。字はなるべく丁寧にすれば好感度大。某少年誌(駒木注:どう考えても某サンデーです^^;;)と違って年齢制限無いので、年イってる人も頑張って下さい」 ……というもの。でもほったさんは応募時点でマイナーとは言えキャリア10年クラスの現役作家さんだった上に、しかも同じく現役マンガ家のダンナさんが影のスーパーバイザー役に就いていたので、普通の人とは相当事情が違うと思うんですが(笑)。
◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−】 さて、この作品も今週からはチェックポイント枠での取り扱いという事になります。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 いわゆる「アイシル信者」みたいに思われるのが嫌で、結構意識的にチェックポイントで扱う間隔を開けていたんですが、2ヶ月も開いてたとは気付きませんでした(苦笑)。 で、いつの間にか太陽スフィンクス戦が大詰めになってるわけですが(笑)、今回出て来た“デビルバッツダイブ”、あれはセンターからボールを受け取ったクォーターバックが直接ダイビングするケースも多いんですよね。 ◎『BLEACH』(作画:久保帯人)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 前にも言ったかも知れませんが、久保さんはやっぱりネームの力がありますよね。脚本を書く力があると言いいますか。 ☆「週刊少年サンデー」2003年33号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「本気でやるほどでもないが、プチチャレンジしたいこと」。微妙な質問ですなー。真面目に答えたら、モリタイシさんのように「何事も本気でしたいので、そのような事はありません」になっちゃうんですが。 ◎『金色のガッシュ!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 う〜む、師匠譲りの見事な後付け炸裂ですね!(決め打ち) ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回のテーマ、物凄く心に突き刺さったんですが(苦笑)。だってホラ、心にウソ設定でも作らなきゃ、1年以上も他の全てをそっちのけで、しかも給料無しで毎日講義実施なんてやってられませんよ、ぶっちゃけた話(笑)。 しかし、ダメなマンガ家とダメな編集者の打ち合わせは笑いました。『エンカウンター』とか『サイレントナイト翔』とかの打ち合わせシーンもこんな感じだったんでしょうか。車田正美氏が編集者と使い途の無いダメ設定をファミレスで打ち合わせているシーンなんか、想像するだけで笑い泣きできそうです。
次回講義は明日か明後日の予定です。では。 |
2003年第43回講義 |
この中で、「林田桃里」みたいな事をした経験のある人、手を挙げて!(挨拶) ……どうも。その上、その語呂が悪い事に随分とヘコんだ経験がある駒木ハヤトです(笑)。まぁ、若さゆえの過ちは認めたくないものですよね。 ──さて、今日は情報系の話題もありませんので、挨拶もそこそこに早速レビューとチェックポイントをお送りしたいと思います。 ◎新連載『ロボットボーイズ』(作:七月鏡一/画:上川敦志) 今年の「サンデー」は新連載が少ないと思っていましたが、調べてみたところこれが今年3作目の新連載ということに。しかもその内1本は、同一作者の作品入れ替え(『俺様は?』)ですので、実質的には『売ったれ ダイキチ!』とこの作品の2つだけになっちゃうんですね。 ところで、先週の情報コーナーで「作画担当の上川敦志さんは、新人女流作家の上川敦子さんと同一人物ではないか?」…などと言ったのですが、調査の結果、やはり同一人物だということが判りました。「女の人にロボット物が描けるの?」という先入観を持たれる事を予防するためらしいです。 作者のお2人のプロフィールについては、時間の関係上、ここでは割愛させて頂きます。「サンデーまんが家BACKSTAGE」のそれぞれのコンテンツ(七月鏡一さん/上川敦志さん)に詳しく載ってますので、そちらを参照して下さい。 まず絵から。