「社会学講座」アーカイブ(大食い特集・1)

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講義一覧

2/21 文化人類学「2001年度・フードファイターフリーハンデ(4)〜総括」
2/18
 文化人類学「2001年度・フードファイターフリーハンデ(3)〜早大食い・大食いの部」
2/17 文化人類学「2001年度・フードファイターフリーハンデ(2)〜スプリント・早食いの部」
2/15 
文化人類学「2001年度・フードファイターフリーハンデ(1)〜早飲みの部」
2/14 文化人類学「『TVチャンピオン大食い選手権・春の新人戦近畿予選TV観戦レポート」
1/10 
文化人類学「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』TV観戦詳細レポート(4)
1/8  
文化人類学「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』TV観戦詳細レポート(3)
1/7  
文化人類学「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』TV観戦詳細レポート(2)
1/4  
文化人類学「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』TV観戦詳細レポート(1)
1/2  文化人類学「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』決勝放送直前レビュー」

※「今日の特集」より
9/27 日本大食い界、世代交代へ(3)
9/21 日本大食い界、世代交代へ(2)
9/20 日本大食い界、世代交代へ(1)

 

2月21日(木) 文化人類学
「2001年フードファイターフリーハンデ(4)
〜総括〜

 まず初めに、今回も訂正から。
 早大食いカテゴリに、「大食い選手権九州縦断ニューフェイス決戦」の予選(寿司30分)が反映されていませんでした。
 この競技を反映させる事により、新たに立石将弘選手のハンデとして、早大食いカテゴリ56ポイントが与えられました。
 関係者各位に御迷惑をおかけしました。お詫びします。

 では、本題へ。今日は3回にわたってお送りして来た「フードファイターフリーハンデ(以下:FFFハンデ)」の総括を行います。
 全カテゴリのハンデを収録した一覧表の公開と、フードファイト界全体に対する解説をお送りします。

 まず、全カテゴリ・ハンデ一覧表ですね。
 スペース等の事情により、別ページに掲載しました。

こちらをクリックして下さい
(新しいウィンドゥが開きます)

 一覧表の最下部には、これまで3回分の講義のリンクも付けましたので、各カテゴリごとの解説がご覧になりたい方は、そちらからでも閲覧できます。どうぞ、ご利用ください。

 それでは、総括に移ります。といっても、一覧表載せるだけじゃ能がないので、「フードファイトについて、何か書いてみようか」と思っただけですので、全然総括になってないかも分かりませんが……
 例によって、本文中は文体を変えます。


 激動の2001年を経て、フードファイト界はかつてない転換期に入ったと言えよう。

 まず、長時間競技を繰り返し、“大食い”系の最高実力者を選ぶ「大食い選手権」の独占状態が終焉を迎えた。
 そして、「大食い──」の対抗馬として、短時間競技中心で、実力だけでなく運も勝負のファクターに加えた競技会・「フードバトルクラブ」が登場、あっという間にフードファイト界のメジャー大会に成長した。

 この事実は、これまで我々ウオッチャーが抱いて来た、「60分以上の長時間で最も多くの食材を食べられる選手こそが、最強のフードファイターである」という、「大食い選手権」が我々に植付けて来た固定観念の崩壊に直結してゆく。何故なら、「フードバトルクラブ」の誕生により、「超短時間で一定量の食材を食べる事の出来るフードファイターもまた、最強のフードファイターに相応しい」という新しい概念が生まれたからである。
 「フードバトルクラブ」の開始以来続く、昔からのウオッチャーを中心にした「フードバトルクラブ」バッシングは、“「大食い選手権」製固定観念”の崩壊を阻止したい気持ちの表れなのであろう。

 そもそも、
「フードファイトにおいて、長時間の大食いに長けた選手と短時間早食いに長けた選手、どちらが評価されるべきか?」
 ……という疑問に、実は明快な答は無い。これは、この「FFFハンデ」を見れば明快に理解できよう。まだ発展途上中の早飲みカテゴリは別にして、他の5カテゴリの最高値は64.5〜67の間に収まっており、そこに大きな差は無い。カテゴリ間にレヴェルの格差は皆無と言って良い。あるのは個人の能力差だけである。
 “早食い”と“大食い”の間に貴賎は無いのだ。これまで我々が「大食いこそ、フードファイトの王道」と思っていたのは、実は「大食い選手権」運営サイドの意向に過ぎなかったのである。
 
 だから、“早食い”と“大食い”の間に価値の差などは存在しない。
 しかし、「大食い選手権」が独占的な支持を集めていた間、ほぼ“大食い”のみにスポットライトが当てられていたように、両者の間に“流行り廃り”が存在するのもまた、事実である。
 これは他のスポーツの分野で、本来そこに価値の差が無いはずの各競技の間に、流行り廃りによってカテゴリ分けされた“メジャースポーツ”と“マイナースポーツ”という言葉が存在している事からも分かるであろう。

 では、これから“大食い”と“早食い”のどちらがメジャー扱いされてゆくのであろうか?
 まず我々ウオッチャーの間では、依然として強く残る「大食い選手権」製固定観念の影響で、しばらくの間は“大食いメジャー志向”が優勢で推移するであろうと思われる。ただし、これから“「フードバトルクラブ」からフードファイトに触れたウオッチャー”が多数誕生するにしたがって、状況は変わりうると思われる。
 フードファイト選手の間では、これはもう「フードバトルクラブ」優勢、即ち“早食い”優勢に推移する事は間違いない。出場するまでの敷居の高さや賞金の額(優勝賞金は450万円差!)から考えて、有能な選手が「フードバトルクラブ」に偏るのは必然と言えるからだ。
 以上から考えると、これからは“早食い”のメジャー化、競技のスピード化が進展していくと推察できる。

 フードファイト界に起こっている、起ころうとしているこれらの事、実は、とあるスポーツの約300年前の姿と、多くの面で相似している。
 そのスポーツとは、競馬。そう、この「FFFハンデ」の元祖的存在の「フリーハンデ」が扱うスポーツである。

 約300年前、当時イギリスで盛んになりつつあった近代競馬は、現在とは全く違うレース方式で行われていた。
 そのレース方式とは、4000m以上の超長距離のレースを何度も行い、大きく遅れた馬を失格にしながら、最終的に勝った馬(若しくは1着回数の多い馬)を優勝とするもので、これを“ヒートレース”方式と言った。
 ヒートレースでは、能力値の高い馬が間違いなく勝つ。だから「強い馬を選抜する」という目的は果たせられた。しかし、同じメンバー、それも能力差が既に分かっている馬たちを繰り返し走らせるので、レースそのものに妙味は無い。
 よって当時の競馬は、関係者と一部のマニアだけの閉鎖的な環境に置かれていて、一般的な認識は広まっているとは言い難かった。

 そんな閉鎖的な状況を憂い、一部の競馬関係者が新しい競馬のレース方式を模索した。
 競馬人気が盛り上がらないのは、競技として面白くないからだ。競技として面白くないと言う事は、ヒートレースに代わる新しいレース方式を考えなければ……というわけである。
 競技の面白さを引き出すためには様々な方法があるが、最も手っ取り早く効果が大きいのが、「結果やその予想を不確実にする」ということである。何が起こるか、どの馬が勝つか分からないというだけで、観る人は、いわゆる“ワクワクドキドキ感”を味わう事が出来るからである。
 そういう事情の下、新しい方式のレースが実施に移された。
 距離を、当時としては短距離の2400m程度に設定し、レースの回数も複数ではなく一発勝負に。こうすることによって、これまでは起こるはずの無かった波乱も起き、しかも1回のレースだけでは馬の優劣がハッキリしないので、何度も勝負を繰り返す必要が生じてくる。そうすると、何度でも最強クラスの馬による大レースが組まれるようになり、ドラマも生まれてくる。
 この狙いは見事に的中し、それ以後の競馬は、ヒートレースが急速に廃れる一方で、一発勝負形式の競技が主流になっていった。
 この時生まれたレースの中に、現在も残る英ダービーや、英オークスなどがあり、現在に至る、というわけである。

 ……お分かりだろうか? 競馬の話で言うところのヒートレースを「大食い選手権」に、ダービーのような一発勝負レースを「フードバトルクラブ」に当てはめると、理解しやすいかと思われる。
 つまりは、現在のフードファイト界は、ヒートレースと一発勝負レースが混在している転換期というわけだ。
 この喩えに従うと、やがてフードファイト界は「フードバトルクラブ」に牛耳られていく事になるわけだが、そこまでいくかどうかは、正直言って分からない。現在の状況(「フードバトルクラブ」に対するバッシングと、番組構成の稚拙さ等)を考えると、「フードバトルクラブ」が、競馬で言うダービーのような存在になれるかどうか分からないからだ。
 その一方で、このまま行くと、ヒートレース=「大食い選手権」が下火になってゆく事は避けようがないと思われる。この事は、年始の視聴率戦争における「大食い選手権」の完敗からも分かる事だ。やはり勝敗が読める競技より、読めない競技の方が観ていて面白いのは確かだと言う事なのだろう。

 という事は、である。
 現在、フードファイト界は、転換期であると同時に業界全体が地盤沈下を始める危機に瀕しているとも言えるのだ。そして、この事を把握している人間は極めて少ない。
 駒木が知り得る範囲で、この危機を自覚している業界関係者は、フードファイターの岸義行氏くらいである。彼は、「フードバトルクラブ」と「大食い選手権」が共倒れに終わった時のフードファイト界を憂いて、自ら第三勢力となる団体を旗揚げするに至った。その意気込みたるや素晴らしいものだが、その活動が果たして的を得たものであるかは疑問である。これはまた、後で述べよう。

 「大食い選手権」時代の終焉、しかし、それに代わって天下を取ったはずの「フードバトルクラブ」の地盤が極めて脆弱。加えて、それに伍するような第三勢力の登場も望み薄。これが現状である。
 この現状を打破するためにはどうすれば良いか?
 手っ取り早い方法は、「フードバトルクラブ」の構成を洗練し、フードファイト界のダービーとして成長させる一方で、「大食い選手権」も、勝負の面白さにウエイトを置いたリニューアルを実行することだ。要は既存勢力の地盤強化と巻き返しである。新興勢力が登場しないという事は、ある意味で悲しい話だが、第三勢力が微弱な現在、致し方なかろう。
 幸いな事に、「大食い選手権」運営サイドは現状に大きな危機感を持ち、「大食い選手権」のリニューアルにとりかかっているようだ。それが即結果に繋がるかどうかは未知数だが、中期的には良い結果に繋がるであろうと確信している。
 対照的に心配なのは、運営スタッフに資質的・能力的問題のある「フードバトルクラブ」の今後である。駒木個人の希望としては、新井和響氏や岸義行氏、または赤阪尊子女史らベテラン選手が第一線を退き、運営サイドに名を連ねてもらいたいのであるが……。
 こういう状況であるから、我々ウオッチャーが、フードファイト界に貢献する方法といっても、極めて手段が限定されてしまう。せいぜい、視聴率を上げるように視聴率モニターの知人に働きかけたり、番組宛に激励の手紙を送る程度であろう。それ以外には、駒木のように、インターネットで微力ながらフードファイト振興に協力するくらいしかない。
 逆にやってはいけないのは、フードファイト番組そのものを批判したり妨害したりする事であろう。それは、一連の「フードバトルクラブ」バッシングも含めて、の話である。愛着のある「大食い選手権」を守りたいのは分かるが、だからと言って、「大食い選手権」の弱体化を放置したまま、「フードバトルクラブ」の存続を阻止するのはお門違いも甚だしい。それは、フードファイトウオッチャーとして有るまじき行為である。今、両番組に必要なのは叱咤激励であって、非難誹謗ではない。叱咤と非難を取り違えてはいけない。

 ……ここまで難しい事ばかり書いて、全く総括になっていないので、ここらへんで総括らしい事も書いておこう。
 2001年は、とにかく素晴らしい人材に恵まれたビッグ・イヤーであった。2000年秋の小林尊出現まで、なかなか現れなかった新世代のフードファイターたちが、ここにきて堰を切ったように台頭し、フードファイト界は一気に盛り上がった。この事は、常識外れのパフォーマンスを示す、65ポイントを超えるハンデを獲得した選手が3名も現れた事でも分かるだろう。

 そして、2002年シーズンの開幕戦である「大食い選手権」地方予選から、既に続々とニュースターが現れ始めている。近畿地区予選で優勝した山本卓弥選手は、予選決勝で新人離れしたパフォーマンスを見せ付け、暫定ハンデ62を獲得した。一部地区予選では大きな不手際があったとの情報も得ているが、大半の地区からは、山本卓弥選手のような新たなるタレントが出現していることであろう。

 ところで、今回の「FFFハンデ」では、「フードバトルクラブ」と「大食い選手権」をハンデ対象競技会として採用し、記録の信用性に欠けるバラエティー系番組の企画や、チェック不能なローカル番組、さらに地方での非TV系競技会は対象外とした。
 これは、駒木一個人で、事実上全ての作業をこなさなくてはいけない物理的事情によるものが大きいが、地方競技会に関しては、競技の状況が分からないという他に、競技会全体のレヴェルが低いということが挙げられる。
 ただし、そんな中で、駒木が非TV系競技会の中で、唯一採用する意向を持っていた競技会があった。
 それは、先に挙げた、岸義行氏が主宰する“日本大食い協会”なる任意団体が開催した、「全日本大食い競技選手権」であった。

 この競技会は、今回の「FFFハンデ」でベスト10にランクインした選手の過半数が出場しているという、言わば史上最大の非公式戦である。また、ハンデ対象競技会の少ない大食い60分カテゴリにあてはまる競技会であるため、ハンデ制定用資料としての価値も大きい。
 しかし、この競技会をハンデ対象競技会として採用するにあたって、最後までクリアできない問題が存在した。
 まず、この競技会は、日本大食い協会から販売されているビデオを観ないと、その模様を知る事が出来ない。しかし、これはまぁ良い。問題は別のところにある。

 問題は、このビデオの販売本数を増やすために、競技会の結果を完全非公開にしている事である。駒木は幸いにも、高橋信也選手のウェブサイト内のコンテンツ(現在は削除)でおおまかな模様と順位を知る事が出来たが、その結果を今、ここで書くことさえ出来ない。正確には、しても良いのだろうが、それをすると、恐らく日本大食い協会サイドから削除要請が来るであろう。
 「FFFハンデ」を観てもらえれば分かるように、ハンデ値と順位は、ハンデ対象競技会での順位が大きく反映される。もし、「全日本大食い競技選手権」をハンデ対象にすると、間接的にこの競技会の順位を公開してしまう事になるだろう。そして、「このハンデはどういう根拠からですか?」と訊かれた時も回答出来ない。これでは、とてもハンデ対象競技会には採用できないのである。

 競技会ビデオの売上は、協会の運動資金、つまりフードファイト振興に使われるわけで、売上を伸ばそうとする考え自体は間違ってはいない。しかし、やり方は大きな過ちを犯しているとしか言えない。
 競技会を開催して、利益をあげようと思ったなら、まず競技会を一般公開するべきである。観客席を設置し、入場料を徴収する。それは100円だろうが500円だろうが、数千円だろうが構わない。適正価格を判断して、設定すればいいことだ。
 その上で、競技結果を詳しくレポートし、マスコミ媒体やインターネットで公開する。もしも、その競技会がエキサイティングで興味を引くものであれば、必ず「ビデオは販売しないんですか?」という反応があるはずだ。その上で、予約を取ってビデオを作製し、販売すればよい。レポートの反応が悪ければ、どうやったってビデオは売れない。経費の無駄遣いになる前に止めるべきだ。そうなった時は、運営サイドの失敗なのだから、責任を自身で取るほかは無い。
 ビデオの内容詳細を隠し、ましてや「隠した方が、観たがる人が多いだろうから」などと考える事自体が極めて不謹慎である。これでは雑誌広告にある、怪しげな通販商品と何ら変わるところが無い。
 ……有料観客制、レポート公開後に反応を見てからの通販──
 協会サイドにしてみれば、どう思うだろう? 難しい事ばかりだろうか? 
 しかし、2つのテレビ局に次ぐ第三勢力になろうとするのなら、これくらいのハードルを越えなければ到底無理な話だし、弱小団体で良いというのなら、時間と労力の無駄だ。やらない方がまだマシである。
 フードファイト界を、選手の立場から牽引していくという姿勢は素晴らしいのだから、その中身を充実させていってもらいたいと思う。

 最後はまた脱線してしまった。総括としては失格の文章かもしれない。しかし、駒木のフードファイトに対する真摯な思いだけでも伝える事が出来れば幸いである。


 ……長々と失礼しました。講義時間もオーバーしてますし、ここで終わりたいと思います。
 次回の文化人類学講義は、春の大食い特番直前のレビューになると思います。お楽しみに。
 それでは、ご清聴ありがとうございました(この項終わり) 

 


 

2月18日(月) 文化人類学
「2001年フードファイターフリーハンデ(3)
〜早大食い・大食いの部

 講義の実施が遅れており、御迷惑をおかけしております。

 まず初めに、前回の「FFFハンデ」の早食いカテゴリで2箇所訂正があります。
 前回のハンデ制定作業の中で、「大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦」と「打倒赤阪! 甘味大食い女王選手権」のデータが漏れておりました。この両大会のデータによって、高橋信也選手が58→60.5ポイント赤阪尊子選手が56→58ポイントへと修正されました。関係者各位に御迷惑をおかけした事をお詫び申し上げます。

 ……と、この事でもよく分かりますように、言うは易し、行うは難しとはよく言ったものでして、まさかここまで資料整理が難航するとは思ってもいませんでした。しかし、今回の作業で明確な基準が出来ましたので、次回以降は比較的迅速な対応が出来るのではないかと思います。
 さて、今日は「早大食い」、「大食い45分」「大食い60分」の3カテゴリについて、ハンデと解説を掲載します。今回も、先に各カテゴリのハンデを発表し、その後に3カテゴリ総合の解説を掲載します。


「2001年度・フードファイターフリーハンデ」
〜早大食いカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
66.5 白田 信幸
63 小林 尊
62 山本 晃也
58 高橋 信也
57 清遠 学
56 射手矢 侑大
  56 田澤 康一
  56 立石 将弘
54 稲川 祐也
  54 浜島 雅代
  54 山形 統
12 53.5 寺田 佳代
13 53 渡辺 人史
14 52.5 加藤 昌浩
  52.5 小林 由利枝
16 52 千田 香織
17 51.5 田川 理加

大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦
第1ラウンド(早大食いカテゴリのみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
57 清遠 学
56 射手矢 侑大
56 田澤 康一

TVチャンピオン・甘味大食い女王選手権
第1ラウンド(早大食いカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
54 浜島 雅代
53.5 寺田 佳代
52.5 小林 由利枝
52 千田 香織
51.5 田川 理加

フードバトルクラブ2nd・1stステージ
(早大食いカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
60(66.5) 白田 信幸
58 高橋 信也
54 山形 統

FBCキングオブマスターズ・2ndステージ
(早大食いカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
52.5 加藤 昌浩

FBCキングオブマスターズ・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
66.5 白田 信幸
63 小林 尊
62 山本 晃也

〜大食い45分カテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
64.5 小林 尊
64 白田 信幸
63.5 岸 義行
  63.5 射手矢 侑大
62 赤阪 尊子
61.5 新井 和響
  61.5 加藤 昌浩
61 立石 将弘
  61 高橋 信也
10 60.5 山本 晃也
11 59.5 キングコング・バンディ
12 59 岩田 美雪
  59 平田 秀幸
14 58 稲川 祐也
  58 カーリーン・ドーン・
レフィーバー
  58 小林 千尋
17 57 柿沼 敦夫
  57 高山 昌平
  57 パク=クユンドク
  57 浜島 雅代
  57 ハン=チンユ
22 55 清遠 学
  55 小林 由利枝
  55 千田 香織
  55 渡辺 人史
26 54.5 田川 理加
  54.5 田澤 康一
28 52.5 寺田 佳代

