「特集」アーカイブ(2001年9月下旬)

※検索エンジンから来られた方は、トップページへどうぞ。


10/1 教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(補講) 
9/29
 教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(後編) 
9/28 教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(中編)
9/27 日本大食い界、世代交代へ(3)
9/26 教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(前編)
9/25 無名時代の徳山昌守回顧録
9/23 或るモー娘。ファンからの手紙(解決篇)
9/22 小・中学生の遠足事情


10月1日(月)

「今日の特集」教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(補講) 

※前編を受講されていない方は、こちら、中編を受講されていない方はこちら、後編を受講されていない方はこちらをどうぞ。

《教養講座のお時間です。今日もしつこく、社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りします。それでは駒木先生、どうぞ−−》

 どうもこんばんは、駒木ハヤトでございます。
 一応、この講座は前回で終了したのでありますが、非常にありがたいことに当講座が大変な好評を得ましたために、急遽もう1回補講をお送りすることになりました。もうしばらくのご精読をよろしくお願いいたします。
 それでは今回は、正式な講座ではなく補講という事もありますので、これまでとは少し変わった視点から「彼氏にしてはいけない競馬ファン」の類型を解説させていただきます。

★(番外1).馬券の上手すぎる男

 当講座では、様々な類型の男を「彼氏にしてはいけない競馬ファン」として紹介してきましたが、これまでの6つの類型全てに共通していたのは、
 「馬券が下手」
 
ということでありました。
まあ、確かに馬券が下手な競馬好きなんて連中は、言ってみれば「すすんで金をドブに捨てる好事家」なのでありまして、それを考えただけでも交際相手としては問題有りということ、これはまず間違いない。
 しかし、そうかと言って、馬券が天才的に上手な男というのも一概に良いとは言えないのであります
 日本の公営ギャンブルは、賭け金総額の約75%しか客に還元されない仕組みでありまして、長期的にプラス収支を捻り出すためには非常に厳しい条件となっている。当講座の冒頭で、私が「競馬とは金を使った椅子取りゲームのようなもの」と申し上げた由縁であります。
 それでも数多の競馬ファンの中には、非常に僅かな数ながら、安定してプラス収支を叩き出すことの出来る人たちが存在します。彼らはもう競馬ファンというよりも「馬券師」と言った方が相応しいかもしれません
 彼らは普通、ちゃんとした本業を持っておりまして、平日昼間はサラリーマンとして働き、夜や週末には「馬券師」というもう1つの顔に変身する、といった具合であります。こういう人たちは非常に勤勉でありまして、競馬の時だけでなく本業においてでも勤勉さが衰えることが無い。彼らにとって「競馬をやっているから仕事が疎かになっている」と言われるのは最も避けたいことでありますので、そう言われないためにとにかく働く。「馬券師」の職場での評価は抜群に高いのであります
 そんな彼らでありますから、大抵は女性にもモテる。そりゃそうでしょう。収入は多い上に、性格は勤勉で誠実。これで良家の次男坊だったりしたら、まさに非の打ち所が無いお婿さん候補であります
 このような方たちと縁を持った女性の方は、間違いなく幸せな時を過ごすことが出来ることでしょう。

  しかし、それはその状況が一生続くと仮定した場合であります
 
 こういう「馬券師」たちは、全てとは言いませんが、かなりの割合で「専業馬券師」を目指して、ある日突然本業をやめてしまったりするのであります。これは人生の楽な方に流れていくという訳ではなく、「どうせ勤勉に働くなら自分のとことん好きな事で」という、男のロマンの問題なのであります。

 こうなると、「馬券師」と彼の周囲の人間を取り巻く環境は一変してしまいます。

 競馬というものは不思議なもので、少しでも生活のリズムが狂うと、たちまち馬券戦線の方もリズムが狂ってしまうのであります。二束のわらじを履いていた頃は面白いように的中していた馬券が、仕事を辞めた途端に当らなくなる。昼の仕事を辞め、競馬の研究に費やす時間やエネルギーが飛躍的に増大したにも関わらず、努力すればするほど、結果の方は空回りしてしまうのであります。
 よしんば、激烈なリズムの変化に耐えるだけの卓越した才能と精神力を持っていたとしても、競馬という難しいギャンブルで、生活を維持できるほどの収入を何十年も稼ぎ続けるというのは至難の業であります。それまで何年も楽々プラス収支を続けていた馬券の天才が、突如大スランプに陥ってしまうことも少なくないのであります。
 私の身の回りでもこんな話がありました。
 私がまだ学生時代の頃、阪神競馬場でいつも顔を合わせるセミプロ「馬券師」がいました。ギャンブル場の暗黙の了解で、お互いに身の上を全く語らないままの付き合いだったため、私はその人の名前も知りませんが、とにかく馬券が驚くほど上手でありました。
 自称・本業サラリーマンというその人は、平均の儲けが年100〜150万円、時には10万円1点勝負を見事に成功させるなど勝負度胸も満点の人でありました。大穴馬券もよく的中させ、万馬券の現物を見せてもらったことも2度や3度ではありませんでした。非常に研究熱心であり、絶えず新しい予想理論を構築しようと意欲に燃えていた方でもありました。まさに勤勉そのものといった人だったのです。
 しかし、ある時を境に急に馬券が当たらなくなり、スランプ突入から半年後には競馬場から姿を消しました。それ以来どうなってしまったのか、私には知る由もありません。
 競馬とは、このような怖いギャンブルなのであります。姿を消した「馬券師」さんは、きっと今頃は本業に専念されているのだと思いますが、もしも自称が偽りで、実は「専業馬券師」だったのだとしたら、今頃トイチの借金を焦げ付かせて生駒山の中腹辺りに眠っていらっしゃるかも分かりません。

 とまあこのように、馬券がやたらと上手すぎる男というのは、やや喩えが悪いですがHIVウイルスみたいなものでありまして、潜伏期間が終わった途端に人生が急速に傾き始めてしまうのであります。こういう男と付き合うなとは申しませんが、結婚する時はバクチ打ちの男に嫁ぐ覚悟で事に臨むよう忠告いたしたいものであります。

★(番外2).競馬およびギャンブルに興味の無い男

 馬券下手は論外、されど馬券上手も問題あり。
 ここまでご精読された女性の皆さんは、「それならば、競馬に関わりの無い、もっと言ってしまえばギャンブルに縁の無い男を捜そう!」、などといった事をお考えではないでしょうか?
 しかし、私から言わせていただければ、競馬、ましてやギャンブル全般に全く興味の持てない男など論外であります
  
 そもそもギャンブルの歴史とは、人類の文明の歴史そのものであります
 古代エジプトのピラミッドに残る文明最古の碑文は、神様がギャンブルで仕事の分担を取り合うという神話であり、古代インドを代表する叙事詩は「カイジ」顔負けの一大賭博叙事詩。さらに日本の貴族社会で定番の娯楽であった囲碁と双六(バックギャモン)も代表的な賭博であります。もう、この手の話は世界中、それも時代を問わず見受けられるものでありまして、「人間とは賭ける動物である」と断言しても良いギャンブル欲は人間第4の欲望、まさに「我賭ける、故に我有り」でありまして、ギャンブルを一切しない男など、去勢されているも同然なのであります。
 また、イギリスの公式調査によりますと、ギャンブルをする人間は、全くしない人間に比べて勤勉に働くという統計が出ております。つまり、趣味としてギャンブルをする人間の方が総じてエネルギッシュなのであります。
 人畜無害な精神的に去勢された男の方が良い、とお思いならば、その意志は尊重いたしますが、果たしてそれで心が満たされるのかどうか。老婆心ながら忠告させて頂きたいと思います。

 

 さて、そろそろお時間となりました。
 当講座をお読みになった女性の方々が、ロクデナシに見切りをつけ、真っ当な人生を歩まれることを祈りつつ、当講座を終わらせて頂きたいと思います。長らくのご精読、ありがとうございました。

