「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・5)
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講義一覧
2003年第37回講義 |
お約束通り、何とか週内のゼミ実施が叶いました。そのせいで談話室(BBS)の質疑応答が完全に滞ってしまっていましたが、こちらの方も来週からは可能な限り迅速な対応をして行きたいと思っています。 さて、今週は「週刊少年サンデー」30号のレビューとチェックポイントの他に、「読書メモ」として、先日発売になった月刊増刊・「少年サンデー・スーパー」7月号に掲載された『絶対可憐チルドレン』(作画:椎名高志)を紹介させてもらいます。 ……それではまず、いつも通り情報系の話題から。今日は「サンデー」来週号の読み切りについてのお知らせです。 来週の「サンデー」に掲載される読み切りは、先日の「小学館新人コミック大賞・少年部門」で大賞を受賞した『ゴッドルーキー』(作画:宇佐美道子)。各種増刊や系列雑誌が充実している「サンデー」では、新人さんのデビュー作が本誌に掲載される事は稀なのですが、今回は大抜擢の本誌デビューとなります。 ……では、「サンデー」今週号のレビューとチェックポイントへ。今週のレビュー対象作は読み切りレビューの1本のみとなります。 ☆「週刊少年サンデー」2003年30号☆ ◎読み切り『暗号名はBF』(作画:田中保左奈) ギャグ系短期集中連載も一段落つき、今週からストーリー系の読み切りシリーズが始まります。 今週の『暗号名はBF』(=コードネームはベイビーフェイス)の作者・田中保左奈さんは、椎名高志さんのアシスタント出身の若手作家さんです。
……さて、無駄話はそこまでにしまして、『暗号名はBF』の内容について述べてゆきましょう。 まず絵からですが、基本的には見栄えの良い好感度の高い絵柄だと思います。キャリアもキャリアですし、このまま即連載に突入したとしても全く問題無いでしょう。 次はストーリー・設定に関してですが、こちらも大筋はマズマズまとまっていると思います。 しかし、残念な事は、 ……というわけで評価。本来、ここまでまとまった作品ならA−からB+くらいの評価を出すところなんですが、やはりシナリオのキーポイントでの矛盾は大きな減点材料になってしまいます。やや辛口ながらB+寄りのBとしておきましょう。
巻末コメントのテーマは、「タイムスリップできるならどの時代で何をしたいか」。連載陣の皆さんは原始時代から未来までバラバラの回答。さすがは発想力溢れるマンガ家さんたちですね。 ◎『史上最強の弟子ケンイチ』(作画:松江名俊)【現時点での評価:B+/雑感】 ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 先週のこのコーナーで、「これでファールってのはどうよ?」って言ったんですが、完膚なきまでにファールでしたね(苦笑)。まぁ、よく考えたらあそこでホームランだと救いが無さ過ぎますか。 連載開始当初と比べて、勝のキャラが変わり過ぎ(笑)。 ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】 ついにネットアイドルネタまで引っ張り出して来ましたかー。……ていうか、美鳥のサイトはどう考えてもバーチャルネットアイドルサイトだと思うんですが(笑)。 ◇駒木博士の読書メモ(6月第4週後半)◇ ◎『絶対可憐チルドレン』(作画:椎名高志/『少年サンデー超増刊』7月号掲載) 先ほどは田中保左名さんの読み切り作品をレビューしましたが、今度はお師匠さんの番ですね。 椎名さんはご存知、長期連載作・『GS美神極楽大作戦!!』を代表作に持つベテラン作家さん。ただ、最近はヒット作に恵まれず、現在は「サンデー」系少年誌を“行脚”して、読み切りや短期集中連載をこなしています。そして、今回の増刊登場もその一環で、今月から3回連続で読み切りを発表するとの事です。 で、今回の3連続読み切りシリーズの第1弾ですが、これがもう、近頃の不振はどこへ行ったんだろうと言うような素晴らしい傑作でした! そして何よりこの作品の凄い所は、まだ1話目だと言うのに、既に以前いくつかのエピソードが描かれているかのような“(良い意味で)手垢のついた完成度”の高さです。既にファンサイトなどでは「この作品で連載を!」…という声も高いですが、確かにこれは今すぐにでも週刊連載で読んでみたい気持ちにさせられます。 “アンチ・アンチエスパー”といった、やや反則気味の設定など、“玉にキズ”的な要素も無きにしも非ずですが、それでもこの作品の圧倒的な完成度を揺るがせるには至りません。評価は文句ナシのA。今の所はシリーズ化の予定は無いようですが、是非とも続編、または連載化を実現させてもらいたいものです。素晴らしい作品を有難う御座いました。 ……というわけで、久しぶりに後味の良いゼミの締め括りが出来ました。この調子で来週以降も傑作揃いだと良いんですけどね。では、ゼミはまた来週。明日は競馬学特論でお会いしましょう。 |
2003年第36回講義 |
ようやく日程がほぼ正常になりました。今週の「現代マンガ時評」前半分をお送りします。 さて、今日は情報系の話題がありませんので、早速レビューとチェックポイントへ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年30号☆ ◎新連載『武装錬金』(作画:和月伸宏) 新連載シリーズも第3弾。いよいよ和月伸宏さんが登場です。先週に連載を開始したつの丸さん同様、打ち切りを喰らった後、長らくのブランクを経ての再起作となります。気分はタイトル奪回に賭ける元チャンピオンのプロボクサーといったところでしょうか。 そんな和月伸宏さんは1970年5月生まれの33歳。そのキャリアは、弱冠16歳にして87年上期の「手塚賞」で佳作を受賞をしたところから始まります。マンガの新人賞において、若いという事はそれだけで受賞への“武器”となりますが、それにしてもかなりの“若年受賞”と言えるでしょう。 待望の連載は94年19号からスタートとなりました。その作品は勿論、『るろうに剣心 ─明治剣客浪漫譚─』です。 これで売れっ子作家のポジションを確固たるものにした和月さんですが、2度目の連載作品となった『GUN BLAZE WEST』は無念の2クール・28回打ち切り(01年2号〜35号)。この時は実績作家の特権で“突き抜け”を免除されていましたので、事実上のストレート打ち切りでした。 そして今回は、本格デビュー以来初となる現代劇のアクション・ファンタジーで2度目のヒットを目指します。果たしてその内容はどんなものになっているでしょうか? ……というわけで、『武装錬金』についてお話を進めてゆきましょう。 まず絵に関してですが、絵柄そのものは以前と変わらないものの、『るろうに』の頃の荒っぽさは影を潜めて、完成度が随分と増しているような気がします。駒木は絵心が全く無い人間なので表現が難しいのですが、人物が人間っぽく描かれるようになった感じがするんですよね。 次はストーリー&設定に関して。 しかしこのパターン、流行している割には連載の成功には結びついておらず、それどころか短期打ち切りや人気低迷といった事態が相次いで発生しています。 ──では、この『武装錬金』の場合はどうでしょうか? まずキャラクターの構築については、とりあえず主人公・サブキャラ共に十分な合格点をあげられるでしょう。 次にシナリオの練りこみについてですが、連載第1回という事でまだ“様子見”の段階ながら、こちらもまぁ及第点は出せる出来具合になっていると思います。 ……というわけで、ややキャラクター偏重で“名作崩れの人気作”に陥る嫌いがあるものの、この『武装錬金』、第1回を見る限りではマズマズの好スタートを切ったと言えると思います。余程シナリオに難が出て来ない限り、長期連載も展望できる期待作になるのではないでしょうか。暫定評価はA−としておきましょう。 さて、今週からは後追いレビューもスタートです。まずは今回の新連載シリーズ第1弾の『キックス メガミックス』から。 あまりクドクドと苦言を呈したくないので、簡潔にまとめてしまいますが、今回に至っても、2週前に指摘した問題点は全く改善されず、それどころかますます泥沼にハマっていってしまっているような感さえ窺えます。 評価は戒めの意味も込めてCにダウンさせます。現在のところ、突き抜け候補一番手と考えて良いでしょう。というか、この作品を2クール以上続けさせたら、駒木は茨木編集長のセンスを本気で疑い始めると思います(笑)。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週は、読者投稿コーナー『ジャンプ団』の人気イラストコーナー・『まんが★王』があったんですが、このコーナー見ていつも思うのは、「これに出て来たキャラで本当にマンガ描いたら、メチャクチャつまんなそう」って事だったりします(苦笑)。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今週から登場した昆虫型生物の“女王”、てっきり『レベルE』に出てたマクバク星人かと思ったんですが、容姿を見比べると微妙に違うみたいですね。まぁよく考えたら、マクバク星人はメスしか産まないので、王じゃなくて女王を産むわけですし。 この作品における“ヤムチャ”的ポジションの石田クンも完全勝利。しかし相手が七番隊の序列第4位ってところが、他のメンバーとの微妙な力関係を表しているようないないような(笑)。 |
2003年第35回講義 |
お待たせしました。先週分のゼミ・後半分をお送りします。 次号(30号)に掲載されるのは、『暗号名はBF(コードネームはベイビーフェイス)』(作画:田中保左奈)。 しかし、今年の「サンデー」は「ジャンプ」以上に若手・新人作家さんの本誌登用をやっているのですが、その割には新連載の立ち上げは遅れているんですよねぇ。 ……では、レビューとチェックポイントへ。今日のレビュー対象作は、短期集中連載の総括レビュー1本です。チェックポイントと併せてどうぞ。 ☆「週刊少年サンデー」2003年29号☆
◎短期集中連載総括『ビープ!』(作画:しょうけしん)【第1回掲載時の評価:B】 先週のアオリで薄々とは予測出来てましたが、なんと3回で連載終了です。まさに短期集中ですねぇ。 ちなみに「サンデー」の場合、短期集中連載から本格連載へ移行するかどうかを1〜2週目の段階で決めてしまう事も多いので、3回で終了だからといって冷遇されているとはならないと思います。(駒木も含めて)読者って、表象的なモノから色々と憶測してしまうわけですが、どうもそういうのは大抵外れているみたいですね(苦笑)。 閑話休題。作品の内容について述べましょう。 これは第1回のレビューでも少し触れましたが、今回の連載では、ギャグで笑わせる以外に友情ドラマによる感動(言わば“泣かせ”)を盛り込もうという試みが為されていたように思えます。しかし、その試みは果たして成功したでしょうか? では何故、この試行は失敗に終わったのでしょうか。 ここで“泣かせ”のメカニズムについて詳しく述べる事は控えますが(無粋な行為ですし、駒木も小説家志望の端くれとして、切り札的な手の内はバラしたくありませんので)、読者を感動させようとするのであれば、もっと主人公に親近感を持たせ、3話かけて1本の感動的なシナリオを消化させるようなペースで進行するべきだったと思います。 ……というわけで、評価は“落第点”のB−に後退です。少なくとも意欲だけは窺えただけに、態勢を整えて再チャレンジしてもらいたいところですね。 おなじみ巻末コメントのテーマは、「一番怖かったホラー映画」。“最多得票”は4票で『女優霊』。駒木は未見ですが、筋金入りのホラー映画ファンでも、この映画は心底怖いそうですね。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 あと、今回忘れちゃいけないのが、モモリの柔道着+ブルマ。これはやっぱり『帯をギュっとね!』で、作者の河合克敏さんがムッツリスケベだという事が判明したあの名シーンのオマージュなんでしょうねぇ。 ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 さぁ、いよいよ大詰めですね。これで打球がファールって事は、ちょっと考え難い気がするんですが、どうなんでしょうね。 ◎『売ったれダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:A−/雑感】 ところで、先週の土曜日に母校の文化祭に行ったんですが、駒木が所属していたSF研究部(実態は文芸部+漫研+TRPG同好会)の後輩たちは、模擬店でマンガ喫茶をやって繁盛させてました。要は、日頃から身内でやっている事──各々でマンガを持ち寄って、茶を飲んで菓子を食べながら読む──をオープンにして金を取っただけなんですが(笑)。
いいなぁ、ごっつぁんゴール(笑)。
……というわけで、最後は訳が分からなくなってしまいましたが(苦笑)、今日はここまで。今週は少し時間が取れそうなので、出来るだけ頑張ってみる事にします。ではでは。 |
