「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

12/27(第100回) 競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・最終戦・有馬記念」
12/26(第99回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)
12/19(第98回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第3週分・合同)
12/13(第97回) 
競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第9戦・朝日杯フューチュリティS」
12/12(第96回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第2週分・合同)
12/11(第95回) 
教科教育法(高校地歴)「某私立学校・教員採用試験自戦記(3・最終回)」
12/6(第94回) 
競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第8戦・阪神ジュべナイルフィリーズ」
12/5(第93回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・後半)

12/3(第92回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・前半)

 

2003年第100回講義
12月27日(土) 
競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・最終戦・有馬記念」

 ※いきなりですが、開講2周年記念式典の打ち上げでのスタッフによる会話の模様をご覧下さい。

駒木:「あー、そうそう、今度の馬券ラリーの最終戦だけどさ、こういう物事の定番として最終戦は得点2倍ってことにしない?」
珠美順子「(不満そうに)え〜〜〜〜〜」
リサ:「(笑)」
駒木:「いやほら、ここしばらく皆、的中が少なくて盛り下がり気味だし。最後くらいは緊張感のある勝負にした方が良いと思うんだよ。そもそも有馬記念って、そういうレースだし」
順子:「それはそうですけど、そういう提案は大差でボロ負け3位・罰ゲーム候補の人がするもんじゃないでしょう!」
珠美:「私も、それなら最初の時点で決めておくべきだったと思いますけれども?(冷たい目)」
リサ:「……あ、でもワタシは博士に賛成しますけど〜(笑)」
駒木:「お、リサちゃんは賛成か。これで賛成2で反対2.賛否同数だね(笑)。さあ、どうする?」
珠美:「賛否同数って、それは……(苦笑)」
順子:「そりゃまー、成り行き上、そういう展開になりますよねー(なげやりに)」
リサ:「ゴメンナサイ(苦笑)。でもワタシだって、参加したい以上は勝ちたいですし、ペナルティだって嫌ですしー」
珠美:「…じゃあ、こうしません? 最終戦、ポイント2倍にするのと引き換えに、駒木博士はリサちゃんより上位に来ても、私と順子ちゃんに負けて3位のままならリサちゃんの代わりに博士が罰ゲームということで……」
駒木:「え?」
珠美:「だって、競馬歴10年以上で競馬学の講義まで持ってらっしゃる駒木博士が初心者のリサちゃんに勝っても、それで『勝ったから罰ゲーム回避だ』というのは、そもそもおかしいんじゃありませんか?」
順子:「あ、珠美先輩が良いこと言った!(爆笑)」
リサ:「イイコト言った!(笑)」
駒木:「…………(汗)」
珠美:「最初に決めたルールを曲げて最終戦のポイントを2倍にすることが出来るなら、罰ゲームのルールだって最初に決めたものから変更したって構いませんよね?」
駒木:「うーむ、それは……」
珠美:「それじゃ、採決取りますね。最終戦はポイント2倍、罰ゲームはリサちゃんを抜いた3人の順位で決定。これに賛成の人は?」
リサ:「ハイ、ハ〜イ!」
順子:「賛成!」
珠美:「じゃ、過半数を超えましたので、この案は可決されました。そういうことで行きましょう、博士♪」
駒木:「うぅぅ、最悪のヤブヘビだ……。やるんじゃなかった、こんな提案……」


 遅ればせながら登場の駒木ハヤトです。
 ……ということで、最終戦は獲得ポイントが2倍されることになりました。1点あたりの馬券購入金額を倍にする事で対応させます。
 あと、この企画で最下位を喰った者に課される罰ゲーム(内容未定)に関しては、リサ=バンベリーは“初心者猶予”という事で順位に関わらず対象外とします。これにより、駒木は事実上の最下位に転落し、約3600ポイント先行している珠美ちゃんを追いかける羽目になりました(苦笑)。
 まぁ、ホスト役の駒木が僅差3位で罰ゲーム回避しても寝覚めが悪いので、これはこれで仕方ないかな、とも今更になって思っておりますが(笑)。

 ──それでは、最終戦の予想をお送りします。

最終戦・有馬記念(中山2500芝内)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

    ツルマルボーイ 横山典
ジャパンCの15着大敗は道悪が原因で度外視可。追込不利の中山芝2500も、頭数減で幾分救われた格好。あとは展開と相手関係の不利をどう乗り越えるか。一発があるとすれば内ラチ沿いからのブチ抜き。
×   ゼンノロブロイ 柴田善

ダービー2着馬が万全期して綿密な調整の末にカムバック。菊花賞の敗戦は致命的な不利によるもので力負けではない。この大舞台が古馬との初顔合わせとは有利ではないが、決して格負けはしないはず。

    リンカーン 武豊

ジャパンCをスルーしてここ1本。菊花賞の2着は諸々の恵まれがあった感は否めぬが、決して単なるフロックではなかった。自在性のある脚質活かして、今日も有力馬の隙を突く。

      × ダービーレグノ 蛯名

3頭しかいない秋天→JC→有馬の完走馬の一角。その熱意と頑健さには舌を巻くが、地力不足だけは如何ともし難く。

        ウインブレイズ 木幡

鳴尾記念勝ちで滑り込み出走を果たした遅咲きの華。だがG1初挑戦、500mの距離延長と条件は厳しく、あくまで入着まで。

  タップダンスシチー 佐藤哲

競馬史に残る9馬身差の大逃亡劇から1ヶ月。立場を挑戦者から王者に変えて、昨年取り損ねたグランプリ制覇を目指す。徹底マークの中でどれだけ自分のレースが出来るかがカギ。

        チャクラ 後藤

クラシック戦線の地味な脇役が裏街道経由でグランプリの舞台に登場。一気の相手強化で過酷な条件だが、一瞬の決め手に賭けて父子グランプリ制覇を目指す。

× ザッツザプレンティ 安藤勝

まさに充実の秋シーズン。ハードなローテーションだが調整過程を見る限り、勢いに翳りは一切認められない。“稀代の道悪巧者”から正真正銘のスターホースへ脱皮を図る試金石。

× ×     ファストタテヤマ 安田

地力不足は明らかも、問答無用の直線一気が炸裂すれば場の状況は一変しよう。デビュー以来手綱を取るのは稀代の穴ジョッキー・安田康彦。

        10 アクティブバイオ 武幸

ジャパンC5着は大健闘も、道悪馬場の助けが多大。重賞勝ちを果たしたベスト距離でどこまで強豪に迫れるか。

    ×   11 アグネスデジタル 四位
芝、ダート、国内、海外と縦横無尽に活躍し続けた競馬界の至宝も遂に引退レース。諸条件はことごとく敵に回ったが、ここで激走されても納得してしまう風格だけは未だに健在だ。

12 シンボリクリスエス ペリエ

昨年度優勝馬の防衛戦は同日引退式を控えたラストラン。異例のハードな調教でギリギリまで仕上げきった陣営の調整過程は「さすが」の一言。卓抜した地力で有終の美を飾るか。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 逃げ馬はタップダンスシチー1頭、あとは好位に控える形の馬ばかりとなれば、やはり今回も平均ペースでの離し逃げになるだろう。しかし、今回はこれまでと違い、後続が結託して徹底マークをして来るはず。同じように大逃げを打っているように見えても、決して楽な逃げにはならないと思われる。
 先行・好位馬はタップダンスシチーをマークして早め早めのタフなレース。そうなると後から脚を溜める差し・追込み馬が有利になるが、コーナーが多くて逃げ・先行有利の中山芝2500mコースでは、それでも実利は多く望めなさそう。結局のところ、直線に向いた時点で余力の残っている馬が勝つという、正真正銘の力比べになりそうだ。このレースだけでなく、このレースに至るまでの過程も大きく勝敗を左右するはず。まさに1年間の集大成である。
 ちなみに、今回何故かとやかく言われている枠順のジンクスだが、距離も長い上に12頭立てではほとんど関係ない。むしろ、先に述べたように逃げ・先行有利のコース形態に気を配るべきだ。差し馬は直線入口で9番手以内が必須条件。3〜4コーナーから捲って行ける息の長い末脚が無いと辛い。 

●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:シンボリクリスエス》
 

 公営競馬の東京大賞典は残っているが、事実上のこの1年最後の大一番。出て来たどの馬もバリバリの勝負気配という、ある意味で特殊な位置付けのレースでもある。どの馬も出来得る限り目一杯の仕上げで、これが終わったらいつオーバーホールに出しても良いという覚悟で臨む凄いレースだ。まさにグランプリの名に相応しい。
 そんな中、本当の本当に目一杯の仕上げが出来るのが、このレースを限りに引退するシンボリクリスエス。前走のショッキングな敗戦があるだけに、陣営も「今回ばかりは」の思いだろう。外枠を利したスムーズな展開に乗って、最後の直線で一気の抜け出しを狙う。
 2番手候補には、徹底マークされるタップダンスシチーよりも、むしろザッツザプレンティの方に妙味が。ゼンノロブロイとの力関係が微妙だが、秋に入ってからの成長で互角以上になっていると見ている。勿論、フレッシュな状態で臨んでいるゼンノロブロイも、ジャパンカップ組が“見えない疲れ”で沈没した際には台頭する。
 今回は△印までの4頭で……と言いたいところだったが、これだけでは逆転優勝が不可能なので、不本意ながら“役満狙い”でファストタテヤマに×を打つ。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 12 200円 2.9
馬連 8-12 400円 11.2
  6-12 200円 5.7
  6-8 200円 13.2
  2-12 200円 7.4
  9-12 200円 134
  ── ── ──
馬単 12→8 200円 17.4
  12→6 200円 9.2
三連複 6-8-12 200円 10.2


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:タップダンスシチー》

 今週はわざとじゃなくて、博士と本命が違ったので内心ホッとしています(笑)。
 私の本命馬はタップダンスシチー。逃げ馬有利の中山2500mで、この馬の能力がジャパンカップの時よりも発揮出来ると見ています。去年この馬を無印にして失敗した分、今年は思いっきり応援してみようと思います。
 相手はやはり実績重視で選んでみました。ゼンノロブロイは、不利が無ければザッツザプレンティよりも前にいた可能性が高いと思ってますので、こちらを上位にしています。そして、私も優勝にかすかな望みをかけて、ファストタテヤマに×印を打ちました。大逃げ馬の独走になった時、2着には追込馬が来る事が多いと、以前博士に教わったことがありますので……。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 200円 3.9
馬連 6-12 200円 5.7
  2-6 200円 11.2
  2-12 200円 7.4
  3-6 200円 18.1
  6-8 200円 13.2
  6-9 200円 155
馬単 6→12 200円 11.3
  6→2 200円 19.1
三連複 2-6-12 200円 7.7


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:リンカーン》

 博士の罰ゲームが見たくてついついO.K.出しちゃったんですけど、よくよく考えたら、今回のルール変更ってわたしに一番不利なんですよね(苦笑)。
 こうなったら油断も何もしてられませんので、本腰入れて穴馬券を当てに行きます!
 わたしの狙いは、タップダンスシチーを先行馬が早めに追いかけていって共倒れになって、差し馬がやって来るってパターンです。5年前のグラスワンダーとメジロブライトみたいなレースになったらビンゴです!
 本当は単勝オッズが高くて力もありそうなツルマルボーイを本命にしたかったんですけど、騎手が……ねぇ(笑)。なんかいかにも2着になりそうじゃないですか。
 まあ、普通に本命で決着して外れてもわたしの優勝は堅いんで、気楽にレースを眺めることにします♪

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 200円 7.6
馬連 1-3 200円 32.5
  3-12 200円 13.8
  1-12 200円 16.7
  3-8 200円 21.1
  2-3 200円 16.8
  3-11 200円 101
馬単 3→1 200円 72.8
  3→12 200円 37.3
三連複 1-3-12 200円 39.8

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:タップダンスシチー》

 ペナルティが無くなって、ちょっとホッとしてます(笑)。でも、せめて最後くらいはビシっと当てて、「有終の美を飾る」っていうのをキメてみたいと思います!
 本命はタップダンスシチー。だってジャパンカップのこの馬強すぎです(笑)。今度もすごい逃げが見られるっていうので、今からちょっとワクワクしてるんですよ。
 その他はジャパンカップとか天皇賞でガンバったお馬さんたちにもう1度ガンバってもらおうと思ってます。あとは優勝狙いでダービーレグノ。でもダメでしょうねー(苦笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 200円 3.9
馬連 6-8 400円 13.2
  6-12 200円 5.7
  8-12 200円 11.2
  1-6 200円 27.6
  4-6 200円 301
  ── ── ──
馬単 6→8 200円 19.7
  6→12 200円 11.3
三連複 6-8-12 200円 10.2

 優勝を賭けた最終戦という事で、各自的中を目指しながら、逆転優勝も狙う…という予想になりました。皆さんも良い年を迎えるためにも頑張りましょう。
 それでは、レース後にまたお会いしましょう。


有馬記念 成績

1着 12 シンボリクリスエス
    2着 リンカーン
×   3着 ゼンノロブロイ
    4着 ツルマルボーイ
        5着 ウインブレイズ

単勝12 260円/馬連3-12 1290円/馬単12-3 1980円/三連複2-3-12 1720円

 ※駒木ハヤトの“戦い済んで……”(単勝のみ的中)
 結果的に○印をつけたザッツザプレンティが捨て身でシンボリのアシストをしちゃった形になったか……。結構意外な馬が逃げるレースだから、こういう展開も全く想定してなかったわけじゃないけれども、「天は我を見放した」って感じだね。まぁ、生まれてこの方、見放されっ放しみたいな気がしないでもないけどね(苦笑)。
 罰ゲーム? まぁ自分の不徳の致すところだから甘んじて受けよう。でも何か、あの3人がニヤニヤ笑いながら罰ゲームの内容について相談しているところを見ると、ちょっと背筋に寒い物が走るなぁ……。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 この最後の最後で▲と△を打ち間違えるなんて、本当にどこまでも未熟な私をさらけだした秋シーズンでしたね(苦笑)。またこういう企画があるかどうかは分からないんですけれども、次の機会には成長した姿をお見せ出来ればと思います。

 ※一色順子の“的中、失礼しましたー!”(馬連のみ的中)
 払い戻しが全然穴党のそれじゃないんですけど、最後にまたやりました! これで「マグレで優勝した」とか言われないで済みそうです。
 でも、最後のツルマルボーイは惜しかったですよね〜。9馬身千切られたら馬単は仕方ないにしても、ここまで来たら三連複は何とかなって欲しかったです。
 ……さて、優勝の特典は何にしてもらおうかなー。やっぱりここは、わたしが主役の講義シリーズをまた組んでもらうっていうのがベストですよね。また年明けに期待してて下さいね〜♪
 

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 この3ヶ月、ビギナーの立場で参加させてもらったんですけど、やっぱり競馬の予想って難しかったです。一生懸命考えてもなかなか当たらないし、インスピレーションで狙っても当たらないしで……。
 でもホント、楽しかったです。また来年も同じようなコトがあったら嬉しいですね。出来れば次もワタシだけペナルティは免除ってことで……(笑)。
 

全10戦終了後の最終成績

  第9戦までの獲得ポイント
(暫定順位)
今回獲得したポイント 最終獲得ポイント
(確定順位)
駒木ハヤト 3630
(3位)
520 4150
(3位)
栗藤珠美 7040
(2位)
0 7040
(2位)
一色順子 29540
(1位)
2580 32120
(1位)
リサ=バンベリー 3180
(4位)
0 3180
(4位)

 (ポイント・順位の変動について)
 トップを独走していた一色順子が菊花賞以来2度目の的中、そしてメンバー中唯一の馬連的中で堂々の優勝を確定させた。やはり菊花賞の完全的中が全てだったという事か。
 注目の罰ゲーム争いの方は、駒木が本命馬の1着を的中させるも、痛恨のヒモ抜けで届かず。総合3位ながら、変更されたルールに従って、翌年早々に何らかの形でペナルティが執行される。

 


 

2003年第99回講義
12月26日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)

 03年最後のゼミをお送りします……が、コミックアワードが終わった後の脱力感が未だ抜けておりません(笑)。自分の頭の中ではもっと大掛かりなイベントにしたいという思いもあるのですが、現状ではあれが精一杯です。というか、精一杯以上かも知れません。

 で、ここで主催者側から見た「コミックアワード」の感想等を少々。

 まず、一息ついた後に受賞作一覧を眺めてみると、やっぱり今年は不作だったんだな…と改めて実感してしまいました。審査中は候補作を絞り込む事に追われて気付きませんでしたが、いざ冷静さを取り戻してみると「う〜ん、これは……」と唸らざるを得ませんね。

