「社会学講座」アーカイブ

 ※検索エンジンから来られた方は、トップページへどうぞ。


講義一覧

12/25(第77回) 競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 有馬記念」
12/24(第76回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)
12/23(第75回) 
地誌「実用不可!? 駒木流弾丸旅行マニュアル」(1)
12/17(第74回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第3週分・合同)
12/11(第73回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 朝日杯フューチュリティS」
12/10(第72回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第2週分・合同)
12/4(第71回) 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 阪神ジュベナイルフィリーズ」
12/3(第70回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(11月第5週/12月第1週分・合同)

 

2004年度第77回講義
12月25日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 有馬記念」

 今年もいよいよ有馬記念。中央競馬のグランプリレースの日がやって参りました。今回は勿論、研究室メンバー総出で勉強会を実施しました。
 ただ申し訳無いのですが、前日分の講義振替実施などでこちらの編集作業が遅れに遅れております。とりあえず土曜深夜には駒木の予想だけ公開しておき、会の詳細と研究室メンバーの予想については日曜レース直前の公開となりました。ご了承下さい。


第49回有馬記念(グランプリ) 中山2500芝内

馬  名 騎 手
ゼンノロブロイ ペリエ
ピサノクウカイ 藤田
ハイアーゲーム 吉田豊
コスモバルク 五十嵐冬
ハーツクライ 横山典
シルクフェイマス 四位
ユキノサンロイヤル 柴田善
ダイタクバートラム 武豊
タップダンスシチー 佐藤哲
10 デルタブルース ボニヤ
11 ヒシミラクル 角田
12 グレイトジャーニー 小牧太
13 ツルマルボーイ 蛯名
14 コイントス 岡部幸
15 アドマイヤドン 安藤勝

駒木:「いやー、あっという間に有馬記念だねえ」
リサ:「グランプリー! Ya----ha----!」
珠美:「今年は博士も色々と忙しくしてらっしゃいましたから、月日の流れも速かったんじゃないですか?」
駒木:「そうだねぇ。去年なんかは電器量販店の片隅で逆浦島現象に苛まれていたから、時間の流れもかなりマッタリとしてたようなね」
順子:「…………」
珠美:「来年は今年よりもう少し楽になれば…といったところですか?」
駒木:「もう少しと言わず、もっと楽になってくれればそれで良いよ(苦笑)」
珠美:「(笑)」
順子「…………」
駒木:「あれ? 順子ちゃんどうした? 今日は元気ないねぇ」
順子:「どうしたも何も、なんでこのクリスマスの夜に、年頃の女の子が雁首揃えて競馬の予想しなくちゃならないんですか! クリスマスですよ!」
珠美:「そんなこと言っても、今年の有馬記念が26日なんだから、予想する日はどうしても25日に……」
順子:「そういう問題じゃないんです! そういう問題じゃなくて、クリスマスにはクリスマスらしい過ごし方ってもんがあるでしょう? 大体、珠美先輩もリサちゃんも、おかしいと思いません? 何かこう、もっと“らしい”過ごし方ってのが……」
珠美:「(苦笑)……ま、気持ちは分からなくもないけど、それを今更言ってもね」
リサ:「おかしいですか? オーストラリアだとクリスマスは仲の良い人とか家族とかと楽しく盛り上がるのが普通ですよ?」
駒木:「まぁ君らにはすまないなぁとは思うよ。でもねぇ順子ちゃん、ちゃんとした予定があるなら前もって言ってくれと。休みをあげるよって告知してたじゃないか」
順子:「……いや、まあ、そう、です、けど……」
駒木:「折角のクリスマスだから、一緒に過ごしたい大切な人がいるなら遠慮せず休んでくれて良いよって言ってただろ? それを何だ、相手を見つけられなかった自分の至らなさを棚に上げてだ、今更文句言われてもどうすりゃいいんだ?」
順子:「……あ、いや……」
駒木:「作れってか。オボッチャマくん作るみたいにボーイフレンド作れってか。打ち切り間際のラブコメマンガで何の脈絡も無く恋敵のお相手をでっち上げるみたいに斡旋しろってか」
順子:「いや、そこまでは……」
駒木:「そもそもだ、クリスマスに競馬の予想なんかしたくないってのはねぇ、ぶっちゃけて言うとこっちだって一緒なんだよ!」
順子:「(笑)」
珠美:「(苦笑)」
駒木:「僕だってねえ、言いたいよ。『週末はちょっと野暮用があって予想が出来ませんので、日曜日の夜にレース回顧で勘弁して下さい』とか、ちょっとニヤケた顔で謝ってみたいさ。『コレ(小指を立てて)がコレ(両手の人差し指を頭の上にかざして鬼のツノに見立てて)でして、すいませんねぇ』…なんて、中川家の漫才みたいなベタな事を言ってみたいよ!」
リサ:「博士、『水曜どうでしょう』の大泉洋サンみたい……」
順子:「(小声で)珠美先輩、ひょっとしてわたし、点けちゃいけない所に火、点けちゃいました?」
珠美:「(小声で)そうみたいね(苦笑)。ま、たまには聞いてあげて(微笑)」
駒木:「今日もちょっと用があって三ノ宮(注:神戸で一番人が多くて華やかな街)に行ったんだよ。そうしたらもうどこを見てもカップル、カップルだよ。通行人の9割以上が男女2人連れでね、もう服装から何からバッチリ決めて、カップル、カップルが小川直也ばりにハッスル、ハッスルしてるわけ」
順子
:「(苦笑)」
駒木:「もうカップルの男なんて見るからにイレ込みまくってるわけだよ。サトラレでもないのに全身から『種付けさせろー種付けさせろー』って思念波を半径1キロ四方に向けて撒き散らしててさぁ、居た堪れないったらありゃしないよ」
珠美:「あの、博士、リサちゃんもいますし、もうちょっとお言葉には気をつけ……」
リサ:「ダイジョウブです。面白いから続けてください(笑)」
駒木:「それでだ、もうカップルなんか見てらんないから目を凝らして“お仲間”を探してみたらだ。1人でいるのは僕に負けず劣らず見るからに冴えない人たちばかりだ。僕ぁもう悲しいよ」
順子:「(笑)」
駒木:「もう道を歩いてるのが嫌になって、行きつけの雀荘に足を運んだらさぁ、いつも週末の午後になれば平気で4卓、5卓立ってる店なのに、クリスマスだからか知らないけど、メンバー(=店員)3人入ってやっと2卓だよ。店内に客5人」
順子:「わ、笑えない……(苦笑)」
駒木:「そうやってね、自分と同じ境遇の冴えないお方とだ、天皇誕生日からぶっ通しでシフトに入ってて意識が混濁しているメンバーさんと卓を囲んでるとね、もう悲しくて悲しくて……。で、自分の手牌を見たら石川啄木の詩を口ずさみたくなるような牌姿ばかりで──」
順子:「働けど働けど…ですか(笑)」
珠美:「……えー博士、大変申し訳ないのですが、そろそろ予想の方を始めないと時間が……」
駒木:「了解(笑)。じゃあ始めようか。珠美ちゃん、進行して」
珠美:「ハイ。それではいつも通り、ステップレース別に大まかな出走馬の概説をお願いします。今回はジャパンカップ組と別路線組に二分割されると思いますが……」
駒木:「そうだね。昔は天皇賞、菊花賞からの直行組も多かったんだけど、最近はステップレースから中3週で天皇賞→中3週でジャパンカップ→中3週で有馬記念…というローテーションの調整ノウハウが浸透して来たのか、アクシデントでもない限りは秋にG1を3戦使うようになって来たね。まぁ今回もジャパンカップ組が主力と見て間違いないだろう。
 2連勝したゼンノロブロイ、まぁ秋緒戦までの詰めの甘さが見られなくなった辺り、ここに来て静かに本格化してるってのはあるんだろうね。天皇賞は恵まれた感じもあったけど、ジャパンカップは相手が相手とはいえ、なかなかに強いケイバをしていた。
 コスモバルクは大健闘ではあるんだけど、あれが現状ではギリギリ一杯かな、という気がしないでもない。まぁ言ってみれば昔のゼンノロブロイというか、牡馬版のトゥザヴィクトリーというか。
 デルタブルースはもう完全に化けちゃった感じだね。2連続で好走されたら、もうフロック扱いするわけにはいかないだろう。ただ、これが秋5戦目。G1の2戦にしても、かなりキツく追われているし、体調面はピークに近いところを維持するだけで精一杯だろうね」
順子:「ジャパンカップと言えば、ヒシミラクルが直線入るところまでは凄かったですよねー」
駒木:「今回は調教の動きを見る限りでは九分程度には復調して来てるみたいだよ。メンバーの水準的にも、勝って来たG1レースとそれほど大差ないし、面白い存在ではあるよね。
 あとはハーツクライとハイアーゲームか。完全にレースの流れに乗り損ねてたから前走は度外視するとしても、脚質的に追込タイプじゃあ中山の2500mは、ちと厳しい。7年前に3歳馬で差し切ったシルクジャスティスに比べると、地力的に一枚落ちる気もするしね」
珠美:「では次に別路線組になりますが、注目はやはり凱旋門賞以来の出走となる日本のエース・タップダンスシチーですね。いかがでしょうか?」
駒木:「んー、凱旋門賞のダメージが結構尾を引いてる感じでね。でも引退レースだっていうんで急ピッチで仕上げて来たみたいんだけど、直前になって引退撤回が決定と。陣営も拍子抜けだろうねぇ。イチかバチかの大勝負でテンションを上げてたら、『来年のこともあるから無茶は止めてね』って話になっちゃった。
 レースは生き物だから判んないけど、勝手に勝ちが転がり込んで来るってシチュエーション以外は勝負に行かないで、とりあえず見せ場だけは……ってレースになるんじゃないかな」
珠美:「なるほど……」
リサ:「珠美サン、タップダンスシチーに◎印つけてるのに……」
順子:「大丈夫。駒木博士の言うことだから(笑)」
駒木:「……講義止めて、あと1時間ぐらい愚痴聞かせてやろうか?」
順子:「いえ、遠慮させてもらいます(笑)」
珠美:「あと注目は天皇賞から直行のシルクフェイマスとツルマルボーイ、それからステイヤーズSで完全復調をアピールしたダイタクバートラムあたりでしょうか?」
駒木:「シルクフェイマスは軽いケガでジャパンカップを断念。まぁ、そのケガは全く気にしなくて良いんだけど、どうも春に比べるとまだフィジカル面が戻りきってないみたいだね。だから春の姿を考えてるとどうかな。
 ツルマルボーイは、やっぱり脚質だろうねぇ。去年にしても勝負が決まってから猛然と追い込んで4着。今年は騎手が2着のヨコテンから出遅れの蛯名に乗り替わり。まぁ微妙だね(笑)。
 ダイタクバートラムは、調子云々より地力だろうね。前走とは比べようも無いメンツの中で走るわけだからね」
順子:「ダートから来たアドマイヤドンはどうです?」
駒木:「そりゃ、元々は芝で2歳チャンピオンになって、菊花賞でも入着経験のある馬だから芝の長距離が向かないはずは無いんだけどね。ただ、ダートほどの強さを期待するのはどうだろう。ノーマークの身軽さを利しての“蹴たぐり”一発があるかないか、だろうね」
珠美:「……時間に巻きが入って来ました。取り急ぎ展開予想をお願いします」
駒木:「逃げるのはタップダンスシチーか、押し出されてコスモバルク……と言いたい所なんだけど、この2頭の陣営は余り逃げたくなさそうだからなぁ。ひょっとすると9年前のマヤノトップガンみたいに意外な馬が逃げるかも知れないよ。デルタブルースとか、コイントスとか。
 ペースは、コスモバルクが引っ張るなら平均ペースになるだろうけど、そうじゃなかったら少し遅めかな。ただ、出走各馬の脚質分布は偏っていないんで、そんなにゴチャついた展開にもならず、ポジション争いで揉める事も無いだろうね。淡々とした流れになって、3コーナーからの持久力勝負か、三分三厘からの決め脚勝負か。
 で、こうなると追込脚質の馬はかなり厳しい。5回もコーナーを回る特殊な形態のレースだしね。まぁ勝負権が有るのは先行集団から中団までかな。勝負所で強引に捲って来るヒシミラクルまでがギリギリだろう」
珠美:「それでは、各自の予想発表に参りましょう。まずは博士からお願いします」
駒木:「はいはい。