2003年第34回講義 |
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お待たせしました。今週前半分のゼミを開講します。 ──ではまず、情報系の話題から。今日の目玉は、4月期から新装なった月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の審査結果発表です。
今回最終候補以上に残った皆さんの過去のキャリアについては以下の通りです。 ◎佳作&十二傑賞受賞の岩本直輝さん…02年7月期「天下一漫画賞」で最終候補。 今回デビューが決まった岩本さん、昨年最終候補に残った時は「オリジナリティ」の項目以外は無印でしたが、今回は4つの項目に“◎”、または“○”印が付くという“躍進”。この1年間で飛躍的に力が伸びたという事でしょうか。若いって良いですねー(苦笑)。 ……それでは、今週号の「ジャンプ」のレビュー&チェックポイントをお送りします。レビュー対象作は、新連載と読み切り各1本の計2本です。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年29号☆ ◎新連載『ごっちゃんです!』(作画:つの丸) 4週連続新連載シリーズも2週目に入りました。ここからは“暗黒期”の「ジャンプ」で活躍した作家さんたちが次々と登場します。 つの丸さんは、第2回「GAGキング」で入賞し、91年春に増刊・本誌で相次いで読み切りを発表してデビュー。当時はサルを主役にしたギャグ作品を得意とし、92年には『モンモンモン』で初めての週刊連載を果たします(93年冬で打ち切られるまで83回連載)。 ……では、内容について述べていきましょう。 まず絵に関して。つの丸さんの画風は、パッと見だけだとメチャクチャ下手そうに見えるんですが、全体を見てみるとキッチリ丁寧な描写が出来ていたりするんですよね。よくよく考えれば、『マキバオー』では難易度の高い競馬シーンを巧みに描いていたわけですから、下手なはずが無いんですが。 次にストーリー・設定の面についてですが、こちらは「かなり実験的な事をやってるなぁ……」という印象を抱きました。 従来のこのスタイルの作品では、部のヒーローに祭り上げられた主人公は、必ず今の自分では周囲の期待に添えない事に苦悩します。そして、そこから努力と友情で這い上がっていく過程にスポットを当ててお話を展開させていきます。見事な少年マンガの図式ですね。 さて、問題はこの“実験”をどう評価するかですが、それはやはり、この作品を読者が「面白い」と思うかどうかにかかって来るのでしょう。が、その判断を下すのは、正直に言って大変に難しいところだったりします。 ……というわけで、今回の時点での評価は保留とします。評価を下せるのは第3回、ひょっとしたら最終回になるかも知れませんね。 今週の読み切り枠は、先日の03年度上期「手塚賞」で最高評点獲得&準入選受賞を果たした新鋭・坂本裕次郎さんの『KING OR CURSE』です。 さて、この作品についてなんですが、“作者紹介”のページに載っている「手塚賞」審査員のコメントが実に的を射ていまして、駒木が敢えて熱弁を振るう必要が無くなってしまいました(苦笑)。というわけで、ここでは審査員諸氏の講評を改めて紹介し、そこへ駒木の解説・意見を付記する形でレビューとしたいと思います。 それでは、まず絵に関しての講評から。
……まぁ、ご覧の通りですね(笑)。 絵に関してのコメントを残した4審査員全員が言及しているように、確かに誌面から飛び出すような迫力を感じさせるパワフルな絵柄だったと思います。 そして、ストーリー・設定について。こちらはさすが「手塚賞」だけあって、審査員全員からコメントが出ています。
まず高い評価を得たのは、「ストーリー全体のまとまりが良い」という事と、主人公に呪いをかけてハンデを背負わせる…というアイディアについてでした。 しかし審査員諸氏の中には、“少年誌のお約束”に甘んじず、シビアに作品の内容を分析した方もいらっしゃいます。さすがはこの辺り、厳しいプロの目という奴ですね。で、その結果、一読しただけでは見落とされてしまいそうな設定部分の矛盾点や、シナリオの自然さを演出するために犯したご都合主義が複数指摘されました。 特に指摘が目立ったのは、主人公・キングタイガーについてのキャラ造形の甘さ。大悪党なのに良い人みたいだ…という、下手をすれば致命傷になりかねない批判がなされています。これは「大悪党なのだが、呪いのせいで悪事を働く事をガマンする」という原則が全編でキチンと守られなかった事を言っているのだと思いますが、確かにそれは指摘の通りでしょう。 この他には「世界観や設定の説明が不足気味」…という評がありましたが、これは駒木が見たところ、説明不足じゃなくて考えて無かっただけ…という気がしています。そうでなければ、同じ“悪”の属性を持つ魔女が大悪党に呪いをかける…などといった、ディディール部分全体に漂う統一感の無さが説明できません。この辺りも今後の課題でしょうね。 ……というわけで総合的な評価なんですが、画力、ストーリーテリング力、共にまだまだ荒削りながら、一応は形になっているということでBとしておきます。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントでは、加地君也さんのコメントがネットで「不遜だ」と批判を受けたようですが、まぁ学校の成績なんてそんなもんですからねぇ。大体、物事を本気で勉強するようになるのは社会に出てからですし。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ◎『シャーマンキング』(作画:武井宏之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 もしかしたら、じゃなくて当たり前のように変態ですがな……と言おうとしたら、KTRさんに先を越されてしまいました(苦笑)。
今日のゼミはこれで終了です。後半分は、やっぱり来週回しかなー、といったところです。ではでは。 |
2003年第33回講義 |
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予告より3日遅れのゼミ後半分実施となりました。最近は謝ってばかりなんですが、本当に申し訳ないです。 最近は、講義と昼間のモデム配りだけならともかく、来月の採用試験の準備やら、来年春までに脱稿目標の長編小説執筆やらで、本当にいくら時間があっても足りない日々が続いているんですよね……。正直、今のところは週2回のゼミと競馬学特論(G1予想)を実施するだけで精一杯といったところです。まぁそういう状況に対応するための業務縮小だったんですが、現実は想定よりも厳しく襲いかかって来ている…というのが本音ですね。 それでは今週のゼミ・後半分を始めます。今日は「週刊少年サンデー」関連の話題の後に、お待たせしていた第2回「世界漫画愛読者大賞」の投票結果総括を実施します。物凄く時期外れかつ意義が薄いのは自覚していますが、一応のケジメとしてやらせてもらいます。どうせ今回限りで事実上廃止になる賞ですし、興味の薄い方はスルーして頂いて結構です(笑)。 ……というわけで、まずは「サンデー」関連のお話から。まずは情報系の話題としまして、月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の審査結果を紹介しておきます。
今回の受賞者さんの中で、過去の経歴を持っていると思われる方は「あと一歩で賞」の幻素さん。どうやら02年秋の「アフタヌーン四季賞」で準入選を受賞してらっしゃるみたいです。 ……それでは、日付の上ではもう先週になりました、「サンデー」28号のチェックポイントをお届けしておきます。
☆「週刊少年サンデー」2003年28号☆
巻末コメントのテーマは、「自分の漫画がドラマ化されるなら、どのキャラをどのタレントにやって欲しいですか?」 ◎『金色のガッシュ』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 雷句さんって、どんな時にでも笑いを取らなきゃ、本当に気が済まないんですね(笑)。「そこは笑わせるところじゃないだろう」って場面でも無理矢理ギャグに結びつけ、しかもシリアス系のテンションも落とさないと。そこまでこの人を駆り立てるのは一体何なんでしょうか(笑)。 ◎『ワイルドライフ』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B/雑感】 ウサギが食糞する事は知ってましたが、パンダもやるんですなー。しかも健康管理に影響してたとは初耳でした。 ◎『うえきの法則』(作画:福地翼)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 んー……。 「コマネチ!」 ……今度の敵は笑えるが強いんだぞ! ……って、別のマンガになっとりますがな。 それでは、これからは少しトーンを変えて、今日の講義後半、第2回「世界漫画愛読者大賞」投票結果総括に移りたいと思います。 特別企画:第2回「世界漫画愛読者大賞」総括 ……当講座、及び当ゼミの受講生の皆さんは既に十分ご存知でしょうが、改めてこの賞について、簡単ですが説明しておきましょう。 しかし、鳴り物入りで開催された第1回の「世界漫画愛読者大賞」は、業界に旋風を巻き起こすどころか失笑を買うような惨憺たる結果に終わってしまいます。 ……この第1回の詳しい顛末は、昨年実施した「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」に譲りますが、この時に(半ば間違って)各賞を受賞した“栄えある”作品たちのその後もまた、悲惨なものでありました。 そして、今回の第2回「世界漫画愛読者大賞」です。
……ご覧のように、『摩虎羅』が最高得票を獲得したものの、今回新設されたグランプリ信任投票で規定の信任率を得られませんでした。これにより、同作品は準グランプリとなって、グランプリは“該当作なし”という事になりました。 ……さて、これから今回の投票結果の全体像について多少の検証を加えていきたいのですが、ここで比較対象として、前回の読者投票結果も紹介しておきますね。
──こうして2回分の結果を見比べてみますと、第2回における各作品の得票数が、前回に比べて大幅にダウンしているのがよく分かりますね。 ……で、恐らくこれには2つの可能性が考えられます。 1点目は、単純に「コミックバンチ」の部数そのものが低下した事による影響です。 この業界の公称部数ほど当てにならないモノはないのですが、一時期に比べるとコンビニなどでの「バンチ」の入荷数が目減りしているのは明らかで、実売部数は漸減傾向にあると思われます。 そして2つ目の理由は、最終候補作のレヴェルが低く、読者の支持票を集められなかった事、及びそれに伴って「バンチ」読者に“「愛読者賞」離れ現象”が現れたのではないか…というものです。ちなみに駒木個人としてはこちらの方を重く見ています。 ここで皆さんに注目してもらいたいのは、グランプリ信任投票における投票総数2354票という数字です。 そう考えると、今回の最終候補8作品の中で、個別人気投票において、明らかに過半数の支持を受けていると思われるのは、なんと『軍神の惑星』と『鬼狂丸』の2作品のみ。それにしても得票率は6割以下です。 ここからは蛇足を承知で、2回分の投票結果から見た、平均的「バンチ」読者の好きな作品のタイプ、嫌いな作品のタイプを少しばかり分析してみたいと思います。ネット界隈ではコアな読者の評判に特化されがちですので、ここで一度、ライトな読者を含めた「バンチ読者」の最大公約数的な趣味・嗜好を把握してみるのも面白いでしょう。 で、まず全般的に言える事は、「奇抜さ・斬新さより古臭くても手堅い方を好む」、「暗いテーマの重厚な作品より、明るくてライトなエンターテインメント作品を好む」…という事ですね。 次に絵柄について。こちらでは、キャリアの浅さで絵が雑な作品はある程度“大目に見る”ものの、キャリアを重ねてクセの強すぎる絵柄で固まってしまった作品は全く相手にしない…という傾向が見て取れます。 あと、『華陀医仙』の低迷からは、「バンチ」読者は少年マンガを大人向けにしたモノは求めているが、そのものズバリの子供向けマンガは読みたくない…という事が分かりますね。 ──さて。以上の傾向を総合しますと、「バンチ」読者の最大公約数的な趣味・嗜好とは、
……というものになると思います。 では、ゼミを終わります。6月第3週分のゼミは、明日の深夜から準備にとりかかる予定です。 |
2003年第32回講義 |
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今週からしばらく、ゼミの前半分は修羅場必至の様相を呈して参りました。何しろ4週連続新連載の上に読み切り枠継続ですよ。まったく、駒木を殺す気ですか茨木編集長!(苦笑) 今や仮死状態のバーチャルネットアイドルちゆさんに、カレーライスが大好きな冨樫義博さんを応援してもらいたい気分で一杯です。 ……と、テキストサイト界の古語を駆使したところで(笑)、講義の内容へ突入しましょう。まぁ古語といっても2年しか経ってないんですけどね。ネット界隈の時代変遷って激しいなぁ……。 ──で、今日の情報系の話題ですが、まずはネーム部門が今や人気原作者の登竜門的存在となった、ストーリー作品オンリー・ページ数無制限の新人賞・「ストーリーキング」の審査結果発表からお届けしましょう。
