「社会学講座」アーカイブ(競馬学関連・12)

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講義一覧

12/25 競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 有馬記念」
12/11 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 朝日杯フューチュリティS」
12/4 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 阪神ジュベナイルフィリーズ」
11/27 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 ジャパンCダート&ジャパンC」
11/20 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 マイルCS」
11/13 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 エリザベス女王杯」
10/30 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 天皇賞・秋」
10/23 
競馬学特論「駒木研究室・G1予想勉強会 菊花賞」
10/16 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 秋華賞」
10/3 
競馬学特論 「駒木研究室・G1予想勉強会 スプリンターズS」
8/5 競馬学特殊講義 「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(8・最終回)
8/3 競馬学特殊講義 「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(7)
8/2 競馬学特殊講義 「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(6)
7/29 競馬学特殊講義 「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(5)

 

2004年度第77回講義
12月25日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 有馬記念」

 今年もいよいよ有馬記念。中央競馬のグランプリレースの日がやって参りました。今回は勿論、研究室メンバー総出で勉強会を実施しました。
 ただ申し訳無いのですが、前日分の講義振替実施などでこちらの編集作業が遅れに遅れております。とりあえず土曜深夜には駒木の予想だけ公開しておき、会の詳細と研究室メンバーの予想については日曜レース直前の公開となりました。ご了承下さい。


第49回有馬記念(グランプリ) 中山2500芝内

馬  名 騎 手
ゼンノロブロイ ペリエ
ピサノクウカイ 藤田
ハイアーゲーム 吉田豊
コスモバルク 五十嵐冬
ハーツクライ 横山典
シルクフェイマス 四位
ユキノサンロイヤル 柴田善
ダイタクバートラム 武豊
タップダンスシチー 佐藤哲
10 デルタブルース ボニヤ
11 ヒシミラクル 角田
12 グレイトジャーニー 小牧太
13 ツルマルボーイ 蛯名
14 コイントス 岡部幸
15 アドマイヤドン 安藤勝

駒木:「いやー、あっという間に有馬記念だねえ」
リサ:「グランプリー! Ya----ha----!」
珠美:「今年は博士も色々と忙しくしてらっしゃいましたから、月日の流れも速かったんじゃないですか?」
駒木:「そうだねぇ。去年なんかは電器量販店の片隅で逆浦島現象に苛まれていたから、時間の流れもかなりマッタリとしてたようなね」
順子:「…………」
珠美:「来年は今年よりもう少し楽になれば…といったところですか?」
駒木:「もう少しと言わず、もっと楽になってくれればそれで良いよ(苦笑)」
珠美:「(笑)」
順子「…………」
駒木:「あれ? 順子ちゃんどうした? 今日は元気ないねぇ」
順子:「どうしたも何も、なんでこのクリスマスの夜に、年頃の女の子が雁首揃えて競馬の予想しなくちゃならないんですか! クリスマスですよ!」
珠美:「そんなこと言っても、今年の有馬記念が26日なんだから、予想する日はどうしても25日に……」
順子:「そういう問題じゃないんです! そういう問題じゃなくて、クリスマスにはクリスマスらしい過ごし方ってもんがあるでしょう? 大体、珠美先輩もリサちゃんも、おかしいと思いません? 何かこう、もっと“らしい”過ごし方ってのが……」
珠美:「(苦笑)……ま、気持ちは分からなくもないけど、それを今更言ってもね」
リサ:「おかしいですか? オーストラリアだとクリスマスは仲の良い人とか家族とかと楽しく盛り上がるのが普通ですよ?」
駒木:「まぁ君らにはすまないなぁとは思うよ。でもねぇ順子ちゃん、ちゃんとした予定があるなら前もって言ってくれと。休みをあげるよって告知してたじゃないか」
順子:「……いや、まあ、そう、です、けど……」
駒木:「折角のクリスマスだから、一緒に過ごしたい大切な人がいるなら遠慮せず休んでくれて良いよって言ってただろ? それを何だ、相手を見つけられなかった自分の至らなさを棚に上げてだ、今更文句言われてもどうすりゃいいんだ?」
順子:「……あ、いや……」
駒木:「作れってか。オボッチャマくん作るみたいにボーイフレンド作れってか。打ち切り間際のラブコメマンガで何の脈絡も無く恋敵のお相手をでっち上げるみたいに斡旋しろってか」
順子:「いや、そこまでは……」
駒木:「そもそもだ、クリスマスに競馬の予想なんかしたくないってのはねぇ、ぶっちゃけて言うとこっちだって一緒なんだよ!」
順子:「(笑)」
珠美:「(苦笑)」
駒木:「僕だってねえ、言いたいよ。『週末はちょっと野暮用があって予想が出来ませんので、日曜日の夜にレース回顧で勘弁して下さい』とか、ちょっとニヤケた顔で謝ってみたいさ。『コレ(小指を立てて)がコレ(両手の人差し指を頭の上にかざして鬼のツノに見立てて)でして、すいませんねぇ』…なんて、中川家の漫才みたいなベタな事を言ってみたいよ!」
リサ:「博士、『水曜どうでしょう』の大泉洋サンみたい……」
順子:「(小声で)珠美先輩、ひょっとしてわたし、点けちゃいけない所に火、点けちゃいました?」
珠美:「(小声で)そうみたいね(苦笑)。ま、たまには聞いてあげて(微笑)」
駒木:「今日もちょっと用があって三ノ宮(注:神戸で一番人が多くて華やかな街)に行ったんだよ。そうしたらもうどこを見てもカップル、カップルだよ。通行人の9割以上が男女2人連れでね、もう服装から何からバッチリ決めて、カップル、カップルが小川直也ばりにハッスル、ハッスルしてるわけ」
順子
:「(苦笑)」
駒木:「もうカップルの男なんて見るからにイレ込みまくってるわけだよ。サトラレでもないのに全身から『種付けさせろー種付けさせろー』って思念波を半径1キロ四方に向けて撒き散らしててさぁ、居た堪れないったらありゃしないよ」
珠美:「あの、博士、リサちゃんもいますし、もうちょっとお言葉には気をつけ……」
リサ:「ダイジョウブです。面白いから続けてください(笑)」
駒木:「それでだ、もうカップルなんか見てらんないから目を凝らして“お仲間”を探してみたらだ。1人でいるのは僕に負けず劣らず見るからに冴えない人たちばかりだ。僕ぁもう悲しいよ」
順子:「(笑)」
駒木:「もう道を歩いてるのが嫌になって、行きつけの雀荘に足を運んだらさぁ、いつも週末の午後になれば平気で4卓、5卓立ってる店なのに、クリスマスだからか知らないけど、メンバー(=店員)3人入ってやっと2卓だよ。店内に客5人」
順子:「わ、笑えない……(苦笑)」
駒木:「そうやってね、自分と同じ境遇の冴えないお方とだ、天皇誕生日からぶっ通しでシフトに入ってて意識が混濁しているメンバーさんと卓を囲んでるとね、もう悲しくて悲しくて……。で、自分の手牌を見たら石川啄木の詩を口ずさみたくなるような牌姿ばかりで──」
順子:「働けど働けど…ですか(笑)」
珠美:「……えー博士、大変申し訳ないのですが、そろそろ予想の方を始めないと時間が……」
駒木:「了解(笑)。じゃあ始めようか。珠美ちゃん、進行して」
珠美:「ハイ。それではいつも通り、ステップレース別に大まかな出走馬の概説をお願いします。今回はジャパンカップ組と別路線組に二分割されると思いますが……」
駒木:「そうだね。昔は天皇賞、菊花賞からの直行組も多かったんだけど、最近はステップレースから中3週で天皇賞→中3週でジャパンカップ→中3週で有馬記念…というローテーションの調整ノウハウが浸透して来たのか、アクシデントでもない限りは秋にG1を3戦使うようになって来たね。まぁ今回もジャパンカップ組が主力と見て間違いないだろう。
 2連勝したゼンノロブロイ、まぁ秋緒戦までの詰めの甘さが見られなくなった辺り、ここに来て静かに本格化してるってのはあるんだろうね。天皇賞は恵まれた感じもあったけど、ジャパンカップは相手が相手とはいえ、なかなかに強いケイバをしていた。
 コスモバルクは大健闘ではあるんだけど、あれが現状ではギリギリ一杯かな、という気がしないでもない。まぁ言ってみれば昔のゼンノロブロイというか、牡馬版のトゥザヴィクトリーというか。
 デルタブルースはもう完全に化けちゃった感じだね。2連続で好走されたら、もうフロック扱いするわけにはいかないだろう。ただ、これが秋5戦目。G1の2戦にしても、かなりキツく追われているし、体調面はピークに近いところを維持するだけで精一杯だろうね」
順子:「ジャパンカップと言えば、ヒシミラクルが直線入るところまでは凄かったですよねー」
駒木:「今回は調教の動きを見る限りでは九分程度には復調して来てるみたいだよ。メンバーの水準的にも、勝って来たG1レースとそれほど大差ないし、面白い存在ではあるよね。
 あとはハーツクライとハイアーゲームか。完全にレースの流れに乗り損ねてたから前走は度外視するとしても、脚質的に追込タイプじゃあ中山の2500mは、ちと厳しい。7年前に3歳馬で差し切ったシルクジャスティスに比べると、地力的に一枚落ちる気もするしね」
珠美:「では次に別路線組になりますが、注目はやはり凱旋門賞以来の出走となる日本のエース・タップダンスシチーですね。いかがでしょうか?」
駒木:「んー、凱旋門賞のダメージが結構尾を引いてる感じでね。でも引退レースだっていうんで急ピッチで仕上げて来たみたいんだけど、直前になって引退撤回が決定と。陣営も拍子抜けだろうねぇ。イチかバチかの大勝負でテンションを上げてたら、『来年のこともあるから無茶は止めてね』って話になっちゃった。
 レースは生き物だから判んないけど、勝手に勝ちが転がり込んで来るってシチュエーション以外は勝負に行かないで、とりあえず見せ場だけは……ってレースになるんじゃないかな」
珠美:「なるほど……」
リサ:「珠美サン、タップダンスシチーに◎印つけてるのに……」
順子:「大丈夫。駒木博士の言うことだから(笑)」
駒木:「……講義止めて、あと1時間ぐらい愚痴聞かせてやろうか?」
順子:「いえ、遠慮させてもらいます(笑)」
珠美:「あと注目は天皇賞から直行のシルクフェイマスとツルマルボーイ、それからステイヤーズSで完全復調をアピールしたダイタクバートラムあたりでしょうか?」
駒木:「シルクフェイマスは軽いケガでジャパンカップを断念。まぁ、そのケガは全く気にしなくて良いんだけど、どうも春に比べるとまだフィジカル面が戻りきってないみたいだね。だから春の姿を考えてるとどうかな。
 ツルマルボーイは、やっぱり脚質だろうねぇ。去年にしても勝負が決まってから猛然と追い込んで4着。今年は騎手が2着のヨコテンから出遅れの蛯名に乗り替わり。まぁ微妙だね(笑)。
 ダイタクバートラムは、調子云々より地力だろうね。前走とは比べようも無いメンツの中で走るわけだからね」
順子:「ダートから来たアドマイヤドンはどうです?」
駒木:「そりゃ、元々は芝で2歳チャンピオンになって、菊花賞でも入着経験のある馬だから芝の長距離が向かないはずは無いんだけどね。ただ、ダートほどの強さを期待するのはどうだろう。ノーマークの身軽さを利しての“蹴たぐり”一発があるかないか、だろうね」
珠美:「……時間に巻きが入って来ました。取り急ぎ展開予想をお願いします」
駒木:「逃げるのはタップダンスシチーか、押し出されてコスモバルク……と言いたい所なんだけど、この2頭の陣営は余り逃げたくなさそうだからなぁ。ひょっとすると9年前のマヤノトップガンみたいに意外な馬が逃げるかも知れないよ。デルタブルースとか、コイントスとか。
 ペースは、コスモバルクが引っ張るなら平均ペースになるだろうけど、そうじゃなかったら少し遅めかな。ただ、出走各馬の脚質分布は偏っていないんで、そんなにゴチャついた展開にもならず、ポジション争いで揉める事も無いだろうね。淡々とした流れになって、3コーナーからの持久力勝負か、三分三厘からの決め脚勝負か。
 で、こうなると追込脚質の馬はかなり厳しい。5回もコーナーを回る特殊な形態のレースだしね。まぁ勝負権が有るのは先行集団から中団までかな。勝負所で強引に捲って来るヒシミラクルまでがギリギリだろう」
珠美:「それでは、各自の予想発表に参りましょう。まずは博士からお願いします」
駒木:「はいはい。

◎ 1 ゼンノロブロイ
○ 11 ヒシミラクル
▲ 10 デルタブルース
△ 4 コスモバルク
× 6 シルクフェイマス
× 14 コイントス

 本命は敢えて1番人気のゼンノロブロイから。期待値から考えると割に合わないんで買いたくないんだけど、僕の場合、当てるためにはまず自分を裏切る所から始めないとね(笑)。まぁどんなレースになっても抜け目無く対応できる自在性もあるし、深刻なイン詰まりでも無い限りはペリエが格好はつけてくれるでしょう。優勝候補というより連軸かな。
 2番手、3番手は同系のヒシミラクルデルタブルース。ロングスパート合戦になったらこの2頭だね。トップスピードに入ったら絶対にバテないってのが強み。
 これ以下は2着候補。コスモバルク、実は僕はそんなに力のある馬とは思ってない。弱メンバーでなら1つくらいG1獲ってもおかしくないとは思うけどね。まぁ今回は決め脚勝負になった時の前残り要因。
 シルクフェイマスはギリギリのタイミングで復調したら…だね。むしろ2年前に3着したコイントスの方が面白いかも。こっちは大分体調も戻って来てるみたいだしね。
 馬券は今回は馬連ベースで。1-11、1-10、10-11、1-4、1-6、1-14。ちょっとした展開の変化によって上位馬が入れ替わる可能性が高いので、3連単はお遊び程度に控えるのがベター。1-4-14、10-11-1、11-10-1の3点なんてのはどうかな」
珠美:「私は実績重視・スローペースの前残りを期待してタップダンスシチー本命です。馬連で1-9、4-9、1-4、9-10、8-9、9-11
順子:「わたしはヒシミラクルアドマイヤドンの軸2頭流しマルチで3連単を。(11、15)−(1、4、9、10)です」
リサ:「ワタシは……4番コスモバルクと、四位ジョッキーの乗ったシルクフェイマスで──」
順子:「ヨン様馬券(笑)」
駒木:「まぁ、3年前は9・11テロの年でマンハッタンカフェとアメリカンボスだったからなぁ。でもちょっと苦しいタカモト馬券だね(笑)。どうせならペ・ヨンジュンってことで“ペ”のペリエも入れたらどうだい?(笑)」
珠美:「それですと、騎手の名前が『ペ・四・十』ですしね(笑)」
順子:「あ、ホントだ(笑)」
リサ:「じゃあ馬連ボックスと3連複の1、4、6を」
駒木:「……ということで、今年の競馬学講義も終わりだね。ちょっと中途半端な形になっちゃったけど、また来年宜しくということで」
珠美:「それでは皆さん失礼します」
順子:「お疲れ様でしたー」
リサ:「オツカレでしたー」

 


 

2004年度第73回講義
12月11日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 朝日杯フューチュリティS」

 気がつけば、今年のJRAG1レースもあと2つ。そして、気がついたら駒木、この秋のG1、プライベート馬券は全敗だったりするわけですが。
 やっぱり3連単は難しいと言うか、それ以前に馬連の段階で殆ど外れているんですから救いようがありませんなぁ。状況的に集中して予想出来ていないという事もあるのですが、何かこう、漠然とした己の博才の無さをしみじみと痛感する今日この頃であります。

 毎週スクランブル体制ばっかりやってられませんので、今週はとりあえず研究室メンバーを招集してみました。果たして結論が出るのやら、まぁ「ドリフ大爆笑」の雷様コントを見るような生温かい目で、どうぞご覧下さい。


第56回朝日杯フューチュリティS 中山1600芝外

馬  名 騎 手
コパノフウジン 小野
ペールギュント 小牧太
テイエムヒットベ 熊沢
スキップジャック 勝浦
セイウンニムカウ 田中勝
メジロスパイダー 木幡
マイネルレコルト 後藤浩
ストーミーカフェ 四位
シルクネクサス 柴田善
10 エイシンヴァイデン デムーロ
11 サクセスドマーニ 藤岡
12 マイネルハーティー 武豊
13 エイシンサリヴァン 吉田豊
14 ローランコングレ ボニヤ
15 ディープサマー 藤田
16 マルカジーク 蛯名

駒木:「え〜、第24回どうすんだ馬券当たんねぇよ対策会議〜」
珠美:「(笑)」
順子:「また元ネタに劣らずリアルな回数ですねそれ(笑)」
リサ:「えっと、それは──?」
順子:「あー、リサちゃんみたいな普通の女の子は知らなくていいからそれは(笑)」
駒木:「……まぁ冗談はさておき、だ。秋のG1もラス前。ここまで的中実績があるのが珠美ちゃんの馬連だけという非常事態なんで、ここはキッチリ当てに行くよ」
珠美:「そう言って本当にキッチリ当たれば苦労はないですけどね(苦笑)」
順子:「博士も展開とペースの予想はそれほど外れてないんですけどねー。それがどうして直線の攻防が終わると、フォーカスとかけ離れた結果に終わるのか」
リサ:「順子サンも、3連単の軸は当たるのに、予想は当たってないですよねー(笑)」
順子:「まあねー(苦笑)」
珠美:「……えーと、これ以上雑談を続けていても雰囲気が悪くなるだけのようなので(汗)、博士に出走メンバーの概説をお願いしましょう」
駒木:「……そうだねぇ、一言で表現すると中途半端なメンバーだよね。ステップレースで着順に関係なく強いケイバをした馬がことごとく欠場して、微妙なメンツばっかりが残ってるって感じ。比較的マシなレースをしてるかな…という北海道組に限って外枠とか休み明けとか懸念材料も多いしねぇ」
珠美:「東京スポーツ杯2歳Sを2着したペールギュントはどうですか? なかなか味のあるケイバをしたと私には思えたのですが……」
駒木:「そうだね。まぁ今回のメンバーの中では比較的内容のあるレースをしてるかな…といったところだね。ただ、東スポ杯は1着馬と3着馬が豪快なレースをしてるから、どうしても影が薄くなるかな…といったとこ」
順子:「私はデイリー杯と新潟2歳Sに注目してるんですけど、どうですか? ほら、先週ショウナンパントルが2着したでしょう?」
駒木:「牝馬と牡馬とでは全体的な水準が違うから微妙だけどね。でもまぁ不気味ではあるのは確かだね。来ても来なくても驚けない」
順子:「また売れない占い師並に微妙な返事ですねー(苦笑)」
リサ:「……えーと、京王杯と東スポ杯、レヴェルが高いのはどっちですか?」
駒木:「メンバーそのものは京王杯なんだけど、上位に来た馬の実績とレース振りがちょっと物足りない。逆に東スポ杯は新馬戦から直行の人気先行馬を実績馬が斬り捨てた…みたいな感じだから、信頼出来るのはこっちかな…という気がするね」
リサ:「セイウンニムカウって馬の名前が気になってるんですけど……(苦笑)」
駒木:「ああ、いい名前だね(笑)。でも前走は京王杯でスローペースに恵まれて3着だからなぁ。しかも騎手がカツハルだしなぁ……」
リサ:「う〜〜〜〜ん、どうしようかなー……」
珠美:「……さて。結論が出たり出なかったりのようですが、展開の方はどうでしょう?」
駒木:「キッチリ先行タイプと差し・追込タイプに分かれたって感じだね。速めのペースで縦長の隊列になって、先行争いをする馬以外は展開の紛れは少なくなりそうだ」
珠美:「差し馬の届く展開でしょうか?」
駒木:「理論上はそうなるね。先行馬も折り合い次第で用無しってわけじゃないだろうけど、前々へ行く馬が結構いるから、外枠のディープサマーは厳しいだろうね。中山の芝1600mって、阪神に負けず劣らず外枠不利だから」
順子:「気になってるのはエイシンヴァイデンのデムーロ騎手がどういうレースをするかなんですけど、どうなると思います?」
駒木:「鋭いというか、また微妙な所に目をつけたねー。そうだなぁ、それはレースに乗る他の15人の騎手が一番知りたいんじゃないのかな(笑)」
順子:「なるほど(笑)」
駒木:「まぁデムーロのやる事だから、まず間違いなく際どく勝ちに行くレースをするだろうけどね。経済コースで中団待機して脚を貯めて、直線で一気に……ぐらい考えてるんじゃないのかな。ギリギリのレースをするだろうから、地力そのものを疑わないのなら主力扱いして良いんじゃないのかな」
順子:「博士からお墨付きをもらって良いのやら悪いのやらなんですが、まあ参考にします(笑)」
駒木:「一言多いんだよ(苦笑)」
珠美:「……さて、それでは時間も余裕が有りませんのでフォーカスをお願いします」
駒木:「──じゃあいつも通り印から。

