「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

2/27(第111回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(2月第4週分・合同)
2/25(番外) 
人文地理「続々・駒木博士の東京旅行記」(6)
2/21(第110回) 
競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第1戦・フェブラリーS」
2/19(第109回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(2月第3週分・合同)
2/18(番外) 
人文地理「続々・駒木博士の東京旅行記」(5)
2/15(第108回) 競馬法学「検証・競馬法改正案」
2/12(第107回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(2月第2週分・合同)
2/10(番外) 
人文地理「続々・駒木博士の東京旅行記」(4)
2/7(第106回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(2月第1週分・合同)

 

2003年度第111回講義
2月27日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(2月第4週分・合同)

 少々講義実施が遅れましたが、今週分のゼミを始めます。

 しかし、今週は各方面から色々なニュースが入って来ましたね。確定情報じゃないモノもありますので、先にちょっとまとめてしまいましょうか。

 1.島袋光年氏、復帰?

 02年に児童買春(高校生相手の援助交際)で逮捕、起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けた島袋光年氏が、「スーパージャンプ」で復帰する事が確実視されています。「スーパージャンプ」次号予告に掲載のシルエットで隠されたキャラクターは、どう考えても『世紀末リーダー伝たけし』の主人公であり、確定ではないもののほぼ間違いないかと。
 集英社が元「週刊少年ジャンプ」連載作家を系列誌に“再雇用”する事は頻繁にありますが、正直、「しまぶーまで救うのか、しかも一般誌で」と驚きました。
 ただ、どうなんでしょう。凶悪事案でないにせよ懲役2年執行猶予4年という判決を受けた人を、事件後約1年半のタイミングで復帰させてしまうのは、ちと時期尚早ではないかと思ってしまいます。
 こういうのは「まだ復帰できないのか、ちょっと可哀想だな」という同情論がサイレントマジョリティを占めてからの方が、結局は島袋氏にとっても良い結果に繋がると思うんですが……。受講生の皆さんのご意見も窺ってみたいですね。

 2.「週刊少年サンデー」にコナミへの謝罪広告掲載

 ネット上でも話題になりましたが、「サンデー」の今週号(13号)に、誰にも発見されないような小さい謝罪広告が載りその事を謝罪を要求したコナミが仰々しく発表しました(笑)。
 原因になったのは、10号に掲載された読み切り・『ハヤテの如く』で、作中の「ときメモファンドで借金苦」というネタ。これがコナミの琴線に触れてしまったようです。
 駒木にも、元職・現職問わずゲーム業界住人の知り合いが複数いるんですが、まぁコナミの評判と言ったら(以下自粛)。で、今回はとりあえず謝罪してくれたらいい、と言うので、小学館が最小限の誠意(笑)で応えた……という話だそうです。「ソースは?」と聞かれても困るような情報元なのでアレですが。
 しかし、このニュースが流れた時に、誰もが一斉に「師匠の久米田康治は何故無事なのか」と思いましたよね(笑)。まぁ久米田さんの場合は担当さんの細心の注意の賜物でしょうが。

 3.「ジャンプ」次期新連載作品内定

 2ch掲示板のジャンプ関連スレッドをよくご覧の受講生さんはご存知でしょうが、次々号からの「ジャンプ」で始まる、春の新連載シリーズのラインナップが決まったようです。もう既に来週号(14号)の次号予告と思しき誌面がネット上にアップされていますので、99%以上確定と見て良いでしょう。
 ネタバレ情報になってしまいますし、どうせ月曜日には判ってしまいますので詳細は控えますが、今回のシリーズは3作品。茨木体制になってからの連載作品入れ替えは本当に激しいですね。
 新連載作品のヒントだけお教えしますと、作品は全て本誌掲載読み切りからの昇格。作家さんは、これまで4連載3打ち切りの作家さん2連載2打ち切りの作家さん初の連載となる若手作家さん。ちなみに読み切りの時の当ゼミにおける評価A−、B寄りB+、Cと幅広いです。(評価と作家さんの紹介順は一致してません) 
 やる気と暇のある方は、この週末に“犯人探し”をしてみて下さい(笑)。一応は完全に絞り込めるようなヒントにしていますので、2003年分の講義レジュメKTRさんのデータベース等を参照の事。

 
 ……ということで、雑多なニュースを3つお送りしました。何だか既に普通のウェブサイトなら1日分のボリュームくらいありますが、これは前置き(笑)。続きまして、公式アナウンスを情報元にした話題をお送りします。

 まずは読み切り情報から。来週(14号)の「週刊少年ジャンプ」に『BULLET CATCHERS』作画:夏生尚)が掲載されます。この作品は03年下期「赤塚賞」の準入選作品で、夏生さんは過去に「赤塚賞」佳作受賞と、その受賞作掲載を含む2度の代原掲載の経験があります。
 代原掲載当時における当ゼミの評価はいずれも芳しくなかったのですが、今作は「赤塚賞」の審査員一同が夏生さんの成長を認めたという事で、駒木もその成長振りを確かめてみたいと思います。

 次に連載終了の情報を。「週刊少年サンデー」の連載作品の内、『ファンタジスタ』(作画:草葉道輝)『きみのカケラ』(作画:高橋しん)が次週で最終回となります。
 最終回の告知のされ方に、この2作品が「サンデー」に果たした貢献度の差が如実に現れていますが(笑)、どちらも読後感の良い最終回を…と思います。まぁ『カケラ』の方はどう考えても厳しそうですが。

 最後に「サンデー」にギャグ系新人賞新設という話題を。
 今回新設されるのは「爆笑王決定戦」なるもの。ページ数8ページ以上or4コマ10本以上のギャグ作品である事、という他は特に規定なしで、以前「ジャンプ」で行われていた「ギャグキング」を髣髴とさせな新人賞ですね。
 「サンデー」では、昨年までギャグ系若手作家さんの読み切りシリーズや短期集中連載シリーズを組んでいたりしたのですが、ここに来て若手作家陣の一新を図っていたりするのでしょうか。
 しかし、現時点で確定している審査員が「サンデー」の三上編集長だけというのは凄い見切り発車ですね(笑)。編集長就任以来、『旋風の橘』、『きみのカケラ』、『怪奇千万! 十五郎』といった作品の連載立ち上げに深く関わったとされている人が、果たしてどのような才能を発掘して来るんでしょうか、はてさて。

 ……それでは、今週のレビューとチェックポイントへ参りましょう。レビュー対象作は、「ジャンプ」から読み切り1本、「サンデー」から新連載と新連載第3回の後追いレビューが各1本で、都合3本となります。

 いつも忘れがちになるんですが、7段階評価の一覧表はこちらからどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年13号☆

 ◎読み切り『ハッピー神社 コマ太!』作画:後藤竜児

 新連載シリーズを前に、若手作家さんの読み切りプチシリーズがスタート。今週は、現在高橋和希さんのスタジオでアシスタントを務めている後藤竜児さんが登場です。
 後藤さんは99年6号でデビューということですから、キャリアは丸5年。01年に代原掲載と増刊掲載を1度ずつ果たした後は今回まで空白期間がありましたので、ネット界隈でも誤解されていたようですが、全くの新人さんではありません。

 では、作品についてお話してゆきましょう。
 まずですが、全体的にぎこちなさが目立ちます。これは、顔のパーツやアングル、体のポーズ等のバリエーションが非常に乏しく、そのためにセリフや動きと絵が一致していないからでしょう。特に気になったのが口の開け方ですね。口を大きく広げる絵というのは下品さを表現する効果もありますので、多用すると作品全体が下品に感じられてしまうんですよね。

 次にギャグなどについて。こちらは問題大と言わざるを得ないでしょう。
 まず、ギャグ以前の話の展開が間違ってます。主人公たちの目的は「困っている人を助けて、そのエネルギーを集めて神様を復活させる」なんですが、この作品を読む限りでは、どう考えても
 「まず迷惑行為を働いて困っている人を無理矢理作り、そこへ更に迷惑を畳み掛けている内に、ケガの功名で“人助け”をした事になった」
 ……というお話になってしまっています。
 マッチポンプ(=自分で放火した火を消して、功績をアピールする事)という言葉があるんですが、まさにその言葉がピッタリ合う作品と言えるでしょう。
 肝心のギャグの方は、基本的な技術(ギャグを効果的に見せるための演出等)はある程度備わっているように思えるのですが、ネタの展開が唐突でツッコミも単調なので、結果として“多くの人が笑える要素”に繋がってないように思えます。
 あと、評価には関係ないですが、「溺れる者は藁をも掴む」が先週の「サンデー」に載った『教育チャンネルみんなのチャンポッピ!』とモロ被りだったのが非常にサブかったです(笑)。スベリ所が被るというのは物凄い“やっちゃった感”がありますね(苦笑)。

 評価ですが、酷い出来ではあるものの、何とかマンガとして成立しているように思えますので、C寄りB−としておきます。ただ有り体に言って、今後の後藤さんの前途は多難と申し上げる他無いでしょう。 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週の巻末コメントには特記すべきモノは無かったですかね。「冨樫さん、本当にコメントに力入れてないな」と思ったくらいでしょうか。

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】

 稲垣&村田さんの演出力が遺憾なく発揮された回ですね。「小早川セナ 21番! ポジションはランニングバックです!」というカミングアウトを、丸々1回使って極限まで効果的に見せた技術には感服の一言です。
 最近は少々キャラクターに頼り過ぎて無理の生じたストーリー展開が目立ち、「ボチボチ評価の下方修正かな」…と思う事もしばしばだったのですが、こういうのを見ると、また減点がリセットされちゃうんですよね。
 さて、次回から恐らく試合前最後の特訓編に突入ですが、駒木はセナよりも雪光の成長振りに注目したいですね。こういう脇役が光ってこそ名作だと思うんですよ。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希【現時点での評価:B/雑感】

 あんまりいると思えないけど、高校生以下の男子受講生諸君に言っておく。

 ──こんな合コンは、高校ではまず有り得ないからな! ファンタジーだ!(笑)

 これはどう考えても合コンではなくてキャバクラですね……とか言って、駒木はキャバクラ行った事ありませんが(金払ってまで、他人を笑わせるために気を遣いたくないので)

 しかし、高校教員に復帰するとなると、この手のマンガ読んでも軽はずみに「駒木も高木君と同じく唯派です。趣味合いますなー」とか言えなくなりますなー(苦笑)。なんだか、異様に生々しい発言になってしまうのが自分でも解りますシャレがシャレで通じなくなると言うか。これは受講生の皆さんのご理解を賜らなければ……。

☆「週刊少年サンデー」2004年13号☆

 ◎新連載『思春期刑事ミノル小林』作画:水口尚樹

 昨年末からスタートした飛び石新連載シリーズもいよいよラスト。「サンデー」ギャグ系新人の出世頭・水口尚樹さんの登場です。
 水口さんはアマチュアで若干の活動をした後、02年15号の「サンデー」週刊本誌でデビュー。これは「サンデー特選GAG7連弾」という新人ギャグ読み切り競作シリーズに乗っかる形での抜擢でした。ちなみに、このシリーズからはモリタイシさんが連載獲得(『いでじゅう!』)に至っています。
 その後、水口さんは02年秋に増刊で連載枠を獲得し、翌03年には週刊本誌でギャグ作品の短期集中連載シリーズに参加を果たします。そして、これら2つの連載での人気・実績が認められた形で、今回の正規連載枠獲得となりました。デビューから2年での連載獲得は別段早いというわけではないでしょうが、その下積み期間の充実振りは特筆モノだと思われます。

 さて、それでは今回の内容についてお話してゆきます。

 に関しては、純粋な画力で見た場合、やはりギャグ作品という事を差し引いてもギリギリで及第点レヴェルといったところでしょうか。ただ、いわゆる“マンガの文法”──絵を効果的に見せるテクニックは十分備わっていると思われ、総合すれば決して印象は悪くありません。
 これで以前からの課題・可愛い女の子の絵がもう少し達者になれば、作品の内容にも幅が出て来るはずですので、そこをどうにかして欲しいですね。

 次にギャグに関して。まず純粋な「笑える、笑えない」は別にして、テクニックは一流の域に達していると思います。ページをめくった直後にオチを持って来る高等技術は相変わらず健在ですし、小ネタの挟み方や前フリの盛り上げ方も見事です。
 ただ、惜しむらくは前フリが余りにも上手過ぎて、それにネタが負けてしまったかな…というような印象があります。つまり、読み手にオチを期待させ過ぎなんですね。本来ならそれなりに威力のあるネタでも、凄すぎる前フリの前にインパクトが殺がれてしまうという……。
 その他には、ギャグとは直接関係無い部分に少々不器用さを感じてしまいました。若手芸人の漫才やコントで、ネタ部分に入るまでの段取りがやたら強引だったりしますが、この作品もちょうどそんな印象を受けました。

 ……それでは評価です。今回は結果として読み手の爆笑を引き出すには力至らず…という事になったようですが、その結果の奥に潜んでいる非凡な能力も決して見逃す事は出来ません。
 これはちょうど7段階評価表の中の「欠点が目立ち、全体的な完成度に不満は残るものの、複数の箇所でそれなりのセールスポイントを見出せる作品」に該当するのでは…ということで、今回はB+が妥当かと思われます。

 ◎新連載第3回『こわしや我聞』作画:藤木俊【現時点での評価:保留

 続いて、同じ新連載シリーズの『こわしや我聞』について、第3回時点での再レビューをお届けします。

 については、早くも週刊ペースに手が順応して来たのでしょうか、第1回に比べてソツが無くなって来ました。もっとも、絵柄が師匠の草葉道輝さんの劣化コピー状態に留まっているのも事実ですので、更なる精進を求めたいところですが。
 あ、でも女性キャラを魅力的に描く事に関しては、それが苦手であろう草場さんに似ず達者ですよね。このマンガの好評が女性社員2名に集中しているのも肯けます。

 ただ、ストーリー・設定に関しては、第1回時点で指摘させてもらった問題点は未解決のまま、更に減点材料が積み重なっていっている現状です。
 特に第2回、第3回のエピソードは、「人の命が懸かっているにも関わらず、アホみたいに無邪気な金庫フェチの銀行支店長」という、無理がある上に安っぽい事この上ないキャラクターを悪役に配置し、何のヒネリも無いパワーゲームを展開させただけ。残念ながらストーリーテリング上の技巧はほとんど感じられませんでした。キャラクターの魅力で何とかその場凌ぎには成功していますが、ディティールの非現実ぶりも加速度がついて悪化しており、この調子がいつまでも続くと苦戦は必至でしょうね。

