「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

5/29(第20回) 競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第8戦・東京優駿(日本ダービー)」
5/27(第19回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第5週分・合同)
5/22(第18回) 競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第7戦・優駿牝馬」
5/21(第17回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第4週分・後半)
5/20(第16回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第4週分・前半)
5/14(第15回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第3週分・合同)
5/11(第14回) 競馬学特殊講義「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(4)
5/8(第13回) 競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第6戦・NHKマイルC」
5/7(第12回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第2週分・合同)

5/4(第11回) 
競馬学特殊講義「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(3)
5/1(第10回) 
競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第5戦・天皇賞(春)」

 

2004年第20回講義
5月29日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第8戦・東京優駿(日本ダービー)」

 色々な意味でイッパイイッパイになりながらも、ようやくやって来ました、第8戦・日本ダービーであります。
 ダービーといえば、競馬関係者にとっては悲願とも言うべきレースで、どう転んでも好レースになる事は必至。それに何とか見劣りしないように我々も良い予想をしたいところですが、この週末の駒木は体調を崩し気味でいきなり意気が阻喪しております(苦笑)。せめて結果だけでも出したいと思っているのですが……。


第8戦・東京優駿(日本ダービー)(東京・2400・芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

    マイネルマクロス 後藤浩
皐月賞は出遅れで大顰蹙を買ったが、本来は先行してこその馬。役割はコスモバルクのペースペーカーだが、楽な展開になった時の粘り腰は脅威的。
        ヴンダー 柴田善
13戦がかりでようやく掴んだダービーへの出走権。前走の末脚・3F33秒5は目を引くが、重賞実績の乏しさは大きな不安材料で。
      マイネルブルック 藤田

前走不振は展開不向と復調途上のためで全く度外視。スプリングSでブラックタイドを粉砕した実力は再評価すべき存在だ。

×   ダイワメジャー デムーロ

展開恵まれとは言え、強豪を完封しての皐月賞制覇は軽視出来ないところ。ベストパートナー・デムーロの続投もあり、この大舞台でもやはり主力の一角。

×        ハーツクライ 横山典

他力本願な脚質も、ツボにハマった時の末脚はメンバー中屈指の存在。府中コースを味方につけて、最後の直線追い比べに全てを賭ける。

  ×   アドマイヤビッグ 武豊
無念の戦線離脱から半年、ギリギリでダービーに間に合った。前走の青葉賞は急仕上げで参考外。有力馬との力関係は未知数だが、それがかえって魅力にも。
        マイネルデュプレ 内田博

一見地味な存在も、脚を貯めきった時の切れ味は特筆モノ。ただし、今回は皐月賞を叩いた後も調子が上がって来ないのが……。

        メイショウムネノリ 福永
兵庫チャンピオンシップで賞金追加→ダービー出走権獲得…という“究極の裏街道”組。意気込みだけは認めるが、勝ち鞍全てがダートという現状では……。
  コスモバルク 五十嵐冬
道営、いや公営競馬関係者全ての夢を乗せて、いざダービーの大舞台へ。皐月賞は敗れたものの一番強いレースで、ここに混じっても実力は最右翼。強行軍日程と一週前追い切りの誤算がどこまで響くかがカギだが。
      10 フォーカルポイント 田中勝

キングカメハメハに土を付けた唯一の存在ながら、最近は地味なレース振りに終始。地力を考えると不気味な存在ではあるが、イマイチ信用できないのも確かで……。

        11 グレイトジャーニー 小牧太

負かした馬、負かされた馬の相手関係を見ると、いよいよ苦しくなって来た感じ。上積みも望み辛いし、ここは苦戦しそう。

  12 キングカメハメハ 安藤勝
NHKマイルCの圧勝で一気に優勝候補の筆頭へ。距離延長は大きなプラス材料で、展開も向きそう。あとはコスモバルクの執念をどう実力で捌き切るかだろう。
      13 スズカマンボ 武幸
前走・京都新聞杯は健闘したが、宿敵・ハーツクライにまたも交わされて2着。G1レースは2ケタ着順しかないのも気になるところで、台頭には何らかの恵まれが欲しいところ。
        14 キョウワスプレンダ 佐藤哲
皐月賞(13着)は度外視出来るものの、ここまで勝ち鞍から遠ざかると実力の程を疑われるのも仕方の無いところ。末脚の使い所も悩ましいレースになりそうで、いかにも苦戦の気配。
      15 コスモサンビーム 四位
NHKマイルでは2歳チャンプの意地を見せ付けて2着。ただ、この強行日程、更には距離延長で一転して厳しい立場に。ここは僚馬・コスモバルクのサポート役に徹するか?
        16 ホウキパウェーブ 岡部幸
府中2400の条件で1着、2着。ただ、青葉賞はイン突きで恵まれた上にハイアーゲームには完敗。休養中ガレ気味の馬体も気になる所で……
× × × × 17 ハイアーゲーム 蛯名
あと一歩の所で皐月賞出走権を逃した悔しさをバネに、見事青葉賞を圧勝。弥生賞で負かされたコスモバルクとの相手関係が微妙だが、スローペースでも問答無用で差し切る瞬発力はやはり魅力。
        18 ピサノクウカイ オリヴァー

プリンシパルSで、遂に新馬戦以来の勝ち鞍。3着を外した事の無い堅実さは注目に値するが、一気の相手強化にどこまで対応できるかは……?


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 マイネルマクロスの実質逃げイチ。今度ばかりは出遅れようがどうなろうが、中途半端に控えるケイバをするわけにはいかないだろう。
 平均からやや遅めのペースの中でダイワメジャーが2〜3番手、それをコスモバルクがマークする形。キングカメハメハはその後ろから更にそれをマークする展開になるだろう。立場的には、積極的に動くであろうコスモバルクを目標にできるカメハメハが絶対有利で、これに他のコスモ・マイネル軍団がどこまでプレッシャーを与えられるかがカギになるはず。ここで易々とマイペースなレースをさせるようでは5頭出しの意味がない。
 今回も差し・追い込み勢にとっては有り難くないペース・展開になりそうだが、スローペースでも差し馬に出番があるのがダービーの特徴。ダイワ、バルク、カメハメハによる競り合いがもつれれば、大外から一気に奇襲する馬がいてもおかしくはない。

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:コスモバルク》
 

 出走馬の“勝負気配率”が一番高いレースと言えば、年末の有馬記念と、やはりこのダービーということになるだろう。特に騎手にとっては人生を左右するレースだけに意気込みもひとしお。普通のG1レースとは一味違う、緊張感のある攻防が見られると信じたい。
 そんな中、勝負気配の高さが尋常ではないのはコスモバルク陣営…というか岡田オーナー。公営所属馬云々という一般向けの話題が霞んでしまうくらいの、ただ純粋な“「ダービー勝ちたい」オーラ”が満ち溢れている。距離適性やコンディション不問でダービー出走可能な僚馬を掻き集め、今回も実質同一オーナー5頭出しを実現した。展開やコンディション面を考えるとキングカメハメハに一歩譲るのだが、ここまで持ち駒を揃えてきた以上、決してスンナリとは終わらせないだろう。
 皐月賞馬・ダイワメジャーの取捨選択も悩ましい。前走の勝ち方はフロックに見えなくもないが、ああいうレースから突然本格化してしまう馬もいるので軽視は禁物。ましてや地元のダービーを蹴って来日したデムーロ騎手が鞍上とあっては尚更だ。
 伏兵候補は、皐月賞で着外に沈んだ差し・追い込み勢。特に皐月賞では調整が間に合わなかった感のあるマイネルブルックが面白い。きさらぎ賞でブラックタイドを撃沈した底力がどこまで通用するか楽しみだ。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(30日未明時点)
単勝 100円 2.8
馬連 9-12 100円 5.1
  4-9 100円 11.1
  4-12 100円 14.2
  3-9 100円 64.8
  9-17 100円 9.1
  5-9 100円 22.2
馬単 9→12 100円 11.0
  9→4 100円 17.6
三連複 4-9-12 100円 11.8


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:キングカメハメハ》

 本命はキングカメハメハです。どうしても先週のダンスインザムードの姿が脳裏をよぎってしまうのですが、それでもNHKマイルCの勝ち方はダービー制覇を確信してしまうだけのものがありました。距離も2400mになって更に良さそうですし、何よりも絶好の展開に恵まれそうな気配です。直線半ばでコスモバルクを競り落として抜け出す形になるのではないかと思います。コスモバルクにも頑張ってもらいたいんですけどね(苦笑)。
 コスモと言えば、ちょっと人気を落としているコスモサンビームを穴で狙ってみたいと思っています。確かに距離適性には不安がありますけど、体調の維持も出来ているようですし、決して勝ち目が無いとは思えません。……あ、コスモ−コスモの組み合わせで○▲的中というのも良いですね(笑)。
 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(30日未明時点)
単勝 12 100円 4.2
馬連 9-12 100円 5.1
  12-15 100円 77.1
  9-15 100円 55.7
  4-12 100円 14.2
  12-17 100円 9.8
  6-12 100円 48.3
馬単 12→9 100円 9.0
  12→15 100円 99.9
三連複 9-12-15 100円 49.8


