「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

6/30(番外編) 競馬学概論「駒木博士のHorse racing baton」
6/25(第17回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第4週分)
6/19(第16回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第3週分)
6/11(第15回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第2週分)
6/4(第14回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第5週/6月第1週分)
6/3(第13回) 
人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(8)

 

番外編
6月30日(木) 競馬学概論
「駒木博士のHorse racing baton」

 今日は本格復活前のリハビリミニ企画ということで、何故かプライベートで運営しているボクシング観戦記用ブログに回って来た「Horse racing baton」(最近ブログ界隈で流行りの、Musical Batonの競馬版)を、こちらにて公開してみることにします。
 最近からの受講生さんには唐突な感じがするでしょうけど、そもそも当講座は競馬学がメインですからね。たまにはこんなのも良いんじゃないかということで。


1.ブックマーク、ソーシャルブックマークなどにおける競馬関連サイトの割合は?

 えー、いきなり盛り下がってしまいますが、実は殆どゼロです(笑)。競馬情報サイトとしては「PURE GOLD」さんの競馬ニュースくらいで、あとはJRAの電話投票関連サイトだけですねぇ。
 競馬情報についてはアナログ派と言いますか、「週刊競馬ブック」と当日版の競馬新聞だけで済ませてしまいます。データ等の調べたい事は、その都度Google検索にかけてしまいますし、予想する上では情報過多に陥るのが嫌なので、敢えて情報サイトを巡回しようとか思いません。

2.最後に勝った馬券(収支ではなく、精神的に「勝った」と思えた馬券)

 今年に入ってからはG1で気の抜けた馬券以外買わず、全く“勝負”をしていないので、記憶は昨年まで遡る事になります。10月3日の阪神最終レース、3連単71.0倍を4点で的中というのが、一番条件に当てはまる馬券でしょうか。
 これが重賞レースになると、やはり昨年の、馬単45.1倍をサニングデール1着3点流しで的中させた2月末の阪急杯にまで遡ります……っていうか遡り過ぎ。我ながら、『武装錬金』の犬飼並に負け犬街道まっしぐらだと思います。博才無さ過ぎ。

3.特に思い入れのある馬5頭

 ……こうして思い返してみると、どうしても競馬ファン暦の浅い時代の馬に愛着が沸いてるんですよね。

 ●ミホノブルボン
 記念すべき、マイファーストフェイバリットホース。ノーザンコンダクトを完膚なきまでに叩きのめしたスプリングS、ただ淡々と周回するだけで圧勝してしまった日本ダービー、そして未だに悔しい菊花賞。駒木に競馬の醍醐味と儚さを教えてくれた馬です。

 ●ビワハヤヒデ
 恐らく日本競馬史上、最も理不尽な嫌われ方をした最強馬の1頭。今じゃ思い出話にも上らない不遇の極み。弟がヒマワリなら、兄貴は月見草か。ああ、なるほど、この馬は競馬界の野村克也だったんですね。

 ●ナリタブライアン
 でもやっぱり弟も好きだったりするのです(笑)。ただ、無敵の三冠馬時代よりも、能力減退の隠し切れない復帰後の姿が印象的。
 生観戦で網膜と脳裏に焼き付けた、あの伝説の阪神大賞典は勿論、“格”という理論的に説明不能な底力だけで専業スプリンター相手に4着に食い込んだ高松宮杯も決して忘れられないレースですね。

 ●ケイエスヨシゼン
 兵庫県公営競馬が誇る、史上2頭目にして最後のアングロアラブ三冠馬です。兵庫のアラブ馬としては、他にフェイトスター、ヒカサクイーン、サンバコールなども印象深いですが、やはり最上位はこの馬。
 ただ、華やかなキャリアを築きながらも、晩年は不遇。アラブ馬市場の崩壊で種牡馬になれる見込みが全く無く、能力的には峠を過ぎて麓まで降りてしまうほど衰えても、なかなか引退させてもらえなかったんですよね。盛大な引退式を開いてもらえたのが、せめてもの救いでしたが……。

 ●シルクスプレンダー
 一口馬主(クラブ会員)として最初にシェアした馬。クラブにも半ば見放されたような二流血統ながら、新馬戦を勝ち、函館3歳S(当時)では4着。旧4歳になってからは条件戦を勝ち上がって第1回の秋華賞に出走、17着に終わるも堂々とハナを切ってレースを引っ張ってくれました。この時のレースビデオは今でも宝物です。
 しかしその翌年、北海道シリーズでレース中に骨折・予後不良(安楽死処分)。「人知れず食肉として売られるより、死んだ時と場所が判っている分だけ幸せだ」と、無理矢理に自分を納得させたのを覚えています。
 最近は足が遠のいていますが、競馬場に行った時には馬頭観音へお参りに行って、彼女の冥福を祈る事にしています。

 ──さて、ここで本当なら次に回答してくれそうな人にバトンを渡さなくちゃいけないんですが、公の場で一部の受講生さんを特別扱いしたくないので、ここではパス。また後でmixiの中ででも、競馬に関心のある人にコッソリとバトンを渡すことにします(笑)。

 それでは、今日のところはこれぐらいで。また明日か明後日か、今度は「現代マンガ時評」でお会いしましょう。

 


 

2005年度第17回講義
6月25日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(6月第4週分)

 どうもご無沙汰しておりました。金曜日の仕事終わり、『げんしけん』特装版を買うために、疲れ果てた体を引きずって近場(職場からクルマで30分圏内)の本屋を巡回。見事なまでに空振り三振を喫し、スゴスゴと家に帰った駒木でございます。
 まったく、わざわざ数分のために駐車料金払ってまでショッピングセンター内の大型書店に乗り込んだんですよ、こっちは。そうしたら、寂しげに通常版だけが大量に売れ残ってるじゃないですか。んで、近くを通った店員に「特装版ありますか?」と尋ねたら、一瞬「トクソウバン?」とキョトンとされた一瞬後に、「このヲタ野郎、いい年してスーツ着て同人誌付のマンガ本がそれほど欲しいか」みたいな顔で冷たく「売り切れです」と言い放たれたじゃありませんか!(被害妄想です)
 ……ところが今日、神戸・三宮のマンガ専門書店に行ってみると、今度は特装版が探す間もなく堂々と店頭で山積み仁王立ち。何だったんだ、昨日の恥辱と苦労は。というか何なんだ、この供給の偏り方。
 調べてみると、どうやら講談社側が初版部数の設定を読み違えて、一般書店に配本が行き渡らなかったのが原因らしいですね。てっきり数年前の『新世紀エヴァンゲリオン』単行本付フィギュア大量売れ残り事件の反動かと思ってたんですが(笑)。 