《今日は社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りしました。次回の講座をお楽しみに。教養講座を終わります》 (この項終わり)


9月29日(土)

「今日の特集」教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(後編) 

※前編を受講されていない方は、こちらを、中編を受講されていない方はこちらをどうぞ。

《教養講座のお時間です。今日も、社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りします。それでは駒木先生、どうぞ−−》

 さて、皆さんご機嫌いかがでございましょうか。駒木ハヤトでございます。
 ご好評を頂いた当講座、予定では本日が最終回でございましたが、もう一回だけ“補講”をさせていただけることになりました。
 というわけで、今日と次回のあと2日間、どうぞお付き合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは今日は、類型4から参りましょう。

★類型4.競馬の予想をしている最中から酒を呑む

 競馬場内やその近くの飲食店では、ビールなどの酒類が販売されております。競輪やオートレースなどのレース場の一部では、客の暴徒化を恐れて酒類販売が規制されていたりしますが、競馬場は客層が比較的大人しいこともあり、私の知る限り、全ての競馬場の売店等でビールくらいは置いているものであります。
 でありますので、阪神競馬場の食堂エリアなどに足を伸ばしますと、「馬手に『競馬ブック』、弓手に『アサヒスーパードライ』」といった風情の男性客たちが、昼日中から赤ら顔で歓談している様などが見受けられるのであります。
 まぁ、その光景そのものは、「嗚呼、日本は平和だな」などという思いが心に染み渡る、退廃の中に牧歌的な要素が入り混じった絵面であったりしますので、私も「競馬場からは酒を排除すべきだ」などといった野暮ったいことは言いません。
 しかし当講座の趣旨に鑑みますと、やはりこの「競馬場で酒を呑む男」というのはいささかの問題があるのであります

 競馬というギャンブルは、間口が大変広いにも関わらず、非常に高度で複雑な思考を求められるギャンブルであります。
 膨大な競走馬のデータに加え、当日・レース直前までの競走馬の体調や気配、予想されるレースの展開、厩舎関係者のレースに対する意気込み、騎手の力量や心理状態、時には冠婚葬祭などのプライベートまでがレース予想のファクターになるのであります。しかもこれらのファクターを、絶妙のバランスで軽重をつけなくてはならない。そのサジ加減が少しでも狂うと、待っているのはハズレ馬券の山なのでありまして、これは非常に大変な作業なのであります。
 このようなシラフでも大変な作業、酒など呑んでいては全う出来るはずがありません。酒を呑むくらいなら、ヒロポンでも打っていた方が余程マシであります。
 元来、賭け事の場は“鉄火場”と言いまして、一種の戦場であります。まさに「殺るか殺られるか」といった、非常にシビアな場なのであります。そこで酒を呑むなど、自殺行為なのであります。
 よく戦争映画などに、戦場でもウイスキーを手放さない昼行灯の小隊長などが出てきたりしますが、そういう登場人物は死に場所を探しているのであって、大抵は恰好のよい死に方をして舞台から消えてゆくのであります。結局生き残るのはシラフの頭をフル回転させて、綱渡り的な機転の利かせ方をする主人公で、これは競馬でも同じ事が言えるのであります。
 ですので、競馬場で酒を呑む男、というのは即ち、「競馬場という戦場へ、わざわざ戦死しに行っている男」なのでありまして、この手の男と付き合っていたら、いくら金があっても足りません。ましてや所帯など持って20年ほどしますと、マイホーム1軒分くらいの金が霧散している、といった悲劇に見舞われること請け合いなのであります
 また、もう一点付け加えますと、このタイプの男は、齢40も過ぎれば立派な「ドロドロの競馬オヤジ」になっていることは間違いありません。そう、よく2時間ドラマなどに出てくる、ステレオタイプなアレであります。
 更年期障害で痛む関節などを押さえつつ、「自分の人生の選択、間違ってなかったかしら」などと、西日射す県営住宅のキッチンで思いを巡らす……。そういうことになってからでは手遅れでありますので、是非、今の内に熟慮されるよう、アドバイスさせて頂きたいと思います。
 後からボディーブローのように、自分の人生に効いてくる、これがこのタイプの男の特徴であります

 

★類型5.学生生活を学業不振でドロップアウトした

 競馬のみならず、ギャンブル全般において、勝つために最も必要なモノ、それは勤勉さであります。
 よく「ギャンブルで楽して金儲け」などと言われますが、人類の歴史にギャンブルが誕生してからの約1万年で、楽してギャンブルで金を儲けた者など皆無であります。(宝くじなど、偶然によって一攫千金を獲得した者は、ここでは除外します)。今昔を問わず、世界中にはギャンブルで生計を立てる、所謂“プロのギャンブラー”が存在しますが、彼らは人類の中で最も勤勉な部類に入るということは間違いありません。この事は、それこそ幾らでも賭けていいような事実なのであります。
 競馬もまた、その例に漏れず、大変な勤勉さを必要とするギャンブルであります
 まず、シーズンオフが存在しないため、1年365日絶えずアンテナを伸ばしておかなくてはならない。競馬は原則として土・日開催ですが、情報やデータの収集に休みはありません。情報とデータは競馬の命ですからサボるわけにはいかないのであります。
 しかも質が悪いことに、競馬と言うギャンブルは、サボっても馬券は買える上、それでいて勝てない程度に馬券が的中してしまうのであります。楽をしていても適当に快感が味わえてしまうのですから、誘惑に負ける者が後を絶たない。この誘惑に勝てるだけの勤勉さとなると、それは相当のものなのであります。

 その点から考えますと、日常生活において勤勉さが窺えない男は、競馬をやっても成功するはずなど無い。これは自明の理なのであります。
 現在の日本社会はよく出来たものでありまして、人並以下でも最小限度の知能と勤勉さがあれば、少なくとも高校までは学業を全う出来る仕組みになっております。真っ当な理由もなく学業をドロップアウトしてしまうような根性無しに、競馬のような難易度の高いギャンブルが務まるわけがないのであります。貴女がこのような連中と付き合ってしまったが最後、全財産をそれこそケツの毛を抜かれるまで使い果たされること確実であります「楽して金儲けたい」と考えてギャンブルをする男と一緒にいても、百害あって一理無し。とっとと別離を告げておきましょう。

 また、勤勉にも関わらず学業が全う出来ないというのも、これはこれで問題なのであります。何度も言っておりますが、競馬は膨大なデータと情報を分析して、レースの結果を予想するギャンブルであります。その分析のためには、最低限度の思考力と計算能力が必要なのであります。まあ、有り体に言ってしまうと、「バカに競馬は出来ない」わけであります。
 何やかんやといいましても、結局、世の中頭が良いヤツが勝つわけでして、競馬などのギャンブルは、その縮図なのであります。


★類型6.馬券が外れたのを自分以外のせいにする

 競馬は非常に難易度の高いギャンブルでありますが、ただ1つだけ我々に有利な面がある。
 それは、全国全ての窓口で必ず的中馬券を売っていて、我々は任意でそれを購入できるということであります。ですから、競馬における馬券の当たり外れに対する最終的な責任は、全て馬券を購入している我々にあるわけであります
 しかし、それなのに馬券が外れた責任を他者に転嫁するものの多いこと多いこと。騎乗ミスをした騎手に文句を言うのならともかく(それにしても、騎乗ミスをするような騎手の馬券を買った自分が悪いのでありますが)、中には競馬新聞などの予想印を打った記者に対して「このバカ、ちっとも当らねえ」などと罵詈雑言をぶつける輩までいる。他人に頼っておいて、結果が伴わなかったら掌を返すような態度をとる。なんと醜い連中でありましょうか
 彼らは、自分の失敗を認められない、虚栄心に満ち満ちた懐の狭い人間性の持ち主であります。ですので、こんな男と交際した日には、プライベートなどでも決して自分の非を認めない上、それを棚上げして貴女を責めまくることでしょう。もし、あなたの彼氏がハズレ馬券を握り締めて、「○○のバカヤロウ!」とか「○○全然ダメじゃねえか、ウゼェんだよ」などと口走るようなことがあれば、貴女は今夜以降の身の振り方を考えた方がよろしいかと存じます。