◎ 2 ペールギュント
○ 10 エイシンヴァイデン
▲ 7 マイネルレコルト
△ 4 スキップジャック
× 8 ストーミーカフェ

 ……どの馬も強調材料に欠けるんだけど、まぁ2連続で安定したレースをしてるし、展開も向きそうだしで一応ペールギュント。同じ公営兵庫出身の岩田騎手にG1制覇を先にやられちゃった小牧太騎手にしてみても、ここは踏ん張り所だろうし。関東の人にはピンと来ないかも知れないけど、兵庫のフトシって言えば公営時代はアンカツと並ぶ存在だったんだからね。
 で、あとは前走でコケてる馬の巻き返しに期待するという意味で、エイシンヴァイデンマイネルレコルト。馬券で期待出来るのはここまでだね。あとはあくまで押さえ。
 スキップジャックは前走が最内を通れたってのが大きかっただろうし、ストーミーカフェはまだ仕上がり途上って感じだろうし。あと、ディープサマーは外枠過ぎて買えない。
 馬連だと2-10、2-7、7-10、2-4、2-8。…でもつかないねコレ(苦笑)。3連単はフォーメーションで(2、7、10)−(2、7、10)−(7、10)の4点。こっちはどれも万馬券になるのかな?」
珠美:「…ありがとうございました。私は…というか私もペールギュントが本命です。差し馬に展開が向くということで、相手には差し馬を中心に選んでみました。馬連で2-4、2-7、4-7、2-12、2-14、2-8です」
順子:「私はエイシンヴァイデン本命で。3連単ばっかりだと当たる気しないんで(苦笑)、今日は試しに馬単でいきます。10番から12、7、14、2、15の5点
リサ:「ワタシはやっぱりセイウンニムカウを応援します(笑)。カツハルさんのG1勝ちを見届ける生き証人になりたいと思います! 単勝5番と、馬連で5番から2、10、15、7、12です」
順子:「生き証人(笑)」
駒木:「また難しい単語を知ってるなぁ(笑)」
珠美:「……では、全員の予想が出揃った所でお時間になりました。なお、このレースの発走時刻は15時25分で、普段のG1レースよりやや早めですので、皆さんご注意下さいね。
 ……それでは、皆さん、お疲れ様でした」

駒木:「ご苦労様」
順子:「失礼しまーす」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは今日の講義を終了します。最後まで御清聴有難うございました」

 


 

2004年度第71回講義
12月4日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 阪神ジュベナイルフィリーズ」

 申し訳有りません。今週も諸々の事情により“スクランブル体制”でお送りします。
 週を追うごとに楽な方向へ逃げているようで、自分でも大変心苦しいのですが、とりあえずは最悪の事態(講義不実施&年末用原稿締切オーバー)を避けるのを最優先事項としてこの時期を乗り切って行こうと思います。


第56回阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神1600芝

馬  名 騎 手
カシマフラワー 松永
エリモファイナル 内田博
ラインクラフト 福永
マイネデセール 木幡
ショウナンパントル 吉田豊
アンブロワーズ ホワイト
ハギノコマチ 藤田
テイエムチュラサン 小池
エイシンハッピー
10 ジェダイト 柴田善
11 ミラクルコンサート 和田
12 リヴァプール 川島信
13 クロユリジョウ 池添
14 デアリングハート 武幸
15 モンローブロンド 安藤勝
16 コスモマーベラス 長谷川
17 ライラプス 武豊
18 キャントンガール デムーロ

 前哨戦・ファンタジーSを圧勝したラインクラフトの本命不動、焦点は2着争いの堅いレース……と思われていたが、土曜夕方から夜にかけて阪神地方は台風襲来かと思われるような大雨に見舞われて、馬場渋化は避けられない模様。出走全馬が重より悪い芝馬場の経験が無く、一気に不確定要素の多い波乱含みの様相を呈して来た。ただ、天気は日曜午後から回復に向かうようなので、馬場状態にはレース直前まで注視を怠らないよう申し上げておく。開幕週だけに稍重までならそれほど神経質になる必要はないだろう。
 (追記:午前6時30分現在の天候は曇、芝の馬場状態は稍重です)

 ステップレースはファンタジーS組と別路線組に分けられるだろう。
 まずファンタジーS組は、福永JKが「牝馬同士で現在望み得る最高のメンバー」とコメントしたが、なるほど重賞2着馬や500万条件特別の勝ち馬が集った粒揃いのメンバーだった。そんな中、格の差を見せつけるように抜群の瞬発力で後続を千切ったのが、先述の福永JKが騎乗したラインクラフト。久々に大物感溢れる名牝候補の誕生だった。後続は2着と3、4着に差がついたが、これは多分にペースと展開によるもので、この3頭は互角と見て良いだろう。5着以下はそれらに比べて地力が一枚から二枚落ちる。
 別路線組からは、特に北海道で重賞を勝って来た2頭に注目しておきたい。距離延長や、これまでの対戦相手とのレヴェル差など懸念材料も少なくないが、勝負付けが済んでいないと言う意味で未知の魅力も大きい。その他の、芝のオープン・条件特別をステップにした馬は、ファンタジーSの2〜4着馬グループと同格か少し落ちる程度の地力だろう。
 数年に一度ペースで波乱の立役者となる、新馬・未勝利・平場500万条件戦から直行してきた馬たちだが、今年は実力上位馬の水準がそれほど低くないので、普通に考えれば出番は巡ってこないのではないだろうか。

 展開はほとんどの馬が先行か、最悪でも8〜9番手でレースを進めたい馬で、スタート直後のポジション争いは極めて熾烈なものになりそうだ。この辺は出たとこ勝負なので予想は困難だが、先行馬が10番手以降に回らされると厳しくなるだろう。特に外枠の先行馬は、位置取りで距離損を強いられるので、苦しい展開になるのではないか。
 逃げ宣言しているのはテイエムチュラサンだけだが、好位を求める馬たちに圧される格好となって、ペースは速めの平均ペースからハイペース。澱みの無い息の入らない流れのまま、直線でのサバイバルレースへ。
 直線では、アクシデントや重馬場が合わない事態でも起こらない限り、ラインクラフトが一気に抜け出しを図るだろう。そこへ唯一の差し馬・リヴァプールがどう馬群を捌いて決め手を見せつけるか。とにかく地力以上に運を必要とする、予想者泣かせの予想困難な展開となりそうだ。

 ……さて、それでは駒木のフォーカスを紹介しよう。

◎ 3 ラインクラフト
○ 12 リヴァプール
▲ 1 カシマフラワー
△ 15 モンローブロンド
× 6 アンブロワーズ
× 10 ジェダイト

 本命はやはり、人気もしているが地力上位のラインクラフト。実力をフルに発揮出来さえすれば、今回も次元の違いを見せ付けてくれそうだ。
 2番手以下はほぼ横一線だが、ここは唯一の差し馬らしい差し馬であるリヴァプールを推したい。位置取りに囚われる事無く、自分のペースでレースが運べそうなのはやはり強み。問題は川島JKがその“自分のレース”をするだけの余裕があるかどうかだが……。
 3番手評価にはカシマフラワーを抜擢。ただこれは馬場悪化に伴う対応なので、馬場状態が回復した場合は×印に繰り下げる事になる。ダート馬の印象が強いが、すずらんSの相手関係(2着に負かしたケイアイブーケがファンタジーSで5番人気7着)から考えると、芝でもファンタジーS入着組ぐらいの力はあるだろう。
 モンローブロンドは今回、速めのペースにどこまで対応出来るかがカギになってくるだろう。伏兵としては穴人気してしまっているが、アンブロワーズとジェダイト。これまでの相手関係を考慮すると2着、3着争いなら互角に争える。
 有力馬の一角を占めるライラプスだが、この外枠はやはり余りにも酷。去年のヤマニンアルシオンのような展開利は望めそうに無いだけに、入着一杯で終わりそうな気配。

 馬連3-12、1-3、1-12、3-15、3-6、3-10の6点(馬場回復時は1-12を12-15に変更)
 3連単フォーメーション(1、3、12)−(1、3、12)−(1、12)の4点(馬場回復時は1番を15番に変更)

 そして、今回もフォーカスだけの参加になってしまった、3人娘のフォーカスは以下の通りです。彼女たちのファンの皆さん、申し訳無いです。

 栗藤珠美…ラインクラフトの軸鉄板。馬連流し3−12、17、15、5、6の5点。
 一色順子…荒れ気味の馬場を勝って来た北海道組2頭に注目。3連単軸2頭マルチ(1、6)−(3、12、15、17)の24点。
 リサ=バンベリー…ラインクラフトの圧勝とファンタジーS組の再来を期待して。馬連3-15、3-12、12-15、3-17の4点

 ……ということになりました。来週は多少マシな講義がお届けできるんではないかと思います。どうか何卒。

 


 

2004年第69回講義
11月27日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 ジャパンCダート&ジャパンC」

 朝からバタバタしまくって何とか表紙データを入稿完了。ここの所、馴れない事の連続で神経が参りまくっている駒木ハヤトがお送りする競馬学特論であります。

 さて、この週末はご存知の通り、例年は土・日に分けて開催している「ジャパンカップ」の名の付くG1レース2競走を、より集客と売上げが見込める日曜日に施行してしまうという“ゴールデンジュビリーデー”が開催されます。
 本来ならば、こんなお祭り的なイベントは当講座でもそれなりの大きな扱いで採り上げなければならないのでしょうが、残念ながら物理的事情の制約が厳しいのが現状です。というか、普段1レース分の予想をお送りするだけでも日曜早朝までかかっているのに、2レースの予想をどうしろと言うのか…という感じです(苦笑)。
 ……というわけで、今回は準備時間圧縮のため、出走各馬の短評を省略した上で、駒木による単独講義の形式でお届けしたいと思います。何卒ご了承下さい。


第5回ジャパンカップダート 東京2100ダ

馬  名
(赤字は外国調教馬)
騎 手
ナイキアディライト 石崎隆
クーリンガー 和田
スナークレイアース 小野
ジンクライシス 蛯名
ユートピア デムーロ
イーグルカフェ 田中勝
オミクロン スボリッチ
シロキタゴッドラン 柴田善
ハードクリスタル 岡部幸
10 アドマイヤドン 安藤勝
11 トータルインパクト スミス
12 ヴォルテクス ファロン
13 トップオブワールド 四位
14 タイムパラドックス 武豊
15 ホーマンベルウィン ペリエ
16 ローエングリン 横山典

 1番人気の馬が3年連続で変わらないという、新鮮味と層の厚さに欠ける日本勢と、これまた相変わらず質・量・信頼感に欠ける外国勢が、普段は重賞はおろかオープン特別ですら滅多に使われない東京2100mコースで相見えるという不確定要素の権化のようなレース。出走各馬の地力差が大きいので人気は偏るだろうが、同じようなパターンで行われた過去のこのレースでは人気薄が上位に突っ込んで来ているケースが目立つ。人気馬に対する過度の信頼は禁物と言える。
 日本勢はジャパンブリーダーズC組が実績も含めて優勢で、馬券作戦もやはりこのレースの上位馬が中心という事になるだろう。未知の魅力という点で、ダート経験が3歳の下級条件時代以来というローエングリンに注目が集まっているが、「明らかに通用しない実力のダート馬よりは期待出来る」程度の認識で留め置くのが妥当ではないだろうか。
 外国勢は、そもそもダート競走自体が発展途上のヨーロッパ勢は論外。期待をかけるならダート競馬の“本家”アメリカ勢という事になるのだが、これも3年前に強豪リドパレスが良い所無く惨敗しているように、日本独特の砂馬場適性によって結果が大きく左右される傾向にあるようだ。今回出走するトータルインパクトは「前年優勝馬のフリートストリートダンサーより数段格上」という理由で支持されているようだが、そのフリートストリートダンサーと第1回3着馬のロードスターリングは、下馬評の段階では「これまでの実績から見ると地力に劣るため苦戦」と言われていた馬だった。このレースに限っては外国におけるダート実績は一切信頼出来ない。アメリカ馬ならどの馬も均等にチャンスとリスクがあると見るべきだ。

 さて展開だが、逃げ馬はナイキアディライト、ユートピア、ローエングリンの3頭だが、9度の連対が全て逃げで占められているナイキアディライトが最内の枠順も利してハナを切りそう。ペースは速めの平均〜ハイペースか。しかし、有力とされるアドマイヤドンやトータルインパクトなど、先団〜好位でレースを進めたい馬が半数以上を占めるメンバー構成ゆえ、逃げ馬にとってはかなり過酷な流れになる事は間違いない。
 また、先行馬の中には注文通りにレースを進められない馬も相当数出そうで、展開はかなり流動的。501メートルの長い直線では壮絶な消耗戦が展開される事になるだろう。こういう場合、本来なら差し・追込馬の出番になるのだが、今回のメンツを見るといかにも力不足。敢えて1頭挙げるなら、一昨年の覇者・イーグルカフェだが、この馬が勝った時は「中団から追込馬の決手を発揮して勝つ」というデットーリの美技が冴えてこそのものだった。

 そういうわけで、余りにも不確定要素が大きいレースではあるのだが、ではそういったレースを予想する際に何が一番の拠り所になるかと言えば、これはやはり地力と騎手の腕という事になってしまう。パチンコで釘を見て台を選ぶように、より高い確率で勝利の見込めるチョイスをしてみたい。

◎ 10 アドマイヤドン
○ 5 ユートピア
▲ 11 トータルインパクト
△ 16 ローエングリン
★ 14 タイムパラドックス

 ……ということで、本命はやはりアドマイヤドン。このレースでは勝ち運に恵まれていない印象があるし、競り合いに弱く、時折コロッと負けてしまう悪癖があるのだが、やはり確率論的に考えるとこの馬以外に本命を任せられる馬は見出し難い。負けるにしても2着か3着で、馬券の軸馬として外すわけにはいかないだろう。
 対抗格にはユートピアを推す。3歳秋以降の長期不振と、芝レースにおける頼りない戦績が嫌気されて人気をやや落としているが、2走前に当時交流重賞無敗だったアドマイヤドンを破るなど、伏兵に留まらないだけの力は持っている。デムーロ騎手の豪腕にも期待。
 アメリカのトータルインパクトが単穴。先述の理由からして、アメリカ馬はこれぐらいが適切な評価と考える。
 未知の魅力からローエングリンも一応印を打っておく。展開は厳しいが、ダート適性如何によっては大変身も考えられる。穴人気気味のタイムパラドックスは3連単の3着要員だが、前売段階のオッズを見る限りでは期待値が余りにも低すぎて買い辛い。
 馬券は2連勝式なら馬連で5-10、10-11、5-11、10-16の4点3連単は(5、10、11)の3頭ボックス6点+フォーメーション(5、10)−(5、10、16)−(5、10、16)4点の計10点

 ちなみに、研究室メンバーのフォーカスは以下の通り。

 栗藤珠美…やはり実績上位のアドマイヤドンから。馬連10-14、10-11、11-14、5-10、10-16、6-10の6点。
 一色順子…デムーロ効果に期待してユートピアに期待。3連単フォーメーション(5、10)−(5、10)−(1、4、6、9、14、16)の12点。
 リサ=バンベリー…いつも芝のレースで頑張る姿が気になっているローエングリンを応援。馬連10-16、11-16、10-11、14-16、5-16の5点


第24回ジャパンカップ 東京2400芝

馬  名
(赤字は外国調教馬)
騎 手
ポリシーメイカー パスキエ
リュヌドール ジャルネ
ハーツクライ 武豊
ナリタセンチュリー 柴田善
フェニックスリーチ ドワイヤー
マグナーテン 岡部幸
デルタブルース 安藤勝
エルノヴァ 藤田
ゼンノロブロイ ペリエ
10 コスモバルク ルメール
11 ヒシミラクル 角田
12 ハイアーゲーム デムーロ
13 トーセンダンディ 江田照
14 ホウキパウェーブ 横山典
15 パワーズコート スペンサー
16 ウォーサン ファロン

 日本勢が掲示板独占を果たした01年以来の低レヴェルとも言われる今年の外国勢ではあるが、ホスト国日本も、ここ10年では96年(バブルガムフェローが大将格で惨敗し、秋華賞馬ファビラスラフィンがまさかの2着好走)か99年(スペシャルウィークが孤軍奮闘)と匹敵する質・量に欠けるメンバー構成で、1着賞金2億5000万の国際G1とは名ばかりの低調な一戦。よってダートに引き続き、こちらも不確定要素満載で予想者泣かせのレースと言っていいだろう。
 日本馬にとってのステップレースは天皇賞と菊花賞だが、どちらも確固たる本命不在のメンバー構成だった上に、有力馬の相次ぐ凡走と人気薄の台頭によって実力査定が極めて困難な内容になってしまった。まるで宝塚記念2着馬候補とステイヤーズS1着馬候補のお披露目会のようだ(笑)。敢えて言うなら、今の馬場状態から勘案して菊花賞上位組に注目といったところだが。
 外国勢5頭は、海外での実績だけなら日本勢と比べても見劣りしないが、スピード競馬適性の面で疑問符が付く馬ばかり。好走するとすれば8枠の2頭だろうが……。

 展開は、コスモバルク陣営が「今回は控えさせる」と明言しているため、順当に行けばマグナーテンが逃げるだろう。僚馬・ゼンノロブロイのペースメーカー役を務める。道中は、やや遅めの平均ペースになるのではないか。
 好位に控えるのはパワーズコート、コスモバルク、デルタブルースあたり。ゼンノロブロイはそれらを見る形で中団を追走か。その他の有力馬は直線一気のタイプが多く、ハイアーゲーム、ホウキパウェーブが10番手前後、ハーツクライ、ナリタセンチュリーは最後方付近からのレースになるだろう。
 直線は決め手よりも底力勝負のサバイバルゲーム。昨年は“行った行った”のレースになったが、本来は好位〜中位から差脚を伸ばす馬の活躍が目立つ。 

 ……さて、そういうわけでフォーカスは以下の通り。

◎ 7 デルタブルース
○ 15 パワーズコート
▲ 9 ゼンノロブロイ
△ 12 ハイアーゲーム
× 14 ホウキパウェーブ
× 16 ウォーサン

 本命には菊花賞馬・デルタブルースを抜擢。最近の傾向として、混戦ムードのレースではステイヤータイプの馬がバテない強みを活かして上位に食い込むケースが多く、今回もそういう諸条件が揃っている感がある。
 外国馬からは人気しているがパワーズコートを挙げておく。気性難が懸念材料だが、ほぼ3着を外さないという堅実さも併せ持つ。
 天皇賞を制したゼンノロブロイだが、前走は相手と展開に恵まれた感が強い。1番人気は人気過剰とも思えるが、果たして? 
 3歳馬からは、まずはハイアーゲーム。菊花賞は11着惨敗だったが、これは出遅れとチグハグなレース運びが全て。名手・デムーロが乗って巻き返すか。ホウキパウェーブは今回が菊花賞の走りがホンモノかどうかを知るための試金石。菊花賞以外の実績は今一つだが?
 最後に外国馬からもう1頭、ウォーサン。日本でもお馴染のカーリアン産駒。カーリアンの仔と言えば、1800m前後のレース、しかも休み明けに強いという印象があったが、この馬は母系の影響か距離が長い方が良いスタミナタイプ。デルタブルースを推す以上、この馬にも印を打っておくべきだろう。
 2連勝式なら馬単で勝負。7番1着流しで9、12、14、15、16へ5点。3連単はほとんどの組み合わせが万馬券と、かなりの割れ方をしているが、これはそれだけ当たり難いという事で多点買いは逆に禁物。ここは宝くじを買うような気持ちでフォーメーション(7、15)−(7、9、15)−(7、9、15)の4点としよう。

 なお、研究室メンバーのフォーカスは以下の通り。

 栗藤珠美…展開有利。実績とペリエ騎手を信頼してゼンノロブロイ中心。馬連9-10、9-15、10-15、7-9、3-9、9-16の6点。
 一色順子…困った時のガイジン騎手頼み。3連単軸2頭流しマルチ(12、16)−(2、7、9、10)の24点。
 リサ=バンベリー…外国馬が活躍するところを見てみたいので、外国馬5頭のボックス買い。馬連ボックス1、2、5、15、16の10点


 ──と、駆け足で2つのレースを採り上げてみました。如何だったでしょうか? ただ、ジャパンカップはメチャクチャ相性の悪いレースなので、実は全く自信がありません(笑)。いつも通り理屈だけ当たって予想は大ハズレになるような気がしてなりませんが、祈るような気持ちで馬券を買ってみたいと思います。
 それでは、皆さんの健闘を祈りつつ、今日の講義を終わります。

 


 

2004年第66回講義
11月20日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 マイルCS」

 どうも、当講座専任講師の駒木ハヤトです。
 今週も張り切って、研究室総出で競馬学特論の講義……といきたいところなのですが、今週は諸般の事情により駒木1人の“簡易版”講義とさせて頂きます。
 また、来週は同日にG1が2レースという“ジャパンカップ・デー”なのですが、そちらの方も十分な時間を確保出来るかは微妙な情勢となっております。
 この埋め合わせは年末にさせて頂くつもりでおりますので、今しばらくご辛抱下さい。


第21回マイルチャンピオンシップ 京都1600芝外

馬  名 騎 手
ギャラントアロー

昨年は人気薄を利して3着逃げ粘り。春以降の不振が気になる所だが、今回は久々に人気薄のレースになりそう。マイペースなら怖さはある。

フォルクローレ 佐藤哲

オープン2戦は健闘するも一線級との差を感じさせられる内容。無心の差しがどこまで届くか?