◎ 1 ゼンノロブロイ
○ 11 ヒシミラクル
▲ 10 デルタブルース
△ 4 コスモバルク
× 6 シルクフェイマス
× 14 コイントス

 本命は敢えて1番人気のゼンノロブロイから。期待値から考えると割に合わないんで買いたくないんだけど、僕の場合、当てるためにはまず自分を裏切る所から始めないとね(笑)。まぁどんなレースになっても抜け目無く対応できる自在性もあるし、深刻なイン詰まりでも無い限りはペリエが格好はつけてくれるでしょう。優勝候補というより連軸かな。
 2番手、3番手は同系のヒシミラクルデルタブルース。ロングスパート合戦になったらこの2頭だね。トップスピードに入ったら絶対にバテないってのが強み。
 これ以下は2着候補。コスモバルク、実は僕はそんなに力のある馬とは思ってない。弱メンバーでなら1つくらいG1獲ってもおかしくないとは思うけどね。まぁ今回は決め脚勝負になった時の前残り要因。
 シルクフェイマスはギリギリのタイミングで復調したら…だね。むしろ2年前に3着したコイントスの方が面白いかも。こっちは大分体調も戻って来てるみたいだしね。
 馬券は今回は馬連ベースで。1-11、1-10、10-11、1-4、1-6、1-14。ちょっとした展開の変化によって上位馬が入れ替わる可能性が高いので、3連単はお遊び程度に控えるのがベター。1-4-14、10-11-1、11-10-1の3点なんてのはどうかな」
珠美:「私は実績重視・スローペースの前残りを期待してタップダンスシチー本命です。馬連で1-9、4-9、1-4、9-10、8-9、9-11
順子:「わたしはヒシミラクルアドマイヤドンの軸2頭流しマルチで3連単を。(11、15)−(1、4、9、10)です」
リサ:「ワタシは……4番コスモバルクと、四位ジョッキーの乗ったシルクフェイマスで──」
順子:「ヨン様馬券(笑)」
駒木:「まぁ、3年前は9・11テロの年でマンハッタンカフェとアメリカンボスだったからなぁ。でもちょっと苦しいタカモト馬券だね(笑)。どうせならペ・ヨンジュンってことで“ペ”のペリエも入れたらどうだい?(笑)」
珠美:「それですと、騎手の名前が『ペ・四・十』ですしね(笑)」
順子:「あ、ホントだ(笑)」
リサ:「じゃあ馬連ボックスと3連複の1、4、6を」
駒木:「……ということで、今年の競馬学講義も終わりだね。ちょっと中途半端な形になっちゃったけど、また来年宜しくということで」
珠美:「それでは皆さん失礼します」
順子:「お疲れ様でしたー」
リサ:「オツカレでしたー」

 


 

2004年度第76回講義
12月24日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)

 今日はよりによってクリスマス・イヴでありますが、ふと気になってこの3年ばかりの12月24日に駒木が何をしていたかを「観察日誌・レポート」で振り返ってみたところ……。

   _| ̄|○     


 ……えーと、リンク張る気力も無いので勝手に確かめて下さい。余りの無味乾燥ぶりに、ただただ脱力します。
 個人的に一番参ったのは01年でした。何を考えて、あんな所に行ったんだろうなぁ俺ぁ。

 まぁそんなこんなで、非常に冴えないまま20代最後のクリスマス・イヴを淡々とスルーした駒木がお送りする、恐らく今年最終になるであろう「現代マンガ時評」です。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(5・6合併号)『スベルヲイトワズ』作画:森田まさのり)が掲載されます。
 森田さんは、『ろくでなしBLUES』、『ROOKIES』といった2本の超長期連載作品でお馴染のベテラン作家さん。今回はここ最近「ジャンプ」系列他誌で手がけている、お笑いに青春を捧げる若者を描いたお話になりそうですね。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(6号)より『最強! 都立あおい坂高校野球部』作画:田中モトユキ)が新連載となります。
 中卒ルーキーを題材にしたプロ野球マンガ・『鳳ボンバー』で無念の打ち切りを経験した田中モトユキさんが、今度は高校野球モノで再挑戦という事になりました。
 田中さんは、『鳳──』の前には正統派バレーボールマンガである『リベロ革命!!』も手がけており、硬・軟どちらにも対応出来る作家さん。今回はどのようなタッチの作品になるのでしょうか。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年新年3・4合併号☆

 ◎読み切り『MP0』作画:叶恭弘

 作者略歴
 1970年12月16日生まれの34歳
 「ジャンプ」作家になる以前のキャリアの存在も噂されているが、詳細は不明。
 「ジャンプ」系作家としてのキャリアは、「ホップ☆ステップ賞」(=「十二傑新人漫画賞」の前身の前身)92年1月期において、『BLACK CITY』で入選を受賞この作品が季刊増刊92年秋号に掲載されて「ジャンプ」デビュー
 その後は週刊本誌93年12号で本誌デビューを果たし、更に94年から1年〜2年に1度のペースで季刊増刊、週刊本誌に作品を発表(ちなみに週刊本誌には94年49号と00年25号の2回掲載。後者の方は原作者付作品)その傍らで小説本の挿絵も担当するなど、寡作ながら幅広い活動を続ける。
 02年24号からは、「ジャンプ」初の連載(叶さん自身が「10年ぶりの連載」と発言)となる『プリティフェイス』の週刊連載が開始。この作品は03年28号まで約1年間続き、「赤マル」03年夏号では、この作品の事実上の完結編となる『プリティフェイス番外編』を発表。
 復帰作は「赤マル」04年冬(新年)に掲載された『Snow in the Dark』で、同年夏号には『しーもんきー』を発表。さらに今年は「ストーリーキング」ネーム部門受賞作・二戸原太輔さん原作の『桐野佐亜子と仲間たち』のマンガ担当も務めた(04年19号〜20号掲載) 
 
 についての所見
 
小畑健さんと並ぶ「ジャンプ」系作家トップクラスの卓抜した画力を、今回も遺憾なく見せ付けてくれました。ただ単に絵が上手いだけでなく、ディフォルメなどのマンガ的な技巧も優れているのが叶さんの描く絵の特徴ですね。
 まぁそういうわけで、余りにも凄いので、他に何も口を挟む事が出来ません(笑)。

 ストーリー・設定についての所見
 “マジカルミステリー”などという銘が打たれ、一体どういう作品かと思って身構えていましたら、『プリティフェイス』『魔法先生ネギま!』をミックスしたような世界観の軽いノリのコメディ作品でしたね。とりあえず「どこがミステリーやねん」と担当編集を吊るし上げたい気分ですが(笑)。
 まぁそういうわけで、プロット・シナリオについては著しく重厚さに欠けており、当ゼミの評価基準としては減点を免れません。が、それでも完成度の高い設定や非常に手堅くまとめられたストーリー展開はクオリティを相当押し上げており、なかなか侮れない作品であるとも言えます。
 また、読み切り作品としてキチンと成立させているだけでなく、連載化にも耐え得るほど完成された世界観を構築出来ているのも好感が持てますね。これでキャラクターを何人か追加すれば、今回を第1回として次号からでも連載開始出来そうな感じです。

 先述した通り、余りにもノリが軽過ぎるがために決して「名作」には成り得ない作品ではありますが、雑誌の中堅どころで雑誌本来の読者層である若年男子層をガッチリ掴む「人気作」になるだけのポテンシャルは十分に秘めた作品です。

 今回の評価
 典型的な「名作崩れの人気作」ですが、その中でも特に優れたクオリティを誇る作品ということで、評価はA−寄りB+まで欲張りたいと思います。
 それにしても『プリティフェイス』以来、叶さんは完全に商業作家として一皮剥けた感がありますね。あとは週刊連載を維持するのにギリギリの遅筆だけがネックなのですが、これも『武装錬金』方式で、6〜8週につき1週の取材休みを置けば難儀な話にはならないと思うのですけどね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 巻頭カラーはアニメ化が決定した『アイシールド21』。読み切り版の段階から異例に次ぐ異例の経緯を辿って来たこの作品も、遂に来るべき所まで来た…といったところでしょうか。1人のアメフトファンとしては、これを機にアメフトが日本でもメジャースポーツへの道を歩んでくれれば…と思います。
 さて、内容についてですが、チアリーダーの応援風景などディティール描写でリアリティを維持しながら、肝心な部分ではギャグを交えながら許容範囲一杯までトンデモな描写をやらかすという反則スレスレの“ラフプレー”。相変わらず稲垣さんのストーリーテリングにおける策士振りが光ってますね。この、オービスに引っかかる寸前までスピード違反して高速道路を走り抜けるような手法は手放しで誉められない部分もあるのですが、稲垣さんの場合はこれを確信犯でやっているので何も言えなくなってしまうんですよね。
 しかし、村田さんの絵もどんどん上手くなってますね。特に連載当初は酷かったカラーページの作画が目に見えて良くなっているのは特筆モノです。

 さて、最近またちょっとクオリティに不満を感じているのが『武装錬金』です。確かに随所に施された小ネタは効かされており、脚本も一定以上の水準にはあると思うんですが、敵サイドのキャラクターの掘り下げが……。
 和月さんは『るろうに剣心』の頃から、ヤラれる事を前提に作られた敵キャラについては、そのキャラの内面を掘り下げるのを怠りがちな悪癖があるのですが、この度もそれがモロに出ているような感じですね。『BLEACH』みたいに色々なキャラを掘り下げすぎるのもストーリーのテンポの上で問題だとは思うのですが(アレは久保さんのずば抜けた演出力があるからギリギリセーフなのです)、もうちょっと“噛ませ犬”を大事に扱ってあげてもバチは当たらんかなぁと、そう思うんですけどね。

 あともう1つ悪い意味で気になった作品は『未確認生物ゲドー』今週から「ジャンプ」定番のバトル物に突入していったわけですが、この手際の悪さというか、流れの不自然さといったら……。「フェニックスを引き渡す」のと「闘技場で戦う」というのが等価値で結ばれてしまうのがどう考えても納得出来ないです。まぁ納得しなくて良いんでしょうが。
 しかし、これで次号で『グラップラー刃牙』の最強トーナメントみたいな「全選手入場!」があったら、これはこれで不満を通り越して爆笑モンなんですが。とか天狗とか細木数子とか32種類の未確認生物がワラワラと登場……なんて面白いと思うんですがどうでしょう。

 最後に全くどうでもいい話ですが、『DEATH NOTE』の竜崎がバナナを食っている時の顔、何か『ムヒョとロージー──』のムヒョの超リアル版みたいに見えませんか?
 ……まぁ本当に心底どうでもいい話なんですが。

☆「週刊少年サンデー」2005年新年4・5合併号☆

 ◎読み切り『石澤の慎さん』作画:都築信也

 ●作者略歴
 生年非公開の4月28日生まれ。
 「サンデーまんがカレッジ」(年度・月期調査中)で努力賞、00年前期「小学館新人コミック大賞」少年部門佳作を受賞し“新人予備軍”入り。
 しかしデビューはそれから約3年ほど後。増刊号の03年2月号に掲載された『楽園争奪戦!!!』がデビュー作で、これ以後、増刊の03年5月号、6月号、04年夏号に読み切りを発表し、03年11月号〜04年2月号には短期連載も経験するなど精力的な活動を続けている。
 今回が週刊本誌初登場。

 についての所見
 線が細めな割には描写が緻密さに欠け、有り体に言ってチープさが否めない画風ではありますが、基本的な表現技法については不満はありません。積極的に評価するのは難しいですが、及第程度の水準にはあるでしょう。
 ちょっと気になるのは、人物作画において顔面のアップと正面からのアングルを多用し過ぎている点。これに人物ごとの老若男女美醜の差が大きくないこの作品の“仕様”も含めると、画面のメリハリの面でやや不満が残る結果になってしまいました。

