「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・2)
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講義一覧
8/29 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」
(8月第5週分) |
8月29日(木) 演習(ゼミ) |
先週のゼミで実施した緊急特集に関しては、各方面から(刺激的なモノを中心に)様々な声を頂きました。 また、今回から「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」の連載作品について、特筆すべき点のあった作品について述べる、「今週号のチェックポイント」を開始します。これにより、連載が進むにつれて段々“味”が出てきた作品についてフォローが出来るようになると思いますし、レビュー作品が少ない新連載の谷間期のゼミをいくらか充実させる事が出来ると思います。 さらに今週と来週の2回に渡って、「週刊少年ジャンプ」夏季増刊「赤マルジャンプ・2002SUMMER」の全作品レビューを行います。ただし、作品数が多いので、普段のレビューに比べると、かなり簡単な内容になってしまうと思われます。あらかじめご了承下さい。 ……では、ゼミを始めましょう。 まずは情報なんですが、今週は1つだけ。 ……では、今週のレビューですが、新連載の谷間に入ってしまったため、今回の「ジャンプ」「サンデー」のレビュー対象作は、『──たけし!』打ち切りに伴う代原読み切り1作品しかありません。しかも、その代原を描いた作家さんが、島袋光年氏の猛プッシュでデビューを果たしたという経歴を持つ郷田こうやさん。何というか、凄まじいまでの因縁を感じさせるお話ですね(苦笑)。
☆「週刊少年ジャンプ」2002年39号☆ ◎読み切り『青春忍伝! 毒河童』(作画:郷田こうや) ……というわけで、“しまぶーの忘れ形見”という有り難くない異名を戴く事になりそうな、郷田こうやさんの代原作品レビューです。 郷田さんは第54回赤塚賞(01年上期)の佳作受賞者で、描いた原稿が代原として本誌に掲載されるのは、これで4回目という事になります。 さて、今回の『青春忍伝! 毒河童』ですが、まず結論から言ってしまうと、“代原の域は越えているが、連載を前提とする作品としては不満”という微妙なレヴェルのギャグマンガという事になるでしょうか。 しかし、これを郷田さん本人の過去作品と比較すると、格段の進歩が窺えます。 ただし、最初に触れたように、ここまでレヴェルアップを果たしても、まだまだ未熟な点も多くあります。これからの課題としては、間の取り方(ページをまたいでオチを見せる…など)の上達、もっとオチ部分にインパクトを持たせる事、そしてギャグのパターンを増やす事…などが挙げられるでしょう。 評価はちょっと甘目かもしれませんが、B+寄りのB。とにかく次回作が楽しみな作家さんです。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)《第3回掲載時の評価:B+》 主人公・セナの視点を通じて、アメフトの基本ルールを読者にさりげなく伝えたポイント、秀逸です。
☆「週刊少年サンデー」2002年39号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)《開講前に連載開始のため、評価未了》 語弊のある言い方かも知れませんが、相変わらず“人の死なせ方”が抜群に上手いですね。 ◎『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫)《第3回掲載時の評価:B》 やや良化の兆しです。今回みたいに、読者にストレスを与える一方で、少しずつ救いのある話が続けられるようになれば、画風が活きて来るのではないかと。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)《第3回掲載時の評価:A−》 回を追うごとに、どんどん良くなって来ています。レギュラーキャラ4人に、週代わりで準レギュラーキャラを交えていく作戦が功を奏している格好です。 ◎『一番湯のカナタ』(作画:椎名高志)《第3回掲載時の評価:A−》 正直、ここ最近は息切れ気味だと思っていたんですが、新キャラ・ワネットの登場で一気に形勢逆転! 見事にテコ入れ大成功ですね。
……と、いうわけで、以上がレビューと「今週のチェックポイント」でした。 それでは、これから「赤マルジャンプ」全作品レビュー(前編)です。前回と同様、本誌連載陣のショートギャグは対象外としました。 ◆「赤マルジャンプ」完全レビュー(前編)◆ ◎読み切り『電人タロー』(作画:小林ゆき) 本誌連載デビュー作『あっけら貫刃帖』が12回打ち切りの憂き目に遭い、一敗地にまみれた小林ゆきさんの復帰作です。 評価は微妙ですが、B寄りB+というところでしょうか。
◎読み切り『アマツキツネ絵巻』(作画:海図洋介) 昨年に『犬士ヒムカ』で天下一漫画賞佳作を受賞し、本誌デビューを飾った海図洋介さんの1年ぶりの新作となります。
第58回手塚賞(99年下期)で準入選を受賞、その後も散発的に「ジャンプ」系雑誌で作品を発表している吉田真さんの新作です。
高野ひろさんは、「週刊少年ジャンプ」系の雑誌には初登場となる新人作家さん。恐らく女性作家さんですね。 絵の方は、キャリア実質2年(プロフィールより)という事を考えると、線にも無駄が少なくてアマチュア臭さが感じられないのが良い感じです。ただし、表情の描き分けが全くと言って良い程出来ていないので、妙なぎこちなさが残っているような気もします。まぁこの辺りは、これからのキャリアが解決してくれる事でしょう。 第63回手塚賞(02年上期)で佳作を受賞、今回が受賞後第一作&デビュー作となる新人・安藤英さんの作品です。
第62回手塚賞(01年下期)で準入選を受賞したゆきとさんの受賞後第一作&デビュー作という事になります。 絵柄はまだ完成手前という感じ。トビラのダンクシュートシーンなんかは、下手な人には描けないアングルでしょうから、実力不足というわけでは無さそうです。どうやらペンではなくロットリングを使っているようですが、それがプラスになっていないのが問題点でしょう。 ◎読み切り『なるほど納得てんこもり !! おバカちん研究所』(作画:日の丸ひろし) 第49回赤塚賞(98年下期)で佳作を受賞以来、増刊号や本誌の代原で度々作品を掲載している日の丸ひろしさんのショートギャグ作品です。 ……というわけで、今週は目次順に前半の7作品のレビューをお送りしました。残るはまた来週です。 では、今週のゼミを終わります。また来週この時間に |
8月22日(木)・23日(金) 演習(ゼミ) |
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今週もゼミを始めます。 あと、最近よく当ゼミについて頂くご意見として、 ……それでは、気を取り直して講義へ。まずは情報系のお話ですが、今週は「週刊少年サンデー」系の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の6月期分の発表がありましたので、受賞者・受賞作を紹介しておきます。特に、今月は“入選”作が出て、受賞作の掲載が確定していますので、どうぞご注目を。
入選受賞作については、本誌か増刊に掲載決定、という事で、審査員サイドもべた褒めといった感じですね。当ゼミでも、本誌掲載の時は勿論、増刊で掲載になった場合でも、評価によっては「その他注目作」のカテゴリ内でレビューを掲載したいと思っています。 次は「週刊少年ジャンプ」関連ですが、どうやら鳥山明さんが『ドラゴンボール』の続編か、非常に関係の深い作品の連載を開始する模様です。 ……と、いうわけで情報系の話題は以上で、続いて今週分のレビューをお送りします。 今週は「週刊少年ジャンプ」が合併号休刊のため、レビューもお休み。春にやった「赤マルジャンプ」レビューも、現在のところは考えていません。(受講生の皆さんのリクエストが多ければ考えますが……) 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年サンデー」2002年38号☆ ◎新連載『きみのカケラ』(作画:高橋しん) 「週刊ビッグコミックスピリッツ」で、『いいひと。』、『最終兵器彼女』とヒットを連発して来た高橋しんさんが、心機一転(?)して、少年誌に進出です。 …と、蛇足が過ぎました。作品の内容に触れてゆきましょう。 まずはいつもながら独特の絵柄なんですが、適度にシリアスとデフォルメを使い分けていますし、世界観とミスマッチな絵柄でもないですので、これで良いんじゃないかと思います。 次にストーリー。 ただ、第1話のストーリー全体を俯瞰してみると、とにかく与える情報量が多すぎるのが気になるところです。 なので、本来の良い作品ならば、最終ページを読み終わった後には「続きが気になる。早く来週号読みたいなぁ」…と思わせるんですが、この作品は「やっと終わった…。とりあえずしばらく休ませて」と思わせてしまうんですね。これはちょっとさすがにマイナスかなぁ、と思います。 ……まぁ、色々言いたいことを言いましたが、この『きみのカケラ』、話のスケールも大きいですし、これでもう少し主役2人のキャラが立ってくれば、十分サンデーの主翼を担う作品になれる可能性はあると思います。 とりあえずの評価はB+寄りのA−としておきましょう。ただし第3回では変動の可能性が大です。 ◎新連載第3回『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫)《第1回掲載時の評価:B》 さて、「サンデー」では久々のバスケットマンガ『ふぁいとの暁』の後追いレビューです。 どうやらこの作品のスタイルは、「無茶な要求をされ続ける主人公が、決して笑顔を絶やさず、黙々と努力して課題を達成していくサクセス・ストーリー」で固まったような気がしますね。 …まぁそういうわけでして、『ふぁいとの暁』は、かなり使い古されたパターンのストーリーです。それが悪いとは言いませんが、同タイプの作品が多数出回っている以上、何がしかこの作品の独自性を出していかないと凡作で終わってしまいます。 評価はB−寄りBで据え置きです。現時点ではかなり苦戦が強いられそうです。何せ、今の「サンデー」にはスポーツ系連載作品だけで9作品もあったりしますから、その中に埋没しないだけでも大変だと思います。 ……と、いうわけでレビューも終了。続いて、今週のゼミの目玉・緊急特集をお送りします。 緊急特集! 「『がきんちょ強』は、何故『じゃりん子チエ』になれなかったのか?」 ……さて、冒頭で述べた通り、今週は緊急特集として、「週刊コミックバンチ」連載中の『がきんちょ強』(作画:松家幸治)についての分析を行いたいと思います。 ご存知の通り、『がきんちょ強』は、第1回「世界漫画愛読者大賞」で読者投票ポイント2位を獲得し、準グランプリを受賞した作品です。このゼミでも「世界漫画愛読者大賞」エントリー作(読み切り)掲載時と、新連載第1回にレビューを実施しました。(それぞれ2月20日分、6月6日分レジュメに掲載) 当ゼミでの評価は2回ともB+(漫画好きに推奨できる作品)。相当な数の問題点や、連載を続けて行く上での課題は山積みになっているものの、作者である松家さんの持っているセンスを高めに評価して、このランクをつけたのを記憶しています。 そういう状況に至って駒木は、「何故、ここまで『がきんちょ強』は嫌われるのか?」