 さて、以上が彼氏にしてはいけない競馬ファンの6か条でございました。果たして参考になったかどうか、少々心配ではありますが、ここで一旦教鞭を置かしていただきます。ご精読、有難うございました。

 《今日は社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りしました。次回の講座をお楽しみに。教養講座を終わります》 (補講へ続く) 


9月28日(金)

「今日の特集」教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(中編)

 ※前編を受講されていない方は、こちらをどうぞ。

《教養講座のお時間です。今日も、社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りします。それでは駒木先生、どうぞ−−》

 え〜、皆さん今晩は。駒木ハヤトでございます。
 今日も秋の夜長の一時、当講座をご精読していただければと思います。
 それでは早速参りましょう。

 ★類型2.購入する馬券の点数(組合せ数)が異常に多い

 競馬というギャンブルの花形と言えば、1つのレースにおける1着馬と2着馬を的中させる馬番連勝馬券でありましょう。
 日本で最大の売上額を誇る、中央競馬の馬番連勝複式(以後、「馬連」とします)馬券の場合、最大153通りもの組み合わせの中から正解の1通りを選ばないと的中とならないもので、非常に難易度の高い馬券であります。
 ですので、ほとんどの馬券購入者は、複数の組み合わせの馬券を購入し、的中を目指します。正解は1つの組み合わせしかありませんから、複数の組み合わせを購入した場合、最低1通り以上の不的中馬券を購入することになります。出来るだけ分かりやすく喩えますと、的中の可能性を上げるために掛け捨ての保険を掛けるようなものと言えばよろしいかと思います。
 さて、購入する組み合わせの数──競馬ファンは「1点、2点…」と数えます──の標準的なものとして、以下のようなものがあります。

 ◎2着以内に入りそうな馬が3頭いる場合、3頭の内、どの馬が2着以内に来ても的中になる買い方=「三角買い(3頭ボックス買い)」
 (例) A、B、Cという3頭の馬の「三角買い」…「A−B」「A−C」「B−C」の3点

 ◎「三角買い」の応用で、2着以内に入りそうな馬が4頭いる場合の買い方=「4頭ボックス買い」
 (例) A、B、C、D、の「4頭ボックス買い」…「A−B」「A−C」「A−D」「B−C」「B−D」「C−D」の6点
 ※その他、「5頭ボックス買い」(合計10点の組み合わせ)もある。

 ◎2着以内に入る確率が極めて高い馬1頭を「軸」にし、残りの馬の中で実力上位と思われる数頭を「ヒモ」として、「軸」馬と絡める買い方=「流し買い」
 (例)「軸」馬をA、「ヒモ」馬をB、C、D、E、Fの5頭とする場合の「流し買い」…「A−B」「A−C」「A−D」「A−E」の5点。
 ※「軸」馬以外の全ての馬を「ヒモ」馬とする買い方を「総流し」と言う。10頭で争われるレースの場合、「軸」馬1頭、「ヒモ」9頭で、合計9点になる。

 ……とまあ、個々のスタイルに合った買い方を駆使して、皆さん的中を目指すわけであります。ちなみに私の場合、以前は「4頭ボックス買い」、現在は「三角買い」を基本に馬券戦略を立てております。

 では、最低限の用語解説を終えたところで、肝心の本題であります。
 表題にあります通り、余りにも多点数の馬券を買う男、これもまたロクデナシの素質十分なのであります。症状と致しましては、金銭感覚の欠如、計算能力の未発達に加えて、自尊心が過剰にして脆いという「ガラスのプライド」、及び優柔不断であります。中程度では日常生活に支障は現れませんが、重度になりますとドメスティックバイオレンス予備軍でありますので、この手の男と交際するのは生命の危機に及ぶ可能性があります
 目安と致しましては、馬連で平均して7点以上馬券を買うような男で中程度、10点を超えると危険水域、15点を超えると完璧に重度であります

 何故、多点数の馬券買いが問題なのか。それは「馬券の的中」という言葉に隠された幻想に起因するものであります
 馬券の購入点数を増やすと、その分だけ馬券の的中率は上がります。これは間違いないところでありますが、意外と見逃されがちなのが、馬券を買えば買うほど儲けが減るという事であります。つまり、馬券の購入点数を増やして的中率を上げるという事は、ギャンブル最大の目的である「金儲け」の大きな障害となるわけで、これは非常に大きなジレンマなのであります。儲けを追求するためなら、馬券は1点買いがベストなのは言うまでもありません。ギャンブル社会学の大家・谷岡一郎教授も、「競馬で勝つためには2点買いまでが限界」と著書で述べておられます。
 では、それならどうして皆、3点だの6点だのの多点数の馬券を購入するかと言いますと、馬券が的中するという事、これ自体が大変な快感だからなのであります。特に大穴馬券を的中した時など、まるで世の中全てが自分を中心に回っているような征服感が脳内を駆け巡るといった具合で、「自分は偉いんだ」などと、普段の生活では満たされない自尊心を満足させることも出来る。まぁ、一種のアッパー系麻薬のようなものと言って差し支えないのであります。
 しかも質の悪いことに、この“麻薬”は依存症がありまして、金儲けを忘れて、とにかく的中を求めるようになる。いや、それだけならまだマシで、悪化すると金を損すること以上に的中できないことが許せなくなってくるのであります
 また、この馬連馬券の特徴としまして、ある程度まで行くと、いくら点数を増やしても的中率は頭打ちになって来ます(賭け金の額は飛躍的に膨らんでゆくのですが)。それでも依存症に陥った人間は馬券の購入点数を増やしてゆきます。シャブ中になった人間が、常人の致死量に及ぶ覚せい剤を血管注射してゆくのとよく似ていますね。覚せい剤を打つと肉体が破綻するように、この依存症が重度になると、性格が破綻するのであります

 さて、この項のまとめです。
 ここで取り上げた「余りにも多点数の馬券を買う男」。彼らは本来金儲けするためのギャンブルにおいて、自分のちっぽけな自尊心を金で買っているヒョットコ野郎なのであります。しかも本人にはその自覚が無くて、「自分は競馬で金儲けできる凄い人間」だと思い込んでいる。これは大変に危険なことなのであります。
 本来、的中率を上げるためには、コツコツと競馬を研究することが本道であります。それを放棄して、楽な方向に逃げる。しかもチンケなプライドだけ高い。こんな輩がロクデナシでなくて何でありましょうか。
 もし貴女と交際している男がこのような手合いであれば、酒に酔って暴力を振るわれない内に縁を切るのが得策であります
。また、日常生活に支障を来たさない中程度の症状であっても、馬券下手で金がいくらあっても足りないのはほぼ間違いないところでありますから、注意を払われるべきだと言っておきましょう。

★類型3.予想の際、競馬新聞を買わずにスポーツ新聞で代用する

 競馬の予想に必要なモノ、それは一にも二にもデータであります。

 時々、語呂合わせや出目、さらにはその日の「NHKのど自慢」のゲストの名前から連想して馬券を購入する孤高なお方がいらっしゃるようですが、そういう人たちは競馬を通じてシュールリアリズムを追求されている方たちなので、何も言わずそっとしておいて上げるのが礼儀であります

