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講義一覧
8/29(第55回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(8月第5週分・後半)
8/13 総受講者100万人達成記念式典(クリックすると、新しいウィンドウが開きます) 8/5(第49回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(8月第2週分・前半)
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2003年第55回講義 |
どうも。今週号の「サンデー」表紙の安倍麻美が、どう見ても元女子プロレスラーの美咲華菜にしか思えない駒木ハヤトです、こんばんは(笑)。 ……さて、今日は情報系の話題もありませんし、早速レビューとチェックポイントへと参りましょう。 ☆「週刊少年サンデー」2003年39号☆ ◎短期集中連載第1回『ふうたろう忍法帖』(作画:万乗大智) 今週から最近の「サンデー」では最早お馴染みとなった短期集中連載がスタート。ただし今回は若手作家さんでもギャグ作品でもなく、ベテラン・万乗大智さんが勇躍登場して来ました。 絵に関しては、既に8年も週刊連載している方ですから、あれこれと注文をつけるポイントはほとんどありませんね。多少個性のキツい絵柄のような気もしますが、「サンデー」読者はもう慣らされてしまっていますので問題にならないでしょう。 次にストーリー&設定ですが、有り体に言えば『パーマン』のオマージュなんですよね、これ(笑)。ちゃんとアレンジを加えているので別物になってますが、ほとんどの設定のベースは『パーマン』です。ここまで上手くアレンジすると、元ネタがバレても“パクリ”とは思えないという好例ですね。ストーリー展開のテンポも良いですし、さすがは週刊連載8年のキャリアといったところでしょうか。 評価はプラス・マイナス両面を考慮して、B+寄りBという事にしておきます。勿論、ストーリー上の矛盾点が解消された場合などは評価を上昇修正することになると思います。
続いての読み切り枠は、現在「サンデー超増刊」で連載中の『進学教室
!! フェニックス学園』が読み切りの形で出張して来ました。 まず絵ですが、前回の登場から間がないので仕方ないのですが、相変わらず萌えとは程遠い絵柄ですよね(苦笑)。それでも画力そのものは幾分向上していますし、以前よりも「ちょっとでも男臭さを和らげよう」という気持ちが窺える分だけ、まだ「サンデー」作家らしくなったというところでしょうか(笑)。 一方、ギャグの冴えは見事と言って良い位に進歩していますね。ページ変わりの1コマ目にオチを持って来る視覚効果を上手く活用出来ていますし、緩急をつけた前フリとオチのインパクトも効果的に出来ています。特に今回はボケとツッコミの間が絶妙で、いわゆるギャグの“打率”が非常に高かった事に好印象を持てました。更に言えば、ネタがほぼ全て全年齢対応になっているのが良いんですよ。ネタを理解できる人が偏ると、どうしても支持層が限られてきますからね。 敢えて欠点を探すならば、多少強引過ぎる展開がいくつか見られた点ですが、これも許容範囲といって良いものです。ほとんど欠点ナシの素晴らしい作品という事で、評価はAとしておきたいと思います。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「今、無性に食べたい物」。 ◎『WILD LIFE』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B+/雑感】 今週、藤崎さん的にはサービスカット連発で「どうよ?」って感じだと思うんですけど、スイマセン、個人的には全然萌えませんでした(苦笑)。
◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 当講座の談話室(BBS)で既に指摘があったんですが、賞金王決定戦の競走得点って、1着10点、2着9点、3着7点、4着6点、5着5点、6着4点ですから、予選の成績は波多野20点(5着、5着、1着)に対して洞口22点(2着、2着、6着)なんですよね。だから今回のラストの描写は誤りなんです。
それでは、講義を終わります。 |
2003年第54回講義 |
