「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

4/29(第7回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第5週分・前半)
4/24(第6回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第4週分)
4/20(第5回) 
文化人類学(大食い関連)「祝・大食い復活! テレビ東京系『大食い王決定戦』TV観戦レポート」(2)
4/16(第4回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第3週分)
4/15(第3回) 
文化人類学(大食い関連)「祝・大食い復活! テレビ東京系『大食い王決定戦』TV観戦レポート」(1)
4/10(第2回) 
社会史「プロ野球ガイジン助っ人“放火魔”投手・今昔」
4/8(第1回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第2週分)

 

2005年度第7回講義
4月29日(金・祝) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第5週分・前半)

 すっかりご無沙汰してしまいました。
 本格的に講師先の仕事が始終授業漬けの状態に突入して2週間。日増しに心身のストレスも蓄積され、全てのエネルギーを昼間で消費してしまって、ここ数日は夜に起き上がる事さえ出来ませんでした。
 まぁ昨年の今頃は、車で通勤中にアクセル踏みながら側壁へ向かってハンドルを切りたい欲求に駆られる事しきりだったので、それに比べたら一回り大きく成長しているのではあると思いますが(笑)。

 ──それでは、4月最終週のゼミをお送りします。今週は「ジャンプ」関連(というか、『武装錬金』関連)でお話する内容が特に長くなりそうですので、急遽前・後半に分割して実施したいと思います。
 今日は情報系の話題と「ジャンプ」関連の話を。そして明日、明後日には、若干短めで「サンデー」関連のレビューとチェックポイントをお届けする予定です。どうぞ宜しく。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報 

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(23号)『大宮ジェット』作画:田村隆平)が掲載されます。
 田村さんは03年のデビュー以来、増刊を含めて今回が3作目。これまでの2作品は、先鋭的なセンスに理詰めのテクニックが追いついていない印象がありましたが、今回は果たしてどうでしょうか。

 ◎「週刊少年サンデー」では次号(24号)『ザスパ草津物語 〜夢は枯れない〜』作画:向後和幸)が掲載されます。
 毎年1〜2回企画されるスポーツ実録モノが今年も登場。今回は元・日本代表を含む、かつてのJリーガーたちが多数所属する新興チーム・ザスパ草津のJリーグ昇格までを追った作品ですね。
 作者の向後さんは今年28歳。サッカー関連のニュース記事によると、6年前に新人賞を受賞したもののデビューする機会に恵まれず、ここまでプロアシスタントとして業界に関わって来た人とのこと。新聞のインタビューで応えた「漫画を通じて『好きなことを信じ続けて、やればできるんだ』ということを感じてもらえれば」…というコメントは、恐らく作者ご本人をも投影したものではないでしょうか。
 実録モノは、当ゼミでは原則評価対象外としていますが、一応レビューは実施する予定です。


 ★新人賞の結果に関する情報

 今週は「サンデーまんがカレッジ」の発表がありましたが、それに先立ちまして、先々週からずっと紹介し忘れておりました、「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の方からお届けします。

第23回ジャンプ十二傑新人漫画賞(05年2月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
 十二傑賞=1編
(週刊本誌or増刊に掲載決定)
  ・『Strength』
   彩崎廉(20歳・東京)
 《岸本斉史氏講評:全体的にバランスよくまとまっているし、ハッタリの利かせ方も上手。ただ、少し読み難い印象で、フキダシの位置に注意して欲しい》
 《編集部講評:表情の描き分けなど、画力には非凡なセンスを感じる。構成やアイディアもしっかり出来ている。あとは読者層を考えた作品作りを》
 最終候補(選外佳作)=8編

  ・『パンダのジューベー』(岸本斉史特別賞)
   長宏樹(24歳・大阪)
  ・『Weapon Bros』
   上田裕之(20歳・神奈川)
  ・『化け斬り九郎』
   菅原たけし(31歳・宮城)
  ・『HACK』
   仁井原正美(20歳・千葉)
  ・『リトルケイジャー』
   太平平太(22歳・神奈川)
  ・『ばっつみ!!』
   うの一薫(24歳・東京)
  ・『Guild』
   秋葉絵美(22歳・埼玉)
  ・『DLT』
   布施龍太(24歳・東京)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎最終候補の上田裕之さん…04年4月期「十二傑」にも投稿歴あり。

 
◎最終候補の菅原たけしさん…04年3月期「十二傑」で最終候補。03年10月期にも投稿歴あり。
 ◎最終候補の秋葉絵美さん
04年10月期「十二傑」で最終候補。04年6月期にも投稿歴あり。

少年サンデーまんがカレッジ
(05年2月期)

 入選=該当作無し
 佳作=1編
  ・『満月の日は血に染まる』
   森田滋(19歳・埼玉)
 努力賞=3編
  ・『デビッキュ!!』
   干場章宏(21歳・大阪)
  ・『ハッピーフェイス』
   瀬戸カズヨシ(25歳・東京)
  ・『ガチンコ! フォンドルメン』
   大坂吉宏(23歳・秋田)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『98¢POP』
   苫瀬もあ(21歳・アメリカ)
  ・『サボテンハイキング』
   友永真理子(22歳・大阪)
  ・『MATAGI』
   岩田有正(24歳・愛知)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ◎努力賞の瀬戸カズヨシさん…04年前期「新人コミック大賞・少年部門」で最終候補、04年7月期「まんカレ」であと一歩で賞。
 
あと一歩で賞の岩田有正さん…03年9・10月期「まんカレ」でもあと一歩で賞。

 「十二傑」では、見るからに絵の達者さが目立つ彩崎廉さんがデビュー権をゲット。今期の連載入れ替えが巷の噂通り“3in・2out”なら、本誌の読み切り枠が削られてしまいますので、受賞作掲載は「赤マル」夏号という事になりそうですね。
 「まんカレ」の佳作受賞者・森田滋さんは、「サンデー」のメルマガによれば、今回が生涯3作目の完成原稿とのこと。まだ若いですし、今後の“伸び”に期待です。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:新連載1本(後半分に収録)

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年21・22合併号☆

 ◎読み切り『BE A HERO!!』作画:吉川雅之 

 ●作者略歴
 手持ちのデータが不足しており、生年月日・年齢は確認出来ず。
 98年に「天下一漫画賞」で入選を受賞し、その受賞作『テコンドー師範!! 鏡くんのカカト落とし』週刊本誌98年35号に掲載されてデビュー。それ以来、テコンドー物一筋の創作活動で「赤マル」00年冬号、週刊本誌01年29号に読み切りを発表。そして、03年には週刊本誌に掲載された作品『キックスメガミックス』が連載化。しかしこれは1クール14回で打ち切り終了
 その後、約1年のブランクを経て、04年48号にてボクシング物の『マッストレート』で復帰。今回は題材を柔道に変えての新作読み切り。

 についての所見
 相変わらず、細い線が中心の洗練されていない絵柄ではありますが、以前に比べると無駄な線が随分と減って、見易くなった印象です。以前は真正面のアングル以外の絵が非常に雑だったのですが、今回の作品を読んだ限りでは、その辺も概ね修正されていると思います。
 ただ、これも以前からの課題であった動的表現を伴うシーンがまだ未完成といった感じです。激しい動きを表現するのは良いのですが、そこで何が起こっているのか、どの技をどのように仕掛けているのかが今一つ把握し辛い面があり、これは格闘モノを扱うのならば必ず修正しなければならない部分でしょう。
 絵については門外漢の駒木が具体的なアドバイスをするのは随分とおこがましい話ですが、もう少し“激しい動きを説明するスローモーション映像”を挿入してはどうかと思います。(今週号で言えば、『アイシールド21』のRB全員抜き競演シーンがお手本でしょうか)

 ストーリー&設定についての所見
 まず、長らくの課題であった“読み手が感情移入出来るキャラクターを作る”というテーマにおいて、随分と研究と工夫が凝らされた跡が窺えました。この意欲は買いたいですね。
 とはいえ、複雑な性格とコンプレックスのせいで“乱暴で卑屈”という主人公の性格は、やはり読み手の感情移入を促進するには、まだ少々微妙ではなかったでしょうか。また、ライバルの性格も、“天真爛漫・天然ボケ”というより、むしろ“シナリオの都合によって作者主導で都合良くスイッチされる性格”という風に感じられました。
 何と言うか、「読者に嫌われないようなキャラにしよう」という作者の思惑が、必要以上に見えてしまって、少々興醒めではないかな…と思うのですが、どうでしょうか。また、どうせこだわるなら「嫌われない」じゃなくて「好かれる」を追求してもらいたいところではあります。

 あと残念だったのはプロットですね。色々と設定面で趣向を凝らしていても、こちらが手垢が付き過ぎた「技を1〜2個覚えただけの素人が、その道のエキスパートを怒りのパワーで薙ぎ倒す」では、結局“どこにでもある平凡な話”になってしまいます。
 吉川さんの作品を見ていると、どうもいつもシナリオが借り物というか、昔から使い古されたパターンをそのまま使い回しているだけに思えて、これが不満でなりません。 

 今回の評価
 努力と「自分の作品を良くしたい」という意気込みは感じられますが、それが作品のクオリティに繋がっていないかな……といったところ。評価はB寄りB−としたいと思います。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 ネット界隈では2週間ほど前から未確認情報が流されていましたが、今週号で『武装錬金』が連載終了となりました。完結編を「赤マル」夏号に発表する猶予は与えられたものの、山積みになった伏線を全て回収する事は事実上不可能で、有り体に言って実に中途半端な打ち切りと言わざるを得ないでしょう。

 それにしても青天の霹靂と言うべき打ち切りであります。掲載順(=アンケート人気)は連載以来下位に低迷していたとは言え、単行本の初版は推定30万部台後半。年に4冊出版するとして、軽く年間4億円以上の安定した売上げが計算できる“優良債権”であるはずのこの作品がバッサリと切られてしまう…というのは、普通は有り得ない話ですからね。
 この初版部数、現在の中堅層の厚い「ジャンプ」ではそう目立ちませんが、「サンデー」や「マガジン」なら主力勢に次ぐ4〜5番手、その他のマンガ誌なら“ドル箱作品”の1つとして厚遇に処される数字ですからね。恐らく、「週刊少年ジャンプ」以外の業界関係者の方は揃って「有り得ねえ!」とか叫んでらっしゃるのではないでしょうか(笑)。
 ただ、この作品と入れ替わりに始まる新連載陣が、どうやら内水融(『賈允』)坂本裕次郎(『タカヤ』)中島諭宇樹(『切法師』)…というラインナップらしいんですよね。3人とも当ゼミでA−以上の評価獲得経験者(しかも2人は04年度『コミックアワード』部門賞受賞者)というだけでも、マニア受けはするかも知れないけどメガヒットはしなさそうじゃないですか(笑)。
 それを考えると、編集部的にはこれ以上「ジャンプ」の“地味な実力派比率”を高めるわけにはいかなかったんだろうなぁ…と。「商業的には『ミスフル』の方が伸び悩んでいるが、雑誌の構成を考えると、高年齢層人気に偏っている『武装錬金』を」…という考え方は、ある意味自然でもありますからね。まぁこれも、他誌からすればメチャクチャ贅沢な悩みである事は間違いないでしょうけど。