 閑話休題。
 そのデータを入手するのに、非常に便利なものが競馬新聞であります。わずか8〜12ページのタブロイド版の新聞にも関わらず、競馬の予想に必要なデータの95%以上はこれで入手することができるようになっております。
 しかしこの競馬新聞、少々値が張る代物でありまして、1部410円が相場であります。競馬初心者の方たちは、まずこの値段を聞いて驚かれるようであります。まぁ、確かにたかが新聞1部に400円以上を支払うのに多少の抵抗が生じる、これは致し方ないことでありましょう。
 一方、同じく競馬の予想記事を掲載しているスポーツ新聞は120円が定価。競馬新聞の1/3以下であります。ですので、競馬場へ行くと、競馬新聞ではなくスポーツ新聞を広げて馬券の検討をしている人も、まま見受けられます。
 しかし、これで良いのかというと決してそうではありません。
 初心者ならいざ知らず、競馬を始めて数年経った“中堅クラス”の競馬ファンが、競馬新聞を使わずにスポーツ新聞で代用しているとなると、これはこれで問題になってくるのであります。
 と言いますのも、スポーツ新聞の競馬予想記事には致命的な弱点があるのであります。
 スポーツ新聞は、当たり前の話でありますが、他のスポーツのニュースも掲載しなくてはならない。ですので、競馬に割くことの出来るスペースは、自然と限られてしまうものなのであります。その結果、重要なデータであるはずの調教の内容や厩舎関係者のコメントが、かなりの部分割愛されることになる。酷い場合には、予想記事とは名ばかりで、スペースの9割以上が出走馬の一覧表で埋めつくされ、残りの1割で刺身のツマ程度のデータといい加減極まりない予想印が載っているだけ、なんてことも。これではいくら安上がりでもクソの役にも立たないのであります
 
競馬というギャンブルをある程度真面目にやっていると、程無くして、この“スポーツ新聞の不備”に気付くことになるのでありますが、中にはそれに気付いていながらも、頑なに競馬新聞の購入を拒む奇特な連中が存在するのであります。そう言った手合いに、どうして競馬新聞を買わないのかと質問しますと、決まってこのような答が返ってきます。
 「だって、新聞に400円もかけるのって、もったいないよ」
 こんな事を言う輩に限って、平気で1000円単位の馬券を購入したりするのですから、不思議であります。
ロクにデータも集めずに馬券を買うという行為は、整備不良の銃を片手にアフガンゲリラと戦うようなものでありまして、これは金をドブに捨てているも同然の愚行なのであります。金を使うべき所で使わず、使わなくていいところで散財する。まさしく金銭感覚の欠如そのものと言っていいでありましょう。
 この手の男は“生きた金”が使えませんから、みっともない所でみっともない位ケチである可能性が非常に高い。例えば、馬券で1万円勝負するクセにデートの食事は吉野家とか、一日の競馬資金が2万円のクセにラブホテルは休憩の上に割り勘とか、惨めな思いをさせられること必至であります。
 前記の類型1.2に比べると、まだ実害は小さいですが、それでも交際を続けるには、それなりの覚悟が必要でありますので、ご承知おきくださいませ。

 そろそろお時間となりました。それではまた明日。

 《今日は社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りしました。次回の講座をお楽しみに。教養講座を終わります》 (明日の後編に続く


9月27日(木)

 「今日の特集」日本大食い界、世代交代へ(3)

 この話題、一週間ぶりの更新です。
 まだ第1回、第2回をお読みでない方は、すぐ下にリンクを繋げておきますので、先にお読みいただければ幸いです。

 第1回(「大食い選手権」の成り立ちなど)はこちら
 第2回(今回の「大食いスーパースター戦」出場選手プロフィールなど)はこちらからどうぞ。

 さて、今回の第3回は、「大食いスーパースター戦」のTV観戦レポートを中心にお送りします。いつもに比べてお笑い要素は控え目にしていますのでご承知置きくださいませ。
 あと、前回の訂正です。今週と来週に放送されている「第2回フードバトルクラブ」の優勝賞金を、前回1000万と書きましたが、正しくは「総額1000万、優勝賞金500万」の間違いでした。謹んでお詫びして訂正させていただきます。
 それでは、以下が観戦レポートです。
 ※レポート中は文体が「で、ある」調に、人名が敬称略になります。

★――――――――――★

☆第1ラウンド・富士宮名物・焼そば10軒完食勝負

※ルール:富士宮にある焼そばを出す店10軒を移動しながら、各店指定の焼きそばを食べる。全店で制限時間内に完食すればラウンド通過。

 今回初めて実施された形式。番組側の意向としては、間隔を開けることで胃袋内の食物を膨張させ、選手たちを揺さぶろうとしたのだろうが、これは消化活動の早い大食い選手たちには逆効果。展開に山も無く、全員スイスイと完食してしまった。
 射手矢などは、試合後半に水を意識的にがぶ飲みして短期的に胃袋を膨張させようとするなど、心は次以降のラウンドに向いている始末。これは企画の大失敗と言わざるを得ないか。しかし、平然と焼きそば10皿を平らげる選手たちを見て、初めて番組を観る視聴者が日本大食い界のレヴェルの高さを知ることが出来たという事が救いではある。

☆第2ラウンド・1mネギトロ巻無制限勝負

※ルール:長さ1mのネギトロ巻(重量500g)を60分でどれだけ食べられるかを競う。最下位1名が脱落。

 スタートと同時に白田・射手矢の2名が飛び出す。やや遅れて3位グループに稲川、岸、渡辺。渡辺はワサビが大の苦手だが、苦しみながらも食べつづける。最下位に遅れたのは、なんと女王・赤阪。慣れない最下位追走にリズムを狂わされ、ペースがなかなか上がらない。
 15分経過。順位は、1位白田、2位射手矢(以上4m完食)、3位グループが稲川、岸、渡辺の三者(3m完食)、6位に赤阪(2m完食)
 この時間帯も、依然として上位の2人は快調に飛ばす。この時点で既にラウンド通過安全圏といったところ。中位グループでは、岸が単独3位に浮上して、これもほぼ安全圏。こうなると注目は最下位争いで、新人2人を赤阪が懸命に追いかける構図。最大1mあった、赤阪と2人との差が、ここにきて徐々に詰まり始める。
 30分経過。1位グループ白田、射手矢(6.7m完食)、3位岸(5.8m完食)、4位グループ稲川、渡辺(5.2m)、6位赤阪(4.7m)
 35分経過。ここで赤阪が急速に4位グループとの差を詰め始める。時間が経過するに連れて新人2人のペースが落ち、ついに赤阪が4位浮上。
 やがて渡辺の手が止まり、稲川が5位浮上。そして45分25秒の時点で渡辺がリタイヤしたため、異例のタイムアップ前での試合終了となった。

1位通過 射手矢侑大 8.7m(4.35kg完食)
2位通過 白田信幸 8.5m(4.25kg完食)
3位通過 岸義行 7.4m(3.7kg完食)
4位通過 赤阪尊子 6.0m(3.0kg完食)
4位通過 稲川祐也 6.0m(3.0kg完食)
リタイア 渡辺人史 5.7m(2.85kg完食)

 試合終了後、射手矢と白田が60分での記録を出してみたいと申し出て、急遽記録会が開催された。結果は白田が10.57m(5.265kg)、射手矢が10.48m(5.24kg)をそれぞれ完食
 このラウンドで目に付いたのは、やはり「春の新人戦」組の2人。大食いの能力もさることながら、スピードがとにかく速い。岸、赤阪といった1999年以前デビュー組の旧勢力に付け入る隙を与えなかったと言うのは驚異的。まさに世代交代の色が濃くなってきた印象を受けたラウンドであった。
 渡辺の敗因はやはり偏食だろう。嫌いな食物を60分ハイペースで食べ続けるというのは並大抵の苦痛ではないはず。これは大食い選手を続けるにあたって、大きなハンデとしか言いようが無い。