という疑問を持ち、その答えを出すために、この作品が強く影響を受けている名作マンガ・『じゃりん子チエ』(「週刊アクション」連載《完結》/作画:はるき悦巳)との比較・分析を行ってみる事にしました。 ──とまぁ、大袈裟な事を言いましたが、内容はそんなに大仰なものじゃありませんので、過大な期待と緊張は遠慮して頂いて、気軽に受講して頂ければと思います。 ※注:8月23日発売・現時点で最新号での『がきんちょ強』では、これまでの路線からの大幅な転換が図られました。これについても分析の最後に述べますので、分析自体は先号までの内容について行ったものだとご承知おき下さい。 1.『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』との関係 まず、この分析の前提条件として、『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』との関連性について説明しておきたいと思います。 『がきんちょ強』の読み切りが「コミックバンチ」に掲載された時点で、既に気がつかれた方も多かったと思いますが、この作品は、『じゃりん子チエ』の影響をかなり色濃く受けています。 まず、大阪かそれに近い地区の下町エリアが舞台で、登場人物の大半が関西弁(大阪の方言)で喋っているという点からして、かなり『じゃりん子チエ』に近いです。 そしてもう1点、これは意外と知られていないようですが、『がきんちょ強』の中で、鳥取出身のテキ屋が、語尾に「〜とっとり」をつけて話し、それを鳥取弁として通用させる…という事をやっているのですが、これも『じゃりん子チエ』で酷似した設定があるのです。 ──というわけで、『がきんちょ強』は『じゃりん子チエ』の影響をかなり色濃く受けているという事は間違いないと思われます。 それでは、次のトピックからは、そんな酷似した設定・内容の両作品の中で明らかに異なる点を指摘しつつ、その中で『がきんちょ強』の問題点を浮き彫りにしていきたいと思います。 2.『がきんちょ強』における、主人公と脇役の設定ミスについて 『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』の間で異なる点として真っ先に挙げられるのは、何と言っても主人公とそのキャラクターでしょう。 このポイントについては、両作品を見比べると一発で判りますので、あえて詳しくは述べませんが、『がきんちょ強』の主人公・強は、『じゃりん子チエ』では主人公・チエの“愚父”テツにあたるキャラクターです。よく言えば怖い物知らず、悪く言えば好き放題・やりたい放題な傍若無人キャラ、という事になります。 一方の『じゃりん子チエ』では、この“劇薬”キャラ・テツのエグい部分を程よく中和させる事に成功しています。 ……このように、『じゃりん子チエ』では巧みにテツという“劇薬”を中和して上手く活かしているわけですが、先に述べたように、『がきんちょ強』では、それに大失敗してしまっています。 『がきんちょ強』の登場人物を使って、本当に面白いギャグを作るなら、強の妹をチエみたいな主人公にして、強の傍若無人振りを痛快に阻止するような話が良いでしょう。『じゃりん子チエ』そのまんまですが、そこまで設定を真似ておいて何を今更、という話です。 当然の事だとツッコミを受けそうですが、『がきんちょ強』では、主人公・強は他のキャラとは完全に“格”の違う絶対的な主人公になっていて、話も一貫してずっと強の視点から描かれています。小説で言えば“一人称”のお話です。 では、一方の『じゃりん子チエ』はどうかというと、実はこの作品、チエを一応の主人公にしながらも、場面場面で主役級キャラが代わってゆく“三人称”ドラマなのです。 ……ですから、『がきんちょ強』をもっと質の良い作品にするためには、強以外のキャラクターを主役級に据えた話を散りばめて、脇役のキャラをどんどん立てていく事が必要だと思われます。
さて、これまで『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』にある、多くの共通点といくつかの相違点を挙げて来ましたが、ここで両作品に最も大きな違いを挙げて、この分析の締めくくりとしたいと思います。 その“最も大きな違い”とは、小見出しに挙げた、「ギャグ満載の人情モノ」と「人情味溢れるギャグマンガ」との差であります。勿論、前者が『じゃりん子チエ』で、後者が『がきんちょ強』ということになります。 『じゃりん子チエ』は、とても“笑い所”の多いマンガでありますが、実はギャグマンガではなくて人情モノマンガです。ストーリーの間に非常に多くのギャグが散りばめられていますが、最終的には人の心の暖かさを重視したドラマになっています。読者を感動させるべき所では、完全にギャグを抜いて感動させます。そのため、いくら作中で「フンドシから漏れたスカ屁以下のような…」という下品な表現が連発されても、読後感が爽やかなのです。 そういうわけで、『がきんちょ強』はギャグと人情のメリハリが利いていないのです。これを何とかしない事には、多数読者の支持は得られないことでしょう。
──と、思ったら、最新号(8/23日発売号)にて、『がきんちょ強』は大幅なイメージ転換が図られました。最後にこれについて述べておきましょう。 5.『がきんちょ強』に未来はあるのか?〜人情路線への大転換 !? 最新号の『がきんちょ強』は、これまでの話とは明らかに違う話が掲載されました。主人公・強が引き起こすエゲつないドタバタを描いた話ではなく、ほぼギャグを封印した人情モノマンガになっていたのです。 ポイントは、強が学校の友人たちと空き地でサッカーをしている途中に、ボールが塀を乗り越えて人家の盆栽鉢植えを壊してしまうシーンです。 今回の話は、メタファー(暗喩)の利かせ方も見事で、非常に良質な話に仕上がっていました。なので、こういう話になっても評価はできるのですが、急に良い子になってしまった強に違和感を感じたのも確かです。萩原流行が『いいひと。』の主役を張るくらい、これはヘンな事なのです。 ……結局、この“路線変更”は、『がきんちょ強』が「バンチ」の看板作品になることを諦め、ウェブサイト「OHP」のしばたさんが仰るところの“ごはん系”のポジションを目指して、ただ雑誌の片隅で細々と生き残る道を選択した、という事になるのでしょう。 ……と、いうわけで、今週号の路線変更もあって締まらない終わり方になりましたが、以上で今回の特集を終わります。 次回のゼミは「ジャンプ」の代原レビューを中心にお送りする事になりますが、他にも何か佳作・良作が見つかれば、それも紹介したいと思います。 では、また来週のゼミをお楽しみに。 |
8月15日(木) 演習(ゼミ) |
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さて、お盆、そして終戦記念の日にお送りする『現代マンガ時評』です。こんな日に「ジャンプ」の打ち切りがどう、とか、「バンチ」の編集姿勢がどう、とかいう妙に湿っぽい話をするのはアレなのですが(苦笑)、まぁ、いつも通りの平常心で講義を実施したいと思います。 まずは情報系の話題から。今週は「週刊少年ジャンプ」系の月例新人賞・「天下一漫画賞」・6月期の審査結果発表が出ています。今月は久々にデビュー確定の佳作も出ているようです。では、例によって受賞者・受賞作一覧をご覧頂きましょう。
佳作の『だんでらいおん』は、本来ならば冬の増刊号でデビューするはずなのですが、『世紀末リーダー伝たけし!』が急遽打ち切りになった事で、いきなりの本誌登場もあり得ます(ページ数は合いませんが、他にもう1作品取材休みが出た時は、どうにか掲載可能)。受講生の皆さんも、頭の片隅くらいには置いてもらいたいと思います。 そして話は前後しますが、ここでも島袋光年氏逮捕関連の続報を改めてお伝えしましょう。 ……情報系の話題は以上です。では、今週のレビューに移りましょう。 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年37・38合併号☆ ◎新連載第3回『SWORD BREAKER』(作画:梅澤春人)《第1回掲載時の評価:保留》 今日のレビュー1作品目は、第1回で評価を保留していた『SWORD BREAKER』からです。 第1回のレビューでは、全体的に荒っぽい絵柄に注文を出しつつも、テンポが早くて読み応えのあるストーリーには及第点をつけました。評価自体は“ファンタジー世界編”での様子を見てから、という事で保留とさせてもらったんですが、マズマズの好ダッシュと言って良いものだったと思います。 が。 第2回、第3回とファンタジー世界での話が進むにつれて、この作品に対する期待が物凄い勢いで萎んでいってしまいました。 今の時点で辛らつな判断を下すのは早計かも知れませんが、この『SWORD BREAKER』、当ゼミでお馴染みのファンタジー作品・『キメラ』(作画:緒方てい)からオリジナリティと表現力を差し引いたような、読んでいて居た堪れない作品になりそうな気がします。 打ち切りを決めるアンケートは低年齢層が中心のため、果たして小・中学生がこの作品をどう評価するかは分かりませんが、この作品、少なくとも恵まれた終わり方はできないのではないかな…と思います。 評価はB−に。設定やキャラクターで余程のテコ入れをしない限り、評価が覆る事はないでしょう。
今週は代原ではない中編読み切りが1作品掲載されています。『MIND ASSASSIN』や『明稜帝梧桐勢十郎』などでお馴染み、かずはじめさんの新作です。 まず絵からですが、この人くらい作品ごとの絵柄変化が少ない人も珍しいですよね。まぁ、クセのあるタッチでもパッと見で下手には見えない絵なので、このままでも十分だと思いますけどね。 さて、ストーリーの方。今回、この作品のレビューをするにあたって、マンガの奥深さのようなものを1つ勉強させてもらいました。 ただ、ストーリーそのものに新味が薄かったため、評価はA−くらいに落ち着いてしまいます。何というか、物凄く上手い漫才師が若手のネタをやったらどうなるか?…みたいなケースですからね、今回は。 《その他、今週の注目作》 ◎『エンカウンター〜遭遇〜』(週刊コミックバンチ2002年29号より連載中/作画:木之花さくや)《読み切り掲載時の評価:B/連載第1回掲載時の評価:保留》 ご存知、「世界漫画愛読者大賞」グランプリ受賞作です。今週号(36・37合併号)で連載8回目という事になりますが、ようやく作品の全体像らしきものが見えて来たので、後追いレビューをしてみたいと思います。 …さて、この作品ですが──。 では、具体的にこの『エンカウンター』がどういう(ダメな)作品なのか、概説していきます。 まず、連載開始から2ヶ月弱に渡って次々と伏線が張り続けられます。深まり続けるばかりの謎、そしてワラワラと現れる主人公たちを見つめる謎の人物。メチャクチャ伏線の数が多いです。ミステリ系マンガでもそこまで伏線引きません、というくらい多いです。その上、その伏線は7週間にわたって小出しで提供されます。 またこの作品では時折、話に出て来る超常現象等を解説するためにマニアックなウンチクが挿入されます。が、難しい資料をキャラクターに棒読みさせる形ですので解説になってません。 でも、ここまではまだ我慢できます。どれだけ伏線を張ろうが大風呂敷広げようが間延びさせようが博識ぶろうが構いません。ちゃんと納得できる形で、「おお、これは面白いまとめ方だなぁ」と思わせてくれれば、少々の我慢はさせてもらいますよ。 さらに作品を読んでみると分かるのですが、犯人が判明してからもまだ2〜3週間引っ張るようです、木之花夫妻。いつになったらUFOとか、イングランド騎士団が発見したインダス遺跡の話になるのでしょうか……? いや、もう期待も何もかも打ち砕かれてしまった今ではどうしようもないのですが……。 ……まぁそういうわけで、『エンカウンター』は、「この作品をこのネタで面白くしよう」という描き方ではなく、「このネタでできるだけ長い間引っ張ろう」という描き方をされています。で、話の展開が難しい場面では「この難しい場面をいかに面白く乗り切るか」ではなく、「この難しい場面からいかに逃げ出すか」を最優先に描かれています。 もうハッキリ言います。志が低すぎます。 これ以上書いていると、こちらも受講生の皆さんも嫌な気分になるだけなので、とっとと評価に行きます。
