「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

4/30(第9回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第5週〜5月第1週分・後半)
4/29(第8回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第5週〜5月第1週分・前半)
4/24(第7回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・合同)
4/17(第6回) 競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第4戦・皐月賞」
4/16(第5回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・合同)
4/10(第4回) 競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第3戦・桜花賞」
4/9(第3回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・合同)
4/6(番外) 
第1回駒木研究室競馬予想No.1決定戦・駒木ハヤト罰ゲーム特別企画体育(一般教養)「スリムな体で夏を! 今日から始められる踏み台昇降ダイエット講座」
4/2(第2回) 競馬学特殊講義「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(2)
4/1(第1回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第5週〜4月第1週分・合同)

 

2004年度第9回講義
4月30日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第5週〜5月第1週分・後半)

 2日連続のゼミ実施となります。
 ……色々前口上を考えたりしたのですが、どうにもまとまらんので、とりあえずレビュー行きます(笑)。

 本日分は「週刊少年サンデー」22・23合併号の内容についてのゼミです。「ジャンプ」については前日分講義レジュメをご覧下さい。


 「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 今週は新人賞の結果発表、新作掲載の公式アナウンスはありませんでした。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
  「サンデー」:新連載1本/読み切り1本 

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年サンデー」2004年22・23合併号☆

 ◎新連載『道士郎でござる』作画:西森博之

 作者略歴
 
1963年11月23日生まれの現在40歳

 「週刊少年サンデー」ウェブサイトの公式プロフィールによると、デビューは87年の「増刊サンデー」で発表した『プー太郎』
 その後3年間の詳細な経歴は不明ながら、90年に『甘く危険なナンパ刑事』で初の週刊連載を獲得(90年12号〜37号)。そして同年40号より開始の『今日から俺は!』がヒットし、97年47号まで7年にも及ぶ長期連載となって「サンデー」内での地位を確固たるモノとする。
 その後も短い間隔で次々に週刊連載を務め、98年から99年にかけて『スピンアウト』(作:春風邪三太)、99年から03年にかけて『天使な小生意気』を発表する。『天使な──』では、01年度に小学館漫画賞・少年部門を受賞(同賞同部門の同時受賞作に『名探偵コナン』)。
 今作は5回目の長期週刊連載獲得となる。これは現役「サンデー」作家の中では第2位の記録。(1位はあだち充さん

 についての所見
 相変わらずの良い意味でも悪い意味でも独特な絵柄ですね。ひょっとすると目の肥えた読み手には、やや粗いと思われる部分が多いかも知れません。
 ……とはいえ、ここまでキャリアを重ねて来た作家さんだけあって、マンガの表現手段としての力は問題ありませんね。やや動的表現がぎこちないような印象も見受けられますが、これを目ざとく減点材料にしてしまうのには躊躇を覚えます。
 キャラクターデザインに関しての印象としては、キャラによって美醜のコントラストが物凄くハッキリしているなぁ…といったところでしょうか。前作『天使な小生意気』では、この辺がストーリー・設定と上手く噛みあって、作品の成功の一因になった(外見と中身のギャップを大きくして読み手に感銘を与えた)のですが、今回は果たしてどうなるでしょうか。
 
 ストーリー・設定についての所見
 今回の時点ではシナリオがまだプロローグ段階にあるので、ストーリーに関しては述べるべきポイントが見当たりません(笑)。成功した後の次回作で短期打ち切り査定が免除されているのか(推測)、かなり“まったりムード”の展開になりそうですね。
 基本的な設定──“サムライ・ニッポン”かぶれの外国人(又は帰国子女)キャラと現代日本とのギャップを描いたコメディ──は、過去にも色々な作品で使われて来たアイディアですね。ただ、長期連載作品の主人公でその設定というのは珍しいと思います。
 使い古されたアイディアを使う事自体は悪くないと思いますが、使い古された設定は読み手にも先の展開が丸分かりになるわけで、その中でいかに新味を出していくかは大きな課題になると思います。ベタなパターンの中で、どんなテーマを表現するのかがカギになるでしょう。

 今回の評価
 シナリオに関する評価が未だ出来ない状況ですので、とりあえずは保留としておきます。

 ◎読み切り『グッドラックノストラダムス』作画:武村勇治

 作者略歴(武村さんの公式サイト等による)
 1970年生まれとのことで、今年34歳
 山田貴敏さんのスタジオでアシスタント修行後、94年に増刊でデビュー。その後、95年に読み切りを一度発表した後、96年から98年まで『あらかると』を増刊に連載
 週刊本誌初進出は99年、企画モノの『川上憲伸物語』で、同年末より『マーベラス』を週刊連載する(00年1号〜47号)。
 その後、「ヤングサンデー」誌に進出(01年4月〜9月)するも、「少年サンデー」に復帰し、02年には短期集中連載で『ダイキチの天下一商店』(作:若桑一人)を発表。これが『売ったれ ダイキチ!』に改題・リニューアルの上、03年に長期連載化される(03年22・23合併号〜04年8号)
 今回は連載終了以来の復帰作となる。

 についての所見
 キャラクターデザインのバリエーション、シリアスとディフォルメのコントラスト、その他もろもろの表現技法など、「サンデー」作家さんの中でも高いレヴェルにあると思います。ディフォルメを極端にし過ぎて、過剰なドタバタ感を与える嫌いもありますが、今回の作品では悪い方向には出ていないでしょう。 

 ストーリー・設定についての所見
 まず、設定はユニークでしたね。「占い」、「予言」を題材にしながら、そこから全く逆方向へ話を展開させてゆくというのは、意外性も相まってかなり新鮮に感じました
 ただ残念ながら、その設定とストーリーやキャラクターが全く噛みあっていないのは大きな減点材料になります。特にノストラダムス堂の兄ちゃんが、主人公の父親から未来の大事さを教わって、どうして詐欺師紛いのエセ予言師にならないといけないのか…という辺りに無理があり、スムーズに感情移入してゆけないのは痛いですね。
 また、キャラクターの設定も、よくよく考えると無茶苦茶な人物ばっかりで、正統派のヒーロー話は勿論、アンチヒーロー系の話にもなり切れていないような印象が窺えました。惜しい所まで行ってると思うんですけどね。

 あと、どうでもいい話ですが、素手であんな強烈なパンチを繰り出していると必ず拳をぶっ壊してしまうので、せめてオープンフィンガーグローブくらいは着けさせましょう(笑)。
 
 今回の評価
 設定に大きな矛盾点があり、作品の完成度としては低くなってしまいました。ただ、絵の好感度は高いですし、深い事を考えずに楽しむ事は難しくない作品でもありますので、B+寄りB評価としておきましょう。ただ、これを連載化して成功させるには、かなりのマイナーチェンジが必要になって来ると思いますが。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「もし祝日が作れるなら、何の記念日にしますか」。
 ……という事だったのですが、暦の上での休みとは無縁、それどころか年末年始、お盆、GWには無体な強行スケジュールまで押し付けられるマンガ家さんたち。出て来るのは提案よりも愚痴の方が多いようで……。
 駒木は……何の記念日かはさておき、6月に1日くらい祝日欲しいですね(笑)。

 さて、それでは連載作品についての雑感を。

 久々にコメディ色を強くした『結界師』、良い感じです。やっぱりこういうのは、シリアス系エピソードの間に挟む“箸休め”だからこそ効果的なんですよね。全体的に絵柄をディフォルメにしたのも気が利いてます。
 ただこの作品、1つ1つのエピソードの完成度は申し分無いのですが、物語全体の“軸”が無いのが気になります。主人公サイドの大目標みたいなものが有れば、グッとストーリーも締まって来ると思うんですけどね。

 物語の“軸”と言えば、序盤の迷走を乗り越えて立ち直り気配をみせているのが『こわしや我聞』ですね。ベタな路線ではありますが、我聞と国生さんの関係をクローズアップするようになってから徐々に良くなって来たように思えます。まだ全体的に洗練する余地は残っていますが、この調子で頑張ってもらいたいものです。

 『焼きたて!! ジャぱん』、もはや文句をつける気力も失うくらいの惨状ですが、「コミックビーム」5月号よりも回収すべき雑誌がここにあると申し上げたいと。
 
 惨状と言えば『思春期刑事 ミノル小林』も、復調への糸口が掴めない現状でしょうか。こちらの作品は水口尚樹さんの実力は確かだと分かっているだけに、忸怩たる思いで一杯です。

 ……というわけで、今週の感想は以上なんですが、最後にペンディングしていた『怪奇千万! 十五郎』の作者情報と連載総括を。

 まず昨日の講義冒頭で少し述べた川久保栄二さんの過去についてですが、どうやら駒木が以前から聞いていた噂──約10年前に週刊本誌で短期集中連載経験アリ──は本当の話だったようです。(情報元は2ch掲示板の『十五郎』追悼スレ「恐怖の追跡 〜あの人たちは今?〜」漫画編特別部門04年4月分。もっとも、実際に掲載誌を確かめようが無いので、確定情報にはならないのですが……)
 その短期連載作品とは、94年10号から7回に渡って連載された『無限・ゼロ <∞ ←→ 0>』というプロ野球マンガ。ピッチャーの主人公は年俸1円、ただし打者1人を抑えるごとに倍々プッシュ…という設定の作品とのこと。実際に読んだわけでもない作品にあれこれ言うのは反則ではありますが、いかにも川久保さんらしく、「俺の考えた設定は面白いはずだ!」…という根拠の無い自信に満ち溢れてるなと(笑)。
 結局、この作品では長期連載獲得に至らず、川久保さんは10年近くにも及ぶ雌伏期間を強いられるわけですが……しかし、本当に言葉が出ないですね(苦笑)。人生色々考えさせられますよ、ええ。

 で、それはさておき『十五郎』の連載総括へ。……とは言っても、この作品の総括とは即ち、「この作品のどこが一番マズかったのかを探す作業」になるわけですが(笑)。あ、そういうの嫌な人はスルー推奨です。
 まぁ結局のところ、この作品の敗因は、エンターテインメントを成立させる上で非常に重要である、「主人公サイドが抱える(物理的または精神的な)欠損を、課題・試練を克服する事で解消する」…というポイントを余りにも軽視し過ぎた所にあるんじゃないかと思います。
 ……いや、軽視というか、完全スルーですね。何しろこの作品では、「怪奇現象の理由が判らない」という“欠損”を、何ら課題・試練を克服する事無く、主人公の「だって怪奇現象だから」という一言で“解消した事にしてしまう”のですから始末に負えません(苦笑)。まさに読者置いてけぼり、作者自己満足の極みです。

 ──というわけで、最終評価はやっぱりCと言う事で。しかし、この作品に関しては怒りを通り越してむしろ哀れみすら覚えてしまいますね(苦笑)。準備期間1年置いてこれだもんなぁ……。

 
 ……というわけで、今週のゼミはここまで。来週は合併号休みですので、「赤マル」レビューを中心にお届けする事になると思います。では。

 


 

2004年度第8回講義
4月29日(木・祝) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第5週〜5月第1週分・前半)

 駒木も噂を小耳に挟んだだけだった川久保栄二氏の過去が、ここに来てどうやら遂に判明! ……というニュースが2ch掲示板の片隅をコッソリと駆け抜ける中、いかがお過ごしでしょうか。「現代マンガ時評」のお時間がやって参りました。今週は前・後半に分けてお送りします。
 詳しくはまた後半の日に「チェックポイント」でお話しますが、本当に川久保さんは10年前に週刊本誌で「短期集中連載→長期連載ならず」になっていたそうで。……何と言いますか、普通なら「不屈」という言葉が似合う話でも、こういう結末を迎えてしまうと「不憫」としか言いようがないですよね。
 「コミックビーム」誌の名物編集長・奥村勝彦氏は、見込みの無いマンガ家志望者には容赦なく「向いてねえから辞めな」と引導を渡し、真っ当な道を歩ませる事にしているそうですが、「サンデー」にそういう人が……いや、もう何も言わないでおきましょう(苦笑)。

 ──それではゼミを始めます。今日は前半分ですので、「週刊少年ジャンプ」22・23合併号に関する内容に限定してお送りします。


 「週刊少年ジャンプ」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎「週刊少年ジャンプ」次号(24号)には、読み切りPMG−0』作:遠藤達哉)が掲載されます。そう、あの知る人ぞ知る“「ジャンプ」の秘密兵器”が満を持し(過ぎ)ての登場です。
 遠藤さんは第5回(99年度)「ストーリーキング」マンガ部門準キング受賞者「赤マル」00年春号の受賞作掲載デビューの後、週刊本誌でも00年51号と01年21・22号の2度、読み切りを発表していましたが、それから今まで忽然と我々の前から姿を消していたのです。
 今回は実に3年ぶりの復帰という事になりますが、過去作のクオリティを考えると大いに期待が持てそうです。あとはブランクの影響がない事を祈るだけですね。
 ……いやはや、憂鬱なはずのゴールデンウィーク明けに楽しみが1つ出来ました。勿論、レビューは公平な視点でやりますが、個人的には、もう再起は無いと諦めてた作家さんだけに、新作を読めるというだけで素直に嬉しいです。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週前半のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り2本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年22・23合併号☆

 ◎読み切り雨女、晴れ男』作:長谷川尚代/画:藤野耕平

 作者略歴
 ※長谷川尚代さん
 00年度「ストーリーキング」ネーム部門準キングを『サラブレッドと呼ばないで』で受賞、この作品が「赤マル」01年冬(新年)号に掲載(画:藤野耕平)され、原作者としてデビュー。なお、この作品は03年に週刊連載化(03年42号〜04年2号、1クール13回打ち切り)
 今回は連載終了後以来の復帰作。

 ※藤野耕平さん
 マンガ家としてのキャリアは、先述した長谷川尚代さんとのコンビでの漫画担当のみのため割愛。
 アシスタントとしての活動は豊富で、うすた京介さん、村田雄介さんのスタジオで活動。なお、実写版『ピューと吹く! ジャガー』でピヨ彦役を務めた事は一部で非常に有名。  

 についての所見
 
基本的には、適度で堅実な描き込みが施された見栄えのする絵で良い感じですね。前作に比べると、リアルタッチの精度に磨きがかかったような気もしますし、原作付作品の漫画担当としての風格が備わって来たように思えます。ネット界隈の一部では「小畑健の影響受けすぎ」という意見もあったようですが、そういう注文をつけられる事自体が実力の表れと言っても良いのではないでしょうか。
 ただし一点だけ指摘を。人物作画の顔、特に輪郭の造型がキャラ数の割にはバリエーションが少なく、やや単調に思えてしまいました。また、リアルタッチを多用したせいでしょうか、表情の変化がやや硬くなってしまったような気もします。

 あと、どうでもいい話ですが、主人公のクラスの応援旗に描かれていたキャラクターはHTB(北海道テレビ)“onちゃん”ですね。これは、HTBの看板番組「水曜どうでしょう」のファンだと公言していた長谷川さんのアイディアなんでしょう。
 まぁ、公私混同してまで応援したい気持ちにさせる番組ですし、駒木は何も言いませんけどね(笑)

 ストーリー&設定についての所見
 まず高く評価したいのは長谷川さんの脚本力。台詞回しが本当に上手いんですよね。内容があるのに、スムーズに読み飛ばせるという、セリフのお手本のような見事さでした。冷静に見るとかなりクサいセリフも混じっているのですが、ノリの軽さも手伝って鬱陶しさは皆無でした。
 シナリオも上手くまとめてますね。本来なら盛り上げようと思っても難しい内容のプロットなんですが、ともすれば突飛とも言える設定を交える事によって、キッチリとエンターテインメントに仕上がっています。まぁ、その設定の突飛さが感情移入を妨げるデメリットもあるでしょうが……。
 あと、主人公のキャラ立ちも成功していましたね。「クラスにすぐ馴染める転校生」という役どころがストーリー展開のスムーズさに繋がったのも良かったです。
 惜しむらくはラストシーン。ここでもう一発セリフが決まれば、なお良かったんですけどね。

 今回の評価
 少々の欠点は指摘できるものの、シナリオ・設定・脚本の完成度はかなりの高水準。ここはA−を進呈しておきたいと思います。
 これからも今回並みの設定やシナリオが描けるのであるならば、いずれ訪れるであろう2度目の連載では、前作とは違った結果になるのではないかと思います。


 ◎読み切り『STARTING OVER』(作画:鈴木新

 作者略歴
 デビューは「赤マル」00年春号。新人賞の受賞者ではないようなので、最終候補→“新人予備軍”経由か、もしくは持ち込みからの抜擢かと思われるが詳細は資料不足のために不明。
 その後は学業と平行しての断続的な作家活動がしばらく継続。「赤マル」01年冬号、そして週刊本誌02年40号に読み切りを発表。今回は1年半ぶり2回目の本誌登場となる。

 についての所見
 前回のゼミで「画力が大幅に変わっていて期待が持てそう」と申し上げましたが、謹んで訂正させて頂きます(笑)。どうやら、プリクラ慣れしたコギャル並の“奇跡の一枚”だったみたいですね(苦笑)。
 まぁ確かに前作より改善された部分もあるのですが、根本的な画力には余り進歩が見られないのが残念でした。ちょっとディフォルメを施そうとすると、たちまち顔の造りが人間じゃなくなってしまいますし、全身像を描いた時のバランスもおかしいです。
 既に各方面から指摘をされているように、有名「ジャンプ」系作家さんの影響が大いに感じられる作風ですが、残念ながら“劣化コピー”にすら届いておらず、敢えて言うなら“粗悪品”としか申し上げる事が出来ない実力に留まっています。