 ストーリー&設定についての所見
 コンセプトとしては現代版・亜流の『遠山の金さん』といったところでしょうか。シナリオは全体的にB級民放テレビドラマ的なヌルさを感じさせるもののマズマズ上手くまとめられていますし、ルーレットのイカサマの手口や“裏カジノでイカサマを逆手に取って大勝→開き直って換金拒否”…といった辺りの持っていき方などはヒネりが利いていて良かったです。
 ただし、そのシナリオを効果的に見せるための演出・脚本、特にクライマックスシーンの盛り上げ方が非常に弱く、これが作品全体のクオリティをガクンと下げてしまっているように思えます。更には登場人物のキャラクターや行動に対する動機付けを描く事が随分と疎かになっており、そのために読み手が作品世界に没入出来きれず、また、登場人物にも感情移入し切れない結果に繋がってしまいました。
 あと素朴な疑問を抱いてしまうのは、コンセプトは『遠山の金さん』なのに、何故主人公が都知事なのか? ……という点ですね。コンセプトに合わせるのなら主人公は裁判官か検察官じゃないとおかしいのに、これは如何に。そのせいで、“桜のバッヂ”という設定が物凄く取って付けたモノになった感が……。
 まぁ「司法関係者が裏カジノに出入りしていたらおかしい」という事なんでしょうが、それなら弄るべきは設定ではなくプロット・シナリオだったんじゃないかなぁ…と思うんですけれども。

 今回の評価
 評価はギリギリでBとしておきましょう。ただ、インパクトという面ではかなり不満が残ります。連載獲得のためには、もっとアクの強い絵や設定で勝負するべきでしょう。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週は実力派の作家さんたちが遺憾なく実力を発揮してくれました。

 まずは『結界師』。今回はインターミッション的な小エピソードだったのですが、高度な画力と演出力で余韻たっぷりの心温まるお話に仕上がりましたね。
 いちいち細かい所まで行き届いた猫の仕草の描写といい、最低限の回顧シーンとちょっとした表情の変化で黒須先生と黒猫・ノワールの固い絆を表現したりと、浅いキャリアを感じさせない渋いテクニックに唸らされました。こういうお話がサラッと描ける作家さんはやっぱり一流だと思うのですよ。

 ……しかし、インパクトという点では、今週の「サンデー」は『道士郎でござる』に全部持っていかれたような気がしないでも(笑)。
 まったく、長いネタ振りとページをまたいでの馬と侍登場って、これはギャグマンガのテクニックじゃないですか(笑)。ストーリー系作品が「サンデー」のギャグ作品を悠々と凌駕しちゃって良いんでしょうか?
 それにしても「すんげえ」と女子中学生に(心の中で、とはいえ)言わせるマンガって、それこそ凄い話ですよねぇ。

 あと『いでじゅう!』、告白シーンを年末合併号に持って来るってのもエラい話で……。普通なら最終回直前でやるような事ですが、一体これからこの作品はどうなっちゃうんでしょうね?
 まぁカップル成立したとしても、あの林田の性格を考えると、片想い時代と変わらないノリでお話が作れそうな気がするんですけどね。大体、恋愛において告白受諾ってのはゴールのように見えて、実はスタートに過ぎなかったりするわけですし。

 ……というわけで、今週はこれまで。『D-LIVE』の“大統領亡命編”は、“鉄ちゃん運転士奮闘編”に変更すべきだと提言して、ゼミを終わります。年明けは「赤マル」レビューと、「コミックアワード」関連の諸々に取り掛かります。では。

 


 

2004年度第75回講義
12月23日(木・祝) 地誌
「実用不可!? 駒木流弾丸旅行マニュアル」(1)

 「社会学講座」の看板が泣くような体たらくに成り下がって久しい当講座でありますが、タイトルをご覧の通り、久々の新シリーズ発動となりました。
 「そんな『実用不可』とかタイトルで謳ってる役に立たない講義やる暇が有るんなら、もう一丁コピー誌でも作っとけ」…という本末転倒なお声、ごもっともであります。が、そこはそれ、時間と労力を「愛のエプロン」でインリン・オブ・ジョイトイに使われる高級食材並に無駄遣いしてこそ当社会学講座でありますので、その辺どうかご理解頂ければ…と。

 で、そんな今日から始まります新シリーズは、「社会学講座」版・旅行マニュアル。ただし、当講座でやる事ですから、ただの旅ガイドではありません。このところ駒木が年に数回のペースでやっている超過密日程で体を壊しそうな過酷な旅を、皆さんにも是非やってもらおうという、まぁ実にお節介な企画です。
 何と言いますか、「フードファイターが教える、寿司20カンを1分で喰う方法」みたいな、およそ学んだ所で実生活に反映させようのない講義ではありますが、そもそも学問なんてものは実生活と縁遠いものだったりしますので、その辺は気にしないように、どうか何卒。

 ──さて、毎度の事ながら前置きが『渡る世間は鬼ばかり』の幸楽で日々行われる親子喧嘩くらいクソ長くなりましたが、いよいよ本題へ参りましょう。こちらは山田雅人のセリフくらいの歯切れ良さで行きたいと思います。

 では第1回目の今日はちょっとした肩馴らしという事で、この講義シリーズでマニュアルを伝授いたします“駒木流弾丸旅行”というものが、どういうポリシーに基づいて行われるか…というところからお話する事にしましょう。

 1.大きく節約し、小さな贅沢を!

 ……旅行にかかる費用で最も大きなウェイトを占めるのが、交通費宿泊費でしょう。駒木流弾丸旅行では、この“二大費用”を健康で文化的な最低限度の水準まで削ぎ落とし、その代わり浮いた資金で滞在先の食事のグレードを上げたりしてささやかな贅沢を楽しみます。
 ただし交通費と宿泊費の額は、移動中及び宿泊先における快適度にほぼ比例します。ですので、これらの費用を削る駒木流弾丸旅行では、旅行中に快適さを感じる事は原則的に諦めて頂く事になります。
 自分の肉体を敢えて苛酷な環境に置く事で脳からおかしな物質を分泌させ、それでもって精神的安寧を実現する
というのが駒木流弾丸旅行の極意でありますので、「旅行では疲れた体をリフレッシュさせたい」という至極真っ当な方のお役には立てません。本屋に行って「じゃらん」でもお買い求めになる事をお勧め致します。

 2.寝るな。休むな。楽しめ!

 ……駒木流弾丸旅行では、限られた時間を極限まで有効活用する事をまず第一に考えます。その時、その場所でしか出来ない事を最優先。睡眠食事などといった1日や2日くらい放ったらかしにしても平気なモノにかける時間は、次の日の活動に重大な支障を来たさない程度で十分です。寝る暇を惜しんでアクティブに楽しみましょう。カロリー制限と激しい運動のお蔭でダイエット効果も抜群です。
 この旅行を始めてしばらくすると体が悲鳴を上げ始めますが、ご安心を。もうしばらくすると脳味噌が悲鳴を上げる体に猿ぐつわを噛まして静かにしてくれます。心頭滅却すれば、火もまた涼しくなるかは別にして数日は無茶してもどうにかなるものです。
 ただし、1つだけご忠告。この駒木流弾丸旅行が終わった後は、体の悲鳴を無理矢理抑えていた反動で、2日ほど人間として役に立たなくなります。自宅に戻ったら今度こそ十分に休息と睡眠を摂りましょう。旅行中のハイテンションが永遠に続くものと過信して、夜行で帰ったその日の朝に元気良く出社…なんて事をすると、ほぼ間違いなく過労で病院に担ぎ込まれる羽目になります。そしてこの場合、誰も貴方に同情してくれません。死して屍拾う者無し大江戸捜査網スピリット溢れる魅惑の旅、それが駒木流弾丸旅行です。
 
 3.基本は単独行動。ハンパな同行者は災いの元

 ……「旅は道連れ」なんて言葉がある日本では、「一人旅やってます」などと言うと、「1人で寂しくないですか?」…などと言われる事があります。下手に温泉宿へ行こうもんなら、いつ自殺するんだろうと疑われるというのが“ベタな話”とされるくらいです。駒木も講師先の生徒に東京弾丸旅行の話をすると、「え? 旅行? 1人で?」…と、ふじいあきらの口からトランプが出て来た時にギャラリーがするような顔で言われた事もあったりします。
 しかし旅というものは、ある意味究極の“ハレ”の場であり、普段では許されないようなエゴを心置きなく通す貴重な時でもあります。そのため、2人以上で旅をした場合、お互いのエゴが衝突して深刻な喧嘩を起こしてしまうケースもままあると聞きます。
 一昔前に流行った「成田離婚」なんてのも、早い話が新婚旅行の中で起こった、深刻なエゴの衝突で生じた仲違いであります。ただでさえ2人の間柄が極端に流動的になっている不安定な時に無神経な自己主張の衝突が起これば、そりゃもう大変な事になるのは火を見るより明らかというもの。
 ……そういえば昔、作家の林真理子さんが新婚旅行に行った時、出発の時は夫の影を踏まない“貞淑な妻”だったのが、帰って来た時はアジャ・コングの入場シーンみたいに堂々たる態度だった事がありましたね。アレ、旅先で何があったんでしょうなぁ。怪獣南海大決戦みたいな出来事が……いや、まぁ想像は止めときましょう。

 閑話休題。まぁそういうわけで、旅というのは友情・愛情を損ねる危険性があります。ましてや、この講義で扱う駒木流弾丸旅行は、快適さとは程遠い長時間にわたる移動、そしてビッシリ詰まったスケジュールに身を置く過酷な旅でありますから、そんな状況で個人と個人のエゴがぶつかった日には、読売巨人軍における堀内監督と清原選手並の確執に発展してしまいます。
 ですので、駒木流弾丸旅行は一人旅が基本です。他の人と同行するのは旅のイベントの1つとして、半日程度に留めるのが賢明と言えるでしょう。
 え? それだと寂しくないですか? ……大丈夫です。寂しさなんか感じる間も無いほど忙しい旅行になりますから、そこの辺はご安心下さい。

 ──とまぁ、今日はこの駒木流弾丸旅行のポリシーについて、簡単なお話をさせて頂きました。いよいよ次回からは旅の計画立案、そして実践へと徐々に話題を膨らませてゆきます。どうかお楽しみに。(次回へ続く)

 


 

2004年度第74回講義
12月17日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第3週分・合同)

 先週のこの時間でお願いした「コミックアワード」推薦の件、ご協力頂きまして誠に有難うございました。
 「あなたの今年度フェイバリット作品を推薦して下さい。しかし、駒木がそこから独自に審査して勝手に選抜させてもらいます」……などといった手前勝手この上ない話に、果たして乗ってくれる方がいらっしゃるのだろうか──? と心配していたのですが、それでも1週間弱の短い期間の中で何とか企画として成立する数の推薦をお預かり出来ました。
 当然の事ながら票は割れ気味で、十人十色の価値観が色濃く反映されたものとなりましたが、その中で1つだけ集中した票を獲得したのが『おおきく振りかぶって』(作画:ひぐちアサ/「月刊アフタヌーン」連載中)でした。折からの多忙で実際に読むのはこれからになりますが、何しろそれぞれに一家言ある当講座の受講生さんから一極集中の人気を集めた作品です。過度にならない程に大いなる期待を持って審査に当たりたいと思います。
 なお、この他に“優先審査要件”の2票を獲得した『シグルイ』(作:南條範夫/画:山口貴由/「チャンピオンRED」連載中)、また他に1票の推薦を頂いた作品で未読の作品についても、時間の許す限り何らかの手段で単行本を読了し、審査に当たる所存です。2度の東京旅行やコミケ準備で恐らく今年度の「コミックアワード」の開催は年明け早々にズレこみそうなのですが、どうぞそれまでお楽しみに。
 ……それにしても、“読者投票”の上位2作品が載ってるのが「アフタヌーン」と「チャンピオンRED」ってのが凄いですね(笑)。皆さん、「コミックアワード」の何たるかをよく分かってらっしゃいます。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(新年3・4合併号)『MP0』作画:叶恭弘)が掲載されます。
 叶さんは、「ジャンプ」読者さんの間では『プリティフェイス』で御馴染であろう、中堅からベテランに足を踏み入れようというキャリアの“10年選手”。自他共に認める寡作で、連載終了後は「赤マル」に発表した読み切り2作と原作付作品の作画担当を1作品のみという限定的な活動を続けています。
 今回は久々の単独名義による週刊本誌登場となりますが、予告を見る限りでは“マジカルミステリー”という、『プリティフェイス』以前の作風に近いお話になるような感じですね。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(新年4・5合併号)に読み切り『石澤の慎さん』作画:都築信也)が掲載されます。
 都築さんは03年から増刊で精力的な読み切り・短期連載作品の発表を続けて来た若手作家さん。今回が初の週刊本誌登場となります。

