「社会学講座」アーカイブ
※検索エンジンから来られた方は、トップページへどうぞ。
講義一覧
1/27(第85回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(1月第5週分・合同)
1/22(第84回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(1月第4週分・合同) 1/20(第83回) 人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(3) 1/16(第82回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(1月第3週分・合同) 1/11(第81回) 人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(2) 1/7(第80回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(1月第2週分・合同) 1/5(第79回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第5週/1月第1週分・合同) 1/2(第78回) 人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(1) |
2004年度第85回講義 |
||
現在「コミックアワード」の準備で大忙しの駒木研究室ですが、レギュラーの講義も落とせないという事で、とりあえずゼミを実施しておきます。 さて、今週では、通常のレビューとチェックポイントの他、一足先に「コミックアワード」部門賞の最終ノミネート作品を発表させて頂くことにしました。これは、今年の「コミックアワード」では、クオリティ面ではノミネートに全く問題ないものの、授賞の妥当性の面からノミネートを見送った方が賢明…という作品が複数ありまして、これは先に公表して事情を説明しておくべきかな…と思った次第であります。 ……そういうわけで、今週のゼミは通常よりボリューム多目でお送りします。ではまず、いつも通りのレギュラー企画からお送りしましょう。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(9号)に『征次郎の道』(作画:長友圭史)が掲載されます。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから(←今週、少し加筆してます)。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年8号☆ ◎読み切り『多摩川キングダム』(作画:風間克弥) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 ……何と言いますか、ギャグで笑わせる以前に所定のページ数を埋めるのに必死…という風に感じられてしまう作品でした。2本立て・37ページというのは如何にも酷だったような感じですね。 ●今回の評価 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ さて、先週から急展開で大注目だった『DEATH
NOTE』ですが……。 ……今週は個人的にはやや低調な号だった感じでしょうか。あ、でも『いちご100%』を最終ページまで読んでから3ページ素っ飛ばして、『HUNTER×HUNTER』のフェイタンぶち切れシーンに繋げて読むと、何だか知りませんが気持ちがスカッとしました(笑)。 ☆「週刊少年サンデー」2005年9号☆ ◎新連載『兄踏んじゃった』(作画:小笠原真) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 見たところ、正統派のボケ&ツッコミよりも、もっとシュール系ギャグの方が向いてそうな作風に思えますので、一度そういうギャグも試してもらいたいところです。「サンデー」はギャグ作品の短期打ち切りは滅多にありませんし、また、分かり易すぎるギャグがお好きな人が編集長から左遷された事ですし、色々試すだけの価値はあると思うのですけれどね。 ●現時点での評価 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻頭から嫌事を言いたくなる作品が4色カラーで登場してますが(笑)、「ジャンプ」に続いてあんまりネガティブな事を言い過ぎるとアレですのでパスします。同じ理由で短期集中連載作品や掲載順ケツから3番目の作品についても、苦言を啓上するのは次回以降という事で。 ……というわけで、今週は『いでじゅう!』をピックアップ。類稀なるギャグの才能を埋もれさせたまま、ヌルめの恋愛コメディを続けるのはモリタイシさん的にどうなんだろう? ……などと思いつつも、何気ない細かい仕草を描くことで心理描写までしてしまう卓越したセンスは、やっぱり素直に凄いんじゃないかと。 ──というわけで、今週のレギュラー企画は物理的な事情もありましたがアッサリめに留めさせてもらいました。 さて、喋るにしてもネタ無しでは喋れませんので、早速ノミネート作品を発表させて頂きます。どうぞご覧下さい。