 ストーリー・設定についての所見
 えーと、前回のゼミで「大化けの期待が持てそう」と申し上げましたが、謹んで(以下略)。
 ……確かに、前作の“箸にも棒にも引っ掛からなさ”に比べると、若干の進歩は窺えます。特にクライマックスの“擬似スーパーサイヤ人化”のあたり(今更それをやるのはどうか? という疑問はさておき)ただ単に「主人公激怒→お約束でパワーアップ」というパターンでお茶を濁さなかったのは悪くなかったと思います。
 しかし、問題なのはそこに至る前〜中盤の持って行き方で、目立つのは自己満足極まりない中途半端に凝った設定(というか固有名詞)の紹介と間の悪いギャグばかり。登場人物のキャラクターを掘り下げたり、本当の意味で設定を練ってストーリーの精度を上げたりする作業を怠ってしまっていては、せっかくクライマックスで見せ場を持って来てもダメですよね。
 また、シナリオや設定の一部も既製の「ジャンプ」作品の影響を強く受けているようですが、こちらも基本的な実力が備わっていないために付け焼刃以前で終わってしまっています。厳しく言うなら、「真似するんなら、もっとちゃんと真似てみろ」といったところでしょうか。

 今回の評価
 レビューの内容からもお分かりになるように、ハッキリ言って落第点です。ただ、C寄りB−をつけた前作よりは少しだけでも改善の跡が見られますので、少し甘くしてB−評価としておきます。ただ、このままでは前途多難ですね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 時間短縮を考え、今回からしばらく雑記形式でダラダラやってみるテスト。見辛いようなら、また以前の形式に戻します。

 はじめに巻末コメントから。
 まず「神戸土産の『神戸プリン』が超ウマかったので神戸に住みたい」という久保帯人さん、神戸は確かに住みよい街ですのでお薦めしますが、『神戸プリン』はあくまで土産物なので、神戸市民がそれを食べてるわけじゃありません。つーか、駒木も20年以上神戸に住んでますが、食った事なし。
 あと、「ネーム詰め込みすぎだ、と初代担当に怒られた夢を見た」という和月伸宏さん、ぶっちゃけ言うと駒木も同感です(笑)。いや、詰め込み過ぎというか削り過ぎというか。シナリオの中身は備わっているんだから、もっとクドくなるくらい演出に力を入れてもバチ当たらないと思うんですけどね。あとはしつこいようですが、日常編をもっと重要視して下さい。連載続けばですが(涙)
 ちなみに『武装錬金』、2chで毎週正確な掲載順情報を教えてくれる人によると、次号の掲載順は一気に中位へ上昇だそうです。ただ、過去そういう不自然な順位上昇があった直後に打ち切られた作品が複数あるということで、またも2ch界隈で大揉めに(苦笑)。
 連載の開始と終了の情報は(連載開始直前になって他誌に似た内容の新連載を持って来られたり、連載終了と同時に作家を引き抜かれたりするのを防止するため)編集部にとっても最重要機密だそうなんですが、ホントにこういう長期の宙ぶらりん状態は勘弁して欲しいですよね(苦笑)。

 しかし今週、各方面で話題沸騰だったのが『DEATH NOTE』の、異様に気合入りまくったテニスシーン。また次の掲載順が『テニスの王子様』だったので、余計に趣を増幅させていたという(笑)。しかし、本職のテニスマンガが、リアリティではサスペンス作品のたかが1シーンのテニスシーンに明らかに負けているというのは……。
 まぁ、『キャプテン翼』『アストロ球団』を錬成したようなマンガにリアリティ求める方が間違ってるのは先刻承知なんですがね(笑)。

 そして最後はすっかり中堅の風格が出て来た『銀魂』今週は内容よりも欄外の作者紹介(by大西編集)の方が巷の話題に。いや、内容も良かったんですけどね。
 しかし笑ったのが、この作者紹介・「綾ちゃんよりつかさちゃんが好き」というコメントを扱った感想サイトが、そろいも揃って「だったらフローラよりもビアンカ派ですねきっと」と言及していた事。つかさ=金髪(&勝ち気系ヒロイン?)=ビアンカという理屈なんでしょうか。駒木はさすがにそこまでの発想は出来ませんでしたです。
 ちなみに駒木は「フローラを躊躇無く選べる奴とは友達になりたくない」というくらいのビアンカ原理主義者ですが、『いちご100%』では南戸唯派です(笑)。まぁ、綾かつかさかと訊かれたら、やっぱり後者ですけどね。

 ……というわけで、とりあえず前半分をお送りしました。金曜までには後半をお送りしますので、今しばらくお待ちを。

 


 

2004年度第7回講義
4月24日(土) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・合同)

 ギリギリの日程、ギリギリのコンディションの中、ようやく実施に漕ぎ付けました、今週の「現代マンガ時評」です。
 ちょっと今週は精神的に追い詰められていた時間が長いので、マンガを吟味する余裕があまり無かったりしたのですが(こういう時に限ってレビュー対象作4本ですし)、精一杯やりますので、至らない点も含めてどうか宜しく。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新人賞の結果に関する情報

少年サンデーまんがカレッジ
(04年2月期)

 入選=該当作なし  
 佳作=該当作なし
 努力賞=3編
  ・『リソウル』
   北原勇希(24歳・東京) 
  ・『3タコ』
   坂本大(23歳・東京)
  ・『サイコダイバー』
   田中宏子(22歳・東京)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『カイの仮面』
   畠谷洋二(22歳・千葉)
  ・『サムライ ソージ』
   弩(25歳・東京)
  ・『その名は超人 デビルサタン』
   足立真一(25歳・東京)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ◎努力賞の坂本大さん…03年06月期「まんがカレッジ」であと一歩で賞。
 ◎あと一歩で賞の畠谷洋二さん…03年06月期「まんがカレッジ」でもあと一歩で賞

 ……あと、“足立真一”という名前で検索すると、4〜5年前に活躍していた美少女系プロ作家さんがヒットしたんですが、まぁこれは明らかに別人でしょうね。
 今回は、総評を見る限り「全体的にネーム力、演出力不足」といったところでしょうか。確かにこの2つの要素は読者にインパクトを与える上で非常に重要な点でもありますし、特に週刊連載で読者を飽きさせないためには不可欠の要素ですからね。
 ただ、「ジャンプ」にも「サンデー」にも、この2つの要素だけを武器にその場凌ぎを繰り返している作家さんも多いんですよね。また、それが商業的にはビックリするくらい当たった作家さんもいたりするから困ったものなんですが(笑)。
 

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎「週刊少年ジャンプ」次号(22・23合併号)には、読み切りSTRATING OVER』作:鈴木新)が掲載されます。
 鈴木さんは週刊本誌02年40号に『DAI-TEN-GU』を発表して以来、1年8ヶ月振りの新作になります。前作に比べて絵柄が大幅に変わっているところを見ると、大化けの期待も持てそうです。期待しておきましょう。

 ◎また、同じく「週刊少年ジャンプ」次号(22・23合併号)には、読み切り『雨女、晴れ男』作:長谷川尚代/画:藤野耕平)が掲載されます。
 昨年、連載するも1クール打ち切りとなった『サラブレッドと呼ばないで』の長谷川&藤野コンビがここに来て復活。今回はスポーツ物では無さそうですが、果たしてどのような新味を見せてくれるのでしょうか。

 ◎「週刊少年サンデー」の次号(22・23号)からは新連載『道士郎でござる』作画:西森博之)がスタートします。
 西森さんは皆さんもご存知の通り、『今日から俺は!』『天使な小生意気』でスマッシュヒットを叩き出している作家さん。どうやら「サンデー」では、直近で長期連載を達成すると新連載の立ち上げもスムーズみたいですね。過去の実績なら互角以上ながら、近年ヒット作に恵まれていない椎名高志さんの復帰がなかなか実現しないのとは好対照です。

 ◎また、この「週刊少年サンデー」の次号(22・23合併号)には、読み切り『グッドラックノストラダムス』作画:武村勇治)が掲載されます。
 武村さんは、かつて『マーベラス』『売ったれダイキチ!』作:若桑一人)で2度の週刊連載経験のある作家さん。今回は若桑さんとのコンビを解消しての復帰作となりますね。

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…4本
 「ジャンプ」:読み切り2本
 「サンデー」:読み切り2本 

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年21号☆

 ◎読み切りMosquito Panic』作画:中西まちこ

 作者略歴
 名前が初めて「ジャンプ」に掲載されたのは、当時まだ16歳だった01年。「手塚賞」01年下期で最終候補「天下一漫画賞」01年12月期で編集部特別賞を受賞して“新人予備軍”入りを果たす。
 その後、1年余りのブランクがあって、「手塚賞」03年上期で最終候補、そして03年下期の「手塚賞」で佳作を受賞し、その受賞作が今回のデビュー作となる。
 

 についての所見
 
まず、細い線がゴチャつくという、デビュー間もない新人さんにありがちな“症状”が目立ちますね。こういう画風でも卓抜した実力が伴えば個性になるのですが、そうでなければ見辛いだけになってしまいます。もう少し自信を持って線が引けるようになるまで練習してもらいたいですね。
 この点とやや関連しているのですが、タッチのシリアスさと等身のディフォルメが一致していない(簡単に言うと顔がデカ過ぎる)場面が多々見られ、それが見辛さに拍車をかけてしまったような気がします。
 そしてもう1点、細かい所ですが気になったのが顔のパーツのバランス。目と口が不自然に大き過ぎて違和感を感じてしまいました。


 ストーリー&設定についての所見
 主人公が突然ミクロの世界の住人になって……というプロットは、昔からよく見られるものですね。そういう意味では目新しさは余り感じませんでしたが、ヒロインの設定はそれなりに練られていたので、まぁここは一長一短、差し引きちょっと短めというところでしょうか。
 ただし、世界観の設定やストーリーの運び方は強引過ぎる所が多かったように思えます。「何が何でも描きたい」という気持ちが伝わって来る場面が数ヶ所あって、そこは確かに見所があるのですが、それらの場面を繋いでいる部分が上手く整理出来ていないように感じました。
 また、作品のメインテーマである「夢」も消化不良気味に終わってしまいましたね。肝心の主人公の「夢」が全然形になっていないので、感情移入しようと思っても出来なかったのが痛い所でした。

 今回の評価
 新人賞の受賞作掲載、しかも「手塚賞」佳作レヴェルでは仕方ありませんが、やはり実力不足は否めない所です。本来ならB評価くらい出せる“持ち点”がある作品なのですが、細かい減点材料が積み重なって最終的にはB−くらいでしょうか。


 ◎代原読み切り『ハロー地蔵堂!!』(作画:新妻克朗

 作者略歴
 「天下一漫画賞」01年7月期で最終候補に残り“新人予備軍”入り。同年秋には「赤塚賞」01年下期でも最終候補に。
 翌年、「赤塚賞」02年下期に『純情ハート♥乙女道』で佳作を受賞。今回は代原ながらデビュー作となる。02年11月末の「赤塚賞」受賞発表当時24歳なので、現在は25〜26歳か。

 についての所見
 人物作画、背景処理ともにギャグマンガとしても「まだまだ」という印象ですね。どことなく小栗かずまたさんを彷彿とさせる画風ではありますが、新妻さんの絵はアクションもこじんまりとしていますし、人物キャラ造型にしても、人ではなく“人とみなせるモノ”の域から抜け出せていないように思えます。この辺は要精進ですね。

 ギャグについての所見
 まず、15ページの作品の割にギャグの密度が薄過ぎるくらい薄いのが大いに気になりました。特に序盤などはギャグらしいギャグに辿り着くまでに3ページも消費しており、これではちょっと……。
 また、ページあたりのコマ数が少ない事もあって、話の流れ自体もえらく淡白に思えてしまいましたね。ラストの持って行き方は、多少強引ながら上手い構成になっていたと思いますので、そこまでにギャグで盛り上げておけば、全体的な印象も随分と違って来たように思えるのですが……。
 次回作では「中身の濃さ」という面に的を絞っての巻き返しに期待したいところです。

 今回の評価
 ラストは綺麗に決まっていたものの、ギャグマンガとしてのデキを見れば、やはりB−程度に落ち着いてしまうのではないでしょうか。今度は胸を張って正規枠で発表出来るような新作を期待したいところです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 時間の都合で今回は「ジャンプ・イン・ジャンプ」の特別企画──『ボーボボ』と『デスノート』のコラボ企画についてのみ。

 ……いやー、しかし面白いながらシビアな企画でしたよね。大筋の内容やネーム・構図が既に決まっている中で、それでも僅かに裁量権が残された部分だけで自分の個性をアピールしなくちゃいけないわけで。何と言うか、プロ作家としての資質も問う試みですよね。しかも、2人の作家さんはそれを見事に成し遂げたんですから、心から賞賛を贈りたいところです。
 そう言えば落語の世界でも、同じ古典落語のネタなのに、違う落語家さんが演じると全く別物に感じてしまう事がよくあるんですが、それも同じような理屈なのかと改めて気付きました。基本的な筋は共通でも、ディティールにその人なりの個性が出て来るんですね。

☆「週刊少年サンデー」2004年21号☆

 ◎読み切り『地球防衛バッパパーマン』作画:森尾正博

 作者略歴
 本格的なキャリアの開始は01年11月期の「サンデーまんがカレッジ」で佳作受賞から。ちなみに受賞当時26歳で、現在は28〜29歳。
 その後、雌伏期間を経て月刊増刊03年9月号でデビュー(?)。また、増刊では03年12月号から04年2月号(月刊としての最終号)までの僅か3回ながら『伝説の帰宅部 Returner』を連載。今回が週刊本誌初登場。

 についての所見
 キャリアの短さを感じさせぬ非常に洗練された絵柄で、大変に好感が持てます。ディフォルメや変則的な構図も厭わずにチャレンジし、それを見事に描き切っているのも素晴らしいですね。この画力なら、現在の「サンデー」でも即連載級と言って問題無さそうです。
 ただ、絵柄のテイストはどちらかというとマンガマニア向け月刊誌のそれに近いような気もしますので、読み手によっては「オタク臭い」と思われてしまうかも知れませんね。まぁ逆に言えばツブシが利き易い絵という事になりますか(笑)。
 
 ギャグについての所見
 ギャグのパターンとしては、天然ボケ系のキャラが複数好き勝手に動き回り、それを“良識派”のツッコミキャラが捌いていく…というもの。舞台やTV番組のコントでよくあるパターンですね。
 ただ、この作品の場合は余りにもボケが暴走し過ぎていて、ツッコミが完全に負けてしまったような気がします。ボケのテンポは良いので、この作品と波長の合う読み手にはこれでも満足出来るでしょうが、幅広い支持を得るかどうかは微妙ではないかと。
 もうちょっとボケを際立たせるような指摘、ツッコミを繰り出せるようになれば一気に雰囲気が変わると思います。更なる研究を重ねて、連載獲得へ向けて頑張ってもらいたいものです。 

 今回の評価
 ギャグの構成だけで言えばB評価ですが、画力の分だけ上方修正を加えてB寄りB+とします。
 ただ、現在の作風を考えた場合、純粋なギャグ作品よりもコメディタッチの日常劇などの方が展望も開けるような気がしますが……。

 ◎読み切り『もみあげキャプテン』作画:大塚じんべい

 作者略歴
 今回がデビュー作。資料不足もあり、過去のキャリアは確認できず。
 なお、今号の2日後に発売されたゴールデンウィーク増刊にてデビュー2作目を発表。

 についての所見
 全体的に見て稚拙な部分が目立つものの、不思議と読み辛さは感じさせないように思えました。もう少し絵柄がこなれて来ると、いわゆるヘタウマ系の作風として認知される所までは行けるのではないでしょうか。

 ギャグについての所見
 ギャグマンガにおける基本的な技術は概ね出来ているように思えます。ギャグのバリエーション・密度も及第点以上でしょう。ちゃんと研究した上で描かれた作品で、その点では好感が持てます。

 しかし、この作品のギャグが優れていると思えるのかと言うと、正直、首を捻らざるを得ません。

 その理由を見つけるために何度も読み直してみたのですが(嫌な作業ですね^^;;)やはりツッコミが弱いのではないか…という結論に辿り着きました。この作品のツッコミの多くはボケの状況を説明しているだけで、本当の意味のツッコミにはなっていないんですよね。
 同じギャグの密度であっても、ただ単にボケを羅列するだけのモノと、「ボケのインパクトでウケる→すかさずツッコミでもう1度ウケる→そこから更にもう一度ボケで大きなウケを狙う」…というモノとでは内容が大きく違って来ます。かなりのセンスを要求される高等テクニックですが、是非とも身に付けて欲しいですね。
 
 今回の評価
 「笑える、笑えない」は別にして、基本的な技術は出来ていますので酷評は避けたいと思います。こちらは絵が稚拙な分だけ減点してB寄りB−とします。

 

 ……今週も「十五郎」を語る余裕が無くなってしまいました。まぁ、もはや敢えて語らなくても良いような気がしないでもないですが(苦笑)。
 来週はゴールデンウィーク突入と言う事で、出来れば前・後半に分けてお届けしたいと思ってます。では。

 


 

2004年第6回講義
4月17日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第4戦・皐月賞」

 今週も何とか開催に漕ぎ付けられました、G1予想をお送りします。来週G1レースが1週休みなのが正直有り難いくらいのコンディションですが、出来る限りの事はしたいと思います。

暫定第4戦・皐月賞(中山・2000芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

        マイネルマクロス 後藤浩
逃げても先行しても差しても善戦マンという印象。今回はコスモバルクのペースメーカー役?
        メイショウムネノリ 武幸
ダート路線経由で果敢なる挑戦。大トビの走法は芝適性を感じさせるが、果たして根本的なスピードがここで通用するかは……?
× コスモサンビーム バルジュー

不利に泣いたトライアルの雪辱に燃える2歳王者。未知数の距離適性に一抹の不安が残るが、叩いて上向いたコンディションもあり、堂々たる優勝候補。

        カリプソパンチ 岩田

短距離戦線からの裏街道組も、父ダンスインザダークがいかにも不気味。問題は重賞未勝利、G2以上初挑戦というキャリア不足の方。

×     フォーカルポイント 横山典

不可解な凡走に終わった弥生賞が気掛かりも、最後方からでも上位に届く強烈な末脚はやはり魅力。主力級には一歩見劣る実績ながら、無欲の追い込みが届けば馬券の対象まで。

      × キョウワスプレンダ 佐藤哲
久々にこの馬らしいところを見せたスプリングS。それでも勝ち切れなかった辺りに脚の使い所の難しさが……。休養明け2走目の上積みあれば面白い存在だが……。
× ブラックタイド 武豊

人気を背負っては惜敗続きだったこの馬も、漸く前走で重賞初制覇。脚質に自在性が出て来たのも強みで、コスモ・マイネル勢打倒の一番手に踊り出た。

  ×   × メイショウボーラー 福永

デビュー以来、連対率100%を維持して来たスピードスターに大きな正念場到来。前走より厳しいペースに距離適性と、他の17頭よりも厳しい“敵”にどう相対するか?