 ……さて、いきなり余談ばかり長くなりましたが、今週のゼミを始めます。
 今週は01年11月の開講以来、多分2回目となるレビュー対象作ゼロ。昨年辺りまでは、毎週のように新人・若手作家さんの読み切りとか「ジャンプ」の休載代原とかが載っていたんですが、最近はめっきりこの手の読み切りが減りましたからね……。
 まぁそういうわけで、今週は“チェックポイント”拡大版ということで、日頃は余り話題にしていない、長期連載作品についての簡単な考察などを、気まぐれに羅列してみたいと思います。敢えてネガティブな話もすることになるでしょうが、推す作品推す作品のことごとくが大ヒットに至らない駒木の言う事なので、特に気になさらぬよう。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報 

 ◎「週刊少年サンデー」では、次号(31号)より、『ネコなび』作画:杉本ペロ)が新連載となります。
 「サンデー」のショートギャグ枠を長年担って来た杉本ペロさんが、ほぼ半年振りに週刊本誌復帰となりました。新人ギャグ作家の発掘が思うに進まない「サンデー」、とりあえずは“実績組”を呼び戻して態勢建て直し…といったところでしょうか。

 ◎「週刊少年サンデー」では、7/13発売の33号より、『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志)が新連載となります。(※作者ご本人運営のウェブサイト掲載の情報です)
 増刊での読み切り版掲載から2年、曲折に次ぐ曲折を経て、漸く待望の新連載開始となりました。
 読み切り版と短期連載版は共に当ゼミでAクラス評価となっているこの作品、果たして長期連載版ではどのような姿を見せてくれるのでしょうか。今から非常に楽しみです。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…なし

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年29号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 時間と分量に制約がありますので、積極的に語りたい作品優先、無理にコメントした挙句に内容が嫌事中心になりそうな作品はスルーの方針で。

 まず、今週号のハイライトは何と言っても『アイシールド21』でしょう。
 勿論“ヒル魔の素で驚いた顔→ムサシの見開き2ページ「待たせたな」”や、まも姐の泣かせるナレーションといった正攻法の脚本・演出もずば抜けているんですが、個人的に印象に残ったのは、その演出の一環として随所に挿入された“トンデモ要素”の方でした。
 往年の花形満を髣髴とさせる堂々たるムサシの自動車無免許運転、そして、ドラえもんから時門(=時の流れを遅くする道具)でも出してもらったかのように延々と続くタイムアウト。現実には有り得ない光景の連続なのに、ツッコむ気が全く起こらない……というか、ツッコんだら最後、「何をマンガ相手にそんなムキになってんの」と失笑されるモノばかりというのが凄いです。しかもコレ、明らかに確信犯ですからね。文字通りの反則技、心ゆくまで堪能させて頂きました。
 ……なんか、こんな物言いしてると「駒木、ヒネクレ過ぎ」とか言われそうですね(笑)。でも、単なる一読者として初読した際にはリアルに感動泣きしたりもしてるのですよ。しかもコンビニでレジに持っていく前、不覚にも衆人環視の中で。

 さて、次は『魔人探偵脳噛ネウロ』にしましょうか。この作品もしばらく迷走気味でしたが、先の“アヤ・エイジア編”からは一皮剥けたようですね。トリックよりも、キャラクターとストーリーに重きを置いたストーリーになって、随分と“読める”ようになりました。
 ただ、“小者の敵キャラ出現→アッサリ葬られて退場→真の敵キャラ登場”というパターンを、“アヤ編”と今編でそっくりそのまま繰り返すのは、ちょっと如何なものでしょうか。せっかく凝らした趣向も、それがルーチンになってしまっては効果半減です。

 ところで、最近元気が無い(ように思える)のが『DEATH NOTE』です。少なくとも第1部の時のように「今、このマンガが絶好調!」的な扱いはされなくなって来ちゃいましたね。
 これは、第2部突入以降、色々な意味で“安全圏内の作品”になってしまい、その分テンションが下がっているからではないのかな…と思うんですよ。誤解を恐れず荒っぽい言い方をすると、「普通のストーリーマンガになっちゃった」といったところでしょうか。
 大成功に終わった第1部の何が凄かったかと言うと、絶えず2種類の“危険”──主人公・ライトの身の破滅と、作品そのものの破綻──に迫られながらも、それを神業のようなストーリーテリングで逃れ続けたところにあると思うんですよ。
 ところが第2部になってからは、ライトは身の危険が及ばない所での見えない敵との戦いに。ストーリーの方も、かなり練り込まれてはいるものの、設定が現実世界から乖離している事もあり、何だか遠く離れた世界での絵空事のような……。
 100万人の固定ファンを抱えるまでになった超人気作ですが、この構造的な問題を抱えて、果たしてどうやって巻き返していくのでしょうか? 興味津々でもあり、かなり心配でもありますね。

 「ジャンプ」最後は『HUNTER×HUNTER』を。
 最近、“出席率”が上がったのに伴って、シナリオがやや薄味になったかな…という印象があったのですが、どうやら実は、(殺しすぎて)不足気味の主要脇役キャラ補充に専念していたようですね。この辺のストーリーとキャラクターのバランス感覚の良さが、少年マンガ家・冨樫義博の真骨頂といったところでしょうか。
 個人的には今週登場の、盲目の軍儀棋士少女が良い味出してるなぁと。ただ、この作品の場合、こういう当該エピソード限定の脇役は、登場即死亡フラグ発生なのが辛いんですよね(苦笑)。

☆「週刊少年サンデー」2005年30号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 さて「サンデー」なんですが、ぶっちゃけてしまうと、最近のこの雑誌、個人的には全般的に「おしなべて低調」って感じなんですよね。読むのもレビューするのも、半ば義務みたいな感じで……。
 ましてや「現代マンガ時評」視点で“良い”作品で、更に一読者としても“好き”な作品となると、もう『結界師』ぐらいしか残っていないという現状です。(まぁ、ここに来月からは『絶チル』が混じることになるでしょうが……)

 ではその『結界師』、どういう所が好きかと言うと、場面を切り替え切り替え、同時進行的に淡々と出来事と人物を描写している内に自然と深みのある重厚なストーリーが出来上がっている…という心地良い完成度の高さ。昔の作品で言えば、『機動警察パトレイバー』がこんな感じだったかも知れません。
 ただ、こういう作品は読み込むのに頭を使う分だけ、読者層が狭まっちゃいますよね。ハリウッド映画に対するフランス映画みたいな。そういう意味では、この作品が単行本の売上ランキングと縁が薄いのも理解できる気がします。

 では最後に、今週で最終回となった『いでじゅう!』の連載総括を。そう言えばこのマンガも、駒木の中では“良い”と“好き”が比較的一致していたんですが。
 で、この作品、連載初期は“テクニックは感じられるが、今一つノリ切れないギャグ作品”という感が強かったのですが、やがて“甘酸っぱいリアルさ溢れるラブコメ”へテコ入れ。結果的には、これが功を奏した形になりましたね。
 そして最終的には、多少強引とはいえ伏線を全て回収して無事に円満完結。週刊連載のマンガ作品としては、かなり恵まれた終わり方をしたんじゃないでしょうか。
 そんな作品全体のクオリティを俯瞰すると、ストーリー・ギャグ共にやや全体的に“軽い”作品になり過ぎた感がありましたが、(恋愛絡みの)心情描写は本格的なラブストーリー顔負けの高水準。「少々の欠点があるものの、長所がフォローして余りある」といったところでしょうか。最終評価はA−としておきましょう。