ようやく正常なカリキュラムになりました。まぁ本来なら、「ジャンプ」のレビューは月曜深夜に実施するのが筋なんでしょうが、当講座のレビューは時間をかけて吟味しないと話にならないので、こればかりはご勘弁願います。 ところで最近になって気付いたんですが、「ジャンプ」って、登場人物紹介と前回までのあらすじ紹介が無いんですよね。しかも、その割にはやたら登場人物が多くて、シナリオもやたら複雑(伏線、回想、時系列の入れ替えが多いもの)だったりしますし……。 まず1本目は、現在『シャーマンキング』を連載中の武井宏之さんによる49ページの特別読み切り作品・『エキゾチカ』。予告からは今一つ中身が掴めないんですが、どうやら車が絡んだアクション物になりそうです。 2本目は、新人ギャグ作家・大亜門さんの『超便利マシーン・スピンちゃん』。題名を聞いてピンと来た方もいらっしゃると思いますが、「赤マルジャンプ」03年春号に掲載された、『スピンちゃん試作型』の続編という事になりますね。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年39号☆ ◎読み切り『LIKE A TAKKYU !!』(作画:高橋一郎) 今週の読み切り枠は、新人・高橋一郎さんの卓球系ボクシングマンガ(!)『LIKE A TAKKYU
!!』です。 ……それでは、デビュー2作目となる今回の作品について、レビューをしてゆきましょう。 まずは絵について。有り体に言えば「第一印象でかなり損している絵柄」といったところでしょうか。 次にストーリー&設定について。こちらも語るべき所の多い作品ですね。 さて評価ですが、作・画両面の完成度を考慮した場合、今回はB+が適当といったところでしょうか。しかし、高橋さんの持つ作画のセンスを考えると、近い将来“大化け”する可能性は極めて高いと思われ、今後において大変期待が持てる新人作家さんである事は間違いないでしょう。次回作がとても楽しみです。
今週号は話題のタネの多い号でしたが、「嫌事は極力言わない」の原則から、テニス版の念能力バトルはスルーの方向で。 ◎『ONE PIECE』(作画:尾田栄一郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ここ数週は回想編なんですが、これくらいテンポが速いと、やはり読み応え出て来ますね。ただ、回想編が適正なテンポという事は、当然メインストーリーは冗長になってしまってるわけで……。まぁ、冗長とは言っても手抜きしているわけじゃなくて、思い切り広げた風呂敷を思い切り丁寧に畳んでいるだけなんですが。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/今週分のシナリオ構成分析等】 今週、ネット界隈でやたらと叩かれていたのがこの『アイシル』でした。今週登場した超ステレオ型“アホでマヌケなアメリカ白人”の言動が癇に障ったのか、某巨大掲示板なんかではエラい言われようしてましたね。 でも今回の『アイシル』は、ストーリーテリングの観点から言うと、もの凄い密度で色々な事をやってるんですよね。 ●太陽高戦の翌日にNASA高戦をするという超ハードスケジュールを、コンディション的に五分で戦えるような常識的なスケジュールにするための“事件”を起こす。 ……これを19ページでやってるんですから、駒木は四の五の言う前に「凄ェ!」と思います。多分、普通の作家さんなら今回のエピソードだけで4回分くらいのページ数を使っちゃうんじゃないですかね。
病気休養明けから電光石火のスピードで完結。かなり駆け足な展開の最終回でしたが、語るべき部分は語りきっている感じですので、確信犯的な駆け足だと言って良いと思います。(だって、延々と来年の夏までのストーリーを語られた上に、また笹崎と1年以上かけて試合されても困るでしょ?) 連載全体の総括ですが、「ジャンプ」作品にしては非常に贅沢なページの使われ方をした作品だったと思います。 ……というわけで、作品全体の評価はA−寄りB+としておきます。まぁ何はともあれ、森田さん、お疲れ様でした。しばらくはゆっくり休んで、大好きなボクシング観戦でも楽しんだら良いんじゃないですかね。
駒木、『さるかに合戦』に大爆笑。こういう客観視能力って、ギャグ作家さんには大事ですよね。
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2003年第53回講義 |