受賞者の皆さんについての情報は以下の通りです。 ◎ネーム部門最終候補の久保咲さん…02年度「ストーリーキング」で奨励賞を受賞。 また、マンガ部門最終候補の岡春樹さんに関しては、02年度前期の「小学館新人コミック大賞・少年部門」の最終候補に同姓同名の名前が掲載されています。ただ、都道府県が違いますし(今回が埼玉で当時が東京)、年齢も微妙(今回が23歳なのに、当時は21歳)という事もあり、同一人物とは特定できませんでした。 ──今回もネーム部門が盛況でしたね。しかし、ネーム部門の受賞者さんたちって、自分でマンガ描いた方が良いくらい画力が高そうに見えるんですが……。 そして最後に残念なお知らせ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年28号☆ ◎新連載『キックスメガミックス』(作画:吉川雅之) いよいよ今週から始まりました“創刊35周年記念超特大新連載”の第1弾は、これが初の連載枠獲得となる若手作家・吉川雅之さんのテコンドー物作品・『キックスメガミックス』です。 で、今回はなんと2年の空白期間を経ての連載獲得です。 ……それではエエ加減にレビューの本題へ。 次にストーリー・設定面についてですが、こちらも課題を抱えてのスタートとなっています。 まずストーリー面について。こちらはまだ様子見の段階ながら、どうにもスケールの小さいのが気になります。 そして、設定にはストーリー以上に大きな問題があります。出て来る主要キャラの大半が読み手に嫌悪感を抱かせる要素をもったキャラである…という部分ですね。 暫定評価はC寄りB−としましょう。 今週は『ROOKIES』(作画:森田まさのり)の休載に伴う代原として、先週結果発表になった第58回「赤塚賞」の佳作受賞作・『そーじの時間』が掲載されました。作者の桜井のりおさんは弱冠17歳(来月誕生日ですが)で、現役高校生とのこと。 ──ではまず絵についてなんですが、これはかなり評価が難しいですね(苦笑)。 そして肝心のギャグですが、まず、ヒシヒシと感じさせられるのは、作者・桜井さんの意欲の高さでしょうね。敢えて労が多くて実りの少ないサイレント物に挑戦し、完璧とは言えないまでも、なかなかの水準まで到達させています。これはパクリ云々は抜きにしても評価できる部分でしょう。 評価は甘めかも知れませんがB評価とします。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今日は情報とレビューで時間を取られてしまったので、ちゃんとしたチェックポイントは1本だけ。 ◎『プリティフェイス』(作画:叶恭弘)【現時点での評価:B+/連載総括】
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2003年第31回講義 |
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またしても週を跨いでしまいました。本当に最近はどうもイカンですね。 さて、そういうわけですので時間を気にしながら早速、講義の本題へと移りましょう。 まず情報系の話題は、「少年サンデー」系の新人賞・「新人コミック大賞・少年部門」の審査結果発表からです。この賞は毎回「ジャンプ」の「手塚賞」「赤塚賞」と同じ週に発表されるんですが、やはり何か意識したものがあるんでしょうかね?
受賞者の皆さんについての情報は以下の通りです。 ◎大賞の宇佐美道子さん……「サンデーまんがカレッジ」02年12月&03年1月期で「あと一歩で賞」(最終候補)。現在、武村勇治さんのアシスタント(?)。 昨年の前期に、長年出ていなかった大賞が出た…と編集部(だけ)が大騒ぎしていたのが記憶に新しいところですが、今回も大賞が出ましたね。ただし、審査員の満場一致というわけでは無さそうですし、どういう基準で大賞に推されたのか、今一つピンと来ないところが難点でしょうか。 しかし、前回の発表の時も講義で言いましたが、4人の審査員の皆さん、意見が全く噛み合ってませんよね(笑)。あと、2ch掲示板で「あだち充が『悪役や動物達の描き方に勉強不足が目立ちます』と偉そうに言うのは如何なものか」…みたいな意見が出てて吹き出しそうになりましたね(笑)。
◎短期集中連載第1回『ビープ!』(作画:しょうけしん) 年頭の『少年サンダー』から始まった短期集中連載シリーズもこれで第4弾。ギャグヒーロー物、ロボットドタバタ物、サイエンス・ヤンキー物(何じゃそりゃ)と来て今回は、ギャグ作品では定番とも言える動物モノの登場です。 それでは、内容の分析をしてゆきましょう。 まず絵ですが、ギャグ作品を描くにあたっては全く問題ないと思います。及第点ですね。 ギャグに関しては、少なくとも駒木はネット界隈で囁かれているほど低レヴェルであると思いません。理詰め・計算づくでギャグを構成出来るテクニックはあると思いますし、展開にもメリハリが感じられます。登場人物のキャラ描写も一応は出来ていますし、ギャグ作家としての基礎的な能力は備わっていると見るべきでしょう。 現時点での暫定評価ですが、一応Bとしておきたいと思います。次回以降で、どれだけギャグの密度を濃く出来るか、その手腕に注目してみたいと思います。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントのテーマは「どうしても集めてしまう物」。結構人気なのが食玩系でしょうか。生活がコンビニと仕事場の往復になりがちなのがマンガ家という職業ですから、そういう意味では肯ける結果ですよね。そういや以前、桜玉吉さんが1日8個のチョコエッグを食らう生活をしばらく続けてましたっけ(笑)。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 まさか「サンデー」のマンガでスカイラブツインシュートが見られるとは夢にも思いませんでした(笑)。 ◎『ファンタジスタ』(作画:草葉道輝)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 アテネオリンピック編スタート……と思ったら、もう決勝トーナメント突入。おいおい、せめて予選で1〜2週引っ張ろうよ(苦笑)。そりゃあ、時事ネタが一切使えない辛さとかあるのは分かりますけどね。 ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】 メ、メイド服キタ───ッ!!(狂喜乱舞) さて、第2週の後半はレビュー対象作が無さそうですので、時間があれば…ですが、「世界漫画愛読者大賞」の総括をやっておきたいと思います。ではでは。 |
2003年第29回講義 |
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さて、今日の講義はボリュームが大きくなりそうですので、前フリ抜きで行きます。テスト間近になって、試験範囲まで授業が進んでない学校の先生みたいなもんだと……って、そのまんま高校講師バージョンの駒木に当てはまりますね、それ(苦笑)。墓穴掘ったなぁ。 ……まぁそういうわけで、まず「週刊少年ジャンプ」を中心とした情報系の話題から。 今週の注目情報は、なんと言っても次号(28号)から始まる4週連続新連載のラインナップでしょう。
……最近はイレギュラーの上に2作品入れ替えが続いていた「ジャンプ」の新連載入れ替えですが、ここに来て大規模な入れ替えが実施される事になりました。98年春の5本に次ぎ、99年夏の4本に並ぶ、“今世紀最大”規模の大改造ですね。 新連載作家さんのプロフィールに関しては、時間の都合もありますので、それぞれの作品の第1回レビューの際にお届けする事にしますが、今回は初連載となる吉川雅之さんを除く3人が2年以上の長期連載経験者という“実務派”揃いに。新人の読み切りを多数掲載して育成を図りながら、連載作品の質・量を高いレヴェルで安定させようという編集方針が感じ取れますね。 で、4本新連載が始まるという事は、同じ数の作品が消えるという事になります。既に『ジョジョ』と『ヒカ碁』が終了した上に4本終了とは凄い話ですが、これが“英断”となるか“暴挙”となるのかは、今後の結果待ちになるのでしょうね。 次に新人賞の話題を。今週は「ジャンプ」伝統の新人マンガ賞・「手塚賞」&「赤塚賞」の審査結果発表がありましたので、受賞者及び受賞作を紹介しておきます。
受賞者さんたちの過去のキャリアについては以下の通りです。(ペンネームを変えている人の場合は、検索漏れが生じる可能性が有ります) ◎手塚賞佳作の井原顕さん…01年12月期「天下一漫画賞」で最終候補。 ……結果を見る限りでは、今回の両賞はやや低調な結果に終わりましたね。受賞者の皆さんの経歴を見ると、一歩前進二歩後退…といったような人もいて、この世界で成功するまでの道の険しさを痛感させられます。 ……さて、情報系の話題はここまで。レビューとチェックポイントへと移りましょう。ただし、寂しい事に今日のレビューは読み切り1本のみです。その後のチェックポイントも続けてどうぞ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年27号☆ ◎読み切り『未確認少年ゲドー』(作画:岡野剛) すっかりレギュラー企画として定着した感のある読み切り枠、今週はベテラン・岡野剛さんの登場です。 ……では、レビューへ。 次に、岡野さんにとって(画力とは逆に)デビュー時から弱点・穴と言われていた、ストーリー&設定についてですが、こちらも今回に限っては比較的よくまとまっていると思います。起承転結が上手く成立していますし、安易にバトル系シナリオに逃げなかったのも評価できるポイントです。 ……が、悲しいかな、細かい部分まで探ってみると、やはり多少の問題点があぶり出されてしまいます。 まず1つ目は、 総合的な評価としては、プラスマイナス諸々を考慮して、B寄りB+辺りが妥当ではないかと思います。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 連載2周年で96回。途中で持病の喘息のために原稿落っことした事もあって、微妙な回数になっちゃいましたね(苦笑)。 ◎『テニスの王子様』(作画:許斐剛)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 181ページ1コマ目の「葵剣太郎データ」、あまりのバカバカしさに全身脱力しました(苦笑)。やっぱり許斐さんは高橋陽一の後継者だ(笑)。 ◎『シャーマンキング』(作画:武井宏之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 正直、最近のこの作品は「ワケワカラン」状態一歩手前だったんですが、今週のデキの良さには驚かされました。いやぁ、深いわー、コレ。イラク戦争の大義がどう…とか未だに言ってる人に読ませてあげたいですね。っていうか、それは駒木もそうか(苦笑)。 ──と、今日はこれくらいにしたいと思います。後半は週明けになってしまいますかね。一応、頑張ってみますけど(苦笑)。 |
2003年第27回講義 |
本日の講義はダブルヘッダーです。 ……というわけで、まずは第1時限。先週分の「現代マンガ時評」後半分から実施します。 ──では、「サンデー」26号のチェックポイントをどうぞ。 ☆「週刊少年サンデー」2003年26号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントのテーマは「自分の作品でグッズを作るとしたら何を作りたいですか?」 ◎『史上最強の弟子ケンイチ』(作画:松江名俊)【現時点での評価:B+/雑感】 新島とその取り巻きって、恐ろしく頭が悪いですなぁ(笑)。「オレ様の頭脳と──」とか言ってる割に、丸腰同然で町を練り歩くなんて、
◎『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫)【第3回掲載時の評価:B/雑感】 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回のお題は「衣だけ変えて中身同じ」。
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2003年第25回講義 |