 
 ──と、とりとめもない内容になりましたが、ともかくも今週はこんな感じにさせてもらいました。来週もレビューは杉本ぺロさんのショートギャグ新連載だけで微妙ですが、状況を見て臨機応変に考えます。ではでは。

 


 

2005年度第16回講義
6月19日(日) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(6月第3週分)

 今週は公私多忙……というより、諸々の事情で脳味噌がメモリースワップ寸前の状態に陥っております。あと10日もすれば、今度こそ本当に心身共にリラックス出来る2ヶ月が到来しますので、それまでは講義の方も淡々と進行したいと思います。例えば、「どうでもいい話ですが、サイバーエージェントって会社、社長の顔がゴージャス松野に似ているだけで、その何もかもが信頼できない自分がいます」とか、余計な事を喋るのも極力自粛する方針で参る所存です。どうかご了承下さい。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 

 ★新人賞の結果に関する情報

第25回ジャンプ十二傑新人漫画賞(05年4月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
 十二傑賞=1編
(週刊本誌or増刊に掲載決定)
 
 ・『ISSUN』
   魔球通司郎(23歳・神奈川)
 《小畑健氏講評:キャラクターや話の展開に統一性が欠け、分かり辛い部分もあったが、演出力やオリジナリティのあるストーリーだった。世界観をしっかり絞るとなお良い》
 《編集部講評:作画の線が細い点は気になるが、個性のある絵柄。非現実的な話の展開ながら、しっかり読ませる説得力のある構成と雰囲気作りが出来ている。キャラに厚みがあるともっと良かった》
 最終候補(選外佳作)=6編

  ・『イビル&フラワーズ』=小畑健特別賞
   森山崇(25歳・大阪)
  ・『タイム・キーパー』
   吉野朋宏(20歳・大阪)
  ・『番長決定戦』
   相原成年(22歳・東京)
  ・『Brighten』
   住吉崚(14歳・奈良)
  ・『名探偵田中一郎』
   池内志匡(24歳・愛媛)
  ・『メンズフレイバー』
   葛城一(17歳・岩手)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ◎最終候補の池内志匡さん…00年3月期「天下一漫画賞」で審査員(藤崎竜)特別賞。
 
 残念ながら佳作以上の受賞者が出なかった今回の審査員は小畑健さん。資料を遡ってみると、少なくとも99年以降、小畑さんが審査を務めた回で佳作以上の賞は1回も出ていないようです。
 じゃあ小畑さんが審査を務める月は特別不作なのか……というと、決してそうでもなく、最終候補者には後に別の賞を受賞したり、増刊デビューを果たしたりする新人さんもチラホラと。ただ単に運とタイミングという事なのか、それとも小畑さんの審査基準が厳しいのか、ちょっと興味が湧きますね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:新連載第3回1本&読み切り1本
 「サンデー」
:レビュー対象作無し

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年28号☆

 ◎新連載第3回『切法師』作画:中島諭宇樹

 についての所見(第1回掲載時からの推移)
 作画そのものについては、第2回以降も、かなりレヴェルの高い所で安定飛行を続けているのではないかと思います。特殊表現や人物の微妙な表情の変化など、細かい部分の仕事に怠りが無い所には大変好感が持てます
 ただ、見開きページの見難さは相変わらずで、今回は「全ての物事は右から左へ」というマンガの大原則へも挑戦するような“ラフ・プレー”もありました。マンガにおける表現技法の限界に挑戦し、自分が新しい“文法”を作ってやろう…という意気込みは素晴らしいと思うのですが、まずは読み手の理解を第一に考えてもらいたいですね。

 あと、評価に関係ない話ですが、このマンガ、斬新な表現に挑戦する一方、所々で手塚〜藤子時代のマンガから引き継がれている演出技法──例えば、必要以上に無表情なキャラに、モノローグ中心に豊かな感情を表現する──も多々見受けられるのが興味深いですね。
 こういう作画に対する姿勢は、師匠の村田雄介さんからの影響が色濃いんでしょうね。パッと見の絵柄ではなく、派手な外見に隠れた中身の部分を継承しているというのは、本当に良い師弟関係だったのでしょう。 

 ストーリー&設定についての所見(第1回掲載時からの推移)
 連載開始以来2つ目のエピソードとなった第2回、第3回は、少々ベタな印象の否めない“RPGの序盤でありがちな小ミッション”でした。プロットも手垢の付いた小品、敵役もザコの範疇を出ない怪物(西洋風に言えばインプとコボルト?)とあって、根本的に盛り上がりようの無いストーリーだったように思えます。

 とはいえ、そのボリューム的に物足りないシナリオに、演出や深みのある心理描写などで“足し算”を施し、それなりに読ませる話に仕上げた辺りに、確かな地力を感じさせてくれました。特にラストシーン、読み手が心地良い余韻に浸れるような演出が見事。
 他の若手作家さんの多くがそうするように、安易に笑いでオチをつけてしまった方が簡単ではあるのですが、それを敢えてしない辺りに、「ジャンプ」フォーマットに一切頼らず連載まで来た“反骨の若手作家”の心意気を感じました。

 現時点での評価
 第1回での評価はA−寄りAでしたが、先述の通り、第2〜3回のストーリーがプロット段階から物足りない内容だったのは事実。ここは一旦A寄りA−に評価を落として10回目まで様子を見たいと思います。


 ◎読み切り『ギャグマンガ日和』作画:増田こうすけ

 作者略歴
 1977年6月2日生まれの現在28歳
 98年上期「赤塚賞」で佳作、同年下期の同賞でも準入選を受賞。その後は週刊本誌や「赤マル」での活動を経ないまま、「月刊少年ジャンプ」を活動の場に選択する。
 デビュー作は『夢−赤壁戦い−』で、その後短編ギャグの読み切り発表を挟んで、連作短編形式の『ギャグマンガ日和』を連載開始。現在まで連載期間5年を超すロングラン作品となっている。
 今作の週刊本誌進出は、『ギャグマンガ日和』アニメDVD発売を記念してのパブリシティ特別企画と推測される。

 絵についての所見
 典型的なヘタウマ系画風ですね。高年齢層の方には中崎タツヤ・『じみへん』と申し上げると分かり易いでしょうか。パッと見の絵柄の見苦しさと、緻密さとかけ離れた画風にフォローの余地はありませんが、マンガの記号としては最低限度以上の役割を果たしています。“ギャグマンガとしては”の前提付きながら、及第点の評価はして良いのではないでしょうか。

