「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・6)
※検索エンジンから来られた方は、トップページへどうぞ。
講義一覧
9/26(第70回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(9月第4週分・後半)
|
2003年第70回講義 |
いつもの事ですが、東京行き出発直前ということで時間的に恐ろしく切迫しております。 ……というわけで、今日はこれ以上無駄話無し&チェックポイント圧縮版でキビキビとお送りします。 まずは情報系の話題から。「週刊少年サンデー」の次号・44号に『PUMP IT UP』(作画:大和八重子)が掲載されます。大和さんといえば、00年39号から01年16号まで連載されていた柔道マンガ・『タケル道』が有名ですが、今回はバレーボール物での挑戦となります。最近、「サンデー」公式ウェブサイトの“まんが家バックステージ”から名前が消え、安否(?)が気遣われていましたが、堂々と本誌にて復帰となりました。 また、雑誌からの公式アナウンスはまだですが、次々週(45号)には夏目義徳さんの新作読み切りが掲載される予定だそうです。夏目さんといえば、当ゼミで扱った情報についてご本人光臨(5月5日付ゼミ参照)という出来事があったのを記憶してらっしゃる方も多いでしょうが、この度、紆余曲折の末に「サンデー」へ読み切りで復帰という事になったそうです。
☆「週刊少年サンデー」2003年43号☆ ◎短期集中連載総括『ふうたろう忍法帖』(作画:万乗大智)【第1回時点での評価:B】 作品以上に作者のテンションの方が高いと一部で話題になった(笑)この作品も、全5回でフィニッシュとなりました。 で、総括なわけですが、端的に言って「風呂敷を広げ過ぎて、畳むのがやっとで終わってしまった作品」という事になるでしょうか。設定の描写・説明とシナリオを消化するだけでページの大半を費やしてしまい、各キャラクターの内面を深いところまで描き切る事が出来なかったように思えます。そのため、戦闘シーンの単調さも相まって、全体的に平板なお話に終始してしまった印象があります。 ただしそういう状況の中でも、一応はストーリーを破綻無くまとめ、伏線も処理し尽くしたという技量は「さすが」と言えるものだと思います。惜しむらくは、その技術が、この作品を駄作・凡作になるのを回避するためだけに使われてしまった…という事ですね。 最終的な評価はギリギリでB+といったところでしょうか。失敗作ではありませんが、成功しているとも言い難い微妙な作品ですね。また次回作に期待です。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「出身地自慢をして下さい」。当たり前と言えば当たり前なんですが、過半数が名所と名物(食べ物)という事になりました。しかし、モリタイシさんの「村なのにユニクロとかある」というのには少し笑えました。ちなみに駒木研究室のある兵庫県には村は1つもありません。全部市か町です。
しかし、今週の展開は、普通なら新連載第3回くらいのネタですよね(笑)。初心忘れるべからずとは言いますが、忘れなさ過ぎるのもどうかと思いました。 連載2年にして今更、香月が駒木好みのタイプ(微乳&スレンダー美人)という事に気付きました(笑)。ハナっから「他人のモノ」という認識があったので、完全にノーマークだったんですよねぇ。 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 毎度の事ながら、13ページでこの密度は凄いですよねぇ。何気なく凄い量の情報がページの至る所に……。
……というわけで、今日は簡単ですがこれまで。次回講義は火曜日くらいになると思います。ではでは。 |
2003年第69回講義 |
いつもの事ですが、東京行き出発直前ということで時間的に恐ろしく切迫しております。 ……というわけで、今日はこれ以上無駄話無し&チェックポイント圧縮版でキビキビとお送りします。 まずは情報系の話題から。「週刊少年サンデー」の次号・44号に『PUMP IT UP』(作画:大和八重子)が掲載されます。大和さんといえば、00年39号から01年16号まで連載されていた柔道マンガ・『タケル道』が有名ですが、今回はバレーボール物での挑戦となります。最近、「サンデー」公式ウェブサイトの“まんが家バックステージ”から名前が消え、安否(?)が気遣われていましたが、堂々と本誌にて復帰となりました。 また、雑誌からの公式アナウンスはまだですが、次々週(45号)には夏目義徳さんの新作読み切りが掲載される予定だそうです。夏目さんといえば、当ゼミで扱った情報についてご本人光臨(5月5日付ゼミ参照)という出来事があったのを記憶してらっしゃる方も多いでしょうが、この度、紆余曲折の末に「サンデー」へ読み切りで復帰という事になったそうです。
☆「週刊少年サンデー」2003年43号☆ ◎短期集中連載総括『ふうたろう忍法帖』(作画:万乗大智)【第1回時点での評価:B】 作品以上に作者のテンションの方が高いと一部で話題になった(笑)この作品も、全5回でフィニッシュとなりました。 で、総括なわけですが、端的に言って「風呂敷を広げ過ぎて、畳むのがやっとで終わってしまった作品」という事になるでしょうか。設定の描写・説明とシナリオを消化するだけでページの大半を費やしてしまい、各キャラクターの内面を深いところまで描き切る事が出来なかったように思えます。そのため、戦闘シーンの単調さも相まって、全体的に平板なお話に終始してしまった印象があります。 ただしそういう状況の中でも、一応はストーリーを破綻無くまとめ、伏線も処理し尽くしたという技量は「さすが」と言えるものだと思います。惜しむらくは、その技術が、この作品を駄作・凡作になるのを回避するためだけに使われてしまった…という事ですね。 最終的な評価はギリギリでB+といったところでしょうか。失敗作ではありませんが、成功しているとも言い難い微妙な作品ですね。また次回作に期待です。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「出身地自慢をして下さい」。当たり前と言えば当たり前なんですが、過半数が名所と名物(食べ物)という事になりました。しかし、モリタイシさんの「村なのにユニクロとかある」というのには少し笑えました。ちなみに駒木研究室のある兵庫県には村は1つもありません。全部市か町です。
しかし、今週の展開は、普通なら新連載第3回くらいのネタですよね(笑)。初心忘れるべからずとは言いますが、忘れなさ過ぎるのもどうかと思いました。 連載2年にして今更、香月が駒木好みのタイプ(微乳&スレンダー美人)という事に気付きました(笑)。ハナっから「他人のモノ」という認識があったので、完全にノーマークだったんですよねぇ。 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 毎度の事ながら、13ページでこの密度は凄いですよねぇ。何気なく凄い量の情報がページの至る所に……。
……というわけで、今日は簡単ですがこれまで。次回講義は火曜日くらいになると思います。ではでは。 |
2003年第67回講義 |
講義、講義の連続でさすがにヘロヘロ状態の駒木です(苦笑)。どう話したらいいか判らないんじゃなくて、話さなくちゃいけない事が多すぎて、いくら時間があっても足りないって分だけ、まだ幸せなのかも知れませんが……。 さて、今週はレビュー対象作が増えそうなので、前・後半分割でお送りします。で、今日は前半という事で、今週月曜日発売の「週刊少年ジャンプ」の内容についてのゼミという事になりますね。
◎新連載『神撫手』(作画:堀部健和) 秋の新連載シリーズ第3弾は、本誌掲載の読み切りが“昇格”し、初の週刊連載獲得となった、堀部健和さんの『神撫手』です。 ……では、今回──連載第1回の内容についてレビューをしてゆきましょう。 絵については、以前読み切り版が掲載された時にも「プロとしての最低ラインは軽く超えている」と評価したんですが、今回もそれは変わりありません。登場人物の美醜がハッキリ別れすぎている、または、全体的に線が細いために雑誌掲載時はインパクトが弱くなってしまう…などといった欠点も見受けられますが、及第点は出せるレヴェルにあるのではないでしょうか。 次に読み切り版では問題点が見受けられたストーリーと設定に関してですが、こちらも前回に比べると若干は改善されているようです。読み切り版で露呈した設定の矛盾を丁寧に練り直していった痕跡が窺え、これには好感が持てます。 例えば、水島新司作品に登場するキャラクター。これらの多くは荒唐無稽・常識範疇外だったりするのですが(通天閣打法の坂田三吉なんて、今週の『ミスフル』でパクられたくらいです)、それでも野球の描写をリアルに描く事で妙な説得力が生まれ、作品も傑作と評価されるようになったわけですね。 ……で、この『神撫手』の場合、主人公を追う警察やいわゆる“悪の組織”といった、この作品において“リアル部分”を担当しないといけない連中の行動に全く現実感が無く、お約束的・ご都合主義に終始しているのです。特に主人公と悪の組織数十人との追いかけっこなんて、まるで昔のTV番組・「加トちゃんケンちゃん」でやってた探偵コントですよ(苦笑)。それにこの主人公、ピストルで撃たれた割にはエラい元気ですしねぇ。 というわけで、評価はB寄りB−ということにしておきましょうか。作品の質以上に人気の望めるタイプではないでしょうし(むしろ逆)、かねてから予想していた通り、打ち切りサバイバルレースでは苦戦必至という事になってしまうのではないでしょうか?