☆第3ラウンド・ゆでだこ丸かじり勝負

※ルール:1杯400gに切り揃えられた茹で蛸を、45分でどれだけ丸かじりで食べられるかを競う(ナイフ等の使用不可)。最下位1名が脱落。

 スタートと同時に射手矢が猛烈なスピードで飛び出す。まるでチクワか何かを食べているような錯覚さえ受ける速さで、みるみる内に蛸が口内に吸い込まれてゆく。一方、出遅れたのは白田。前歯の噛み合わせが悪いのか、蛸を思うようにかじることが出来ない。途中で奥歯で無理矢理噛み切る作戦に切り替えたが、かなりのビハインドを抱えることになってしまった。
 10分経過。1位射手矢(5杯完食)、以下同じ2杯完食も、僅差で岸、白田、稲川、赤阪の順。赤阪はここでもスピード競走に飲み込まれて苦戦している。
 15分経過。各選手1杯ずつ上積みして順位変わらず
 この辺りから、徐々に赤坂のペースが上がる。競り合っている他の3人も負けじと奮闘し、順位が入り乱れる混戦に。
 30分経過。1位射手矢(9杯)、2位岸(6杯)、3位稲川(6杯)、4位赤阪(5杯)、5位白田(5杯)。無理のあるスタイルで食べている白田、ここで一旦ペースが落ちていた。35分過ぎまで劣勢が続く。
 40分経過。ここで白田が最後の力を振り絞り4位浮上。最下位に転落した赤阪もピッチを懸命に上げたため、2位〜5位までは団子状態に。
 残り1分の時点でも形勢は混沌。そのまま試合終了へ。 

1位通過 射手矢侑大 11杯+340g(4.74kg完食)
2位通過 白田信幸 8杯+374g(3.574kg完食)
3位通過 稲川祐也 8杯+330g(3.53kg完食)
4位通過 岸義行 8杯+296g(3.496kg完食)
リタイア 赤阪尊子 8杯+152g(3.352kg完食)

 圧巻だったのは、やはり射手矢。終始独走で、ここしばらくでは珍しい大差での1位通過となった。これからも歯ごたえの強い食物がテーマの時は部類の強さを発揮するはずである。
 稲川の健闘も光る。途中のラウンドとはいえ、岸・赤阪越えを達成したのは誇っていい。
 赤阪の敗因は何だろうか? 放送は後でも収録が前だった「フードバトルクラブ」の疲れが残っていたのか、それとも根本的な能力の差が順位として現れたのか。色々理由は考えられるが、駒木の私見としては「最下位争いに対する不慣れ」が存外大きかったのではないかと思っている。赤阪はデビュー以来、出る試合全て1位かそれに近い順位をマークしてきた。しかもほとんどが駆け引き無用で、実力を出していれば自ずと結果がついてくる、といった具合だった。それが今回、急激に進んだ「大食いの早食い化」によって最下位争いに巻き込まれてしまったわけで、それがきっかけで混乱しなかったと言えば嘘になるだろう。
 赤阪はこれが初の予選段階での敗退。名実共に赤阪尊子の全盛時代はその幕を閉じた。1年前まではとても考えられなかった話ではあるが、時の流れはそれだけ容赦が無いという事か。

☆第4ラウンド・真珠ご飯おかわり勝負

※ルール:1杯250gの炊き込みご飯を、45分でどれだけ食べられるかを競う。最下位1名が脱落。

 このラウンドもハイペースでの幕開け。このラウンド後に岸が語っていたが、まさに「早食いの延長にある大食い」といった様相。45分では満腹にならないのだから、そうなるのも無理は無い話だが……
 このラウンドも射手矢がペースメーカーに。稲川がそれに肉薄する。彼もまた、相当な早食い能力があるようである。
 5分経過。1位射手矢(5杯)、2位稲川(5杯)、3位白田(4杯)、4位岸(4杯)。早食いの苦手な岸、苦戦の滑り出し。
 15分経過。1位射手矢(12杯)、2位稲川(11杯)、3位白田(11杯)、4位岸(9杯)。これまでの「大食い選手権」では信じられないようなハイペースが延々と続く。しかし、時間が経つに連れて力量差が出てくるのか、相対的に稲川のペースが鈍り始める。替わって白田が2位に浮上。
 22分30秒経過。1位射手矢(16杯)、2位白田(14杯)、3位稲川(14杯)、4位岸(12杯)
 後半戦に入っても射手矢が順調に数字を伸ばす。白田は完食杯数でも単独2位に浮上し、決勝進出確実圏へ。最下位争いは、岸がここにきて差を詰め始める。それに気圧されたわけではなかろうが、稲川のペースがどんどん鈍ってゆく。
 35分経過。1位射手矢(19杯)、2位白田(17杯)、3位稲川(16杯)、4位岸(15杯)
 40分を前にして、岸が3番手に浮上。稲川は16杯を過ぎた辺りで、今選手権で初めて箸が止まる。老獪な岸、このタイミングを見逃さず、ここぞとばかりに差を広げ、瞬く間にリードは2杯差に。これで大勢は決した。
 40分経過。1位射手矢(24杯)、2位白田(20杯)、3位岸(19杯)、4位稲川(17杯)
 射手矢、このラウンドも大差での鮮やかな逃げ切り。後半に入ってもペースが落ちなかったのは立派。

1位通過 射手矢侑大 26+4/5杯(6.7kg完食)
2位通過 白田信幸 22杯(5.5kg完食)
3位通過 岸義行 21杯(5.25kg完食)
リタイア 稲川祐也 17+4/5杯(4.45kg完食)

 昨年の小林尊に続く、新人でのオールスター戦優勝を目指していた稲川がここで力尽きた。ただ、敗れはしたものの、その実力の高さは光るものがあったと言えよう。少なくとも現時点で、昨年の水準なら優勝争いを演じられるだけの実力は有しているはずだ。
 だがここ1年で、「大食い」は専門的なトレーニングと実戦経験がモノを言う競技へと生まれ変わってしまった。その意味では、地方在住で今回が実質デビュー戦の稲川にとっては「利ここにあらず」だったに違いない。彼がこれから現役生活を続行するかは不明だが、今度は是非トレーニングを積んで、一皮剥けた稲川祐也を見せてもらいたいものである。

☆決勝ラウンド・和歌山ラーメン無制限勝負

※ルール:1杯600gのラーメンを60分でどれだけ完食できるかを競う。ただし、スープと若干の刻み青ネギは残しても良い。

 またしても「早食い」状態のハイペースでスタート。3人とも1杯1分前後の超ハイペースで箸を進めてゆく。ここでもトップを走るのは射手矢。だが、この試合では白田も負けずに肉薄する。岸は、このペースがオーバーペースと判断し、ペースを落とす。しかし、結果的にこれが致命的な失策となった。
 10分経過。1位射手矢(9杯)、2位白田(9杯)、3位岸(6杯)
 射手矢と白田は、差が10秒以内のデッドヒート。12分過ぎには白田がトップに立つなど、まさに一進一退の攻防。岸はマイペースを守り、後半勝負に賭ける。(というか、賭けざるをえない展開になったのだが)
 20分経過。1位白田(16杯)、2位射手矢(16杯)、3位岸(10杯)。1位と2位の差は依然として20秒以内の大接戦。
 25分経過。1位白田(19杯)、2位射手矢(19杯)、3位岸(12杯)。この段階でも上位の2人は1杯あたり90〜120秒の超ハイペースを続行。制限時間半ばにして、「大食い選手権」最高記録(20杯)を達成する。
 30分経過。1位白田(21杯)、2位射手矢(21杯)、3位岸(13杯)
 35分経過。24杯完食の時点で、再び射手矢がトップに。
 40分経過。1位射手矢(25杯)、2位白田(25杯)、3位岸(18杯)
 ようやく上位2人のペースに翳りが見えてきたと思った矢先、射手矢の箸が止まる。苦しそうに体を揺するような動きを見せる。これはわんこそば早食いで見られる光景で、大量の麺で擦れた食道が炎症を起しているのと、胃袋が満杯になって、食道と胃の境目にまで食物が詰まってきている証拠である。
 本来、このようなラーメン長時間大食いでは見られない光景ではあるが、今回は常識を超えたスピード勝負になったために起こった出来事と言える。
 苦しむ射手矢と対照的に、白田のペースは衰えない。45分を過ぎた際の、27杯完食から28杯完食までの間隔はなんと90秒であった。
 48分経過。1位白田(28杯)、2位射手矢(25杯)、3位岸(20杯)
 ここまで快調に飛ばしてきた白田も、28杯完食を境に箸が止まる。彼もまた、胃袋が限界に達したのだ。
 ついに1.2位の両者がストップ。漸く岸にチャンスが巡ってきたが、ここまでについた差があまりにも大きすぎた。12分で8杯は挽回不可能の差であった。
 50分経過。ここで射手矢が再始動。どうやら胃の底に溜まっていた物が腸へと流れ始めたようだ。3杯差を埋めるための猛烈なチャージが始まった。
 55分経過。1位白田(28杯)、2位射手矢(26杯)、3位岸(21杯)
 それから間もなくして、射手矢は27杯を完食。ついに白田との差は1杯差となる。 しかし、残り3分を切って白田も再始動。瞬く間に29杯、30杯とドンブリを重ね、ついに射手矢は万事休す。最後は再び差が開いてのタイムアップとなった。