 ギャグについての所見
 “特別出張版”となる今回は、月刊本誌での連載開始以来のキャラであり、読者の人気も高い(らしい)聖徳太子&小野妹子コンビによるネタ。「『ギャグマンガ日和』とは何ぞや?」という事を知ってもらうために、極力手堅い選択をした…といったところでしょうか。確かに、商業的には最良の選択であるとは言えそうです。
 ただ、ギャグの内容については少々手堅さが過ぎて、“爆発力”に欠けたような気もします。駒木は昨秋のGAG増刊でしかこの作品を読んでいませんが、あの時に比べるとシュールなネタや“間”で獲る笑いが抑えられていたような……。また、動的表現に乏しい絵柄でアクション系のネタを複数持って来たのもミスチョイスではなかったでしょうか。
 とはいえ、凝ったセリフ回しや文章からは高度なギャグセンスが感じられますし、注釈を本来とは違う用途で使って表現するネタなど、テクニックの豊かさも確かめられました。よって今回は、「実力のある作家さんの描いた、少々失敗気味の1本」という解釈をするのが妥当と言えるでしょう。

 今回の評価
 ……というわけで、今作の評価は「欠点の方が目立つが、評価すべき部分もいくつかある」のB+とします。
 この作品のファンの人からすれば「この作品は、こんなじゃないんだ」…といった気分でしょうが、ホームを離れた“中立地”でのゲスト原稿ですから、致し方無い部分もあろうかと思います。

☆「週刊少年サンデー」2005年29号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週の「サンデー」は連載作品の評価見直しのみ。

 ◎『うえきの法則プラス』作画:福地翼
 旧評価:A−寄りB+新評価:B+

 実質0.5ランクの下方修正となりました。
 評価ダウンの理由は、第一部以来の欠点である「必要以上に説明的で回りくどい長セリフの乱発」です。駒木のような完璧主義的視点でもなければ気にならないのかも知れませんが、どうにもこの、喋っている感じが一切しないセリフで埋め尽くされた画面の連続が気になって仕方ありません。
 せっかく心情描写に大幅な進歩が見られ、読み手が感情移入しやすい作品になって来ているだけに、このネガティブな要素は大変に残念です。

 第20回時点で、もう一度評価を見直しますが、脚本面で大きな改善が見られなければ、このままB+で評価確定かな…という考えでいます。

 
 ──と、いうわけで大幅に遅延しましたが、6月3週分のゼミをお送りしました。次週は昼の仕事が今期最大のヤマ場を迎える1週間(教える側も生徒も疲労が溜まっている所へ、期末試験作成のノルマが積み重なる)で、果たして講義自体出来るのかどうか……と思っていたところ、幸か不幸かレビュー対象作がゼロになりそうな情勢。今のところは『いでじゅう!』の最終回総括くらいしか講義の題材が見当たりません。どうしたら良いやら……。
 さすがに丸1週間休講までは考えていませんが、果たして何をしたら良いのだろうかと少々迷っております。その時に出来る範囲で何かする事になるのだろうと思いますが。
 それでは、また数日後にお会いしましょう。

 


 

2005年度第15回講義
6月11日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(6月第2週分)

 6月に祝日を作ってくれるのなら、東郷健にでも又吉イエスにでも投票したくなる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。本州以南で梅雨に入ったばかりの週末、6月2週分のゼミをお送りします。
 しかし、こういう時期になりますと、とりあえずどっかへ高飛びしたくなりますね。寝台列車とか、飛行機の国際線とか乗りたくなります。どうか生きてる内に、6月にラスベガス辺りへビジネスクラスで赴いて、ギャンブルとボクシング観戦に明け暮れるバカンスを過ごしたいものです。どこかで世の中間違えて、これまで書いた文章が本になってバカ売れしないもんでしょうか(笑)。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報 

 ◎「週刊少年ジャンプ」では、次号(28号)に読み切り『ギャグマンガ日和』作画:増田こうすけ)が掲載されます。
 この作品は既に「月刊少年ジャンプ」で連載中で、今回はDVD発売の記念&販促強化企画の特別編といったところでしょうか。
 ただ、作者の増田さんは98年上期・下期「赤塚賞」でそれぞれ佳作・準入選を受賞。現在は同賞の審査員も務めており、昨年もギャグ増刊に読み切りを発表するなど、「週刊──」にも縁の浅からぬ人ではあります。
 これが意外にも週刊本誌初登場ですが、熟練の技で“受賞者”と“審査員”の格の差を見せ付けてくれると思います。期待して待ちましょう。

 ★新人賞の結果に関する情報

 今週は「ジャンプ」で「手塚賞」「赤塚賞」の、「サンデー」では、「小学館新人コミック大賞」少年部門の審査結果発表がありました。

第69回手塚賞&第62回赤塚賞(05年上期)

 ☆手塚賞☆
 入選=1編
  ・『未熟仙 〜みじゅくせん〜』
   栗山武史(24歳・和歌山)
《選評要約:「主人公の好感度が非常に高い。キャラや舞台の造型にも面白みがある(稲垣理一郎さん)「個性的な世界が出来てあり、ワクワクした。キャラも描けている」(尾田栄一郎さん)「エピソードの量、ページ配分といった構成で実力を感じる」(森田まさのりさん)
 準入選=1編
  ・『-meteoric- 流星のユニ』
   仲野ケンシロウ(27歳・福岡)
 佳作=2編
 
 ・『バンディッツ・リターン』
   川田暁生(27歳・東京)
  ・『RODEO』
   木下真美子(17歳・千葉)
 最終候補=4編
  ・『キレデカ』
   高山憲弼(24歳・大阪)
  ・『シアンスカーレット』
   前田竜雪(23歳・福岡)
  ・『ザイチ』
   吉田郁子(19歳・京都)
  ・『千年魔王』
   斎藤真一(26歳・愛知)

 ☆赤塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=1編
 
 ・『たいして良い思い出もできそうにない学校生活』
   伊藤直晃(25歳・茨城)
 佳作=2編

  ・『SNAKE HUNTER』
   沢田ショウ(22歳・埼玉)
  ・『次世代忍者』
   彰田令貴(23歳・大阪)
 最終候補=5編
  ・『犬侍 〜一匹で斬る?〜』
   細野悠(24歳・神奈川)
  ・『転校生後味悪郎と愉快な山本』
   吉田和弘(22歳・東京)
  ・『ピー男』
   菊地秋(18歳・兵庫)
  ・『みかん流』
   中山伸明(20歳・愛知)
  ・『BEST DUO』
   栗山武史(24歳・和歌山)
   ※手塚賞との同時入賞

第56回小学館新人コミック大賞・少年部門
(05年前期)

 特別大賞=該当作なし
 大賞=該当作なし
 
入選=1編
  ・『サンタ南国より参る』
   福島太郎(23歳・福岡)
 