──今回のノミネート作品選出は、純粋な作品のクオリティでは全く遜色無いものの、“授賞の妥当性”の観点から苦渋の選択を強いられたケースがありました。 特に困ったのが短編作品賞。この部門では、『絶対可憐チルドレン』と『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』というレビューの評価点上位2作品をノミネートから外すという事になりました。 まず『絶チル』に関しては、
……という3つの理由から、今回はノミネートを見送り、今春開始の長編連載でその真価を問う事にさせて頂きます。ただし、これだけの作品が2年連続で“無冠”というのも、それはそれで問題でもありますので、表彰式当日に何らかの形で特別表彰をしようと思っています。 また、『ムヒョ』についても『絶チル』で3番目に挙げたのと同じ理由をもって、今回は短編作品賞のノミネートを見送りました。ただし、新人作品賞については、西義之名義のソロデビュー作品である増刊読み切り版こそがこの賞に相応しいという事で、最終ノミネートに挙げさせてもらいます。この辺は我ながらかなりファジーな判断なのですが、エエ加減な賞らしい微妙な匙加減としてご容赦願いたいと思います。 あと、新人ギャグ作品賞についてですが、『無敵鉄姫スピンちゃん』は、プロトタイプ短編である『スピンちゃん試作型』が前年度に同部門を受賞していますし、同一作家が2年連続で“新人賞”を受賞するのもアレだと思いますのでノミネートから外しました。 ……というわけで、「コミックアワード」最終ノミネート作品の“発表会”をお届けしました。また受賞作予想や、“極私的受賞作”などを聞かせて頂けると幸いです。では、週明けのコミックアワード当日にお会いしましょう。 |
2004年度第84回講義 |
||
コンディションも良いし、週2回講義でも大丈夫だ…などとタカを括っていましたらこの始末。「サンデー」だけならまだしも、「ジャンプ」のレビューを土曜日深夜にやってるようじゃいけません。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(8号)に『多摩川キングダム』(作画:風間克弥)が掲載されます。 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(9号)より『兄ふんじゃった!』(作画:小笠原真)が新連載となります。 ★新人賞の結果に関する情報
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ギャグ作品が月例賞で最終候補の壁を突破するのは難しいのですが、今回は「十二傑」始まって以来初の十二傑賞受賞のギャグ作品が出ましたね。ただ、選評を見る限りでは、他の作品の水準もそれほど高くなかったようではありますが……。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから(←今週、少し加筆してます)。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年7号☆ ◎読み切り『おれたちのバカ殿』(作画:ポンセ前田) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『モグリ陰陽師 SAYMAY!』(作画:大石浩二) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 ただ、まだ1つ1つのギャグの練りが今一つ足りない印象で、不用意な“凡打”がまま見受けられました。特にツッコミのセリフが不発気味のまま終わる事が多く、この辺が今後の課題になるのではないでしょうか。 ●今回の評価
今週はやはり急展開の『DEATH