基本的には不快感の少ない絵柄で良いんじゃないかと思います。ただ、いかにも「サンデー」にありがちな絵柄な上に、メインキャラクター3人の顔がほとんど同じ輪郭をしているため、どうしても没個性な印象を抱いてしまいましたね。あと、カラーの色塗りやロボットのデザインなどにも若干の課題が残っていそうです。この辺りはキャリアの浅さでしょうね。 次にストーリー&設定に関してですが、これはちょっと“スタートライン”を後ろに置きすぎて失敗したような感が否めません。 例えば主人公の置かれている環境でお話をしましょうか。この主人公が通う学校は、奇しくも『MAJOR』の聖秀学園とよく似ています。女子高から共学に変わった直後で男子生徒は望み薄な連中ばかり……。それでも『MAJOR』では、主人公が天才プレイヤーで、他の野球部員にも野球経験者や運動センスのある人間が何人もいたので何とかストーリーが成立する所まで頑張れたわけです。(それでも県大会ベスト8が限界でした) あ、強引な展開と言えば、この第1話でも早速出てきちゃってますね。自分が作った二足歩行ロボットがマトモに進めないのを知ってるはずなのに、「これならどんな相手も目じゃねぇぜ!」と、何故か自信満々でロボット競技大会に出して当然のように敗北、しかもその後にたった3歩歩いただけで大喜び──というクダリ。熱血のように見えて、実はただのアホ丸出しな主人公が誕生しちゃってます(笑)。しかも脇役が、そこでそんなアホに「カッコいい」と(苦笑)。このツッコミ不在の様相はちょっと酷いですよ。 というわけで、暫定評価はC寄りB−と辛めの採点をしておきます。題材そのものは斬新なだけに、勿体無いと思うんですが、このままいくと間違いなく失敗作になってしまうでしょうね。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「どんな動物をペットに飼ってみたいですか?」。犬・猫派と、固有名詞派と、キワモノ派に分かれてしまった感がありますね。しかし毛ガニって、それは養殖と言いませんか?(笑)。 ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ……というわけで、“勝負に勝って試合に負けた”的なサヨナラボーク決着となりました。まぁ一応は納まるところに納まったって感じでしょうか。 ◎『KATSU!』(作画:あだち充)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ……な、何をいきなりセブンセンシズに目覚めちゃってるんだ、この妹は!(笑) プロフィールには「オッチョコチョイな小学生」とありますが、全く別人ですがな。レビュー対象作だったら酷評する所なんですが……。
◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】
あ、来週のゼミは週の後半に合同版をお送りする予定です。採用試験直前ですので、どうかご了承を。ではでは。 |
2003年第42回講義 |
「矢吹先生取材のため休載」の「取材」とは、やっぱり『マトリックス・リローテッド』を観に行くことなんでしょうか?(挨拶) ──しかし、「いくら自分が嫌いな作品でも、たびたび批判めいた事を言うのは控える」というのが当ゼミの方針とは言え、この度の「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の告知ページは色々な意味でガマンの限界を越えています(失笑)。特に「教えて! 矢吹先生!」のコーナーなんて、編集者が悪意を持って矢吹氏の能力の底の浅さを暴露するように誘導しているとしか思えないですからねぇ……。 それにしても、ここまでの3回は実力派の作家さんを審査員に選んでいたのにどうしてここに来て……いや、別にこの人じゃダメだとイッテルンジャアリマセンヨ(後半棒読み)。 ……というわけで、いつになく毒舌モードで始まった今週のゼミですが(笑)、早速情報系の話題に参りましょう。 創刊35周年企画で攻めまくる「週刊少年ジャンプ」、来週はファン待望の『ヒカルの碁・番外編』(作:ほったゆみ/画:小畑健)が登場します。しかも2本立て・計53ページという豪華版です。 