優勝 白田信幸 30+1/5杯
2位 射手矢侑大 27+3/5杯
3位 岸義行 22+1/5杯

 白田が春の新人戦の雪辱を果たして、初のビッグタイトル制覇。最後にモノを言ったのは、恵まれた体格と胃の容量であった。小林尊欠場で、“暫定チャンピオン”扱いになるのは残念だが、正真正銘のチャンピオン就任は来年以降の楽しみとしておこう。
 射手矢も敗れたとはいえ、春に比べて大きな成長を見せた。特に早食い能力は相当なもので、来年は是非、ニューヨークでのホットドッグ早食い選手権(現時点では開催は微妙だが)に出場してもらいたいと思う。
 岸の敗因は、優勝ラインを20杯前後と想定してしまったことにあるのではないか? 今年の「ホットドッグ早食い」で新井和響が優勝ラインを30本と想定して大敗したように、想定が外れた場合のリスクが極めて大きい。今は新勢力が若さに任せてどんどん記録を更新させている時期である。そんな時期に優勝ラインという名の足かせをはめてしまっては、効果的というよりもむしろ逆であろう。今回にしても、開始5分までのハイペースを維持しておけば、わずかながらに優勝の目は有ったはずである。それを自ら放棄したのだから、敗北もまた当然と言えるのではないか。
 ただ、岸にも擁護すべき点がある。彼は本来、制限時間90分以上の超長丁場を得意とする選手で、1999年秋に赤阪、新井を破って優勝した時も制限時間90分であった。そんな彼にとって、60分と言う試合時間は余りにも短すぎたとは言えまいか。ひょっとしたら今回のレギュレーションが決まった時点で、岸の優勝は非常に難しいものとなっていたのかも知れない。

★――――――――――★

 ……以上レポートでした。
 結果を見てもお分かりでしょう。ついに大食い界の世代交代が本格的に始まったようです。駒木のような、10年来の「大食い選手権」ファンにとっては寂しい話なのですが、世代交代も無く同じ顔ぶれでマンネリ化するよりは、ずっと喜ばしい話でもあります。これからも面白い戦いを見せてもらいたいものと思います。
 このシリーズ、次回は来週の週末。「フードバトルクラブ」の結果を踏まえて、もう少し踏み込んだ話をしてみたいと思います。


9月26日(水)

「今日の特集」教養講座・「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」(前編)

 《教養講座のお時間です。今日から3日間にわたり、社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りします。それでは駒木先生、どうぞ−−》

 皆さん、こんばんわ。駒木ハヤトでございます。
 伝説のアイドルホース・オグリキャップの登場から早10年余。最近はその勢いにやや翳りが見えたとはいえ、日本の若い男性の間で競馬というギャンブルは未だ根強く愛好され、毎週のように競馬場やウインズ−場外馬券売り場−に足を運ぶ方は数十万人とも百万人を超えるとも言われております。
 競馬学を専門としている私としましては、かのような競馬人気は大いに結構な話なのでありますが、ここまで競馬というギャンブルの裾野が広がってしまうと、様々な弊害が生じてしまうこともある。これもまた、事実なのであります。
 競馬というギャンブルは、椅子の代わりに現金を使った椅子取りゲームみたいなものでありまして、TVCMなどで垂れ流される明るいイメージとは裏腹に、それはもう過酷なギャンブルだったりするのです。勝ち組は滅多に出てこない代わりに負け組はゴマンと生み出されるように出来ておりまして、これが非常に質が悪い。イメージに騙されて金を次ぎ込み続け、気がついてみれば借金で首が回らない、なんてこともしばしばあったりするのであります。
 それでも競馬で借金地獄に堕ちた本人は、結局のところ自業自得であります。そんな輩がどうなろうと、私の知ったことではございません。しかし、そんなロクデナシと運悪く縁を持ってしまったがために、罪無き女性が身を持ち崩してしまうなんてことがある。これは私にとっても、大変に忍びないことであります。
 そこで、今回の講座です。
 当講座では、競馬で身を持ち崩すロクデナシの類型的な特徴を6つばかり紹介し、全国の女性の皆さんに、そういう男と付き合ったりすることの無いよう注意を喚起するものであります。ご自分の人生の予防線に、また、現在競馬好きの男性と交際中の方には、この男と生涯を共にして良いのかどうかを見極める一手段として活用していただければ幸いであります

 それでは早速、講義に移ります。

 ★類型1.「1日で○万円儲けた」、「万馬券を取った」という昔話を、やたら自慢気に話す

 最も多い“競馬好きのロクデナシ”の類型であり、それでいて最も質の悪い類型であります。アウトロー業界で言うところのチンピラといったところでありましょうか。

 まぁ、自分の手柄を他人に吹聴したいというのは、誰にでもある生理的欲求でありますので、当日に的中した馬券の話をさりげなく語ることくらいは問題になりません。ここで言っているのは、
 「去年の秋だったかなァ、俺、1日で15万儲けた事あンだよ。馬券買ったら買うだけ当ってよォ。もう、『超スゲー、俺って天才!?』って感じでさァ」
 ……と、いった類のものであります。大学の学食や、合コンの席などでちらほらと耳にした経験が有る方もいらっしゃるかと思いますが、この手のセリフを吐く男と付き合ってはいけません。この手の手合いは、金銭感覚の欠如及び計算能力の未発達。また、自尊心及び虚栄心が過剰しているという、まさにロクデナシ要素の複合体のような男であります。

 そもそも、競馬というギャンブルで、1日で10万程度のプラスを計上するということは、実は大して難しいことではありません。
 例えばあるレースで15倍の中穴馬券を2000円分的中すれば、その1レースだけで約3万円のプラスになります。大体、長年競馬をやっていると、数年に1回くらいのペースで、神ががり的に馬券がバカスカ的中する日があるものでありまして、そういう日に2000円単位で買った中穴馬券を5、6レース的中させたりしますと、ごく自然に15万程度の儲けは叩きだせるのであります。
 ですので、この手の話は所詮賭け金の単位が大きいだけであって、その人物の馬券的才能を証明するという事には絶対にならない。言うなれば、「小学生時代にコンビニで『ハイチュウ・青リンゴ味』を万引きした」だの、「中学生時代、部活の合間に、顧問の目を盗んで煙草を吸っていた」だのといった、ショボくれた武勇伝程度の価値しかないのであります。
 この場合、15万儲けた云々といった事よりも、1日で上下15万の勝負を繰り返しているという事の方が問題だと考えた方が良いと言っておきましょう。
 1日で15万勝てるような買い方というのは、大体1レースあたり5千円から1万円程度を次ぎこむような感じになりますので、1日に馬券が買えるレースが16程度とすると、最悪の場合、1日で8万から16万程度はスッているという計算になります。この手の輩は、勝つ日よりも負ける日の方が圧倒的に多いはずですので、コイツが吹聴している武勇伝の影には、100万単位のハズレ馬券という名の不良債権が隠されていると考えるのが妥当なのであります
 もしあなたが今、この類の男と交際しているとしたら、このロクデナシの子供を孕まない内に、早急に別れを告げることをお薦めしておきましょう
 ちなみに、本当に馬券が上手な人は、「年間トータルでプラスになった」とか「年間トータルプラスを○年継続中だ」などと言います。こういう人たちにとって、1日でいくら儲けたか、などはただの通過点に過ぎません。この辺りに“役者の違い”というのが見え隠れするものなのであります。