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:フォーカルポイント》

 「競馬はロマン」的な展開は他の人に任せておいて、わたしは今日もロマンを台無しにするような結末を予想してみたいと思います(笑)。
 で、ダービーの狙いはフォーカルポイント。そうです、キングカメハメハを負かしたただ1頭の馬。確かにハイペースの展開でハマった感じもあったんですけど、それは今回もそういう展開になればいいだけであって(笑)。なんだかペースはマッタリしそうな感じなんですけど、そんなペースだとどう考えても本命ガチガチの決着になりそうなんで、そういったケースは最初ッから無視です(笑)。
 ですから、2番手はハイペースで逃げ粘るマイネルマクロス。これで軽〜く馬単10万馬券でも当ててみたいなと(笑)。……あー、もし逃げなかったら2chで糾弾スレ立てる予定です(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(30日未明時点)
単勝 10 100円 47.4
馬連 1-10 100円 543.0
  10-12 100円 122.5
  1-12 100円 97.3
  9-10 100円 70.1
  4-10 100円 200.4
  10-17 100円 170.8
馬単 10→1 100円 1327.7
  10→12 100円 394.9
三連複 1-10-12 100円 1104.7

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:スズカマンボ》

 予想の印を見てビックリした人もいるかも知れませんけど(笑)、フォーカスの数字を見たらピンと来る人もいるんじゃないですか? ……そうです、NHKマイルC、オークスと2レース連続で13番-1番-6番の決着になってるので、思い切ってそれを狙ってみるコトにしちゃいました。予想を見せた時、駒木博士に「……ホントにそれでいいの?」って言われたんですけど、2度あるコトは3度あるって言いますしね。ことわざが本当かどうか確かめてみるつもりです(笑)

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(30日未明時点)
単勝 13 100円 66.9
馬連 1-13 200円 449.5
  6-13 200円 389.8
  1-6 200円 300.0
  ── ── ──
  ── ── ──
  ── ── ──
馬単 13→1 100円 771.7
  13→6 100円 1327.1
三連複 1-6-13 100円 526.9

 今回は久し振りに4人の個性が滲み出た予想になったんじゃないかと思います。これでリサちゃんの一人勝ちになったら、それはそれで悲しい話なんですが(笑)、まぁどういう結果になったとしてもそれが競馬だという事で。
 ……では、またレース終了後にお会いしましょう。


東京優駿 成績

  1着 12 キングカメハメハ
×       2着 ハーツクライ
× × × × 3着 17 ハイアーゲーム
        4着 14 キョウワスプレンダ
      5着 13 スズカマンボ

単勝12 260円/馬連5-12 2490円/馬単12-5 3250円/三連複5-12-17 3460円

 ※駒木ハヤトの“負け犬の遠吠え”(不的中)
 やっぱり気持ちだけでは勝負事はどうにもならんなあ(苦笑)。やっぱり競馬は地力と展開だ。ましてや、あんなハイペースで縦長隊列のレースになったら基本的には地力の順番に決まっちゃうもの。
 でも、コスモバルクもあれだけマイネルマクロスにペースを作ってもらって、勝機が無かったわけじゃないんだよなぁ。折り合いを欠いたのが敗因みたいだけど、キチンと地力が発揮できる状態なら、必ず勝ち負けになったはずなのに……。今日は人も馬も気持ちが先走っちゃったかな。そういう星が巡って来ちゃう人っているよね(笑)。

 ※栗藤珠美の“喜びの声?”(単勝のみ的中)
 ここに来て、また
1着−3着なんて……(溜息)
 でも、本命以外の印を打った馬がここまで走らなかったら不的中も仕方ないですよね。展開も読み違えてしまいましたし、これも「負けに不思議の負け無し」ということなのでしょう。
 あと2戦、今回みたいにせめて軸馬だけは間違えないように頑張りますので、どうか宜しくお願いします。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 展開は結構読み通りだったんですけど、肝心のフォーカルポイントが11着……。やっぱりG1で田中勝春騎手の馬に本命打っちゃダメですよね(笑)。
 次の安田記念は、結構伏兵ぞろいでわたしにとっては面白いレースになりそうです。なんだかこのままだとズルズルとラスを引いちゃいそうですので、そろそろ何とかしなきゃと思ってます(苦笑)。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 ことわざはアテにならない、というコトはよ〜くわかりました(笑)。それにしてもマイネルマクロスってムチャクチャでしたよね(笑)。
 来週はどうしましょう? 今週ちょっとフザけすぎたので、とりあえずマジメにやってみようかなって思ってはいますけど……。

 

第8戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 7000
(1位)
0 7000
(1位)
栗藤珠美 2780
(2位)
260 3040
(2位)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(3位)
0 1440
(3位)

 (ポイント・順位の変動について)
 ポイント加算は、栗藤珠美のキングカメハメハ1着の単勝のみ。駒木ハヤトは軸違いの○−×、栗藤珠美は痛恨の1着−3着で中穴馬券を当て損ねた形。
 盛下がり極まりない展開の中であと2戦、果たして結末は如何に。

 


 

2004年度第19回講義
5月27日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(5月第5週・合同)

 今週もゼミ実施が遅れたのは、打ち切りサバイバルレースの3番手候補がいきなり先頭でゴール板を突き抜けるらしいという事がショックだったから…というのはナシですか? どうも、駒木ハヤトです(苦笑)。
 ……まぁ詳細は次週の本誌を直にご覧頂くとして(駒木も正直まだ信じたくないので^^;;)、とっととゼミへと参りましょう。今週は「サンデー」にレビュー対象作がありませんでしたので、合同版とさせて頂きます。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報
 

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎既に先週までに既報ですが、「週刊少年ジャンプ」次号(27号)より、『D.Gray-man』作画:星野桂)が新連載となります。
 星野さんは新人賞を経ずにデビューした“裏街道”組。「赤マル」03年冬(新年)号にデビュー作を掲載後、週刊本誌03年34号で本誌初進出を果たし、その後1年弱経って突如、初の連載枠獲得。何とも順調過ぎる出世ぶりですが、やはりここからが正念場という事になるのでしょう。デビュー以来の2作品では、シナリオや設定構成にやや粗い面が見られただけに、期待半分・心配半分といったところでしょうか。

 ◎「週刊少年サンデー」次号(27号)には、読み切り『緋石の怪盗アルバトロス』作画:若木民喜)が掲載されます。
 ざっと検索エンジンで調べたところによると、若木さんは02年頃から増刊でたびたび読み切りを発表している若手作家さん。今回の作品は、増刊の月刊最終号となった04年2月号に掲載された『情報怪盗アルバトロス』のリメイクではないかと思われます。 

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:新連載1本&読み切り1本
 「サンデー」:レビュー対象作なし。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年26号☆

 ◎新連載『家庭教師ヒットマン REBORN!』作画:天野明

 ●作者略歴
 「赤マル」デビュー時、公式プロフィールで生年月日非公開だったため、現在のところ年齢不詳・調査中。
 01〜02年にかけて「週刊ヤングマガジン」誌、同誌別冊にて短期連載を2度経験後、「ジャンプ」系へ一新人として移籍。
 「ジャンプ」系若手として最初のキャリアは02年12月期「天下一漫画賞」最終候補(名義はおやつおやお。その後、天野明名義で更に一度投稿歴があるが、受賞を待たずして「赤マル」03年春号にてジャンプデビュー。
 週刊本誌初登場は03年51号で、今作のプロトタイプ読み切り。紆余曲折はあったものの、ジャンプデビュー後はトントン拍子での連載獲得となる。

 についての所見
 
短期とは言え、メジャー系雑誌で連載経験があるだけあって、全体的な完成度は低くないと思います。構図の取り方なども手慣れており、単調さが感じられないのも良いですね。
 キャラクターデザインに関して言えば、主要キャラとモブ(群集)キャラとで意識的に手の入れ具合を変えて、主要キャラの方が引き立つような工夫も為されていますね。これは後で述べる欠点にも繋がってしまう嫌いはあるのですが、主要キャラを読み手の頭に馴染ませるという観点から見ると、なかなかの策だと思います。

 ただ、作品を通して見てみると、どことなく全体的に少しずつ手を抜いているように見えてしまうのが気になります。
 これは本当に手を抜いているわけではないのでしょうが、根本的なペンタッチがやや粗いのと、動的表現や表情の作り方に微妙に違和感があるために、そのように見えてしまうのでしょう。連載を続けていく内に絵柄が整っていく余地もあるのでしょうが、とりあえずのところは「ギリギリで及第点の範囲ながら、現在の連載陣では下位クラス」という評価を下さざるを得ません。

 ストーリー&設定についての所見
 古くは『ドラえもん』等の藤子F作品、「ジャンプ」では『まじかるタルるーとくん』作画:江川達也)を髣髴とさせる、「主人公のダメな少年の下へ、異世界から“特殊能力付加能力”を持った助っ人がやって来る」というコンセプトの作品ですね。
 主人公が密かに恋焦がれるヒロインがいたり、やたらと乱暴なライバル(いじめっ子)キャラがいて…というあたりも過去作を踏襲していますので、これは確信犯的に“攻めて”来たな…という印象がありますね。とはいえ、単なるアイディア流用ではなく、過去の作品の根本的な部分を分析した上で別物として再構成出来ているのは好感が持てます。

 ……ですが、そうやって手間をかけて練りに練った設定のデキが良いのかと言えば、「?」マークがついてしまうのが苦しいところです。
 一番の問題点は、ドラえもんの“ひみつ道具”にあたるアイテムが、原則“死ぬ気弾”に限られてしまうところ。これでは、一話〜数話完結型のストーリーに大きなバリエーションを持たせる事が出来ません。いくらシナリオを工夫しても、最後に“死ぬ気弾”で解決してしまうのであれば、ワンパターンの謗りを免れる事は出来ないでしょう。
 また、“死ぬ気弾”の設定もかなり苦しい部分がありますよね。死んだ後に生き返るのが判っているのに、毎回「死ぬ前にこうしてりゃ良かった」と後悔するというのは結構な無茶だと思うのですが……。
 それに加えて、ヒロインと敵役キャラの設定についても、この系統の作品の“仕様”とは言え、ステロタイプに過ぎてある種の“安っぽさ”も感じてしまいますね。ストーリー上の役割に応じたキャラクター付けが不完全なのでしょう。