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週をまたいでしまいましたが、先週発売の「週刊少年サンデー」関連のゼミをお送りします。 ──というわけで、今日のゼミに使用するテキストは、8月20日発売の「週刊少年サンデー」38号です。ええ、次号予告に今週号のグラビアを飾った安倍なつみの実妹・ まずは短期集中連載の情報から。『DANDOH!!』シリーズでお馴染みの万乗大智さんが新作・『ふうたろう忍法帖』で早くも再始動です。 次に読み切りの情報を。ここ2年ほど増刊・「少年サンデー超増刊」を中心に積極的に活動中の若手ギャグ作家・水口尚樹さんが、現在増刊で連載中の『進学教室!! フェニックス学園』を引っさげて本誌に登場します。水口さんは過去に本誌で読み切りと短期集中連載を経験しており、今回が3度目の本誌登場となります。実力的には現連載陣と遜色無いモノを持っているだけに、ここで結果を出して本誌連載への足がかりを得たいところでしょう。こちらも次週分のゼミでレビューをお送りします。 さて次。月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」6月期分の結果発表が出ていますので、例によって受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。
今回の受賞者さんについての過去のキャリアは確認出来ませんでした。 それにしても、久々に入選作が誕生しましたね。ちょっと調べてみたところ、昨年02年6月期の『サブ・ヒューマンレース』(作画:小澤淳)以来ですから、ちょうど1年ぶりという事になりますね。講評を読む限りでは、絵からストーリーからキャラクターからベタ褒め状態で、ここまでプッシュされると楽しみになって来ますよね。
☆「週刊少年サンデー」2003年38号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 恒例、巻末コメントのテーマは、「放っておかれると、ずうっとやってしまうほどの趣味」。 ◎『金色のガッシュ!!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いったいどういう感覚してるんだよー、この人(雷句さん)のギャグセンスはー(笑)。この大緊迫した場面でナゾナゾ博士、しかもビッグボイン。で、しかも空気をおもくそ弛緩させといて、それでも全体の緊迫感は落ちていないと言う離れ業。まさにグルービーじゃありませんか。 ◎『KATSU!』(作画:あだち充)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 小説や映画なんかでは、重要な場面を印象付けるために敢えて情景描写を挟んで間を持たせる事があるわけなんですが、あだちさんの作品もそういう場面って結構ありますよね。 うあー、本気でエコロジー世界征服秘密結社とのパワープレイに突入ですか……。何て言うか最悪の事態。 ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】 この号が発売された直後からのネット界隈で、「小学生のパンチラが──」とかいう話題が全く出て来ないあたりに、 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 学校時代には必ず1人はいましたよね、何らかのダメ職人が(笑)。
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2003年第52回講義 |
お約束の日から1日遅れで申し訳ありません。今週3回目の「現代マンガ時評」をお送りします。講義をやってもやってもスケジュールが遅れ気味というあたり、何か闇金の返済に追われてるような錯覚を覚える今日この頃です(笑)。 しかも今日は年に3度の「赤マルジャンプ」全作品レビュー。喩えて言うなら、料理学校出たばかりの新人コックの作ったフルコースを立て続けに10回食べさせられた上に詳細な感想まで求められる…という、心身にモロ負担がかかる作業です。ハッキリ言ってご勘弁願いたいです(苦笑)。でも、たまにとんでもない傑作が埋もれてたりするので止められないんですよね。さて、今回はどうなりますか……。 それでは、これよりレビューを始めます。今までと同様、現役連載作家さんによる番外編はレビューから除外しますのでご了承下さい。 ◆「赤マルジャンプ」03年夏号レビュー◆ ◎読み切り『脱走屋鉄馬』(作画:小林ゆき) 巻頭恒例の“打ち切り作家枠”、今回は昨年の「赤マル」夏号以来、1年ぶりの登場となります、小林ゆきさんです。 ……と、経歴紹介が長くなり過ぎました。早々に内容へ話題を移しましょう。 ◎読み切り『双龍伝』(作画:山田隆裕) 山田さんのデビューは「赤マル」98年春号。97年12月期『天下一漫画賞』で佳作を受賞していて、その特典によるものでした。この98年春号でデビューした作家さんは、他に矢吹健太朗氏と現在『バンチ』作家になった小野洋一郎氏などがいます。豊作なのかそうじゃないのか判断つかないのがアレですね(笑)。 まず絵ですが、画力そのものはかなり高いと思います。今回の「赤マル」はビジュアル(画力)重視の編集方針を採ったと聴きましたが、これを見ると確かに肯ける話です。