ラクティ(外国調教馬) ロビンソン

欧州現役最強クラスが堂々登場。固い馬場への適性もあり、ファルブラヴ相手とも互角に戦い、日本でも通用するだけの実力も証明済み。折り合いさえつけば好勝負は間違いない。

マイネルソロモン 小牧太

嵌ったとはいえ、前走の差し脚は立派の一言。更なる相手強化で課題は山積みだが、展開に恵まれればチャンスはあるはず。

ファインモーション 武豊

前年2着馬。北海道シリーズでリズムを取り戻し、3ヶ月の待機で満を持した。調教の動きは申し分無く、あとは馬群をどう捌くかがカギ。

マイソールサウンド 本田

ムラ脚ゆえ大敗続きでも侮れぬが、掴み所の無い馬だけにセールスポイントを探すのが難しい。諸々の懸念材料に目を瞑り、ヒモ穴として買うだけの価値はあると思うが……。

デュランダル 池添

ディフェンディングチャンピオンが一叩きして堂々たる参戦。本来はマイラーだけに、マトモなら前走以上のパフォーマンスは必至。日本古馬勢の中では地力が頭一つ抜けている印象。

テレグノシス 横山典

言わずと知れた府中巧者の名マイラー。他の競馬場でも入着経験はあり、京都コースも全く苦手というわけではないが、同型の強豪相手と差し比べでどこまで伍することが出来るか。

バランスオブゲーム 田中勝

マイルG1で3、4、3着という究極の善戦マンが今年もこの舞台に登場。ただし今年は相手も強化された印象で、この馬に連対圏へ突っ込めるだけのパワーがあるかどうかは……?

10 プリサイズマシーン 藤田

芝へダートへと転戦するゼネラリストも、G2級で入着一杯の実績では、ここで強く推せるはずも無く。

11 メイショウボーラー 福永

秋緒戦のスワンSでは、ハイペースに泣きながらも古馬勢と戦える地力は誇示した。しかし、G1戦績を顧みると、入着以上の活躍を果たすには何かと恵まれが必要のようで。

12 アドマイヤマックス 武幸

昨年の安田記念で2着馬が富士Sで完全復活。体調のピークを過ぎたとは関係者の弁だが、調教の動きは以前絶好。相手なりに流れ込んでしまう詰めの甘さが心配だが地力はある。

13 マイネルモルゲン 後藤浩

現状はハンデG3専門のクセ馬。正攻法では通じる可能性は低く、アッと言わせるなら意表を突いた奇襲戦法ということになるだろうが。

14 ナイトフライヤー 柴原

条件戦を勝ち上がり、今回が富士Sに続くオープン挑戦2戦目。休み明けを叩いた上積みはあろうが、それ以上に相手強化の荷が重そう。

15 ダンスインザームード ルメール

気性難の収まった天皇賞では古馬・牡馬相手に堂々の2着。やはり並の牝馬ではない。ただ、トゥザヴィクトリーを思わせるゴール前の失速癖がやや気になるところで。

16 ロードフラッグ 松永

オープン特別・G3を主戦場にする馬が、7歳にしてG1初挑戦。果敢なチャレンジ精神は認めるが、ここで通用する見込みは……?

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎駒木ハヤトのレース展望

 明らかにG1上級の実力を持つ馬が数頭による上位拮抗の組み合わせ。ただし、有力各馬はそれぞれ無視できない不安を抱え、波乱の目も否定出来ず。一方でワンチャンス・ツーチャンスがあれば馬券圏内に届く馬も多数おり、油断のならないメンバー構成と言える。

 主な前哨戦は、スワンS、富士S、そして今年はマイラーの出走が多かった天皇賞・秋の3レース。
 スワンSはメイショウボーラーやシーイズトウショウなど、G1で2〜3着を争うクラスのメンバーが集まったが、緩い馬場な上にハイペースで先行馬総崩れで実力通りの決着には程遠いレース内容。そんな中、好位で上手く立ち回り、古馬相手のレースにメドの立ったメイショウボーラーだけが収穫を得た感じ。2着のマイネルソロモンに関しては、この馬が強かったというより、この馬が来る位荒れた実力測定には参考外のレースだった…という印象だ。
 富士Sは、G1で2着、3着の経験があるアドマイヤマックスが久々の勝ち鞍を挙げたが、他はG3クラスのメンバーだっただけに、これは順当勝ちか。故に、他の出走馬については語る必要も有るまい。
 天皇賞組は人気を背負って敗れたテレグノシスと、人気薄で好走したダンスインザムードの明暗がクッキリ分かれたレースとなった。チャンピオン級の集う中距離G1としては余りに寂しいレヴェルではあったが、マイルCSの前哨戦としてはやはり価値のあるレースと言えるのではないか。
 別路線からは極悪条件のスプリンターズSから直行したデュランダル、札幌記念で超G2級のマイラー2頭を相手に完勝したファインモーション、そしてイギリスのクイーンエリザベス2世Sを手土産に来日した外国調教馬のラクティ。いずれも実力・実績共に十二分であるが故の“オレ流”臨戦過程という事になるか。これらの馬が真っ当なステップレースを使わなかった事に何ら問題は無く、逆にそのせいでステップレースの価値が落ちただけ…とさえ言える。

 展開はギャラントアローが強引にハナを切り、それをメイショウボーラー、ダンスインザムード、ラクティといった有力先行馬が追いかける展開。ファインモーションは中位から馬群の外へ馬を持ち出して4コーナー捲り、デュランダルやテレグノシスはいつも通りに直線一気の追込戦法。
 ペースは先頭を走るギャラントアローが飛ばすため記録上はハイペースのレースになるだろう。ただ、全体的に見れば、速めの平均ペースで縦長の隊列という展開の紛れが少ない流れになるのではないか。
 ちなみに、ここ10年の傾向を見ると差し・追込勢が有利とのデータが出ている。3〜4コーナーの下りでつけた勢いが平坦な直線では目減りせず、一気に前を捕まえてしまうのだろうか。先行・好位グループから粘りこむには相当の実力か展開の恵まれが必要で、逃げ粘りは至難の業。7年前にキョウエイマーチがタイキシャトルの2着に粘って以来連対例は無く、3着にしても去年のギャラントアローと8年前のエイシンワシントンのみ。

 さて、前置きはこれくらいにしておいて、フォーカスを披露してみよう。

◎ 7 デュランダル
○ 3 ラクティ
▲ 5 ファインモーション
△ 15 ダンスインザムード
× 12 アドマイヤマックス
× 11 メイショウボーラー

 地力的にはデュランダルとラクティの2頭が抜けている感じ。実力通りに走る事さえ出来れば(それが難しいのだが)、この2頭のうちどちらかが勝ち馬になるのではないか。ただ、ラクティは折り合いを欠いて大敗するケースが近3走で2度もあり、環境の変化などを考慮すると今回は軸馬には推し辛く対抗の扱いとした。
 これに続くのは、昨年2着のファインモーション。同じ牝馬なら天皇賞2着のダンスインザムードの方を上位に据える手もあったが、あのゼンノロブロイにキッチリ差し切られるという味わい深い負けっぷりを考えると、最後の直線で甘くならないか心配になる。
 伏兵は復活なったアドマイヤマックス。実績の割に人気が薄く、馬券的な妙味も膨らむところ。メイショウボーラーも実績馬の凡走があれば浮上する。また、印は打たなかったが、テレグノシスもワイド・3連単の一角としてなら考慮する余地もあるだろう。

 1番人気に◎を打ってしまったので馬単は妙味が薄く、2連勝式なら馬連だろう。手堅く行くなら3-7、5-7、3-5、7-15、7-11の5点3連単なら絞り込んでフォーメーション(3、7)−(3、5、7)−(3、5、7、15)の8点としたい。人気馬同士の組み合わせだが、3連単は1番人気でも45倍近くあるので狙う価値はあるだろう。印通り手広くいくなら(3、7)−(3、5、7、11、15)−(3、5、7、11、12、15)だが、これだと32点にもなり、費用対効果はガクンと落ちる。

 なお、参考までに他の研究室メンバーのフォーカスも紹介しておくと、

 栗藤珠美…馬連5-7、5-15、7-15、3-5、3-8、3-12
 一色順子…3連単軸2頭流しマルチ(7、8)−(4、5、9、12)の24点。
 リサ=バンベリー…単勝3&馬連流し3−(1、5、7、8、11、15)

 ……といったところ。詳しいコメントが紹介できないのが残念だが、受講生さんには、何故こういう予想になったのか想像するする事も含めて楽しんで頂く事にしよう。


 それでは、手短ながら、今週の競馬学講義を終わります。日曜日は金曜日に間に合わなかったゼミ後半分をお送りする予定です。

 


 

2004年第64回講義
11月13日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 エリザベス女王杯」

 2週間ぶりの競馬学講義をお届けします。
 今週も時間に追われておりますので、早速講義に参りましょう。
 しかし、こんなに競馬学講義をやるのが苦痛なシーズンは初めてです(苦笑)。


第29回エリザベス女王杯 京都2200芝外

馬  名 騎 手
メモリーキアヌ 秋山

軽ハンデの愛知杯では見事な奇襲成功だが、広いコースでの正攻法では入着クラスに甘んじる現状。昨年の秋華賞(8着)以来のG1挑戦で、果たしてどこまで……?

マイネヌーヴェル 佐藤哲

2歳秋〜3歳春までに3連勝、桜花賞で穴人気したのも最早過去の話か。愚直に差し一辺倒で活路を探るが、マトモに行けば入着一杯の気配。

グローリアスデイズ 小牧太

前走秋華賞はスタート直前に気性難が出てレースにならず。トライアル重賞で連続好走した実績は侮れぬが……?

オースミハルカ 川島信

クイーンS→府中牝馬Sと前哨戦連続制覇はフロックでは不可能。メンバー強化、400mの距離延長は相当に厳しいが、昨年(9着)より上積みはありそうで。

ドルチェリモーネ 岩田

休養明けいきなりのG1挑戦は無謀に過ぎた前走、体調面での上積みはあるだろうが、まだピークには届かぬ気配。歴戦の古馬相手ではセールスポイントが見出せぬ。

レクレドール 渡辺

6着に終わった秋華賞は格負けの印象。G1ホース3頭とは差をつけられた感有るが、人気上位馬凡走の際の“リザーバー”としての資格は有。先行馬ペースを捌けるかがカギだが

スイープトウショウ 池添

完璧な追込が決まって悲願のG1制覇を果たした前走だが、余りにも上手く行き過ぎた感も。1度有る事は2度有るか……?

ヤマニンアラバスタ 松永

牝馬三冠を9→3→5着で完走。牝馬G3クラスでは上位の実力だが、G1を狙うにはいささかパンチに欠ける感も。展開に恵まれての3着候補までか。

オースミコスモ 本田

G1指定オープン2勝、重賞3勝の実績は光るが、実績はほぼ1600〜1800mに限定。この距離は余りにも微妙で。

10 メイショウバトラー 武幸

「メイショウホムラ産駒の記念参戦」の趣が強かった昨年から一転、伏兵的存在ながら勝負権を持って登場。斤量56キロ、距離延長、詰めの甘さなど課題は多いが展開利して粘込む。

11 シンコールビー 四位

果敢なオープン挑戦続けるも、今年は8戦して全て着外。前走は準オープンでも見せ場無く、ここはもはや場違いの様相。

12 アドマイヤグルーヴ 武豊

ディフェンディグチャンピオン登場。3着激走の天皇賞からの強硬日程で反動が懸念されるが、実力は文句ナシで最右翼。敵は己だ。

13 レマーズガール 赤木

交流重賞を転戦中のダート馬が突然の芝G1挑戦。馬場悪化に一縷の望みをかけたが、良馬場では苦戦必至だろう。

14 エリモピクシー 福永

5歳にしてオープン昇格、6歳の今年から重賞戦線に登場した遅咲きの馬。手堅い走りからワイド・3連単要員としての期待高まるが、勝ち負け争うに一枚落ちそう。

15 スティルインラブ

史上2頭目の三冠牝馬も今年は突然の大スランプ。崩したリズムを懸命に建て直し、捲土重来を期す。ここ一本に絞ったローテーと先行馬有利の展開は大きなアドバンテージ。

16 ウォートルベリー(外国調教馬) ルメール

昨年3着のタイガーテイルと互角以上の潜在能力も、堅い馬場は大の苦手の様子。展開利は見込めるも、良馬場・高速コースでは持ち時計的にかなり厳しそう。

17 エルノヴァ ペリエ

格上挑戦で激走したクイーンSは記憶に新しいが、府中牝馬Sの走りを見る限りでは、G1級相手には今一歩足りなさそう。ペリエマジックでどこまで迫れるか?

18 ブライアンズレター 川原

芝未勝利・1000万条件の身でこの舞台は余りにも場違い。力は出せそうだが、常識的に考えて通用する地力はあるまい。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎駒木研究室・合同作戦会議

珠美:「受講生の皆様、こんばんは。栗藤珠美です」
順子:「一色順子でーす」
リサ
:「リサ=バンベリーです!」
駒木
:「……というわけで、今回から4人で一緒に予想ミーティングをやる事にしたよ。最近は色々あって毎回準備が遅れ気味で、二部構成じゃキツくなって来てね。苦肉の策だけど、これもまぁ仕方ないかなと」
順子:「当たらない予想を延々と二部構成で聞かされる受講生さんも迷惑ですしねー(笑)」
珠美:「博士も私たちも、的中させようと頑張ってはいるのですが……(苦笑)」
リサ:「待ってる間は研究室にあった『じゃじゃ馬グルーミンup!』で競馬の勉強をしてたんですけど、この前の天皇賞の時でとうとう読み切っちゃいました」
順子:「小学館コミックス全26巻(笑)」
駒木:「いやー、申し訳無い。これでも春までに比べると楽ではあるんだけど、思ったよりも作業時間が短縮出来なくてね。とりあえず、もっと良い企画が思い浮かぶまでは暫定的にこのスタイルで行こうかなと思ってるよ。
 ……まぁそういうわけで、そろそろ本題に移ろうか。珠美ちゃん、進行頼む」
珠美:「ハイ。出走各馬の評価については掲示してある出馬表をご覧頂くとしまして、まずは前哨戦の分析からですね」
順子:「えーと博士、やっぱり3歳が秋華賞で、古馬は府中牝馬Sってとこですか?」
駒木:「まぁそうなるね。今なんか2レース同日開催で、世代別合同トライアルみたいなもんだし。過去のデータを調べても、このレースが古馬混合になってからはずっとこの傾向が続いてるね。
 まぁ例外としては、牝馬限定のカテゴリに収まらない馬が一旦京都大賞典とか毎日王冠から天皇賞を目指しておきながら、『やっぱりメンバー楽な方へ』って路線変更して来たパターン。で、こういう時は“格下挑戦”だから、アッサリと上位に食い込むパターンも多いね」
珠美:「今回はアドマイヤグルーヴがその別路線組に該当でしょうか?」
駒木:「まぁそういう事になるね。ただ、天皇賞を断念せずに、出走してから中1週で参戦ってパターンは初めてだから、これは例外中の例外と言えるかも知れない」
順子:「結局のとこ、アドマイヤグルーヴはどうなんですか? 反動出ません?」
駒木:「それが簡単に判るなら苦労はしないよ(苦笑)。まぁ、よっぽど調子が良いから出走させるんだろうけど、競馬には“見えない疲れ”っていうヤツがあるからねぇ」
順子:「まあ確かに、それが判ったらギャンブルになりませんもんねー(笑)」
珠美:「それで博士、今年の前哨戦の水準はどのくらいだと思われますか?」
駒木:「そうだねぇ。まず3歳の秋華賞、これは三冠レースのG1だけあってなかなかの水準だ。4着のダンスインザムードが天皇賞で2着して一気に値打ちが上がったね。ただ、スイープトウショウ以外の馬は一枚から二枚格下で、牝馬限定G2〜G3クラスかな、といった感じ。
 府中牝馬Sの方は、去年のエリザベス女王杯で惨敗した2頭が上位を占めてて微妙かな。3着のスティルインラブをどう評価するかで扱いが変わって来るだろうけど。これはもう予想する人によって見解が大きく分かれるだろうね」
順子:「なんだか今年は『これ!』って馬があんまりいない感じですね」
駒木:「そうだねぇ。どの有力馬も凡走する要素がある感じだから、地力はともかく信頼感に欠ける馬ばかりのレースって感じだね」
順子:「これは穴党の出番かなー(ニヤリ)」
リサ:「あ、博士、しつも〜ん(手を挙げて)」
駒木:「(苦笑)……はい、どうぞ」
リサ:「牝馬ばっかりのG1レースに出た馬って、牡馬と一緒に走ると負けちゃうこと多いですよね?」
駒木:「そうだね。中距離以上だと明らかに牡馬有利の傾向があるね」 
リサ:「牡馬と一緒にこれくらい走れたら牝馬のG1で通用する……みたいなボーダーラインってありますか?」
駒木:「んー、良い質問だけど難しいなぁ(笑)。まぁ、僕は一応『56〜57kg背負ってG3完勝』というのを一つの基準にしてるけどね。10年前のオークスを勝って、秋には名牝・ヒシアマゾンと好勝負したチョウカイキャロルがちょうどそんな感じだった。
 これが別定のG2を勝つだとか、G1で勝ち負け争いまでいった馬になると、もう牝馬限定では明らかに別格だね。無条件で本命つけても良い位」
リサ:「なるほど〜」
珠美:「今回の場合はアドマイヤグルーヴがそんな感じなんでしょうか?」
駒木:「一応はそういう事になるね。ただ、そうなるとこの馬と互角の勝負をしたスティルインラブの扱いが異様に難しくなってくるだろうけど。4歳になって成績に差が開いた理由づけをどうするか…ね。単なるスランプだったんなら、スティルインラブもアドマイヤと同じく牝馬では別格の扱いになるだろうし、もし早熟ゆえの能力減退だとしたらそうはいかないはずだから」
順子:「なんか、煮え切らない話ばっかりですね(苦笑)」
珠美:「……さて、それでは次に展開についてですが、今回は先行馬が少ないメンバー構成になりましたね」
駒木:「そうだね。逃げ含みの先行馬が2頭で、あと好位からレースを進める馬が3頭ほど。あとは中位から様子を窺う馬が5頭ほどいて、典型的な差し・追い込みタイプが7〜8頭ばかり。極端な頭数の差では無いけれども、先行馬の方がレースをやり易いのは事実だろうね。
 ペースは遅めの平均ペースくらいかな。メイショウバトラーがマイペースで逃げて、それをオースミハルカが追走。更にそれをスティルインラブが好位からマークと。馬群は割と縦に長いんだけど、その割には力勝負じゃなくて決め脚勝負になりそうな感じ。コースも今週から仮柵設置のBコースだし、やっぱり先行馬やや有利かな。
 アドマイヤグルーヴは中位からちょっと早めに仕掛けて出る形で、スイープトウショウはいつも通り最後方からジックリと。この馬の場合はもう、とことん自分に合ったレースをして、それに結果がついてくるかどうかだろう。ただ、今回は大分人気しちゃってるから、それを意識して早めに仕掛けるかも知れないなあ。そうなったら逆にヤバいと思うんだけど……」
順子:「博士の話を聞いていると、なんだか微妙に危なそうですね。でも逆に、博士が危ないって言ってる馬だからビュンと飛んで来そうな気もしますけど(笑)」
駒木:「うん、自分でもそう思う(苦笑)」
珠美:「さて、それではいよいよフォーカスを伺います。私たちも順番に発表していきましょうね」
順子:「了解です」
リサ:「ハーイ」
駒木:「じゃあ僕からか。とりあえず印はこんな感じ」