3週連続新連載の最終週ということは、その第1弾の作品が連載3回目を迎える週でもある…というわけで、『サソリ』の第3回後追いレビューです。 ここまで3回の構成を振り返ってみますと、第1話は本編から独立した形のプロローグ。第2話は主人公・無太郎のキャラクターを強調するための一話完結型エピソード。そして今回の第3回がキーパーソン・織田信長の紹介を兼ねたストーリー本編の冒頭部分という事になっていますね。 内水さんは、本来ストーリーテリング力のある人だと思うんですが、今回はその実力が額面通りに作品へ反映されていない感じですね。何と言うか、非常に勿体無い感じがします。
今月の「十二傑新人漫画賞」審査員は村田雄介さん。『アイシールド21』の作画担当者という事で、毎号、作画テクニックについて色々なアドバイスをしていましたが、誰かさんとかと違って含蓄が有りましたよね。 ◎『BLACK CAT』(作画: 普通の作品なら「ベタだけどグッジョブ!」と思えるネタが、この作品だとチョイ前の『かってに改蔵』のように 「あざとい!」 ……と叫びたくなってしまうのは何故でしょうか(笑)。
バトルも佳境に突入して白熱! ……と、言いたいところだったんですが。 ……というわけで、今日はこれまで。次回は金曜日に後半分をお届けする予定です。 |
2003年第63回講義 |
|||||
先週に引き続き、今週のゼミも前・後半合同でお送りします。 さて、今週は「ジャンプ」、「サンデー」両誌ともに月例新人賞の結果発表がありましたので、そちらの方を紹介しておきましょう。
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ※「ジャンプ十二傑新人漫画賞」 ※「サンデーまんがカレッジ」 募集していた時にさんざんネタにさせてもらいましたが、この月の「十二傑」審査員は矢吹健太朗さん。「やはり」と言いますか「貴様、どこの口から」と言いますか、作品ごとの講評は勿論、総評にまで「オリジナリティが足りない」とか「個性が足りない」とかいったコメントが……。 ところで、「まんがカレッジ」の方は2ヶ月連続の入選作誕生となりました。ただ、「新人コミック大賞」もそうでしたが、長期間出ていなかった上位の賞を突然連続してポンポンと出してしまっては、逆に値打ちが下がっちゃうような気がするんですけどね。まぁ、作品のデキが抜群に良ければ万々歳なんですけれども。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年42号☆ ◎新連載『サラブレッドと呼ばないで』(作:長谷川尚代/画:藤野耕平) 「ジャンプ」秋の新連載シリーズ第2弾は、『ヒカルの碁』、『アイシールド21』に続く、「ストーリーキング」ネーム部門受賞者による原作作品・『サラブレッドと呼ばないで』です。 ……それでは作品の中身についての話を進めて行きましょう。 まず絵ですが、さすがは作画担当者として“ご指名”を受けただけあって、これがデビュー2作目とは思えない出来映えになっていますね。アクションシーンや特殊効果、更にはギャグモードに入った時のディフォルメされた絵柄(うすた京介直伝?)など、「ジャンプ」の連載作家としての最低ラインはクリアしていると思います。 あと、作画上のポイントで、当講座のBBSをはじめ様々なところで指摘を受けていたのが、主人公・大成の入学式のシーンで母親に振袖を着せていた事ですね。 次にストーリーと設定についてなんですが、先に結論から言ってしまいますと、「『これまでの柔道マンガには無いような話にしよう!』という意気込みは認めるが、全体的に練り込み不足」…といったところでしょうか。ストーリー展開がマンガの“お約束”に頼りすぎていたり、キャラクターの行動が(彼らの性格ではなく)シナリオの都合に合わせられているために、逆にシナリオから自然さが欠けてしまいました。特に悪役がストーリー上の役回りだけで設定されているのが問題で、担任&柔道部顧問の須藤など、実在してたら行政処分必至の性格破綻者になってしまってます。中1の生徒に背負い投げされても、「これは技ありだー」とか言って負けを認めず、あまつさえ絞め技に入って失神させてしまうような31歳って凄い話ですよ(苦笑)。 ……それに、そもそも主人公が柔道を嫌いになった本当の理由──オリンピックで金メダル確実と言われた両親が、銀・銅止まりになったのをバッシングされているのを見てトラウマになった──という部分からして、相当に無理があるんですよね。 あと、原作者の柔道に対する認識が甘過ぎるのも気になりました。親譲りの怪力とおぼろげな記憶だけで、受け身も取れないズブの素人が綺麗に技を決められる…というのは、いかにマンガでも都合が良すぎる気がします。才能だけで技がかかるなら、現実のオリンピック選手がゼーハー息を切らしながら反復練習してるのは一体なんなんでしょう? この作品、ネット界隈では比較的好評で驚いたんですが、当講座の評価としてはB−寄りBが精一杯ですね。まぁ確かに雰囲気は良い作品ではあるんですが……。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 鷲尾との戦闘シーンを見ていると、和月さんの「バトルとは、細かい駆け引きではなく気持ちで戦うものなのだ!」…という信念めいたモノが窺えて興味深いですね。あと、「男ってモンは、惚れた女のためなら何でも出来る!」もですか(笑)。 最近の少年マンガでは、
──みたいな底抜け脱線ゲーム的戦闘が流行みたいですが、こういうのは技の駆け引きが勝ちすぎてキャラクターの心理描写が希薄になるので、駒木はイマイチ賛同出来ないんですよね。格闘技でもそうですが、一番大事なのは技の駆け引きじゃなくて、戦ってる当人同士の気持ちがこちらに伝わって来るかどうかなんですよ。そういう意味では、和月さんの考え方は理にも適っていると言えそうです。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 結局、大工の兄ちゃんがムサシだったと。うーん、確かに肯ける答えではあるんですが、それだと工事の最中に会っているはずの栗田の反応が毎回過剰過ぎるんですよねぇ。まぁ、大工のムサシには興味無いって事なのかも知れませんが。 今回のラストシーン、真田が藤岡弘の生霊が憑依したかのように見事な薪藁斬りを見せていますが、このシーン、実は『バガボンド』のワンシーンをトレースしたものだそうです(失笑)。他のマンガからのトレースと言えば、つい最近も新人の読み切りで相次いで話題になりましたが、まさか準看板作品でも……! まだまだだね。
最近、この作品読んでいると、「ごっちゃん、いなくてもエエやん」と思ってしまうんですが(苦笑)。ごっちゃんが絡んでいない相撲シーンにリアリティがあってよく出来ているので、逆にごっちゃんが絡んでくると白け気味になっちゃうんですよねぇ。元々ごっちゃんって、魅力的な主人公というわけでもないですし……。 ☆「週刊少年サンデー」2003年42号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「自分のチャームポイントは?」。大体がウケ狙いか、照れてノーコメントって感じですか。まぁ今時チャームポイントなんて、B級グラビアアイドルぐらいにしか縁が無いでしょうからねぇ。 ◎『金色のガッシュ!!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今週から、バトル3箇所同時進行となりました。普通、これをやると読者が非常に混乱してしまうんですが、ここまで場所別でカラーを変えたら問題ないですね。 『南国アイスホッケー部』がアイスホッケーをしないのと同じくらい柔道をしなかった井手高柔道部ですが、珍しく柔道すると思ったら1級試験とは。まぁ、これが初段試験で、今後彼らが黒帯着ける事になっても違和感有りますから、これでちょうど良い感じなんですけどね。
今週、掲載順が最後方からランクアップ。暁の新ライバル出現もありましたし、これはしばらく続行確定と見て良いんでしょうね。
|
2003年第59回講義 |
今週のゼミは前・後半合同で行います。別にサボりたいからというわけではなく、今週はゼミの題材が少ない上に、合同版でやっておかないと他の講義が出来ない…という事情ですので、どうか宜しく。 それでは、今週は(というか今週も)情報系の話題もありませんので、「ジャンプ」&「サンデー」各誌のレビューとチェックポイントをお送りしたいと思います。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年41号☆ ◎新連載『戦国乱波伝 サソリ』(作画:内水融) 今週から始まった、秋の新連載シリーズ。まず第1弾は、内水融さんの少年忍者アクション物・『戦国乱波伝 サソリ』です。 まず絵ですが、以前「赤マル」で作品を拝見した時より、若干タッチが粗くなっているのが気になりますね。これまでとは桁違いに増えた仕事量に少々戸惑い気味なのでしょうか。 次にストーリーと設定なんですが、今回は“長編作品の第1回”というよりも、“本編から独立した読み切り形式のプロローグ”といった体ですので、ちょっと評価に困ってしまいますね(苦笑)。まぁとりあえず、今回は第1回分のみのデキ具合についてレビューする事にしまして、作品全体のストーリーについては次々週の後追いレビューで詳しく述べたいと思います。 ……というわけで、第1回のストーリーについて。 先ほど述べた理由により、今週時点での評価は保留ということにしておきますが、今回を1本の読み切り作品として評価するとすれば、B+といったところでしょうか。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『BLEACH』(作画:久保帯人)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感など】 本編の感想は先週と一緒ですので、ここでは割愛。今日は番外編について少々述べさせてもらいましょう。 今回の番外編については、既にネット界隈でも賛否両論出ていますが、それにしても、これほど中身の無い話を“それっぽく”見せる表現力と言うのはやはり非凡だと思います(これは皮肉ではありません。1ページ平均6コマが標準とされる今、たかが13ページで中身のある読み切りなんて描けるはずがないのです)。小説家でもストーリーテリング以上にレトリックの才能に恵まれた方がいらっしゃるんですが、久保さんはそのマンガ家バージョンといったところでしょうか。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 「問題:ムサシとは誰の事か?」
おいおい、結局決着はカードバトルなんかい!(苦笑)
恋のライバル出現云々言う前に、そろそろ本命決めんかい淳平!(怒)
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「生まれ変わるならどんな動物になりたいですか?」。回答を見ると、人間をもう一度やり直すか、ノンビリ暮らせる動物(ペット系)になるかのどちらかみたいですね。 ◎『名探偵コナン』(作画:青山剛昌)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 改めましてこんばんは。高木&佐藤編になると、途端に読み込む熱心さが増す駒木ハヤトです(笑)。こういう“イマイチな男が誠意を持って頑張るラブコメ”ってのに異様な共感を覚えるんですよねぇ(苦笑)。
うわー、まさか「異国の地に単身降り立った主人公は荷物を盗まれる」の法則から始まるとは思いませんでしたよ。ここから大リーグのマウンドに立つまで何年かけるつもりなんでしょうか(苦笑)。
今回で更に迷走……。いつからこのマンガは『カイジ』みたいに命の遣り取りをするハードコアな作品になったんですか?(汗) これが人気低迷のテコ入れ策なんだとしたら、激しく間違ってると思いますが……。
んー、もうちょっと上手い見せ方が無かったもんですかねぇ、徹平のフリーキック直接ゴール。最近は「チャンピオン」連載の『ORANGE』がとにかくアツいので、どうしてもそっちと比べてしまいます。
|
2003年第57回講義 |
さて、大変ご迷惑をおかけしましたが、講義再開です。今週は「フードファイター・フリーハンデ」なども実施できるように準備中なので、楽しみにしていて下さい。 ではとりあえず、今日は先週分後半の「マンガ時評」から。とは言え、先週の「サンデー」は情報もレビュー対象作も無くて、チェックポイントだけの寂しい中身になってしまうのですが……。 ☆「週刊少年サンデー」2003年40号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「大事な人に向けてメッセージを一言」。このコーナーで巻末コメントを扱うようになってから、一番デキの良い質問じゃないかと思います。メッセージの対象を限定しないところがミソですね。 ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 巻頭カラー・高校編のエピローグですね。 来週からはアメリカ編ですが、どういうスタートになるんでしょうか。一番考えやすいのは、既にトライアウトを受けて、マイナーリーグに馴染んでる…という時点までタイムワープさせるパターンでしょうけど。
点数計算、合ってましたね(笑)。でも、先週の引きとの不自然さがありますから、先週分の原稿を上げてから気付いたという可能性も無きにしも非ずかと。 それにしても、波多野が予選スベったのは驚きでした。いや、実は駒木、この賞金王決定戦で連載終了と思ってたんで(笑)。 ……と、今日は本当に短いですが、復帰明けと言う事でこれくらいにさせて頂きます。正直、今週号の「サンデー」は特筆すべきポイントが少なくて、チェックポイントを探すのに往生しました。(で、結局探し出せず) それにしても、毎週毎週「今週の『きみのカケラ』は高橋しん先生が体調不良のため休載します」と載せ続ける「サンデー」編集部の執念たるや、ある意味凄いモノを感じますね。そんな執念があるなら、もっと良い新連載作品立ち上げろや、と言いたくもなって……いやいや(苦笑)。 |
2003年第56回講義 |
|