 で、そんな中選んだグランプリは『美食王の到着』でした。いくら全体のレヴェルがどうあれ、この作品が本当に素晴らしい作品である事は間違いないと確信持って言えます。
 ただ、駒木がこれまで最初の増刊掲載時のレビューや講評で述べて来た事の中に、大きな誤りが一点ありました「叙述トリックをマンガの世界に持ち込んだ」…という部分です。
 恥ずかしながら、式典終了後にもう1度読み返してみて気付いたんですが、この作品で使われているトリックは、実は叙述トリックとは言えないものでした。文章と絵を巧みに組み合わせて読者にわざと誤った先入観を持たせるという、また別の種類のトリックだったのです。いやはや、とんでもないミスを犯したものです。本当に駒木ってアホですね。
 ……とはいえ、そのトリックが叙述トリックじゃなかったからと言って、『美食王の到着』が良く出来た作品である事実には何の揺らぎも無く、作品の価値が下がるわけでは有りません。なので、レビューでの評価(A+寄りA)も変更しませんし、「コミックアワード」で差し上げた賞ももそのままとします。
 藤田和日郎さん、そして受講生の皆さんにお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。

 ……あと、ラズベリーコミック賞は、去年と違って受賞作や有力候補作がファンの多い作品だったので、正直言って心苦しかったですね。ただ、やる以上は開き直るしかありませんので、思い切りやらせてもらいました。こういう賞って、大物相手に対する風刺の意味合いもありますので、『テニスの王子様』ファンの方は「我らが許斐センセイは大物だ!」と、むしろ誇りに思ってもらっても良いくらいです。(まぁ絶対に思わんでしょうけど^^;;)
 とりあえず、この手の賞というのは回数を重ねてこそですので、やれる限り毎年やりたいと思ってます。出来ればもう2〜3ほど部門賞を増やしてみたいのですが、先程述べたように物理的な限界もあり、難しいところではありますね。
 まぁとにかく今は毎週コツコツとレビューを続けるしかないですね。これを怠っていては「コミックアワード」そのものが成立しないわけですし……。

 ──さて、それでは気持ちも新たに、今週のゼミを始めたいと思います。まずは情報系の話題から。最初に、先週時間が無くて翌週回しになっていた「サンデー」系月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」9・10月期分の審査結果を紹介しておきます。

少年サンデーまんがカレッジ
(03年9・10月期)

 入選=該当作なし  
 佳作=該当作なし
 努力賞=2編
  ・『落ちこぼれの白虎』
   ハタアサ子(18歳・茨城)
  ・『四苦八苦』
   奥長浩子(25歳・千葉)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『ある夜のヒーロー』
   あづち涼(25歳・北海道)
  ・『BIRTH DAY』
   中谷祐太(14歳・兵庫)
  ・『妖草紙』
   赤池真美(26歳・山梨)
 最終候補=1編
  
・『ウィンブルドンヒーロー』
   岩田有正(23歳・愛知)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ◎あと一歩で賞のあづち涼さん…01年11月期「まんがカレッジ」でも“あと一歩で賞”。また、18禁ゲームの原画家として活動した経験あり。

 この他、Google検索で判明した事は、努力賞のハタアサ子さんウェブ上での創作活動経験者だったり、選外の赤池真美さん講談社のコミック通信講座出身だったり…といったところ。
 ちなみにあづち涼さんのウェブサイト(直リンク張りませんが、名前で検索すれば一発で出ます)の日記によると、あづちさんは遂にまんが家目指して上京するとの事。画力は十分水準に達しているわけですから、それを武器にガンガン攻めて行ってもらいたいものです。

 情報2つ目「ジャンプ」から読み切りに関するニュースをご紹介します。
 年明け・1月5日発売の6・7合併号にて、『World 4u_』作画:江尻立真)が掲載されます。これは今年の25号に掲載された同名・同作者による読み切りの第2弾。今回も『世にも奇妙な物語』形式のホラー連作短編だと思われます。
 前作の当ゼミでのレビューでは、「作・画ともに地力は感じられるが、シナリオを凝り過ぎたためにかえってホラーの醍醐味が薄れてしまった」…という事でA−寄りB+の際どい評価でした。果たして今回はどうなるでしょうか? 注目したいところですね。

 ……それではレビューへ。今週は「ジャンプ」にしろ「サンデー」にしろ、見所が多かったように感じたんですが、実はレビュー対象作は1本のみ。「ジャンプ」年末新連載シリーズの第3回後追いレビューです。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年4・5合併号☆

 ◎新連載第3回『銀魂』作画:空知英秋【現時点での評価:B

 前期新連載が全滅のため、打ち切りサバイバルレースを争う相手全てが長期連載作品という過酷な状況に置かれている今期の新連載作品ですが、その中でも一番厳しい立場にいるのが、恐らくこの『銀魂』と空知英秋さんでしょう。以前にも似たような事を言った覚えがありますが、これって「有望新人プロボクサーのデビュー戦の相手がいきなり日本ランカー」みたいな話ですからねぇ……。
 もしこれが本当にボクシングの話なら、そんなマッチメイクをしたジムの会長に、「そんな、会長! いきなりコイツを潰す気ですか?」と、マネージャーが止めに入りそうなシチュエーションなんですが、今の「ジャンプ」はどうやら、マッチメイク担当が『あしたのジョー』の白木葉子お嬢様みたいな人のようで……。

 とはいえ、もうゴングが鳴ってしまった以上、後には引けません。というわけで、連載の今後を占う第3回の後追いレビューです。

 まずなんですが、相変わらず線が不安定なのが惜しいですね。初回に比べると、全般的に幾分進歩の跡が窺えるんですが、今度は線の不安定さで実際の画力よりも下手なように見えてしまっています。
 しかし、女の子描かせたら案外達者ですね、空知さんは。男キャラが大概むさ苦しいだけに、一際良い意味で目立ってます。この辺を上手くアピール出来れば、読み手の反応も良くなると思うんですが。

 ただストーリー・設定については、相変わらず世界観やキャラクターの個性付けが曖昧で迷走気味です。しかも、どうやらその問題の根源はかなり深い所にあるんじゃないかと思えて来ました。
 というのも、空知さんの描くマンガの最大の魅力「話の本筋を脱線して繰り広げられるドタバタ劇」なんですが、この魅力を活かそうとすればするほど、当然の事ながら作品そのものはドンドン迷走して行っちゃうんですよね。かと言って、キッチリとしたストーリーを追いかけて行けば、空知さんの“味”が出なくて間延びしてしまいますし、まさに「あちらを立てればこちらが立たず」な状態というわけです。言い換えると、「無理をすれば道理が引っ込むが、無理をしないと道理もクソも無い」といったところでしょうか。
 しかも非常に厄介な事には、その事を空知さんご本人も気付いてそうなんですよね。で、「どうすりゃ良いんだろう?」と迷いながらも、抜本的な対策が見出せないまま、流されるがままに話を迷走させているような気がするんですよ。ハッキリ言って重症です。やっぱり時期尚早でしたね、この連載は。

 ここから活路を見出すとなると、もう完全に開き直るしかないでしょうね。それこそ以前の『幕張』みたく、確信犯的に刹那的なウケ狙いをハイスパートで繰り出して、「中身は無いけど、何だか面白い」と読み手に思わせるような作品にしてゆくしかないでしょう。(もっとも、第3回時点でそんな事を言ってる時点で、「ジャンプ」では致命的な出遅れなんですが……)
 ただ、そういう作品は、いくら刹那的な「面白い、面白くない」の次元では高評価を得られても、当ゼミが掲げる「よく構成が出来ている作品かどうか」という判断基準で評価をした場合は点数を厳しくせざるを得ません
 そういうわけで、今回も評価はB+寄りBに止める事にします。前回レビューに比べると、絵などの面で若干改善したように思えるので、0.5ランク評価を上げておきました。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 久々に巻末コメントへのコメントを少しだけ箇条書きで。

 ・岸本斉史さん…うん、フグは良いですよね。というか、フグそのものよりも、鍋の最後に食う雑炊が一番好きなんですが、駒木は。あの雑炊の味がインスタントで出せたら、毎日買って食いたいくらいです。
 ・つの丸さん……いや、そんな巻末コメント読んで応募してくるような人はカリスマになれんでしょう(笑)。

 あと今週号では、毎度恒例・年末進行の合間に絶対落とせない仕事を増やして、日頃泣かされている作家にリベンジするぞ企画・現役連載作家4コマ競作スペシャルがありました。
 しかし今回は輪にかけて出来が酷いですねぇ……。さすがにギャグ系作家さんは水準のモノを出して来ましたけれど、ストーリー系作家さんのは半分以上が4コママンガにすらなってないというか。特に今年度ラズベリーコミック賞作家さんのは何ですかアレ(´Д`;)。この場であんまり悪口は言いたくないですけど、余りにも余りにもですよ。

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】

 いやー凄いわ、今回。もう凄いとしか言いようが無いです。何だか詳しく検証したらアラが見つかりそうなプレーだけれども、「そんな細かい事考えずに読め!」と言われたらそうせざるを得ないような凄味がありました。
 しかし、今回の内容を見てると思うんですが、やっぱりこの作品って、単行本で読むより雑誌サイズで読んだ方が良いんですよね。週刊マンガ誌特有の悪い紙質も、この作品に限っては何故か合うんですよ。ただ、それだと商業的な実績には繋がらないんですよね……。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希【現時点での評価:B/雑感】

 いやー凄いわ、今回。もう凄いとしか言いようが(以下略・笑)。
 各女子キャラの萌え要素が完全に仕上がり切ってるので、今回みたいな余興のような話でも十分に作品として成立しちゃうんですよねぇ。
 しかし、いくら何でも「いかん!! パンツのせいで客が暴徒と化した!!」ってのは色々な意味でダメ過ぎるでしょう(笑)。

 
 

☆「週刊少年サンデー」2004年新年4・5合併号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「このお正月にやろうと思ってること」。
 んー、ボケられそうにない質問だけに、回答も皆さん普通になさってますねー。そんな中でウケ狙いに走ったと思われる川久保栄二さんの回答が全然ギャグになっていないあたり、さすがは『十五郎』の作者といったところですか。
 駒木は正月くらい箱根駅伝見てノンビリ過ごしたかったんですが、どうやら2日から連発でモデム配りに狩り出されそうです(涙)。

 
 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 密度の濃いハイスパートなギャグ連発で、非常に良かったんじゃないでしょうか。絵が荒れてたのは相当ネームに苦しんで時間ギリギリになっちゃったんですかね?
 しかし、色々やった割には肝心の(?)おみくじ引くのを忘れているのは勿体無かったですね。ベタながら結構面白いネタが作れそうではあるんですけど……。

 ◎『きみのカケラ』作画:高橋しん)【現時点での評価:B−/雑感】

 10回限定の“最終章”という事で、今回から連載再開。まぁいわゆる一つの敗戦処理というヤツですね。
 しかし、そんな状況でありながら更に風呂敷広げようとするってのはどういう……(汗)。そりゃ、これだけ空白期間が開いたら普通に話を繋げても判り辛いのには違いないんですが、でもねぇ……。どうしてこの作品がこんな事になったのか、分かってらっしゃるんでしょうかと、ちょっと問い掛けてみたいですね。
 あと、エロと暴力描写には耐性の強過ぎる駒木でも、今回の“児童ポルノ&それを素で覗いてる親父”ってのは、「うわー、大丈夫かコレ」と思いました(笑)。ああいうシーンってのは、覗いてる方(♂)が覗かれている方(♀)と同年代かそれ以下じゃないと、相当インモラルになっちゃいますよね。

 ◎『からくりサーカス』作画:藤田和日郎【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 あんなエグいシーン(自動人形の血まみれ分解)でも、人間じゃなかったらモザイクもかからんのですかねー
 今週は「ジャンプ」の『武装錬金』とかでもグロ規制のモザイクがあったんですが、出来ればああいう類のモザイクって止めて欲しいんですけどね。理由はどうあれ、作者の意図を歪めるような規制はかけて欲しくないです。特に駒木も小説家を志しているだけに余計感じます。
 ただ、そういうショッキングなシーンが小さい子供にトラウマを植え付けちゃうのも事実ではあるんですよねー。駒木も幼少の頃、『ダッシュ勝平』で、主人公の仲間たちがヤクザに真剣でバッサバッサ斬られるのを見て、かなりショックを覚えた記憶がありますし。7〜8歳まで高校で「バスケやってたらヤクザに斬られなくちゃならんのか」と本気で心配してましたからね(笑)。う〜ん、やっぱり難しい問題ですよねぇ。

 ◎『ファンタジスタ』作画:草葉道輝【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 スポーツでは、有力選手を試合に投入する事を“カードを切る”なんて言いますが、スポーツ物のマンガでは逆なんですよね。有力選手を完全燃焼させて退場させる事が“カードを切る”ことになるんですよ。
 そういう意味で、今回の展開は素晴らしいです。このタイミングでグロッソという“カード”を切った草場さんの決断力に拍手を贈りたいですね。


 ……というわけで、今年最後のゼミをお送りしました。来年のゼミは、「赤マルジャンプ」冬号の完全レビューから始動することになると思います。ではでは。

 


 

2003年第98回講義
12月19日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第3週分・合同)

 「コミックアワード」の準備の合間を縫って、今週のゼミをやっておきます。本当なら前・後半に分けなければならないくらいのボリュームがあった週なんですが、とりあえずこんな状態なので、レビュー中心で簡単に実施しておきます。情報系の話題は次週回し、チェックポイントについても連載終了になった『神撫手』の総括だけとさせてもらいます。
 たくさんお話したい事もあるんですけどね……。何とか時間の都合をつけたかったのですが、無念です。

 では、もう早速レビューへ行っちゃいましょう。今週のレビュー対象作は、「ジャンプ」からは新連載1本と新連載第3回の後追いレビューが1本、更には代原ギャグ読み切りが1本。そして「サンデー」からも新連載1本計4本となります。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年3号☆

 ◎新連載『LIVE』作画:梅澤春人

 「ジャンプ」の年末新連載シリーズ最終・第3弾は、『SWORD BREAKER』の連載終了以来、約1年ぶりの復帰となる梅澤春人さんの新作が登場です。

 梅澤さんの「ジャンプ」デビューは89年ですから、キャリアは14年余りという事になりますね。いつの間にか、現在の「ジャンプ」連載陣では重鎮クラスのベテランになっているんですね。
 梅澤さんと言えば、真っ先に不良・暴力モノが連想されますが、デビュー作は意外にもSFモノの『酒呑☆ドージ』。これは翌年に連載化されますが、残念ながら15話・1クールで打ち切りに終わります。
 そして翌年、現在の作風の原点とも言える作品・『HARELUYA』の連載をスタートさせますが、これも10回・1クールで打ち切り。本来ならこれで“デビュー以来2連続短期打ち切りは「ジャンプ」追放”というルールが適用になるところでしたが、打ち切りが決まった後の連載終盤で人気が急上昇。急転直下、短いインターバルを置いて続編を連載する事が決定します。この時に仕切り直しで連載されたのが、梅沢さんの代表作となる『BφY−HARELUYA II−』で、これは92年末から約6年にも及ぶ長期連載になりました。
 『BφY』の連載終了後も意欲十分の梅澤さんは、1度の読み切り発表を挟んで、99年末からは『無頼男─ブレーメン─』の連載を開始します。ここでも連載当初は『BφY』で培った梅澤さん独特の世界観が支持を受けましたが、徐々に尻すぼみの状態となり、約1年半後に打ち切り終了となりました。
 その後、一時期は「コミックバンチ」との繋がりをアピールするなど、自信の立場も含めて流動的な時期もありましたが、結局は02年から「ジャンプ」で活動再開。今度はファンタジーという未知の分野に挑戦し、『SWORD BREAKER』の読み切り発表、そして連載開始となりますが、こちらは敢え無く16回の短期打ち切りに。そしてそれから1年、今回の新連載となるわけです。

 さて、作者のプロフィール紹介はこれくらいにしまして(クソ忙しい時に限って、ベテラン作家のプロフィールを作らなくてはいけない悲劇^^;;)、作品の内容についてお話してゆきましょう。
 まずはなんですが、さすがにキャリアをここまで重ねた作家さんが、そうそう絵柄を変える事が出来るはずもなく、この作品でも“いつも通りの梅澤春人”といった感じになっています。いや、むしろ以前よりも手抜き(無意味な顔アップやバストアップ)が減って、読み易くなっている…と言えるかも知れません
 梅澤さんは元々、それほど絵の達者なタイプの作家さんではないのですが、第1回の絵柄を見る限りでは、“連載作家として標準レヴェル”くらいの評価は出せそうです。