 ★新人賞の結果に関する情報

第19回ジャンプ十二傑新人漫画賞(04年10月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=2編
 ・『征次郎の道』十二傑賞=週刊本誌or増刊に掲載決定)
  長友圭史(23歳・神奈川)
 《講評:様々な要素を上手くまとめている。主人公を中心にした話で、脇役も共に作中で成長できているのが好もしい。絵は読みやすいが、表情が固い面も》
 ・『SMILE SEVEN』
  矢萩隼人(23歳・北海道)
 《講評:とにかくキャラが立っているのが良い。エンターテインメント志向が強いのも好感が持てる。ただし戦闘のロジックにはもっと意外性が欲しい。画力はまだ努力が必要な水準》
 最終候補(選外佳作)=8編

  ・『HERO DELIVERY』(=審査員特別賞)
   中村歩(19歳・北海道)
  ・『ダ・ヴィンチング』
   太宇諭みや夫(18歳・岩手)
  ・『骨喰み』
   森田将文(24歳・東京)
  ・『サーブのかなめ』
   辰巳佳子(22歳・北海道)
  ・『うぇいくあっぷ』
   畑中純(21歳・三重)
  ・『SKY JACK』
   秋葉絵美(22歳・東京)
  ・『ブレイクスルー』
   森貴史(22歳・東京)
  ・『パンドラ』
   丹治愁(20歳・宮城)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎佳作&十二傑賞の長友圭史さん…00年11月期「天下一漫画賞」で最終候補。
 ◎最終候補の森田将文さん
03年下期「ストーリーキング」マンガ部門で最終候補01年11月期、02年1月期、02年7月期、03年1月期の「天下一」で計4回最終候補。
 ◎最終候補の秋葉絵美さん…04年6月期「十二傑」に投稿歴あり。

 今回の受賞者一覧には、これが5回目の最終候補となる森田将文さんの名前が。ちょうど当講座が開講された頃に1回目の最終候補リスト掲載があったわけで、もう丸3年の“新人予備軍”生活になっているわけですね。
 しかし、その3年間に月例賞を受賞した人の中には今週号で表紙を飾った空知英秋さんもいて、何だか弟弟子に真打出世で席次を抜かされていく、師匠に嫌われた落語家みたいな悲哀が滲み出てますが、来年こそは良い年にしてもらいたいものですね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:新連載第3回1本/読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年新年2号☆

 ◎新連載第3回『ムヒョとロージーの魔法律相談所』作画:西義之

 についての所見(第1回時点からの推移)
 既に2度の読み切り掲載時と、新連載第1回の時に述べるべき事は全て話しましたので、今回は特に申し上げる事はありませんね。
 好感度の高い(=万人受け、ライト読者層向けのする)絵柄ではありませんが、マンガの記号としての表現や各種特殊効果などには問題は無く、むしろ世界観と合致した絵柄でもあり、「個性的」という言葉でポジティブな評価を与えるべきなのかも知れません。

 ストーリー・設定についての所見(第1回時点からの推移)
 早くも第3回にして、これまでの一話完結型フォーマットを破棄。第1回の時点で多く残されていた設定を後付けする“糊しろ”を上手く活用して、ごく自然な形で新展開へ移行する事に成功しています。
 週刊連載の限られたページ数では、これまでの路線が行き詰まるのが時間の問題だと言う事は自明の理とはいえ、それでもこんな早めに路線変更を敢行出来る“危機管理能力”の高さには唸らされます。勿論、作品のクオリティを決定するのはこの後にどれだけのストーリーを紡ぎ出せるかという点に掛かって来ますが、弱含みのファクターを一掃してしまったこの英断には高い評価を献じたい所です。

 今後の課題としては“上級編”のモノとなりますが、慣れて来ると地味に感じてしまうバトルシーンのアレンジ、過剰にならない程度の新キャラクター補強(敵役だけでなく味方側にも)、読み手に主人公・ムヒョを感情移入させるだけの要素の追加など。これらの要素に重厚なシナリオが加われば、マンガ通を心から唸らせる傑作になるんじゃないかと期待しています。
 少なくとも、現時点でもこの作品は、巷に転がっている凡庸な作品とは一線を画したクオリティの作品だと思います。今後、尻すぼみにならない事だけを祈りつつ、連載の行く末を追いかけて行きたいですね。 

 現時点の評価
 評価は今回A−寄りAに上方修正。今後の展開によっては変動の余地も残されていますが、現時点では大変有望な作品と言えるでしょう。
 なお、この作品からは、原則として連載が10回の区切りを越えるごとにチェックポイント欄で評価の見直しをする事にします。これは最近の連載作品が、第3回の後追いレビューをしてから間もなく大幅なテコ入れ・路線変更を行う事が多く、当ゼミの評価が現状と合わないケースが相次いでいるためです。まぁ物理的な事情もありますので、それほど詳しいレビューは出来ないと思いますが、それなりにご期待下さい(笑)。

 ◎読み切り『キノコ島の奇跡』作画:真波プー

 作者略歴
 1978年4月26日生まれの現在26歳
 01年上期「手塚賞」にて準入選に入賞。その受賞作『余韻嫋嫋』が「赤マル」01年夏号に掲載され、デビュー。
 その後は「ジャンプ」系作家としてはブランクを作り、独自の活動を続けるも、04年2月発売の「青マルジャンプ」に『ピアニカぼうや』を発表して復帰を果たした。今回はそれ以来の新作発表で、初の週刊本誌登場。
 
 についての所見
 
人物の造型や各種表現に少年マンガ黎明期(手塚治虫とそのフォロワーが台頭した時代)のそれを彷彿とさせるモノが使われており、得も言われぬレトロ感を醸し出していますね。これは作品の魅力の一つでもありますが、無意味に現在では違和感を感じるディフォルメ手法を使っているという部分ではマイナスにも働くでしょう。
 基礎的な画力についてはさほど欠点は感じられませんが、今回はやや線が洗練されておらず粗い印象がありました。また、それが白っぽい背景によって強調されてしまったようで、少々物足りないクオリティだったように思えました。

 ストーリー・設定についての所見
 今回も真波さん独特の作風──読み手にカタルシスを与えたり涙を誘ったりといった重厚なシナリオで勝負するのではなく、作品全体から漂う暖かな雰囲気で読み手を得も言われぬ幸福感に導く事で成功を狙う──がフル回転した個性豊かな作品となりました。この作品を読まれた受講生さんの中にも、爽やかな読後感にホンワカとさせられた方も多くいらっしゃるでしょう。

 ただ、今回のシナリオは、「足りない何かを満たす」というエンターテインメントの基本から余りにもかけ離れてしまったのではないでしょうか。シナリオの軸を「声が固まる」という、ある意味世の中的にはどうでもいい部分に置き過ぎ、読み手に「それでどうしたの?」…という疑問を差し挟む余地を与えてしまったように思えました。
 これがもし、「声が固まる」という事によって主人公やヒロインの人生が不幸から幸せに転じた…というようなシナリオになっていれば、お話から受ける印象も随分と違って来たでしょう。真波さんにはもう少し、「設定描く」のではなく、「設定描く」という事を考えて欲しいところです。

 ……もっとも、これが前作「ピアニカぼうや」のように、作品の体裁が子供向け絵本のような“マンガ以外”のモノであれば話は別なんですけどね。今回の場合はフォーマットが一般的なエンタメ系ストーリー作品のそれだと思えましたので、前作とは違った評価をさせて頂きました。

 現時点の評価
 評価は、「雑誌内の一作品としての鑑賞には耐え得る」ということでBとしておきます。それにしても毎回レビューに困らされる作家さんですね(苦笑)。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 『銀魂』は連載1周年巻頭カラー&ファン投票告知。この作品についての思いは冬コミ頒布予定の総集編にも詳しく書きましたが、それにしても連載当初の事を考えると、このアニバーサリーは感慨深いものがありますね。
 ……それにしても今回の話、巻末の方に掲載されてたら、どう考えても次回か次々回で最終回ですよね(笑)。

 さて、そんな巻末近辺をうろついている『いちご100%』は、期せずして東・南・西・北の大四喜成立という事態に。凄いですねえ。店によってはダブル役満扱いですよ。しかもこの新年を迎えようかと言う時期に季節感外れっぱなしの夏休みネタ。そんなに読者サービスしたいかと(笑)
 もう何と言うか、年末編集会議を前にしてなりふり構わぬカンフル剤投入といった趣ですが、もしこの状況下で打ち切りが決まったら一体どんな無残な最終回になっちゃうんでしょうか。やっぱり「俺たちの青春はまだ始まったばかりだ!」…みたいなノリなんでしょうかね。

☆「週刊少年サンデー」2005年新年2号☆

 ◎読み切り『伝説の帰宅部 Returner』作画:森尾正博

 ●作者略歴
 本格的なキャリアの開始は01年11月期の「サンデーまんがカレッジ」で佳作受賞から。ちなみに受賞当時26歳で、現在は29〜30歳。
 その後、雌伏期間を経て月刊増刊03年9月号でデビュー(?)。また、増刊では03年12月号から04年2月号(月刊としての最終号)までの僅か3回ながら、今作と同タイトルの作品を短期連載している。
 週刊本誌には04年21号に『地球防衛バッパパーマン』を発表しており、今回が2度目の掲載。

 についての所見
 巷では、「サンデー」では久々となる“乳首券”行使に盛り上がっているようですが、その資格を得るに値するだけの高度に洗練された絵柄であると言えるでしょう(笑)。
 リアル系でありながらディフォルメも上手く出来ていますし、動的表現や背景処理・特殊効果も問題なし。敢えて言えば人物の表情が固い(パターンが少ない)気もしますが、これも「改めて粗捜しをすれば」といった程度。今すぐ連載を始めても全く違和感無く誌面に溶け込めるでしょうね。

 ストーリー&設定についての所見
 「サンデー」系作家の大先輩である島本和彦さんを始め、新旧・雑誌・出版社問わず、何故かほぼ定期的に誌面を飾る“トンデモ系学園モノ”の作品ですね。そう言う意味では、この作品の設定は相当に手垢の付いたモノですなんですが、本来なら最も日陰の立場に置かれるはずの帰宅部男子を最強の存在にする…という逆転の発想が新機軸になっていて、既視感を弱める事に成功していますね。

 しかし、この作品はどうにも世界観の作り込みが甘いのが難点です。誤解を恐れず言えば、リアリティが余りにも欠如し過ぎているんですよね。
 勿論この作品は“トンデモ系学園モノ”ですから、普通の学園ドラマに求められるような日常的なリアリティは一切不要です。が、それにしても学園モノを謳っている以上は、最低限の学園モノとしてのリアリティを残しておかないと物凄く薄っぺらい絵空事になってしまいます。過去に成功した“トンデモ系学園モノ”作品を読んでもらったらお判りになると思いますが、この手のお話には、トンデモな中に矢鱈どうでも良い部分で“学園モノ“を意識させる生々しい設定──例えば昼の弁当とか親呼び出しとか──が用意されていたはずです。
 ところがこの作品の場合、「運動部VS帰宅部」という図式を成立させるのに気を配り過ぎて、“学園”を描く事を疎かにしてしまっています。その結果、この作品のストーリーは、どう考えても学校の体を成していない嘘臭い“学園”を舞台に、これまた嘘臭い“部活”バトルが展開されただけ…という文字通りの絵空事で終わってしまいました。これは、読み手に作品への感情移入を阻害する大きな要因となることでしょう。

 ──と、七面倒臭い嫌事をダラダラと述べて来ましたが、そういった欠点をカモフラージュするだけの構成と演出力に長けている作品である事も確かです。深い事を考えずに読み飛ばす上では、そんな「文字通りの絵空事」だとか「感情移入を阻害する云々」などといった大仰な事は関係なく、バトルと乳首をスカッと楽しめるんじゃないでしょうかね。 

