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講義一覧
1/29(第105回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(1月第5週分・合同) |
2003年度第105回講義 |
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すっかり「分割版」の体を成さなくなりつつある当ゼミのお時間です(笑)。とりあえず、年度末まではこの名称を続けて、それからまた考えるという感じで行きたいと思います。4月から駒木の身分がどうなるか、本当に判りませんからねえ。 ……さて、それでは今日も情報系の話題から。まずは「サンデー」系の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」03年11月期の結果発表がありましたので、例によって受賞者等を紹介しておきましょう。
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
さて、情報系の話題をもう1つ。「サンデー」では来週号(10号)に読み切り・『ハヤテの如く』(作画:畑健二郎)が掲載されます。畑さんは、つい最近まで増刊の方に『海の勇者ライフセイバーズ』という作品を短期連載していました。これまでのパターンで行くと、本誌連載獲得へ向けてのトライアルという事になるのでしょうか。 ……それでは、レビューとチェックポイントへと参りましょうか。今週のレビュー対象作は、「サンデー」の新連載第3回後追いレビュー1本のみということになります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2004年9号☆ ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントで光ったのは、やはり「今回の見開きを描いたお蔭でどんな絵を描いても面倒臭く感じなくなりました」と開き直った村田雄介さん。この上無く「今更」な『ウォーリーを探せ』のパロディを、週刊連載の、しかも巻頭カラーでやらされたご苦労、心からお察し申し上げます。 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 えーと、大浜>カズキ>六舛>岡倉ですか(笑)。しかし、究極の美形ってどんな形なんでしょうか。 それはそうと、最後のページでその場にいる5人の眼がアップになってるんですが、ホムンクルス特有の眼をしているのは変態バカ2人組だけですね。ということは、早坂姉弟は2人ともまだ人間という事なんでしょうか。
◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 ……などと言っていたら、こっちもベタだ〜(苦笑)。仲間が転校することになって、散々名残を惜しんだ挙句にドタキャンって、一体何年前のパターンなんだ(笑)。まぁ、ツカミとオチを「牛肉と豚肉で夫婦大喧嘩」という部分で揃えて来たのはなかなか見事でしたが。 ☆「週刊少年サンデー」2004年9号☆ ◎新連載第3回『暗号名はBF』(作画:田中保佐奈)【第1回掲載時の評価:A−】 さて、本日唯一のレビュー、『暗号名はBF』の第3回後追いレビューです。 ただ、非常に残念なポイントが1つだけありました。それは先週号(8号)の第2回で、主人公の特殊能力・“誘う目”で幻惑された女情報員が、後から「実は騙されたフリをしていました」と告白するシーンです。これは読み切り版でも似たような問題点があったのですが、素で騙されておいて、その後で「実は騙されたフリをしていたのよ」と告白するのは、かなり無理がある展開ですよね。 ……と、そういうわけで、大きな問題点が浮き彫りになって来たということで、評価はA−寄りB+と半歩後退させておきたいと思います。ただし、勿論のこと、今後の展開によっては評価の変更もあり得ます。
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「生まれてからの一番古い記憶」。 ◎『金色のガッシュ!!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 こんな緊迫した場面になっても、5ページ半にわたってドタバタギャグを入れる雷句さんの思い切りは相変わらず素敵です(笑)。しかも、メンバー中最も笑いに縁遠そうなレイラをクローズアップするとは、さすがやりますね。 ◎特別企画「哀川翔×井上和郎 スペシャル対談」 まず、内容以前に何ですかこのミスマッチは!(笑)。『ゼブラーマン』公開記念と『美鳥の日々』アニメ化記念を一緒にしてしまうのは強引通り越して反則に近いと思います。憶測で物言ったらまた叱られますが、何だか井上さんが猛烈にセッティングをお願いして実現したような雰囲気満々なのですが(苦笑)。 ◎『結界師』(作画:田辺イエロウ)【現時点での評価:A/雑感】 今回で1つのエピソードが終了。それにしても見事な締め方でした。やっぱりこの作品は読み手を笑わせるよりも泣かせる方がシックリ来ますね。1回ごとの盛り上がりを気にする余り、エピソード通じてのテーマがあやふやになる面があったような気もしますが、田辺さんのキャリアでそこまでを求めるのは酷というものでしょう。 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回のレースシーン、本当に秀逸ですねー。その内容が“実際の競艇では滅多に起こらないが、起こった時は最高に盛り上がるような展開”だけに、競艇観戦経験者の駒木としてはエキサイトしまくりました。ちなみに、一番盛り上がる読み方は、2連単1−3の舟券を1点買いしているつもりで読む事ですね(笑)。波多野、行けーッ! とか叫びそうになりますよ。 |
番外編 |