NOTE』でしょうね。この作品の製作手法で「計画通り」とやるのは苦笑を禁じ得ませんが、見事な(良い意味での)ハッタリの効かせ方です。ライトの人格歪んだ顔も見事ですね。さすが小畑さんです。 あと、今週号では『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』も素晴らしいデキでした。ギリギリまで無駄な部分を削ぎ落とし、説明と描写を併用してページ数の浪費を防ぎ……といった具合で、ありとあらゆる方法を駆使して内容の濃さを追求し、それを見事に成功させています。 ☆「週刊少年サンデー」2005年8号☆ ◎新連載第3回『最強! あおい坂高校野球部』(作画:田中モトユキ) ●絵についての所見(第1回時点からの比較) ●ストーリー&設定についての所見(第1回時点からの比較) ただ、手放しで褒められない部分もあります。 ●現時点での評価 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 『俺様は?』が今週で最終回となりました。最後の最後で作者本人が「本当に最後までよく分かりませんでした」と発言しましたが、確かに2年も続いた割には掴み所の見出せない微妙なテイストの作品だったような気がしますね。 さて、連載作品の中でまず目に付いたのは、“メイド國生”という、もしイラクに彼女がいたならば、アメリカが宣戦布告する理由として十分過ぎる正当性が確保出来たと思われる超ド級の大量破壊兵器が登場した『こわしや我聞』ですね。 最後に巻末付近から『道士郎でござる』をピックアップ。 ……といったところで今日はこれまで。 |
2004年度第83回講義 |
タイトルとは裏腹に、未だコミケ前日の早朝で停滞している旅行記のお時間がやって参りました。前回などは、駒木の旅行記本文にではなく、順子ちゃんの余話に直リンクを張られる始末(笑)。いよいよこのデタラメな企画、主客も本末も何もかもが転倒し始めたようであります。 築地は大雑把に言って“場内”と“場外”の2エリアに分かれる。主に業務用の食材卸売をしている、いわゆる「築地市場」が“場内”で、そこに隣接して小売の店舗が所狭しと並ぶ商店街が“場外”である。 ……そんな東京23区内に存在する異次元空間・築地に、駒木は足を踏み入れた。“場外”は既に全ての店が営業中で、おせち料理の材料を買い求める地元の人や駒木のような観光客で道はかなりの混雑具合である。下調べした時に得た情報によると、年末は築地が最も混雑する時期とのこと。確かになるほど、と肯けるだけの人通りがある。 さて、時間を相当持て余している駒木はシラミ潰しに“場外”を歩き回っていく。しかし気軽に1個単位で買い食い出来るような店はほとんどなく、本格的な食料品店ばかりなので少々ガッカリ。数少ない“その手”の店として有名なテリー伊藤の実家の玉子焼き屋は、何と朝6時半の時点で完売御礼だった。それにしても、始発で駆けつけないと買えない玉子焼きとは凄い話だ。 30分ほど道すがらのコンビニで購入した「週刊プロレス」最新号を眺めつつ休息を摂った後、いよいよ“場内”へ向けて出発する。“場内”は商店街のような“場外”とは違って原則的に業者エリアなので、その内と外は明確に区切りがされている。 冬至を過ぎたばかりの寝坊気味の太陽も元気な姿を現す時間帯で、食堂エリアには豪華な朝食を求める一般客の姿が多く見受けられる。いくつかの人気店の前には10〜20人程度の行列が発生しており、寒空に放置された人たちは恨めしそうな顔でガラス越しに先客が温かい味噌汁をすすっている様子を眺めていた。 コミケ会場以外では絶対に並ばない ……駒木は歩く事は(脂肪が燃えるので)嫌いじゃないが、並ぶのは本質的に大嫌いという典型的な関西人である。ただ、そんな駒木でも、1年前の冬、そしてこの夏と東京の至る所で長時間の行列待機に甘んじて来た。が、もうそろそろウンザリだ。 盆が卓上に置かれるや、駒木は猛烈な“美味そさ感”に誘われて一気に天ぷらへ齧り付いた。たちまち香ばしさと旨味が口内に溢れ出して来る。それなのに脂っこさはほとんど感じられず、いくら食べても飽きが来ない。これは本当に美味いと一心不乱に芝海老と穴子を胃袋に葬り去っていると、気が付けば完食していた。時間にして僅か10分強の出来事である。 ──こうして、今回の弾丸旅行第一の目的をクリアした駒木は、早くも雰囲気的には黄昏時を迎えつつある築地を後にして、再び銀座へ向けて歩き出した。しばらく行くと、風景はあっという間に無機質なビル街だ。 |
2004年度第82回講義 |
||||
今週は「ジャンプ」が合併号休みで、「サンデー」もレビュー対象作が1本のみ──しかも、また後でお話しますが、その1本もイレギュラーな事態に──と寂しいラインナップ。そこで今回のゼミは、このタイミングを有効的に活用いたしまして、これまで出来ないでいた「コミックアワード」関連の企画を色々と済ませてしまいたいと思います。 ……それでは、本日のゼミを始めます。最初に「サンデー」関連の内容を、その後に特別企画へをお送りします。それでは最後までどうか何卒。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 今週は新連載と読み切りに関する告知はありませんでした。 ★新人賞の結果に関する情報