最近では「バンチ」の部数も減っていると聞きますし、どうにかしないと、本当に地盤沈下を起こしそうでヤバい気がします。
……と、今日は後半湿っぽい事ばかり言っちゃいましたが、どうかご容赦を。それでは今週のゼミを終わります。 |
8月8日(木) 演習(ゼミ) |
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いやー、ビックリしましたねぇ。島袋光年氏、女子高生買春で逮捕。詳しくはすぐ後に述べますが、連載中のメジャーマンガ誌連載作家が不祥事で逮捕されたっていうのは、非常に珍しい事じゃないでしょうか。 さて、ではゼミを始めましょう。今週のレビュー対象作は3本という事で、まぁ講義をする方にしても受講される人にしても丁度良い数ではないかと思います。 では、まずは皆さんお待ちかね(?)の情報系の話題から。 冒頭でもお伝えしましたが、昨日(8/7)、「週刊少年ジャンプ」で『世紀末リーダー伝たけし!』を連載中の島袋光年氏が児童買春の疑いで逮捕されました。
他紙の報道によると、島袋氏は警察の取り調べに対して既にいくつかの余罪を自供している模様です。しかしながら当講座といたしましては、ウルトラマンコスモスの一件もありましたし、とりあえず現段階では断定的な扱いをする事は避け、続報を待ちたいと思います。 ……さて、情報をもう1つ。
☆「週刊少年ジャンプ」2002年36号☆ ◎新連載第3回『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)《第1回掲載時の評価:B+》 今週もセンターカラー&ページ増と、編集部のプッシュが続く『アイシールド21』の後追いレビューです。 この3回目までで、主人公を含めた主要キャラ3人のキャラ立てをこなして、いよいよ次回からアメフトの試合に突入する事になるわけですが、確かにここまでの話の運び方やコマ割りなどはソツがありません。上手いです。主要キャラ3人も、容姿・性格共にハッキリと区別されていますし、どの要素をもってしても、間違いなくプロの描く作品と言えると思います。 ですが、この作品が「他のプロの描いた作品と比べて上位にランクされるのか?」と考えると、やはり少し首を傾げざるを得ません。 一言で言えば、「名作になるまでのプラスアルファが足りない」というところでしょうか。それは即ち、アンケート葉書に記入される「面白かった作品3つ」に入るための決め手に欠けているということにもなります。 評価はB+で据え置き。打ち切りへ突き抜けないためにも、よりインパクトのある話作りに励んでもらいたいと思います。 今週は『ホイッスル!』が休載のため、代原が掲載されました。それにしても最近の「週刊少年ジャンプ」は弛み過ぎです。当たり前のように毎週代原が載る雑誌なんてどうかしてますよ、まったく。 ……まぁこんな事、ここで言ってもどうにもなりませんから話を進めましょう。今回の代原作家である原淳さんは、調べてみると意外と豊富なキャリアが浮かび上がってきました。 では、作品の話に移ります。 評価はB−。『たけし』緊急打ち切りで代原作家さんにはたくさんのチャンスが回って来そうな気がしますので、原さんにも早いところリベンジしてもらいたいものです。
☆「週刊少年サンデー」2002年36・37合併号☆ ◎読み切り『白い夏』(作:武論尊/画:あだち充) マンガ界の超大物タッグによる中編読み切りの登場です。原作の武論尊さんは、昨年『ライジング・サン』で玉砕して以来の「サンデー」本誌登場となります。 さて、作者お2人のプロフィールは余りにも有名すぎるので割愛するとしまして、早速作品の内容に話を進めましょう。 あだちさんの絵についても言及する余地は無いですね。まぁ、「もうちょっとキャラの顔を他作品と描き分けたらどないや」と言いたくなりますが、これももはや、あだちさんの確信犯に近いようですので、追及するのは止めておきます。 で、武論尊さんのストーリーの方ですが、こちらもベテラン作家さんにありがちな陳腐さが無くは無いのですが、それよりもよく練られたプロットに敬意を表するべきでしょう。回想シーンと現在のシーンでセリフをシンクロさせる小技も効果的ですし、何よりも50ページ以上のお話で全く間延びさせていないという点はさすがだと思います。 評価は難しいところですが、「週刊少年サンデー」のマンガとしてはB+、青年誌や成年誌のマンガとしてはA−ということにしたいと思います。
……と、いうところで今週のゼミも終了です。次回は「サンデー」が合併号で休刊なんですが、その分、「コミックバンチ」などからレビュー対象作を引っ張って来られれば…と思います。では、また来週。 |
8月1日(木) 演習(ゼミ) |
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さて、8月最初のゼミを実施するわけですが……。 いやぁ、大変です。今週のレビュー対象作品が、「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」だけで6本あるんですよ。「ジャンプ」なんて連載4本も休んでるのに(から?)6本。 ……と、無駄口叩いてないで、ゼミの方を進めていきましょう。今日はお話するような情報系の話題もありませんし、早速レビューの方へ。 今日のレビュー対象作は、「週刊少年ジャンプ」から新連載1本と読み切り1本、そして「週刊少年サンデー」からは、新連載1本、新連載第3回の後追いレビュー1本、読み切りが1本、そして前号からの前・後編モノの総括レビューが1本。2誌合わせて6本のレビューを実施します。もう何だか泣きたいですが、やります。下手に来週回しとかにすると、「ジャンプ」に2本代原が入ったりして、結局今週と同じような事になったりしそうなんで……。 レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。
◎新連載『SWORD BREAKER』(作画:梅澤春人) 気が付いたら、もう中堅というよりベテラン作家になりつつある、梅澤春人さんの新連載が登場です。梅沢さんは、「週刊少年ジャンプ」では5回目の連載となります。 さて、この作品は、本誌2002年10号に掲載された同名読み切り作品の連載リニューアル版です。(評価詳細に関しては2月6日付レジュメを参照のこと) ではまずいつも通り絵柄から。梅澤作品を読んでいるといつも気になるのですが、とにかく無闇に顔アップとバストアップのコマが多いんですよね。今回はまだ新連載第1回という事で、梅沢さんにしてはかなり凝った構図が使われたりしていますが(おまけに遠近感が結構グダグダなんですが^^;;)、これはあまり感心できる事じゃありません。 …と、絵柄の方はかなり苦言を呈させてもらったのですが、ストーリーの方はと言うと、読み切り時からの大幅なリニューアルが功を奏していて、まずは及第点というところでしょうか。冒頭のコテコテファンタジーさ加減にはいささか辟易しますが、現代劇に話が飛んでからはテンポが良くて“読ませて”くれますね。普通の作家さんなら何話か引っ張ってしまいがちな現代劇編を1話でケリをつけてしまったのは大変良かったと思います。ただ、またちょっと絵柄の話に戻りますが、年を追っても虎一の顔が老けないために時代の進行が分かり辛いのは問題だと思いますが。21歳の顔と30歳の顔が同じというのは、現実はともかくとして、マンガ的には良くないでしょう。
◎読み切り『CROSS BEAT』(作画:天野洋一) 第63回手塚賞(02年上期)で、最高評点を獲得して準入選となった、天野洋一さんの『CROSS BEAT』が本誌に掲載となりました。 ※談話室等で色々なご指摘を受けるのですが、ジャンプ系新人の情報をサンデー系新人のそれに比べて詳しく提供できるのは、ジャンプ系作家さんの情報を扱うウェブサイトの方が圧倒的に充実しているからなんですよね。駒木が把握している範囲で秀逸なサイトを挙げると、「シェルター」さん、「葵屋」さん、「KTRの趣味の館」さん。特に「KTR」さんは完成度が凄いです。 では、作品レビューを進めていきましょう。 評価は、やや厳しいかもしれませんがB+としておきましょう。自分に足りないモノを早く見つけられるよう、頑張ってもらいたいものです。
☆「週刊少年サンデー」2002年34号☆ ◎新連載『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫) 「サンデー」本誌02年15号にて、『背番号は○』が掲載された、あおやぎ孝夫さんが連載を獲得して「サンデー」に凱旋です。『背番号──』掲載時は、当ゼミでも「ぜひ連載を」と言っていただけに、大変嬉しく思っています。(詳しい評価は3月13日付レジュメを参照) あおやぎさんは、今から約4年前の第43回「新人コミック大賞」に入選してデビュー。「月刊コミックGATTA」で連載を獲得していたのですが、残念ながら雑誌休刊により打ち切りとなり、「サンデー」に移籍して来ました。持ち前の爽やかな作風が連載でどこまで威力を発揮するのか、見ものです。 絵柄に関しては、読み切り掲載時にも述べましたが、全く問題ありません。躍動感のあるバスケシーンの描写も巧みで、基礎画力の高さを感じさせてくれます。 7月18日付ゼミで1回目のレビューを行った、『いでじゅう!』の後追いレビューです。 一言で言いますと、かなり良くなっています。……というより、モリさんが前から持っていた良い所が目立ち始めた、と表現した方が良いでしょうか。 成功の要因は、主人公よりも目立つ変態系脇役キャラのキャラ立ちを最優先して、そちらを実質上の主役に据えてしまった思い切りの良さでしょうか。もうどう考えても主役は林田じゃなくて、オカマチョンマゲの藤原になっちゃってますからねぇ(笑)。 これであとは、通勤・通学電車で読んでいると笑いを堪えるのに苦労してしまうようなホームラン級のギャグを量産できるかどうか。それさえ出来れば、『神聖モテモテ王国』(作画:ながいけん)の再来となりそうです。 評価は迷うところなんですが、B+寄りのA−に大幅アップとさせてもらいましょう。これからの更なるレヴェルアップに期待です。 『名探偵コナン』の青山剛昌さんが不定期で本誌に掲載するライフワーク的作品・『まじっく快斗』の登場です。 『まじっく快斗』は、『名探偵コナン』の世界とリンクしている怪盗モノの作品。つまり、両作品で主人公が逆の立場になっているわけですね。 もう絵柄については、評価するまでもないキャリアと技術を持った作家さんですので割愛させてもらいます。 評価はB寄りB+。昔のゲーム雑誌風のアオリで言うと、「青山剛昌ファンなら買い!」みたいな作品でしょうか(笑)。 「少年サンデー」新人・若手読み切りシリーズ「荒ぶれ昇龍!」の第5弾、ラストを飾ったのは、01年度11月期「サンデーまんがカレッジ」入選受賞作、ささけんさんの『ミリ吉四六』です。 さて、『ミリ吉四六』受賞発表時の編集部選評は以下のようなもの。