 万馬券−100倍以上の配当がついた大穴馬券−を的中したことを、まるで天下を獲ったかのように自慢する手合いも、これまた同様のロクデナシであります
 万馬券を的中させるのは左程難しいことではありません。金に糸目をつけず、走りそうな2〜3番人気の馬を軸にして総流しの馬券を買っていれば、すぐにとは言いませんがいつかは的中できるものなのです。
 難しいのは万馬券を的中することでなく、万馬券を的中させた上でコンスタントに儲けを出すところにあるのです
 先程も述べましたが、1日に馬券が買えるレースは通常16程度となっております(注:電話投票加入者は36レース購入可)ので、1週間に32のレースで馬券を買うことが出来るわけです。1レース平均6通りの馬券を購入するとすると、1週間で192通り分の馬券を買うことになります。これはどういうことかというと、100倍の万馬券を2回的中させて、やっとプラマイ0程度、という計算になります。競馬をやったことのない淑女の皆さんにはわかりづらい話で恐縮ですが、要するに、万馬券を1度や2度的中させた所で、屁の足しにもならないということを理解して頂ければ結構です。例えて言うなら、運動会の徒競走で1着を獲ったとか、校内球技大会で鮮やかなシュートをを決めた、などといった程度の自慢にしかならないことだと認識されればよろしいでしょう。その程度の自慢話を異様なほど得意げに話すとなれば、これはやはり、相当な問題なのであります。

 また、今述べた2つのパターンに共通することとして、「その自慢話が昔の話であればあるほど危ない」ということも付け加えておきましょう。新しい自慢話の種が出来ていない証拠であります。
 よって、
 「俺さァ、3年前に万馬券獲って1日に20万儲けたことあンのよ。凄ぇっしょ?」
 というような輩が一番危険だという事になります。
 こういう男と同棲している女性は、明日の朝一番で便利屋にでも電話をして、夜逃げの準備に取り掛かるべきであります。そして今使っている携帯やメールアドレス等は破棄し、ほとぼりが冷めるまで信頼できる友人以外との接触を絶って、しばらく雲隠れした方が良いでしょう。

 もし処置が遅れると、サラ金借用書の連帯保証人の欄に署名・捺印させられたり、来月の頭には職業が「風俗嬢」になっている可能性があります。
 善は急げ。人生を棒に振る前に行動するべきであります。

 今日はこれまで。明日は都合により休講しますが、明後日のこの時間に、またお会いしましょう。それではまた。

《今日は社会学学士、競馬・ギャンブル学専攻、駒木ハヤト先生による、「彼氏にしてはいけない競馬ファンの見分け方」をお送りしました。次回の講座をお楽しみに。教養講座を終わります》   (明後日の中編へ続く


9月25日(火)

「今日の特集」無名時代の徳山昌守回顧録

 昨日のWBC世界Sフライ級タイトルマッチで、在日朝鮮人ボクサー・徳山昌守選手が3度目の王座防衛を果たしました
 ランキング1位(しかも元王者)相手の指名試合とあって、かなりの大苦戦を強いられましたが、渋太くポイントを稼いで3−0の判定勝ちをマークしました。チャンピオン本人よりも偉そうな出っ歯でブッサイクなあの婚約者、どうにかならんか3度目の防衛戦で、多少の油断があったのではないか、などという苦言を呈したいところですが、まずは結果を評価するべきなのでしょうね。

 ところで駒木は、この徳山昌守選手には、ちょっとした思い入れがあったりするのです。
 というのも、今から4年前、駒木はプロボクシングの興業を観に行ったことがあるのですが、その時メインイベントを務めていたのが、当時無名の日本ランカーだった徳山選手だったのです。
 その時のチケットは、駒木のフェイバリット・ラーメン店である「天下一品・明舞店」で「ご自由にお持ち帰りください」状態だったものを頂いたものでした。額面2万円のリングサイド自由席チケットがうず高く積まれている様は圧巻でしたが、今から考えると、経営者が徳山選手と同じく在日で、売れないチケットを大量に引き受けたりしていたのでしょうね。何というか、プロボクシング業界の現状を垣間見たような気がしたのを記憶しています

 会場は大阪府は難波にある、大阪府立体育館第2競技場。プロレスや格闘技などの興業に多く使用されるホールです。第1競技場の方は相当キャパが大きいので、集客が望めない興業は、どうしても第2の方を使用することになります。
 その日のプログラムは、4回戦が6試合、6回戦が1試合、そしてメインに徳山選手が出場する10回戦という構成。徳山選手の試合は、日本タイトル戦に向けての前哨戦で、まあ言ってしまえば、噛ませ犬を相手にした、勝って当たり前の試合でした。ボクシングよりもプロレスが好きな駒木にしてみれば、こういう事をやっているからボクシングは人気が出ないんだ、などと思ってしまうのですが、関係者にとっては大きなお世話でしょうから、これ以上はやめときますね。
 さて、実はこの日が駒木にとって初のボクシング生観戦でした。ですから全ての出来事が新鮮で、前座の4回戦から大いに楽しませてもらいました。
 特に興味深かったのは、選手紹介の際に「何がきっかけでボクシングを始めたのか」ということまでアナウンスしていた事で、大抵は「強くなりたかったから」とか「『はじめの一歩』を読んでボクシングに憧れて」だったりするのですが、中に1人、「彼女にフられた腹いせに」というバカ正直なヤツがいて、大いに笑わせてもらったりしました。結局、その彼は判定負けで通算成績1勝2敗。動機の不純さが成績に現れていますね
 その他にも、友達を片っ端から動員したにも関わらず、1ラウンドKO負けしてしまった可哀想な人がいたりと、なかなかプロレス的なツボを押さえた興業で、前座から大いに楽しませてもらいました。
 そうして前座の試合が消化されていき、いよいよメインイベントです。
 徳山昌守選手がいよいよリングに立ちます。対するは吉海という無名のボクサーでした。
 1ラウンド徳山選手が巧みに吉海選手の攻撃を捌き、威力は無いものの的確なパンチでポイントを稼ぎます
 2ラウンド。このラウンドも、徳山選手が巧みに吉海選手の攻撃を捌き、威力は無いものの的確なパンチでポイントを稼ぎます
 3ラウンド。またまたこのラウンドも、徳山選手が巧みに吉海選手の攻撃を捌き、威力は無いものの的確なパンチでポイントを稼ぎます
 4ラウンド。またまたまたこのラウンドも(以下同文)

 5ラウンド。すいません。あまりにも同じ展開が続くので、駒木、寝てました
 6ラウンド以降は割愛。勝負は判定に持ち込まれ、結果、圧倒的大差で徳山選手の勝利に終わりました。徳山選手の勝利が告げられると、会場はまばらな拍手で彼の勝利を称えました

 つまり、駒木が何を言いたいかというと、この試合は全然面白くなかったわけですね

 まあ、前哨戦なんてのはこんなものかも知れませんが、それにしても大凡戦でした。
 「こんなんじゃあ、本番のタイトルマッチは負けるだろうなあ」などと考えていたら、案の定負けてしまいました。しかも偶然のバッティングによる負傷判定での負け。その後、徳山選手が自暴自棄になって、一時期酒浸りになるという嫌なオマケ付です
 この事は、多分、徳山選手にしてみれば一番忘れたい過去でしょう。それをこうして穿り出してるわけですから、駒木も相当な悪人としか言いようがありませんが