 評価はギリギリでBといったところでしょうか。上位〜中堅どころが高値安定し、その一方で昨秋以来の“不良債権”的作品が相次いで打ち切られている現状、安定長期連載を勝ち取るためには、あと一押し二押しが必要になって来ると思われます。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「他人に一番言われたくない言葉」。
 
いい質問だとは思うんですが、訊かれた方にとっては辛い質問でもありますね(笑)。意外とマンガについてのコメントが多くなかったのは、敢えて直視するのを避けたかったからでしょうか。
 しかしこういう時に光るのは、やはり久米田康治さん「あ、ゴメン。マガジンしか読んでねえんだ」ってのは、多分、夜中に出歩いている時に職務質問を受けた時の話ですね。
 「仕事は?」
 「マンガ家です」
 「ホントか? どんなの描いてんだ」
 「『サンデー』で『かってに改蔵』っていうマンガを連載してます」

 ……と来て、「あ、ゴメン──」となるわけですな。 
 駒木の場合は、学校の仕事が無い時の「今、どんな仕事してるんですか?」。結局、根掘り葉掘り訊かれて、したくない話もしなくちゃいけなくなるんですよね。あと、「学校の先生ってのは大体……」みたいに、十把一絡げにして批判されると猛烈にムカつきますね。いや、駒木は別に良いんですが、駒木が尊敬する素晴らしい先生方まで一緒くたにされるのが許せないんですよ。
 まぁ、外野にどれだけ言われようが、現場の生徒が楽しそうに授業を聞いてくれる顔を見れば、それだけで癒されるんですけどね。

 ……さて、今週のチェックポイント、本当なら『怪奇千万! 十五郎』を大々的に採り上げたい所なんですが、また顰蹙買いそうなので自粛しときます(笑)。まぁ、簡単に言うと、心底オチの無い平坦な話を、3週にわたって、話が進めば進むほど尻すぼみになるよう展開していったんですけどね。

 ◎『MÄR(メル)作画:安西信行【現時点での評価:B

 この作品をここで採り上げるのは随分久し振りのはずなんですが、今回は残念ながら賛辞ではなくて苦言です。

 今週、今回のバトルゲーム初の死者という事で、最終ページに「遊びなんかじゃない……これは戦争なんだ…!!」という煽りが付けられたんですが、これで「ああ、そうか」と納得した事がありました。
 この作品、結局は“ごっこ遊び”なんですよね。ファンタジーごっこ、バトルごっこ、戦争ごっこ、殺し合いごっこ。やっている事は殺伐とした内容のはずなのに、作品全体から命を遣り取りしている悲壮感とか緊迫感が感じられないんです。
 今回のバトルにしても、キャラクターたちは、まるで柔道かなんかの勝ち抜き戦で出番が来たかのような軽いノリで“戦場”へ出て行きます。「少年マンガなんだから、明るいノリで」というのは分かるんですが、場をわきまえない無闇な明るさというのは、逆に害悪ではないかと思ったりもします。

 この作品も連載丸1年を過ぎ、中堅で安定しているような感がありますが、そこに甘んじず、今一歩のクオリティアップを目指してもらいたいところですね。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】
 
 前回、沢村の衝撃告白シーンがあり、果たして今回どうなるか……と思ったら、なんとスルーして綾瀬の空回りにクローズアップですか。ここでまた普通のノリに戻してしまえる神経の太さには驚く他ありません(笑)。新手もいい所だなあ。

 ちなみに「女の子キャラに男物Yシャツ」というシチュエーションについて真面目に考察してみますと、こういうのは“華奢”、“無邪気さ”、“恥じらい”という3つの要素を組み合わせないと、“萌え”の記号に成り得ず単なるギャグになっちゃうわけですね。その辺までちゃんと分かって、ギャグにしているこのマンガは凄いという事なんですが。


 ……というわけで、今週はここまで。
 さて、今週発売になった「青マルジャンプ」ですが、思ったよりも全体的なレヴェルが高いので、いっその事、この週末から週明けにでも全作品レビューをやってしまおうかと思っています。どうか気長にお待ちを。

 


 

番外
2月25日(水) 人文地理
「続々・駒木博士の東京旅行記」(6)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回

 今週も東京旅行記の時間がやってまいりました。どうも皆さん、2日前、ふと預金残高を見た瞬間に春の東京行を断念した駒木ハヤトです(苦笑)。
 よくよく考えれば、高校講師の初給料が入る5月下旬までまとまった収入が途絶えるわけで、それから考えると今は全く無理が利かない時期なんですよね。例の高知は0泊2日なんで、交通費は6,000円程度で済みそうなんですが……。
 そう言えば木曜日はロト6の当せん発表ですね。パーッと当たらんかなぁ。大は小を兼ねるって感じで2億くらいって兼ね過ぎですか。

 ──そんなわけで、レポートです。今日は旅行3日目(12月30日)の朝から再開文中は文体を常体に変えておりますので、どうぞ宜しく。


 ◎3日目(12月30日)

 携帯電話のアラーム音で目が覚めた。
 目覚まし時計を寝惚けて止めてしまった場合の予防線として、「最悪、これまでに起きねばヤバい」という時刻にセッティングしておいたというモノだった。つまりは、そこまで寝過ごしてしまったという事だ。
 駒木の寝起きはすごぶる悪い。寝床から3メートルほど離れた場所に置いた目覚まし時計が鳴ると、眠ったままそこまで歩いて行って無意識の内にその息の根を止め、返す刀で予備目覚まし代わりにオンタイマー設定しているラジカセのスイッチを叩き切り、それから揚々と布団の中に引き上げて再び熟睡する…という隠し芸を保持している人間である。が、何故か携帯電話のアラームには過敏に反応して目が覚めてしまうのだ。その代償に強烈な寝覚めの悪さを味わう羽目になるのだが、最後の手段としては非常に役に立つ。
 ちなみに、この日のアラームは「ターミネーター」
 緊迫感のあるメロディが流れる側で、極めてダルそうに全身を弛緩させている男が「うぅぅぅ〜」と唸っている風景は、恐らく傍から見ればとんでもなく異様であろう。

 果たして時計を見れば、8時30分を過ぎていた。大浴場付の宿に泊まった時の醍醐味と言えば朝風呂であるが、残念ながらそんな余裕は全く無くなってしまった。
 チェックアウトのリミットもそうだが、今日はコミケが一番混雑する最終日。早朝から並ばねば入手困難な同人誌を買う予定はないものの、なるべく早く会場入りするに越した事は無いだろう。実は、今日も“アフター・コミケ”の予定が入っているのである。
 幸いと言うかケガの功名と言うか、昨夜の食事が夜遅かった上に無茶な晩酌をやったので、朝になっても食欲が湧くほどの空腹感が来ていない。あまり褒められた話ではないが、朝食もパスしてとりあえず東京ビッグサイトへ向かう事にした。腹が減ったら減った時に何か食えばいい話で、この辺りが一人旅の小回りの良さである。
(注:本来、コミケ最終日に朝食抜きで参加するのは愚の骨頂です。皆さんは絶対に真似しないで下さい)

 ホテルを出て、とりあえずJR神田駅へ。そして、ここでしばし思案した。どうやって東京ビッグサイトへ向かうかのルート選択である。
 前日は青春18きっぷを最大限利用して経費を削るために極力JRを利用したのだが、この日は普通に運賃を払うので、さほど利用する交通機関にはこだわらない。それに加え、この日は行程上、荷物(結構中身の詰まった中くらいのカバン2つ+この日に買う同人誌)を全部持ったまま朝から夜中まで動き回らなければならない。出来るならば体力の浪費は避けたかった。
 そこで今回は東京駅の“構内行脚”を避け、神田から大井町まで向かった後に、そこからりんかい線で国際展示場駅まで行くことにした。大井町駅はJRとりんかい線の駅が隣接しているので連絡も簡単だ。
 京浜東北線、りんかい線と乗り継ぎ、2日連続で国際展示場駅へ。微妙にピークタイムを外れていたので車内の混雑がさほどでもなかったのが幸いだった。

 ビッグサイト前に着いたのが午前10時過ぎ。ちょうど一般参加者の入場が始まったところで、駒木は待機列の最後尾にくっついた。
 コミケ未経験者の方はピンと来ないだろうが、このイベントは余りに入場者が多いために、入場開始から列が動き出しても、最後尾が場内に誘導されるまでに大分時間を取られてしまう。特に混雑が酷い頃には入場開始と同時に並んでも2時間待ち…なんてのもあったそうで、さすがは3日連続で10数万人が集う巨大イベントといったところだろう。これが交通機関のピークがイベント開始の数時間前に訪れるという理由でもある。
 ただ、駒木が並んだのが人の比較的少ない西館側だったせいか、今回は20分ほどで列が動き始めた。これくらいの待ち時間なら、特に“お目当て”(=朝イチで並ばないと完売必至)の頒布品でもない限りは、早朝から数時間並ぶよりもむしろ効率的だろう。

 さて、この日は事前にチェックしてあるサークルが結構あり、更には当社会学講座がコミケに出展する場合の“本命”である評論ジャンルも視察しなければならない。幸い大蛇の列が伸びるサークルに縁が無いのは救いだが、テキパキと行動しなくては、いくら時間と体力があっても足りない。
 まず西館から入場すると、少しだけ買い物をして即座に退却。イベント開始間もない連絡通路は割と空いており、まるで競歩選手になったかのような早歩きで東館へと向かう。それにしても肩と背中の2つのカバンが重い。

 そして東館。最終日は、前日までの女性向同人誌(=“やおい”本)は影を潜め、男性向同人誌(=いわゆる18禁モノ)R-18指定のゲームを題材にした全年齢向けパロディ本がメインとなり、客層も一変する。元ネタのゲームがR-18なのにパロディ本が全年齢向けというのもおかしな話だが、飯島愛が服を着てゴールデンタイムのバラエティ番組に出ているようなものなのだろう。
 また、この日は出展サークルのプロ・セミプロ率も高く、「エロには興味が無いが、贔屓の作家が本を出すので…」という人もやって来る。中には島本和彦氏みたいに、1年で最後の仕事がコミケのチラシ描きだった…というプロ作家までもおり、まぁそういった濃密で熱い“漢オーラ”がブースの内外関係なく充満しているのが最終日の東館である。もっとも、中には当日早朝まで頒布品(コピー本など)の制作作業に追われ、オーラに中てられて午前中から既に『あしたのジョー』最終話最終コマのようになっている人もいるのだが。

 ……と、呑気に俯瞰している場合ではなかった。駒木もいよいよ“参戦”である。
 館内は、ブース間の通路も含め、人と人とがひしめき合う過密状態。中には予想外に行列が伸びたサークルのために、とんでもないところで“交通規制”がかかっている場所もあり、まるで通勤時間から工事をしている一般道路のような、悪性のストレスの溜まる混雑が各所で展開されていた。大荷物を抱える駒木などは、時々反対方向から来る人の波に攫われそうになり、何度となく悲鳴をあげる羽目になったりする。さすがにこれは厳しい。競馬ブーム真っ盛りの頃のG1開催日を久々に思い出した。当初は『月姫』のパロディ本でも物色しようかとか考えていたが、これでは体力がいくらあっても保たないので止む無く断念した。
 それでも、ここまで来た以上は最低限の目的は果たす。先述の島本和彦西原理恵子などのメジャー系作家が主宰するサークルを中心に駆けずり回っていった。どれも5〜10分以内の行列だったので、タイムロスが小さかったのが幸いだった。
 
で、これで“マネーロンダリング計画”も無事にほぼ終了。慣れない無駄遣いも、開き直ってやってみれば気持ちの良いものだった。ただ、普段の駒木は始終、購買意欲よりも貧乏性の方が勝っているので、今後はこういう経験もそうそう無いだろう。
 その後、日頃から当講座の三人娘のトータルコーディネートでお世話になっている藤井ちふみさんが夫婦で運営するサークル・
AngelCaseを訪問し、挨拶、差し入れ等をする。
 藤井さんはこの日、ネットRPG『ラグナロクオンライン』の二次創作本を新刊として頒布していたのだが、「健全な内容にしたら売れ行きが鈍くて」とのことだった。駒木が「ウチもコミケ出展考えてるんですよ」などと言うと、少々話が盛り上がって、「じゃあ売るためには珠美ちゃんたちに一肌脱いでもらって……」などという結論に(笑)。
 勿論、この事は当人たちにはまだ面と向かって言っていない。そんなもん、言ってしまったら最後、その場で12回は殺されるだろう。で、その次の朝には、研究室にある17型CRTモニターに顔を突っ込まれたまま絶命している駒木が、近くの粗大ゴミ置き場に捨てられているに違いない。
 
 気が付けば、時刻は午後に突入していた。最後の一仕事、評論カテゴリでのリサーチ活動へと移ることにする。


 ちょっと短めですが、今日はこれまで。次回あたりで最終回になるんじゃないかと思います。延々と引っ張りましたが、あと1回どうかお付き合いを。次回へ続く

 


 

2003年第110回講義
2月21日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第1戦・フェブラリーS」

 年末年始、色々な事でバタバタしている間に早くも今年のG1戦線が開幕してしまいました(苦笑)。
 しかし、JRAのG1レースは関連講義を行うのが当講座の規定事項ですので、今回も例によって駒木研究室メンバーによる予想大会を実施します。とりあえずは“暫定第1戦”という事で、今後の情勢に従って続きをやるかどうか決めたいと思います。余りに駒木が多忙な状態に陥った場合は、桜花賞以降にはもっと簡略な講義になる可能性もあります。どうか予めご承知おき下さい。

暫定第1戦・フェブラリーS(東京1600ダ)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

× サイレントディール ペリエ
ここ2戦の大敗は、力の要る馬場の影響が大きかったはず。距離短縮もプラス材料で、この相手でも武蔵野S快走劇の再現は可能と見るが……。
        ミツアキタービン 東川
昨秋のダービーグランプリでは3着健闘。中央でもオープン級の能力は十分あるが、このメンバーでは相手関係で微妙。
    ×   イーグルカフェ 岡部幸