 ……さてさて、愚痴は尽きませんが、個人的な話としても、今回の打ち切りは「残念」の一言に尽きます。
 もっとも、当ゼミの評価と読者人気や商業的成績がリンクしない事は今に始まった事ではありませんので、打ち切りそのものは遺憾ながら致し方無いと思ってます。ただ、この作品に関しては、もっと良い作品になって、もっと恵まれた結末を迎える事が出来るだけのポテンシャルを秘めているはずだ…という確信にも似た思いが未だに残っています。それだけに打ち切りは無念でならないのです。

 この『武装錬金』については、駒木は新連載第3回のレビュー時に、世界観やキャラクター設定の完成度の高さを激賞しつつも、以下の懸念材料を指摘していました。

──そのハードルのまず1つ目は、「週刊少年マンガ誌の限界」す。
 週刊ペースでハイクオリティなシナリオを展開させ続けてゆくのは、いくら経験豊富な和月さんと言えども至難の業でしょうし、それ以前に“少年マンガ”というジャンルには表現面での制約がついて回ります。それが理由でシナリオ展開の不自然さが出てしまった場合、この作品が本来持っている可能性は損なわれてしまう事でしょう。

 そして2つ目のハードルが「ジャンプシステムによる弊害」です。
 これはもう多言は無用でしょう。作家主導による“円満終了”が極めて難しい条件の中で、名作となるに相応しいエンディングに到達出来るかどうかは微妙と言わざるを得ません。

03年7月9日付・当講座講義レジュメより)

 ……手前味噌ながら、そのまんまですね(苦笑)。これだけで、この作品の回顧が済んでしまうような気もします。まったく、こんな予想なんて当てたくなかったです。

 第3回の時点で駒木が抱いた『武装錬金』の印象は、誤解を恐れず言うと「よく出来た伝奇物エロゲー」でした。「抜群の正義感を持つ少年が、卓越した特殊技能を持つが心と過去に闇を持つ少女の戦いに巻き込まれる形で出会う」…という、変形の“ボーイ・ミーツ・ガール”物です。
 もう少し詳しく説明すると、共通の友人との日常生活の中で恋心を育む過程を大きな柱として描きつつ、要所では非日常世界を舞台に変えて、強大な敵との激しいバトル。そのバトルでは絶望的な戦力差で大ピンチに陥るものの、主人公の正義感とヒロインを想う心が奇跡を生む……といった感じのストーリー。
 ──駒木の表現力不足もあって、かなり安っぽく聞こえるかも知れませんが、ともかくも『武装錬金』は、こういうフォーマットに乗っかってこそ、持ち前のポテンシャルを最大限に活かせるのではないか…と、駒木は考えたわけです。

 しかしながら、この作品は作者サイドが余りにも“バトル系少年マンガ”を意識し過ぎたために、読者の多数が求めたとされる(単行本のライナーノーツより)日常生活が疎かになってしまう結果に。また、斗貴子の“ヘソチラ”を描くだけで心中にピンクタイフーンが吹き荒れる超奥手の作者(同じくライナーノーツより)にかかっては、カズキと斗貴子の関係も終盤までお茶を濁した状態で放置されてしまいました。
 また、日常編を疎かにしてまで重きを置いたはずのバトルシーンも、作者本人も「バトルになると人気が落ちる」と認める失敗の連続に。戦術面の駆け引きが甘かった上、傑作バトル物のセオリーである“両者ギリギリの状態になってからのせめぎ合い”も殆ど見られず、全体としてかなり底の浅い戦闘描写に終始した感は否めませんでした。
 それでも、各エピソードのクライマックス〜エンディングシーンや、インターミッション的な日常編では、巧みな脚本・演出力に支えられた“ツボ”を突いたシーンが随所で見受けられ、この作品の持つポテンシャルの豊かさを垣間見せてはくれました。これらの良シーンを目にする度、「この作品は、やはり良く出来ている」と思えたのですが、その後にはまた、迫力に欠けるバトルシーンの連続に……。まったくもって『武装錬金』は、実にもどかしい作品だったと思います。
 最終回にして、カズキと斗貴子は漸く恋人同士になったわけですが、連載当初から待ち望んでいたシーンを目の当たりにしても、駒木の胸に去来するのは空しさだけでした。これからストーリーが加速度的に良くなって行く画期となるはずの場面が、余りにも唐突な打ち切り終了のラストシーンになってしまうとは、何という皮肉なのでしょうか……。

 この作品の最終評価は完結編終了後まで保留します。「赤マル」で与えられるであろうページ数で“軟着陸”は望むべくもありませんが、評価を下すのは、せめて最後を見届けてからにしたいのです。
 
 ──さて、今週は『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』が連載20回、『魔人探偵脳噛ネウロ』が連載10回を迎えましたので、これら2作品について評価の変更も実施しておきましょう。

 ◎『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』作画:西義之
 旧評価:A−寄りA新評価:A寄りA−

 一時はバトル系作品に路線変更かと思われたのですが、第10回までの評判が良かったのか、今後は“感動路線”と“VSエンチュー編”の両睨みで進行してゆくようですね。まぁどちらにしろ、次号で巻頭カラーを獲得する程に人気は高値安定傾向にあるようです。
 作品のクオリティも、相変わらずの高水準を保っています。「ジャンプ」作品にしては随分と地味な印象がありますが、エピソードごとのクライマックスシーンの盛り上げで上手くフォロー出来ている感じですね。
 ただ、起承転結の“承”の部分がやや冗長になったり、セリフ回しで頂けない場面があったりと、最近やや粗も目立って来た感も。そこで、一旦評価をA−に下げ、その上で更に10回様子見を続けたいと思います。

 ◎『魔人探偵脳噛ネウロ』作画:松井優征
 旧評価:B新評価:B(据置)

 クオリティそのものには変化がありませんので、一応評価は据え置きとしました。
 ただ、もうこの作品は、“ミステリ風エンターテインメント”の形式を利用しながら、主人公サイドの遣り取りや、犯人役キャラのキレっぷりを楽しむ…という、いわゆる“ネタ漫画”になってしまった感がありますね。ストーリーやトリックのクオリティは別にして、勝手に読者が楽しんでいる状態になっているようです。
 当ゼミ的には作家の技量で読者を“楽しませ”てこそナンボですので、勝手に“楽しまれ”ている状態では、高い評価は出せません。この作品については、とりあえず今回で評価確定とし、大幅な作風変更があった時のみ、評価の変更を行うものとします。


 ──というわけで、今週前半分のゼミをお届けしました。『武装錬金』については多少私情も混じってしまったかな…と、今更ながらに恥ずかしい思いをしていますが、第2回「コミックアワード」最優秀長編作品賞受賞作という肩書きに免じて、どうかご容赦下さい。ではでは。

 


 

2005年度第6回講義
4月24日(日) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第4週分)

 講義の遅延、情けない限りであります。昨晩は高校講師の仕事関連で終電まで呑みの付き合いがありまして、講義の準備どころじゃありませんでした。他のヨタ話はともかく、マンガ評論は酔っ払ったままでやるのは失礼ですしね……。
 これがモデム配り時代以前なら、呑み会も1次会で無理矢理抜け出して来るだけの間違った根性があったものですが、まぁこれも年のせいでしょうか(笑)。

 ──これに関連するような、しないような、なんですが、今年は昼間の仕事の方が去年よりも忙しくなる事が確定しまして、こちらに割ける時間が更に減ってしまいます。簡単に言うと、拘束時間が1日平均1〜2時間長くなってしまうので、その分研究室に居られる時間が削られるわけです。
 そのため、この「現代マンガ時評」においては、今週から“チェックポイント”欄を縮小し、原則として連載10回単位の評価見直しや、最終回掲載時の総括をするためだけのコーナーとさせて頂きます。元々“チェックポイント”は、前・後半分割化した際に内容を水増しするために始めた中途半端なコーナーですので、現状を考えると思い切って削ってしまった方が良いのかな…という気もしますしね。
 今後、その手のフリートークは冒頭か締め括りでネタっぽくお話することにします。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報 

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(21・22合併号)『BE A HERO!!』作画:吉川雅之)が掲載されます。
 吉川さんは、デビュー以来、テコンドー等の格闘技を題材に扱って来た作家さん。前作の読み切りではボクシングとボディビルの融合という、男色ディーノが武者震いしそうな設定でしたが、今回も予告カットを見る限りでは、かなり男臭い作品になりそうですね(笑)。

 ◎「週刊少年サンデー」では次号(22・23合併号)より『クロス・ゲーム』作画:あだち充)が新連載となります。
 つい先日に連載を終えたばかりの重鎮・あだち充さんですが、非常に早い段階での復帰、しかも『H2』以来の野球モノと来ました。連載終了後2ヶ月半での復帰となると、ひょっとすると前作終了以前から既にこの作品へのバトンタッチが内定していたのかも知れませんね。
 どうやら「サンデー」では『じゃじゃ馬グルーミン★up!』以来の4姉妹モノにもなるようですが、このパターンは男読者が必ず姉妹の内の誰かに“引っ掛かる”ので、キャッチーではあるんですよね。手間隙は異様にかかるんでしょうけど。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…1本
 「ジャンプ」:対象作無し
 「サンデー」
:新連載第3回1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年20号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週の「ジャンプ」は読み切り・新連載が無いのでレビューは無し。この欄で『ユート』の連載第10回・評価見直しのみをお届けします。

 ◎『ユート』作:ほったゆみ/画:河野慶
 旧評価:A寄りA−新評価:A−寄りB+

 1ランクの大幅ダウン修正となりました。
 評価下降の理由は、ストーリー上のヤマの小ささと、読み手にカタルシスを与える場面が極端に少ない事。連載開始以来10回、単行本にして1冊分以上を費やして、主人公が殆ど良い目に遇っていないというのは、エンターテインメントとしては大きな問題だと思うのです。
 脚本やストーリーテリングの巧みさは依然としてAクラスですし、絵の方も標準以上のレヴェルを保っていると思うのですが、肝心のシナリオがここまで弱含みでは厳しいです。今回敢えてAクラス評価から落とした上で、もうしばらく経過観察したいと思います。