今週は、駒木が4日早朝から東京へ“1人研修旅行”へ行く関係上、ゼミを1日前倒しして実施します。こういう時に限ってレビュー対象作が2つあったり、紹介しなきゃいけない情報が結構あったりするんですから皮肉です。まるで麻雀で高い手が入った途端に親からリーチが……って、それは今日の駒木自身でしたか(苦笑)。 ……というわけで、11面待ち・絶好形のイーシャンテンが6巡ツモれず、挙句に18000点放銃した講師がお送りする「現代マンガ時評」、スタートです。 ──ではまず、情報系の話題から。4週連続新連載シリーズの余韻も覚めやらぬ「週刊少年ジャンプ」ですが、来週発売の41号から3週連続で秋の新連載シリーズが開始されます。
……3組4人の作者の皆さんは、いずれもこれが初の週刊連載となるフレッシュな顔触れです。先の新連載シリーズが中堅・ベテラン作家さん中心のラインナップだったのと比べると正に好対照ですね。 ……では、情報系の話題はこれくらいにしまして、レビューとチェックポイントへ移りましょう。レビュー対象作は読み切り2本です。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年40号☆ ◎読み切り『エキゾチカ』(作画:武井宏之) それでは、まずは現役連載作家さんに敬意を表しまして、武井宏之さんの作品・『エキゾチカ』のレビューからお届けします。 武井宏之さんは1972年5月生まれの現在31歳。デビュー前から、当時『しあわせのかたち』を連載中だった桜玉吉さんのアシスタントを務めつつ、「ジャンプ」デビューを目指して修行。その甲斐あって94年下期の手塚賞で佳作を受賞し、“ジャンプ新人予備軍”の仲間入りを果たします。 まず絵ですが、これはもう何も口を挟む事はありませんよね。人物キャラは勿論のこと、この作品の“生命線”と言って良い、自動車やカーチェイスシーンの描写も(少なくとも“その道”の素人である駒木の目には)達者であったと思います。 ただ、ストーリー&設定については、若干の苦言を呈さなければなりません。 ──とまぁ、ネガティブな事も言いましたが、それでも全体的に見れば、(平板なシナリオを除けば)卓越した構成&ネーム力がキラリと光る、爽快なエンターテインメントになってはいたと思います。よって評価は“名作崩れの惜しい作品”と言う事でB+。今度は連載の合間とかではなく、ジックリと腰を据えて描いた短編を読んでみたいですね。
続いては、このゼミでもすっかりお馴染みとなりつつある、若手ギャグ作家・大亜門さんの作品です。 ……さて、それでは内容について述べてゆきましょうか。 そして肝心のギャグの出来映えですが、「赤マル」に引き続いて今回も一定以上のレヴェルに達しているのではないでしょうか。特に2箇所あった、同じテーマのギャグを立て続けに連発するシーンには、(笑わされながら)唸らされました。 ということで総合評価ですが、若干の改善点を残しながらも、A−を出すだけの価値は十分にあるでしょう。今後は連載も視野に入れての活動に期待したいところですね。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の掲載順は実に絶妙でしたね。とりあえず最初の3作品でグッと読者のハートを鷲掴みにしておいて、そこからまた3作品を費やして絶妙のクールダウン(笑)。読み切りをニュートラルな姿勢で読んでもらえるように誘導できていて良い感じです。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 人気投票の結果発表。早速、といいますか、予想外の高ランクを獲得した“ハァハァ三兄弟”長男・十文字が本編でもクローズアップされてますね。このあたり、いかにも「ジャンプ」です。まぁ、作家さんとしても、読者に好かれているキャラクターには自ずと愛着が湧いて来るでしょうしね。 ◎『ONE PIECE』(作画:尾田栄一郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 巻末コメントでは高らかに“突き抜け回避宣言”。今年の「ジャンプ」は新連載作品の不作が続いただけに、これは素直に喜びたいところですね。 ◎『BLEACH』(作画:久保帯人)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 こちらはこちらで見せ場タップリの内容。幸福を強調させておいたキャラを不幸のどん底に沈ませる…と言う、オーソドックスながらストーリーテリング力が無いと出来ないシーンをキチンと描き切っていましたね。
──それでは、今日はこれまで。次回の講義は旅行から帰って来た後になりますので、週末になりますかね。受講生さんたちには申し訳なく思うのですが、しばらく骨休みさせて頂きます。ではでは。 |
2003年第55回講義 |
どうも。今週号の「サンデー」表紙の安倍麻美が、どう見ても元女子プロレスラーの美咲華菜にしか思えない駒木ハヤトです、こんばんは(笑)。 ……さて、今日は情報系の話題もありませんし、早速レビューとチェックポイントへと参りましょう。 ☆「週刊少年サンデー」2003年39号☆ ◎短期集中連載第1回『ふうたろう忍法帖』(作画:万乗大智) 今週から最近の「サンデー」では最早お馴染みとなった短期集中連載がスタート。ただし今回は若手作家さんでもギャグ作品でもなく、ベテラン・万乗大智さんが勇躍登場して来ました。 絵に関しては、既に8年も週刊連載している方ですから、あれこれと注文をつけるポイントはほとんどありませんね。多少個性のキツい絵柄のような気もしますが、「サンデー」読者はもう慣らされてしまっていますので問題にならないでしょう。 次にストーリー&設定ですが、有り体に言えば『パーマン』のオマージュなんですよね、これ(笑)。ちゃんとアレンジを加えているので別物になってますが、ほとんどの設定のベースは『パーマン』です。ここまで上手くアレンジすると、元ネタがバレても“パクリ”とは思えないという好例ですね。ストーリー展開のテンポも良いですし、さすがは週刊連載8年のキャリアといったところでしょうか。 評価はプラス・マイナス両面を考慮して、B+寄りBという事にしておきます。勿論、ストーリー上の矛盾点が解消された場合などは評価を上昇修正することになると思います。
続いての読み切り枠は、現在「サンデー超増刊」で連載中の『進学教室
!! フェニックス学園』が読み切りの形で出張して来ました。 まず絵ですが、前回の登場から間がないので仕方ないのですが、相変わらず萌えとは程遠い絵柄ですよね(苦笑)。それでも画力そのものは幾分向上していますし、以前よりも「ちょっとでも男臭さを和らげよう」という気持ちが窺える分だけ、まだ「サンデー」作家らしくなったというところでしょうか(笑)。 一方、ギャグの冴えは見事と言って良い位に進歩していますね。ページ変わりの1コマ目にオチを持って来る視覚効果を上手く活用出来ていますし、緩急をつけた前フリとオチのインパクトも効果的に出来ています。特に今回はボケとツッコミの間が絶妙で、いわゆるギャグの“打率”が非常に高かった事に好印象を持てました。更に言えば、ネタがほぼ全て全年齢対応になっているのが良いんですよ。ネタを理解できる人が偏ると、どうしても支持層が限られてきますからね。 敢えて欠点を探すならば、多少強引過ぎる展開がいくつか見られた点ですが、これも許容範囲といって良いものです。ほとんど欠点ナシの素晴らしい作品という事で、評価はAとしておきたいと思います。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「今、無性に食べたい物」。 ◎『WILD LIFE』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B+/雑感】 今週、藤崎さん的にはサービスカット連発で「どうよ?」って感じだと思うんですけど、スイマセン、個人的には全然萌えませんでした(苦笑)。
◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 当講座の談話室(BBS)で既に指摘があったんですが、賞金王決定戦の競走得点って、1着10点、2着9点、3着7点、4着6点、5着5点、6着4点ですから、予選の成績は波多野20点(5着、5着、1着)に対して洞口22点(2着、2着、6着)なんですよね。だから今回のラストの描写は誤りなんです。
それでは、講義を終わります。 |
2003年第54回講義 |
ようやく正常なカリキュラムになりました。まぁ本来なら、「ジャンプ」のレビューは月曜深夜に実施するのが筋なんでしょうが、当講座のレビューは時間をかけて吟味しないと話にならないので、こればかりはご勘弁願います。 ところで最近になって気付いたんですが、「ジャンプ」って、登場人物紹介と前回までのあらすじ紹介が無いんですよね。しかも、その割にはやたら登場人物が多くて、シナリオもやたら複雑(伏線、回想、時系列の入れ替えが多いもの)だったりしますし……。 まず1本目は、現在『シャーマンキング』を連載中の武井宏之さんによる49ページの特別読み切り作品・『エキゾチカ』。予告からは今一つ中身が掴めないんですが、どうやら車が絡んだアクション物になりそうです。 2本目は、新人ギャグ作家・大亜門さんの『超便利マシーン・スピンちゃん』。題名を聞いてピンと来た方もいらっしゃると思いますが、「赤マルジャンプ」03年春号に掲載された、『スピンちゃん試作型』の続編という事になりますね。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年39号☆ ◎読み切り『LIKE A TAKKYU !!』(作画:高橋一郎) 今週の読み切り枠は、新人・高橋一郎さんの卓球系ボクシングマンガ(!)『LIKE A TAKKYU
!!』です。 ……それでは、デビュー2作目となる今回の作品について、レビューをしてゆきましょう。 まずは絵について。有り体に言えば「第一印象でかなり損している絵柄」といったところでしょうか。 次にストーリー&設定について。こちらも語るべき所の多い作品ですね。 さて評価ですが、作・画両面の完成度を考慮した場合、今回はB+が適当といったところでしょうか。しかし、高橋さんの持つ作画のセンスを考えると、近い将来“大化け”する可能性は極めて高いと思われ、今後において大変期待が持てる新人作家さんである事は間違いないでしょう。次回作がとても楽しみです。
今週号は話題のタネの多い号でしたが、「嫌事は極力言わない」の原則から、テニス版の念能力バトルはスルーの方向で。 ◎『ONE PIECE』(作画:尾田栄一郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ここ数週は回想編なんですが、これくらいテンポが速いと、やはり読み応え出て来ますね。ただ、回想編が適正なテンポという事は、当然メインストーリーは冗長になってしまってるわけで……。まぁ、冗長とは言っても手抜きしているわけじゃなくて、思い切り広げた風呂敷を思い切り丁寧に畳んでいるだけなんですが。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/今週分のシナリオ構成分析等】 今週、ネット界隈でやたらと叩かれていたのがこの『アイシル』でした。今週登場した超ステレオ型“アホでマヌケなアメリカ白人”の言動が癇に障ったのか、某巨大掲示板なんかではエラい言われようしてましたね。 でも今回の『アイシル』は、ストーリーテリングの観点から言うと、もの凄い密度で色々な事をやってるんですよね。 ●太陽高戦の翌日にNASA高戦をするという超ハードスケジュールを、コンディション的に五分で戦えるような常識的なスケジュールにするための“事件”を起こす。 ……これを19ページでやってるんですから、駒木は四の五の言う前に「凄ェ!」と思います。多分、普通の作家さんなら今回のエピソードだけで4回分くらいのページ数を使っちゃうんじゃないですかね。
病気休養明けから電光石火のスピードで完結。かなり駆け足な展開の最終回でしたが、語るべき部分は語りきっている感じですので、確信犯的な駆け足だと言って良いと思います。(だって、延々と来年の夏までのストーリーを語られた上に、また笹崎と1年以上かけて試合されても困るでしょ?) 連載全体の総括ですが、「ジャンプ」作品にしては非常に贅沢なページの使われ方をした作品だったと思います。 ……というわけで、作品全体の評価はA−寄りB+としておきます。まぁ何はともあれ、森田さん、お疲れ様でした。しばらくはゆっくり休んで、大好きなボクシング観戦でも楽しんだら良いんじゃないですかね。
駒木、『さるかに合戦』に大爆笑。こういう客観視能力って、ギャグ作家さんには大事ですよね。
|
2003年第53回講義 |
||
週をまたいでしまいましたが、先週発売の「週刊少年サンデー」関連のゼミをお送りします。 ──というわけで、今日のゼミに使用するテキストは、8月20日発売の「週刊少年サンデー」38号です。ええ、次号予告に今週号のグラビアを飾った安倍なつみの実妹・ まずは短期集中連載の情報から。『DANDOH!!』シリーズでお馴染みの万乗大智さんが新作・『ふうたろう忍法帖』で早くも再始動です。 次に読み切りの情報を。ここ2年ほど増刊・「少年サンデー超増刊」を中心に積極的に活動中の若手ギャグ作家・水口尚樹さんが、現在増刊で連載中の『進学教室!! フェニックス学園』を引っさげて本誌に登場します。水口さんは過去に本誌で読み切りと短期集中連載を経験しており、今回が3度目の本誌登場となります。実力的には現連載陣と遜色無いモノを持っているだけに、ここで結果を出して本誌連載への足がかりを得たいところでしょう。こちらも次週分のゼミでレビューをお送りします。 さて次。月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」6月期分の結果発表が出ていますので、例によって受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。
今回の受賞者さんについての過去のキャリアは確認出来ませんでした。 それにしても、久々に入選作が誕生しましたね。ちょっと調べてみたところ、昨年02年6月期の『サブ・ヒューマンレース』(作画:小澤淳)以来ですから、ちょうど1年ぶりという事になりますね。講評を読む限りでは、絵からストーリーからキャラクターからベタ褒め状態で、ここまでプッシュされると楽しみになって来ますよね。