佳作=4編
 
 ・『妙林寺の注君』
   石井あゆみ(22歳・東京)
  ・『かかしとレイディ』
   森繁拓真(27歳・東京)
  ・『(カリスマ)整体新米臨時教師ゴトサン』
   遊眠(27歳・東京)
  ・『HELL KING 〜地獄王〜』
   岩本ゆきお(27歳・東京)
 最終候補=3編
  ・『A.K』
   早真みけ(16歳・神奈川)
  ・『マブダチ。』
   AYUMICHOん(17歳・奈良)
  ・『スペア』
   佐治聡一(23歳・大阪)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ※手塚賞
 ◎入選の栗山武史さん…04年末(12月)期「ストーリーキング」ネーム部門で準キング。
 ◎佳作の川田暁生さん…03年8月期「十二傑新人漫画賞」&00年12月期「天下一漫画賞」で最終候補。
 ◎最終候補の高山憲弼さん…03年2月期「天下一」で編集部特別賞、04年11月期&04年8月期&03年8月期「十二傑」で最終候補。

 ※赤塚賞
 ◎佳作の彰田令貴
さん彰田櫺貴名義、週刊本誌04年44号にて『メガネ侍』で代原暫定デビュー済。04年下期「赤塚賞」では最終候補。

 ※新人コミック大賞
 ◎入選の
福島太郎さん…04年6月期「サンデーまんがカレッジ」で努力賞。
 ◎佳作の
石井あゆみさん…04年8月期「サンデーまんがカレッジ」で入選、隔月増刊05年新年号にて受賞作デビュー済。
 ◎佳作の森繁拓真さん…別ペンネームで00年後期「ちばてつや賞」優秀新人賞受賞、01年〜03年まで「週刊ヤングマガジン」、「別冊ヤングマガジン」で読み切り、短期連載作品を数作発表とのこと。
(甲斐高風さん、情報有難うございました)
 
※なお、佳作の岩本ゆきおさんは、「ガンガン」系雑誌で活動を続けている作家さんと同姓同名で、年齢もほぼ一致するようです。絵柄で判別出来るという方、情報をお願いします。

 ……「ジャンプ」、「サンデー」両誌の賞ともに、「期待の新人登場!」的な扱いではありましたが、既に他の賞を受賞したり、デビュー済みの新人作家さんの姿も見受けられました。

 まず入選が9年ぶりに飛び出した「手塚賞」、その受賞者は、実は「ストキン」の準キングを受賞したばかりの栗山武史さん。審査員講評を見ると、キャラクター、設定、構成力を高く評価されており、なるほど「ジャンプ」のマンガとして必要な点を全て備えているというわけですね。
 「手塚賞」入選の作家さんを“良いトコ取り”で紹介しますと、井上雄彦、諸星大二郎、星野之宣、浅美裕子、岸大武郎…といった面々。今後、栗山さんがどこまで伸びてゆくか楽しみですね。

 一方の「赤塚賞」は、悪い意味で平行線の水準といったところでしょうか。これだけ長い間、即戦力級の有望新人が現れず、かと言って「GAGキング」の復活の声も聞こえもしない状況は寂しい限りです。
 とはいえ、今は連載陣も好調で、たまに『スピンちゃん』のような有望株が現れても1クール打ち切りになる現状では、ギャグ新人に対する需要そのものが無いのかも知れません。編集部も「たまたま逸材が出て来ればめっけもん」ぐらいに考えているのかも知れませんね。

 さて最後に「サンデー」系の「小学館新人コミック大賞」
 今回から賞金増額となり、“トップ賞”も追加されましたが、残念ながら大賞以上の受賞者は該当なし。こちらも佳作には「まんカレ」入選でデビュー済の新人さんが混じっているなど、新人発掘の成果がどこまで挙がったかは微妙と言えそうです。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…1本
 「ジャンプ」:新連載第3回1本
 「サンデー」
:対象作なし。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年27号☆

 ◎新連載第3回『タカヤ −閃武学園激闘伝−』作画:坂本裕次郎
 
 についての所見(第1回掲載時からの推移)
 
概ねで言えば、第1回の時から大きな変化はありませんが、人物キャラの顔の描き方に違和感が出て来たような……。これはパーツのバリエーションが少ないのと、リアルタッチ仕様の等身の時でもディフォルメっぽい目鼻立ちを描いてしまっているせいでしょう。
 元々は美形キャラ以外の人物造型に味がある作家さんなのに、そういう面を全くと言って良い程活かしていないのが気掛かりです。後のストーリー・設定でも同じ事を言うつもりですが、どうも今の坂本さんは創作上の“フォーム”を完全に見失っているような気がしてなりません。

 ストーリー・設定についての所見(第1回掲載時からの推移)
 今週で第3回となりましたが、ここまで毎回ワンパターン、しかも相当中身の薄い低水準のシナリオ──性格最低&暴力気質のイケメン(紛い)が現れて、主人公とヒロインを挑発・攻撃した挙句に返り討ち。最後にラブコメの真似事があって次回へ続く──が連発されています。有り体に言って、「大変悲観すべき惨状」と申し上げて良いでしょう。
 この一連のシナリオ、一応は読み手をムカつかせた後、カタルシスを得させる……というバトル系少年マンガのセオリーには則ってはいるので、落第点というわけではありません。が、それに付加するドラマとオリジナリティが余りに希薄で、とても平凡に映ります。
 またラブコメ要素にしても、最初からカップルが殆ど出来上がっている状態で、恋愛の醍醐味が全く無い上に、恋愛モノでは“規定演技”とも言える、当事者の心的描写も寂しい限り。言い方は悪いですが“上っ面だけの話”ばかりを延々と見せられているような印象で、とても残念です。

 2週間前にも述べましたが、坂本さんはギャグ的要素の強い作品でここまで来た人です。しかし、今の作品のベクトルは、それとはかなり違う方向へ行ってしまっているようで……。
 かつての「黄金の女神杯」、そして「バンチ」の「世界漫画愛読者大賞」と、この手の企画の優勝作品は受賞時をピークに逆噴射する傾向が強いですが、どうもこのジンクスは今回も繰り返す事になりそうな情勢ですね。

 現時点での評価
 評価は大幅下方修正。B−とします。まさか前年度の「コミックアワード」部門賞受賞者を、次の年の「ラズベリーコミック賞」候補に挙げなければならなくなるとは……。連載10回の時点で評価見直しを実施する予定ですが、下手をすれば連載総括のレビューになってしまうかも知れません。

 ──さて、今週はどっちかと言えば賞レースの解説中心の内容になってしまいましたが、とりあえずこういう形にまとめさせてもらいました。
 両誌の連載作品についても色々と述べたい事も増えては来ているんですが、
 「今回は、まるでサブヒロインルートが確定したギャルゲーのイベントみたいです。本当に恵まれないヒロインだ……」
 とか、
 「やっぱり殺しちゃいけない人を殺してしまったんだなぁと痛感する今日この頃」
 とか、
 「昔のサンデーでよくあった、打ち切りが確定した辺りから急速に盛り上がるマイナースポーツ系作品みたいになって来ました」
 とか、
 「前々から疑問に思ってたんですが、この人たちどうして命を賭けてまで戦ってるんですか?」
 とか、
 「本当に惜しいです。セリフが回りくどすぎる所だけ改善されてません」
 とか、
 「このマンガのセリフって、つくづく心を打ちませんね。担当が心無い人だと、作品まで心が無くなるんですね」
 ……とか、とにかくシャレにならない嫌事しか思い浮かびませんので、自粛させて……ませんね(笑)。まぁ、どの作品の事を言っているのか判っても、決して口に出さないように。
 まぁそんなわけで、「2年前のコミックアワード、『武装錬金』じゃなくて『結界師』だったかなぁ」と今更ながらに後悔している駒木ハヤトがお送りしました。では、また来週。