×   ×   ミスティックエイジ 池添

前走はコスモサンビームと接触して暴走で度外視。コスモバルク相手に善戦した実績は侮れず、人気の盲点になれば大駆けも十分可能。

        10 アポインテッドデイ 江田照

条件戦でもG1でも相手なりのレースをしてしまう馬。今回、過去最強の相手関係の中ではジリ貧となる公算が大きくて……。テン乗りの穴ジョッキーに一縷の期待。

      11 グレイトジャーニー 小牧太

思うようなレースが出来ないと、馬自ら走る気を失ってしまうムラ駆けタイプ。好位からスムーズな競馬が出来れば面白いが、その辺りは展開がゴチャつきそうなだけに……。

      12 マイネルブルック 藤田

ブラックタイドを差し切った、きさらぎ賞の実績がキラリと光る。順調なら主力の一角だったが、2ヶ月のブランクに加えて追い不足では強調材料も帳消しに。

        13 メテオバースト 内田博

トライアルは完敗の3着だが、朝日杯以来の休み明けでは致し方ないか。しかし、キャリアや実績不足は否めず、逆転望める材料まで探すのは難しそう。

        14 ダイワメジャー デムーロ

格上挑戦の不利を跳ね返しての出走権獲得は見事。調教の動きは特筆に価するもので、鞍上も魅力。ただし、前に有力・強豪馬を置いてのレースで差し切るだけの力まであるかは疑問。

        15 マイネルデュプレ 柴田善

上がり3F最速33.3秒の瞬発力は出色。しかし持ち味生きるスローペースは望めない上にデキ途上での出走となった今回、さすがに1着争いまでは荷が重そう。

  16 ハーツクライ 安藤勝
デビュー以来わずか3戦ながら、濃密なキャリアを積んで来た。相手関係は決して楽ではないが、未知の魅力はメンバー中一番で。
        17 スズカマンボ 蛯名

若葉S2着は善戦健闘の部類。本格化と見るか精一杯の大駆けと見るかで評価は変わって来るが、一筋縄ではいかない相手関係であるのは確かで……。

18 コスモバルク 五十嵐冬

公営所属初のクラシック制覇の悲願目指して勇躍参上。ダービー出走には4着以内が最低条件だけに、目標は先でも仕上がりに抜かりは全くなし。中央勢の激烈なマークを捌けるかどうかがカギに。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 ハナを切るのはスピード優位のメイショウボーラーでほぼ間違いなさそう。問題はどれ程のペースになるか。
 まず最内枠のマイネルマクロスは、馬込みを避けるため、そして実質同一馬主のコスモバルクのペースを作るためにもメイショウへ競り掛けて行く。コスモバルクはそこから距離を置いた3番手が理想だが、先行〜好位を望む馬も多く、一筋縄で行くかどうか。前からのプレッシャーが強いので、ペースは速めの平均ペースからハイペースまで上がりそうだ。
 後続の有力馬では、コスモサンビームが好位勢の後ろ、そのすぐ後ろあたりにブラックタイドやハーツクライがマーク。フォーカルポイントは後方待機から4コーナー大外捲りの作戦に。コスモバルクは外々追走から正攻法を強いられそうで、まさに正念場と言えそう。
 過去の皐月賞における脚質別の実績は、ズバリ「先行脚質の実力馬、差し・追込の人気薄」。特に人気薄の追い込み馬が2着に飛び込んで馬券が荒れるケースが目立つので要注意。コース形態からして内・外枠の有利・不利は無いが、レースがし易くて距離損の小さい2〜4枠からの連対が目立つ。 
 

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:コスモサンビーム》
 

 それにしてもコスモ・マイネルで5頭出しとは凄いですね。何だか競馬シミュレーションゲームの末期状態のような様相で(笑)。シルク会員としては羨ましい限りだなぁ。駒木の3歳馬は未だに入厩できずに育成牧場止まりだというのに……。
 それはさておき、今回の皐月賞は「“コスモ・マイネル”革命帝国軍VS連合軍」みたいな感じ。いくら厩舎が違うとは言え、事実上の同一馬主5頭出しで意識するなって方が無理だよねえ。

 ……ただ、話題&人気のコスモバルクを過信するのは如何なものか。確かに実力、デキ共に上位ではあるものの、ライデンリーダーの桜花賞のようにJRA勢の徹底マークに遭ってかなり厳しい展開を強いられそうで……。これまでのJRA3戦は全て楽なレースだっただけに余計心配。
 むしろ勝機は、同じコスモでもサンビームの方へ。展開も向きそうだし、距離や早熟度を考えるとダービーよりもむしろ皐月賞目標の感もあるがどうか。
 相手候補はデータに則って差し・追込馬を中心に。しかし一番面白そうなのは、先行脚質ながら前走大敗で人気の盲点になっているミスティックエイジ。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(18日未明時点)
単勝 100円 11.6
馬連 3-18 100円 16.5
  3-7 100円 16.7
  7-18 100円 6.4
  3-16 100円 61.4
  3-5 100円 47.0
  3-9 100円 102.7
馬単 3→18 100円 43.4
  3→7 100円 42.9
三連複 3-7-18 100円 17.7


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:ブラックタイド》

 純粋な競馬ファン目線から見ると、コスモバルクを応援したいところなんですけど、やっぱり展開がかなり厳しくなりそうということで、ここはブラックタイドから。多少ペースがゆっくりになっても融通の利きそうな脚質ですし、どうにか格好はつけてくれるのではないかと期待しています。
 そう言えば、今年はJRA発足50周年だそうですけど、40周年の時にはナリタブライアン、30周年の時にシンボリルドルフ、10周年の時にはシンザンが出ているそうですね。ひょっとしたら今年の皐月賞馬は未来の三冠馬になるんでしょうか?(笑)

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(18日未明時点)
単勝 100円 3.9
馬連 7-18 100円 6.4
  7-16 100円 19.9
  16-18 100円 22.2
  7-12 100円 26.9
  3-7 100円 16.7
  7-8 100円 23.4
馬単 7→18 100円 14.4
  7→16 100円 33.3
三連複 7-16-18 100円 20.3


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:コスモサンビーム》

 アイタタタタ……博士と本命一緒かー。当たる気しませんねー(苦笑)。でも、ここまで実績があって展開も向きそうな馬が単勝10倍以上なんて、オイシイ馬券もいいとこなんですよねー。
 あと、このレースで穴を開ける馬って、「前々走で好走→トライアルで実力を出し切れずに凡走」…というパターンが多いんですよね。コスモサンビームもそうですし。なので、ここはそのパターンの馬を徹底的に狙って行きたいと思います。万馬券になる組合わせが少なくてアレですけど、今日はわたしなりに手堅い勝負をしてみます。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(18日未明時点)
単勝 100円 11.6
馬連 3-5 100円 47.0
  3-18 100円 16.5
  5-18 100円 22.8
  3-11 100円 449.2
  3-7 100円 16.7
  3-9 100円 102.7
馬単 3→5 100円 100.6
  3→18 100円 43.4
三連複 3-5-18 100円 68.5

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:コスモバルク》

 オーストラリア人のワタシとしては、中山グランドジャンプの方が興味をそそられたんですけど……(笑)。
 でも、ローカル競馬から来たコスモバルクの話題も面白そうですね。予想もコレを本命にしてみます。
 あとは、いつもみたいにトライアルとか大レースで1着、2着に来た馬から狙ってみることにしました。でも、これって意外とカタい倍率ですか? ひょっとして偶然正解選んじゃいました?(笑)

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(18日未明時点)
単勝 18 100円 2.5
馬連 7-18 100円 6.4
  3-18 100円 16.5
  3-7 100円 16.7
  16-18 100円 22.2
  6-18 100円 42.0
  8-18 100円 19.1
馬単 18→7 100円 10.5
  18→3 100円 23.2
三連複 3-7-18 100円 17.7

 4人中、コスモバルクに◎を打ったのがリサちゃん1人だけというあたり、いかにも駒木研究室ですね(笑)。さて、結果はどうなるか、どうぞお楽しみに。


皐月賞 成績

        1着 14 ダイワメジャー
2着 18 コスモバルク
  ×   × 3着 メイショウボーラー
× 4着 コスモサンビーム
×   ×   5着 ミスティックエイジ

単勝14 3220円/馬連14-18 4660円/馬単14-18 15290円/三連複8-14-18 20610円

 ※駒木ハヤトの“負け犬の遠吠え”(不的中)
 いやー、だんだんと負け犬っぽくなって来ましたなー(笑)。予想外のスローペースになった上、本命馬が絶好の展開を差せず4着。もう言い訳する要素全部摘み取られちゃったじゃないか。
 でも今回の掲示板載った馬を見ると、何だかダービーでは(掲示板に載る馬が)総取ッ換えになりそうな気がしてならない。唯一頑張れそうなのはコスモバルクだけれども、ここまで目一杯の仕上げで来ておいて、JRAの馬が本当に目一杯で来るダービーでもう一度頑張れるのかは……。でもまぁ、負け犬の心配なんて、どうってことないよね(笑)。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 ……えー、今日は私じゃなくて、後藤騎手に反省文を書いて頂きたいと思ったりするんですけど(引攣笑)。
 もう何も言いたくない気分なのですが、一言だけ。関西テレビの競馬中継で映っていた、最後の直線で100%負けを悟りながらブラックタイドの手綱をしごいていた武豊騎手の寂しい背中。それを観ていると、何だか私、泣きそうになりました(苦笑)。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 あー、そっちだったかー……というのが率直な感想ですねー。コスモバルク2着で馬単万馬券なら、むしろ素直にデムーロ騎手の腕に頼った方が潔かったですよね。
 再来週の天皇賞は、穴党のわたしにとっては一回休みみたいなもんですけど、ちょっと点数状況がヤバいんで、どういう作戦で行くか、2週間かけて考えてみることにします。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 最後のコーナーを曲がったところで抜け出した馬が、一体どの馬なのかを競馬新聞を見ているうちにゴールが来ちゃってました(笑)。2着の馬と3着の馬で決まっていたら、私だけ的中だったのに、ちょっと残念ですね。
 あ、再来週は日本版・メルボルンカップみたいなレースだと聞いてるので、とっても楽しみにしています。ワタシも予想ガンバりますので、どうかヨロシクです。

暫定第4戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 4080
(1位)
0 4080
(1位)
栗藤珠美 1440
(2位タイ)
0 1440
(2位タイ)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(2位タイ)
0 1440
(2位タイ)

 (ポイント・順位の変動について)
 今期初の的中者ゼロ。2着のコスモバルクには全員重い印を打っており、ダイワメジャーの扱い次第では大量加点のチャンスもあっただけに、痛恨の抜け目といったところか。特に穴狙い専門の一色順子は勝機を1つ潰した格好。
 4戦終わってトップの駒木ハヤトが回収率100%ギリギリという低調な展開だが、果たしてこの状況を打破するのは一体誰か?

 


 

2004年度第5回講義
4月16日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・合同)

 覚悟はしていましたが、今回の“二足のワラジ”は非常に履き難いワラジのようです(苦笑)。これまでの社会学講座が、真っ当な社会生活を犠牲にして成り立っていた事を改めて痛感したりしています。
 ただ、高校の非常勤講師は、暇な時はとことん暇だったりもしますので、その間隙を突けば、こちらの仕事も色々と出来るんではないかと思っとります。

 さて、それではお待たせしました、今週の「現代マンガ時評」をお送りします。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新人賞の結果に関する情報

第11回ジャンプ十二傑新人漫画賞(04年2月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作なし
 十二傑賞=1編
 ・『WOODMANザッパー』
(=本誌か増刊に掲載決定)
  鬼団子(19歳・大阪)
 
《武井宏之氏講評:視野をより広げれば、より良いものが描ける。色々な体験をして、次は違うジャンルの作品を》
 
《編集部講評:発送の着眼点は良い。ただ、そのアイディアを読者にアピールする工夫がもっと必要。主人公・敵の双方にもっとキャラクターを作って、読者が感情移入出来る要素を作ろう)
 審査員
(武井宏之)特別賞=1編
  ・『プリンス・オブ・サナミヤコ』
   木村孝昭(23歳・東京)
 最終候補(選外佳作)=4編

  ・『ROBOT SUMO』
   菅原暁(21歳・岩手)
  ・『SAMURAI goes west』
   山添泰平(21歳・京都)
  ・『成分ミルク』
   魚森しなん(25歳・東京)
  ・『サービス戦隊アフター5』
   高橋英治(24歳・兵庫)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎十二傑賞の鬼団子さん…03年9月期「十二傑新人漫画賞」で最終候補。

 ……しかし、武井さんや編集部からの講評を見るにつけ、今月はかなりの大不作だったのかな、という気がします。十二傑賞にしても、「次は別のジャンルの作品を」とか「もっとキャラクターを作って、感情移入出来る要素を」とか、本誌や増刊に掲載させる作品に出すコメントとは思えませんもんね(苦笑)。
 しかし、十二傑賞の“デビュー特典”というのも、受賞作掲載にこだわらず、単なるデビュー確約でも良いと思うんですけどね。「手塚賞」出身作家さんのデビュー作は、受賞作ではなくて受賞後第一作だったりする事も多いですし、どうせデビューするのなら満足の行くクオリティでデビューした方が、誰にとっても幸福のような気がするんですが。

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎「週刊少年ジャンプ」次号(21号)の連載陣読み切り企画・「ジャンプ・イン・ジャンプ」は、『DEATH NOTE風 ボボボーボ・ボーボボ』作:澤井啓夫/画:小畑健)と『ボボボーボ・ボーボボ風 DEATH NOTE』作:大場つぐみ&小畑健/画:澤井啓夫)の2本立てです。
 ……いやー、企画最終週にしてやってくれますなぁ「ジャンプ」編集部!(笑) やっぱり、この辺の柔軟な発想が、いかにも「ジャンプ」らしくて良いですね。
 しかし、これはレビューどうしましょうか(笑)。あまりにも企画色が強い作品であれば、レビューから除外してチェックポイントで扱う事になるかも知れません。

 ◎また、「週刊少年ジャンプ」次号(21号)には、読み切り『Mosquito Panic!』作画:中西まちこ)が掲載されます。
 この作品は03年下期「手塚賞」佳作受賞作で、受賞当時弱冠18歳の中西さんは今回がデビュー作。この03年下期の「手塚賞」、「赤塚賞」の受賞作はやたらと本誌掲載されており、この作品で代原掲載を含めると5作目。その割には、当ゼミを含めたネット界隈の反応はイマイチだったりもするのですが、今回は果たしてどうなるでしょうか。

 ◎「週刊少年サンデー」の次号(21号)には、読み切り『もみあげキャプテン』作画:大塚じんべい)が掲載されます。
 大塚さんについては資料不足もあり、受賞歴や過去の活動歴などが皆目不明なのですが、どうやら新人ギャグ作家さんのようですね。