昨年の3着馬も、その後、長いスランプに突入して出口が見えず。忘れた頃の一撃は怖いが、信頼度は随分と下がった。

ユートピア 四位

3歳時のダート三冠シリーズの疲れが漸く抜けて来たか。未対戦の相手との力関係がカギも、不振時のは醜態は度外視すべき。

    ×   シャドウスケイプ 江田照

新春のダート重賞戦線で一気に台頭。ただし、距離適性や相手関係等で懸念材料は山積。超ハイペース時の恵まれ一発で一考。

        ハタノアドニス 内田博
大敗の後、感冒で出走取消。見た目には調整狂った影響見えぬが、いかんせん明け8歳馬。早急な完全復調は? 
ノボトゥルー 武豊

3年前の王者は未だ健在。全盛期の凄味は薄れたが、ベストに近いこの条件、前が止まれば大逆転まで。

        ブルーコンコルド 松永

府中ダート1400mのレコードホルダー。人気背負って大敗続くも、今度は気楽な立場。陣営にも時計勝負の泥仕合になればの思いはあろう。

      トーシンブリザード 石崎隆

一昨年のこのレース、超ハイレヴェルの中で2着に食い込んだ公営の雄。1年半のブランク響き、未だ復調途上の感も、自力だけなら一、二を争う。

10 アドマイヤドン 安藤勝

現役最強ダート馬、堂々の戦列復帰。展開も味方につけてマトモなら負けられない条件が揃い、マトモではなかった昨年の雪辱は濃厚。唯一の心配材料は、やはり3ヶ月のブランク。

        11 ノボジャック ヒューズ

ローカル重賞の名物ホース。タフで堅実な部分は買えるが、中央G1級に混じれば、さすがに格負けしそうで……。

        12 ブイロッキー 中館

3歳春シーズンは世代有力馬の一角占めたが、近走は軽ハンデでも大敗繰り返すケースが目立つ。ここは静観か。

        13 ヒューマ 藤田

前走でダートでのレースに目処立つ。ただ、前崩れを待ってナンボの傾向があり、他力本願だけでは強く推せない。

× ×   × 14 ストロングブラッド 横山典

昨秋シーズンは強豪相手に五分の勝負を展開。鉄砲は(3.0.0.1)で滅法強く、むしろ強調材料か。武蔵野Sで良い所無く5着に敗れたネガティブイメージはあるが……。

×       15 スターリングローズ 福永
前走の凡走が“?”だが、実績十分、調教の動きも良く、実力を発揮できるなら侮れない。強豪先行馬との我慢比べでどこまで辛抱出来るかがカギ。

 

    × 16 タイムパラドックス 柴田善

前走、不本意な展開で勝ち切ったあたりに進境が窺える。相手関係は決して楽ではないが、ツボにハマれば怖い存在。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 逃げ含みの先行馬はユートピア、サイレントディール、ハタノアドニスの3頭。スンナリと折り合いがつかない可能性もある(むしろ高い?)ので、道中の並び順は流動的。ただし、行きたくなった馬1頭がハナを切る形で、競り合いにはならないのではないか。
 ペースは速めの平均〜ハイペース。出走馬の脚質に偏りは無いため、スンナリとやや縦長の隊列が形成されたらそのまま3コーナーまで穏当に推移するだろう。最も実力通りの決着で終わりやすいパターンだ。
 大本命・アドマイヤドンは中断待機でまさに虎視眈々の構え。前の様子を窺いながら、自分で勝負所を選択してスパートをかけるはず。長く良い脚を使えるタイプだけに自在性もある。この馬を仕留めるには直線入口までで勝負を決めてしまうか、後からアッと言わせる出し抜け。そういう意味では“それっぽい”馬が揃ったようにも思えるが、さて──?

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:アドマイヤドン》
 

 先に謝っておきます。つまんない予想で申し訳無い!
 ……いや、でもねぇ。いくら考えても考えても、アドマイヤドンの弱点が見えて来ないんですよ。負ける可能性とすれば、休養明けが原因の凡走か、原因不明の凡走か、アクシデントによる凡走。さすがにそれを根拠に本命から外すってのはどうにも……(汗)。
 というわけで、とりあえずアドマイヤドンから。当てに行くとこうなってしまいます。「買いたい馬券」というんなら、馬単で1を軸にした1着流しで10、4、7、15。でもね、こんなの3000人にお薦め出来ないでしょ?(苦笑)

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 1.3
馬連 1-10 100円 5.9
  4-10 100円 5.6
  1-4 100円 19.4
  7-10 100円 11.7
  10-15 100円 21.6
  10-14 100円 12.6
馬単 10→1 100円 7.4
  10→4 100円 6.6
三連複 1-4-10 100円 9.5


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:アドマイヤドン》

 単勝1.3倍だろうと、駒木博士と本命が被ってしまおうと(笑)、アドマイヤドンを本命にしたいと思います。去年のフェブラリーSでは大敗してますけど、これはスタート直後に大きな不利がありましたからね。もし1頭、この馬を負かす存在があったとしても、連軸は不動という見解です。
 2番手評価は、8歳馬ですけどノボトゥルーの追い込みに賭けてみたいと思います。ここで好成績を挙げて、ドバイへ行ってもらいたいですね。
 あとは……ちょっと思い切った狙いがなかなか出来ませんけど、コッソリとトーシンブリザードのプチ復活を狙ったりしています(笑)。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 1.3
馬連 7-10 100円 11.7
  4-10 100円 5.6
  4-7 100円 52.5
  9-10 100円 55.3
  1-10 100円 5.9
  10-14 100円 12.6
馬単 10→7 100円 13.3
  10→4 100円 6.6
三連複 4-7-10 100円 18.4


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:サイレントディール》

 どもー、秋のチャンピオン・一色順子です♪
 今年も穴狙いで攻めて行きますので、応援してて下さいね。
 というわけで、今年一発目の狙い馬はサイレントディール。ペリエ騎手に武蔵野Sの再現を狙ってもらいましょうってところです! 1600mならスタミナ切れってこともないでしょうし、頑張ってくれるんじゃないかと思います。
 ……って、博士の「買いたい馬券」もサイレントディールが軸!? な、なんて余計なことを……_| ̄|○

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 7.7
馬連 1-4 100円 19.4
  1-7 100円 46.4
  4-7 100円 52.5
  1-10 100円 5.9
  1-3 100円 85.8
  1-5 100円 69.2
馬単 1→4 100円 44.8
  1→7 100円 133
三連複 1-4-7 100円 75.6

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:アドマイヤドン》

 皆さん、お久しぶりです! 最近、あまり出て来る機会が無くて残念ですけど、元気に女子高生してますんで、安心してて下さいね!
 さて、久し振りの競馬予想なんですけど、う〜ん……ダートのレースは苦手です。だって、ローカル競馬のレースまでなかなか観られないですしー……。
 なので、今回は成績表を見たり、珠美サンや順子サンのアドバイスを参考に決めました。これで当たったらゴメンナサイですね(笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 1.3
馬連 4-10 100円 5.6
  7-10 100円 11.7
  4-7 100円 52.5
  1-10 100円 5.9
  10-14 100円 12.6
  10-16 100円 11.7
馬単 10→4 100円 6.6
  10→7 100円 13.3
三連複 4-7-10 100円 18.4

 なんか、よってたかって駒木の予想が目の敵にされてる感が有りますが、まぁどうせ負け犬ですから仕方ありませんね(苦笑)。
 しかし、一番マズいのは、馬連4-7で決着して駒木以外全員50倍台的中というパターンなんですね。何だか嫌な予感が……。


フェブラリーS 成績

1着 10 アドマイヤドン
× 2着 サイレントディール
×       3着 15 スターリングローズ
        4着 ミツアキタービン
        5着 ブルーコンコルド

単勝10 130円/馬連1-10 570円/馬単10-1 710円/三連複1-10-15 4920円

 ※駒木ハヤトの“勝利の雄叫び”(単勝・馬連・馬単的中)
 ……とりあえずは喜んでおきます(苦笑)。「買いたい馬券」の方で見事にウラを食ってしまっただけに、中くらいの喜びではあるんですが……。あれでもうちょっと不利が小さかったら、1着は入れ替わってましたよね。
 それにしてもアドマイヤドン、当たり前のように勝っちゃうもんなぁ。その割には不可解な負けも結構あったりするから、この馬には困らせられるんだ。
 しかし、展開予想は随分と外れてスローペースの馬群団子状態。着差もシンガリまで2秒1・13馬身チョイだから、3着以下は相当な紛れがあったような気がするね。ドバイを控えてた有力馬にとっては辛い結果になってしまった感じ。
   

 ※栗藤珠美の“喜びの声”(単勝・馬連的中)
 ギリギリのところで、馬連まで的中出来ました。でも、これだけ一本被りの1番人気だと、どれだけ頑張っても実りは少ないですね(苦笑)。本当なら、こういうレースは1番人気から馬券を買っちゃいけないのかも知れませんね。

 ※一色順子の“的中、失礼しましたー!”(馬連のみ的中)
 やっぱり、最後の直線でサイレントディールが不利を受けたのは、博士が馬券買っちゃったからだと思います(笑)。そうでなきゃ、あの博士の予想が馬単まで的中するはず無いじゃないですか!
 わたしにしてみれば、10倍以下のオッズで的中したなら儲けモノというか、当たってゴメンナサイなんですけどねー。でもとりあえず頂いておきます(笑)。

 ※リサ=バンベリーの“ハッピー・ハッピー・グッドラック”(単勝・馬連的中)
 当たってしまいました(苦笑)。去年の秋から冬はあれほど苦労しても当たらなかったのにどうして……。
 ホント、競馬って奥が深いですねー。それだけでも、なんだかとても意義のある留学になってると思います(笑)。この学校に入って良かったです♪

暫定第1戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 1410 1410
(1位)
栗藤珠美 700 700
(2位タイ)
一色順子 570 570
(4位)
リサ=バンベリー 700 700
(2位タイ)

 (ポイント・順位の変動について)
 
大本命・アドマイヤドンが勝利し、馬連も2番人気の決着とあって、全員が何らかの形でフォーカスを的中させてポイントを獲得した。
 暫定トップに立ったのは、◎○的中で馬単のボーナスポイントも獲得した駒木ハヤト。この点数ではとてもセーフティリードとは言えぬが、形だけでも好スタートを切った格好になったか。

 


 

2003年度第109回講義
2月19日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(2月第3週分・合同)

 もの凄い勢いで『怪奇千万! 十五郎』の掲載順が下降している今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。今週も「現代マンガ時評」のお時間がやってまいりました。
 ……それにしても、頭悪そうな恋人といるところをフライデーされた宮地真緒の好感度並の急降下ぶりですよね、掲載順。事の真相はどうなのか、否が応でも気になるところであります。

 ……それでは、今週も情報系の話題から始めましょう。今日は新作の話題が3件入って来ています。

 1件目。「週刊少年サンデー」の次号(13号)から、『思春期刑事ミノル小林』(作画:水口尚樹)が連載開始となります。予定から1週遅れになりましたが、無事に連載開始に漕ぎ付けたみたいですね。
 水口さんは、02年の「サンデー」デビュー以来、本誌や増刊で数度の読み切り発表や短期連載を経験して来た、“ギャグ枠”の有望株。昨年末の「第2回仁川経済大学コミックアワード」で最優秀ギャグ作品部門でノミネートされているように、当ゼミ的にも期待の若手作家さんです。果たして初の本格連載でどこまでクオリティを上げて来たのか、楽しみに待ちたいと思います。

 続いて2件目。次号(13号)の「週刊少年ジャンプ」では、読み切り・『ハッピー神社・コマ太!』(作画:後藤竜児)が掲載されます。
 後藤さんは、現在『遊☆戯☆王』の高橋和希さんのスタジオのアシスタントとのことですが(高橋さんの12号巻末コメントによる)、過去2度の本誌読み切り掲載と1度の増刊掲載を経験している若手作家さんでもあります。
 ちなみに後藤さん、デビューは99年06号、前回の作品発表が01年の「赤マル」夏号ということですから、キャリア丸5年で約2年半ぶりの新作発表という事になりますか。停滞している間に追い越していった後輩作家さんたちをどれだけ抜き返せるか、正念場と言えそうです。勿論、この作品は次週のゼミでレビューをお送りします。

 そして3件目。こちらは直近の話題というわけではありませんが、公式アナウンスがありましたので紹介しておきましょう。
 昨年に通算約8年にも及ぶ長期連載を全うした『DAN DOH!!』(作:坂田信弘/画:万乗大智)が、今春にテレビ東京系でアニメ化されるのに伴って第3部が連載開始となります。アニメ化で連載作品が無理矢理に延命というのは結構聴く話ですが、わざわざ円満終了した作品を再開させるというのは珍しいケースですね。
 実はこの件、駒木は「絶対オフレコ情報」としてある程度前から聞かされていたんですが、公式アナウンスがあったこの期に及んでもまだ半信半疑です(笑)。ただ、『プロゴルファー猿』『あした天気になあれ』も知らない今の小学生からすると、このアニメは結構新鮮で面白く感じるかも知れませんね。
 それにしても……マンガの方はどうやって新しいエピソードを作るんでしょうね。主人公が事実上全英オープンを勝って、既に“完成形”になってますし、大変ですよこれは。余程ヒネった展開にしないと大惨事になりそうな気がするんですが……(汗)。

 
 ──と、根拠の乏しい不安はさておき、今週分のレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は「サンデー」の読み切り1本のみとなります。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年12号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週の巻末コメントは無難なモノが多くてちょっと残念。強いて挙げるなら、「この号の仕事中に24歳の誕生日を迎えました」という矢吹健太朗さんでしょうか。
 いや、「若いな」とかそういうのじゃなくて、失礼ながら、この人は今の連載終わって三十路過ぎてからの長い人生、どうやって生きていくんだろうと素朴な疑問が(笑)。

 ◎『スティール・ボール・ラン』作画:荒木飛呂彦【現時点での評価:A/雑感】

 『SBR』版ディオ騎手の馬を追い抜かす理論、よくよく考えたら全然理屈合ってないんですが(苦笑)。一気に差を詰める方法って事なんでしょうが、2頭の素のスピードが計算に入ってないんでねぇ……。
 まぁ、これぞ昭和の「ジャンプ」って感じがして、懐かしい気もするんですが、当ゼミ的にはA評価付けてる作品のコレをどう受け止めるべきか、非常に悩ましいポイントではあります(笑)。

 ただ、キャラクターの使い方は抜群に上手いですよね。何て言うか、囲碁でいう所の捨てる石と生かす石の判断が絶妙と言いますか。

 
 ◎『武装錬金』作画:和月伸宏【現時点での評価:A−/雑感】 

 “エンゼル御前”、いいキャラクターだなあ(笑)。
 「エンゼル様、行って!」の時の「え? 俺?」みたいな顔が最高です。また、連射している時は汗かいて必死に射ってるし。で、桜花も「様」付けの割にはとんでもなく人(?)使いが荒くて笑えます。