 ……というわけで、今回の時点では、典型的な「読み切り作品の連載化失敗パターン」にハマってしまっているような気がしてなりません。第1回のデキそのものとしては悪くないのですが、弱含みの要素を大きく含んでいる設定と言えそうです。

 現時点での評価
 「このまま行くと失敗するであろう」…という弱含みの要素をどこまで現時点の評価に折り込むかで迷える所ですが、「普通に一読する上では苦にならない作品であろう」ということで、暫定評価Bとします。
 ……それにしても、「上手くすれば成功するかも」という作品は、大抵の場合上手くいかないというのは何故なんでしょう(苦笑)。まぁ今回は読み切り版の時点で構造的な欠陥に気付ききれなかった駒木のミスジャッジだった気がしないでもないですが……。

 ◎読み切り『HIP☆HOP☆HOP』作画:大石浩二

 ●作者略歴
 新人賞受賞等のキャリアが無いまま、週刊本誌03年24号(先々週号)にて、『HUNTER×HUNTER』の休載枠を穴埋めする“準代原”で暫定デビュー。今回はそれに続く2度目の“準代原”発表となる。

 についての所見
 
前作と同様、人物作画はギャグ作品として許容範囲ギリギリながら、背景処理やベタ貼りのスクリーントーンの使い方は落第点レヴェル…といった感じですね。
 これでも何か1つでもセールスポイント(=良い意味で個性的な要素)があれば、また印象も違って来るのでしょうが、現時点では「ただ絵が少しヘタクソなギャグ作家さん」という印象しか持てないですね。

 ギャグについての所見
 今回は1ページ単位のショートギャグではなく、15ページのオーソドックスなギャグ作品となりました。
 まず、今から考えると前作との共通項と言える部分である、「どうからどう見ても変なヤツが、自分だけはマトモな人間だと思ってそのように振舞う」…という設定は、笑いに繋がる違和感を喚起するのに適したモノで良いと思います。ウッチャン・ナンチャンが作るコントに、こういう系統のネタが多いですよね。
 しかしながら今回の作品に関しては、微妙に各所でツッコミが弱かったり、間が詰まり気味で笑う前に話が展開してしまったりした印象もありました。まぁこの辺の感じ方は人それぞれですし、ネタの運び方自体は悪くないとも思えますので、かなり判断が難しい部分ではありますね。ですが、少なくともまだまだ良くなる余地を残した作品であるとは言えそうです。

 今回の評価
 色々総合すると、前回より少しだけ上、B寄りB−ぐらいが妥当かなと思います。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 いつも通り巻末コメントから。
 時期的なものでしょう、GW休みの使い方についての話題が多かったですね。限られた日数ながら、皆さん充実した骨休みをされたようで。しかし、「両親はトドのように寝てるし、姉は金をせびって来るし」…という空知英秋さんは災難でしたなあ。
 「印税入ったんでしょ、ちょっと頂戴」
 「バカ、初刷りの印税なんざ、借金返済で消えちまうよ」

 ……といった生々しい会話が展開されたのでしょうか(笑)。噂を聞く限りでは、『銀魂』1巻はかなり際限なく増刷がかけられているようですので、今度は税金対策が大変に……って余計なお世話過ぎますか(笑)。

 あと、「“蜂蜜”という言葉を聞くだけで『くまのプーさん』を思い出す」というのは矢吹健太朗さん。そういや駒木の家にもありました、プーさんの絵本が。
 しかし今では、“蜂蜜”という言葉を聞くと、彼氏から望まれるがままに蜂蜜プレイを敢行した知り合いの女の子を思い出してしまう駒木であります(笑)。

 次に作品について。
 まず『BREACH』この期に及んで夢に主人公が出て来ないメインヒロインってどうよ? ……などと思ってしまいますなぁ(笑)。いやはや、本当にこの作品って主人公とヒロインの関係が淡白なんだよなぁ。昔はさておき、今現在自分を命がけで助けてくれようとしているヤツに惚れんかい! …とゲキを飛ばしたくなるのは駒木だけなのでありましょうか。
 『アイシールド21』では、秋大会の組み合わせ発表。見開き2ページでトーナメント表っていうのは『幽☆遊☆白書』でありましたね。ただ、あれは文字ばっかりのある意味物凄い演出でしたが。
 トーナメント表を見る限りでは、デビルバッツの相手は1回戦・網乃サイボーグス→2回戦・夕陽ガッツ→3回戦・毒播スコーピオンズ(テーマは敵チーム研究によるアイシールド封じ?)→準々決勝・柱谷ディアーズ(小柄・スピード系選手同士対決?)→準決勝・西部ワイルドガンマンズ→決勝・王城ホワイトナイツ…となりそうですね。この後に関東大会(多分決勝だけ)、クリスマスボウル、それからひょっとしたら日本人オールスターズによる世界大会(というかVSアメリカ代表)があってフィニッシュでしょうか。……一体何年かかるんだろう? 『ミスフル』なら10年かかるぞこんなもん(笑)。
 最後に『いちご100%』、扉絵で駒木の“メガネっ娘属性”を再確認出来て良かったです(笑)。あ、本編の方は、「真中エエカゲンにせえ」の一言で。

☆「週刊少年サンデー」2004年26号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「選挙に出馬するとすれば、どんな公約を掲げますか?」。
 さすがは社会の用意したレールをわざわざ踏み外してアウトローかつツブシの利かない人生を過ごしているマンガ家さんとあって、「そんなのどうでもいい。強いて言えば1週間を7日からもっと伸ばしてくれ」…というのが本音のようで(笑)。面白そうな質問だったんですけど、消極的な答えが多くて残念でした。
 駒木はやはり「カジノの合法化」でしょうね。ラスベガスみたいなカジノホテルや、マカオみたいなカジノ遊覧船なんかを是非。まぁやり方間違えると、韓国の某所みたいな、カジノの脇に質屋と中古車買取屋が軒を連ね、ついでに車を売ったカネもスって帰れなくなったオヤジだらけ…という世も末な場所になっちまうんですが。

 さて、作品についてのコメントを。
 今週は『金色のガッシュ』『結界師』『からくりサーカス』と、“泣かせ”テクニック競演といった趣になりましたね。で、今回はベテランの底力というか、「弟子に負けてたまるか」というジュビロイズムが炸裂した藤田和日郎さんに軍配…といったところでしょうか。セリフも凄いですが、演出力も凄いです。さすがだ。
 ところで駒木はマンガ家志望でもないのに「まんがカレッジ」のメルマガに登録しているわけですが(笑)、今週のマンガ家志望者と作家さんとのQ&Aコーナーは、決めゼリフを上手くキメられるようになるにはどうしたら? …という質問に藤田和日郎さんが答える回でした。
 で、その回答とは、

「例えば映画を観るでしょ? その中でカッコいいセリフだ、と思ったらメモるワケよ。小説なんかもそう。自分流にアレンジしてどんどんメモる。格言集や今流行ってる言葉の本も名ゼリフの宝庫だし、それをいっぱい見ていると『あのキャラに言わせたいなあ』とかアイディアが浮かんでくるんだね。やっぱりそれしかないと思うし、ひとりじゃなにも浮かんでこない。とにかくひとつひとつのセリフをおろそかにしないで、じっくりキャラに当てはめていこう」

 ※以上、メールマガジン「まんカレ通信」39号より引用

 ……という、「この人だから許される」というモノでした(笑)。そうかー、藤田さんでもそうやってたのかー…などと思える辺りがこの人の人徳と言うか、作家として積み重ねて来たモノの大きさと言うか。これを「ジャンプ」のYさんとか、「サンデー」のAさんとかFさんとかが言ったらシャレになりませんな。
 どうでもいい話ですが、この発言の「セリフ」を「アイディア」に、「メモる」を「パクる」にしたら、完全に「ジャンプ」のYさんの作品になってしまう気がするのは……。

 あと『ワイルドライフ』は、激しく殺意を抱きましたがもうどうでもいいです。というか、このマンガが世に出る寸前にハルウララが気力振り絞って2着…といった辺りは微笑ましい出来事だなと。あの馬、極端に臆病なのが問題なんですよね。

 最後に『美鳥の日々』ですが、着々と円満完結に向けたフラグが立ってますね。一応のタイミングとしてはアニメ終了の6月末があるんですが、果たしてどうなんでしょうか。打ち切りが定期化されてない「サンデー」はタイミングが読みにくいです。(あれ? 同じような事を少し前に話したかな?)追記:前の週に言ってました(笑)。健忘症もいいとこです^^;;

 ……といったところで今週のゼミはここまで。週末はダービーでお会いしましょう。

 


 

2004年第18回講義
5月22日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第7戦・優駿牝馬(オークス)」

 何やかんやと第7戦まで到達しました。しかも地味ながら駒木が暫定首位を維持したまま。
 ……しかし、首位を走ってて気付いたんですが、この企画って駒木がトップだと面白くも何とも無いですね(笑)。かといって下位に甘んじるのも講師としてアレですし、今更ながらに、この企画が失敗だった事を痛感しております。1年近くやってから気付くなよって話ですが(苦笑)。