 


 

2005年度第14回講義
6月4日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(5月第5週/6月第1週分)

 「構内掲示板」でお報せしている通り、2度目のコミケサークル参加が決定致しました。冬コミ成功の勢いに乗って申込みしてしまったは良いものの、日頃の講義準備でさえ事欠く状況で、果たして本が作れるのか? ……と、少々ビビり気味であります。
 とはいえ、駒木が参加する事で替わりに落選しているサークルさんもいるわけですから、キチンとした本を出すのは半ば義務みたいなもの。最悪でも1冊はキッチリとした新刊を出せるように頑張ります。
 ところで迷っているのが、昨年末に頒布した旧刊について。現在はもう保存&謹呈用に10冊程度しか残っていないのですが、これを重版かけるかどうか……。昨日の講義でもお話したように、200は刷らないと大赤字確定ですので、重版するなら通販でもして頒布数を確保しないといけないのですが……。

 まぁこの辺は今月中に詰めていきたいと思います。何かご意見&ご要望ありましたら、メールや談話室(BBS)などで是非どうぞ。

 ──それでは、今週も遅くなりましたがゼミを実施します。どうぞ最後まで宜しく。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ※今週は新連載&読み切り情報、及び新人賞の受賞作発表はありませんでした。

 

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:新連載1本&新連載第3回1本
 「サンデー」
:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。

☆「週刊少年ジャンプ」2005年26号☆

 ◎新連載『切法師』作画:中島諭宇樹

 作者略歴
 1979年7月21日生まれの現在25歳
 01年11月期「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りした後、02年度の「ストーリーキング」マンガ部門で準キングを受賞翌03年に「赤マル」春号で受賞作・『天上都市』が掲載されてデビュー。
 03年46号では『人造人間ガロン』で週刊本誌初登場を果たすと、04年2月には「青マルジャンプ」で『ホライズンエキスプレス』(=当講座の第3回「コミックアワード」にて「ジャンプ」&「サンデー」最優秀新人作品賞受賞作)を発表。同年秋に週刊本誌で開催された「第1回ジャンプ金未来杯」では、今作と同タイトルのプロトタイプ作品『切法師』でエントリーしたが、惜しくも優勝を逃している。
 なお、デビュー後しばらくまで、村田雄介さんのスタジオでアシスタントを務めており、村田さんのダイナミックな構図の取り方などに強く影響を受けた跡が見受けられる。

 についての所見
 デビュー時点から新人・若手としては上位クラスの画力を持っていた作家さんでしたが、デビューから2年にして、キッチリ連載作家級の水準まで押し上げて来たな…といったところです。

 まず、線が非常にスッキリと洗練されているのが良いですね。一本一本のラインに迷いが無く、背景と人物作画のメリハリがしっかりしているので、大変見やすい絵に仕上がっています。
 総体的に見れば相当マンガチックなタッチなのですが、絵の完成度が高いのでリアリティが薄くても違和感が有りません。これは場面ごとのディフォルメの効かせ具合が的確である事も影響しているでしょう。プロの仕事が当たり前のようにこなせています。
 また、以前からの中島さんの絵の“売り”である、超ロングショットからの風景俯瞰が、各所で絶好の演出としてズバリと決まっていました。これは一枚絵で作品全体のスケールの大きさを表現出来るという、マンガ家として非常に稀有な才能だと言えるでしょう。
 そして、最後にもう一点付け加えたいのが喜怒哀楽の表現の巧みさ。なかなか伝え難い細かい意図を、たった一枚の絵で読み手へ的確に伝える事の出来るのがマンガの醍醐味。こういう作品を読んでいると「やっぱりマンガは良いなあ」と思わせてくれます。

 数少ない問題点としては、『ホライズンエキスプレス』以来よく見られる、見開きページ基準のコマ割りが今回も紛らわしかった所ですね。この見開きゴマの見せ方には研究の余地がありそうです。

 ストーリー&設定についての所見
 まず設定・世界観ですが、これは同タイトルの読み切り版から大幅マイナーチェンジさせてのリスタート。プロトタイプ版とは異なり、年代や舞台背景こそ日本の戦国時代ながら、ある種パラレルワールドを舞台にしているような、一風変わった和モノファンタジーといった趣となりました。
 万葉仮名のような当て字で洋モノファンタジー用語を登場させる…という手法は賛否分かれるかも知れませんが、設定の量は程々に収まっていますし、独り善がりな嫌らしさは感じられませんでした。少なくとも今の所は、これら一連の設定群も、作品のオリジナリティを醸し出す方向に働いているのではないでしょうか。
 ただ、これはもうデビュー以来の癖と言っても良いと思うのですが、設定をセリフで説明してしまうのだけは余り感心できません。脚本力と演出力のある作家さんですので、これも違和感は薄いのですが、もう少し文字情報以外で描写する技法を多用しても良いと思います。

 さて一方、ストーリーの方は、第1回という事もあって一話完結のエピソードでしたが、これもなかなかの完成度。キチンと1つの話としての“ヤマ”を作ってまとめ上げる一方、長編作品のプロローグとしての役割も見事に果たしていました。これは誰でも出来るようで、なかなか出来ないものなのです。
 プロットの立て方にしても、定番の“性格の悪い小悪党”を出さず、読み手に過度のストレスを与えないままカタルシスだけ演出しようという配慮が窺え、これにも好感が持てました。一ネタごとに一仕事加える寿司屋みたいな気の利かせ方がニクいですね。
 主人公の性格や行動に対する動機付けも、回想シーンを絡めつつ強い説得力を持たせる配慮が成されており、実に自然。いかにも少年マンガらしい主人公像を“やらされている感”を微塵も感じさせないまま作り上げる事に成功しています。これは後々のストーリーで大いに活きて来る事でしょう。

 問題点を敢えて挙げるとすれば、隅々に至るまでソツが無さ過ぎて、作品全体のアクが弱くなり気味…という所でしょうか。殆ど言いかがりに近い指摘ではありますが、積極的に“人気”を獲らなければならない「ジャンプ」では、馬鹿に出来ない部分だとも思います。さて、補正が切れた後の掲載順はどうなりますか……。 

 現時点での評価
 細かい欠点はあるものの、それを帳消しにして余りあるテクニックとセンスが遺憾なく発揮されています。人気の有無は別にして、当ゼミとしては自信を持ってお勧め出来る良作です。暫定評価はA−寄りAとしておきましょう。

 ◎新連載第3回:『カイン』作画:内水融

 についての所見(第1回時点からの推移)
 