 次にストーリーと設定なんですが、こちらは「随分とまた開き直ったもんだなぁ……」というのが第一印象でした。
 というのも、主役格のキャラクター2人は、設定こそ新しくしたものの、これまでの梅澤作品のパターン──トンガリヘアーの乱暴者と、無造作ヘアーの正義感だけ強い大人しい少年──を綺麗にトレースしています。しかも“乱暴なのは悪魔だから”という理由付けまで物凄い開き直り振り。徹底した自己分析と、デジタル的に“ウケる要素”を追求しようという姿勢がヒシヒシと窺えます。
 それでいて、作品全体のスケールはグッと押さえられ、お話そのものとしては不良モノにドタバタコメディの要素を交えた日常劇です。こちらも「大きなスケールのストーリーならではの醍醐味を犠牲にしても、ここは手堅く読者の支持を固めてゆこう」…という意図が見え隠れしています。

 つまりこの作品は、過去の梅澤作品の縮小再生産で生まれたモノなんですね。野球で言えば、ノーアウトからフォアボールで出たランナーを、2回の送りバントで3塁まで送るような、そんな手堅い作品です。
 勿論、これは技術が熟練したベテランでなくては出来ませんし、ベテラン作家なら全員が出来るというものでもありません。1回目の送りバントでダブルプレーを献上してしまう作家さんも結構多いのです。そういう意味においては、梅澤さんはまだ、往時の実力を維持したまま頑張っている……と言えるでしょう。
 ただし、こういう手法で生み出された作品は、人気作足りえても、なかなか名作には及びません。作品のスケールを犠牲にしている以上、シナリオのクオリティにも限界が出て来るからです。作風こそ全く違いますが、この作品は『魔法先生ネギま!』と同系統の“名作崩れの人気作”になるタイプの作品なんですね。

 …そういうわけで、暫定評価はB+。この作品がソコソコの人気を獲得できれば幸いですが、そうでなかった場合、それは「ジャンプ」作家・梅澤春人の能力的限界を意味する事になるでしょう。ナニゲに大変シビアな連載となりそうですね。


 ◎新連載第3回『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健【現時点での評価:保留

 さて、今週からは後追いレビューも開始。というわけで今回は、未だに「大場つぐみって誰よ?」という声が止まない『DEATH NOTE』のレビューをお届けします。
 しかし、本当に情報が漏れて来ない所を見ると、これは「ジャンプ」内部でも緘口令が敷かれているんでしょうね。次期連載改変対象のタイトル並に厳重なシークレットって、そこまで隠さなくちゃいけない人が正体なんでしょうか? これで「マガジン」みたいに編集者がペンネーム使って原作やってたら白ける事この上無いんですが、まさかねぇ(苦笑)。

 と、無駄口はコレくらいにしておきまして、内容について。絵の流麗さは相変わらず文句の付けようが無いので、ストーリーについてだけ述べたいと思います。
 単刀直入に言って、心理描写の巧みさで度肝を抜かれた第1回に比べると、その後の2回では、ややスケールダウンした感が否めません。第1回のレビューでも言及しました、主人公敵役・Lとその周辺の描写に現実感が無さ過ぎるのもありますが、どうもシナリオ展開が淡白な気がするのです。
 この手のお話で、何が読み手を作品世界に引き込むかというと、実は巧みな駆け引きよりもアクシデントなんですよね。予測不可能だった出来事が突然発生し、登場人物が読み手と一緒に悩み、苦しみ、そして最後は読み手より一歩先を行って問題を解決する。この過程を経る事によって、読み手は作品世界とキャラクターに感情移入が出来るものなのです。
 ところがこの作品は、主人公も敵役も利口過ぎて、どんな出来事が起こってもお互いに「それは想定内の出来事だ」ってやっちゃうんですよね。すると読み手としても、「はぁ、そうなんですか」となってしまい、今一つ感情移入し切れないまま、シナリオだけが淡々と進行してしまうんです。これは非常に勿体無い事です。もうちょっと主人公・ライトが激しい動揺に追い込まれるようなシナリオでも良かったと思うんですが……。

 あと、もう1つの問題点としては、作品内で人がバンバン死にまくっている割には、一度たりとも“最期の瞬間”が描かれていないため、イマイチ恐怖が伝わって来ない…という事も挙げられます。通帳の残高だけが動いているお金の遣り取りみたいなもんで、生々しさが伝わって来ないんですよね。命のペーパー商法と言いますか。
 こう言うと、必ず「少年誌だから」云々…となるんですが、だったら『HUNTER×HUNTER』はどうなるの? …という話ですからね。そこを上手くやっていくのも、一流のプロに求められる部分だと思うのです。

 こんな事言っちゃミもフタもないですが、この作品が福本伸行原作だったら、どれくらい凄い作品になったんだろう? …なんて考えてしまいます(苦笑)。それくらい、演出の仕方によっては大傑作になるような素材ではあるんですけどね。大場さんのストーリーテリングの懐が狭いのが、つくづくも残念です。
 評価はA−寄りB+ということで。当然ですが、今後の動向次第では格上げも格下げも検討します。

 ◎読み切り『夢泡釣団〜ビートルズ編〜』作画:やすべえ

 今週は『Mr.FULLSWING』が作者都合休載のため、先週に続いて代原の出番に。先日発表になった第59回(03年下期)「赤塚賞」で佳作を受賞した『夢泡釣団〜ビートルズ編』が掲載されました。
 本来なら本誌に掲載されるようなクオリティの作品ではないはずなので、こういう場で論評するのは可哀想ではあるのですが、ルールですので仕方ありませんね。

 まずですが、一言で言うと稚拙です。ヒット作を研究した跡も窺え、決して根本的に下手クソというわけではないのですが、線の頼りなさは如何ともし難いものがあります。また、全体的なメリハリが狂っていて、実情以上に下手なように見えてしまうのが惜しいですね。
 ここはひとつ、担当さんの指導の下で画材選びから勉強して、上達目指して頑張ってもらいたいと思います。

 で、ギャグについても「未だ修行前」…といった感じですね。“ボケ”の部分に関しては、僅かながらも天性のセンスを感じさせてくれるのですが、それを間の悪過ぎて単調なツッコミが全て台無しにしてしまっています
 これは、駒木の下手な論説を聞くよりも、是非とも巻末の『ピューと吹く! ジャガー』と読み比べてもらった方が、随分と話が早くなると思いますが(苦笑)、1つ1つのボケを引き立たせてこそツッコミであって、ただ単に「なんでだよ!」とか「マジかよ?」とか言ってるのは、話の腰を折っているだけなんですよね。その辺を改善する事が、とりあえずの重要課題になって来ると思います。

 評価はC寄りB−ということで。そう言えば、ネット界隈ではよく、「『赤塚賞』の佳作でこんなの?」…なんて意見を目にするんですが、まぁ「赤塚賞」の佳作なんて、大概こんなものですよ。悲しいかな、「赤塚賞」の佳作が「十二傑新人漫画賞」の最終候補と互角以下なのが現状なのです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『神撫手』作画:堀部健和【現時点での評価:B−/連載総括】

 秋シリーズの新連載は、遂に全作品枕を並べて討ち死にとなりました。“3作品3突き抜け”というのは、ここ最近でも記憶に無いですね。
 さて、この作品についてですが、まぁ連載開始前から危惧していた通りになったな…というところです。根本的なストーリーテリング力が足りない若手作家に、読み切りの時点で破綻している作品の連載化を強行したところで成功するはずが無いんです。これは作家の責任であると共に、編集サイドの責任でもあるでしょう。
 しかし、『旋風の橘』を思わせる脈絡の無い露骨なテコ入れには、野次馬的な視点では楽しませてもらいました(笑)。ただ、堀部さんには二度とこういう事にならないよう、猛省&精進をお願いしたいところです。
 最終評価はC寄りB−で据え置きとします。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年2号☆

 ◎新連載『怪奇千万! 十五郎』作画:川久保栄二

 当ゼミでは既報の通り、今週から久々に「サンデー」で大型の新連載シリーズが組まれる事になりました。
 その第1弾となる今週からの新連載は、川久保栄二さんの『怪奇千万! 十五郎』です。これは、昨年まで増刊や本誌読み切りで『医術師 十五郎』として発表していた作品を、大幅モデルチェンジして連載化したものですね。

 毎度ながら「サンデー」系のデータベースが乏しい(特に増刊の)ため、『医術師 十五郎』以前の川久保さんのキャリアはほとんど判りませんでした
 ただ、駒木がどこからともなく小耳に挟んだ未確認情報によると、川久保さんは約10年前から少年誌(この時も『サンデー』?)で活動していた…という話もあるそうです。短期連載も経験済みなんだそうですが、駒木はこの時期、余り熱心にマンガを読んでいたわけではありませんでしたので、恥ずかしながら全く記憶にありません。絵柄が絵柄だけに、読んでさえいれば別ペンネームでも覚えているはずなんですが……。
 オフィシャルの情報は、間もなく『サンデーまんが家バックステージ』で公開されるとは思いますが、この未確認情報の真相をご存知の方、もしいらっしゃいましたらどうか宜しく。

 ……では、内容についてお話してゆきましょう。

 まずなんですが、やはり(悪い意味で)独特過ぎる絵柄が気になって仕方ないところですね。特に首から上のデッサンが必要以上に崩れまくっていて、更に顔のアングルのバリエーションが乏しいので、物凄く違和感を感じてしまいます。他の部分は変じゃないので余計に目立ちますね。
 あと気になるのが、リアクション(ズッコケ、電撃浴びてガイコツ丸見えetc……)がいちいち古臭いという事でしょうかね。こういう所を見ると、やっぱりこの人、隠れバテレンならぬ隠れベテランなんじゃないかと疑ってしまうわけですが。

 しかし、そんな絵のアラなんてどうでも良くなってしまうほど酷いのがストーリーと設定です。
 もう設定やストーリー展開のツッコミ所はありとあらゆる場所に、それこそt.A.T.u東京ドームコンサートで空席を探すように簡単かつ大量に見つかるわけなんですが、それより何より、ストーリーを構成する大前提が根元から腐っているんですよ、この作品は。一言で言えば、「もう抜くしかないほど悪化した虫歯」状態です。いや、「生まれながらにして差し歯」と表現した方が妥当でしょうか。

 具体的に説明しましょう。そもそもこの作品は、駒木の敬愛する仲間由紀恵様が主演あそばされている(笑)ドラマ・『TRICK』のように、“怪奇現象”とされているモノが実はトリックである事を暴く…という部分を核にしたお話のはずです。少なくとも、第1話の途中の展開までは、そう受け取れるシナリオになっていました。が、実際の展開は終盤になって逸走を始めます。なんと、
 「怪奇現象の正体は、実はこういう怪奇現象でした! これにて一件落着!」
 ……などという、思わず「オイオイ、それは全然解決してへんがな!」…などと、素に戻ってツッコミをカマしてしまうようなエンディングを迎えてしまったのです。これは『名探偵コナン』で言うなら、密室殺人事件が「犯人は、壁を通り抜ける超能力を持つコイツでした!」というオチで終わるようなモノで、文字通り「お話になってない」状態です。

 前シリーズ『医術師 十五郎』の頃から、ミもフタもない問題解決法が目立っていましたが、今回はミステリ仕立てになっている分だけ、余計にその破綻振りが目立ってしまいました。正直なところ、「こんなマンガ、よく載せたな」というのが実感です。
 (半ば信じ難い事に)これでも前シリーズは増刊号でトップクラスの人気を誇っていたそうなんですが、それにしてもやっていい事といけない事はあるだろうと、制作サイド各方面に物申したい所存です。
 評価は当然ながらCとします。しかし、こういう作品に出会うと思いますね、「よし、来年の『コミックアワード』も『ラズベリーコミック賞』は外せんな」と(笑)。


 ……というところで、今週のゼミはここまで。いよいよ明日の深夜は2周年記念式典です。準備作業が難航しているため、開始が若干遅れるかも知れませんが、どうか年に1度のお祭りを楽しみにお待ち下さい。

 


 

2003年第97回講義
12月13日(土) 
競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第9戦・朝日杯フューチュリティS」

 いよいよ第9戦、麻雀用語で言う所のラス前となりました。
 序盤こそ景気の良かったこのラリーも、後半に入ってやや尻すぼみ気味。スタッフ全員、一生懸命やってるんですが、さすがはガチンコ勝負、なかなか上手い事いかないもんです。
 しかし今回は、各メンバーかなり気合を入れて予想に臨んだようです。どうぞ、レース後までお付き合いをば。

第9戦・朝日杯フューチュリティS(中山1600芝外)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

×   コスモサンビーム バルジュー
夏の小倉でメイショウボーラーに5馬身差完敗も、秋のレース振りに大きな進展窺える。内枠と展開を味方に出来れば逆転まで一考。
      × アポインテッドデイ 柴田善
前走(京成杯2歳S)は実に渋太かった。多少恵まれた要素もあり、評価は大きく出来ぬ嫌いはあるが、再度の健闘の可能性もある。
        メイショウムネノリ 菊沢徳

初芝、初距離、未勝利からのG1挑戦と“三重苦”。このハイレヴェルなメンバーを相手に勝負になるとは思えぬ。

 

      マイネルパナシュ 郷原

相手なりに走るタイプだが、前走(東スポ2歳S)の5着でオープン上位との力量差が見えた感も。課題の速いタイムに対応できるかがカギ。

      ダイワバンディット 蛯名

デビュー以来3連勝の新潟チャンプが満を持して復帰。底見えぬ怖さもあるが、他の新潟組の現状からして強調も出来ないのが現状で。

  × グレイトジャーニー 武豊
デイリー杯は勝ち馬に遊ばれた格好も、デビュー2戦目としては健闘の部類。道中の位置取りが懸念材料だが、その辺りは敢えてこの馬を選んだ鞍上の手綱捌きに期待。
    ×   メテオバースト 池添

超スローの賜物とは言え、上がり3ハロン33秒9の末脚は出色。ただ、同程度の能力を持つ他の有力馬に比べ、激しいレースを経験していないのが弱味。

× フォーカルポイント 横山典

デビュー以来2戦続けての豪快な追込は見事なもの。瞬発力は出走メンバー中でも上位だが、位置取りに融通利かぬ分だけマイナスか?

×   キョウワスプレンダ 佐藤哲

コスモサンビームやヤマニンシュクルを千切った夏の勢いがここに来て鈍り気味? ガレ気味の馬体がどれだけ回復したかで明暗が分かれそう。やや荒れ気味の馬場もマイナス。

        10 モエレエスポワール 藤田

札幌2歳Sの覇者だが、展開に恵まれ過ぎた感。展開にスムーズさ欠くと脆い印象もあり、多頭数のここは今後を占う試金石か。藤田JKの強引な手綱捌きに応えられれば面白いが……

    11 フサイチホクトセイ 田中勝

京王杯の3着敗退は同情できる要素もあった。折り合いや位置取りなどに注文つくが、波乱の主役になるだけの力はある。

        12 コスモステージ 小野

前走、6戦目でようやくの初勝利。“穴血統”のタマモクロス産駒とはいえ、ここで推すのは余りにも強引が過ぎる感。

    ×   13 マイネルゼスト 吉田豊

休養前から馬体を一回り成長させて圧勝の前走が好感。叩いた上積みもあるだけに、距離延長克服ならまさかの激走も?

        14 リガードシチー 後藤

連闘で挑戦の意欲は買うが、このハイレヴェルな顔触れに混じっては、絶対的なスピード差が否めず。

15 メイショウボーラー ペリエ
圧勝に次ぐ圧勝で堂々たる4連勝。負かした相手も錚々たるメンバーで、地力最右翼は動かしようの無いところ。外目の枠順と終始目標にされる展開は不利も、跳ね返せるだけの力はあると見るが……?