ここから終盤近くまでは、デビュー作、もしくはデビュー2作目の新人さんが続きます。 絵のレヴェルは、年齢やキャリアを考えるとなかなかのモノでしょう。しかも、何気に美人な女性看護士の描き方などを見る限り、色々なタッチの使い分けも出来るようで、将来も楽しみと言えそうです。ただ、今回の画風は少年マンガと言うより児童マンガのそれだけに、違和感が無いわけではありませんでした。
絵に関しては、まだキャラの描き分け(特に輪郭)などの課題を残すものの、前作に比べると大分アカ抜けて来たのではないでしょうか。大ゴマを連発したダイナミックな演出も新人の域を超えており、今後が楽しみな逸材と言えそうです。 続いては、過去の経歴全く不明の暁月あきらさんの登場です。ただ、あまりにも新人離れした画力と「漫画歴5年」というプロフィールから、以前に別ペンネームでプロ又は同人活動をしていた可能性は極めて高いと思われます。 さて、作品についてですが、先ほども述べたように、絵に関しては即連載級の腕前だと言えそうです。多少の“同人臭さ”は感じられますが、それも鼻につくほどではなく、これは大きなセールスポイントですね。
今年4月に新設され、“月間最優秀作は漏れなくデビュー”という破格の特典が話題を読んだ「ジャンプ十二傑新人漫画賞」。その栄えある第1回の佳作&十二傑賞(=月間最優秀賞)に輝いた岩本直輝さんが登場です。 絵については、人物キャラデザインの未熟さ、キャラクターが背景に溶け込んでしまうゴチャゴチャ感など、今後修正すべき点は多いでしょう。しかし、黄金竜の迫力ある描写など、多くのマンガ家志望者が練習を敬遠しがちな(それでいてマンガ家として必要な)部分に力を注いでおり、将来性は確かに十分感じられます。
続いても「十二傑」組、5月期十二傑賞の相模恒大さんが登場です。 まずは絵なんですが、一応は見栄えがする画風ではあります。が、構図やキャラクターによって得手不得手の差が大きいようで、コマごとの完成度にムラがあるのが少し気になります。また、この作品で一番重要であるはずのスプレーアートやペンキアートの“作中作品”がお世辞にも魅力的なモノとは言えず、絵が逆に作品のクオリティを押し下げてしまった感も否めません。
絵の完成度は非常に高いですね。絵そのものだけでなく、かなり“マンガを描く訓練”を積んでいる印象もあり、今すぐ連載しても大丈夫でしょう。ただ、多少「サンデー」的な画風であり、「ジャンプ」本誌に載った場合は微妙な違和感が出て来る可能性がありますね。 ◎読み切り『アシハラ戦記 トウタ』(作画:ゆきと) ゆきとさんは01年後期「手塚賞」で佳作を受賞し、翌02年の「赤マル」夏号でデビュー。今回が1年ぶりの登場となります。前回はバスケットボールをテーマにしたスポーツ物作品でしたが、今回は一転して日本の神話世界をモデルにしたファンタジー。なかなか果敢な挑戦ですね。 絵に関しては、画力そのものは別にしてマンガの絵として見難いのが気になります。線の強弱のメリハリを持たせないままで背景やエキストラ的キャラを細かく描き過ぎているので、メインのキャラが目立たないんですよね。せっかくの絵の密度が逆効果になっている感じです。線や絵の取捨選択というのも、マンガを描く上での重要なテクニックのはずですから、今後はこのあたりに目を配ってほしいものです。
ストーリー系の新人・若手枠のオーラスは、「ジャンプ」では珍しい移籍組の若手・福島鉄平さんです。 まず絵ですが、好き嫌いの分かれそうな絵柄ですよね(苦笑)。画力そのものも決して拙劣ではないでしょうが、画力秀逸とするには躊躇するようなレヴェルであるとも思います。どちらにしろ、少年マンガの王道的なストーリーとの相性は悪そうで、今後の「ジャンプ」での活動の幅はかなり限定されてしまいそうですね。
この「赤マル」夏号では唯一のギャグ枠。コッテリとしたストーリー物が続いた後の口直しといったところでしょうか。 まず絵ですが、どうしようもないレヴェルだった1年前に比べると、まだマシにはなっていると言えます。しかし、不自然かつワンパターンな顔のアングルや表情といい、迫力のまるでないアクションシーンと言い、プロとしては依然として落第点の範疇に留まっています。これでは作品全体の雰囲気は“クサい芝居のコント状態”みたいなもので、当然、作品のクオリティにもかなり悪い影響を与えています。