この半年で5回も東京へ行き、さすがにこの春は東京もどうかなぁ……と思っていましたところ、とんでもない時期にとんでもない所でとんでもないイベントが予定されている事が判りました。 ──というわけで、春の講義予定が1つ固まったところで、話を年末の東京旅行に変えましょう。今日はレポートの3回目。今回で何とかコミケ2日目の会場からは脱出したいと考えています。それでは、どうぞ宜しく……。 『吼えろペン』9巻サイン本をTYPE−MOONブースで購入した紙袋に放り込むと、駒木は未だ喧騒に満ちた西4ホールを離脱し、どう考えてもコスプレ広場というよりカメラ小僧、いやカメラ大きなお友達広場と化している屋上スペースもスルーして、そそくさを東ホールへと向かった。 ……そんなこんなで、クソ長い連絡通路に散々ヤラれまくった後、同人誌即売のメイン会場である東ホールへ到着した。 既に時刻は11時を過ぎ、ホール横の空きスペースでは今まだ残る行列を尻目に、一足早く“戦利品”の閲覧会および交換会も行われている。『かってに改蔵』風に言えば、ダメ・プレゼンテーションといったところか。この時期にしては比較的暖かい気候のせいか、一仕事終えた参加者の表情も穏やかだ。 ……とまぁ、そういうわけであるからして、普通ならこんな状況下で行列の最後尾にへばり付く、などと言うのは愚行としか言いようがない。今時になってヤフーBBに入るようなもんである。 紙袋から『吼えろペン』9巻を取り出し、読みながら列が進むのを待つ。まさか気まぐれで買った単行本が早速役に立つとは思わなかった。 ──と、いうわけで貴重な経験をした駒木、今度は東ホール内の中小サークルを巡回してみる事にする。特に目当ては無いが、掘り出し物を探してみようというわけだ。普段、メジャー少年誌に掲載されたプロの作品にあれこれ注文をつけるくらい目が肥えてしまっている駒木だが、それでも収穫皆無という事は無かろうと考えたのである。 自分は“こっち側”じゃなくて“あっち側”の人間ではないのか、つまり、同人誌を買うよりも売りたいんじゃないか…と。 そうなのだ。そもそも9歳の頃から小説家を志し、それ以来、純粋に娯楽として小説やマンガを読む愉しみを放棄してしまった人間が、しかも今や1日あたり3000人以上を相手にしたウェブサイトを運営している人間が、こういう場で単なる一消費者を演じられるはずなどあるはずがなかったのである。 それから駒木は、再びクソ長い通路を渡って西ホールへ。目当ては創作小説サークル。そう、まさに駒木の“同好の士”が集う所であり、サークル参加の場合は一応候補に挙がるであろうエリアだ。どういう状況であるかチェックしておいて損はあるまい。勿論、食指の動いた同人誌は確保するのは言うまでも無い。 ──だが、しかし。 意気揚揚と西1・2ホールへ足を踏み入れた駒木であったが、その周辺だけ余りにも雰囲気が違うのに面食らい、たちまち意気を削がれてしまった。エリア全体から強烈なATフィールドが張り出していて、何だか気軽に入っていけない雰囲気なのである。 ふと気付いてみると時刻は午後2時を回っていた。既に会場を後にする人の流れも出来つつあるし、駒木もとりあえずこの日はこれで打ち止めとする事にした。何しろこの後も予定が詰まっているのだ。ここだけでエネルギーを消費し尽くすわけにはいかない。 ……というわけで、ようやくコミケ2日目終了です。ただ、旅行の全行程からすればまだ1/3程度なんですよね(笑)。長期連載の予感がして来ましたが、とりあえず今日はこれまでです。次回もどうか何卒。(次回へ続く) |
2003年度第104回講義 |
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今週あたりはスケジュール的にも余裕があるし、久し振りに前・後半分割でお届けしようかな……と考えたんですが、ちょっと「サンデー」だけでは講義が成立しそうになかったので、合同版とさせて頂きます。早いところ、旅行記とか別企画とかも進行させなくちゃいけませんしね。 ところで、先の旅行の移動中には宮部みゆきさんの『クロスファイア』を読んでたりしてたのですが、基本的な設定が『デスノート』と『十五郎』の1話目をミックスしたようなミもフタも無いモノながら、強引に力技で読ませる辺りはさすがだなぁ…と思ったりしました。 ──さて、無駄話はこれくらいにして、ゼミを始めましょう。まずは情報系の話題から。
一般社会的にはどうか知りませんが、マンガ業界的には『Dr.コトー診療所』より、少年向け部門の『鋼の錬金術師』でしょうね。他出版社からの作品の受賞自体は、よく「ジャンプ」系作品が受賞しているように、それほど珍しい事ではないのですが、いわゆる四大メジャー誌(というか、実質「サンデー」と「ジャンプ」)以外からの受賞となると、極めて異例ということになります。 しかしこういう場合、これまでなら集英社(=小学館の旧子会社)の大ヒット作を引っ張り出して来て賞のグレードを維持してきたのですが、この度は肝心の「ジャンプ」も“受賞適齢期(連載2年程度)”の作品が極めて手薄で、それも果たせなかったようです。まぁ『ジャぱん』で受賞出来るなら『BLEACH』にも受賞資格はあるとも思えるんですが、過去の受賞作を見ると、「ジャンプ」作品は相当の大ヒット作でないと(少なくとも少年向け部門は)受賞出来ないという暗黙の了解があるみたいですから、今回は見送りとなったようですね。 ……次に、今週は「ジャンプ」系の月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の11月期分審査結果発表がありましたので、こちらでも受賞者等を紹介しておきましょう。