 

×     16 スズカマンボ 上村

瞬発力に限界あり、ハイペースの力比べで活きるヒシミラクル型。大外枠の不利は大きいが、泥仕合になれば一気に浮上の余地も。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 先行タイプが揃ったものの、積極的に行く馬はおらず、結局はテンのスピードでメイショウボーラーが押し出される格好になるか。この時期のレースには珍しく、気性の大人びた馬がほとんどなので、出入りの激しいトリッキーな展開にはならないだろう。道中のペースは、逃げ馬が先行馬に絡まれない程度、典型的な平均ペースのレースになる可能性が高い。
 展開のカギとなるのが、数多い先行タイプの馬たちによる序盤の位置取り争い。遅くとも5〜6番手までにつけたい馬が全体の半数以上を占めるので、少なくとも数頭は後手を踏まされる計算になる。どの馬が“貧乏クジ”を引かされるかがレースの紛れる要素になるが、詳細な状況を予想するのは当の騎手たちにも不可能だろう。また、差し・追込タイプは道中の追走こそスムーズだが、好位からでも猛烈な末脚を使う馬がいる以上、ペースが落ち着いてしまった時は脚を余してしまう可能性が大。差し切りがあるとすれば、内ラチ沿いからの強襲。
 また、中山の芝外1600mコースは、東京の芝2000m、阪神の芝1600mと並ぶ外枠不利な設計になっている。今秋は天皇賞・秋、阪神ジュべナイルFと不利なはずの外枠馬が活躍しているが、不利なものは不利なので一応考慮はすべきだろう。ちなみにこのレースの最近10年では、14番枠で2着したオープニングテーマ(96年)以外は全て11番枠以内の馬が連対している。 

●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:メイショウボーラー》
 

 デイリー杯、京成杯、東京スポーツ杯の“3大前哨戦”の上位馬が集結し、全体的にハイレヴェルのメンバー構成になった。上位拮抗のレースと見て良いだろう。
 そして、主役はやはり4連勝中のメイショウボーラー。15番枠を引き当てた白井調教師は思わず天を仰いだと聞くが、97年の桜花賞で阪神芝1600mの大外枠から先行して勝ったキョウエイマーチのように、地力だけで押し切る公算が大だ。
 もっとも、この手の一本被りのレースで不可解な敗北を喫した大本命も数多いだけに、タテ目を含めた相手探しも重要になるだろう。“3大前哨戦”の中で最もメンバーが粒揃いだった京成杯2歳S組を上位と見たがどうか。1着のコスモサンビームは勿論、前走の敗北で必要以上に軽視されているフサイチホクトセイが面白い。未知の魅力を探るならメイショウボーラーとの力量差が測り難い東スポ杯組だが、こちらは逆に穴人気になってレースが少しやり辛そう。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 15 100円 1.9
馬連 1-15 100円 9.7
  11-15 100円 37.2
  1-11 100円 92.7
  6-15 100円 6.7
  8-15 100円 16.6
  9-15 100円 16.4
馬単 15→1 100円 12.9
  15→11 100円 51.5
三連複 1-11-15 100円 78.5


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:グレートジャーニー》

 普通に予想するなら、どう考えてもメイショウボーラーなんですが、駒木博士の本命馬をお聴きして、急遽“避難”させて頂きました(笑)。……いえ、冗談を抜きにしても、外枠で先行、終始目標にされる展開というのは、少々酷が過ぎるような気がしているんです。なので、ここはメイショウボーラーにこれまでで最も肉薄した馬・グレイトジャーニーから狙う事にします。
 2番手以下は、例年の傾向からも差し馬有利とみて、後ろから行く馬に重い印を打ちました。馬券的には、逃げるメイショウボーラーを直線でグレイトジャーニーが交わして、ゴールギリギリでフォーカルポイントが2着に届く……という展開が希望ですね(笑)。2着になる予定の騎手も、“いかにも”な感じですし(笑)。 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 7.1
馬連 6-15 100円 6.7
  6-8 100円 30.2
  8-15 100円 16.6
  6-11 100円 72.5
  1-6 100円 22.4
  6-16 100円 48.2
馬単 6→15 100円 18.9
  6→8 100円 63.1
三連複 6-8-15 100円 26.9


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:フォーカルポイント》

 最近、「いくらなんでも大穴を狙い過ぎ」みたいな予想になっちゃってた気もしますので、今回は地に足を着けた予想にしてみました。
 本命は、メイショウボーラーとの勝負付けがまだ済んでいない東スポ杯組から。「東スポ」って部分がなんかアテにならない気がしてアレなんですけど(苦笑)、いかにも穴狙いっぽくてイイ感じなので、このレースの2着&3着コンビが本線です。あとヒモ穴には、裏街道っていうんですか? マイナーなレースからチャレンジして来た馬で勝負してみます。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 11.0
馬連 8-9 100円 39.8
  8-15 100円 16.6
  9-15 100円 16.4
  5-8 100円 101
  7-8 100円 32.5
  8-13 100円 519
馬単 8→9 100円 81.6
  8→15 100円 42.1
三連複 8-9-15 100円 51.0

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:メイショウボーラー》

 先週はちょっとイイカゲンにやりすぎたので、今日はワタシがやれるだけマジメに予想してみました! ……とは言っても、駒木博士や珠美さんや順子さんから色々と教えてもらって、それを合体させたような感じなんですけどね(笑)。
 でも、これまでの予想の中で一番マトモな感じがしますし、なんとか当たって欲しいです! 

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 15 100円 1.9
馬連 8-15 100円 16.6
  9-15 100円 16.4
  8-9 100円 39.8
  1-15 100円 9.7
  6-15 100円 6.7
  2-15 100円 45.5
馬単 15→8 100円 23.4
  15→9 100円 23.0
三連複 8-9-15 100円 51.0

 今回はやけに全員現実味のある予想になったんじゃないか…と思っているのですが、どうでしょうか? それでも、現実味のある決着にならないと意味が無いんですよね(苦笑)。


朝日杯フューチュリティS 成績

×   1着 コスモサンビーム
2着 15 メイショウボーラー
      × 3着 アポインテッドデイ
× 4着 フォーカルポイント
    5着 11 フサイチホクトセイ

単勝1 1130円/馬連1-15 990円/馬単1-15 2920円/三連複1-2-15 6090円

 ※駒木ハヤトの“勝利宣言”(馬連のみ的中)
 う〜ん、悔しい。っていうか、自分の弱さにちょっと腹が立つ。
 馬単でウラを食う(1着と2着の順序が逆)のは仕方ないとして、ちょっと手広く行き過ぎたかなぁ。点数を絞っておけば、ポイントも倍付けになったんだけど、ここ最近の不調のせいで思い切れなかった。貧すれば鈍すって本当だね(苦笑)。ただ、先行馬の何頭かが後手踏まされるっていう展開だし、差し馬が怖かったんだよねぇ……。
 レースの内容については、まさに「画竜点睛を欠く」って感じだね。あれでメイショウボーラーの逃げ切りなら、久々の超大物逃げ馬キター! ってところだったんだけど、さすがに大外枠ブン回されて、あのペースじゃ辛かった。あと、ピンチヒッターで乗った外国人騎手って本当に目一杯で乗るよね。上位の2頭、疲れがドッと出ないかちょっと心配だ。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 どうして、どうして私が本命馬をズラしたら、博士の方が的中するんですか!(涙) ひょっとして、“負のエネルギー”を強く放出していたのは私の方だったんですか?
 グレイトジャーニーは、博士が展開予想でおっしゃっていた、「先行馬の何頭かは後手を踏まされて苦戦」というそのままでしたね……。武豊騎手も「行きっぷりが悪かった」とコメントしてましたし、今日の私の予想は全く良い所無しでした。有馬記念までに態勢を整えておきたいと思います。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 オッズ10倍以内の決着になっちゃったので、わたしの出番もありませんでした(苦笑)。でも、本命馬が久しぶりに掲示板に載ったので、今日のところはヨシとしておきます。スケールちっちゃいですけどね(笑)。
 で、いよいよラスト1回、有馬記念を残すのみですね。最後もドカンと万馬券狙いに行きますので、皆さん応援してて下さいね〜♪ 
 

 ※リサ=バンベリーの“ハッピー・ハッピー・グッドラック”(馬連のみ的中)
 久しぶりの当たりが来ました! でも博士と同じ得点じゃ意味ないですよね(苦笑)。
 けれど、やっぱり馬券ってマジメに考えて当てた方が、ウケ狙いで買って当たるよりも面白いですよね。何だかギャンブルの面白さが判ってきたような気がします(笑)。この調子で、グランプリもがんばって、駒木博士を抜きたいと思います!
 

第9戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント
(暫定順位)
今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 2640
(3位)
990 3630
(3位)
栗藤珠美 7040
(2位)
0 7040
(2位)
一色順子 29540
(1位)
0 29540
(1位)
リサ=バンベリー 2190
(4位)
990 3180
(4位)

 (ポイント・順位の変動について)
 駒木ハヤト、リサ=バンベリーの2人が馬連を的中させて久々の加点。しかし、本命サイドの決着のため、上位との差は余り詰まっていない印象が。○◎的中ながら、ウラ目で大量加点を逃した駒木にとっては悔しい結末だろう。
 さて、残るは泣いても笑ってもあと1戦。奇跡の大逆転は果たしてあるのか? また、注目の最下位争いの決着はいかに? 全ての答えは再来週に出る。

 


 

2003年第96回講義
12月12日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第2週分・合同)

 今頃になって、「コミックアワード」の開催予定日まで10日を切っている事実に気が付き、愕然としている駒木ハヤトです(苦笑)。武井宏之さんが最新単行本の中で、読み切り『エキゾチカ』が、締め切り3週間前まで全くの手付かずだった…という裏話を日記マンガ形式で激白してましたが、今の当講座の状況も似たようなモンだとお考え下さい(苦笑)。来週早々から、いや今から修羅場確実です。
 ……しかし、武井さんの描いた日記マンガ、どことなく“初代師匠”の桜玉吉さん『漫玉日記』シリーズを彷彿とさせた作風だったのが興味深かったです。武井さんと言えば、現在「ジャンプ」で活躍中なこともあって“和月組(=和月伸宏門下)”という括りで扱われるケースが多いですが、今回のマンガだけ見たら明らかに“桜玉吉門下”って感じでしたね。(もっとも、武井さんが在籍していたのは、まだ『しあわせのかたち』の頃でしたが)

 ──さて。それでは時間も切羽詰っておりますし、情報系の話題からお届けしましょう。今週は内容が盛りだくさんです。

 まずは新人賞の話題から。今週は「サンデー」では03年度後期「新人コミック大賞」少年部門の、「ジャンプ」では月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」10月期分の審査結果発表がそれぞれありましたので、ここでも受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。

第53回小学館新人コミック大賞・少年部門
(03年後期)

 特別大賞=該当作なし

 
大賞=1編

 ・『エッグノック』(=本誌または増刊に掲載決定)
   
ネモト摂(27歳・千葉)

 《選評要約:「画力は文句無しにプロ級。ただし、深刻なテーマなので青年向きの印象も。今後は少年誌での連載を意識したキャラクター作りを」(高橋留美子さん)「構成力、画力ともに、このまま雑誌に載っていても全く違和感のない作品。後は本人がどのような作家を目指すか」(あだち充さん)「完成度が高くて良い作品。ラストの展開が新鮮で、しかも内容に驚かされた。色々考えさせられるストーリーだった」(青山剛昌さん)「見事なドンデン返しにやられたという感じ。平凡に見えるストーリーだが、ラストシーンで作者の高い能力が窺える」(史村翔さん)

 
入選=2編
  ・『あたま』(=増刊に掲載決定)
   麻湧(23歳・北海道)
  ・『炎火のこぶし』(=増刊に掲載決定)
   ハセガワユージ(20歳・東京)
 佳作=2編
 
 ・『ロードオブメッセンジャー』
   高野裕也(20歳・東京)
  ・『たけし爆発5秒前』
   大塚真史(22歳・神奈川)
 最終候補=3編
  ・『DONBE』
   下下下下下下(=さかしたさげお)(25歳・埼玉)
  ・『影繰り』
   ゆうき美也子(23歳・東京)
  ・『快適ウソライフ』
   名久井幸恵(25歳・東京)

第7回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年10月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作&十二傑賞=1編
 ・『遊蕩☆法師』
(=本誌か増刊に掲載決定)
  里谷竜希(24歳・神奈川)
 
《久保帯人氏講評:絵もキャラも表情も良い。ただ、中盤に主人公が嫌味になるのが少々印象が悪い》
 
《編集部講評:アップの際の顔のゆがみが気になる。ただし、妙な迫力と勢いが感じられる。)
 最終候補(選外佳作)=7編

  ・『─青─』
   杉田尚(22歳・北海道)
  ・『NARIKIRI』
   肥田勝典(27歳・埼玉)
  ・『MIND DISC』
   奥山祐美(22歳・茨城)
  ・『その少年は見てた』
   西嶋賢一(23歳・埼玉)
  ・『Zの男』
   坂井ユウキ(24歳・新潟)
  ・『日本製少年』
   山下実(23歳・福岡)
  ・『トレーサー』
   由城アラタ(21歳・東京)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ※「新人コミック大賞」
 ◎入選の麻湧さん…01年度「ストーリーキング」ネーム部門で最終候補、また「天下一漫画賞(現:ジャンプ十二傑新人漫画賞)」02年11月期でも最終候補
 ◎佳作の高野裕也さん「まんがカレッジ」02年12月&03年1月期で努力賞
 ◎佳作の大塚真史さん「まんがカレッジ」03年4月期で佳作
 ◎最終候補のゆうき美也子さん「まんがカレッジ」03年6月期で努力賞。
 ◎最終候補の名久井幸恵さん過去に「まんがカレッジ」で努力賞に入賞経験アリ(期別不明)

 ※十二傑新人漫画賞
 ◎最終候補の肥田勝典さん矢吹健太朗さんのスタジオでアシスタント。
 ◎最終候補の山下実さん99年8月期、00年3月期、01年11月期に「天下一漫画賞」への投稿歴があるそうです。(受講生さんから情報を頂きました)

 「新人コミック大賞」の方は、「サンデー」の月例賞出身組や「ジャンプ」からの移籍組など、過去に何らかの実績のある“新人予備軍”さんたちの活躍が目立ちました。
 また、大賞受賞のネモト摂さん別ペンネームで既にデビュー済みではないか? という声がネット界隈から複数挙がっており、どなたかの調査結果を待ちたいところです。
 しかし、3人同時に受賞即デビュー決定とは、少なくとも当ゼミが開講されてからは初めての珍しいケース。積極的に新人をデビューさせていこうという方針の表れなのか、それともただ単に“タマ不足”なのか判らないんですが、「まるで『ジャンプ』の新人賞みたいだな」…と思ったりしました(笑)。

 なお、今週の「サンデー」では、秋に発売されたルーキー増刊の“ルーキートライアル”優勝者の発表もあり、先週の「読書メモ」枠でレビューさせてもらった『河児』作画:四位晴果)が見事“ルーキーキング”受賞作となりました。個人的には極めて順当な結果だと思ったりしているのですが、何はともあれ、四位さんおめでとうございました。

 さて、「サンデー」関連情報はまだあります。以前から噂に挙がっていた、この冬からの新連載情報が公式アナウンスされましたので、こちらでも紹介しておきます。

「サンデー」新連載ラインナップ

 ◎第1弾・新年3号(次週発売)より新連載
 …『怪奇千万! 十五朗』(作画:川久保栄二)
 ◎第2弾・7号より新連載
 …『暗号名はBF』(作画:田中保佐奈)
 ◎第3弾・11号より新連載
 …『こわしや我聞』(作画:藤木俊)
 ◎第4弾・12号より新連載
 …『思春期刑事ミノル小林(かなり仮)』(作画:水口尚樹)

 ……今回のラインナップは、全員が今回初の週刊連載となるフレッシュな顔触れとなりました。
 ──って、何だか同じような事を以前言った事があるなと思ったら、秋の「ジャンプ」新連載シリーズ紹介の時でした(苦笑)。ちなみにその時新連載された3作品は全部打ち切りor打ち切り濃厚になってますが、こちらの4作品の行く末も大変気になるところですね。
 また、4・5合併号からは『きみのカケラ』作画:高橋しん)が超久々の連載再開となります。連載中断後にアシスタントが大幅(というより全員?)入替になるなど、バックステージでは表向きの「体調不良のため休載」だけでは括れないドタバタがあったようですが、何とか1年がかりでリスタートの態勢が整ったようです。中断前はアンケートが最下位クラスだったという噂も聞いた事がありますし、他にも問題が山積されたままですが、ここらで一発、大ヒット作家の意地を見せてもらいたいものです。

 
 ──それでは、今週分のレビューへ。対象作は「ジャンプ」から新連載1本と代原読み切り1本、そして「サンデー」から読み切り1本計3本となります。
 なお、今週の「チェックポイント」は諸事情のため、必要最小限の内容に留めさせて頂きます。
 

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年2号☆

 ◎新連載『銀魂』作画:空知英秋

 「ジャンプ」年末新連載シリーズ第2弾は、このシリーズ中唯一のルーキーとなる空知英秋さんの登場です。
 空知さんは今年24歳になりますが、キャリアはまだ1年強の新人作家さん。ここ最近の「ジャンプ」では異例の抜擢ですね。実は、これが「ジャンプ」系の新人さんでは初めての“当講座開講後デビューの連載作家”誕生だったりします。
 そんな空知さんのデビューは、先ほども申し上げた通り1年強前の02年9月同年6月期の「天下一漫画賞」佳作受賞作『だんでらいおん』が本誌02年42号に掲載されたもので、いきなりの本誌デビューでした。その後、本誌03年17号に読み切り『しろくろ』を発表したのを経て、今回の連載獲得となりました。
 デビュー以来、強運にも恵まれて順調過ぎとも言える出世街道を歩んで来た空知さんですが、果たしてチャンスを実らせる事が出来るでしょうか──?