来週号では読み切りが更にもう1本。若手ギャグ作家・藤田健司さんの『テラピー戦士マダムーン』が登場します。藤田さんは3年前の赤塚賞佳作受賞者で、既に本誌デビューも果たしていましたが、今回は久々の登場となります。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年32号☆ ◎新連載第3回『武装錬金』(作画:和月伸宏)【第1回時点での評価:A−】 それではまずは、気分良くレビュー出来る方からやりましょう(笑)。いつの間にかネット界隈では「今回の新連載4本の中では一番の有望株」という声が多数意見になりつつある、『武装錬金』の後追いレビューです。 ……さて、第1回掲載時のレビューで駒木は、「この作品はマズマズの好スタートを切った」…という論調で締め括りました。キャラクターなどの設定面は非常に優れているものの、シナリオの細かい部分や演出面に若干の不安を感じたために、そうしたわけです。 確かに、第1回のレビュー時に指摘した幾つかの不安は未だに解消されていません。シナリオの進行も、プロローグを終え、序章が始まったばかりという段階では未知数の要素が多いでしょう。 ──と、ここまでベタ誉めして来ましたが、それでもまだ、この作品が名作となるために越えなければならない大きなハードルがあると思っています。先に「このままキャラクターを自然に、正確に動かしてゆけば、ほぼ自動的に傑作が出来上がっていく状態にある」と言いましたが、その「自然に、正確に動かしてゆけば」という条件を満たすために色々な問題点が残っているというわけです。 ──そのハードルのまず1つ目は、「週刊少年マンガ誌の限界」です。 そして2つ目のハードルが「ジャンプシステムによる弊害」です。 ……以上のようにこの『武装錬金』は、非常に大きな可能性を秘めていながらも、最終的には可能性だけで終わらせてしまいそうなネガティブな外的要因を多く抱えた、大変に扱いの難しい作品であると言えます。 まぁとりあえずは“ストーリーテラー”和月さんのお手並み拝見といったところでしょうか。少なくとも、短期の打ち切りは無さそうな情勢ですので、ここは自信を持って頑張ってもらいたいと思います。 ◎読み切り『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』(作画:許斐剛) 今週の巻頭カラーになったのがこれです。「第0話」ということで、リョーマの父親・南次郎の青春時代を描いた、まさに特別編というような作品でした。 で、その内容ですが、ファンの皆さんには申し訳ないんですが、端的に申し上げて「許斐剛という作家のポテンシャルを遺憾なく発揮した駄作」と言うべき、ハッタリだけで後は何にも無い、文字通り“お話にならないお話”でした。 シナリオの大筋自体は「ジャンプ」によくある、主人公が悪役らしい悪役を倒す“勧善懲悪シナリオ”で、まぁ一応は起承転結が成立してはいます。ただし、そのシナリオを成立させるために、全編に渡って非現実的な設定や無理のあるストーリー展開をやっているがために、最終的には極めて陳腐なB級・C級ドラマになってしまった感が有ります。 何しろ、書類登録だけでプロになれるテニスの世界なのに、「プロになるためにアメリカに来る」とか、練習もしないのにテニスクラブに所属して揉め事起こすとか、まずその時点で有り得ません。(「そこをネタとして読む」というスタイルもありますが、当ゼミではNGです) 巻末コメントでは、鈴木信也さんが2度目の病気休載のお詫びと「プロ野球&高校野球取材するぞ」宣言。しかし、『ミスフル』って、現実の野球を取材しても何ら参考にならない気がするんですが。 ◎『シャーマンキング』(作画:武井宏之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 主要キャラ全員死亡で逆に緊迫感が無くなると言う、「ジャンプ」ならではの展開ですね(苦笑)。しかも新展開で直近の打ち切りが無くなったと読めるので余計に安心感が増してしまうと言うこの矛盾(笑)。 ◎『ごっちゃんです!!』(作画:つの丸)【現時点での評価:保留】 怖い先輩というのはこういうオチでしたか。でも、それだと細かい矛盾点がいくつか出るような……?