 ──まぁとりあえず宝塚記念までは現体制で。秋からはまた何か考えます。

第7戦・優駿牝馬(オークス)(東京・2400・芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

× ×   × スイープトウショウ 池添
展開に泣かされた格好の桜花賞(5着)。末脚の切れ味はこのメンバーでもトップクラスだが、問題は距離適性。父・エンドスウィープの代表産駒はことごとくが短距離馬。
        セカンドノホシ
芝5戦未勝利も、前走G2で3F34秒0の末脚で入着と健闘。ただし、さすがに三冠レースでは敷居が高そう。
        ラグレスロマニー 小野

前走平場500万で出遅れ・凡走。好走実績の先行策に活路見出すが、長い直線のどこまで粘れるか……

      × ドルチェリモーネ 安藤勝

注目の忘れな草賞勝ち馬も、そこまでにオープンで大敗を繰り返し、今一つ大物感に欠ける。ヒシミラクル型の捲り脚を武器にどこまでやれるか。

ダンスインザムード 武豊

ただただ圧巻の快勝劇だった桜花賞。今回も展開に恵まれそうで、4角先頭から問答無用の抜け出しが炸裂しそう。怖いのは競馬につきものの好事魔急襲だけか。

      ヤマニンアラバスタ 江田照
馬体減りもあって本調子と行かぬ近走だが、今回は調整も好調で上昇ムード。休み明けでダンスインザムードに食い下がったフラワーCの内容が本物なら今回も。
ヤマニンシュクル 四位

勝負気配の桜花賞だったが、詰め甘く3着。今回もコンディションは維持できており、府中の長い直線とスタミナでどこまで上積めるかがカギ。

× アズマサンダース 蛯名
チューリップ賞、桜花賞連続2着。好位スンナリなら実に渋太い。ただし、未だ1勝というあたりに瞬発力不足も懸念され、奇襲を受ける立場になった今回は少々心配か。
      × ギミーシェルター 柴田善
いかにも珍しい“指定オープン2着コレクター”。賞金400万の身ながら、優先出走権で春シーズン皆勤賞。ただし、G1だとさすがに格負けが心配で……。
        10 フレンチアイディア 勝浦

出走ボーダーラインに恵まれ、待望のG1初出走。オープンでもソコソコの勝負は出来る実力はあるが、入着以上となると瞬発力の差が大きく出そう。

  × × × 11 メイショウオスカル 後藤浩

逃げ・先行で強豪相手に食い下がって来た経験が、前走のフローラS逃げ切りに繋がったか。スローペースに落とし込んでどこまで粘れるか。

×     12 ウイングレット 田中勝
8ヶ月ぶりの復帰戦完勝後も、反動無くますます好調。未知の魅力で言えば一番だが、距離を考えると父タイキシャトルはいかにも不安材料で。
      13 ダイワエルシエーロ 福永
桜花賞は大外枠でレースにならず、今回は人気を落として改めてのG1チャレンジ。クイーンS時と同様の後方待機策がハマれば面白いが、距離延長に一抹の不安も。
        14 マルカフローリアン 吉田豊
中1週のローテーションで畳み掛け、力づくでもぎとった出走権。とはいえ、戦績を見ると出走までで精一杯の感が。調教内容もここでは物足りない出来で……。
        15 レイナシンフォニー 石橋守
相手なりに走る堅実さは何とも不気味。トライアル4着で最低限の“挑戦資格”もあるが、このメンバーでも相手なりといけるのかどうか。
        16 グローリアスデイズ 岡部幸
3月の復帰からわずか3戦でクラシック戦線の伏兵に。スローペース好位待機からの末脚は、このレースでも武器になりそう。問題はやはり相手関係か。
        17 レディインブラック 北村宏
展開不向きとは言え、相手強化のメンバーに思い切りブタれた感の桜花賞10着。万全の仕上げ期しての直行ローテーに意気込み感じるが、どこまで巻き返せるか……。
        18 シルキーフレンド 菊沢徳

未勝利脱出直後にオークス出走とは、幸運と言うべきか可哀想と言うべきか……。ともかく無欲で良い着順を目指すしかあるまい。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 確固たる逃げ馬は不在。メイショウオスカルあたりがハナに行って、ウイングレットらあと数頭の先行馬を挟んでダンスインザムード。グローリアスデイズやアズマサンダースがこれをマークする役目だが、どこまで積極的にやれるか。ペースはスローか、遅めの平均ペース。
 後方待機組の有力馬、ヤマニンシュクルは10〜12番手、スイープトウショウはやはり最後方付近からのレースになるだろう。仮柵でコース内側の荒れ具合が緩和された府中コース、ペース次第ではまたも苦しい展開になるだろうが、差し馬は自分を信じて末脚に賭けるしかあるまい。

 ちなみに過去10年のデータを見ると、圧倒的に差し・追い込みが優勢で逃げ馬の連対は皆無。相当の実力馬か、展開利が無ければ先行馬は厳しそうだ。

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:ダンスインザムード》
 

 競馬に絶対は無いとはいえ、桜花賞のレース振りを見る限りでは「ダンスインザムード鉄板」としかコメントのしようが……。というわけで、単勝1.3倍の超一本被りながら、この馬に◎を。
 問題は相手探しだが、やはりチューリップ賞→桜花賞上位組のレヴェルが高く、再戦ムードが濃厚。そこへ桜花賞を大外枠で棒に振ったダイワエルシエーロや、休み明けでスイートピーSを完勝したウイングレットあたりがどこまで食い込んで来るか。
 ……まぁ、馬券的に面白いレースにはならなさそうなので、ギャンブルとしてはお遊び程度で楽しもう。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(23日未明時点)
単勝 100円 1.3
馬連 5-7 100円 6.1
  5-13 100円 12.9
  7-13 100円 68.1
  5-8 100円 7.4
  1-8 100円 9.2
  5-12 100円 37.4
馬単 5→7 100円 7.0
  5→13 100円 14.6
三連複 5-7-13 100円 23.4


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:ダンスインザムード》

 この春シーズンは、なかなか◎を打った軸馬が期待通りに来てくれないのですが、今回だけは大丈夫……だと、思います(笑)。どうせ信じるなら、ということで、思い切って▲を付けずに点数も絞って勝負してみます。こういう時に限ってタテ目があるので怖いんですけどね(苦笑)。
 フォーカスも至って普通の組み合わせになってしまって、何だかこんな所で発表するのも申し訳無いくらいなのですが、若干展開がスロー気味になるようなので、先行有利を意識してみました。
 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(23日未明時点)
単勝 100円 4.2
馬連 5-8 200円 7.4
  5-7 200円 6.1
  1-5 100円 9.2
  5-11 100円 21.4
  ── ── ──
  ── ── ──
馬単 5→8 100円 8.1
  5→7 100円 7.0
三連複 5-7-8 100円 10.1


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:ヤマニンアラバスタ》

 ……ホント、こういうガチガチのレースはカンベンしてもらいたいです(苦笑)。
 それでも穴馬を見つけないわけにはいかないですから、一生懸命探しましたよ〜。で、ヤマニンはヤマニンでもアラバスタの方に。この春で一番のデキの良さみたいですし、桜花賞は出遅れでお話になってませんから、巻き返せないかな…と。
 でも、単勝オッズがどの馬もとんでもないことになってますよね(笑)。こういう時って、オッズ表を眺めているだけで楽しくなるから良いですよね(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(23日未明時点)
単勝 100円 23.2
馬連 5-6 100円 12.4
  6-12 100円 346.7
  5-12 100円 37.4
  6-7 100円 51.0
  6-8 100円 89.3
  6-11 100円 223.1
馬単 6→5 100円 36.8
  6→12 100円 388.5
三連複 5-6-12 100円 186.2

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:ダンスインザムード》

 桜花賞のダンスインザムード、スゴかったですよね〜。ワタシも色々と昔の名レースのビデオを見せてもらったりしてますけど、それが目の前で……って感じでした。
 ……ですので、今日もダンスインザムードから。2着にならないことはあり得ないと思うので、あとは他の強そうな馬との組み合わせで当ててみたいと思います。いくらビギナーのワタシでも、ここまでしたら当たるんじゃないかと思うんですけどねー。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(23日未明時点)
単勝 100円 1.3
馬連 5-8 100円 7.4
  5-7 100円 6.1
  1-5 100円 9.2
  4-5 100円 24.7
  5-9 100円 17.6
  5-11 100円 21.4
馬単 5→8 100円 8.1
  5→7 100円 7.0
三連複 5-7-8 100円 10.1