今回の受賞者&最終候補者の皆さんは、全員が過去の実績ナシという珍しいケースでした。その割には全員が20代の応募者で、フレッシュさを求めているのか即戦力を求めているのか、イマイチよく判らない話になってしまったんですけどね(笑)。 ☆「週刊少年ジャンプ」2004年8号☆ ◎新連載『スティール・ボール・ラン』(作画:荒木飛呂彦) 皆さんもご承知の通り、深刻な新人・新作不況が続く「週刊少年ジャンプ」。遂にここへ来て一度は封印されたはずの“最終兵器”が投入されました。業界内外に熱狂的なファンが数多く存在する事で知られる、ベテラン・荒木飛呂彦さんが満を持しての週刊本誌復帰です。 荒木さんのデビューは1980年で20歳の時でした。第20回(80年下期)「手塚賞」において『武装ポーカー』で準入選を受賞しデビュー。その後、2度の増刊掲載や本誌での読み切り発表などを経て、83年に『魔少年ビーティー』で週刊連載デビューを果たします。この作品と、84〜85年にかけて連載された『バオー来訪者』は、それぞれ単行本1〜2冊分の短期連載に留まったものの、連載終了から20年経った今でも未だに根強いフリークが存在するカルトな作品として有名ですね。 また、この連載は毎週31ページという、週刊連載としては異例の大ボリューム(通常は20ページ未満)とのことですが、ネット上の噂によると、定期的(月イチ?)に休載を挟んでスケジュール調整をするとも言われています。 ──さて、それでは内容についての話をしてゆきますが、この作品は注目度の極めて高い作品でもありますので、無用の誤解を避けるためにも少々前置きをしておきます。 では、まずは絵についての話から。……とはいえ、今年の末にはデビュー25年目を迎えようかというベテラン作家さんですから、基本的には何も口を挟めるわけもないんですが(笑)。冒頭から当たり前のように馬がバンバン描かれていますが、実は動いている馬の絵ってメチャクチャ難しいんですよね。さすがです。 次にストーリーと設定です。 ところで、荒木さんの根本的なストーリーテリング技術は、実は本来あまりスマートなものではありません。相当な設定過多で、そのため必要以上にネームを多用してしまう傾向があります。時には過剰に説明的なセリフが延々と続くシーンもあったりもし、ある意味、橋田壽賀子ドラマのような不自然さが絶えずつきまとう作風でもあると思います。 で、今回の『スティール・ボール・ラン』の第1回を駒木がどう判断したか…という話になるわけですが、結論だけ先に言うと、「かなりよく出来ている」になります。 暫定評価はA−寄りAとします。この調子で行けば、今年の「ジャンプ」を代表する作品の1つになりそうですね。ただ、それがこの雑誌にとって本当に幸せな事かどうかは分かりませんが……。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントでは、空知英秋さんが、デビュー作『だんでらいおん』を中学生に演劇化してもらったという事で喜びの声。確かに『だんでらいおん』はセリフが多い人情モノのドラマですから、演劇化するには絶好の作品かも知れませんね。しかし、デビュー1年にして、作家冥利に尽きるような体験ですよね。 ◎『ONE PIECE』(作画:尾田栄一郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 突如始まったデービーバッグファイト編。尾田さんが昨年から事あるごとに予告していたメンバーの1名離脱は、どうやらこのエピソードで起こりそうですね。ノリそのものは何だか番外編っぽい感じですので、そんな予告でも無ければ、さして注目もされない“暇ネタ”扱いでスルーされてたでしょう。でもまぁ、そうなってたら、実際にメンバーが1人抜けた時のインパクトは、良い意味でも悪い意味でも絶大だったでしょうが……。 ◎『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健)【現時点での評価:B+/雑感】 しかし、次々と心臓麻痺とかで死んでゆく凶悪犯の名前、どう考えてもあり得ない名前ばかりでチョイと興醒め。恐らくは、よくある名前を使うと、同姓同名の読者に悪いから…という事なんでしょうが、これならまだ伏字の方が現実味あるように思えません? ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 今回は斗貴子さんの登場がわずか3コマなのですが、それでもテンションと話の密度を落とさずに乗り切ってしまうあたり、随分と世界観や設定が成熟して来たものだと思います。ただ、和月さんは『るろうに剣心』時代から、敵キャラの個性付けを異様な外見にする事だけに頼りすぎる悪癖があり、あんまり多用されると現代劇としては少し辛いかな、という気もします。
☆「週刊少年サンデー」2004年8号☆ 巻末コメントのテーマは、「今までで一番ハマったTVゲーム」。 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今週はダメコモンセンスですか。何だか先週のネタとかなりニュアンスが似ているような気がするんですが(笑)。 ※プロレスファンの“常識” ※麻雀好きの“常識” ※競馬ファンの“常識” ──まぁこんなところでしょうか(笑)。まぁ“その道”じゃない人で、各分野3つ以上理解出来たら大したもんだと思いますが……。 ◎『売ったれ ダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:B/連載総括】 ……と、いったところで今週のゼミはここまで。来週もレビュー対象作が少ないですし、合同版になるかな…といったところです。 |
番外編 |