この作品を読んだ後、改めてこの選評を見てみると、確かに簡潔にこの作品の全てを言い当てているように思えます。ですから、もうレビュー終わらせたいんですが、疲れたし(笑)。 ……まぁ冗談は止めにして、もうちょっと詳しくレビューをしてみましょう。 評価はA−寄りのB+としておきましょう。早く次回作が読んでみたい作家さんの1人です。
……と、やっと6作品のレビューをする事が出来ました。これが再来週くらいになると、一気に楽になれるんですが、そうなったら今度はネタ不足ですからね。難しいものです。では、また来週。 |
7月25日(木) 演習(ゼミ) |
さて、今週もゼミの時間となりました。 実は今週、採用試験明けという事で、色々な企画やら『エンカウンター』の再レビューやらも考えていたんですが、この忙しさの前に全てご破算になってしまいました(苦笑)。 まぁ、とりあえず今週はレビュー3本ということで、どうぞよろしく。ではまず、情報系の話題を軽く。 先週にも少し触れましたが、「週刊少年ジャンプ」の打ち切り2作目は、やはり『NUMBER10』(作画:キユ)でした。 ……今週の情報系ネタはこれくらいでしょうか。それでは時間も切羽詰ってますから、早速レビューへと移りましょう。 今週のレビュー対象作は「週刊少年ジャンプ」からの2本と、「週刊少年サンデー」からの1本です。今週から前・後編で掲載の『まじっく快斗』は、来週の後編掲載を待って2回分まとめてのレビューを行います。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年34号☆ ◎新連載『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介) 「ストーリーキング」ネーム部門大賞受賞→3月に前・後編で本誌掲載…という経路を辿って週刊連載となりました、若手作家さん2人による大型新連載のスタートです。 さて、お2人のプロフィールや読み切り版『アイシールド21』のレビューなどは、以下のリンクを辿ってご覧下さい。 ◆村田雄介さんのプロフィールと、村田さんの読み切り『怪盗COLT』のレビュー……2月20日付レジュメ ……長い間サボらずに仕事してると、いざという時に役立って、我ながらイイ感じです(笑)。 では、レビューに移りましょう。 まず絵柄に関しては何も注文つけなくてもいいと思います。むしろ、アシスタントを動員しているためか、以前よりもクオリティが上がっています。 そして肝心のストーリーですが……。 ただ、ここに来て新たな問題点も浮上しています。 評価は、とりあえずB+としましょう。これからしばらく後には、いくつかの長期連載が終わりそうな気配ですので、あまり打ち切りの心配はしなくて済みそうです。それを考えると、キユさんってのは本当に間が悪い人ですねぇ……。 ◎読み切り『もて塾恋愛相談』(作画:大亜門) 今週は『シャーマンキング』の原稿が落ちて休載ということで、代原が掲載されました。 さて、それではレビューへ。 まずは絵柄からですが、新人のギャグ作家さんにしてはなかなか作画が手慣れていますね。ギャグ作家としてなら十分プロで活動していける力は備えていると思います。大亜門さんの年齢が24歳という事を考えると、アマチュアなどで活動の経験があるのかもしれませんね。 そしてギャグ全般の評価ですが、まず驚かされるのは、構図とテンポの巧みさですね。コマ割りやセリフ回しにおけるギャグマンガの基本形は完璧にマスターできています。ちゃんと見せ場では表現をオーバーにするなど、その辺りのセンスも非凡なものを持っていますね。あまりにも上手くまとめているので、やや古臭く感じてしまうほどです。新人なのに既にいぶし銀というのは非常に珍しいと思われます。 評価は新人さんの習作としては高評価のBを進呈。比べちゃアレですが、『シュールマン』のクボヒデキ氏よりはよっぽど将来性がありそうです。
☆「週刊少年サンデー」2002年34号☆ ◎読み切り『カラス〜the master of GAMES〜』(作画:佐藤周一郎) 新人・若手読み切りシリーズ「荒ぶれ昇龍!」の第4弾は、これが本誌2度目の登場となる新人さん・佐藤周一郎さんです。 佐藤さんが以前本誌に登場したのは「サンデー特選GAGバトル7連弾」の時で、『ピー坊21』という作品を発表しています。 絵柄はまだ、以前からの課題であるタッチの堅さ…というかアマチュア臭さが抜けきれていないのですが、5ヶ月前よりは幾らかレヴェルアップしています。あとは、前作はゆうきまさみさんの影響が見てとれたのに、今回はそれがほとんど無くなっているのが気になりますね。この間、他の作家さんのアシスタントなどをして画風が若干変わったのかも分かりません。 そしてストーリー。まず、かなりストーリーの引っ張り方が強引なのは否定できませんね。舞台設定もかなり無茶ですし、状況説明も不足しすぎです。ただ、話そのものは比較的分かりやすい流れになっているので、読み難いという事はありません。これに関しては一応の評価が出来ると思います。あ、オチはとても面白かったですね。ここも評価できるポイントです。 評価は一応Bを進呈しましょう。現時点では連載までの道は遠いと思いますが、どんどん才能を磨いていって欲しいと思います。 ……と、いうわけで今日のゼミは以上で終わります。来週のゼミをお楽しみに。ではでは。 |
7月18日(木) 演習(ゼミ) |
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特編カリキュラム中でも、ゼミだけは平常実施です。今週に入ってから受講生の数がジリジリ減っていて、メチャクチャもどかしい気分なんですけれども、これで休んでる受講生さんが復帰してくれれば……と思っています。どうぞよろしく。 さて、まずは情報系の話題を手短に。 作品別のポイントも挙げておきますね。まず『アイシールド21』は、読み切りではイマイチ踏み込んでいなかったアメフトシーンをどう描ききるかで完成度が随分と変わって来るでしょう。 新連載に伴って、入れ替わりに最終回を迎える作品も2つ。1つは以前から打ち切りが確実視されていた『少年エスパーねじめ』(作画:尾玉なみえ)で、今週もう最終回を迎えてしまいました。また、もう1作品は、どうやら紆余曲折の上に『NUMBER10』(作画:キユ)で落ち着きそうな感じに。『世紀末リーダー伝たけし』も一時期は人気的にヤバそうだったんですが、ここまで来たら今のエピソードが完結するまで思う存分描いてもらう方針のようです。 次に、「週刊少年サンデー」の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の結果発表がありました。
1ヵ月分のみの発表ということで、やや低調な結果に。やっぱりこの辺に、「サンデー」の「ジャンプ」との新人開拓力の違いが出てしまっている気がします。こればっかりは構造的な問題なのでしょうね。 さて、それでは今週のレビューへ。今週のレビュー対象作は、「サンデー」から2作品と、「週刊ビックコミックスピリッツ」から高橋しんさんの読み切り『LOVE STORY, KILLED.』をお送りします。 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年サンデー」2002年33号☆ ◎新連載『いでじゅう!』(作画:モリタイシ) 先週のゼミでもお伝えしました通り、「サンデー」では今週から新連載とベテラン作家さんの読み切りシリーズが始まりました。今週はその第1弾ということになります。 この作品の作者・モリタイシさんは、「少年サンデー超増刊」出身の若手作家さん。今年の2月に本誌で読み切りが掲載されていますので、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。モリさんのプロフィールや、その作品の詳しい評価、さらに画力についてのコメントは、こちらのレジュメを参照してください。 …というわけで今回は、作品全体の完成度などに限定して話を進めて行きたいと思います。 まず、この作品はコメディに近いギャグマンガですね。ごく普通の学校が舞台で、ごく普通の少年を主人公にし、そこへ変態チックな脇役を多数絡ませることで笑いを呼ぶ…という手法がとられています。 では、この作品も同じような経路を辿って、マズマズの成功を収めるのか、というと、現時点ではやや疑問が残ります。 もちろんこの不利なスタイルでも、その不利さを覆して、爆発的な笑いを期待できる破壊力十分のギャグが出来ていれば問題ないわけですが、この『いでじゅう!』の現時点の完成度では、「悪くない」程度の評価は出来るものの、残念ながら爆発的な笑いが期待できるレヴェルには至っていないようです。 ただ、モリさんは理詰めでギャグが作れる知性派のギャグ作家さんですし、余り描かないだけで女の子の絵も上手です。これから上手くテコ入れ出来れば、作品の質が大きく変わってきそうな余地も残っているはずですので、もう少し様子をジックリ見てみたいと思います。 現時点の評価はBということに。あと2週で評価が大きく変わる可能性がありますので、次々回のレビューもお楽しみに。
◎読み切り『ニポリの空』(作画:小山愛子) この作品は、5週連続の若手・新人読み切りシリーズ「荒ぶれ昇竜!!」の第3弾という事になります。 そんな小山さんの絵柄ですが、どことなく師匠の西条さんの影響も見受けられますが、ペンタッチそのものの個性が強いため、よくある“絵柄を見るだけで誰が師匠か判ってしまう”というパターンには陥っていません。「模倣から始めて一歩先を」を上手く実現できているのではないかと思います。 そしてストーリーの方ですが、こちらは“とにかく若さに任せて勢い良く突っ走ってしまおう”という、良い意味にも悪い意味にも取れる開き直りを感じさせますね。 評価はオリジナリティを買って、B+寄りのBという事にしておきましょう。とりあえずもう1作品読んでみたいと思わせてくれる作家さんだと思います。
《その他、今週の注目作》 ◎『LOVE STORY, KILLED.』(ビッグコミックスピリッツ33号掲載/作画:高橋しん) 今回の注目作は、高橋しんさんの『最終兵器彼女』外伝、『LOVE STORY, KILLED.』です。 有名な作家さんですから、プロフィールや絵柄についての説明は不要でしょう。レビューはストーリーについての評価を中心にしてゆくことにしますね。 ではレビューを始めるんですが、この作品、まずは話全体の完成度は極めて高い、という事を先に述べておきましょう。 ……さて、で、この作品なんですが、高橋さん本人も暗に認めてますように、マンガとしては極めて異色な作品だと思います。 まず1点目としては、「この作品は極めて文学的(小説的)である」という事が挙げられます。しかも、まるでエンターテイメント色の無い写実主義的な内容となっています。 もともと高橋さんはネーム力・話の構成力のある作家さんですが、今回はそれをとことんまで突き詰めたような仕上がりになっていますね。無機物を語り手とする事で徹底的にモノローグを増やし、それをストーリーテリングの中心に据えています。その結果、極めて3人称小説に近いマンガという形になりました。 そして2点目は、“死”の概念の描き方についてです。 第一線で活躍している作家さんは、個々それぞれの“死”の描き方に対するスタンスを持っています。 例えば、アニメ版『エヴァ』や『ふしぎの海のナディア』の監督を務めた庵野秀明さんは、“死”をとことんまで重たく描くことに長けた人で、どの作品においても、「人が死ぬ」=名場面と言ってもいいほどです。 で、この『LOVE STORY,