フードバトルクラブ1st・2ndステージ

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
63.5(64.5) 小林 尊
62 赤阪 尊子
61.5 新井 和響
61 立石 将弘
61 高橋 信也

大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦
第2ラウンド

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
58(61) 高橋 信也
57.5(61) 立石 将弘
56(63.5) 射手矢 侑大
55.5(64) 白田 信幸
55 清遠 学

大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦
第3ラウンド

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
61.5(63.5) 射手矢 侑大
60.5(61) 高橋 信也
59.5(64) 白田 信幸
59(61) 立石 将弘

TVチャンピオン・甘味大食い女王選手権
第2ラウンド

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
60(62) 赤阪 尊子
57 浜島 雅代
55 小林 由利枝
55 千田 香織
54.5 田川 理加

フードバトルクラブ2nd・2ndステージ

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
64.5 小林 尊
64 白田 信幸
63.5 岸 義行
63.5 射手矢 侑大
61.5 加藤 昌浩

大食い選手権・スーパースター地上決戦
第2ラウンド

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
60(63.5) 射手矢 侑大
60(64) 白田 信幸
59(63.5) 岸 義行
58(62) 赤阪 尊子
58 稲川 祐也

大食い選手権・スーパースター地上決戦
第3ラウンド

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
61(63.5) 射手矢 侑大
58(64) 白田 信幸
58 稲川 祐也
58(63.5) 岸 義行
57.5 赤阪 尊子

大食い選手権・スーパースター地上決戦
第4ラウンド

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
61.5(63.5) 射手矢 侑大
60(64) 白田 信幸
59.5(63.5) 岸 義行
57(58) 稲川 祐也

〜大食い60分カテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
67 白田 信幸
66 射手矢 侑大
64 岸 義行
62.5 小林 尊
62 赤阪 尊子
61 高橋 信也
60 立石 将弘
58.5 岩田 美雪
58 別府 美樹
10 56.5 浜島 雅代
11 56 山口 奈津美
12 51.5 田川 理加

フードバトルクラブ1st・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
62.5 小林 尊
60(61) 高橋 信也
60 立石 将弘

大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
63.5(66) 射手矢 侑大
63(67) 白田 信幸
61 高橋 信也

TVチャンピオン・甘味大食い女王選手権・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
57.5(62) 赤阪 尊子
53.5(56.5) 浜島 雅代
51.5 田川 理加

フードバトルクラブ2nd・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
63.5(67) 白田 信幸
62.5 小林 尊
60.5(64) 岸 義行

大食い選手権・スーパースター地上決戦・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
67 白田 信幸
66 射手矢 侑大
64 岸 義行

大食いスーパースター史上最大の
チャレンジマッチ
甘味大食い女王・お正月スペシャル決戦

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
62 赤阪 尊子
58.5 岩田 美雪
58 別府 美樹
56.5 浜島 雅代
56 山口 奈津美

 2000年秋デビューの小林尊を初めとして、続々とスーパールーキーがデビューしてゆく中、2001年春の段階での白田信幸の存在は、さほど大きなものではなかった。他のルーキーに比べてスピードが完全に不足しており、せっかくの巨体を持て余しているような印象が否めなかったものだった。
 しかし、夏の間に各地の大食いイベントを転戦してゆく内に、何らかのコツを掴んだのであろう、秋のメジャー大会では、全く別人と化した彼の姿があった。
 長時間勝負の「大食い選手権」はもちろん、早食い力を要求される「フードバトルクラブ」でもトップクラスの成績で勝ち上がり、ついには、当時無敵を誇っていた小林尊を完封し、フードファイト界の盟主にまで登りつめた。
 2001年秋シーズンの白田の活躍は目を見張るべきものがある。その例を挙げれば、小林尊のリベンジを阻止した「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」決勝戦での圧勝劇など、枚挙に暇がないが、その中でも圧巻だったのが、「大食い選手権・スーパースター地上決戦」決勝でのラーメン(スープ抜き)30杯完食の大偉業であった。
 射手矢侑大や岸義行といったタイトルホルダーを相手にして一歩も引くところはなく、60分の競技時間中、早大食いのペースでラーメンをかき込み続けた。さすがに終盤でペースは落ちたが、それもご愛嬌。この春に射手矢が樹立したばかりの、20杯2/3という「大食い選手権」レコードを、さらに大幅更新して優勝を果たした。そのインパクトたるや、小林尊のホットドッグ12分50本に匹敵するものだと認めて良いだろう。
 恐ろしい事に、白田はまだ発展途上中の選手である。間もなく始まる2002年シーズンで、彼がどのような成長と活躍を見せてくれるのか、今から待ち遠しい。

 白田の大活躍で、少々影が薄くなったものの、「大食い選手権」2001年新人王・射手矢侑大の活躍も、特筆に価するものであった。 
 結果的に優勝を果たすことになった、メジャーデビュー戦「大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦」で射手矢は、予選4位と出遅れた。これまでの「大食い選手権」では、予選で4位以下だった選手が優勝したケースはゼロ。しかも勝ち上がり過程で低空飛行を続けたため、恐らくは準決勝止まりに終わると思われた。
 ところがその準決勝において、45分でカツ丼11杯強を平らげて、ゲスト解説の小林尊を唖然とさせると、その勢いを駆って、決勝ではラーメン(スープ抜き)20杯2/3のレコードを達成して、まんまと優勝をさらってしまった。
 この快挙がフロックでは無かったのを証明したのが秋シーズンの「大食い選手権・スーパースター地上決戦」であった。ここで射手矢は、岸・赤阪ら旧勢力の英雄たちを完封して決勝進出を果たし、さらにラーメン大食いの自己ベストを7杯更新して、白田には及ばなかったものの、見事な準優勝を果たした。「フードバトルクラブ」では、残念ながら不運やスランプに見舞われて良績を残せなかったが、彼もまた、2001年を代表する選手の1人であった事は間違いない。

 “早食い”系競技では押される一方のベテランたちも、このカテゴリでは、まだまだ健在振りを示した。
 岸義行は、白田・射手矢らの前に敗れ去ったものの、自己鍛錬を怠らず、彼らについていこうという気概は充分に感じられたし、赤阪尊子も散発的とは言え、往年の冴えを取り戻したシーンも、まま見られた。
 唯一の“早食い”系ベテラン・新井和響も、色褪せたとは言え、まだまだメンバー次第では上位に食い込める力を維持しており、これからも若手の壁として頑張ってくれるだろう。

 “早食い”系競技では無敵を誇った小林尊は、「大食い選手権」欠場のトラブルもあって、とうとう“大食い”系競技では、「フードバトルクラブ」勝ち上がり段階の競技、「ウェイトクラッシュ」での2勝にとどまった。それも秋の大会では、得意の飲料系を絡めての“辛勝”であり、ここ数ヶ月で、小林が“大食い“系競技での覇権を失ってしまった事が如実となった。
 この事は、恐らく誰よりも本人がよく自覚していることであろうし、そんな自分がこれからどのような方向で競技を続けていくべきかも、彼はよく分かっていることだろう。
 これからも外野からの雑音にめげる事無く、小林尊に相応しいパフォーマンスをこれからも見せ付けて欲しいものである。
 蛇足だが、ハンデを見ての通り、小林の大食い能力は、色褪せたとは言え、フードファイト界トップクラスであることには間違いない。小林が弱いのではなく、白田・射手矢らが強すぎるのだ、ということを認識しておくべきである。

 山本晃也は、明らかに胃袋の容量に限界がある選手であり、一応は60ポイントを超えて一流選手の一角を占めてはいるものの、これ以上の能力の伸張は、やや望み薄だろう。
 ただし、今後は「フードバトルクラブ」が一層早食い・スプリント化の一途を辿る可能性が高く、その意味では時代に恵まれたフードファイターと言う事も出来るか。

 “早食い”系カテゴリと同様、“大食い”系カテゴリでも、高い実力を誇るバイプレーヤーが多数登場してくれた。
 高橋信也立石将弘といった、“早食い”系でも活躍しているゼネラリストや、最近では珍しい、“大食い”系のルーキー・加藤昌浩などがその代表的な存在である。

 「大食い選手権」組の稲川祐也、清遠学、田澤康一、渡辺人史といった面々は、ポイントが伸び悩んだ。
 これは、彼らの能力絶対値よりも、「大食い選手権」が抱えた構造的欠陥によるものが大きく、彼らには気の毒としか言いようが無い。しかし、客観的基準に基づいてハンデを設定する以上は、どうしてもこういうケースは発生してしまう。
 「大食い選手権」は、時に茹でダコのような、およそ大食いには向かない食材をテーマに設定することがある上に、1名ないし2名の成績下位選手が脱落してゆく競技を1日で3回も4回も行う形式で大会を行う。こうなると、上位選手は意識的に力をセーブして次に備えるため、どうしても記録が伸び悩みやすい。もちろん、これらの事情を考慮して、ある程度のポイント調整は行っているのだが、それにも限度というものがあるのが現状だ。
 この問題ついては、また明後日の総括で触れるが、今までになくフードファイトがスポーツ色を強く出している現在、未だに“ビックリ人間大集合”的意味合いを残した「大食い選手権」は、大きな過渡期を迎えている。これは何も、「フードバトルクラブ」を真似しろと言っているわけではない。「大食い選手権」の持つ長所を一杯に引き出せば、もっと面白くて競技色の強い「大食い選手権」ができるはずなのである。今、スタッフの方々が抱いているであろう危機感をもっとバネにして、よりよい番組と「大食い選手権」製作に力を注いで欲しいものだと思う。

 ところで、「フードバトルクラブ」では多数の海外招待選手が参加している。これは、恐らくフードファイトを良く知らない新規ウオッチャーに日本の一流フードファイターの高い能力を知ってもらうために、ある種の“モノサシ”を提供したものだと思われる。
 本人がそれを知っているかどうかは別にして、製作サイドから、“看板倒れの負け役”という役どころを期待されて出場した招待選手は、期待通り(?)、そのことごとくが日本の一流選手たちに敗れ去っていった。
 しかし、中には新井和響越えを果たしたキングコング・バンディのように、見せ場を残した選手も数名見受けられた。今後もこの招待制度が続くかどうかは極めて疑問だが、ひょっとすると、白田・小林らを脅かす存在が現れるかもしれない。この事も、脳裏の片隅には留めておく必要がありそうだ。

 繰り返し述べてきたように、2001年はスーパールーキーが多数現れ、フードファイト界が大いに隆盛した記念すべき年であったが、唯一残された課題が、女性大食い選手のコマ不足である。
 初期のフードファイト界に咲き誇った“元祖女王”・伊藤織江や、現在に至る赤阪尊子の活躍を見ても分かるように、かつてフードファイトは女性上位の世界であった。
 ところが、赤阪以後の女性フードファイターで目立つ活躍を見せた者と言えば、岩田美雪井手香里くらいで、彼女らにしても赤阪の牙城を崩すには到底至らないでいる。世代交代が全く進んでいないのだ。
 ディフェンディングチャンピオンの赤阪を迎えて行われた「甘味大食い女王選手権」でも、終わってみれば赤阪の圧勝。浜島雅代、田川理加といったルーキーたちは文字通り一蹴されてしまった。田川はその後、地方の大食い大会を行脚して実績を積み重ねてはいるが、「フードバトルクラブ2nd」では、ボーダーラインに到底及ばない記録で惨敗するなど、未だ“大食い以前”の印象が否めない。
 また、シーズン終了間際になってようやく、別府美樹が岩田美雪と互角の勝負をして希望を繋いだが、現時点では赤阪越えは難しい情勢である。
 赤阪の“本当の”引退が、遅くとも2〜3年以内に迫ってきている現在、新たな女性フードファイターの発掘は急務である。業界挙げてのスカウト活動を期待したい。


 以上で、各カテゴリのフリーハンデと解説が一通り終了しました。
 そして、これらを踏まえて、次回の文化人類学講義で「総括」を行います。各カテゴリを総合した順位表の発表と、総合解説を掲載する予定です。

 なお、明日(火曜日)は日程調整のため休講、明後日(水曜日)は演習(現代マンガ時評)がありますので、次回の文化人類学講義は木曜日になります。
 では、今日の講義を終わります。(続く

 


 

2月17日(日) 文化人類学
「2001年度・フードファイターフリーハンデ(2)
〜スプリント・早食いの部〜

 今日の講義は、一昨日からの続きになります、「フードファイターフリーハンデ(以下、「FFFハンデ」)」です。
 今日は5分以内の早食いを競う“スプリント”と、5分から15分までの早食いを競う“早食い”、以上2つのカテゴリについてハンデと解説を発表します。
 「FFFハンデ」についての規則等は、前回「早飲みの部」のレジュメをご覧下さい。こちらをクリック
 それではさっそく、「FFFハンデ」の公開へ移ります。初めに両カテゴリのハンデを掲載し、その後、両カテゴリまとめての解説を掲載します。
 なお、本文中は敬称略、文体を変えてお送りします。


「2001年度・フードファイターフリーハンデ」
〜スプリント・カテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
65 小林 尊
64 藤田 操
  64 山本 晃也
63 新井 和響
  63 高橋 信也
62 白田 信幸
61.5 山形 統
60 射手矢 侑大
  60 小国 敬史
  60 立石 将弘
11 57 田澤 康一
12 56.5 岸 義行
  56.5 駿河 豊起
14 55 赤阪 尊子
15 54.5 加藤 昌浩
16 54 中野 正紀
17 53.5 木村 登志男
  53.5 南 壮介
19 53 武田 明則
20 52 平田 秀幸
21 51 井出 香里
  51 柿沼 敦夫
  51 滝 宏隆
24 50 河津 勝
25 49.5 樋口 数佳
26 49 向口 誠一
  49 キングコング・バンディ
28 48 ハン・チンユ

※主な競技結果※

フードバトルクラブ2nd・プレステージ

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
65 小林 尊
63.5(64) 山本 晃也
63 新井 和響
63 高橋 信也
61.5(62) 白田 信幸

フードバトルクラブ2nd・1stステージ
(スプリントカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
64 山本 晃也
54 中野 昌紀

FBCキングオブマスターズ・2ndステージ
(スプリントカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
63 新井 和響
60 小国 敬史
55(57) 田澤 康一
51 柿沼 敦夫

FBCキングオブマスターズ・敗者復活戦
“fast”(天むす20個)

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
59(61.5) 山形 統
53(54.5) 加藤 昌浩
52.5(56.5) 駿河 豊起
52 平田 秀幸
49 K・バンディ

FBCキングオブマスターズ・敗者復活戦
“much”(ジャンボラーメン)

ハンデ(上位2名)
()は他競技での最高値

選手氏名
51 柿沼 敦夫
50.5(60) 射手矢 侑大

FBCキングオブマスターズ・3rdステージ
ラーメン、餃子、寿司ゾーン総合評価

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
65 小林 尊
62(64) 山本 晃也
62 白田 信幸
61.5 山形 統
60.5(63) 高橋 信也

FBCキングオブマスターズ・準決勝第1試合
第2セット(寿司・3分)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
56(64) 山本 晃也
55(63) 新井 和響

FBCキングオブマスターズ・準決勝第3試合
第2セット(寿司・3分)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
61(65) 小林 尊
59.5(63) 高橋 信也

TVチャンピオン・「大食いスーパースター史上最大のチャレンジマッチ」
キウイ70個早食い対決

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
64 藤田 操

〜早食いカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
67 小林 尊
62 新井 和響
60.5 白田 信幸
  60.5 立石 将弘
  60.5 高橋 信也
60 射手矢 侑大
59.5 山形 統
59.5 山本 晃也
59 チャールズ=ハーディ
10 58 赤阪 尊子
11 57.5 岸 義行
12 57 小国 敬史
13 55.5 藤田 操
  55 滝 宏隆
15 55 加藤 昌浩
16 49.5 奥野 栄悟

フードバトルクラブ1st・準決勝第1試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
56.5(60.5) 高橋 信也
56(58) 赤阪 尊子

フードバトルクラブ1st・準決勝第2試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
57(67) 小林 尊
56(62) 新井 和響

フードバトルクラブ1st・準決勝第3試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
53(60.5) 立石 将弘
52(53) 加藤 昌浩

大食い選手権・九州縦断ニューフェイス決戦
第1ラウンド(早食いカテゴリのみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
60.5 高橋 信也
58.5(60.5) 立石 将弘
58(60.5) 白田 信幸

TVチャンピオン・早食い世界一決定戦
日本予選・決勝

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
61(67) 小林 尊
55(60.5) 高橋 信也
54(60.5) 立石 将弘

ネイサンズ・国際ホットドッグ早食い選手権

ハンデ(上位3名)
()は他競技での最高値

選手氏名
67 小林 尊
62 新井 和響
59 C・ハーディ

TVチャンピオン・甘味女王選手権
第1ラウンド(早食いカテゴリのみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
58 赤阪 尊子

フードバトルクラブ2nd・1stステージ
(早食いカテゴリ内のみ)

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
67 小林 尊
60 射手矢 侑大
60(60.5) 立石 将弘
60(62) 新井 和響
57 小国 敬史

フードバトルクラブ2nd・準決勝第1試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
60.5 白田 信幸
53 加藤 昌浩

フードバトルクラブ2nd・準決勝第2試合
※最高値は、山本が勝った寿司対決

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
57.5 岸 義行
58 山本 晃也

フードバトルクラブ2nd・準決勝第3試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
61(67) 小林 尊
59.5(60) 射手矢 侑大

FBCキングオブマスターズ・2ndステージ
(早食いカテゴリ内のみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
60.5 立石 将弘
59.5 山本 晃也
58(60.5) 高橋 信也
54(60.5) 白田 信幸

FBCキングオブマスターズ・準決勝第1試合
第1セット(シューマイ・10分)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
58(59.5) 山本 晃也
57(62) 新井 和響

FBCキングオブマスターズ・準決勝第2試合
第2セット(ステーキ・10分)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
60(60.5) 白田 信幸
59.5 山形 統

FBCキングオブマスターズ・準決勝第3試合
第3セット(シューマイ・10分)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
59(67) 小林 尊
57(60.5) 高橋 信也

 2001年のフードファイト界は、わずか半年余りの内に、大食いから早食いへ、そしてスプリントへと、針が右端から左端まで振り切れてしまうような激動の年になった。
 つい最近まで、日本のフードファイトでは何よりも大食いが重視され、早食いやスプリント勝負は、番外戦にも似たなおざりな扱いを受けていた。
 これは、フードファイトの原点が、人間の胃袋の限界を争うところから始まっているからだが、それと同時に、「時間をかけて膨大な量の食材を食べ続け、なおかつ、競技時間を終えても胃袋を余している」という事を最大の美徳としてきた、我々ウオッチャーのフードファイトに対する姿勢も大きかったであろう。日本のフードファイト界が民放TV局に大きく依存している以上、視聴者の嗜好を重視した大会の運営がなされる事は、ある種必然と言えた。