☆「週刊少年サンデー」2005年21号☆

 ◎新連載(連載再開)第3回『うえきの法則プラス』作画:福地翼《連載再開第1回掲載時の評価:A−寄りB+

 についての所見(第1回時点からの推移)
 絵そのものについては前回のレビュー時点から大きな変化はありませんが、改めて人物の表情の微妙な表現が良くなったなぁ……としみじみ思います。第1回の森あいの泣き顔といい、第2回の植木の怒り顔といい、実写なら「名演技」と言われるであろうシーンがコンスタントに飛び出すようになって来ましたね。
 こういう文字・文章で表現するには困難を極める情景を、僅か一枚の絵で表現する事が出来るのがマンガという表現媒体の長所。そういう意味でこの作品は、純粋なイラスト用の画力では計れない“マンガ画力”が相当高い水準に達していると申し上げて良いでしょう。

 ストーリー&設定についての所見(第1回時点からの推移)
 こちらについても、前回のレビュー時点から大きな変化は認められません。ただし、こちらは良い面も悪い面も、です。

 憧れる強さと共感できる弱さを併せ持つ、読み手の感情移入をスムーズに誘導できる主人公。そして、その性格設定を活かした目的意識のハッキリしたストーリー展開は、明快で読後感も良いものに仕上がっています。これは大変に良い部分です。
 しかしながら、文字情報やセリフで一から十まで説明した上で話を進めようとする悪癖、これがどうしても抜け切れていない印象で、ストーリー展開がどうにもギクシャクしてしまっています。もう少し隠喩的な演出を散りばめたり、セリフ抜きでも絵だけで分かるような場面を増やしたりしてはどうだろうかと思うのです。
 あくまで私見ですが、この作品に限って言えば、「頭の鈍臭い読者は置いていくぞ」位のスタンスで良いのではないかと。それが出来るだけの画力は既に備わっているのですしね。
 
 現時点での評価
 良い意味で平行線ということで、評価はA−寄りB+のまま現状維持とします。連載10回時点の評価見直しまでに、どう進化するのか、今から楽しみです。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週はこのコーナーで採り上げる対象になる作品はありません。
 雑誌全体をザッと読んだ感想としては、「吾郎みたいな主人公だと、イチローをあそこまで嫌な奴にしないと話が成立しないんだな」と、作家さんの苦労に思いを馳せたりしました。

 

 ……というわけで、今週はショート・バージョンでお送り致しました。来週分では、新連載に読み切りのレビュー、そして恐らくは大変に気の重くなる最終回の総括と、内容充実の一本になるのではないかと思います。では、また。

 


 

2005年度第5回講義
4月20日(水) 文化人類学(大食い関連)
「祝・大食い復活! テレビ東京系『大食い王決定戦』TV観戦レポート」(2)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→ 第1回

 お待たせしました。「大食い王決定戦」の大会後半のレポートをお届けします。
 TV中継放映後の巷の反応を見ていると、良くも悪くも関心度が低いのが寂しい限りではありますが、この講義がフードファイト復興に僅かでも役立てば……と思う次第です。

 それでは、レポートへ移ります。今回も少々ドライな“大食い競技解説者”モードに入りますので、文体は常体、人物名は原則として敬称略となります。


 ☆3回戦(本戦2日目朝)・水戸 納豆巻き30分勝負

 ※ルール:1本20cmの納豆巻き(100g)を、30分でどれだけ完食出来るかを競う。最下位1名が失格。

 赤阪尊子VS藤田操の伝説の名勝負でもお馴染み、「大食い選手権」時代からの定番食材・巻寿司で争われる3回戦。具が好き嫌いの極端に分かれる納豆だったが、主催者側の目論みは外れて(?)、極端に納豆が苦手そうな選手は居なかった。

 スタート良く飛び出したのはやはり藤堂。今大会のペースメーカー役がすっかり板について来た。他の選手も自分のペースで順調に本数を重ねてゆく。
 5分経過。1位・藤堂(10本)、2位・泉(9本)、3位・山本(8本)、4位・嘉数(7本)、5位・山口(6本)
 このラウンドは野外ロケという事で、周囲には偶然居合わせた一般人のギャラリーが。中村有志レポーターが「本当に食べてるでしょう?」と定番のアオりを入れる。各選手もそれに応えて相変わらず各々のペースを維持しており、積み重なった木ゲタは選手の姿を隠してしまうほど。
 20本一番乗りの時点で暫定首位は泉に交代。以下、1本以上の差で山本、藤堂。
 15分経過。1位・泉(23本)、2位グループ・山本・藤堂(21本)、4位・嘉数(18本)、5位・山口(15本)
 20分を過ぎた辺りで、勝負の行方は、上位グループと下位グループの二手に分かれた格好。まず上位グループでは7本強/5分のペースを維持する泉に、徐々にペースを上げて来た山本が追いついて共に30本突破。藤堂はクルージング気味にペースを落として3本差の3位。一方の下位グループでは、嘉数22本に対して山口20本と、にわかに差が詰まり始めた。
 25分経過。上位グループはクルージング状態でペースダウンだが、下位2名は嘉数25本、山口24本となって予断を許さない状況へ。
 そして残り時間50秒の時点で、山口が28本目を先に完食して遂に逆転。嘉数も僅差で追いすがり、両者懸命のラストスパート。ここに来て早食い状態になったのを見て、中村レポーターが「焦らないで!」「負けても帰るだけなんだから!」と、3年前では到底考えられない叫びを投げかけるが、競り合う選手2人はますますヒートアップ。
 残り10秒で山口が29本完食したが、5秒後には嘉数も29本完食し、更には終了間際運ばれて来た30本目にすかさず1口齧り付いた。99年のオールスター戦決勝の岸義行を髣髴とさせる土壇場での大逆転劇に、山口はただただ呆然とするばかり。
 だが、ここでオフィシャルによる物言いが入ってVTR判定に。リプレイ映像には、中村レポーターが試合終了の太鼓を叩いた一瞬後に巻寿司を食い千切っている嘉数の姿が映し出されていた。これにより嘉数の“1齧り”は無効と判断され、記録は山口と同じく29本ジャスト。オフィシャルの現場判断により、この3回戦は単独最下位無しにより全員通過となった。

1位通過 山本卓弥 36本(3.6kg)
2位通過 泉拓人 34本(3.4kg)
3位通過 藤堂敬太 30本(3.0kg)
4位通過 嘉数千恵 29本(2.9kg)
山口尚久 29本(2.9kg)

 上位3人は終盤完全にクルージング状態に入っていたが、いつの間にか山本がトップ通過。競輪の番手チョイ差しのような余裕綽々の戦い振りで、この辺り、自分の胃容量を知り尽くしている人間は強い。
 もっとも、2位・も、ペースを落とさなければ、もっと記録を伸ばせていたであろうし、この結果にもショックは全く無いはずだ。3位の藤堂も同様だが、ただ彼の場合はペースの落ち方がやや急で、後半戦の戦い方も消極的に過ぎた印象もあるのが気になるところ。
 そして、辛うじてラウンド通過を果たした嘉数、山口の2人だが、上位3人との差は明確になる一方で、準決勝での苦戦がひたすら懸念される結果となってしまった。

 ☆準決勝(本戦2日目夜)・江ノ島「江之島亭」しらす丼45分勝負

 ※ルール:1杯300gの釜揚げしらす丼を、45分でどれだけ完食出来るかを競う。下位2名が失格。

 準決勝は、これも「大食い選手権」以来の定番である、御飯物・丼勝負。毎回好記録が飛び出すラウンドとあってか、山本の口から「20杯(6kg)完食宣言」が飛び出した。
 これには周囲からも感嘆の声が漏れるが、3年前に彼の「6.7kg完食→リタイヤ」を目の当たりにしている中村レポーターだけは、やや渋い顔(笑)。
 一方、3回戦では渋太い粘りを見せた山口は、ここに来て欲が出て来たか「脱・一般人」宣言。元々は山口が使い始めた「一般人」というフレーズだが、今大会では敗北を悟った選手がこの言葉を口にするのが定番化しており、山口のこの宣言は、即ち勝利宣言という事になる。

 序盤のペースを握ったのは、やはり藤堂で、このラウンドでも最初の「おかわり」コール。以下1杯完食は、泉、嘉数、山本、山口の順。
 しかし3杯完食の時点で、早くも泉、山本が藤堂に追いついて2人によるトップ争いへ。どうやら準決勝に至って藤堂の3番手格が定着してしまった様子。
 22分30秒(ハーフタイム)経過。1位グループ・山本、泉(9杯)、3位・藤堂(8杯)、4位・嘉数(6杯)、5位・山口(5杯)
 各選手の地力の差が如実に完食量に反映されて来た。山口は「満腹とまでは行かないが、胃が疲れて(食が進まない)……」と苦しい胸ならぬ腹の内を告白。これまでにも数多の強豪選手の箸を止めて来た準決勝の“魔力”が遂に牙を剥き始めたか。
 10杯完食一番乗りは山本。泉もこれに続くが、藤堂は完全に流れに乗り遅れた。
 35分経過。1位・山本(14杯)、2位・泉(12杯)、3位・藤堂(10杯)、4位・嘉数(8杯)、5位・山口(7杯)
 各選手間の差が広がって勝負の妙味は失われたが、山本は「20杯完食宣言」を守るべくペースダウンせず。そして他の選手たちも箸を止めようとせず、大食い競技のセオリーである「スローペースで確実に量をこなす」を地で行く競技姿勢で最後まで戦い抜いた。この見事なクリーンファイト&フェアプレイには心から賞賛を送りたい。

1位通過 山本卓弥 17杯(5.1kg)
2位通過 泉拓人 14杯(4.2kg)
3位通過 藤堂敬太 12杯(3.6kg)
4位落選 嘉数千恵 9杯(2.7kg)
5位落選 山口尚久 7杯(2.1kg)

 ようやくリミッターを外したか、山本が5kgオーバーの好記録で堂々のトップ通過。とはいえ、かつては楽々クリアしていた6kgにまるで辿り着けなかったのは少々不満ではある、長期ブランクが影響しているのだろうが……。
 はこのラウンドでも山本に明確な差を付けられての2位。放映された映像からでは、どこまで本気でマークした記録か判らないのだが、山本がこの直後に「準決勝で他の2人の力は見切った」という旨の宣言をしていた事を考えると、少なくとも当事者からは胃容量の限界を窺い知れるような食べっぷりだったのだろう。
 3位の藤堂は、このラウンドも序盤こそ快調に飛ばしたものの中盤以降は3位を無難にキープしただけで終わった。決勝進出は果たしたものの、優勝争いからは数歩後退した感がある。
 敗退の2人は、やはりと言うか3回戦で最下位争いを演じた嘉数山口。ハッキリとした実力差を見せ付けられたためか、両者悔しがる素振りも見せずサバサバと敗戦の弁を述べていた。
 なお、嘉数はこの後、4月に行われたローカル系の蕎麦大食い競技会で見事に女性の部優勝を果たしている。今後も精力的な活動を続けていくようだ。

 