 ◎また、同じく「週刊少年サンデー」の次号(21号)には、読み切り『地球防衛バッパパーマン』作画:森尾正博)も掲載されます。
 森尾さんは01年11月期の「サンデーまんがカレッジ」で佳作を受賞、その後、月刊増刊03年9月号でデビューし(?)、同年12月号からは『伝説の帰宅部 Returner』を短期連載していました。今回が週刊本誌初登場となりますね。
 ちなみに森尾さんは「まんカレ」佳作受賞発表時(02年1月)で26歳でしたから、現在は28〜29歳。デビュー年齢の比較的高い「サンデー」でも、あまり見られない晩年デビューですね。

 ※今週のレビュー(今週もチェックポイントはお休みします。ご了承下さい。なお、『怪奇千万! 十五郎』の連載総括については次週以降にお送りします)
 ●今週のレビュー対象作…3本
 「ジャンプ」:読み切り1本/前・後編読み切り総括1本
 「サンデー」:読み切り1本 

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年20号☆

 ◎読み切り『BLEACH番外編(−17話) 逃れゆく星々のための前奏曲』作画:久保帯人

 作者略歴
 1977年6月26日生まれの26歳
 デビュー
は「赤マルジャンプ」の前身にあたる季刊増刊の96年夏号に掲載の『HEARTED MACHINE』(当時は本名の久保宣章名義)。新人賞の受賞歴等は確認できず、恐らくは“新人予備軍”から編集会議をクリアしてのデビューと思われる。
 その後、週刊本誌96年36号、97年51号に読み切りを発表した後、1年半以上のブランクがあって、99年34号より『ゾンビパウダー』で初の週刊連載獲得(27回・2クールで打ち切り終了)
 その後、「赤マル」01年冬(新年)号に発表した復帰作・『BLEACH』が、週刊本誌01年36・37合併号より週刊連載化。一時期は打ち切りの危機も経験したが、現在は中堅以上の地位を確保し、今や連載3年目も半ばを突破して現在に至る。
 

 についての所見
 
まぁ、今更になって特筆すべき事は何もありませんね。
 ややクセがありながらも、長期連載のキャリアと確かな技術に支えられた完成度の高い絵だと思います。今回の番外編はページ数の割に登場人物がかなり多かったですが、端役も含めてキッチリと描き分けも出来ていたので全く読み辛さはありませんでした。


 ストーリー&設定についての所見
 本編のメイン〜重要サブキャラの過去の姿にスポットを当てて、簡単なエピソードを描きながら本編の設定補強もしてしまうという、「まさに番外編」と言うべき作品でしたね。特に目新しさは無い構成ではあるのですが、ここしばらくの「ジャンプ」番外編では当たり前の事すら出来ていない作品が目立っていましたので、何だか必要以上にホッとしてしまいました(笑)。
 そんなわけで、全体的にはセオリーに則った手堅い仕上がりになっていたと思います。ただ、ややフューチャーさせる登場人物の数を欲張り過ぎ、1人1人の心理描写がやや甘くなったかな…という感もあります。今回のエピソードでは脇役扱いのルキアの心理が一番深く描けてるというのも、バランスという面から考えると疑問が残りますしね。

 今回の評価
 完成度の高い、まさに“プロのお仕事”がキチンと出来ている佳作ですね。本当ならもっと高い評価を出したいところですが、番外編ゆえのシナリオのボリューム不足もありますし、今回は厳しめにA−寄りB+ということにしておきましょう。


 ◎読み切り(前・後編総括)『桐野佐亜子と仲間たち』作:二戸原太輔/画:叶恭弘

 作者略歴
 ※二戸原太輔さん
 03年下期「ストーリーキング」ネーム部門準キング受賞。結果発表(03年11月末)当時21歳。今回はこの時の受賞作掲載で、なおかつデビュー作となる。

 ※叶恭弘さん
 1970年12月16日生まれの33歳
 「ジャンプ」作家になる以前のキャリアの存在も噂されているが、詳細は不明。「ジャンプ」系のキャリアにおいては、「ホップ☆ステップ賞」(=「十二傑新人漫画賞」の前身の前身)92年1月期において、『BLACK CITY』で入選を受賞この作品が季刊増刊92年秋号に掲載されて「ジャンプ」デビューを果たす。
 その後は94年から1年〜2年に1度のペースで季刊増刊を中心に作品を発表、その傍らで小説本の挿絵も担当するなど、寡作ながら幅広い活動を続ける。
 02年24号からは、「ジャンプ」初の連載となる(叶さん自身による、『ジャンプ』デビュー以前の連載経験を窺わせるコメントが存在)となる『プリティフェイス』の週刊連載が開始。この作品は03年28号まで約1年間続き、「赤マル」03年夏号では、この作品の事実上の完結編となる『プリティフェイス番外編』を発表。
 個人名義での最新作は「赤マル」04年冬(新年)に掲載された『Snow in the Dark』

 についての所見
 「ジャンプ」を代表する腕達者の叶さんを捕まえて、駒木が何も言う事などありません(笑)
 前作『Snow in the Dark』に比べると、やや粗いような気がしないでもないですが、「見易さを第一に心掛けた」(叶さん)という事から、純粋な絵の完成度よりも“マンガの記号としての絵”という部分を意識したのではないでしょうか。
 ただ1点だけ、前編の佐亜子が落ちて来た鉄骨を足で受け止めるシーン最初に振り上げた足は左足なのに、次のコマで蹴り上げているのは右足になっているように見えるんですよね。弘法も筆の誤りというヤツでしょうか。

 ストーリー&設定についての所見
 まず全体の構成についてですが、やや展開が強引で、その割にはページを使い過ぎて大味になったような印象がありました。しかし、伏線や“起承転結”など基本的な要素はきちんと押さえられており、総合的には及第点程度の出来にはなっているのではないでしょうか。
 それ以外の部分で評価出来る点は演出面、特に“小ネタ”のディティール部分の表現は優秀だったと思います。『マネーの虎』風“次回予告”など、パロディ的な描写が特に上手いみたいですね。ただ、少しばかり設定の提示が描写より説明に偏っている気もしましたね。何とか演出で誤魔化せているのではないかと思うのですが、賛否分かれそうなポイントではあります。

 他に重要なポイントとしては“天啓”についての設定がありますね。これについては、既製の作品からかなり露骨なアイディア流用があったと指摘する声もあがっているようですが、個人的には特定の作品の“パクり”というよりも、少年マンガの定番パターンに独自の名前を付けて新品扱いにしたようなモノだという気がします。
 で、この設定は実際の所、なかなか奥が深そうではあります。上手くやれば頭脳プレー、駆け引きの応酬といった複雑で高度なバトルシーンも展開できそうです(もっとも、やり過ぎると“底抜け脱線ゲーム”状態になりますが……)。
 ただ、今回の作品では、実際に登場した能力がミもフタも無いくらいに強力だったために、結局は単なるパワーゲームになってしまったのが残念でした。佐亜子の“重力法則無視”という能力に致命的な弱点が1つでもあればアクセントが利いて良かったのではないかと思うのですが……。
 

 今回の評価
 今回は、叶さんの画力に助けられてB+寄りといったところですね。
 この手の作品は、わざわざ原作者を起用しなくても腕の良いマンガ家さん1人で描けてしまいます。今後も二戸原さんがこの路線でもって原作者として活動しようとするのなら、かなりのスキルアップを果たす必要があるでしょう。

☆「週刊少年サンデー」2004年20号☆

 ◎読み切り『ゴーストロジック』作:浜中明/画:ネモト摂

 作者略歴
 ※浜中明さん
 02年に実施された「サンデー原案・原作ドリームステージ」読切原作部門の大賞受賞者。03年5月の結果発表時で26歳なので、現在は27歳前後
 デビュー作は「ドリームステージ」の受賞作・『ソフィアの掟』画:中道裕大)。今回はそれ以来となる新作発表で、週刊本誌初進出。

 ※ネモト摂さん
 「小学館新人コミック大賞・少年部門」03年下期に『エッグノック』で大賞受賞。その際、ネット界隈では、複数のマンガ情報系サイトから「過去に何らかの媒体で見た事がある絵柄だ」との声があがるも、結局は詳細不明。年齢は03年末の受賞当時で27歳
 (現時点で確認出来る資料に基づく)デビューは、月刊増刊「少年サンデー超(スーパー)」04年2月号で、作品は受賞作『エッグノック』。原作の浜中さん同様、今回がデビュー2作目で週刊本誌デビューとなる。

 についての所見
 「新人コミック大賞」受賞当時から高い評価を受けていたネモトさん、確かに「サンデー」系新人作家さんとしてはトップクラスの実力があると思います。背景処理や細かい部分などの完成度が特に高く、デビュー前は長期間アシスタントの経験があった事を窺わせますね。
 ただ今回に限っては、人物の表情の描写を失敗しており、違和感を感じる場面が多々有りました。キャラの表情が違うという事は、即ちマンガを構成する記号を間違えているという事です。これではどれだけ素の画力が高くても、マンガの完成度を評価する上では減点材料になってしまいます。
 
 ストーリー・設定についての所見
 昔から数多く描かれている“ニセ超能力・怪奇現象解明モノ”プロットですね。ただし、その使い古されたフォーマットに「本物の幽霊が、自分のニセ幽霊の謎を解明する」というヒネリの利いたアイディアを交える事で、新鮮味を出す事に成功しています。既製作品のアイディアに独自色を加えて別の作品に仕上げる事の出来た好例と言えるでしょう。“犯人探し”の謎解きも単純過ぎず、複雑過ぎずで良いんじゃないでしょうか。
 ただ、主人公を巡る人間ドラマとニセ怪奇現象の謎解きの両方を充実させようとして、逆に両方とも中途半端になってしまったかな…という気がします。思い切って智と夢子の日常描写を大幅カット、その分だけ謎解きパートに多くのページを割くのはどうだったでしょうか。最初からオカルト否定派の幽霊とオカルト肯定派の少女のコンビによるオカルト探偵モノ…ということにしておけば、随分と簡潔で分かり易い設定になりますし、エンターテインメント性も維持できると思うのですが。

 今回の評価
 決して悪くはない作品ではあるものの、複数の箇所で無視出来ない減点材料がありましたので、B+寄り評価としておきます。


 ……というわけで、今週分のゼミをお送りしました。しばらくはこのペースでお付き合い下さいませ。ではでは。

 


 

2004年第4回講義
4月10日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第3戦・桜花賞」

 何とか生きております、駒木ハヤトです(笑)。
 今度の職場では、非常勤講師は原則週休2日制とのことで、どうやら土曜深夜は夜更かし可能、競馬学講義も実施可能という流れになりそうです。
 ただ、未だに流動的な部分も多いので、とりあえずはまだ“暫定”の文句を外さない事にします。

 ……というわけで、今シリーズの暫定第3戦はクラシック開幕戦の桜花賞。今年は阪神競馬場の桜も開花が早過ぎ葉桜賞の様相ですが、出走メンバーの方は見事なまでにレース名を体現した“十八花繚乱”の趣。華やかさの一方で予想は難解を極めますが、どうにか皆さんのお役に立てるよう、研究室メンバー一同、精一杯頑張りたいと思います。

暫定第3戦・桜花賞(阪神・1600芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

        エイシンヘーベ 熊沢
収得賞金800万円組の枠1つはこの馬に。強運を味方に波乱起こしたいが、オープンクラスで惨敗続きで無計画な連闘策ではそれも望み薄。
        ヤマニンアラバスタ 江田照
息の長い末脚を武器に賞金積み重ねて来たが、ここに来て馬体減りが深刻な問題に。調教手控えて配慮はしたが、長距離輸送に調整の狂いはレースに響いて来そう。
    ×   ギミーシェルター デムーロ

休み明けのアネモネSでは手堅く正攻法で2着。今回はイチかバチかの後方待機策で更に上を目指す。鞍上が非常に不気味、最内を突けばアッと驚く出し抜けも。

× × スイープトウショウ 池添

致命的な不利に泣いたジュベナイルFの悲劇から立ち直って堂々の2連勝。3歳牝馬離れした豪脚は他馬にとっては最大の脅威。あとは新勢力との力関係と道中のスムーズさ。

×   マルターズヒート バルジュー

前走は後方からのレースを覚えさせるための試走で、完敗2着も度外視可能。大きな幅の出た脚質で、レースの流れに添った作戦を立てて勝利を目指す。

ヤマニンシュクル 四位
ご存知、強力な差し脚を持つ2歳女王。3着に終わった前走は満足出来る結果ではないが、勝ち馬とは順調度で差があったのも確か。叩き2走目の上積み乗せて狙うは再戴冠。
        クリスタルヴィオレ

クイーンCでは渋太く2着に食い下がったが、いかにも展開がハマった感。強力なライバルに囲まれた今回は、どうにも苦戦必至のようで……。

        ホシノピアス 後藤浩

デビュー以来まだ1勝ながら、相手なりに走れる渋太さで重賞でも健闘。しかし渋太さだけでは、厳しいG1の流れではジリ貧に終わりそう。

×   ダンスインザムード 武豊

兄姉譲りのポテンシャルが早くも開花。圧勝に次ぐ圧勝で、あっという間にこの世代の中心的存在に。シビアなレースは未経験ながら、今回もスムーズならばアッサリ勝つところまで十分。

      × 10 レディインブラック 北村宏

前走アネモネSは直線巧みにインを突いて圧勝。持ち時計だけ走れば上位進出も可能だが、一気の相手強化にどう立ち向かうかがカギに。

        11 ウェディングバレー 松永

テンのスピードはメンバー中随一だが、実績は1200m戦に集中。調教の動きも今ひとつだし、どうにも苦戦は否めない。

        12 ロイヤルセランガー 吉田稔

2歳秋には主役級の一角として活躍したが、年明けから酷いジリ貧傾向に。堅実さは認めるものの、ここに来て速い時計への対応に戸惑い気味で不安は否めず。

    13 アズマサンダース 蛯名

前走は休み明け&+10kgで2着健闘という上々の出来。叩いての上積みと、人気の盲点になった身軽さを利して上位陣への食い込み図る。

        14 フィーユドレーヴ 藤田

復帰戦の3着は見せ場十分も、休養後も馬体に成長見られず早熟の傾向が。相手が強化される中、どこまで新味を見出せるかは極めて微妙。

      15 コンコルディア 柴田善

前走13着大敗は、致命的な不利によるもので度外視すべし。阪神JF3着の実績からも油断出来ないが、瞬発力に難あり、展開恵まれてどこまで…といったところか。

        16 ヤマニンアルシオン 和田
外枠から果敢に逃げて2着に粘った阪神JFの記憶は未だ新しいところ。しかし、今回は臨戦過程に難ある上に、当時ほど展開は恵まれなさそうで……。
  17 ムーヴオブサンデー 安藤勝

正攻法で力強く抜け出したフィリーズレヴューの圧勝劇は鮮烈の一言。外枠を引いたのは痛恨の一言だが、展開予想と高いポテンシャルを考えると、悪条件の克服は充分可能だ。

 

×   × 18 ダイワエルシエーロ 福永

ハマったにせよ、先行馬が差し切りで重賞制覇はお見事。懸念されていた馬体減りも解消の気配で期待も高まるが、メンバー強化と大外枠は大きな不利と言わざるを得ない。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 「桜花賞ペース」という言葉があるように、先行激化・超ハイペースの印象があるこのレースだが、意外にも近年は平均ペースに収まる傾向が強まっている。そして、今年もどうやらそうなりそうだ。
 逃げ馬はウェディングバレーとヤマニンアルシオン。逃げたいのは後者だが、テンのスピードで勝るのは前者。ただ、枠順が枠順だけに、2頭で競り合うよりも折り合う公算が大だ。
 その後ろにはダンスインザムード、ムーヴオブサンデーの2頭。気性の激しいタイプではないだけに、こちらも折り合って行くだろう。前が競り合っても追いかけていく事は無いはずだ。動向が注目されるマルターズヒートだが、スタートさえ決まればアズマサンダースら他の先行馬数頭に混じって好位〜中団のレースになりそう。
 一方、後方でジッと待機するのはスイープトウショウ、ヤマニンシュクル、フィーユドレーヴといったところ。その前にダイワエルシエーロ、レディインブラック。どの馬もキメ脚自慢なだけに、ハイペースでなくとも台頭は可能。
 全体的な傾向としては、これも意外なことにペースに関係なく先行・好位からレースをした馬が健闘している。差し・追込よりもむしろ先行馬を狙うべきかも。ただし、逃げ馬の連対は過去10年でロンドンブリッジ(98年2着)1度きり。目標にされる立場はさすがに厳しいか。
 また、16番枠以降の外枠はやはり大きな不利で、ピンクの帽子の馬は1ランク下げて考えるべき。ただし、キョウエイマーチのように突出した存在ならば克服も可能。実力の見極めを慎重に行って結論を導き出したい。
 