◎前回までのレジュメはこちらから→第1回 さて、今日は昨年末に敢行した超ハードスケジュール東京旅行のレポート第2回をお送りします。誤解の無いように繰り返しておきますが、年末の東京旅行記です(笑)。今月15日から行って来たヤツ(落語&競艇&ボクシングが目的の旅行)とは違いますので、どうかお間違いなく。 ところで駒木は、昨年夏から数えて、この半年ばかりの内に5回ほど東京旅行を敢行しているわけですが、時々受講生さんから「そんなに頻繁に旅行なんかして、お金は大丈夫ですか?」とか訊かれたりします。 ……では、今回は旅行2日目の午前10時、場所は東京ビッグサイト(コミケ会場)西4ホール付近、企業ブース待ち行列の中からリスタートです。今日も最後までどうか何卒。 ※例によって、レポート内では文体を常体に変更致します。 ◎2日目(12月29日)その2 行列全体の歩みに従って進んでいくと、早くもホール入口手前にて「○○(←ブース名)最後尾こちらです」のプラカードを持ったスタッフ(または客)が出現。こういう光景を見ると、「あぁ、コミケに来たんだな」という独特の感慨が沸く。 そんな中、駒木が目指したのは、新進ソフトメーカー・TYPE−MOON(タイプムーン)のブース。スタッフ4名の無名同人サークルを出発点に、数年後には企業ブース進出を果たしてしまったという、矢沢栄吉真っ青の成り上がり伝説を残したメーカーである。 で、駒木もこの『月姫』には超ド級の感銘を受けたクチで、大袈裟じゃなく人生観を揺るがすくらいに影響を受けた人間だったりする。そういう意味では今の自分があるのはTYPE−MOONの皆さんのお蔭とも言えるわけで、今回の“マネーロンダリング計画”を実行するにあたっては、まずここを出発点にしなくてはならないだろう…というわけだ。鶴の恩返しならぬ駒の恩返しとでも言おうか。 ──話が逸れた。まぁ、その程度の行列で待機すること数十分、ようやく順番が回って来て無事に商品ゲット。卓上カレンダーやテレホンカード等が入った小さな包みと、コミケ定番・イベント開催中の東京ビッグサイト内でしか使えそうに無い全面イラスト紙袋を受け取って、晴れて行列から離脱する。 さて、これで早くも企業ブースに用が無くなったので、そそくさと西4ホールを横切って行った……のだが、途中で小学館のブースに突き当たり、急停車。12月発売の「サンデーGX」をまだ未読だったので、置いてあった見本誌で立ち読み。そして、直筆サイン本を販売しているというので、まだ未購入だった『吼えろペン』(作画:島本和彦)の9巻をゲット。 ──と、図らずも「マンガ家のサインとは何ぞや」というテーマについて哲学をする羽目になりつつ、今度こそ企業ブースを後にした。時刻は早くも11時を回ろうとしている。さぁ急ごう。東ホールでは、今まさにこの時にも何匹もの大蛇が物凄い勢いで同人誌を丸呑みしようとしているのだ。 ……と、すいません。ヘンなところで勢いがつき過ぎて、全然話が進みませんでした(苦笑)。次回には、何とかビッグサイトを脱出したいと思いますので、どうか何卒。 (次回へ続く) |
2003年度第103回講義 |
今週は「週刊少年ジャンプ」が合併号休みのため、前・後半合同版ながら「週刊少年サンデー」関連の内容のみのゼミとなります。明日の早朝からまた1泊3日(また車中泊です^^;;)で東京旅行へ出ますので、こちらとしては都合が良いスケジュールになったんですけどね(笑)。 ところで、最近よく当ゼミのレビューに対するご批判を頂きます。ご批判そのものは以前からも度々頂いていたのですが、ここ10日余り、ご批判が新たなご批判を生む形で、“続々と”という感じで厳しいお声が寄せられる事になりました。 そして、そんなご批判の中では、 1.客観的がウリと公言しているクセに随分と主観的なレビューではないか。 ……といったご意見が大多数を占めます。 まず、1のご意見に関してですが、「客観的がウリ」も何も、駒木はこれまで自分のレビューを「客観的」だと公言した事はございません。全読者の最大公約数的意見から逸脱しないように、という自分への戒めの意味も込めて「少しでも客観的な内容に近づけるよう努力する」という趣旨の事を申し上げた時があったかと思いますが、それはあくまで理想であり、当ゼミのレビューには駒木ハヤト独特の価値観が色濃く現れているはずです。ましてや「俺の評論は客観的だ」などといった傲慢極まりない感情など心の片隅に抱いた事すらありません。 次に2についてですが、自分の思っている事と相反する内容を他人に断定口調で決め打ちされた時というのは、確かに人間、気分を害するものだと思います。ですから「表現にもっと留意せよ」というご要望には極力お応えしたいという思いもあります。 最後に3ですが、これは100%誤解でありまして、こちらとしても「ご理解下さい」としか言いようがありません。 ──以上、ご理解頂けましたでしょうか? 勿論、受講生の皆さんのお声はこれからも謹んで拝聴したいと考えておりますので、談話室(BBS)並びにメールにて忌憚の無いご意見をお寄せ下さいますよう、お願い申し上げます。 では、気を取り直して講義の本編へ参りましょう。 ☆「週刊少年サンデー」2004年7号☆ ◎新連載『暗号名はBF』(作画:田中保佐奈) 飛び石連休ならぬ、飛び石新連載シリーズが進行中の「週刊少年サンデー」、今週が4作品中の第2弾ということになりますね。 まず絵ですが、これは以前読み切りのレビューでもお話したように、基本的には見栄えのする綺麗な絵柄であると思います。ディフォルメなどの表現についても問題ないですし、十分に水準はクリアしているのではないでしょうか。 次にシナリオと設定について。読み切り版の時にはシナリオの整合性で大きな欠陥があったため、「このままで連載にゴーサインを出すのはどうか」と思ったのですが、少なくとも今回の内容に関しては、明らかな矛盾点はありませんでした。必要最小限の設定説明をこなしつつ、“主人公のデモンストレーション用”としてはかなりボリュームのあるシナリオをまとめ上げたわけですから、むしろここは「良く出来ている」と評価するべきかも知れません。複雑な心理描写もかなりリアリティがありましたしね。 むしろ、心配なのは今後です。主人公を「変身前は片想いに悩むタダの中学生、変身後はオトナの話術(笑)を最大の武器にした万能型ヒーロー」という、かなり裏技的な──本来は読み手の感情移入が難しい万能型主人公なのに、「重要じゃない場面ではタダの中学生」という二面性を持たせて読者の感情移入が促進可能にした──キャラに仕立て上げたのはグッジョブなのですが、この主人公にリアリティを持たせるのはかなり大変だと思います。何しろ、「どうして素(中学生)の時は、変身している時みたいにカッコ良く出来ないの? 同一人物でしょ?」…というツッコミが常時背中に突きつけられるわけですからね。 