 今回の評価
 評価は加点・減点激しく相殺してB+寄りBとします。今回のを見た限りでは、ちょっと連載化するには無理のある作品かな…といったところですね。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 さて、今週は時間も余裕が無いので『モンキーターン』の総括だけ。
 超長期連載作品の多い「サンデー」では余り目立ちませんが、それにしても8年以上にも及ぶ連載を、伏線処理もこなしてキッチリと大団円に導いた高度なストーリーテリング力は素晴らしいの一言です。難を言えば(恐らくは完結を急がせる大人の事情もあったのでしょうが)1度目の賞金王決定戦から完結へ向けての展開がやや性急だったのが惜しまれる所で、特に長い間暖めていた“青島×憲二×澄・三角関係”の伏線を足早に処理せざるを得なかったのは作者サイドにとっても痛恨事だったことでしょう。
 それでも作品を全体的に俯瞰すれば、「一定以上の人気作は、どれだけ長期連載になっても大団円まで続行する」…という“サンデーシステム”の利点を遺憾なく活用した良作である事に、疑念を挟む余地は全く無いでしょう。最終評価は先ほど述べた惜しい点を差し引いてA寄りA−ということにしておきます。
 最後に、河合さん、お疲れ様でした。次回作にも一ファンとして期待しています。

 ……といったところで今週はこれまで。では、これから荷物をまとめてちょっとリフレッシュ旅行に行って来ます。実はあと3時間ほどで出発しないといけないのです(笑)。ではでは。

 


 

2004年度第73回講義
12月11日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 朝日杯フューチュリティS」

 気がつけば、今年のJRAG1レースもあと2つ。そして、気がついたら駒木、この秋のG1、プライベート馬券は全敗だったりするわけですが。
 やっぱり3連単は難しいと言うか、それ以前に馬連の段階で殆ど外れているんですから救いようがありませんなぁ。状況的に集中して予想出来ていないという事もあるのですが、何かこう、漠然とした己の博才の無さをしみじみと痛感する今日この頃であります。

 毎週スクランブル体制ばっかりやってられませんので、今週はとりあえず研究室メンバーを招集してみました。果たして結論が出るのやら、まぁ「ドリフ大爆笑」の雷様コントを見るような生温かい目で、どうぞご覧下さい。


第56回朝日杯フューチュリティS 中山1600芝外

馬  名 騎 手
コパノフウジン 小野
ペールギュント 小牧太
テイエムヒットベ 熊沢
スキップジャック 勝浦
セイウンニムカウ 田中勝
メジロスパイダー 木幡
マイネルレコルト 後藤浩
ストーミーカフェ 四位
シルクネクサス 柴田善
10 エイシンヴァイデン デムーロ
11 サクセスドマーニ 藤岡
12 マイネルハーティー 武豊
13 エイシンサリヴァン 吉田豊
14 ローランコングレ ボニヤ
15 ディープサマー 藤田
16 マルカジーク 蛯名

駒木:「え〜、第24回どうすんだ馬券当たんねぇよ対策会議〜」
珠美:「(笑)」
順子:「また元ネタに劣らずリアルな回数ですねそれ(笑)」
リサ:「えっと、それは──?」
順子:「あー、リサちゃんみたいな普通の女の子は知らなくていいからそれは(笑)」
駒木:「……まぁ冗談はさておき、だ。秋のG1もラス前。ここまで的中実績があるのが珠美ちゃんの馬連だけという非常事態なんで、ここはキッチリ当てに行くよ」
珠美:「そう言って本当にキッチリ当たれば苦労はないですけどね(苦笑)」
順子:「博士も展開とペースの予想はそれほど外れてないんですけどねー。それがどうして直線の攻防が終わると、フォーカスとかけ離れた結果に終わるのか」
リサ:「順子サンも、3連単の軸は当たるのに、予想は当たってないですよねー(笑)」
順子:「まあねー(苦笑)」
珠美:「……えーと、これ以上雑談を続けていても雰囲気が悪くなるだけのようなので(汗)、博士に出走メンバーの概説をお願いしましょう」
駒木:「……そうだねぇ、一言で表現すると中途半端なメンバーだよね。ステップレースで着順に関係なく強いケイバをした馬がことごとく欠場して、微妙なメンツばっかりが残ってるって感じ。比較的マシなレースをしてるかな…という北海道組に限って外枠とか休み明けとか懸念材料も多いしねぇ」
珠美:「東京スポーツ杯2歳Sを2着したペールギュントはどうですか? なかなか味のあるケイバをしたと私には思えたのですが……」
駒木:「そうだね。まぁ今回のメンバーの中では比較的内容のあるレースをしてるかな…といったところだね。ただ、東スポ杯は1着馬と3着馬が豪快なレースをしてるから、どうしても影が薄くなるかな…といったとこ」
順子:「私はデイリー杯と新潟2歳Sに注目してるんですけど、どうですか? ほら、先週ショウナンパントルが2着したでしょう?」
駒木:「牝馬と牡馬とでは全体的な水準が違うから微妙だけどね。でもまぁ不気味ではあるのは確かだね。来ても来なくても驚けない」
順子:「また売れない占い師並に微妙な返事ですねー(苦笑)」
リサ:「……えーと、京王杯と東スポ杯、レヴェルが高いのはどっちですか?」
駒木:「メンバーそのものは京王杯なんだけど、上位に来た馬の実績とレース振りがちょっと物足りない。逆に東スポ杯は新馬戦から直行の人気先行馬を実績馬が斬り捨てた…みたいな感じだから、信頼出来るのはこっちかな…という気がするね」
リサ:「セイウンニムカウって馬の名前が気になってるんですけど……(苦笑)」
駒木:「ああ、いい名前だね(笑)。でも前走は京王杯でスローペースに恵まれて3着だからなぁ。しかも騎手がカツハルだしなぁ……」
リサ:「う〜〜〜〜ん、どうしようかなー……」
珠美:「……さて。結論が出たり出なかったりのようですが、展開の方はどうでしょう?」
駒木:「キッチリ先行タイプと差し・追込タイプに分かれたって感じだね。速めのペースで縦長の隊列になって、先行争いをする馬以外は展開の紛れは少なくなりそうだ」
珠美:「差し馬の届く展開でしょうか?」
駒木:「理論上はそうなるね。先行馬も折り合い次第で用無しってわけじゃないだろうけど、前々へ行く馬が結構いるから、外枠のディープサマーは厳しいだろうね。中山の芝1600mって、阪神に負けず劣らず外枠不利だから」
順子:「気になってるのはエイシンヴァイデンのデムーロ騎手がどういうレースをするかなんですけど、どうなると思います?」
駒木:「鋭いというか、また微妙な所に目をつけたねー。そうだなぁ、それはレースに乗る他の15人の騎手が一番知りたいんじゃないのかな(笑)」
順子:「なるほど(笑)」
駒木:「まぁデムーロのやる事だから、まず間違いなく際どく勝ちに行くレースをするだろうけどね。経済コースで中団待機して脚を貯めて、直線で一気に……ぐらい考えてるんじゃないのかな。ギリギリのレースをするだろうから、地力そのものを疑わないのなら主力扱いして良いんじゃないのかな」
順子:「博士からお墨付きをもらって良いのやら悪いのやらなんですが、まあ参考にします(笑)」
駒木:「一言多いんだよ(苦笑)」
珠美:「……さて、それでは時間も余裕が有りませんのでフォーカスをお願いします」
駒木:「──じゃあいつも通り印から。

◎ 2 ペールギュント
○ 10 エイシンヴァイデン
▲ 7 マイネルレコルト
△ 4 スキップジャック
× 8 ストーミーカフェ

 ……どの馬も強調材料に欠けるんだけど、まぁ2連続で安定したレースをしてるし、展開も向きそうだしで一応ペールギュント。同じ公営兵庫出身の岩田騎手にG1制覇を先にやられちゃった小牧太騎手にしてみても、ここは踏ん張り所だろうし。関東の人にはピンと来ないかも知れないけど、兵庫のフトシって言えば公営時代はアンカツと並ぶ存在だったんだからね。
 で、あとは前走でコケてる馬の巻き返しに期待するという意味で、エイシンヴァイデンマイネルレコルト。馬券で期待出来るのはここまでだね。あとはあくまで押さえ。
 スキップジャックは前走が最内を通れたってのが大きかっただろうし、ストーミーカフェはまだ仕上がり途上って感じだろうし。あと、ディープサマーは外枠過ぎて買えない。
 馬連だと2-10、2-7、7-10、2-4、2-8。…でもつかないねコレ(苦笑)。3連単はフォーメーションで(2、7、10)−(2、7、10)−(7、10)の4点。こっちはどれも万馬券になるのかな?」
珠美:「…ありがとうございました。私は…というか私もペールギュントが本命です。差し馬に展開が向くということで、相手には差し馬を中心に選んでみました。馬連で2-4、2-7、4-7、2-12、2-14、2-8です」
順子:「私はエイシンヴァイデン本命で。3連単ばっかりだと当たる気しないんで(苦笑)、今日は試しに馬単でいきます。10番から12、7、14、2、15の5点
リサ:「ワタシはやっぱりセイウンニムカウを応援します(笑)。カツハルさんのG1勝ちを見届ける生き証人になりたいと思います! 単勝5番と、馬連で5番から2、10、15、7、12です」
順子:「生き証人(笑)」
駒木:「また難しい単語を知ってるなぁ(笑)」
珠美:「……では、全員の予想が出揃った所でお時間になりました。なお、このレースの発走時刻は15時25分で、普段のG1レースよりやや早めですので、皆さんご注意下さいね。
 ……それでは、皆さん、お疲れ様でした」

駒木:「ご苦労様」
順子:「失礼しまーす」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは今日の講義を終了します。最後まで御清聴有難うございました」

 


 

2004年度第72回講義
12月10日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第2週分・合同)

 入稿完了と同時に猛烈な眼精疲労と虚脱感に襲い掛かられて四苦八苦の駒木ハヤトです。
 正式なご報告はまた追ってさせて頂きますが、冬コミで頒布予定のオフセット本の内容は、04年度(03年12月〜04年11月)分の講義の内、現連載作品と評価A−以上を獲得した作品のレビューを抜粋し、そのレビュー1つごとに追記を書き下ろしたモノになりました。感覚としては、おまけページの多いマンガの単行本を想起して頂ければと。
 ……まぁ“現連載作品と評価A−以上を獲得した作品のレビューを抜粋”と聞くと物足りないボリュームに思われるかも知れませんが、これでも9.5ポイント活字で詰めて編集してもA5版76ページになってしまいまして……。脱稿した今になって考えると、これが色んな観点から見てギリギリなボリュームであるように思えます。
 まぁそういうわけで、首都圏在住及びコミケ2日目参加予定の受講生の方は、駒木が自宅へ発送する宅急便の箱のサイズ縮小にご協力頂けると幸いです。

 ──ところで話は変わるのですが、今年も12月に入りまして、いよいよ開講3周年記念式典兼「仁川経済大学コミックアワード」を開催する時期となりました。
 もう既に水面下で各賞の審査は進めているのですが、ここで受講生の皆さんにちょっとしたお願いを1つ。“ワイルドカード”枠、つまり「週刊少年ジャンプ」&「週刊少年サンデー」系列誌以外に掲載された傑作を推薦して頂きたいのです。今年は色々な意味で余裕が無くて“新規開拓”が出来なかったんですよね。

 推薦要件は「『週刊少年ジャンプ』&『週刊少年サンデー』系列誌以外の商業誌に掲載され、03年12月〜04年11月に単行本1巻が発売された長編連載作品」です。「ジャンプ」&「サンデー」系作品とは違い、作品の雑誌掲載日ではなく単行本発売日を基準にしている事にご注意下さい。
 なお、季刊連載や不定期連載作品の場合は連載第1回の雑誌掲載が02年以前というケースもあると思いますが、「コミックアワード」はあくまで新作を対象にした賞ですので、そういう作品は選考上不利になると思っておいて下さい。

 推薦は出来ればメールでお願いしたいのですが、メールを使える環境に無い方は談話室(BBS)ででも構いません。推薦の際にはメール及びBBS書き込みのタイトルに「コミックアワード推薦」と明記の上、推薦したい作品名とその著者名、初出掲載誌名、それから簡単な推薦文(「〜〜な所が良いと思います」程度で構いません)をお願いします。
 推薦が2票以上に達した作品から優先的に(1票の作品も出来る限りは)チェックをしてゆき、評価A以上に達した作品についてはレビュー実施の上、「コミックアワード」のグランプリ枠にノミネートさせて頂きます。要件に達しなかった作品については、「余裕があれば、その余裕なりに」という事でご容赦願います。

 定期的に「現代マンガ時評」を受講されている方ならば当ゼミの“評価A以上”がどれくらいレアなのかはご承知の事と思いますが、「この作品なら!」というお薦めがあれば、是非お願いします。ただし、「せっかく推薦してやったのにノミネートされなかった!」…とか後で言うのはナシでお願いしますね(笑)。所詮は駒木のやる事ですから、気にしない気にしない。
 あ、推薦締め切りは12月17日の午前0時必着とします。慌しい日程ですが、どうか宜しく。

 ──と、長々と前フリで喋り過ぎましたが、今週のゼミを始めます。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(新年2号)『キノコ島の奇跡』作画:真波プー)が掲載されます。
 真波さんは、「赤マル」01年夏号でデビューを果たし、長いブランクの後に今年2月の「青マル」に読み切りを果たした若手作家さん。恐らく現在の「ジャンプ」系若手の中では1、2を争う“異色作メーカー”で、マニア筋ではデビュー時から注目を集めていたようです。今回も予告カットからして異色ですが、果たしてどういう作品なのでしょうか……?