 しかし、そこへ大きな一石を投じたのが、後発のTBSが大々的に開催した「フードバトルクラブ」であった。
 「フードバトルクラブ」では、先発のTV東京「大食い選手権」シリーズとの差別化を図り、敢えてそれまでのフードファイト・ウオッチャーの嗜好に挑戦的な態度をとって、新たなフードファイト・ファン層の開拓に挑んでいった。すなわち、それが早食い・スプリント系競技を重視し、ノーカットで迫力のある“絵”を演出することである。
 これは非常に危険な賭けであり、そして3度の大会を経てもなお、未だにコアなフードファイト・ウオッチャーに嫌悪感を抱かさせているように、今でもその賭けが、完全に成功しているとはとても言えない状況である。
 だが、そのような課題を残しながらも、「フードバトルクラブ」が、フードファイト界に与えた影響は極めて大きい。
 というのも、「フードバトルクラブ」で、トップ選手による短時間の競技が複数回行われるようになって、それまで45分ないし60分かかって完食するのが相場とされた記録が、あっという間に早食いや早大食い、時にはスプリントの範疇にまで“降りてくる”ようになったのである。即ち、記録の高速化とインフレ化である。
 この高速・インフレ現象は、大食い競技の記録にも影響を及ぼした。早食いのペースが大食いに持ち込まれる事によって、それまで常識では考えられなかった大食い記録が次々と誕生する事となった。
 「フードファイトをスポーツと認識するかどうか」という論争は、現在もなお決着を見ていないが、少なくとも“競技”や“選手権”という用語が適用されるモノである以上は、勝敗や記録を重視するのは至極当然の事である。
 これまでの「記録はやや平凡でも余裕残しである」事から、「偉大な記録を残して圧勝する」という当然の認識へと、ウオッチャーの見る目を向けさせたという意味でも、「フードバトルクラブ」の果たした功績は大きかった。
 イメージ戦略の大失敗で、「フードバトルクラブ」は放送するたびに抗議が殺到するという“低俗番組”化してしまったが、我々ウオッチャーは、冷静にこの番組の清濁を合わせ飲んで、功績は功績として称え、問題点は問題点として改善を願うべきであろう。

 ところで、「フードバトルクラブ」の誕生により、様々なレギュレーションの競技が実施された事で、大きな混乱を招いたのが“早食い”と“大食い”の境界線の解釈に関する問題だった。
 TV東京主催の大会では、制限時間12分以内の競技を“早食い”とするが、TBSの「フードバトルクラブ」では、10分や、場合によっては2分半で勝負がつく競技でも“大食い”という呼称を使用している。
 これは言ってみれば、陸上の400m走を、五輪では「短距離」と呼び、世界陸上では「長距離」と呼ぶようなもので、極めて憂慮すべき事態と言える。
 だが、そもそも“早食い”とは「短い時間内で、多くの食材を食べる能力を持つ人」の事であり、一方の“大食い”は、「非常に多くの食材を食べられる(胃袋を持つ)人」の事であるはずだ。
 この事を考えると、優れたフードファイターが、どうやっても満腹になるまで食べる事が出来ないような、そんな短時間の競技を“大食い”とするのは明らかにおかしい。やはり、勝負の決め手がスピードではなく、胃の容量になる時間帯から“大食い”という呼称を使用するべきであろう。
 そこで「FFFハンデ」では、15分以内の競技を“早食い”30分を超える(主に45分以上の)競技を“大食い”として認識する。その中間(15分超〜30分)は、大半の選手には“早食い”の範疇と思われるが、トップクラスの選手では、人間の限界に近い10kg以上の記録を残せることから、“早大食い”という造語を充てさせてもらう事にした。あらかじめご承知願いたい。
 それでは以下、各選手の解説に移る。

 フードファイトの高速化の流れにいち早く乗り、見事に才能を開花させたのが、小林尊であった。
 小林は2000年秋、デビュー戦となった「大食い選手権」オールスター戦で、岸・赤阪・新井ら、それまでのチャンピオンクラスを総ナメにし、衝撃のデビューを果たした。それはそれでインパクト抜群の出来事であったが、“早食い”の力量については、その時点ではまだ完全に未知数だった。
 ところが、2001年春の「フードバトルクラブ1st」で、15分の早食い勝負で新井和響に勝利してから一躍脚光を浴び始める。それから返す刀でネイサンズ・国際ホットドッグ早食い選手権の予選会に参戦し、そこで高橋信也、立石将弘を一蹴して本大会出場枠を掴むや、その本番でも、12分で50本という大記録を叩き出して圧勝した。
 この記録がフードファイト界に与えた衝撃はハンパなものではなく、それまで我々が“早食い”と呼んでいたものは何だったのだろう、という気持ちすら抱かせた。
 それ以後も、2回の「フードバトルクラブ」では、スプリント・早食いカテゴリの競技で無敗をキープし、2001年シーズンを終えた。“大食い”では白田信幸に王座を明け渡したが、“早食い”に関しては、まだ彼の右に出るものはいない。
 ところで、小林尊の隠れたベストパフォーマンスと言えるのが、「フードバトルクラブ2nd」の1stステージ「ハングオーバー」であった。
 この入札方式の変則競技・「ハングオーバー」では、選手自身が把握している能力値ギリギリか、若しくはその半歩上の記録にチャレンジしなければ、ステージ通過は難しい。そのため、ステージ通過選手のチャレンジは、おおむね自己ベストの好スコアとなる。今回のフリーハンデでも「ハングオーバー」がベストパフォーマンスと認定された選手が多いが、それは偶然ではなく必然である。
 小林尊がこの時挑んだのは、「1皿490gのカレーライス13皿(6.37kg)を30分」という条件であったが、それを6分余り、1皿あたり30秒強でクリアしてしまった。重量、タイムとも常識外のハイ・レコードである。
 この「怪」記録は「FBCキングオブマスターズ」決勝の記録(19分弱で14皿)と比較しても、余りにも突出し過ぎた記録であるため、VTRで、食材の重量に詐称が無いか入念にチェックをした。が、この時のカレーライスは、「FBCキングオブマスターズ」決勝に使用されたカレーライス(1皿500g)と比較しても、少しだけライスの量が違う他は、ほとんど差は認められなかった。よって、この記録は正当であり、ホットドッグ世界一決定戦で見せたのと同程度のビッグ・パフォーマンスと認識するべきなのだろう。
 
 2001年のシーズン終了間際、“眠れる野獣”藤田操が素晴らしいパフォーマンスを演じ、我々を驚かせた。
 藤田操は、現役選手の中では武田昌子、赤阪尊子、新井和響に次ぐキャリアを誇るベテラン選手で、全盛期の1990年代後半には、同じく当時全盛期を迎えていた赤阪尊子と互角以上のパフォーマンスを見せつけていた。
 しかし3年ほど前から、消化能力と代謝能力に顕著な衰えが表れて肥満となり、往年の迫力が衰えていた。
 それでも、ホットドッグ早食い世界一決定戦などの一発勝負では強さを見せ付け、能力そのものは、現在の一流選手とも互角に争えるだけのものを持っている事を覗わせていた。
 そんな状況下で彼が挑んだのが、「大食いスーパースター史上最大のチャレンジマッチ」内の企画、「キウイ70個早食い勝負」であった。
 この競技は、なんと1人対7人のハンデ戦の上、藤田のみ、10個完食ごとに10mほど離れた次の皿が乗ってある机までダッシュしなくてはならない、というキテレツなもので、藤田に対する嫌がらせとしか言いようの無いレギュレーションであった。
 「TVチャンピオン」では時折、藤田に対して無謀なチャレンジを強いる事があり、これもその中の1つに数えられるものだった。もしかすると番組側は、負けても番組の看板に傷のつかない藤田に“負け役”を務めさせたかったのかも知れない。
 ところが、である。藤田は恐らく生涯最高とも言えるベストパフォーマンスで、この競技に勝利した。記録は70個(4.9kg)のキウイを、ロスタイム込みで2分34秒完食。1個あたり実質2秒弱というスピードである。しかも、巨体を揺らして走るというハンデを乗り越えて。
 この記録を数字のみで評価した場合、小林尊の「カレー13皿6分」と並ぶような驚異的なパフォーマンスであり、ハンデも66か67を与えなくてはならなくなる。そうなると、スプリントカテゴリで、小林尊を抜いてしまう。だが、「FFFハンデ」は、能力の数値化以外に選手の順位付けの機能も有している。無敗の小林尊が、直接対決では敗れたことの無い藤田操よりも順位が下というのは、やはりおかしい。そこで、競技に使われたキウイが柔らかくて食べやすいという事などを考慮して64までポイントを下げ、これを採用した。小林尊や山本晃也ならともかく、63ポイントを与えた新井和響や高橋信也には、クリアできるかどうか微妙な記録であろうから、このポイントは的確であると確信している。

 山本晃也は、“早食い”の隆盛が無ければ、恐らく埋もれたままになっていたフードファイターだろう。
 彼のデビューは、悪名高き「いきなり! 黄金伝説」で、その番組内で新井和響に勝利を収めたものの、新井が体調不良であったため、その評価はさほど高くなかった。
 しかし、「フードバトルクラブ2nd」でメジャーデビューを果たした彼は、あっという間に業界内の評価を一変させる。
 寿司60皿完食タイムトライアルでは、小林尊に次ぐ2位、そして「ハングオーバー」では、お茶漬け8杯5.2kgを3分3秒で完食というスーパーレコードを樹立。新井に勝利した事がフロックではなく実力であった事は、この時点でハッキリした。そして、「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」では決勝まで進出し、早大食い、大食いの範疇にまで活躍の舞台を広げている。
 蕎麦アレルギー、寿司嫌いという弱点は抱えているものの、卓越した早食い、そして早飲みの能力で、これからも“早食い”系競技の主役として活躍していく事だろう。

 新井和響にとっての2001年シーズンは、前年とは打って変わって、苦渋に満ちたシーズンとなった。
 小林尊、山本晃也らスーパールーキーの台頭に苦しめられ、また、記録の高速化は、口が小さいために食材をよく噛んで飲み込まなくてはならない新井にとっては、逆風そのものであった。
 だが、彼はそんな困難な状況下でも、競技会のたびに自己ベストを更新し、非公式ながら寿司60カンの早食いレコードを達成してもいる。ステーキなど、飲み込むまでに咀嚼が必要な食材では苦戦を強いられているが、寿司などの柔らかい食材では未だにトップクラスの実力を維持していると言えよう。
 よく考えてみれば、もともと新井の“早食い”における覇権は、己の力で勝ち取ったというよりも、中嶋広文ら、彼より早い選手が引退した事で転がり込んできたものであった。しかし、それに奢らず鍛錬を重ねていたからこそ、現在の彼があるのであって、その精神力は敬服に値する。

 黄金世代・2001年組の1人である高橋信也は、今回全カテゴリで高いポイントを獲得、稀代のゼネラリストとして幅広い活躍を見せている。各大会に出場しては好記録や見せ場を作り、今や大食い競技会には欠かせない存在だ。
 しかし、どの大会でも決勝進出がやっとで、小林尊、白田信幸ら、各カテゴリのチャンピオンとは逆転不可能な格差をつけられているのも確か。ゼネラリストというよりも“器用貧乏”という印象が強いのが現状で、今年、このイメージをいかに払拭するかが見もの。

 現在“大食い”では無敵に近い存在の白田信幸だが、そのパフォーマンスを支えているのは、実は相当な高水準の早食い能力である。
 デビュー当時の白田は、早食いが苦手であるという印象が強かった。だがそれは、早食いが苦手というよりも嫌いだったというのが真相のようで、本格的にフードファイトを始めてからは、そう間もない内に早食い能力を身に付けてしまった。
 巨漢の大食い体質という、極めつけの特異体質を持った白田信幸だが、どうやら彼は、食べる能力でも天賦の才を持っているようで、正にフードファイトのために生を受けたような男だ。

 ここに来て急成長を遂げつつあるのが、自衛隊員という異色のフードファイター・山形統である。胃の容量には明らかな限界があり、“大食い”での台頭は望めないが、ここしばらく“早食い”能力の成長がめざましい。今年の「フードバトルクラブ」では台風の目となり得る可能性を秘めており、要注目と言えよう。

 以下のランキングにも2001年組がズラリと顔を並べる。
 立石将弘は、力量的にはバイプレーヤーの域を出ないが、時折印象的なパフォーマンスを見せており、これからの活躍を期待したい。
 「大食い選手権」新人王の射手矢侑大も、早食い力をバックボーンにして“大食い”で活躍している選手である。年末には大スランプと引退問題に直面し、今年の活動が憂慮されているが、出てくれば、勿論主役の1人である。
 ルーキーの中で、最も成長力を秘めているのが小国敬史であろう。荒削りな才能をいかに洗練させるか、注目に値する選手である。
 その他、田澤康一など散発的に好パフォーマンスを見せる選手も多い。彼らが一流選手といかに伍していくかが、業界全体のテーマでもあろう。

 一方で、時代の流れに取り残されそうになりながら、懸命に頑張っている、かつての主役たちがいる。 
 “早食い”中心のフードファイト界において、追い詰められた立場にいるのが赤阪尊子であろう。唯一残ったタイトル「甘味大食い女王選手権」では、格下相手とは言え圧勝で初防衛を果たしたが、「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」の1回戦で、小林尊相手に餃子100個差をつけられて惨敗。かつての赤阪の栄光を知っている者には信じがたい光景であったが、何のことは無い、現在の実力差がそのまま現れただけの話であった。スプリントカテゴリでの10ポイント差が全てを物語っている。大食い力では、まだある程度の力を維持しているものの、そろそろ現役生活の幕引きを考えるべき時期に来ているのかもしれない。
 岸義行は、わんこそば15分の日本記録保持者でもあり、早食いに全く適性が無いわけではないが、それでもやはり、若い世代の勢いに押されっぱなしの1年となった。秋の「フードバトルクラブ」「大食い選手権」で共に決勝進出を果たしたように、健在はアピールしてはいるが、かつての勢いはもうない。


 …と、いうわけで、早食い系のフリーハンデをお送りしました。次回はいよいよ大食い系のフリーハンデです。どうぞ、お楽しみに。 (明日に続く) 

 


 

2月15日(金) 文化人類学
「2001年度・フードファイターフリーハンデ(1)〜早飲みの部」

 今日から3回の予定で、「2001年度・フードファイターフリーハンデ」をお送りします。
 「フリーハンデ」とは、もともと競馬で、競走馬の能力を客観的に数値化&順位付けするものです。最近では、更に客観化を厳密にした「クラフィシケーション」も盛んに行われるようになってきました。
 本来の「フリーハンデ」に使用される数値は、競走馬がレースで課せられる負担重量です。そして、「フリーハンデ」の対象になった競走馬全てを同時に走らせて、ゴール前で横一線になるように負担重量に差をつけたらどうなるか、という感じで数値化します。よって、数値(負担重量)が大きければ大きいほど能力も高い、という事になります。
 さらにこの数値は、本来同時に走る事の無い、世代の離れた競走馬の能力比較にも使用されるため、非常に有益なものになっています。例えば、1970年と2000年の最強馬の能力を比較すると、同数値なので互角……というように。

 で、今回の試みは、この「フリーハンデ」を、早食い・大食い選手の能力比較に適用しよう、というものです。以下は、今回の「フードファイターフリーハンデ(以下:FFFハンデ)」を設定するにあたっての規定になります。

◎数値は本家の「フリーハンデ」に倣って、競走馬の負担重量風のものを使用します。重量の単位は、最近ではポンド換算が主流ですが、ここでは旧来のキロ換算の数値を使用します。ただし、競馬と違って、キロという単位に意味は有りませんので、「〜ポイント」と呼ぶ事にします。数値は0.5ポイント刻みです。
 ポイント設定の大まかな目安としては、
 ・50ポイント……フードファイター(大食い選手)と、大食い自慢の一般人との境界線
 ・60ポイント……「フードバトルクラブ」「大食い選手権(オールスター戦)」決勝進出レヴェル
 ……と、します。ちなみに、常識外れのビッグパフォーマンスが無い限り、65ポイントを超える事は有りません。

 また、選手間のポイント差については、
 ・0.5ポイント差……ほとんど互角だが、僅かに優劣が生じている状態
 ・1ポイント差……優劣が生じているが、逆転可能な範囲
 ・2ポイント差以上……逆転がかなり困難な差

 ……と、解釈してください。

◎今回の「FFFハンデ」の対象となる競技会は、以下の通りです。
 ・「フードバトルクラブ1st」
 ・「フードバトルクラブ2nd」
 ・「フードバトルクラブ・キング・オブ・マスターズ」
 ・「大食い選手権・九州横断ニューフェイス決戦」
 ・「大食い選手権・スーパースター地上決戦」
 ・「大食いスーパースター史上最大のチャレンジマッチ」
 ・「打倒赤阪! 甘味大食い女王選手権」
 ・「早食い世界一決定戦(ネイサンズ・国際ホットドッグ早食い選手権
・日本代表予選)」
 ・ネイサンズ・国際ホットドッグ早食い選手権

 ・他、TV放映された競技会の中で、駒木ハヤトが特に重要と認めたもの

各選手のポイントは、「FFFハンデ」対象競技会における、ベストパフォーマンスを採用します。
 そのため、直接対決で敗れている選手の方が、「FFFハンデ」では高い数値を得ている場合もあります。その場合は、敗れた選手が他の競技会で、よりレヴェルの高いベストパフォーマンスを見せた、ということになります。

◎ハンデは以下に挙げる6つのカテゴリに分けて設定します。
 早飲み/スプリント(5分以内)/早食い(5〜15分)/早大食い(15〜30分)/大食い45分(30〜59分)/大食い60分(60分以上)

選手個人に与えられるポイントは、6つのカテゴリの中で最高値となったポイントを採用します。
 
これにより、早食い選手と大食い選手との間での、間接的な能力比較が可能になります。

◎他、細かい点については、その都度説明します。

 以上、「FFFハンデ」の規定を踏まえてもらった上で、今日は『早飲み』カテゴリのフリーハンデと解説を掲載します。解説文中は敬称略・及び文体変更を行います。


「2001年度・フードファイターフリーハンデ」
〜早飲みカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
61 山本 晃也
60.5 小林 尊
60 小国 敬史
59 高橋 信也
  59 白田 信幸
56.5 山形 統
55.5 立石 将弘
  55.5 新井 和響
  55.5 射手矢 侑大
10 55 田澤 康一
11 53.5 柿沼 敦夫
12 49 駿河 豊起

 ※主な競技結果※

FBCキングオブマスターズ
1stステージ第10試合

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
58(60) 小国 敬史
55.5 射手矢 侑大
FBCキングオブマスターズ
2ndステージ・コーヒー牛乳チャレンジ
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
60.5 小林 尊
FBCキングオブマスターズ
3rdステージ・ウーロン茶早飲みゾーン
ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値
選手氏名
61 山本 晃也
60(60.5) 小林 尊
60 小国 敬史
59 高橋 信也
59 白田 信幸

 早飲みなどの、いわゆる飲み比べ競技は、かなり以前から日本の食文化の中に根付いていた。学園祭などでは「コーラ一気飲み大会」などが頻繁に行われ、時には痛ましい事に死者まで出している。また、少し意味合いは違うが、酒の呑み比べなどは、それこそ酒の発明から現在に至る、数千年にも及ぶ歴史を持つはずである。

 それなのに、これまでの10年余に及ぶ大食い競技の歴史の中で、飲み比べ競技がクローズアップされることは稀であった。これは恐らく、「TVチャンピオン」が、長時間競技・大食い競技偏重で競技会を実施して来た事に、直接の原因があったと思われる。
 飲み比べ競技というものは、短時間なら早食いよりも人体への影響は少ないが、長時間になると、尿意を催してもトイレに行けない等の制約により、逆に固形物を食べるよりも体に良くないものである。よって、30分〜60分勝負が主流の「TVチャンピオン」では、実施しようと思っても出来なかった、というのが真相というところだろう。