さて、第1回時点での暫定評価ですが、いくつかの減点材料を抱えつつも、全体的な完成度はかなり高いと言う事で、A−を進呈したいと思います。ただし、先述の通り、今後の展開にはかなり弱含みな要素も抱えているため、後追いレビューやそれ以降でも減点せざるを得ない場面が出て来るかも知れません。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「闘ってみたい有名人」。 今回も物騒なカップルによる物騒なラブコメ模様が個人的にバカ受けなんですが(笑)。青年誌でいいから、もっと描いてくれればいいのに。 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 確かに「自分は普通だ」と思ってる事に限って、周りから見たら異常だったりしますからね。例えば、大分昔に鈴木みそさんが調査してたんですが、便所で大の方をした後の拭き方とか。アンケート取ったらかなりの種類に分かれるんですが、回答者は口を揃えて「でも、これって普通でしょ?」と言うんだとか(笑)。
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2003年度第102回講義 |
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中1日開けて、今度は今週発売の「ジャンプ」、「サンデー」についてのゼミを行います。 ……とはいえ、3000人以上の受講生さんを前に逃げるわけにも行きませんので、頑張らせて頂きます。 まずは「ジャンプ」ではビッグネームの再登板。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズでお馴染みの、荒木飛呂彦さんが遂に復帰です。そのタイトルは『ストーンオーシャン』最終回掲載号の巻末コメントで予告されていた通り、『スティール・ボール・ラン』。 次に「サンデー」から。これは一度“今期の新連載一覧”のような形で紹介したはずなのですが、改めてという事で。 ……それでは今週分のレビューをお送りしましょう。今週のレビュー対象作は、「ジャンプ」から第3回後追いレビュー1本と読み切り1本、そして「サンデー」からは第3回後追いレビュー1本の計3本です。 ☆「週刊少年ジャンプ」2004年6・7合併号☆ ◎新連載第3回『LIVE』(作画:梅澤春人)【現時点での評価:B+】 昨年末の新連載シリーズについてのレビューもこれにてラスト。シリーズ第3弾・『LIVE』の第3回後追いレビューです。 で、内容についてですが、レビューすべきポイントについての印象は、第1回の時とほとんど変わっていませんね。話が急展開してゆくようなタイプの作品ではありませんし、ベテラン作家さんですから絵柄も2週間で変わりようがありませんから、当たり前と言えば当たり前なんですが。 この辺りは、第1回のレビューで申し上げた“縮小再生産”の反作用が早くも出ているのではないかと思います。この作品は既に第1話、いやそれ以前の段階で梅澤さんの頭の中で完成されてしまっていて、第1話時点ではもうピークを過ぎつつあるんですね。なので、2話以降で大幅な進展をしようと思っても構造上不可能なわけです。 ただ、総合的な評価は作品そのものをデジタルに評価しなくちゃいけませんので、大幅な減点も出来ません。マンガとして求められる最低水準は軽くクリアしているわけですからね。 今週の読み切り枠には、これが週刊本誌2度目の登場となる江尻立真さんが登場です。 まず絵については、前回の時と同様、新人・若手の域を越えた素晴らしいデキになっていると思います。もう完全に絵柄が固定されているみたいですが、まぁこれだけ描ければ固まっても問題ないでしょう。 ただし、高評価が出来る絵と違い、今回のストーリーは、プロット段階、つまり「どのような話にするか」という地点から、ベクトルを間違えてしまったような感が否めません。 また、「怖い話」の要素の組み立て方にも若干の疑問が残ります。この手のホラーというのは、“因果応報で訪れる恐怖”または“全く無関係な所から理不尽に訪れる恐怖”というのが基本です。前者の代表例が幽霊話の復讐モノで、後者のそれが血飛沫バリバリのスプラッターですね。 あと、これも前回にも指摘したんですが、答えの分かり難い考えオチは止めた方が良いですね。上手くまとめたように見えて、話の余韻が台無しになってしまいます。 ……そういうわけで評価なのですが、今回は話の組み立て方を間違ってしまっていますから、前回から評価を落とします。絵の良さの分だけ少々加点してBということにしておきましょう。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントは、ほとんど皆さん揃って新年のご挨拶。多分コメントを書いているのは年末進行最終段階(12/24前後)のはずなんですが、まるで年賀状みたいですね(笑)。 しかし、今週号の表紙は各作品ごとの合作なんですが、そのカットの大きさが、なんかそのまま雑誌内の番付を現しているようで興味深いですね。 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/単行本1巻の話題&表現規制について】 先日のゼミで、「『武装錬金』は編集サイドからの支持で残虐シーンの描写に表現規制を受けている。致し方ない部分もあるが、それでも如何な物か」…という旨の発言をしたところ、複数の受講生さんから談話室(BBS)で、「描いた後に修正されているわけではないので、作者本人の意思で表現を和らげたのではないか」というご指摘を頂きました。 その、和月さんが表現規制について述べられていたのは、余りページを利用したオマケコーナー・「ライナーノート」。簡単に言うと、1話毎の制作舞台裏が箇条書きスタイルで述べられたコーナーなのですが、その第7話部分に、この件に関する興味深い内容が記されておりました。 では、ここでゼミ用の教材としまして、その第7話部分を全文引用させて頂きます。著作権との兼ね合いが微妙かも知れませんが、引用の必要性や、本文と引用文の主・従の関係性から考えるとセーフだと判断しました。勿論、然るべき所から抗議を受けた場合は速やかに削除しますので、ご了承下さい。