 ☆決勝(本戦3日目)・神奈川「なんつッ亭」ラーメン60分勝負

 ※ルール:規定の具をトッピングされたラーメンを、60分でどれだけ完食出来るかを競う。なお、火傷防止の名目で、スープ及び少量のネギは残しても良いことになっている。

 決勝は伝統の丼物麺類60分勝負。競技の見栄えといい、積み上がった丼の壮観さといい、やはり決勝はラーメンでないと盛り上がらない。
 さて、今回は決勝前夜に選手インタビューが行われた。山本は先述したように「準決勝で他の2人の実力は見切ったので、優勝できると思います」と早くも勝利宣言。これを聞かされた泉は、さすがに不快感を隠さず「自分はまだ本気を出していない」と反論。藤堂も山本の力を認めつつも「山本さんは猫舌なので、熱いラーメンは苦手のはず。こちらにもチャンスはある」と虎視眈々であった。

 ──では、決勝の競技の模様をお送りする。
 1杯目を真っ先に完食したのは、やはり藤堂。2分20秒のラップタイムは過去の大会と比較しても好記録の部類だが、ややオーバーペースか。以下、32秒差で山本、更に7秒差で泉が続く。
 2杯目も藤堂がトップ通過。しかしこの1杯には3分36秒を要しており、瞬く間に差が縮まって来た。2位・山本とは3秒差、3位の泉とも6秒差しかない。
 10分経過。完食杯数は3者とも3杯。
 4杯目完食時点のトップも辛うじて藤堂が守り抜く。2位は泉で僅か3秒差、山本は猫舌を誤魔化すためのお茶をペットボトルからコップに注ぐ時間がロスとなって、藤堂から29秒差開いた。
 5杯目、ついに泉が藤堂に5秒差を付けてトップ逆転。山本も急追して藤堂と同タイムの2位につける。
 6杯目、泉が1杯2分30秒のラップタイムで山本との差を20秒に広げる。藤堂はこの1杯に4分を費やすスローダウンで、早くも泉とほぼ1杯の差が開いた
 7杯目も泉が快調に飛ばして首位キープ。山本との差は28秒。
 20分経過。1位グループ・泉、山本(9杯)、3位・藤堂(8杯)。山本は早くも2リットル入りペットボトルのお茶を飲み干した。いくら飲料とはいえ、胃容量的には大きなハンデキャップになってしまったか。
 10杯目完食も泉がトップ。山本との差は37秒まで開いた。11杯目完食時でも31秒差をキープする。
 40分経過。1位グループ・泉、山本(12杯)、3位・藤堂(9杯)。藤堂は完全に勝負権を失った。
 13杯目の完食時点でも相変わらずトップは泉で、山本との差は28秒差と膠着模様。しかし、山本はここでズボンのベルトを緩めると突然スパートを開始。差が急激に詰まり始め、風雲急を告げた。
 14杯目を先に完食したのは何と山本。この1杯を2分59秒でまとめ、泉を逆転して更に11秒の差をつけた。
 15杯目、山本のリードは20秒に広がる。泉はサングラスを外して“本気モード”に入るも、ペースを乱された上に胃容量が遂に限界へ。この1杯は何とかクリアしたものの、16杯目のラーメンを前にしてピタリと箸が止まった。
 大勢は決し、残り時間は山本のウイニング・ラン状態。ややペースを落としつつも競技終了間際には17杯目を完食して笑顔で「おかわり
」コール。終了数秒前に卓上に運ばれたラーメンのチャーシューを1枚口に入れた所で、全ての終わりを告げる太鼓の音が響き渡った。

優勝 山本 卓弥 17杯
準優勝 泉 拓人 15杯
3位 藤堂 敬太 10杯

 優勝は大本命・山本卓弥あの忌まわしきドクター・ストップの悪夢から3年、あの日に置き忘れた栄冠を漸く頭に戴いた。全ラウンドを通じて余裕綽々の戦い振りで、意気盛んなルーキー達を横綱相撲で寄り切った。
 特に決勝は相手の胃容量を把握した上で勝負処まで力を温存しておき、一気のスパートで逆転して大勢まで決めてしまうという見事な戦い振り。昨年、お好み焼き大食い大会で射手矢侑大にしてやられた“先行チョイ差し”を、相手を変えて意趣返しして見せた辺りには、このメンバーでの格の違いを見せつけた感がある。
 過去の彼の成績と比較すると、(ペースを抑え気味にしていたとはいえ)記録はやや平凡で、本人も大会終了後に「久々の大食いで、思ったよりも食べられなかった」と語っていたが、衰えてなおこのパフォーマンスかと逆に感嘆させられてしまう。

 準優勝は泉拓人。最後は完敗に終わったが、それでも新人戦の平均的な優勝者とほぼ同格のパフォーマンスを見せてくれた。今後も出場者のレヴェル次第では好成績が期待出来る逸材であると言える。

 3位の藤堂敬太は、胃容量の限界もあったが、序盤のハイペースが後になって大きく響いたようだ。いくら何でも01年のオールスター戦の白田、射手矢以上に飛ばしていては、後が続くはずも無い。

 ……こうして、復活第1回となった今大会は山本卓弥の優勝で幕を閉じた。中断前最後の大会の優勝候補筆頭が、再開第1回目の優勝者となる…という連続性は、不可抗力の産物とは言え、我々コアなフードファイト・ファンにとって非常に感慨深いものであった。前回のレポート冒頭で述べた通り、主催者側のスタンスに不満は多々あれど、全体的に見れば成功の部類に入る大会だったのではないだろうか。
 フードファイト界を取り巻く環境の厳しさは相も変わらず、メジャー系競技会が復活してなお3年間の“暗黒時代”の重みを痛感する現在ではある。が、とりあえず今は復興の第一歩を踏みしめた事を喜びたいというのが、この厳しい3年間を乗り越えて来た関係者やファンの偽らざる気持ちであろう。

 我等が愛する大食いは永遠に不滅なり。こう高らかに宣言し、今回のレポートのまとめとさせて頂こう。


 ……というわけで、3年ぶりのTV関連レポート、如何でしたでしょうか。楽しんで頂けたら幸いです。
 次回の文化人類学講義は、7月のネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の前後になると思います。では、また。(この項終わり)

 


 

2005年度第4回講義
4月16日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第3週分)

 いきなりで恐縮ですが、今週から「週刊少年マガジン」で始まった新連載・『ヴィンランド・サガ』作画:幸村誠)をご覧になりましたでしょうか?
 中世ヨーロッパの10世紀末のフランス王国(名目上で987年成立、それ以前は西フランク王国)が舞台、しかも主人公は北方民族・ヴァイキングの少年。……このマニアックこの上ない設定の歴史物マンガが、商業主義の権化のような「週刊少年マガジン」に載って、しかも凄ぇ面白いというんですから、二重三重で驚きです。
 戦闘員の装備や、生臭さが全身から漂うカトリックの坊主など、歴史考証もかなり慎重に配慮している様子で、こちらも大変素晴らしいです。この時代の戦争にしては少々戦闘で人が死に過ぎるような気もするのですが、まぁ『はじめの一歩』みたいな激し過ぎる試合が現実のボクシングでは殆ど観られないのと同じと考えれば苦になりません。

 『プラネテス』で有名な幸村誠さんの作品、しかし初めての週刊連載。ネット界隈でも大きな期待と共に一抹の不安も抱かれているようですが、もし第1回のクオリティが今後も続くなら、これはとんでもない傑作になるやも知れません。
 しばらく様子を見て「どうやらこれはA評価が出せそうだ」となった場合、「読書メモ」枠で採り上げて第4回「コミックアワード」のワイルドカード枠に推薦したいと思います。普段「マガジン」に拒否反応を出している方も、どうぞ今一度コンビニ等でご確認を。お薦めです。

 ──と、いきなり講談社の回し者になったような挨拶で失礼しました(笑)。公務多忙で遅くなりましたが、今週の「現代マンガ時評」をお送りします。
 そう言えば、このゼミは集英社「ジャンプ」と小学館「サンデー」の作品を中心にレビューしているわけですが、肝心の「コミックアワード」では、3回中2度も講談社勢(しかも「モーニング」と「アフタヌーン」)がグランプリを受賞してるんですよね。我ながら不思議です。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 今週は、新連載・読み切りについての情報、及び新人賞関連の情報は特に有りませんでした。
 なお、「週刊少年ジャンプ」では次号(20号)より『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健)が連載再開となりますが、現時点では改めてレビューを行う予定はありません。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年19号☆

 ◎読み切り『大泥棒ポルタ』作画:北嶋一喜

 ●作者略歴
 1985年8月6日生まれの現在19歳。現役大学生。
 01年8月期「天下一漫画賞」で特別賞を受賞して“新人予備軍”入りした後、03年3月期「天下一」で準入選を受賞し、受賞作掲載によるデビュー権を獲得する。
 この権利を行使したデビュー作は「赤マル」03年夏号掲載の『SEA SIDE JET CITY』。その後、1年4ヶ月のブランクを経て「赤マル」05年冬(新年)号に今作と同名の『大泥棒ポルタ』を発表。今作は、その「赤マル」版から設定とストーリーに大幅な変更を加えたリメイク作品。

 についての所見
 
「赤マル」冬号の掲載からまだ3ヵ月という事で、大きな絵柄の変化といったものは感じられませんね。キャリアの割に洗練されたタッチの人物作画は好印象が持てますし、動的表現などの特殊効果もマズマズこなせていると思います。
 ただ、問題点も前回同様といったところで、構図の単調さ、人物の表情の微妙な変化が上手く表現できていない所など、画面にメリハリが欠けた部分がありました。また、後で述べる場面転換の単調さも災いしてか、背景の“スカスカ感”が否めません。大まかに見たところ、半分以上のコマ数が真っ白か真っ黒かトーンのベタ貼りで占められており、先述した構図の単調さが余計に際立ってしまった嫌いもありました。

 北嶋さんが「天下一漫画賞」で準入選を受賞した決め手は、確かダイナミックな構図と演出だったはずなんですが……。ここで今一度初心に戻り、自分の独創性の豊かさを再確認すべきなのかも知れませんね。

 ストーリー・設定についての所見
 まず冒頭のシーンから。この部分に関しては、テンポの良さといい、モノローグの挟み方といい、よくネームが練られていて、なかなかの出来映えに仕上がっていると思います。
 ところが、タイトル(扉ページ)を挟んでから後が良くありません。ページをめくってもめくっても、セリフによる世界観と設定の説明が続くばかりで、非常に淡白な内容に陥ってしまいました。末にはメインシナリオの進行まで文字情報の段取りだけで済ませてしまっており、「この作品がマンガという媒体で描かれる必要性」が希薄になってしまっています。