 と、そこへ、主に早食い能力を競う「フードバトルクラブ」が産声を上げた。これは即ち、飲み比べ競技が市民権を得るための条件が整った事でもあった。
 だが、慣習とは恐ろしいもので、「フードバトルクラブ」でも、当初から純粋な早飲み競技が行われたわけではなかった。が、体重増量競技「ウエイトクラッシュ」において、短時間で体の負担を抑えて体重を増加するテクニックとして「液体を飲むこと」がクローズアップされるようになり、年末の“キング・オブ・マスターズ”で、ついに早飲みが1つの競技として採用されるに至った。

 2001年度の時点では、早飲みはまだ、あくまで補助的な役割に過ぎなかったが、今年春の「フードバトルクラブ」では、新人の応募条件として早飲みビデオ映像が必須条件となるなど、早飲み競技の地位は、ここにきて急上昇を見せている。これからの「フードバトルクラブ」では、早食いと早飲み両方をこなせるようにならなければ、頂点を極めるのは難しくなってくるだろう。

 それでは、ここからは選手個人に焦点を当てて解説していくことにする。 
 2001年は、多くの大物ルーキーが現れて、これまでの勢力図を一変させたが、山本晃也もまた、その大物ルーキーの1人である。
 彼の早食いでの戦歴は次回に譲るが、早飲みにおいてでも、彼はデビュー当初から、特筆すべきパフォーマンスを幾度となく見せつけて来た。
 “キング・オブ・マスターズ”では、1stステージから驚異的なパフォーマンスを見せていたが、圧巻だったのは3rdステージの烏龍茶1.5L一気飲みであった。類稀な吸引力でペットボトルを“吸い潰し”て、そのまま息継ぎも無しで強引に烏龍茶を体内に流し込み、2位の小林に2秒近い差をつけて“区間賞”を獲得した。早飲みに関するなら、間違いなく今、最も能力の高い男である事は間違いない。

 早食い世界王者・小林尊は、早飲みでもやはりチャンピオンクラスであった。彼の飲み方は独特で、ノドを完全に開けて、そこへ滝のように液体を流し込む飲み方をする。ここまで至るのに、さぞかし猛烈な訓練を要したとは思われるが、“流し込み”では“吸い込み”の山本には勝てないのは自明の理で、今後は新たなるテクニックの開発が急務となろう。

 早飲み時代の到来を告げるメッセンジャー役となったのが小国敬史であった。彼は早食いでも非凡な才能を持ってはいるが、現時点ではまだトップクラスには至ってはいない。こんな選手は、これまでなら出世がなかなか望めなかったところだが、早飲みの才能が活かせるようなレギュレーションになった今回、射手矢侑大相手にジャイアントキリングを達成し、一気に一流選手の仲間入りを果たした。今年、60ポイント以上を獲得した選手の中で、唯一、早飲みのポイントが個人のポイントに採用された選手である。これからも早飲みを主武器に、トーナメントを荒らしてゆく事だろう。

 高橋信也、白田信幸といった早食い・大食いのトップスターも、1.5Lの烏龍茶を一気飲みでき、早飲みでも高いポテンシャル持っていることが判明した。訓練次第で上位3人に食いついていける余地は充分だ。

 山形統、新井和響、射手矢侑大、立石将弘といったところは、早食い能力に比べて、早飲み能力が伸び悩んでいる選手たちである。小国や彼らの姿を見ていると、フードバトルの世界の奥深さを思い知らされてしまう。

 田澤康一、柿沼敦夫のハンデ値は高めに映るかもしれないが、ラーメン2杯と餃子35個を経ての烏龍茶一気飲みだけに、タイムが伸び悩んでも一般人レヴェルは凌駕していると判断した。
 駿河豊起の記録は、「フードバトルクラブ2nd」の『ハングオーバー』でのもの。また、“キングオブマスターズ”1stステージでは、河津勝、釘抜孝行もスポーツドリンク早飲みを経験しているが、資料不足のため対象外とした。


 …というわけで、今回は以上となります。
 次回の文化人類学は明後日。スプリントと早食いカテゴリのフリーハンデを掲載します。
 それでは、今日の講義を終わります。(続く

 


 

2月14日(木) 文化人類学
「『TVチャンピオン大食い選手権・春の新人戦』近畿予選TV観戦レポート」

 さて、今日は忌むべきバレンタインデーであります。
 個人的には、「男に刺されないための別れの告げ方講座」でもやろうかと思ったのですが、まぁ人前で出来る話では無いな、と思いまして、断念しました。
 あ、別に駒木が女性を刺した、というわけじゃありませんよ。自分で自分を刺したくなったりはしましたが。

 今日から3〜4回にわたって、文化人類学(大食い)の講義となります。(土曜日は競馬学概論を実施します)
 
春の大食い番組シーズンも近付いて来ました。観る立場の私たちも、この講義を通じて、徐々にテンションを高めていきたいと思います。

 まず今日は、「TVチャンピオン大食い選手権・春の新人戦」の近畿地区予選の模様をお送りします。これは、テレビ大阪のみで放映された番組・「なにコレ !?」内の企画である、『なにわ大食い選手権』TV観戦レポートとなります。
 今回から始まった地区予選シリーズ。一部の地方予選では、運営上かなりの不手際があったとも聞きますが、近畿地区予選では大型新人も現れ、素晴らしい大会になりました。後でじっくりレポートをご覧頂きます。

 そして明日からは、おそらく世界初の試みであろうと思われる「フードファイター・フリーハンデ」(2001年度版)をお送りします。
 詳しくは講義当日にお話しますが、競走馬の強さを客観的に表すため、能力値を負担重量で数値化する“フリーハンデ”を、人間の大食い・早食いでやってみようという試みです。つまり、大食い選手の2001年度のパフォーマンスを数値化し、順位付けするというわけです。
 競馬に詳しくない人は分かり難いと思いますが、それは受講してからのお楽しみという事で……

 それでは、今日の講義、「大食い選手権・春の新人戦」の近畿地区予選のTV観戦レポートです。例によって、レポート中は選手の敬称略、及び文体の変更を行います。


 ☆1回戦・ジャンボたこ焼き30分勝負

 ※ルール:5個1皿(=200g)のジャンボたこ焼きを、30分以内にどれだけ食べられるかを競う。参加者は書類審査通過の31名。2回戦に勝ち抜けるのは3名。

 従来の予選システムで言うところの、「にぎり寿し30分勝負・in桃太郎寿し」にあたる競技。いわば“予選の予選”か。
 スタートダッシュこそ各選手勇ましいが、やはりそこは玉石混交の予選段階。瞬く間に大きな差が生じてくる。
 飛び出したのは2人。山本卓弥舩橋聡子。この両者が頭1つ以上リードを奪う。前半15分で3kgを突破。新人ということを考えると、決して遅いペースではない。
 15分経過時点で3kg越えはその2人。以下、2kg台に10人がひしめき合い、3つ目の椅子を奪い合う格好。
 山本・舩橋の競り合いは20分過ぎまで続くが、徐々に山本が優位に立つ。
 残り5分。1位山本(25皿)、2位舩橋(22皿)で、3位グループは14〜15皿で数名がデッドヒートの争い。
 以後は大勢に変化無く、山本、舩橋の順でフィニッシュ。混戦の3位争いでは、楊木田圭介が最後の椅子に滑り込んだ。

1位通過 山本卓弥 30皿(6.0kg)
2位通過 舩橋聡子 23皿+3個(4.72kg)
3位通過 楊木田圭介 17皿(3.4kg)

 それでは、1回戦通過3名の簡単なパーソナルデータを。

 ◎山本卓弥…18歳、169cm56kg。どことなく射手矢侑大を思わせる風貌。典型的な大食い体型。
 紹介VTR中の大食いパフォーマンスでは、回転寿司30分73皿という高レヴェルの数字を叩き出した。ちなみに、昨年の「大食い選手権」予選での記録5傑は、白田85皿、高橋78皿、立石74皿、射手矢69皿、稲川63皿。

 ◎舩橋聡子…23歳、158cm40kg。風貌だけなら、中学生とも見紛うような小柄。こちらも典型的な大食い体型。
 紹介VTRでの大食いパフォーマンスは、15分でご飯モノを2.5kgというもの。現在のレヴェルでは特筆するほどでもなかろう。

 ◎楊木田圭介…19歳、183cm80kg。白田(193cm86kg)は例外として、大食い選手としては大柄な方だろう。
 大食いパフォーマンスでは、ドライカレーを30分で3.6kg。こちらも現在の大食い界では平凡な記録。

 予選での順位が、そのまま本戦に反映されるケースの多い「大食い選手権」、しかも紹介VTR中のパフォーマンスから、山本の優位は揺るがないところだろう。
 残る他の2人だが、舩橋は体型からも、ある程度の大食い適性は期待できそうだ。しかし楊木田は、記録面も含めて“素人大食い自慢”の延長上にあるように思われた。何はともあれ、2回戦での戦い振りに注目だ。

 

 ☆2回戦・ぜんざい30分勝負

 ※ルール:1杯50gの白玉入りぜんざいを、30分でどれだけ食べられるかを競う。最下位1名が脱落。

 1杯の容量が少ないため、3名ともハイペースの序盤。20杯(=1kg)到達までは、ほぼ横一線。
 5分経過。1位舩橋(29杯)、2位山本(28杯)、3位楊木田(25杯)。
 10分経過。1位舩橋(41杯)、2位山本(40杯)、3位楊木田(35杯)。
 ここから山本が突如、ペースアップ。舩橋を逆転し、グングン差を広げてゆく。一方、楊木田は40杯を境にスローダウン。早くも限界か。
 15分経過。1位山本(69杯)、2位舩橋(58杯)、3位楊木田(41杯)。
 楊木田の様子を見て、大勢判明を悟った舩橋は、65杯から意図的なペースダウン。数時間後の決勝に備える作戦へ。しかし、胃に余裕のある山本はペースを落とさない。
 25分経過。1位山本(89杯)、2位舩橋(68杯)、3位楊木田(43杯)。
 ラストは舩橋も再び箸を取って記録を伸ばすが、それ以上のペースで山本が飛ばし、差を広げてフィニッシュ。

1位通過 山本卓弥 104杯(5.2kg)
2位通過 舩橋聡子 83杯(4.15kg)
リタイヤ 楊木田圭介 48杯(2.4kg)

 15分〜25分それよりも、25分〜30分の食べるペースが早いという大物振りを見せ付けて、山本が堂々のトップ通過。生理学上、大食いの難しい甘味でこの記録は立派。しかも本人曰く、随分と胃を余しての結果というから恐れ入る。恐らく、小林、白田、射手矢らのように、褐色脂肪細胞が極めて発達していて、満腹中枢と直結する血糖値が上がらない“特異体質”なのだろう。
 2位の舩橋も余裕残しで4kgオーバーなのだから、こちらの記録も高い水準だ。
 参考資料として、今年1月に放送された「TVチャンピオン」特番で行われた『甘味大食い女王・お正月スペシャル決戦』の『おしるこ60分無制限勝負』での記録を併記しておこう。赤阪7.2kg、岩田5.6kg、別府5.4kg、浜島4.4kg、山口4.0kgである。
 念のため言っておくが、今回は30分、1月の記録は60分の記録である。単純に倍計算出来るものではないが、舩橋は、現時点でも女性大食いランキング2位の岩田美雪と、ほぼ同程度の実力を持っていると判断できよう。
 3位敗退となった楊木田。記録が伸び悩んだのは、大量の甘味によって血糖値が上がってしまったからだろう。つまり、やはり彼は、胃袋の大きい普通の人だった、という事か。10年前のレヴェルなら本戦出場も可能だっただろうが、現在のレヴェルでは到底通用しない。

 

 ☆予選決勝・カレーうどん60分勝負

 ルール:カレーうどん(重量未発表だが、かなりのビッグサイズ)を60分以内にどれだけ食べられるかを競う。ただし、スープは残しても良いという「大食い選手権」ルールが適用される。

 粘度の高いカレースープが麺にまとわりついて冷めにくいため、自然と勝負は熱さとの戦いとなる。舩橋は何とか克服できたが、山本は熱さに苦しみ、水を多用する作戦を実行。胃には負担がかかるが、熱さはこれでクリア。1杯目こそ遅れをとったものの、2杯目では舩橋と並ぶ。
 序盤戦は、ほぼ横一線のまま推移。
 15分経過。1位山本、2位舩橋。完食数は共に4杯だが、わずかに山本が先行。
 ここから徐々に差が開きだす。5杯目完食時点では、まだ差は小さかったが、7杯完食タイムでは、先行する山本と、追う舩橋との間に分単位の差が着いた。
 驚いた事に、ここから山本のペースが上がりだす。一方の舩橋はペースが落ち、この時点で大勢は決した。
 30分経過。1位山本(8杯)、2位舩橋(7杯)。差は僅かだが、食べるペースは明らかに違っている。
 45分経過。1位山本(11杯)、2位舩橋(9杯)。ここで舩橋、ついに箸が止まった。しかし、山本はお構いなし。
 55分経過。1位山本(13杯)、2位舩橋(9杯)。
 さらに信じられない事に、山本が55分を過ぎてからペースが上がりだす。これにはゲスト解説の赤阪尊子も呆然。脅威の新人がここに登場した。その名は山本卓弥。

優勝 山本卓弥 15杯完食
準優勝 舩橋聡子 10杯完食

 山本が、荒削りながら抜群の才覚を見せつけ、圧勝で近畿地区王者に輝いた。最後の最後にペースが上がった事でも分かるように、これはまだ、胃を余しての記録。2回戦からの連戦である事、さらに、ドンブリの大きさや(スープを残しづらい)カレーうどんという食材を考慮すると、これは「大食い選手権」本戦でも決勝クラスの記録と考えて良いだろう。
 これがデビュー間もない新人というのだから恐れ入る。これから訓練でスピードを身に着けさえすれば、少なくとも射手矢クラス、下手をすれば小林、白田と肩を並べるところまで行くかもしれない。もちろん、現時点でも新人戦なら優勝圏内である。
 準優勝に終わった舩橋。さすがに相手が悪かったとしか言いようが無い。ただし、先述したように、女性大食い選手としては岩田美雪クラスの逸材である事は確か。低く見積もっても、「甘味大食い女王選手権」なら、楽々本戦決勝まで進出できる実力の持ち主であろう。これからの活躍に期待大である。


 ……と、いうわけで、いかがでしたでしょうか。
 恐らく、決勝に残った2人が本戦出場になると思われます。近畿地区の方はもちろん、そうでない方も、是非この両者を応援して頂きたいと思います。


 ★追記(2/15)★

 レポートを脱稿してから、大食いワンダーランド」
のBBSでこのレポートについて書き込んだところ、1回戦に出場したと自称する方から、とんでもない証言を得ました。
 放送では、1回戦で成績上位3名が2回戦に進出したように演出されていましたが、実情は「上位7名から
テレビ的に面白い人が3名、2回戦に選抜される」という、とんでもない話だったそうです。1位の山本選手、2位の舩橋選手は順位通りでしたが、楊木田選手は3位から大きく離れた4位タイの成績だったとの事。
 この証言が100%事実という証拠は有りませんが、証言者が自分のゼッケン番号を明かしていることや、証言の具体性から、かなり信憑性の高いものだと思っております。
 TV大食い番組界の良心と自他共に認めていた「TVチャンピオン」での成績不正疑惑。正直言ってショックでありました。
 唯一の救いは、優勝した
山本卓弥選手が圧勝していた事で、彼の実力や優勝に疑問符を付けなくて済みました。
 まさか「TVチャンピオン」本戦で大胆な不正を行う事は無いでしょうが、注意深く放送内容をチェックしておきたいと思います。

 ※追記の追記……よく考えたら、予選3位選手が出場を辞退したとも考えられます(収録日が別なので)。この件はもっと冷静に考える必要がありそうです。


   それでは、今日はこれまで。また明日の講義をお楽しみに。(明日に続く) 

 


 

1月10日(木)文化人類学
「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』
TV観戦詳細レポート(4)

 講義が遅れてしまい申し訳ないです。高校教員の仕事が詰まっていて、モニターの前で力尽きてしまいました。
 そして、お詫びが1つ。この講義で第2回の中で、古賀さくらさんの名前が間違っておりました。訂正してお詫びいたします。申し訳ありませんでした。
 それでは、この講義の最終回。「ザ・キングオブマスター」の準決勝と決勝のレポートです。
 (レポート文中は敬称略、文体変更)


◎準決勝◎

 《試合形式》
 第1回から「フードバトルクラブ」の準決勝で採用されている、「シュートアウト」。1対1・2本先取の早食い対決で、対戦カードは抽選で決定される。
 食材はカツ丼、ステーキ、寿司、シューマイ、稲庭うどん、プリンの6種類。対戦する両者で1回戦ごとに抽選を行い、当選した選手が食材の決定権を持つ。その後、ルーレット抽選で試合時間(3分または10分)を決定する。

 第1回の小林×新井戦、第2回の小林×射手矢戦、岸×山本戦など、見応えのある試合が続出する、「フードバトルクラブ」の醍醐味を見せ付けてくれる試合形式。何かと批判の声が上がる「フードバトルクラブ」だが、素直に観ていれば、素直に楽しめる企画だと思うのだが……?
 今回は対戦カードを決める抽選会が初めて公開された。しかし、その中で肝心の部分であるクジの開封シーンが見えなかったために、いらぬ疑惑を生み出してしまった。たとえ対戦カードの決定が“演出”だったところで、どうということは無いのだが、ただでさえ批判の対象にされるこの番組、制作サイドの方には充分な配慮をお願いしたい。この手の疑惑で一番損をするのは、体を張って闘っている選手なのだから。
 それでは、1試合ごとに詳細レポートをお送りする。

新井和響

VS

山本晃也

 新旧早食い系選手頂上対決、そして「いきなり! 黄金伝説」の再戦となった。その時は一方の新井が体調不良、もう一方の山本も実戦慣れしていない新人の頃というわけで、両者の勝負付けには程遠い戦いだったと言わざるを得ない。しかし今回は両者体調ほぼ万全の状態で臨む最高の舞台。今大会、いや早食い・大食い界屈指の好カードが実現した。
 この「シュートアウト」での成績は双方0勝1敗。新井は第1回で小林相手に0−2、山本は第2回で岸義行(今回不出場)を相手に1−2というスコアを残している。

59 1回戦・シューマイ(10分) 65

 開始早々、両者が猛烈な主導権争い。両者とも胃の容量に限界があるタイプだけに、早めにセーフティリードを奪って胃の温存を図りたいところ。
 結果、主導権を奪ったのは山本。序盤戦で4つの差をつけて、相手の出方を窺う。新井はしばらく抵抗していたが、残り2分になって敗勢を自覚し箸を止めた。“早食い瞬発力”で勝る山本の完勝となった。

 ところで、この1回戦の新井の敗因分析だが、彼の食べるスタイルに問題があるのではないかと思われる。
 彼はあまり口が大きくないために、大きな食材になると小刻みに咀嚼して胃に流さなくてはならない。かつて“ラビット食い”と呼ばれた由縁である。
 しかし、小林や山本といった、食材をダイナミックに飲み込むタイプの早食い選手が登場して来ると、この“ラビット食い”は時間的にロスが出始めている。このあたりが、今大会の3回戦で6位に終わった要因なのだろう。
 体格(?)的なハンデゆえの“ラビット食い”だけに、矯正は困難を極めるだろうが、早食い王座奪回には、脱“ラビット”を達成するしかない。