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:ムーヴオブサンデー》
 

 いやー、参った。本当に難しいわ、今年の桜花賞。
 そもそもこういう“初顔合わせ”系のG1レースは大の苦手なのに、その上こんな混戦模様と来てるから、もう本当にお手上げ寸前といったところ。
 で、迷いに迷った挙句、敢えて外枠17番のムーヴオブサンデーから。前哨戦の勝ちっぷりを見て、キョウエイマーチ級の逸材と判断した。いかにも先行馬に勝って下さいという展開になりそうだし、ここも正攻法から直線半ばで力強く抜け出すと見る。
 相手は、前哨戦を余力残しで済ませ、ここに照準を合わせて来たと思われるマルターズヒートとヤマニンシュクルの2頭を。トライアル2着ながら人気の盲点となっているアズマサンダースも配当的に妙味あり。
 人気を集めているスイープトウショウとダンスインザムードだが、前者は前走が勝負駆けだったとみて、後者は人気過剰の上に厳しいレースをまだ未経験であるところを問題視して2着候補に留めた。しかし印を付けた6頭ならどれが飛び込んで来てもおかしくない。ハッキリ言ってこんなレース、G1じゃなかったら馬券買いません(笑)。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(11日未明時点)
単勝 17 100円 4.9
馬連 5-17 100円 40.2
  6-17 100円 27.2
  5-6 100円 31.1
  13-17 100円 65.1
  4-17 100円 12.5
  9-17 100円 9.7
馬単 17→5 100円 69.9
  17→6 100円 54.1
三連複 5-6-17 100円 89.5


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:ダンスインザムード》

 高松宮記念同様、実力伯仲で目移りしてしまうんですが、ここは未だ底の見えない強さが魅力のダンスインザムードを本命にします。今年は展開がそれほど速いペースにならなさそうですし、武豊騎手のこの馬に対する入れ込みようを見ていると、推さずにはいられませんでした。でも1番人気になるとは思っていなかったので、少し驚きましたね(苦笑)。
 相手探しは実績重視でまとめてみました。特にトライアルの勝ち馬2頭は逆転まであると考えています。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(11日未明時点)
単勝 100円 3.3
馬連 4-9 100円 7.4
  9-17 100円 9.7
  4-17 100円 12.5
  6-9 100円 15.0
  5-9 100円 25.1
  9-18 100円 17.7
馬単 9→4 100円 14.8
  9→17 100円 16.8
三連複 4-9-17 100円 13.0


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:ヤマニンシュクル》

 先に言っときます。今回のわたしは本気ですよ〜(笑)。こういうソコソコ人気の馬がたくさんいるレースってわたし大好きなんですよ。結構強い馬から狙っていっても、割と高い配当がついたりするんで「えーと、これだと10倍以下の組み合わせ出来ちゃうからパス」とか考えなくていいですしね(笑)。
 ……というわけで、今回の狙いはヤマニンシュクル。2歳チャンピオンが、休み明けのトライアル3着に負けただけで少し離された4番人気ですから、これは狙わずにはいられませんね。同じようにトライアル上位馬で、プラス材料の多い馬を絡めて、万馬券寸前の穴を狙ってみます。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(11日未明時点)
単勝 100円 7.4
馬連 5-6 100円 31.1
  6-13 100円 44.9
  5-13 100円 82.9
  6-15 100円 220.0
  3-6 100円 91.4
  4-6 100円 11.4
馬単 6→5 100円 53.9
  6→13 100円 65.2
三連複 5-6-13 100円 137.3

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:ムーヴオブサンデー》

 ここまで2回連続的中なんて、自分でもあまり信じられないくらいなんですけど、今回も調子に乗っていきたいと思ってます(笑)。
 で、今回はとにかく大きいレースで勝ったことのある馬に、えいっ、えいって感じで印を付けていきました。そうしたら、研究室の皆さんから「ちゃんとした予想になってる」って言ってもらえました(笑)。本当にちゃんとした予想なのか、自分ではサッパリなんですけどね(苦笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(28日未明時点)
単勝 17 100円 4.9
馬連 4-17 100円 12.5
  6-17 100円 27.2
  4-6 100円 11.4
  9-17 100円 9.7
  10-17 100円 151.5
  17-18 100円 25.3
馬単 17→4 100円 27.0
  17→6 100円 54.1
三連複 4-6-17 100円 28.0

 今回は見事に4人の印がバラけました。誰かが抜け駆けを果たすのか、それとも枕を並べて討ち死にか、どうぞ15時40分からのレース本番を楽しみにお待ち下さい。


桜花賞 成績

×   × 1着 ダンスインザムード
    2着 13 アズマサンダース
3着 ヤマニンシュクル
  4着 17 ムーヴオブサンデー
× × 5着 スイープトウショウ

単勝17 290円/馬連9-13 3540円/馬単9-13 4460円/三連複6-9-13 6540円

 ※駒木ハヤトの“負け犬の遠吠え”(不的中)
 いやはや、ダンスインザムード嬢に恐れ入りましたと言うしかねぇですね(苦笑)。こういう結果になる事も当然、頭の片隅にはあったわけだけれども、まさかあんな横綱相撲で直線遊びながらブッ千切るとは……。現時点で姉ちゃんのダンスパートナーより強いんじゃないか?(笑)
 ムーヴオブサンデーは、フタを開けてみればやっぱり外枠の不利がモロに出ちゃった感じかな。結果的に駒木の見立て違いだったという事なんだろうなぁ。差し馬は、先行〜好位勢にあれだけの時計で走られると苦しいね。後ろからのケイバは原則的に他力本願だから、こういうレースになると手も足も出ないんでしょう。 
 あ、余談ですが、阪神競馬場の桜は今日が満開だったそうです。そちらでも失礼しました。  

 ※栗藤珠美の“喜びの声?”(単勝のみ的中)
 1着−3着、4着、5着……
○| ̄|_
 当たったつもりで馬券を確認したら13番がありませんでした(苦笑)。しかも35.4倍でしょう? もうショックで痩せそうです。
 でもダンスインザムードの圧勝は素直に嬉しいです。次からも人気になりそうですけど、牝馬G1は全部この馬から狙うつもりです。ケガだけ気をつけて頑張って欲しいですね。 

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 うーん、1番人気の馬にあんなレースされちゃうと、私は出番ないですねー。ヤマニンシュクルも頑張ったんですけど3着が精一杯でしたし……。
 ちょっと不安になって来ましたけど、他のみんなもハズれてる内にどこかで挽回したいと思ってます。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 今日学んだことは、「ちゃんとした予想は意外と当たらない」ですね(笑)。どうしたら当たる予想が出来るのか、誰か教えて欲しいです。……あ、教えられるくらい上手い人がいたらギャンブルにならないですか?(苦笑)

暫定第3戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 4080
(1位)
0 4080
(1位)
栗藤珠美 1440
(2位タイ)
290 1730
(2位)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(2位タイ)
0 1440
(3位)

 (ポイント・順位の変動について)
 栗藤珠美が唯一ダンスインザムード本命で躍進のチャンスだったが、痛恨の抜け目で大量加点ならず。馬連的中なら一気に首位へ浮上していただけに、これは痛恨事だろう。
 他の3人は上位5着までに印を打った馬が複数入着したものの、的中には至らず。こういう時の的中の難しさを体現するような結果になったと言えよう。

 


 

2004年度第3回講義
4月9日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・合同)

 罰ゲームで負ったダメージも癒えましたので(笑)、今週の「現代マンガ時評」をお送りします。
 さて、今週から講義の構成を、わずかですがマイナーチェンジしております。これは高校講師復帰に伴う準備時間減少による影響をを少しでも軽減させるための措置です。あんまり変わっていないように思えるかもしれませんが、レジュメのフォーマットを毎週使い回す事が出来るので、これで随分楽なんです。
 実は同じ「高校の非常勤講師」という肩書きでも、1年前までの職場に比べ、今度の職場では仕事量が3倍程度に増えています。ハッキリ言って講座の存続自体も一考しなければならない位です。まぁここまでご支持を頂いている当講座、駒木にもまだやり残している事もありますし、今のところ閉講は全く考えてませんが、それならそれであちこちの無駄な部分を見直さなければ早晩破綻を来たしてしまいます。
 以前に比べるとやや淡白で事務的に感じられるかも知れませんが、こうでもしないと講義の実施自体が難しくなってしまうのが現状です。どうか悪しからずご了承下さいませ。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎「週刊少年ジャンプ」次号(20号)の連載陣読み切り企画・「ジャンプ・イン・ジャンプ」は、『BLEACH特別編』作画:久保帯人)。死神たちに過去にスポットを当てた外伝的エピソードになるようです。
 『BLEACH』の番外エピソードは03年41号の『a wonderful error』以来2作目ですが、今回は比較的まとまったページ数でもありますし、定評のある演出だけではなく、中身の濃いシナリオにも期待したいところですね。

 ◎「週刊少年サンデー」の次号(20号)には、読み切り『ゴーストロジック』作:浜中明/画:ネモト摂)が掲載されます。
 原作担当の浜中明さんは、一昨年に募集された「サンデー原案・原作ドリームステージ」読切原作部門の大賞受賞者。03年5月の受賞当時26歳という事ですから、普通に考えれば現在27歳ということになりますか。受賞作・『ソフィアの掟』が増刊に掲載(画:中道裕大)されて以来の「サンデー」登場のはずですから、今回が週刊本誌デビューという事になりますね。
 作画担当のネモト摂さんは、「小学館新人コミック大賞・少年部門」03年下期の大賞受賞者。受賞当時(03年12月)27歳ですから、浜中さんと同い年くらいでしょうか。
 こちらも受賞作が増刊掲載になって以来の作品発表ですから、浜中さん同様に週刊本誌デビューですね。「サンデー」系若手・新人作家の中でも指折りの実力派コンビですから、今作にも期待が持てそうです。

 ※今週のレビュー(物理的事情により、今週のチェックポイントはお休みします)
 ●今週のレビュー対象作…5本
 「ジャンプ」:新連載第3回後追い1本/読み切り2本
 「サンデー」:新連載第3回後追い1本/読み切り1本
 

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年19号☆

 ◎新連載第3回『少年守護神』作画:東直輝【第1回掲載時の評価:C寄りB−

 (受講生の皆さんへ:この作品は評価Cとなりました。結果的に読み手の感情を損ねる論調のレビューになっている恐れがあります。この作品のレビューをご覧になるかどうかは皆さんでご判断下さい。

 についての所見(第1回からの推移)
 心なしか、シリアスタッチの絵や動的表現全般が第1回に比べて粗くなっているように思えます。前作『ソワカ』の時ほど酷くはありませんが、週刊連載ペースでの作画レヴェルの安定が相変わらず課題になっているのではと思います。
 また、ヒロイン級キャラ2人の顔のパーツ(シリアスバージョン)が似てしまっているのも少し気になります。特に姫様&くの一という好対照な立場の2人だけに……。
 全体的には「決して下手ではないが、ゴチャゴチャしていて印象を悪くしがちで損な絵柄」といったところでしょうか。

 ストーリー&設定についての所見(第1回からの推移)
 メインのシナリオ進行よりも、世界観を無視した暴走気味のギャグにページ数が割かれてしまっており、第1回時点より迷走の度合いが増してしまっているようです。シリアス部分とコメディ部分のメリハリが全く効いていないので、結果として中身の薄いシナリオと場違いのギャグだけが残ってしまっています。シナリオが停滞するだけならまだしも、メインキャラを深く掘り下げる作業も余り進行しておらず、有り体に言って、ここ2回はページの無駄遣いと申し上げざるを得ないでしょう。
 この過剰なギャグ連発、恐らくは『ミスフル』『武装錬金』などのコメディ色が強い既存作品を意識したのでしょうが、残念ながらそれらの作品の表層部分(ストーリー系作品に、キツめのギャグを交える構成)だけを真似するに留まっており、まさに文字通りの付け焼刃に陥ってしまっています。そもそも、わざわざ賛否両論激しい作品の影響を受けなくても…と思ってしまうのですが。

 現時点での評価
 正直迷うところですが、及第点だった絵のクオリティが若干落ち、ストーリーが悲惨な崩壊状態とあっては評価も止むを得ないところでしょう。
 中堅層が充実し、打ち切りボーダーラインが異様に高くなっている現在の「ジャンプ」では次期打ち切り候補最有力と申し上げる他ありません。


 ◎読み切り『BLACK CAT特別編』作画:矢吹健太朗

 作者略歴
 1980年2月4日生まれの現在24歳
 98年1月期「天下一漫画賞」審査員特別賞を受賞し“新人予備軍”入り。
 「赤マル」98年春号にて『邪馬台幻想記』でデビュー。当時、弱冠18歳。同名のリメイク作品を週刊本誌98年36・37合併号に発表し、その後連載化(99年12号〜27号 変則2クール打ち切り)
 復帰作は週刊本誌99年46号掲載の『STRAY CAT』。これが改題の上で連載化されたのが現在連載中の『BLACK CAT』(00年32号〜)
  なお、小畑健さんの下でアシスタント経験あり

 についての所見
 今更ながら、以前からの定評通り、洗練された好感度の極めて高い絵柄と言えるでしょう。いわゆる“マンガの文法”的な表現技法についても、満点とは言えないものの合格点はアッサリ出せるだけの実力はあると思います。
 ただし、余りにも絵柄が洗練され過ぎているために、本来洗練されてはいけない部分(不気味さやグロテスク表現等)まで洗練されてしまっているような気もします。分かり難い比喩で恐縮ですが、駒木にとって矢吹さんの絵の綺麗さというのは、脱色&着色料で色付けされた缶詰のサクランボみたいな、ある種の違和感を内包した綺麗さに思えてならないんですよね。

 ストーリー&設定についての所見
 先に結論を言わせて頂くと、現役長期連載作家さんの描く作品としては、非常にお粗末なシナリオと断ぜざるを得ません。以下、ミもフタも無い講評になりますが、不快でなければお付き合いを。

 まず頂けないのが、前半から中盤にかけて演出の乏しい説明的なセリフ、モノローグが延々と続いてしまう点ですね。短編作品なら、ある程度は文字による設定説明を入れるのも仕方ないですが、それにしても工夫が無さ過ぎではないでしょうか。
 中でも特に引っ掛かったのが、敵のアジト探しを1コマで終わらせてしまった場面。序盤であれだけ豪快にページを浪費しておきながら、肝心な所をここまで端折るとは、いやはや……。
 しかも、シナリオの内容そのものも、「『力無き正義は無力なり』を地で行く向こう見ずの阿呆が、ノコノコ敵のアジトにおびき寄せられて犬死寸前→御都合主義的にお節介な元殺し屋が現れてタイミング良く救出」…という、お世辞にも良質のエンターテインメントとは言えない代物。改めて矢吹さんのストーリーテリング力の足りなさ加減に驚かされる思いです。
 ……しかしそれよりも驚きなのは、プロトタイプ段階から数えると4年以上も執筆している作品の極めて重要な裏設定を、ここに至るまでロクに考えていなかったという事ですね(笑)。普通、話のネタにでも考えたりするだろうと思うんですが。
 何と言いますか、ここまでドライかつ刹那的に週刊連載を続けられるというのも一種の才能と言って良いのかも知れませんね。まぁ臓器で言えば盲腸みたいな才能ですが。

 今回の評価
 総合点を合格点レヴェルの絵で引っ張り上げて、それでもB−が精一杯といったところでしょう。


 ◎代原読み切り『暴走特急山手線外回り』作画:夏生尚

 作者略歴
 生年月日は不明ながら、新人賞受賞時の年齢から考えると、現在23歳。
 「赤塚賞」02年上期で佳作を受賞し“新人予備軍”入り。週刊本誌02年31号、03年35号に代原枠で読み切りが掲載されて仮デビュー。
 その後「赤塚賞」03年下期に再応募、準入選を受賞。受賞作『BULLET CATCHERS』が04年14号に掲載されて正式デビュー。今回の作品は、03年秋から今年にかけて執筆された習作原稿と推測される。

 についての所見
 元々ギャグ作家さんとしては合格点以上の画力を持つ夏生さんですが、今回は敢えて自分の得意な絵柄を捨て、1つの作品内で様々なタッチに挑戦したみたいですね。いかにも習作原稿らしい試行錯誤の跡が窺えます。ただ、そういった意欲は買えるのですが、それが作品全体の質を押し上げる方向に働いているかは疑問です。
 あと、主人公以外の人物描写がややなおざりだったような感もあります。ギャグマンガなので、これも狙いの一つだったのかも知れませんが、もうちょっとリアリティのある乗客にした方が良かったような気がしました。
 
 ギャグについての所見
 まず、駒木がこの作品を一読しての印象は、「何だか無理してるなぁ……」でした。
 この作品の中で夏生さんは、「笑いを引き出す一番の近道は、受け手に違和感を感じさせる事だ」と考え、違和感を出そう、出そうと頑張っているように思えます。その発想は間違っていないのですが、絵同様、その意欲が完全に空回りしてしまっているように思えてなりません。ネタになってないシチュエーション(ごく日常的な舞台、確固たるボケ役不在)でいくらオーバーなツッコミをキメても、笑えるどころか逆に痛々しくなってしまうんですね。
 これで優先座席を狙うお婆さんが本当の奇人変人だったりしたら、そのボケっぷりに主人公がツッコミを入れる形できちんとしたネタになるんです。でも、この作品の場合、そこまで行ってないですからね。

 今回の評価
 色んな事にチャレンジしてみよう…という、いかにも習作原稿らしい作品ですが、そのチャレンジがことごとく失敗に終わっている以上、高い評価は出せません。本来の実力が全く発揮されていないと言うことで、ここは厳しくC寄りB−としておきます。
 しかし、せっかく正式デビューを果たしたのに、こういう形で勢いに水を差されるとは夏生さんも良い迷惑ですね(苦笑)。