 また、作品全体の出来映えを左右する大きなカギと言える、宝物を盗み出すためのトリックに大きな問題点がありました。作品内では「7時55分と針が示す大時計を、時計ごと傾けて8時00分に見せかける」…という事になっているのですが、これは実際にはそうなりません。
 お判りでしょうか、長針が55分を指している時計を傾けて00分に見せかけようする場合、短針も一緒に1時間分ズレてしまいます。つまり、7時55分の時計を傾けて誤魔化そうとすると、時計の針は9時00分を指す事になってしまうはずなのです。有り得ない事実を根拠にしたトリックは、もはやトリックとは言えません。致命傷です。
 あと、ネタ振りの部分で「変装では見破られて終わりだ」と言っておきながら、結局は変装をして姿を誤魔化している…というのも如何なものでしょうか。こんな杜撰なトリックをメインに据えるぐらいなら、冒頭で見せたようなアクションで華麗に盗み出した方がまだ良かったのではないかと思います。

 結局のところ、力を入れるべき所を完全に間違えてしまった作品…といったところでしょうか。結果的にトリックも人間の心を描いたドラマも中途半端で終わってしまって、残念なクオリティの作品になってしまったような気がします。

 今回の評価
 評価はトリックの致命的欠陥で大幅に割り引いてB−とします。「赤マル」作品が週刊本誌に掲載された場合、かなりの確率で連載化への道を辿る事になりますが、この作品の場合に限っては時期尚早ではないでしょうか。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週も『銀魂』はギャグが絶好調。言語センスの鋭さは相変わらずですし、今回は“間”の取り方が特に絶妙でした。個人的には、もう少しストーリー要素が強いエピソードの方が良いと思うのですが、これはこれで非常に楽しめました。
 それにしても、「ジェットコースター乗ってる内にウンコしなきゃ殺す」と言う方も言う方なら、本当に座高が盛り上がるくらい脱糞しちゃう方もしちゃう方ですね(笑)。

 『ユート』は漸く大きくストーリーが動き出しました。女コーチが「阿寒スプリント1000M7位」「1分42秒58」というキーワードに大きく反応するあたりが“ほった節”というか、マイナー競技モノならではの巧いハッタリの利かせ方ですよね。
 ただ、どうも次回では、雄斗はスピードが乗り過ぎてコーナーを曲がりきれずに壁へ一直線…というシーンになってしまいそうですね。これでどうやって話を良い方向に盛り上げていくんでしょうか……?

 『HUNTER×HUNTER』は、全ページにまともな絵が入っているという非常に珍しい光景が。一体いつ以来の事なのか、誰か調べてくれませんか?(笑)
 ただ、絵の出来映えに反比例するように、内容が薄味になっているのが気になります。個人的には「絵が綺麗で内容ソコソコ」よりも「絵は殴り書きで内容抜群」という方がまだ嬉しいのですが、多分、自民党の派閥で言えば河野グループくらいの少数派なんでしょうね、そういう割り切り方をしている読者って。 

☆「週刊少年サンデー」2005年20号☆

◎読み切り『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』作画:曽山一寿

 ●作者略歴(参考資料:インターネット百科事典・ウィキペディア)
 1978年9月24日生まれ現在25歳
 第47回(00年後期)「小学館新人コミック大賞・児童部門」で佳作を受賞
 「コロコロコミック」誌において、01年に今作が読み切り掲載を経て連載化。好評のまま現在に至る05年には「小学館漫画賞」児童部門を受賞。
 なお、この作品の他、『探偵少年カゲマン』(作:山根あおおに)を「別冊コロコロコミック」誌に連載の経験あり。
 今回の作品は、“「サンデー」出張版”としての番外編的な扱いで、04年38号にも同様のパターンで読み切りが掲載されている。

 についての所見
 もはや上手いとか下手を超越した絵柄ですね。特に人物作画では、見た目のリアルさを徹底的に軽視し、ギャグを表現するための記号に落とし込んでいるように見受けられます。
 で、それでいて、線は非常にスッキリと洗練されており、見易い絵柄であるのが特徴ですね。喜怒哀楽の表現も実に的確ですし、なるほど、これならどんな幼い子供にでも作者側の表現上の意図が伝わる事でしょう。

 「サンデー」では明らかに浮いた絵ですし、純粋な一枚絵として見た場合には「高いクオリティ」と言うのに強い躊躇を覚える事も事実です。が、小学生以下を対象にしたギャグ作品の絵として極限まで完成されたものと言えるのではないでしょうか。

 ギャグについての所見
 “間”で獲る笑い、ページをまたいでのビジュアル一発ギャグは、徹底的に小学生を意識して判り易過ぎるくらいに判り易いネタを畳み掛けています。必要以上に豪快なコマ割りは、後述するように微妙な手法ではありますが、ネタ1つ毎のインパクトを増し、“笑わせ所”を読者全員に提示する効果は得られているでしょう。
 また、さりげなく技術を感じさせるのがツッコミのセリフでした。簡潔かつ的確と言えば良いのでしょうか、この脚本力は相当なものではないかと思います。

 ただ、やはり1コマの大きさが非常に大き過ぎ、ネタの絶対数・密度が物足りなくなったのは否めませんでした。ここまでネタ数が少ないと、1つのネタが笑えないだけで作品全体に対する印象も大きく異なってくるので、この点では相当損をしているのではないでしょうか。
 小学生相手に特化した内容のネタもそうですが、長所がそのまま短所になって跳ね返って来るようなタイプの作品であると言えますね。子供向けマンガとしては、既に完成の域に達してはいますが、万人受けするギャグ作品かどうかと問われると、首を傾げざるを得ないでしょう。
 
 今回の評価
 今回も評価はA−寄りB+に留めたいと思います。ただし、これはギャグを表現する技術を重視し、更に読者層を子供から大人まで幅広く…という前提でジャッジしたものであると付記しておきます。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 個人的には今週号の目次、『結界師』→『でんぢゃらすじーさん』という並びのコントラストが頭にガンガン響きました(笑)。頭を使って読ませるよう設計された作品の次に、頭を使わないでも笑えるよう設計された作品ですからね。
 それにしてもこの『結界師』の、読者の読解力に依存して、説明的なセリフやモノローグを極力排するやり方っていうのは、なかなかレヴェルの高い手法ですよね。

 『いでじゅう!』では、新キャラクター登場。テーマは“普通の人”でしょうか。いや、“変になりたい必要以上に普通の女の子”って既に変なのかな? ……んーまぁメガネっ子だから良しとしましょう。
 ちなみに、駒木の座右の銘は「明日出来る事は今日しない」「女性のメガネは七難隠す」であります。まぁ自分の周りには今日だろうが明日だろうが出来ない事だらけで往生してたりするわけですが。

 ──といったところで、ちょっと控えめですが今週はこれまで。2ch界隈の情報によると、今月中にもかなり覚悟を持って臨まなければならない事態がやって来そうですが、とりあえず先伸ばし出来る事は今日しない方針で邁進する予定ですので、どうか何卒(笑)。

 


 

2005年度第3回講義
4月15日(金) 文化人類学(大食い関連)
「祝・大食い復活! テレビ東京系『大食い王決定戦』TV観戦レポート」(1)

 今週初めに開講当初風の講義をお届けしましたが、今日は開講当初の看板講義であった大食い番組のTV観戦レポートをお届けします。時間の都合で2回に分けての実施となりますが、何卒ご了承下さい。
 しかし、これだけ大掛かりなフードファイト系番組のレポートとなると、02年春以来、実に3年ぶりとなりますか。駒木もテンションが上がるやら、当時のノウハウをサッパリ忘れていて戸惑うやら…なんですが、どうぞ最後までお付き合いをば。

 なお、レポート中の駒木は“大食い競技解説者”モードに入りますので、文体は常体、人物名は原則として敬称略となります。


 レポート本文に先立って、今回の大会についての概要と雑感を記しておこう。

 まず、今大会は「TVチャンピオン」枠を外れ、大会名称も「大食い選手権」ではなく「大食い王決定戦」となったが、競技の内容や進行フォーマットは「選手権」とほぼ同様のものだった。放送当日午後に「選手権」時代の出来事も絡めた番組宣伝も行っており、事実上の“続編”という認識で良さそうだ。
 司会のみのもんたを始め、出演タレントの大半が「大食い選手権」シリーズに馴染の薄いメンバーだったものの、放映時間の大部分で実況・レポート役の中村有志が出ずっぱりという事もあって、「選手権」時代からの視聴者にも大きな違和感無く映ったのではないだろうか。この他でも、必要最低限の“弄ってはいけない部分”には絶対に手を加えなかった制作サイドの意識の高さは、大変に好もしいものであった。

 「選手権」時代からマイナーチェンジを施された点としては、これまで前半ラウンドを中心に採用されていた完食勝負方式──制限時間内に規定量を完食した全員がラウンド通過となる──が事実上廃止された事が挙げられる。今回は全てのラウンドで、そのラウンドの記録下位1〜2名が脱落していく形式となった。大食い版の「アメリカ横断ウルトラクイズ」とでも言うべきだろうか。
 この件について公式なアナウンスは無かったが、完食勝負方式では、無用の早食いを助長するだけでなく、制限時間ギリギリになって限界を超えた量を無理に胃に詰め込む選手が現れる可能性があり、その場合は様々な面でリスクを伴う…と制作サイドが判断したためではないだろうか。良く言えば選手の安全管理の行き届いた施策という事になろうか。

 ただ、番組全般に、いかにも腫れ物に触るようにして大食い競技という“火種”を扱っているような雰囲気が漂っていたのは、仕方ない話とは言えやや興醒めであった。「健康第一」「(死亡事故の原因となった)早食いは禁止」というアナウンスはともかくとして、一生懸命頑張っている選手に対し、「焦らないで」「負けてもいいじゃない」と水を差すのは、さすがに……。
 また、選手公募の際は「過去に大食い番組の本戦出場経験なし」という条件を付けておきながら、何故か大阪予選に3年前の「大食い選手権」本戦出場選手が参加していて、しかも不自然なまでに過去の経歴に触れない…という、すぐバレる嘘(演出?)をカマす悪癖まで「選手権」時代と変わりなしだったのも残念だった。特に今回出場した山本&嘉数の両選手は、前回出場時には共に不本意な過程で敗退しているだけに、“リベンジ組”としてドラマティックに扱えば、もっと自然な形で話題が盛り上がったはずである。この辺のセンスの悪い所もテレビ東京流と言ってしまえばそれまでなのだが……。 

◆東京地区予選◆

 ☆「桃太郎すし本店」寿司大食い(30分)

 ※ルール:2カン1皿の寿司を30分でどれだけ食べられるかを競う。寿司は2カン1皿単位で、ネタを自由に注文できる。
 出場者75人(一般参加69人+タレント6名?)を3班に分けて競技を行い、各班最上位者と女性最上位1名は無条件で本戦出場。また、その他に成績優秀者数名から面接審査をして1名が選ばれたとのこと
(※「夕刊フジ」紙のレポートによる)