50 2回戦・寿司(3分) 56

 “ヤラセ”疑惑も含めて論議をかもしたこの食材選択だが、これはこれで全く間違ってはいない。
 山本は確かに「寿司が苦手」と公言しているが、決して食べられないわけでもスピードが遅いわけでもない。第2回の「フードバトルクラブ」予選では、山本の方が良いタイムを叩き出しているし、同大会の準決勝では、実際に寿司対決を経験している。勿論、山本のスポーツマンシップゆえの食材選択ではあろうが、決して勝負を捨てた選択ではない。いわんや、“ヤラセ”疑惑などもってのほかである。

 試合は両者伯仲の好勝負となった。
 短期決戦、駆け引き無し、胸突き八丁のせめぎあいが続く。始めの1分はわずかに新井優勢で、山本も必死に追いすがるが、2カンの差が縮まりそうで縮まらない。
 中盤戦も2カン差がキープされたまま、壮絶な競り合いが続く。だが、残り1分を切ったところで異変が起こる。
 この「シュートアウト」の寿司対決、通常の寿司早食い勝負とは違い、軍艦巻きを含むネタの違う寿司が1人前ずつ配られる試合形式であり、食べるリズムを一定にする事が非常に難しい。しかも軍艦の海苔が寿司の飲み込みを阻害するのだ。そして、それが勝敗を分けた。
 突如、新井が口一杯に寿司を頬張ったまま、苦しみだした。むせこんで口の内容物を飲み込むことが出来なくなってしまったのだ。決して詳細な敗因を語らぬ新井ゆえに全容は知りようが無いが、恐らく海苔がノドに引っ掛かってしまったのだろう。
 結局、新井は態勢を整える事が出来ず、無念のタイムアップ。念願の決勝進出は成らなかった。反対に、山本は前回大会の敗戦を乗り越えて、悲願の決勝進出だ。

 

白田信幸

VS

山形統

 奇しくも1回戦の再戦となった。1回戦では白田が中盤以降盛り返して山形を押し切っているが、「やりにくい相手」という印象は白田の脳裏に刻み込まれているだろう。しかし、白田の地力上位は揺るぎの無いところ。落ち着いていけば、自ずと勝利は近付いてくる立場にあった。
 一方の山形はリベンジのチャンスであると同時に、最も勝利の可能性のある対戦相手を引き当ていた。いくら早食い系トップクラスの実力を持つ山形とはいえ、他の早食い系選手は世界レヴェルである。まだスタートダッシュに難のある白田相手なら、正攻法での勝利はともかく、“蹴たぐり”をかます位なら可能性はあったのだが……

 ちなみに過去の「シュートアウト」成績だが、白田は1戦1勝(第2回で加藤昌宏相手に2−0)で、山形は初めての「シュートアウト」体験となる。

25 1回戦・プリン(10分) 21

 試合時間は10分、しかし勝負は30秒で事実上決した。甘味系を得意とする白田が、唯一の弱点であるスタートダッシュで山形に勝ったのだ。余裕を持って様子見の出来る3〜4個の差をつけて、牽制に持ち込んだ。
 こうなれば、あとは白田のマイペース。山形が仕掛ければ、山形が食べた同数を口に運び、リードを保つ。大食い勝負に持ち込むまでも無く、白田が1本目を制した。

10 2回戦・ステーキ(10分)

 またしても試合時間は10分。2回戦が10分に決まった時点で、もはや勝負は決してしまったと言える。
 序盤戦、今度は山形が主導権を握った。ステーキ半枚程度のリードを確保して、快調に飛ばす。しかし、時間はまだまだ残っていた。
 3分経過の時点で、まだ辛うじて山形はリードを保っていた。この時の白田が、本当のトップスピードとは思えないが、それでも抽選次第では山形にも勝ち目があったことになる。
 形勢逆転は4分過ぎ。白田が枚数で1度並ぶと、その後はあっけなかった。もがくように抵抗する山形を余裕綽々でいなした白田、堂々の決勝進出。山形はトップどころとの地力の差が出た格好。乗り越えるべき壁は厚く、険しく、そして高い。

 

高橋信也

VS

小林尊
1

 「シュートアウト」では初対決ながら、TVのメジャー大会では3度目の対戦となる。(過去2戦は小林がいずれも勝利)
 共に大食いをスポーツとして認識し、自らをアスリートと自覚するプロ志向の高い選手。それだけあって、両者とも勝負に対する執念とそれを支える自己分析は極めて高いレヴェルにあり、この試合も両者の能力と戦術の限りを尽くした凄絶な戦いとなった。
 シュートアウトでの実績は、小林は2戦2勝(第1回は新井に2−0、第2回は射手矢に2−0)で、高橋が1戦1勝(第1回に赤阪と対戦し、1引分けの後、赤阪のドクターストップで勝利)となっている。

1回戦・ステーキ(3分)

 小林が事実上試合放棄し、高橋が労せずして先勝。
 これは、小林が「ステーキ」で「3分」という条件が高橋絶対有利で、それ以外の条件ならほぼ2連勝できると判断、胃を温存したためである。
 よく似たパターンとして、第2回の白田×加藤戦にもあったが、あの時は地力で劣る加藤が、白田の胃へ負担をかけるために採った苦肉の策であり、今回の“戦略的撤退”とは似て非なるものと言える。
 しかし、このような過度の牽制による“試合放棄”は、観ていて気分の良いものではないのも確か。レギュレーションの調整により、ある程度は勝負することを義務付けるべきではないかとも思う。

73 2回戦・寿司(3分) 79

 両者による寿司対決は「TVチャンピオン」の『ホットドッグ早食い世界選手権』日本予選の2回戦以来。その時は小林が脅威の“寿司早飲み”を初披露し、勝利を収めている。
 双方手慣れた食材だけあって、快調なペースでスタートダッシュを決める。互角。高橋にしても、3分勝負ならば少しは勝機がある。そしてそれを掴めばジャイアントキリングだ。小林もそれをさせじとテンションを高める。双方裂帛の気迫はペースを限りなく高い所まで押し上げた。第1試合(新井×山本戦)のスコアと見比べて欲しい。2カン食いが困難な条件でこの数字は驚異的である。
 1分を過ぎた頃から僅差ながら小林がリードし、2分過ぎでは2カン差。あとは徐々に差が開いてしまったが、高橋も最後まで勝負を諦めなかったのは立派だった。

57 3回戦・シューマイ(10分) 70

 両者の現時点での力量差が完全に現れてしまったのが、この3回戦だった。
 ここまで来れば、もう小細工は無しの真っ向勝負。ただ、惜しむらくは高橋絶対不利の10分勝負だったことか。しかし、それでも1、2回戦とクジ運に恵まれていたのだから、それまでで勝負をつけられなかった以上、こういう事はあって当たり前。
 序盤から僅かに小林がリードするが、これはもう、この日最後の勝負。牽制するまでもなく、小林はトップスピードを維持して高橋を引き離す。中盤からは余裕が出たのか、新井式の“ラビット食い”を見せて、体に負担をかけない形にシフトチェンジ。それでも差はもう詰まらなかった。
 終盤、既に大勢決したところから小林は敢えて追い撃ちをかけた。完膚なきまでに高橋を叩きのめし、格の差を高橋の頭に植え付ける非情なる戦法。究極のレヴェルまで勝負に徹した小林、王座奪回に向けて最高の形で決勝に臨む。
 敗れた高橋、今回も地力の差を跳ね返す事は出来なかった。果たして今後、彼はどのような道を歩んでゆくのか。長い目で追いかけてみたいものだ。

◎決勝◎

 《試合形式》
 
準決勝から約10日のインターバルを置き、胃の状態を完全リセットしての最終決戦。
 競技はカレー10kg完食勝負。1皿500gのカレーを、最も早く20皿完食した者が優勝。形式上は早食いだが、10kgという量は人間の限界に迫る数字であり、これは事実上の超大食い戦。これまでの大食い競技の中でも類を見ない特殊な形式と言えよう。 

 決勝を前にしての、3選手の心境はいかばかりか。
 小林にしてみれば、第2回決勝で試合開始早々主導権を手放してしまった反省から、全力でスタートを決めに行きたいところ。10kgの分量は何とかこなせる範囲だけに、とにかくペースを握りたい。
 白田は固形物を10kg胃に納めた経験があるだけに、完食に関しては何の不安も無い。怖いのは小林の逃げ切りだけで、前回のように主導権は奪えないにしても、せめて1杯差程度のビハインドで逆転のチャンスを窺いたいところだろう。
 胃容量が10kgに満たない山本にとって、このレギュレーションはかなり厳しい条件。とにかく持ち味の早食い力で行ける所まで行くしかないと考えたのではないか。特攻精神で頂点を目指す。


 試合開始。各選手落ち着く間もなく、最初からトップスピード。
 1皿目の完食第1号は山本(37秒)。以下数秒ずつ遅れて小林、さらに白田。それでも3者の差は10秒程度に過ぎない。
 2皿目も山本がトップで完食。だが、リードは全く広がらない。依然として小林、白田は10秒以内の差でマークしている。
 3皿目、早くも山本がペースダウンし、1皿70秒前後に。残りの2人は50秒前後で食べているので逆に10秒の差がついた。
 4皿目、今度は小林のペースが1皿70秒前後に。だが、白田は依然として50秒/皿のペースを保つ。ここで勇躍、白田がトップに立った。白田の望んでいた序盤での主導権確保が今回も実現した形に。
 これ以降、白田は1皿50秒、小林と山本は1皿70秒の“ラップタイム”が続く。1皿毎に20秒の差が開き、3皿につき1皿の差が開く。8分経過時点で、ついに3皿にまで差が広がった。その差1.5kg。この時点で早くも大勢は決してしまった。なんと恐るべき白田の底力か。
 小林、山本共に、11〜12皿完食の13分過ぎからさらにペースダウン。もっとも、これは落ちるべくして落ちたペースであって、この時点でもペースの一切落ちない白田の方が凄すぎるのである。この時点で、白田は悠々と17皿目の半分を平らげていた。その差は3kg前後。決勝クラスにおいて、この短時間でついた差としては史上最大のものではないか。
 小林が懸命に15皿目を口に運び、山本が14皿目でもがき苦しんでいた18分56秒、白田は規定の20皿を完食した。1皿平均のタイムは56.8秒。恐らく空前絶後となる大記録で、白田はメジャー大会3度目の優勝を果たした。

 白田はこの優勝で、誰もが認める完全無欠の王者となったと言えよう。1年以上に及んだ小林尊時代の終焉、そして白田時代の到来である。恵まれた体格と口の大きさ、そして磨きのかかった早食いと大食いの能力。他の選手たちがどれだけ努力しようと辿り着けない高みに彼はいる。
 彼の最大の特徴は、スタートダッシュがそれほど早くない代わりに、そのペースがいつまで経っても落ちないところにある。言ってみれば、マラソンランナーのような大食い選手、それが白田信幸だ。早食いでも強く、大食いならばなお強い。この偉大なる超人を破る人間は果たして現れるのか? それが大食い界の今後を占うキーポイントとなるだろう。
 小林はこの敗戦をどう受け止めるか。しかし、準決勝までの戦い振りは、まさにチャンピオンのそれであった。少なくとも早食いの領域では白田に見劣りするようなパフォーマンスは見せていなかった。決勝で残酷なまでに差が開いたのはトップスピードの持続力と、絶対的な胃の容量の差だった。これを如何にして克服するかが、これからの彼に残された大きな大きな課題である。
 山本は絶対的な胃の容量に限界がある以上、こういった結果になるのは仕方の無いところ。徹底した胃容量の拡大がこれから彼が活躍するための必須条件だ。

 


 以上が、今回のレポートでした。
 それにしても「フードバトルクラブ」に対する、大食いファンの敵意にも似た悪感情には驚くべきものがあります。そしてもう一方の「TVチャンピオン」には、「TV東京はお金を使わなくて謙虚でいい」や「大食い選手たちを大事に扱っている」などの意見を持って支持する声が高いようです。
 別にTV東京はお金を使わないのではなくて「使えない」だけで、TBSもゴールデンタイムのスペシャル番組では平均程度の制作費しかかけていません。それにTV東京だって大食い選手に対する酷使は、時折目を覆う場面があります(例えば、今回の「ラーメン駅伝」は殺人行為にも似た企画でした)。それなのに、両番組に対する声にこれだけの差が有るのは、TBSがイメージ戦略に失敗しているとしか言いようがありません。
 視聴率戦争ではTBSが勝利し、今しばらくは「フードバトルクラブ」も安泰でしょうが、最後の最後で番組を支えてくれるはずの大食いファンにソッポを向かれていては、せっかくのビッグ・プロジェクトも形無しです。このサイトを関係者が読んで頂いているとは確信できませんが、もしも受講者の中に番組関係者の方がいらっしゃったら、今一度、謙虚にイメージ戦略を再考するようお願いいたします。この「フードバトルクラブ」無くしては、大食い界の更なる興隆もありえないと思いますので……。

 おっと、最後に長々と話しすぎました。
 この大食い特集──文化人類学講義は、また春の大食い特番シーズンに再び実施いたします。大食いファンの方も、そうでない方も、また受講して頂くようにお願い申し上げて、この講義を終わります。(この項終わり)

 


 

1月8日(火)文化人類学
「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』
TV観戦詳細レポート(3)

 さて、このシリーズも早、第3回。本来なら今日で最終回の予定でしたが、思うように講義が進行せず、1回延長となりました。今日は敗者復活戦と3回戦の模様をレポートします。
 (レポート文中は敬称略、文体変更)


◎敗者復活戦◎

 《試合形式》
 1、2回戦の敗者16名が対象。選手は早食い(天むす20個)ブロックと大食い(ラーメン3杯分の大盛)ブロックに分かれ、各ブロック完食タイム上位1名、計2名が3回戦に進出する。
 ブロック分けは選手が希望のブロックを秘密投票で選択。どの選手がどのブロックに来るかは試合開始まで知らされないまま、対戦に臨むことになる。
 なお、ここより大会2日目(1〜2回戦の翌日)となる。

 敗者復活戦は16名が参加予定だったが、6名が棄権し、出場者は10名となった。それでは、各ブロックの模様をレポートする。
 余談だが、この敗者復活戦を「1回戦敗退の射手矢を救済するためのインチキプラン」という、訳の分からない批判を加える者がいるようだが、射手矢を救済するためなら、そんなまどろっこしい事をせずに1回戦の組み合わせを細工すればいい話で、的外れもいい所だ。批判を加えるのは結構だが、無責任な言動は慎んでもらいたいものである。

早食いブロック“fast”(天むす20個)

順位 選手氏名 タイム(完食数)
1位 山形 統 50秒39
2位 加藤 昌宏 (11個)
3位 駿河 豊起 (10個)
4位 平田 秀幸 (9個)
5位 キングコング・バンディ (6個)
6位 ハン・チンユ (5個)

 早食い力で大きく勝る山形の順当勝ち。序盤こそ各選手横一線だったが、口に入れた物をのどへ流し込むスピードでは山形が一枚も二枚も上手だった。
 加藤は赤坂ら大食い系選手との競合を恐れてこちらへ回ったか。しかし、大食いブロックに回っていた方がチャンスがあったのかもしれない。げに勝負は水物だ。
 3位以下の選手は、残念ながら地力不足。

 

大食いブロック“much”(大盛ラーメン1.5kg)

順位 選手氏名 タイム
1位 柿沼 敦夫 2分30秒29
2位 射手矢 侑大
3位 河津 勝
4位 赤阪 尊子

 「“大食い”にしては量が少ない」との批判があったが、この直後から3回戦と準決勝があるのだから仕方あるまい。前日に行ったら行ったで、今度は2回戦失格組が大きく不利なわけで、これが最もベターな策だったことは間違いの無いところ。

 スピードでは圧倒的に上位のはずの射手矢が、ここでも酷く苦戦する。河津、柿沼といった格下相手を引き離せず、予断の許さない戦いが続く。赤阪は、この設定(1.5kg完食のタイムレース)では得意の長期戦に持ち込めず、序盤から遅れ始める。やはり赤阪は「TVチャンピオン」の試合形式が向いている。
 中盤以降も射手矢は差を広げる事が出来ない。それでも辛うじてトップは確保していたが、苦手の飲料系のスープ、そして熱さにも苦しみ、土壇場でペースダウンしてしまう。河津は何とか振り切ったものの、それまで具とスープを均等に食べていた柿沼が最後の最後で大逆転。1回戦に続いての大波乱となった。
 タイムは2分30秒台で、1杯分あたり50秒という極めて平凡なタイム。いかに射手矢のペースが狂わされていたか分かろうというものだ。引退問題に揺れる射手矢、悔やんでも悔やみきれない惨敗となった。

 ……以上により、山形統柿沼敦夫の2名が3回戦進出を果たした。

◎3回戦◎

 《試合形式》
 4種類の食材(ラーメン2杯、餃子35個、ペットボトル入りウーロン茶1.5kg、寿司40個、計約4kg)の早食い合計タイムを競う、個人メドレー方式。出場選手10名中、合計タイム上位の6名が準決勝に進出する。

 放送では全選手の詳細なタイムが分からなかったが、山本晃也選手のマネージャーである、ハンドルネーム・iGUCCiさんが、現場で観戦した際に各選手のタイムを記録しており、ネット上でも公開されている。今回はiGUCCiさんの許可を得て、このタイム一覧表を引用させてもらうことする。(下の「タイム表」と書かれた部分をクリックすると、新しいウインドウからタイム表が表示される)

 タイム表

 以下は各選手の競技状況。タイム表と照らし合わせながらご覧頂きたい。

 小林が4種目中、餃子と寿司でダントツの“区間賞”を獲り、2位の白田に40秒の差をつけて楽々と1位通過。さすがは早食い世界一、といったところで、他選手との地力の差を嫌というほど見せつけた。
 特に印象深かったのは餃子。1回ペナルティ(食材を床に落下させると再挑戦となる罰則)を被った後のリトライで、水を一切飲まず餃子35個を掻きこむように口に雪崩れ込ませた。並外れた嚥下力無しには出来ない芸当で、このあたりは既にアスリートの域に達している。
 2位には、早食いスペシャリストの最右翼・山本がランクイン。10人のトップを切って競技に臨み、後の9人に目標にされる形でこの結果は立派。ウーロン茶早飲みでは、小林を抑えて“区間賞”を獲得。ドリンク系での強さを遺憾なく発揮した。
 3位通過は白田。早食いのスペシャリストたちを相手に回して、各種目平均以上のタイムを叩き出した。以前の白田には、食が遅く(あくまでもトップクラスと比較しての話だが)胃容量を余してしまう印象があったのだが、この半年余りで苦手意識はすっかり解消されたようだ。大食い選手中随一の胃容量と消化能力を誇る“偉大なる巨人”が、早食いという武器も手に入れた。まさに鬼に金棒、白田に早食い。最強のライバル・小林への迎撃体制は整った。
 4位には大健闘の山形。敗者復活戦をこなした不利を乗り越えての好成績は賞賛されていい。
 苦手意識をもっていたラーメンで、山形本人もまさかの“区間賞”獲得。これは大きな自信になっただろう。ドリンク系の凌ぎ方を覚えさえすれば、早食いのトップも争える有力選手となるはずだ。
 5位は高橋。医者の反対を圧して、骨折した右手を使用し続けた。パッと見にはいつもと変わらない食べっぷりに見えたが、各種目でのタイムが、トップどころに比べてほぼ均等に遅れているところを見ると、影響が無かったわけではなさそうだ。
 次点には大きく差を開けたものの、合格ラインギリギリの6位だったのは、なんと新井。得意の寿司では山本を抑えて3位になったものの、ラーメンとウーロン茶で大きくタイムをロスし、この結果となった。これまで意識すらしなかったドリンク系での脆さが露呈された形で、これを次回の「フードバトルクラブ」までに如何に克服するかが、彼の現役生活にも関わる問題となってくるだろう。
 惜しくも次点・7位に終わったのが小国。選手キャリアの浅さがモロに出てしまった格好だ。射手矢を葬り去ったドリンク早飲みでは3位にランクインしたが、ラーメンと寿司では大きくタイムを落とした。まだこれからの選手だし、精進して頑張ってもらいたい。
 意外だったのが立石。序盤のラーメンで失敗したリズムの狂いが最後まで響いたか? 本来なら3分台は望める選手のはずで、やや残念な結果となった。
 田澤、柿沼の両選手は、ここに入ってしまっては見劣りがするのも仕方が無い。人間の領域と神の領域の境界線に立たされた人たち、ということなのだろうか。