☆「週刊少年サンデー」2004年19号☆

 ◎新連載(シリーズ再開)第3回『DAN DOH!!〜ネクストジェネレーション〜』作:坂田信弘/画:万乗大智【現時点の評価:B+

 についての所見(第1回からの推移)
 今回は特に申し上げる事項はありません。問題点も含め、既に現在までの評価(B+)に折込済みです。
 ただ、今回の14〜15ページ目・完全にアシスタント任せにしたと思われるパーティ会場の俯瞰光景は、よくよく見るととんでもなく出来が酷いので、今後こういうケースではアシスタントさんの使い方をもうちょっと考えた方が良いと思います。

 ストーリー&設定についての所見(第1回からの推移)
 第2回での意表を突く新庄プロの死去に、「おぉ、これはこの作品も新味が出て来たか?」…と驚かされたのですが、第3回ではいつも通りの泥臭い悪役登場で、やっぱり『DAN DOH!!』は『DAN DOH!!』だなと思い知らされました(笑)。
 この手のシナリオ(泥臭い悪役を正義の主人公が懲らしめる)は、テレビドラマでも多数採用されるように、確かに読み手にカタルシスを与える上では手っ取り早い方法ではあります。ただ、「悪役」という記号を与えられただけの人間味の乏しいキャラクターというのは、シナリオ全体を安っぽくしてしまうという欠点も抱えているので、こういった長編エンタメ作品のメインキャラとして起用するのは上策とは思えません。
 まぁこのマンガは以前からずっとこういうタイプの敵役が多く採用されていますので、今回のコレが改めて減点材料になる事はありませんが、やはりどうしても「退場させるキャラクターを間違えてるんじゃないですか?」と申し上げたくなってしまいますね。良質の人間ドラマを拒否してまで展開するストーリーとは思えないんですよね……。

 現時点での評価
 B+評価で据え置きです。ここに来てやや弱含みかなという気はしますが、連載期間の長い作品ですし、そう神経質に評価の上下を検討しなくてもいいと思っています。


 ◎読み切り『犬ちゃん』
作画:河北タケシ

 作者略歴
 資料不足のため、年齢と新人賞受賞歴は未判明。
 デビューは02年春の増刊号「サンデーR」のルーキートライアルにて。その後、増刊03年4月号に作品を発表している。今回が週刊本誌初登場。

 についての所見
 やや印象が淡白な感じもしますが、週刊本誌の中に混じっても違和感は無く、ギャグ作家としては問題のない実力に達しているのではないかと思います。
 ただ、今回は似たような系統のキャラクターばかりだったので、次回以降には様々な年齢層や顔立ちのキャラクターを見てみたいところです。
 
 ギャグについての所見
 人間が人間を犬として飼う、というシチュエーションはエロ系作品でよく使われるのですが、そういうダウナーで淫靡な設定を、上手く少年誌のライトな雰囲気のギャグマンガに転化出来ていると思います。「思わず2本足で走っちゃったよ」のような、設定の裏を自ら突いたネタ作りも出来ていますし、河北さんがギャグについての技術と理論を持っている事が窺えます
 ただ、今回の作品では、(ケンちゃん)のキャラ付けがやや不安定だったのが惜しかったですね。「どこまで犬で、どこまで人間か」という線引きが今イチ曖昧だったので、幾つかの箇所で作品世界に没入し切れない部分があったように思えました。

 今回の評価
 セールスポイントも複数あるが、問題点も同じ位あるということで、B+評価とします。先程言ったように、センスと技術は感じられますので、今後に期待です。


 ……というわけで、今回はここまでです。こんなクソ忙しい週にレビュー5本は地獄でした(苦笑)。新連載もこれでケリがつきましたので、来週からはしばらくノンビリ行きたいと思います。では。

 


 

番外
4月6日(火) 体育(一般教養)
第1回駒木研究室競馬予想No.1決定戦
駒木ハヤト罰ゲーム特別企画
「スリムな体で夏を! 今日から始められる踏み台昇降ダイエット講座」

順子:「受講生の皆さん、ご機嫌いかがですか? 一色順子です!
 今日は皆さんお待ちかね、去年の9月から12月まで競馬学講義の中で実施した「第1回駒木研究室競馬予想No.1決定戦」の罰ゲーム企画をお届けします。
 この時の「第1回駒木研究室競馬予想……って長いですね。「予想大会」って勝手に略しちゃいましょうか(笑)。……この時の「予想大会」では、03年秋競馬のG1レースの予想で駒木研究室メンバー4人が勝負したんですけど、結果はわたしが菊花賞の馬単万馬券を的中させてブッチギリで優勝! 以下、珠美先輩が準優勝で、駒木博士、リサちゃんと続きました。
 で、この「予想大会」ではビリになった人が罰ゲームという決まりがありました。ルールから行くとリサちゃんが罰ゲームになっちゃうところだったんですけど、競馬初心者のリサちゃんにそれはかわいそうってことになって、3位の駒木博士が繰り上がりで罰ゲームになったんですよね(笑)。
 そういうわけで、今日の講義は駒木博士の罰ゲーム特別企画。博士がそっちの方へ強制連行されちゃってるということで、代わりに“駒木研究室・ご陽気お祭り系イベント担当”のわたしが司会進行を務めることになりました。最後までよろしくお願いしますね〜♪

 ──さて、特別企画を兼ねた今日の講義ですけど、これはタイトルの通り、今から夏へ向けて水着の似合うスリムな体にシェイプアップしよう! …という趣旨の踏み台昇降ダイエット講座です。
 踏み台昇降ダイエットと言えば、去年の夏ごろから「観察レポート」とか学内イベントの中で何度か話題になったのを覚えてる人もいると思いますけど、これが本当に威力があるみたいなんです。わたしは駒木博士や某先輩と違ってダイエットの必要がないので、実感が無いんですけどね(笑)。
 ……それでは、これから講義を始めるんですけど、さっき言ったようにわたしは踏み台昇降未経験なので、残念ながら講義までは無理。そこで今日は特別講師の先生をお呼びすることになりました! ……えー、今日の特別講師・赤星先生です、どうぞ!

 

 

赤星:「──赤星です! 今日は宜しく。」
順子:「……あ、何だか受講生さんからザワザワした声が聞こえて来ますねー(苦笑)。一応言っときますけど、これは判っててやってますからね。矢吹健太朗先生に浴びせるようなツッコミは無用ですから、そこはよろしくお願いしますね(笑)。
 ……えー、赤星先生の“中の人”については、その控えめなバストからも想像出来るように、わたしたちから隠れて踏み台昇降ダイエットをしていた、あの栗ふ……
赤星:「(発言を遮るように、順子の方へ駆け出して)───バカ野郎ッ!!

 

※教育的観点から鑑みて、この場面は残酷過ぎてお見せ出来ません。上のイメージ映像から状況を推測して下さい。(仁川経済大学教務部より)

順子:「あ、あうぅ……(床に倒れたまま、顔の顎の辺りを押さえて悶絶)」
赤星:「お前、今、何て言おうとしたッ!?」
順子:「いや、あの…その……」
赤星:「私は赤星だ。中の人などいないッ! 分かったか!?」
順子:「は……い、分かりました……」
赤星:「それに誰が『控えめなバスト』だぁ? 胸のサイズならお前の方が小さいことを私は知っているんだからな! なんだったら、この場で全世界へ向けてお前のスリーサイズを発表してやってもいいんだぞ!」
順子:「うえぇぇ? そ、それだけは……」
赤星:「だったら早く立って、講義を早く進行しろッ!」
順子:「
わ、分かりました……。こんなの聞いてないよぅ、先輩、いつもとキャラ違ってるよぅ、優勝したのに、これじゃわたしの罰ゲームだよぅ……(ぼそ)
赤星:「……何か言ったか?」
順子:「いえ、何も! ……えーと、大変失礼しました。それでは、これから赤星先生による踏み台昇降ダイエット講座を始めます。どうか最後までご静聴下さい!」


赤星:「──それでは改めて。私が赤星です。今日は最後まで宜しく。

 ……さて、今日は踏み台昇降を利用したダイエットについて講義をするわけだけれども、その前に、まずは踏み台昇降に限らず、運動によるダイエットのメカニズムについて基本的な所を押さえておきましょう。
 まず、運動によるダイエットをする上で気をつけないといけないのは、『落とすのは無駄な脂肪、体脂肪率である』ということ。巷では、激しい運動をしたりサウナに長時間入って大量に汗を流し、その直後に体重計に乗って『体重が落ちた〜♪』などと喜んでいる人がよくいるけれども、これは汗をかいて水分が絞れただけ。そんなもの、後で水分を補給してしまったらあっという間に戻ってしまいます。激しい運動やサウナは脂肪を燃やすのには向いていません。ハッキリ言って意味無し!
 ……こう言うと、『じゃあ、プロボクサーや競馬の騎手はどうなの?』…などと問い返されるのだけれども、彼らは既にギリギリまで体脂肪を落としてしまっていて、一時的に水分を絞り込むぐらいしか体重を落とす方法がないから、あんな無茶な減量をやっているのであって、あくまでも苦肉の策だということを知っておくように。
 私たちが目指すのは、一時的ではなく恒久的な体重低下。その為には、地道に余分な脂肪を落とす努力をしなければならないのです。そう、あくまで地道に。いくら『体脂肪をブチ撒けろォ!!』…などと斗貴子さんがバルキリースカートを発動させても、こればかりは無理。彼女もまた、絶え間ない努力であの無駄の無い体を作り上げたのでしょう。

 ──では、一体どうすれば体脂肪を減らすことが出来るのか? ……その方法は2つ。

 まず1つは、今回の『運動によるダイエット』から外れてしまうのだけれども、それは食生活の改善によるダイエット。ま、一応ダイエットに関わることなので、簡単に紹介しておきましょうか。
 食生活で気をつけなければならないのは脂質と炭水化物の過剰摂取。直で脂肪を増やす原因になる脂質(油)はもちろん、人間の活動には不可欠な炭水化物も、必要以上に摂り過ぎると脂肪に変わってしまうので気をつけるべきでしょう。せっかく運動しても、減らした分だけ脂肪を貯えてしまっては元の木阿弥。『食べても痩せるダイエット』は存在しますが、『暴飲暴食でも痩せるダイエット』は存在しません。食べても食べても痩せる一方の人は多分糖尿病なので、保険証持って今すぐ病院へ行きなさい。
 ……とはいえ、あまりこの辺を気にし過ぎると、ストレスが溜まるだけで逆効果になりかねないので、やり過ぎは禁物。運動するには炭水化物が必要なわけですから、無計画な絶食などは論外です。普通に痩せるだけなら、ジャンクフード系の間食を控えたり、ご飯の量を少しだけ減らすくらいで良いでしょう。特に炭水化物摂取は朝多め、夜少なめが基本。お腹が物足りない時は、ご飯の代わりに高タンパク低カロリーの食品や野菜・フルーツを摂るのがベストです。

 そして脂肪を減らす2つ目の方法が、運動で脂肪を落とす方法。こちらは文字通り体脂肪が確実に減ってゆきます。ただし、ここで言う運動は、有酸素運動と呼ばれるものに限ります。
 有酸素運動とは、簡単に言えば長時間行える軽めの運動のこと。そういう運動は、肺から血液中に取り込まれた酸素が体の中で作用し、余分な脂肪を燃焼してくれるのです。今回紹介する踏み台昇降の他、ウォーキングジョギング軽めの水泳サイクリングなどが代表的な有酸素運動。一見、ヌル過ぎて役に立たなさそうな種目が意外に使えるのがポイントです。
 また有酸素運動は、肺や心臓の機能や、遅筋と呼ばれる持久力に関係する筋肉も一緒に鍛えてくれるので、そちらの方にも効果が出て来ます。余り豪快に鍛え過ぎると足が太くなってしまうのが、唯一女性にとっては困りモノながら、基本的には日常生活で非常に役に立つ機能ばかりが強化されてゆきます。
 これが息が切れるほど激しい運動──無酸素運動だと、体内の酸素が取り込まれずに筋肉ばかりを酷使してしまうので脂肪が燃えてくれません。この種の運動は筋肉がつく運動です。ま、適度な運動が健康的ではあることには変わりないのですが、脂肪を落とさないままこの運動をやると、脂肪と混ざって霜降りの筋肉になってしまうこともあると聞きます。とりあえずは避けた方が無難でしょう。

 そういうわけで、脂肪を減らす一番の近道は有酸素運動であると。それが分かった以上は実践あるのみ……なのですが。
 ここに、有酸素運動でダイエットをする上で大きな問題が1つあります。それは、この有酸素運動がとてつもなく面倒臭いものである……ということです。ミもフタもない話ですが、事実なのですから仕方ありません。何しろ、『軽めの運動を長時間』ということは、すなわち、単調な動きをダラダラ続けるということになるわけですから、正直なところ1日30分や1時間も毎日毎日やってられないってもんです。
 しかも、有酸素運動は自宅以外の場所でやらなくてはいけないものが多いのも特徴です。人前に晒したくない体を何とかしたいからダイエットをするというのに、そのために体を人前に晒さなくてはならないというこの矛盾。そうやって面倒臭がったり、遠慮したりしている内に、脂肪はどんどんと脇腹にしがみついていってしまうのです。かつての私もそうでした! ……って、そこの一色順子笑うな! また私の膝をお見舞いするぞ!
 ……しかし、これから紹介する踏み台昇降ダイエットなら、いつでも自宅で、誰にも見られることなく、しかもテレビなどを見ながらでも出来てしまいます。忙しい社会人でも、留守録のビデオやレンタル期限切れギリギリのDVDを消化しながらダイエットが出来ます。冬に厚着して体のラインが目立たない内にウッカリ太ってしまった場合も、夏までに何事も無かったようにリカバーすることだって可能という、まさに一石三鳥のダイエットです。
 また、この踏み台昇降は他の運動種目に比べても、なかなかダイエット効率が良いことでも知られています。この運動で消費されるカロリーは、体重(kg)×時間(分)×0.094(kcal)。これは山地をハイキングで歩くのと同じくらいの消費カロリーで、ウォーキングやスタジオでのエアロビクス、そして自転車やエアロバイクを漕ぐよりも効果的なのです。
 体脂肪1kgは7000kcal分と言われているので、体重60kgの人が1日1時間踏み台昇降をすると、1日で約50gの脂肪が燃える計算に。1週間で350g、1ヶ月毎日続ければ、約1.5kgの脂肪が体から燃えて無くなるという理屈になるというわけ。これに食生活や生活習慣の改善を取り入れると、更なる効果が期待出来るでしょう。ウェイトオーバー気味の人──単刀直入に言って小デブ以上の人ならば、1ヶ月3〜4kgの減量も夢ではありません。

 理論については以上。これだけ説明すれば、踏み台昇降の素晴らしさについては分かってもらえたでしょう。次はいよいよ実践です。今日は特別に、私がここで実演して直接やり方をレクチャーするので、しっかり覚えて帰るように。
 ……まずは踏み台昇降に使う踏み台の準備から。それ用の市販品もあるようですが、今回は極力ローコストで踏み台を自作する方法を紹介します。
 踏み台を作るにあたっての基本的事項としては、

◎踏み台は、余ったダンボール箱に適当に物を詰め、ガムテープでグルグル巻きにして作るのが一般的。
◎ダンボールに詰める中身は、強く踏みしめても膝に負担をかけない程度の硬さがベスト。足がめり込むほど柔らかいのは逆に危ない。
台の高さは5cm〜15cmくらいの範囲で。高さがある方が運動の効果は高いものの、10cm以上の台は足の筋肉を鍛え過ぎて足が太くなるので女性は注意が必要。また、体重が特に重い人は膝の負担も考えて5cm程度に抑えるべき。
◎縦横の幅は、多少足の位置がズレでも踏み外さない程度で適当に。
マンション、アパート等の2階以上に住んでいる人は階下への騒音に注意。運動するスペースにゴムマットなどを敷いて消音を。
 
 ……などといったところ。ダンボールに関しては缶ビールや缶ジュースが入っている箱などを、中身薄めの古雑誌を詰め込むのが一番手っ取り早いでしょう。
 ただし、今日ここで私が使う踏み台は、特別製の最上級品を用意しました。踏み込む足に伝わる感触抜群、世界に一つだけしかない最高の踏み台。ナンバーワンでありながらオンリーワンという、世間にはびこる甘っちょろい思想を粉砕する逸品です。

 ……おい、さっきから隅っこで呆けてるリサ=バンベリー、ちょっとこっちまで来なさい。そうお前だお前! 『えぇ? ワタシですか?』…みたいなカワイ子ぶった仕草はいいからボヤボヤしないで早く来い! 来なかったらここからそこまで助走して膝蹴りを……そうだ、早く来い! ダッシュ!!」