相変わらず、全体的な画力の水準はなかなかのものであると思います。第1回に比べるとぎこちなさも徐々に抜けて来ているようですし、今回では特に大きな違和感を得る場面は無かったです。総合的な評価としては「目立った問題は無く、明らかに及第点以上」として良いでしょう。
 ただ、細かい所を見てみると、人物の顔のパーツの描き分けが今一つだったり、美形キャラに比べて繕躯師・リュウギのような“老け系”人物の作画がやけに野暮ったかったりと、気になる部分もあったりします。今後も完成度を上げる努力を惜しまないでもらいたいですね。

 ストーリー&設定についての所見(第1回時点からの推移)
 で、こちらに関しては相変わらず、毎週読むたびに思わず首を傾げるような内容が続いています。これと言って設定やストーリーが破綻している箇所は無いのですが、どうも全体的に具体性を欠き、散漫な印象が漂っているように思えてなりません。
 これはどうも、作品全体の目標最終到達点──「こうなったら大団円」というポイント──がハッキリしていないのが大きく影響しているのではないでしょうか。いわゆるラスボスも不明、主人公の明確な意図も不明のままサブストーリーばかり進行されても、読み手もどこにピントを定めてこの作品を観たら良いのか判らなくなってしまいます。
 つまり、現状においてこの作品は、話の“幹”が見えて来ないまま、細かいエピソードで“枝”ばかり見せられている状態というわけです。これでは折角の設定・世界観も活きては来ませんし、無闇に新キャラを投入されても、より散漫な印象が強まるだけではないでしょうか。

 最近は時系列に沿ってメインストーリーを進行させる、オーソドックスな“編年体型”作品だけでなく、『D.Gray−man』のように豊富なキャラクターを活き活きと動かす事に重点を置く“紀伝体型”作品も増えて来ています。が、それにしてもこの作品はシナリオ上の不確定要素が多過ぎ、いくらキャラクターを投入しても空回りしてしまうのではないかと危惧してしまいます。

 現時点での評価
 評価は今回も据置でBとします。「少年マンガっぽい作品にしよう」という意図は感じられるのですが、「どうしても自分はコレが描きたい」という気持ちが、この作品からは伝わって来ないんですよね。
 この人、やっぱり策略系ヒーローが描きたかったんじゃないかなぁと勝手に想像してしまったりするわけですが。何か大人の事情でもあったんでしょうかね。


☆「週刊少年サンデー」2005年26号☆

 ◎読み切り『ハルが来た!』作画:小山愛子

 ●作者略歴
 資料不足のため、生年月日・年齢は不明。
 西条真二さんのスタジオでアシスタント修行の後、01年に「サンデー超増刊」でデビュー。その後も意欲的に新作を執筆し続け、増刊を主戦場にして断続的に読み切りを発表する一方で、02年33号で週刊本誌進出03年夏からは増刊での短期連載も果たす。04年にも週刊本誌に読み切りを発表した他、05年春からは「小学三年生」の別冊付録にて『アイアンフェザー』を連載中。(ちなみに同誌は、『キッカーズ』「バンチ」のカジメ焼きで有名なながいのりあきさんや、『十五郎』川久保栄二さんも連載中という子供向にしては異様に濃いメンツになっています)

 についての所見
 1年前の本誌掲載作品同様、マンガの絵としては及第点には達していると思います。ただ、人物作画が“リアル路線を志向しながら、リアルになり切れず”といった感があり、またポーズや表情の変化が固い、動的表現にもややぎこちなさが残り…と、物足りない部分もかなり目立ちます
 また、これはストーリーの演出面にも絡んで来る話ですが、構図やアングルの取り方が単調で、その分平板なビジュアルになってしまったかな、という気もしました。
 
 ストーリー&設定についての所見
 過去の作品は悪い意味で西条真二門下らしい荒唐無稽なお話が目立っていましたが、今回は雰囲気をガラリと変えてハートウォーミング系学園モノになりましたね。漸く“呪縛”から逃れたようです。
 さて、今回のコンセプトは、一言で表現すれば「少年マンガ的夜回り先生」でしょうか。学園モノと言えば熱血教師が付き物ですが、今作に登場する先生は“北風より太陽”という感じで、これは少年マンガとしては新鮮だったのではないでしょうか。一貫した行動パターンでキャラクターも立っており、作品全体の魅力がこの1人の登場人物のお蔭で相当アップしたように思えます

 しかしながら、シナリオの内容はお粗末の一言。ページ数の都合もあるのでしょうが、生徒の改心が余りにも御都合主義的でした。また、今時ゴキブリをラーメンに放り込むチンピラや、昭和の香り漂う不良の佇まいなども余りにも陳腐であると言わざるを得ません。
 確かに使い古されたベタなストーリーでも“王道”と呼ばれるモノがありますが、それはあくまでイジりようがない位に完成されたパターンだから“王道”なのです。しかしこの作品のストーリーは、ただ単に使い古されたものを安易に使いまわしただけ。せっかくのキャラクターの良さを活かしきれておらず、非常に残念でした。勿体無い作品です。

 今回の評価
 キャラクターの良さを最大限評価しつつ、減点すべき箇所を減点して、+寄りの評価とします。しかし、前作よりも明らかな進歩も窺えますので、次回作を楽しみに待ちたいと思います。

 
 ……今週は久々にレビュー3本でキツかったです。ただ、来週は『タカヤ』の後追いレビュー1本だけになるので、楽過ぎなんですよね……。訳の判らない代原を読まされるよりは…なのですが、ちょっと寂しいですね。では、そんなところでまた来週。

 


 

2005年度第13回講義
6月3日(金) 人文地理
「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(8)

◎前回までのレジュメはこちらから→ 第1回第2回第3回第4回第5回特別番外編第6回第7回

 3月以来ご無沙汰しておりました旅行記ですが、漸く再開の運びとなりました。もう既に心は春旅行記を飛び越えて、夏に築地でどの寿司屋に入るか…という所に素っ飛んでいたりもするのですが(笑)、とりあえず記憶を半年前に強制送還させて、今しばらく想い出を綴ってみたいと思います。
 今回からは、いよいよこの旅のメインイベント・コミケサークル参加の模様をお送りする事になります。当日に会場へいらっしゃった方も、そうでない方も、講座開講以来の大イベントの舞台裏をどうぞご覧下さい。

 それでは、レポートに参りましょう。文中においては文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。


 サークル参加当日、駒木は朝7時前に起床した。りんかい線の始発で慌しく出立する一般参加時とは違い、余裕を持って朝を迎えられるのが有難い。浮き足立った心身を落ち着かせるため、まずはこの日も朝風呂に入って身を清めた。ちょっとした禊である。
 部屋に戻れば身繕いと荷物の整理。かさばる荷物は、コミケ終了後に売れ残りの同人誌と一緒にビッグサイトから宅配便で自宅に送ってしまうつもりだが、とりあえずは行商人のように膨らんだバッグパックを担いで行かなければならない。何度旅行しても、この最終日の荷物整理が一番ゲンナリする瞬間だ。入ってる荷物も荷物だしねえ。