  今日はここまでです。明日は水曜日で演習(ゼミ)ですので、このレポートは1日休み。明後日に準決勝と決勝のレポートを掲載して、この「文化人類学」講座を締めたいと思います。それでは講義を終わります。(この項続く

 


 

1月7日(月)文化人類学
「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』
TV観戦詳細レポート(2)

 本来、日曜に講義の予定でしたが、1日遅れとなってしまいました、「フードバトルクラブ・ザ・キングオブマスターズ」のTVレポート第2回となります。
 今日は2回戦の模様を、各選手の略歴を交えながら紹介したいと思います。
 (レポート文中は敬称略・文体も変えます)


◎2回戦◎

 《試合形式》
 オークション形式の個人トライアル形式競技・「ハングオーバー」。
 制限時間とメニュー(食材・単位数あたりの重量)がはじめに発表され、選手はオークション形式で、勝ち抜けるために完食しなければならない数量を競り上げていく。“落札”した数量を制限時間内に完食すれば3回戦進出。失敗した場合は即失格となる。
 12名中8名が3回戦に進出し、4名が失格。3回戦進出者が8名に達した時点で未挑戦者は失格となるが、失格者が4名に達した時点で、未挑戦者は“不戦勝”扱いとなる。

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
立石将弘 冷やし中華(500g)8杯・10分

選手略歴および挑戦状況

 立石の本格的な大食いデビューは、2001年春の第1回「フードバトルクラブ」。小林尊、高橋信也と共に決勝に進出するも3位に終わっている。
 以後、「TVチャンピオン」2001年新人戦では準決勝敗退の4位、同じく「TVチャンピオン」の『ホットドッグ早食い世界選手権』日本予選でも3位(決勝進出)と、第一線で活躍するものの、優勝争いとなると地力不足が露呈する格好になっている。“最強のバイプレイヤー”的な存在か。
 今回は過去2回の好成績により出場枠を得た。1回戦では関沢晴夫なる無名選手が相手で、難なく2回戦進出を果たしている。

 このチャレンジでは、白田と競り合って落札した立石。しかし、10分で8杯はかなり難儀な数量。立石本人も「7杯までにしたかったが、出来るだけ最初の方に(3回戦へ)抜けておきたかった」と本音をポロリ。
 1分15秒で1杯というボーダーラインゆえ、最初からトップスピードで飛ばし、粘りこみを図る作戦の立石。1杯目は38秒、2杯目以降もボーダーラインを上回るスピードで飛ばす。
 しかし、重量がある上に温度が低い冷やし中華は、立石を大いに苦しめる。4杯目を61秒、5杯目は1分37秒と、大きくペースダウン。6杯目では体が痙攣を始め、極限状態の様相を呈した。
 一瞬『失敗』の2文字が脳裏を横切るが、ここからが立石の本領だった。7杯目は1分30秒とペースアップ。8杯目も前半で築いた“貯金”をフルに生かし、最後は体の震えと戦いながらも余裕残しでフィニッシュ。堂々たるパフォーマンスで3回戦進出を果たした。

結果:9分38秒完食→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
小林尊 コーヒー牛乳(180g)25本・5分

選手略歴および挑戦状況

 略歴・1回戦の勝ち上がり過程は1回戦レポートを参照。

 総量4.5リットル、ボーダーライン1本あたり12秒と、早飲みと胃袋の容量に相当の能力がなければ苦しい分量。しかし本人は余裕綽々といったところで、さすがはプリンス小林である。
 その余裕振りを裏付けるように、スタート直後から1本5〜6秒の猛ペースで、瞬く間に空瓶の数を増やしてゆく。これには口やかましい実況席サイドも、驚きを通り越して呆然たる状況。
 最後までペースは衰えることなく、口元には余裕の微笑さえ浮かべていた小林。きっとトップスピードを出すまでも無いところだったのだろう。王座奪回へ手応え十分、圧巻のパフォーマンスだった。

結果:2分15秒完飲→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
白田信幸 パンケーキ(55g)34枚・20分

選手略歴および挑戦状況

 略歴・1回戦の勝ち上がり過程は1回戦レポートを参照。

 総量1870g、1枚あたり約35秒のボーダーラインは、白田にとっては余りにも楽な条件となった。各選手の間に、“最後の1枠”対策として、実力者の白田を早く抜けさせておく意向が働いたためと思われる。後の方になればなるほど“落札数量”は高騰するため、その時に数量を競り上げる実力者がいては、残りの選手が不利となるからだ。

 よって、このチャレンジは、白田が理想とする「たくさんの量を美味しく食べる」姿そのものになり、その様子は早食いというよりも、むしろ優雅な朝食に似た風景となった。
 終始落ち着いたペースで、しかもナイフとフォークを華麗に捌きながら、楽々と完食。小林と対照的ながら、それでも白田の能力を示すに充分なチャレンジであった。

結果:13分37秒完食→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
新井和響 卵焼き(75g)29切れ・5分

選手略歴および挑戦状況

 大食い・早食い選手としても、主力クラスの中では赤坂尊子に次ぐキャリアを誇る新井だが、彼のTVデビューは「TVチャンピオン・激辛王選手権」だ。第1回から3回連続出場し、第3回では優勝も果たしている。カラシまみれのおでんならぬ、おでん入りのカラシを完食した時の衝撃は、未だに記憶に新しい。
 その後、大食い・早食いに転向した新井は、ここでも高い能力を発揮する。当時は赤坂と中嶋広文(引退)の全盛期で、優勝には手が届かなかったものの、「TVチャンピオン」決勝進出や、『ホットドッグ早食い世界選手権』準優勝(優勝は中嶋)などの好成績を収めている。
 彼の全盛期は1999年から2000年にかけてで、特に2000年は「TVチャンピオン・早食い選手権」優勝、そして念願の『ホットドッグ早食い世界選手権』でも優勝を果たし、早食い世界一の名を欲しいままにした。
 しかし2001年からの新勢力の台頭には押され気味で、小林尊の前に『ホットドッグ──』の王座防衛に失敗するなど、第一線から徐々に退く情勢になって来ている。が、つい最近にも、寿司60カン早食いのレコードタイムを樹立するなど、早食い王座奪還にも意気軒昂だ。
 現在はタレント活動も開始、その温和な人柄に人望も高く、大食い界のスポークスマンとしての役割に期待がかかる。
 今大会は、春の第1回で準決勝進出を果たすなどの好成績により出場権を得た。1回戦では河津勝を問題にせず圧勝している。

 さて、肝心の2回戦だが、放送ではほとんどがカットされていて、その様子を窺い知る事は出来ない。だが、寿司と形状のよく似た卵焼きゆえ、新井にとっては楽な食材だったと思われる。とはいえ、総量2kg強、ボーダーライン1切れ約10秒のところを、完全な余裕残しでクリアしたのだから凄いことには変わりは無い。これを放送しなかった番組側の姿勢に疑問を呈したい程だ。

結果:2分40秒完食→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
山本晃也 カッパ巻き(100g)25本・10分

選手略歴および挑戦状況

 山本の本格的な大食いデビューは、他の選手と比べてやや異色で、テレビ朝日系「いきなり! 黄金伝説」の中の大食い企画の“素人大食い自慢”役。これは大食いタレントと対戦するための所謂“やられ役”なのだが、彼はそれまでの素人とは違っていた。なんと、その大食いタレントを相手に圧勝し、企画そのものを不成功に終わらせてしまったのだ。
 さらに同番組内の企画で、当時の早食い王者・新井和響に勝利して大食い界に激震を走らせる。ただ、同番組は、“ヤラセ”疑惑の絶えない、大食い界では評判の悪い番組だったため、その能力に疑問を持つ向きも多かった。が、そんな疑惑を払拭したのが2001年秋の第2回「フードバトルクラブ」だった。彼は大食い界のトップスターを相手に、その卓越した能力を発揮。準決勝で岸義行(今回不出場)に敗れたものの、山本ここにありをアピールした。
 今大会は、その準決勝進出の実績により出場権を獲得。1回戦は無名の釘抜孝行を相手に楽勝して2回戦にコマを進めた。

 彼のチャレンジも放送では大半がカット。24秒で1本というボーダーラインを問題にせずクリアしているから、相当のパフォーマンスだったのだろう。放送時間の関係とはいえ、惜しいことである。

結果:7分41秒完食→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
高橋信也 ソーセージ(25g)80本・10分

選手略歴および挑戦状況

 大食い歴はそれ以前からと聞くが、TV公式戦デビューは2001年春。第1回「フードバトルクラブ」準優勝、「TVチャンピオン」2001年新人戦3位と、いきなり主力選手の仲間入りを果たしている。
 その後も「TVチャンピオン」の『ホットドッグ早食い世界選手権』日本予選で準優勝など、好成績を残して今大会に堂々の参戦。しかし、この大会の直前に利き腕の手首を骨折しており、大きなハンデを負う事となった。1回戦は奥山順一相手に勝利しているが、主力選手が相手となる2回戦以降に不安を残すこととなってしまった。

 2回戦のソーセージは、総重量こそ2kgながら、ボーダーライン7.5秒に1本という、なかなかのレヴェル。特に今回は利き手の故障があり、かなり微妙な条件設定であった。
 チャレンジ開始からしばらくは、左手にフォークを持ち、片手で食べるスタイル。しかし、これは水を飲む際に一旦フォークを置かなければならない上、テンポも悪い。いつもの高橋ならばこなせなくはないはずのボーダーラインよりも、相当下回るラップタイムで前半が終了。前回(餃子293個を制限時間17秒前にクリア)と同様の苦戦に、場内の雰囲気も重苦しくなる。
 残り3分になったが、ソーセージは約半数残っている。このままのペースでは成功は不可能と見た高橋は、ついに痛む右手に箸を持ち(後にフォークに持ち替え)、ラストスパートに賭ける。痛みと早食いの苦しみに顔をゆがめながら、懸命にペースを上げる。本来のリズムを掴んだ高橋は順調に皿の上のソーセージを平らげ、遂に残り14秒で完食。綱渡り状態ながら意地の3回戦進出を果たした。

結果:9分46秒完食→3回戦進出

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
小国敬史 大粒イチゴ(20g)146個・5分

選手略歴および挑戦状況

 略歴・1回戦の勝ち上がり過程は1回戦レポートを参照。

 秋の第2回「フードバトルクラブ」では、この「ハングオーバー」で無謀なボーダーライン設定のため敗退した小国は今回に捲土重来を期す。だが、今回も残り2つの進出枠を巡って競り上がったボーダーラインの前に窮地に立たされた。前回(豆腐20丁・6.4kgを10分)ほどではないが、総重量約3kg、1個あたり約8秒のボーダーラインは一筋縄では行かない数字。
 開始早々、小国はイチゴを口に入るだけ詰め込み、一気に飲み込む策に出た。確かに少しずつ食べて入られない数ではあるが、口をジューサーと化し、時折水で流し込む姿には鬼気迫るものがあった。
 ペースを一度落としたら、立て直しは難しいと思ったのだろう、最後まで“全力疾走”でイチゴを一心不乱に口に放り込んだ小国。そしてそれは正しい答だった。終わってみれば4分30秒完食。余裕があるようで、ペースをどこかで緩めていたら間に合わない数字だっただろう。
 強豪・射手矢を破っての1回戦突破、そして“1人リベンジ”達成で2回戦突破。誰よりも中身の濃い戦いを消化した小国、胸を張っての3回戦進出だ。

結果:4分30秒完食→3回戦進出

 この時点で7人連続成功。残る3回戦への枠は1つとなった。
 秋の第2回大会では失格者が相次ぎ、大量の不戦勝者が出たが、今回はその逆。残された5人の選手は戦わずして崖っぷちに立たされた。自然と“落札数量”は高騰し、失格者が続出する。

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
加藤昌宏 チャーハン(300g)14杯・20分

選手略歴および挑戦状況

 加藤のメジャー戦歴は2回の「フードバトルクラブ」に限られる。本選出場には申し分ない実力を持ち、秋の第2回では体重増加競技の「シュートアウト」で、新井、立石、山形といった上位どころに競り勝って準決勝進出(白田と対戦し敗退)を果たすなど、主力選手の一角を形成する選手である。早食いよりも大食いで力を発揮するタイプで、将来的には「TVチャンピオン」など大食い系競技会での活躍も期待される。
 今回はその成績により出場権を獲得、1回戦では石森修を下した。

 しかし今回のチャレンジは、総重量4.2kg、ボーダーラインは1杯あたり約1分25秒。早食い力のある選手ならいざ知らず、スピードに限界のある加藤には酷過ぎるチャレンジとなった。大量のチャーハンを持て余し、志半ばでの敗退である。

結果:7杯完食の時点で時間切れ→失格

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
柿沼敦夫 生春巻き(75g)27本・5分

選手略歴および挑戦状況

 彼の目立った活躍は春の第1回「フードバトルクラブ」本選進出くらいか。相当大食い番組を見慣れた人間でも、「どこかで見たことある顔」程度の認識ではないか。しかし、彼がこの後、大波乱の立役者になることになるとは……。
 出場権はその第1回の本選出場によるもの。1回戦で海外枠のハン・チンユを下している。

 5分間で約2kg、1本あたり約11秒というボーダーライン。こなせない分量ではないが、1回戦で寿司+ラーメン+ケーキというへヴィーなメニューを課せられ、体調が狂っていたのかもしれない。放送ではほぼカットになったのでチャレンジ内容を知る事は出来ないが、10本の時点で時間切れであるから、まともに勝負できていなかった。

結果:10本完食の時点で時間切れ→失格

 

挑戦者名 食材・落札数・制限時間
田澤康一 チーズケーキ(70g)20個・10分

選手略歴および挑戦状況

 田澤の戦歴は、「TVチャンピオン」2001年新人戦本選出場(2回戦敗退)、第2回「フードバトルクラブ」本選出場(1回戦敗退)など。デビューした時期が悪すぎたきらいはあるが、主力選手と比べると、“その他大勢”の域を出ないのが現状。総合的な地力の強化が求められる。
 1回戦では、田澤と同じく第2回「フードバトルクラブ」の1回戦組である駿河豊起と対戦。寿司早食いの持ちタイムは駿河が上位だったが、それを逆転しての勝利を果たしている。

 “落札”した結果は、総重量1.4kg、1個あたり30秒のボーダーライン。残された選手が半ば戦意喪失気味だったからだろうか、大食いとしても早食いとしても非常に楽な条件となった。田澤はこれを制限時間半分以上残して楽々完食。恵まれた形ではあったが、3回戦最後の1枠を獲得した。

結果:4分36秒完食→3回戦進出

 ……以上で3回戦進出の8選手が決定した。
 最後に、未挑戦のまま失格となった2選手の略歴を紹介しておこう。

 ◎武田昌子……「TVチャンピオン」スタート前後から現役で、なんとキャリアは赤坂尊子以上という大食い界の大ベテラン。最近の戦歴では第1回「フードバトルクラブ」本選出場(1回戦途中棄権)が主だったところ。非公式戦(バラエティー番組)ながら、つい最近も2分間の早食いで赤坂を破るなど、ますます意気盛ん。1回戦では、やや格上の平田秀幸と対戦したが、平田が途中棄権したため、武田が2回戦に進んでいた。

 ◎キングコング・バンディ……アメリカンプロレス往年の名レスラー。勿論大食いは本業ではない。第2回「フードバトルクラブ」では海外推薦枠で本選出場。「シュートアウト」で新井和響を上回る記録をマークし、プロレスラーの大食い力の豊かさを知らしめた。1回戦では古賀さくら相手に苦戦したが、古賀の途中棄権により2回戦進出を果たしていた。今大会では、各選手の食いっぷりに対する驚きを、いかにもプロレスラーらしい豊かな表情で表現し、番組に彩りを添えた。


 以上で今回分のレポートを終わります。以下、次回に続きます。(この項続く

 


 

1月4日(金)文化人類学
「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』
TV観戦詳細レポート(1)

 さて、今日の講義は一昨日の講義の続編に当たります。前回は放送前のプレビューでしたが、今日は放送を踏まえてのレポートと言うことになります。ただし、長丁場のトーナメント戦。レポートは長文になることが予想されますので、2回ないし3回に分けての講義となります。
 それでは1回戦から順を追ってレポートしてゆきます。ただし、これはあくまでも「TV観戦レポート」ですので、記録等は放送で明らかになったものに限定しています。ご了承ください。また、現場で観戦された方の情報提供も大歓迎です。別途メールにてどうぞよろしく。
 (レポート内敬称略。文体も変えます)


◎1回戦◎

 《試合形式》
 1対1の3kg早食いマッチレース。寿司40カン(1kg)に4種類の食材(各1kg。ラーメンor天むすor餃子orスポーツドリンク)の中から抽選で2品目(重複あり)が加えられる。
 組み合わせは抽選で決定。ただし、秋の大会の上位2名はシードとなり対戦しない仕組み。 

 《レポート》
 出場者24名中、第一線で活躍している選手は約10名といったところ。残りの選手は、日本各地の大食い大会を制しているとはいえ、員数合わせの感が否めない。よって、組み合わせ抽選が勝敗に大きく影響することになってしまった。
 ただし、秋の大会で員数合わせ要員だった小国敬史が予選を突破したように、思わぬ“掘り出し物”が出現する可能性も少なくない。なので、この人選で主催者サイドを責めるのは的外れであろう。もっとも、シード選手が2名というのはいくら何でも少なすぎで、出来れば8名程度のシード選手を設定して欲しかった。これなら有力者同士の潰しあいは避けられるし、ノーシードにも若干の有力者が残る事になるので、実力伯仲の試合も少しは観ることが出来ただろう。

 出場したのは24名だから全部で12戦行われた事になるが、ここではTVで詳しく放映された3試合に絞ってレポートしたい。

白田信幸

VS

山形統

 競技品目は寿司+餃子+餃子
 白田は、大食い界の2大メジャータイトル「TVチャンピオン」「フードバトルクラブ」の2冠王者。巨体を生かしたパワフルな大食いと早食いで、今や実力ナンバーワンの呼び声も高い。
 一方、早食いを中心に日本大食い界主力選手の一角を形成する山形。タイトル歴は無いものの、「フードバトルクラブ」上位入賞の常連。
 2人の“格”から言えば、サッカーの天皇杯でJ1王者とJ2王者が対決するようなものだろうか。
 試合は、持ちタイムでは劣るはずの山形が先行する意外な流れ。予想外の展開に白田も若干ペースを乱され、中盤までは調子が上がらない。今になって思えば、今大会で白田が最も危なかったシーンがここだった。
 一時は、文字通り“ジャイアントキリング(番狂わせ)”が見られるか、と思われたが、最後の最後で地力の差が出た。最終的にはやや差がついて白田の勝利となった。

 