……この記述から分かる事は、 ……の2点ですね。 しかし、このモラル基準は正直厳しすぎる印象がありますねぇ……。メジャー少年誌という事で仕方ないんでしょうが、とんでもない厳しさですよ、コレ。「ジャンプ」は乳首NGとか、そんな事言ってる場合じゃないですな。 ☆「週刊少年サンデー」2004年6号☆ ◎新連載第3回『怪奇千万! 十五郎』(作画:川久保栄二)【第1回掲載時の評価:C】 さて、連載開始以来、ネット界隈の至る所で凄い事になっている(笑)、この『十五郎』の後追いレビューです。 ──では、本題に移りましょうか。 閑話休題。 まず1点目は、主人公・十五郎のキャラクター設定です。 次に2点目。それは、提示した設定に説得力を持たせる努力を放棄している事です。 そして最後の3点目はちょっと難しいんですが、頑張ってついて来て下さいね。3点目は、物語の中で起こった1つの出来事について、そこから派生して起こる出来事を全く想定できていない、という部分です。 ──さて、いかがでしたでしょうか? これでまた頭の中でモヤモヤしていた疑問を解消していただければ幸いです。
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「お正月の思い出」。 ◎『犬夜叉』(作画:高橋留美子)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回の間の良いラブコメシーンを読んでると、普遍的だけど上手いよなぁ……とか思ったりしたんですが、よく考えたらその“普遍”のかなりの部分を作ったのは高橋さんご本人だったりするんですよね(笑)。いや、失礼しました。 ◎『結界師』(作画:田辺イエロウ)【現時点での評価:A/雑感】
……というわけで、今週はこれまで。長かったですね、ごめんなさい。 |
2003年度第101回講義 |
今年最初の「現代マンガ時評」は、恒例の「赤マルジャンプ」全作品レビューをお送りします。既に「ジャンプ」、「サンデー」のいずれも今年最初の週刊本誌が発売になっていますが、とりあえずはこちらからという事で。 ……それでは、長丁場必至の内容になる事ですし、早速レビューを始めたいと思います。ただ、例によって、普段のレビューよりもやや駆け足気味のものになりますので、ご承知おき下さい。あと、これもいつも通りですが、連載作品の番外編はレビュー対象から外してあります。 ◆「赤マルジャンプ」04年冬号レビュー◆ ◎読み切り『NOIZ ─ノイズ─』(作画:樋口大輔) 連載経験者が担当する巻頭枠、今回は『ホイッスル』でお馴染みの樋口大輔さんの登場です。連載終了後も精力的な活動を続ける樋口さん、03年は本誌でも読み切りを発表していますが、滑り込みで年内2作品目の読み切り作品発表となりました。 絵に関しては「良い意味で特筆すべき事は無し」という扱いで良いでしょう。ただ、余りにもクセが無い画風というのも、インパクトが弱くなって逆に困りモノだな…という気もしました。 ストーリーは、ごく普通の日常風景の中に場違いな超能力を1つ放り込んだらどうなるか…という典型的な「もしも」型のお話ですね。 評価は典型的な“佳作の小品”という事でA−に。確かに問題点もありますが、高い完成度でその弱点をほぼフォローし切ったと思います。
さて、ここからは新人・若手枠。そのトップバッターは、前号の「赤マルジャンプ」・03年夏号でデビューを飾ったばかりの村中孝さんです。 絵に関しては、“画力自慢新人大会”だった03年夏号組だけあって、かなりのハイレヴェルです。デフォルメ表現なども新人離れしていますね。 次にストーリーと設定について。 あと、ストーリーは随分と苦しくなっちゃいましたね。全般的に見られる展開の強引さも然る事ながら、ミエミエのオチを引っ張り過ぎてしまいました。更に、主人公とヒロインが、「好きだ、好きだ」と言ってる割に、その好きな人の事を根底から忘れているというのもマヌケ過ぎたような気がします。 また、他に気になった部分としては、この作品の中は既製作品から多くのキャラ(ジャイアンとスネオ等)や名前(「青島刑事」等)が数多く流用されている事ですね。新人作家さんがこういう“遊び心”を多用するのは余り感心出来ません。こういう試みは、既に100%自力で完成度の高い作品を作れる人がやるからこそ“遊び”になるんであって、そこまで至っていない人がそれをやってしまうと、未熟さを誤魔化すために、昔の名作からキャラを拝借したように見えてしまうんですよね。 評価は少々辛目かも知れませんが、メジャー雑誌掲載作品でギリギリ及第点のBということで。 続いては、今回がデビュー作となるサトウ純一さん。02年下期『手塚賞』の佳作受賞者ですね。来月には26歳の誕生日を迎えるという事で、「ジャンプ」の新人さんとしては遅咲きの部類に入るでしょうね。 絵は、典型的な「パッと見は上手そうだけど、よく見ると変」なタイプですね。意識的に得意なアングルや表情を多用しようとしていて、妙に不自然な所が色々な所に見受けられます。 ストーリーと設定は、主人公の投げる球同様、シンプルな直球勝負といった感じですね。45ページにしては、少々中身が薄い気もしますが、まぁそれ自体は許容範囲でしょう。 評価はB−ですね。02年下期「手塚賞」組は、高橋一郎さん、梅尾光加さん、落合沙戸さんと、新人不況の昨今においても比較的豊作の部類だっただけに、次回作ではサトウさんにも奮起を促したいところです。