☆「週刊少年サンデー」2003年38号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 恒例、巻末コメントのテーマは、「放っておかれると、ずうっとやってしまうほどの趣味」。 ◎『金色のガッシュ!!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いったいどういう感覚してるんだよー、この人(雷句さん)のギャグセンスはー(笑)。この大緊迫した場面でナゾナゾ博士、しかもビッグボイン。で、しかも空気をおもくそ弛緩させといて、それでも全体の緊迫感は落ちていないと言う離れ業。まさにグルービーじゃありませんか。 ◎『KATSU!』(作画:あだち充)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 小説や映画なんかでは、重要な場面を印象付けるために敢えて情景描写を挟んで間を持たせる事があるわけなんですが、あだちさんの作品もそういう場面って結構ありますよね。 うあー、本気でエコロジー世界征服秘密結社とのパワープレイに突入ですか……。何て言うか最悪の事態。 ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】 この号が発売された直後からのネット界隈で、「小学生のパンチラが──」とかいう話題が全く出て来ないあたりに、 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 学校時代には必ず1人はいましたよね、何らかのダメ職人が(笑)。
|
2003年第52回講義 |
お約束の日から1日遅れで申し訳ありません。今週3回目の「現代マンガ時評」をお送りします。講義をやってもやってもスケジュールが遅れ気味というあたり、何か闇金の返済に追われてるような錯覚を覚える今日この頃です(笑)。 しかも今日は年に3度の「赤マルジャンプ」全作品レビュー。喩えて言うなら、料理学校出たばかりの新人コックの作ったフルコースを立て続けに10回食べさせられた上に詳細な感想まで求められる…という、心身にモロ負担がかかる作業です。ハッキリ言ってご勘弁願いたいです(苦笑)。でも、たまにとんでもない傑作が埋もれてたりするので止められないんですよね。さて、今回はどうなりますか……。 それでは、これよりレビューを始めます。今までと同様、現役連載作家さんによる番外編はレビューから除外しますのでご了承下さい。 ◆「赤マルジャンプ」03年夏号レビュー◆ ◎読み切り『脱走屋鉄馬』(作画:小林ゆき) 巻頭恒例の“打ち切り作家枠”、今回は昨年の「赤マル」夏号以来、1年ぶりの登場となります、小林ゆきさんです。 ……と、経歴紹介が長くなり過ぎました。早々に内容へ話題を移しましょう。 ◎読み切り『双龍伝』(作画:山田隆裕) 山田さんのデビューは「赤マル」98年春号。97年12月期『天下一漫画賞』で佳作を受賞していて、その特典によるものでした。この98年春号でデビューした作家さんは、他に矢吹健太朗氏と現在『バンチ』作家になった小野洋一郎氏などがいます。豊作なのかそうじゃないのか判断つかないのがアレですね(笑)。 まず絵ですが、画力そのものはかなり高いと思います。今回の「赤マル」はビジュアル(画力)重視の編集方針を採ったと聴きましたが、これを見ると確かに肯ける話です。
ここから終盤近くまでは、デビュー作、もしくはデビュー2作目の新人さんが続きます。 絵のレヴェルは、年齢やキャリアを考えるとなかなかのモノでしょう。しかも、何気に美人な女性看護士の描き方などを見る限り、色々なタッチの使い分けも出来るようで、将来も楽しみと言えそうです。ただ、今回の画風は少年マンガと言うより児童マンガのそれだけに、違和感が無いわけではありませんでした。
絵に関しては、まだキャラの描き分け(特に輪郭)などの課題を残すものの、前作に比べると大分アカ抜けて来たのではないでしょうか。大ゴマを連発したダイナミックな演出も新人の域を超えており、今後が楽しみな逸材と言えそうです。 続いては、過去の経歴全く不明の暁月あきらさんの登場です。ただ、あまりにも新人離れした画力と「漫画歴5年」というプロフィールから、以前に別ペンネームでプロ又は同人活動をしていた可能性は極めて高いと思われます。 さて、作品についてですが、先ほども述べたように、絵に関しては即連載級の腕前だと言えそうです。多少の“同人臭さ”は感じられますが、それも鼻につくほどではなく、これは大きなセールスポイントですね。
今年4月に新設され、“月間最優秀作は漏れなくデビュー”という破格の特典が話題を読んだ「ジャンプ十二傑新人漫画賞」。その栄えある第1回の佳作&十二傑賞(=月間最優秀賞)に輝いた岩本直輝さんが登場です。 絵については、人物キャラデザインの未熟さ、キャラクターが背景に溶け込んでしまうゴチャゴチャ感など、今後修正すべき点は多いでしょう。しかし、黄金竜の迫力ある描写など、多くのマンガ家志望者が練習を敬遠しがちな(それでいてマンガ家として必要な)部分に力を注いでおり、将来性は確かに十分感じられます。
続いても「十二傑」組、5月期十二傑賞の相模恒大さんが登場です。 まずは絵なんですが、一応は見栄えがする画風ではあります。が、構図やキャラクターによって得手不得手の差が大きいようで、コマごとの完成度にムラがあるのが少し気になります。また、この作品で一番重要であるはずのスプレーアートやペンキアートの“作中作品”がお世辞にも魅力的なモノとは言えず、絵が逆に作品のクオリティを押し下げてしまった感も否めません。
絵の完成度は非常に高いですね。絵そのものだけでなく、かなり“マンガを描く訓練”を積んでいる印象もあり、今すぐ連載しても大丈夫でしょう。ただ、多少「サンデー」的な画風であり、「ジャンプ」本誌に載った場合は微妙な違和感が出て来る可能性がありますね。 ◎読み切り『アシハラ戦記 トウタ』(作画:ゆきと) ゆきとさんは01年後期「手塚賞」で佳作を受賞し、翌02年の「赤マル」夏号でデビュー。今回が1年ぶりの登場となります。前回はバスケットボールをテーマにしたスポーツ物作品でしたが、今回は一転して日本の神話世界をモデルにしたファンタジー。なかなか果敢な挑戦ですね。 絵に関しては、画力そのものは別にしてマンガの絵として見難いのが気になります。線の強弱のメリハリを持たせないままで背景やエキストラ的キャラを細かく描き過ぎているので、メインのキャラが目立たないんですよね。せっかくの絵の密度が逆効果になっている感じです。線や絵の取捨選択というのも、マンガを描く上での重要なテクニックのはずですから、今後はこのあたりに目を配ってほしいものです。
ストーリー系の新人・若手枠のオーラスは、「ジャンプ」では珍しい移籍組の若手・福島鉄平さんです。 まず絵ですが、好き嫌いの分かれそうな絵柄ですよね(苦笑)。画力そのものも決して拙劣ではないでしょうが、画力秀逸とするには躊躇するようなレヴェルであるとも思います。どちらにしろ、少年マンガの王道的なストーリーとの相性は悪そうで、今後の「ジャンプ」での活動の幅はかなり限定されてしまいそうですね。
この「赤マル」夏号では唯一のギャグ枠。コッテリとしたストーリー物が続いた後の口直しといったところでしょうか。 まず絵ですが、どうしようもないレヴェルだった1年前に比べると、まだマシにはなっていると言えます。しかし、不自然かつワンパターンな顔のアングルや表情といい、迫力のまるでないアクションシーンと言い、プロとしては依然として落第点の範疇に留まっています。これでは作品全体の雰囲気は“クサい芝居のコント状態”みたいなもので、当然、作品のクオリティにもかなり悪い影響を与えています。
しかし、こうして新人・若手作家さんの中に叶さんの作品が混じると、何とも表現のし難い“格の差”が感じられるのが興味深いですね。今回は画力自慢の新人さんが終結した増刊号だったのですが、そこへ入っても叶さんの実力というのは一歩図抜けているように思えます。これは恐らく、叶さんは画力そのものも然ることながら、様々なマンガを描くテクニック──構図の取り方、ディフォルメの技術、不必要な線や背景の省略など──が非常に長けており、それが作品のクオリティに反映された…という事なのでしょう。 あと、非常に気になったのは、新人さんのストーリー系作品のシナリオ構成が、全ての作品においてお互いに酷似していた事です。
|
2003年第51回講義 |
||
「現代マンガ時評」タイムラグ解消シリーズ第2弾、今日は先週発売の「週刊少年ジャンプ」37・38合併号についてのゼミを実施します。 ……それでは情報系の話題から。まずは月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の6月期分の審査結果が出ていますので、受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ◎佳作&十二傑賞の田村隆平さん…03年2月期「天下一漫画賞」で審査員(武井宏之)特別賞を受賞。 今回の審査員は冨樫義博さん。さすがはネームだけでマンガの原稿料を稼ぐ男と言いますか、「伏線の使い方は分かっているようです」…だなんてグルービーな講評が印象的でした。 余談はさておき、情報系の話題をもう1つ。次号39号では、読み切り作品・『LIKE A TAKKYU』(作画:高橋一郎)が掲載されます。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年37・38合併号☆ ◎読み切り『ネコマジンみけ』(作画:鳥山明) 「ジャンプ」の読み切りシリーズ、今週はベテラン作家枠、しかも合併号という事で、3年ぶりに鳥山明さんの登場となりました。 ──それでは本題へ。第一線を退いた作家さんの“読み切りのための読み切り”をレビューするのは初めてに近いですので、果たして上手い論評が出来るか不安ですが……。 まず絵に関して。以前はスクリーントーンをほとんど使わない事で有名だった鳥山さんも、最近はペン入れ後の工程をコンピューターで済ませているとのことで、いかにもそれっぽい仕上がりになっていますよね。それにしても、トーン削りのような細かい作業が使えないにも関わらず、そんなに平板な印象を与えない作画技術はさすがだと思います。 ただし悲しいかな、ストーリー&設定の方は、鳥山さんのマンガ制作に対するエナジーが、その全盛期に比べて大いに減退してしまったのをハッキリと感じ取れるものになってしまっていまいました。 この「ネコマジンみけ」のような、最後にハッピーエンドで終わるエンタテインメント系作品において、その構成を考える上で最大のポイントとなるのは、“いかにクライマックスシーンで読者にカタルシスを与えるか”…という部分です。こういうエンタテインメント系の作品では、決まって主人公が悪者を倒して終わりになりますが、何故そうするかと言うと、それが読者にカタルシスを与えるのに一番手っ取り早いからなんですよね。勧善懲悪モノが古典の時代から脈々と受け継がれているのは、実はそういうわけなんです。 で、ラストで読者にカタルシスを与えるためには2つの要素が重要になってきます。その1つ目は言うまでも無くクライマックスシーンそのもの。これが上手くいかないと、文字通りお話になりません。 では、この『ネコマジンみけ』はどうかと言いますと、このカタルシスを与えるための2つの要素──特に“ストレス付加”要素が弱いんですね。話のテンポが早い事もあるのですが、ストーリー上に大きな“谷”も“山”も無いまま、何となく「めでたしめでたし」で終わっている…といった感じです。その結果、読後感こそ悪くないものの、非常にインパクトの弱い作品に終わってしまいました。 さて評価ですが、絵柄など見所はあるものの作品全体のデキは不完全ということで、B寄りB+ということにしておきましょう。こういう状態で長期連載されても晩節を汚すだけだったでしょうから、鳥山さんが第一線を退いたタイミングは見事だったですよね。まぁ、そう出来るだけの財産を築けたというのが一番大きいのかも知れませんが……。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週、ネット界隈で聞いて一番面白かったネタが、『アイシールド21』で神龍寺ナーガの監督が言った、 で、各作品のデキ具合に関してですが、4コママンガとして一番“形”になっていたのは『ONE PIECE』ですね。尾田さん、本当にマンガ描くの好きなんですなぁ。 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−/雑感】 今週は、とりあえずこの作品を採り上げておかないといけないでしょうなー(笑)。とりあえずの長期連載ゴーサインが出て(どうやらアンケート結果はマズマズ良好だったようです)現場のテンションが上がったのか、ギャグと言いストーリーと言い、物凄い濃密な19ページでした。 ところで、どうも“パピヨンマスク編”は、突き抜けても尻切れトンボにならないような、10回前後で一区切りつくようなシナリオになってるようですね。前作の失敗で懲りたのか、それとも“白装束を着た”状態で臨んだ連載だったのか……。 余談ですが受講生さんの指摘によると、ビジネスホテルに未成年の女の子が1人で泊まろうとすると、非常に怪しまれるそうです。まぁ駒木などは、それを聞くと逆に、偽の身分証明書でシレっと「21歳・ルポライター見習い」になりきる斗貴子さんなどを想像してワクワクしてしまうのですが(笑)。 ◎『ROOKIES』(作画:森田まさのり)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
ではでは。 |
2003年第50回講義 |
随分久しぶりの講義になりますね。もっとも、駒木は記念式典前後の公私多忙があって、全く久しぶりという感じがしないのですが(苦笑)。 さてさて今日の講義の内容は、8月6日の水曜日に発売された、「週刊少年サンデー」36・37合併号についてのレビュー及びチェックポイントとなります。物凄いタイムラグがありますが、もしもまだこの号の「サンデー」が手元に残っておりましたら、逐一参照の上、受講して頂きたいと思います。