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ◎佳作のクリスタルな洋介さん…04年期「爆笑王決定戦」で最終候補 ……前期(04年8月期)に続いて今回も入選作が出た他、多数の作品が入賞する大豊作となったようですね。
※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年サンデー」2005年7号☆ ◎短期集中連載第1回『あやかし堂のホウライ』(作画:金田達也《原案協力:藤田和日郎》) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 なんと内容の大半が増刊版第1回と同じ! ページ数の都合か妖怪とのバトルシーンが次回に回されていて、替わりにアヤカとホウライの擬似バトルが付け加えられていますが、他の部分は丸写しに近い内容に……。 まぁそういうわけでして、こちらに関しても今回改めて申し上げるべき点は殆ど無しという事になってしまいます。ただ、先程から申し上げているように、ヤマ場のバトルシーンが無い分だけ、個人的には増刊版に比べると物足りない印象がありました。 ●現時点での評価 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週は今春開始となる『MÄR(メル)』のアニメの製作発表告知がありました。どうも今春からは昨年連載終了した『うえきの法則』もアニメ化されるようで、こう言っちゃアレですが、また微妙なポジションの作品ばかりアニメになるなぁ…と。 ……さて、話を連載作品の方へ。 『犬夜叉』は久々のラブコメ・インターミッション。人物の表情といい、小気味良いテンポといい、さすがはラブコメ作家の“真祖”高橋留美子女史。今回は圧巻の内容でございました。 ──さて、これで“レギュラー枠”の内容は終了。冒頭で申し上げた通り、これより“読書メモ”枠内で特別企画をお送りします。 ◇駒木博士の読書メモ(1月第3週)◇ では、第3回「仁川経済大学コミックアワード」関連の特別企画に移らせて頂きます。 まずはグランプリ候補の“ワイルドカード”枠ノミネートにあたり、受講生の皆さんから頂いた推薦作品の選考結果について、発表させて頂きます。
……この結果を受けまして、駒木は12月末から1月上旬にかけ、これらの“優先枠”3作品について既刊の単行本を精読。ノミネートにあたっての“審査”を実施致しました。また、これと併せ、推薦1票の作品につきましても“参考作品”として、時間の許す限り精読させて頂きました。 一方、残りの“優先枠”2作品については、それぞれ高く評価出来るポイントがあるものの、若干のマイナス要素も見受けられました。 ノミネート作品選出にあたっては、皆さんから多数の推薦を頂いた事もあり、当初は2〜3作品程度のノミネートを想定しておりました。しかし『おおきく──』は、駒木個人の評価だけでなく、受講生さんからの推薦投票においても頭一つ以上抜きん出た作品で、結果として他の候補作とは明らかに一線を画する存在になってしまいました。 ──ではここで改めまして、「コミックアワード」のグランプリへのノミネートが決定した『おおきく振りかぶって』のレビューをお送りします。単行本2巻収録分までの内容についてという事で、ひょっとすると「アフタヌーン」読者の方の認識とはギャップがあるかも知れませんが、とりあえず今回はここまででご勘弁を。 ◎『おおきく振りかぶって』(作画:ひぐちアサ/月刊「アフタヌーン」連載中) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 まず特筆すべきは、やはり登場人物たちの多彩なキャラクター設定でしょう。それもただ性格を描くだけでなく、その性格にシンクロした行動を、更にその行動にシンクロさせた重厚なエピソードを巧みに組み上げています。キャラクター主導でありながら、決してストーリーがなおざりになっていないという点には大変好感が持てます。 しかし、もっと凄いのが試合シーン。とにかく“盛り上がるバトル”の必要条件と言える要素がこれでもか、これでもか、と盛り込まれています。 今後は月刊連載というページ数が限定された条件の中で甲子園予選を描いてゆくという難問が待ち構えていますが、是非とも現状のクオリティを維持したまま連載を全うしてもらいたいものです。 ●現時点の評価 それではまずは、「ジャンプ」系作品から。