KILLED.』はどうかといいますと、滅亡寸前の地球、しかも戦場が舞台ということもあって、かなり命を軽く扱っているように見えます。勿論、それはそれでいいんですが、何だか、どうにも作品全体から漂う違和感が拭えないのです。 あと、この作品では“死”、つまり“殺す”描写の他に“犯す”描写も随所に見受けられます。戦争では殺人と強姦が付き物ですからそれはそれで正しいんですが、あくまでも事象としての重さは「殺人>強姦」でなければならないんですよ。物の理として。 今まで述べた事を一言で表現すると、「こんな重たいテーマの作品なのに、それを描くにあたっての作者の覚悟が足りない」というところでしょうか。そのため、話自体は素晴らしいのに、演出方法でズレを生じさせてしまって、読者にストレスを与えるものになってしまいました。非常に勿体無いと思います。 タラタラと述べてきましたが、ここで評価を。
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7月11日(木) 演習(ゼミ) |
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また後でお話しますが、来週から「週刊少年サンデー」で新連載ラッシュが始まります。しかも新鋭・大物の実力派が揃っていてなかなかのラインナップ。楽しみではあるんですが、よりによって採用試験の直前に始まらなくても……。 あと、直リンク付きで『ロロスポ』さんから質問されちゃったんでお答えしますが、駒木が「週刊少年マガジン」の新連載&読み切りレビューをやらない理由は、物理的な事情に加えて、どうも「マガジン」のマンガと駒木の感性が合わないからなんですよ(苦笑)。 ……と、私信が長くなってしまいました。取り急ぎ、情報系の話題からいきましょう。 まず、「週刊少年ジャンプ」の月例新人賞・「天下一漫画賞」の5月期の結果発表から。
今月は佳作こそ出なかったものの、なかなかの豊作だったようです。特に注目なのが13歳の最終候補ですよね。絵柄とか見ると、確かに13歳とは思えないレヴェルに達しています。あとは人生経験が少ない部分を、話作り・キャラ作りの上でどうフォローしていくかでしょうね。 さて、次に「週刊少年サンデー」の話題を。 そして読み切りのラインナップは、青山剛昌さんのライフワーク的作品・『まじっく快斗』(前・後編)と、武論尊さん&あだち充さんという豪華タッグによる『白い夏』の2作品。恐らくレギュラーの作品を休載させて調整しつつの掲載になるでしょうが、こちらも楽しみにしておきましょう。 ……それにしても「サンデー」は勝負をかけてますね。最近部数低迷が囁かれる「マガジン」相手に猛追をかけに行ってるのか、それとも「チャンピオン」の猛追を防ごうとしているだけなのか(笑)。 さて、それでは今週のレビューへ。今週は「サンデー」から読み切り1作品、そして「ビッグコミック・スペリオール」から新連載1作品を紹介します。文中の7段階評価はこちらをどうぞ。
☆「週刊少年サンデー」2002年32号☆ ◎読み切り『プレイヤー〜禁断のゲーム〜』(作:若桑一人/画:田中保左奈) 「少年サンデー」の若手・新人読み切りシリーズ・“荒ぶれ昇竜!”の第2弾は、「少年サンデー超増刊」連載作品の本誌逆上陸です。 それでは早速レビューへ移っていきましょう。 で、次にストーリーなんですが……。 評価はB+。結果的に話が平坦になってしまったので、これでも甘めの評価になるんでしょうが、ストーリーそのものの構成力と、絵の見栄えは良かったので、プラマイ相殺してこの評価で良いんじゃないかと思います。
《その他、今週の注目作》 ◎『ギラギラ』(ビッグコミックスペリオール掲載/作:滝直毅/画:土田世紀) 名作『あずみ』の実写映画化が決まり、さらに『本気のしるし』や『医龍』などの佳作・秀作が出揃って、にわかに水準が高くなっている「ビッグコミックスペリオール」ですが、今回、また期待できそうな作品が新連載ということになりました。題材はヤング〜大人向雑誌ならではのホスト業界のお話です。 原作の滝直毅さんは、随分昔から手広くマンガの原作の仕事をされている方で、最近では『サラリーマン金太郎』のノベライズも担当したりもしています。ちょっと変わった所では、第1回「世界漫画愛読者大賞」で『満腹ボクサー徳川。』が最終候補に残った日高建男さんが、新人・若手の頃に出した単行本の原作を担当されてもいます。 話のあらすじは、「若い頃はNo.1ホスト、しかし結婚と共に引退し、その過去を隠してサラリーマンになった主人公だが、30歳を過ぎた矢先にリストラの憂き目に。残ったローンを返すため、さらにリストラを知らない家族を養うために、かつてNo.1に君臨していたホストクラブに復帰して──」、というもの。ストーリーを詳しく説明し過ぎるとアレなんで詳述は避けますが、いかにも大人向マンガ雑誌らしい、分かり易いサクセス・ストーリーになりそうです。 評価はA−。ちょっと新鮮味に欠ける点が無きにしも非ずなので、少し評価を控えめにしましたが、ちゃんと楽しませてくれる作品になりそうです。あとはダレる事無く話を展開してもらえれば良いのですが……。
……というわけで、今週のレビューは以上です。来週は採用試験直前で原則休講なんですが、ゼミだけは実施しますので、どうぞよろしく。 |
7月4日(木) 演習(ゼミ) |
“ちゆインパクト”に次ぐ、“セカンドインパクト”(笑)が進行中ですが、カリキュラムは一応平常のものに戻ります。今日は木曜日付講義ということで、現代マンガ時評をお送りします。 さて、まずは情報系の話題から。 あとは情報と言っていいのか分かりませんが、「週刊少年ジャンプ」系新人月例賞・「天下一漫画賞」7月期の審査員は冨樫義博さんと発表されました。相変わらずマンガの方は休載ばっかりなんですが、まさか賞の審査で復帰とは(笑)。この人の場合、体調不良で休載してるのか、ネームが描けなくて休載してるのか判断に苦しむところなんですが、少し前みたいに入院してるわけではなさそうですね。 それでは、今週のレビューに移ります。 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年31号☆ ◎読み切り『Elephant Youth!』(作画:西公平) 今週のレビュー1作品目は、「赤マルジャンプ」で2回読み切り掲載の実績がある若手作家・西公平さんの作品です。 では作品の評価へ。 次にストーリーなんですが、これは率直に言うと「あと一押し」という感じでしょうか。
◎読み切り『白い白馬から落馬』(作画:夏生尚) 先々週掲載の『あつがり』に引き続いて、2002年上期の「赤塚賞」佳作受賞作の登場です。 というわけで、この作品も佳作受賞作ということで、あくまでも習作のレヴェルを超えるものではないと思います。 形式は1ページのショートギャグを14本というもの。絵柄や形式は、かつて「週刊少年サンデー」に連載されていた『ファンシー雑技団』(作画:黒葉潤一)に似てるような感じでしょうか。新人のギャグ作家さんにしては絵が上手い方ですし、1本ごとに違う絵柄にチャレンジしてみようという意欲が感じられるのは、なかなか好感が持てます。
☆「週刊少年サンデー」2002年31号☆ ◎読み切り『怪盗NAO!』(作画:杉信洋平) 今週から「サンデー」では、5週連続で読み切りシリーズが始まりました。今日はその第1弾・杉信洋平さんの『怪盗NAO!』のレビューをお送りします。 杉信さんは、どうやらこれがデビュー作となる新人作家さんのようです。「サンデー」系の新人賞についてはデータベースが少ないので、正確な受賞歴は不明ですが、少なくとも当講座の開講(01年11月末)から「サンデー」系の新人賞を受賞したというデータはありません。 では、作品の内容へ話を進めていきましょう。 そしてストーリーなんですが、こちらはちょっと前途多難かなあ…という印象です。どうも、力を入れるベクトルを完全に間違えているような気がするんですよね。 とりあえず言える事は、まだ本誌に出てくるには力不足であるという事。そして、もっと真剣にマンガを描くという事を再検証してもらいたい、という事です。 ……と、いうところで今週のレビューは終了です。来週、再来週と、どこまで時間が取れるか分かりませんが、ゼミそのものは実施しますので、どうぞよろしく。 |
6月27日(木) 演習(ゼミ) |
さて、今週もゼミの始まりなのですが……。 困りました。レビュー対象作がありません(苦笑)。 ただ、先週予告しました通り、「週刊コミックバンチ」で、あの「世界漫画愛読者大賞」グランプリ受賞作・『エンカウンター〜遭遇〜』の連載が始まりましたので、そちらのレビューを行いたいと思います。 …と、いうわけで、たった1作品のレビューとなりましたが、事情が事情ですので、どうぞご理解下さい。 さて、まずは情報系の話題を少しだけ。 また、終了した2作品の穴埋めですが、これは来週から5週連続で読み切りシリーズが始まると予告されておりました。ですので、新連載が始まるにしてもその後という事になりそうです。 ……さて、それでは今週のレビューへ。1作品だけですが、全力で頑張ります。文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 《その他、今週の注目作》 ◎『エンカウンター〜遭遇〜』(週刊コミックバンチ2002年29号掲載/作画:木之花さくや) もはやこの社会学講座とは切っても切れない関係となりました、この作品。第1回「世界漫画愛読者大賞」のグランプリ受賞作が、連載作品となって「バンチ」に再登場となりました。 作者の木之花さくやさんのプロフィールと、「世界漫画愛読者大賞」エントリー作品となった、同名の読み切り作品の内容等については、3月13日付ゼミのレジュメを参照して下さい。 さて、早速内容についてお話してゆきましょう。 そして次に、問題のストーリーです。読み切り掲載時は、話作りの基本がなっていなくてシナリオが破綻しまくっていたわけですが、果たして仕切り直しとなった今回はどうでしょうか? さて、もう結論から先に言ってしまいますが、「とりあえずはマズマズのスタートを切ったな」というところです。 あ、あと気になった点がもう1つ。
……というわけで、唯一のレビューが評価保留という締まらない形になってしまいましたが、それも正確な評価を下すためですので、どうぞご理解ください。 それではまた来週。来週は「ジャンプ」も「サンデー」も読み切りが掲載されますので、そちらのレビューが中心になると思います。 |
6月20日(木) 演習(ゼミ) |
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それでは今週のゼミを始めます。今週は「週刊少年ジャンプ」に代原が2つ掲載された事に加え、「週刊ビッグコミックスピリッツ」からも佳作を“発掘”できましたので、久々に充実したレビューをお送りできるのではないかと思います。 さて、ではまず情報系の話題から。「週刊少年サンデー」の月例賞・「サンデーまんがカレッジ」3・4月期分の結果発表がありましたので、まずはそれからお送りしましょう。
さて、「サンデー」と言えば、ヒットメーカー・ゆうきまさみさんの『KUNIE』が、次号30号で打ち切り(←恐らくですが)終了となります。 打ち切り&新連載といえば、「ジャンプ」の次期打ち切り争いが、ますます熾烈になって来た感がありますね。今期新連載の内、『ヒカルの碁』と『プリティフェイス』はどうやら人気面から続行が濃厚。つまり以前からの連載作品がその分ワリを食う事になります。 さて、それではレビューに移ります。今回は「ジャンプ」から3作品、そして“その他”枠から「週刊ビッグコミックスピリッツ」の1作品をレビューします。