 3年ぶりの大食い競技会の幕開けは、やはり東京は高円寺にある「桃太郎すし本店」から。大食い競技の歴史に名を残した“英雄”の殆どが、この店から巣立って行った、大食い競技会の聖地とも言うべき店である。

 さて、競技中の様子だが、スタート当初こそ“賑やかし担当”のタレント・プロレスラー勢がハイペースで寿司を頬張り気勢を上げたものの、10分もすれば当然のように失速。中盤以降は、平均ペースでうずたかく皿を積み重ねてゆく“本物”のルーキー達に主役が移った。
 特に今回は、大食い向きの体型である痩せ型選手の台頭が目立った。来るべき本戦の好パフォーマンスが期待出来そうな、充実した予選会だったと言える。

 ──東京予選からの本戦出場者は以下の通り。なお、個々に付けたコメントは映像資料を参考に駒木が独断で記した。
 なお、今回の予選では「寿司1皿100g」と表記されたが、過去の「桃太郎すし」の記録と、その記録を残した選手の胃容量・スピードが余りにも噛み合わない事などから、例外的に参考外とさせて頂いた。デビュー間もない時期の高橋信也・立石将弘が、7kg以上の固形物を30分で完食出来たとはとても考え難いのだ。

1位通過 泉 拓人 60皿
2位通過 土屋 智子 50皿
3位通過 山口 尚久 49皿
4位通過 横森 弘一 46皿

 ※参考記録:名選手の「桃太郎すし」予選通過記録
 白田信行85皿/高橋信也78皿/立石将弘74皿/射手矢侑大69皿/藤田操63皿/赤阪尊子62皿/小林尊60皿

 ◎泉拓人…年齢非公開、170cm42kg。
 1食あたり米5合、しかも土鍋を茶碗代わりに使うという豪快な食生活をしているが、体脂肪率は何と8%。
 いかにも「バンドやってます」な容姿で自称アーティストを名乗り、本戦にもギター持参でサービス精神旺盛(しかも空回り?)な所を見せるが、素性は謎のまま。いかにも「大食い選手権」的なキャラクターばかりが目に付くが、予選記録はかつての名選手と遜色の無いもので、能力的には新人戦では上位クラスと言えよう。

 ◎土屋智子…21歳。
 「呉服屋の箱入り娘」という触れこみだが、競技中の質問に対する受け答えを見ていると、やや大人しい“普通の素人さん”といった感じ。好物は菓子パン類で、2時間ドラマを観ている内に軽く15個は平らげてしまう。

 ◎山口尚久…30歳。
 元は肥満児だったが、体質の変化か、今は食欲は衰えぬままで一般人と変わらぬ体型に。「自分は一般人」と自称するが、予選記録と体型などを考えると明らかに普通ではない(笑)。選手紹介VTRでも巨大なカツ丼、カツカレーを楽々平らげていた。

 ◎横森弘一…38歳。
 現役レスキュー隊員。見た目大食い体型ではあるが、記録最下位の上に30代後半という年齢は、やはりネックになるだろうと思われた。

◆大阪地区予選◆

 ☆「十八番」たこ焼き大食い(30分)

 ※ルール:6個1皿のたこ焼き(150g)を30分でどれだけ食べられるかを競う。完食個数上位3名が本戦に進出。

 3年前の前回大会に続いて2度目の開催となった大阪予選。正確な出場者数は不明だが、ゼッケン番号が90番台まで確認出来たので、賑やかしのタレント勢を含めて最低でも100人弱の参加者があったのではないか。
 競技は玉石混交のレベルを反映して、中盤以降は実力差がクッキリと分かれる展開となった。(恐らくは主催者側の要請で)紛れ込んでいた前回「大食い選手権」本戦出場者の2名・山本卓弥、嘉数千恵の2名が余裕を持って抜け出す中、新人の藤堂敬太が懸命に食い下がって好パフォーマンスを見せつける。終わってみれば東京予選よりもレヴェルの高い記録水準となった。 

1位通過 山本卓弥 30皿+2個(4.55kg)
2位通過 藤堂敬太 30皿(4.5kg)
3位通過 嘉数千恵 24皿+1個(3.425kg)

 ◎山本卓弥…21歳。3年前のデータでは169cm56kg。
 放送では触れられなかったが、3年前の「TVチャンピオン・全国大食い選手権・日本縦断最強新人戦」の出場者。各ラウンドで完食重量5〜6kg台の記録を連発し、他の選手を寄せ付けない実力を見せ付けるも、消化器系のトラブル(緊張の余り胃が働かず、7kg以上の食材が一晩経っても消化されなかった)に見舞われて無念の途中棄権を余儀無くされた。
 大会後も1年に1度のペースでローカル系大会に出場し、昨春には、大阪のお好み焼き屋「ゆかり」の1時間お好み焼き大食い選手権「お好みアタック」で、19枚3/4完食の好記録を残している。今回でも選手紹介VTRで、オムライス3kgとパフェ2kgを完食するなど、衰えない能力の一端を見せつけた。

 ◎藤堂敬太…21歳。
 大食いという事を除けば、大阪のどこにでもいる普通の大学生…といった感じ。選手紹介VTRでは2kgの巨大カレーうどんを20分以内で完食というパフォーマンス。

 ◎嘉数千恵…3年前のデータでは155cm50kg。
 山本と同様、3年前の「大食い選手権」の本戦出場者。福岡予選を悠々1位で通過するも、本戦1回戦で競技中に体調不良のため途中棄権となってしまった。
 彼女もローカル系フードファイト大会に出場するなど精力的な活動をしており、今回は万全の体調で3年前のリベンジを期す。

◆大会本戦◆

 ☆1回戦(本戦初日午前)・宇都宮「みんみん」ギョーザ30分勝負

 ※ルール:6個1皿(150g)のギョーザを30分でどれだけ完食出来るかを競う。最下位1名が失格。

 スタート直後から各選手勢いよくギョーザを口に運んでゆくが、中でも土屋、泉、藤堂の3選手が速い。目まぐるしく順位を入れ替えながら皿を重ねてゆき、10分も経たない内に藤堂が10皿1番乗り。土屋、泉も続く。
 10分経過。1位グループ・藤堂、土屋、泉(11皿)、4位・山本(9皿)、5位グループ・嘉数・山口(8皿)、7位・横森(7皿)
 中盤戦に突入しても上位3選手は快調。1皿1分のペースを崩さない。15分直前で藤堂は15皿完食。間もなく土屋、泉も皿数で並んで追いすがる。スロースターターの山本は1皿差の4位と伸び悩むが、美味そうにギョーザを食べる笑顔には「余裕」の2文字が浮かんでいる。最下位争いは嘉数11皿に対して横森9皿。
 20分経過。1位・藤堂(19皿)、2位グループ・土屋、泉(18皿)、4位・山本(17皿)、5位・山口(15皿)、6位・嘉数(13皿)、7位・横森(12皿)
 20皿一番乗りは、やはり藤堂。それに土屋、泉、山本の順で続く。この辺りから上位陣はクルージングに入ったか、ややペースダウン。逆に最下位を巡る嘉数・横森の争いが激しくなって来た。しかし、一時は1皿差にまで迫った横森も、嘉数がラストスパートをかけると全く対応出来ず。残り1分で再び2皿差にビハインドを広げられ、無念の表情で競技終了の合図を聞いた。

1位通過 藤堂敬太 24皿(3.6kg)
泉拓人 24皿(3.6kg)
3位通過 山本卓弥 22皿(3.3kg)
4位通過 土屋智子 21皿(3.15kg)
5位通過 山口尚久 19皿(2.85kg)
6位通過 嘉数千恵 18皿(2.7kg)
7位落選 横森弘一 15皿(2.25kg)

 藤堂・泉の東・西ルーキー2人が1、2位を分け合った。30分でギョーザ3kg台は極めて平凡な記録ながら、終盤のスローペースを見る限りでは、まだまだ余裕残しの戦い振り。この時点では能力の底が知れない。
 実力最右翼の山本は3位に甘んじたが、どう考えても全く本気を出していない様子で、ここは「とりあえず軽食を済ませた」といったところか。4位の土屋も最後は殆ど箸を止めているくらいのクルージング状態だった。
 この上位4人には多少離されたものの、山口、嘉数も危なげなく皿数を重ねていった。
 不名誉な失格者第1号となってしまったのは横森とはいえ、このスローペースで“追走一杯”ではどうしようもないだろう。地力の差としか言いようが無い。

 

 ☆2回戦(本戦初日夜)・前橋「とんとん広場」キャベツ千切り45分勝負

 ※ルール:本来は豚カツの付け合せとして出されるキャベツ(1皿150g)を、45分でどれだけ完食出来るかを競う。最下位1名が失格。なお、キャベツと一緒に豚カツも供されるが、こちらはいくら食べても記録には無関係。

 大量に食べている所を観ても、全く羨ましく思えない食材を…という、「日曜ビッグスペシャル」時代からの伝統を受け継いだテーマ食材で争われる2回戦。各選手、豚カツには目もくれず、ひたすらキャベツを塩やドレッシングで味付けしてバリバリと噛み砕いてゆく。
 このラウンドもスタートを決めたのは藤堂。スピードの違いで押し出されるように先頭に立つ。しかし泉、山本も大差なく追走し、この3人がトップグループを形成。またしても順位を絶え間なく入れ替えながら、早くもラウンド通過は安泰の様相だ。
 15分経過。1位・藤堂(7皿)、2位グループ・山本、泉(6皿)、4位グループ・土屋、山口、嘉数(5皿)
 「豚カツの熱でキャベツをしならせて食べ易くする」という奇策を披露した泉が8皿完食の時点でトップに立ち、逆に藤堂はペースに翳りが見えた。山本はトップに立つ事こそ無いが、余力残しのまま少差で2〜3番手をキープしている感じ。
 前半戦はカヤの外に置かれていた感のあった山口、嘉数もいつの間にかペースを上げ、10皿完食時点では藤堂をも射程圏に捉えた。その一方で、固い食材が苦手な土屋がこの辺りからスローダウン。豚カツを口にして歓喜の声を上げる他の5名とは対照的に、2皿差の最下位となって早くもピンチに立たされた。
 35分経過。1位グループ・泉、山本(13皿)、3位グループ・藤堂、嘉数、山口(12皿)、6位・土屋(10皿弱)
 既に大勢は決し、興味はトップ争いに移行。残り5分になると山本が一旦は泉をかわして暫定首位に立つ場面もあったが、このラウンドも最後まで余力残しで無理せず自重。結局は泉とラウンド1位の座を分け合って45分の競技を終えた。