評価に変更の無い作品については解説を割愛させてもらいます。 ◎『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健) アドリブに次ぐアドリブによって、その場その場でストーリーを積み重ねていく…という極めてリスキーな手法で描かれているこの作品。大局観を欠いたストーリー展開によってシナリオの重厚さを欠いた場面も見受けられ、その分弱含みの材料も多い作品ではあります。 ◎『銀魂』(作画:空知英秋) ◎『スティール・ボール・ラン』(作画:荒木飛呂彦) ◎『未確認生物ゲドー』(作画:岡野剛) 連載第3回時点では、一話完結型のストーリーを手堅くまとめる技術と高い画力を考慮してB+評価としましたが、ここ最近のストーリーの迷走ぶりは目に余るものがあり、今回を機に下方修正する事となりました。 ◎『家庭教師ヒットマン REBORN!』(作画:天野明) 連載第3回時点のレビューでは、主人公がアイテムやサブキャラに支えられながら1つの目標を達成するべく奮闘するという、“『タルるーと』路線”の作品として扱い、その上で厳しい評価を下しました。しかし、直後からこの作品は、キャラクター超重視型の一話完結型コメディ路線に大きくテコ入れされ、B−評価を下した根拠が解消されてしまいました。 ◎『D.Gray−man』(作画:星野桂) 第3回時点では、難解な設定提示の連発と余りにもぎこちないストーリー展開のために“前途多難”という事で厳しい暫定評価を下しました。しかしその後は微妙にキャラ重視に路線を変更して読者の興味を繋ぎつつ、時間をかけて設定の難解さを解きほぐしていって、何とか上手く軌道に乗せる事が出来たようです。 ◎『Wāqwāq』(作画:藤崎竜) 掲載順(人気)降下以後、まるで“投了”のタイミングを探っているかのような中身の薄いバトルの連続に陥り、クオリティの下げ止まりが見えません。長期連載が実現して軌道に乗った『D.Gray−man』とまさに好対照な成り行きと言えるでしょう。商業誌ならではの悲劇ですね。 ※『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』(作画:西義之)に関しては、連載開始間もない(04年53号開始)ため、連載版に限り特例として05年度作品の扱いとします。よって、今回では評価の見直しは行いません。 ……では、次に「サンデー」系連載作品についても評価の見直しをしておきましょう。 ◎『こわしや我聞』(作画:藤木俊) ◎『思春期刑事ミノル小林』(作画:水口尚樹) ◎『道士郎でござる』(作画:西森博之) ◎『クロザクロ』(作画:夏目義徳) 恐らくご本人が見ているであろう前で気が引けますが(笑)、今回下方修正の対象となりました。登場人物のキャラクターの弱さ(奇抜な外見や行動ではなく、内面描写が欠けているという部分で)と迷走気味のストーリーを勘案すると、減点材料の多さ故に厳しい評価を下さざるを得ません。 なお、この作品を他の評価B作品と同等と扱うのに疑問を抱かれる方もいらっしゃるでしょうが、この作品に限らず、「低い基礎点でほぼ満点の評価B」と「高い基礎点から大きく減点されて評価B」とでは同じ評価でも意味合いが違って来ます。作品の7段階評価については、その辺の解釈もどうか適切にと、皆さんにお願い申し上げます。 ◎『東遊記』(作画:酒井ようへい) 同人版では新評価Bとしてますが、脱稿後の展開も考慮して更に下方修正しました。 ◎『ハヤテのごとく!』(作画:畑健二郎)
各部門賞につきましては、有資格作品の中からクオリティの充実度や授賞の妥当性などの観点から非公開の予備審査を行い、表彰式前に改めてノミネート作品を発表します。 ──さて、かなりの長丁場になりましたが、これで今週の講義を終わります。 |
2004年度第81回講義 |
|
◎前回までのレジュメはこちらから→第1回 年末の旅行記の2回目をお送りします。 それでは、今回は28日の午前5時過ぎ、JR新橋駅前からスタートです。レポート文中においては文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。 ◎2日日(12月28日)《承前》 夜も明けきらぬ早朝の新橋駅前へ降り立った駒木。しかしこの時間帯から見ても判るように、新橋自体には全く用は無い。ここから移動を開始するのである。 これから駒木が向かう場所は築地市場。そう、東京近郊の水産物を扱う一大卸売市場である。地元の人間からすれば意外すぎる事実だが、この市場は銀座のビル街からちょっとだけ外れた所に存在しているのだ。