◎新連載第3回『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)【第1回時点での評価:B】 というわけで、「週刊少年サンデー」夏の新連載第2弾・『楽ガキFighter』の後追いレビューをお送りするのですが……。 この第3回まで読んでの率直な感想を申し上げます。まさか、ここまで酷い作品とは思いませんでした。駒木も長年、物理的事情が許す限り色々な駄作と出会って来ましたが、ここまで勢いに溢れた駄作となると、『サイレントナイト翔』(作画:車田正美)以来かも知れません。 何しろ、主人公と敵対する事になった組織の目的が、 しかも、とりあえず百歩譲ってこの“理想”をアリと認めるにしても、そうすると今度はこのお話と組織の目的が全く噛み合いません。いやしくも世界征服を企もうという組織なのだったら、少し頭の足りない高校生を組織の仲間に取り込む前に、具現化した絵で国会議事堂くらい占拠してはどうかと思うのですが(笑)。 以上のように、この作品はそのストーリーや、それを差支える土台の部分が既に倒壊してしまっています。思うに中井さんは、師匠の江川達也氏の悪い部分──ハッタリを重視する余り、ストーリーが平板になってしまう点──だけを引き継いでしまっているような気がします。しかもそのハッタリすら中途半端なのですから、文字通りお話になりません……。 評価は勿論大幅ダウンです。世界観、ストーリーが完全に崩壊しているわけですから、C評価も止むを得ないところでしょう。
巻末コメントのテーマは、「自分って親に似ているなぁ…と思うところ」。面白いように見えて、実は答えにくい質問のようで、コメントも「顔」とちょっとした性格に分かれた感じになりましたね。藤田和日郎さんは隣のページにデカデカと掲載されているフリーダイヤルに電話したんでしょうか。
作中に登場した「狗神大サーカス団」って、やっぱり最近「うたばん」に出てる「犬神サーカス団」から来てるんでしょうなー。“藤田和日郎さんから借りたビデオの「かくし芸大会」”といい、藤崎さんは相当バラエティー好きのようですね。
4年に及ぶ連載も晴れてフィナーレ。やや唐突な締め括り方だったような気もしますが、読後感は悪くなかったと思います。 |
2003年第49回講義 |
今日の講義が、とりあえずは記念式典前最後の講義になると思います。また、今日も式典の準備と平行しつつ…という感じですので、駆け足、駆け足で進行させたいと思います。どうぞ宜しく。 まず、情報系の話題から。「週刊少年ジャンプ」の次号は夏の合併号ということで、様々な企画モノが用意されているようですが、読み切りの方も超大物作家さんの登場となりました。 そして今日は話題をもう1つ。実際に「ジャンプ」を購読されている受講生の皆さんは大変驚かれたでしょうが、作者体調不良のために長期休載されていた『ROOKIES』(作画:森田まさのり)が、今週発売の36号から連載再開となりました。 ◎読み切り『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健) 2週連続で既製作品からの模写疑惑(というより確定に近いですが)が持ち上がるという、極めて憂慮すべき事態となっている「ジャンプ」読み切りシリーズですが、今週はどちらかと言えば間違いなく模写される側の(苦笑)、小畑健さんの登場です。今回は納涼という意味も込めて(?)ホラー作品での登場となりました。 では、作品の内容について述べてゆきましょう。 まず絵ですが、もうこれは何も口を挟む点はありませんね。少年誌作家にしてはリアルタッチな小畑さんの画風が、ホラー系作品になって更に栄えているような気がしました。 次にストーリー&設定ですが、全体的な完成度はソコソコの水準に達しているものの、至る所で詰めの甘さが見受けられ、そのために“良作になり損ねた凡作”に終わってしまったような気がします。 この作品のメインアイディアは、『ドラえもん』の「独裁スイッチ」などに見られる、「平凡な人間が他人の生殺与奪を握ってしまった時、その人間と社会はどうなるか?」……という“もしも”のお話です。人が死ぬ(又は消える)という不可逆かつ重大な事象が簡単な作業で出来てしまえる…というギャップが得体の知れない恐怖を生み出すのがキモですね。 そして、実はこの作品で一番怖いのは、主人公・鏡太郎の隠れた凶悪性だったりするのですが、これがどうにも作品中で描ききれていないのが、もう1つの惜しい所です。 ……以上の事情により、この作品は“怖いはずなのに怖さが伝わって来ない、何だかちょっと分かり難いお話”になってしまいました。せっかく小畑健さんに絵を描いてもらったのに、勿体無い事しましたね。 先週の予告には掲載されていなかったのですが、今週は、『HUNTER×HUNTER』の取材休みで開いた枠を埋めるための15ページギャグ読み切りが掲載されました。 まず絵について。パッと見で言えば、多少の“同人臭さ”は残るものの、見栄えが良さそうな画風ではあります。アシスタント経験の賜物でしょう、背景の上手さも目を引く仕上がりです。 また、ギャグそのものにも今一つ“突き抜け”方が足りないような気がします。この作品は「しょうもないバカバカしい事を、クソ真面目にやれば面白い」…という、昔から使われているパターンを追求した作品なのですが、その肝心のクソ真面目さが今一つに終わってしまったように思えるのです。バカバカしい記録に挑戦させるなら、それこそ命の遣り取りをするくらいヒリヒリした緊張感でやらせないと、爆発力のあるギャグにはならないのです。 ……というわけで、評価はC寄りB−。とりあえずマンガらしいマンガにならないと、連載獲得どころの話ではないと思います。僭越ながら猛省を促し、奮起を期待したいところであります。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 先月は、“「十二傑新人漫画賞」募集ページby矢吹健太朗”について、あれこれ好き放題述べたんですが、まさかそれが今月分の前奏曲に過ぎないとは、夢にも思いませんでした。 矢吹さんはまだ“上手い(ように見える)絵”というセールスポイントがありましたので、それで引っ張れば良かったのです。しかし、それすら無い人が自分のセールスポイントを述べようとした場合は……。 ──誰か、誰かいませんか? このお方に「まだまだだね」と言ってくれる人は……! ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 ラスボスは、とんでもなく強くてとんでもなく悪い奴だった……というわけですね。王道パターンながら、これが案外難しいんです。しかし、根っからの悪人という奴から溢れる不快感というのは強烈ですなぁ。
……というわけで、今日のゼミはこれまで。 あ、冒頭でも言いましたが、次回のゼミは記念式典後になると思います。どうか何卒。 |
2003年第48回講義 |
先日の番外編はどうも失礼しました(笑)。未だに頭が痛むのは、多分珠美ちゃんにドツかれたせいではなくて睡眠不足と眼精疲労のせいだと思うんですが、まぁ何とか講義終了まで保たせたいと思います。 さて、今日は変則的な内容で、「サンデー」系の情報をお届けした後に、今週発売の「ジャンプ」&「サンデー」各35号のチェックポイントをお送りします。「サンデー」はレビュー対象作がありませんでしたので、今日はチェックポイントのみの扱いとなります。 それでは、まず情報系の話題ですが、今日は最終回のお知らせをしなければなりません。約4年に渡って連載されて来た『天使な小生意気』(作画:西森博之)が、次号36・37合併号をもって最終回となります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年35号☆ ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の「ジャンプ」はビッグサプライズ連発。特に初っ端の『ボーボボ』アニメ化には、驚きを通り越して絶句してしまいましたよ。あのノリをどうやってアニメで表現するのか、ちょっと心配になっちゃいますね。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 第2回人気投票結果発表となりました。本誌でのポジションや単行本部数と全くそぐわない莫大な投票総数、更には明らかに“男尊女卑”の開票結果からも、このマンガの支持層が恐ろしく偏っている事が再確認される形になりましたね(笑)。 あ、作品の中身についても語っておきましょうか。 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 いきなりの唯編突入。個人的な話で恐縮ですが、駒木にとっては「臨むところよ!」ってところであります(笑)。 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 既に『朝まで生テレビ』級の大討論になってます、ポンズは死んだか死んでないか…という話題について私見を。 この論争のポイントは、384ページ最終コマのブラックアウトを、「ポンズの意識が飛んだ表現」とするか、「場面が転換した事を示す表現」とするかで解釈が変えられる…という事ですね。前者ならポンズは死んでますし、後者なら生きているわけです。 ◎『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』(作画:加地君也)【現時点での評価:B−/連載総括】 評価はB−で据え置き。残念ながら失敗作という判断です。 ☆「週刊少年サンデー」2003年35号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「ショックだった過去の落し物」。原稿を落とした(not原稿間に合わず)人が2人もいてビックリ。そんな『まんが道』の夢シーンみたいな話が本当にあるとは。しかもマンガ家ご本人が! ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 予想通りとは言え、ついに物語は佳境へ。しっかし、8年がかりの伏線というのも凄い話ですなぁ。 ◎『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)【第1回掲載時の評価:B/前回のレビューについて】 受講生の方からご指摘があったんですが、前回(第1回)に登場した、ハユマが描いてしまった悪キャラは、D-メンの“悪属性バージョン”だったんですね。これならハユマの能力でも描けておかしくないわけで、その部分に関しては矛盾点は無くなりました。 ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 タガ外れまくりの黒賀村編、佳境というより秘境へ辿り着きつつある感がありますね。何て言うか、「見てるか弟子ども! 俺はギャグセンスにおいても、まだまだ貴様らには負けん!」……という藤田さんの叫びが聞こえてくるような、そんな感じであります。 モデム配りを2人一組でやってますと、頻繁に出ます、高みからの発言。 「いや、こんな仕事で良い成績出したって自慢できるもんじゃないし、給料も変わらんし。運だよ、運」 ……モデム配りのスタッフは、みんな「こんなクソ会社のクソ仕事、ろくなもんじゃねえ」…とか言いながら、成績が悪いと何故か凹むんですね。で、その日に調子の良かった方のスタッフから毎日のように飛び出るのがこの言葉。何て言うか、人間の心の闇を覗く思いです。 ところで、女の子が「カワイイ」と言う女はブス…という定説について。これ、以前女友達に訊いてみたんですが、彼女曰く、 なお、来週は記念式典の準備を先行させるため、通常の講義はイレギュラーになると思います。これもご容赦下さい。ではでは。 |
2003年第47回講義 |
ウィンドウズの宿痾と言うべき強制終了により、2度目の講義準備中、駒木ハヤトです(苦笑)。 ちなみに最初に準備した冒頭挨拶は、斗貴子さんの「エロスは程々に」発言についてでした。 それにしても、斗貴子さんに世界史教えてる学校の先生は大変です。多分、あのキャラなら、 …………………… ──と、妄想はこれくらいにしまして(笑)、また強制終了にならない内にゼミの本題へと話を変えていきたいと思います。 まずは今日も情報系の話題から。「ジャンプ」の読み切りに関する情報が1つ入って来ています。 来週発売の36号において、『ヒカ碁』の小畑健さんが早くも再始動。『DEATH NOTE』というホラー作品の作画を担当します。ちなみに原作者の大場つぐみさんは、Googleで検索しても情報がまるで出て来ない謎の人物。恐らくは、36号で作品と併せてプロフィールが公開されると思いますが、こちらについても注目ですね。 ……さて、次に話は変わって「赤マルジャンプ」夏号について。いよいよ今週号の「ジャンプ」35号でラインナップが発表になりましたが、やはり今回は絵が比較的達者な若手・新人さんが揃っているみたいですね。他の企画モノもヴィジュアル重視の構成になってしますし、今の時点で恐ろしいほど『ボーボボ』番外編が浮きそうなのが、駒木的には大変に気になるところです(笑)。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年35号☆ ◎読み切り『ボウボウHEAD☆カウボーイ』(作画:森田雅博) 今週の読み切り作品は競馬モノ。競馬学が専門の当社会学講座としては厳しくも暖かい目で見たいところではありますが……。 作者の森田雅博さんは、1979年6月16日生まれの24歳。00年12月期の「天下一漫画賞(現:十二傑新人漫画賞)」で審査員(尾田栄一郎)特別賞を受賞し、翌01年の「赤マルジャンプ」夏号にて『ペース・メーカー』でデビューしました。 ではまず絵からですが、前作に比べてかなりの進歩が窺えます。新人特有の無駄な線が消え、垢抜けた見栄えのする絵が描けるようになったのではないかと思います。マンガ的表現もソツなくこなせており、基本的な力そのものは即連載クラスと申し上げて良いのではないでしょうか。 …………しかし。ここに来て重大な“疑惑”が持ち上がっています。 ──これは週明けから2ch掲示板などで話題になっているのですが、この作品のいくつかのシーンが、『焼きたて!! ジャぱん』や『はじめの一歩』の中のシーンと酷似している…というのです。 ……実際に見ていただけると分かるんですが、これはどれだけ贔屓目で見たとしても、“既製の作品から非常に強い影響を受けた”ものであると思って間違いないでしょう。真偽はどうあれ、読者から「パクりじゃねぇの、これ?」…などと疑われても致し方ないのではないかと駒木は考えます。 ……さて、すっかりミソが付いてしまった感がありますが、ストーリー&設定についてもお話しておきましょう。 今回のお話、確かに勢いがあって読後感も良く、いわゆる好感度の高いストーリーであるとは思います。そのためでしょう、ネット界隈での評価も印象度の上ではそれほど悪くはないようです。 中でも最も大きなミステイクは、5億円馬・ジュテーム号が高い素質を持っているという伏線が全く無しに(それどころか「調教でも走らない」と明記されてます)、精神的な絆が生まれた“だけ”の進斬の馬を破壊する豪腕に耐えて激走してしまった…という矛盾でしょうね。 あと、競馬マンガでありながら、競馬に関するディティールの大半が間違っているというのも大きな減点材料ですね。逐一指摘する時間がありませんが、実在しないデザインの勝負服や馬運車を見ただけで脱力モノですし、何よりもストーリーの根幹である“レース飛び入り参加”が実際は問題外で不可能(出走馬がパドックに出る時点で到着していない場合、無条件で出走取消&関係者はキッツーイ処分が確定)というのが致命傷です。 まとめますと、この作品はストーリーの必然性を全く考慮する事無くシナリオを組まれているわけです。設定の後付けは、話の最初に遡った上で矛盾点の無いように行うのは最低限のルール。これが守れていないようでは、ちょっと……といったところですね。 評価ですが、絵の“パクり”疑惑を抜きにして考えた場合、絵は合格点もストーリーテリング力に大きな問題アリということで、B寄りB−という評価になるでしょう。ただし、本音を言えば、文字通りの「論外」という評価こそ正当のような気がします。 今週は久々に『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合の休載。ということで、巻末にショートギャグの代原が掲載されました。 作者の夏生尚さんは、02年度上期の赤塚賞で佳作を受賞。その受賞作が代原として本誌02年31号に掲載され、デビューとなりました。今回は、またしても代原ながら約1年ぶりの再登場になります。 しかし今回の作品、代原ゆえに執筆時期が判らないのですが、1年前のデビュー作と絵、ギャグ共に進歩が全く無く、非常に物足りない仕上がりとなってしまいました。 前回は新人賞への応募作、かつデビュー作でしたから大目に見なくてはならない要素もあったでしょうが、今回は新人とは言え、プロ作家として描いた作品なわけですから、擁護出来る材料は全くありません。残念ですが、駄作と言わざるを得ないでしょう。 評価は前作と同じくC寄りB−。近頃は実力派の若手ギャグ作家さんの頭数が揃って来ていますから、このままでは夏生さんの前途は非常に厳しいものになってしまうでしょうね。