 ……というわけで、何のヒネりも無い予想ばかりになってしまいましたが、文句はダンスインザムードに言ってあげてください(笑)。では、またレース後に。


優駿牝馬 成績

      1着 13 ダイワエルシエーロ
× ×   × 2着 スイープトウショウ
      3着 ヤマニンアラバスタ
4着 ダンスインザムード
5着 ヤマニンシュクル

単勝13 2140円/馬連1-13 10080円/馬単13-1 30430円/三連複1-6-13 63460円

 ※駒木ハヤトの“負け犬の遠吠え”(不的中)
 今日のレースはボクシング会場でラジオ中継をチェックしてたわけですが、ダイワエルシエーロが抜け出したと実況が叫んだ瞬間、思い切り的中を確信してしまいました(笑)。映像見えないと都合のいい想像しますな人間は。しかし、まさかあそこからダンスインザムードが伸びないとは……。
 まぁ、伏兵の先行押し切り勝ちがあるとは全く想定してなかったので、どっちにしろ「ダメだこりゃ」だよね。
 それにしても、上位3着までの馬番号、NHKマイルCと全く一緒なんだよね。馬券の出目が全部一緒という珍事。そういや10年くらい前に、桜花賞・皐月賞で連続して馬連1−7になって、その次のG1だった天皇賞・春の馬連1-7が何の脈絡も無くバカ売れした事あったけど、来週のダービーでもあるんだろうか、こんな事(笑)。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 
タテ目どころではなかったですね……。ちょっと見通しが甘過ぎました。
 こんな調子でダービーに突入して大丈夫なんでしょうか……。これは本気で予想のやり方を見直さなくてはいけないかも知れませんね。申し訳ありませんでした。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 あーもう、本当にチグハグで腹立ちますよね(苦笑)。
 ヤマニンアラバスタは頑張ってくれたんですけど、肝心の1着、2着が無印って、何やってるんでしょうわたしは。どうやたって当たらないじゃないですか(苦笑)。
 せっかく万馬券の結果を用意してくれているのに当たらないのって、悔しくて悔しくて……。まあ、万馬券の組み合わせって、とんでもないくらいあるのは知ってるんですけどね(笑)。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 最近、あまりにも予想が当たらないんで、ちょっと競馬見るのがイヤになって来つつあります(苦笑)。駒木博士に聞いたら「予想が全然当たらなくなるのは、初心者から普通の競馬ファンにステップアップしつつある証拠だよ」って言われたんですけど、そんなものなんでしょうか(笑)。

第7戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 7000
(1位)
0 7000
(1位)
栗藤珠美 2780
(2位)
0 2780
(2位)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(3位)
0 1440
(3位)

 (ポイント・順位の変動について)
 本命馬4着撃沈、伏兵の上位独占で的中者ゼロ。ダイワエルシエーロに▲を打っていた駒木にとっては、スイープトウショウの扱いも含めて悔いの大きく残る結果となってしまった。
 残り3戦、企画倒れムードの漂う中、大きな動きは果たしてあるのか──?

 


 

2004年度第17回講義
5月21日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(5月第4週・後半)

 うわ、
 

 ……ということで、駆け足気味に今週後半分のゼミを実施させて頂きます。明日は高校講師の仕事も半ドンでありますし、こちらも競馬学特論がありますし……。
 いやまぁ、巷の熱血サラリーマンの皆さんに比べたら、これでも時間には余裕ありまくりなんでしょうが、これまで「睡眠時間は2時間で上等。とりあえず翌日の仕事は気力でカバー!」…という感じだったのが、「すいません、寝させて……。6時間は寝ないと体はともかく心が折れそう……」という感じになってしまってまして、結果的に活動時間が1日辺り3〜4時間減っているという(苦笑)。

 自分も人の子だなあと、今更ながらにバカな自覚をしたりしております。至らない点ばかりで恐縮ですが、どうか何卒。


 「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ※今週は特記すべき公式アナウンス情報はありませんでした。 

 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
  「サンデー」:新連載第3回後追い1本/読み切り1本 

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年サンデー」2004年25号☆

 ◎新連載第3回『道士郎でござる』作画:西森博之)【第1回掲載時の評価:保留

 についての所見(第1回時点からの推移)
 絵柄がすっかり固まっているベテラン作家さんの作品ですし、第1回のレビューで述べた事以外には特にお話する事も無いですね。
 
 ストーリー・設定についての所見
 第3回になって、ようやく非常に漠然とながら話の方向性が固まって来ましたが、それにしてもここまでのストーリー内容の薄さは如何ともし難いところです。「間延びさせているのに間延び感を感じさせない」というかなりネガティブな演出力で致命的な欠点にはなっていませんが、さすがにこのペースで回を重ねていくと辛いような気がします。
 ただ、これは理詰めのテクニックなのだと思いますが、主人公の性格や次の行動を全く予測不可能なモノにし、兎にも角にも読み手の興味をそそるような展開にしているのは上手いと思いますね。とりあえず次回を読みたくなる状態が維持出来るならば、いずれ話を急展開させた時に人気アンケートへダイレクトに反映させる事が出来ますし。もっとも、どこかで話が盛り上がらなければダメなんですが……。

 あと、ちょっと注目しているのが、読み手に不快感を喚起するような不良ザコキャラを無数に出しておきながら、作品全体の不快感は存外高くないという点です。他の不良系ザコキャラが出て来る作品よりも展開が泥臭くないんですよね。
 これは、余りにも“ザコ臭”が強いので感情移入すらしたくなくなるのか、読み手が不快に感じる前にカタルシスを得られるようにしているのか、ともかくこれは興味深いポイントですね。

 ともかく、もうちょっとストーリーが動いていかないと、その場凌ぎで読み手の興味は維持出来ても、大きなインパクトを与える事は出来ないのではないでしょうか。ともかく今後の展開に注目&期待ですね。

 現時点での評価
 本当はもうしばらく「保留」で様子を見たいんですが、『ごっちゃんです!!』みたいに数ヶ月引っ張るのもアレですから、暫定評価を下しておきます。
 とりあえずの評価はB+。確かな技術は感じられるのですが、それを持ってしてもシナリオの貧弱さ(若しくは過度のスロースタート)をフォロー出来ていないというジャッジです。勿論、しばらく様子を見た後に評価の変更も検討します。

 ◎読み切り『天国の本屋』作:松久淳&田中渉/画:桐幡歩

 作者略歴
 ※松久淳さん&田中渉さん
 松久さん1968年12月23日生まれの35歳で、『天国の本屋』シリーズ等の文章の執筆担当。他に松久さん単独の名義で小説を発表・出版している。
 田中さんは1969年3月20日生まれの35歳で、松久さんとのコンビでは原案と挿絵を担当。こちらも単独名義でイラストレーターとして活躍中。

 ※桐幡歩さん
 03年前期「小学館新人コミック大賞・少年部門」で入選受賞。受賞時22歳で、現在は23歳か。
 この時の受賞作・『魔法使いの卵』増刊「少年サンデー超」03年9月号に掲載されてデビュー。今回はそれ以来の新作発表となる。

 についての所見
 デビュー2作目、プロとしてのキャリア半年では仕方ない面もありますが、全体的に見てまだ荒削りというか、絵柄が洗練されていない印象がありますね。一本一本の線に、もう少し自信が篭って来ると印象も違ったものになるのではないかと思いますが……。
 あと、マンガ独特の表現技法も開発途上といったところでしょうか。全般的に絵がイラスト的で、マンガになり切れていない感じがしました。嫌味の無い絵柄ではありますので、その長所を生かせるような技術習得に励んでもらいたいところですね。

 ストーリー・設定についての所見
 原作小説未読のため、マンガ化にあたって原作の内容にどれくらい手を入れたのかが判らないのですが、第一印象からすると、「マンガにしては平凡な設定の平凡なお話になってしまったなぁ……」といったところでしょうか。
 同じ題材の同じストーリーでも、媒体ごとの相性みたいなものがあったりしますからね。今回の作品、文学系の小説としては奇抜なアイディアだったかも知れませんが、マンガとしては逆にありがちな設定なんじゃないかと思います。

 また、ページ数の制約と桐幡さんの演出力不足のためでしょう、今回のストーリーは展開が各所で唐突だったような気がします。行き当たりばったりで幾つかの出来事が起こっている内に、気が付いたら御都合主義的にハッピーエンドになっていた…といった感じがしました。
 これでもう少し読み手にシナリオ上の要所を印象付けられるような技術が身に付いたなら、御都合主義なりに読後感の良さが目立つ佳作になったのではないかと思うのですが……。
 
 今回の評価
 典型的な「悪くはないんだけどなぁ……」という作品じゃないでしょうか。これでも甘めかも知れませんが評価Bとしておきます。正直、小説のマンガ化という難しい仕事を、デビュー2作目の新人さんに任せたのは時期尚早の感が否めませんでした。残念です。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「人生で1つだけリセットするなら、どんなことですか」。
 さすがは“勝ち組”のメジャー誌連載作家さんだけあって、これまでの人生にとりあえずは満足してらっしゃるご様子。羨ましいなあ(笑)。
 駒木は……ここでマジな答えをすると皆さんが引いてしまうと思うんで、そういう回答は控えます(笑)。……そうですね、勢い余ってナリタブライアン−マヤノトップガンの1点でズドンと勝負してしまった96年の天皇賞(春)、これをリセットしたいですね。

 ……では、連載作品に少しずつコメント。

 いつの間にか『焼きたて! ジャぱん』よりも正統派の料理マンガっぽくなってしまってる『結界師』。やっぱり地味なんですが、それでも奥の深い作品ではありますよね。

 『ワイルドライフ』については「もう敢えて何も申しますまい」なのですが、中央競馬の新馬戦から3連勝する馬って、実はその時点で凄いんですよね。十分エリートなんですよ。
 まったくもって、どういった取材をやってその設定にしたのか、ちょっと伺ってみたいと(笑)。

 ここに来て動向が気になるのが『美鳥の日々』。なんだか重要サブキャラがどんどん“卒業”しつつあるんですよね。まぁ元々展開がイレギュラーな作品ではありますが、ひょっとして、アニメ終了と共に円満終了? ……なんて憶測をしてしまいたくなりますよね。

 で、最後に『かってに改蔵』
 ……すいません、駒木も4月から随分とかわいそぶってしまってます(苦笑)。今後は気をつけます。


 ──というわけで、自分の態度も省みつつ、今週のゼミを終わります。来週も木曜以降の講義実施になってしまうかな…と。ご了承下さい。

 


 