  ◎「週刊少年サンデ−」では次号(新年3号)に読み切り『伝説の帰宅部 Returner』作画:森尾正博が掲載されます。
 森尾さんは週刊本誌04年21号にも『地球防衛バッパパーマン』を発表しており、今回が2度目の本誌登場。また、この作品は月刊増刊で03年12月〜04年2月号まで短期連載された作品の週刊本誌出張版で、この手の増刊連載作品の週刊本誌進出が“連載前のお披露目”という意味合いを持つ事が多い事を考えると、特に注目と言えそうです。

 ★新人賞の結果に関する情報

第67回手塚賞&第60回赤塚賞(04年上期)

 ☆手塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=2編
  ・『REVOLUTION』
   久米利昌(23歳・東京)
  ・『スカートウォーズ』
   宮本和也(21歳・大阪)
 佳作=2編
 
 ・『貯心マシーン』
   東本直樹(20歳・兵庫)
  ・『白猫豆腐刀』
   佐藤真由(20歳・埼玉)
 最終候補=4編
  ・『HEROISM』
   沖田修治(24歳・三重)
  ・『Break Boys』
   葛西仁(25歳・東京)
  ・『竜脚の配達人』
   小泉雅恵(19歳・東京)
  ・『絵具の絵の具』
   内海謙一(22歳・兵庫)

 ☆赤塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=該当作なし
 佳作=2編

  ・『萌え萌え燃さん』
   伺乃浩明(27歳・東京)
  ・『夢追い人』
   松田俊幸(24歳・東京)
 最終候補=3編
  ・『征食者たちの行進 イーターズ・マーチ』
   彰田櫺貴(22歳・大阪)
  ・『お薬の時間です。』
   小野寺章(19歳・青森)
  ・『NATURAL BAKERY KID』
   辻風林太郎(21歳・東京)

第55回小学館新人コミック大賞・少年部門
(04年後期)

 特別大賞=該当作なし
 大賞=1編
  ・『宵越しの契』(=本誌または増刊に掲載決定)
   山下文吾(21歳・神奈川)
 
《選評要約:「うまい。面白く読めた。このまま伸びていって欲しい」(高橋留美子さん)/「個人的に点が甘くなってしまう絵柄と題材。楽しんで描いている感じと火事場のシーンのセンスを買いたい」(あだち充さん)/「凄く良かった。絵も上手いしキャラも立っているし、見せ方も心得ている。ほぼ満点だがヒロインが自分で火をつけるラストシーンはいかがなものか」(青山剛昌さん)/「独特の絵柄で画力があり、特に女性を描くのが上手い。ストーリーも限られたページの中でよく作られており、作家としてのセンスを感じる。」(史村翔さん)
 
入選=1編
  ・『剣玉の昆』(=本誌または増刊に掲載決定)
   加藤祐介(23歳・山梨)
 
《選評要約:「個性を感じる。ギャグとシリアスがもう少しうまく融合されると更に良くなる」(高橋留美子さん)/「ネタにも絵柄にも23歳という若さを感じさせない所が逆に凄いかも知れない」(あだち充さん)/「剣玉で悪霊退治という発想が面白い。絵柄も話に合っていると思うが、ストーリーはありがち」(青山剛昌さん)/「画力は個性的で魅力もある相当の水準。荒っぽいストーリーだが勢いで読ませてしまう。作家能力を感じさせてくれた」(史村翔さん)
 
佳作=4編
 
 ・『幸咲』
   石神晃実(22歳・千葉)
  ・『阿修羅さん』
   平山昌吏(29歳・東京)
  ・『記憶の鍵』
   佐々木よしみ(21歳・京都)
  ・『クラボとヴォーダ』
   土屋昌宏(18歳・栃木)
 最終候補=1編
  ・『ダマッテ俺について来い!!』
   麻倉愛菜(18歳・神奈川)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ※手塚賞
 ◎準入選の久米利昌さん…04年1月期「十二傑新人漫画賞」で最終候補。
 ◎準入選の宮本和也さん…00年9月期「天下一漫画賞」で最終候補?
 ◎佳作の佐藤真由さん…04年7月期「十二傑」で十二傑賞受賞
(デビュー確定)、03年12月期、04年3月期「十二傑」では最終候補
 ◎最終候補の葛西仁さん…03年7月期「十二傑」&03年2月期「天下一」でも最終候補。
 ◎最終候補の小泉雅恵さん…03年4月期「十二傑」でも最終候補。
 ◎最終候補の内海謙一さん…03年下期「手塚賞」でも最終候補
 ※赤塚賞
 ◎佳作の伺乃浩明さん…第51回「月ジャン少年マンガグランプリ」で“ブロンズ”受賞、「月刊少年ジャンプ」04年12月号でデビュー?
(現物をまだ未確認ですので、「月ジャン」読者の方で同誌掲載のプロフィールと比べて年齢などに食い違いがあればご連絡下さい)
 
◎佳作の松田俊幸さん…「週刊少年チャンピオン新人漫画賞」02年下期で特別奨励賞、03年上期で奨励賞を受賞?(注:年齢に食い違いがあり、絵柄でも判別が難しく、まだ確定情報ではありません)
 ◎最終候補の彰田櫺貴
さん…週刊本誌04年44号にて『メガネ侍』で代原暫定デビュー済
 
◎最終候補の辻風林太郎さん…04年5月期「十二傑」でも最終候補。
 ※新人コミック大賞
 ◎佳作の石神晃実さん…03年12月期「十二傑」に投稿歴あり。
 ◎佳作の
平山昌吏さん…03年2月期「サンデーまんがカレッジ」であと一歩で賞(最終候補)。
 ◎最終候補の麻倉愛菜さん……03年11月期「まんカレ」で努力賞、03年4月期「まんカレ」であと一歩で賞。

 ……「ジャンプ」系両賞は最終候補者の殆どが過去に受賞・最終候補歴のある“新人予備軍”で、中にはデビュー済みの人までいるという異様なラインナップ。その影響もあってか「手塚賞」の方はなかなかの高水準だったようですが、逆の見方をすれば、「手塚賞」と「赤塚賞」が“新人予備軍”以外の一般投稿者から敬遠されている…という事になりますね。
 この両賞の衰退振りについては以前から何度も喋ってますので敢えて繰り返しませんが、偉大な作家さんの名を冠に被せている以上、続けるなら続けるで抜本的な対策を施してもらいたいところですね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年新年1号☆

 ◎読み切り『デビルヴァイオリン』作画:大竹利明

 作者略歴
 1983年2月15日生まれの現在21歳(週刊本誌のプロフィールには85年生まれとありますが、誤記のようです)
 03年上期「手塚賞」にて佳作を受賞し“新人予備軍”入り。デビューは「赤マル」04年冬(新年)号掲載の『勇とピアノ空』で、今回がデビュー2作目&本誌初登場。
 
 についての所見
 
天然っぽいディフォルメの利いたどことなく愛嬌のある絵柄で、読み手に親しみを持ってもらい易いという面はあるかと思います。ただ、いかんせん画力そのものの稚拙さには看過し難いものがあり、辛い点を付けざるを得ません。
 特に人物の造型、動的表現、特殊効果など、今作の設定・ストーリーを補強するために不可欠な要素のスキルが足りていない印象があり、これは大きな減点材料です。「どんな人でも気絶してしまう怖い顔」にしろ、「イケメン君の下手糞なバイオリン演奏」にしろ、その直後のセリフやリアクションの助けがなければそう認識出来ず、絵がマンガの記号としての役割を果たしていない状態になっています。
 せっかく好感度の高い絵柄なのですから、その長所をフルに活かせるような基礎画力、そして相性の良い設定・ストーリーを持って来る配慮がもう少し欲しい所ですね。

 ストーリー・設定についての所見
 「恐ろしい顔をした男が実は臆病で……」という設定は随分と手垢の付いたモノですが、その裏返しである安定感も利して、プロット・ストーリーは手堅くまとめられていますね。クライマックスの持って行き方も良かったです。
 ただ、ストーリーをもっとよく見せるために必要なファクターである、キャラクター設定・演出および構成(コマ割り)が弱く、全体的なクオリティは伸び悩んでしまった印象です。具体的なポイントを挙げていくと、何をさせたいのか判らない敵役、不必要な伏線(虫とハンバーガー&ピクルス)、具体性を欠き過ぎて意味を為していないヒロインの回想シーン(「私はクラシックが大好き」なのを描くのではなくて、何故クラシックが大好きなのかを描くのが、本来の回想シーンの役割では?)などなど。……この辺りの要素を上手く整理して、メインストーリーに繋げていれば、随分と重厚さのあるお話になったのではないかと思えるだけに残念でした。

 あ、あと気になったのはギャグの挟み方でしょうか。ストーリーの腰を折るようなギャグも決して悪いとは言えないのですが、それならちゃんと笑いを取れるようにギャグの技術も磨くべきだと思います。

 現時点の評価
 評価はB。まだデビュー2作目ですから仕方ないのですが、ストーリーテリング力の基盤が出来きっていないように思えます。次回作でどこまでスキルを伴った重厚なストーリーを作り上げられるかが、今後の展開のカギになって来るでしょうね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 『銀魂』に、何だかいかにもアシスタントが描きました的なモブ(群集)キャラが一杯……。まぁモブをアシスタントに描かせるのは誰でもやってる事ではあるんですが、顔がアップになってる場面まで全く違うタッチのアシさんに描かせるのは如何なものかと。…とは言っても『こち亀』に比べたら屁でもないレヴェルなんですけどね(笑)。
 全く絵柄の違うアシスタントに主要キャラの人物作画を除く全パートを任せてしまう人と言えばつのだじろうさんが有名ですが、つのださんの作品はは最近でもそうなんでしょうか? 『まんが道』で3ページの作品を半年以上もかけて推敲していた真摯な姿との余りのギャップに悶絶した記憶があるのですが。

 ところでその『こち亀』では、金が金を呼び過ぎて面白くないギャンブルというのをやってましたが、実際にもバブル期にマンション麻雀で億単位を稼いだと言われるプロの人などは、点5や点ピン程度のレートでは“逆レート負け”して勝率が落ちるとかどうとか。
 確かに駒木も点5より下のレートになると緊張感が薄れるような気はします。普段ならギリギリの所で止めるような牌が止まらずに放銃したりするんですよね。

☆「週刊少年サンデー」2005年新年2号☆

 ◎読み切り『すけっとはメガネくん』作画:寒川一之

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 生年月日は不明。
 新人賞の受賞歴&02年以前の活動についても資料不足のため不明だが、月刊増刊01年9月号に企画モノの『小林雅英物語』を発表している。
 03年に入ってからは、月刊増刊同年9月号から翌04年1月号まで『泣き虫センターコート伝説 忍』を短期連載。今回は連載終了以来の復帰作で、週刊本誌初登場となる。

 についての所見
 クセの無い洗練された線で描かれた“プロの絵”になっていますね。動的表現や背景処理・特殊効果などもソツなくこなせていますし、技術的な面についてはほとんど問題とすべき点は見当たりません。好印象です。
 ただ欲を言えば、各人物の顔の造型にもう少し微妙な差がつけられるようになれば…と思います。今回は敵チームの選手の判別がつき難く、これが珠にキズとなった感がありました。