では、後半のゼミもどうぞよろしく。 |
2003年第46回講義 |
今年の夏のトレンドは、カメラ目線でお茶の間の皆さんに向かって「グルービー!」(挨拶) しかし、少年マンガ史上初めてじゃないでしょうか、闘ってる当の本人をバックに押しやっておいて、しっかりカメラ目線で決めゼリフ叫んでる人ってのは。何て言うか、究極の美味しいトコ取りテクニック。 「グルービー!!」 ……これです、これ。今年の夏はこれですよ皆さん。
今日は情報系の話題も特に有りませんので、いきなりレビューから。新連載1本と、新連載第3回後追いレビュー1本の、計2本となります。続いてチェックポイントも宜しく。 ☆「週刊少年サンデー」2003年34号☆ ◎新連載『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦) 今年3作目の本格新連載が開始されました。この後、後追いレビューでお送りする『ロボットボーイズ』の上川敦志さんと同様、これが初連載となる若手作家さんの登場です。 その作者の中井邦彦さんは今年なんと35歳。随分と遅い連載デビューですが、どうやら中井さんは一昨年まで長年江川達也さんのアシスタントを務めていたらしく、そのために本格的なマンガ家としての活動開始が遅れていたようです。 では、内容をチェックしてゆきましょう。 まず絵ですが、いかにも今の「サンデー」っぽい、好感度の高い明るいタッチの絵で良いんじゃないでしょうか。(もっとも、「またこの絵柄かよ」という声も聞こえて来そうですが……) 次にストーリー&設定について。 今回の第1回は60ページ以上の長丁場になったわけですが、ややプロットがオーソドックス過ぎる嫌いはあるものの、ダレ場を作る事も無く手堅くまとめられているとは思います。が、そのストーリーの見せ方にかなり大きな矛盾点があり、これは大きな減点材料です。 他にも設定面で矛盾点──ハユマはデビPとD−メンしか描けないはずなのに、やけにスンナリと化物のラクガキを描いている──が見られるなど、どうも全般的にツメの甘さが目立ちます。クライマックスの見せ方が非常に上手くキマっているので、読後感は良い仕上がりになっているのですが、この調子で粗の多い話作りをされてしまうと、破綻したストーリーが半年以上続く惨事になってしまいそうで怖いです。 それにしても、マンガに出て来る小動物は、どうして口が悪くて関西弁なのが多いんでしょうか(苦笑)。たまには博多弁をガナりたてる、新日本プロレスのマスクマン・魔界2号みたいな小動物がいても面白いと思うんですが。 当講座BBSでは、このところ連日この作品に関しての書き込みがあり、もはやここがネット界隈で一番『ロボットボーイズ』に注目しているウェブサイトになりつつあるわけですが(笑)、謹んで第3回の後追いレビューをお届けしましょう。 第1回では、孤独な主人公に1人“仲間候補”が出来て…というところで「続く」になったわけですが、第2回、第3回もそのエピソードの延長上でストーリーが展開されてゆきました。 「ロボットを作るのは楽しい」 ……というものであるように思われます。 あと、第1回で見られたような大きな矛盾点などは、第2回以降では見受けられませんでした。ただ駒木は、第1話の前半であれほどロボット作りが下手だった主人公が、第2話以降では立て板に水の如く、ロボットに関する知識とノウハウをベラベラと語っている事に未だにシックリ来ないんですれどもね(苦笑)。 評価はまだ未知数の要素が多いながらも、今後において失敗する可能性が高い…ということでB−という事にしておきましょう。 巻末コメントのテーマは、「重要視しているイベント」。誰一人として、「嫁さん(彼氏・彼女)の誕生日」という言葉が出て来ないあたり、皆さん不器用な人生を過ごされているようで(苦笑)。 ◎『うえきの法則』(作画:福地翼)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 運試しで2次予選って、ウルトラクイズかい(笑)。 ………………………… ……ひょっとしたら!?(ねぇよ) ◎『俺様は?』(作画:杉本ペロ)【現時点での評価:B−】 うはは、最高だ阪神君。 とりあえず、阪神の選手の皆さんは、誰かお調子者が日本シリーズで三連勝しても「○○(パ・リーグ優勝チーム)はオリックスより弱い」とか言い出さないように気をつけて頑張って下さい(笑)。 ◎『ふぁいとの暁』(作画:あおやぎ孝夫)【現時点での評価:B/雑感】 駒木の母校は中・高ともにブレザーだったので、第二ボタン系の話には縁遠かったんですよね。だから、こういう話を見るとちょっと羨ましかったり。 ところで、ここ数週間「すわ、次号で最終回?」と言いたくなるような“引き”のこの作品ですが、果たしてどうなりますか……。既に“定員オーバー”の状態だけに、そろそろ危ういと思ってるんですけどね。
|
2003年第45回講義 |
||
もう至る所でお礼を言ってますが、こういうものは言っても言い足りない事は無いので、ここでも言っておきましょう。延べ受講者数100万人突破となりました。これまでのご愛顧に感謝いたします。今後ともどうか何卒。 ……さて、今週末も公私共にハードスケジュールのため、講義もスピード進行で参りましょう。「その割には講義が1日遅れてるじゃないかよ」ってのは、三瓶とかダンディ坂野とかに「あなたの将来の展望は?」という質問をするくらい禁句です。 まずは「週刊少年ジャンプ」の情報系の話題から。読み切りについては既に前回の講義で述べていますので、今日は34号で発表になった「ジャンプ漫画アイディア杯」の審査結果を紹介します。
……というわけで、今回は膨大な応募数に恵まれながらも、佳作以上の入賞作ゼロという非常に厳しい結果になりました。 これは恐らく、応募者の大半が「絵が描けなくても気軽に応募できるマンガ賞」と考えていたのに対し、編集部側は「プロのマンガ家を凌ぐ知識・ストーリーテリング力を持つ即戦力を発掘するための賞」と考えていた…という認識のミスマッチのために起こった現象でしょうね。その結果、プロ意識に欠ける応募者の群れが死屍累々の山を築いたと。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年34号☆ ◎読み切り『Continue』(作画:星野桂) 延々と続きます、「ジャンプ」の若手・新人育成シリーズ。今週は新人・星野桂さんの登場です。 ……というわけで、内容の方へ。 まず、ついさっきにも言及した絵についてですが、これはデビュー2作目の新人さん…というのを抜きにしても立派なものです。前作に比べれば絵柄も少年マンガ対応に変わりつつありますし、これでもう少し線にメリハリがつけばもっと良くなるでしょう。 一方、ストーリー&設定の方は、まだまだ発展途上という感じだと思います。 この作品は「空想(ゲーム)上の死と現実の死は違うんだよ」…という、シビアかつデリケートなテーマの上に乗っかっていますが、そのテーマそのものが上手く描き切れていないために、ストーリー全体の説得力が無くなってしまいました。 あと、ストーリーの展開の仕方で言えば、次から次へと後出しジャンケンのように新しい設定が出て来て勝手に話が進んでいくパターンも頂けません。特に主人公のピンチの際に設定の後出しをして、「実はこうだったので大丈夫なんです!」…とやってしまうと、話のヤマ場がヤマ場にならないんですよね。そのため、読者が一番興奮すべきところで白けてしまう。これは非常に残念な事です。 まとめると、星野さんは、まだ自分の作品が不特定多数の人に読まれているという事実に対しての自覚が足りない。もっと端的に言えば、独り善がりで、客観的な視点で物を考える訓練が不足している…ということになるんでしょうね。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 今回で連載1周年。そういや、昨年連載開始の作品は、既に『いちご100%』とこの作品しか残っていないんですよねぇ。 さて、今週で太陽スフィンクス戦が終了。ちなみに、正式なアメフトルールでは、最終クォーター終了時に同点の場合は、「オーバータイム」と呼ばれる15分の延長戦に入ります。 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 受講生の方から矢のようなツッコミが入りましたね、キャプテン牛尾の「これが僕たちも初の公式戦」発言。本当なら、前年の秋季県大会から新チームになっているはずですし、春休みにも春季大会がありますので、本来ならばこれが3回目の公式戦になるわけです。 |
2003年第44回講義 |
||||
受講生の皆さん、ご無沙汰&ご迷惑をおかけしました。本日から講義に関する業務を再開致します。
今回、各賞で最終候補以上に残った皆さんの過去のキャリアについては以下の通りです。 ◎十二傑賞受賞の相模恒大さん…02年6月期&03年1月期「天下一漫画賞」で最終候補。 ところで、今回の「十二傑」は3度目の最終候補入りとなる相模恒大さんがデビュー権を獲得しました。「天下一」時代の基準なら特別賞止まりでデビューを果たせなかったでしょうから、まさに「十二傑」の狙いが形となりましたね。 まずは「ジャンプ」から。新連載シリーズが一段落ついた後も、読み切りシリーズは引き続き継続中です。既に発売になった34号の『Continue』(作画:星野桂)に続いて、35号でも競馬マンガ・『ボウボウHEAD☆カウボーイ』(作画:森田雅博)が掲載されます。 そして「サンデー」では新連載の話題を。日付から言えば明日発売の34号から『楽ガキFighter
〜HERO OF SAINT PAINT〜』(作画:中井邦彦)が始まります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年33号☆ ◎新連載第3回『神奈川磯南風天組』(作画:かずはじめ)【第1回時点での評価:B+】 「ジャンプ」の大規模新連載シリーズのレビューも、今回でいよいよ最後となりました。『神奈川磯南風天組』の第3回後追いレビューです。 さてこの作品、第1回の時点では「問題点は残されているものの、絵柄やネーム、作品を描くにあたっての姿勢などに評価できる点が多い」…として暫定評価B+としました。が、そこから2回分の展開を見る限りでは、ネガティブな要素ばかりが膨らんでいっている感が否めません。 まず、主役格のワル2人(天堂寺&風間)のキャラ作りに成功していないところが気になります。前回のレビューでも述べた通り、“悪属性”のキャラクターを読者に受け入れられるようにするためには、“ただの悪人ではない魅力的な何か”を提示する必要があります。(最近の「ジャンプ」作品の中でそれを最も成功させている)『アイシールド21』のヒル魔で言えば、不言実行型の努力家である所や、心の深い部分では意外と情が深い所がそれにあたりますね。 そのストーリーも、現在のところは一話完結型で進行中ですが、早くもワンパターン・マンネリの兆しが窺え、状況はあまり良いとは言えません。せめて1つ、漠然としたものでも良いですから、何か作品全体のテーマ的なモノを呈示できれば流れも変わって来ると思うのですが……。 評価の方は下方修正してBということにしましょう。ハッキリ言って現時点では失敗作の範疇に入る作品ではありますが、マンガ作りの技術はしっかりしていますので、これ以上評価を落とすわけにはいかないところです。 それでは続いて、いつの間にか当ゼミと随分関わりが深くなってしまいました(苦笑)、『ヒカルの碁』のレビューです。 今回は番外編2本立てということで、1本目には本編の序盤に登場した、佐為(ヒカル)VSアキラの非公式対局第2戦を佐為からの視点で描いたもの、2本目にはヒカルの後輩にあたる小学生院生2人を主人公にした短編と、共にサイドストーリー的な作品となりました。 ただしそうは言っても、様々なシーンで施されたほったさんのストーリーテリングの技術には、やはり見逃せないものがあります。省略すべきシーンの略し方や、場面設定についても説明じゃなくてちゃんと描写になっている点など、まさにお手本。マンガ家やマンガ原作者を目指している人なら、それこそ穴が開くほど読み込むべき作品でしょう。 そういうわけで、余り語るべき所もありませんので、もう評価に行きましょう。先に述べた通り、シナリオ自体はごくありふれた“後日談対応”のモノですが、そこに施されたほったゆみさんの技術や小畑健さんの卓越した画力の分だけ加点して、A−ということにしておきます。