 まずはですが、一応基本的な作画力は認められるものの、さすがに「連載作家」というカテゴリで見た場合、若干の物足りなさが否めません
 以前の作品でも指摘したディフォルメ技術にしても(やや改善の傾向が見られるものの)拙いですし、全体的にキャラの表情が硬いのが特に気になります。微妙な感情の起伏を表現出来ていないと言いますか、顔色の“色数”が絶対的に足りていないという印象があります。
 また、アシスタントを使いこなせていないのか、背景処理も作業量が足りていない気がします。やはりこの辺りはキャリア不足が響いている感じですね。

 そして、デビュー以来定評のあったストーリー・設定についても、初の連載で勝手が狂ったのか、少なくとも第1回を見た限りでは長所より短所の方が目に付く内容に終始してしまっています。
 特にマズかったのが世界観の骨組みとなる舞台背景ですね。現実の世界における日本の開国──外国船と外国人(異人)の来訪による鎖国解消&社会変動──を、宇宙船と宇宙人(天人)による出来事にしてみた…という発想は悪くないのですが、いかんせん設定の練り込みが足りなさ過ぎた感じです。例えば、廃刀令や武士の没落などといった社会変動。何故ゆえ宇宙人の日本進出で、現実の歴史と同じような現象が起こったのか? ……という部分が極めて想像し難く、読み手が作品の世界観になかなか溶け込んでいけないんですね。
 また、主要キャラクターに関しても、現時点では設定の練り込み不足は否定出来ないところで、有り体に言って「見切り発車にも程がある」といった感じです。
 セールスポイントとしては、こちらのデビュー以来定評のあった台詞回しやギャグのノリの良さ、更には“判る人には判る”絶妙の小ネタなどが挙げられるのですが、これらも残念ながら世界観の構築をしくじったために上滑りしているのが現状です。逆に言えば、これから設定の後付けが上手くいって世界観が安定すれば、今度は長所が活きて来るようになるのですが……。

 個人的に空知英秋さんは大変好きな作家さんですし、実力もあると思ってはいますが、残念ながら今回の連載に関しては時期尚早だったんじゃないかと思います。あと1年くらいアシスタント修行を積んで、“連載作品のイロハ”を学んでから挑戦して欲しかったです。
 暫定評価は、これでも甘めと言われるかも知れませんが、長所の部分を一応加点してBとします。奇跡の大逆転を祈って、あと2回じっくりとチェックしてみたいと思います。

 
 ◎読み切り『ハガユイズム』作画:越智厚介

 今週は『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合の休載で、ショートギャグの代原が掲載されました。前回の『ジャガー』休載の際にも“代打”を務めた、越智厚介さんの『ハガユイズム』が登場です。
 越智さんは03年上期の「赤塚賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入り。そして先述の通り、前回『ジャガー』が休載になった03年44号で今回と同名の別作品で“仮デビュー”を果たしています。

 で、今回の作品ですが、内容的には前回レビューした際10月2日付講義。例の『戦斧王AX』(作画:イワタヒロノブ)をレビューした日ですが、ウザくなければ復習を推奨)と全くと言って良いほど変わっていませんので、多言には及ばないと思います。
 とにかくギャグの密度が薄い上に、オチがワンパターンで意外性不足なんですよね。起承転結の“起”か“承”あたりで小ギャグをカマして勢いをつけ、更にオチで大ネタをブチかます…というくらいの密度でも良いんじゃないでしょうか。裸になるのがオチではなく、序盤で全裸になった上で笑わせる…という“井手らっきょ方式”を試してみるなど、工夫の余地は幾らでもあるはずです。
 絵はギャグ作家としては悪くないだけに、あとはネタだけですね。もっとも、そこが最もセンスが問われる部分なんですが……。
 評価は前回から据え置きでB−としておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『サラブレッドと呼ばないで』作:長谷川尚代/画:藤野耕平【現時点での評価:B/連載総括】

 連載当初はネット界隈の評価も高かったこの作品ですが、残念ながらジリ貧状態のまま1クール突き抜けとなってしまいました。
 敗因大局観に欠けたシナリオ構成という事になるのでしょうか。タイトルに相応しいエピソードをたった1話で放棄してしまったり、その場のウケ狙いでメインストーリーの進展を遅らせてしまったりと、知らず知らずの内に序盤で泥沼にハマっていたんでしょう。なまじ実力があったがためにヤラれてしまったという、珍しい失敗のパターンでしたね。
 最終評価はBということで。当ゼミ的には、後半無難にまとめたという事で若干の加点です。次回作は正統派の学園コメディなんかどうでしょうか。期待しています。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年2号☆

 ◎読み切り『カズマ来たる!!』作画:万乗大智

 新連載シリーズ前の景気付けというわけでしょうか、今週は『DAN DOH !!』シリーズでお馴染みの万乗大智さんによる読み切りが掲載されました。万乗さんは、今年の8月から9月にかけて、『ふうたろう忍法帖』を短期集中連載しており、まさに「意欲的」という言葉の似合う活動を続けています。
 万乗さんの過去の履歴については、その短期集中連載の際に紹介しました、万乗さんのお兄さんによる公式プロフィールと、「まんが家BACKSTAGE」のプロフィールに詳しいので、ここでは省略させて頂きます。まぁ、キャリアの大半が『DAN DOH !!』シリーズである…という解釈で良いんじゃないかと思いますが。

 それでは内容についてですが、については前作から3ヶ月しか経っていませんし、今日ここで特に言うべき事はありません。やや個性がキツいながらも、マンガの作画技術はちゃんと出来上がっているので安心して読めます。
 ただ、これも前回指摘させてもらったんですが、主人公がまたダンドーと似過ぎというのは、ちと芸が無さ過ぎて印象が良くないですね。微妙に髪型を変えるくらいなら、思い切って容貌をガラっと変えて欲しかったですね。

 で、やや問題アリなのがストーリーと設定です。
 まずシナリオですが、36ページの作品としては若干“容量オーバー”だった気がします。シリアスなテーマを深く描き切れるだけの余裕が感じられず、ドラマとしてはやや平板な展開に終始したのは否めないでしょう。副作用的にテンポは良くなりましたので読後感は悪くないのですが……。
 また、設定もシナリオ圧縮のアオリを受けたのか、かなり強引で消化不良に陥っている感があります。まるで質の悪い学園TVドラマに出て来るような“悪徳校長”もそうですし、第一、主人公の教師が少年である必然性が全く感じられません。その主人公の過去についてのエピソードもいかにも取って付けたようで、盛り上がるどころか逆に“白け”を生んでしまったような気もします。
 原作付きの超長期連載をやった後に完全オリジナルで短編を描く…というのは確かに難しい作業ではあると思うのですが、もうちょっとページ数に見合ったスケールのまとめ方を意識された方が良いのではないかと思いますが……。

 評価は、お話に余りにも見どころが少ないので、厳しくB寄りB−とさせてもらいます。
 個人的な印象ではこの話、TVドラマ版『ごくせん』+『魔法先生ネギま!』みたいな印象を受けました。で、それなのに主人公の口調が『風天組』の野津ケンなので、余計に違和感を感じてしまうんですよね(苦笑)。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「通信販売で買ったもの」。
 なかなか買い物に行く時間もとれない連載作家さんということもあり、日用品が割と多かった印象がありますね。あとは食べ物やマンガ制作に使用するモノなどですか。何だか俗っぽ過ぎて面白みに欠ける気も(苦笑)。
 駒木はクレジットカードが無い(というか、現状の身分や収入では審査に通らない)事もあって、あまり通信販売は利用した事はありませんね。敢えて挙げるなら、コンサートやスポーツのチケット類などでしょうか。やっぱりこれも面白くない回答だなぁ……(苦笑)。

 あと、『美鳥の日々』関連の大ニュースとは、やはりアニメ化でしたね。最近増えている地方ローカル局系の深夜枠になりそうです。駒木が小耳に挟んだ噂話だと、とりあえず放送期間は1クール限定のようですね。
 この枠で放映されるアニメは、TVでアニメを流すというよりも、熱心な“固定客”にDVDを買ってもらう方が大事なので、その分アニメ作画も相当力が入っているみたいですね。以前紹介した『銭』(作画:鈴木みそ)第1巻のアニメ業界編が思い出される話です。

 ◎『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦【現時点での評価:/連載総括】

 相当な不人気だったのでしょう、「サンデー」としては異例の短期打ち切りとなりました。ただ、さすがにこの作品については、「打ち切られて残念ですね」と言うよりも、「『旋風の橘』の再現が避けられて良かったですね」と言いたくなってしまいますが(苦笑)。
 作品の内容については、もうフォロー出来る要素が全くありません。ありとあらゆる設定がグダグダなので、それに引きづられるようにストーリーもグダグダになってしまったとしか。短編を長編にリライトする際の難しさを色々な意味で教えてくれた作品…という事になるのでしょうか。
 これが中井さんの師匠の江川達也さんなら、いくら中身の無い話でもハッタリとエロで誤魔化して、ウヤムヤのままにソフトランディングして終わらせてしまうんでしょうけどね(笑)。

 
 ……さて、今週分はこれでご勘弁願います。次週は出来るだけ早い内にゼミをやってしまい、週末の「コミックアワード」に備えたいと思います。では。

 


 

2003年第95回講義
12月11日(木) 教科教育法(高校地歴)
「某私立学校・教員採用試験自戦記(3・最終回)」

 ※前回までのレジュメはこちら→第1回第2回

 毎度の事ながら思いつきで始めたこのシリーズも今日が第3回、そして最終回となります
 いつの間にか巷の話題もバレーボールW杯からサッカーの東アジア選手権やワールドユース選手権へと移ってしまいました。こちらは幸か不幸か、なまじシリアスに日本代表が強いだけにネタにならないので、ここではスルーさせてもらい、さっさと本題へと移りましょう。

 今回レポートをお送りするのは、午前・午後に分けて行われた採用試験の後半、SPI試験と面接の模様です。が、この「SPI試験」というヤツは「知ってる人は知ってるけど、知らない人は知らない」モノの典型でありまして、耳馴染みの無い方がいらっしゃると思われます。ですので、ここであらかじめ簡単な解説をしておきましょう。

 このSPI試験1974年に現在のリクルート社が考案したもので、主に民間の就職試験に用いられます。現在では大企業などを中心に数千もの企業がこの試験を採用し、しかも採用する企業は近年増加傾向と言いますから大したものです。ちなみにSPIとは「Synthetic Personality Inventory(=総合個性評価)の略で、要は個人の能力や性格などの個性を測定するテストという事になりますね。
 もっとも、能力はともかくとして、たかがペーパーテストで測定した性格で採否の参考にされても正直タマランのですが、かと言って1人1人面談で綿密に性格診断されても逆にアレなので、まぁ仕方ないでしょう。むしろ、人間は見るけど人間性はあまり見ない公立学校採用試験の二次面接よりも、人間性を見ようと努力してくれるだけマシかも知れません。

 で、試験の内容はと言えば、試験は「能力検査」「性格検査」に分かれています。
 前者の「能力検査」はマークシートを使った選択式(4択〜8択)のペーパーテスト。国語の語彙力や読解力を問う問題と、理数系の計算力や論理思考力を問う問題の二部構成になっていて、その得点や正答率で受験生の順位付けが為されます。
 問題のレヴェルそのものは高校入試レヴェルかそれに毛の生えた程度。とりあえず普通に学校の勉強がこなせる人間ならば、時間をかければ正解が導き出せるような問題ばかりです。
 が、「時間をかければ解ける」という部分が実はポイントで、SPI試験はこの特性を意地悪く逆手に取った形式を採っています。つまり、そんな「時間をかければ解ける問題」を解くのに決して十分でない制限時間しか与えてくれないのです。そして、その中で受検者がヒィヒィ言いつつも、どう対処して結果を残すかを見るという試験なわけですね。ハッキリ言って意地が悪いです。この試験を考案した奴は真性のサディストだ、間違いない! ……などと長井秀和口調で断じてしまいたくなります。 

 で、もう片方の「性格検査」の方は、「以下の質問にYESかNOでお答え下さい」という問題に答えさせて、その回答傾向から性格を診断するというもの。そうです、ネット上でもよくある“あなたの○○度チェック”と同じです。
 ただし、問題数は全部で500問もある“豪華版”。しかも1問あたりにかけられる時間はわずか7.5秒という、これまた厳しい制限時間が課せられています。自分の性格が分かるだけでなく、「アメリカ横断ウルトラクイズ」の400問ペーパークイズに参加しているような錯覚も味わえて一石二鳥ですね。この試験を考案した奴はウルトラクイズマニアだ、間違いない! ……などと長井ひ(以下略)(追記:よく考えたら、1974年ってウルトラクイズが出来る前だったですね^^;;)
 この「性格検査」で導き出された受検者の性格傾向は、面接試験の重要資料とされるようです。ただ、駒木が受けた試験の場合はSPI試験と面接が同日に実施されたので、恐らくこちらの検査は半ば形式的なものだったのでしょう。さすがは教育業界、ペーパーテストで診断された“性格”を鵜呑みにするのに抵抗を感じていると見えます。

 ……しかしここまでお聴きになった受講生さんの中には、どうして数千もの企業が就職試験としてこんなペーパーテストを採用しているのかピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。性格診断はともかく、高校入試レヴェルのペーパーテストで何がしたいんや? と。実はそれにはこういう理由があったのです──

 ──舞台袖から元気良く出て来たビッキーズが客席にアメ玉を放り投げるが如く、新卒学生にバンバン内定や内々定通知がバラ撒かれていたバブル期ならともかく、今は頭に“ド”がつく不況の真っ只中。大企業と言えども採用人数はひどく限られているのが現状です。数百人、企業によっては数千人もの就職希望者がやって来たとしても、その大半には「残念ですが……」とご遠慮願わなくてはなりません。
 なので企業は、あの手この手を使って志望者の数を絞ろうとします。ですが敵も然るもの、なかなかシッポを出してくれません。面接をすれば雁首揃えてマニュアル本に則った模範的な受け答えをして来ますし、自社製の一般教養試験などを用意してみても、大学受験を潜り抜けて来た猛者たちは難なく高得点を叩き出して来ます。志望者を大量に切らなくちゃいけないのに、その理由が見つからないので、人事担当の皆さん大弱りです。
 たとえ、そこで社長や重役が「ワシの人を見る目に曇りは無いから、どんどん面接に連れて来い」と言っていたとしても、「じゃあ2000人個別面接お願いします」などと申し出るわけにもいきません。そんな事をやらかした日には、「どうやらワシの目も衰えたようだ。こんな人事担当を雇っていたとは!」…と即日人事異動が発令され、小久保のダイエー→巨人移籍を思わせる、人事部から社史編纂室への電撃無償トレードが成立する事は必定であります。

 ……そんなお困りの人事担当者にとって、大変頼りになる味方がこのSPI試験なのです。と、言いますのもこの試験、何が便利かと言って、受検者間の点数差が他のペーパーテストに比べて大きく広がり易いんですね。
 普通の試験なら実力拮抗で大差がつかないようなメンバー構成でも、厳しい制限時間のプレッシャーの賜物で、容易なランク付けが可能になります。で、試験結果の下位数十%を「国語力、数理思考力の不足」という名目で“足切り”して一件落着…と相成るわけです。
 ちなみに、この際叩き落した志望者が本当に能力不足であったかどうかは余り関係ありません。要は“この辺は誰を通しても誰を落としても、まぁ一緒”というボーダーライン上の志望者の数を絞るのが主たる目的なのですから、もっともらしい理由が設定出来さえすれば、極端な話、内容は何だって良いのです。その上で、“箸にも棒にも引っ掛からない方々”を漏れなく排除出来れば尚良いわけで、そういう点においてもこのSPI試験は理想的です。
 「大企業や優良中堅企業に多数採用」というのがSPI試験を紹介する時の常套句ですが、これは別にこの試験が人物評価に有効だからだとは思えません。ただ単に、そういう企業は就職試験の初期段階で適当な理由をつけて希望者を絞り込まなくてはならず、それをやるのにSPI試験が非常に有効だというだけのような気がします。

 そういう意味では、今回駒木が受けた採用試験にSPI試験が課されたのも納得が行きます。知識・経験とも極めて拮抗している15人の志望者の中から「特に優れた者1人」を選び出すわけですから、SPI試験のような“紛れ”を作り出すような要素を配置しておかないと、いつまで経っても勝負がつかないんですね。
 まぁ、いざ受験となれば、現実を受け止めて頑張るしかないんですが、ホンマどないにかならんのかいな、と、普段あまり使わないようなコテコテの関西弁で愚痴をこぼしたくなるのも本音です。