 チェックアウトを済ませ、ホテル間近のりんかい線大井町駅から国際展示場駅へ。時間帯が中途半端な事もあって、普通の通勤列車ぐらいの混み具合。
 目的の駅に到着して、ホームからコンコースへ出ると、多くの参加者が改札口へ雪崩れ込んで行く。まるでフィーバーが掛かったパチンコ台の内部を見ているような。見ろ、人が銀玉のようだ。
 そんな中、駒木は喧騒から一歩引いた位置に退避して、今日の同人誌頒布を手伝ってくれるMさんと待ち合わせ。Mさんはインターネットを通じた昔からの親しい知人で、サークル参加経験者。普段は同じ兵庫県に住んでいるのだが、年末はちょうど関東に帰省中だと言うので、是非ともとお願いをした。快諾を頂いて本当に感謝。
 今回、駒木にとっては初めて尽くしのサークル参加。こちらも独学で色々と調べてはみたものの、“サークル参加ガイド”の類は圧倒的に少なくて、本当に足元も覚束ない不安さだったのだ。喩えて言うなら、「旅行の集合場所なんですが、とりあえず天安門広場に来て下さい」と言われた大学生のような心細さだったのである。(ちなみにこの喩え話、駒木の母校・甲南大学のとある東洋史専攻ゼミのゼミ旅行で起こった実話だったりする。駒木の所属していた西洋史専攻ゼミは何故か博多へ観光に行った)

 心細いと言えば、同人誌版『現代マンガ時評』を作り上げるまでも、模索、手探り、不安の連続だった。「最初で最後かも知れないからオフセ本作ります」と言ったは良いものの、よくもまぁそんな無茶をしたなと自分でツッコミを入れたくなる。
 今だから言える当初の計画からお話すると、最初は『現代マンガ時評』の総集編を各年度毎に出す予定だった。全てのレビューに追記(という名目の言い訳)を付けて、さぁどこからでも楽しんで頂きましょう…という壮大な計画。追記以外の原稿は既に書きあがっているのだし、準備期間も長いし、まぁ何とかなるだろうと悠長に考えていた。

 ──しかしその計画は早々に崩壊する。
 確かに原稿の“量”は何とかなる。だが、“質”がどうにもなっていなかったのである。

 追記の執筆のため、久々に開講当初・01年末からの「現代マンガ時評」を一読して、駒木はたちまち顔面蒼白に陥った。「うわ酷ぇ何コレ俺のレビューってこんなに的外れでイケてなかったの?」と声にならない叫びが脳裏を駆け巡る。03年の業務縮小までは、週6〜7回の講義の合間を縫って実施していたゼミとはいえ、ここまでとは……。
 で、読み出して僅か数分、冷や汗の気色悪さに耐えかねて、モニターに映る「社会学講座アーカイブ」のウィンドウの×印をクリックした。これはいかん、金とって見せるもんじゃない。というか、開講当初から「現代マンガ時評」を受講して下さっている方の慈悲の心に感謝すると共に、お見苦しい点だらけの講義を長年お送りして来た事を深くお詫びしたい。

 結局、今回は“最新版”の04年度分の講義レジュメで総集編を作って、それ以前の分は遠い将来に再考する事に決定。
 
そう言えば、名物北海道ローカル番組・「水曜どうでしょう」のDVD全集プロジェクトでもDVD化第1弾は当時の最新作だったなぁ。6〜7年前の放送開始当初分は、その後に「つまんないから期待するな」という警告付きで発売していたっけな。その気持ち、直に体験してみるとよく分かる。だって恥ずかしいもの、勢いの先走った若気に至ってる自分って。

 そういうわけで、04年度分の原稿がある程度揃うのと、コミケへの申し込みが無事終了した8月下旬からプロジェクト再始動。試行錯誤しながら誌面のフォーマットや冒頭の挨拶文をなどを作成し、「社会学講座」のレジュメからレビュー本文を全てコピー&ペーストして、そこへ追記を書き込んでいく。
 書き下ろしとなる追記では、レビューの時には人目を気にして出来なかった濃い話とか、「『D.Gray-man』にB−評価付けてたなんて、駒木見る目ねえ〜」とか、まぁ同人誌ならではの緩い文体で書き綴る。自分で言うのもアレだが、作業は順調だった。いや、順調過ぎて問題が発生した。ページ数とコストの問題である。

 オフセット本の印刷代金は、当然の事ながら本のサイズ(B5orA5)やページ数が大きくなるにつれて上昇する。印刷代金が上がると、これも当たり前の事だが頒価も上がってしまう。
 1冊あたりのコストを下げるには、印刷部数を増やすのが一番手っ取り早いのだが、駒木のように初参加のサークル、しかも評論文章本で部数を吊り上げるというのは無謀で危険な話である。今回は200部刷らないと刷った時点で赤字なので、止む無く200部オーダーするのだが、これでも有り得ない数字なのだ。
 で、この時の状況──1年間全てのレビュー原稿に追記を掲載するつもりで編集──だと、ページ数がA5版で200ページを超えてしまう。ウェブ上でアーカイブをまとめるたびに「文章だけとは思えない容量だな」と思ってはいたが、いざ紙ベースに落とし込んでみると、やはり強烈だった。そう言えば講座開設から1年ほど経った時、これまでの講義レジュメが400字詰め原稿用紙でどれくらいになるのか調べてみた事があったが、文字の洪水に押し流されて挫折したんだっけな。まったく、この3年半で具にもつかない講義をどれくらい垂れ流したんだか。誰か暇潰しがてら調べて頂けないだろうか。
 さてそんなわけで、200ページ前後を200部刷るとして印刷費を見積もると、これがなんと17万円以上もする。1冊あたりのコストは850円以上だ。これに対し、駒木が考えていた頒価は1冊ワンコイン・500円。どこをどうひっくり返しても予算オーバーではないか。さて、どうする。
 まず最初に考えたのが分冊化。頒価500円で収まる分厚さの本を3冊作る…というものだったが、これは「(駒木1人の)自力で表紙絵も用意できないのにどないすんねん」という物理的事情と、「特に敢えて分冊化するメリットが見出せない」というも根本的な問題もあってアッサリと断念。
 それから周囲の同人作家さん等と相談し、最後は「特に読んでもらいたい部分だけを抜粋し、頒価500円で収まるページ数でまとめる」という、至極真っ当な結論となった。大体、普段から「評価の低い時の読み切りレビューは痛々しい時がある」と言われるのだから、初見の人なら尚更なのである。それなら“佳作・良作紹介本”ということにしたら良いのでは…というわけだ。

 こうして、体裁と内容の概要は秋も深まって漸く確定した。予定ページ数も大幅に減り、むしろ障害は減ったほどであったが、それでもまだ脱稿までには紆余曲折あったのである。
 話が長くなりそうなので、続きはまた次回にて。(次回へ続く


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