リサ:「…………(息を弾ませながら教壇まで走って来た後、赤星の前で直立不動)リ、リサ=バンベリー、只今参りました!(絶叫)」
赤星:「さっきから緊張感の無い顔でボケーッとしやがって。貴様、ダイエットなんて自分には関係ないと思ってただろう!」
リサ:「サー、ノー、サー!(裏声絶叫) そんなコトはありません軍曹!」
赤星:「誰が軍曹だ!(怒) ……まぁいい。ところでリサは何歳になった?」
リサ:「ハッ、17歳であります!」
赤星:「そうか。ならば、あと2年だな」
リサ:「に、2年でありますか?」
赤星:「そうだ。あと2年も経てばお前も体の基礎代謝能力が落ちて来る。そうなれば余ったエネルギーが皮下脂肪になって体重を増やす!」
リサ:「……ふ、増えるでありますか?」
赤星:「増える。あっという間に増える! 悲しいくらい見事に醜い贅肉が脇腹に付くぞ。しかも悔しいことに胸はそのままだ!
リサ:「そ、そのままでありますか !?」
赤星:「そうだ。『ヤングマガジン』の表紙に井上和香の水着グラビアでも載ったのを見てしまった日には、明確な殺意を覚えるようになるから気をつけろ! ……で、リサ、贅肉が付いた時、お前ならどうする?」
リサ:「ハッ、速やかにダイエットを実行します!」
赤星:「だろう。ならばもっと真剣に私の講義を聞け! 踏み台昇降を知らずして贅肉の駆逐は不可能と知れ! 分かったな!」
リサ:「サー、イエッサー!」
赤星:「声が小さい! ふざけるな! 大声出せ!
リサ:「サー! イエッサー!!(大絶叫)」
赤星:「よし! ……では隣の準備室にある踏み台をこちらへ。重いから順子にも手伝ってもらえ」
リサ:「サー! イエッサー!!」

 …

 ……

 ………

リサ:「軍曹……いえ、赤星センセイ! 仰せのままに持って参りました!」
赤星:「ご苦労。じゃあ、2人でここまで担いで持って来なさい。」
順子:「……赤星先生、この踏み台、何だか変なんですけど……。重い上に生暖かくて、おまけに中身が動いたり呻いたりしているような……」
赤星:「当然。何しろ人が入っている
リサ:「……ひ、人!」
順子:「え? ま、まさか……」
赤星:「まさかも何も、これは罰ゲームの特別企画だろう?」
順子:「え、あの、駒木博士の罰ゲームは水着姿で踏み台昇降実演じゃなかったはずじゃ……」
赤星:「そんな生ヌルい罰ゲームで誰が満足する? 第一、駒木ハヤトという男は『恥』という言葉が通用しない人間だ。そんなモノでは『笑いも取れてオイシイ罰ゲームだった』とか言うに決まっている! 精神的な罰は意味は無い。ならば、肉体的に痛め付けるのが常道というものだろう?」
順子:「ひえぇぇぇ……(怯)」
リサ:「…………(泣きそうな顔で、何度も首を横に降っている)」
赤星:「よし、じゃあ2人は踏み台を置いたら退がっていいぞ」
順子:「わ、分かりました!(汗) 
……一体、先輩に何があったんだろう……。そんなにストレス溜まってたのかしら……

赤星:「さて、皆さんお待たせしました。罰ゲームの時間です!」
駒木(踏み台の中から):「お、おい、まさか本気じゃないだろうな? 本当に踏み台にしたりしないよな? そ、そうだ、これはドッキリだ! 手の込んだドッキリだ! ギリギリまで怖がらせておいて、最後に順子ちゃんが『大成功〜!』とか言って出て来るんだ、そうだよな?」
赤星:「……それでは、まずは足を踏み込んだ時の感触のチェックから!」


赤星:「おほほほッ!」 
駒木
:「ぎゃああ! 痛い! 痛い!」
赤星:「素晴らしい、最高の感触だわ!」
駒木:「だから、イタタタ痛いって! これはイタタタタ、シャレにならんシャレにならんってコレは! 痛いって! 重いって! 重いってッ!!」
赤星:「────
誰が重いってぇーッ!?

 

※この場面も残酷過ぎてお見せ出来ません。上のイメージ映像から状況を推測して下さい。(仁川経済大学教務部より)

赤星:「(一発では物足りず、ゲシゲシと細かい蹴りを入れながら)どの口が、どの口が『重い』などとッ!
駒木:「ちょ、ちょっと、ちょっと待って、痛い! 痛い! 痛い! ま、待って下さい、趣旨が、罰ゲームの趣旨が違ってますよ先生! 激しい蹴りは無酸素運動だと思うんですがって、本当に痛いッ!(涙声)」
赤星:「うるさいッ! うら若き乙女を捕まえて、口が裂けても言ってはいけない言葉を口にしやがって! このッ! このッ! このッ! このッ!」
駒木:「ギャ! グァッ! ガハッ! ………………」
順子:「(教壇上に飛び込み、赤星に抱きついて)ストーップ! 先生ストーップ! 博士失神してますからストーップ! ダンボール箱から血がドクドクあふれ出てますからストーップ! 」
赤星:「…………ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
順子:「赤星先生、これ以上やったら明日からの講義が永遠に休講になっちゃいますんで、もう勘弁してあげて下さい! 一生のお願いです!(泣)」
赤星:「……分かったわ。このままだと血で滑って転びそうだし。……じゃあ、またこの箱を準備室に運んで、代わりに普通の踏み台を持って来て頂戴」
順子:「
ち、血で転びそうって、何て言い方……(汗)。えーと、普通のって言うと、先輩のいつも使っている……」
赤星:「誰のことだか知らないが『先輩の』とか言うな!(怒) いいから早く持って来い!」

 …

 ……

 ………

赤星:「──大変失礼しました。予定も何もガッタガタですが、講義は最後まで務めさせて頂きます。

 それでは踏み台昇降の実践ですが、簡単に言うと文字の通り、踏み台を昇ったり降りたりする運動を延々と続けるだけ。ただしペースは少し早歩きする程度、小一時間テレビを見ながら運動しても苦にならないスピードで丁度良いぐらいです。じれったくて駆け足してしまうと無酸素運動になってしまうので気をつけること。また、ダイエットになると厚着で必要以上に汗をかこうとする人がいますが、これは逆効果。そういう所に気を遣うぐらいなら、運動前に準備運動やストレッチをする方に気を遣うべし
 運動を続ける時間は人、場合によってそれぞれ。体に負担を与えず、定期的に続けても苦にならない時間を自分なりに設定するのがベストです。よく『有酸素運動は20分以上続けてこそ脂肪が燃える』と言われますが、これはどうやら余り根拠が無いと言う説も有力で、12分ぐらいを境に脂肪を燃やすダイエット効果が上がって来るとのこと。ま、15分くらいが最低単位でしょうか。
 ただし、長時間やればやるほど効果的なのは確かです。個人差があるでしょうが、私の場合だと20分を過ぎたあたりからジンワリと汗が滲み始め、明らかに脂肪が燃え始めているのが実感出来ます。更に、60分を超えると加速度的に血行が良くなり、肌の感触がスベスベに変わって来ます。
 このように、運動の効果を上げるには出来るだけ長時間運動するのが一番。ただ、もっと効果を上げたいという向きには、両手に軽めの鉄アレイを持ってみたり、荷物を入れたリュックサックを背負ってみるのも良いのではないでしょうか。ただし、あくまで有酸素運動の基本は低負荷・長時間ということは頭に入れておくように。

 注意事項としては、まず第一に水分補給を絶対に怠らないこと。先に言った通り、ダイエットの目的は水分ではなく脂肪を減らすこと。脂肪を効率的に燃やすには体内に水分が確保されていることが必要不可欠です。汗をかいた分だけ水分を補給することが大変重要になるので、特にこれからの汗をかき易くなる季節は、手元にドリンクを用意して運動に臨むこと。
 ドリンクの種類に関しては、やはりが基本。何と言ってもカロリーゼロは魅力的です。汗を大量にかく夏場などは、塩分補給の意味で薄い塩水にするのもいいでしょう。また、アミノ酸やカフェインが脂肪燃焼効果を高めるということで、スポーツドリンク緑茶コーヒーなどを運動前や運動中に摂る人も多い様子。ただし、市販のスポーツドリンクは糖分が多過ぎるという話もあるので、味が落ちるのを覚悟で希釈するのも一考が必要でしょう。
 2つ目の注意点は運動中の所作、特に台を踏む時に踏み出す足を時々入れ替えるよう気をつけましょう。実際にやってみれば分かるでしょうが、同じ足ばかりで踏み出していると骨盤から下のバランスに異変を生じます。単調な運動にメリハリをつけるためにも、5分や10分に一度、踏み出す足の左右を入れ替えることを忘れないように。また、運動をする時の姿勢は出来るだけ正しく。変な格好でやっていると、プロポーションが歪んでしまうかも知れません。
 そして最後は運動が終わった後の注意点。まず、運動が終わったら速やかに下半身、特に足のマッサージを入念に行うこと。これを怠ると老廃物が溜まって足がむくんでしまいます。あと、運動後最低30分は入浴・シャワーは避けること。有酸素運動の直後の体は、『余熱効果』といって、運動しなくても勝手に脂肪が燃えるように作用するのだけれども、これの大敵が入浴などによる急激な体温変化というわけ。どうしても汗が不快だと言うのなら、38℃前後のぬるま湯でシャワー。これがギリギリの線でしょうね。

 ……以上が、踏み台昇降についての基礎知識。この講義の内容を覚えておけば、貴方たちも今日から健康的なダイエットが可能です。短期間で劇的、というわけにはいきませんが、中長期的なスパンで着実に体脂肪率を落とすには最適に近い方法なので、是非参考にしてみて下さい。

 それでは長時間に及ぶご静聴を感謝します。またいつかお会いしましょう。では、失礼。(一礼して退場)」

順子:「(赤星の姿が見えなくなってから)……ふぅ。どうなることかと思いましたけど、いや、どうにかなっちゃってるんですけど、何とか終わりましたね(苦笑)。
 駒木博士も派手に出血した割には命に別状はないみたいなんで、明日あたりには講義で元気な姿を見せてくれるんじゃないかと思います(笑)。
 では、今日の講義をこれで終わります。皆さん有難うございました〜♪」


※今回の講義では、OHPさん「アニメダイエットに関する覚え書き」他、多くのウェブサイトを参考にさせて頂きました。有難うございました。
 また、今回の企画のヒントやモチーフを与えて下さった方々にも感謝の念とオマージュを捧げます。(駒木研究室より)

 


 

2004年第2回講義
4月3日(土) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(2)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回

 高知競馬レポの第2回をお送りします。いつまでたっても競馬場に辿り着かない事にお怒りの方もいらっしゃると思いますが、そういう部分も含めての「観戦旅行記」ですので、どうかご理解の程を。

 あ、間もなく締め切りのハルウララ馬券プレゼントですが、現在のところ競争率は3倍程度になっております。遅刻の場合は100%アウトになりますので、まだの方は早めのご応募を。

 今回のレポートは旅行初日の午前2時頃、夜行快速「ムーンライト山陽・高知・松山」の車内から始まります。文体は常体、人物名は原則敬称略としますのでどうか宜しく。


 午前2時半。意識は未だ明確であった。
 緩やかな眠気を頼りに仮眠を摂ろうとしたのは前回ラストの通りだったのだが、そうしていざ寝ようと目を閉じたら、何故か脳が眠りに落ちる事を拒否してしまう。お決まりの“夜行不眠症”である。
 まぁよく考えたら、今は「寝過ごしたら広島直行」と、絶えず脳を脅迫している状態なわけで、そんな中で寝られるのなら、いつもだって簡単に寝られるはずなのだ。3列シート・高角度リクライニングの夜行バスで眠れない人間が、こんな時に仮眠を摂ろうとしたのがバカだった。
 仕方ないので、覚悟を決めて岡山まで起きて行く事にする。『風と共に去りぬ』はまた中途半端な眠気を招く恐れがあるので、「週刊競馬ブック」を引っ張り出し、今日のメインレース・黒船賞の予習をしてみる。

 黒船賞高知競馬唯一のダートグレード競走(全国交流重賞レース)1着賞金3000万円。普段、大レースでも1着45〜250万円の賞金で遣り繰りしている高知競馬では破格も良い所の大レースである。中央競馬で喩えると、賞金2億5000万のジャパンCの上に、賞金30億円のレースがあるようなものだ。
 この極端過ぎる賞金格差のせいで、高知競馬では黒船賞の1着になった馬(と騎手と調教師)が、そのままその年度の高知競馬年間賞金王になってしまう。2着(賞金1050万)も年間賞金獲得額2位になるのがほぼ確実だろう。テレビのクイズ番組で、「現在トップは出川哲郎さんの500点ですが、最後の問題に正解すると10000点プラスされます。皆さんに優勝のチャンスがありますので、頑張って下さい」…なんてのがあるが、それとよく似ている。
 そんなもん、出川じゃなくても「お前らつくづくだよ!」なのだが、これが廃止寸前・高知競馬の現実だ。JRAからの補助金(賞金の半額)や、全国交流ゆえの馬券全国発売が無くては、中央競馬のどの重賞より低い賞金すら捻出出来ないのである。
 当然、高知競馬関係者はこのレースに並々ならぬ意気込みを秘めて臨んで来るのだが、中央競馬や他地区の地方競馬からの遠征馬は余りにも強力で、地元・高知所属馬はなかなか上位に食い込む事が出来ない。その地区における競走馬の強さは、その地区の賞金額にほぼ比例する。全国最低ランクの賞金額である高知競馬に集まって来る馬の強さは、やはり全国最低ランクなのである。だからこそ、ハルウララみたいな馬がいるわけだ。
 何故こういう事になったのかは、余りにも込み入った話なので割愛するが、まぁ親方日の丸のお役所連中が、利権を貪る片手間に競馬を運営してたらこうなったと考えれば良いだろう。迷惑なのは、ただ一生懸命仕事をして来た競馬関係者と、訳のわからないままに劣悪な環境で走る羽目になっている馬たちである。

 閑話休題。
 そういうわけで、今年の黒船賞も遠征組の優勢は否めない。
 まず中央競馬からはJRAG1馬2頭・ノボトゥルーウインクリューガーに、ダートグレード競走G1勝ち馬で昨年の覇者・ノボジャック、交流重賞上位の常連・ディバインシルバーの計4頭。文句ナシの強豪馬ばかりである。順当ならば、この4頭が上位を独占する事になるだろう。有り難い高額賞金が、一番有り難味の薄い所へ流れてゆくどこまでも世知辛い話だ。
 地方競馬からは園田のホクザンフィールドと岩手のタイキシェンロンあたりが有力だが、これでもギリギリの2着候補。4頭の出走枠を持つ地元・高知勢は、廃止になった上山から移籍後12連勝中のベストライナーが大将格も、これも中央競馬ではどうやら中級条件クラスの能力。ギリギリ5着があれば御の字といったところである。もはや「庇を貸して母屋を取られる」ではなく、「うやうやしく母屋を献上仕る」といった状況になってしまっている。ガチンコ勝負の厳しさというか悲しさがここにある。

 ──などと、レースの予想をやっている内に、どうやら時刻は午前3時。間もなく岡山駅到着である。
 時刻が時刻だけに、既に眠っている乗客も多い。周囲を刺激せぬよう、静かに身の回りを整理し、列車の到着を待って慎重に座席を離脱する。今回は0泊2日の旅なので、荷物が極端に少ないのが幸いだ。実はこの日のカバンの中身は、普段、家から近所に散歩しに行く時と大して変わらなかったりする。この手の旅行は軽装なのに越した事は無い。
 岡山から阿波池田まではグリーン車だ。2時間弱ながら、快適に過ごせるのは歓迎である。しかも、ここで嬉しい誤算。駒木の持つチケットで割り当てられた座席は「カーペットカー」という特殊車両で、フェリーの2等船室みたいにゴロンと横になれる座敷席だったのだ。そこにはフェリーと同じように枕と毛布が備え付けられており、これなら駒木のような“夜行不眠症”体質でも存分に仮眠が摂れる。ここを逃すと、神戸に帰るまで横になって寝る機会は無いだけに、これは非常に有り難い。
 どうやら「ムーンライト高知」のグリーン車は、禁煙の「カーペットカー」と喫煙のリクライニング座席に分かれているようで、当然のように禁煙車を指定した駒木には必然的に「カーペットカー」が回って来たという理屈らしい。神戸から乗るには割高で使えない(同じ横になれるならフェリーの方が断然安い)「カーペットカー」だが、こういうシチュエーションなら願っても無い話。改めて携帯電話のアラームを午前5時10分に設定して、横になって毛布を被る。今度は正真正銘、心地良い眠気が全身を包み込んで来た。

 …………

 予定通りの時刻に起床。気持ちが張り詰めているせいか、半端な睡眠時間ながらも寝起きは良好だ。他の乗客が熟睡している中、またも駒木だけそそくさと荷物をまとめ、静かに退席する。
 どうやら寝ている内に雨が本格的に降って来たようで、車両と車両の間の連結部分では、粗末な覆いから漏った雨が床を水浸しにしていた。天気予報が当たった形ではあるが、これからの旅の多難さを考えると気持ちが重くなる。満員の競馬場で雨に降られるというのは、心身両面でかなり厳しいのである。