☆「週刊少年ジャンプ」2002年29号☆ ◎読み切り『ジュゲムジュゲム』(作画:いとうみきお) 2000年から2001年にかけて、『ノルマンディーひみつ倶楽部』を連載していた、いとうみきおさんの復帰作となります。 さて、作品のレビューに移りましょう。 まず絵柄なんですが、以前に比べて若干洗練された感じがします。ただ、これは以前からの特徴なのですが、やや絵に動きが感じられ難いような気がします。多分これは“止め絵”っぽいコマやシーンが多いからなのだと思いますが。 次にストーリーです。 最終的な評価はBにしたいと思います。佳作・秀作の一歩手前という感じの作品で、この評価に留めざるを得ないのは非常に惜しい気がします。次回作でのリベンジを期待しましょう。 今週号はなんと4作品が休載。まるで「週刊ヤングマガジン」のような状態になってしまいました。一昔前の「ジャンプ」なら考えられないお話ですが、これも時代の流れなのでしょうか? さて、そんな休載ラッシュの中、代原が2作品掲載されました。まずはその内の1作品目、先日発表された赤塚賞(2002年度上期)で佳作を受賞した『あつがり』からレビューしていきましょう。 まずは絵柄なのですが、ハッキリ言って発展途上ですね。というか、サインペンでペン入れした作品に佳作を出しちゃう赤塚賞っていうのも、ある意味凄い話だと思いますが(笑)。 次に内容。これは赤塚賞受賞作ですので、一応はギャグマンガの範疇に入るのだと思いますが、どうもギャグ作品としてはかなりインパクトが弱い気がします。一応はボケとツッコミが成立していて、ギャグマンガのスタイルにはなっているのですが、ギャグがギャグになりきれていない感じがしますね。 評価はB−。前途は多難ですが、磨けば良いモノを持っている人だと思いますので、挫折すること無く精進してもらいたいですね。 代原の2作品目は、なんと先週に引き続いて、問題(のある)作『しゅるるるシュールマン』です。このゼミでは4回目の登場となりますね。 しかし、どうしてこんな低レヴェルの作品がこうも度々掲載されるのか、駒木は不思議でなりません。他に載せる作品が無いだけなのか、それとも担当者が懸命にプッシュしているからなのか……。 ところで先日、とあるマンガ家志望の受講生さんからメールを頂きました。そこには、 ・゚・(ノД`)・゚・
で、今回の『──シュールマン』についてのレビューですが……。 相変わらずシュールには程遠い普通のギャグ。しかも勝負ネタで大コケしてしまい、比較的キレている小ネタが全然活きて来ないという最悪のパターンです。さらには離島に住んでる人に失礼な表現までやらかしてしまい、駄作以前のシロモノになってしまっています。 それに、今回気が付いたのですが、クボさんは、ギャグをセリフだけに頼りすぎているような気がします。 評価は当然ながらC。今後、この『しゅるるるシュールマン』が掲載されたとしても、余程劇的な内容の変化が無い限り、もうレビューは行いません。これ以上この作品について述べる事は、駒木にも受講生の皆さんにも利益が無いと思いますので。
《その他、今週の注目作》 ◎『立位体前屈物語』(週刊ビックコミックスピリッツ2002年29号掲載/作画:河谷眞) 6月6日付ゼミで、小学館の「新人コミック大賞・少年部門」で大賞受賞作が出たとの結果報告をしたのですが、実はヤング部門にも大賞受賞作が出ていました。それが、この『立位体前屈物語』でした。 さてこの作品、体力測定テストでお馴染みの立位体前屈を1つの競技スポーツに仕立て上げてしまったらどうなるか? というテーマで一本の作品に仕上げてしまったと言う怪作です。 評価は卓越したセンスとオリジナリティを高く評価してAを進呈。新人マンガ賞の読み切り作品としては間違いなく最高ランクに推せるものです。
……というところで、今週のゼミを終わります。次回はいよいよ、このゼミとは因縁の深い『エンカウンター』が新連載となります。当然レビューで扱う予定ですので、お楽しみに。 |
6月13日(木) 演習(ゼミ) |
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それでは今週のゼミを始めます。今はちょうど、新連載の谷間に入ってしまってまして、レビュー対象作品が少ない週が続いています。 さて、まずは情報系の話題から。
ちなみにこの回の審査員は、特別賞の名義をご覧の通り、矢吹健太朗氏。 ま、皮肉はこれくらいにしますか。 情報系話題をもう1つ。来週号の「週刊少年ジャンプ」29号で、『ノルマンディーひみつ倶楽部』のいとうみきおさんが、読み切りで本誌復帰です。予告のカットを見たら、絵が洗練されて来た印象があるので、ちょっと楽しみですね。 では、レビューに移ります。今週は「ジャンプ」から2作品ですね。レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年28号☆ ◎新連載第3回『ヒカルの碁(第2部)』(作:ほったゆみ/画:小畑健)《第1回掲載時の評価:A》 ハッキリ言って、もうレビューする必要も無いほど安心して読んでいられる作品なのですが、今回はちょっと目先を変えたレビューを。 皆さんは「ヒカ碁」が第2部になってから、微妙に、そして明らかに各所でマイナーチェンジが施されているのにお気づきでしょうか? ただ、あと1つ注文をつけるとすれば、もう少し息抜きする場が、つまりコメディ的な場面がもう少し増えてくれば良いと思いますね。やっぱりストーリーマンガの王道はコメディですので。笑いがあってこそのリアルな日常。 ……と、レビューだかなんだか分からなくなっちゃいましたけど、とにかく素晴らしい作品だって事は確かです。同人ネタが減るから人気が下がるかも、なんて向きもありますが、そんな低次元なレヴェルでこの作品が貶められる事の無いように祈っております。評価はもちろんAで据え置き。平成年代を代表する素晴らしい作品の1つです。 ◎読み切り『しゅるるるシュールマン』(作画:クボヒデキ) さて、問題作です。いや、問題(のある)作品ですね(苦笑)。もうこのゼミでも3回目のレビューになりますか。 じゃあこの作品のギャグはどんなギャグかというと、「おかしな人が、ただ笑いを取ろうとしてるだけ」というもので、これではシュールでも何でもなくて“ただのギャグ”なわけですよ。しかも大して面白くも無いし。ツボにハマる人はいるんでしょうけど、少なくとも今「ジャンプ」で連載されているギャグマンガと比べると、間違いなく相当下のレヴェルです。 とにかく作者のクボさんが自分の勘違いから早く気がつく事。そうすれば活路も見出せるでしょう。それまでは高い評価は進呈できません。C寄りのB−。 ……と、いうわけで今週分のレビューは終了です。来週も2作品程度のレビューになると思いますが、どうぞよろしく。 |
6月6日(木) 演習(ゼミ) |
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では、今週のゼミを始めます。 さて、それでは早速情報系の話題から。 まず、今週は「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」で、それぞれグレードが高い方の新人賞の審査結果が発表されています。いずれの賞も即デビューへ繋がる新人の登竜門ですので、ここに名前が挙がった新人さんは、これからに注目です。
「小学館新人コミック大賞・少年部門」の方は、大賞受賞作が出ました。短期間では詳しい資料を得られなかったんですが、一説によると20数年ぶりの大賞だそうです。先週辺りから編集部がやたらとはしゃいでいるなと思ったらこういう事だったんですね。 他、佳作以上を受賞した方をGoogle検索かけてみたんですが、手塚賞佳作の筒井哲也さんは、ひょっとしたら昨年に「オールマン」や「別冊ヤングサンデー」で読み切りを発表している同名の作家さんと同一人物かも知れません。ただ、こちらも資料不足で特定は不可能でした。 あと、気になった事と言えば、手塚賞審査員のほったゆみさんが人知れず毒舌全開だった事ですかね。
……と、いったところで今週のレビューへ。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年27号☆ ◎新連載第3回『NUMBER 10』(作画:キユ)《第1回掲載時の評価:B》 前回のレビューでは「既製の作品の影響が色濃い」と指摘させてもらいましたが、3回目まで読んでみてもその評価を覆すだけの材料は無かったように思えます。 ただ、場面ごとの演出はソツなく出来ていますので、読者に不快感を与えるところまで酷くなっていないのは救いといえます。早い内にどれだけ“化ける”ことができるかが、この作品が連載続行なるか否かのカギになりそうです。 評価は、前回のB+寄りBから半ランク下げてBとさせてもらいます。 《その他、今週の注目作》 ◎新連載『がきんちょ強』(週刊コミックバンチ2002年26号掲載/作画:松家幸治) 因縁の(笑)「世界漫画愛読者大賞」の準グランプリ受賞作が新連載作品として再登場です。 作者の松家さんの経歴については、2月20日付ゼミでも述べましたが、赤塚賞準入選→創作に行き詰まり、一時休筆……というもの。人生、何がどうするか分かりませんねぇ、まったく。 では作品についての話ですが、これも読み切り掲載時に述べた通り、往年の名作『じゃりん子チエ』のオマージュ的作品です。チエとテツをドッキングさせたような主人公の強が中心となってエゲツないドタバタ喜劇を展開する……というもの。絵柄も含めて、いかにも“昭和”の香りのする作風になってます。古臭い、という批判は避けられないでしょうが、それはそれで個性的であるとも言えます。 …ただし、この作品には欠点もあります。 評価は現時点ではB+。それがどこまで維持できるのか、また“大化け”があるのかも含めて、今しばらく見守っていきたいと思います。
……と、いったところでゼミを終わります。講義の実施遅れなどありました事をお詫びいたします。 |
5月30日(木) 演習(ゼミ) |
今日は“ちゆインパクト”後、初めてのゼミになりますので、新しい受講生の方たちのために改めてこのゼミについての説明をさせて頂きます。 このゼミ・「現代マンガ時評」はその名の通り、新しく発表されたマンガについてのレビューを行う講義です。新人マンガ賞受賞者など、ニュース系の話題もお送りしますが、こちらは補助的なものと思ってください。 現在は、駒木1人だけでゼミを担当しているため、「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」の2誌を中心に、他誌の注目作を若干扱うのみに留まっていますが、将来的には非常勤講師をお招きして他誌のレビューも実施する計画です。 また、レビューの最後にはA+からCまで7段階の評価を付記しています。評価の基準はこちらを参照して頂ければと思いますが、端的に言えば、Bで「可も不可もなく」、B+で「マンガ好きにお薦め」、A−で「一般人にもお薦め」、Aで「文句なしの傑作」……となります。A+は10年に1度出ればいいレヴェルと考えてください。 ……と、いったところでしょうか。それではゼミの本題へと移りたいと思います。 まずは情報系の話題から。 もうインターネット業界では既報も良いところなんですが、元「週刊少年ジャンプ」連載作家・しんがぎん氏が急逝されました。29歳の若さでした。死因等については、病死という以外に確定情報がありませんので、記述を控えることにします。 このニュースは、例の「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」の講義と相前後して飛び込んで来まして、何とも言えない気持ちにさせられました。 しんがぎん氏の冥福をお祈り致します。