 で、お話の方ですが、早坂姉弟の望みは「母親の蘇生」という事になっちゃうんでしょうか。まぁ、少年マンガだし、インセストタブー方面は難しいでしょうからね。
 ただ、アレなんですよね。2人掛かりで母親の蘇生を目指すって、小学館漫画賞獲ったの方の『錬金』とネタ被っちゃってるんですけど……。
 

 ☆「週刊少年サンデー」2004年12号☆

 ◎読み切り『教育チャンネル みんなのチャンポッピ』作画:ピョンタコ

 水口尚樹さんの新連載が1週遅れになったからでしょうか、『D-LIVE』の取材休載で1つ空いた掲載枠に読み切りが掲載されました。

 今回「サンデー」本誌初登場を飾った作者のピョンタコさんは、現在26歳。96年7月、18歳の時にゲーム物4コママンガでデビューし、それ以来ゲーム誌や「コロコロコミック」、「コミックGATTA」等で読み切りや連載作品を多数発表。「サンデー」系雑誌にも増刊で4作の読み切り掲載と約1年にも及ぶ連載を経験するなど、随分と豊富なキャリアを持つ作家さんです。
 最近は「サンデー」本誌掲載を目標にやって来たというピョンタコさんですが、その本誌デビュー第1作はどうだったでしょうか。

 まずですが、メジャー誌では余りお目にかかれない独特の絵柄ながら、見辛さは感じられません。個性がキツいだけに描けるジャンルが限られてきそうな嫌いはありますが、ギャグマンガの絵としてなら、なかなかの完成度だと思います。

 しかしギャグの方は、少なくとも今回は難アリとせざるを得ません。
 いわゆる起・承・転・結の持っていき方は手馴れた技術を感じるのですが、いかんせん1本目を観たら、2本目以降のネタについてもオチが完全に読めてしまうのが……。笑いを取るのに一番重要な“意外性”が無くなってしまい、尻すぼみの傾向が否めませんでした。特に、1本目よりも2本目、3本目の方がネタとして単純という辺りに構成力の甘さを感じてしまいましたね。
 そして、最後の4本目のオチについても「?」マークです。伝言ゲームの形で褒め言葉がいつの間にか悪口に……という狙いは(ベタながら)良いのですが、そのセリフの変え方が極端過ぎではないかと思うのです。違和感で笑う以前に戸惑ってしまった人も多かったのではないかと推測するのですが、いかがでしょうか? ……まぁ笑いに対するアンテナは十人十色ですから、駒木の感性がどこまで多数派を占めるのかは微妙ではあるのですが。

 評価としては、とりあえず今回はB−くらいが適当かな、と思います。もう1回くらい別の作品を読んでみたいところではありますが……。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「二度としたくない! と思った苦労話をひとつ」。
 
いい質問ですね。マジ系、ネタ系どの回答を見ても心に染みてくるものばかりです。そんな中、特に気になったのは高橋留美子さん「ネームが出来なくて2日間寝なかった」これ、凄いですよね逆の意味で。特に同業者の方は「うわ、さすが高橋留美子先生!」…と仰天したんじゃないでしょうか。「一番キツくて、たった2日かよ!」みたいな感じで。
 駒木の場合は、「まさに今、数年規模の苦労中」といったところかも知れないんですが(笑)、まぁネタは一杯ありますよ。「最大の娯楽が1日3回の株式ニュースでネットバブル崩壊をウォッチングする事だった半年間」とか、「社会生活の全てを犠牲にして、来る日も来る日もウェブサイトの更新を続けてもアクセス数が20前後/日だった数ヶ月間」とか。

 ……ところで、今週も小学館漫画賞関連の企画ページが。まぁ『ジャぱん』が賞獲った事は、中邑真輔がIWGPヘビーのベルトを獲ったようなもんだと思ってもう諦めますが、『鋼の錬金術師』の荒川弘さんの名前のルビを間違えたらイカンでしょう。「あらかわ・ひろし」じゃなくて「あらかわ・ひろむ」ですからね。“他社枠なんか、どーでもええわ感”が滲み出過ぎです。
 しかし、この手の賞では毎度の事ですが、審査員各氏のコメントもアレですよねぇ。「今回の候補作の中で、総合力では『ジャぱん』がピカ一」とか大御所作家さんに言われても対処に困るんですがワタクシは(笑)。貴方、講談社漫画賞で『ラブひな』よりも『かってに改蔵』を推したほどのアウトローじゃなかったのかと、問い詰めたくなってしまいましたよ。

 ◎『ワイルドライフ』作画:藤崎聖人【現時点での評価:B/雑感】

 しかし、回を追うごとに“協力”の欄がバラエティ豊かになっていきますなあ(笑)。特別協力に取材協力に協力って、Vシネマの特別出演、友情出演じゃないんだから。
 ……ただ、取材熱心なのは結構なんですが、取材の成果を出そう出そうと力んでしまって、ドラマ性が薄れる一方になっちゃってるんですよね。取材ノート丸写しだったダチョウの卵の回も酷かったですが、ここ2回もちょっと……。あんな底の浅い悪役なんて、新人のデビュー作でもそうお目にかかれませんよ。
 単行本に増刷がかかる位に商業的に好調な今だからこそ、とことん猛省して頂きたい所です。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】

 アニメ化を前にして、唐突な沢村の本音告白!
 この手の作品で、男が本音を吐露するのは最終回寸前以降なのですが、このタイミングでいきますか。
 将棋で言えば、中盤まで定跡通り進行していた局面でいきなり全くの新手が出たようなもので、検討室では上へ下への大騒ぎになっちゃうような展開なんですが、さぁどうやって収拾つけますか。井上さんの手腕に注目したいところです。


 ◎『モンキーターン』作画:河合克敏【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 最終ページの柱に載っている担当さんの煽り文・「今後の憲二・青島・澄の三角関係はどうなるの? 乞うご期待」が、余りにも他人事感丸出しで爆笑。
 いや、そんな修羅場ご期待したくないですって。アンタは「渡る世間に鬼ばかり」の次回予告の石坂浩二か!(笑)

 
 ……といったところで、本業そっちのけで『Fate/staynight』にうつつを抜かすのが玉に致命傷な駒木ハヤトの「現代マンガ時評」でした。
 どうやら『ファンタジスタ』が円満終了に向かって動き出しているようですが、まさかオリンピック以前に連載終わってしまうとは思いませんでしたね。ではでは。

 


 

番外
2月18日(水) 人文地理
「続々・駒木博士の東京旅行記」(5)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回

 もう間もなく春の青春18きっぷも発売開始という時期に、まだやってます東京旅行記です(苦笑)。もうちょっとでケリつけますので、今しばらくのお付き合いを。

 しかし、この春シーズンの旅行はどうしようかと、少々思案中であります。モデム配りが契約終了になり、一時的とは言え収入が途絶えつつある身、いくら貧乏旅行とは言え無理が利かないわけですが、行きたい所はまだ残っていたりしまして。
 例の高知0泊2日は既に決定事項としまして、問題はあと1回東京方面へ行くかどうか。構想中の小説の取材も兼ねて鶴見青果市場へ国際プロレスプロモーション観戦+α(翌日に旅打ち、格闘技観戦等)というのが現在の第一候補なんですが、さぁどうしましょうか。というか、お前はどういう小説を構想しているのかという話なのですが。

 ──それでは、レポートの続きへと参りましょう。
 今日は旅行2日目(12月29日)の夕方〜夜。東京は水道橋の後楽園ホールから再開です。文中は文体を常体に変えておりますので、どうぞ宜しく。


 実数で2000人弱収容できる後楽園ホール。最近では中堅以上の団体でも観客席が埋まらないケースも少なくないが、この日は第1試合前からなかなかの客入り。最終的には9割方埋まっていただろうか。DDTプロレスのような中小団体では大健闘の部類だろう。
 客層は完全なビギナー層(特に女性ファンが多い)か、駒木のようなドマニア層に二分されている。あまりの“熱”の違いに客同士で揉め事が起こりそうな風に思われるかも知れないが、さにあらず。この2つの客層は、あまりにプロレスに対する理解に格差があり過ぎるので、かえって共生が可能なのである。
 例えば、「凶器攻撃を受けて大流血」というシーンに出くわした時の反応。まず完全なビギナー層は、
 「あー、あんなに血が出てるよぅ、大丈夫かなー」
 ……と、純真な心で選手を心配する。
 では一方、ドマニア層はどうかというと、
 「あーあー、レフェリー、焦って額をスパっと切り過ぎだよ。どうせなら自分で剃刀の刃持たせて切らせりゃいいのに。それにしてもあの選手、出血酷いな。オイオイ、大丈夫かなー」
 ……と、気持ち良いくらい穿った見方で選手を心配する。過程は全く違うが、「大流血している選手を心配する」という結論は一緒。故に対立しないのである。筋金の入った極右と極左の思想家が討論をすると、主義主張は全く違うのに、「今の日本を憂う」という結論で意気投合してしまうのと似ている(かも知れない)。

 ただし、例外……というかプロレスに対する理解の格差を超えて、全く同じように観客全てを恐慌に陥れるレスラーがいる。そう、男色ディーノである。
 何しろ入場時、退場時は必ず観客席に雪崩れ込み、男を見つけては抱きついてディープキス女にはグーパンチかヘッドバッドを見舞うのだ。しかも全くの仕込み、台本なし。問答無用のガチンコである。中には物好きなファンがいて、ディーノに「カモ〜ン♪」と催促するバカもいるのだが、ディーノも然る者。そういう奴はスルーして、隣のお兄さんにイッてしまうのである。襲われた方は、とばっちりも良い所だ。
 駒木もこれまでプロレス会場で色々な目に遭ってきた。スタン=ハンセンに背後から襲われたりベイダーに蹴られそうになったりチェーンソーを持ったレザーフェイスに追い掛け回されたりした。しかし断言する。ディーノの方が100倍は怖い。それはリングアナウンサーの観客への警告にも現れていて、ディーノが観客席で暴れている時には、

「お気をつけ下さい! お気をつけ下さい! 男色ディーノはホンモノです! 他人事ではありません! ディーノと目を合わせないで下さい! そこの貴方、逃げて〜〜〜〜!(裏声絶叫)」 

 ……と、断末魔のようなアナウンスがホール一杯に響き渡る。しかし、前にも述べたが後楽園ホールは固定椅子逃げてと言われても逃げられないのである。

 さて、試合内容は、また長くなり過ぎるので割愛。
 ちなみに個人的な見所は、男色ディーノの新技・シャイニングウィザード式あてがい(=片足踏み切り式ジャンピング股間顔面押し付け)佐々木健介ソックリの藤沢一生(現:健心)とジャイアント馬場&ジャンボ鶴田モノマネキャラの石川修司を見て大爆笑する安生洋二その藤沢一生を救出するため乱入したホンモノの佐々木健介の天然ぶりなど……って、本当に穿った見方をしているなぁ、自分(笑)。
 男女混合マッチあり、デスマッチありと、全5試合の興行ながらチケットの分は十分楽しめた。ただ、試合数が少ない分だけ試合時間を伸ばそうと無理をしていたのが逆に残念だったかな、と。やはり体力面で劣る中小団体のレスラーは、“太く短く”な試合でこそ輝くと思うのだが。

 ……試合が終わったのは午後9時頃だったか。後楽園ホールを出てすぐさま早足で移動開始。今度の目的地は、秋にも行った水道橋駅近くのDDTステーキ。やはり後楽園ホールでDDTプロレスを観戦したとなれば、ここで夕食を摂るのが正しいファンの在り方だろう。
 店に着くと、狭い店内は既にほぼ満席。駒木以上に正しい在り方をしたファンが既に集っていた(笑)。危ない危ない、早足で歩いて来なかったら空腹抱えて順番待ちを強いられるところだった。
 空いていた最後の席に腰を下ろすと、DDTステーキ225g(ライス付)とサラダをオーダー。肉も柔らかいし、これで1000円チョイなのだからコストパフォーマンスも高い。これでソースの味がもう少し良ければ最高なのだが。
 ……そう言えばこの店、アメリカ産の牛肉を使っていたんじゃなかったっけ。う〜む、BSE騒動の影響は大丈夫なのだろうか。東京に行くたびに最低1度は行っている店なので、次に来店する時も健在である事を祈ろう。

 ──というわけで、これにて本日の行程は全て終了。午前4時台の東京着から休憩らしい休憩も摂らずに15時間以上活動していたわけで、さすがに疲労困憊だ。
 唯一の救いは、予約しているホテルが水道橋から近い神田駅近くにあるという事だ(当然、その辺も考慮してホテルを探しているのだが)。まだ効力の残っていた青春18きっぷで本日最後の電車移動。青春18きっぷも、ここまで有効に利用されたら本望だろう

 ホテルは神田駅から歩いて数分の好立地。個室に風呂が付いていないが、その代わりにサウナ付大浴場があるという、よくよく考えたら標準以上に恵まれた施設のビジネスホテルである。しかもこの日はビジネス客が見込めない年末の閑散期とあって、宿代も消費税込みで5000円チョイという破格値。
 駒木が“常宿”指定しているホテルが満室(りんかい線・大井町駅のすぐ近くにあるホテルなのでコミケ客で満杯になる)だったので急遽インターネットで探したのだが、穴場はいくらでもあるものである。

 チェックインを済ませ、部屋に荷物を置くと、すぐにホテル真向かいのコンビニで晩酌用の酒と肴を確保。既に疲れと眠気でフラフラなのだが、そこはせっかく社会学講座の業務から解放された貴重な日。意地でもくつろがなくては気がすまない。健康のためなら死んでもいいという人と似ているようで似ていない発想だが、我ながら荒んでるなと思う。
 部屋に冷蔵庫が無いホテルなので、買出しした缶ビールは外気で冷えきった窓際に置き、今度は風呂へ。既に疲れと眠気でフラフラなのだが(以下略)。キッチリ、サウナ&水風呂も2往復キメた。ここまで来るとリフレッシュするのも命がけだ。
 風呂から上がると、普段は観られない関東ローカル(というか、近畿エリア以外全国放送の)深夜番組を眺めつつ、チビチビと晩酌。だが、案の定というか、500ml缶ビール1本を飲み切った辺りで睡魔に襲われ意識喪失。気が付いたら日付が変わっているどころか朝になっていた。これも「昨日はグッスリ眠れました」という事になるのだろうか。


 ……というわけで、長い長い2日目がこれで終了です。次回からは3日目、コミケ最終日の模様を中心にお伝えする事になると思います。では。(次回へ続く

 