最近5号分の「ジャンプ」スクラップ作業のせいで右手がすっかり凝ってしまった駒木です、こんばんは(苦笑)。 ──さて、それでは今週もゼミの開始です。 まずは情報系の話題から。今週は読み切り情報を1件だけ。そろそろ以前から噂されていた大量(4作品?)の連載入れ替えが始まりそうな予感がするのですが、今は“嵐の前の静けさ”という事なんでしょうか。 そんな嵐の直前である次号(27号)に掲載される読み切りは、『未確認少年ゲドー』(作画:岡野剛)。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年26号☆ ◎読み切り『ゴールデンシュート鳥越』(作画:郷田こうや) もう第何弾なのかも忘れてしまいそうな、「ジャンプ」の読み切りシリーズ。今週は郷田こうやさんのギャグ作品が登場です。 ……さて、まずは絵からですが、今回は臨時アシスタントを使うほどのハードスケジュールだった影響か、ここ2〜3作よりもやや粗さが目立っています。それでもギャグ作家さんとしては十分通用する水準にはあると思いますが。 そして、この“リアル顔”の例にとどまらず、今回もギャグに関しては全般的にやや物足りなさが否めませんでした。 評価はB−としておきましょう。諸々の素質は感じさせる作家さんだけに、このまま燻って欲しくないものです。とりあえず次回作に注目してみます。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『BLACK CAT』(作画:矢吹健太朗)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ウワァ……(絶句)。 ◎『★SANTA!★』(作画:蔵人健吾)【現時点での評価:B−/雑感】 今回のバトルのオチ、これはギャグなのか真剣なのか、どう解釈したらいいんでしょうね?(苦笑) ◎『プリティフェイス』(作画:叶恭弘)【現時点での評価:B+/雑感】 前号の巻頭カラーから一転、掲載順が実質ブービーに。ストーリーも風雲急を告げるものですし、どうやら連載終了が間近と見て良いみたいですね。
……と、今日はアッサリ風味のボリュームですが、こんなところで。今週はゼミ以外の講義も充実させるつもりですので、どうかご容赦を。 |
2003年第23回講義 |
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後半の部、スタートです。何とか今週はほぼ正常な日程で講義が実施できました。 さて、今日も早速情報系の話題から。 まずは「サンデー」以外の話題を。 さて、次は「サンデー」系の情報。月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の3月期審査結果が出ていますので、受賞者・受賞作を紹介しておきます。
今回の受賞者さんたちのキャリアは以下の通りです。(名前で調査してますので、同姓同名の別人の可能性が僅かながらに残っています) ◎佳作の大塚志郎さん…02年6月の「ビッグコミックスピリッツ・増刊新憎」で読み切り発表。また、02年10月にはNHK教育の「真剣10代しゃべり場」に出演。
今回の「まんカレ」、「総評」では編集者代表と思しき方による「まんがのドラマはキャラクターが全て。設定や事件の目新しさに読者は感情移入してくれません」と豪快な決め打ちが。まぁ確かにキャラ立ちしてないストーリーの大半は駄作ですが、“全て”はさすがに言い過ぎじゃないかと思ったり思わなかったり。 ☆「週刊少年サンデー」2003年25号☆ ◎新連載第3回『売ったれ ダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【第1回掲載時の評価:A−】 短期集中連載時からのリニューアルが功を奏し、上々のスタートを切った…と、第1回のレビューで申し上げたんですが、第2回と第3回に関して言えば、最初に比べて若干パワーダウンしてしまったと言わざるを得ません。 こういう話は、途中に主人公が悪戦苦闘すればするほどクライマックスが盛り上がり、更にはリアル感が出て来るものなのですが、20ページ前後のボリュームでは、かなりご都合主義的に主人公が成功してしまわないとページ的に間に合わないんですよね。つまり、規定のページで収まるように上手く構成すればするほど、ストーリー展開が不味くなってしまうというジレンマが出て来てしまうわけです。 ただし評価は、近い内に数話完結型に移行するであろう事を考慮して、ほぼ据え置きのA−としておきます。ただし、あと5回ほど様子を見て良化の兆しが見えなければ、格下げも検討します。 ◎短期集中連載総括『黒松・ザ・ノーベレスト』(作画:水口尚樹)【第1回掲載時の評価:A−】 短期集中連載は5回目で終了となりました。同じ短期集中でも回数がまちまちなのはどういう事なんでしょうね、しかし。まぁ、水口さんは増刊で連載中なので、最初から1ヶ月限定という予定だったのかも知れませんが。 さて、内容についてですが、やや最終回で失速気味だったものの、なかなかのハイレヴェルを維持したままで5回を乗り切ったのではないかと思います。水口さん独特の“間”の良さに加えて、主要キャラクターがキチンと立っていたのも成功の決め手でしょう。特にキャラ立ちの点は、これまで短期集中連載された他の作品と比べてもかなりのアドバンテージを持っていると思います。 評価はB+寄りA−で据え置きとします。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週の巻末コメントのテーマは「初めてファンレターを貰った時の感想」。もはや手の施しようの無い(笑)久米田さんを除いては、皆さんボケる事も無く素直なお答え。 ◎『MÄR(メル)』(作画:安西信行)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『ワイルドライフ』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B/雑感】 瀬能のセリフが象徴するように、上手くツッコミ所を笑い所に変えるようになって来ましたね、この作品。まぁある意味、読者がいちいちツッコミを入れる気力も失せて来たという事もありますが(笑)。 ◎『KATSU!』(作画:あだち充)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 香月の親父さんがジム生に課したハードルがどれ位厳しいか、ちょっと検証。 これに比べたら、インターハイ優勝というのは確かに大分簡単と言えそうですね。このマンガの世界じゃなければ…の話ですが(笑)。 ……というわけで、最後はマンガ時評なのかボクシング関連講義なのか判らなくなってしまいましたが、これも社会学講座らしいってことでご容赦を。ではでは。 |
2003年第22回講義 |
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今週前半分のゼミをお送りします。最近「現代マンガ時評」ばっかりだな…とご不満をお持ちの受講生さん、申し訳ありません(苦笑)。 では、今日も情報系の話題から。今週は「週刊少年ジャンプ」系の月例新人賞・「天下一漫画賞」3月期の審査結果が発表されましたので、受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。
今回最終候補以上に残った皆さんの、過去の受賞歴等は以下の通りです。 ◎最終候補の黒岩基司さん…02年5月期「天下一」で最終候補、02年度「ストーリーキング」ネーム部門で最終候補 ──最終候補の壁をなかなか越えられない人たちがいる一方で、初受賞でいきなり数年ぶりの準入選という17歳も……。今回の「天下一」は、まさに実力社会を象徴したものとなりました。 そして今日は情報をもう1つ。次号の読み切りについてです。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年25号☆ ◎読み切り『World4u_』(作画:江尻立真) 今週号も読み切りは“新人・若手枠”。今回は実に4年ぶりの作品発表となる、現在は尾田栄一郎さんのアシスタントも務めている江尻立真さんの登場です。 ──では本題へ。 まず目に付くのが絵の綺麗さですね。キャラ絵は勿論、背景までも細かく、それでいて過剰にならない程度にキッチリ描き込まれていて、非常に好感が持てます。デフォルメ等のマンガ的表現も問題なく出来ていますし、「ジャンプ」系の新人・若手作家さんの中では間違いなくトップクラスの画力と言えるでしょう。 ストーリーは、かつての「ジャンプ」長期連載作・『アウターゾーン』(作画:光原伸)を思わせる、日常を舞台にしたショート・ホラー物。冒頭・中間・ラストで語り部が登場する辺りからはTVの「世にも奇妙な物語」の影響も強く感じますね。 評価は非常に迷ったんですが、A−寄りB+に留めたいと思います。地力そのものは既に連載作家さんのそれだと思いますので、次回作に期待しましょう。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『プリティフェイス』(作画:叶恭弘)【現時点での評価:B+/雑感】 連載1周年巻頭カラーでお祝いムード……と思いきや、急展開&人気投票の結果発表が単行本回しという事で、一部では「次期打ち切り確定」などと囁かれる羽目に……。いや、実際のところは判らないんですが。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ところで、最近のこの作品はストーリー的にも大分骨太になって来た感がありますね。次に採り上げる時までこのテンションが持続していればB+への格上げも検討したいと思います。 ◇駒木博士の読書メモ(5月第4週前半)◇ ◎『覇王〜Mahjong King's Fighters〜』(作画:木村シュウジ/『近代麻雀』連載中) 今回は、近頃一部で大いに話題を振りまいた作品を紹介します。
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2003年第21回講義 |
久々の週内ゼミ後半実施となりました(ギリギリですけど)。そして今週は、これも久々にレビュー対象作ゼロという事に。講義する方としては楽なんですが、やっぱり拍子抜けすると言うか何と言うか……。 今週は特に情報もありませんので、早速講義の本題へと移りたいと思います。まずは「サンデー」のチェックポイントからお送りしましょう。 ☆「週刊少年サンデー」2003年24号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻頭の注目はミニモ……もとい、『金色のガッシュ(ベル)!』カードゲーム。何と言いますか、「そこに目をつけたか!」…と言いたくなってしまいますね(笑)。目指すはやはり、億単位のカードを売り尽くした「ジャンプ」の某作品でしょうか。 ◎『焼きたて!! ジャぱん』(作画:橋口たかし)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 この作品の皮村と林田のやりとりって、ティーンエイジャー男子の行動を結構リアルに表現してて、思わず微苦笑しちゃうんですよね。 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 以前の『神聖モテモテ王国』(作画:ながいけん)を思わせるような、投稿コーナー新設。当面の打ち切り回避を祝していいのやら、『うわ、縁起悪りぃ』と引くべきなのやら、分かりませんな(笑)。 ◎『天使な小生意気』(作画:西森博之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回の格闘シーン&決めゼリフ、カッコいいなぁ。
◇駒木博士の読書メモ(5月第3週後半)◇ ……というわけで、今週は久しぶりに「読書メモ」の実施。今回のターゲットは、皆さんにレビューをお待たせしていたこの作品です。 ◎『魔法先生ネギま!』(作画:赤松健/「週刊少年マガジン」連載中)【現在まで評価未了/レビュー】 もう特別な説明は不要でしょう。『ラブひな』で一世を風靡した赤松健さんが新たに立ち上げた連載作・『魔法先生ネギま!』が当ゼミに登場です。 さて、この作品、赤松さんのウェブ日記によりますと、第1回から『ラブひな』を上回るアンケート結果をマークし続け、既に1年先まで見据えた構想を検討中との事。 ですが、まぁそれも内容を読めば理解出来ます。作者の赤松さんには多少失礼かも知れませんが、この作品は(前作・『ラブひな』と同じように)“名作”になる事を一番初めの段階から放棄されている代わり、全てのパワーが、“人気作”になるような方向性で注ぎ込まれているのです。具体的に言えば、複雑で起伏に富んだストーリーや先の読めない展開で読者を引き込むのではなく、読者の最大公約数的な意見を正確に掴んだエンターテインメント(ベタベタのラブコメ、萌えキャラ、ライトなお色気など)を提供する事だけに徹した作品…という事ですね。 普通、メガヒット作品を世に出した作家さんは、その成功に溺れて客観的な判断力を欠くようになってしまいます。その後に新作を描くにしても、そのメガヒット作で成功したと思われる部分を抽出し、記号化し、それを再構成する事しか出来なくなるのです。簡単に言うと、キャラクターの名前と舞台設定をマイナーチェンジさせただけの焼き直しした作品しか描かなくなり、しかもそれが正解だと信じて疑わなくなるわけです。それが読者の目にはどう考えても不正解に映る駄作だったとしても…です。 で、そういう意味で言えば、赤松健さんはそのような「2度のヒット作を生み出せる天才」の典型例という事になると思います。決して自分の過去の成功に溺れず極めて冷静な自己&現状分析を行う事が出来、その上、他のヒット作からも参考になる部分はどんどん取り入れていこうという謙虚な姿勢も窺えます。これは地味ながら間違いなく天賦の才と言えるものでしょう。 ……とはいえ、今回の作品そのものの評価は、先に挙げた理由からB+止まりです。これは当ゼミの評価基準からも譲れないところですので、もうどうしようもありません。ただし、“究極のB+評価”と言うべきものであると思います。 ──今週の講義は以上です。やっと1つ課題をクリア出来ました(笑)。次週も出来れば週内実施できればいいですね。ではでは。 |