2004年度第16回講義
5月20日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(5月第4週・前半)

 とりあえず今週前半分、「週刊少年ジャンプ」25号についての「現代マンガ時評」をお送りします。

 ……いきなりですが、ここで前フリ部分を利用して、2ch界隈等で囁かれている「ジャンプ」打ち切りサバイバルレース・未確認ホット情報を。当講座のBBSでも次期打ち切りについての話がよく出ているので、改めて講義で紹介しておこうかなと。
 ただこのお話、これまでの実績からすると、かなりの信憑性はあるものの、あくまで未確認情報なので、信用するのもそれなりにして下さいね。

 で、2ch界隈では既に次号の掲載順情報が流れていたりするわけですが、それによると動向が注目されていた『武装錬金』3週連続で掲載順が中堅クラスで、いよいよ安全圏に抜けた格好です(3週連続中堅ランクの直後に「不人気のため打ち切り」というケースは皆無に近い)。土俵際の魔術師ぶりは今期も健在ですね。
 一方の巻末は、今期の終了有力候補とされている『BLACK CAT』『少年守護神』の両作品が。いよいよ点灯している信号の黄色に赤みがかかってきたかなぁといった感じです。
 注目の3番手争いは『未確認少年ゲドー』『スピンちゃん』の新連載作品によるマッチレースの様相。ただ、『H×H』一時休載というアクシデントがあって、すぐに3作品目の打ち切りがあるのかどうかも含めて、情勢は極めて混沌としていますね。

 ……とまぁこんなところでしょうか。それにしても今の「ジャンプ」の打ち切り争いは厳しいですなぁ。これだけメンツが揃っている時に、わざわざ3作品入れ替えをやらなくても良いと思ったりするんですが……。

 では、戯言はこれくらいにしておきまして、マジメにゼミを進めてゆきたいと思います。


 「週刊少年ジャンプ」関連の公式アナウンス情報

 ★新連載&読み切りに関する情報

 ◎「週刊少年ジャンプ」の次期新連載シリーズが次週発売の26号から開始となります。

新連載シリーズ・今回のラインナップ

 ◎第1弾・26号(次週発売)より新連載
 …『家庭教師ヒットマンREBORN』(作画:天野明)
 ◎第2弾・27号より新連載
 …『D.Gray-man』(作画:星野桂)
 ◎第3弾・28号より新連載
 …『地上最速青春卓球青年 ぷーやん』(作画:霧木凡ケン)

 今期も“標準モード”の3作品。全員が初の週刊連載枠獲得ですが、「ヤングマガジン」からの移籍組あり、前作の読み切りで他作品からのトレースが指摘された人あり、デビュー13年目の“永遠の若手”ありと、見る人が見ればフレッシュさよりも“濃さ”を感じさせるようなラインナップになりましたね(笑)。

 ……というわけで、次週から『家庭教師ヒットマンREBORN』(作画:天野明)がスタートします。
 天野さんは先述の通り、01〜02年にかけて「ヤングマガジン」の本誌や別冊で短期連載の経験があります。現「ジャンプ」連載陣では『いちご100%』の河下水希さんが他誌からの移籍組ですが、生え抜きの新人で誌面を構成するのが創刊以来の原則である「ジャンプ」にとって、これはやはり異例の経歴になるでしょうね。
 ただ、天野さんはそんな過去の経歴を捨てて、一新人として月例賞最終候補から「赤マル」を経てここまで辿り着きました。これは大相撲で言うところの大学相撲出身で前相撲からデビューしたようなもので、ここまで来るまでには並大抵ではない苦労もあったと思います。今回の作品、プロトタイプとなった読み切りのレビューでは、「現時点の完成度は低いものの、連載で大化けする可能性も有り」…とした駒木にしても、これは楽しみな新連載です。勿論、次週でレビューをお送りします。

 ★その他公式アナウンス情報

 ◎最近また休載が目立っていた『HUNTER×HUNTER』ですが、今週号(25号)に30号まで休載する旨の告知がありました。
 ハンター試験編の終盤からストーリーの要所要所で“長考”を挟む事があった冨樫さんですが、ここでまたも作戦タイム突入となりました。巷の反応は色々ですが、駒木としては「せめて連載再開後はいい話を読ませて下さい」といったところでしょうか。

 

 ※今週前半分のレビュー&チェックポイント
 ●今週前半分のレビュー対象作…1本
 「ジャンプ」:読み切り1本

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年25号☆

 ◎読み切り『賈允作:内水融

 ●作者略歴
 正確な生年月日データは散逸して不明。
 00年5月期「天下一漫画賞」にて審査員(ほったゆみ)特別賞を受賞して“新人予備軍”入り後、「赤マルジャンプ」01年冬号にて『POT MAN』でデビュー
 その後、にわのまことさんのスタジオでアシスタント修行を積みつつ作家活動も継続し、「赤マル」01年冬号、03年春号にて読み切りを発表
 本誌初登場はいきなりの週刊連載で、03年41号から連載開始となった『戦国乱波伝サソリ』(03年52号まで、1クール12回打ち切り)。今回は連載終了明けの復帰作となる。

 についての所見
 
デビュー当初は随分と絵に問題を抱えた作家さんだったと聞きますが、今回の作品を拝見する限りではそのような過去の痕跡を窺わせる余地すら無いですね。『サソリ』の頃よりも更に画風が洗練されて来たのではないでしょうか。特にヒロインの造型が良いですね。
 演出面でも研究の末に導き出した理詰めのテクニックがあちこちに見受けられ、内水さんが努力を積み重ねて来たという過程が感じ取れます。今や絵は内水さんの大きな武器になった感がありますね。
 敢えて注文をつけるとすれば、人物の表情のバリエーションをもう少しつけて欲しい…といったところでしょうか。人物の表情というのは一種の記号ですから、ある程度のパターン化は仕方ないですが、そのパターンをもう少し増やせば更に良くなると思います。

 ストーリー&設定についての所見
 『戦国乱波伝サソリ』の失敗に懲りたのでしょうか、前々作・『詭道の人』のような、内水さんお得意の路線──古代中国(のような国)を舞台に、ミステリ風味を織り交ぜた“策略・トリック系”シナリオ──でリベンジ…という事になりましたね。そして率直に申し上げて、この試みは成功だったと思います。やはり“直球勝負”よりも変化球で攻めた方が持ち味が活きる作家さんだと思います。

 特に評価したいポイントは、謎解きとエンターテインメントのバランスが上手く取れているところですね。
 ストーリーの中に謎解き要素を盛り込むと、当然の事ながら読者に提示できる情報に制限が出来、その分だけエンターテインメントに徹する事ができなくなってしまいます。しかし、この作品はストーリーの中軸から謎解きを外し、シナリオ上の強力なスパイスとして作用させる事に成功。その結果、エンターテインメント要素の質を落とさないまま、謎解き要素を入れる事が出来たのではないかと思います。
 策略のアイディアそのものはやや平凡でしたが、見せ方を工夫していたので手垢のついた感じは余りしませんでしたね。盗賊団側が策略に引っ掛からざるを得ない状況を作り上げたのは上手かったと思います。

 また、ストーリーの展開も無理を生じさせないように配慮した様子が窺え、好感が持てました。やや盗賊団の能力設定が軽過ぎた感もありますが、ページ数やエンターテインメント要素との兼ね合いを考えると、これくらいでも仕方ないかなぁとも思います。策略合戦になってしまうと、余計中途半端な話になってしまったでしょうし。
 それよりも、主人公が危険を察知して対処する間もなくの敵襲、一時撤退後からほとんど間を置かない反転攻勢(ネット界隈では「盗賊なんだから、女は誘拐即レイプだろう」なんて主張も見受けられますが、それはそれでちょっと解釈に悪意が……^^;;)など、出来るだけストーリーからヌルい展開を排しようという意図などに意識の高さが窺えます。

 セリフ回し等の演出面も良いですね。単調になりがちなセリフの遣り取りを、上手く場面転換を織り交ぜて緊張感を維持させており、絵と同様に研究・努力の跡が窺えて良い感じです。

 一方、問題点となるのは主人公の設定でしょうか。キャラクターが『封神演義』の太公望に似ている・・・というのはさておき(笑)、やたらに“ご陽気”で、昼行灯的な性格が少々とってつけたような感じになってしまったかも知れません。
 また、主人公の行動──自分の理想のために、目的はどうあれアッサリと国を捨てた──が果たして多くの読み手を納得させる事が出来るかどうかも、やや疑問が残ります。
 ただ、この辺は読み切りゆえの消化不良といったところで、これを連載化した場合は、後付け設定で主人公の性格形成の過程を描写したり、主人公の行動が果たして本当に正しいのかどうかの哲学論争を展開するなどして、逆に話に深みを持たせる事が出来るかも知れません。(この種の哲学論争を真正面から展開して大成功を収めた作品が、かの『Fate/staynight』です)
 勿論、今回は読み切り作品としての評価付けになりますので、指摘した点は減点対象になりますが、ここを“災い転じて福と為す”…と出来るのならば、この作品を敢えて連載作品として読んでみたい気もしますね。もっとも、「週刊少年ジャンプ」の作品に向いているかどうかは別問題になりますが……。