今日のレビュー3本目は若手作家さんのギャグ読み切りです。正直、休み明けでここまでジャンルの違う作品を3つレビューするのは疲れますね(苦笑)。 この『──マダムーン』の作者・藤田健司さんは、00年25号に『ハンター×ハンター』の代原として発表した『エゴの代償』でデビュー。その後、第54回(01年上期)赤塚賞で佳作を受賞し、その受賞作『チャタニイズム』で01年33号に“正式デビュー”を果たし、3週後の36・37合併号でも代原としてですが4コマの習作・『分割笑い』を発表しています。 ──それでは、レビュー本題へ。 まず絵ですが、パッと見では汚く感じるかも知れませんが、ギャグ作家さん、それも若手としては相当高い技術水準にあるのではないでしょうか。老若男女&人間以外の描き分けもキチンと出来ていますし、細かい部分の演出なども良いです。即連載レヴェルと申し上げてよいでしょう。 ギャグのデキ具合もかなり良いですね。一発ギャグがあったと思えば次は1〜2ページ引っ張ってオチに持っていくパターン…のように上手く緩急がついていますし、何よりも間の取り方が秀逸です。また、動的表現をフルに活かしたコマと止め絵のコマの使い分けも抜群に上手く、効果をあげています。 あと、ネット界隈では他の作家さんの影響が濃いとする声も若干ありましたが(駒木も『高校アフロ田中』に雰囲気が似ていると思いました)、少なくともこの作品においては、他の作家さんの影響を受けつつも、そこから一皮剥けたオリジナルの作風になっていると思いますので、この件に関しては不問とします。 評価はA寄りA−としておきましょう。今後の活躍に期待したい、実力派「ジャンプ」系若手ギャグ作家さんの1人だと思います。 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週は『ヒカ碁』番外編が掲載ということで、「ストーリーキング」の募集ページに、ほったゆみさんの『ネームの日々』が出張して来ました。その内容を要約すると、 「絵はグダグダでいいから、ネーム力が判るように描きましょう。字はなるべく丁寧にすれば好感度大。某少年誌(駒木注:どう考えても某サンデーです^^;;)と違って年齢制限無いので、年イってる人も頑張って下さい」 ……というもの。でもほったさんは応募時点でマイナーとは言えキャリア10年クラスの現役作家さんだった上に、しかも同じく現役マンガ家のダンナさんが影のスーパーバイザー役に就いていたので、普通の人とは相当事情が違うと思うんですが(笑)。
◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A−】 さて、この作品も今週からはチェックポイント枠での取り扱いという事になります。 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 いわゆる「アイシル信者」みたいに思われるのが嫌で、結構意識的にチェックポイントで扱う間隔を開けていたんですが、2ヶ月も開いてたとは気付きませんでした(苦笑)。 で、いつの間にか太陽スフィンクス戦が大詰めになってるわけですが(笑)、今回出て来た“デビルバッツダイブ”、あれはセンターからボールを受け取ったクォーターバックが直接ダイビングするケースも多いんですよね。 ◎『BLEACH』(作画:久保帯人)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 前にも言ったかも知れませんが、久保さんはやっぱりネームの力がありますよね。脚本を書く力があると言いいますか。 ☆「週刊少年サンデー」2003年33号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「本気でやるほどでもないが、プチチャレンジしたいこと」。微妙な質問ですなー。真面目に答えたら、モリタイシさんのように「何事も本気でしたいので、そのような事はありません」になっちゃうんですが。 ◎『金色のガッシュ!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 う〜む、師匠譲りの見事な後付け炸裂ですね!(決め打ち) ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 今回のテーマ、物凄く心に突き刺さったんですが(苦笑)。だってホラ、心にウソ設定でも作らなきゃ、1年以上も他の全てをそっちのけで、しかも給料無しで毎日講義実施なんてやってられませんよ、ぶっちゃけた話(笑)。 しかし、ダメなマンガ家とダメな編集者の打ち合わせは笑いました。『エンカウンター』とか『サイレントナイト翔』とかの打ち合わせシーンもこんな感じだったんでしょうか。車田正美氏が編集者と使い途の無いダメ設定をファミレスで打ち合わせているシーンなんか、想像するだけで笑い泣きできそうです。
次回講義は明日か明後日の予定です。では。 |
2003年第43回講義 |
この中で、「林田桃里」みたいな事をした経験のある人、手を挙げて!(挨拶) ……どうも。その上、その語呂が悪い事に随分とヘコんだ経験がある駒木ハヤトです(笑)。まぁ、若さゆえの過ちは認めたくないものですよね。 ──さて、今日は情報系の話題もありませんので、挨拶もそこそこに早速レビューとチェックポイントをお送りしたいと思います。 ◎新連載『ロボットボーイズ』(作:七月鏡一/画:上川敦志) 今年の「サンデー」は新連載が少ないと思っていましたが、調べてみたところこれが今年3作目の新連載ということに。しかもその内1本は、同一作者の作品入れ替え(『俺様は?』)ですので、実質的には『売ったれ ダイキチ!』とこの作品の2つだけになっちゃうんですね。 ところで、先週の情報コーナーで「作画担当の上川敦志さんは、新人女流作家の上川敦子さんと同一人物ではないか?」…などと言ったのですが、調査の結果、やはり同一人物だということが判りました。「女の人にロボット物が描けるの?」という先入観を持たれる事を予防するためらしいです。 作者のお2人のプロフィールについては、時間の関係上、ここでは割愛させて頂きます。「サンデーまんが家BACKSTAGE」のそれぞれのコンテンツ(七月鏡一さん/上川敦志さん)に詳しく載ってますので、そちらを参照して下さい。 まず絵から。基本的には不快感の少ない絵柄で良いんじゃないかと思います。ただ、いかにも「サンデー」にありがちな絵柄な上に、メインキャラクター3人の顔がほとんど同じ輪郭をしているため、どうしても没個性な印象を抱いてしまいましたね。あと、カラーの色塗りやロボットのデザインなどにも若干の課題が残っていそうです。この辺りはキャリアの浅さでしょうね。 次にストーリー&設定に関してですが、これはちょっと“スタートライン”を後ろに置きすぎて失敗したような感が否めません。 例えば主人公の置かれている環境でお話をしましょうか。この主人公が通う学校は、奇しくも『MAJOR』の聖秀学園とよく似ています。女子高から共学に変わった直後で男子生徒は望み薄な連中ばかり……。それでも『MAJOR』では、主人公が天才プレイヤーで、他の野球部員にも野球経験者や運動センスのある人間が何人もいたので何とかストーリーが成立する所まで頑張れたわけです。(それでも県大会ベスト8が限界でした) あ、強引な展開と言えば、この第1話でも早速出てきちゃってますね。自分が作った二足歩行ロボットがマトモに進めないのを知ってるはずなのに、「これならどんな相手も目じゃねぇぜ!」と、何故か自信満々でロボット競技大会に出して当然のように敗北、しかもその後にたった3歩歩いただけで大喜び──というクダリ。熱血のように見えて、実はただのアホ丸出しな主人公が誕生しちゃってます(笑)。しかも脇役が、そこでそんなアホに「カッコいい」と(苦笑)。このツッコミ不在の様相はちょっと酷いですよ。 というわけで、暫定評価はC寄りB−と辛めの採点をしておきます。題材そのものは斬新なだけに、勿体無いと思うんですが、このままいくと間違いなく失敗作になってしまうでしょうね。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「どんな動物をペットに飼ってみたいですか?」。犬・猫派と、固有名詞派と、キワモノ派に分かれてしまった感がありますね。しかし毛ガニって、それは養殖と言いませんか?(笑)。 ◎『MAJOR』(作画:満田拓也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ……というわけで、“勝負に勝って試合に負けた”的なサヨナラボーク決着となりました。まぁ一応は納まるところに納まったって感じでしょうか。 ◎『KATSU!』(作画:あだち充)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 ……な、何をいきなりセブンセンシズに目覚めちゃってるんだ、この妹は!(笑) プロフィールには「オッチョコチョイな小学生」とありますが、全く別人ですがな。レビュー対象作だったら酷評する所なんですが……。
◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】
あ、来週のゼミは週の後半に合同版をお送りする予定です。採用試験直前ですので、どうかご了承を。ではでは。 |
2003年第42回講義 |
「矢吹先生取材のため休載」の「取材」とは、やっぱり『マトリックス・リローテッド』を観に行くことなんでしょうか?(挨拶) ──しかし、「いくら自分が嫌いな作品でも、たびたび批判めいた事を言うのは控える」というのが当ゼミの方針とは言え、この度の「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の告知ページは色々な意味でガマンの限界を越えています(失笑)。特に「教えて! 矢吹先生!」のコーナーなんて、編集者が悪意を持って矢吹氏の能力の底の浅さを暴露するように誘導しているとしか思えないですからねぇ……。 それにしても、ここまでの3回は実力派の作家さんを審査員に選んでいたのにどうしてここに来て……いや、別にこの人じゃダメだとイッテルンジャアリマセンヨ(後半棒読み)。 ……というわけで、いつになく毒舌モードで始まった今週のゼミですが(笑)、早速情報系の話題に参りましょう。 創刊35周年企画で攻めまくる「週刊少年ジャンプ」、来週はファン待望の『ヒカルの碁・番外編』(作:ほったゆみ/画:小畑健)が登場します。しかも2本立て・計53ページという豪華版です。 来週号では読み切りが更にもう1本。若手ギャグ作家・藤田健司さんの『テラピー戦士マダムーン』が登場します。藤田さんは3年前の赤塚賞佳作受賞者で、既に本誌デビューも果たしていましたが、今回は久々の登場となります。
☆「週刊少年ジャンプ」2003年32号☆ ◎新連載第3回『武装錬金』(作画:和月伸宏)【第1回時点での評価:A−】 それではまずは、気分良くレビュー出来る方からやりましょう(笑)。いつの間にかネット界隈では「今回の新連載4本の中では一番の有望株」という声が多数意見になりつつある、『武装錬金』の後追いレビューです。 ……さて、第1回掲載時のレビューで駒木は、「この作品はマズマズの好スタートを切った」…という論調で締め括りました。キャラクターなどの設定面は非常に優れているものの、シナリオの細かい部分や演出面に若干の不安を感じたために、そうしたわけです。 確かに、第1回のレビュー時に指摘した幾つかの不安は未だに解消されていません。シナリオの進行も、プロローグを終え、序章が始まったばかりという段階では未知数の要素が多いでしょう。 ──と、ここまでベタ誉めして来ましたが、それでもまだ、この作品が名作となるために越えなければならない大きなハードルがあると思っています。先に「このままキャラクターを自然に、正確に動かしてゆけば、ほぼ自動的に傑作が出来上がっていく状態にある」と言いましたが、その「自然に、正確に動かしてゆけば」という条件を満たすために色々な問題点が残っているというわけです。 ──そのハードルのまず1つ目は、「週刊少年マンガ誌の限界」です。 そして2つ目のハードルが「ジャンプシステムによる弊害」です。 ……以上のようにこの『武装錬金』は、非常に大きな可能性を秘めていながらも、最終的には可能性だけで終わらせてしまいそうなネガティブな外的要因を多く抱えた、大変に扱いの難しい作品であると言えます。 まぁとりあえずは“ストーリーテラー”和月さんのお手並み拝見といったところでしょうか。少なくとも、短期の打ち切りは無さそうな情勢ですので、ここは自信を持って頑張ってもらいたいと思います。 ◎読み切り『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』(作画:許斐剛) 今週の巻頭カラーになったのがこれです。「第0話」ということで、リョーマの父親・南次郎の青春時代を描いた、まさに特別編というような作品でした。 で、その内容ですが、ファンの皆さんには申し訳ないんですが、端的に申し上げて「許斐剛という作家のポテンシャルを遺憾なく発揮した駄作」と言うべき、ハッタリだけで後は何にも無い、文字通り“お話にならないお話”でした。 シナリオの大筋自体は「ジャンプ」によくある、主人公が悪役らしい悪役を倒す“勧善懲悪シナリオ”で、まぁ一応は起承転結が成立してはいます。ただし、そのシナリオを成立させるために、全編に渡って非現実的な設定や無理のあるストーリー展開をやっているがために、最終的には極めて陳腐なB級・C級ドラマになってしまった感が有ります。 何しろ、書類登録だけでプロになれるテニスの世界なのに、「プロになるためにアメリカに来る」とか、練習もしないのにテニスクラブに所属して揉め事起こすとか、まずその時点で有り得ません。(「そこをネタとして読む」というスタイルもありますが、当ゼミではNGです) 巻末コメントでは、鈴木信也さんが2度目の病気休載のお詫びと「プロ野球&高校野球取材するぞ」宣言。しかし、『ミスフル』って、現実の野球を取材しても何ら参考にならない気がするんですが。 ◎『シャーマンキング』(作画:武井宏之)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 主要キャラ全員死亡で逆に緊迫感が無くなると言う、「ジャンプ」ならではの展開ですね(苦笑)。しかも新展開で直近の打ち切りが無くなったと読めるので余計に安心感が増してしまうと言うこの矛盾(笑)。 ◎『ごっちゃんです!!』(作画:つの丸)【現時点での評価:保留】 怖い先輩というのはこういうオチでしたか。でも、それだと細かい矛盾点がいくつか出るような……?