2003年第19回講義 |
日付だけなら中4日も開いてしまったんですが、振替講義の加減で実質はあまり休めてません(苦笑)。キツいです、正直。 いや〜、先週の講義は疲れました(笑)。結局、全作品を真面目にレビューしたのと同じ形になっちゃいましたしねぇ。今日はレビュー1本とチェックポイントなんですが、「あれ? レビュー1本だけで良いんだ」…みたいな感覚ですよ(笑)。 しかし、「赤マル」やら本誌の読み切りやらのラインナップを振り返りますと、「ジャンプ」ってやっぱり新人・若手の層が分厚いですよねぇ。人材不足なのは「連載作家」であって、「作家」は溢れるほどスタンバイしているのがよく判ります。 そして今日はニュースをもう1本。「ジャンプ」の至る所をよく観察してらっしゃるような受講生さんはお気づきでしょうが、「ジャンプ」のオフィシャルな発売日が毎週月曜日に切り替わったようです。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年24号☆ ◎読み切り『GRAND SLAM』(作画:杉本洋平) 今週の読み切りは、本誌デビューとなる若手作家・杉本洋平さんの登場です。 ……では、まず絵からレビューしてゆきますが、恐らくはほとんどの方がパッと見の絵柄に「?」マークをつけたと思います。勿論、画風という部分も影響しているのでしょうが、それよりも基礎的な技術のいくつかが習得出来ていないような気がしてなりません。 次はストーリー・設定について。 しかし、そんな方たちには失礼ながら、この作品には、肝心の演出面に“キズ”があります。既に出揃った感のあるネット界隈の評判では、“賛否両論おしなべて不評”だったのも、ひょっとするとその辺が理由かも知れません。 まず、主人公の行動に一貫性がやや欠けている事が1点目です。 2点目。これはひょっとすると駒木だけなのかも知れないので遠慮がちに言いますが、最後の勝負で打った球がフォークボールっていうのは、どうかと思いませんか? 喩えでまとめてみますと、非常に活きの良い魚を仕入れて来て、そのまま刺身で出せば美味いものを、下手に火を通して失敗した…みたいな作品という事になりますか。素材は良かっただけに残念です。
◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『テニスの王子様』(作画:許斐剛)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ここまでやるなら、「11人いる!」までやらなくちゃ(笑)。この辺り、まだ許斐さん自身は「一応リアル路線だから」とか思ってるのかも知れませんね(ホントか?)。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 なんつーか、本当に芸が細かいですなぁ。 ◎『ROOKIES』(作画:森田まさのり)【開講前に連載開始のため評価未了/解説等】 今週の展開は、ストーリーテリングの観点から見ると、とんでもない大冒険に踏み出したと言える凄いものです。完全に予定調和を排し、試合の勝敗も含めて混沌とさせてしまいました。 |
2003年第18回講義 |
さて、中3日開けて再びゼミのお時間です。 ……ということで、今週のゼミは、「ジャンプ」と「サンデー」の合併号休みを利用した、恒例の「赤マルジャンプ」全作品レビューをお送りします。 ──では、早速全作品レビューをお届けしたいと思います。ただし、いつもみたいに詳細なレビューをやっていると時間と身が保ちませんので、どちらかと言えば「チェックポイント」の論調に近いようなスタイルで講義を進めて行こうと思いますので、どうか何卒。 ◆「赤マルジャンプ」03年春号レビュー◆ ◎読み切り『沙良羅』(作画:やまもとかずや) 巻頭カラーは、もはや「赤マル」名物となった“打ち切り作家枠”。今回は初連載作(そして初突き抜け作)『I'm
A Faker!』以来、約1年半ぶりの新作発表となる、やまもとかずやさんの登場です。 『I'm A
Faker!』の連載時はやや粗いと思われた絵柄が大分アカ抜けて来たのがまず目に付きます。アクションシーンや“異形の者”の描写もキッチリなされていて、ブランクがダテでなかった事を匂わせます。 ◎読み切り『バクハツHAWK !!』(作画:天野明) 天野明さんは2001〜02年まで「週刊ヤングマガジン」と系列雑誌で活動していた作家さんで、短期ながら2本の連載(『ぷちぷちラヴィ』、『MONKEY☆BUSINESS』)も経験しています。 絵に関しては、さすが元・連載作家、全く問題ありません。無駄な線を排除できているあたりにキャリアを感じさせます。ただ、少年誌向けのペンタッチを意識するあまり、“古臭い少年マンガ風”になってしまった気もしますが……。 ◎読み切り『少年青春卓球漫画ぷーやん。』(作画:霧木凡ケン) 3本目は「ジャンプ」の誇る(?)永遠の若手作家こと、霧木凡ケンさんの登場です。 絵柄は個性的ながら、一定以上の技量を窺わせるものと言えるでしょう。ただし動的表現に問題点があり、全体的に変な“間”が生じてしまうのが、やや気になるところです。(これも霧木さんファンにはたまらない点なのでしょうが)
さて、ここからはキャリアの浅い新人作家さんがしばらく続きます。 で、この作品を読んだ率直な感想は、「この作者、化けた!」…というところでしょうか。いつもながら分かり難い喩えで言いますと、フットボールアワーが第2回のM−1でブレイクしたような感じです。
続いてはこの作品がデビュー作となる梅尾光加さんの登場です。 絵は“新人さんの習作原稿にしては”という但し書きを付ければですが、十分に合格点だと思います。見た目で違和感を感じる場面はほとんど見られませんでしたし、背景や擬音効果の力量もなかなかのものです。ただ、ややタッチが独特すぎて好き嫌いが分かれそうな絵柄であることと、キャラの顔の描き分け(特に若い男の)が甘い部分が今後の課題となるでしょうね。 ◎読み切り『あかねの纏』(作画:落合沙戸) 続いては、先程の梅尾さんと同じく、02年下期の「手塚賞」で佳作を受賞し、今回デビューを果たした落合沙戸さんの作品です。ただし、落合さんの場合はこのデビュー作は受賞作ではなく、受賞後第一作という事になります。 絵は一言で言えば達者ですね。今回の「赤マル」は絵が上手い人が多くて表現に困ります(苦笑)。
こちらも今号デビューの作家さん、後藤真さんです。 絵は「天下一」で“画力◎”を獲得しただけあって、年齢・キャリアを感じさせない緻密な描き込みが特徴的です。ただ、マンガ的な表現や構図、背景と人物のバランスなどで不慣れな点がまだ見られます。描き込む線の取捨選択が出来るようになれば、連載作家さんたちと遜色ないレヴェルまで行けるのではないかと思います。 ◎読み切り『詭道の人』(作画:内水融) さて、残るは5作品。どんどん進めていきましょう。 この人も絵に関しては大丈夫そうですね。どうやら以前は「画力に難アリ」との評判だったそうなんですが、2年間の修行の成果が出ているという事になりますね。老人に化けた夷吾の体が、「肌まで老人」と言うには若々し過ぎた…という問題点もありますが、ギリギリでご愛嬌の範疇でしょうか。 中山さんは99年に弱冠15(6?)歳で「手塚賞」最終候補に残った後、01年に実施されたスカウトキャラバンで“スカウト”され、「赤マル」02年春号でデビュー。今回は1年ぶり2度目の作品掲載となります。 まず絵に関しては、画力云々という以前に、極めて完成度の高い少年誌向けの絵柄に仕上がっています。写真をトレースして背景を描く…というような緻密さは見られませんが、それも含めて極めて好感度の高いタッチだと言えそうですね。今回のヒロインはいわゆる萌え要素も高そうですし。
今号2本目のギャグ作品の登場です。作者の風間克弥さんは、02年9月の「天下一漫画賞」で最終候補に残って“新人予備軍”の仲間入りを果たした後、今回で晴れてデビューとなりました。 絵はまだ粗さと素人臭さが目立ちますが、ギャグ作品ですから、それほど目くじらを立てるものでもないでしょう。これでリアルな絵柄とのコントラストが出来るようになればギャグ表現に広がりが出て来るのでしょうが、まぁデビュー作からそれを求めるのは酷でしょうから、今後の課題という事にしておきましょう。
「月刊少年ガンガン」出身という、「ジャンプ」では異色の経歴を持つ瀬戸蔵造さんの、1年ぶりとなる「ジャンプ」2作目の登場です。今回も前作・『monochro stroke』に引き続いて卓球を題材にした作品となりました。「ガンガン」時代は野球マンガを描いていたそうなので、卓球に固執しているわけではなさそうですが……? まず残念なのが絵でした。全体的に線やデッサンが粗く、どうしても雑っぽい印象を抱かせてしまいます。特に動的な表現を狙った場面がことごとく止め絵のようになってしまうのはいただけません。何よりも、この1年で目立った画力の向上が見られない事が一番の懸念材料でしょう。現状に満足するにはまだ早過ぎると思いますが。
今回の「赤マル」のトリを務めるのは、これがデビュー作となる中島諭宇樹さん。現在『アイシールド21』の村田雄介さんの下でアシスタント修行をしているみたいですね。(『アイシル』2巻の巻末スタッフ紹介に名前あり) 今回、この作品を一読して抱いた感想は、 ※総評…今回は大豊作と言って良いでしょう。即連載級の作品が2つ3つ見られましたし、ゆくゆくは連載作家を目指していけそうな有力新人も複数いる事が確認できました。 ……というわけで、実質3日がかりの講義、いかがでしたでしょうか?(苦笑)。多分夏号以降は、レビューをするにしても前後半に分けたいと思います(笑)。 次週からはレギュラー通りの構成に戻ります。そちらもどうぞお楽しみに。ではでは。 |
2003年第17回講義 |
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またも週をまたいだゼミ後半の実施となってしまいました。毎週のように冒頭で陳謝してる有様で情けないのですが、今回は例の臨時講義がありましたので、どうかご理解を頂きたいと思います。 ──というわけで今回は、先週発売の「週刊少年サンデー」を中心とした講義という事で、宜しくお願いします。 では、例によって初めは情報系の話題から。まずはこの度新設された、応募者30歳未満限定のマンガ原作者新人賞・「サンデー原作・原案ドリームステージ」の審査結果からお伝えしておきましょう。
若年層を対象にした新人賞とはいえ、受賞者は20代後半がズラリと並びました。さすがに原作者新人賞ともなれば、やはり小説家と同様に学校を出て、ある程度の社会経験を積んだ人でないと“味”が出ないんでしょうか。 さて、今日はもう1つ、駒木がネット閲覧中にふとした事から入手した情報を紹介します。 その情報とは、昨年まで約1年間本誌で連載されていた『トガリ』で「サンデー」読者にはお馴染みの夏目義徳さんの動向について。
☆「週刊少年サンデー」2003年22・23合併号☆ ◎新連載『売ったれダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治) (短期集中連載を除けば)「サンデー」では久々の長期連載が今週から始まりました。『MÄR』以来ですから、ほぼ4ヶ月ぶりになりますか。 ……では、本題へ。 絵については全く問題無いでしょう。むしろ以前に比べて絵柄が少年誌っぽくなり、より好感の持てる絵柄になっています。特に良い味が出ているのがデフォルメ表現で、派手ながら嫌味の少ない描写になっているのが素晴らしいと思います。 そしてストーリーと設定についてですが、こちらもとりあえずは合格点を出せる仕上がりになっているのではないでしょうか。 1.作品で紹介される薀蓄に説得力があるか。 ……これらのどれが欠けていても、作品の魅力は激減し、ただ単に作者が読者に知識をひけらかしているだけのイヤミな作品になってしまいます。 また、目立たない所ですが、コマ割り等の構成力も相当なものです。今回は60ページ以上もあったのですが、冗長さを感じさせませんでした。このポイントについても高い評価をしなければいけないでしょう。 というわけで、今回の時点での暫定評価はA寄りA−。シナリオのオリジナリティ等で少し減点しましたが、なかなかの好発進です。ただ、真価が問われるのはこれ以降ですので、今しばらく注視しておきたいと思います。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントは「泣ける映画」について。思ったより皆さんベタですねー。さすがにマンガ家始めてからはマイナー映画とか観る時間が作れないんでしょうか。 あと、今週号は『MAJOR』でも『ふぁいとの暁』でも、身を賭して監督に逆らう主人公のライバルが描かれてましたが、ネット上で「『MAJOR』ではここまで3年かけたのに、『ふぁいとの暁』ではいともあっさり……」みたいな発言があったのには思わず吹き出しました(笑)。 ◎『ワイルドライフ』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B/雑感】 いつの間にやら、すっかり中堅位置に固定されたようで。しばらくは安泰みたいですね。確かに読み易い雑誌向けの作品になっていると思いますが。 ◎『MÄR(メル)』(作画:安西信行)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ……というわけで、このゼミも次回へ続く…と。 |