◎ 15 スティルインラブ
○ 12 アドマイヤグルーヴ
▲ 7 スイープトウショウ
△ 10 メイショウバトラー
× 6 レクレドール
× 4 オースミハルカ

 ……結局は人気3頭を上位に持って来たんだけど、ローテーション、展開からスティルインラブが一番確実性があると見て本命。何ていうのかな、一番エリザベス女王杯を勝ちに来てる感じだよね。
 他の2頭は勿論、凡走する可能性も少なくないんだけど、やっぱり地力が地力だから“正選手”の座は譲れないね。△印以下は、上位馬がコケた時のための“リザーバー”。要は補欠だね。
 講義用の当てに行くフォーカスとしては、馬連・馬単で15を軸にして印のついた5頭へ流しと7-12の組み合わせ。まぁ◎○▲で決まったら配当つかないけど(苦笑)。
 プライベート用の3連単は、×印の2頭は無視して、(15)-(7、10、12)−(7、10、12)と(7、12)−(7、12、15)−(7、12、15)の計10点としておこう。でも、こんなレースで10点買いしてちゃイカンので、当日の気配見ながら点数減らす事も考えます」
珠美:「私はアドマイヤグルーヴの反動が最小限に留まると信じて、12番を中心に。馬連12-15、7-12、7-15、10-12、4-12、6-12の6点です。でも、配当的にはちょっと……ですね(苦笑)」
順子:「わたしは3番グローリアスデイズ、8番ヤマニンアラバスタ、17番のエルノヴァの3頭を中心に……」
駒木:「おいおい、ここまでで一言も喋ってない馬ばっかりじゃないか(笑)」
順子:「だって博士と同じ馬買ってたら、いつまでたっても当たりませんから(笑)。最近日和り気味だったんで、今回はアグレッシブに行きます。3連単で(3、8、17)−(3、8、17)−(3、7、8、12、15、17)の24点。平気で1万倍とかありますから凄いですよ。当たったら帯封付きの札束です」
駒木:「100万馬券かぁ。確かに夢はあるけどなぁ……。じゃあ最後にリサちゃんだね」
リサ:「この秋になってから、博士も珠美サンも順子サンも予想当たってないですよね?」
駒木:「ん〜……まぁ遺憾ながら(苦笑)」
リサ:「なので、誰も本命にしてない7番スイープトウショウの単勝と、7番馬連流しで1、2、5、9、11、13、14、16、18の9点買いで」
駒木:「おいおい、じゃあさっきの質問は何だったんだ(笑)。みんな無茶苦茶だなぁ」
珠美:「……そ、それは、私たちが全くノーマークにしている馬ばかり狙うってこと?(汗)」
順子:「……リサ、怖い子──!!」
駒木:「しかし、これでまた4人ともハズレだったら悲惨だなぁ(苦笑)」
順子:「わたし、それに1000円賭けたいくらいです(笑)」
駒木:「まぁそういう予想なんで、またダメだったとしても笑って許して下さい。……それじゃ、終わろうか。みんな、お疲れ様」
リサ:「オツカレでしたー」
順子:「お疲れでーす」
珠美:「それでは、今日の講義を終わります。最後まで有難う御座いました」

 


 

2004年第60回講義
10月30日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 天皇賞・秋」

 今日は予想が難解過ぎて、あれこれ考えている間に時間が全く足りなくなりました。取り急ぎ、予想をお届けします。


第130回天皇賞・秋 東京2000芝

馬  名 騎 手
ヴィータローザ 小牧太

昨年のセントライト記念勝ち馬だが、古馬になってからの実績はG3を境に壁が。道悪の紛れ生かしてどこまでか。

テレグノシス 勝浦

府中コースのスペシャリスト。上がり3F33秒4の豪脚で全てを呑み込んだ毎日王冠は圧巻だった。力関係よりも重・不良まで悪化した馬場がどう堪えるかが焦点に。

シェルゲーム 岡部幸

藤沢和厩舎3頭出しの一角。実力的に勝ち目は薄く、ここは逃げ馬を突付いて僚馬のレースをやり易くするのが役目か。

ダンスインザムード ルメール

秋華賞の敗因はイレコミとのことだが、オークス以来、最後に後続を突き放すような強さが影を潜めているのも確か。諸条件も厳しく、今回は様子見か。

ツルマルボーイ 蛯名

前年度2着馬がG1タイトルを引っさげてリベンジに挑む。いかにも府中向きの脚質は魅力で、実力的にも遜色無いが、極悪馬場になったのは非常に痛い。

トーセンダンディ 江田照

人気馬の不振を尻目にまんまと逃げ切った前走・オールカマーだったが、更なるメンバー強化と揃った同型の前に苦戦は必至。

マイソールサウンド 本田

ムラっ気があるものの、G2クラスでも強い勝ち方をする意外性は魅力ではある。ただ、2000mを境にして戦績がガクンと落ちるのは、やはり懸念材料だろう。

アドマイヤグルーヴ 武豊

昨年の牝馬No.1も、牡馬相手では劣勢気味。陣営の「昨秋の出来には今一歩」というコメントも気になるところで、ここは調整の場と見るのが妥当か。

サクラプレジデント 松永

G2クラスでの強さは特筆モノ。スーパーホース不在の今回は地力の上ではトップクラスだが、調教の動きはいかにも復調途上。道悪も堪えるか。

10 ローエングリン 横山典

昨年の大敗は馬ではなく騎手の大暴走ゆえに度外視。距離・コース問わず安定したパフォーマンスは馬券的に魅力だが、そろそろ疲れが溜まって来た様子なのがきになるところ。

11 ナリタセンチュリー 田島裕

無念の乗り替わりから半年、田島裕騎手に待望の大舞台。前哨戦の勢いをそのままに、トニービン産駒有利の府中コースで大暴れなるか。問題はやはり馬場だろう。

12 シルクフェイマス 四位

相手に恵まれての重賞制覇を重ねる内に地力も身に付き、最高の春シーズンを全う。休養明けも仕上がりは良好で、あとは道悪で自分のケイバが出来るかどうか。

13 ゼンノロブロイ ペリエ

切れ味、持続力に欠ける末脚が災いしてか、1年以上未勝利に甘んじる。今回は菊花賞の汚名返上を誓うペリエを背に、待望のG1初制覇へ向けて万全の態勢。

14 ヒシミラクル 角田

数多くの“ミラクル”を成し遂げて来たこの馬も、1年以上の休養明けとなる今回はさすがに劣勢が否めず。ここを叩いて次走以降が狙いか。

15 バランスオブゲーム 田中勝

お馴染、究極のG2大将&G1善戦マン。毎回今一歩のところまで健闘するが、今回は果たして……?

16 リンカーン 安藤勝

休養明けも仕上げは良好。能力十分、脚質自在、道悪にも実績アリとセールスポイントは多いが、この馬もG1では勝ち運に恵まれていない。外枠も心配だが。

17 ダイワメジャー 柴田善

アッと言わせた皐月賞の後は尻すぼみの否めぬ現状。大幅馬体減の前走から、どれくらい筋肉が戻っているかがカギだろう。ただ、大外枠はやはり痛い。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 レース2週間前にキングカメハメハが無念の戦線離脱。これについて調教師があれこれ言われてましたが、「これから」という馬が屈腱炎を起こして引退したり、絶頂を極めた馬がレース中に4コーナーで脚を文字通りぶっ壊して散っていくのが日常茶飯事だった頃に競馬を覚えた年代としては、「まぁよくある事だよ」で済ませたい気分だったりします。同じように直前に屈腱炎で戦線離脱した大本命馬としては93年のメジロマックイーンがいますが、当時はそういう馬が余りにも多かったので「またか」の一言で片付けられたり、整備が行き届いてタイムの出るようになった“高速馬場”のせいにされたりしておりました。
 それにしても、これで一気に予想が難しくなったのは事実であり、「カンベンしてくれ」と泣きを入れたい気分にもなります。オマケに不良馬場必至の雨と来ては……。不確定要素が多過ぎて、有力馬の絞込みが本当に難しいったらありゃしないですね。

 ステップとしては概ね、毎日王冠、京都大賞典の2レースと、宝塚記念以来のぶっつけ本番という3パターンに分かれていますね。
 まず同じ府中の毎日王冠は、絶妙のペースで逃げ切りを図ったローエングリンを、テレグノシスが豪脚で捻じ伏せた格好。この条件での勝負付けは完全についてしまったような、そんなレースでした。3着、4着馬が出走を回避し、5着のヴィータローザは展開恵まれての凡走でしたので、このレースについては「テレグノシスが強かった」という結論になりますね。
 一方の京都大賞典も、直線半ばで抜け出して完全に勝ちパターンにハマったと思われたゼンノロブロイを、ナリタセンチュリーが直線で強襲して小波乱に。スローペースで脚を貯めてラストで一気に爆発させる…という、いかにも勝ち馬向けのレースになりましたが、春に比べると完全に一皮剥けた感のある戦い振りが印象的でした。また、このレースではアドマイヤグルーヴが4着に入っていますが、これは5馬身ほどの差をつけられた完敗でした。
 宝塚記念からの直行組は、シルクフェイマス、リンカーン、ツルマルボーイ。どの馬も調教本数は足りており、どの馬も一応は9割以上の仕上がりと考えて良いのではないでしょうか。

 次は展開について。ローエングリンが逃げるのはほぼ確実ですが、他に7頭ほど前々でレースを進めたい馬がいるため位置取りは流動的に。有力先行馬の中には自分向きのポジションを確保出来ず、後手に回る馬もいるでしょう。ペースはやや速めで、展開による紛れは少ないレースになるでしょう。
 ただ、今週から仮柵が設置されてラチ沿いがやや走り易くなった事、そして不良馬場必至の天候面を考えると、先行馬も脚が止まるが差し馬も伸びあぐねるという、文字通りの泥仕合になってしまいそうです。一応、有力馬の中で重・不良馬場で実績のある馬を挙げておきますと、ゼンノロブロイ(重馬場のダービー2着)、リンカーン(未勝利を不良馬場で脱出)、ローエングリン(重馬場の中山記念で優勝)の3頭。ただし、テレグノシスやツルマルボーイも稍重でなら好走歴がありますし、ナリタセンチュリーも全くこなせないわけでは無さそうです。もうこればっかりは出たとこ勝負としか言いようがないですね。

 ……さて、それでは苦心惨憺して付けた印を紹介します。

◎ 2 テレグノシス
○ 11 ナリタセンチュリー
▲ 16 リンカーン
△ 12 シルクフェイマス
× 13 ゼンノロブロイ
× 5 ツルマルボーイ
× 16 バランスオブゲーム

 一応序列は付けましたが、印を打った馬はほぼ横一線。ハッキリ言って、こうして結論を出した今でもまだ悩んでいます(苦笑)。ここまで馬券の買い辛いG1レースはあんまり記憶にありません。
 一応の本命はテレグノシス。府中だと走りが段違いですし、ここ最近の充実振りは3歳頃のひ弱な印象を覆すに十分足るものです。問題は道悪ですが、もうそれでダメならダメで仕方が無いといったところですね(笑)。
 対抗はナリタセンチュリーを。府中は初めてですが、脚質や血統(トニービン産駒)を考慮すると適性が無いはずが無いでしょう。後は天運が味方するかどうか。
 3番手にはリンカーン。ここまでが単圏内です。この馬は地力・道悪実績共にあり、アッサリ勝ってしまってもおかしくはないのですが、外枠不利な中での16番枠ですし、後々のローテーションを考えるとどこまで高いモチベーションで調整して来たのか未知数という点が嫌気しました。
 2着圏内1頭目はシルクフェイマス。さすがにG1で連続好走されては実力を認めないわけには行きませんが、勝ち味の遅さがどう出ますか。
 人気を集めているゼンノロブロイですが、最近この馬が一昔前の善戦マン・ホワイトストーンにダブって見えて仕方が無いです(笑)。同一厩舎3頭出し、しかもペリエ鞍上とセールスポイントだらけではあるのですが、1番人気のこの馬を買い被りたくないなぁ…というところです。
 ツルマルボーイは良馬場なら◎も考えたくらいなんですが、やはりこの馬場では評価が落ちます。出遅れの多い騎手がテン乗りとあって、「最後方待機からの追い込み→惜しくも届かず」といういつものパターンに終始するのではないかと思ってしまうのです。
 最後にバランスオブゲーム。なんか93年の“戦国天皇賞”で言うところのセキテイリュウオーみたいな存在なので気になってしまいました。

 ……うーん、全く説得力の無い予想ですね(苦笑)。こりゃあ当たらんなあ(笑)。
 というわけで、印は派手に打ったものの馬券は当たる気が全くしないので、フォーメーション(2、11)−(2、11、16)−(2、11、16)の4点と、あと馬単の2-15だけ買って夢を見る事にします。なんか3連単は700倍とか900倍とかついてるんですが、どうしましょうか(笑)。
 まぁ皆さんも、くれぐれも大勝負は避けるよう、ご忠告申し上げます。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議書き置き」 

 受講生の皆さん今晩は、栗藤珠美です。
 今日も駒木博士の講義実施が朝方まで伸びてしまい、順子ちゃんとリサちゃんがとうとう「もう待ち切れないから帰る」と言って本当に帰ってしまいました(苦笑)。ま、確かに毎週集まっては「時間が無いから予想だけ」では、張り合いが無くなってしまいますよね……。
 来週以降の事はまた駒木博士と相談することにしまして、とりあえず今日は順子ちゃんとリサちゃんから伝言メモを預かっているので、そちらを紹介したいと思います。

 ──では、まずは順子ちゃんから。

 3連単だと大抵の組み合わせで万馬券になるので、予想がとてもやり易かったです(笑)。重馬場得意そうな先行馬を中心に、ボックスみたいなフォーメーションで手広く勝負してみます!

(12,13,16,17)−(12,13,15,16,17)−(12,13,15,16,17)の48点。ボックスにしなかったのは、バランスオブゲームの1着は色々な意味でありえないと思ったからです。具体的には田中勝春騎手に悪いので書きません。

 ……順子ちゃん、それは具体的に言っているのと同じ事だと思うのだけれど(汗)。

 ──では、次はリサちゃんの伝言を。まだ来日1年なので原文はちょっと日本語が怪しい所がありましたので、私が添削して読み易いようにしておきました。

 少し前、9.・11テロの年のグランプリ(有馬記念)で、マンハッタンカフェとアメリカンボスの2頭で決まったそうですね。じゃあ、大統領選挙のある今年はサクラプレジデントとリンカーンで決まりです(笑)

 …ということで、馬連、ワイドの9-16にしておきます。

 馬連の9-16のオッズを確かめてみたら、意外と倍率が低いんですね。やっぱり皆さん考えてらっしゃることは同じなんでしょうね。スプリンターズSでも、イチロー選手にちなんだ馬単5−1で決まったりしていますし……。

 さて、最後に僭越ながら私のフォーカスを紹介して、講義を締め括りたいと思います。
 私は、先行馬がハイペースで競り合って潰しあい、中位につけたリンカーンが荒れた馬場でもお構いなしに突き抜けて来る…と見ました。馬連13-16、2-16、2-13、5-16、11-16、8-16の6点ということで。

 ……それでは、粗略ながら今回はこれで失礼させて頂きます。では、また来週も宜しくお願いしますね。

 


 

2004年第58回講義
10月23日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 菊花賞」

 さて、今週もG1予想のお時間がやって参りました。
 しかしこの秋のG1シリーズ、駒木の予想自体はそれほど的外れでないと思うんですが、何故か本命馬が直線半ばで綺麗に吹っ飛んでいくんですよねぇ……。杉本清さんは、いつもこんな感じで宝塚記念を眺めているのか…などと考えてしまいました。
 ──というわけで、今週は菊花賞です。ただ、ここ10年、駒木がこのレースの馬券を当てたのは馬連3ケタ配当で収まった3回と馬連17.6倍の96年(ダンスインザダーク−ロイヤルタッチ)だけで、トータルの収支から考えるとかなりの大赤字。相性悪いんですよね(苦笑)。う〜む、果たしてどうなることやら……。


第65回菊花賞 京都3000芝外

馬  名 騎 手
オペラシチー 佐藤哲

夏の小倉でレコード勝ち。今シーズン最大の昇り馬……になるはずが、秋緒戦の朝日チャレンジCで予期せぬ惨敗。この中間で巻き返すもどこまでか。

カンパニー 柴原

ラジオたんぱ賞でケイアイガードの少差2着が勲章。力関係は見劣りせぬが、叩き2走目の有力馬を相手に4ヶ月休養明けで相対するのは不利が否めず。

グレイトジャーニー 小牧太

絶好の展開で逃げを打った神戸新聞杯が4着完敗。再び差し脚質に転じて大舞台に挑むも、トップクラスとは地力で少々差がついた感じ。

スズカマンボ 安藤勝

調整途上の段階で古馬相手に朝日チャレンジCを制し、この中間は調教でも動いてまさしく意気軒昂。春とは全く印象が違う力強さが窺えるが、怖いのは鉄砲激走後の二走ボケ。

ホオキパウェーブ 横山典

セントライト記念でコスモバルクに詰め寄った、息の長い末脚はいかにも長丁場向き。ただし、春の時点ではダービー9着と、やや地力の差が見えた敗戦。どこまで成長したか?

シルクディレクター 熊沢

実績不足も然る事ながら、距離経験が1800までというのが致命的。後方で脚を貯め、直線で何頭交わせるか。

エーピースピリット 吉田豊

ダートの条件戦を2戦連続で大差圧勝。一夏越しての成長は見られるが、いかにもスピード不足。芝と距離の適性にも疑問があって……。

ケイアイガード 松永

神戸新聞杯では、ダービー1、2着コンビに割り込む大健闘。好位からコスモバルクに肉薄する展開か。問題は距離。現状は1800がベストのような感もあって……。

トゥルーリーズン 四位

セントライト記念で粘りに粘って3着確保、出走権を得た。しかし、今回のメンバーはいかにも骨っぽく……。

10 ハーツクライ 武豊

強力な末脚が不発に終わった前走がやや心配も、ハイペースでも衰えない威力抜群の末脚が魅力。広い京都コースも魅力タップリ。

11 ストラタジェム 福永

収得賞金800万の身で出走枠掴んだが、その幸運もここに入ってどこまで? 地力不足と休み明け緒戦のハンデは余りにも大きくて……。

12 ブルートルネード 池添

1000万条件で2戦、気性の若さとスタミナ不足を露呈する完敗続き。菊花賞を目指す馬にとっては余りにもお粗末で。

13 コスモステージ 小池

自己条件すら勝ちきれぬ状況では、この馬の逃げ切りは望み薄。果たすべき役割は、同一オーナーのコスモバルクのペースメーカーか。

14 ハイアーゲーム 蛯名

前走は休み明け緒戦で仕上がり切れず不本意な結果に。ケイコで動いた今回は、青葉賞1着&ダービー3着の実績通りの活躍が期待出来るが、府中限定の性質もあり?