 ですから、徳山選手が世界王者にまで登りつめたことを知った時、駒木は大変驚きました。「人間、変わろうと思えば変わるもんだなあ」と感銘を受けたものでした。ただ、試合内容が余り面白くないのが変わってないのは何だかな、と思ってしまったのですけど

 駒木ハヤトは、実は徳山選手よりもミニマム級王座奪還を目指す星野敬太郎選手を応援したりしています


9月23日(日・祝)

「今日の特集」或るモー娘。ファンからの手紙(解決篇)

 ※“解決篇”をお読みになる前に9月16日付の特集・『或るモー娘。ファンからの手紙(問題篇)』をご覧下さい。

 約束の通り、その手紙は来た。
 「23日の翌日にメールを送信します」としていたのに、こちらの手違いで23日に続きを掲載する、などと書いてしまい、正直気を揉んでいたのだが、先方も日誌をチェックしてくれたのか気を利かせてくれたようだ。日付は変わってしまったが、24日の未明に、再び電子メールの到着音が私のパソコンのスピーカーを鳴らした。

 メールはまたしても添付ファイル付。例の凶悪ウィルスが跋扈している状況下でもあり、やはり多少躊躇はしたが、こうなっては覚悟を決めるしかあるまい。
 まずは本文をプレビュー画面に表示させる。
 真っ先に私の眼に映ったメールの1行目。フォーマットを無視した書き出しが、差出人の彼の心理状態を克明に表現していた。

 駒木さん! 凄いです! 凄い事が起こりました!!

 書き手紙よりも感情が入りやすい媒体である電子メールだとはいえ、1週間前に届いた手紙と比べると、その取り乱し方は普通ではなかった。

 今、九段下駅近くの喫茶店でこれを書いています。今日あった事を全て書き出すとなると、相当の時間がかかると思いますが、ここで粘れる限りこれを書いて、なるべく身体の中に残った昂奮が冷めない内に駒木さんにお届けしたいと思います。

 ノートパソコンに向かって一心不乱にキーを叩く男に何時間も粘られる喫茶店も災難だな、などと苦笑しつつ、私はメールを読み進めてゆく。

 …………………………………………

 「……これは…これは、確かに面白いな」
 メールを読み終えた私は、それが届く前から淹れてあったマグカップのコーヒーを片手に、思わず感嘆の声を漏らしていた。
 文章もさることながら、この日武道館で起こったとされる出来事が、非常に私の“プロレス心”を打ったのである。もし、このメールに書かれてあるレポートが、送信者の創作、いや妄想であったとしても、これはこれで価値のあるものではないか、私はそう思った。
 というわけで、これから送られてきた“観戦レポート”を別途全文掲載する。お暇があればお読みいただければ、と思う。
 また、メールにはこんな一文が書き添えられていた。

 添付ファイルは、“熱戦譜”…つまり、結果、勝負タイム、決まり手の一覧表です。私が場内アナウンスを聞きながらメモしたものですので、正確さを書いているかも分かりませんがご了承下さい。
 あと、熱戦譜はいわゆる「ネタバレ」の塊のようなものですので、これを先にお読みになるか後にお読みになるかは、駒木さんの判断に委ねたいと思います。私個人の感情からすれば、熱戦譜は後に読んで頂きたいのですが、推理小説を結末から読まなくては気がすまない方もいらっしゃいますし、楽しみ方は人それぞれだと思いますので……

 私も同感だ。確かに私もレポートを先に読むことをお薦めするが、判断はモニターの前のあなたに委ねたいと思う。

 熱戦譜(結果一覧表)はこちら

 観戦レポートはこちら

 秋の夜長の一時には、こんな支離滅裂な夢を頭に巡らすのも、また一興。もうすぐ夜が明けそうだが、今宵も明日の夜も、心地よい気分に浸れそうである。(完)


9月22日(土)

「今日の特集」小・中学生の遠足事情

 (毎度乍ら、更新遅れをお詫びいたします)

 まずはこちらのニュースをご覧下さい。

 「いやあ、どこの国にも親バカっているもんですね」
 とか、
 「最後のオチは“『侍魂』の調子の良い時”くらい秀逸ですな」
 などなど、素直な感想からウィットに富んだ皮肉まで、様々な感想を抱かれたでしょうが、ここでは別の切り口から話題をお送りしたいと思います。

 このニュースのキーワードとなるのは、世界が誇るニンテンドーのゲームボーイであります。今や任天堂は世界規模の会社となりました。伊達にイチローと佐々木の給料を払ってませんね。 

 今やアメリカでは、ポケモンのキャラクターグッズを配る時には、「ギブミー、ポッキモーン!」と小さいお友達から大きなお友達までがブースに群がります。その光景を目にすると、50年かけて進駐軍の「ギブミーチョコレート」の意趣返しに成功した、と戦後生まれの中道右派・駒木ハヤトは感激に堪えません。
 閑話休題。
 このニュースのように、今やイギリスでも小学生の遠足のお供にはゲームボーイが必須アイテムという時代です。
 さて、これが本家本元の日本では、果たしてどんな状況だと思われますでしょうか?
 駒木ハヤトは、大学生時代の3年8ヶ月間、学習塾の非常勤講師をしていました。通常は当然、小学生や中学生に英語やら国語やら駒木の失恋談やらを教えたりするわけですが、春や夏の学校休みにはキャンプや合宿などの引率に引っ張り出されたりするわけです。しかも恐ろしく安い日当で。酷い時には1泊2日の仕事で5,000円なんてこともありましたが、恨み言はまた別の機会に
 さて、話が脱線してばかりですが……
 塾の遠足やキャンプというのは、学校のそれに比べて規則が緩やかだったりします。まぁ、勉強中心の合宿のような時は別ですが、普通の遊び目的のキャンプだったりすると、ルールは“犯罪行為、及び子供らしくない行いはしない、以上”という、至極単純なものになったりします。ですので、持ち物なども原則自由でありまして、生徒たちはリュックサックに思い思いの娯楽道具を持参してくるわけです。
 すると、まぁ見事です。男子生徒の90%以上がゲームボーイ持参でした。駒木の世代の認識は、「ゲームボーイ=テトリス専用機」でしたので、初めてその光景を目にした時は絶句しましたが、時は正にポケモン絶頂期だったわけです。ですから、子供がやってるゲームは全部ポケモンという壮観。小学生に混じって、物欲しそうにレアなポケモンを眺める男性専従講師まで現れて、驚きを通り越して殺意まで抱いたものでした
 しかし、子供たちの様子を見ていると、傍目には独りゲームに熱中しているように見えて、実はちゃんとコミュニケーションツールとしてゲームボーイを利用しているのが感じられて、新聞でのゲームに関する社会調査や識者談話が如何にポンカスか理解させられたものです
 ですが、圧巻なのは宿に着いてからです。
 子供たちのリュックサックの中からは、なんとプレイステーションやNINTENDO64が!
 しかも漏れなく対戦パッド持参です。ビートマニアのコントローラー持参で来た強者もいました。
荷物のほとんどがゲーム機です。何が彼らをそこまでさせるのか、駒木は途方に暮れるしかありませんでした。
 途方に暮れつつ、生徒に混じって徹夜でゲームに興じたことも有りましたけど

 しかも猥談しながら。

 ……

 それからしばらく後、卒業する時に回収したアンケートで、「塾での出来事の中で最も印象深かった事」という質問に対する彼らの答は、

 「最後の旅行で、駒木先生と一緒に徹夜したこと」

 でした。

 塾に通った数年間の集大成が猥談。

 素晴らしい生徒たちを持って、駒木は幸せです。


トップページへ