2003年第15回講義 |
先週あたりからゼミの実施ペースまで遅れ気味になっており、申し訳ありません。説明し始めるとキリが無いような事情が山ほどあるのですが、ここで不満を言っても仕方が無いので止めておきます。まぁ要は、忙しい上にテンション下がる事ばっかり起こってると認識して下さい(苦笑)。 さて、皆さんもご存知のように、今週の「ジャンプ」では『ヒカルの碁』最終回というビッグサプライズがありましたが、それは「チェックポイント」のコーナーで詳しくお伝えする事にしまして、まずは情報系の話題からお届けしましょう。 最近の「ジャンプ」では、空いた連載枠の穴埋めの意味もあって読み切り攻勢が続いていますが、次号(24号)でも45ページの野球マンガ・『GRAND SLAM』(作画:杉本洋平)が掲載されます。 さて、それでは本日分のレビューとチェックポイントをお届けします。なお、レビュー対象作は読み切りの1作品のみとなります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年22・23合併号☆ ◎読み切り『dZi:s』(作画:樋口大輔) このところ新人・若手の読み切りばかり載っていた感のある「ジャンプ」ですが、今週は『ホイッスル!』でお馴染みの樋口大輔さんが登場となりました。 さて、それではレビューの本題へと移りましょう。 いつもなら絵とストーリーに分けてお話するわけですが、連載入れ替えの激しいメジャー誌で長期連載を経験した作家さんを捕まえて、今更「絵がどうこう」…などというのも失礼なので、ストーリーと設定面に絞ってレビューしたいと思います。まぁ「絵は悠々と合格点以上」ということで。 で、そのストーリーと設定なのですが、こちらもさすがに長期連載経験者の地力と言うべきか、なかなか芸の細かい演出を要所要所で見せ付けてくれます。この辺りはさすがといったところでしょう。 ただ、残念だったのは、基本的なシナリオの出来がやや物足りなかったところでしょう。勿論、「赤マル」や新人賞レヴェルの作品からすれば一枚も二枚も格の違う完成度だと思うのですが、レヴェルの高かった演出面と主客が転倒してしまったような感が否めませんでした。 最終的な評価ですが、「見所のある作品ではあるが、良作・傑作には及ばず」というところで、A−寄りB+ということにしておきましょう。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 『NARUTO』と『テニスの王子様』、両方とも分身技が決め手になっているんですが、片方は唸らされて、もう片方は笑わされるのは何故なんでしょう?(笑) ◎『ONE PIECE』(作画:尾田栄一郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 この作品、話が追いかけ易くなって見せ場の密度が上がると、クライマックスが近い事がすぐに判るので便利ですね(笑)。 ◎『ヒカルの碁 第2部(北斗杯編)』(作:ほったゆみ/画:小畑健)【現時点での評価:A/連載総括】 一部で噂されていましたが、「ジャンプ」では(第2部だけを見れば)異例の短期での円満終了となりました。 作品全体としては、やや北斗杯編が蛇足になった感もありますが、十分にマンガ史に残る名作の1つとしてカウントされるべきだと思います。同時期の「ジャンプ」作品でも、この作品より人気のある作品はいくつかありますが、作品の質という面では決して見劣りする事は無いと思っています。 |
2003年第14回講義 |
さて、世間では『ヒカルの碁』最終回でパニクっている人も多くいらっしゃるでしょうが(笑)、とりあえず今日は先週の「サンデー」についてのゼミを行います。 ……というわけで、まずは取り急ぎ情報系の話題を。今週は新連載の話題が入っています。 次号(22・23合併号)から、『売ったれダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)の連載が始まります。
☆「週刊少年サンデー」2003年21号☆ ◎読み切り『結界師』(作画:田辺イエロウ) “新鋭ビッグ読み切り”シリーズ第2弾は、新人・田辺イエロウさんの『結界師』が登場です。 さて、それでは例によって、“絵→ストーリー&設定”の順でレビューをしてゆきましょう。 絵に関しては、とりあえず文句の付け所はありませんね。線に無駄が無く、様々な容姿の人物の描き分けや動物・妖怪の描写に関しても、新人さんにしては非常に達者です。デフォルメや格闘などの動的表現もソツなくこなしており、極めて完成度の高い画力と言えそうです。来週から即連載を任せても大丈夫な気にすらさせてくれます。 そしてストーリー&設定の面についてですが、こちらも文句無く合格点を出せる良い出来に仕上がっています。 評価はA寄りA−ということにしておきましょう。田辺さんの実力そのものは既にA評価クラスだと思いますが、“ソツ無く”で終わってしまった分の減点をしておきました。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週は「サンデー」も「マガジン」も上戸彩が巻頭グラビアでしたね。こういうケースって珍しいんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう? ◎『名探偵コナン』(作画:青山剛昌)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 あっちこっちでドンデン返しが連発の今週でしたが、やっぱり最大のビッグサプライズはジョディ&新出両先生の正体でしたねぇ。これって前もって決めてたんでしょうか、それとも後付け? ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】 まぁ、この作品ですからクソ真面目にツッコミ入れてもアレなんですが、こんな実習生いませんって(笑)。 ◎『天使な小生意気』(作画:西森博之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今週のエピソード、良い感じですね。弱い人間が弱い人間なりにカッコよく立ち回って消えていく。少年マンガでなかなか出来そうで出来ない表現ですよね。 ◎『鳳ボンバー』(作画:田中モトユキ)【現時点での評価:B+/連載総括】 先週お知らせした通り、無念の打ち切りとなりました。タイミング的には、“あやや投入”の時点で打ち切りが決まってたのかも知れませんね。 ……というわけで、やや駆け足でしたが今日はこれまで。また明日か明後日には今週の前半分をお送りしたいと思います。では。 |
2003年度第12回講義 |
「応募者全員大サービスの『アイシル』グッズ、もうちょっとどうにかならなかったのか、編集部!」…と直訴したい駒木です、こんばんは(笑)。 ……さて、今週の前半戦はとにかくレビューが大変ですので、早いところ本題に突入したいと思います。 まずは読み切り作品についての情報から。次号(22・23合併号)に樋口大輔さんの『dZi:S』(←「ジーズ」と発音)が掲載されます。樋口さんはご存知、昨年まで『ホイッスル!』を長期連載していた中堅の女流作家さんですが、いよいよ次の連載獲得へ向けて本格的に始動する事になったようです。 なお、次号は号数を見ても分かりますように、ゴールデンウィーク合併号となります。公称発売日が火曜でなくて月曜ですので、地方在住の方や早売りゲッターの方はご注意下さい。 それでは、今週のレビューへ。今週は新連載第3回の後追いレビューが1本と、読み切りレビュー2本の計3本となります。その後の「チェックポイント」もどうぞ宜しく。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年21号☆ ◎新連載第3回『★SANTA!★』(作画:蔵人健吾)【第1回時点での評価:B】 先週の『闇神コウ』に引き続いて、今週は『★SANTA!★』がセンターカラーでの“打ち切り審査”に臨みます。 まず第1回からの変化ですが、絵の完成度が第2回からガクンと下がってしまったのが大変に気になります。獣人のキャラ・デザインが物凄くぞんざいですし、主人公・サンタの描写ですら稚拙なものが目立ちます。連載ペースに対応出来ずに絵が荒れているのか、それともこれまでパッと見だけ誤魔化して来たが出来なくなったのかは判りませんが、どっちにしてもこれは大きなマイナスポイントです。 ストーリー面では、省略すべき所と詳述すべき所の区別が余りついていないような気がします。冗長で世界観を壊しかねないマッタリとした会話がダラダラ続くのに、肝心のアクションシーンは敵キャラの悲鳴だけ…という展開が多過ぎるんですよね。 評価はランクを落としてB−とします。最近の掲載順を俯瞰すると、このクールの新連載は『シャーマンキング』あたりと打ち切り争いを演じなければならないわけで、それを考えればかなり厳しい状況に置かれていると考えてよいのではないでしょうか……。 今週は読み切りが2編。まずはストーリー物のこちらからレビューをしてゆきましょう。 さて、それでは内容についてレビューしてゆきましょう。 絵に関しては、現在の本誌連載陣に混じっても遜色無いほどの高い完成度に達していると思います。少年、青年、中年男性の描き分けもキチンと出来ていますし、ディフォルメ表現も多少クセは有るものの水準に達しています。今回は女性キャラが出て来なかったのが(評価を出す上で)少し残念でしたが、今くらいの力が有るならば、多少苦手だとしても苦手なりに描き切れるでしょう。 次にストーリー・設定ですが、今回もデビュー作に引き続いて、ソツなく“スタンダード・ナンバー”的シナリオで47ページをまとめ切っています。キャリアを考えれば上出来でしょう。 現在の天野さんのポジションは、“新人以上、連載作家未満”というところでしょうか。連載を獲得し、その上で成功を収めなければ価値が見出せない少年マンガ作家さんにとっては一番居辛いポジションではないかと思います。
今週2本目の読み切りは17ページのショート・ギャグ作品です。 それでは、異色尽くめのこのデビュー作についてレビューしてゆきましょう。 まず衝撃的なのが、その脱力感満ち溢れる(?)スカスカの絵ですよね(苦笑)。小学校の文集に載ったイラストかと錯覚するようなお粗末な出来で、鉄チンさん本人が「穴があったら入りたい」と言うのも大いに理解できます。 そしてギャグの方ですが、こちらは一見下らないだけの下ネタしか描けないように見えて、一部分ながらキラリと光る部分を見つける事が出来ました。 さて評価ですが、先に述べた通り画力で大幅減点してC寄りB−とします。ただし、今回一瞬垣間見えたシュールギャグのセンスが開花すれば、将来的にはブレイクする可能性も有るでしょう。
しかし、『いちご100%』と『プリティフェイス』は毎週毎週「ジャンプ」の限界に挑戦してますなー(笑)。そのせいで、『闇神コウ』がどれだけ頑張ってサービスしても全然目立ちません(苦笑)。 ◎『Ultra Red』(作画:鈴木央)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いくら冨樫作品とは言え、主人公の少年キャラが腕を吹っ飛ばすというのはショッキングです。不謹慎な話ですが、コレ、イラク戦争が長引いていたら論議を醸したかも知れませんですね。
……というわけで、長丁場のゼミになりましたが、今日はここまで。後半はまた週末〜週明けになるかと思います。我が事ながら大変だ……(苦笑)。 |
2003年度第11回講義 |