15 コスモバルク 五十嵐冬

道営の雄のクラシック挑戦最終章。セントライト記念完勝も、行きたがる気性は長丁場の舞台ではいかにも不安。倒すべき敵は、他の17頭よりむしろ己の逸る心か。

16 ブラックコンドル 赤木

芝の勝ち鞍は2歳夏競馬の未勝利戦のみ。重賞2戦の戦績も今一つで、強調材料が全く欠けている現状。

17 モエレエルコンドル 田中剛

格上挑戦で懸命に食い下がったセントライト記念(4着)は好感も、メンバー強化した中でどこまで健闘出来るかは疑問符が。あくまで入着候補としての扱い。

18 デルタブルース 岩田

実績には乏しいものの、スタミナに富んだ生粋のステイヤーとして穴人気を集める。斤量4キロ増と一気の相手強化は堪えそうな気もするが……。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 皐月賞馬とダービー馬を欠き、更にはこれといった新勢力も無く、微妙に層の薄さが気になる菊花賞となりました。こういう時は思わぬ伏兵が大駆けしたりするものなのですが、さてどうなりますか。

 前哨戦では、やはりダービー1、2着馬がそれなりのレースを見せた神戸新聞杯が一番高いレヴェルだったと考えて良いでしょう。実績馬の一角を崩したケイアイガードの健闘が光りますが、ただ少頭数・超スローペースの中距離戦の内容が、果たしてどこまでこのレースの参考になるかは未知数です。速めの平均ペースが予想される今回では、むしろ同レース3着のハーツクライの巻き返しに注目が集まりそうです。
 一方、やや寂しいメンバー構成となったセントライト記念では、権利獲りの為に勝負駆けを強いられたコスモバルクが、気性の問題もあって早め早めのケイバになりましたが、レコードタイムで後続を完封する強い内容。ただ、最後の要所で格下馬をもう一度突き放せない辺りに、過去のスーパーホースとの格差を感じさせられる内容だった…とも言えるかも知れません。
 古馬混合重賞をステップに選んだ馬の中では、朝日チャレンジCを調整途上のコンディションでキッチリ勝ち切ったスズカマンボのパフォーマンスが出色。ただし、例年の有力馬が札幌記念や京都大賞典で、古馬の一線級を相手に互角以上の戦いを見せるのに比べると、やや小粒な感は否めません。比較的メンバーに恵まれたオールカマーで惨敗を喫したハイアーゲームも、前哨戦としては落第の体たらくでした。
 以上のように、前哨戦でリズムに乗り切れなかった馬が多く、これが余計に本番の混戦模様に拍車をかけている印象がありますね。結局は秋緒戦の不出来には目を瞑り、改めて春の実績馬を狙ってみる…という流れになるのでしょうが、「どうせ確実じゃないのなら…」と、格上挑戦の条件馬からステイヤー型の晩成馬を抜擢する一手もあるでしょう。

 展開は、例年思わぬ馬が思わぬ位置取りをするレースだけに流動的ではあるのですが、人気薄の先行馬4〜5頭が速めの平均ペースでレースを引っ張り、そんな先行勢を見る、もしくは混じってしまうぐらいの位置取りでコスモバルクが正攻法の構え。有力馬ではケイアイガードもこのグループでしょう。
 有力馬の多くは、その先行集団をマークする形で中位からやや後方でレースを進めるはず。ハーツクライは更にそれらをマークするように最後方からのレースになるでしょうね。
 直線では、まず堂々とコスモバルクが先頭に立つも差し馬が次々と襲い掛かり、更にハーツクライが強襲…という攻防戦になるでしょう。どちらかと言うと差し勢有利ですが、直線一気の追い込みが決まった例は余り無いだけに、ハーツクライも楽なレースにはならないはず。1、2番人気に厳しい展開になりそうですね。

 ……さて、それでは相変わらず全く参考にならないフォーカスをお届けして、このコーナーを締め括りたいと思います。

◎ 4 スズカマンボ
○ 10 ハーツクライ
▲ 14 ハイアーゲーム
△ 15 コスモバルク
× 8 ケイアイガード
× 5 ホオキパウェーブ

 実力最右翼のコスモバルクですが、気性面の問題を抱えた上に展開が酷とあっては評価を控えめにせざるを得ませんでした。ただ、一競馬ファンとして、この馬をアタマにした応援馬券も買っておきたいと思います。
 代わって本命に抜擢したのは、一夏越して明らかにパワーアップしたスズカマンボ。春シーズンでは事あるごとにハーツクライの後塵を拝して来たこの馬ですが、今回は展開面で有利な上に人気面の気楽さもあり、一発大仕事をキメるには最適の条件が整ったといえます。乗り替わった安藤勝己騎手の騎乗振りにも注目です。
 この馬に続く存在なのが、やはりハーツクライハイアーゲームのダービー2、3着馬。2頭とも前哨戦でコケてしまったのですが、いずれも力負けといった内容ではなく、むしろ本番に向けて陣営の気持ちが引き締まった効果に期待したいところです。
 勿論、トライアルで健闘したケイアイガードホオキパウェーブも無視できない存在ではあるのですが、こちらは逆にレース振りが典型的なトライアル・ホースのそれだったのが気になるところ。中途半端にマークされる存在になってしまった感もありますし、買い被りは禁物です。
 馬券は3連単フォーメーションで(4、10)−(4、10、14、15)−(4、10、14、15)の12点としておきます。ただ、こんな不確定要素が大きなレースで多点買いするのは愚の骨頂ですので、当日の気配を見極めつつ、もうちょっと絞ってみるつもりでいます。

 ──それでは、後は女の子たちにバトンタッチして、駒木は寝ます。おやすみなさい(笑)。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

順子:「……(「週刊競馬ブック」を読みながら)それにしても変わるもんですねー」
珠美:「あら、どの馬のこと?」
順子:「いや、馬じゃなくて人。今週から記者の人たちのコメント欄に載ってる顔写真が変わったじゃないですか」
珠美:「あー……(笑)」
順子:「競馬記者って、ストレスで太ったりハゲたりする大変なお仕事なんですねー」
リサ:「あー、このハシモトさん……」
順子:「こらこらリサちゃん、実名出して写真に指差さない。せっかくわたしが実名伏せてんのに(苦笑)」
珠美:「──ささ、そろそろお馬さんのお話を始めましょうか」
リサ:「はーい」
順子:「……けど、それにしても先週は惜しいんだか酷いんだか分かんない結果でしたよねー。わたしは惜しいところでヤマニンアラバスタが届かずで、珠美先輩とリサちゃんは駒木博士の不調に引っ張られるようにハズれて……」
珠美:「ま、私は自分なりに考えて下した結論だから良いんだけど、リサちゃんは博士の×印2頭から、他の印の馬に流してたのよね」
リサ:「そしたら、博士の○と△で決まっちゃいました(苦笑)」
順子:「まったく駒木博士の負のパワー恐るべしですよ(苦笑)。その点、今回は中途半端な穴予想してくれたので、気兼ねしなくていいですね(笑)」
珠美:「そうね、って言ったらダメなんだけど(苦笑)。……さて、今日も時間が余り無いから早速フォーカスを発表していきましょう。私はセントライト記念の強さと、春から積み重ねて来た実績を信じてコスモバルク中心。人気サイドの予想なので、馬券的に面白くはないのだけれど、馬連で10-15、14-15、10-14、4-15、5-15、8-15の6点
順子:「わたしは思い切ってホオキパウェーブから。去年は馬単で万馬券当てたんですけど、今年は3連単で10万馬券を目指します! 3連単軸1頭1着・2着流しで5−(10、14、15、17)。12点×2で計24点。17番が来たら100万馬券です(笑)」
リサ:「100円が100万円ですか? うわー……」
順子:「まあ、ダメだと思うけどね(笑)。で、リサちゃんはどうするのかな?」
リサ:「コスモバルクにガンバって欲しいので、コスモバルクの単勝で応援します」
順子:「うわー、健全!(笑) なんだか私が意地汚いみたいでヤだなー」
珠美:「ギャンブルは性格が出るって言うものね(笑)」
順子:「ちょっ…それ、フォローになってないですよ〜」
珠美:「……ま、駒木博士がおっしゃりそうなことを代弁したということで、ね(笑)。それじゃ、もう夜も明けて来そうだし、私たちも失礼しましょうか」
順子:「はーい、お疲れでした〜」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは、今日の講義を終わります。皆さんも予想、頑張って下さいね♪ では、失礼します」

 


 

2004年第56回講義
10月16日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 秋華賞」

 いよいよ今週から秋のG1シリーズが本格スタートとなりました。毎週毎週G1レースを追いかけていく内に、気が付いたら年が暮れている…という、競馬ファンにとっては毎年経験している短い秋の始まりですね。
 そしてその第1弾は堅く収まったかと思えば荒れ、荒れるかと思えば1、2番人気で決着…という、掴み所の無さでは他のレースの追随を許さない秋華賞。今年も一筋縄じゃいかないメンバーが揃いましたが、さてどうなりますか。
 ……「どうなりますか」じゃなくて、どうにかしないとアカンのですけどね。


第9回秋華賞 京都2000芝内

馬  名 騎 手
サイレントアスク 赤木

前走大敗にも臆せず強気の挑戦だが、紫苑Sと1000万条件戦で連続完敗では……。

ダンスインザムード 武豊

名手・武豊痛恨の騎乗ミスで2着に終わった米遠征から3ヵ月半、万全のコンディション調整で秋緒戦を迎えた。もはや問題は力関係ではなく、アクシデントがあるか無いか。

ドルチェリモーネ 高田

高田騎手、一世一代の大舞台。多頭数の馬群を突き抜けるだけの切れ味に欠ける面が、一夏越えてどれだけ解消されているかがカギ。

フレンチアイディア 秋山

実績乏しい上に、「何とか間に合った」という感の拭えぬ調整過程はどうにも不満。ここは後方から8着目指して流れ込みか。

ウイングレット 田中勝

前走は力の要る馬場が堪えたか。調教からは復調が窺えるが、展開恵まれて7着に終わったオークスを考えると、強調材料は見出し難い。

グローリアスデイズ 柴原

ローズSは強豪を相手に善戦健闘。あと一歩で勝ち切れぬ面が目立ってしまうが、相手なりに走れば馬券の対象にも。

フェミニンガール 岩田

距離にメド立った前走のパフォーマンスも、今回は展開に恵まれそうに無い。果敢に行ってどこまで粘れるか……?

ヒカルドウキセイ 佐藤哲

前走の4着で、牝馬限定重賞のメンバーに混じっても勝負になるメドは立った。苦手のスタートを克服して、競り合いに持っていきたいところだが。

メイショウオスカル 後藤浩

展開に恵まれるはずだったローズSで不可解な凡走。馬体の成長も感じられぬし、トップ圏内からは一歩後退の現状か?

10 フィーユドゥレーヴ 熊沢

桜花賞以来の復帰戦。事前の調教量は足りているが、体調は未だピークには程遠い様子。春の時点で既に頭打ち感は否めず、今回は特に苦戦か。

11 スイープトウショウ 池添

同世代牝馬では随一の末脚を備えるも、乗り難しさも桁違い。能力面は勝ち負けだけに、仕掛け所を間違えず、落ち着いて仕掛けて欲しいところ。3戦3勝の京都コースも魅力。

12 ヤマニンアラバスタ 柴田善

前走は痛恨の1位入線降着も、指定オープンクラスとは格の差を見せつける好パフォーマンス。小細工無しの真っ向勝負で上位進出を窺う。

13 バレエブラン 芹沢

500万条件戦勝利から果敢なる挑戦。春のスイートピーS6着時よりは成長しただろうが、さて先行してどこまで粘れるか。

14 インゴット 福永

脚質転換を図った前走で幸運な繰上ながら堂々の2段階格上挑戦成功。同厩のダンスインザムードをサポートしつつ、自身も上位進出するだけの態勢は整った。

15 レクレドール 小牧太

多少の恵まれはあったにせよ、昇級&格上挑戦でローズSを鮮やかな差し切り勝ちした実力は確か。兄ステイゴールドに似ない決定力で強豪に再び挑む。

16 ヤマニンシュクル 四位

2歳チャンプも春から夏にかけてはやや苦戦気味。京都の軽い馬場を味方につけて、あとは少しでも展開の恵まれが欲しいところ。

17 アズマサンダース 蛯名

上位常連の強豪が秋緒戦で予期せぬ躓き。気性面の不安定さが気掛かりだが、体調は万全で桜花賞の再現狙う。数少ない先行馬だけに、展開に恵まれれば勝ち負けも十分。

18 マルカフローリアン 川原

権利確定のための強行ローテーションも不発に終わり結局は逆効果。53キロのハンデで1000万条件を勝ち切れぬ現状を考えると、オークス6着とは言え強くは推し辛い。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 いきなりですが、大嫌いなレースなんですよ秋華賞(笑)。大損こいたか、ガチガチの本命馬券で儲け損なったか、どちらかの思い出しか無いんですよね。事実このレースは、後々一時代を築いた名牝たちが思わぬ大敗を喫している鬼門だったりするわけで。
 果たして今年の1番人気はファインモーションなのかエアグルーヴなのか、どっちなんでしょうね。

 ……まぁそんな事はさておき、まずはトライアルレースの簡単な回顧から。
 “正統”トライアルのローズSには、オークスの1、2着馬や桜花賞2着馬など、なかなかの好メンバーが揃いました。有力馬で参加していないのはダンスインザムード、ヤマニンシュクル、ヤマニンアラバスタくらいで、前哨戦としては、やはり最も重要なレースと言えるでしょう。
 ただ、レース内容は参考になるかどうか微妙なものに。有力視された先行勢が実力通りとは思えない急ブレーキで、3コーナーから早仕掛けしたスイープトウショウまでもが抜け出した後にソラを使った事もあって失速。有力馬の自滅による伏兵的存在の差し馬のワン・ツーでは、スンナリ上位馬を信頼というわけにはいかないでしょう。
 次に紫苑Sですが、こちらはオークス3着のヤマニンアラバスタが出走して彩りを添えたものの、レヴェルは1000万条件特別といったところ。そして内容はと言えば、実績上位のヤマニンが余裕を持って1位入線を果たしたものの、5着降着という締まらない内容に。2〜3位入線の2頭が優先出走権を獲得しましたが、本番で通用するメドは全く立っていない状況です。
 別路線組としては、米G1のアメリカンオークスで2着惜敗したダンスインザムードと、牝馬限定G3の常連メンバーが揃ったクイーンSでそれぞれ3着、8着に終わったヤマニンシュクルとウイングレットの2頭。どちらも春のパフォーマンスを上回るだけのインパクトを残したとは言い難く、春同様の能力水準で秋戦線に挑む…といったところでしょうか。
 ──そういうわけで、今年の秋華賞は前哨戦がレース検討の上でほとんど役に立たないという極めて珍しいケースになってしまいました。秋からの新勢力にしても、特に目立ったのはローズS1着のレクレドールくらいなもので、あとは“穴馬の宝庫”である賞金800万組から無理を承知で馬券候補に抜擢するくらいしかなく、結局は揃いも揃ってムラッ気が強い春路線組を中心に考えるしかないという、苦渋の決断を強いられそうです。

 ちなみに展開ですが、逃げ馬候補は3〜4頭いるものの、どこをどう考えても直線半ばまで保ちそうにない馬ばかり。先頭グループのペースは若干速くなりそうですが、それを見ながらレースを進める中団以降の有力馬たちにとっては、縦長隊列・平均ペースの実力通りに決まり易い流れになるのではないでしょうか。差し・追込脚質の有力馬が多く、正念場で不利を受ける馬もいるでしょうが、中団からレースを進めるダンスインザムードという共通の目標がいますので、過度の牽制はないものと考えられます。
 なお、これは去年のレース予想でも述べたと思いますが、重要な事なので今年も言っておきます。京都2000mの芝内回りコースは本来内枠・先行やや有利なのですが、この秋華賞に限って言えば、外枠有利で差し・追込の穴馬がたびたび突っ込んで波乱の立役者になっています。距離損よりもスムーズにレースを進められるという意味で外枠も決して不利ではないようです。

 さて、前置きが長くなりましたが、最後に駒木のフォーカスです。

◎ 2 ダンスインザムード
○ 11 スイープトウショウ
▲ 17 アズマサンダース
△ 16 ヤマニンシュクル
× 12 ヤマニンアラバスタ
× 15 レクレドール

 色々考えたんですが、結局は駒木が考えた地力の順番通りに印をつけました。特に差し馬は瞬発力というか、馬込みを突き抜けられるだけの決定力を重視した序列です。
 本命はダンスインザムード。地力最上位の馬に明快な不安材料が無い以上、この馬を1番手から外すわけには行きません。この馬の場合は、相手関係よりも自分が実力通り走れるかどうかの一点だけ。走れれば1着でしょうし、ダメならオークスのように着外でしょう。海外遠征から体調を崩す馬というのも少なからずいますが、遠征慣れしている藤沢和雄厩舎のことですから、出す以上は体調万全と思いたいです。
 迷いに迷った2番手評価はスイープトウショウ。凡走と好走を繰り返す困った馬ですが、好走時のパフォーマンスから考えると、他の2番手候補たちより力が半枚から一枚上ではないかという見立てです。ただ、今回はかなり後方から捲り気味に仕掛け、ギリギリ差し届くようなレース運びになると思いますので応援する立場からすると心臓に良くないかも知れないですね(笑)。
 3番手評価はアズマサンダース。この馬も自分の力が発揮できるかどうかが焦点です。有力馬の中では唯一の先行脚質だけに、「前でレースをする」という事自体が大きなアドバンテージになります。目指すは桜花賞の再現でしょう。
 印をつける上で迷ったのがヤマニンシュクルヤマニンアラバスタの序列。一応、春の実績通りにしましたが、どちらもほぼ確実に長く脚を使えるタイプの差し馬です。ただ、連対圏に突き抜けるには展開や他の有力馬の凡走待ちということになるでしょう。
 新勢力からは一応レクレドール。あのトライアルの内容だけでは「即、通用」とは言い難いのですが、土曜のデイリー杯2歳Sで強烈なデモンストレーションを見せた小牧太騎手の存在がいかにも不気味です。個人的には十中八九は通用しないと思っているのですが、「終わってみれば……」という可能性も無きにしも非ず。困った存在ですね(苦笑)。
 ※肝心のフォーカスを入れ忘れていました。フォーメーションで2−(11,16,17)−(11,12,15,16,17)の12点を基本に、そこから削って10点以内に収めようと思います。(17日午後2時40分追記)

 というわけで、ここまで駒木がお届けしました。この後は3人娘たちの登場です。

 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

リサ:「……えー、付き合ってる人とか、そういうの無いですよー!」
順子:「それよりわたしね、珠美先輩がちょっとだけ怪しいんだよねー」
珠美:「(苦笑)……で、何が怪しいの? 順子ちゃん」
順子:「あ、いや、昨日のゼミで駒木博士が言ってたから、とりあえずやってみようかなって(笑)。」
珠美:「リサちゃんはともかくとして、そういうのは10代で卒業しましょうね、順子ちゃん」
順子:「ええまあ、言っててかなり恥ずかしかったんですけどね(笑)。……で、競馬の話ですけど、スプリンターズSは参りましたねー」
珠美:「そうね(苦笑)。まさかまさかの2、3着馬だったわね。結局、本当に予想をパスしたリサちゃんが一番賢いってことになってしまったし」
リサ:「でも、ワタシも狙おうとしてた香港の馬が3着に来て、ちょっと複雑でした」
順子:「もう本当にガックリでした。カルストンライトオがどんどん差を広げていって、あとは2着と3着ーッって注目してたら馬券に番号が書いてない馬ばかり(苦笑)」
珠美:「ま、ただでさえ難しい競馬で、更に不確定要素が重なってしまったら、ああいう結果になるのも仕方ない話ではあるのよね。
 ……じゃあ、とりあえず暗い過去は忘れてしまって、秋華賞の予想に行きましょう。もう詳しい事は駒木博士が第1部で話して下さってるから、それを参考にね」