 ──それでは、非常に前置きが長くなりましたが、これよりレポート本文です。文体は例によって常体に変更しておりますが、ご了承下さい。


 午後のタイムテーブルは、まずSPIの能力検査が先に行われ、その後に性格検査と面接が同時進行(検査中から1人1人面接に呼ばれて一時退室してゆく)で実施されて、全部終わった者から随時退出…という事になっていた。なかなか合理的である。公立の採用試験の感覚で同じ試験をするとすれば、午前にSPI、午後に専門教養試験をやって、面接は後日…という風になっているはずだ。

 ところで今回は、駒木にとって初のSPI試験だったりする。正直言って不安は隠せない。新卒の頃から「教職志望一本」とか調子の良い事を言って、民間企業への就職活動を一切して来なかった(それどころかリクルートスーツも買ってない)ツケが今になって回って来たと言える。
 ただ、それでも一応、本屋でSPI試験の参考書のようなモノを一読し、大体の傾向を掴んではいた。で、傾向さえ掴めれば、中学レヴェルの問題ならなんとかなる。以前やっていた家庭教師の仕事で小6〜中3までの全学年全科目を教えた経験があったので、この手のテストには自信が無いわけではない。問題を解くよりも、専ら作って添削していた立場という強みがあるのである。
 まぁ言ってみれば、溜まったツケを払えるだけのヘソクリが残っていたようなものか。それにしても、この喩えだけを見ても、駒木のここまでの人生はロクなものではない事がよく分かる。良い子のみんなは真似しちゃダメだ。お子さんをお持ちの受講生さんは、ご子息が駒木みたいにならないよう細心の注意を払って頂きたい。

 …などと自分の半生の至らなさを痛感したところで、試験開始。まずは文系分野・国語の問題からである。
 試験の内容は、熟語の穴埋めや言葉の意味を問う問題などから始まって、後の方になって論説文の読解が3つほど続く…といった具合。誰もが学校で受けた事のある国語の定期テストをマークシート形式にしたようなテストであった。
 問題の難度はやはり中3〜高1レヴェルで大した事は無い。しかも、日頃からこの社会学講座の仕事で国語の読み書きは散々やっているわけで、どの問題も即断即決、ホイホイと進んでゆく。ホント、世の中何がどこで役に立つか判ったものじゃない。
 さすがに後半の文章読解ではやや時間を使ったが、これも塾講師時代に“中3夏季集中受験国語講座”を受け持った経験が活きた。気分は『あしたのジョー』で、「えぐりこむように、打つべし!」を試合で実践している矢吹丈である。
 結果、時間が足りないのが当たり前のSPI試験で時間を10分近く余らせる“大楽勝”の展開に。長文読解を時間一杯まで慎重に見直しして、余裕残しのタイムアップ。極めて順調である。

 が、ここで「好事魔多し」人生のヤマ場を使ってオイシイ所をさらってしまうのが駒木の悲しいところ。理数系試験では大苦戦を強いられた。
 苦戦の原因はやはり制限時間だった。久々の計算問題にやや手間取っている内に予定していたペースが完全に狂い、しかもちょうどその時に“計算式自体は簡単だが、そこに辿り着くまでが難しい文章題”にぶち当たっていたものだから、たちまち脳ミソからブスブスと煙を立て始めたのである。
 「うわー! このシチュエーション、競馬場で窓口締め切り2分前なのに予想が終わってない時と同じ!」
 ……などと、この期に及んでまでバチ当たりかつ的確な比喩は浮かんでは来るが、肝心の計算式とその答えが浮かんで来ない。この時、つくづく自分はお笑い文系人間だなと強く強く自覚したのは言うまでも無い。
 結局、(かつて自分が生徒に教えた)受験時のセオリーに則り、詰まった問題を後回しにして出来る問題から先にこなしていった事で状況が好転。最後は頭も冷静さを取り戻し、時間内に全ての問題を解き終えただけでなく、ヤヤコシイ問題をもう1度計算し直す余裕すら出来たのだが、これは本当に危なかった。これまで色々な試験を受けてきたが、これほどパニクったのは生まれて初めてだった。

 ……ただ、内容的には(途中焦ったにせよ)十分納得できる試験だった。にも関わらず、結果試験そのものの合否)が伴わなかったのだから、今回の採用試験は本当に厳しかったのだろう。本当、変な意味じゃなく、採用された人の答案を一度拝見してみたいものだ。

 後日談はさておき、能力検査が終わった心地良い脱力感を味わう間もなく、引き続き性格検査と面接に突入である。冒頭で説明した通り、性格検査は、“はい”か“いいえ”で答えさせるチェック500問に答えるという、今思い出してもウンザリする形式だ。
 SPI試験を受けた事の無い人には「500問って、どうやったら500もチェック作れるの?」とお思いだろうが、実はこの500問の中には、かなりよく似たニュアンスの問題が複数、そして繰り返し繰り返し出題される。恐らくは検査結果の“誤差”を可能な限り小さくする試みだろうが、問題数を必要以上に増やし、受検者に自分を偽ろうとする意欲を失わせるという意図もあるかも知れない。
 さて、こういうチェックの場合、何も意識せずに自分を曝け出す事に決めている駒木は、1問当たり2〜3秒のハイペースでチェックをこなしてゆく。しかし、質問の中に、自分の性格の中で「至らない部分だ」と自覚している所をえぐるようなモノが多数含まれてるのはどうにかして欲しい。
 「そうそう、俺ってリーダーシップ足りないっつうか全く無いよな。昔からNo.2タイプって言われるもんな。でもそれって、担任に向いてないってことと違うんかな?」
 とか、
 「そうなんよなー、石橋叩いても渡らんクセに、一度渡り出すと止まらんのだよなー。それって石橋叩く意味あらへんよなー。ていうかそういう状況って手遅れちゃうんか?」
 ……などと考え出してしまい、更に、「このチェックで診断された性格だと『明らかに学校の先生に向いてない』という結果が出るんじゃなかろうか」…などと思い至り、にわかに心が曇りだす。恐るべし、SPI試験。

 すっかりやさぐれた気分になって回答を終了すると、間もなくして面接にお呼びがかかった。何て言うか最悪のメンタルコンディション。やはり恐るべしSPI試験。面接が終わると試験も終了なので、荷物をまとめて面接会場へと移動する。
 面接は個別面接で、駒木と対するは学校長を筆頭とするお偉方が6〜7人。ドアを開けた瞬間、物凄いハンディキャップマッチがメークされていた事実に気付き、思わず心の中で「ウウゥ……」と呻く。往年のアントニオ猪木でも1対3だったんだぞ! …などと、プロレスファン以外には理解不能な表現で怒りを噛み殺す。挨拶を促されたら「こんばんは、ラッシャー木村です」とか言ってやろうか。
 しかし、面接の内容は、お偉方軍団の1人が代表して駒木に2〜3の質問をし、他の人たちはそれに対する駒木の答えを聞いて採点をするだけというアッサリしたもの。時間が押しているので、本格的な面接はやれなかったという事らしい。ということは、これも参考程度か。
 肝心の質問の内容は、「高校1年のクラス担任を持つ際の心構えは?」…とか、「生徒が『世界史は大学受験に使わないので勉強したくない』と言ったらどうする?」…とかいった、この手の面接では比較的オーソドックスなもの。ただ、私立高校では常勤講師でもクラス担任を持たされるとは知らされていなかったので、最初の質問にはやや面食らった。そのためか、ただでさえ早口な嫌いがある駒木の口調が更に早くなってしまったのが悔やまれる。こういう時、簡単に動転する所がイカンよなー…と自省した所で試験は終了した。

 ──最後に総括。落ちた人間が言うのもアレだが、今回の試験は致命的なミスが無かったので、何だか落ちた実感が余り湧いて来ない不思議な試験だった。やはり結局は「15人中1人採用」というハードルが高過ぎたという事なのだろう。前々回に(これで合格するのは)プロ野球のオールスターでMVP獲るようなもの」と表現したが、どこかに4打数4安打1HR5打点とか叩き出したスーパーヒーローがいたという事か。

 というわけで、サッカー日本代表並に決定力不足に喘ぐ駒木ハヤトの採用試験レポート、これにて終了。


 というわけで、現在のところ駒木の来春からの職場は未定のままです。ソフトバンクの魔の手から駒木を救出しようという酔狂な学校を只今募集中であります。どうぞお気軽にお声を! ……などと、本気とも冗談ともつかない放言を残しつつ、このシリーズを締めさせて頂きます。(この項終わり)

 


 

2003年第91回講義
12月6日(土) 
競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第8戦・阪神ジュべナイルフィリーズ」

 12月に突入し、この予想ラリーも残り3戦となりました。
 今週は秋のG1シリーズの中でも最も難解との呼び声の高い、2歳牝馬No.1決定戦・阪神ジュべナイルフィリーズ。
 そのためか、今週は4人の予想印もいつにも増して割れ加減になっています。さて、結果はどうなりますか。どうぞ最後までお付き合い下さい。

第8戦・阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神1600芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

      ヤマニンアラバスタ 松永
ここまでで既に6戦のキャリアは決してマイナスではないが、一気の相手強化はやはり気になるところ。マイル適性に活路を見出すが。
        グランプリオーロラ 熊沢
デビュー戦の大差勝ちも今や色褪せ……。デキも下降気味では強くは出れぬ。
× マチカネエンジイロ 武豊

前走で厳しいレースをした経験は大きかった。叩き2走目で更なる上昇も望めるが、小柄な馬体では最後の坂は応えそう。

  スイープトウショウ 角田

新馬勝ち直後とは思えぬ圧倒的なレース振りで前哨戦を制した前走。万全の仕上がりで昨年に続く無敗の2歳女王の座は既に目前。

      ラブリープリンセス

デビュー戦を楽勝で突破し、果敢にG1挑戦。意気込みは認めるものの、一変する環境に馬がついて行けるか?

        エイシンヘーベ 小牧太
相手なりに走る堅実さは出色だが、気性の若さも並存し、現状では道悪になって波乱の立役者になれるかどうかというところ。
× フィーユドゥレーヴ 藤田

休養明け&+18キロの前走は当然度外視。むしろ健闘を称えても良いくらい。問題は上積みあっての地力がどの水準にあるか。函館2歳Sのレヴェルがカギか。

      × エンジェルクルー 本田

初勝利後、低迷続く近走に説得力皆無。デキの良さでどこまで食い下がるか。

×   マルターズヒート 安藤勝

長く良い脚を使える印象を植え付けた前走。有力差し馬が牽制し合えば勝機が見えて来る。

×       10 ダンツアイリッシュ 池添

前走惨敗も、休み明けの上に暴走した結果でダメージは小さい。前々で折り合いつけて行けばアップセットも狙える素質はありそう。

      × 11 クリスタルヴィオレ 坂井

典型的なジリ脚傾向。先行粘り込みでどこまでか。

      12 ディアチャンス ファロン

未勝利戦1着からの格上挑戦。不利な材料は山積だが、多頭数のレースを控えて勝てたのは強みか。鞍上も怖い。

        13 アズマサンダース 蛯名

前走の重賞2着は展開に恵まれた印象。休み明けで調整も完全とは言えず、いきなりのG1挑戦は不安が先立つ。

      14 マコトキンギン スミヨン

高速決着に泣いたか、伸びあぐねた前走の印象は決して良くない。仏若手No.1騎手の力を借りてどこまで?

        15 コンコルディア 柴田善

余りにも不甲斐なかった前哨戦の大敗。必死の立て直しで馬体は良化したが、地力比べになると分は良くないはず。

×     16 ヤマニンシュクル 四位
前走3着は展開不利に泣いたもので、この馬が事実上の札幌組実力No.1。外枠にもめげず、札幌の敵を仁川(阪神競馬場)で討てるか?

 

      17 ヤマニンアルシオン 岩田

新馬戦大楽勝も、楽勝過ぎて時計が平凡。この外枠で厳しいレースを強いられる今回、どう考えても苦戦は避けられない。

 

×     18 ロイヤルセランガー 福永

前哨戦、最内を通って最も恵まれたレースをしたが2着完敗。今期7戦目で大きな上積みも考え辛く、更には痛恨の18番枠。上位争いをする地力はあろうが、情勢は厳しい。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 純然たる逃げ馬不在、有力馬が軒並み控えるタイプとあって展開は流動的。一応、最有力の逃げ馬候補はダンツアイリッシュだが、スタートを決めた先行馬が成り行きでハナに立つ可能性大。ただ、気性の若い牝馬ばかりのレース。全馬がスローで折り合うとは考えられず、遅くとも平均ペースで進行するだろう。
 有力馬ではフィーユドゥブレーヴ、マルターズヒートあたりが好位集団につけるが、スイープトウショウ、マチカネエンジイロ、ヤマニンシェクルらは後方待機策。過度の牽制で仕掛け遅れると前残りで波乱も有り得る。
 ただ、これだけの多頭数。机上の推論はアテになり辛いのが現実で、結局のところは「後から考えたら展開に恵まれていた」という馬が、いつの間にかウイナーズサークルにいる…なんてことになりそうな予感。

●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:スイープトウショウ》
 

 来ちゃったよ。一番苦手なG1レースが(苦笑)。ここ10年で2回しか当たった覚えが無くて、しかもその内1回はワイドだけだったような気がする。何だかなあ。

 本命はスイープトウショウ。前哨戦の中でも一番メンバーの揃っていたファンタジーSで、出走馬中最も強いケイバをして1着になったのだから、評価してあげないと仕方が無い。しかもそれがデビュー2戦目だったというのだから尚更だ。無論、若い牝馬で不発の可能性が付き纏う差し・追込脚質というのは気がかりだが、それを言い出したら今回は馬券を買う馬が無くなってしまう。
 ファンタジーS組に抵抗するとすれば札幌2歳S組だろうが、中途半端に間隔が開いた上に“展開に恵まれた2着馬”と“外枠に放り込まれた3着馬”では正直、心許ない。むしろ、今回くらいの混戦模様ならば、ノーマークの1勝馬を狙った方が期待値は高そうな気もする。的中率度外視で穴狙いをするなら、思い切った決断が吉だろう。現状の駒木には真似出来ないが(苦笑)。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 2.5
馬連 4-7 100円 8.4
  4-9 100円 19.5
  7-9 100円 38.5
  3-4 100円 14.6
  4-10 100円 40.3
  4-16 100円 19.1
馬単 4→7 100円 11.5
  4→9 100円 24.4
三連複 4-7-9 100円 29.3


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:スイープトウショウ》

 薄々と予想はしてましたけど、今週も博士と本命馬が重なってしまいました。残念ながらこのレースは私もダメみたいですね(苦笑)。
 ま、冗談はさておき、ファンタジーSのスイープトウショウの強さは印象的でしたね。差し切ったところから、更にダメ押しでもう一伸び。この時期の馬たちに使っていい言葉かどうかは微妙ですけど、格の違いを感じさせる勝ち振りだったように思えます。
 相手も基本的にはファンタジーS組から。1頭だけ、札幌2歳Sで健闘したヤマニンシュクルを押さえておきたいと思います。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 2.5
馬連 3-4 100円 14.6
  4-16 100円 19.1
  3-16 100円 71.3
  4-7 100円 8.4
  4-18 100円 19.5
  4-9 100円 29.0
馬単 4→3 100円 20.4
  4→16 100円 24.7
三連複 3-4-16 100円 62.4


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:ディアチャンス》

 今週のレース、こう言ったらアレですけど、なんだかどの馬も弱そう(笑)。さすが2歳G1だなーって感じがしますねー。
 で、わたしの狙いなんですけど、過去10年の成績表を見ていたら、このレースって外国人騎手がやたらと強いんですよねー。ワールドスーパージョッキーシリーズと同時開催なせいもあって、上手な外国の騎手がバリバリ活躍してるみたいです。特に一昨年なんてペリエ−ファロンでワン・ツーですし……。
 というわけで、今年の阪神JFは、ファロン−スミヨンのワン・ツーってことで(笑)。外国人騎手って、後の事を考えずにその場の成績を求めるって博士から聞いた覚えがありますし、これって結構面白い狙いだと思うんですけど。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 12 100円 38.8
馬連 12-14 100円 227
  9-12 100円 223
  9-14 100円 363
  4-12 100円 56.8
  7-12 100円 112
  3-12 100円 211
馬単 12→14 100円 552
  12→9 100円 702
三連複 9-12-14 100円 1598

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:マチカネエンジイロ》

 何をどうやっても当たらなくなって、ちょっと今週はヤケになっちゃってます(笑)。もう思い切って馬の名前が好きな順から印つけちゃいました(笑)。
 でも、博士にその事を言ったら、
 「名前で選んでこの印? 意外と趣味悪いんだなー」
 ですって。ちょっと失礼と思いません?(苦笑)