 今回の評価
 先週の『PMG-0』同様、かなり微妙な判断を要求されてしまいましたが、今回も技術点重視で採点し、ギリギリA−とさせてもらいます。好き嫌いで言えばかなり意見が分かれそうな作品ですから、「ちょっと待ってくれ」という意見もおありかと思いますが……。
 絵にしろ、ストーリーにしろ、演出にしろ、キチンと理詰めの技術で高水準の表現が出来ているのが、当ゼミ的にはポイントの高いところになるんですよね。余りにも穿たない見方をしていると、かえって穿った見方になってしまうという典型例でしょうか(笑)。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 まずはいつも通り巻末コメントから少々。
 「電動歯ブラシにハマっている」という久保帯人さん、ハマるのは結構ですが、あんまり強い振動で磨き過ぎるとマジで歯を根本から痛めてしまいますので注意した方が良いですよ、と申し上げておきます。
 口内炎3箇所同時発生で弱っている空知英秋さん、ちょっと沁みますが、リステリンでうがいをすると、口の中が消毒・殺菌されるせいか治りが早いようですよ、とこちらも申し上げておきます。……昨年歯医者に通ってから、やたらと口内のケアに詳しくなった駒木です(笑)。

 さて、連載作品について少しずつコメントを。

 まず巻頭カラーで人気投票結果発表の『ボボボーボ・ボーボボ』。意外と……と言っては失礼ですが、この作品って、主人公の票が伸び悩んで主要脇役がトップを占める…という、超人気作パターンの投票結果なんですね。しかし首領パッチ、この大差は凄いな……。

 1週限りのカジノ編となった『アイシールド21』。いわゆるインターミッション的なエピソードだったんですが、読んでて「今回の話、結構奥が深いな」と。何と言うか、この作品全体の方向性が圧縮されたような構成だったんですよね。
 前提の設定も、主人公たちの行動内容もトンデモなのに、ディティールだけがやたらと細かくてリアルという。この作品の“トンデモ・リアリズム”は、どうやらこの辺りに根源がありそうな気がします。
 作品中のギャンブル描写については、21歳未満の主人公たちが堂々とプレイしている事を除けば、ほぼパーフェクトです。クラップスのルールやブラックジャックのカウンティングの解説がやや大雑把でしたが、特に間違った事は言ってません。むしろクラップスで客側が集団でバカ騒ぎしている所なんてリアルそのものですし、ちゃんと取材した成果が出ているように思えます。最終的に勝ちを収めた種目が期待値100%越え可能なブラックジャックで、しかもヒル魔がカウンティングの名手なんてのは渋くて良いですね。
 ちなみに実際のカウンティングは、場に出た全てのカードを覚えるのではなく、エースからキングまでの13種類のカードを3つないし4つのグループに分類し、そのグループごとの枚数を差し引きしてプレイヤー側に有利な局面を探り出して、そこでドカンと大勝負する…という作戦です。
 カジノ側もカウンティング対策には結構力を入れていて、カードが偏る前の段階で新しいデッキを組み直したり、明らかにカウンティングをしている客(ヒル魔並に頑張っていても、突然賭け金をドカンと上げたりすると、一発で怪しまれます)にはお引取り願ったりするわけですが、まぁそれを言ったらいつまで経ってもカジノで2000万儲けるのは無理ですから仕方ないですね(笑)。

 そして『DEATH NOTE』は、いよいよ話が社会全体に波及。ここに来て風呂敷が一気に広がって来ていますが、果たしてこの収拾難易度の高い場面でどんな展開を見せてくれるか、今後に注目ですね。

 『無敵鉄姫スピンちゃん』エロビデオの森、この報われない努力が素晴らしい!(笑)。よくぞここまでネタをひり出したもんだと心底感心しました。ちなみに個人的なヒットは『自慰帝王』。何の事と思ったら、『GTO』なんですよね(笑)。他誌の作品挙げて大丈夫? …などと訊きたくなってしまいます。

 ……というわけで、前半分を何とかお送り出来ました。出来れば明日、「サンデー」の内容を採り上げた後半分をお送りしたいと思います。体力と気力が保てればの話ですが……。

 


 

2004年度第15回講義
5月14日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(5月第3週・合同)

 またしても遅くなってしまいましたが、今週分の「現代マンガ時評」をお送りします。さすがに月曜発売の雑誌のレビューを木曜や金曜の夜中にやるというのはマズいと自分でも判ってはいるのですが……。
 兎にも角にも、心身ともにイッパイイッパイの状況ですので、本当に申し訳無いんですが、今しばらくのご辛抱を。


 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報

 ★新人賞の結果に関する情報

第12回ジャンプ十二傑新人漫画賞(04年3月期)

 入選=該当作無し
 準入選&十二傑賞=1編
(=本誌か増刊に掲載決定)
 ・『魔人探偵脳噛ネウロ』
  松井優征(23歳・埼玉)
 《講評:読者の意表を突く展開、魔人のキャラクター、魔人と少女の掛け合いの面白さなど、強烈な独自性を感じさせる作品。演出にも光るものが。画力は今後の向上に期待》
 佳作=1編
(=増刊に掲載決定)
 ・『鬼より申す!』
  原野洋二郎(24歳・神奈川)
 
《講評:画力・演出力とも高いレベルにある。話もまとまってはいるが、一方で尻すぼみな印象もあるのが残念。桃太郎がモチーフの作品だが、次回はオリジナルテーマの作品を》
 審査員
(河下水希)特別賞=1編
  ・『ANIDRO』
   普津澤画乃新(18歳・秋田)
 最終候補(選外佳作)=7編

  ・『修羅隠世絵巻』
   佐藤真由(20歳・埼玉)
  ・『Artifitial Life』
   西嶋賢一(23歳・埼玉)
  ・『AKAZUKINかりん』
   菅原たけし(30歳・宮城)
  ・『スカイハンド』
   成瀬葵(24歳・東京)
  ・『From Dusk Till Dragon』
   生樹誉也(23歳・埼玉)
  ・『アニマリスト!!』
   小笠原崇志(25歳・静岡)
  ・『シューティングムーン』
   夕火悠(22歳・愛媛)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)
 ◎準入選&十二傑賞の松井優征さん…03年8月期「十二傑」で最終候補。
 ◎審査員特別賞の普津澤画乃新さん…00年9月期「天下一」で最終候補、01年7月期「天下一」で編集部特別賞、03年5月期「十二傑」で最終候補
 ◎最終候補の佐藤真由さん…03年12月期「十二傑」でも最終候補
 ◎最終候補の西嶋賢一さん…03年10月期「十二傑」でも最終候補
 ◎最終候補の菅原たけしさん…03年10月期「十二傑」に投稿歴あり。
 ◎最終候補の成瀬葵さん…03年8月期「十二傑」最終候補、03年1月期「天下一」に投稿歴あり、本誌の懸賞当選者発表ページのカット描き経験のある
成瀬奏さんと同一人物?
 ◎最終候補の小笠原崇志さん…03年7月期「十二傑」に投稿歴あり。

 ……今月はやたらと最終候補作が多いと思っていたら、過去の経歴が出るわ出るわ(笑)。あと、佳作の原野洋二郎さんについては、アニメーターで同姓同名の人がいらっしゃるようです。
 それにしても、「十二傑」にリニューアル後、初の準入選が出ましたね。評点でもキャラクターとオリジナリティが◎で、ストーリーと演出が○。何だか当ゼミ向けの作品のような気がするので楽しみではあります。多分本誌掲載になるでしょうし。……しかし、それにしても最近の「ジャンプ」はオカルト路線を重視してるんでしょうか、「青マル」の『みえるひと』といい、「赤マル」の『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』といい、“そっち方面”の作品が目立ちますよね。
 

 ★新連載&読み切りに関する情報
 ◎「週刊少年ジャンプ」次号(25号)には、読み切り『賈允作:内水融)が掲載されます。
 内水さんは03年52号まで『戦国乱波伝サソリ』を連載していたばかりで、先日読み切りを発表した長谷川尚代&藤野耕平コンビに続く早期の戦線復帰になりますね。
 今回は、昨年の「赤マル」で発表した『詭道の人』のような中国古代史モノになりそうですね。『サソリ』の際は消化不良感の否めない1クール打ち切りだっただけに、本来の持ち味(策略、トリックの構築能力)を活かした作品を期待したいところです。

 ◎「週刊少年サンデー」次号(25号)には、読み切り『天国の本屋』作:松久淳&田中渉/画:桐幡歩)が掲載されます。
 この作品は同名の小説シリーズのコミック化という事ですが、『天国の本屋』はシリーズ最新第3作が小学館からの出版で、しかも今年6月に映画公開を控えており大人の事情の匂いが否が応でも漂って来ます(笑)。まぁ一種の企画モノと考えた方が良いんでしょうね。
 ちょっと調べたところ、この作品は、天国にある不思議な書店“ヘブンズ・ブックサービス”を舞台にした少女と少年の純愛小説との事。シリーズ第1作はマイナー出版社からの発行のために当初は全く注目されず、絶版・廃棄処分寸前になっていたそうですが、最近注目されつつある“書店発”の地道なアピールによってシリーズ3作合わせて50万部のベストセラーになったとか。
 駒木はこの手の“小型で薄いハードカバーの恋愛小説本”というのはコストパフォーマンスの観点から敬遠しがちで(笑)、作品の存在自体も知らなかった位なのですが、ここは恥を忍びつつも全くなニュートラルな視点からレビューをしてみようと思っています。
 なお、この作品のコミック化を担当する桐幡歩さんは、03年前期の「小学館新人コミック大賞・少年部門」の入選受賞者。その受賞作『魔法使いの卵』増刊03年9月号にてデビューを果たしている新人作家さんです。


 ※今週のレビュー&チェックポイント
 ●今週のレビュー対象作…2本
 「ジャンプ」:読み切り2本
 「サンデー」:レビュー対象作なし。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年24号☆