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2003年第41回講義 |
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恐らく数十人はいるであろう文化人類学(フードファイト関連)専攻の受講生の皆さん、お待たせしました。約半年振りの文化人類学講義です。 ──さて、既にマスコミ各媒体で報じられていますように、去るアメリカ独立記念日の7月4日午後(=アメリカ東海岸時間。日本時間7月5日未明)、ニューヨークはホットドッグの老舗・ネイサンズにおいて恒例のホットドッグ早食い選手権が開催され、日本の早食いカテゴリでのエース・“プリンス”小林尊選手がアメリカの強豪を大差で退け、見事に“ホットドッグ早食い世界一”の栄誉に輝きました。 このネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権は、今年でなんと88回を数える、世界で最高の歴史と格式とグレードを誇るフードファイトの国際大会です。 そして日本からは唯一、“前年度優勝者枠”として、先に紹介しました小林尊選手がエントリー。 閑話休題。 そんなわけで今年のネイサンズ国際ですが、ここでベスト3までに入った選手と記録を紹介しておきましょう。
──小林選手は圧勝&3連覇を果たしたものの、最大の目標であった自己記録(50本1/2)更新はなりませんでした。記録もここまで来ると、「どれくらい食べられるか」というより、「どれくらい効率良く食材を飲み込むか」という方が問題になって来ますので、これが1年ぶりの公式戦参加になる小林選手にとっては、さすがに今回ばかりは酷な条件だったかも知れません。 さて、今回は、優勝した小林選手には遠く及ばなかったものの、地元アメリカ勢の健闘も光りました。 余談ですが、IFOCE認定の食材別記録は実に25を数えます。その中には、今回のハンバーガーやホットドッグ、フライドチキンといったオーソドックスな食材も有れば、バターやマヨネーズといった、競技の様子を想像するだけで身悶えそうな代物もあります。 なお、今大会では女性選手の活躍もありました。これまで無名だったソーニャ=トーマス選手が25本の記録をマークし、00年に日本の“女王”赤坂尊子選手がマークした22本1/4の女性最高記録を3年ぶりに更新。これにより事実上、早食い系競技における女性フードファイター世界一の座に就いた事になります。 |
2003年第40回講義 |
今月は採用試験の勉強と社会学講座の両立を目指してたんですが、早くも共倒れの様相(^^;;)。申し訳ないんですが、採用試験の方をコケさすわけにいきませんので、まだしばらくはマンガ時評オンリーのカリキュラムになります。どうかご容赦を。 ──さて、それでは取り急ぎ今日も情報系の話題から。まずは来週から始まる「サンデー」の新連載についてのお知らせです。 次号32号から、『ロボットボーイズ』(作:七月鏡一/画:上川敦志)が始まります。まだ次週予告の紹介記事しか判断材料が無いのですが、何だかNHKのロボットコンテスト・高専大会を少年マンガにアレンジしたような作品という感じがします。
☆「週刊少年サンデー」2003年31号☆ ◎読み切り『ゴッドルーキー』(作画:宇佐美道子) 「サンデー」2週連続の読み切りは、先日発表になった第52回(03年上期)「小学館コミック大賞・少年部門」の大賞受賞作・『ゴッドルーキー』です。作者の宇佐美道子さんは、現在武村勇治さんの下でアシスタント修行中の新人さんとの事。どうやらこれがデビュー作となるようです。 では、本題へ。まず絵ですが、色々なタイプのキャラクターを描き分け、背景処理も手馴れているなど、基礎的能力と意欲は十分に窺える出来になっています。細部の描写などに若干改善するべき余地はありますが、この作品が新人賞への応募原稿である事を考えると、逆にこれくらいの方が「まだ上達の余地が有り、近い将来が楽しみ」…などと高い評価を受けたりするのかも知れませんね。 次にストーリー&設定。まず一通り読んでみて感じた第一印象は、「読後感の良さだけは損ねないようにして、あとの削れる所は全部削ったな」……というものでした。 この作品、確かにエピソード全体のまとまりは良く、雑誌に載っている10数作品の中のワンオブゼムとして読んだとすれば、極めて好感度の高い作品ではあると思います。そして、そういうマネが出来るという事は、宇佐美さんは“読者の求めているものを描く”という、商業作家にとってかけがえの無いセンスを備えていると言えるでしょう。 ……と、長所・短所が出揃ったところで最終評価ですが、まだ未熟な面は残っているものの、確かなセンスも感じられるという事で、B+としたいと思います。 ところで、この「コミック大賞」では、一昨年まで“大賞”以上の受賞作は皆無に等しかったのですが、どうも昨年の上期から風向きが変わって、今回で2年連続“大賞”という大盤振る舞いに。さぞかし「サンデー」系新人のレヴェルが上がったのか……と思いきや、実はちょっとゴニョゴニョした話が有るとか無いとか。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「最近大爆笑した事は?」。うーん、なんか皆さん余裕ありませんなぁ(苦笑)。特に打ち切り間際(?)のあおやぎ孝夫さんに「……ないですね」とか言われると、笑うに笑えないんですが(苦笑)。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 ……どんな歌なんだよ!(笑) ていうか、この歌詞で即眠りに落ちるような楽曲ってどんな楽曲なんだろう。 ◎『売ったれダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:A−/雑感など】
なお、明日は臨時講義という形で、小林尊選手の3連覇がかかっている、ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の速報をお届けする予定です。ではでは。 |
2003年第39回講義 |
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今週は『ミスフル』が急病休載のため代原1本。以前から恐れていた、突発的なレビュー作品急増が現実のものになってしまいました。しかも『HUNTER×HUNTER』の落っこち寸前の原稿を見ると、下手すりゃ代原2本になるところだったはず。うー、くわばらくわばら。 ……というわけで、今日はレビューが3本もあります。急いで講義に移りましょう。 まずは情報系の話題。来週発売の「ジャンプ」32号は、創刊35周年記念特別号として、「ジャンプ創刊号大解剖」などの様々な企画モノが掲載されるようです。 また、巻頭カラーは『テニスの王子様』の特別編・『サムライの詩』。巻末の次号予告によると、アメリカを舞台にした話のようですが、どんなストーリーなんでしょうか。 ……それでは、レビューとチェックポイントへ。今週のレビュー対象作は、新連載1本、新連載第3回の後追いレビュー1本、そして代原読み切りが1本の計3本となります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年31号☆ ◎新連載『神奈川磯南風天組』(作画:かずはじめ) 4週連続新連載もいよいよラストの第4弾。今週から登場したのは、かずはじめさんの『神奈川磯南風天組』です。 かずはじめさんは、1971年9月生まれの当年とって32歳になる女流作家さんです。神奈川県出身とのことですから、今回の連載は地元を意識した作品ということになるんでしょうか。 そして同年開催された、かの悪名高き「世界漫画愛読者大賞」の前身・第1回「ジャンプ新人海賊杯」に、かずさんも『MIND
ASSASSIN』でエントリーし、見事優勝。読者投票と作品のクオリティが噛み合わないのがこの手の賞ですが、少なくとも個人的には、この作品が優勝した事だけは極めて順当な結果だったと思っています。 その後は「赤マル」や本誌に読み切りを発表しながら、思い出したように週刊連載を始める…というパターンが続きます。連載作品の『明陵帝 梧桐勢十郎』(97年52号〜99年52・53合併号/全96回)や『鴉MAN』(01年24号〜40号/全16回)はヒットにこそ至りませんでしたが、短編作品を含めた“かず作品”にはデビュー時から現在に至るまで根強いファンも多く、それが今回の連載復帰に繋がったとみて良いと思います。 ……というわけで、今回の新連載・『神奈川磯南風天組』のレビューへ移りたいと思います。 まず絵からですが、独特ながら好感度の悪くないその画風は、以前に『司鬼道士 仙堂寺八紘』をレビューした時と全く変わっていませんので、絵柄そのものについて特筆すべき事は無いと思います。 そして、ストーリー&設定について。 今回の作品は、やや変則的ではありますが、現在「ジャンプ」で“空白地”となっていた学園不良モノですね。今や「マガジン」ですらオタク路線に転じつつある現在では、少年マンガの主流からかなり外れたジャンルになりますが、逆に“空白地”の利を生かせるかも知れません。 