……と、そういうわけで、駒木は新橋駅から一路、築地市場へと向かう。一応の目的は市場内の食堂街で朝メシを食う事だが、ハッキリ言ってしまえば単なる暇潰しである。 新橋駅から築地市場までは地下鉄で細かい乗り継ぎをすれば楽に行けるのだが、今回は徒歩で向かう。目的の1つが「時間を潰す」なのだから、所要時間を短縮して楽をするのは逆に愚策なのだ。 そういうわけで、「旅してる」という実感を得るために夜明け前の北風吹きすさぶ新橋周辺を築地方面へ向かって歩く。余りのクソ寒さに文字では表現できない、“ウ”の字に何か変な記号を付けたような唸り声を上げながら、とにかく歩く。 そして、「本当にこの道で合ってるのか?」…と、極度の方向音痴の自分に自信が持てなくなった頃、明らかにこれまでの“眠る街”とは雰囲気が違って来ている事に気が付いた。突然目の前を、変則ギアもカゴも子供を乗せる補助イスも付いていない、やたら重そうで頑丈そうな自転車がイカついオヤジを乗せて横切って行った。通行人と通行人の間をブレーキもかけずにすり抜けて行く。「お?」…と驚く間もなく、今度は原付バイクと荷車が合体したような小型特殊自動車が、いくつも木箱を載せた状態で車道・歩道お構いなく縦横無尽に駆け抜けていった。運転者のくわえタバコが勇ましい。 そう、ここが築地。オフィス街に隣接しながら独特のオーラを発する、世にも不思議な町がそこにあった。(次回へ続く) |
2004年度第80回講義 |
学校や企業の年末年始休みも終わり、受講生さんの数も戻って来たみたいですね。どのウェブサイトでも大なり小なりそうなんでしょうが、ウチはアクセス解析すると中小のプロバイダーよりも大手企業や大学からのアクセスの方が多かったりする程ですので、盆暮れ正月前後は受講生数の変動が激しくて少々ビビります(笑)。 ……というわけで、今日も年明け発売の「ジャンプ」「サンデー」のレビューで着実に日本を駄目にしていきたいと思います。どうか何卒。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(7号)に『モグリ陰陽師SAYMAY!』(作画:大石浩二)が掲載されます。 ◎「週刊少年ジャンプ」では次号(7号)に『オレたちのバカ殿』(作画:ポンセ前田)が掲載されます。 ◎「週刊少年サンデ−」では次号(7号)より『あやかし堂のホウライ』(原案協力:藤田和日郎/作画:金田達也)が7回の予定で短期集中連載されます。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから(←今週、少し加筆してます)。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年5・6合併号☆ ◎読み切り『スベルヲイトワズ』(作画:森田まさのり) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 ただ、この作品の厳しい所は、そんな脚本やストーリーの完成度だけでなく、作中に出て来るハガキ職人のネタや漫才と言ったギャグの質についても非常に高い水準を求められる事。しかも“作中で「笑える」という事になっているギャグ”は笑えるように、“作中で「寒い」という事になっているギャグ”は寒くなければならないという、絶妙の匙加減が求められます。 それともう1点、キャラクター設定について。限られたページ数の中でソツなく主要登場人物のキャラを描写出来ているのは素晴らしいのですが、主人公はもうちょっと読み手が感情移入出来るようなキャラクターでも良かったかも知れませんね。 ●今回の評価 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 時間が無いので今日は軽く。 外伝が最終回を迎えた『NARUTO』。さすが「ジャンプ」の準看板だけあって、しっかりと最後まで読ませてくれました。 そして珍しく1つのエピソードを引っ張っていた『銀魂』も、銀さん記憶喪失回復で一段落。しかし、いくらギャグ色の強い作品でも、あんな御都合主義なストーリー展開だったら普通は辟易するもんですが、それでもキッチリ読ませられてしまうというのは、“お約束”の使い方と脚本が抜群に上手いからなんでしょうね。 ☆「週刊少年サンデー」2005年6号☆ ◎新連載『最強! あおい坂高校野球部』(作画:田中モトユキ) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ただ、そうは言ってもまだ連載第1回ですから、今後時間をかけて登場人物のキャラクターを綿密に描き、着実に“布石”を打ってゆけば、早い段階で巻き返す事も可能でしょう。なので今はしばらく“経過観察”を続けたいと思います。 ●現時点での評価 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 時間の都合で今週は大きな動きのあった『いでじゅう!』だけ。 ──といったところで今週はここまで。来週は「ジャンプ」が休みなので、随分と遅れ気味だった04年度開始連載作品の評価修正と、「コミックアワード」“ワイルドカード枠”の推薦作品発表が出来ると思います。それでは。 |