射手矢侑大

VS

小国敬史

 競技品目は寿司+スポーツドリンク+スポーツドリンク
 射手矢は「TVチャンピオン」2001年新人王のタイトルホルダーで、現2冠王者・白田に土を付けた数少ない選手。秋の「フードバトルクラブ」では、当時の王者・小林尊に準決勝で惜敗している。
 一方の小国は、実質デビューが秋の「フードバトルクラブ」という新人選手。しかし、その時の予選で9位という好成績を収めており、実力は主力選手と互角以上。今回は地方の大食い大会で優勝して出場権利を掴んだ。
 試合内容だが、序盤の寿司では持ちタイムの差が出て、数個の差ながら射手矢がリードを奪う。しかし、射手矢にとって未知の、飲料系早飲みになって様相は一変。小国との差が見る見るうちに詰まってくる。スポーツドリンク2本目になってデッドヒートとなり、最後はほんの僅か、数10ml差で小国が逆転。大食い史上に残るジャイアントキリングを達成した。
 勝負の明暗を分けたのは、品目を決定する抽選に尽きる。射手矢にしてみれば、「スポーツドリンクが2つ来ない限り大丈夫」という心境だっただろうし、小国にしてみれば「スポーツドリンクが2つ来ないと勝ち目は薄い」という思いがあっただろう。毎回抽選が明暗を分ける「フードバトルクラブ」だが、今回もその“魔力”を発揮した格好になった。

 

小林尊

VS

赤阪尊子

 競技品目は寿司+餃子+餃子
 小林は、まさに“日本大食い界の顔”。2000年の「TVチャンピオン」オールスター戦でデビュー即優勝と言う離れ業を演じるや、「ホットドッグ早食い世界選手権」、「フードバトルクラブ」初代王座など、世界の主要タイトルを総ナメした。日本初の大食いトーナメントプロとしても知られ、昨年の獲得賞金は1300万円以上。しかし、昨年秋には「TVチャンピオン」を体調不良で欠場し失冠。「フードバトルクラブ」も王座防衛に失敗して、一時の勢いに翳りも見えて来ている。
 赤阪は主力選手の中では最もキャリアの長い大ベテラン。「TVチャンピオン」で数度に渡り王座に就き、現在も「TVチャンピオン・甘味大食い女王」のタイトルホルダーという超の付く実力者。誰もが彼女を見て大食い選手を目指し、そして彼女をいつの日か越えたいと願う。まさに大食い界の至宝という存在が彼女である。ただし、最近は新勢力の台頭に押され、第一線からの後退を余儀なくされている。
 試合は、ここ1年の世代交代の流れを残酷なまでに象徴するような内容となった。序盤から小林がグングン引き離して、寿司の時点で勝負が決まってしまった。2人の間に早食いのスピードで歴然たる差があるのは端から承知の上だが、それにしても赤坂の全盛期から大食い試合を見てきている者にとって、赤坂がまったく勝負にならず惨敗するのはショックなことこの上ない。
 最後は餃子約100個の差がつくワンサイド・ゲーム。時代も女王のプライドも何もかも飲み込んで、小林が2回戦進出を決めた。

  この他9試合が行われ、2回戦進出の12名が決定した。以下は2回戦進出者の氏名一覧(五十音順)。

 新井和響、小国敬史、柿沼敦夫、加藤昌宏、キングコング・バンディ、小林尊、白田信幸、高橋信也、武田昌子、田澤康一、立石将弘、山本晃也


 ……時間の都合で、今回はここまで。以下、次回に続きます。明日は土曜日で競馬学の日ですので、続きは日曜日となります。それでは今日の講義を終わります。(この項続く

 


 

1月2日(水) 文化人類学
「『フードバトルクラブ・グランドチャンピオン戦』決勝放送直前レビュー」

 ワタクシこと、当講座の専任講師・駒木ハヤトの専攻は、皆さんご存知の通り競馬学・ギャンブル社会学なのですが、実は“裏の専門分野”というものも持っていたりするのです。しかも2つ。
 1つは、現在公立高校で教えている世界史、そしてもう1つは“大食い”であります。

 所謂、素人参加の大食い番組がTVで放映されるようになって10年余。その“大食い”のメジャー化はめざましく、全国各地での大会やTV番組内でのトーナメント大会は激増の一途。昨年からはTBS主催で賞金1000万円という大規模なトーナメント戦・「フードバトルクラブ」も開始され、今まさに“大食い”は大ブームの時を迎えました。勿論、「フードバトルクラブ」に関しては、番組開始の経緯や番組内の演出方法など、手放しで喜べない事情があることもまた事実ですが、大食い・早食いのスポーツ化やプロ選手の輩出など、“大食い”業界の発展に与えた影響は非常に大きなものがあると言えるでしょう。
 そんな「フードバトルクラブ」の、2001年度成績優秀者及び各地方の大食い大会優勝者による“グランドチャンピオン戦”の模様が、先週と今週に放映されます。録画中継のため、既に結果は出ているのですが、厳格なかん口令が敷かれており、ごく一部の関係者以外はその結果を知る由もありません。駒木も含めて、大多数の人間は、明日放送される後半戦の行く末を知らない状態にあります。
 また、つい最近“大食い”に興味を持たれた人の中には、各選手の能力などを知らないがゆえに、この大会をどう楽しめばよいのか分からない方も多いと思います。
 そこで、番組放送まで24時間を切った今日の講義は、今回の「フードバトルクラブ」後半戦の出場選手紹介と、トーナメントの展望をお送りします。TV観戦のお供に、是非今回の講義のレジュメをプリントアウトして、パンフレット代わりに利用してもらえればと思います。

 ……

 さて、それでは本題に進みます。
 まずは出場選手紹介なのですが、10人を超える有力選手を細かく紹介していては、とても間に合いませんので、まず能力相対評価表付きの選手一覧表を掲載し、その上で簡単な解説を加えたいと思います。
 評価はS、A、B、Cの4段階。紹介する12人の選手の中で序列をつけ、各評価3人ずつ(一部例外あり)になるように振り分けました。ただし、「早食い力」の「飲料」部門はデータ不足のため、飲料系種目の実戦経験をある程度こなしている選手だけ、評価を掲載しました。

選手名
(五十音順)

大食
い力
早食い力 総合
評価
固形 飲料
新井和響 B S A
小国敬史 B(?) B A B
小林尊 S S S S
白田信幸 S A S
高橋信也 B A B
田澤康一 C C C
立石将弘 B B C
山本晃也 B S S A

敗者復活戦出場の有力選手(2名が復活)

赤坂尊子 A C B
射手矢侑大 S A B S
加藤昌浩 A C B
山形統 C B C

 「大食い力」とは、文字通り「たくさんの食物を胃に納める力」で、“胃力”という言い方もします。制限時間30分以上の競技でその力の効果が発揮され、また、60分を超える競技になると、ほぼこの能力だけで勝負が決まります。
 一方の「早食い力」は、「食物を飲み込み、早く胃に納める力」です。言ってみれば“嚥下力”というところでしょうか。例えば、寿司の早食いでは、Sクラスの選手になると2〜3回噛んだだけで2カンの寿司を飲み込む事が出来ます。“食べる”という時限を超越した、まさに人間離れした力です。
 この「早食い力」、10分以内の競技では「大食い力」よりも勝敗に与える影響は大きいでしょう。また、「大食い力」がモノを言う制限時間の競技でも「早食い力」に長けていれば、試合の主導権争いで優位に立てますし、自分の胃の容量ギリギリまで食物を詰め込めますので、その分有利でもあります。
 そして「総合評価」は、各選手の大食い競技における力量のランクです。よほど競技の規定が特異なものでない限り、このランク付けの通りに勝敗は決します。即ち、この表で言うとSランクの3人が優勝候補ということになります。
 その意味で言えば、先週放送された1回戦で、小国選手が射手矢選手に勝利した事がいかに大変な番狂わせかお分かりになると思います。あの試合は、「寿司40カン+スポーツドリンク2リットル」という、飲料早飲み得意の小国選手有利のルールとなったために起こった出来事でした。

 さて、各選手の力量を把握してもらったところで、いよいよ今回の大会展望に移ります。
 ただし、駒木も今回の競技規定を全て知っているわけではありませんので、この展望には推測の要素も多く存在します。もしも推測が外れた場合は展望と結果が大きく異なる可能性もありますが、その場合は前記の選手一覧表をご覧の上で対応してもらいたいと思います。
 (展望本文中は敬称略です)


★敗者復活戦(敗退者16名中2名が3回戦へ)★

 競技の内容が完全に判らない上、棄権者も多数出そうなので精密な予想は出来そうに無いが、出来る限りの展望をしてみよう。
 参加選手は多いものの、能力的には選手一覧表に掲載した4選手が抜きん出ている。事実上、この4人が2つの椅子を奪い合う事になるだろう。
 まずトップ抜けは射手矢で間違いないところ。1回戦敗退で一度切れたモチベーションが回復していれば、力量差は明らか。ここで復活のノロシを上げておきたいところだろう。
 その一方で白熱しそうなのは2位争い。短時間で決着をつける“早食い”系種目なら山形が圧倒的に優勢だが、“大食い”の要素が濃くなるほど赤坂、加藤が有利になる。また、勝負がもつれて大接戦となった時は赤坂が有利ステーキ1枚を5秒で口内に押し込める底力は、ここぞという時に生きて来よう。

★3回戦(10名中6名《?》が準決勝へ)★

 先週放送分での予告VTRを観る限り、飲料系を含む様々な種類の食材が登場する“早食いタイムトライアル”方式ではないかと思われる。もし、そうでないにしても、“早食い力”がモノを言う競技になるだろう。
 1回戦のようにマッチレース形式ならお手上げだが、全体の順位を競う形式なら小林、白田、射手矢(復活すれば)の3人はほぼ当確で、山本、新井も有力候補。残る枠1つ、6位争いを演じそうなのが小国、立石、高橋。復活していれば山形もギリギリ圏内か。純粋な能力比較では高橋優勢も、今回は利き腕骨折の大ハンデがあり、逆にやや劣勢。横一線の攻防も、小国が勢いに乗って6位滑り込みと見るが…

★準決勝(6名中3名《?》が決勝進出)★

 準決勝はもはや定番となった、1対1の早食い3本勝負・「シュートアウト」。食材の詳細は不明だが、わんこそば(山本が蕎麦アレルギーのため使用不可)とシュークリームが変更になる程度で、ステーキや丼モノ、デザート、あるいは飲料系の“大食い・早食い定番品目”がリストに並ぶ事になるだろう。
 この競技は、組み合わせ決定時と競技中の抽選が大きく影響するので非常に展望が難しいが、最終的には選手一覧表内の“総合評価”の差で勝敗が決するのではないかと思う。
 また、この競技は“早食い”系種目だが、3本目にもなると、“大食い力”がモノを言う。新井や山本といった早食い得意の選手は、2本連取が勝利への絶対条件となる。

★決勝戦★

 競技内容は、おそらく麺類か丼モノの60分勝負だろう。非常にハイレヴェルの、早食いのスピードで60分突っ走るような試合が観られるはずだ。
 準決勝の勝者予想がほぼ不可能のため、こちらの展望も難解を極めるが、おそらく“総合評価”Sランクの3人、小林、白田、射手矢のうちの誰かが残っているだろうから、その中から優勝者が出ると見て間違いあるまい。
 問題はSランク3人の中の能力比較だが、前回のような体調管理の失敗が無い限り、小林の優位は揺るがないと見ている。大食いプロ選手第1号の意地とプライドを見せてもらいたいものだ。
 白田は前回のように序盤でリードする試合運びが出来れば連覇の目も充分あるが、思うような展開に持ち込めるかどうかがカギ。また、小林不在時には当然優勝候補の筆頭だ。
 やや地力で劣るのは射手矢。マトモな勝負ではラスト10分で競り負けてしまうだろう。勝つためには、小林と白田を競らせてペースを乱させ、その隙を突きたいところだ。しかし、3強の一角が崩れて一騎打ちの形になれば、当然苦しい試合となる。勝利の女神は彼に微笑むか──?


 ……と、こんな感じになりました。果たして結果はどうなるのでしょうか? 楽しみですね。
 ところで当日は、テレビ東京系でも「大食い選手権」の正月特番が放送されます。どちらを生で見てどちらをビデオ録画するか迷うところですが、是非両方ともチェックしてもらいたいと思います。
 それでは、ちょっと変わった形になりましたが、今日の講義を終わります。(数日後の回顧編へ続く

 


 

9月27日(木) 「今日の特集」〜日本大食い界、世代交代へ(3)

 この話題、一週間ぶりの更新です。
 まだ第1回、第2回をお読みでない方は、すぐ下にリンクを繋げておきますので、先にお読みいただければ幸いです。

 第1回(「大食い選手権」の成り立ちなど)はこちら
 第2回(今回の「大食いスーパースター戦」出場選手プロフィールなど)はこちらからどうぞ。

 さて、今回の第3回は、「大食いスーパースター戦」のTV観戦レポートを中心にお送りします。いつもに比べてお笑い要素は控え目にしていますのでご承知置きくださいませ。
 あと、前回の訂正です。今週と来週に放送されている「第2回フードバトルクラブ」の優勝賞金を、前回1000万と書きましたが、正しくは「総額1000万、優勝賞金500万」の間違いでした。謹んでお詫びして訂正させていただきます。
 それでは、以下が観戦レポートです。
 ※レポート中は文体が「で、ある」調に、人名が敬称略になります。

★――――――――――★

☆第1ラウンド・富士宮名物・焼そば10軒完食勝負

※ルール:富士宮にある焼そばを出す店10軒を移動しながら、各店指定の焼きそばを食べる。全店で制限時間内に完食すればラウンド通過。

 今回初めて実施された形式。番組側の意向としては、間隔を開けることで胃袋内の食物を膨張させ、選手たちを揺さぶろうとしたのだろうが、これは消化活動の早い大食い選手たちには逆効果。展開に山も無く、全員スイスイと完食してしまった。
 射手矢などは、試合後半に水を意識的にがぶ飲みして短期的に胃袋を膨張させようとするなど、心は次以降のラウンドに向いている始末。これは企画の大失敗と言わざるを得ないか。しかし、平然と焼きそば10皿を平らげる選手たちを見て、初めて番組を観る視聴者が日本大食い界のレヴェルの高さを知ることが出来たという事が救いではある。

☆第2ラウンド・1mネギトロ巻無制限勝負

※ルール:長さ1mのネギトロ巻(重量500g)を60分でどれだけ食べられるかを競う。最下位1名が脱落。

 スタートと同時に白田・射手矢の2名が飛び出す。やや遅れて3位グループに稲川、岸、渡辺。渡辺はワサビが大の苦手だが、苦しみながらも食べつづける。最下位に遅れたのは、なんと女王・赤阪。慣れない最下位追走にリズムを狂わされ、ペースがなかなか上がらない。
 15分経過。順位は、1位白田、2位射手矢(以上4m完食)、3位グループが稲川、岸、渡辺の三者(3m完食)、6位に赤阪(2m完食)
 この時間帯も、依然として上位の2人は快調に飛ばす。この時点で既にラウンド通過安全圏といったところ。中位グループでは、岸が単独3位に浮上して、これもほぼ安全圏。こうなると注目は最下位争いで、新人2人を赤阪が懸命に追いかける構図。最大1mあった、赤阪と2人との差が、ここにきて徐々に詰まり始める。
 30分経過。1位グループ白田、射手矢(6.7m完食)、3位岸(5.8m完食)、4位グループ稲川、渡辺(5.2m)、6位赤阪(4.7m)
 35分経過。ここで赤阪が急速に4位グループとの差を詰め始める。時間が経過するに連れて新人2人のペースが落ち、ついに赤阪が4位浮上。
 やがて渡辺の手が止まり、稲川が5位浮上。そして45分25秒の時点で渡辺がリタイヤしたため、異例のタイムアップ前での試合終了となった。

1位通過 射手矢侑大 8.7m(4.35kg完食)
2位通過 白田信幸 8.5m(4.25kg完食)
3位通過 岸義行 7.4m(3.7kg完食)
4位通過 赤阪尊子 6.0m(3.0kg完食)
4位通過 稲川祐也 6.0m(3.0kg完食)
リタイア 渡辺人史 5.7m(2.85kg完食)

 試合終了後、射手矢と白田が60分での記録を出してみたいと申し出て、急遽記録会が開催された。結果は白田が10.57m(5.265kg)、射手矢が10.48m(5.24kg)をそれぞれ完食
 このラウンドで目に付いたのは、やはり「春の新人戦」組の2人。大食いの能力もさることながら、スピードがとにかく速い。岸、赤阪といった1999年以前デビュー組の旧勢力に付け入る隙を与えなかったと言うのは驚異的。まさに世代交代の色が濃くなってきた印象を受けたラウンドであった。
 渡辺の敗因はやはり偏食だろう。嫌いな食物を60分ハイペースで食べ続けるというのは並大抵の苦痛ではないはず。これは大食い選手を続けるにあたって、大きなハンデとしか言いようが無い。

☆第3ラウンド・ゆでだこ丸かじり勝負

※ルール:1杯400gに切り揃えられた茹で蛸を、45分でどれだけ丸かじりで食べられるかを競う(ナイフ等の使用不可)。最下位1名が脱落。

 スタートと同時に射手矢が猛烈なスピードで飛び出す。まるでチクワか何かを食べているような錯覚さえ受ける速さで、みるみる内に蛸が口内に吸い込まれてゆく。一方、出遅れたのは白田。前歯の噛み合わせが悪いのか、蛸を思うようにかじることが出来ない。途中で奥歯で無理矢理噛み切る作戦に切り替えたが、かなりのビハインドを抱えることになってしまった。
 10分経過。1位射手矢(5杯完食)、以下同じ2杯完食も、僅差で岸、白田、稲川、赤阪の順。赤阪はここでもスピード競走に飲み込まれて苦戦している。
 15分経過。各選手1杯ずつ上積みして順位変わらず
 この辺りから、徐々に赤坂のペースが上がる。競り合っている他の3人も負けじと奮闘し、順位が入り乱れる混戦に。
 30分経過。1位射手矢(9杯)、2位岸(6杯)、3位稲川(6杯)、4位赤阪(5杯)、5位白田(5杯)。無理のあるスタイルで食べている白田、ここで一旦ペースが落ちていた。35分過ぎまで劣勢が続く。
 40分経過。ここで白田が最後の力を振り絞り4位浮上。最下位に転落した赤阪もピッチを懸命に上げたため、2位〜5位までは団子状態に。
 残り1分の時点でも形勢は混沌。そのまま試合終了へ。 

1位通過 射手矢侑大 11杯+340g(4.74kg完食)
2位通過 白田信幸 8杯+374g(3.574kg完食)
3位通過 稲川祐也 8杯+330g(3.53kg完食)
4位通過 岸義行 8杯+296g(3.496kg完食)
リタイア 赤阪尊子 8杯+152g(3.352kg完食)

 圧巻だったのは、やはり射手矢。終始独走で、ここしばらくでは珍しい大差での1位通過となった。これからも歯ごたえの強い食物がテーマの時は部類の強さを発揮するはずである。
 稲川の健闘も光る。途中のラウンドとはいえ、岸・赤阪越えを達成したのは誇っていい。
 赤阪の敗因は何だろうか? 放送は後でも収録が前だった「フードバトルクラブ」の疲れが残っていたのか、それとも根本的な能力の差が順位として現れたのか。色々理由は考えられるが、駒木の私見としては「最下位争いに対する不慣れ」が存外大きかったのではないかと思っている。赤阪はデビュー以来、出る試合全て1位かそれに近い順位をマークしてきた。しかもほとんどが駆け引き無用で、実力を出していれば自ずと結果がついてくる、といった具合だった。それが今回、急激に進んだ「大食いの早食い化」によって最下位争いに巻き込まれてしまったわけで、それがきっかけで混乱しなかったと言えば嘘になるだろう。
 赤阪はこれが初の予選段階での敗退。名実共に赤阪尊子の全盛時代はその幕を閉じた。1年前まではとても考えられなかった話ではあるが、時の流れはそれだけ容赦が無いという事か。