順子:「駒木博士の第1部の準備が遅れたので、わたしたち、正直眠いんです(苦笑)」
リサ:「徹夜でーす(笑
)」
珠美:「じゃあ、早速フォーカスを発表していきましょうか。私は勿論、2番のダンスインザムードから」
順子:「博士の予想を見た上で『勿論』って言えるあたり、珠美先輩も懲りないですね(笑)」
珠美:「(苦笑)。でもあとの印は大分違うのよ。……私は展開的に好位・中団からレースを進める馬が有利と考えました。アズマサンダースとグローリアスデイズの粘りに期待して、馬連2-17、2-6が本線。あとは2-11、2-15、2-16を押さえて6-17も少しだけ
順子:「わたしはダンスが先に抜け出した所を、追込馬が大外から奇襲するって狙いで、6枠の2頭が中心です。大穴は賞金800万のヒカルドウキセイですねー。3連単流しで11、12の軸2頭マルチ・相手が2、8、16、17の24点で勝負します」
珠美:「リサちゃん、今日は予想を考えてみたの?」
リサ:「えーとですねー、さっきまでヒマで去年と今年の予想大会の記録を見てたんですね。そうしたら、駒木博士が×印つけた馬と、◎印じゃない別の印の馬で決まって、博士の予想が外れるパターンが多いって気がついたんです」
珠美:「(笑)」
順子
:「(爆笑)」
リサ:「なので、12番と15番の馬から、それぞれ11、16、17の3頭に馬連で流してみようかなって」
順子:「珠美先輩、この娘は侮れませんね(笑)」
珠美:「オッズも手頃だし、ひょっとするかも知れないわね(笑)。……といったところで、予想も出揃いましたし、今日は短いですけど、これで私たちも失礼しましょうか。」
順子:「お疲れでした。受講生の皆さんも頑張ってくださいね〜」
リサ:「オツカレでしたー」
珠美:「それでは講義を終わります。有難うございました」

 


 

2004年第53回講義
10月3日(日) 
競馬学特論
「駒木研究室・G1予想勉強会 スプリンターズS」

 いよいよ秋のJRA・G1シリーズが開幕ということで、当講座も久し振りに競馬学特論講義をお送りします。
 最近はすっかりマンガ評論の方に研究活動の重点がシフトしてしまいましたが、そもそもこの講座は競馬学とギャンブル社会学がメイン。今シーズンもG1レース予想は研究室メンバー総出で華やかにお送りしたいと思っております。
 ──さて、昨秋と今春の競馬学特論講義では研究室メンバーによる予想コンテストを実施して来ましたが、これは労力の割に余りにも報われない企画でしたので、一旦終了(笑)。今回からは装いも新たに、「G1予想勉強会」という新企画で皆さんのご機嫌を窺う事となりました。実際に講義を受講してもらえれば分かると思いますが、お堅いタイトルとは裏腹に、かなり脱力系の内容になっておりますので、肩の力を抜いて楽しんで頂ければと。

 ……それでは、ボチボチ講義を始めたいと思います。最後までどうぞ宜しく。


第38回スプリンターズS 中山1200芝外

馬  名(赤字は外国調教馬) 騎 手
デュランダル 池添

昨秋の短距離戦線統一王者が満を持して復活。またしても休み明けで、マイルCSにピークを合わせた調整が気になるが、地力は勿論首位争い。

シルヴァーゼット 吉田豊

クラシック戦線からスプリントに転じてから順調にキャリアを積み重ねて来た。ただし、3歳秋の休み明けでこのメンバーはいかにも厳しいか。

サニングデール 福永

前哨戦はスローペースに泣かされ3着も、一時の不振からの脱却が窺える好気配。今回がピークの仕上げで、目指すはトロットスター以来のスプリント春・秋統一王者。

ナムラビッグタイム 江田照

テンのスピードには見所あるが、3歳限定戦でも詰めの甘さが目立つ。日本を代表する快速自慢が揃ったここでは苦戦は免れまい。

カルストンライトオ 大西

勝ち鞍全てが平坦コースという超スピードタイプ。急坂の中山コースはいかにも厳しい。とにかくハナを切って離し逃げを打ちたい。

アシュダウンエキスプレス 後藤浩

今期は英G1ジュライC2着と好調。軽い馬場得意との触れこみだが、持ち時計とは4秒違う異次元の日本スプリント競馬に戸惑わないか?

カフェボストニアン 岡部幸

G1レースでの実績は物足りないが、1200mのG2、G3では2着が3回あり地力そのものは侮れず。今回は厳しい展開をどう捌くかがカギになりそう。

タマモホットプレイ 和田

年明けはクラシック候補の声も上がったが、その後は伸び悩み。夏場からスプリント戦線に転じ、ハンデ戦ながらオープンで勝ち鞍も。今回初のG1挑戦で己の真価を問う。

ゴールデンキャスト 武豊

長い低迷を脱し、小倉の夏シリーズで一気にブレイク。今回はハイペースになってどうかだが、春までとは全く別の馬である以上、無視は出来ぬ存在だ。

10 ワンダーシアトル 北村宏

重賞初挑戦がいきなりのG1とは余りにも酷。放牧明けで急仕上げ気味でもあり、今回は大舞台を体験するだけで終わりそう。

11 フェアジャグ 横山典

今期英国でG1タイトル奪取も、キャリアの大半は直線コース。小回りの中山コースに戸惑わねば良いのだが……。

12 ケープオブグッドホープ プレブル

香港ローカルG1の上位常連馬。持ち時計も外国調教馬の中では図抜けており警戒要だが、今回は大型馬の休み明け。調教の動きも目立たぬし過信は禁物だろう。

13 シーイズトウショウ 中館

調整途上の段階で完勝した函館SSは圧巻の内容。1200mでは実に安定した内容を残しており、今回も当然主力の一角。懸念材料は2戦して未勝利の中館Jとの相性。

14 キーンランドスワン 四位

相手なりの走りで勝ち切れない面もあるが、一度ハマった時の末脚は驚異的。展開にも融通が利き、鞍上の作戦次第で結果は大きく変わりそう。注目。

15 シルキーラグーン 柴田善

時折穴を開けてアッと言わせるが、ここに入るといかにもスピード・瞬発力不足。超ハイペースが予想される中で脚を貯め切れるか?

16 ウインラディウス 田中勝

ここ2戦期待を裏切り人気を落としたが、上がり3F33秒台の末脚はやはり魅力的。東京コース以外の実績乏しいのが心配ではあるが……。

※表内短評の執筆者は駒木ハヤトです。

 ◎第1部:駒木ハヤトの“机上の空論”予想

 ……まずは、これまでと同じように駒木がレース展望と予想をお送りします。なお、賢明な受講生の皆さんならお分かりかと思いますが、駒木の冴えない予想に乗っかって馬券を買う事は「週刊少年マガジン」の『M・I・Q』を参考に株を買うくらい無謀ですので、どうか無茶はしないようにお願い申し上げます。

 ──というわけで、秋のG1緒戦となるスプリンターズSですが、気が付いたら主力は高松宮記念とよく似た構成になっていますね。
 叩いて復調気配のサニングデールと休み明けのデュランダルの対決というシチュエーションも同じなら、抜けたギャラントアローとテンシノキセキの替わりに、それぞれ同型のカルストンライトオとゴールデンキャストが加わって、どうやら差し・追込有利のハイペースの展開まで似たような事になりそうな感じ。しかもコースが坂のある中山に変わって、この傾向は更に強くなりそうです。逃げ馬は苦戦必至、先行馬も中団から差せる位の瞬発力があるタイプじゃないと厳しいでしょうね。
 今年は3頭参戦があった外国馬ですが、過去の実績を振り返ってみた限りでは、やはりスピードとコースの違いに戸惑って実力を発揮できずに終わってしまうケースが多いようです。特に今回のメンバーは、日本のG1に参戦して来た外国調教馬としては小粒といった印象もあり、馬券に絡める争いが出来るかどうかは極めて微妙といったところです。

 さて、次に駒木のフォーカスですが、こんな感じになりました。(注:この予想は土曜日時点のものです。雨が降ってしまったので、随分と様相が異なってしまいました。詳しくはこの後の追記を参照下さい)

◎ 3 サニングデール
○ 1 デュランダル
▲ 9 ゴールデンキャスト
△ 13 シーイズトウショウ
× 14 キーンランドスワン
× 16 ウインラディウス

 前哨戦のセントウルSでは3着に終わったサニングデールですが、敗因はスローペースと59kgの斤量によるものとハッキリしていますので、ここでは度外視して良いでしょう。また、1200mのスペシャリストであるこの馬にとって、このレースは秋シーズン最大の目標で、ここはメイチの勝負気配で挑んで来るのは明らか。中山コースに変わってデュランダルの末脚が脅威を増しますが、コンディションの差からもスプリントG1春秋連覇は濃厚と言って良いでしょう。
 ここ1年ばかり、体調に恵まれないデュランダル。しかしそんな中でも戦績が実に安定しているのは立派の一言。本質的にはマイラーで、それ故に目標は11月のマイルCSという事になるのでしょうが、ここも地力だけで勝ち切ってしまう可能性も大いにあります。
 この2強に迫る可能性を秘めているのが、前哨戦の勝ち馬・ゴールデンキャスト。春まではオープン特別で2ケタ着順を連発する頼りない馬でしたが、この夏、先行脚質にモデルチェンジしてから一気にブレイク。あれよあれよという間に重賞初制覇まで果たしてしまいました。今回はハイペースをどう捌くかという大きな課題が待ち受けていますが、未だ底が見えない現況だけに何があっても驚けません。典型的な単穴タイプの馬と言えそうです。
 4番手評価はシーイズトウショウ。1200m戦における堅実さは周知の通り。先行タイプながら脚質面でも比較的融通が効きますので、中団に追いやられても挽回出来る余地があるのが強みです。ただ、G1勝ち馬2頭を逆転するまでの地力は無いようで、余程の恵まれが無い限りは3着争いまでが精一杯のような気がします。
 その他、1着を争うまでは行かないものの、末脚勝負で馬券の圏内に紛れ込む可能性がある馬としてキーンランドスワンウインラディウスの2頭を挙げておきます。
 穴人気しているカルストンライトオは、やはり超ハイペースと最後の坂が堪えて苦戦を強いられそうです。大西騎手が他の先行馬を捌きつつ上手く御せればギリギリ3着はあるかも知れませんが……。
 馬券的には、やはり3連単を中心に。最終的にはもう少し絞りたいですが、とりあえずはフォーメーションで(1、3)−(1、3)−(13、14、16)の6点に、1、3、9のボックス6点の計12点としておきます。結構堅めのフォーカスですが、これでも万馬券になる組み合わせはゴロゴロしています。

追記:レース当日・中山競馬場ではドバっと雨が降って、なんと不良馬場になってしまいました。予想の時点では良馬場で行われるものと思い込んでいましたので、これは「エライこっちゃ」です(苦笑)。
 予想でピックアップした馬のうち、◎サニングデールは道悪巧者で全く問題無いのですが、○デュランダルと▲ゴールデンキャストは切れ味勝負のタイプだけに、不良まで悪化するとかなり厳しいと思われます。取捨選択の再検討が必要でしょう。
 また、△シーイズトウショウと×キーンランドスワンは道悪馬場での連対経験有り。×ウインラディウスは今年の京王杯SCでは稍重馬場でレコード勝ちしています。
 そして、道悪と言えば逃げ馬。ハナを切る事が予想されるカルストンライトオは昨年不良馬場でシーイズトウショウ、サーガノベル相手に逃げ切っており、これは要注意。後続が末脚を殺がれて苦しむようなら1、2着争いまで持ち込む可能性もあります。あとは外国馬ですが、最近の外国の調教師たちは日本の軽い馬場に適性がありそうな馬を連れて来る傾向があるため、この馬場はかえってマイナスではないかと考えています。

 ──それでは、駒木の出番はここまで。この後は今回からスタートする珠美ちゃんたち当講座が誇る3人娘の“勉強会”の様子をご覧頂きます。……まぁ珠美ちゃんはともかくとして、あとの2人が素直に“勉強”してくれるとは思えないんですが、とりあえずは駒木も楽しみながら様子を眺めてみたいと思います。では。


 ◎第2部:「乙女(?)の作戦会議」

順子:「3・連・単! 3・連・単! イエー!」
リサ:「イエー!(片手を突き上げて)」
順子:「リサちゃん、ノリ良いな(笑)、イエー!」
リサ:「だってオーストラリアの馬券は3連単がメインですからね、Ya----ha----!」
珠美:「…………。(「これか。私が失った“若さ”というモノはこれなのか」という思いをしみじみと噛み締めている)」
順子:「……いやー、ついにG1でも3連単ですよ。ワクワクしますねー」
リサ:「しちゃいますねー」
順子:「わたしの場合、もうどこから買っても万馬券って感じで、オッズを見るのが楽しくて楽しくて」
リサ:「ワタシなんか、イギリスと香港の馬を組み合わせに入れたらオッズが1000倍超えてましたイエー!(笑)」
順子:「イエー!(笑)」
珠美:「(机を叩いてドンドン! という音を立てて)……ハイ、そこまで! ハシャぎたくなる気持ちは分かるけど、もうちょっと真面目に勉強しましょうね」
順子:「はーい。……なんか、付属高校時代に戻った気分(苦笑)」
リサ:「ワタシも教室にいる気分です(笑)」
珠美:「駒木博士も高校でお仕事している時にはこんな苦労をしてらっしゃるのかしら(苦笑)。……ま、そういうわけで、今日からは私たち3人がG1予想の勉強会をして、その模様を受講生の皆さんにご覧頂くことになりました」
順子:「要は、これまでバラバラに予想コラムを載せていたのを1つにまとめたってことですね(笑)」
珠美:「基本的にはそういう事になるわね。でも、回を重ねていく内に、私たち3人だからこそ出来ることを色々と模索してみたいと思っているのだけれど」
順子:「珠美先輩だけならともかく、わたしとリサちゃんが入って大丈夫かな〜(苦笑)。わたしが出来ることと言ったら、博士の予想にイチャモンつけるくらいしかないですし、リサちゃんはビギナーだから座ってるだけだろうし(笑)。……あ、博士の予想はもう出てるんですよね。さっそくイチャモンつけてみようかな」
珠美:「(苦笑)……えーと、これね(と、ペーパーを手渡す)」
順子:「おーおーおーおー、相変わらず面白みの無い予想(笑)。当てに行ってるようで中途半端に穴も狙うから、結果も中途半端なんですよねー……って、ウソ、中山雨なんですか?」
珠美:「そうみたい。芝もダートも不良馬場みたいよ」
順子:「えー? わたし、ゴールデンキャストから狙おうと思ってたんですけど……」
珠美:「私だってデュランダルが本命だったのよ(苦笑)」
リサ:「ワタシはデュランダルとゴールデンキャストから狙うつもりでした(苦笑)」
順子:「うわー、幸先悪! ……どうしましょう。用意してた予想が完全に狂っちゃいましたよ」
珠美:「これは本当に作戦会議をやらなくちゃならなさそうね(笑)」
順子:「ですねー。じゃあ、とりあえず展開予想からやり直します?」
珠美:「そうしましょうか。……まず、何としても逃げたい馬はナムラビッグタイムとカルストンライトオだけど、スピードはカルストンの方ね。これがハナを切って、『行ける所まで行く』という感じで逃げるでしょうね。そして、それを追いかける、本当なら3〜4番手までにつけたい先行タイプの馬が、2番手待機になるはずのナムラビッグタイムも含めて7頭」
順子:「それじゃあ超のつくハイペースですね」
珠美:「常識的に考えたらそうなるわね。12〜3番手からサニングデールが差して来て、更にその後ろ、最後方からデュランダルが追い込んで来る……という感じかしら。でも、馬場がここまで悪くなったら、ハイペースだからと言って絶対に不利というわけでは無くなるから、色々と考えなきゃならないでしょうね」
リサ:「色々と?」
珠美:「ええ、各馬の道悪適性にもよるけど、一般的には逃げ・先行が有利で差し・追込は不利になるわね。だから私が本命にしたデュランダルはちょっと厳しそうね(苦笑)」
順子:「ゴールデンキャストはどうでしょう?」
珠美:「本格化・先行脚質になってから道悪の経験が無いので断言できないけれど、関係者の人たちは『良馬場で』と願ってたみたいね。博士のおっしゃる通り、デュランダルとゴールデンキャストを本命にするのはかなりの冒険じゃないかしら」
順子:「……となると、やっぱりサニングデールですか?」
珠美:「あとはカルストンライトオ、シーイズトウショウ、ウインラディウスね。人気薄ではシルヴァーゼット、シルキーラグーン、ナムラビッグタイムあたりも稍重までなら好走したことがあるわね」
リサ:「イギリスと香港の馬はどうですか?」
珠美:「やっぱり日本の競馬に合うように良馬場向きの馬が来てるみたいね。道悪になると厳しいんじゃないかしら」
リサ:「ワタシ、今週はギブアップです(苦笑)。狙ってたほとんどの馬が道悪苦手みたいですから、もう諦めた方が良さそうですね〜」
順子:「じゃあ、わたしはゴールデンキャストの評価を下げて、カルストンライトオ、シーイズトウショウから狙ってみます。もちろん3連単で、フォーメーション(5、13)−(3、5、9、13)−(3、5、7、9、13、14)の24点。全部万馬券です!(笑)」
珠美:「私はサニングデールから……」
順子:「あ、駒木博士と一緒の本命ですね(笑)」
珠美:「……順子ちゃん、世の中には思っていても口にしてはいけない事があると思うの(笑)」
順子:「失礼しました(苦笑)」
珠美:「私は手堅く馬連で、3-5、3-13、5-13、1-3、3-9、3-14の6点。こういう不安要素の多い条件だから、順子ちゃんもあんまりお小遣い張り込んだらダメよ。今日の場合は、リサちゃんが一番賢いのかも知れないわね(笑)」
リサ:「ほめられちゃいました(笑)」
順子:「というか、控除率25%弱のギャンブルやってる時点で、もう不安要素満載なんですけどねー(笑)」
珠美:「ま、それも言わない約束よね(笑)。……というわけで、一応の結論も出たし、今日はここまでということにしましょうか。お疲れ様でした」
リサ:「オツカレサマでしたー」
順子:「おつかれでしたー」
珠美:「それでは受講生の皆様、失礼致します。最後まで有難うございました」


スプリンターズS 成績

1着 カルストンライトオ
2着 1 デュランダル
3着 12 ケープオブグッドホープ
4着 16 ウインラディウス
5着 15 シルキーラグーン
以下、おもな人気上位馬着順
7着 13 シーイズトウショウ
9着 サニングデール
11着 ゴールデンキャスト

単勝5 850円/馬連1-5 2400円/馬単5-1 4010円/3連複1-5-12 22570円/3連単5-1-12 109810円

 レース解説》
 果敢にハナに立ったカルストンライトオが、先行集団にやや絡まれながらも1馬身弱のリードを保ったまま直線へ。内ラチ沿いに待機していた差し勢が追撃を開始しようとしたところ、失速した先行・好位勢が壁になってしまい、サニングデールやアシュダウンエキスプレスといったあたりはここで万事休す。
 このゴタゴタの間に悠々とセーフティリードを確保したカルストンライトオは楽々と逃げ切り。3コーナー辺りから大外捲りのロングスパートでデュランダルも懸命に迫ったが、ビハインドはあまりにも大きく、4馬身遅れの2着を確保するのが精一杯。3着には馬群を割って突っ込んだ香港のケープオブグッドホープ。4着、5着は外から流れ込み。
 シーイズトウショウは道悪云々よりパワーが要求される馬場になったのが堪えたようだ。ゴールデンキャストはスパートしようとしてノメったとの事で、やはり道悪は良くないのだろう。

 


 

2004年第39回講義
8月5日(木) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(8・最終回)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回

 今週は「現代マンガ時評」を後回しにして、こちらの方を優先的に進めているわけですが、ここに来て連日講義を実施しているにも関わらず、日に日に出席者数が落ちている事実が判明し、最終回を前にすっかり意気消沈の駒木ハヤトで御座います(苦笑)。
 この講義の原稿を準備中の只今8月4日深夜、ちょうど台風11号がやって来ておりまして、研究室の外は激しい風雨が吹きすさんでおります。とりあえず外へ飛び出して、『パタリロ』の「陰陰滅滅」ごっこでもやってみましょうか。……いや、順子ちゃん本気じゃないから。真顔で「ハイどうぞ」ってドア開けるの止めてくれないか。

 ──まぁそんな感じで、この度打ち切りが決まったTBS系「はぴひる!」の担当ディレクターのような士気でレポート最終回をお届けします。ここまで来たんですから、行き掛かり上せめて最後までお付き合いを。

 旅行初日の午後4時半過ぎの高知競馬場からレポート再開。いつも通り文体は常体、人物名は原則敬称略とします。


 払戻窓口(といっても、自動払戻機が並んでるだけだが)に辿り着くと、これがまたとんでもない事になっていた。

 1番人気の決着だったから人が多いのは分かる。しかも普段とは文字通り桁の違う人数が来場しているのだから、大行列になって当たり前だ。
 しかしなんだ、この毒蝮三太夫が言うところのクソババァの群れは。今日初めて観光バスに乗って競馬場に来ましたと、東京アメ横・大阪黒門市場系の服装で力強くアピールしているオバさんたちがここに一体何の用だ。貴方たちは駒木みたいにスレた競馬ファンとは違って、馬券の買い方も知らないまま、ただ純粋にハルウララの応援をしに来たんじゃなかったのか。なんでハルウララ外して馬券買って当ててるねん

 しかもこの人たち、駒木が競馬慣れしていると見えたのだろう、何の断りも無く、次々と質問して来るからたまらない。

 「ねぇねぇ、これ、当たってるんかな?」
 ……うわー、馬単15点買いですかお母さん。一応当たってますけど、競馬初めてにしては蛭子能収みたいな物凄い買い方してますな。
 「これ、ナンボになるんかな?」
 ……7.4倍の馬連1000円と11.3倍の馬単500円ですから全部で13000円くらいですか。え? 購入総額が11500円だから1500円ほど儲かって良かった? それは何よりですね。しかし、競馬初めてにしては凄い金額張ってますな。失礼ですけど、今日貴方が家に置いてきたお宅のご主人さん、昼ご飯何食べてらっしゃったんでしょうね。松屋? 吉野家? 
 