 ストーリー&設定についての所見
 最近の「サンデー」系の若手・新人さんが描く作品によく見られる、“1アイディア1作品”のお話
ですね。「もしも〜〜だったら?」という、ちょっと奇抜なメインアイディアが1つあって、それに肉付けする形でキャラとストーリーを練っていくという。
 ただ、そうやって描かれた作品の多くは、アイディアの奇抜さがリアリティの欠如に繋がったり、1つのアイディアだけではまとまったページ数を引っ張り切れずに間延びしてしまったりする傾向があります。恐らくは先にアイディアありきだと、ストーリーとキャラクターの練りこみを怠りがちになってしまうんでしょうね。

 で、この作品も「もしも、野球マニアの将棋プロがキャッチャーをやったら?」…という、トンデモ系のメインアイディア1つのお話ですので、先に挙げたような傾向も否定出来ません。将棋の盤面や手順を覚えるのと野球の配球や打者のクセを覚えるのとでは勝手が随分と違うでしょうし、それ以前に“将棋の棋士が野球をする”という部分からして取って付けた感が漂って来ます。
 ただ、この作品は演出がズバリと決まっているのが強みですね。特に主人公が手の痛みを堪えつつミットを構えるクライマックスシーンでは登場人物の感情を見事に表現しており、諸々の問題点で生じた失点もかなりフォローされているように思えます。
 もっとも、そうやって失点を挽回した所でお話をまとめ切れずにまた失点を重ねてしまったのは痛いですね。ネット界隈では「読み切りなのに打ち切り最終回のよう」という論評もありましたが、これは言い得て妙。作品の完成度と言う面では割り引かざるを得ません。

 今回の評価
 評価は画力と演出力の高さを最大限考慮してB+とします。次回作では、まずストーリーをよく練って、その上で演出力をフルに活かせるような構成を考えて欲しいですね。陰ながら期待しています。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今日はざっと一言感想を書き連ねていきます。

 『MAJOR』嫌なヤツが改心する“イベント”の回でした。まどろっこしくてクサい芝居ではなく、何気ない1つのセリフを心のカギにしたという配慮が憎いですね。この作品の製作過程からして、どう考えても後付けでしょうが、絶妙の好手だったと思います。

 『いでじゅう!』はもう、ギャグもコメディも通り越して、ほとんど青春恋愛ストーリーになっちゃってますなぁ。若いって良いなあと、最近職場でもしみじみと思うこの頃であります(笑)。

 『モンキーターン』最終回前にして、因縁の対決が遂に決着。最低限度のリアリティを保った範囲で擬似必殺技バトルを展開させた技量はやはり素晴らしいの一言ですね。競艇を観ない人にはどう伝わったか判りませんが、あれが実際のレースなら伝説クラスの一戦になるんじゃないでしょうか。
 連載総括については、また次号の最終回を拝見した上でジックリと。

 『D−LIVE』は、メインシナリオよりも鉄道関連のウンチクの方が印象強すぎです(笑)。いわゆる“鉄”の人たちの知識の深さと、それを語り出した時の止まらなさ加減が見事に描写されていて感服の一言です。ただ、この見事さは、この作品の商業的成功には決して繋がらないんでしょうねぇ……。

 ……といったところで今週はこれまで。来週からは高校の仕事が休みに入りますので、多少はフットワークが軽くなると思います。どうぞご期待の程を。

 


 

2004年度第71回講義
12月4日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 阪神ジュベナイルフィリーズ」

 申し訳有りません。今週も諸々の事情により“スクランブル体制”でお送りします。
 週を追うごとに楽な方向へ逃げているようで、自分でも大変心苦しいのですが、とりあえずは最悪の事態(講義不実施&年末用原稿締切オーバー)を避けるのを最優先事項としてこの時期を乗り切って行こうと思います。


第56回阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神1600芝

馬  名 騎 手
カシマフラワー 松永
エリモファイナル 内田博
ラインクラフト 福永
マイネデセール 木幡
ショウナンパントル 吉田豊
アンブロワーズ ホワイト
ハギノコマチ 藤田
テイエムチュラサン 小池
エイシンハッピー
10 ジェダイト 柴田善
11 ミラクルコンサート 和田
12 リヴァプール 川島信
13 クロユリジョウ 池添
14 デアリングハート 武幸
15 モンローブロンド 安藤勝
16 コスモマーベラス 長谷川
17 ライラプス 武豊
18 キャントンガール デムーロ

 前哨戦・ファンタジーSを圧勝したラインクラフトの本命不動、焦点は2着争いの堅いレース……と思われていたが、土曜夕方から夜にかけて阪神地方は台風襲来かと思われるような大雨に見舞われて、馬場渋化は避けられない模様。出走全馬が重より悪い芝馬場の経験が無く、一気に不確定要素の多い波乱含みの様相を呈して来た。ただ、天気は日曜午後から回復に向かうようなので、馬場状態にはレース直前まで注視を怠らないよう申し上げておく。開幕週だけに稍重までならそれほど神経質になる必要はないだろう。
 (追記:午前6時30分現在の天候は曇、芝の馬場状態は稍重です)

 ステップレースはファンタジーS組と別路線組に分けられるだろう。
 まずファンタジーS組は、福永JKが「牝馬同士で現在望み得る最高のメンバー」とコメントしたが、なるほど重賞2着馬や500万条件特別の勝ち馬が集った粒揃いのメンバーだった。そんな中、格の差を見せつけるように抜群の瞬発力で後続を千切ったのが、先述の福永JKが騎乗したラインクラフト。久々に大物感溢れる名牝候補の誕生だった。後続は2着と3、4着に差がついたが、これは多分にペースと展開によるもので、この3頭は互角と見て良いだろう。5着以下はそれらに比べて地力が一枚から二枚落ちる。
 別路線組からは、特に北海道で重賞を勝って来た2頭に注目しておきたい。距離延長や、これまでの対戦相手とのレヴェル差など懸念材料も少なくないが、勝負付けが済んでいないと言う意味で未知の魅力も大きい。その他の、芝のオープン・条件特別をステップにした馬は、ファンタジーSの2〜4着馬グループと同格か少し落ちる程度の地力だろう。
 数年に一度ペースで波乱の立役者となる、新馬・未勝利・平場500万条件戦から直行してきた馬たちだが、今年は実力上位馬の水準がそれほど低くないので、普通に考えれば出番は巡ってこないのではないだろうか。

 展開はほとんどの馬が先行か、最悪でも8〜9番手でレースを進めたい馬で、スタート直後のポジション争いは極めて熾烈なものになりそうだ。この辺は出たとこ勝負なので予想は困難だが、先行馬が10番手以降に回らされると厳しくなるだろう。特に外枠の先行馬は、位置取りで距離損を強いられるので、苦しい展開になるのではないか。
 逃げ宣言しているのはテイエムチュラサンだけだが、好位を求める馬たちに圧される格好となって、ペースは速めの平均ペースからハイペース。澱みの無い息の入らない流れのまま、直線でのサバイバルレースへ。
 直線では、アクシデントや重馬場が合わない事態でも起こらない限り、ラインクラフトが一気に抜け出しを図るだろう。そこへ唯一の差し馬・リヴァプールがどう馬群を捌いて決め手を見せつけるか。とにかく地力以上に運を必要とする、予想者泣かせの予想困難な展開となりそうだ。

 ……さて、それでは駒木のフォーカスを紹介しよう。

◎ 3 ラインクラフト
○ 12 リヴァプール
▲ 1 カシマフラワー
△ 15 モンローブロンド
× 6 アンブロワーズ
× 10 ジェダイト

 本命はやはり、人気もしているが地力上位のラインクラフト。実力をフルに発揮出来さえすれば、今回も次元の違いを見せ付けてくれそうだ。
 2番手以下はほぼ横一線だが、ここは唯一の差し馬らしい差し馬であるリヴァプールを推したい。位置取りに囚われる事無く、自分のペースでレースが運べそうなのはやはり強み。問題は川島JKがその“自分のレース”をするだけの余裕があるかどうかだが……。
 3番手評価にはカシマフラワーを抜擢。ただこれは馬場悪化に伴う対応なので、馬場状態が回復した場合は×印に繰り下げる事になる。ダート馬の印象が強いが、すずらんSの相手関係(2着に負かしたケイアイブーケがファンタジーSで5番人気7着)から考えると、芝でもファンタジーS入着組ぐらいの力はあるだろう。
 モンローブロンドは今回、速めのペースにどこまで対応出来るかがカギになってくるだろう。伏兵としては穴人気してしまっているが、アンブロワーズとジェダイト。これまでの相手関係を考慮すると2着、3着争いなら互角に争える。
 有力馬の一角を占めるライラプスだが、この外枠はやはり余りにも酷。去年のヤマニンアルシオンのような展開利は望めそうに無いだけに、入着一杯で終わりそうな気配。

 馬連3-12、1-3、1-12、3-15、3-6、3-10の6点(馬場回復時は1-12を12-15に変更)
 3連単フォーメーション(1、3、12)−(1、3、12)−(1、12)の4点(馬場回復時は1番を15番に変更)

 そして、今回もフォーカスだけの参加になってしまった、3人娘のフォーカスは以下の通りです。彼女たちのファンの皆さん、申し訳無いです。

 栗藤珠美…ラインクラフトの軸鉄板。馬連流し3−12、17、15、5、6の5点。
 一色順子…荒れ気味の馬場を勝って来た北海道組2頭に注目。3連単軸2頭マルチ(1、6)−(3、12、15、17)の24点。
 リサ=バンベリー…ラインクラフトの圧勝とファンタジーS組の再来を期待して。馬連3-15、3-12、12-15、3-17の4点

 ……ということになりました。来週は多少マシな講義がお届けできるんではないかと思います。どうか何卒。

 


 

2004年度第70回講義
12月3日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第5週/12月第1週分・合同)

 そうか、これがお盆前や12月初旬に多くの人が使っていた「修羅場」という言葉が適用される事態なのだな、などと考える駒木ハヤトです。
 ……とはいえ、本当に忙しいのは“こっち”の仕事以外の諸々でして、試験問題作ったり(3本同時進行。ワタシャ全盛期の永井豪か)、知人の結婚式二次会の司会なんぞを任されて「新郎、お姫様抱っこでございます! カメラをお持ちの皆さん、シャッターチャンスです、どうぞ前へ!」…とか叫んだりしている内に体力を使い果たしてしまうという有様。
 やっぱこういうのって、学生時代に慣れておくべきだったよな…などと、『じゃじゃ馬グルーミンup!』で別の意味で使われたフレーズを呟いてみたりしています(笑)。本来の意味では使う目処は一向に立っておりません。

 さて、どうでもいい前口上はコレくらいにして講義を始めます。今本当に修羅場に入ってるのは、実際に年末頒布予定の『現代マンガ時評04年度総集編』をご覧になればお分かりになると思います。何しろ、今日これからお送りする内容が収録されてますから。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(新年1号)『デビルヴァイオリン』作画:大竹利明)が掲載されます。
 大竹さんは約1年前に発売された「赤マルジャンプ」04年冬号において、異色作『勇とピアノ空』でデビューを飾った新人作家さん。デビュー2作目も“楽器シリーズ”になったようで、今回も「ジャンプ」らしくない作品になりそうな感じですね。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(新年2号)に読み切り『すけっとはメガネくん』作画:寒川一之)が掲載されます。
 寒川さんは、月刊増刊03年9月号から翌04年1月号まで『泣き虫センターコート伝説 忍』を短期連載していた若手作家さんで、今回が週刊本誌初登場となりますね。

 
 ★新人賞の結果に関する情報

第12回ストーリーキング(04年下期)

 ◎作画部門(画王杯)
 画王=該当作無し
 準画王=1編
(公式ウェブサイトにて公開)
  ・荒井健治(27歳・神奈川)
 
《講評:人物のデザイン、人物の作画、背景、特殊効果などそれぞれ高いレベル。オリジナリティもある。が、各人物の個性付けを無理に変えた結果、『一番的な人物配置』が崩れてしまった。原作者の意図を読み取る事が必要》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=7編
  ・小野伸明(27歳・滋賀)
  ・中島大作(28歳・東京)
  ・広瀬かつき(27歳・埼玉)
  ・鈴木利文(28歳・東京)
  ・隅井章仁(22歳・埼玉)
  ・山内愛(23歳・福井)
  ・外丸奈緒美(26歳・群馬)