 

2003年度第108回講義
2月15日(日) 競馬法学
「検証・競馬法改正案」

珠美:「こういう形ではお久し振りになりますね、栗藤珠美です。
 今日は、今国会で提出・成立が予定されている競馬法改正案について、駒木博士に検証して頂きます。私が進行役を務めさせていただきますので、最後までよろしくお願いしますね♪」

駒木:「どうも、駒木です。バレンタインの週末に色気の無い競馬学講義。まさにウチの講座らしいと(笑)」
珠美:「(苦笑)。ま、私もチョコレートを渡す相手がいないという、女性の立場としてもかなり寂しいバレンタインだったんですけれども……」
駒木:「まぁ、競馬ファンは黙ってバレンタインSの馬券を買っておけという事で(笑)。
 ……さて、さっき珠美ちゃんに紹介してもらった通り、今日の講義は今国会で審議されて成立する予定の競馬法改正案について、その内容を色々検証していこう…というもの。施行は来年の1月予定なんで、まだ先の話なんだけれどもね。でも今回のはかなり抜本的な改正案になってるから、マスコミに報道されたばかりで関心が高い内に採り上げておこうかな…と、そういうわけ」
珠美:「私も改正案の概要をニュースで見て驚いたんですが、今回はかなり大幅な改正になりましたものね」
駒木:「特に馬券関係の規制緩和がメインになっているあたりが、これまでとは違うところだね。不況が長引いて日本の競馬業界がシャレにならないほど地盤沈下していっているし、農林水産省も『ギャンブルの規制を緩めるとは何事ぞ』という批判を覚悟してでも色々やらなくちゃならなくなったって事だろう。最近になって自民党・民主党の複数の大物議員が強い働きかけをしていたようだし、まぁ“期せずして機が熟した”ってところかな」
珠美:「……というわけで、これから今回の競馬法改正案について、中でもファンの立場で競馬に関わる私たちにとって重要なものをピックアップし、トピック別で博士に解説して頂きます。
 ──ではまず、これは現役大学生の皆さんには朗報になりますね。20歳以上の学生・生徒への馬券購入解禁についての改正案から解説して頂きましょう」

駒木:「うん、憲法違反の疑いが極めて濃い、天下の悪法・競馬法第28条がついに改正されるね。
 その競馬法第28条というのは、
 『学生生徒又は未成年者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならない』
 ……という御馴染みのヤツなんだけど、これは明治時代の馬券黙許時代に出来た規則がそのまんま21世紀の現代まで残っちゃったモノで、時代錯誤甚だしい無茶苦茶な法律だった。
 何しろ、日本の最高法規である日本国憲法第14条第一項に、
 『すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。』
 ……とあるわけでね。酒、タバコ、風俗店の立ち入りと同様、“オトナの愉しみ”であるギャンブルに年齢制限を設けるのは仕方が無いにしてもね、学生や生徒という社会的身分によって、馬券の購入をしていいかどうかという経済的、社会的関係において差別を受けるというのは、明らかに憲法違反だよ。明治憲法時代に出来た規則をそのまんま戦後に持ち込んでしまったために起こった“違憲状態”だね。これが今回、『学生生徒』の部分が削除されて、ようやく解消される。実際問題、これまで学生や生徒も馬券を平気で買ってたけれども(笑)、これで名実揃って解禁という意味で大いにめでたい」
珠美:「すいません、私も10代から馬券を買ってました(苦笑)。何しろ、競馬学のメッカ・仁川経済大学ですから……」
駒木:「僕なんか16歳から買ってたけどね。まず親を競馬好きにして、それから公認を取り付けて(笑)。まぁ、100円玉で遊んでいるならゲームセンターよりも健全だし、ここは大目に見てもらおう(笑)。
 ──あ、あと、ほとんどの人は気付いていないと思うけど、年齢制限を『未成年』という用語でやっちゃうのも、実は結構ヤバめなんだ」
珠美:「……と、いいますと?」
駒木:「これは公立高校で講師やってた頃、暇な時に六法全書を読んでて気が付いたんだけどね。
 まず、成年・未成年については、民法で規定されているのは常識の範囲だと思う。第3条の、
 『満20年ヲ以テ成年トス』
 ……という条文が有名だからね。
 ところが、民法ってのは全部で1044条まである、とんでもなくボリュームのある法律でね。そのかなり後の方、第753条に、
 『未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。』
 ……ってのがある。これは20歳未満の若者が結婚した時、普通の未成年者みたいに保護者とかの監督や後見を受けなくても良いって意味で作られた法律なんだろうけど、これを競馬法の解釈に使うと一気に話がややこしくなる(笑)
珠美:「……つまり、16歳の高校へ行っていない女の子は、結婚した日から馬券を買っても大丈夫って事になっちゃうんですか?」
駒木:「婚姻が成立した瞬間にね。まぁ、これを競馬法に適用するのはかなり離れ業のような気がするけれども、万が一にでも裁判になったら解釈で揉めるぞー(笑)」(追記:民法753条の規定は、あくまで民法の範囲内だけで限定された“擬制”であり、やはり競馬法に適用するのは非現実的とのご指摘を受けました。ですから、10代既婚者で社会人の方はお気をつけて)
珠美:「……ということは、競馬法第28条は、『学生生徒』の部分を削除するだけじゃなくて、『未成年』を『満20歳以上』に変えないといけないことになりますね」
駒木:「完璧を求めるならね。まぁ、ここは法律案を実際に執筆する役人の腕前拝見と言う事で。
 ──しかし欲を言うなら、新競馬法の年齢制限は、サッカーくじ並の19歳解禁にしてもらいたかった。まぁ、競馬は賭け金上限無制限のギャンブルだからって事もあるんだろうけど、多分そこまで考えてない気もするしなぁ(笑)」
珠美:「かも知れませんね(苦笑)。
 ……さて、次のトピックへ参りましょう。今度は、中央と地方の馬券相互発売に関する法律改正案ですね。
 これまでも中央と地方の馬券相互発売は行われていましたが、相互発売にあたっては主催者側が職員を派遣して直接販売しなければならず、その関係上、相互発売は一部の窓口に限られていました。しかし、この法律案が成立しますと、それらの規制が大幅に緩和されるようになりますね。また、馬券販売や警備などの業務を民間に委託する事が可能になる改正案も出される予定です」

駒木:「どれくらい規制が緩和されるのかが判らないんで話が見え難いんだけどね。でも上手くいけば、アメリカのラスベガスみたいに国内全競馬場の馬券が買える場所なんてのも作られるかも知れない」
珠美:「全競馬場! ……ということは、阪神競馬場で北海道のばんえい競馬の馬券が買えたりするかも知れないわけですね」
駒木:「ばんえいの馬券は大井競馬場でも売ってるし、不可能じゃないだろうね。まぁ、全競馬場の馬券販売までは望めないにしても、地方競馬場の近隣にあるJRAの競馬場やウインズでは、当たり前のように馬券が売られるようになるだろう。例えば、今はウインズ神戸でしか相互発売されていない園田・姫路競馬の馬券が、大阪にある3つのウインズと阪神競馬場で売られるようになったりとかね。今でも何箇所かでやっている、中央競馬の馬券を買いに来る客を見込んだ地方競馬の日曜開催とかも今後は増加するだろうし。ホッカイドウ競馬存続の決め手になったミニ場外は、JRAの馬券販売にでも威力を発揮するかもね。
 この馬券の相互発売っていうのは、実際に競馬を開催している側には馬券売上の増収が見込めるし、窓口を貸して馬券を売る側には濡れ手に粟の手数料収入が見込める。そりゃあ、ある程度馬券が売れなくちゃ経費だけが増えて赤字になるけれども、やりようによっては随分と有効に働くよ、これは。
 ──あと、馬券販売や警備の民間委託ってのは、簡単に言えば経費削減だね。あんまり知られていないけど、馬券販売窓口のオネエサン(?)たちの給料って、結構高かったりするんだよ。マークシート導入前の馬券販売は口頭で買い目を受け付けて馬券を発行するやり方だったから、ガラの悪いオヤジと丁丁発止の遣り取りをする技術と度胸が必要でね。そのために技術料と危険手当ってことで高給優遇してたりしたんだ。ところが、業務がマークシートを機械に通す単純作業になってからも給与水準が変わらない所もあったりしてね。それが結構な経費の無駄遣いになってたりする」
珠美:「そう言えば昔、博士から西宮競輪場の車券販売員の日給をお聞きしてビックリしたことがありました(笑)」
駒木:「ヤフーBBのモデム配り以上の日給だったと言うね(笑)。さすがに廃止になった年には半額に削られちゃったけど。
 ……ただまぁ、そんなオネエサンの給料よりも、もっと経費削減すべき所はあるんじゃないかって気もするけどね。特に地方競馬に対する自治体の態度なんて酷いもの。黒字の頃は『収益を財政に繰り入れて当たり前』で、赤字になったら『財政の足を引っ張るギャンブルを存続させるわけにはいかない』だ。自分で予算を食いつぶしておいて、累積赤字がかさんだとか理由をつけて廃止。ふざけるなって話だよね」
珠美:「そのあたりは色々複雑な問題が入り組んでいるみたいですので、私からは何とも(苦笑)。博士も、本題からズレている感じですので、軌道修正して下さいね。何だか最近の談話室(BBS)みたいな流れですけれども(笑)。
 ……では、次のトピックに。皆さんお待ちかねの、馬券についてのお話です。今回の改正案では、従来は約25%で固定されていた控除率──馬券売上げにおける、主催者側の取り分ですね。それが、馬券の種類などに応じて自由に設定出来るようになりました。既に今回の改正案では、単勝と複勝の控除率を約20%に下げるという事で調整が進んでいるようですね。
 また、馬券の種類もまた1つ増えます。戦後すぐから昭和44年まで発売されていた重勝式馬券が復活することになりました。これは指定された複数のレースの勝ち馬を全て当てて初めて的中という馬券で、今でもアメリカなどで発売されています。ただ、こちらは控除率は約30%ということになりそうですね」

駒木:「控除率を改訂するのは1950年以来、54年ぶりになるらしいね。今回はあくまで『簡単に控除率が変えられるようになりましたよ』という話なんだけど、法律でガンジガラメだったこれまでに比べたら雲泥の差だ。今は地方競馬の状況がアレなんで大幅な控除率の改善は難しいけれども、馬券によって控除率のバリエーションを持たせる事が出来るようになったってのは大きい。ただ、後でも話すけど重勝式の約30%ってのはナンダソリャだけどねぇ(苦笑)。そんな所に知恵を回すくらいなら、今やお荷物同然になったワイドの控除率を下げたらどうだと思うんだけど」
珠美:「えーと博士、ちょっと細かい話になりますが、よろしいですか?」
駒木:「ん?」
珠美:「今回控除率が約25%から約20%に下げられる単勝・複勝なんですが、この2つはこれまでも、売上額の5%を特別給付金という形で払戻金に還元していましたよね? 理屈の上ではこれまでも控除率は約20%だったんですが、報道では実質少しだけ今までより払戻金が増えるようになる…という話になっています。これはどういうことなんでしょう?」
駒木:「ああ、これね。まぁ、まだ新しい単勝式、複勝式の払戻金算出公式を見たわけじゃないんで、正確な話はまた後日って事になるんだけれども、1つだけ言える事は、“端数切り捨て”になる分が少しだけ減って、その分が払戻金に還元されるって事だ。オッズで言えば0.1倍の誤差なんだけどね」
珠美:「博士、その解説では、まだ判り辛いと思いますけど……」
駒木:「うん、なんだか奈須きのこ作品の設定解説みたいだと自分でも思った(笑)。読み手に馴染みの薄い専門用語を羅列したら、こんな感じになっちゃうんだね。こんなところで文章の勉強だ(笑)。
 ……えーとね、僕たちが日頃、競馬中継とかで耳にしている払戻金──「馬連・5−12で1430円」みたいなヤツね。これ、実は10円未満の金額をあらかじめ切り捨てたものになっているんだよ。つまり、法律で規定された計算式で算出した払戻金が1438円だった場合でも、実際には1430円として扱う事になっているわけ。その切り捨てられた端数の8円は、主催者側の収入になる。たかが8円かもしれないけど、的中馬券100円分あたりの8円だからバカにならない。これ、実はちゃんと競馬法に記されているんだよ。
 で、今回問題なのは、単勝・複勝の特別給付金についても、この端数切捨てがあるって事。
 ちょっとこれは例題を作って解説してみよう。なんだか物凄くガラの悪い小学校算数の文章題みたいだけど(笑)、これなら判りやすいだろう。

例題:1枚100円の単勝馬券が1,000枚(100,000円分)売れて、その内130枚(全体の13%)的中したとする。
 この場合における馬券1枚(100円)あたりの払戻金と、実質的な控除率を求めよ。


 単勝式における的中馬券1枚(100円)あたりの払戻金は、

 以下の計算式(簡便法)で算出される正規の馬券1枚(100円)あたりの払戻金、

 (総売上枚数)×73.8÷(総的中枚数)+10円
 ※但し、1円単位以下は切り捨て

 及び、以下の計算式で算出される馬券1枚(100円)あたりの特別給付金、

 (総売上金額)×0.05÷(総的中枚数)
 ※但し、1円単位以下は切り捨て

 ……を合計したものとなる。

 よって、この場合、馬券1枚(100円)あたりの正規の払戻金は、
 1000×73.8÷130+10=577.69……
 ここから1円単位の端数は切り捨てるので、570円となる。

 また、馬券1枚(100円)あたりの特別給付金は、
 100000×0.05÷130=38.46……
 ここから1円単位の端数は切り捨てるので、30円となる。

 この2つの金額を合わせたものが、単勝式の払戻金であるから、
 570+30=600
 ……で、この場合の的中馬券1枚(100円)あたりの払戻金は600円となる。

 ところで、この場合における実質的な控除率(全売上額についての主催者側の取り分の比率)とは、

 (《売上金の総額》−《払戻金の総額=払戻金×的中枚数》)÷(売上金の総額)×100(%)