それでは今週のレビューの方へと移らせて頂きます。今週のレビュー対象作品は、ちょっと寂しくて「ジャンプ」からの2作品のみ、と言う事になります。もう少し時間的に余裕が有れば、他誌からも1〜2作品紹介したかったのですが……。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年25号☆ ◎新連載(連載再開)『ヒカルの碁』(作:ほったゆみ/画:小畑健) 「佐為編」の最終回で予告された通り、6回の読み切り番外編を挟んで、連載が再開されました。今回がその第1回となります。 もうすっかり完成された感のある作品ですので、改めてレビューするのもどうかという話なのですが、気後れせずに頑張ってみたいと思います。 まずは絵ですが、もうコレは文句のつけようがありませんよね。これだけの高いレヴェルや密度の作品を週刊ペースで発表できるというだけで驚異的でしょう。 …と、それだけでは芸が無いので、今回改めてジックリと読んでみて気になった点を1つ。 …と、絵に関してはこれくらいにしておきまして、ストーリーに関しても少々述べさせてもらいます。 ネーム担当のほったさんの素晴らしい所は、とにかく脚本力の豊かさなんですよね。できる限り説明的なセリフを排した流れるような会話文の構成、さらにセリフとモノローグの使い分けもほぼ完璧です。主に堅苦しい表現なんかはモノローグにするわけなんですが、これが出来そうで出来ないものなのです。 とりあえずしばらくはヒカルの高い実力を見せつけるようなエピソードが続く事になりそうです。そして、それが終わり次第、「日中韓Jr.団体戦」の国内予選に突入していくのでしょう。 さて、続いては『プリティフェイス』の3回目についてのレビューなんですが、叶さんの経歴について新たな事実が判明しましたので、そちらの報告から。 先週号(25号)の巻末コメントに、叶さん本人から「連載は10年ぶりで──」という旨の発言がありました。これは、これまで知られていた「デビュー10年目にして初連載」という経歴と食い違うものです。 さて、では作品のレビューへ。 3週間読んでみて、やっぱり思うのは「絵が上手いよなぁ」という事。叶さんは、何と言いますか、マンガ的表現に優れている作家さんなんですよね。表情のデフォルメ表現がとても激しいんですが、その割には不快感を感じさせないんです。余程自分の絵に自信を持っているんだろうなあ、という事が伝わってきます。 まぁ少なくとも、続きを読んでみたいな、という気分にはなって来ました。評価も上げたいと思います。前回はB寄りB−でしたが、今回はB+へ。1段階半の上昇です。現在厳しい生き残り合戦ですが、まとまった話になるところまで続いてくれればなぁ、と思います。
……と、以上でレビューは終了です。今回は作品が少なかった分だけ密度を濃くするように努めましたが、どうだったでしょうか? 次回は「ジャンプ」「サンデー」の他、「世界漫画愛読者大賞」準グランプリ作『がきんちょ強』についても扱う予定です。お楽しみに。ではでは。 |
5月23日(木) 演習(ゼミ) |
3日間の特別講義に引き続きまして、ここからはレギュラーのゼミを始めます。 それではまず、情報系の話題から。 ……今週、このゼミで扱わなくてはならない情報はこれくらいでしょうか。時間もありませんし、粛々とレビューの方を進行していきたいと思います。 今週のレビュー対象作品は、「週刊少年ジャンプ」から1作品と、「週刊少年サンデー」から2作品の、計3作品となります。
☆「週刊少年ジャンプ」2002年25号☆ ◎新連載『NUMBER10』(作画:キユ) さぁ、注目のキユさんの登場です。 まず絵柄からですが、さすがにプロらしく無駄の無いスッキリとした線で描かれていますね。 じゃあストーリーは、といいますと、これもソツなくまとまってはいます。読んでて不快になる事は無いですし、及第点以上ということは確かでしょう。 悪くは無いけど、とびきり良い作品でもない。こういう作品が一番扱いに困るところですよね。しかも今の「ジャンプ」は、ここ最近で最も激しいサバイバル競争が展開されている時期ですし……。
☆「週刊少年サンデー」2002年25号☆ ◎新連載第3回『鳳ボンバー』(作画:田中モトユキ)《第1回掲載時の評価:A−》 それにしても、ホントに熱いですねぇ、この作品。 それに加えてテンポも良いですね。1つ1つのイベントをジックリと濃く描いていますが、イベントとイベントの間をどんどん省略していってるので、メリハリが利いてます。この辺は前作・『リベロ革命!』で培った感覚なのでしょうね。 何はともあれ、安心して読めそうな作品が1つ増えました。惜しむらくは、これが新人作家さんの作品じゃないという事なんですが、まぁその辺りは「ジャンプ」とは違うってことで仕方ないんでしょうね。 ◎読み切り(前後編)『ガクの詩』(作画:藤崎聖人、詩:三代目魚武濱田成夫) 非常に珍しい、というか初めての試みと思われる、『即興ヒップホップバトルマンガ』(なんじゃそりゃ)の登場です。もう少し分かりやすく言うと、“詩のボクシング”をライブハウス版にして、それをマンガにしたものと思ってもらえればいいかと思います。 作画担当の藤崎聖人さんは、以前「コミックGATTA」で『蟲』というホラー作品を連載し、ブレイク寸前までいった新進作家さんです。残念ながら掲載誌が休刊となり、全てが宙に浮いた形になってしまったのですが……。 では、作品のレビューへ。 まずは絵から。他の雑誌で描いていた時はどうか分からないんですが、さすがに「週刊少年サンデー」執筆陣に混じると、見劣りは否めないかなという気はしますね。どっちかというと「マガジン」系の荒っぽい絵柄、という感じでしょうか。「サンデー」でこれからやっていくとなると、多少のモデルチェンジが必要になってくるのではないかと思います。 そしてストーリーなんですが、これがどうにも判断が難しいんですね。 先に述べた通り、評価は保留です。ただ、シナリオ的には平凡なものなので、B+を上回る事は無いような気がするのですが。
……と、ちょっと駆け足でバタバタしましたが、今週のゼミがここまでです。また来週をお楽しみに。では。 |
5月16日(木) 演習(ゼミ) |
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スケジュールがズレまくってしまって、申し訳ありません。体調は正直ですね。目の疲れが酷すぎて講義どころじゃなくなってしまいました。随時、調節していくんで、どうかお許しを。 さて、今週は賞レースのニュースが多くありました。順番に紹介していきましょう。 まずは「週刊コミックバンチ」の「世界漫画愛読者大賞」から。グランプリに「賞金5000万円と連載1年保証」を謳った、日本マンガ界史上最大のコンペテイションです。グランプリ賞金の高さ、また、最終審査を読者投票に委ねた事などが論議をかもしました。 と、いうわけで、今日は主な受賞作の発表だけに留めておきたいと思います。
受賞作『エンカウンター』のレビューは、3月13日付ゼミのレジュメに掲載されています。受講生の皆さんには、どんな作品がグランプリを獲ったのか、復習&予習の上で20日の講義に臨んでもらいたいと思います。 次の話題は講談社漫画賞。以前、『カメレオン』が少年部門を受賞した時は、審査員全員が『ONE PIECE』を推したにもかかわらずの受賞で、いわゆる大人の事情が窺える結果でしたし、昨年も『ラブひな』が審査員の反対を押し切って受賞するなど、こちらも何かと論議をかもす漫画賞であります。
そして最後に、今週は「週刊少年ジャンプ」の月例新人賞「天下一漫画賞」の発表がありました。
特別賞受賞の川口幸範さんは、01年11月期にも特別賞を受賞している……はずなんですが、年齢が1歳若返ってるんですよね(苦笑)。まぁ、年齢詐称は手塚治虫先生もやってたことですけど、それにしてもこの場合は1歳ごまかして、何がやりたかったんでしょうか……? さて、情報系の話題は以上です。長者番付についても採り上げた方が良いのかも知れませんが、マンガ家さんって、スタジオを会社組織にしてしまうと納税額から稼ぎが見え辛くなるんですよねえ。数字だけ見ると誤解の元になるんです。だから、このゼミではあえて採り上げない事にします。 では、今週のレビューを。対象作品は「週刊少年ジャンプ」から新連載と読み切り2作品、「週刊少年サンデー」から新連載3回目の1作品、そして他誌から読み切りの1作品をそれぞれ採り上げます。「サンデー」の前後編読み切り『ガクの詩』については、次回に2回分併せてのレビューを行う予定です。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年24号☆ ◎新連載『プリティ フェイス』(作画:叶恭弘) 「週刊少年ジャンプ」春の新連載シリーズの開幕です。昨年からの“打ち切り候補”に全てケリがついたところでの新連載とあって、なかなか生き残るための壁が厚そうですが、果たして今シリーズの作品レヴェルはどうでしょうか? まずは今シリーズの“先頭バッター”・叶恭弘さんの登場です。 それでは本題へ。 ただ、ストーリー。こちらはかなり危なっかしい、というのが第一印象です。 評価はB寄りB−としておきましょう。打ち切りの場合、話を急展開させて、なし崩し的にハッピーエンドが迎えられそうなのが唯一の救いでしょうか(救いになりませんが)。 ◎読み切り『さとふ2002』(作画:さとう○○○) 今週は『ピューと吹く! ジャガー』が休載で、短ページの代原が掲載されました。一時期、よく代原として掲載されていた『さとふ──』シリーズが久々の登場です。作者のさとう○○○さんは、このシリーズを中心に増刊などでも作品を掲載させている、若手ギャグ作家さん。そろそろ連載を狙ったキャンペーンを展開したいところですが── さてこの作品、風間やんわり氏風の個性的な絵柄がまず目に付くのですが、まぁこれは作品の足を引っ張っているわけでもないので、これでいいでしょう。ただ、本来ならこの絵柄が良い“味”となって、ギャグを引き立たせるようにしなくてはならないでしょうが。 ギャグの方は、見る人によってはツボにハマりそうなレヴェルではあるのですが、ただオチの弱さが気になりますね。起承転結の「転」までは上手くいってるのに、最後で落としきれていないのが残念です。これでオチに威力がつけば、十分連載に耐え得るだけのパワーが出そうなので惜しいところですね。 評価はB寄りB−。奇しくも『プリティ フェイス』と同評価になってしまいました(苦笑)。ううむ、マンガって奥の深いジャンルですなあ。
☆「週刊少年サンデー」2002年24号☆ ◎新連載第3回『一番湯のカナタ』(作画:椎名高志)《第1回掲載時の評価:A−》 さて、第3回となりましたが、今のところは一話完結型の“ほのぼのお色気コメディ”なので、改めて特筆すべき点はありません。全体的なクオリティも安定しており、作者の椎名さんの高い力量が窺い知れます。 しかし、それにしてもこのマンガに出てくる女の子キャラクターは脱ぎますなあ(笑)。裸で見せても成人指定されない部分は全部見せてる感じです。しかも銭湯が舞台だけあって、女の子が自主的に脱いでいくのでヤラしさがありませんし。あ、女の子がみんな健康的な体型だから余計に良いのかもしれませんね。 あぁ、レビューになってない気がするんですが(笑)、とにかく、この作品は安心して読めます。中学生男子とかだと人前で読むのは恥ずかしいでしょうがね。