次は、「赤マル」02年冬号(=2冊目の01年冬号)以来、2年ぶりの登場となる藤山海里さんです。出身地や年齢からは00年上期に「赤塚賞」佳作を受賞している青山海里さんと同一人物だと思われますが、確定情報をお持ちの方がいらっしゃったら、是非BBSかメールでお知らせ下さい。 さて、作品についでですが、まずは絵から。 次にストーリー&設定ですが、まずは難しい近未来SFモノにチャレンジして、曲がりなりにもストーリーをまとめ切った事は素直に評価すべきだと思います。実は、ファンタジーと同じくらい、マンガの世界では鬼門だったりするんですよね、SFって。 それでも全体的な実力は新人・若手の中に混じれば上位クラスでしょう。次回作ではもうちょっと描き易い題材を選んで、連載獲得にチャレンジしてもらいたいと思います。評価はB+。 ◎読み切り『ナイン』(作画:福島鉄平) さぁ、どんどん行きましょう。続いては福島鉄平さん。「コミックフラッパー」からの転身という極めて異色のキャリアを持つ若手作家さんですが、03年夏号に続いての「赤マルジャンプ」連続掲載となりました。 ……では、まず絵から。 ストーリー&設定も、夏号から進歩の跡が見られますね。独特の殺伐さを少年マンガのエッセンスで薄める事に成功し、多少危ういながらもバランスを保ったまま49ページを乗り切ったと言えるでしょう。 評価はB+寄りBという事にしておきましょう。つくづくも惜しい作品だと思います。
ここからは5連発でジャンプデビュー組の人たちが続きますが、他の4人と経歴が一味違うのがこの田中顕さんです。 まず絵ですが、有り体に言ってかなり荒い印象がありますね。タッチを洗練しないままで固まってしまったというか、下積みが長過ぎてデビューした時には既に時代遅れの絵柄になってしまったというか……。ちょっとこのままで「ジャンプ」本誌に持って行くのは躊躇われるレヴェルではないかと思います。アシスタント経験が長いので、背景処理だけはやたらに上手いんですけどね(笑)。 ストーリー&設定は、大雑把にまとめれば長所と短所が入り混じっている…といったところでしょうか。 評価は、「見所のある部分もあれど、欠点が圧倒的に多い」という事でB寄りB−にしておきましょうか。
続いては、01年後期「手塚賞」佳作受賞者・守屋一宏さんの登場です。守屋さんはこれがデビュー作で、受賞以来2年間の苦労がようやく実った…という事になりますね。「手塚賞」や「赤塚賞」の佳作にはデビュー確約特典が付かないので、守屋さんのようにデビューが遅れたり、デビューも果たせぬまま消えていく人もいたりします。(まぁ両賞の佳作受賞作が、“その程度の水準”であるという事も否定できないのですが) さて、まずは絵ですが、基本的な表現に関しては十分合格点じゃないかと思います。ただ、良い意味でも悪い意味でもマンガっぽい絵柄なので、シリアスなシーンを描いても深刻さが伝わって来ない…という弱点も見え隠れしています。 ストーリーと設定は、こちらも基本的なストーリーテリング能力は問題ないのですが、今回に限ってはページ数の割に内容のボリュームを欲張り過ぎた印象が強く残りました。設定過多で消化不良に陥っていますし、シナリオもメインストーリーを押さえるだけで精一杯で、説明不足で不可解な展開が各所で見られたりしました。 評価は商業誌で活動するのに基本的なラインはクリア出来ているということでBが妥当かと思います。 ◎読み切り『サクラ戦線北上中!!』(作画:森田一博) 続いては03年8月期の「十二傑賞」受賞作が登場です。森田さんは当然の事ながらこれがデビュー作となります。 絵は現在の「ジャンプ」では少なくなった劇画調タッチで、非常に個性的です。それはそれで結構な事なんですが、全体的にデッサンが狂い気味で余分な線が多いため、上手い下手以前に見辛い絵になってしまっているのは問題でしょうね。 そしてストーリー&設定にも、若干の問題点の存在を否定出来ません。特に設定の積み上げ方に課題が残されていますね。 評価はB−ということで。大化けする可能性も感じさせる人ではあるのですが、今の「ジャンプ」がそこまで悠長に事を構えていられるかは微妙でしょうね。
まだまだ続くルーキー攻勢、次に登場したのは03年上期「手塚賞」佳作受賞者・大竹利明さんの受賞後第一作&デビュー作です。 まず絵にはかなり難が有りますね。まだマンガではない“止め絵の羅列”の段階に留まっている感じです。このままで週刊本誌に持って行ったら、読まれる以前の段階で拒否反応を浴びてしまうでしょうから、今後は画力の向上が急務になって来るでしょう。 ストーリー&設定については、オーソドックスと言えばオーソドックスなお話なのですが、先程述べた高い演出力に支えられて、非常に良い読後感を読み手にもたらす構成になっています。どうしてもバトル物に走りがちな「ジャンプ」系新人さんたちの中で、こういう“一服の清涼剤”的な日常劇を持って来たセンスも評価出来ますね。 まぁそれでも、デビュー作にしては上々の出来と言えるでしょう。演出力は新人の域を超えていますから、ひょっとすればひょっとする逸材です。今回の評価は画力による原点分を半ランク分差し引いてB寄りB+。
ストーリー系作品の新人・若手枠ラストに登場は、03年7月期の「十二傑賞」受賞作・臼田幸太さんの『一夜物語』です。 ……で、これから詳しくレビューしてゆくわけですが、先に言葉を選ばず総評を述べておきますと、「うわ。こりゃ酷ぇ」でした(苦笑)。何と言いますか、『ツバサ』みたいなお話を実力の無いド新人に描かせるとこんな惨憺たる結果になるんだな…などと、反面教師的に学ぶ所の多い作品だったと思います。 まず絵は完全にグダグダ。画力そのものも発展途上なのですが、構図の取り方や背景と人物との描き分けが全く出来ていない上に、これまた使い慣れていないスクリーントーンを間違ったやり方で貼り付けてしまったために、心底読み辛い絵柄になってしまっています。 そしてストーリーと設定も、自己満足・独り善がりの極致と言うべき悲惨なモノで、こういう立場(レビュアー)でなかったら、「いい加減にしろ、このクズ!」と罵った上に雑誌を投げ捨てていたと思います。それくらい酷いです。 相当な不作であっても月に1作品デビューさせなくてはいけない「十二傑賞」ではあるのですが、この作品が最終審査以前に予備審査を通ってしまった事が大変に不思議です。まぁ時々こういう選考では、終わってみれば全員が「誰だ、こんなの残したの?」