しかし、こうして新人・若手作家さんの中に叶さんの作品が混じると、何とも表現のし難い“格の差”が感じられるのが興味深いですね。今回は画力自慢の新人さんが終結した増刊号だったのですが、そこへ入っても叶さんの実力というのは一歩図抜けているように思えます。これは恐らく、叶さんは画力そのものも然ることながら、様々なマンガを描くテクニック──構図の取り方、ディフォルメの技術、不必要な線や背景の省略など──が非常に長けており、それが作品のクオリティに反映された…という事なのでしょう。 あと、非常に気になったのは、新人さんのストーリー系作品のシナリオ構成が、全ての作品においてお互いに酷似していた事です。
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2003年第51回講義 |
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「現代マンガ時評」タイムラグ解消シリーズ第2弾、今日は先週発売の「週刊少年ジャンプ」37・38合併号についてのゼミを実施します。 ……それでは情報系の話題から。まずは月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の6月期分の審査結果が出ていますので、受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ◎佳作&十二傑賞の田村隆平さん…03年2月期「天下一漫画賞」で審査員(武井宏之)特別賞を受賞。 今回の審査員は冨樫義博さん。さすがはネームだけでマンガの原稿料を稼ぐ男と言いますか、「伏線の使い方は分かっているようです」…だなんてグルービーな講評が印象的でした。 余談はさておき、情報系の話題をもう1つ。次号39号では、読み切り作品・『LIKE A TAKKYU』(作画:高橋一郎)が掲載されます。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年37・38合併号☆ ◎読み切り『ネコマジンみけ』(作画:鳥山明) 「ジャンプ」の読み切りシリーズ、今週はベテラン作家枠、しかも合併号という事で、3年ぶりに鳥山明さんの登場となりました。 ──それでは本題へ。第一線を退いた作家さんの“読み切りのための読み切り”をレビューするのは初めてに近いですので、果たして上手い論評が出来るか不安ですが……。 まず絵に関して。以前はスクリーントーンをほとんど使わない事で有名だった鳥山さんも、最近はペン入れ後の工程をコンピューターで済ませているとのことで、いかにもそれっぽい仕上がりになっていますよね。それにしても、トーン削りのような細かい作業が使えないにも関わらず、そんなに平板な印象を与えない作画技術はさすがだと思います。 ただし悲しいかな、ストーリー&設定の方は、鳥山さんのマンガ制作に対するエナジーが、その全盛期に比べて大いに減退してしまったのをハッキリと感じ取れるものになってしまっていまいました。 この「ネコマジンみけ」のような、最後にハッピーエンドで終わるエンタテインメント系作品において、その構成を考える上で最大のポイントとなるのは、“いかにクライマックスシーンで読者にカタルシスを与えるか”…という部分です。こういうエンタテインメント系の作品では、決まって主人公が悪者を倒して終わりになりますが、何故そうするかと言うと、それが読者にカタルシスを与えるのに一番手っ取り早いからなんですよね。勧善懲悪モノが古典の時代から脈々と受け継がれているのは、実はそういうわけなんです。 で、ラストで読者にカタルシスを与えるためには2つの要素が重要になってきます。その1つ目は言うまでも無くクライマックスシーンそのもの。これが上手くいかないと、文字通りお話になりません。 では、この『ネコマジンみけ』はどうかと言いますと、このカタルシスを与えるための2つの要素──特に“ストレス付加”要素が弱いんですね。話のテンポが早い事もあるのですが、ストーリー上に大きな“谷”も“山”も無いまま、何となく「めでたしめでたし」で終わっている…といった感じです。その結果、読後感こそ悪くないものの、非常にインパクトの弱い作品に終わってしまいました。 さて評価ですが、絵柄など見所はあるものの作品全体のデキは不完全ということで、B寄りB+ということにしておきましょう。こういう状態で長期連載されても晩節を汚すだけだったでしょうから、鳥山さんが第一線を退いたタイミングは見事だったですよね。まぁ、そう出来るだけの財産を築けたというのが一番大きいのかも知れませんが……。