 で、計算できるから、ここに数値を代入して計算すると、

 (100000−600×130)÷100000×100=22%

 ……となる。

 答:600円、22%

 ……これだと、競馬をかじっている人なら完全に理解してもらえるかな。まぁ、そうじゃない人でも、控除率が20%どころか22%になってるって事は判ってもらえると思う。
 ──で、どうしてこんな数字になるか、判った? 珠美ちゃん」
珠美:「1円未満切り捨ての額が多いですよね。最初の払戻金計算でも7円以上削られているのに、特別給付金で更に8円以上切り捨てられています。本当なら616円になるはずの払戻金が600円になっているんですから、実質的な控除率は上がりますよね」
駒木:「ご名答。まぁ、これは1円単位の端数が特に多く出るケースを選んだんだけれども、今の制度だと、最悪の場合はこうなっちゃうわけ。
 だけど、今度の法改正で特別給付金制度が撤廃されるわけだから、1円単位の端数を削られる回数が2回から1回に減るよね。さっきのパターンで言うと、最初から払戻金が616円強と算出されるようになるわけ。そこから端数を切り捨てても610円。10円お得だね。たった10円だけれども、これだと実質控除率も20.7%まで下がる事になるよ」
珠美:「なるほど、よくわかりました。有難うございます」
駒木:「さて、ちょっと時間を取られちゃったけど。復活する重勝式馬券についても話していこう。
 この重勝式馬券、以前発売されていた頃には、第1レースから第3レースまでの勝ち馬を当てる…という形でのみ販売されていた。お客が少ない午前中の客寄せが主たる目的だったそうだよ。
 当時の馬券と言うのは、今みたいな磁気テープ付のユニット馬券じゃなくて、1枚100円なり200円の馬券を金額分の枚数だけ売るという形式だった。ペラペラの薄い紙でね、例えば500円分なら100円券を5枚、という風にね。買い目ごとに窓口が決まっていて、3点買いするなら、3回窓口に並ばなくちゃならなかった。今みたいに馬連総流しなんてやってたら大変だ(笑)。
 ……よく、ハズレ馬券が風で舞い上がって…なんて表現が出て来るけど、あれはその当時の話を言ってるんだ。今の馬券じゃ重たくて、竜巻でもなきゃ空高く舞い上がる事は無い(笑)」
珠美:「(笑)」
駒木:「で、当時の重勝式馬券は、まず第1レースの勝ち馬を予想して馬券を買う。この時点では、普通の単勝式と変わらない。
 ただ、単勝式馬券なら、第1レースの予想が的中した時点で払い戻しを受けられるんだけど、重勝式の馬券はここからが違う。的中馬券は、次のレースの重勝式馬券の引き換え券になるんだ。つまり、第1レースが終わった時点で3枚的中していたら、第2レースでは3枚の重勝式馬券に交換できるってわけ。
 第3レースの時も同じ。第2レースの的中券と第3レースの重勝式馬券を交換する。ただ、ここまで来ると、的中枚数も大分減っているわけでね、第3レースで3点買いしたくても、第2レース終了時点の的中券が1枚しか残っていないという場合もよくある。
 3レース対象の重勝式における馬券の組み合わせの数は3連単とほぼ同じなんで、的中した場合の払戻金はデカい。だから手広く多点買いして当てたいんだけど、手持ちの的中券はわずか。さぁ、どうする?」
珠美:「どうしたんですか?(笑)」
駒木:「重勝式の馬券売り場に集まった人たちで、臨時のチームを組んだそうだよ。なけなしの第2レース的中券を持ち寄って、相談の上で第3レースの馬券に交換する。ただ、あくまで臨時のチームだから、的中馬券を持ち逃げされちゃ大変だっていうんで、レース中はみんなで手を繋いで『そのまま!』とか『差せ! 差せ!』とか叫んでたらしいよ。いい年したオッサンが手を繋いでってのが微笑ましくて良いよね(笑)」
珠美:「あまり……想像したくないですけど(苦笑)」
駒木:「だね(笑)。……まぁそういうわけで、当時の重勝式馬券っていうのは、熱心な競馬ファンにとっての“隠れた名物”だったわけだね。ただ、事実上第1レースにしか買えない馬券だから全体的な売上げに貢献するわけでもないし、無闇にオッズが高いんで『射幸心を煽る』という批判の的にもなる。一旦廃止になっちゃったのも、当然と言えば当然なのかな」
珠美:「でも、そんな馬券が21世紀になって復活するというのも面白いですね」
駒木:「多分、アメリカのブリーダーズカップとかで売られている、5レースや6レースを対象にした重勝式馬券を参考にしたんだろうね。向こうじゃ馬券の偽造事件が起こるくらいに有名な馬券だから。
 今回の法改正は第一段階ということで、東西のメイン2レースを対象にした“ミニ版”から始めるみたいだけど、ゆくゆくは対象レースを増やしていくんじゃないだろうか。各競馬場の全レースを対象にした12レース重勝式なんてのが実現すると、宝くじ並の配当が期待出来る馬券になるよね。
 ただ、今回導入される2レース対象の重勝式だと、買い目の組み合わせ数は馬単と同じくらいなんだよね。2レースとも荒れに荒れてやっと10万馬券になるくらいで、下手すりゃ3ケタ配当だ。なのに、これだけ控除率を30%にするのはどうしてだろう? 30%にするのは、払戻金が軽く100万円台に乗るような馬券になってからでも遅くはないと思うんだけどね。悪いけど、現状では全く魅力が無いよ。まぁ、有馬記念直後の六甲ステークスが異様に盛り上がる風景は、ちょっと見てみたい気もするけれども(笑)」
珠美:「それは、ちょっと楽しそうですね(笑)」
駒木:「さて、講義も長引いてきたし、今日はここで区切りをつけようか。補完的な内容については、また受講生さんからのリクエストに応えるという形で、また後日にやろう」
珠美:「ハイ。それでは、長い時間お疲れ様でした」
駒木:「うん、ご苦労様。あ、来週はフェブラリーSだね。そういやまだ、秋の馬券ラリーの優勝特典や罰ゲームも放置したままだったなあ(苦笑)。まぁとりあえず、来週は4人で予想大会をやろう」
珠美:「分かりました。では、皆さんもお楽しみに♪」
(この項終わり)

 


 

2003年度第107回講義
2月12日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(2月第2週分・合同)

 藤田和日郎さんの短編集第2弾『暁の歌』が発売になると言う事で、今週号の「サンデー」に広告が掲載されていました。それはそれで結構なお話なのですが、そこの宣伝コピー
 「これぞエンターテインメント!! 2003年最高傑作読切と評された『美食王の到着』」
 ……とあるのが非常に気になる、まさにその通りにこの作品を評した駒木ハヤトです(挨拶)。

 いや多分(というか間違いなく)、広告担当者が“吹いた”のが偶然当ゼミの論評と一致しただけだと思うんですが(笑)、あの作品に敢えてそういう評価をした人って他に知らないので、一瞬狼狽してしまいましたよ。
 まぁ駒木の自意識過剰反応の真相はどうあれ、第2回仁川経済大学コミックアワード・グランプリ受賞作『美食王の到着』が収録された短編集が発売されますので、まだ未読の方は要チェックです。R-18指定のパソコンゲームと違って、こちらはお買い求め易いので是非(笑)。
 ちなみに発売日は2月18日。短編集ゆえ、小さな書店では入荷しない恐れもあると思います。お近くにマンガ専門書店や大型書店が無いという方は、Amazonで通販するなり、お近くの書店に注文するなりした方が良いかも知れません。

 ──さて、それではゼミを始めましょう。
 今週も情報系の話題から。まずは「週刊少年ジャンプ」系月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の、03年12月期分の結果発表がありましたので、例によって受賞者等を紹介しておきます。

第9回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年12月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
 十二傑賞=1編
 ・『HURL KING』
(=本誌か増刊に掲載決定)
  新井友規(20歳・東京)
 
《秋元治氏講評:完成度の高い仕上がり。キャラクターも面白い。ただ、主人公のキャラに読者の好感を得る部分が足りなかったのが残念》
 
《編集部講評:既存の作品の影響を感じるが、自分の好きなキャラを活き活きと描いている点は評価できる。細部まで丁寧に作画するように心掛けて欲しい)
 審査員(秋元治)特別賞=1編
  ・『カエル・リミット』
   一之瀬珠緒(22歳・東京)
 最終候補(選外佳作)=7編

  ・『龍送球道』
   板倉雄一(21歳・神奈川)
  ・『不死身のエレキマン』
   角鋼侍(24歳・福岡)
  ・『デマやん!!』
   永田光起(19歳・愛知)
  ・『SWEET NOVEMBER』
   黒沢潜(20歳・東京)
  ・『VOICE OF THE NOISE』
   佐藤真由(20歳・埼玉)
  ・『FIST WARS』
   小野ひとみ(19歳・大分)
  ・『リクト』
   岡春樹(23歳・埼玉)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 
 ◎十二傑賞の新井友規さん02年11月期「天下一漫画賞」で審査員(鈴木信也)特別賞を受賞。
 ◎最終候補の板倉雄一さん01年10月期「天下一漫画賞」で審査員(小畑健)特別賞を受賞02年7月期にも投稿歴あり
 ◎最終候補の永田光起さん03年7月期「十二傑漫画賞」にも投稿歴あり
 ◎最終候補の岡春樹さん…03年7月期「十二傑漫画賞」、03年上期「ストーリーキング」で最終候補。02年前期「小学館新人コミック大賞・少年部門」でも最終候補?

 ……初受賞組ばかりだった前回とは対照的に、今回は2年越し、3年越しの“新人予備軍”の方々の活躍が目立ちました。
 ところで、この「十二傑新人漫画賞」が開始されて以来、既にデビューを果たした新人・若手作家さんの活躍の場が限定されていたのですが、この2月に、「ジャンプ」の新しい増刊が創刊される事になりましたね。

 その名もズバリ「青マルジャンプ」

 コメント不可というか、コメントしたらキリがないような誌名ですが(笑)、創刊号では荒木飛呂彦ロングインタビューという目玉企画を筆頭に、実力派の新人・若手作家さんの作品も複数掲載される模様です。
 ただ、5月、8月、12月の合併号休みを利用して発売される「赤マル」とは違い、この「青マル」は週刊本誌と並行して発売されるんですよね。開講以来、「ジャンプ」増刊号の発売の折には全作品レビューを実施してきた当ゼミですが、ちょっと今回は正直言って苦しいです。
 何回かに分割して実施するとか色々と考えるつもりですが、ひょっとしたら“評価B以上の作品のみレビュー”みたいな形式になるかも知れません。

 さて、賞レースと言えば、今週号の「サンデー」で小学館漫画賞の正式な受賞者発表があったのですが、『鋼の錬金術師』『焼きたて!! ジャぱん』が受賞した少年部門では、他に『アイシールド21』『うえきの法則』がノミネートされていた事が判明しました。
 連載開始から2年ほど経ってからノミネートされる作品が多いので、連載1年余りの『アイシル』がエントリーされていたのは正直驚きだったのですが、それにしても“他社枠”の競争相手が……。いくらこの作品を大いに買っている駒木でも、『鋼の錬金術師』と比較すると、“格の差”が否めないように思えます。
 ただもし『アイシールド21』が「サンデー」連載の作品だったら、多分『ジャぱん』じゃなくてこっちだったろうなぁ…とか思ったりもするんですが、現体制の「サンデー」で『アイシル』が連載された場合、どんなマンガになったか判ったもんじゃないですからね(笑)。『旋風の橘』とか『ふぁいとの暁』みたいな『アイシールド21』なんて、考えるだけで溜息がこぼれます。

 ……ちょっと脱線しましたが、最後に読み切り情報を。「週刊少年サンデー」の次号(12号)に、ギャグ読み切り・『教育チャンネル みんなのチャンポッピ』(作画:ピョンタコ)が掲載されます
 作者のピョンタコさんは、他誌ではピョコタンのペンネームで幅広く活躍されているイラストレーター兼業のギャグ作家さんです(キャリアについてはご自身が運営されているウェブサイトの作品リストを参照下さい)
 以前発表されていた予定では、この12号から水口尚樹さんの新連載が始まるはずだったんですが、一体どうなったんでしょうか。こちらでも色々調べますが、とりあえずは続報を待ちたいと思います。

 ……それではレビューとチェックポイントへ。今週のレビュー対象作は「サンデー」の新連載1本のみということになります。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年11号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週は「ジャンプ」ヒロイン総出演でバレンタインデー大特集の趣。「表紙が恥ずかしくて買えない」という人が各方面にチラホラといらっしゃったようですね(笑)。
 こういう企画になれば強いのは『いちご100%』『BLACK CAT』ですが、なんかこの2作品、相撲界で言えば何だか高見盛みたいなポジションですよね。もっぱら力士の本分以外の方で活躍してるあたり特に。
 しかし、ただ1人、殺意を込めた目線で「義理」とデカデカと書かれたチョコを持った津村斗貴子さんは爆笑モノでした。さすがの駒木も、これには「空気読め」と(笑)。こういう時にこういう人が天使のような笑顔で(若しくは顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに)チョコを差し出すからバレンタインデーなわけで……。

 ところで、巻末コメント欄で最近やたらと威勢が良いのが空知英秋さん。毎週のように編集さんたちに新人らしからぬ文句をカマしていますが、これは逆に編集さんと上手く行っているからこその“内輪ネタ”なんでしょうね。ストレスをシャレに昇華できる作家さんと、その悪意の篭ったシャレを笑って受け止められるだけの度量のある編集さん。良いコンビじゃないですか。本当に仲の悪いコンビだとこうは行きませんからね。とてもじゃないですが公に出来ませんもの(笑)。
 こういう“確執”と言えば、鳥山明さん鳥嶋“マシリト”和彦・元編集長の関係が有名でしたよね。編集者を主人公のメインライバルにして成功させてしまった作家さんというのも珍しいですが、どうせならそこまで追求してやってもらいたいもんです。

 ◎『ONE PIECE』作画:尾田栄一郎【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 デービーバックファイト1回戦終了。「メンバー1人離脱」というシナリオが公然の秘密になっている状態ゆえ、この勝ち負けも初めから読めてたんですが、それでもなかなか楽しめるエンターテインメントでした。
 間延びしまくるメインストーリーの時には忘れがちになるんですが、尾田さんの演出や画面構成は非常に優秀ですよね。さすがは看板作家です。

 しかしこのまま行くと、2回戦もルフィチームの負けで、3回戦にルフィが勝った時に2人のうち誰を奪還するか迷う……という展開になりそうですね。ひょっとしたら、連載開始以来最大の修羅場になるかも知れません(笑)。


 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】
 
 おお、バーベキューしてるシーンに、桜玉吉、O村(奥村「コミックビーム」編集長)、ヒロポン(広瀬「コミックビーム」元編集部員)、みげー君(桜さんのアシスタントでマンガ家・肉柱ミゲルさん)『漫玉日記』キャラクターたちが! 誰だ、村田さんをそそのかしたのは(笑)。