2004年度第79回講義 |
12月30日のコミケット67におきましては、駒木研究室出展のスペースに多数の受講生さんにご来場&「『現代マンガ時評』04年度総集編」のご購入をして頂き、誠に有難うございました。この場を借り、改めて御礼申し上げます。 さて、今日は旅行等のために実施が遅れておりました、04年末発売の「赤マルジャンプ」05年冬号・全作品レビューをお送りさせて頂きます。例によって週刊本誌連載作品の番外編や企画モノは対象外とし、作品レビューにつきましても、通常より若干簡略化したものにするつもりです。そうは言っても、始めたら長話になるでしょうが(笑)。 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ◆「赤マルジャンプ」05年冬号レビュー◆ ◎読み切り『Luck Stealer −ラックスティーラー−』(作画:かずはじめ) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 あと気になった点としては、今回は脚本力のあるかずさんにしては説明的なセリフが目立ったところと、主役格の1人である恵太少年の扱い方がややなおざりになっていた点でしょうか。結果的に恵太は何もしないままタナボタ式で助けられた形になっており、作品全体のテーマである「正しい事をし続けていれば奇跡が起こる。幸せになれる」との不整合が起きてしまいました。これはシナリオの完成度の面で減点材料にせざるを得ません。 全体的に見れば、短編巧者のかずさんにしては随分とキズの多い作品で、10年来の読者としては残念でありました。 ●今回の評価 ◎読み切り『大泥棒ポルタ』(作画:北嶋一喜) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 作者サイドの「凝った面白い話を作ってやろう!」…という意気込みは確かに感じられるのですが、残念ながら今回に限っては空回りに終わってしまったように思います。 ●今回の評価 ◎読み切り『ガランス』(作画:田畠裕基) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 とはいえ、この作品は課題の方も山積みで、全体的なクオリティからすれば、かなり低い水準に留まっていると言わざるを得ません。 ●今回の評価 ◎読み切り『生徒兵器上本』(作画:吉原薫比古) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 あと、今回気になって仕方なかったのが、コマ割りに対する無頓着さです。小さいコマと大きいコマの使い分けが酷く適当ですし、前フリからページを跨いでオチに持っていく…というテクニックも見られないまま。理詰めで笑いを誘う技術に乏しい感じで、これでは正直言って先が思いやられます。 ●今回の評価 ◎読み切り『ナツキン』(作画:本名健二) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『レッサーパンダ・パペットショー』(作画:篠原健太) ●作者略歴 ●絵についての所見 ……あとこれは完全に評価外の私見ですが、口を大きく開けた表情というのは必要以上に下品な印象を与えてしまうので、あんまり乱発しない方が良いと思うのですが、どんなもんでしょうか。 ●ストーリー・設定についての所見 ただ、惜しむらくは中盤でストーリー展開がかなりダレてしまった事。火葬場までの道中や2回に及ぶ不良との絡みはもうちょっと内容をスッキリさせる事が出来たのではないでしょうか? その分浮いたページでもっと演出に力を入れたり、ラストシーンでもう少し盛り上げたりすれば、もっと良くなったと思うのですが……。 最後にラストシーンで種明かしされるアキラに関するビジュアルトリックですが、この完成度もなかなか見事でした。伏線提示と処理に関するテクニックも非凡なモノを感じさせてくれます。 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー・設定についての所見 また、これは作品内でセルフツッコミが入っているのですが、主人公の「小さな危険から逃げながら大きな危険を冒す」という行動パターンはやはり矛盾していますよね。名工オーケンの剣を奪い返すのは構わないのですが、それなら目先の危険からも逃げちゃ駄目でしょう。 