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週、ネット界隈で聞いて一番面白かったネタが、『アイシールド21』で神龍寺ナーガの監督が言った、 で、各作品のデキ具合に関してですが、4コママンガとして一番“形”になっていたのは『ONE PIECE』ですね。尾田さん、本当にマンガ描くの好きなんですなぁ。 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 今週は、とりあえずこの作品を採り上げておかないといけないでしょうなー(笑)。とりあえずの長期連載ゴーサインが出て(どうやらアンケート結果はマズマズ良好だったようです)現場のテンションが上がったのか、ギャグと言いストーリーと言い、物凄い濃密な19ページでした。 ところで、どうも“パピヨンマスク編”は、突き抜けても尻切れトンボにならないような、10回前後で一区切りつくようなシナリオになってるようですね。前作の失敗で懲りたのか、それとも“白装束を着た”状態で臨んだ連載だったのか……。 余談ですが受講生さんの指摘によると、ビジネスホテルに未成年の女の子が1人で泊まろうとすると、非常に怪しまれるそうです。まぁ駒木などは、それを聞くと逆に、偽の身分証明書でシレっと「21歳・ルポライター見習い」になりきる斗貴子さんなどを想像してワクワクしてしまうのですが(笑)。 ◎『ROOKIES』(作画:森田まさのり)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
ではでは。 |
2003年第50回講義 |
随分久しぶりの講義になりますね。もっとも、駒木は記念式典前後の公私多忙があって、全く久しぶりという感じがしないのですが(苦笑)。 さてさて今日の講義の内容は、8月6日の水曜日に発売された、「週刊少年サンデー」36・37合併号についてのレビュー及びチェックポイントとなります。物凄いタイムラグがありますが、もしもまだこの号の「サンデー」が手元に残っておりましたら、逐一参照の上、受講して頂きたいと思います。
◎新連載第3回『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)【第1回時点での評価:B】 というわけで、「週刊少年サンデー」夏の新連載第2弾・『楽ガキFighter』の後追いレビューをお送りするのですが……。 この第3回まで読んでの率直な感想を申し上げます。まさか、ここまで酷い作品とは思いませんでした。駒木も長年、物理的事情が許す限り色々な駄作と出会って来ましたが、ここまで勢いに溢れた駄作となると、『サイレントナイト翔』(作画:車田正美)以来かも知れません。 何しろ、主人公と敵対する事になった組織の目的が、 しかも、とりあえず百歩譲ってこの“理想”をアリと認めるにしても、そうすると今度はこのお話と組織の目的が全く噛み合いません。いやしくも世界征服を企もうという組織なのだったら、少し頭の足りない高校生を組織の仲間に取り込む前に、具現化した絵で国会議事堂くらい占拠してはどうかと思うのですが(笑)。 以上のように、この作品はそのストーリーや、それを差支える土台の部分が既に倒壊してしまっています。思うに中井さんは、師匠の江川達也氏の悪い部分──ハッタリを重視する余り、ストーリーが平板になってしまう点──だけを引き継いでしまっているような気がします。しかもそのハッタリすら中途半端なのですから、文字通りお話になりません……。 評価は勿論大幅ダウンです。世界観、ストーリーが完全に崩壊しているわけですから、C評価も止むを得ないところでしょう。
巻末コメントのテーマは、「自分って親に似ているなぁ…と思うところ」。面白いように見えて、実は答えにくい質問のようで、コメントも「顔」とちょっとした性格に分かれた感じになりましたね。藤田和日郎さんは隣のページにデカデカと掲載されているフリーダイヤルに電話したんでしょうか。
作中に登場した「狗神大サーカス団」って、やっぱり最近「うたばん」に出てる「犬神サーカス団」から来てるんでしょうなー。“藤田和日郎さんから借りたビデオの「かくし芸大会」”といい、藤崎さんは相当バラエティー好きのようですね。
4年に及ぶ連載も晴れてフィナーレ。やや唐突な締め括り方だったような気もしますが、読後感は悪くなかったと思います。 |
2003年第49回講義 |