で、この作品の場合ではどうでしょう。まだストーリーに関してはプロローグの段階なので何も言えませんが、設定に関しては、少なくとも“その理想へ向けて努力しようとする姿勢”らしきモノは窺えます。 ……さて、暫定評価ですが、現時点ではB+あたりが妥当なところではないでしょうか。ただ、流動的な要素も多いので、第3話時点で大きく評価が上下する可能性もあります。 さて、第3回の後追いレビューですが、週を追うごとに「本当につの丸さんの作品はスロースタートなんだなぁ」…という思いが募っていきますね(苦笑)。 まぁ、このレビューはそういったポイントを抜きにするのが原則ですから、話の中身に論点を持っていくわけですが、それにしてもストーリーの進行が遅すぎるというのが実感です(苦笑)。単調ですぐに結果に繋がらない特訓シーンでも、高い技術に支えられたギャグを挟んでメリハリをつけてしまうあたりには、確かなつの丸さんの実力を感じるのですが、さすがにもう少し「あぁ、話が進んでいってるなぁ」という実感を持たせて欲しいところではあります。まぁ、『みどりのマキバオー』でも本格化まで随分と時間がかかりましたし、現時点ではとりあえず“待ち”の姿勢が一番なのかも分かりませんね。 ……というわけで、申し訳ないんですが今回の評価も保留に。評価確定の際には「チェックポイント」でお伝えする事にします。 冒頭でお伝えした通り、今週は『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)が休載のため、代原が掲載されました。鈴木信也さんは、以前にも持病の喘息が悪化して休載した事がありますが、やはり今回も同様のケースなんでしょうか。 それでは作品の評価に移りますが、やはり気になってしまうのが絵の拙さです。デビュー当時よりは若干良くなったとは思いますが、まだまだ技術不足は否めないところです。最低限レヴェルの“作者が伝えたい事を正確に読者ヘ伝える”事は出来ていますが、内容の幅を広げるためにも、もう少し画力を身につけてもらいたいですね。 そしてギャグの方ですが、ネタの発想そのものは、デビュー作・『あつがり』と同様、“1つの物事を極端にエスカレートさせたヤツが、当たり前のように日常生活を満喫しようとしたらどうなるか”…という所にあります。前作は暑がり過ぎで人体が自然発火、そして今回はダイエットし過ぎて骸骨だけに…といった具合。ただ、前作はその発想をした時点で思考がストップしてしまい、ギャグというより中途半端なホラーのようなマンガになってしまったのは記憶に新しい(?)ところです。 評価は、画力の分を少しだけ減点してB+寄りBに。とりあえず、菅家さんの作品をもう1つ2つ読んでみたいところですね。
◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の「ジャンプ」で一番笑った(しかも失笑した)のは、今週から始まった7月期「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の告知。今月の審査員はあの しかし、そこまで開き直るんだったら、
……くらいまで開き直って欲しいものですが(無理)。 ◎『こちら亀有区葛飾公園前派出所』(作画:秋元治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 最近、かつてのような“男キャラ中心・硬派路線”へと回帰しつつあるこの作品ですが、そうなってみると改めて“老衰”ぶりが判ってしまうと言うか……。 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『★SANTA!★』(作画:蔵人健吾)【現時点での評価:B−/連載総括】 『闇神コウ』との“打ち切りチキンレース”は、(恐らく)僅差でこちらが嬉しくない軍配を上げられる羽目に。 ここからもう一度出直すのは並大抵の事ではありませんが、ここまで長年頑張って来た人なのですから、いつの日かリベンジしてもらいたいものです。 ◎『ピューと吹く! ジャガー』(作画:うすた京介)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いやー、やっぱりハマーは偉大ですなぁ(笑)。この人を勝手に動かしているだけでネタが出来上がっちゃうんですから……。
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