このゼミが“分割版”になって3週間、「1週間って早いなぁ」…と思うようになりました(笑)。特にここ最近はレビュー対象作が多い事もあるのですが、とにかく「ジャンプ」と「サンデー」に追いまくられているような気がします(苦笑)。 では、時間も差し迫っていますし、早速ゼミを始めましょう。 まずは情報系の話題からですが、今日はまず始めに連載終了のお知らせからしなければなりません。 また、次号では“新鋭ビッグ読み切り”の第2弾として、田辺イエロウさんの『結界師』が掲載されます。田辺さんは「ルーキー増刊」からデビューし、ここ最近は増刊にも顔を出している“期待の新鋭”作家さん。次号予告に掲載されたカットからも高い画力の一端が窺え、大変期待させられます。勿論、この作品については次週のこの時間でレビューさせてもらいます。
──それでは、本日分のレビューへ。今日は短期集中連載の第1回レビューと、読み切りレビューの計2本をお送りします。ただし、「チェックポイント」は都合により休ませて頂きます。 ☆「週刊少年サンデー」2003年19号☆ ◎新連載(短期集中連載)『黒松・ザ・ノーベレスト』(作画:水口尚樹) 『少年サンダー』(作画:片山ユキオ)、『電人1号』(作画:黒葉潤一)に続く、ギャグ作家さんの短期集中連載シリーズ第3弾が今週からスタートします。 さて、とりあえず皆さんに腹筋を痙攣させてもらったところで(笑)、真面目な話に移りたいと思います。 まずは絵についてですが、ギャグ作品としては及第点だと思います。ただし女性キャラを描くのが上手くないようなので、その辺りがこれからの課題になってくるでしょう。(もっとも、今の「サンデー」の萌え路線から敢えて逆らうのも手でしょうが) そして肝心要のギャグについてですが、こちらの方は多少ムラを残しながらも、『普通えもん』で発揮された優れたセンスを見事に発揮しています。 ただし問題点もあります。“動から動へ”というドタバタ系ギャグのインパクトが薄いのがまず気になりますし、言葉で笑わせるギャグも打率が低そうです。(個人的に「溶けるぜ!」だけは超特大ホームランでしたが) ……とまぁ、色々述べてみましたが、結論を言えば「センスは十分。完成度はまだまだ」という事になるでしょう。現時点の評価は少し甘めですがB+寄りA−というところにしておきましょう。
今週から始まった“新鋭ビッグ読み切り”シリーズ。第一弾は現在増刊で『医術師 十五郎』を連載している若手作家・川久保栄二さん。今回が本誌初登場です。 まず真っ先に目に付くのが独特過ぎると言っても良い絵柄ですね。 ストーリー・設定の方も残念ながら問題アリですね。 中でも一番痛いのは、『ブラックジャック』以来の医療マンガの根幹である、「高度に専門的な医療知識に基づくシナリオ」及び「超人的なオペ技術を持つ主人公」の両方ともが水準に至っていないという点ですね。 また、シナリオの展開が少年マンガ黎明期(昭和20〜30年代)のような超高速&ご都合主義なのも違和感が否めません。 評価はB−がせいぜいでしょう。ハッキリ言って本誌に載っていいレヴェルではありません。ただ、増刊の連載をウォッチしている人の中には、「今回は連載版の魅力が完全に失われている」…という意見を出されている方もいらっしゃるので、これで川久保さんの技量を決め打ってしまうのは危険とも言えそうです。とにかく次回作での巻き返しに期待しましょう。
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2003年度第8回講義 |
さて、今日からは第3週分の「現代マンガ時評」をお送りします。 ではまず情報系の話題ですが、今日は次号の「ジャンプ」に掲載される読み切り作品の情報についてお知らせしておきましょう。 まず“期待の若手枠”なのが天野洋一さんの『LIVEALIVE 〜はじまりの歌〜』です。天野さんは02年上期の手塚賞で準入選(最高評点)を受賞し、受賞作『CROSS BEAT』で本誌デビューを果たした、新進気鋭の作家さんですね。今回も前作に引き続いて音楽モノ作品のようですが、果たしてどんな進歩の跡を見せてくれるのでしょうか。 噂では、近々更に長期連載作が終了すると言われている「ジャンプ」ですが、どうやら捨て身ともいえるアグレッシブな姿勢で新人の発掘・育成を目指す態勢を固めたようですね。確かにここしばらくの「ジャンプ」では看板作品級のメガヒット作に恵まれていませんから、手遅れになる前にハイリスク・ハイリターンの賭けに出るのも悪くない選択かも知れません。 ……それでは、今週もレビューとチェックポイントをお届けします。今週のレビュー対象作は、新連載の後追いレビューと読み切り各1本ずつで、計2本となります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年20号☆ ◎新連載第3回『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』(作画:加地君也)【第1回時点での評価:B−】 ここ最近定番となった感のある、新連載第3回のセンターカラー&ページ増ですね。敢えて目立つ位置に掲載してアンケート人気の最大値を計り、その結果に従って“突き抜け”か否かを決断する…というわけです。見た目とは裏腹にエグいイベントですよねぇ。 ──で、この作品の内容の方ですが、有り体に言ってしまうと第1話から大きな変化はありません。指摘した長所も短所もそのままといった感じですね。 ストーリーを構築する上で“黄金パターン”、つまり話作り上の定石を利用する事は悪い事ではありません。……というより、どんなにオリジナリティのある名作と言われる作品にしても、その大半は“黄金パターン”の塊にほんの少し独自色を塗りつけたモノに過ぎないわけで、むしろこれはストーリーテラーにとって大切な才能であると言えます。 ところがこの『闇神コウ』では、その部分が明らかに欠如してしまっています。なるほど、ヒロイン(?)路蔭の二面性をアピールしてキャラクターを立てようする意欲は窺えますし、シナリオ上の起承転結の骨組みもしっかりしています。
今週の“期待の若手枠”は03年1月期「天下一漫画賞」の佳作受賞作・原哲也さんの『SELF HEAD』です。原さんは現在24歳で、これがデビュー作のようですね。少年誌ではやや遅めのデビューでしょうか。 ……では、早速内容に話題を移してゆきましょう。 まずは絵についてですが、単刀直入に言えば、「まだまだ発展途上で荒っぽい」…という感じでしょうか。これは今後の努力で何とかなる余地は残っているでしょうが、現状で連載作家さんたちと比べると見劣りは否めないでしょう。 そしてストーリー・設定の方ですが、こちらは「設定過多で消化不良」という言葉が一番適当ではないかと思います。 シナリオの大まかな骨組みは「子分の仇討ちのために主人公が敵と喧嘩する」だけで、本来なら31ページでも多過ぎるくらいなんですよね。ところが、そこへ余計な設定や、いてもいなくても良いような脇役をジャイアンシチューの食材のようにドカドカ放り込んでしまったのが問題でした。単純で分かりやすいはずの話が変に回りくどくなって、単純なストーリーならではの爽快感が削がれてしまいましたね。 また、受賞の決め手となった、床屋(理容師)VS美容師というテーマも十分に活かしきれていなかったのではないかと思います。 では評価を。「天下一」の佳作(手塚賞で言えば準入選クラス)としては物足りない印象が否めず、B−といったところでしょうか。僭越ながらアドバイスさせてもらうと、原さんはもっと21世紀の風俗・流行についてもっと勉強するべきだと思います。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『プリティフェイス』(作画:叶恭弘)【現時点での評価:B+/雑感】 巻末コメントでは、作中の時間経過について「普通に進めます」と言及あり。確かに難しいんですよね、学園モノの場合は。特にこういう続けようと思えばどこまでも続けられるような作品の場合は……。 ◎『ピューと吹く! ジャガー』(作画:うすた京介)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ギタリストトーナメント編終了。ピヨ彦の新境地が見えた意欲的なシリーズでしたねぇ。少年マンガの“黄金パターン”をことごとく裏切る事をギャグに結び付けた技量には唸らせられっぱなしでした。 |
2003年度第7回講義 |
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本当に、本当にお待たせしました。4月第2週分後半の「現代マンガ時評」です。つい2週間前までとは雲泥の差のヘタレぶりですが、どうかご容赦下さい。今がサボっているわけではなくて、先月までが異常だったんです(苦笑)。 ……それでは、まずは「サンデー」関連の情報から。 はじめに、月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の2月期審査結果発表がありましたので、受賞者を紹介しておきます。
受賞者の過去の経歴ですが、「あと一歩で賞」の川村好永さんと同じ名前の方が、「ジャンプ」の月例新人賞・「天下一漫画賞」の2000年6月期で最終候補に残っています。結構変わった名前ですので、恐らく同一人物ではないかと思われるのですが……。 次に、新連載と読み切りの情報を。 今週で突然最終回を迎えた『電人1号』(作画:黒葉潤一)に代わり、来週からまたギャグ作品の短期集中連載として、水口尚樹さんの『黒松・ザ・ノーベレスト』がスタートします。 この2作品については、当然ながら次週のこの時間にレビューをお送りします。 ……では、今週もレビューをお送りします。本日分のレビュー対象作は、先程お伝えしたように、今週で最終回を迎えた短期集中連載・『電人1号』の総括レビュー1本だけという事になりますね。 ☆「週刊少年サンデー」2003年19号☆ ◎短期集中連載総括『電人1号』(作画:黒葉潤一)【第1回時点での評価:B−】 先週、「終わる気配が見えないんですが……」などと言った直後に終了です(苦笑)。このゼミではこういう事が頻繁に起きるので困ってしまいます。まぁ自業自得なんですが。 では、総括に移るわけですが、ここでは第1回で指摘した点を振り返りながら、新しく発見した点なども含めつつお送りする事にします。 まずは最初に指摘した「間の悪さ」からですが、やはり全8回の連載中、ここが一番気になってしまった部分でした。短いページに可能な限り中身を持たせようとした反作用と言いますか、大半のコマが小さい上にその中でキャラがバタバタばかりしていて、いわゆる“静と動”のメリハリが利かなくなってしまった感がありました。 次に「意外性の無さ」と「ワンパターン」ですが、これは同じ原因から露呈した問題だったのではないかと考えています。 せっかく1号とか2号みたいな設定を作ったのですから、せめて5号くらいまで出せば展開もまた変わって来たのではないかと思います。(勿論、それで良い作品にするためには、それなりの技量が求められますが) 評価はB−寄りBとしておきましょうか。全くダメとは思えないんですけどねぇ。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 「ジャンプ」のパンチラ攻勢を受けてか、最近は以前にも増して男子読者サービスが強化された気がしますね(笑)。しかし、いくら乳首が見えようが、擬似精液がぶっかけられようが、『モンキーターン』の“キノコ頭カップル”の会話に見える生々しさこそが、他の何よりもエロい気がしてなりません(笑)。 ◎『焼きたて!! ジャぱん』(作画:橋口たかし)【現時点での評価:B/雑感】 ……とか言いつつ、やっぱり注目は最終ページですね(笑)。 ◎『DAN DOH !! Xi』(作:坂田信弘/画:万乗大智)【開講前に連載開始のため、評価未了/連載終了にあたっての総括】 『Xi』になる前も含めると、足かけ8年にもなる長編でしたが、今回で爽やかに幕。最終回は典型的なエピローグ形式でしたね。まぁ先週に話そのものはケリがついてましたし、他にどうしようもないですけれども。 作品全体の印象としては、普通の少年を主人公にして、『あした天気になあれ』のシナリオで『プロゴルファー猿』をやり、オマケに万乗パンツをトッピングしたもの…といった感じでしょうか(どんなんじゃ)。 ◎『鳳ボンバー』(作画:田中モトユキ)【現時点での評価:B+/雑感】 やっぱり最終回が近いんですかねぇ。もしそうなったら総括で評価を下方修正しなくちゃいけないんですが……。 ◇駒木博士の読書メモ(4月第2週後半)◇ ◎『ORANGE』(「週刊少年チャンピオン」連載/作画:能田達規)【開講前に連載開始のため、評価未了/雑感】 実は、今一番駒木が楽しみにしているサッカーマンガがこれです。奇をてらわず、かといってエンタテインメントの精神も忘れずに、2部リーグの世界を等身大かつ卑小にならないように描ききった、バランス感覚抜群の良作です。
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2003年度第4回講義 |
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業務縮小にも関わらず、多くの方に引き続き受講して頂いて、嬉しく思うと共に恐縮しております(苦笑)。 さて、それではゼミを始めましょう。まずは「ジャンプ」関連の情報から。今週は月例新人賞・「天下一漫画賞」の審査結果発表がありましたので、受賞作等をここでも紹介しておきましょう。