という結果になる事もあるそうですけれども(笑)。 新人・若手枠ラストはギャグ枠。「赤マル」03年春号でデビューを果たした風間克弥さんが半年振りの再登場となりました。徐々に「ジャンプ」系の新人・若手ギャグ作家さんの頭数が揃いつつある今、何とか“連載候補生”入りを果たしたいところでしょうが……。 絵は、「ギャグマンガにしては」という条件付きながらも及第点でしょう。既製作品の影響が随所に見られるのは多少気になりますが、様々なタイプのキャラが描けるようで、画力の拙さでギャグの足を引っ張る…という事態は避けられそうです。 ただ、ギャグの方はイマイチ突き抜けたモノが感じられません。「服の袖から何かが出て来る」という所から派生したギャグを多用していますが、それは作品の世界観と関係の無いものだけに、話の中でギャグだけ浮いているように感じられてしまいます。『ボーボボ』みたいにギャグ1つ1つのインパクトが恐ろしいほどデカければ話は別なのですが……。 全くセンスが無い…というわけではないのですが、このまま週刊本誌で通用するかと言えば、否でしょう。他の作品から影響を受けるにしても、表面的な部分だけではなく、笑いを獲るメカニズム的な部分にもっと目を向けてもらいたいものですね。 いよいよ大トリです。皆さん、お疲れ様でした(笑)。駒木も当然ながらヘトヘトに疲れています(笑)。 さて、最後を飾るのは、『プリティフェイス』終了以来の復帰第1作となる叶恭弘さん。元々は短編を中心に活動していただけに、今回はまさに初心に立ち返っての再出発ですね。 まずは絵。改めて言うのも憚られますが、やっぱりメチャクチャ上手いです、叶さん。特にカラーページの彩色が素晴らしい出来で、このまま画集に載せてお金を取っても良いくらいです。 そしてストーリーと設定。叶さんの作品と言えば、アラの多い設定を無理矢理まとめる“パワープレイ”が定番だったのですが、今回ばかりは一味違います。というか、長期連載を経験して一皮剥けたと言うべきなのでしょうか。 蛇足ながら歴史考証についてですが、ヨーロッパの辺境にある小国を舞台にするならば、中世ドイツは最適のシチュエーションであり、これは問題ありません。 評価は十分A−はあるでしょう。本気で叶さんの次回作が楽しみになって来ましたよ。
……というわけで、「赤マルジャンプ」完全レビューでした。講義実施が遅れて申し訳ありませんでした。では、早ければ今週中にもう1度ゼミでお会いしましょう。 |
番外編 |
受講生の皆さん、明けましておめでとうございます、駒木ハヤトです……とは言っても、仕事始めまでは極端に出席率が落ちるんですよね、当講座は(笑)。仕事や学業の合間を縫って受講されているという、熱心なんだか熱心じゃないんだか判らない方たちがどうやら1000人程度もいらっしゃるようで……。 で、そのストレス発散に久しぶりに駒木の講座でも聞いてやるか…なんて方もいらっしゃるでしょうが、お先に謝っておきます。ご期待に添えません。今日はよりにもよって、色気の全く無い駒木の東京旅行記です。ごめんなさい。楽しんで頂けるかどうかは、皆さんの心の大きさ次第という事になって来るかと思います。嫌なウェブサイトもあったもんですね(笑)。 ※レポートは文体を常体に変えます。 ◎初日(12月28日) 19時過ぎ、余裕を持って設定していた予定出発時刻よりやや遅れて自宅を発つ。ここから岐阜の大垣駅までは、夜行列車の出発時刻から逆算した行程になる。大垣までで既に乗り換えが3回控えているせいか、何となく落ち着かない。 一度電車に乗ってしまったら最後、東京に着くまではほとんど買い物の出来ない行程なので、時間を気にしながらも、とりあえず最寄の駅前で色々な買い物を済ませる。で、「もうここから最後、家には引き返せませんよ」という時刻になった瞬間、荷物の中に首枕を積み忘れていた事に気付く。 大垣までの行程は特に何も無いので省略。例によって大量に積み込んだ文庫本を読み耽りながら時間を潰す。ただ、米原行きの新快速に乗っていた時、遅い時間帯の割に乗客数が多いなぁと思っていたら、車掌が検札しに来た際に、ほぼ全員が青春18きっぷを提示したのには笑った。みんな駒木と同じような目的を持って、同じような時間の計算をして、その結果同じ電車に乗っているのであった。 そんなこんなで大垣駅のホームから乗り込んだのは、貧乏旅行愛好家にはお馴染みの「ムーンライトながら」号。ただし、今回は繁忙期限定の臨時便。年末年始の「ながら」は事前予約の段階で定員が埋まってしまうので、正攻法でチケットを取ろうと思ったらこちらに回るしかなかった。少し古い特急用車両が使われているので多少座り心地が悪いのだが、背に腹は変えられぬ。
……さて、言い遅れたが、ここで今回の旅行のテーマは、「『ネットランナー』から貰った金をコミケでマネー・ロンダリングする」…である。 と、話を戻そう。時は午前5時前の東京駅である。 ここでようやく空が明るくなって来た。こんな時間帯で既に当日の検札が入っている青春18きっぷを改札の駅員さんに大いに怪しまれながらも、いよいよコミケ会場・東京ビッグサイトへと向かう。 列に合流したのが午前7時半。ここから移動開始まで約2時間の待機となる。異様に機能的な服装をした男性参加者と、異様に機能的じゃない服装で着飾った女性参加者のコントラストを横目で観察しながら、やはりここでも読書で時間を潰す。ここで読んでいたのは『OUT』の下巻と『霞町物語』(浅田次郎:著)。しかし、寒風吹きすさぶ早朝の有明で、死体の解体シーンが出て来る小説を読んでいると、心身ともに冷える(笑)。以前、同じようなシチュエーションで『殺人鬼』(綾辻行人:著)を読んで大層堪えた経験があるのだが、こういう時には暇つぶしに読む本も選ばなきゃな、と改めて実感した。 9時半頃になって待機列の移動開始。とりあえず希望に従って各ホールの入口付近まで誘導され、改めて待機列が形成される事になる。 ……などと馬鹿な事を考えている内に、開場時刻・午前10時を迎えた。待機列も粛々と動き出す。さぁ、いよいよ祭りの始まりだ。 (次回へ続く) |