今日の講義が、とりあえずは記念式典前最後の講義になると思います。また、今日も式典の準備と平行しつつ…という感じですので、駆け足、駆け足で進行させたいと思います。どうぞ宜しく。 まず、情報系の話題から。「週刊少年ジャンプ」の次号は夏の合併号ということで、様々な企画モノが用意されているようですが、読み切りの方も超大物作家さんの登場となりました。 そして今日は話題をもう1つ。実際に「ジャンプ」を購読されている受講生の皆さんは大変驚かれたでしょうが、作者体調不良のために長期休載されていた『ROOKIES』(作画:森田まさのり)が、今週発売の36号から連載再開となりました。 ◎読み切り『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健) 2週連続で既製作品からの模写疑惑(というより確定に近いですが)が持ち上がるという、極めて憂慮すべき事態となっている「ジャンプ」読み切りシリーズですが、今週はどちらかと言えば間違いなく模写される側の(苦笑)、小畑健さんの登場です。今回は納涼という意味も込めて(?)ホラー作品での登場となりました。 では、作品の内容について述べてゆきましょう。 まず絵ですが、もうこれは何も口を挟む点はありませんね。少年誌作家にしてはリアルタッチな小畑さんの画風が、ホラー系作品になって更に栄えているような気がしました。 次にストーリー&設定ですが、全体的な完成度はソコソコの水準に達しているものの、至る所で詰めの甘さが見受けられ、そのために“良作になり損ねた凡作”に終わってしまったような気がします。 この作品のメインアイディアは、『ドラえもん』の「独裁スイッチ」などに見られる、「平凡な人間が他人の生殺与奪を握ってしまった時、その人間と社会はどうなるか?」……という“もしも”のお話です。人が死ぬ(又は消える)という不可逆かつ重大な事象が簡単な作業で出来てしまえる…というギャップが得体の知れない恐怖を生み出すのがキモですね。 そして、実はこの作品で一番怖いのは、主人公・鏡太郎の隠れた凶悪性だったりするのですが、これがどうにも作品中で描ききれていないのが、もう1つの惜しい所です。 ……以上の事情により、この作品は“怖いはずなのに怖さが伝わって来ない、何だかちょっと分かり難いお話”になってしまいました。せっかく小畑健さんに絵を描いてもらったのに、勿体無い事しましたね。 先週の予告には掲載されていなかったのですが、今週は、『HUNTER×HUNTER』の取材休みで開いた枠を埋めるための15ページギャグ読み切りが掲載されました。 まず絵について。パッと見で言えば、多少の“同人臭さ”は残るものの、見栄えが良さそうな画風ではあります。アシスタント経験の賜物でしょう、背景の上手さも目を引く仕上がりです。 また、ギャグそのものにも今一つ“突き抜け”方が足りないような気がします。この作品は「しょうもないバカバカしい事を、クソ真面目にやれば面白い」…という、昔から使われているパターンを追求した作品なのですが、その肝心のクソ真面目さが今一つに終わってしまったように思えるのです。バカバカしい記録に挑戦させるなら、それこそ命の遣り取りをするくらいヒリヒリした緊張感でやらせないと、爆発力のあるギャグにはならないのです。 ……というわけで、評価はC寄りB−。とりあえずマンガらしいマンガにならないと、連載獲得どころの話ではないと思います。僭越ながら猛省を促し、奮起を期待したいところであります。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 先月は、“「十二傑新人漫画賞」募集ページby矢吹健太朗”について、あれこれ好き放題述べたんですが、まさかそれが今月分の前奏曲に過ぎないとは、夢にも思いませんでした。 矢吹さんはまだ“上手い(ように見える)絵”というセールスポイントがありましたので、それで引っ張れば良かったのです。しかし、それすら無い人が自分のセールスポイントを述べようとした場合は……。 ──誰か、誰かいませんか? このお方に「まだまだだね」と言ってくれる人は……! ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 ラスボスは、とんでもなく強くてとんでもなく悪い奴だった……というわけですね。王道パターンながら、これが案外難しいんです。しかし、根っからの悪人という奴から溢れる不快感というのは強烈ですなぁ。
……というわけで、今日のゼミはこれまで。 あ、冒頭でも言いましたが、次回のゼミは記念式典後になると思います。どうか何卒。 |
2003年第48回講義 |