今回の受賞者に、過去の受賞歴等は見当たりませんでした。編集部特別賞の高山さんの絵柄なんて、かなりプロっぽく思えたので、てっきりベテランの投稿者さんかと思ったんですけどね。
……という文言なんですが、これ、画力についての部分以外は先週連載が始まった『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』(作画:加地君也)にそのままあてはまっちゃう気がするんですが(苦笑)。 この「天下一漫画賞」は次回の3月期(既に応募は締め切り)で最後となり、翌月からは「ジャンプ十二傑新人漫画賞」にモデルチェンジされます。というか、3月期に間に合ってしまった応募者の人って、結構可哀想なんですが(苦笑)。 ──それでは、今週もレビューとチェックポイントの方へ。今週のレビュー対象作は新連載レビュー1本のみとなります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年18号☆ ◎新連載『★SANTA!★』(作画:蔵人健吾) 「ジャンプ」の新連載シリーズ第2弾は、先週の加地君也さんに続いて初の連載獲得となった蔵人健吾さんの『★SANTA!★』です。 例によってまず絵からですが、多少クセはあるものの力量はかなりのものが認められます。駒木は以前──この作品の読み切り版が掲載された頃から、蔵人さんの画力には注目していたのですが、連載にあたってアシスタントを使えるようになったせいか、ここに来て更に上積みがあったようです。 で、次にストーリー・設定面。 第1回のシナリオそのものは少年マンガ……というか「ジャンプ」作品の王道的シナリオで、有り体に言って“目新しさは無いが、手堅い印象を与える”…という感じでしょうか。 しかし、駒木がそれ以上に気になるのはセリフやモノローグにおける言葉遣いの拙さです。この点に関しても駒木は読み切り版の頃から指摘させてもらっていたのですが、残念ながら1年を経た今でも大幅な改善は出来なかったようです。 ……というわけで、少なくとも第1回を読んだ限りでは、この作品は「ソコソコ美味い素材なのに、それをソースで台無しにしてしまった失敗作のフランス料理のようなもの」…と言わざるを得ません。暫定評価は、画力やある程度の手堅さを考慮してもB−寄りBというところでしょう。せっかくのチャンスを1クールで手放さないためにも、早急な改善策を練ってもらいたいものです。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週で『ストーンオーシャン』(作画:荒木飛呂彦)が打ち切り気味の(?)最終回。アンケート人気万年最下位クラス&単行本売り上げ低迷という状態では、さすがの“優遇作品”も立場が弱くなっちゃうんでしょうなぁ。 ホントに凄い人出たー!(爆笑)。 ◎『プリティフェイス』(作画:叶恭弘)【現時点での評価:B+/雑感】 巻末コメントでは平謝りの叶さん。しかし、「ジャンプ」で原稿落とした事を謝られると、「あぁ、やっぱりこれってマズい事なんだなぁ」って思わされてしまいますよね(笑)。
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2003年度第2回講義 |
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一昨日の“前半”に引き続き、今日は“後半”です。 で、“後半”は「週刊少年サンデー」関連の情報やレビュー、チェックポイントを中心に、更には“前半”と同じように、他の雑誌などに掲載された作品のレビューや「読書メモ」などをお送りします。 今週は「サンデー」関連の情報は特に無いのでお休み。レビュー対象作もありませんので、「チェックポイント」だけお送りします。 ☆「週刊少年サンデー」2003年18号☆ 最近気になってるのが、“短期集中連載”中の『電人1号』。今週でもう7話目なのに、まだ終わる気配が見えません。一体、どうするつもりなんでしょうかねぇ……? ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ ◎『ファンタジスタ』(作画:草場道輝)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 イタリア編が一区切りついて、今回からオリンピック編。どこまで連載続くか分かりませんが、舞台もてっぺいも日本とイタリアを往復し続けるみたいですね。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 “5階建てビル編”は3回で完結。まぁギャグマンガですし、これくらいでまとめるのが正解でしょう。しかし、知らない内に絵柄が随分変わった気がするんですが、錯覚でしょうか? ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 こちらも“一時閉幕”。いよいよ次回から“からくりサーカス編”が始まるってことになるんでしょうか。それにしてもこれだけ長期間、テンション下げずにこれだけのエピソードを描き切る技量っていうのは本当に凄いですよね。 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 こういうリアル系のスポーツ物っていうのは必殺技とか魔球の類の超能力とか出せないわけですが、スペシャルぺラとかVモンキーとかでその“代用品”を作ってるのが見事ですよね。競艇なんて、レースシーンもワンパターンで結構地味なのに、よく演出できてると思います。 ◎『DAN DOH !! Xi』(作:坂田信弘/画:万乗大智)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いよいよ次回最終回。来週には簡単な総括をさせてもらいます。 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感?】 1年半かけてウェブサイトを成功させた事で、ネット以外の社会生活をボロボロにした駒木は勝ち組なんでしょうか、負け組なんでしょうか?(苦笑)。
まぁ当ゼミの評価なんて、ゴマンとある意見の1つに過ぎないわけですが、それでも他に確固たる判断材料もありませんので、とりあえずそれで振り返ってみますと、8作品中B+評価が3作品ある一方で、B−評価、またはそれに近いB評価も5作品ある…という結果になりました。 ですが、この賞が「賞金総額1億円、グランプリには連載1年保証」というケタ外れの特典を売り物にした、看板作品発掘のための賞である事を考えると、やはり今回のエントリー作品は物足りなさが否めません。 ……元々、この「世界漫画愛読者賞」のグランプリ選出方式には、以前「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」で指摘したような重大な問題点がいくつもあるわけですが(グランプリ信任投票のみその後に改善)、去年と今年の応募者の顔ぶれを見る限り、“問題以前の問題”を抱えているように思えてなりません。つまり、グランプリに相応しい作品を読者投票で適正に選び出す以前に、グランプリに相応しい作品そのものが存在しないんです。 最後に「総合人気投票」の投票行動公開ですが、駒木は以前から予告していた通り、『大江戸電光石火』に投票することにしました。 |
2003年度第1回講義 |
業務縮小後1回目の講義をお送りします。 さて、装いも新たに“分割版”として帰って来ました「現代マンガ時評」ですが、タイトルの通り、今後はこれまでの内容を週2回に分割してお送りする事になります。正直言って、これまでのボリュームだと一晩で講義の準備するのはかなりキツいんですよね。ですので、講義回数を水増しする意味も込めて(苦笑)分割させて頂く事にしました。 どうぞ、新しくなった「現代マンガ時評」をこれからも宜しくお願いします。 ……それでは早速、本題に移りましょう。まずはいつも通り情報系の話題からです。 今週号(18号)の「週刊少年ジャンプ」誌上において、同誌の月例新人賞・「天下一漫画賞」が、03年度4月期から「ジャンプ十二傑新人漫画賞」へリニューアルされる事が発表されました。 この「ジャンプ十二傑新人漫画賞」は、各賞の賞金が「天下一」に比べて大幅増額(入選50万円→100万円、準入選30万円→50万円、佳作20万円→30万円、最終候補3万円→5万円)され、その月の最優秀作品に贈られる“十二傑賞”(賞金10万円加算+受賞作掲載確約)も新設されました。 懸念材料としてはデビューまでのハードルを低くした事で低水準の作品が掲載されてしまうかもしれない事でしょうか。でも、現在の“新人・若手枠”である「赤マルジャンプ」や代原作品のレヴェルを考慮すると、「どうせ駄作を載せるなら、埋もれた若手より可能性のあるド新人」…という気がしないでもないですね(苦笑)。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年18号☆ ◎新連載『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』(作画:加地君也) 今年の「ジャンプ」は変則的な連載入れ替えをするようで、4月になってようやく今年最初の新連載シリーズが開幕することになりました。 まず絵ですが、アシスタントさんを確保したためか、読み切り時よりは完成度が上がっています。特にカラーページの色塗りはなかなかの腕前で、さすがにキャリアを感じさせてくれますね。 次にストーリー、設定面についてですが、まず連載化にあたって舞台を平安時代から現代に修正したのは良かったと思います。作品の“ノリ”からして、時代物長編にするには無理がありましたので。 総合すれば、絵は連載作品として平均以下、ストーリー面でも問題アリと、前途多難の船出になってしまいました。果たして短期間で弱点を修正する事が出来るのでしょうか。その辺り、再来週の後追いレビューで再度検討してみたいと思います。
今週は『プリティフェイス』が締め切りに間に合わず、代原の掲載となりました。 今回の代原作品・『みんなで暮らせばいいじゃない』の作者・ゴーギャンさんは2人組の合作ペンネームで、第52回(2000年上期)赤塚賞の佳作受賞者。その受賞作を含めて2000年に2回代原による本誌掲載を果たしています。今回はそれ以来、約2年半ぶりの復帰作ということになりますね(代原ですが)。 ……まぁどうでもいい話はさておき、作品の内容に話題を移しましょう。 まず絵ですが、パッと見には小奇麗に見える絵柄ではないかと思います。ギャグ作家としてなら許容範囲内と言えるかも知れません。 ギャグの方も問題アリと言わざるを得ません。1つ1つのネタに意外性が足りませんし、ボケとツッコミの間が異様にせっかちで、読者にしてみれば笑うに笑えないのです。何だか、売れない若手グループが緊張の余りネタを上滑りさせながらコントをやっているみたいで、ちょっと読んでいて辛かったです。 評価はC寄りB−としておきましょう。新人・若手ギャグ作家の人材不足が深刻な現在の「ジャンプ」、望まれているのはゴーギャンさんのような若手作家さんが“大化け”する事であるはずなのですが……。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感というか雑談】 いーなぁ、ワイルドガンマンズのハーフタイムショー(笑)。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 喘息持ちで、たびたび原稿の遅れる鈴木さん、巻末コメントによると今回も未完成原稿を載せる羽目になってしまったとか。でも、『HUNTER×HUNTER』で慣らされているせいか、全然違和感ないんですけどね。あ、いや、全く躍動感の無いアクションシーンにはいつも違和感感じまくってますが(苦笑)。 ◎『ピューと吹く! ジャガー』(作画:うすた京介)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今やってるギター大会シリーズ、奥が深いなぁ(笑)。60〜70年代の熱血マンガの可笑しい部分だけを抽出して、その上で21世紀で通用するギャグマンガに仕上げてますからねぇ。特に端役キャラの台詞がいちいちレトロな雰囲気で笑えて仕方ないです。
◇駒木博士の読書メモ(4月第1週前半)◇ ◎『エンカウンター 〜遭遇〜』(作:小林ユウ/画:木之花さくや)【連載中断前の評価B−/雑感】 このコーナーを新設するにあたって、やはりこの作品を真っ先に採り上げないわけにはいきませんね(笑)。「世界漫画愛読者大賞」グランプリと、当講座選定「ラズベリーコミック(年間最悪マンガ)賞」の二冠(苦笑)に輝いた『エンカウンター』、ついに半年の休載を経て再登場です。 で、問題の内容ですが、原作者を入れ替えた甲斐があって、明らかにストーリーの体を成していなかった休載前よりはマシになっていますね。
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