そしてもう1つ、ヒロインと敵役のキャラ設定の練りこみが随分と甘かったのも気になった点です。主人公も含めて、登場人物がストーリーを成立させるための記号に留まっている感が否めません。 ……と、欠点ばかり述べる結果になりましたが、岸本さん直伝の構成・演出力にはかなり見所がありました。キャラクターとストーリーに恵まれれば、この長所はもっともっと活きて来るでしょう。 ●今回の評価 ◎読み切り『WONDER HEAD』(作画:新井友規) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『紅熛 -クレナイノヒョウ-』(作画:及川友高) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ただ惜しいのは、主人公・ポロンがシナリオの中では“お客さん”的なポジションに終始し、エピソードの中で浮き気味になってしまった所です。せっかくの回想シーンも挿入のタイミングがいかにも取って付けたような感じで、アンバランスな印象を受けました。もうちょっとポロンを上手く揉め事に巻き込む方法が無かったものでしょうか。 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『CRUSH』(作画:松本佑介) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 ●今回の評価 ※総評…A−以上の評価はゼロということで、開講以来の3年では一、二を争う大不作という事になりました。非常に残念です。 ……という事で、やっと終わりました。でも、これからすぐに年明け合併号のレビューをやらなくちゃいけないんですよね。あー、分身の術が使えたらなぁ……。 |
2004年度第78回講義 |
今年最初の講義は前年に続き、年末の弾丸旅行レポートとなりました。当初は「現代マンガ時評」の予定だったのですが、実は旅行と「赤マル」の発売日が重なってしまって作品チェックが遅れに遅れ、まだゼミが実施出来る状況じゃなかったりするのですよ。 ……まぁそういうわけで、今日は鮮度の高い題材を使った講義でご機嫌を伺おうかと思います。例によって遅々とした進行になるかと思いますが、どうぞ気長にお付き合い下さい。ちょうど、春休みまでには終わるんじゃないでしょうか(笑)。 それでは、27日夜の自宅出発から話をスタートさせます。レポート文中においては、いつも通り文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。 ◎初日(12月27日) 19時過ぎ、自宅を出発。もう少し余裕を持って家を出るつもりだったのだが、旅行先に関する調べ物や何やらでやたらと時間を取られてしまった。 ……まぁどうでもいい話はさておき、念入りに荷物チェックを終えて出発である。背中にはバックパック、肩には例によって仕事・レジャー兼用の肩掛けカバン。詰め込めばバックパック1つに入るのだが、こうしておくと東京では不急不要の品物をバックパックに詰めて預け、肩掛けカバン1つで街をブラつく事が出来るという寸法だ。 最寄の駅まで徒歩、そこから神戸市営地下鉄で三ノ宮駅へ。JRの改札で「青春18きっぷ」に27日付のスタンプで入鋏してもらい、駅構内の売店で缶チューハイ2本を購入。いつもなら1本で止めとくのだが、今晩乗る夜行では少々呑み過ぎてトイレが近くなっても支障の無いように通路側の座席を確保してあったりする。こういう細かい所で抜かり無くやるのが、旅行を快適に進める秘訣でもある。 会計を済ました後、コンビニ内でちょっとだけ立ち読みをして時間を潰して大垣駅に戻ると、間もなくして列車がホームに入線して来た。繁忙期限定の臨時便・「ムーンライトながら92号」だ。 23時00分、定刻通り列車は出発。名古屋まで乗車率は6〜7割程度で車内は閑散としており、ストレスの溜まらない状況で、早速酒をあおる。肴はコンビニで仕入れたビーフジャーキー。高タンパク低カロリーで食べ切るまで結構時間が保つので、これまた最近のお気に入りである。 ◎2日日(12月28日) それからの1時間余りは何事も無く、4時38分に品川着。東海道線から京浜東北線のホームへ移動し、横浜方面の電車に乗り、常宿「アワーズイン阪急」のある大井町駅へ。ホテルのフロントで当日宿泊予定者の荷物一時預かりサービスを利用する。ただ、この時間にノーモーションでフロントへ突撃すると、かなり怪訝な顔をされるので初心者にはお薦め出来ない。 そして午前5時過ぎ、新橋駅着。朝夕にはサラリーマンで賑わうこの駅も、今はさすがに人通りもまばら。冬至を過ぎて間もない季節とあって、空は未だ夜の闇である。 |