 いやー、世知辛い世知辛い。駒木が言うのも筋違いだけど、あんたたち、ちょっとは空気読みなさいよ!(男色ディーノ風に)。
 結論。渡る世間は鬼ばかり。橋田先生、貴方は正しかった! どうぞ末永く、赤木春恵が泉ピン子を苛め抜き、子供に反抗された角野卓造が貴重な毛髪を振り乱しながらヤケ酒を飲むようなお話を書き続けて下さい。

 ──というわけで、現代社会の世知辛さを痛感した駒木は、この後も自動払戻機のタマ(現金)切れという、普通ではお目にかかれない事態で更に時間を食われながらも何とか払戻しを終え、駅前デパート4階特設ブース・冬物最終大バーゲン会場を彷彿とさせる修羅場を離脱したのであった。
 そして高知競馬場から退出。多少名残惜しい気持ちはあれど、かと言って名残を惜しむ余裕も無いというのが正直な所。既に事実上の旅行開始から20時間を過ぎ、かなり体力的にも追い詰められて来ている上に、これから時間を潰して夜行で帰らなければならないのだ。誰だこんなプラン考えたヤツは? ……多分、日頃からうだつの上がらない、例えばヤフーBBのモデム配りなんかで糊口を凌いでいるヤツに違いない。

 疲れ果てた体を引きずるように、高知駅行の無料バス乗り場へと歩く。普段なら競馬場前までバスが来てくれるのだが、今日は混乱を避けるために(多分、バスツアー客が間違えて乗らないためだろう)随分と外れた所まで歩かなければならない。道端では、ツアーコンダクターと思しきスーツ姿の人たちが「○○交通社のツアーの皆さんは、あちらの駐車場までお願いしま〜す!」…とか懸命に叫びつつ、トランシーバーで誰かからの指示を仰いだりしていた。この人たちも大変だなあ。
 臨時のバス停車場でしばらく待つと、路線バスタイプの大型バスがやって来た。ところが停車するなり運転手が降りて来て、係員と運行ルートの確認を始める。どうやら臨時増便で駆り出された人らしい。大丈夫なのか。でもまぁ、バスだったらいつか目的地に着くから大丈夫か。これが飛行機とかだったら怖いけど。「こっち行ったら北朝鮮ですから、入ったら撃ち落とされます。気をつけて下さいね」とか。

 数分後、満員の乗客を積んでバス発車。駒木は何とか座席をキープし、往路では荒天のせいで窓が曇って見えなかった車窓の風景を楽しみながら、駅前に着くまで束の間の休息を摂る。
 窓から見える風景は、「これぞ四国」と言うような風光明媚な田舎道。たまにパチンコ屋やレンタルビデオ屋の広告看板があるのが哀愁をそそる。それにしてもシケた所に競馬場建ててるなあ。まぁ住宅街のすぐ近くにギャンブル場が建っている兵庫県が特殊なケースなんだろうけど、そりゃあ客も来んわと思ってしまう。

 道路の混雑もあって、市街地に入るまで30分以上かかっただろうか。バスはようやく高知駅の1キロほど手前、“はりまや橋前”の停留所に到着し、駒木はここで下車した。駅前で飲食店や商店が最も多く集まるとされるのがこの辺りだ。時刻は間もなく18時といったところ。これから帰りの夜行が出るまで、5時間ほどをこの界隈で過ごさなければならない。
 いつもの東京旅行ならば、“夜日程”と称して格闘技観戦や落語観賞、麻雀で旅費稼ぎを狙って逆に散財…などといったプランを組み、夜行までの時間を効率的に潰すのであるが、ここは地方都市高知。後楽園ホールも演芸場も点5のフリー雀荘も無いのである。さぁ、どうしたものか。
 それでも、ボケっとしていても仕方がないので、とりあえず歩き出す。しばらく行くと、1/4スケールにしたお堀の大橋のようなモノが見えてきた。どう考えてもショボい見てくれに、やたら真新しい塗装が痛々しい。どうやらこれが“観光名所・日本3大ガッカリ”として名高いはりまや橋らしい。う〜む、確かにガッカリだ。別にこれを観に来たわけじゃないのにガッカリだもの(笑)。
 それからしばらく周辺を歩き回ってみたところ、商店街らしきものを2つ3つ見つけたが、それも地元の人の生活と密着した店ばかりで途方に暮れる。しかもどの店も18時半を過ぎた辺りから続々とシャッターを閉めてゆくではないか。おいおい、もう町全体が店仕舞いかよ!
 ……気がつけば、周りで開いている店は、居酒屋コンビニと、何故かあったCoCo壱番屋ぐらいしか無くなっていた。まさか高知がここまで田舎だとは思っていなかった。県庁所在地だという事で少し甘く見ていたかも知れない。うーん、これからどうしようか。

 とりあえず腹も減ったのでココイチに入る。よく考えたら、今日は早朝に車中でパン食ってからは、鯨カツとホルモン焼きしか食っていなかった。今日の競馬新聞を見たりして今日の記憶を反芻したりしながら、ロースカツカレー・チーズミックス・ライス100g増量を平らげる。さすがチェーン店、カレーの味は神戸と寸分も違わない。
 店内にいたのは小一時間くらいだっただろうか。時刻はまだ19時台。あと3時間チョイをどうにかして潰さなければならない。
 こういうハンパな時間を潰すにはマンガ喫茶が一番なのだが、マクドナルドやドトールコーヒーすら見当たらないこの町に、果たしてマンガ喫茶なんかあるのだろうか。イスラム教圏で豚カツ専門店を探すようなものじゃないのか。
 それでも時間が余っている事だけは確かなので、暇潰しも兼ねて暇潰しスポットを探す(不毛だなオイ)。まずは一旦高知駅前に戻ってみるが、もう駅構内の喫茶店も閉店しており、そこから追い出されたと思われる10数人の旅行客が近くの待合所(ベンチと自動販売機があるだけの場所)で途方に暮れていた。適切な喩えじゃないと思うが、まるで難民か避難民のようだ。
 さすがにここで3時間を過ごすのはバカバカしいので、駒木は駅の外に出て再び歩き出す。まず、市街地と反対側の駅前はどうなってるのだろうと駅前の歩道橋を渡ってみたが、驚くほど真っ暗だったのに怖気づいて即引き返す。恐らくは閑静な住宅街なのだろう。だが、それにしても歩道橋の上から俯瞰してもコンビニすら見当たらないのには参った。数キロ先にパチンコ屋かカラオケボックスのネオンサインが光っているのが見えたが、まるでスモッグで真っ黒に曇った都会の夜空に鈍く光る月明かりのような不気味さだけを感じる。
 再び1キロの道のりを引き返し、あらかたシャッターの閉まった“はりまや橋前”へ。あっちへウロウロ、こっちへウロウロしながらマンガ喫茶を探す。人通りも少なく、こんな所にマンガ喫茶があるのか、あったところでマトモな店があるのかと不安になる。最近の極限まで設備の整ったマンガ喫茶しか知らない人はピンと来ないだろうが、3年くらい前までは「物凄い」としか形容しようのないマンガ喫茶があったりしたものだ。「飲物、食事無料」と謳っていて、中に入ってみたら電気ポットとカップラーメンとインスタントコーヒーと紅茶のティーバッグが置いてあったり。
 結局、都合1時間は捜し歩いただろうか。メインストリートから少し外れた所に、白木屋と魚民とカラオケボックスが同居しているという、微妙に流行から取り残された“準都会”を象徴するようなビルがあり、そこの1フロアにマンガ喫茶があるのを遂に発見した。料金設定が多少割高なのは気になったが、最新型の設備が整っているようだった。とりあえずしばらくは時間が潰せそうなので速やかに入店する。

 入店早々、受付の娘さんから「当店は会員制ですので、入会料をお支払い下さい。会員証をお作りいたします」などと言われる。神戸からの旅行者に高知のマンガ喫茶の会員証も無いので断ろうとしたら、入会しないと利用出来ないというお答え。腑に落ちないなぁと思いつつも、たかが数百円の入会金でアルバイトの女の子を困らせるのもアレなので、渋々入会する。でもお嬢さん、「ご利用ポイントに応じて様々なサービスが御座います」って、それはギャグで言っていたのか?
 ただ、最初でいきなり躓いたが、店内の設備はかなりの内容でこれは満足。フリーのソフトドリンクも充実しているし、地方都市の店にしては頑張っている方だろう。個人的にはミニッツメイドのグレープフルーツがあるというのが高ポイント。
 とりあえずここでは料金を気にしながら1時間ほど、留守中にチェックできなかったインターネットの巡回を中心に過ごす。わざわざ金払ってるんだから、未読のマンガ読んでりゃ良いのに…とセルフツッコミしながらも止められない職業病。

 店を出た時点で、夜行の発車まで1時間強。これくらいなら、コンビニで立ち読みしたりして何とか暇潰し出来そうだ。24時間ほぼ不眠不休で体にかなりキているのだが、もう帰りの夜行で寝るための睡眠薬代わりだと開き直って体を酷使する事にした。さすがにこれだけ疲れておけば、トドメの缶チューハイ1本で安らかな眠りに就けるだろう。
 高知駅に戻ったのは22時半ごろ。駅前は、駒木と同じ夜行に乗る旅行客がウロついているのを除けば、すっかり閑散としてしまっている。とても県の中心部にある駅とは思えないが、高知駅の時刻表を見たらそれも肯ける。この時点で、もうほとんどの電車が終わっているのである。駒木が乗る「ムーンライト高知」が上り線では正真正銘の最終便で、その前に出る土佐山田行の普通電車は、何と1両編成のワンマンカーだ。
 その普通電車が発車して間もなく、「ムーンライト高知」が入場するというので、いよいよホームに入る。改札を青春18きっぷで通過。今朝、三ノ宮から高知まで乗って来た日付の18きっぷで帰りのホームをくぐるというのは変な感覚だが、これこそ0泊2日弾丸旅行の醍醐味である。本来なら、高知から神戸まで行く場合は、23時前に高知駅を出てから土佐山田駅で日付が変わるまでの運賃1580円が余計にかかるのだが、今回のプランならその分が節約出来るのである。これぞ普通の人にはお薦め出来ない、体を犠牲にした極限の交通費節約策だ。

 「ムーンライト高知」普通指定席の座席は、簡易リクライニングシートと呼ばれる旧式のイスで、座り心地は決して良くない。いつもの駒木ならとても寝つけないところだが、疲労困憊の今日はさすがに眠れそうだ。発車間もなく、先程立ち読みしたコンビニで仕入れた缶チューハイを呷ると、あっという間に睡魔が襲い掛かって来た。おお、素晴らしい。生まれて始めて夜行列車で熟睡出来……
 ……と、意識を失い、次に目覚めた時には既に岡山を過ぎていた。時刻は午前4時。5時間弱眠っていた事になる。上出来だ。
 この後の事については、多言を要さない。その後、1時間半ほど読書と車窓を楽しんで、午前5時半に三ノ宮に到着。高知では売ってなかった「週刊少年ジャンプ」と「週刊競馬ブック」を手に入れて、フラフラと家路に就いた。家では入浴の後、夕方まで爆睡したのは言うまでも無い。

 しかし、今回の旅行は色々な意味で“濃かった”。往路のデタラメ極まりない移動手段、高知競馬場で立て続けに見た異様な光景の連続、そして疲れた体を引きずって辿り着いた高知駅前で必死に試みた暇潰し。不毛と言えば不毛だし、充実していると言えば充実していただろう。
 だが、受講生の皆さんに言っておく。こんな旅行、絶対マネするな。間違いなく後悔するぞ。


 ……というわけで、高知競馬旅行記でした。全8回のうち、主役であるハルウララが出て来たのは結局1回だけでしたね。本当にどうしようもないレポートでしたが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。(この項終わり)

 


 

2004年第38回講義
8月3日(火) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(7)

  ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回

 今日は高知競馬場でハルウララとその弟妹が同じレースで対決するというイベントがあったわけですが、併せて関係者からハルウララの引退も発表されました。ただし来年の3月、今年と同じ黒船賞当日に引退という、鬼が「水曜どうでしょう」の藤村ディレクターのように派手に笑いそうな先の遠いお話。それでもこのニュースはテレビなどでクソマジメに報じられ、それを見た駒木は力なく笑う他ありませんでした。
 それにしても豪快な焼畑農業というか、1年ごとに結果を出さないと即廃止、という苦しい台所事情がヒシヒシと伝わって来る話で、駒木は気が気じゃありません。プロレス業界などでも、自団体の目玉レスラーが引退する時には半年以上かけて引退カウントダウン・シリーズを全国展開し、カネを稼げる内に根こそぎ稼ぎきってしまうわけですが、大抵その直後から集客も収益もガタ落ちするのが普通ですからね。妹のミツイシフラワーじゃ“次期エース”には役不足(新用法)ですし、普通に考えると来年3月にハルウララ引退レースで大入り満員、再来年か3年後の3月には高知競馬廃止を惜しむ人で大入り満員…という悲しい結果になりそうです。
 個人的には、高知競馬場は地方競馬の良い所を残した素晴らしい所だと思っていますので、何とか存続していってもらいたいんですが……。

 ──まぁ湿っぽい話はとりあえず置いておいて、春のお祭りのお話を再開しましょう。今日でいよいよ主役登場です。
 旅行初日の午後4時過ぎの高知競馬場からレポート再開です。いつも通り文体は常体、人物名は原則敬称略とします。


 黒船賞の出走全馬がゴール板を駆け抜けたのを確認するなり、駒木は馬券発売窓口へ向けてダッシュした。勿論、最終レースの馬券を買い求めるためである。メインレースが終ったことで、これまで前売窓口だけでしか買えなかった最終レースの馬券が、全ての馬券発売窓口で買えるようになるのだ。
 駒木が駆けつけた時点で、各窓口には10数人ほどの列。これなら25分程度で順番が回って来るので、十分間に合うだろう(メインレース終了から最終レースの馬券発売締切までは30分以上ある)。そう、この日でさえ、機敏に立ち回ってさえいれば、長々と行列の中で立ち尽くさずとも、最終レース前にちょっと並ぶだけでハルウララ馬券を買う事は出来たのだ。やはり鉄火場はトロい人間が泣きを見てしまうのである。まぁ一番泣きを見るのは、駒木のように頭の回らないヤツなのではあるが。

 さて、ハルウララ馬券は既に購入済みなのにも関わらず、こうしてまた馬券発売窓口に並んでいるのは他でもない。ハルウララ以外の馬の単勝馬券を買ってちょっと儲けてやろうという、空気の読めていない上に世にも浅ましい作戦を実行するためである。
 朝から全国中で買われ続けたハルウララの単勝馬券の額は億単位にもなる。当然の事ながら、ハルウララはダントツの単勝1番人気。しかしハルウララがこの日のレースを勝つ確率は、たとえ武豊騎乗であっても極めて低い。これは即ち、本来なら単勝1番人気に推されるはずの馬が、本来の力関係では考えられない高いオッズに甘んじているという事である。実質的な回収期待値は遥かに100%を超えているだろう。これを狙わずして何を狙おうというのか。たとえ高知競馬場にいる全員を敵に回してもやってやる。

 ……などと思っていたら、場内モニターに映し出された他の馬の単勝オッズが意外と低い!(笑) あれだけ馬券の売れてたハルウララのオッズが1.9とか2.0倍ってどういう話なんだ。これって単勝に投じられた総額数億円の内、半分以上がハルウララ以外の馬に賭けられているって事になるぞ。
 どうやら、ここでも皆が考えている事は一緒だったらしい。ハルウララの馬券を“グッズ”や“お土産品”として購入する一方で、新聞の馬柱に◎や○印のついていた馬の単勝を“勝負馬券”として買っていた連中が全国にゴマンといたようだ。駒木が言うのもアレだが、世知辛いにも程がある(涙)。
 結局、本来の本命馬で、結果的にこのレースの勝ち馬となるファストバウンス号の単勝最終オッズは4.0倍になった。これでも本来のオッズよりは随分と高いのだろうが、計算上は単勝支持率約18.5%で、ざっと数千万円の投票があった事になる。ハルウララも異常投票なら、これも異常投票だよなあ。株で言う仕手戦みたいなもんか。

 別のモニターテレビにはオッズ情報でなく、パドックの様子を中継放映しているものもあった。パドックには大勢のギャラリーが溢れかえっていて、臆病なハルウララがイレこみやしないか…などと心配していたが、数ヶ月来のフィーバーでこれくらいは慣れてしまったのか、大人しく周回を重ねていた。
 せっかくだからハルウララの外見的特徴でも……と思ったのだが、ちょっと小さめのサラブレッドという以外に語る事無し(笑)。そりゃまぁ同じ種類の馬だけ集めて競走してるんだから当たり前と言えば当たり前か。これが馬じゃなくてキリンとかだったら、「毛は他と違って黄色に黒の斑が入っていて、あと、バカみたいに首が長いです」とか言えたのだが。
 ……やがて騎手控え室から、最終レースに出場するジョッキーたちが姿を現した。遠征騎手用の貸し勝負服を着た武豊も照れ気味にはにかみつつ登場。係員から形ばかりの諸注意を受けた後、ハルウララの下へと向かい、そして跨る。この時、武豊は「スタートが決まれば逃げるつもりです」と宗石調教師に告げたそうである。先行有利の馬場状態もそうだが、ハルウララの臆病な気性や、瞬発力に欠ける感のある近況を考慮しての作戦提示だろう。さすがは新人時代「歩く競馬四季報」と呼ばれた男、気の進まない仕事であっても、多忙の合間を縫って最低限のリサーチはキッチリ入れている。