1位通過 山本卓弥 16皿(2.4kg)
泉拓人 16皿(2.4kg)
3位通過 藤堂敬太 15皿(2.25kg)
4位通過 嘉数千恵 14皿(2.1kg)
山口尚久 14皿(2.1kg)
6位落選 土屋智子 11皿(1.95kg)

 今度は東西の予選トップの2名、山本が首位を分け合った。特殊な食材だったために記録は伸び悩んだが、このラウンドも余裕綽々の通過といったところ。特に山本は、3年前に大会初日で無理をし過ぎてリタイアに追い込まれた経験から、意識的にセーブしているようにも見受けられた。
 後半失速して3位となった藤堂は、スピードの持続力にやや難があるのだろうか、競技時間を持て余しているようだ。嘉数山口はこのラウンドもマイペースに皿を重ねて、ラウンド通過自体は楽に決めた。ただ、上位3人とは明らかな実力差が窺え、翌日の3回戦と準決勝に不安を残す結果となった。
 2回戦敗退となったのは土屋。1回戦での快調な食べっぷりとはまさに好対照で、固めの食材に泣かされて胃を余して負けた格好だった。


 ……といったところで今日のところは時間切れ。また週明けに3回戦から決勝までの模様をお届けします。どうぞお楽しみに。(次回へ続く

 


 

2005年度第2回講義
4月10日(日) 社会史
「プロ野球ガイジン助っ人“放火魔”投手・今昔」

 無性に血が騒いでしまいまして、今夜は急遽、業務縮小前のような講義を軽く一発カマしてみたいと思います。2年以上前からのベテラン受講者の方は、昔を懐かしんで、最近から受講されている方は当時のチャランポランなヌルい空気を今日の講義から感じ取って頂きたければ幸いであります。

 さて、今日の講義は、タイトルにも挙げました通り、プロ野球の外国人助っ人選手のお話であります。それも“放火魔”投手、つまり優れたリリーフ投手であるところの“火消し役”と対極の立場にある、勝ちゲームを力技で負けにしてしまうピッチャーについて、今昔を語ってみようかなと、まぁこういうわけです。

 ……あ、どこからともなく「ミセリ」という声が聞こえてきましたね。それも35年ローンで買った新築の家が欠陥住宅だった事を知らされたお父さんのような悲痛な声です。ゲート直後に馬券の軸にしてた馬から騎手が落馬した時の悲鳴にも似たトーンですね。
 いやはや、巨人ファンの皆さんは、さぞかし不安な日々を送られている事でしょう。モーニング娘。のパッとしないメンバーが、「卒業」の名の下にユニットから放り出される事が決まった時の不安度を「1ヤスダ」としますと、恐らく0.85ヤスダぐらいにはなっているのではないでしょうか。たかがプロ野球を観るだけで、人生真っ暗闇になりかねない程のストレスですね。

 すっかりネタバレしてしまいましたが、まずお話する“今”の話が、巨人の新入団外国人投手・ミセリの散々な働きぶりについてであります。
 プロ野球ファンの方なら既にご存知であると思いますが、この選手、日本球界に現れた久々の本格派ダメ外国人でありまして、今ではうぐいす嬢の「ピッチャー・ミセリ」のアナウンスで巨人ファンから悲鳴が上がる程の守護神ならぬ疫病神であります。

 このミセリ、メジャーリーグで35Sという微妙なキャリアを背負って来日したのでありますが、開幕前の早い段階からケチが付き始めました。何しろオープン戦8試合に登板して防御率5.63、しかもオープン戦終盤の西武戦では押し出し四球などで1回5失点という悲惨な成績。このままミセリを公式戦のマウンドに登板させた場合の行く末は、森進一・昌子夫妻の今後と等号で結ばれるであろうと容易に想像出来るものでありました。
 入団以来のミセリ関連ニュースを漁ってみても、ポジティブな観点で書かれた記事は2月11日付デイリースポーツの『虎007がミセリに警報発令』というモノが1つあるだけ。ちょっとしたプロ野球ファンならば、この時期のこの手の記事が東スポの1面見出しより当てにならないという事をご存知だと思います。春のお彼岸までのデイリースポーツの記事の通りにペナントレースが進行すれば、阪神タイガースは30年以上連続で日本一になっているに違いありません。グリーンウェルも三冠王になっていたでしょう。

 ……と、ちょっと話が逸れましたが、こうして開幕前からダメ外人の烙印が押される寸前のミセリだったのですが、これが何の因果か抑えの切り札役に任命されてしまいます。多分、巨人ファンの皆さんは、渡辺満里奈ファンが名倉潤に対して抱いたのと同じ感情を持たれたことでしょう。なんでお前やねん、と。
 そして開幕戦、9回1点リードの場面で登板したミセリは、大方の予想通りに大炎上。辛うじて一死を奪った後は、「ソロホームラン→自分のベースカバーが遅れての内野安打→2ランホームラン」という、中西一善元衆議院議員「セクシーチャーハン注文→路上でワイセツ行為→スナックで酒呑んでた所を逮捕」並の3連コンボを披露してマウンドを降りました。
 続いて登板したのはその4日後、延長12回裏同点の場面でした。この試合の勝ちは既に無く、1回を抑えれば何とか引き分けに持ち込める…という大事な場面であったわけですが、ここでもミセリはヒットと敬遠四球でランナーを2人貯めた後にスコンと3ランホームランを被弾し、巨人は敢え無くサヨナラ負けとなってしまいました。
 さすがの首脳陣も事の重大さに気付いたのか、この試合を最後にミセリは敗戦処理へ降格させられます。つまり“火消し屋”から“全焼家屋の撤去業者”へと転職させられたわけですが、その“転職”後初めての登板でも3ランホームランを打たれ、挙句の果てに「リトルリーグみたいな小さな球場でやっているからこういう結果につながった」とあらぬ方向へ逆ギレ。ここまで来ると見事です。

 この全身全霊を捧げてネタまみれになったミセリを、ネット界隈が放っておくわけがありません。2ch掲示板には、たちまち秀作のアスキーアートが乱舞してゆきました。
 ここで、駒木が特に楽しませてもらいましたアスキーアートを、2つばかり紹介させて頂きます。実際に作成された方、本当にお疲れ様です。

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    ミ   セ   リ   !   !   !  (_
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iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii  試 そ ミ .iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
iiiiiiiiiiiiiiiiiiiii|  合 こ セ  |iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
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     ,.r'"''、,┘        7;:;:;:;:;:;:;:;「
    ノ4 (⌒i        .}:;:;:;:;:;:;;/
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   (  .ミi!} l、         .」:;:;:丿
  クュ二二`Lっ)        `==='

 

 ……というわけで、天空の城も崩壊させる勢いのミセリでありますが、実は日本のプロ野球史には、彼をも凌ごうかという勢いの迷プレーヤーが存在しました。今から16年前、ヤクルトスワローズに入団したアイケルバーガーがその人です。

 今でこそ野村克也─古田敦也の師弟の尽力によって優勝争いも出来る球団になったスワローズですが、80年代のこの球団は典型的な弱小球団で、6位で当然、5位で御の字、4位は優勝に等しい大健闘…といった有様。幼少の頃からヤクルトファンだった駒木は、随分と肩身の狭い少年時代を過ごしたものでした。
 そんなヤクルトにやって来たアイケルバーガーは、来日当時、既に峠を越した35歳。「大リーグで2年15勝の実績を持つ本格派」という微妙な触れ込みも含めて、16年後のミセリに相通じる所もありますね。
 このアイケルバーガー、確かにMAX150km/hの球威ある速球を投げる本格派投手だったのですが、これが何とボール球限定の球威・球速ストライクを入れようと思ったら135km/hしか出ない上に、基本的にノーコンという、まったくもって困り果てた特殊能力者でありました。しかし当時のヤクルトに戦力の余剰などあるわけもなく、アイケルバーガーがクローザーを務める羽目になってしまいました。
 そして、開幕第2戦の9回裏、同点の場面で初登板したアイケルバーガーは遺憾なく特殊能力を発揮してしまいます。四球→フィルダースチョイス→敬遠四球で瞬く間に無死満塁のピンチを作った挙句、猛烈な球威の豪速球で味方のキャッチャーミットを弾くという暴挙。前代未聞の来日初登板サヨナラ暴投で1敗を記録します。
 その後の登板機会でもアイケルバーガーは、自滅に近い形で2敗、3敗と負けを積み重ね、最後はやはり敗戦処理に回されて5月20日に解雇され、アメリカへ帰国してゆきました。最終成績は登板8試合、0勝3敗0セーブ、投球回数7回2/3、被安打9、与四死球7、自責点6、防御率7.36。この後、彼の後釜にやって来たデービスという投手も4勝5敗7Sという不安定な成績だったのですが、前任者が前任者だけに、これでも非常に頼もしく思えたのを記憶しています。

 ──ところで今回講義をするに当たり、ミセリ&アイケルバーガー級のダメ投手を探してみたのですが、やはりそこまでの“逸材”はなかなか見つかりませんでした。
 候補としては、“博士号2つを持つ先発型投手”という、ピントのズレまくった謳い文句で来日するも、7試合で4敗を喫して帰国した阪神のクリーク(98年)や、ランナーを背負った途端に素人同然になるという弱点を持つ近鉄のシャウス(98年)などがいましたが、「バッター1人任せるのも不安」というところまでは行きません。まぁそんな欽ちゃん球団でもお払い箱になりそうなピッチャーが2人も存在している事だけでも凄いのですが……。

 あ、それでも全く違う意味で「使えない」選手が見つかりましたので、この講義のサゲ代わりに紹介したいと思います。

 その選手は62年に大毎(現:ロッテ)に来日した登録名をマニーという投手。登板成績も12試合29イニングに登板して勝ち負け無しの防御率3.72とパッとしなかったのですが、もっと使えなかったのは無難な登録名に隠された本名の方でした。その名も、

 

フランク・マンコヴィッチ

 

 ……いやはや、凄い名前ですね。コとヴの間を区切って読んでしまうと取り返しが付きません。しかもご丁寧に、上の名前も太めのソーセージを連想させる語感と来ています。さすがに実況中継(特にラジオ)の事を考えると本名は使えないですよね。
 それにしても、競馬の来日騎手にこういう名前の騎手がいなくて良かったです。「休日も熱心に練習用の木馬にまたがるマンコヴィッチ」なんてニュース、「週刊競馬ブック」じゃなくてコンビニでシール封印されてる雑誌のお話になってしまいますので……。

 ──などとオチが付いたのかどうか微妙ではありますが、これで講義を終わりたいと思います。失礼致しました。(この項終わり)

 


 

2005年度第1回講義
4月8日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第2週分)