☆第4ラウンド・真珠ご飯おかわり勝負

※ルール:1杯250gの炊き込みご飯を、45分でどれだけ食べられるかを競う。最下位1名が脱落。

 このラウンドもハイペースでの幕開け。このラウンド後に岸が語っていたが、まさに「早食いの延長にある大食い」といった様相。45分では満腹にならないのだから、そうなるのも無理は無い話だが……
 このラウンドも射手矢がペースメーカーに。稲川がそれに肉薄する。彼もまた、相当な早食い能力があるようである。
 5分経過。1位射手矢(5杯)、2位稲川(5杯)、3位白田(4杯)、4位岸(4杯)。早食いの苦手な岸、苦戦の滑り出し。
 15分経過。1位射手矢(12杯)、2位稲川(11杯)、3位白田(11杯)、4位岸(9杯)。これまでの「大食い選手権」では信じられないようなハイペースが延々と続く。しかし、時間が経つに連れて力量差が出てくるのか、相対的に稲川のペースが鈍り始める。替わって白田が2位に浮上。
 22分30秒経過。1位射手矢(16杯)、2位白田(14杯)、3位稲川(14杯)、4位岸(12杯)
 後半戦に入っても射手矢が順調に数字を伸ばす。白田は完食杯数でも単独2位に浮上し、決勝進出確実圏へ。最下位争いは、岸がここにきて差を詰め始める。それに気圧されたわけではなかろうが、稲川のペースがどんどん鈍ってゆく。
 35分経過。1位射手矢(19杯)、2位白田(17杯)、3位稲川(16杯)、4位岸(15杯)
 40分を前にして、岸が3番手に浮上。稲川は16杯を過ぎた辺りで、今選手権で初めて箸が止まる。老獪な岸、このタイミングを見逃さず、ここぞとばかりに差を広げ、瞬く間にリードは2杯差に。これで大勢は決した。
 40分経過。1位射手矢(24杯)、2位白田(20杯)、3位岸(19杯)、4位稲川(17杯)
 射手矢、このラウンドも大差での鮮やかな逃げ切り。後半に入ってもペースが落ちなかったのは立派。

1位通過 射手矢侑大 26+4/5杯(6.7kg完食)
2位通過 白田信幸 22杯(5.5kg完食)
3位通過 岸義行 21杯(5.25kg完食)
リタイア 稲川祐也 17+4/5杯(4.45kg完食)

 昨年の小林尊に続く、新人でのオールスター戦優勝を目指していた稲川がここで力尽きた。ただ、敗れはしたものの、その実力の高さは光るものがあったと言えよう。少なくとも現時点で、昨年の水準なら優勝争いを演じられるだけの実力は有しているはずだ。
 だがここ1年で、「大食い」は専門的なトレーニングと実戦経験がモノを言う競技へと生まれ変わってしまった。その意味では、地方在住で今回が実質デビュー戦の稲川にとっては「利ここにあらず」だったに違いない。彼がこれから現役生活を続行するかは不明だが、今度は是非トレーニングを積んで、一皮剥けた稲川祐也を見せてもらいたいものである。

☆決勝ラウンド・和歌山ラーメン無制限勝負

※ルール:1杯600gのラーメンを60分でどれだけ完食できるかを競う。ただし、スープと若干の刻み青ネギは残しても良い。

 またしても「早食い」状態のハイペースでスタート。3人とも1杯1分前後の超ハイペースで箸を進めてゆく。ここでもトップを走るのは射手矢。だが、この試合では白田も負けずに肉薄する。岸は、このペースがオーバーペースと判断し、ペースを落とす。しかし、結果的にこれが致命的な失策となった。
 10分経過。1位射手矢(9杯)、2位白田(9杯)、3位岸(6杯)
 射手矢と白田は、差が10秒以内のデッドヒート。12分過ぎには白田がトップに立つなど、まさに一進一退の攻防。岸はマイペースを守り、後半勝負に賭ける。(というか、賭けざるをえない展開になったのだが)
 20分経過。1位白田(16杯)、2位射手矢(16杯)、3位岸(10杯)。1位と2位の差は依然として20秒以内の大接戦。
 25分経過。1位白田(19杯)、2位射手矢(19杯)、3位岸(12杯)。この段階でも上位の2人は1杯あたり90〜120秒の超ハイペースを続行。制限時間半ばにして、「大食い選手権」最高記録(20杯)を達成する。
 30分経過。1位白田(21杯)、2位射手矢(21杯)、3位岸(13杯)
 35分経過。24杯完食の時点で、再び射手矢がトップに。
 40分経過。1位射手矢(25杯)、2位白田(25杯)、3位岸(18杯)
 ようやく上位2人のペースに翳りが見えてきたと思った矢先、射手矢の箸が止まる。苦しそうに体を揺するような動きを見せる。これはわんこそば早食いで見られる光景で、大量の麺で擦れた食道が炎症を起しているのと、胃袋が満杯になって、食道と胃の境目にまで食物が詰まってきている証拠である。
 本来、このようなラーメン長時間大食いでは見られない光景ではあるが、今回は常識を超えたスピード勝負になったために起こった出来事と言える。
 苦しむ射手矢と対照的に、白田のペースは衰えない。45分を過ぎた際の、27杯完食から28杯完食までの間隔はなんと90秒であった。
 48分経過。1位白田(28杯)、2位射手矢(25杯)、3位岸(20杯)
 ここまで快調に飛ばしてきた白田も、28杯完食を境に箸が止まる。彼もまた、胃袋が限界に達したのだ。
 ついに1.2位の両者がストップ。漸く岸にチャンスが巡ってきたが、ここまでについた差があまりにも大きすぎた。12分で8杯は挽回不可能の差であった。
 50分経過。ここで射手矢が再始動。どうやら胃の底に溜まっていた物が腸へと流れ始めたようだ。3杯差を埋めるための猛烈なチャージが始まった。
 55分経過。1位白田(28杯)、2位射手矢(26杯)、3位岸(21杯)
 それから間もなくして、射手矢は27杯を完食。ついに白田との差は1杯差となる。 しかし、残り3分を切って白田も再始動。瞬く間に29杯、30杯とドンブリを重ね、ついに射手矢は万事休す。最後は再び差が開いてのタイムアップとなった。

優勝 白田信幸 30+1/5杯
2位 射手矢侑大 27+3/5杯
3位 岸義行 22+1/5杯

 白田が春の新人戦の雪辱を果たして、初のビッグタイトル制覇。最後にモノを言ったのは、恵まれた体格と胃の容量であった。小林尊欠場で、“暫定チャンピオン”扱いになるのは残念だが、正真正銘のチャンピオン就任は来年以降の楽しみとしておこう。
 射手矢も敗れたとはいえ、春に比べて大きな成長を見せた。特に早食い能力は相当なもので、来年は是非、ニューヨークでのホットドッグ早食い選手権(現時点では開催は微妙だが)に出場してもらいたいと思う。
 岸の敗因は、優勝ラインを20杯前後と想定してしまったことにあるのではないか? 今年の「ホットドッグ早食い」で新井和響が優勝ラインを30本と想定して大敗したように、想定が外れた場合のリスクが極めて大きい。今は新勢力が若さに任せてどんどん記録を更新させている時期である。そんな時期に優勝ラインという名の足かせをはめてしまっては、効果的というよりもむしろ逆であろう。今回にしても、開始5分までのハイペースを維持しておけば、わずかながらに優勝の目は有ったはずである。それを自ら放棄したのだから、敗北もまた当然と言えるのではないか。
 ただ、岸にも擁護すべき点がある。彼は本来、制限時間90分以上の超長丁場を得意とする選手で、1999年秋に赤阪、新井を破って優勝した時も制限時間90分であった。そんな彼にとって、60分と言う試合時間は余りにも短すぎたとは言えまいか。ひょっとしたら今回のレギュレーションが決まった時点で、岸の優勝は非常に難しいものとなっていたのかも知れない。

★――――――――――★

 ……以上レポートでした。
 結果を見てもお分かりでしょう。ついに大食い界の世代交代が本格的に始まったようです。駒木のような、10年来の「大食い選手権」ファンにとっては寂しい話なのですが、世代交代も無く同じ顔ぶれでマンネリ化するよりは、ずっと喜ばしい話でもあります。これからも面白い戦いを見せてもらいたいものと思います。

 


 

9月21日(金)「今日の特集」〜日本大食い界、世代交代へ(2)

第1回はこちらです。未読の方は先にこちらを)

 続き物は、芸能界ネタ以外は控えようと思ってるのですが、どうにもなりませんでした。ごめんなさい。

 さて、今日はまず、今回の「大食い選手権」に出場する6人の選手たちのプロフィールをお送りします。

  ◎“女王”赤阪尊子(顔写真

 5年の長きに及び、大食い界に君臨してきた史上最強の女性大食い選手。最近は僅差での敗戦が続き、「大食い選手権」での優勝からは遠ざかっているものの、今年は「甘味大食い女王選手権」で圧勝するなど、未だに抜群の存在感を誇る。
 初めてブラウン管に姿を現した時は、緊張のためか挙動不審で、「放送コードギリギリの人」という印象を受けたが、いつの間にか愛嬌のあるオバサンキャラが板につき、場繋ぎの意味でも大食い番組には欠かせない存在に。
 一度結婚引退をしたが、婚約が破談になって復帰したという芸能人顔負けの過去を持つ

 ◎“皇帝”岸義行(顔写真

 大食いデビューは99年春の「大食い選手権・新人戦」(優勝)。同年秋の「大食い選手権」で赤坂を相手に、うどん5g差という大食いとしては史上最小の僅差で優勝し、一気にスターダムに登りつめる。今年に入ってからは、春の「フードバトルクラブ」で1回戦ドクターストップという失態を演じて以来目立った活躍がなく、今回の大会に捲土重来をかける。
 現在は「日本大食い協会」なる団体を旗揚げし、競技としての大食いのPR活動に従事。マスコミの大食い企画にも関わるなど、大食い界のスポークスマン役を務めている。
 90分以上イーブンペースで食べ続けることができるために“ノンストップイーター”の異名を持つこの人の出現により、決勝の制限時間が60分から90分に延長されたというエピソードがある

 ◎“ドクター”射手矢侑大(顔写真

 デビューは今年春の「大食い選手権・新人戦」。予選こそ通過6人中4位という成績だったが、あれよあれよと言う間に決勝に進出し、60分間にラーメン20杯強という大記録を樹立して優勝
 現役医大生という異色の経歴だが、実は医大生としては2人目のチャンピオン。

 ◎“ジャイアント”白田信幸(顔写真

 射手矢と同じく、今春の「大食い選手権・新人戦」でデビュー。予選の寿司大食いで、30分85皿(170カン)という新記録を打ち立てる。決勝戦では射手矢のスピードに屈し、胃袋を余して僅差で敗れたものの、実力の高さを見せつけた。
 身長190cmを超える巨体が特徴で、恐らく胃袋も輪にかけて巨大と思われる

 ◎“スナフキン”稲川祐也(顔写真

 今回初出場の新人。予選成績は寿司126カン
 これまで満腹感を味わったことが無いという悩みの持ち主
 (注:この業界、たまにこういう人がいます。かつて優勝した風間さんという人は、決勝でタライ1.5杯分の釜揚げうどんを食べて、「初めて満腹感を知りました」とシミジミと語ってました)

 ◎“ガリガリ偏食大食い”渡辺人史(顔写真

 彼も今回初出場の新人。120カンの寿司を平らげて決勝進出。
 体重50kgという典型的すぎる大食い体型。
 偏食が酷く、辛いものと海老や貝類などがダメ。それでも嫌いな食べ物は一気に掻き込めるので、食べるのは余計に早くなるらしい。

 ……この6人に加え、本来なら現在最強の大食い選手で、この大会のディフェンディングチャンピオンでもある小林尊さんが出場予定だったのですが、彼はどうやらほぼ同時期に開催される「第2回フードバトルクラブ」に出場するため、体調面を考慮してこちらを辞退した模様です。
 実は小林さんは世界で唯一と思われる、大食いのプロ選手で、なんとTVなどの大食い大会での優勝賞金だけで生活しているという、ある意味世も末な人なのです。今回の「大食い選手権」は、優勝して得られる名誉こそ業界一なのですが、賞金額は50万円。一方、「フードバトルクラブ」の賞金は1000万円であり、プロの大食い選手としては賞金額の高い方を選ぶのは自明の理といったところでしょう。……て、いうか格差がありすぎです。そんなにお金が無いんでしょうか、テレビ東京。「何でも鑑定団」の倉庫から骨董品の1つでもパクってしまえばいいのに、なんて思ってしまいますね

 まあ、そんな事情はさておき、今回は紹介した6人で争われることになりました。力量は全員ほぼ互角と思われ、かつてない激戦が予想されます。
 今回の「大食い選手権」は2週連続で放送されるため、今週の放送は第2ラウンドの途中で終わってしまいました。まるでCMを引っ張るがごとく1週間引っ張るとは、テレビ東京もいい根性してます
 しかもその第2ラウンドでは、これまで「大食い選手権」で決勝進出を外したことの無い“女王”赤坂さんが、かつてない大苦戦を強いられており、「まさかの最下位敗退か?」という緊迫した場面になっています。まさに世代交代待ったなし、といったムードになってきました。

 この秋、大食い界から目が離せません。(次回に続く

 


 

9月20日(木) 「今日の特集」〜日本大食い界、世代交代へ(1)

今の日本において、世界を相手に誇れるものは何があるでしょうか?
 かつて日本は女子バレーボールや体操を始め、様々なスポーツで世界一に君臨してきました。しかし、それは今や昔。成長著しい他国にその座を奪われ、今では世界一はおろか、メダル獲得も夢のまた夢となってしまいました。
 日本の国技である相撲も同様です。気がつけば、大相撲には外国人力士が多数在籍し、今やモンゴル人が日本人を圧倒しようかという勢いです。そりゃ、モンゴルマンはウルフマンより強かったですけどね。
 スポーツの世界だけではありません。昭和の頃には、超大国アメリカに追いつかんばかりの成長を遂げ、世界中が羨むばかりの経済大国・技術立国として存在感を示していた我が日本。しかし、今では世界経済の足を引っ張りまくる借金大国になってしまいました。かのモーニング娘。も、「世界もうらやむ恋をしようじゃないか」と、経済の方は諦めムード。もはや幕末の「ええじゃないか」的な様相を呈してきました。今週などは、ミニモニ。にオリコンチャートを席巻されるなど、日本の音楽シーンは踏んだり蹴ったりです。そんな様子を見ていると、駒木も思わず、
 「『海外でレコーディング』言うて、ホンマは
大麻吸うてるだけやんけ!」
 ……と、前後の話と脈絡の無い罵り声が出そうになってしまいます。

 しかし、そんな「21世紀最初のお荷物」と化した日本にも、世界に誇れる“お家芸”がまだ残っています。

 それは、大食いです。

 日本は昔から「わんこそば」など、大食い文化が根付いていた国でありましたが、本格的な大食いの歴史は、今から約15年前、テレビ東京の「日曜ビッグスペシャル」の一企画として始まった、「大食い選手権」の開始と同時に産声を上げます。
 当時のテレビ東京といえば、「ポケモン」も「何でも鑑定団」も無い、存在自体が痛々しい弱小放送局でした。
 ですので、大食い番組の企画を立てるにしても意匠を凝らした演出を考えるでもなく、その内容は、ただ単に「大食い自慢を集めて、とにかくメシを食わせまくる」だけでした。今から考えると、デブの素人がラーメンを啜ってるだけの地味な絵面だったのですが、その余りにもシンプルな構成が逆に新鮮に映ったのか、当時のテレ東にしては身分不相応な高視聴率を記録してしまい、「大食い選手権」は回を重ねるようになっていきました。実は「TVチャンピオン」が出来たのも、この企画がきっかけでした
 さて、年に2〜3回のペースで回を重ねるうち、徐々に参加してくる大食い自慢のタイプが変化していきました。初期の小デブ・大デブは影を潜め、小柄な痩せ型タイプが台頭してくるようになったのです。
 よく「痩せの大食い」などと言われますが、実はこれ、本当のコトで、常識外れの大食いをする人は全員痩せ型です。こういう人は消化能力が異常に発達した人で、大量に食物を摂取した場合、強力な胃酸で消化を促し、さらに栄養を吸収する間もなく体外へ排出してしまうのです。胃が満タンになったそばから腸へ送り出してしまうので食欲は底無しですし、栄養を吸収しないので永久に太りません。それを繰り返しているうちに胃袋が拡張し、ますます大食いになっていくというわけです。彼ら痩せ型大食いは、まさに大食い界のニュータイプと言っても過言ではありません。
 そんな痩せ型大食いがデブ型大食いを駆逐した「大食い選手権」は、それまでの“素人大食い自慢”から“大食い超人オリンピック”へとその性格を変え、ブラウン管に映し出される映像も、段々壮絶なものへと姿を変えていくようになったのです。今では60分間ラーメン大食い勝負の勝敗ラインが、20杯強(スープ抜き)にまで達してしまったり、物を食べた量が「○杯」とか「○個」ではなく「○kg」や「○m」で表されるようになってしまいました「カツ丼4kg」、「巻寿司6m」などと聞いていると、もはやスポーツの競技会を観ているような錯覚さえ感じてしまいます。
 ところで「大食い選手権」に出場する人たちは、どうしてか強烈なキャラをお持ちで、観てて飽きません。「ガチンコ!」みたいに、タレント事務所や小劇団から出演者を派遣してもらってるわけでもないのに、初めて見てからたった5秒で忘れられなくなる人たちばかりなのです。90分できつねうどんを26杯食えるだけでも個性十分なのに、その上キャラが立ってるなんて、もはや生きてるだけで反則です。
 そんな、時が時なら白いギターが全員に支給されるような人たちを、感情移入してウォッチングするのも、「大食い選手権」の魅力といえましょう。

 そしてこの秋、「大食い選手権」はオールスター戦が開催されました。歴戦の強者の中から選抜された人たちと今年春の“新人戦”の上位2名、さらに今回行われた予選通過者2名を加えた戦い。まさに大食いの日本一、いや世界一決定戦と言っても過言ではないハイレベルの激戦です。
 今回のテーマは「大食い界の世代交代はどこまで進んだか?」という点にあります。
 そもそも大食いは、真面目にやればやるほど身体と経済的な面に負担がかかるため、なかなか競技生活を継続することが出来ません。どんなに優秀な人でも、“選手としてのピーク”は長くて2年、短くて半年未満というのが、かつての常識でした。ですので、その時代の第一人者が引退し、入れ替わるように次の世代の第一人者が登場する、というのが以前の図式だったのです。
 ところが、数年前からトップクラスの“選手寿命”が長期化し、いつしか「大食い選手権」は、新旧の強豪が自らのプライドと胃袋を賭け、真っ向から対決する場となっていました。
 この図式に変わってから3〜4年間は、旧勢力が新勢力を弾き返したり、新人が健闘しても互角、という感じだったのですが、ミレニアムイヤーを迎えてから急に強力な新人が現れ始め、世代交代の動きがにわかに高まってきたのです。ついには、この春に行われたTBS系「フードバトルクラブ」において、決勝に進出した3人がいずれもデビュー半年未満という事態にまで進展しました。そして敗れたベテランたちは、来るべき再戦の日でのリベンジを誓ったのです。
 その舞台も整いました。時は来たれり。いよいよ決戦です。

  (明日へ続く


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