 ハルウララ他、出走各馬が本馬場へ入場したのとほぼ同時に、駒木は馬券購入を終えてゴール板前へと移動した。後ろでは急ごしらえの櫓が建てられており、そこで実況アナウンサーが大声を張り上げていた。どうやら全国ネットでレースの模様を中継するらしい。
 しかし重賞レースをスルーして最下級条件のレースを全国中継とは、ミッキー・ロークがメインイベントで猫パンチを披露した“伝説の”ボクシング興行を思い出させるエピソードだよなぁ。でもまぁ今日は野暮ったい事言うのは禁止か。曲がりなりにも高知競馬のPRになってるんだから、ヨシとしないといかんわな。
 それにしても場内の空気が妙に緩くて居心地が悪い。普通は、どんなに大レース前で浮かれムードになっていても、ギャンブル場特有の緊張感みたいなものも残っているものだが、今日は競馬場というよりタレント出待ち中の空港ロビーみたいな感じがする。ハルウララを外した馬券握って独りでドキドキしてるのがバカみたいだ。

 そうこうしている内に、出走時刻がやって来てファンファーレが鳴る。大レース御馴染みの手拍子も無し。今日来ている客の大半は「今日が競馬場来るの初めて」という超ビギナーなので、「大レースの時はファンファーレに合わせて手拍子しなくちゃいけない」という、競馬初心者でも身に付けている(誤った)知識すら持ち合わせていないのだ。
 ハルウララもゲート入りはスンナリと終り、スタート態勢が整った。

 ゲートが開く
 
ハルウララ、見事に出遅れる。

 
逃げるどころか中位辺りをキープするのが精一杯。騎手のスタート失敗というより、根本的にダッシュ力が足りないのが出負けの原因だろう。
 鞍上の武豊は、この時点で早くも敗戦を確信したそうだが、駒木も「ああ、こりゃアカン」と思った。現時点におけるハルウララの実力では、後ろから行ったのでは最後に追い上げても到底先頭には届かない。
 後から聞いた話だが、実はこの時高知競馬所属の騎手たちは、涙を呑んでスタートからハルウララを徹底的に負かしに行っていたとのことだ。「ウララに勝たせたいのはヤマヤマだが、落下傘みたいにやって来た中央の騎手に手柄を奪われるのを許すわけにはいかない」…というわけである。
 とはいえ、場内の雰囲気はあくまで穏やか。そんなギスギスした駆け引きが起こっているとは知る由も無いギャラリーからは、「ガンバレー」などといった無邪気な声援と拍手が飛ぶ。まるで小学校運動会の徒競走の世界
 レースは淡々と展開し、バックストレッチからやがて3コーナーへ。ここで「せめて見せ場でも」と思ったのだろう、武豊が強引にゴーサインを出して進出を開始。ただし直後に終了(笑)。馬群の中でもがきながらズルズルと後退して行き、間もなくゴールしようかという先頭集団からは大きく離されていった。それでも客席からは相変わらずの無邪気な声援。それに後押しされるというより、温かく包まれながら、ハルウララはブービーの10着でゴールした。これで都合106連敗という事になる。

 ──さて、祭りは終わった。
 馬券も一応当たったし、とっとと払戻しに行って、混雑しない内に帰ろうか……などとレーストラックに背を向けて歩き出した途端、何故か場内から巻き起こる大歓声と拍手。何事かと思って振り返ると、何とハルウララと武豊がウイニング・ランの要領でコースを余分に1周し、ホームストレッチに戻って来てギャラリーからヤンヤの喝采を浴びているではないか。

 前代未聞のルーザーズ・ラン

 いやー、しかしこの発想が見事だ。さすが武豊、役者が違う。普通の騎手なら、まずこんな事考えないし、考えたにしても(そいつがとんでもない阿呆でもない限り)行動に移そうなんて思わないだろう。
 これは、武豊ほどの超一流騎手にしか許されない、また、意図的に自分の存在感を抑える事の出来る武豊だからこそ可能だったパフォーマンスだったはずだ。もしこれを後藤浩輝あたりがやったとしたら、「あのバカ、自分が目立つ事しか考えねえ」とか言われたに違いない。

 ルーザーズ・ランを見届け、「いやー、事の良し悪しは別にして貴重な体験をしたなぁ……」などと心地良い余韻に浸りながら、今度こそ的中馬券払戻機の方へ向かう。
 しかし、そこで見た光景は、そんな幸せな余韻をブチ壊すのに十分過ぎるインパクトを持っていた。次回へ続く

 ※次回で完結予定です。最後まで宜しく。 

 


 

2004年第37回講義
8月2日(月) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(6)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回

 高知旅行レポの6回目をお送りします。
 ……しかし、今年3月22日の高知競馬レポを執筆・掲載しているウェブサイトは数多くあれど、4ヶ月以上引っ張って未だにハルウララが出て来ないレポートというのは、多分当講座のこのレポートだけでしょう(笑)。なんでしょうか、30前の兄ちゃんが小難しい能書き垂れながら高知駅前と競馬場内をウロウロしているだけで5回も引っ張ってしまうというこの力技は。マワシ取られてからの貴ノ浪みたいな。
 ただ、そろそろピッチを上げないと色々な意味でシャレにならないのも事実でありますので、せめて次回あたりには何とか“主役登場”という事にしたいと思っております。とりあえず今しばらくバカの戯言にお付き合い頂ければと、このように思っております。どうか何卒。

 では、時は旅行初日の午後2時過ぎ、場所は相変わらず高知競馬場からスタートです。文体は常体、人物名は原則敬称略とさせて頂いてます。


 ホルモン焼きで空腹とストレスを紛らわせた駒木は、再び勝算の無い馬券戦線に復帰するため、観戦スタンドへと戻って来た。
 この段階で既に入場制限も行われているようだったが、実のところ、それほど深刻な混雑が起きているとは思えない。確かに普段の高知競馬場では考えられないほどの客入りなのだろうが、まだスペースには十分余裕があった。これなら園田競馬の年末年始開催の方が混んでいる位だし、競馬ブームの頃、G1レース当日の阪神競馬場で体験した殺人的混雑に比べると、「混雑」と言うよりちょっとした「雑踏」のレヴェルである。
 ただ、前売の馬券発売窓口だけは相変わらずの長蛇の列で、30年前の人がタイムスリップしてこの光景を見たら、「あれ? 競馬場でトイレットペーパーでも売ってるの?」と思うような状況が続いている。並んでいる人の顔には明らかに疲労の色が浮かんでいて、「自分はこんな所まで来て何しているんだろう」と自問自答しているようにさえ見える。駒木も最終レースの馬券をゴミ箱に放り捨てながら同じ自問自答をする事があるが、多分それとは別の類のものだろう。
 一連のハルウララフィーバーで、「競馬場内は大混雑で、長時間並んだにも関わらず馬券が買えない人もいた」…という報道もあったようだが、実際はそうではなかったのだ。混んでいるのは窓口だけ。普通に競馬と馬券を楽しむだけなら、別に何の支障もありはしない
 この事からだけでも、いかにハルウララフィーバーというものが、高知競馬、いや競馬業界全体にとって特殊な事象であったかが窺える。これは競馬ではなくハルウララという存在だけにスポットが当たった現象で、それでいてカネだとか諸々のドロドロした部分だけは競馬業界全体で引き受ける羽目になっているという歪んだ構図。
 まぁこんなのは競馬だけでなく、どんなプロスポーツでも起こりうる話だ。相撲の若・貴フィーバー然り、女子プロレスのビューティペアとかクラッシュギャルズのブームも似たようなもんだろう。問題は、そうやって右も左も判らず集まって来た人を、いかに“正しい方向”へ導いて行くかで、これが大変に難しい。例に挙げた大相撲や女子プロレスの現状がそれを物語っている。競馬界でもオグリキャップの時に大きく顧客を増やしたが、結局は定着させ切れないまま、ジリ貧状態になって現在に至っている。
 今回のハルウララの場合はどうだろうか。残念ながら高知競馬の盛り上がりは、この3月22日をピークに一過性で終わってしまうような気がしてならない。主催者の高知競馬は物理的な処理能力限界のためにフィーバーを無事に乗り切る事だけで精一杯という感じだし、かと言って業界内外から高知競馬をサポートしようという動きも無い。それどころか武豊が「このハルウララフィーバー、ちょっとおかしいんじゃないですか?」みたいな事を言った途端に、彼の提灯記事専門ライターが競馬雑誌に長々と批判記事を垂れ流して足を引っ張る始末である。
 まぁ騒動に巻き込まれて迷惑を被った武豊が愚痴をこぼすのは仕方ないにしても、虎の威を借る狐が虎の代弁者の風情で好き勝手言うのは正直閉口した。高知競馬の騎手や厩舎スタッフの皆さんが、どんな思いでギリギリの経済状況に置かれながらも自分たちと愛する馬の居場所を守ろうとしているのか。高知空港から競馬場まで悠然とタクシーで乗り付けて重役出勤して来るような狐さんには、きっとその辺は死ぬまで分からないんだろう。

 ……とまぁ「週刊競馬ブック」の購読者以外にはチンプンカンプンな苦言はさておき、レポートを続ける。
 この日の高知競馬は、後半にメイン級のレースを畳み掛ける贅沢な構成になっていた。中央500万下条件馬と高知準オープン馬との交流競走、全国の競馬場から選抜された若手騎手が腕を競う「全日本新人王争覇戦」、そして交流重賞・黒船賞があって、事実上のメインレース・ハルウララ出走レースへと続く。
 何もたった1日にこれだけの目玉レースを放出しなくても…という考えも一瞬頭をよぎるが、よく考えたらこれほど馬券の売上げが見込める条件(万単位の来場者&馬券の全国発売)が揃う日など他にあるはずもないので、馬券が売れる日に何でもやってしまえ…という発想は決してナシではない。ましてや3月は収支決算にとって非常に大事な年度末。道路工事とガス工事と電気工事と水道工事を立て続けにやるようなものだと思えば、まぁ納得がゆくというものだ。

 しかし、そんな中でも駒木の馬券戦線は停滞気味である。まぁ年がら年中停滞している戦線なので、「南部戦線異常なし」というところではあるのだが、それにしても忸怩たる思いである。
 第7レースの交流競走は的中させたものの、何のヒネリも無い馬連1番人気の決着で確定オッズは4.2倍。今日前半の損失補填には程遠い。
 第8レースの全日本新人王争覇戦は、ハングリー精神旺盛な地方競馬の騎手が乗った先行馬・モエロイイオンナ号から狙ったところ、4コーナーで急失速して10着惨敗。「雨で湿気て燃えられませんでした」とオチまでついた。いらんわ、そんなオチ
 ちなみにこのレース、中央競馬所属騎手のワン・スリーフィニッシュ。表彰式を見てると、何だか今年のF1レースでフェラーリ勢が上位独占した時と同じような脱力感が。勝った騎手には罪は無いが、やっぱり興醒めというか何と言うか……。

 ──などとやっている内に、もうメインレースの黒船賞ではないか。早いなあ、時間が経つのは。モデム配ってる時はあんなに進みが遅いのに。
 さて、黒船賞の出走メンバーは第2回で紹介した通りだが、やはり実力上位の中央所属馬を軸に考えるのが無難だろう。実力最右翼はノボトゥルーだが、不良馬場という事を考えると、逃げ馬のディバインシルバーから狙ってみるのが馬券的には面白い。
 ……などと考えていたら、この2頭の組み合わせの馬連オッズは何と2倍台の圧倒的1番人気。そうですか、考えてる事は皆一緒ですか。
 レース前から半分負けたような気持ちになりながら、ディバインシルバー軸の馬連で、ノボトゥルー、ノボジャックの中央馬2頭と、身内贔屓も多少込めて兵庫所属のホクザンフィールドに流す3点買い。馬単で攻め切れないのは、午前中に逃げ・先行馬の不発に散々痛め付けられた後遺症である。こういう時に限ってアッサリ逃げ切ったりするものだと言う事は経験上よく知り抜いているのだが、もう儲けとかはどうでも良いから目先の的中が欲しい気分になっていた。

 で、結果は──

 1着:ディバインシルバー(逃げ切り)
 2着:ノボトゥルー
(4角捲り)
 3着:ホクザンフィールド
(追込届かず)

 ノーコメント。

 

 (ご愛読有難うございました。駒木博士の次回作にご期待ください!)

 

 ……と済ませたいくらい心底脱力した馬連2.7倍の決着。博才が無いにも程があるぞ駒木ハヤト!
 しかし、残念だったのは出場騎手が日本を代表する名手ばかりだったにも関わらず、不良馬場のために駆け引きも何にも無い単調なレース展開になってしまった事だった。まぁ、ひょっとしたら素人目には判らない部分で熾烈なバトルがあったのかも知れないが。

 しかし、メインレースの余韻に浸っている暇は無い。ハルウララの出走する最終レースに向けて、駒木は本日最後の馬券作戦に着手したのであった。詳しくは次回を待て!(大袈裟に次回へ続く

 


 

2004年第35回講義
7月29日(木) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(5)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回

 実に2ヶ月半ぶりのシリーズ再開となりました。春の旅行記なのに、季節が巡ってもうです(苦笑)。確かこの講義は「総受講者数200万人突破記念」だったはずなんですが、もうアクセスカウンタは250万を突破していると言う始末で、全く情けない限りです。
 正直、ボチボチ全ての記憶が曖昧になって来ているのですが(例えば、前回のラストにある「得も言われぬ微妙な雰囲気」がどんな雰囲気だったのかなんて、もう判りません^^;)、ここまで待って頂いた以上は、何とか頑張って形にしたいと思っております。至らない所もあるでしょうが、どうか最後まで何卒。

 ──それでは、今日は旅行初日(3月22日)の午後、高知競馬場内からです。なお、レポート中は文体を常体に変えておりますので宜しく。


 昼下がりの高知競馬場。朝からの雨は降ったり止んだりといった感じになっており、幾分過ごし易くはなって来ていた。
 さて、ハルウララ単勝馬券購入という“難事業”を終え、ようやく競馬観戦と馬券の検討に専念出来るようになった駒木であったが、ここに来てまたも大きな難題にブチ当たっていた。

 馬券が、ちっとも当たらない。

 何だいつもの事じゃねえか、というツッコミは甘んじて受け入れよう。ただ何と言うか、この日の場合は底なし沼にズブズブ埋まっていくような気持ちの悪い外れ方をするので気が滅入って仕方が無い。
 この日は折からの雨で馬場状態は朝から不良。ダート馬場、特に田舎の公営競馬場のような砂場のようなコースでは、ドロドロの不良馬場になれば逃げ・先行馬が絶対有利というのがセオリー。よって、馬券検討でも逃げ・先行馬を中心に攻めていったのだが、これが思うようにいかないのだ。
 あるレースでは狙った先行馬が前に行けず沈没。またあるレースでは、狙った馬が先行したものの今度は理屈を無視した後方追い込みが決まってまた沈没と、レース展開に関わらず馬券が外れてゆくのである。
 で、気休めにパドックへ行ってみると1番人気の馬がイレ込んで暴れているのが目に飛び込んでくる。で、「よし、1番人気を外して穴馬券だ!」と意気込んでみたら、いともアッサリと1番人気の馬が後続を突き放して先頭でゴールしてゆく。お約束と言えばお約束だが、これには正直参った。
 こういうのは“裏目に出た”とは言わない。“当たり目が勝手に避けてゆく”という非常に精神衛生上よろしくない現象なのである。麻雀好きの方なら必ず経験があるだろう、愚形をリャンメン以上の好形に変えてリーチをかけた途端に、待ちを変える前の当たり牌をツモりまくる…というアレ。そう、その挙句に「ロン」とか言われて「18000のチップ3枚です」と追い討ちをかけられるアレとよく似たパターンなのだ。そういえば昨日の出発前も……って、ネガティブな雑念ばかりが入って来るじゃあないか。こりゃいかん。

 こういう時は気分転換に限る。ギャンブル場巡りの醍醐味の1つ・場内B級グルメ探訪と洒落こむ事にした。ギャンブル場に行くと何故か旨いものが食いたくなる。
 まず真っ先に狙ったのは、一部で高知競馬場名物と言われている鯨カツ。かつてのB級食材の王様だった鯨肉も、狂信的な動物愛護運動のために今では滅多に見かけなくなってしまった。全国で70以上ある公営ギャンブル場でも、鯨肉が食べられるのは業界イチのグルメ度を誇る川崎競輪場と、ここ高知競馬場くらいなものだろう。
 で、1本100円の舌代を払って出て来たのは、名刺を一回り小さくしたような薄っぺらいカツ。まぁモノがモノだし仕方ないか、と思いガブリとやると冷えたカツ独特のエグい食感が(汗)。作り置きかよ! しかも肉の味がしねえよ!
 ……ネットでいくつかの高知競馬場レポを当たってみると、実は結構好評なこの鯨カツ。どうやら駒木は一番間の悪い時に買ってしまったらしい。こういう所でもツイてないのか今日は。

 気を取り直して場内奥のミニ食堂街へ。プレハブに毛の生えたような建物がズラリと並んでおり、この微妙に寂れた風情がいかにもローカルギャンブル場っぽくて良い。
 予算と腹具合に限りがある中で狙いを定めたのは、駒木の大好物・ホルモン焼き。本当は1本100円くらいで串焼きにしたヤツがあれば良かったのだが、残念ながら見当たらず。仕方ないので500円だか600円くらいした、皿のホルモン焼きを“奮発”して買ってみたのだけれど、これが意外にも大当たり!
 肉は所謂“放るもん”のクズ肉ではなく、焼肉屋で出るホルモン系の肉をミックスしたもの。テッチャンやミノだけでなく、レバーやセンマイなんかもちゃんと入ってるのが律儀で良い。タレは辛めで、恐らく客にビールを注文させるための手段とみた(笑)。駒木はギャンブル中にアルコールは御法度という事にしているので黙って辛さに耐えたが、数年ぶりに禁を破ってみたくなるくらいの美味。ここのホルモンをもう1度食べるためにまた高知競馬に行きたいくらいだ。

 ……そう言えば、の話になるが、また高知競馬に行くなら一度やってみたいのが、協賛レースのスポンサーだ。御宅族の皆さんには「まじかる☆さゆりん杯」で御馴染の、いわゆるレース名の買い取りシステムである。
 確か今はもう廃止になった上山競馬が最初に実施して、そこから全国各地に波及していったものだと記憶しているが、この協賛レース、1万円程度納めれば(普段は名前がつかないような下級条件の)レースに自分で好きな名前をつけられて、しかも同伴者共々貴賓室でのレース観戦と表彰式のプレゼンテーターまでやらせてもらえる…という破格のサービスになっている。
 この日のハルウララwith武豊のように、手段を選ばない集客活動に余念が無い高知競馬場でも協賛レースは行われていて、個人申し込みなら1万円で先述したサービスが受けられる。例えば今日の第1レースは「凱君祝1歳!バブもワンワン特別」で、第3レースは第2回 吉田一昭盃特別」である。短いセンテンスでここまでツッコミ処満載な文面も珍しいが、ここでは敢えて言及を避ける。
 実は、この夏休みにでも駒木研究室主催の協賛レースでも実施して、受講生の皆さんと貴賓室で大騒ぎする構想もあったのである。ただ、よくよく考えたら高知でオフ会やって何人集まるんだ? …という素朴かつ重大な疑問にブチ当たり、敢え無く頓挫となった次第。単独旅行が好きな駒木でも、1人で貴賓室&プレゼンテーターというのは余りにも寒い。寒さ加減では、鈴木みそのマンガであった、「男独りで誕生日にアンナミラーズに行って、ウェイトレスさんに囲まれて歌って祝ってもらう」という罰ゲームとほぼ互角だろう。

 それにしても高知競馬場は不思議と居心地が良い。何故かと思ったら、駒木のホームグラウンド・園田競馬場、しかも10年前の今よりローカル色の強かった頃の雰囲気と似ているのだ。スタンドや場内の構造に類似点が多いのも理由だろうか。
 旅行先で居心地の良い場所に巡り合うたびに、「ここだけ神戸に移転しないかな」…などと都合の良い事を考えてしまう。ただ、移転して来たら来たで案外行かないんだろうな(笑)。「いつでも観れるから」と保存しておいたビデオをほとんど観ないようなもので。
 ともあれ、高知競馬場は昼下がり。レースもいつの間にか後半戦へと突入していた。


 ……以上、再開1回目でした。結構苦しみながら原稿を準備したのですが、こうしてみると文量も中身も全然ですね(^^;;)。まぁ、今回はリハビリだとご容赦頂いて、週末から集中実施予定の続きにささやかなご期待をば。(次回へ続く


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