 ◎『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健【現時点での評価:B+/雑感】

 連載9回目で掲載順6位、そして次週にセンターカラー&増ページということは、ほぼ今期残留確定と考えて良いでしょうね。
 さて、ストーリーの方は、いよいよキラが静かに狂い始めて無差別殺人モードに入りました。芸の細かい作戦など、確かに見所も多いんですが、そろそろLからの逆襲も見たいところです。何だか、延々と1回の表が続く野球の試合みたいな感じで、そろそろ新しい流れが欲しいと思ってしまいますね。
 また、キラが単なる人殺しになってしまった以上、ボチボチ読み手が感情移入出来るようなメインキャラを全面に押し出す必要もあるのではないかと思います。FBI捜査官・レイの婚約者が重要キャラになりつつありますが、これを上手く活かす方法も模索してもらいたく思いますね。

 ◎『武装錬金』作画:和月伸宏【現時点での評価:A−/雑感】 

 今回から始まった戦闘シーン、至る所で強い既視感があるなぁと思ったら、例の『Fate/staynight』でした(笑)。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、「おお、このシーンは○○の××そっくりじゃないか!」…などといった場面も。
 武装錬金を使った戦闘と、あの作品のサーヴァントの戦闘システムって共通点多いんですよね。両作品の制作時期は完全にズレているので偶然の一致以外に有り得ないんですが、『吼えろペン』で語られていた「似たようなアイデアが別々の人に“降って来る”」…ってのは本当にあるんですなぁ。


 ◎『銀魂』作画:空知英秋【現時点での評価:B/雑感】 

 連載当初から色々な意味で迷走気味だったこの作品ですが、どうやら作品の方向性は固まって来たみたいですね。シナリオの重厚さを敢えて犠牲にし、ギャグマンガに近い作風に持っていっています。
 現状、とりあえずは1回、1回それなりに楽しめ、要所要所ではブッと吹き出し笑い出来るような構成になっているんじゃないでしょうか。感覚としては尾玉なみえ作品と『こち亀』を足して2で割ったような感じかと。
 ただ、これで天下が取れるかと言うと、取れないでしょうね(苦笑)。バイプレイヤーの位置を固めるまでに打ち切りに遭わないか、それだけが心配です。

☆「週刊少年サンデー」2004年11号☆

 ◎新連載『こわしや我聞』作画:藤木俊

 「週刊少年サンデー」の新春飛び石新連載シリーズ第3弾は、増刊連載から昇格となった、藤木俊さん『こわしや我聞』です。

 藤木さんは元小学校教員という経歴を持つ(受講生さんから情報を頂きました。感謝!)方で、先月30歳になったばかり。
 公式プロフィールによると、99年に「サンデーまんがカレッジ」で努力賞を受賞した後、01年に増刊にてデビュー。03年に今作のプロトタイプ版を増刊号に短期連載し、現在に至ります。
 この下積み期間には『ファンタジスタ』の草葉道輝さんのアシスタントを務めていたそうで、メジャー誌の若手作家さんとしては標準的なキャリアを積んで来たと言えるでしょうね。

 ──それでは、作品の内容について述べてゆきましょう。

 については、まだ若干キャリア不足ゆえのアラが目立つものの、基本的なマンガ的表現については及第点を出せるのではと思います。アシスタント経験が活きているのか、背景等の画面処理も上手いですね。アシスタントの使い方も作家の技量の内ですから、これは評価しないといけないでしょう。
 これで連載を続ける内に線がこなれてくれば、「サンデー」連載陣の中でも平均的な水準までには上がっていけるでしょう。不慣れなアングルやポーズの描写を、いかに上達させるかがカギだと思います。

 ストーリー・設定については、一言で表現すれば「一長一短」といったところでしょうか。
 まず、シナリオの展開そのものは、ソツなく出来ていて問題ありません。ちょっとステロタイプ過ぎる話の流れかな、という感じもしますが、第1回ならこんなものなのかも知れません。
 ただ、諸々の設定については注文をつけたくなってしまいます。アイディア自体は、高校生秘書、超高学歴エンジニア、謎の敏腕営業マンといったキャラ付け、微妙な関係性の表稼業と裏稼業、政府関係者からの依頼による窃盗団壊滅ミッション、働いても楽にならない会社の経営……確かに面白いモノがたくさんあるのですが、これらに現実感を持たせる努力を怠ってしまっているんですよね。簡単に言えば“全編通じて、どことなく嘘っぽい”んです
 この辺のリアリティ不足は、読み手を更に細かい部分への追及に誘導してしまうようで、既にネット界隈では、
 「ビルの爆破解体は、日本では原則NGではないか?」 ……とか、
 「あの車のボンネットなら修理代20万円もかかりそうにないが」
 ……とか、
 「1発10万の手榴弾くらい、経費で政府に請求しろ」
 ……とか、それはもう細かいツッコミが浴びせられていたりします(笑)。
 まぁそんな細かい部分まで減点材料にするのはどうかとも思いますが、それでももう少し“もっともらしく嘘をつく”技術を身に付けた方が良いのではないかと思います。また、ちゃんと細かい設定を考えているのであれば、早い内に必要な分だけ公開するべきでしょう。

 さて、評価ですが、今回はとりあえず保留とさせてもらいます。あと2回ほど拝見して、藤木さんがどこまで設定を練りこんでいたのかを見極めたいと思います。


◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「いま、一番欲しいプレゼント」。まぁ当たり前かも知れませんが、皆さんバラバラですね。
 あまりネタになりそうなコメント少ないんですが……あ、「食うなとか運動しろとか言わない効果てきめんのダイエット法」という藤田和日郎さん寄生虫を体内に飼うってのはどうでしょうか(笑)。
 駒木は欲しいものだらけではあるんですが、他人から貰うよりも自分で勝ち取りたいモノばかりですのでねぇ……。あ、でも公立高校教員の正規採用通知は、この際プレゼントでも良いから欲しいです。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】

 バレンタインウィークだというのに、堂々とオタクネタを展開して来るとは、さすが井上和郎!(笑)。しかしまぁ、初恋の相手が香ばしい感じに成長してますなー。
 駒木も高校時代はSF研究部という名の、漫研&ライトノベル研究会&TRPG研究会みたいな部活に所属してましたんで、それほど“やおい系”に抵抗はありませんが、さすがにここまで仕上がるとねぇ(笑)。
 でもまぁ、初恋の相手を気持ち良く吹っ切れるってのは良い事です(なんちゅうフォローだ)

 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 確かにバレンタインチョコを売る側は13日がピークなわけで、まさにフライングフィーバーなんですけどね。1年程前に講義でやりましたんで詳しくは喋りませんが、まぁ凄い修羅場ですよ、13日午後のデパ地下洋菓子コーナーは……。
 あと身近なフライングフィーバーとしては、競馬ですかね。予想をして買い目を決定し、売り場にマークシートを突っ込んだ辺りがピーク。この瞬間は、どんな大穴予想でも、どう考えても当たるような気がしてなりません。
 レース中もそうですね。大体、4コーナー手前とか直線半ばでピークが来て、ゴール前では……。まぁ稀にゴールの瞬間にピークが来る事があって、それがあるから止められないんですが。


 ……というわけで、「ジャンプ」と「サンデー」のレビュー&チェックポイントをお送りしました。いつもならここでゼミは終了ですが、今日は久々に「読書メモ」をやりたいと思います。採り上げる作品は、先日予告していたあの作品です。

◇駒木博士の読書メモ(2月第2週)◇

 ◎『鋼の錬金術師』作画:荒川弘/「月刊少年ガンガン」連載中

 ……というわけで、今年の小学館漫画賞・少年部門の“他社枠”受賞作・『鋼の錬金術師』が当ゼミに登場です。
 相変わらずの不勉強で今更な話なんですが、この作品の作者・荒川弘さんって、この作品が初の本格連載みたいですね(違う名義で活動していたかも知れませんが)
 過去の仕事の中には、日本競馬史上空前絶後の最短廃刊記録(5号)を持つ競馬新聞・「ぐりぐり◎」の4コママンガなんてのもあり、競馬学を専門とする当講座としては異様な親近感を覚えてしまうのですが(笑)。
 (注:「ぐりぐり◎=『ぐりぐりにじゅうまる』」は98年創刊。当時としては画期的な“東・西・裏開催全36レース馬柱掲載”をウリにした競馬新聞。しかし違う2つのレースに同じ馬柱を載せてしまうという致命的ミスを犯し、創刊3週目にして廃刊の伝説を作った)
 
 ──と、閑話休題。講義も長引いてますし、マンガの話に移りましょう。

 しかしこの作品、凄いです。単行本6巻収録分まで読んだのですが、全編褒める所しか見付かりません

 まず、扱っているテーマの重厚さ、スケールの大きさですね。死生観、政治、宗教などといったシビアなテーマを扱いながら、それらを見事に描き切っています。それも、無難に攻めるのではなく、本質に突っ込みながらもやり過ぎないという絶妙のバランス感覚で。
 駒木のこの作品に対する第一印象「危ない橋を全力疾走で渡り切った恐ろしい作品」だったんですが、そのファーストインプレッションは間違っていないと思っています。

 また、少し細かい所に目を向けても、荒川さんのテクニックの巧みさが光っています
 中でも凄味すら感じさせるのが、“キャラクターを死なせるか、死なせないか”、または“キャラクターをどのタイミングで、どのように死なせるか”の選択。こちらも多数のシビアな場面がありながら、読み手に必要以上の不快感を与えないような配慮が施されています。特にヒューズ中佐の殉職シーンなどは、この作品きっての名場面と言えるでしょう。

 設定の完成度の高さ、そしてそれを読者に提示するタイミングの巧さも極めて秀逸です。シナリオの進展を優先すべき場面では設定の提示を必要最小限にとどめ、逆に設定をバラす事で大きな効果が得られる時には回顧シーンを交えて一気にバラす。あまりに効果的な演出のために、「設定を説明されている」という自覚すら消えてしまいそうです。

 ……というわけで、全ファクターほぼパーフェクトの大傑作です。評価は完結を見てから確定させたいですが、現時点では少なくともA以上と言っておきます。クライマックスで更にもう一盛り上がりあれば、A+まで考えなくちゃならんと思っています。


 ──というわけで、今週のゼミは終了です。では、また来週をお楽しみに。

 


 

番外
2月10日(火) 人文地理
「続々・駒木博士の東京旅行記」(4)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回

 2週間ぶりに“1人「水曜どうでしょう」”こと、東京旅行記のお時間がやって参りました。何度でも言いますが、03年末(12/28〜31)の旅行記です。1ヶ月以上もグダグダしている内に秋葉原も燃えてしまいました。(燃えたヤマギワソフト、今はソフマップ系列なんですってね。お見舞い申し上げます。ケガ人等でなかったのが不幸中の幸いでした)

 ──さて今日のレポートは、29日の午後、2日目のコミケ会場を離脱した直後から始まります。例によって文中は文体を常体に変えておりますので、どうぞ宜しく。


 怒涛のようなコミケ体験から離脱し、現在時刻は14時過ぎ。旅行開始から約20時間、うたた寝のような仮眠を摂っただけでここまで来たが、これでもまだ、今日の予定の半分が終わったに過ぎない。この後、夕方から後楽園ホールで、秋の旅行でも観に行ったDDTプロレスの観戦を予定しているのである。
 なんだか徹夜明けで臨んだ強制参加の宴会でゲロ吐くまで呑まされた後、悪い先輩に捕まってキャバクラへ連行される新人サラリーマンみたいなハードスケジュールになって来たが、これぞ駒木ハヤトの旅行の真骨頂。ぶっ倒れても死して屍拾う者無しである。自慢じゃないが、俺はこんな旅行をした事あるよって言っても本当に自慢にならない

 昼下がりのりんかい線・国際展示場駅は、コミケ帰りの客を、大当たりしたパチンコ台が銀玉を呑み込むように次々と吸収していた。しかし交通の分散化が進んでいるのか、さほど深刻な混雑でもない。これなら桜花賞開催日の阪急電鉄仁川駅(阪神競馬場の最寄駅)の方が混雑している感じもする
 あとは朝に辿った経路を逆走する形で東京駅まで。勿論、1キロ以上に及ぶ東京駅構内行脚もコミである。もう東京に着てからどれくらい歩いただろうか。旅行中は踏み台昇降が出来ないのが軽いストレスになっているのだが、今回は運動量が足りすぎてるので全く気にならない。
 東京駅からは中央線を使って水道橋駅までの移動となるのだが、ここで疲労と緊張感が薄れたのとで猛烈な睡魔が。座席を確保し、電車が東京駅を出た所で1回目をつぶったら、次に目を開けた時には神田駅を発車した後だった。もう一度目を開けたら今度は御茶ノ水を通過。呆然とする内に、朱色に染められた電車は水道橋を通過していた。恐るべし、中央線快速。

 そんなこんなで何とか水道橋駅まで逆戻りし、東京ドームシティまで駆け足で向かう。プロレスの試合開始は18時30分なので到着が早過ぎる位だが、この日・12月29日は大井競馬場でG1レース・東京大賞典があり、その馬券を南関東公営の場外馬券売り場(オフト後楽園)で売っているのである。どうせ後楽園まで行くのなら、こっちの馬券も買っておこうと思っていたのだが、電車を乗り過ごしたために馬券発売の締め切り時刻が迫って来てしまったのだ。大レース時の場外馬券売り場は混雑するため、かなり余裕を見ておかないとヤバい。
 で、果たして、馬券売り場は恐ろしいまでの大混雑建物の中に大蛇の列が押し込められているような、将棋倒し寸前・一触即発の状態になっていた。これでキッチリと客の誘導が出来ていれば良いのだが、そこらの警備員に精鋭コミケスタッフのような芸当が出来るはずも無い。メガホンで何を注意喚起するのかと思えば、「もう東京大賞典の馬券は買えるかどうか判りませんが、その次のレース以降は間違いなく買えますので、落ち着いて並んで下さい」と抜かす始末で、これには呆れ返った。
 しかしまぁ、買えるかどうか判らなくても並ばなければ話にならないわけで、ここまで来てまた行列かい、と思いながらも列の最後尾につく。(中央競馬は別だが)公営ギャンブルは混雑時には締切時刻を遅らせてくれるので、何とかなるだろうという考えもあった。園田競馬の新春開催なんて、締切1分前が10分以上続く事もザラにあったりするのだ。