先日の番外編はどうも失礼しました(笑)。未だに頭が痛むのは、多分珠美ちゃんにドツかれたせいではなくて睡眠不足と眼精疲労のせいだと思うんですが、まぁ何とか講義終了まで保たせたいと思います。 さて、今日は変則的な内容で、「サンデー」系の情報をお届けした後に、今週発売の「ジャンプ」&「サンデー」各35号のチェックポイントをお送りします。「サンデー」はレビュー対象作がありませんでしたので、今日はチェックポイントのみの扱いとなります。 それでは、まず情報系の話題ですが、今日は最終回のお知らせをしなければなりません。約4年に渡って連載されて来た『天使な小生意気』(作画:西森博之)が、次号36・37合併号をもって最終回となります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年35号☆ ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の「ジャンプ」はビッグサプライズ連発。特に初っ端の『ボーボボ』アニメ化には、驚きを通り越して絶句してしまいましたよ。あのノリをどうやってアニメで表現するのか、ちょっと心配になっちゃいますね。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 第2回人気投票結果発表となりました。本誌でのポジションや単行本部数と全くそぐわない莫大な投票総数、更には明らかに“男尊女卑”の開票結果からも、このマンガの支持層が恐ろしく偏っている事が再確認される形になりましたね(笑)。 あ、作品の中身についても語っておきましょうか。 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 いきなりの唯編突入。個人的な話で恐縮ですが、駒木にとっては「臨むところよ!」ってところであります(笑)。 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 既に『朝まで生テレビ』級の大討論になってます、ポンズは死んだか死んでないか…という話題について私見を。 この論争のポイントは、384ページ最終コマのブラックアウトを、「ポンズの意識が飛んだ表現」とするか、「場面が転換した事を示す表現」とするかで解釈が変えられる…という事ですね。前者ならポンズは死んでますし、後者なら生きているわけです。 ◎『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』(作画:加地君也)【現時点での評価:B−/連載総括】 評価はB−で据え置き。残念ながら失敗作という判断です。 ☆「週刊少年サンデー」2003年35号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「ショックだった過去の落し物」。原稿を落とした(not原稿間に合わず)人が2人もいてビックリ。そんな『まんが道』の夢シーンみたいな話が本当にあるとは。しかもマンガ家ご本人が! ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 予想通りとは言え、ついに物語は佳境へ。しっかし、8年がかりの伏線というのも凄い話ですなぁ。 ◎『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)【第1回掲載時の評価:B/前回のレビューについて】 受講生の方からご指摘があったんですが、前回(第1回)に登場した、ハユマが描いてしまった悪キャラは、D-メンの“悪属性バージョン”だったんですね。これならハユマの能力でも描けておかしくないわけで、その部分に関しては矛盾点は無くなりました。 ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 タガ外れまくりの黒賀村編、佳境というより秘境へ辿り着きつつある感がありますね。何て言うか、「見てるか弟子ども! 俺はギャグセンスにおいても、まだまだ貴様らには負けん!」……という藤田さんの叫びが聞こえてくるような、そんな感じであります。 モデム配りを2人一組でやってますと、頻繁に出ます、高みからの発言。 「いや、こんな仕事で良い成績出したって自慢できるもんじゃないし、給料も変わらんし。運だよ、運」 ……モデム配りのスタッフは、みんな「こんなクソ会社のクソ仕事、ろくなもんじゃねえ」…とか言いながら、成績が悪いと何故か凹むんですね。で、その日に調子の良かった方のスタッフから毎日のように飛び出るのがこの言葉。何て言うか、人間の心の闇を覗く思いです。 ところで、女の子が「カワイイ」と言う女はブス…という定説について。これ、以前女友達に訊いてみたんですが、彼女曰く、 なお、来週は記念式典の準備を先行させるため、通常の講義はイレギュラーになると思います。これもご容赦下さい。ではでは。 |
番外編 |
順子:「……というわけで、講義形式で『観察レポート』することになりました。しかも、ワタクシこと一色順子に、珠美先輩を交えた豪華メンバーでお送りします!」 |