 定刻通り、阿波池田駅に到着。降りる客は駒木を含めて僅かに数名。夜明け前の駅構内はやはり閑散としていて肌寒い。
 発車してゆく「ムーンライト高知」の普通指定席を外から眺めてみると、やはりと言うか“飼い殺し”にあって空席状態になった座席がいくつもある。誰かキチンとキャンセルの手続きを取ってくれれば、駒木もこんな面倒なマネをしないで済んだのだが、怒りのやり場はどこにもない。
 数分後、乗り継ぎに利用する始発の鈍行列車が入場して来た。早速乗り込んではみたが、どうやら乗客は駒木1人のようで、どうにも心細い。念のため車掌さんに尋ねてみたところ、やはり高知方面へ向かう鈍行で合っているとの事。
 ならばこの列車は駒木の貸切同然というわけだ。堂々と4人掛けのボックスシートを占領して、靴を脱いで足を対面の椅子まで伸ばす。真っ暗で車窓からは何も見えないし、車両もそんなに新しくないしで、何だか銀河鉄道の乗客になったような気分だ。これで横にメーテルがいたら完璧だが、そうなったらそうなったで最後は機械の体(というかネジ)に変えられてしまうので、完璧じゃない方が良い(笑)。

 列車は快調に山道を走り抜けてゆく。停車駅の多くは無人駅のようで、中には「こんな所に駅作ってどうすんだ?」…と、思わず問い掛けたくなる駅もある。そりゃこんな採算の取れなさそうな路線を全国中張り巡らせたら旧・国鉄も大赤字になるわな、などと思ったりした。
 段々と窓の外は明るさを増し、綺麗な景色が次々と目に飛び込んで来る。何と言うか、リアル版「世界の車窓から」である。雄大な景色を眺めながら、出発前に用意していたパンと缶コーヒーで早めの朝食。侘しい食事も、こういうオプションが付くと何だか豪華だ。
 午前7時前になると、停車駅から出勤・通学客が少しずつ乗り込んで来る。印象的だったのが、女子学生のルーズソックス率がゼロだった事(笑)。この素朴さが極めて新鮮だ。地方に行くと、場所によっては都会より派手なメイクをした女子高生に遭遇したりするが、高知は至って正常な文化が築かれているらしい。

 午前7時41分、列車は定刻通り高知駅着。駅構内は県庁所在地らしからぬローカル感溢れる佇まいだった。
 しかし改札を抜けて、バス乗り場へ歩いてゆくと、いるわいるわ、人、人、人。こんな時刻だというのに、既に100人近くはいるだろうか。明らかに8時半始発の高知競馬場行き無料送迎バスを待つ人の群れである。
 聞き耳を立ててみると、標準語やら関西弁もあちこちから聞こえて来る。やはりと言うか、駒木と同じく遠方からやって来た人も相当数いるようだ。
 バスのロータリーには大きなビデオカメラを抱えたテレビクルーと思しき人が既にスタンバイ。群衆整理のために高知県警の警察官もやって来ていた。異様な雰囲気の中で、恐らく日本の競馬史に永く残るであろう日が、今まさに幕を開けようとしていた──。


 すいません、まだ競馬場に着いてませんね(苦笑)。次回からはもうちょっとピッチを上げますので、勘弁して下さい。ではでは。 (次回に続く

 


 

2004年度第1回講義
4月1日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(3月第5週〜4月第1週分・合同)

 年度は改まりましたが、内容はこれまでと変わらぬ「現代マンガ時評」のお時間です。いい加減、有名無実になった「分割版」のタイトルをどうにかしようかとも思ったんですが、いつでも分割して出来るようにという事で、このままで行かせてもらいます。

 では今週も情報系の話題から。次週発売の「ジャンプ」、「サンデー」(それぞれ19号)はそれぞれ読み切りが掲載されますので、その情報を紹介しておきましょう。

 まず「ジャンプ」からですが、今週号から始まった綴じ込み付録・「ジャンプ・イン・ジャンプ」、第2弾は『BLACK CAT特別編』(作画:矢吹健太朗)です。今回はスパイクと……じゃなかった、トレインとスヴェンの出会いを描いた“第0話”的な作品になるようです。
 この手の作品と言えば、昨年度のラズベリーコミック賞受賞作・『テニスの王子様特別編 サムライの詩』をどうしても思い出してしまうのですが(笑)、果たしてどういった作品になるのでしょうか。色々な意味で非常に楽しみです。 
 また、この「ジャンプ」19号からは、『桐野佐亜子と仲間たち』(作:二戸原大輔/画:叶恭弘)が前・後編の形で掲載されます。
 この作品は「ストーリーキング」03年下期のネーム部門準キング受賞作。「ストキン」ネーム部門と言えば“マイナージャンル物”という印象が強いのですが、この作品は少年マンガ王道の“能力バトル物”。作画担当の叶さんもこの手の作品はお手のものだけに、こちらは純粋な意味だけで大きな期待が持てますね。新人原作者さんのお手並拝見と参りましょう。
 なお、前・後編に分かれた作品の場合、レビューは後編の終了を待って行います。特に次週はこのままいくとレビューの本数がとんでもない事になりそう(読み切り以外に新連載後追いレビューを2本予定)ですので、どうかご理解を賜りたいと。
 そして「サンデー」には、読み切りギャグ作品・『犬(ケン)ちゃん』(作画:河北タケシ)が掲載されます。
 河北さんは02年3月発売の「サンデー増刊R」に掲載された「第1回ルーキートライアル」でデビュー。その後03年には月刊増刊で作品を発表していますが、今回が本誌初登場という事になりますね。増刊休刊中における“新人・若手救済事業”の一環といったところでしょうか。

 ……というわけで、情報系の話題は以上。レビューとチェックポイントに移りましょう。
 今週のレビュー対象作は、「ジャンプ」から新連載第3回後追いレビューが1本と読み切り1本の計2本です。

 ※7段階評価の一覧表はこちらからどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年18号☆

 ◎新連載第3回『無敵鉄姫スピンちゃん』作画:大亜門【第1回掲載時の評価:A寄りA−

 春の新連載シリーズ第2弾・『無敵鉄姫スピンちゃん』も、今回が“節目”の第3回センターカラーという事で、後追いレビューを実施します。

 で、ここまで3回ですが、まぁ一言で「極めて順調」という事で良いんじゃないでしょうか。読み切り版以来の確かな技術、ツッコミの巧さは未だに健在ですし、今回などは“間”でギャグを獲るといった、若手作家さんとは思えない渋いテクニックも光っていました。
 また、前回レビューの際に出した課題である「ネタがマニアック過ぎる」という点もかなり修正出来ているようです。これなら作品が読者を選んでしまうような事にはならないでしょう。
 「ジャンプ」のギャグ作品と言えば、『河童レボリューション』(作画:義山亭石鳥)『純情パイン』(作画:尾玉なみえ)のような、新連載と共にノロノロビームを浴びる作品──読み切り発表は極めて順調だったのに、新連載第1回時点で急失速し、第6回あたりから打ち切りへ向かって急加速する──が少なくないのですが、この作品は例外と考えて良さそうですね。

 現状、あとの問題はネタ切れだけですね。まぁ、今くらいスピンちゃんの表情で遊ぶだけの余裕があればしばらくは大丈夫だと思いますが、なるべく長く、このままぶっ壊れない程度に頑張って欲しいと思います。
 評価はA−寄りAで据え置きとしておきましょう。


 ◎読み切り『麻葉童子』作画:武井宏之

 今週から始まった現役連載作家限定の読み切り企画ですが、トップバッターは武井宏之さんの『麻葉童子』。これは現在連載中である『シャーマンキング』の外伝で、主要キャラの1人であるハオの幼少期にあった大きな出来事を描いた話、という事になりますか。
 武井さんのプロフィールについては、昨秋に読み切り・『エキゾチカ』を発表した時から特に変化は無いようですから、その時の講義レジュメ(03年9月2日付)を参照して頂くとしまして、早速レビューへと移りましょう。

 まずに関しては何も言う事無しですね。「水木しげるの21世紀版」とでも言いますか、殺伐とした中に一カケラの愛嬌が混じった画風が作品の内容とマッチしていて、大変良い雰囲気を醸し出しているように思えます。
 どうも武井さんはこの作品のおかげで“祟られ”てしまったようで、「もう二度とこの作品は描きません」と公言してしまいましたが、困った事に(?)、この人の画風はこういった作品で最も映えるような気がしてなりません。

 次にストーリーと設定についてですが、こちらも現役長期連載作家としての実力が遺憾なく発揮されていると申し上げて良いでしょう。完成度の高いプロット、ネーム量が凄まじく多いにも関わらず、それを読み手に負担を感じさせないだけの高い文章力、更には世界観を描写しながら読み手の関心を一気に“持って来”た冒頭のシーンの演出力など、その卓越した技術には唸らされっ放しでした。
 ただ惜しむらくは、ページ数の割にシナリオのボリュームがあり過ぎ、要所要所の展開が必要以上に駆け足になってしまった事でしょうか。キャラクターの行動に関する動機付けが不十分に終わってしまい、特にクライマックスあたりで多少唐突な展開になってしまったように思えるのです。
 また、この作品では婉曲的な表現が非常に多く、これが余計にページ数を食ってしまう結果を招いてしまったようですね。婉曲的な表現というのは、ページ数を過剰に浪費し、更には読み手が内容を理解するのを妨げますが、その代わり“何だか分からんがカッコいい雰囲気”を醸し出す抜群の演出効果も生み出します。使いようによっては非常に効果的な技法ではあるのですが、今回のような32ページの短編読み切りでは、デメリットの部分も大きかったのではないでしょうか。

 評価はA−寄りのB+というところで。『シャーマンキング』本編も最終章突入という事ですから、今度は連載を抱えていない状態で腰を据えて描いた読み切りを拝読してみたいものですね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 空知英秋VS大西編集の舌戦は、巻末コメント欄と編集後記欄をも巻き込んでエスカレート。……もう仲が良いのは分かったから、楽屋オチはこれくらいにしといた方が良いと思いますよ、ええ。

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】

 思いも寄らぬポイントで新ヒロイン出現!?
 ……などといった煽り文句が良く似合う急転直下の展開になりました。単調になりつつあった展開を一気に動かすという意味では、タイミングにしろ手段にしろ、大変に巧みですね。
 しかし、ネット界隈のあちこちから「何だかラストシーンが2週間前の『いちご100%』みたいだ」という指摘が聞こえて来たのには、「やっぱり皆、同じ事考えてるんだなあ」と思ってしまったり(笑)。あーあと、「新キャラよりも王城の女子マネの方が萌え」…という声があったのも以下同文ですね(笑)。『ヒカ碁』の奈瀬さんや記録係さんといい、ヒロイン候補は意外な所から現れたりするものですよね。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希【現時点での評価:B+寄りB/雑感】

 登場シーンから「そこまでされたら、もう何も言えません」だった新キャラ・こずえ嬢ですが、その設定がまた強烈無比! いや〜、参りました色んな意味で(笑)。
 しかし、本来は男子中・高生(この作品のメイン読者層!)の特性である“年中無休エロ妄想”を、よりにもよって萌え系女子高生キャラに移植するとは何と言う荒業! こんなマネをされては、読み手は強制的にこのキャラに感情移入せざるを得ないではありませんか!
 ……いやはや、河下水希恐るべしであります。シナリオの中身を充実させる以外の才能にはとことん長けた人ですね、この人は(一応褒めてます)。

 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 で、『いちご100%』の次にこの作品ですよ。ちょっとは考えて目次作れよ編集部も(苦笑)。

 しかし冨樫さん、“王”が登場してからノリノリですなぁ。ノリノリになればなるほど残酷に人が殺されていくのはどうかと思いますが(笑)。前回あたりからまた下書き原稿が目立ってますが、それでも時間の限界までキッチリ描こうという気持ちが原稿の端々から感じられます。相当モチベーションが高いんでしょうね。


 ◎『武装錬金』作画:和月伸宏【現時点での評価:A−/雑感】
 
 掲載順実質最後尾キチャッター! という事で、半年振りの「打ち切りサバイバルレース」本格参入が確実視されておりますこの作品。
 ただ、「展開が締めに入った」というのは半分当たりで半分間違いではないかと思うんですよね。というのも、今回でL・X・Eが、「北関東周辺がテリトリー」という異様にローカル色の強い小規模団体だと判明したわけで、これはL・X・E壊滅後も次のホムンクルス系秘密結社を出現させる事の出来る伏線にも働くんですよ。“秋水、修行の旅”の伏線も残したまんまですし、まぁ風呂敷を広げるのか畳むのかは今回の時点ではまだ決まってないのではないかと。
 個人的にはまだまだやって欲しい事が一杯残ってますので(カズキ×斗貴子さんにスポットを当てた日常編とか)、何とかここを生き延びてあと1〜2年ほど引っ張って欲しいところなんですが……。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「好きなファストフード」。
 年収が数千万〜億といった売れっ子マンガ家さんでも、食生活は意外に質素というか貧相…というのは、「ジャンプ」の巻末コメントをつぶさに観察しているとよく判る事ですが、今回の質問でも「そんなのばっかり食べてるので、もううんざり」(満田拓也さん)を代表に、皆さんかなりのジャンクフード・イーターのようですね。
 しかし、水口尚樹さん、マクドばっかり食ってたら内蔵がビーフパテみたいになりますよ(苦笑)。

 ……とか言う駒木も、ファストフードというかB級、C級グルメは大好きでして、公営ギャンブル場の“旅打ち”の際にも、必ず何かファストフード系を買い食いしていますしね。
 まず、マクドダブルチーズバーガー、朝メニューのホットケーキソーセージマフィン。ただし脂肪とカロリーが凄いので、好きな割には余り食べられません。朝メニューは営業時間的に食べる機会も少ないですし。
 丼物チェーン店は“松屋派”牛めしに別売りのキムチを投入して食うのが堪らなく好きです。
 あと、ファストフードかどうか判りませんが、ミスドのドーナツは全般的に好きですし、ドトールのサンドイッチやケーキもコーヒー飲むついでに頼んでしまったりします。「週刊競馬ブック」や「週刊プロレス」読みながらミルクレープ食ったりしています。……しかし、そんなのでよく体重65kg未満をキープ出来てるよな、自分(笑)。
 ギャンブル場系では、マイフェイバリットは廃止して二度と食えなくなった西宮競輪場のホルモン焼きで、あとは……多すぎるので書き切れませんね。また余裕がある時、文化人類学として講義でもやりますか(笑)。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:A−寄りB+/雑感】

 アニメ開始記念巻頭カラー、まさか、かの怪作・『葵ディストラクション』とのセルフ・コラボレーション企画で来るとは(笑)。物凄い内向けのアピールもあったもんですなあ。この手の企画と言えば、『ドラえもん』の「ぼく桃太郎のなんなのさ」が、原作では『バケルくん』とのセルフ・コラボレーション企画でしたね。
 ただ今回の企画、同じ作者の作品ですから当たり前ですが、どこかで見たようなキャラクターがバッティングしただけ…みたいになっちゃってるのも否めない所で。難しいところですなあ。
 しかし、この手の企画をあだち充作品でやると、キャラクターが判別不可能になるんでしょうね(笑)。

 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:B+寄りA−/雑感】

 ありましたなあ、部活動紹介 ウケ狙いで勝負に出るか、手堅く真面目にまとめるか運命の分かれ道。まぁ、笑うのは簡単だけど笑わせるのは難しい…と言う事で、狙った部は大概失敗に終わるものなんですが。

 駒木の所属していたSF研究部みたいな怪しい文化系クラブにとっては、新入部員を確保出来るかどうかは生命線ですので、現役の頃は毎年苦労させられました。男子部員ばかりで演台に昇ったら「ヲタ系のイタい部活だ」という事で(半分正解なんですが^^;)人が寄って来なくなるし、逆に女子部員を投入したらしたで、いわゆる腐女子が集まって来て異様な雰囲気のクラブになっちゃうしで、サジ加減が難しかったですね(笑)。
 それでも駒木が入部する数年前までは、男子部員中心の硬派な部活だったらしいんですよね。どうやって人を集めてたんだろう、謎だ……。

 ◎『モンキーターン』作画:河合克敏【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ……えーと、今回の喫茶店でのアレ、シチュエーションや詳細はかなり違いますが、駒木も似たような体験があります(苦笑)。
 もっと正確に言うと、駒木の2つの失恋体験──「突然呼び出されて喫茶店で別れを告げられた(例のバレンタインデー失恋)」「目当ての女のコが、どうやら駒木の仕事仲間の方が好きらしく、その結果『ごめんなさい』」──が見事にミックスされたようなシーンでした。ハハハ……(力ない笑い)。
 だからこそ言えるのですが、今回の洞口ジュニアの心理描写、これは極めてリアルです(爆)。さすがに繁華街で喧嘩はしませんでしたが、絶望感を感じたのは同じでしたね。
 いやはや、『H×H』で何人キャラが殺されても動じない駒木ですがこのシーンには動揺を禁じ得ませんでした(笑)。河合さん、アンタは恐ろしい人だよ(苦笑)。

 ……というわけで、今週はここまで。近い内に、現在連載中の作品の評価再検討とかやりたいんですが、時間取れそうに無いですね。結構作品間の序列付けとかややこしい問題もありそうですし、これは今後の課題でしょうかね。 


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