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 10.1
馬連 3-7 100円 29.0
  1-3 100円 98.9
  1-7 100円 59.3
  3-5 100円 313
  3-8 100円 455
  3-11 100円 610
馬単 3→7 100円 76.2
  3→1 100円 239
三連複 1-3-7 100円 210

 さすがに今回は「こんな予想、人様に公開する意義はあるのか?」と考えてしまいましたが(苦笑)、ほんの少しでも参考になれば幸いです。では、またレース後に。


阪神JF 成績

×     1着 16 ヤマニンシュクル
        2着 17 ヤマニンアルシオン
        3着 15 コンコルディア
  ×     4着 18 ロイヤルセランガー
  5着 スイープトウショウ

単勝16 1480円/馬連16-17 19700円/馬単16-17 37920円/三連複15-16-17 376760円

 ※駒木ハヤトの“敗戦の弁”(不的中)
 こんな内容のレースになっちゃったら、僕の予想だと色々な意味でお話にならんね。悪いけど、今日はノーコメント。
 あーでも、馬券云々は抜きにして兵庫公営の岩田騎手は惜しかったなぁ。この悔しさは来年もう1度20勝達成して中央入りして、思う存分雪辱して欲しいもの。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 今日のレースを観ていると、冗談抜きで駒木博士の“負のパワー”を感じてしまうんですけど……(苦笑)。スタートで出遅れたのも博士の買ってた馬なら、3コーナーで走る気を無くしてしまったのも、直線で致命的な不利を被ったのも博士の買った馬で……。「逆張り推奨フォーカス」が本当になってしまってますね。
 え? 私の予想の敗因ですか? 駒木博士と同じ本命馬にしてしまった一点に尽きると思います(苦笑)。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 ディアチャンスはシンガリ18着……。
 終わってみれば、去年と一緒で公営所属騎手の人気薄が2着に突っ込んで来るレースでした。本命馬間違えちゃいましたね(苦笑)。
 ……あー、でも1着が無印だからハズレですね。今週のわたしはダメダメでした(苦笑)。
 

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラック・デイ”(不的中)
 掲示板に載った馬に、私が印をつけた馬が1頭もいません(苦笑)。やっぱり不真面目な態度じゃ当たりませんね、競馬の予想は。
 来週はもうちょっとマジメにガンバリます!。
 

第8戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント
(暫定順位)
今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 2640
(3位)
0 2640
(3位)
栗藤珠美 7040
(2位)
0 7040
(2位)
一色順子 29540
(1位)
0 29540
(1位)
リサ=バンベリー 2190
(4位)
0 2190
(4位)

 (ポイント・順位の変動について)
 いかにも阪神ジュベナイルフィリーズらしい大波乱の結末で、スタッフ予想も全員不的中に。
 残るは2戦、上位の大勢は決したに見えるが、果たして土壇場の大逆転はあるのか?

 


 

2003年第93回講義
12月5日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・後半)

 久々の前・後半分割実施となりました、今週の「現代マンガ時評」、後半分をお送りします。
 今日の“後半”では、予告しておりました通り、今週発売の「週刊少年サンデー」関連の情報やチェックポイントをお送りした後、来る、今年で第2回となります「仁川経済大学コミックアワード」関連の話題をお送りします。どうぞ最後まで宜しく。

 では、「サンデー」関連の情報から。
 次週発売の04年新年2号では、読み切り『カズマ来たる!!』(作画:万乗大智)が掲載されます。長期連載を終了させたすぐ後にも関わらず短期集中連載を敢行した万乗さんですが、年を越さない内にまた読み切り。本当にそのバイタリティーには脱帽ですね。

 ところでネット界隈では、やたら具体的な新連載4本のラインナップに始まり、長期休載中のアレが復活スタンバイに入ったとか、更には来週号で予定されている『美鳥の日々』の重大発表の中身まで様々な噂が飛び交っていますが、不気味な事に公式情報は現時点で何も出て来ていません。何だか嵐の前の静けさと言いますか、奄美諸島辺りまで来ている台風の情報を、本州からNHKニュースで聞いているような感覚ですね。
 そんな駒木も色々な所(例えば“関係者の知り合い”を名乗る方とか)から色々な噂を小耳に挟んだりしているのですが、最近は談話室(BBS)ですら軽口を叩けないような環境になっちゃってますので、今のところは自粛しときます(苦笑)。ただ、駒木が聞いた話も飛び交っている噂話と大差無いので、確定情報がリークされているのか、又は同じ出所から真実味のあるデマがばら撒かれているのかのどちらかでしょう。
 そういうわけで、まぁここは公式発表があった時のお楽しみという事で。

 ……では、早速チェックポイントから参りましょう。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年1号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「今、有り余るほどの力があります。さて、何をしますか?」
 ……何か面白い事を言わないといけないような口調のお題ですね(笑)。しかし、その期待に(多分無意識で)答えて下さったのが、河合さん久米田さんの急造コンビ。「18ページ描きます」と河合さんが言ったところに、すかさず久米田さんがじゃあ俺17ページ描くと(笑)。1ページ減ってるところが何とも。
 しかし、藤田和日郎さん「普段から有り余ってるので、マンガ描く事で力抜いてる」ってのは凄いですね。さすがは富士鷹ジュビロっていうか。
 駒木なら、栗本薫さんのような猛スピードで新人賞用の長編小説を2週間で1〜2本仕上げたいですね。「30枚書き上げて時計見たらまだ5分しか経ってない」ってのを一度体験してみたいものです。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】

 「そういや、沢村と美鳥の初恋話って出てないね」
 「あー、そう言えばそうっスね。やっちゃいますか、次あたりでチョチョイと。……あーすいません、コーヒーおかわり」

 ……みたいな、ファミレスでの編集と作家さんの何気ない遣り取りから生まれたようなエピソードでしたね、今回は(笑)。やけにアッサリ肩透かしで終わった感じでしたが、これまでのこの作品のパターンからすると、この初恋の女の子が本当に成長して戻って来るってのも有り得ますからね。
 あ、誰か物好きな方に訊かれそうなんで先に答えておきますが、駒木の初恋はやっぱり実ってません(苦笑)。というか、大学生になってから初恋の人に同窓会で会ったら、コギャルキャラクター時代の小倉優子みたいになってたので、実らなくて正解だったと思います(笑)。

 ◎『結界師』作画:田辺イエロウ【現時点での評価:A/雑感】

 前回と今回のエピソードで、いつの間に良守って時音に“バリバリ片想いモード”になったんだろう? って、かなり違和感感じてしまったんですが……。2人の関係は、いわゆる“友達以上恋人未満”の戦友で、そこから長い間かけてジワジワと恋愛モードに持ち込むもんだと思い込んでたんですけどね。う〜む……。
 これは駒木だけの感覚なのかも知れませんが、田辺さんって自分の張った伏線の威力を少し過信してるような気がするんですよね。以前にもお話したように、時々話の展開が唐突に思える時があるんです。これが作品全体のクオリティを落とす要因にならなければ良いんですが……。


 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 “アイスバーン”の数が「まんがコース」より多いのが「テキストサイトコース」だったりするんですが(笑)。また、そのアイスバーンに突っ込んで行って転倒・再起不能になる人の多い事、多い事……。
 駒木も滑り始めの頃はジャリジャリのアイスバーンに突っ込んでコケそうになりましたが、要所要所で雪が残っている所を見つけて、今でも何とかやっております(笑)。しかし、このコース、滑り始めてから何年も経つのにゴールが来ないなあ……。

 ◎『売ったれ ダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治現時点での評価:保留中/中間まとめ】

 この『ダイキチ』も「コミックアワード」の審査対象になりますので、ここで再評価をしておきます。
 さて、この作品の第1回をレビューした時に、駒木はこの手の“業界ハウツー・薀蓄モノ”を描く時に留意すべき3つのポイントを挙げました。即ち、

 1.作品で紹介される薀蓄に説得力があるか。
 2.薀蓄はストーリーを引き立てるために存在しており、主客転倒していないか。
 3.主人公側の成功(勝利)に必然性があり、ご都合主義になっていないか。

 ……以上の3点。で、連載開始当初はコレがキチンと出来ていたからこそ、当ゼミでもA−の高評価を出していたわけなのです。が、現在の「松筑プロジェクト」編に突入してからは、これらのポイント──特に“1”と“3”の達成度が極めて怪しくなっています。これでは、とてもじゃないですが良作・佳作相当の評価を下す事など出来ません。
 本当はB−くらいまでに落としても良い所なんですが、連載当初のアドバンテージを相殺させなくてはバランスが取れませんので、ここは評価としておきます。


 ◎『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫現時点での評価:/連載総括】

 で、こっちは遂に連載終了。「鳥人間コンテスト」に出て来る人力飛行機のように、着水寸前で長期間粘っていたこの作品も、残念ながらここまででした。
 今回は登場キャラの後日談を羅列するという、典型的な最終回パターンだったわけですが、この期に及んでも一部キャラクターの区別がつきにくいんですけど駒木は(苦笑)。
 やっぱりこの辺の部分が絶えず作品全体の足を引っ張ってしまった所がありましたよね。似たような外見で似たようなタイプのキャラクターが次から次へと追加されても、シナリオに深みが出るどころか逆効果ですよ。次回作ではこの辺にもっと気を配って頂きたいものです。
 最終評価はB−寄りということで。


 ……というわけで、レギュラー企画はここまで。続きまして、これまで時間等の都合で評価をお届け出来なかった作品の簡単なレビューを2作品ほど、ここで「読書メモ」としてお送りします。

◇駒木博士の読書メモ(12月第1週)◇

 ◎『河児』作画:四位晴果/「週刊少年サンデーR(03年特別増刊号)」掲載

 「コミックアワード」最終エントリー1作目は“新人賞”枠から。「サンデー」版「赤マルジャンプ」とも言うべき、ルーキー増刊からの登場です。

 ……この増刊号、発行部数が僅少なのか、大手コンビニでですら入手困難だったりするのですが、今年はその手の増刊号を何故か大量に入荷する書店を見つけまして、何とか購入する事が出来ました。
 しかし、実際に読み始めてビックリしました。どの新人さんの作品も、申し訳無いがデキが酷い!(苦笑)
 この増刊には“ルーキートライアル”として、新人さんの描いた作品が20本掲載されているのですが、読んでて辛いと言ったらもう……。まず過半数の作品は絵がグダグダで、アマチュア級と言ったらアマチュアに失礼なレヴェルです。で、シナリオもシナリオで、普段このゼミで「こんな工夫の無いコテコテのお話が…」と言っているような作品ですら随分マシに見えてしまうという、(逆の意味で)物凄い事になっていました(汗)。全体的に言って、「赤マルジャンプ」が光り輝いて見えるくらいの水準…と申し上げれば大体の感じは判っていただけるでしょうか。
 ……なもので、駒木も読んでいる最中は「ひ〜、勘弁してくれー。こんなマンガに金払いたくねえぞー」などと心の中で悲鳴を上げておりました。いくら“仕事”とは言え、マンガを読むという事でここまで苦痛を感じなければならんのかと、そう思ってしまいました。

 ──ですが、物事諦めずに最後までやってみるもんです。全20本のラス前・19番目にとんでもない逸材が埋もれておりました。それがこの『河児(←「こうじ」と読みます)でした。プロ野球マンガで、低調なレヴェルの入団テストに参加した主人公がメジャー級の豪速球を披露して関係者の度肝を抜く…というシーンがありますが、図らずも駒木も、この作品と作者の四位さんに度肝を抜かれてしまいましたよ。

 まず。デビュー作だけあって、まだまだ線の力も弱く未完成な部分も多く残していますが、一応の水準はギリギリでクリアしています。そして何よりも、人間よりも老河童(主人公の育ての祖父が河童なんです)などの妖怪の方が達者に描けるという部分に強く惹かれます。こういう“武器”を持っているというのは、今後の活動の幅を大いに広げてくれる事でしょう。

 そして素晴らしいのがストーリーと設定でした。
 まず凄いのが「人間と妖怪が共棲している社会」という特殊な設定を僅か数ページで描写出来ている事。この世界観構築能力は明らかに新人の域を超えています。また、導入部分も極めて秀逸で、読み手をわずか数ページで作品世界に没入させる事が可能になっています。
 シナリオそのものは、家族愛をテーマにした比較的使い古されたストーリーラインなのですが、回想シーンの混ぜ方や台詞回し、更には『BLEACH』を思わせる高度な演出力がこれまた新人離れしており、全く“使い回し”感を感じさせません。
 問題点としては、世界観の描写に1つだけ大きなキズがある事(敢えて人間と妖怪が共棲する事になった理由が描かれていない)が挙げられるのですが、その部分を減点するにしても、それ以外のファクターで積み重ねた得点の方が遥かに勝っています。

 評価はA寄りA−。最近の“新人不況”の中で、とんでもない風雲児が出現しました。来年の四位さんの動向には、受講生の皆さんも是非ご注目を。


 ◎『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中

 そして最後は、受講生さんからのリクエストに応え、「仁川経済大学賞(グランプリ)」の“ワイルドカード”枠としてこの作品を。まさか当ゼミで(半ば形式上とはいえ)“手塚治虫”のクレジットが入った作品を紹介する事になるとは夢にも思いませんでしたが……。

 もう浦沢直樹さんの画力やストーリーテリング力に関しては、頭に“超”が付くくらいに有名で定評がありますので多言は避けますが、やはりこの作品でも浦沢さんの実力が遺憾なく発揮されています
 浦沢さんの凄い所というのは、ストーリーの進行と世界観の描写を同時に、しかも巧みにやってのける事。特に世界観の描写の大切さを心底理解しているのが強く伝わって来て、非常に好感が持てます。人間とロボットが完全に共棲している事だけでなく、そういう社会に潜むある種のイビツさまでが読み手に伝わる工夫が施されており、これはもう感服するのみですね。
 勿論、シナリオの出来も秀逸です。読み手が混乱しない程度に複雑という、絶妙のサジ加減なミステリーになっていますし、“原作:手塚治虫”という看板に臆する事無く100%“浦沢直樹色”を出し切っている度胸もナニゲに凄いですよね。

 惜しむらくは、ストーリーの進行が連載期間に比べてゆったり過ぎるという所でしょうか。浦沢直樹作品は単行本になった際の完成度が最優先されるらしいので仕方ないんですが、それにしても序盤の“布石”に時間を使い過ぎなような気がしないでもありません。
 時期的な問題もあって難しかったでしょうが、出来れば『20世紀少年』を一段落させてから始動させて欲しかったという思いがあります。
 それでも評価はを出さなくちゃ失礼でしょう。堂々たる今期グランプリ候補作です。

 
 ……というわけで、今期(02年12月〜03年11月)のレビューが全て出揃いました。レビューした作品の総数はなんと122本。よくもまぁ、これだけやって来たもんですね(苦笑)。
 さて、今年の「仁川経済大学コミックアワード」ですが、今回からは新たにギャグ作品を対象にした賞、

 ◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
 ◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞

 ……以上2つの部門賞を新設します。賞の概要については追って説明しますが、今後はストーリー作品とギャグ作品は、グランプリを除いて別々に審査される事になります。
 これにより各賞の“重み”が目減りする可能性もありますが、正直言ってギャグ作品とストーリー作品のクオリティを同列で比べるのは大変に困難ですので、ご理解を賜りたいと思っております。

 では、以下に各部門賞のノミネート資格保持作品、及び「仁川経済大学賞(グランプリ)」と「ラズベリーコミック賞」のノミネート作品の一覧を掲示します。
 なお、各部門賞においては、“ノミネート資格保持”という事で、ここに挙げる作品はまだ最終ノミネート作ではありません。「コミックアワード」の直前に“優秀作品賞”という形で最終ノミネート作品を発表する予定ですので、どうぞご承知置き下さい。

※各部門ノミネート(資格保持)作一覧※

仁川経済大学賞(グランプリ)
 …“グランプリ”という名の通り、この1年の間に当ゼミでレビューした作品の中で最も優秀な作品に送られる賞。
 ノミネート資格は、“ジャンプ&サンデー”の名の付く各部門賞の受賞作と、「ジャンプ」、「サンデー」両誌以外のレビュー対象作の中でA評価(但し、連載作品については最新に発表された評価)を獲得した作品。

●(ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞受賞作)
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行/「ビッグコミックオリジナル」連載中)
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中)