 今年度最初の「現代マンガ時評」をお送りします。今年度から有名無実と化していた“分割版”のフレーズを削除致しまして、原則週1回の講義実施とさせて頂きたいと思います。
 実はこの4月から、また高校講師の方の担当授業時間数と朝イチ出勤日が増えまして、とてもじゃないですが週2回以上の講義実施が保証できません。長期休暇時等、余裕がある時は極力講義回数を増やしたいと思いますが……。
 開講3周年を過ぎ、駒木も年を重ねて色々な意味で無理が効かなくなって参りました。それでも今の自分が出来る事を着実に、確実に達成させてゆきたいと考えています。どうかご理解の程、宜しくお願い申し上げます。

 ……さて、固い話はここまでにしまして。
 いやー、それにしても酷かったですねアニメ版『アイシールド21』の声優陣
 栗田もプロ失格級でしたが、悲惨を極めたのは(やっぱり)ヒル魔。「イメージと違う」を通り越して、田村淳の声で喋ってるヒル魔ですからね、あれじゃあ。
 駒木はこれまで、周囲から湧き上がる「なんでロンドンブーツやねん」という至極ごもっともな怨嗟の声に対しても「1度聞いてみるまでは保留しましょうよ」と諌めて来たのですが、その保留も即座に解除というところであります。
 駒木個人が認識している声優の史上最悪キャスティングは、15年以上前に某ローカル局で強行されたイカれたラジオドラマ企画の「天空人に生まれ変わった植村直己役:古谷徹」だったんですが、今回はその斜め上を突き抜けたんじゃないかとすら思える体たらくでありました。原作のお2人も「ジャンプ」の巻末コメントで田村淳をベタ褒めなさってましたが、今となっては大人の事情の根深さを痛感する次第であります。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報 

 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(19号)『大泥棒ポルタ』作画:北嶋一喜)が掲載されます。
 北嶋さんは当時の月例賞「天下一漫画賞」で準入選を受賞して本誌デビューを果たした若手作家さん。今回の読み切りは、「赤マル」で発表された同タイトル作品のリメイクとなるようです。

 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(20号)『絶体絶命でんじゃらすじーさん』作画:曽山一寿)が掲載されます。
 「今年度『小学館漫画賞』児童部門受賞」という箔を付けて、「コロコロコミック」から昨年に続いて2度目の“出張”となりました。
 やはり「コロコロコミック」読者を「週刊少年サンデー」に取り込むための戦略なんでしょうね。一度手にとってもらって「あ、『ガッシュ』も載ってるのか」とか思わせる…という。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り1本
 「サンデー」
:新連載1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年18号☆

 ◎読み切り『TEAM』作画:宮本和也

 作者略歴
 83年5月8日生まれの現在21歳
 04年下期「手塚賞」で準入選を受賞。今回は受賞後第1作でのデビューとなる。
 なお、00年9月期の月例賞最終候補者に同姓同名の名前がリストアップされているが、プロフィールの「マンガ歴1年ちょい」という記述を考えると別人か。

 についての所見
 率直に判断して、プロのマンガ家を名乗るには物足りない画力と申し上げざるを得ません。動的表現、背景処理、そしてディフォルメといった、マンガの表現に必要な技術が未熟ですし、人物作画でも非常に稚拙な部分が目立ちます。
 また、これらの画力の拙さがバスケの試合シーンのクオリティを、更には作品全体のクオリティをも大きく押し下げてしまったのは否定出来ないでしょう。これは評価を出す上では大きな減点材料となります。

 ストーリー&設定についての所見
 特に完成度が低い作品というわけではないのですが、設定といい、ストーリーといい、既存の同系作品からの影響を大変強く感じるのが何とも……といったところですね。やや乱暴に言ってしまえば、極めてオリジナリティの低い、“典型的少年向けスポーツ物マンガの焼き直し”的な作品という風に映りました。
 特にステロタイプな小悪党の敵役、予定調和的なクライマックスの展開はストーリーを随分と陳腐にしてしまった感が否めません。また、世界観や敵役の設定にリアリティを持たせる努力を怠ったのも“焼き直し臭”を強めているのではないでしょうか。
 あくまで個人的な印象ではありますが、これらのステロタイプな設定が、「話の展開上、必要に迫られて」ではなく、「少年マンガでこういうのがよくあるから」または「自分が好きな少年マンガのパターンだから」使われたような気がしてならないのです。そしてこれが“焼き直し”と思えてしまう理由でもあるのです。

 それでも、主要登場人物の設定は(ステロタイプには変わりありませんが)よく練られていると思います。天然ボケ系・野生児的ながら好感度の高い性格&使い勝手の悪い能力を持つ主人公がいて、この主人公と様々な面で相互補完関係にあるパートナーを配置する…という発想は、なかなか気が利いていると思います。
 また、多少“臭い”ところはありますが、脚本もなかなかよく考えられており、こちらも好感が持てます。稚拙な所が多々目立つ作品ながら、不思議と読後感が良いのは、こういった部分が有効に機能しているからではないでしょうか。

 今回の評価
 ストーリー・設定だけなら、何とかB評価は出せるクオリティにはあるのですが、画力で減点しなくてはなりませんので、B寄りB−とします。
 あと、評価には加味しませんでしたが、元バスケ部の駒木が見ると、このマンガのバスケ競技シーンは許し難いレヴェルの“迷シーン”に映る事を付記しておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 最近今更ながら「何やかんや言ってても、このマンガ凄ぇなあ」と思いながら読んでるのが『ONE PIECE』です。スケールの大きな、しかも綿密に練られたプロット、シリアスとコメディのバランス、読み手が混乱を来たさないギリギリの線を追求した登場人物数と、なるほど伊達に「ジャンプ」の看板背負ってるわけじゃないなぁ…なんて感じる事が多くなりました。
 今週も、メチャクチャ緊迫した場面だというのに、途中に2ページ挟んだギャグが全然違和感無く溶け込んでるんですよね。これまでの世界観とキャラ設定の積み重ねが、こういうさりげない場面で活きて来るんですね。

 連載開始以来最長のエピソードが終わったばかりの『銀魂』は、前回までのエピローグも兼ねて久々の一話完結型コメディ。これまで築き上げた設定をフルに活用しての、総決算的エピソードといったところでしょうか。腕の良い若手芸人のショートコントのような“傍観者からのボキャブラリー豊かなツッコミ”が冴えまくっていて、楽しませてもらいました。
 それにしても、「漫画の編集者みたいなみたいな事言いやがったヨ」っていう、作者の体験談的なメタなツッコミが良かったです。
 ……あ、作者の体験談的セリフと言えば、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』の、「〆切間際の記憶消失なぞよくある」ってのも、ちょっと考えたら怖いセリフですよね。そんなにキツいのかよ、週刊連載って…という。 

☆「週刊少年サンデー」2005年19号☆

 ◎新連載(連載再開)『うえきの法則プラス』作画:福地翼《正編終了時の評価:B+寄りB

 ●作者略歴
 1980年2月7日生まれの現在25歳
 98年12月・99年1月期「サンデーまんがカレッジ」で佳作受賞し“新人予備軍”入り。その後、2年半の雌伏期間を経て、『うえきの法則』でいきなりの週刊本誌連載デビュー。これが01年34号より04年46号まで3年強に及ぶ長期連載となる。
 今作は同作品アニメ化に伴う、事実上の第二部となる続編。

 についての所見
 絵柄そのものは正編の『うえき』終了時から大きく変わっていないのですが、以前に比べると線描が細かくなり、それにつれてシリアスとディフォルメのコントラストが大きくなって、随分と垢抜けた印象の絵になりました。表現の幅の広がり、そして好感度といった点においては長足の進歩と言えると思います。
 特に、人物の表情による心情描写がとても良くなったように感じられ、これは読み手の感情を揺さぶるのに大変有効に働く事でしょう。

 ストーリー&設定についての所見
 以前は極度に叙事的というか、極端な話、「“少年誌っぽい能力バトル”さえやっておけば……」的雰囲気すら漂っていたのが、この『うえきの法則』でした。ですが、今回のストーリーを見る限りでは、キチンと人間の心を描いたドラマが“主”になっており、良い意味での主客転倒が為されているようです。こちらも長足の進歩を遂げていると申し上げて良いでしょう。

 ただ、惜しむらくは、相変わらずバトルが小細工的な駆け引きに終始していて、“戦い”というより“底抜け脱線ゲーム”になってしまっているところ。もっと高度な戦略性や、戦力的劣勢を気迫でカバーしての大逆転劇など、今後はもっとスリリングな攻防が展開される事を望みます。
 また、キャラクターの心情表現を、行動による“描写”よりも、本人のセリフやモノローグなどの文字情報による“説明”に頼っているのも、やや興醒めを誘う要素ではなかったかと思います。同じ内容のセリフでも、キャラクター本人ではなく、その家族や友人に語らせるだけで随分と印象が違うものなので、この辺の工夫も今後は凝らしていって欲しいと思います。
 
 現時点での評価
 以前に比べると、作品全体のクオリティが明らかに上がっており、読んでて本当に嬉しい気分になりました。こういう出来事があると、評論活動をやってて良かったと思えるんですよね。
 評価は以前のものを一旦破棄して、改めてA−寄りB+としておきます。今回指摘した問題点が改善されてくれば、いつでもAクラス評価を出すつもりでいます。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週巻頭カラーの『名探偵コナン』では、平次から「お前の周り、事件起き過ぎとちゃうんか?」という、読者なら誰もが思っている事を代弁してくれる名ゼリフが出現して爆笑。やっぱり作者ご本人も同じ事を考えていたんですね。

 『ワイルドライフ』には、どこをどう見ても最近ラジオ局のオーナーになった小デブな人をモチーフにしたキャラが登場。ただ、このマンガの悪い所はネタを考えたら、その「思いついた」という時点で止まっちゃう所なんですよね。モデルにした人物像の掘り下げが甘くていけません。
 同じホリエモンをモチーフにしたキャラといえば、「近代麻雀」連載中の『むこうぶち』にも、“赤入り麻雀が強い、小天狗な若旦那”として森江という男が登場してます。こっちはもう、ホリエモンの不快な部分だけを見事に抜き出してて、読んでて楽しいったらありゃしません。今月15日発売の次号から2〜3回に渡って、この森江がケツの毛まで抜かれて人生破滅する様子が描かれるので、アンチ堀江の方は是非ご一読を。

 何だか手仕舞いのようにも見えた最近の『こわしや我聞』ですが、どうやら次のエピソードに続くことになりそうですね。それにしても、せっかく集めた仙術使いの面々がまるで影の薄いまんまだったのは残念でした。この辺の構成力を付ける所なども、掲載順巻末脱出のカギになって来ると思うのですが。


 ……と、いったところで今年度最初の講義をお届けしました。しばらくは次週の予定すら確約できない状況が続くと思いますが、そういった場合も「観察レポート」だけでも更新させるつもりですので、気が向いたら近況確認だけでも宜しくお願いします。では、また来週。


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