 ──ところが。本場である大井競馬場の混雑がそうでもなかったのか、予定から5分延長されただけで馬券発売が締め切られてしまったではないか。おいおい、勘弁してくれ。放っておいても馬券が売れる数少ないレースだってのに、ここで売らんでどうするよ。いや、電車乗り過ごして遅刻した人間の言う事じゃないけれども。
 で、仕方なくモニターでレースだけ観戦。これで買おうと思ってた目が来たらどうしてくれようと思っていたら、完全に軽視していたスターキングマンが猛襲して来て予想大ハズレ(苦笑)。子供部屋に「勉強しなさい!」と怒鳴り込もうとしたら、その日に限って子供が殊勝に勉強机に向かっていた時の母親みたいなやるせない気分で場を退散する。そうだよなあ。当たるわけないよなぁ。だって俺、駒木ハヤトだし。

 陰鬱な気持ちになったところで、時計は16時。プロレスの方は、開場時刻ですら1時間以上の余裕がある。喫茶店で暇を潰すには勿体無い時間ではあるが、さりとてやるべき事も無し。晩飯を食うには早過ぎる。
 仕方ないので、山下書店で立ち読みしたり、ゲームセンターに立ち寄ったりしてみるが、今度は喫茶店で時間を潰すにも中途半端な微妙な時間だけが残ってしまい、疲労感だけが増すばかり。ベンチに座ってみても、冬の冷たい風が体に吹き付けてくるばかりで余計に辛い。とりあえず携帯して来た文庫本はコミケの行列待ちで読み尽くしてしまったし、こんな所で同人誌を引っ張り出すわけにもいかないし。すぐ側では東京ドームシティアトラクションズ(旧・後楽園ゆうえんち)に来たと思しき家族連れが記念撮影などしているのである。アカの他人の記念アルバムに己の恥を記録してどうする
 
 ……と、そんなこんなで、今振り返ってみればこの旅行の中で一番辛かった時間帯をなんとか乗り越えた駒木は、必要以上に準備良く前売りでゲット済みのチケットをコートのポケットに入れて後楽園ホールへ。
 ビルの前にはドマイナー団体の興行にも関わらずダフ屋がいた。「指定席券、割引(で販売)するよ」と連呼していたのだが、こんなドマイナー団体のチケットを、どこからどうやって余らせるほど仕入れたのだろうバレンタインデーで何をするでもなく下校時刻まで校内に居座る自意識過剰な男子生徒級のトンマさに感激した。
 さて、ホールに入ってチケットの表記に従って着いた座席は、南側・真ん中くらいの列の一番端で壁際。余り良い場所とは言えないだろう。後楽園ホールは観やすい会場のお手本なので、観戦そのものは苦にならないのだが、この場所は男色ディーノに目をつけられ易い上に逃げ場が全く無いという恐ろしい位置なのである。汗だくのディーノに体を壁に押し付けられディープキスを決められる光景を想像してしまい、全身に怖気が走る。ディーノが入場の際は絶対に目を伏せていようと心に決めた。


 ……と、また中途半端な所で切れてしまいましたが、次回へ続きます。今度はコミケ3日目の会場入りあたりまでを目標に頑張ります。ではまた近日。(次回へ続く

 


 

2003年度第106回講義
2月7日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(2月第1週分・合同)

 『Fate/staynight』も一息つき、9日ぶりの講義再開です。休講中は受講生の皆さんに多大なご迷惑をおかけしましたが、駒木にとっては非常に有意義な“研修”になりました。自分の価値観を再確認し、更に「良い作品とはどういうモノか?」、「良い作品を構成する要素とはどのようなモノか?」…などといった部分の認識も深められたような気がします。
 受講生さんの中には「18禁指定のビジュアルノベルゲーム」というだけで拒絶反応を示される方もいらっしゃるかも知れませんが、先入観と偏見だけでジャンル全体を否定するのは勿体無いですよ、とだけは申し上げておきます。まぁマンガにしてもそうですが、何でもピンからキリまでです(笑)。

 ……さて、この話はまた別の機会を見つけて詳しくさせて頂くとしまして、マンガのお話を始めましょう。今日は今週発売の雑誌──「ジャンプ」、「サンデー」の04年10号についてのゼミとなります。
 まずは情報系の話題から。今週は「サンデー」の新連載についての情報を1つお送りしましょう。

 次号(11号)から新連載となるのは『こわしや我聞』作画:藤木俊)。増刊号での短期連載作品の“昇格人事”ですね。藤木さんは(正確なデータが無いので詳細不明なのですが)01年頃から増刊で散発的に読み切りを発表し、03年には今作のプロトタイプとなる作品を4ヶ月連載。そして、今回が初の週刊長期連載というわけですね。層の分厚い中堅・ベテラン陣の中に食い込んで、どこまで存在感をアピール出来るのか注目ですね。
 成功のカギは、やはり増刊連載時のクオリティからどれくらいの上積みを果たせるか、そしてどこまで独自色を出せるか…といった部分だと思いますが、さて。

 ……それでは、レビューとチェックポイントへ。今週は「ジャンプ」から新連載第3回の後追いレビューと、代原読み切りのレビューが各1本、そして「サンデー」から読み切りレビュー1本で、都合3本となります。
 レビュー本数が多いため、今週のチェックポイントは少なめになりますが、ご了承を。

 あ、以前リクエストされてそのままになっていました当ゼミの評価一覧表ですが、こちらからどうぞ。昨年に改定した基準に対応しています。(クリックで新しいウィンドウが開きます。評価一覧表を見ながら受講して頂こうという趣旨ですのでご理解を)

☆「週刊少年ジャンプ」2004年10号☆

 ◎新連載第3回『スティール・ボール・ラン』作画:荒木飛呂彦【第1回掲載時点での評価:A

 今週のレビュー一発目は、早くも話題沸騰といった感のある『スティール・ボール・ラン』の後追いレビューです。

 ……とはいえ、第3回となる今回でも未だプロローグの真っ只中という事で、まだシナリオの中身についてのレビューはやりようがないんですよね(苦笑)。短期打ち切りの心配が無いためか、かなり長いスパンでのシナリオ展開が構想されているようです。
 よって、シナリオの全体的な完成度については今後のチェックポイントに場を譲る事にしますが、少なくとも現時点で揃った材料で判断する限りでは、荒木さんの高い技巧が随所に光る良作だと言っていいと思います。
 例えば、“パラレルワールド版・ジョジョ”ことジョニー=ジョースターの紹介に大部分のページが費やされた今回。まず「キャラを立たせるのに一番手っ取り早いのは過去を語らせる事」…というストーリーテリングの重要事項を踏まえた上で、無駄なく中身の濃いエピソードを展開しています。しかも性格に問題がありそうなジョニーについては、読者への感情移入を敢えて強いないという、“適度な距離感”が保たれている点で更に好感が持てますね。この辺が自然に演出出来るあたりが実力派ベテランの頼もしい所でしょう。
 また、31ページ連載という形式を最大限活用出来ているのもさすがでしょう。1回で語り尽くすべき部分は31ページの中で語り尽くすという工夫が凝らされているため、本来ならかなり間延びしているはずの展開も(普通の「ジャンプ」マンガで、これだけのページ数を費やしてプロローグが終わってないなんて有り得ません)、体感としてはそれほど冗長な感じがしないのも評価できる点です。
 本質的には欠点とも言える、荒木作品特有の“回りくどさ”も、演出によってむしろ長所に転じている感もありますし、現時点では大きな減点材料は皆無です。

 そういうわけで、今回の評価も第1回時点から据え置きでA−寄りAとします。とりあえず本編突入後からしばらく様子を見て、その時にまた評価の変更を検討したいと思います。


 ◎読み切り(代原)『グレ桃太郎』作画:原淳

 今週は『ピューと吹く! ジャガー』が休載のため、代原掲載となりました。目次に断りも無いあたり、編集部も連載を飛ばす事に慣れが出て来たようです(出すなよ)。

 今回登場したのは原淳さん。99年11号の初登場以来、今回が1年半ぶり8回目の代原掲載となりました。……というか、5年も代原作家やってどうするんだという声が聞こえて来そうですが(笑)。
 もともと原さんは、「少年ガンガン」系の作家さんで単行本まで出している人なんですが、いやー、この業界って厳しいですよね、やっぱり。

 さて、今回の内容について。
 まずですが、画力以前にスクリーントーンの選択をミスってるかな…という印象がありますね。紙質の悪い「ジャンプ」のせいもあるんですが、トーンの目が潰れて真っ黒になりかけたコマも多々見られます。これが赤塚賞の受賞作原稿ならともかく、キャリアだけなら中堅に突入しようかという人の作品ですから、減点は避けられないところでしょう。
 ギャグに関しては、1人のキャラを立て、それを連作形式で繋げていく…という試みは良かったのですが、結果的に「キャラを立てた」のではなく「オチの傾向が被った」だけになってしまったのは非常に残念でしたね。あともう1人くらい、“ばあさんオチ”に畳み掛ける形でギャグを積み重ねられるようなキャラが出て来ればメリハリもついて良かったのだと思うのですが。

 評価はB寄りB−としておきましょう。1年半前の前作から一歩二歩後退といったところでしょうか。前途は決して楽じゃないですが、頑張って欲しいものです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

  今週の巻末コメントは、「ジャンプ」の新年会に関するコメントが中心。普通は年末に忘年会なんですが、「ジャンプ」は年明けてからやっちゃうんですね。年明け間もなくて作家さんのスケジュールが詰まらない内に(笑)。
 ところで、大場つぐみさんのコメントが要注目「椅子だと腰に来るので、ネームを描く時はうつ伏せに寝てやってます」とのこと。腰痛持ちでネームを描く、ということは、大場さんはある程度キャリアのあるマンガ家(出身)という事ですね。原作者がネームまで担当ということは、『ヒカ碁』と同じパターンですか……。

 ◎『BLEACH』作画:久保帯人【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 今回の内容からして、改めて「あぁ、やっぱり久保さんは井上織姫が大のお気に入りなんだな」と実感してしまいました(笑)。しかし、思う存分翻弄される石田も良い感じですなあ。

 ストーリーに関しては、なんか最近「一護負ける→試練を経てパワーアップ→一護リベンジ→次の敵に一護負ける→試練を経て(以下略)」の無限ループ状態が目立って来て、少々残念かなーといったところ。せっかくの高い演出力を、シナリオの単調さを誤魔化すだけに使ってしまっては勿体無いと思うんですけどね。

 

☆「週刊少年サンデー」2004年10号☆

 ◎読み切り『ハヤテの如く』作画:畑健二郎

 今週のサンデーでは若手作家さんの読み切りが掲載されました。久米田康治さんのアシスタント出身と言う畑健二郎さんが本誌初登場です。
 データベースの貧弱な「サンデー」系作家さんという事で、正確なキャリアは掴めなかったんですが、どうやら増刊デビューは02年頃のようです。それから数作読み切りを発表した後、昨年夏から増刊で『海の勇者ライフセイバーズ』を短期連載。その連載が好評だったのか、今回晴れて本誌登場のチャンスを獲得しました。
 本誌への読み切り掲載は、(その後の行く末は別にして)長期連載の枠を掴む絶好の機会。さて、作品の出来はどうでしょうか──?

 まずはですが、酷評するまでには至らないものの、他の「サンデー」連載作品などと比べると、見劣りしてしまうのは否めないところでしょう。特に今回は、女の子キャラが可愛くないと話にならない作品なのですから、これはかなり大きな減点材料となります。
 あと、駒木はマンガ描きじゃないので偉そうな事を言えませんが、スクリーントーンの使い方にも違和感を感じました。トーンを必要以上に多用している上に、貼ったトーンに施すべき作業も不足しているように思えたのですが……。

 ストーリー・設定に関しても、問題アリですね。
 新人・若手作家さんが陥りがちな“罠”として、当ゼミでも何度か採り上げている事なのですが、どうもこの作品も「コメディ」という事に甘えて、お話のリアリティを軽視し過ぎているのではないかと思います。コメディはあくまでもストーリー作品の一種なのですから、笑いを取る事とは別に、現実感のあるキチンとしたシナリオを用意しておかないといけないはずなのですが、どうやらその辺の意識が欠落したまま出来上がった作品になってしまっているようです。
 また、ページ数とシナリオのボリュームのバランスが取れていない事で、余計に事態が悪化してしまいましたね。キャラクターごとの見せ場もヤマ場もロクに用意できないまま、駆け足でストーリーラインを追いかけただけに終わってしまっています。特に、キャラクターが簡単に恋心を抱き過ぎるという点は致命傷でした。出会った次の瞬間に恋心を抱かれてしまっては、読み手が感情移入する余地が無くなってしまいます。

 ……そういうわけで、残念ながら今回は問題点だらけの作品ということになってしまいましたね。評価はC寄りB−。一応ギリギリでマンガの体は成しているので“死刑宣告”には至りませんでしたが、本誌連載レヴェルには到底足りないと断ぜざるを得ません。画力、ストーリーテリング力に磨きをかけて、もう一度増刊から出直して貰いたいと思います。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「続編が見てみたい映画」。
 たくさん映画を鑑賞する事はマンガ家さんの“必須科目”とあって、答えもバラバラになりましたね。ただ、「映画の続編は面白くない作品が多いからパス」という回答が多く、これには納得させられました。確かに、一度完結した作品の続編を無理矢理作った場合は「やんなきゃよかった」というパターンに陥りがちですからね。
 ただ、続編が成功した作品というのも少なからずあるわけで、駒木は『インディ・ジョーンズ』の新作を熱望している次第です(笑)。

 
 ◎『ロボットボーイズ』作:七月鏡一/画:上川敦志【現時点での評価:B−/連載総括】

 いきなりの新展開はテコ入れではなく、“投了”の形作りだった……というわけで、今回をもって打ち切り最終回になってしまいました。
 いや、しかし惜しい作品だったと思います。ロボットコンテストを題材にした目の付け所は悪くなかったんですが、連載当初からかなりの間、“反・勝利至上主義”のコンセプトを採用してしまったのが大失策になりましたね。
 レビューやチェックポイントで何度も申し上げましたが、変に気取らず高専ロボコンの話にしていれば良かったのに……と悔やまれてなりません。
 最終評価ですが、後半に心持ち盛り返したと判断して、B−寄りBということにしておきます。

 
 ……もうちょっと語りたい部分もあるのですが、今週はこれまで。
 実は最近、『鋼の錬金術師』を読みまして、このゼミで是非とも絶賛したいと思っております。来週はレビュー対象作も少ないですし、もし余裕があれば「読書メモ」としてお話させてもらいますね。こちらもどうぞお楽しみに。 


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