《その他、今週の注目作》 ◎読み切り『CRASY MANIAX』(「ヤングキング」2002年11号掲載/作画:安西信行) 「週刊少年サンデー」で『烈火の炎』を長期連載していた安西信行さんが、なんと少年画報社の青年誌「ヤングキング」に登場です。「ヤングキング」らしくない絵柄の表紙でビックリした受講生の方もいらっしゃるかも知れませんね。 ……というわけで、絵柄は全く少年誌の頃から変わってません。特に主人公の顔の形が『烈火の炎』の花菱烈火に似ていたりしますので、『BSマンガ夜話』で、いしかわじゅん氏から「彼は綺麗な絵を書くように見えて、実は全然上手くないんだよ」とか言われてしまいそうです。 そしてストーリーなんですが、これがなかなか素晴らしいです。 中でも特に評価したいのが、この作品における読者へのカタルシスの与え方です。 評価はA寄りA−。「ヤングキング」だとどうしても浮いてしまう絵柄がアレですが、まぁ前途有望な作品といえるでしょう。せっかく青年誌でやってるんですし、連載するならもう少しお色気要素を入れた方がウケも良いでしょうね。 ……というわけで、レビュー終了です。 |
5月9日(木) 演習(ゼミ) |
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さて、不安定な環境で申し訳ありませんが、講義はちゃんと実施します。しかも今週はちょっとした特別企画付ですので、どうぞお楽しみに。 まず情報系話題から。「ちゆ12歳」さんからリンク貼られていたんで皆さんご存知かもしれませんが、「探偵ファイル」さんの、「週刊少年ジャンプ」のアンケートについての話が興味深かったので、こちらにも要旨を書きたいと思います。
……まぁ、ビデオリサーチの視聴率調査とかと比べると、まだまだ精度の高そうな標本調査という気がしますが、遠隔地だと速達で出さない限り“参政権”が無いというのは正直言って不公平感が否めませんね。 しかも、どうやら人気上位常連作品以外は得票数3ケタの争いらしいんで、組織票が有効そうなんですよね。 さて、それではレビューに移ります。今週は「ジャンプ」が合併号で休みですので、本来は「サンデー」のレビュー対象作2作品だけなのですが、ちょっとした特別企画を用意しました。それは… レビュー文中の7段階評価の表はこちらから。 ☆「週刊少年サンデー」2002年23号☆ ◎新連載『鳳ボンバー』(作画:田中モトユキ) つい最近まで『リベロ革命!!』を連載していた田中モトユキさんの新連載が早くも登場です。前作はバレーボールマンガでしたが、今回は野球マンガで登場です。 この作品は、2000年50号に掲載された、ほぼ同名の読み切りを連載作品にアレンジしたものになりますね。 そして今回の作品ですが、読み切り時代からのテンションの高さに加えて、ある程度は設定やストーリー的な厚みも加わり、キッチリと連載に耐え得るような作品にアレンジ出来ています。この辺りはさすがですね。 それと前作の『リベロ──』の時も感じたのですが、この田中さんは、一見手垢が付いている題材から、見事にスキ間を突いて来るのが非常に上手なんですね。あ、これは褒め言葉ですよ。 さらにもう1つこの作品の良い所を挙げると、“心地よいバカさ加減”といったところでしょうか。 ……なんか褒めまくりですが、短所が見当たらないから仕方ありません。敢えて言うなら、主人公の名前(鳳啓助)は狙いすぎのような気がしますけどね(笑)。
◎新連載第3回『史上最強の弟子ケンイチ』(作画:松江名俊)《第1回掲載時の評価:B》 さて、連載第3回の後追いレビューです。 3回目まで読んで、なんとなくこの作品のコンセプトが見えてきました。 まぁ、そういう路線もアリだとは思うんですが、しかし他誌や「サンデー」の中でも萌えキャラのライバルは非常に多いのが現状です。しかも他誌の萌え系作品は複数ヒロイン制で、こちらは現状単独ヒロイン制。お色気インパクトの上でもやや弱いかもしれません。それに、このノリで週刊連載を続けていく上で、果たしてワンパターンに陥らないだろうかという懸念も生じます。 ◆特別企画:「赤マルジャンプ」完全レビュー◆ ……というわけで、特別企画のスタートです。 ◎読み切り『翼人機ゼロイド』(作画:岡野剛) 真倉翔さんとのコンビを解消して苦戦の続く岡野剛さんですが、今回もやはり持ち前の話作り力の無さがモロに出てしまっているかな、と。
◎読み切り『逸者〜HAGUREMONO〜』(作画:武藤健司) 今冬に発売された前号の「赤マルジャンプ」でデビューを飾った新人作家・武藤健司さんの2作目です。
◎読み切り『CRIME BREAKER !!』(作画:田坂亮) 1年前の「赤マルジャンプ」冬号で、原作付のマンガ担当としてデビュー、これが実質デビュー作となる田坂亮さんの作品です。最近、『NARUTO』の岸本さんの所でアシスタントを始めたようです。
◎読み切り『SANTA!―サンタ―』(作画:蔵人健吾) 7年前の95年に「月刊少年ジャンプ」のマンガ賞で受賞し、3年のブランクを置いてから赤塚賞で佳作を受賞。その後は主に増刊で、時には週刊本誌で読み切り作品を断続的に発表している蔵人健吾さんの新作です。 ◎読み切り『ミイラカイザー』(作画:イワタヒロノブ) 去年秋の手塚賞で準入選。その作品が前号の『赤マルジャンプ』に掲載されたイワタヒロノブさんのデビュー2作目です。
◎読み切り『monochro stroke』(作画:瀬戸蔵造) 「少年ガンガン」出身の若手作家・瀬戸蔵造さんの卓球マンガです。「ガンガン」では野球マンガを描いていたそうですが……。
◎読み切り『呪いの男』(作画:藤嶋マル) 今年1月期の「天下一漫画賞」の佳作受賞作。もちろん作者の藤嶋マルさんはこれがデビュー作になります。
◎読み切り『泥棒ネコライフ』(作画:夕樹和史) 去年夏の「赤マルジャンプ」でデビューを飾った夕樹和史さんのデビュー2作目。
◎読み切り『神斬蟲―かみきりむし―』(作画:小涼おぐり) 昨秋の手塚賞佳作受賞者・小涼おぐりさんのデビュー作になります。受賞作とは別作品ですので、受賞後第一作にもなりますね。
◎読み切り『STAND BY ME』(作画:中山敦支) 99年に手塚賞で最終候補となった後、しばらく雌伏の時を過ごして、このたび“スカウトキャラバン”出身作家としてデビューした中山敦支さんのデビュー作。
◎読み切り『ライジングインパクト〜succeed to the force〜』(作画:鈴木央) 待望の続編兼番外編なのですが、かなり確信犯的にコテコテの勧善懲悪モノにしてしまいましたね。
◎読み切り『抱きしめて! ベースボールラブ』(作画:セジマ金属) 代原でもお馴染みの、新人若手コンビによるギャグ作品です。
……ふう。やるんじゃなかった、こんな企画(苦笑)。長々とお送りしましたが、今日の講義はこれで終わらせて頂きます。 |
5月3日(金・祝) 演習(ゼミ) |
皆さん、新歓祭はいかがでしたか? 駒木と珠美ちゃんの体を張ったパフォーマンス、喜んで頂けたら幸いです。 さて、今日から再び通常講義に戻ります。当講座はゴールデンウィークとはいえ、キッチリ講義を実施しますので、受講生の皆さんも頑張って受講してください。 …というわけで今日の講義は、新歓祭で実施が遅れていた、今週分のゼミ・『現代マンガ時評』を振替実施します。 あ、今日は初めての受講生さんも多いようなので、改めてこのゼミについて簡単な説明をしておきましょうか。 このゼミは、『現代マンガ時評』という名の通り、その週に発表された読み切りや新連載のマンガ作品に関するレビューを行うものです。 ……という方針で講義を行いますので、よろしくお願いします。 さて、それでは講義の本題に移りますが、今日はレビューの前に、情報系の話題を。 まず、「週刊少年ジャンプ」・春の新連載シリーズのラインナップが発表されました。 情報をもう1つ。たびたび掲載作品のレビューをしている「週刊コミックバンチ」の発売日が、次号から金曜日に変更されます。このゼミは、通常は毎週木曜実施なので、今後は実質1週間遅れのレビューとなりますが、ご了承頂きたいと思います。 と、それではいよいよ今週分の作品レビューに。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年22、23合併号☆ ◎読み切り『ヒカルの碁・番外キャラ読切シリーズ・藤原佐為』(作:ほったゆみ、画:小畑健) 不定期読み切りシリーズの第6弾です。26号から本編の新シリーズが始まるため、このシリーズはこれが最終回となります。もう少し続くのかと思ったのですが、「本編で大きく扱えるキャラは本編で」という方針のようですね。 さて、今回の藤原佐為編なのですが、やけにベタベタで、『名探偵コナン』の小学生グループ編みたいな展開だなと思ったら、欄外にコッソリとこんな一文が…… 「この作品は、昨年のジャンプフェスタで公開されたスペシャルアニメ『裁きの一局! いにしえの華よ咲け!!』を原型に、漫画としてリメイクしたものです」 ……どうやら、短編アニメの絵コンテやシナリオをマンガに“おろした”作品のようですね。 ではストーリーのレビューなんですが、一言で表現するならば、「短編アニメの功罪明らかな作品」といった感じになっていますね。 ただ、良い点も1つ。今回の主役と言うべき藤原佐為のイキイキと喜怒哀楽を表現出来ている点、これは良かったと思います。この事で、番外編としてのギリギリのラインは守られたのではないでしょうか。 評価は、今回に関してはB+寄りのBという事に。ともかく、もうすぐ連載再開の本編に期待ですね。
◎読み切り『踊れ! 刑事ダンス !!』(作画:山田一樹) 最近、とみに休載の多くなった『ROOKIES』の代原作品です。今回は“作者都合”ではなく“急病のため”休載との事で、最近体調面が優れないのかもしれませんね。先週“急病のため”休載していた富樫義博さんは、本当に入院加療していたようですし(今号の巻末コメント参照)。 この作品の作者・山田一樹さんは、現在「天下一漫画賞」の募集ページで“研修生”としてカットを担当している新人マンガ家さん。「天下一漫画賞」の選外から編集者に目をかけられ、そこからデビューを果たした叩き上げタイプのギャグ作家さんみたいですね。 まず絵からですが、一言で言うと下手ですよね。 そしてギャグの出来。色々なギャグのパターンを試しているのは良いのですが、どれも踏み込みが甘い感じがしますね。 現時点の総合評価ですが、C寄りのB−という事で。まるで才能が無いわけではないのでしょうが、前途はまだまだ多難ですね。
《その他、今週の注目作》 ◎新連載『レムリア』(「週刊コミックバンチ」2002年22.23合併号掲載/作画:岸大武郎) 「バンチ」が「少年ジャンプ」の元執筆陣から引き抜いた作家さんの中でも隠し玉中の隠し玉、岸大武郎さんの長編新連載がいよいよ登場です。 岸さんは「バンチ」移籍後は『せんせい』という、ノンフィクションのシリーズ読み切り作品を発表していたのですが、このシリーズの評判が上々だったようで、遂にこの度、新連載枠獲得と相成りました。「週刊少年ジャンプ」時代は、発表する作品があまりに異色過ぎたために不遇をかこっていた岸さん、果たして今回の作品の出来はどうでしょうか? まず絵柄に関してですが、以前から岸さんの絵柄は“動”というより“静”の印象が強く、それが時には「動きの無い平板な絵」という批判を浴びる原因となっていました。 そして圧巻なのはストーリーでした。 この作品の正確な評価を出すには、もうしばらく様子を見ないといけないでしょうが、この第1話だけでも岸大武郎さんの力量の片鱗を見せつけられた気がします。
……というわけで、いかがでしたでしょうか? 当講座では毎週木曜日にこのようなゼミを実施しております。新受講生の方は、これからもどうぞよろしく。 |