 ◎マンガ部門
 キング=該当作無し
 準キング=該当作無し
 奨励賞=1編
  ・『雨の神話』
   藍(15歳・愛知)
 最終候補(選外佳作)=3編
  ・『龍のいた国』
   江畑喜之(27歳・東京)
  ・『勇者の墓』
   大沢祐輔(20歳・愛知)
  ・『東京ダスト』
   カメイケイスケ(25歳・埼玉)

 ◎ネーム部門
 キング=該当作無し
 準キング=該当作無し
 奨励賞=1編
  ・『火消し屋仙太捕物控』
   岡真由美(38歳・栃木)
 最終候補(選外佳作)=4編
  ・『SK8Monkey』
   那須野秀(26歳・東京)
  ・『鬼神千記』
   井口奈保(16歳・長野)
  ・『ケルベロスの少年』
   瀧山貴浩(27歳・宮崎)
  ・『BANK LIVES』
   大橋寿裕(15歳・岐阜)

 受賞者の皆さんのキャリアは以下の通りです。
 ◎作画部門(画王杯)最終候補の中島大作さん…01年1月期「天下一漫画賞」でも最終候補。
 ◎作画部門(画王杯)最終候補の広瀬かつきさん…04年4月期「十二傑新人漫画賞」でも最終候補。
 ◎作画部門(画王杯)最終候補の隅井章仁さん…02〜03年にかけて、「マガジンZ」誌で『青春特急!!電車でGo!学園』『ギルティギアXTRA』の作画担当。
 ◎作画部門(画王杯)最終候補の外丸奈緒美さん…外丸ナオミ名義で02年下期「赤塚賞」で佳作受賞。
 ◎マンガ部門奨励賞のさん02年5月期「天下一漫画賞」で最終候補(当時13歳!)
 ◎マンガ部門最終候補の
大沢祐輔さん…02年度「ストーリーキング」マンガ部門でも最終候補

 ……今回から新たに作画部門もスタートし、今や「手塚賞」に替わる「ジャンプ」系新人作家の登龍門となった感のある「ストキン」ですが、特に今回は色々な意味で内容の“濃い”回でしたね。
 まず作画部門は、「ジャンプ」系新人賞では異例の「最終候補全員20代」という事態になった上、講談社から単行本まで出した人が最終候補に名を連ねるという、贅沢なんだか一ツ橋から音羽へ向けての見せしめなんだか判らない決着に。
 マンガ部門の奨励賞には、これまた20代の最終候補者から一歩抜け出たのが15歳の藍さん。ローティーンで“新人予備軍”入りした人は後が続かないケースも多いのですが、「ジャンプ」編集部が手厚く育成を進めていたようです。これは将来に期待したいですね。
 一方、「ストキン」の目玉とも言えるネーム部門は今回も不調。奨励賞が30代後半、残りの最終候補も“大長編功労賞”と“ローティーン枠”で殆ど埋まってしまっており、『ヒカルの碁』や『アイシールド21』の頃に比べると、ややタマ不足になって来たのかな…といったところです。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:新連載1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年53号☆

 ◎新連載『ムヒョとロージーの魔法律相談所』作画:西義之

 作者略歴
 1976年12月27日生まれの現在27歳
 西さんを含む4人組ユニット・多摩火薬として『サバクノオオクジラ』で99年上期「手塚賞」準入選を受賞し、これが「赤マル」99年夏号に掲載され、デビュー。
 しかし、多摩火薬はその後解散し、個人活動へ以降。西さんは村田雄介さんのスタジオで『アイシールド21』のアシスタントを務めた後、04年「赤マル」春号にて今作と同じタイトルのプロトタイプ作品でソロデビュー。同じく、週刊本誌04年37・38合併号でもプロトタイプ作品を掲載(「第1回金未来杯エントリー→優勝ならず)。
 当然ながら、今回が初の週刊連載獲得。
 
 についての所見
 過去2回の読み切り版の独特な画風を踏襲しながらも、今回の連載化にあたっては随分とタッチが洗練されて来た印象です。前回指摘した線のメリハリの強弱も改善されていますし、背景処理、特殊効果、動的表現なども連載作品として標準的なレヴェルを確保しています。カラーページの彩色も達者ですね。
 根本的に(というより最早意図的に)違和感を感じさせる絵柄ですので、好感度を高くする事にも限界はあるでしょう。それでも可能な限りパッと見の印象も良くしようという意図は明確に窺え──例えば、読み切り版に比べると女の子キャラのデザインが若干ですが艶っぽくなっていたり──、これは評価出来るポイントです。

 ストーリー・設定についての所見
 相変わらずのオリジナリティの高い世界観は健在。そして今回の連載化にあたっては、設定をリアリティが深まるようにマイナーチェンジも施すなど、こちらも絵と同じく違和感を可能な限り排除しようとする意図が窺えます
 また、これは故意か偶然かは判断がつかないのですが、一見細かく決められたように見える設定には随分とまだ“遊び”の部分(=現時点では説明しなくても支障が無いので謎になっている部分)があります。これだと、比較的容易に後付け設定を加える事が出来るので、長編のストーリーを練っていく上ではプラスに働くでしょう。この手の読み切りからの昇格作品の場合、いかに作品の方向性を短編仕様から長編仕様に切り替えるかがポイントになって来るので、これは活かし切りたい所です。

 ストーリーに関しては、プロットがやや新鮮味に欠け、脚本に若干説明的過ぎる嫌いがあって弱含みであるものの、設定の持つパワーと演出力のお蔭で、その欠点の悪影響が最小限に抑えているように思えます。ゲストキャラ(依頼人)の感情表現もややオーバーなくらいに強調し、動機付けを明確にしているのでラストシーンにも説得力がありました。
 ただ、問題は主人公・ムヒョのキャラクター描写が今回の時点では甘かった事。このキャラは典型的な“偽悪人”キャラなのですが、その内の“偽”の部分がアピール不足では、読み手にとって魅力的な人物になりません。読者と作品との距離感を縮める役割は、もう1人の主役格であるロージーが果たしていますが、もう少し読み手が応援したくなるようなキャラクター描写が欲しい所です。

 現時点の評価
 評価は今回もA−としておきます。やはりオリジナリティのある世界観と演出力が強みですね。
 ただ、「金未来杯」で一敗地にまみれたように、人気作としての要素には乏しい作品である事も事実ですので、長期連載を果たす為には、魅力的なヒロインキャラなり、泣けるくらいの感動的なシナリオなり、もう一押し何か読み手を惹き付ける要素が必要になって来るでしょう。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今回の『BLEACH』は、久保さんの持ち味である演出力と脚本力が完璧に決まった会心の作。2次元の平面な絵に過ぎないキャラクターに生きた感情を持たせ、更にそれを誌面を突き破って読者の脳ミソにまで伝わらせるこのパワーは凄まじいの一言です。
 これでストーリーの内容が極度にワンパターンである事と、“後出しジャンケン”のカモフラージュが不得手な面、メインヒロインを作者個人の趣味でないがしろにする面がもう少しどうにかなれば、この作品は看板作品になれるポテンシャルを秘めているはずなんですが……。冨樫義博さんの遅筆といい、天は容易に二物を与えてくれないものなんですね。

 『武装錬金』第1回のキャラクター人気投票の結果発表。優勝が斗貴子さんというのは予想通りでしたが、思ったほど後続との差が開かなかった感じ。そして熾烈な2着争いは少差でカズキがパピヨンを制して主人公の面目躍如。しかし、やおい本向け美形キャラが上位を占めがちな「ジャンプ」の人気投票としては、ちょっと「らしからぬ」結果ではありますね。
 あと気になる所と言えば、登場間もない“負け犬”剛太の健闘、日常キャラの意外な不振、作品きっての敵役を食ってしまったヒャッホウ…といったところでしょうか。今後のストーリーの行方をも左右すると言われる「ジャンプ」のキャラクター人気投票ですが、今回の結果は「これで変えようあんのか?」…と言いたくなってしまうような(笑)。

 先週は「チェックポイント」がお休みだったため、採り上げられませんでしたが、『未確認生物ゲドー』の“残留”が決定したようですね。この、千代大海が際どくカド番を脱出し続けるような綱渡りはいつまで続くんでしょうか。……あ、いや別にこの作品に恨みも何も無いですが。

☆「週刊少年サンデー」2005年新年1号☆

 ◎読み切り『TWIN-kle STAR』作画:谷古宇剛

 ●作者略歴(資料不足のため不完全な内容です)
 生年月日は不明
だが、「新人コミック大賞」受賞当時の年齢から推測して、現在27〜28歳
 02年上期「新人コミック大賞・少年部門」で入選を受賞。デビュー時期は不明ながら、03年以降の増刊号では、03年3、6、9月号、04年GW号にそれぞれ読み切りを発表。今回が初の週刊本誌登場となる。

 についての所見
 人物のポーズや表情に少しぎこちなさを感じるものの、他の点は概ね問題なく、週刊本誌に混じっても違和感の無い水準の画力は持っているでしょう。人物造型のパターンも豊富ですし、何よりスポーツモノに必要不可欠な動的表現がキチンと出来ているので見易いですね。
 あとは、読み手がこの絵柄そのものに好感を持ってもらえるかどうかでしょうね。これは多分に好みの問題なので、当ゼミで言及するのはどうかと思うのですが、もう少し好感度の持てる容姿の登場人物を増やしてもバチは当たらないと思います。

 ストーリー&設定についての所見
 結論から先に言うと、稚拙な内容のプロットを、あの手この手で強引に1本の話に仕上げてしまった作品…といったところでしょうか。
 まず頂けないのが話のスケールの小ささ。自分のスカウトを蹴ったという恨みを晴らすためだけに練習試合をセッティングするようなクズを相手に、そいつをコテンパンにやっつけるならまだしも、最後で取ってつけたようにそのクズに遠い目されつつ認められるのをストーリーの“ゴール”に設定されても……。これでは『ドラゴンボール』で、フリーザが悟空の強さを認めて終わり、みたいなものです。栽培マンごときに殺られたヤムチャはともかくとして、クリリンの立場は一体どうなるのか。
 ……つまりは、ストーリーの途中で読み手が受けるストレスの方が、クライマックスの見せ場で得られるカタルシスよりも大きくなってしまっているという事。これではエンターテインメントとしては落第です。
 これで演出・構成・脚本がもう少ししっかりしていれば印象も変わって見えたのでしょうが、これが更に足を引っ張っている始末ではどうしようもありません。ましてやラスト2ページの“とってつけた感”の凄まじさといったら……。

 あと、これは揚げ足取りに近いかも知れませんが、主人公の弟の方が帰宅部即復帰でいきなりスーパープレイというのは、余りにも御都合主義でリアリティに欠けるような気も。ボレーシュートをバーに当てて「練習不足」とありましたが、それなら「久々のプレイであんな事が!」…と、素質を裏付ける出来事に転化した方がまだ良かったと思います。
 

 今回の評価
 評価はちょっと厳しくB−とします。
 また、編集長も交代した事ですし、ボチボチこの「微妙な若手首実検劇場」の在り方についても考えて欲しい所です。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週から巻末コメントはフリーコメントに。まぁ質問もネタ切れの傾向が強かったですし、仕方ないですかね。ただ、「サンデー」の場合は数年周期でフリーコメントと質問形式が交互に循環してますので、また数年後には質問コーナーになるのでしょう。大体、何人かの作家さんが「書く事無えよ」と言い出して質問コーナーに戻るんですよね。……というか、もう今週の時点で「書く事無い」が出てますが(笑)。

 さて、今回で最終回を向かえたのが『DAN DOH!! ─ネクストジェネレーション─』。元々、アニメ化に伴う連載復活でしたので、そのアニメが短期打ち切りになってしまっては、こちらの命脈も続かなかったというところですね。
 そういう事もあってストーリーの方は、本来ならこれから最後の盛り上がりを見せるというところで尻切れトンボという格好に。大人の事情で始まって、大人の事情で終わるという、作品にとっては一番恵まれない経緯を辿った作品と言えそうですね。
 最終評価は全シリーズからの継続としてB+据え置きとします。

 ……来週には色んな事がいっぺんに片付きますので、今度はいよいよコミックアワードに向けての準備も進められると思います。不義理の連続で受講される気持ちも遠のきがちかと思いますが、どうか何卒。


トップページへ