◆ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌で長編連載されたストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は対象作品の内、A−以上の評価(但し、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『武装錬金』作画:和月伸宏
  《以上、「週刊少年ジャンプ」連載》
『結界師』作画:田辺イエロウ
  《以上、「週刊少年サンデー」連載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された読み切り、または短期集中連載のストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は、長編作品賞と同じく評価A−以上。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『ヒカルの碁・特別番外編』作:ほったゆみ/画:小畑健
『オウタマイ』作画:梅尾光加
『プリティフェイス 番外編』作画:叶恭弘
『NOW AND ZEN』作画:加治佐修
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『美食王の到着』作画:藤田和日郎
『結界師(本誌掲載読切版)作画:田辺イエロウ
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志
『河児』作画:四位晴果
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された全ギャグ作品が対象。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表した読み切り・短期集中連載作品または初の長期連載作品が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『オウタマイ』作画:梅尾光加
  《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『結界師(週刊本誌読切版)作画:田辺イエロウ
『結界師』作画:田辺イエロウ
『河児』作画:四位晴果
  《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に連載または掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表したギャグ作品(初の長期連載作品含む)が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◎ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
…映画のアカデミー賞に対するゴールデンラズベリー賞をモチーフにした、最悪な作品を表彰する賞。対象作はレビュー対象にした全作品で、あらゆる意味において“最悪”(not最低)な作品を選出する。ただし、ノミネート及び審査基準は駒木ハヤトの独断。

『少年守護神』作画:東直輝/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之/「週刊少年ジャンプ」連載)
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦/「週刊少年サンデー」連載中)
『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『ツバサ』作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中)

 ……こうしてみると、今年の「ジャンプ」と「サンデー」の傾向がおぼろげながら見て取れて興味深いですね。
 今年の「コミックアワード」は12月20日、21日に実施予定です。どうぞお楽しみに。また、勿論次週も「現代マンガ時評」は実施しますので、そちらも宜しく。では。

 


 

2003年第92回講義
12月3日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・前半)

 いつの間にか師走です。まだ高校で非常勤講師をやってた去年の今頃には、まさか今年の12月時点でヤフーのモデム配ってるとは夢にも思いませんでしたが、事実は小説より奇なり。でも、どうせ小説より奇妙な現実なら、もっと良い現実が見たいんですが……。
 それはさておき、師走と言えば年末進行。連載をお持ちのマンガ家さんは、ちょうど今頃から地獄モードに突入でしょうか。しかもそういう最中に各出版社で謝恩会なんかが行われるから本当に始末が悪いですよね(笑)。どうして出版業界がそんな自縄自縛的な慣例を作り上げてしまったのか、素朴な疑問を抱いてしまうのですが……(苦笑)。

 さて、そんな中でもマイペースでお送りしております、今年の当講座。ゆったりとしたタイミングで今週分のゼミを始めたいと思います(申し訳無)。
 今週は第2回の「仁川経済大学コミックアワード」関連の事もやらなくてはなりませんので、前・後半に分けてお送りする事にします。今日の“前半”では「週刊少年ジャンプ」関連の情報・レビュー等を、週末にお送りする予定の“後半”では「週刊少年サンデー」関連の情報・チェックポイントと「コミックアワード」関連の企画をやる予定です。どうぞ宜しく。

 それでは、まず「ジャンプ」に関連した情報系の話題からお送りします。今週は03年下期「手塚賞」&「赤塚賞」の審査結果発表がありました。例によって受賞者と受賞作を紹介しておきましょう。

第66回手塚賞&第59回赤塚賞(03年下期)

 ☆手塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=1編
  ・『ダー!!! 〜便所の壁をブチ破れ〜』(=04年01号に掲載)
   吉田慎矢(18歳・島根)
 佳作=4編
 
 ・『ブレイブハート』
   滝沢いづみ(21歳・神奈川)
  ・『ヘンテコな』
   千坂圭太郎(18歳・京都)
  ・『MosquitoPanic』
   中西まちこ(18歳・京都)
  ・『I ディアー』
   黒木亮(21歳・北海道)
 最終候補=3編
  ・『警泥 ─ケイドロ─』
   内海謙一(21歳・兵庫)
  ・『突撃! ダダダ団』
   山瀬綾斗(26歳・東京)
  ・『electrify』
   舘原晴秋(23歳・宮城)

 ☆赤塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=1編
  ・『BULLET CATCHERS』
   夏生尚(23歳・神奈川)
 佳作=2編

  ・『夢泡釣団 〜ビートルズ編〜』
   やすべえ(21歳・埼玉)
  ・『みなしごひろしのプロレシアンドリーム〜入門編〜』
   水溜三太夫(24歳・東京)
 最終候補=5編
  ・『あふれてるぜLOVE』
   吉田覚(21歳・新潟)
  ・『THE 研修 ─ザ・けんしゅう─』
   清水雄介(21歳・東京)
  ・『モモヒキ革命児風少年シモモ』
   平野正臣(29歳・東京)
  ・『田舎ののの』
   日丸屋和良(18歳・福島)
  ・『忍者J』
   りゅーじ(27歳・静岡)

 ◎手塚賞準入選の吉田慎矢さん03年6月期「十二傑新人漫画賞」で最終候補
 ◎手塚賞佳作の滝沢いづみさん「月刊少年ジャンプ」02年9月増刊号に読み切りを発表。
 ◎手塚賞佳作の中西まちこさん01年下期&03年上期「手塚賞」で最終候補、01年12月期「天下一」で編集部特別賞を受賞
 ◎赤塚賞準入選の夏生尚さん02年上期「赤塚賞」で佳作。02年31号、03年35号で本誌に代原で読み切りを発表。
 
赤塚賞最終候補の平野正臣さんうすた京介さんのアシスタント。03年3月期「天下一漫画賞」に投稿歴アリ。
 
赤塚賞最終候補の日丸屋和良さん03年度上期「赤塚賞」で最終候補。

 「十二傑新人漫画賞」と比べて見劣りがしないようにするためか、今回から賞金が大幅アップした「手塚賞」&「赤塚賞」の両賞。ただし、応募作のレヴェルは「“再挑戦組”に支えられて何とか現状維持」…といったところでしょうか。
 ただ、この両賞が出身でヒット作(長期連載作品)を出した作家さんが長年出ていない現状(『手塚賞』の場合、同賞出身で最後の“勝ち組”が94年下期武井宏之さん。『赤塚賞』は98年上期村田雄介さん──但し、その3年前に月例賞で入賞済──が最後)を鑑みると、駒木個人的にはこの2つの賞、そろそろ潮時なのではないかという気もしているのですが……。特に「手塚賞」は「ストーリーキング」という後継の新人賞が確立された事ですし、何らかの策を講じないとせっかくの「手塚治虫」という看板が倒れてしまいそうです。
 多分いないでしょうが、もし受講生さんの中に関係者の方が混じっていらっしゃったら、どうか御一考をお願いしたいところでありますね。

 ……それでは、「ジャンプ」今週号分のレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は新連載1本、読み切り1本の計2本です。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年1号☆

 ◎新連載『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健

 「ジャンプ」の年末新連載シリーズ第1弾は、読み切りからの“昇格”となりました、少年誌では異色のサスペンスホラー作品・『DEATH NOTE』です。

 作者のプロフィールですが、まず原作の大場つぐみさんに関しましては、残念ながら全く詳細不明というのが現状です。ここ数年の「ジャンプ」系新人賞の受賞者リストにその名前は無く、Google等で検索してもこの作品に関する以外の所で名前は出て来ていません。
 通常「ジャンプ」では、その作家さんの“ジャンプデビュー”の際にはプロフィールを公開するのが常であり、それを考えると大場さんが新人マンガ家さんであるという“線”はまず消えます。となると、別分野での実績を残したクリエイターさんという事になるのですが、それなら著書などを介してネット上に名前が残っているはずで、どうにも不自然です。
 となると、この大場つぐみという方は、“有名作家(マンガ家or小説家)の別ペンネーム”と考えるのが最も自然なような気がします。例えば、『いちご100%』連載中の河下水希さんは、かつて桃栗みかん名義で少女マンガを描いていた事で有名ですが、同様の例は過去にも多数ありました。あくまでも推測の域を出ませんが、大場さんの場合もそのパターンなのではないでしょうか。
 ただ、今回は作画担当者付の原作ということで、正体探しをするにしても手がかりが非常に少ないのがアレですね。恐らくはご自身か業界関係者がリークするまでは、真相は闇の中…という事になりそうです。

 一方、作画担当の小畑健さんについては多言を要しませんね。『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ)で念願の大ヒット作を輩出したベテラン作家さんです。
 小畑さんは1985年下期の「手塚賞」で準入選受賞者ですから、キャリアは丸18年。この時期の増刊号掲載作家リストが散逸しているので正確なデビュー時期は確定出来ませんでしたが、本誌初登場は88年46号に掲載の読み切り『CYBORGじいちゃんG』で、一般的にはこれがデビュー作として認識されているようです。ちなみに、この時は土方茂というペンネームでした。
 そして翌89年22号から、この『CYBORGじいちゃんG』で連載デビューを果たしますが、残念ながら31回で終了。その後も原作付作品を中心に何度も読み切りや連載作品を発表しますが、いずれもヒットには至りませんでした。しかし、その卓越した画力は誰もが認めるところで、早くその実力相応のヒット作が出る事を望んでいたファンも少なからず存在していました。
 そんな小畑さんにとって念願の大ヒット作となったのが、先述した『ヒカルの碁』です。99年2・3合併号から中断を挟んで約4年半のロングランとなったこの作品は、連載開始間もなくから人気を集め、名実共に小畑さんの代表作と言える名作となりました。
 そして、『ヒカルの碁』終了後にも精力的な活動を続ける小畑さん、今回は読み切り発表を挟んでわずか半年での連載復帰となりました。果たしてこれが第2の代表作となるか……といったところでしょうか。

 ……さて、それでは『DEATH NOTE』の内容について述べてゆきましょう。

 に関しては何も口を挟む事はありません。というより、とても口を挟めません(苦笑)。この小畑さんの絵に関しては、「文句言うなら、お前が週刊ペースでこの絵を描いてみろ」という反論が成り立つような気さえします(笑)。

 次に、読み切り版では問題が見受けられたストーリー&設定ですが、こちらは格段に良くなっています

 基本的な世界観や設定そのものは読み切り版と変わりないのですが、主人公をアクの強いキャラクターに変更させた事で、一気にストーリーが良い方向へ転がりだしましたね。中途半端に天才的な頭脳と自意識過剰なプライドを持った“自称・優等生”が、心の中で飼っていた“闇”を短期間で膨張させる様がヒシヒシと伝わって来て(サスペンスホラーとして)非常に良い感じです。
 またこの“闇”の描写が非常に巧みなんですよね。何と言いますか、藤子・F・不二雄先生のSF短編を髣髴とさせるような、妙にリアルで生々しい人間の暗黒面が見事に描かれていて、大変に素晴らしいと思います。
 あと、脚本面もスムーズで良いですね。特に死神・リュークが心の中で言い放った「やっぱり…人間って…面白!」というセリフが効果抜群です。このセリフのお蔭で、読者は主人公に過度な感情移入をする事なく、客観的なスタンスを維持したまま作品を読み込めるのです。この主人公って変に生々しいですから、下手に感情移入すると自己嫌悪含みの不快感を抱いてしまう恐れがあるんです。それを回避できたというのは、非常に意義があるセリフだったと思いますよ。

 ただ惜しむらくは、その直後のラスト2ページ。ICPOの会議をインターネット中継で眺めている謎の人物…というシチュエーションにリアリティが無いため、それまでのリアルさの反動で急に白けてしまった所
 これは第2話以降の展開如何ですが、ここを発端にストーリーのクオリティが急降下する可能性もあり、未だ予断を許さない情勢と言えます。

 ……そういうわけで、今回時点の評価は保留。ただ、ラスト2ページに入るまでなら十分A評価に値する、極めてレヴェルの高い作品です。不安を抱きつつも期待して次回以降を読んでみたいと思います。


 ◎読み切り『ダー!!! 〜便所の壁をブチ破れ〜』作画:吉田慎矢

 今週の読み切りは、この号で結果が発表された「手塚賞」の準入選作が早速登場。受賞即本誌掲載という、新人作家さんにとって最高のスタートとなりました。
 作者の吉田慎矢さん現在18歳で現役高校生。勿論これがデビュー作となります。

 まずについてですが、これがデビュー作、しかも年齢が18歳という事を考えると、及第点は出せるのではないかと思います。動的表現や迫力のあるシーンなどの描写はソツなく出来ており、マンガ的表現の基礎能力は備わっていると判断して良さそうです。
 ただ、全体的な画力は未だ発展途上です。構図も凝り過ぎていて逆に見辛いシーンもあります。顔のアップやバストアップを不用意に多用しているのも、手抜きしているように見えて余り歓迎出来ませんね。

 次にストーリー&設定ですが、全体的なクオリティは別にして、いかにも新人賞を受賞しそうな、背伸びしていない素朴なお話ですね。ボクシングを題材にしたダメ主人公の成長ストーリーは、これまでにも無数に描かれて来ましたが、この作品もその前例を綺麗に踏襲したオーソドックスなシナリオです。
 逆に言えば新味が無いとも取れるのですが、冒険を捨てて完成度を取るという選択は、分相応で妥当だったんではないかと思います。この作品は結果的にデビュー作になってしまいましたが、執筆当時は“新人予備軍”の単なる習作原稿だったのですからね。

 「手塚賞」に限らず、この手の新人賞はどうしても“お山の大将と井の中の蛙たちの青臭い自己主張合戦”の趣となります。各地の“村一番レヴェル”の作家志望者たちが、「俺って凄いんだぜ」という自己アピールを作品の中に必要以上に込めてしまうからです。
 ですが、そんな「俺って凄い」も、プロである審査員の皆さんにとってみれば、ほとんどが“単なる勘違い”なわけでして(笑)、審査している内に大概ウザくなって来る事もあるとか無いとか。なので、そういう中にこういうサッパリした作品──悪く言えば陳腐な作品が混じっていると、その反動で必要以上に良く見えてしまうものなのだそうです。
 そういうわけで、今回は(プロの描いた作品としてなら内容的に指摘したい部分は山ほど有りますが)これで良いと思います。ただ、このクオリティをデビュー2作目に持って来られても、今度は読者が納得しないと思います。吉田さんにはここをゴールだと思わず、もっともっと精進してもらいたいですね。せっかく賞金が100万円も貰えたのですから、そのお金を資本にして良い作品を作り上げていって欲しいと思います。

 あと蛇足ながら、細かい部分について若干の苦言を。
 まず題名。いくら作品の内容に即したタイトルとは言え、「便所」は無いんじゃないでしょうか(苦笑)。「便所」という言葉が持つパワーというのは凄くて、どんな作品でもギャグマンガっぽく感じられてしまうんですよね。今回の場合はただ単に「壁をブチ破れ」でも良かったくらいだと思います。
 また、肝心のボクシングが、映画『ロッキー』ばりの“ボクシング風ドツき合い”に終始したのも残念でした。さすがにアゴへ“ベストパンチ”まともに喰らって立ち上がるってのは、人間業じゃありませんので。あと、最後のワン・ツー、右ストレートのはずが右フックにしか見えないのは気のせいでしょうか?

 評価はBとしておきましょう。とりあえず次回作で真価を問いたいと考えています。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントについて箇条書き形式で雑感。

 ・澤井啓夫さん…松屋で牛丼(牛めし)とめかぶ……。どうして「ジャンプ」作家さんって食生活がジャンクで必要以上に安上がりなんでしょうか(苦笑)。もうちょっと良いモン食いましょうよ。
 ・冨樫義博さん…で、こちらも(笑)。もうどうせなら、スタジオか自宅に専属のカレー専門料理人雇ったらどうですか。毎日「どっちの料理ショー」で出て来るような豪華カレー作ってもらって下さい。

 ◎『こちら葛飾区亀有公園前派出所』作画:秋元治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 何て言うか、外国のB級バラエティー番組で大阪が紹介されたらこんな感じになるんだろうなーと(笑)。細かい部分は勿論のこと明らかに違うんですが、根底に流れている精神みたいなものは妙に似ているような気もする…という感じでしょうか。
 ただ、大阪人というか近畿の人間は、別にあそこまで東京人を嫌ってないので安心して旅行しに来て下さい(笑)。

 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 捨てキャラに近い扱いかな…と思っていたナックルなんですが、また冨樫作品の脇役らしい面白いキャラになってますなー。「はずしたら俺死ぬぞこれオイ」とか「信じるぞコラァァ!!」とか、セリフも良い味出し過ぎ(笑)。
 しかもそこで終わらせずに、キッチリと話をもう一歩進めてしまうところが冨樫流なんですよね。(と、不特定多数の別の作家さんに無言のメッセージw)


 ……というわけで、前半分は以上。後半は週末の競馬学講義前に何とかする予定でいます。


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