|
2003年第40回講義 |
今月は採用試験の勉強と社会学講座の両立を目指してたんですが、早くも共倒れの様相(^^;;)。申し訳ないんですが、採用試験の方をコケさすわけにいきませんので、まだしばらくはマンガ時評オンリーのカリキュラムになります。どうかご容赦を。 ──さて、それでは取り急ぎ今日も情報系の話題から。まずは来週から始まる「サンデー」の新連載についてのお知らせです。 次号32号から、『ロボットボーイズ』(作:七月鏡一/画:上川敦志)が始まります。まだ次週予告の紹介記事しか判断材料が無いのですが、何だかNHKのロボットコンテスト・高専大会を少年マンガにアレンジしたような作品という感じがします。
☆「週刊少年サンデー」2003年31号☆ ◎読み切り『ゴッドルーキー』(作画:宇佐美道子) 「サンデー」2週連続の読み切りは、先日発表になった第52回(03年上期)「小学館コミック大賞・少年部門」の大賞受賞作・『ゴッドルーキー』です。作者の宇佐美道子さんは、現在武村勇治さんの下でアシスタント修行中の新人さんとの事。どうやらこれがデビュー作となるようです。 では、本題へ。まず絵ですが、色々なタイプのキャラクターを描き分け、背景処理も手馴れているなど、基礎的能力と意欲は十分に窺える出来になっています。細部の描写などに若干改善するべき余地はありますが、この作品が新人賞への応募原稿である事を考えると、逆にこれくらいの方が「まだ上達の余地が有り、近い将来が楽しみ」…などと高い評価を受けたりするのかも知れませんね。 次にストーリー&設定。まず一通り読んでみて感じた第一印象は、「読後感の良さだけは損ねないようにして、あとの削れる所は全部削ったな」……というものでした。 この作品、確かにエピソード全体のまとまりは良く、雑誌に載っている10数作品の中のワンオブゼムとして読んだとすれば、極めて好感度の高い作品ではあると思います。そして、そういうマネが出来るという事は、宇佐美さんは“読者の求めているものを描く”という、商業作家にとってかけがえの無いセンスを備えていると言えるでしょう。 ……と、長所・短所が出揃ったところで最終評価ですが、まだ未熟な面は残っているものの、確かなセンスも感じられるという事で、B+としたいと思います。 ところで、この「コミック大賞」では、一昨年まで“大賞”以上の受賞作は皆無に等しかったのですが、どうも昨年の上期から風向きが変わって、今回で2年連続“大賞”という大盤振る舞いに。さぞかし「サンデー」系新人のレヴェルが上がったのか……と思いきや、実はちょっとゴニョゴニョした話が有るとか無いとか。 ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 巻末コメントのテーマは、「最近大爆笑した事は?」。うーん、なんか皆さん余裕ありませんなぁ(苦笑)。特に打ち切り間際(?)のあおやぎ孝夫さんに「……ないですね」とか言われると、笑うに笑えないんですが(苦笑)。 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A−/雑感】 ……どんな歌なんだよ!(笑) ていうか、この歌詞で即眠りに落ちるような楽曲ってどんな楽曲なんだろう。 ◎『売ったれダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:A−/雑感など】
なお、明日は臨時講義という形で、小林尊選手の3連覇がかかっている、ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の速報をお届けする予定です。ではでは。 |
2003年第39回講義 |
|
今週は『ミスフル』が急病休載のため代原1本。以前から恐れていた、突発的なレビュー作品急増が現実のものになってしまいました。しかも『HUNTER×HUNTER』の落っこち寸前の原稿を見ると、下手すりゃ代原2本になるところだったはず。うー、くわばらくわばら。 ……というわけで、今日はレビューが3本もあります。急いで講義に移りましょう。 まずは情報系の話題。来週発売の「ジャンプ」32号は、創刊35周年記念特別号として、「ジャンプ創刊号大解剖」などの様々な企画モノが掲載されるようです。 また、巻頭カラーは『テニスの王子様』の特別編・『サムライの詩』。巻末の次号予告によると、アメリカを舞台にした話のようですが、どんなストーリーなんでしょうか。 ……それでは、レビューとチェックポイントへ。今週のレビュー対象作は、新連載1本、新連載第3回の後追いレビュー1本、そして代原読み切りが1本の計3本となります。 ☆「週刊少年ジャンプ」2003年31号☆ ◎新連載『神奈川磯南風天組』(作画:かずはじめ) 4週連続新連載もいよいよラストの第4弾。今週から登場したのは、かずはじめさんの『神奈川磯南風天組』です。 かずはじめさんは、1971年9月生まれの当年とって32歳になる女流作家さんです。神奈川県出身とのことですから、今回の連載は地元を意識した作品ということになるんでしょうか。 そして同年開催された、かの悪名高き「世界漫画愛読者大賞」の前身・第1回「ジャンプ新人海賊杯」に、かずさんも『MIND
ASSASSIN』でエントリーし、見事優勝。読者投票と作品のクオリティが噛み合わないのがこの手の賞ですが、少なくとも個人的には、この作品が優勝した事だけは極めて順当な結果だったと思っています。 その後は「赤マル」や本誌に読み切りを発表しながら、思い出したように週刊連載を始める…というパターンが続きます。連載作品の『明陵帝 梧桐勢十郎』(97年52号〜99年52・53合併号/全96回)や『鴉MAN』(01年24号〜40号/全16回)はヒットにこそ至りませんでしたが、短編作品を含めた“かず作品”にはデビュー時から現在に至るまで根強いファンも多く、それが今回の連載復帰に繋がったとみて良いと思います。 ……というわけで、今回の新連載・『神奈川磯南風天組』のレビューへ移りたいと思います。 まず絵からですが、独特ながら好感度の悪くないその画風は、以前に『司鬼道士 仙堂寺八紘』をレビューした時と全く変わっていませんので、絵柄そのものについて特筆すべき事は無いと思います。 そして、ストーリー&設定について。 今回の作品は、やや変則的ではありますが、現在「ジャンプ」で“空白地”となっていた学園不良モノですね。今や「マガジン」ですらオタク路線に転じつつある現在では、少年マンガの主流からかなり外れたジャンルになりますが、逆に“空白地”の利を生かせるかも知れません。 で、この作品の場合ではどうでしょう。まだストーリーに関してはプロローグの段階なので何も言えませんが、設定に関しては、少なくとも“その理想へ向けて努力しようとする姿勢”らしきモノは窺えます。 ……さて、暫定評価ですが、現時点ではB+あたりが妥当なところではないでしょうか。ただ、流動的な要素も多いので、第3話時点で大きく評価が上下する可能性もあります。 さて、第3回の後追いレビューですが、週を追うごとに「本当につの丸さんの作品はスロースタートなんだなぁ」…という思いが募っていきますね(苦笑)。 まぁ、このレビューはそういったポイントを抜きにするのが原則ですから、話の中身に論点を持っていくわけですが、それにしてもストーリーの進行が遅すぎるというのが実感です(苦笑)。単調ですぐに結果に繋がらない特訓シーンでも、高い技術に支えられたギャグを挟んでメリハリをつけてしまうあたりには、確かなつの丸さんの実力を感じるのですが、さすがにもう少し「あぁ、話が進んでいってるなぁ」という実感を持たせて欲しいところではあります。まぁ、『みどりのマキバオー』でも本格化まで随分と時間がかかりましたし、現時点ではとりあえず“待ち”の姿勢が一番なのかも分かりませんね。 ……というわけで、申し訳ないんですが今回の評価も保留に。評価確定の際には「チェックポイント」でお伝えする事にします。 冒頭でお伝えした通り、今週は『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)が休載のため、代原が掲載されました。鈴木信也さんは、以前にも持病の喘息が悪化して休載した事がありますが、やはり今回も同様のケースなんでしょうか。 それでは作品の評価に移りますが、やはり気になってしまうのが絵の拙さです。デビュー当時よりは若干良くなったとは思いますが、まだまだ技術不足は否めないところです。最低限レヴェルの“作者が伝えたい事を正確に読者ヘ伝える”事は出来ていますが、内容の幅を広げるためにも、もう少し画力を身につけてもらいたいですね。 そしてギャグの方ですが、ネタの発想そのものは、デビュー作・『あつがり』と同様、“1つの物事を極端にエスカレートさせたヤツが、当たり前のように日常生活を満喫しようとしたらどうなるか”…という所にあります。前作は暑がり過ぎで人体が自然発火、そして今回はダイエットし過ぎて骸骨だけに…といった具合。ただ、前作はその発想をした時点で思考がストップしてしまい、ギャグというより中途半端なホラーのようなマンガになってしまったのは記憶に新しい(?)ところです。 評価は、画力の分を少しだけ減点してB+寄りBに。とりあえず、菅家さんの作品をもう1つ2つ読んでみたいところですね。
◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の「ジャンプ」で一番笑った(しかも失笑した)のは、今週から始まった7月期「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の告知。今月の審査員はあの しかし、そこまで開き直るんだったら、
……くらいまで開き直って欲しいものですが(無理)。 ◎『こちら亀有区葛飾公園前派出所』(作画:秋元治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 最近、かつてのような“男キャラ中心・硬派路線”へと回帰しつつあるこの作品ですが、そうなってみると改めて“老衰”ぶりが判ってしまうと言うか……。 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 ◎『★SANTA!★』(作画:蔵人健吾)【現時点での評価:B−/連載総括】 『闇神コウ』との“打ち切りチキンレース”は、(恐らく)僅差でこちらが嬉しくない軍配を上げられる羽目に。 ここからもう一度出直すのは並大抵の事ではありませんが、ここまで長年頑張って来た人なのですから、いつの日かリベンジしてもらいたいものです。 ◎『ピューと吹く! ジャガー』(作画:うすた京介)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 いやー、やっぱりハマーは偉大ですなぁ(笑)。この人を勝手に動かしているだけでネタが出来上がっちゃうんですから……。
|