 ◎読み切り『PMG-0』作画:遠藤達哉

 ●作者略歴
 正確な生年月日データは散逸して不明だが、99年3月高校卒とのことで、今年度(〜05年3月)24歳になるはず。
 99年度「ストーリーキング」マンガ部門で準キングを受賞し、その受賞作『西部遊戯』が「赤マル」00年春号に掲載され、デビュー。
 週刊本誌初進出は00年51号『月華美刃』。その後、01年21・22合併号にも『WITCH CRAZE』を発表したが、ここでキャリアは突如中断。今回が3年ぶりの復帰作となる。
 

 についての所見
 
遠藤さんの絵は以前から洗練されたタッチで、新人離れした実力の持ち主という印象がありましたが、今回改めて拝見してみても、印象は変わりませんでした。人物作画に留まらず、背景やディフォルメ、動的表現等も合格点以上総合的な技量は既に連載作家クラスと申し上げて良いでしょう。
 今回などは、演出の一手段として敢えてラフな絵柄を織り交ぜるなど、“小技”も利かせており、芸の細かさも窺えます。この辺はやり過ぎると嫌味になりますが、今回は許容範囲ではないかと思います。


 ストーリー&設定についての所見
 まず、演出全般とセリフ回しなどの言語センス、これは素晴らしいの一言に尽きます。その凄さたるや、逆に演出過多を心配しなくてはならない程で、こちらも「ジャンプ」現連載陣に混じっても十二分に渡り合えるだけの実力が既に備わっているのではないでしょうか。
 この演出とセリフ回しは、展開のヤマ場を数多く作り上げる必要の有る週刊連載では非常に重要なファクターです。そういう意味において、遠藤さんは「ジャンプ」の若手作家さんの中でも最も連載向きの人材ではないかと思ったりもします。

 ただ、今回の作品は少なからず課題も残されていて、これが非常に惜しい所です。

 まずシナリオ。55ページでも何とかギリギリ収まったというような凄いボリュームで、それでいてダレる場面無しのハイテンション、しかもアクションシーン満載というモノでした。
 こういう中身の濃いシナリオを作り上げられるだけで、それは凄い事でもあるのですが、さすがにここまでハイスパート一辺倒だと、やや一本調子感も出てしまったんじゃないかな、とも思います。出来ればもう少し展開に緩急をつけ、「動→静→動」のメリハリを付けた方が良かったのではないでしょうか。クライマックスの“動”の部分は、その直前のシーンが“静”だと良い感じにギャップが出て、“ハラハラドキドキ感”がもっと増すはずですので。

 次に設定について。
 まず、徹底的に設定の“説明”を排し、その代わりにストーリー展開の上で必要最小限の内容だけを“描写”、もしくは登場人物による必然性を持たせた“語り”で表現する…という方向性は、基本的には間違っていないと思います。ただ、完全に“説明”を排するというのは、長期連載では非常に有効なテクニックになるのですが、一話完結の読み切りでそれをやると、読み手が情報不足に陥って混乱を助長する結果になってしまいます。説明の無い設定がポンポン飛び出しても、「これはこの世界観では常識なんだな」と割り切って読む事が出来れば不自由しないのですが、それは読み手に好意を強いるという事ですから、やはり褒められた事ではありませんね。
 そして、主人公の設定についても一言。遠藤達哉作品では題材・ストーリーに関わらず主人公は勝ち気でバイオレンスなヒロインという事になっているわけですが、今回の場合はシナリオ(特に主人公の過去やバックボーン)と主人公の性格が合っておらず、しかも先述の設定の提示不足も相まって、とってつけた感じが出てしまったのは非常に残念でした。ヒロイン像が固まっているのなら、やはりそれに見合った過去やバックボーンを作ってあげるのが筋ではないでしょうか。

 今回の評価
 絵と演出・セリフ回しは即連載級、ただしシナリオ・設定には難もアリ…という事で非常に悩ましいジャッジを強いられてしまいました(笑)。
 ただ、問題点があるといっても、今回の場合は高い技術の使い方を誤った…という感じで決して実力が無い故のミスというわけではありません。その辺は凡百の若手によるB級作品と区別して扱わなければならないでしょう。
 かなり迷いましたが、今回は「甘過ぎる」とのご批判を覚悟しつつも“技術点”を最大限に評価して、A−を出したいと思います。

 先程も申し上げましたが、遠藤さんは週刊連載向きの技術を持った作家さんですので、未熟な面には目を瞑って、週刊連載に抜擢するのも面白いのではないかと思います。ただし、その際には今以上のシナリオや設定の練りこみが必要になって来ますけどね。


 ◎読み切り『兄弟仁義』作画:大石浩二

 ●作者略歴
 当ゼミ開講以来のデータでは、新人賞の受賞歴、過去の週刊本誌&増刊掲載共に無く、経歴は全く不明。今回がデビュー作と思われる。

 についての所見
 
今回の9ページ作品だけで、実力の程を正確に把握するのは難しいですが……。
 まず、人物作画は多少未熟な面も見受けられますが、ギャグ作品としては許容範囲でしょう。どことなく“ヘタウマ”っぽい雰囲気もありますし、4コマやショートギャグで活動していくのなら、これも一つの味でしょう。
 ただ、背景の描き込みやトーンの使い方などの部分は正直厳しいかなと。特にトーンは全てベタ貼り状態で、これはとてもプロの仕事ではありません。
 総合すると、絵は及第点にやや足らず、減点の対象…といったところでしょうか。

 ギャグについての所見
 今回のネタを見る限りでは、かなり意識的にシュールなギャグを狙っていっているようですね。オチの時点で敢えて落とさず、読み手に笑い所を考えさせるような渋い展開で攻めているネタもあり、なかなかのセンスを感じさせます。
 ただ、未だコンスタントに読み手を笑わせるためのメカニズムというか、自分の“勝ちパターン”を探し出せていないようで、ネタのクオリティや方向性にかなりのバラツキがあったのは残念でした。まだセンスに実力が追いついていない、といったところでしょうか。

 今回の評価
 ギャグのセンスはあるものの、現時点での絵を含めた総合力はまだ“要修行”のレヴェル…ということで、今回はB−としておきましょう。ただ、これでシュールギャグのパターンを掴んでしまえば、物凄い“ホームランバッター”になる可能性も秘めていると思われ、その意味ではもうしばらく後に是非新作を拝見したいところでもありますね。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントでは、岸本斉史さんと和月伸宏さんが故・横山光輝さんへ追悼のコメント。駒木からも改めてご冥福をお祈りさせて頂きます。どんな優れた歴史教育者よりも偉大な方だったと思います。個人的には『バビル2世』のストイックなストーリー展開が非常に印象的でした。
 ……さて、他の方のコメントですが、朝夕のジョギングを始めたという村田雄介さん、それにしても週刊作家らしくないヘルシーさですね(笑)。というか、朝夕ジョギング出来るぐらいスケジュールに余裕があるという方が驚きです。
 一方、毎日のように悪夢にうなされて寝起きが悪いのが東直輝さん。やっぱり夢の内容は担当編集からの「残念だけど、今日の編集会議で決まったよ……」という報告を受ける夢なのでしょうか。

 さて、作品についても少々。
 いつの間にか連載3周年の『Mr.FULLSWING』。そうですか、「短期打ち切りには惜しい作品だなぁ。でも終わりそう」と思っていたのがもう3年前になりますか(笑)。
 まぁ駒木も含めて色々と批判される事も多いこの作品ですが、実は大まかなストーリーそのものは、スポーツ系マンガの王道そのものなんですよね。そういう意味では、エンタメとしての基本線は押さえているとも言えるのですが、基本線さえ押さえておけば後はどうでもいいって事も無いわけで(苦笑)。
 今のペースで言えば向こう5年分くらいのストーリー上の伏線が既に張られているのですが、果たしてどこまで状況が許してくれるのでしょうか……。

 『アイシールド21』「死の行進」編が終了。いわゆる“特訓編”としては、内容のボリュームや展開のテンポなど諸々含めてなかなかの好バランスだったんではないかと。次回からはカジノ編ですが、現実のアメリカの法律では21歳未満のカジノ立ち入りは不可となっています、念のため。
 まぁこのマンガの世界観だと、脅迫手帳1冊で日本の国連常任理事国入りも出来そうな感じですから(笑)、これくらいであれこれ言うのは野暮ってもんでしょう。……ただ個人的には、こういう「所詮マンガだから」というエクスキューズを確信犯的に利用しちゃうのは、あんまり感心出来ないんですけどね。言ってみれば、法律のグレーゾーンみたいなもんですから。

 あと今週号では、奇しくも『NARUTO』『武装錬金』『BLACK CAT』の3作品で“敵キャラ一気に殲滅”というストーリーでした。誰がどうとは言いませんが、3者の(というか主に2者と1者の)実力差が、それこそカズキとホムンクルス蝶・成体の力量差くらいハッキリしていたなぁと思いました(笑)。

☆「週刊少年サンデー」2004年24号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「ひとつだけ超能力がもらえるなら、何を選びますか」。
 作家さんの回答では結構答えが割れたのですが、「サンデー」が誇るムッツリスケベ・河合克敏さんを筆頭に、透視能力が3票でトップとなりました(笑)。しかし、皆さんいい年して……(苦笑)。
 駒木は色々便利な予知能力……と言いたいところですが、未来を先に知ってしまうというのはデメリットも大きいので、予知はちょっと遠慮したいなと。馬券が100%当たるのは、ある意味魅力なんですけどね。
 あ、「物凄いスピードで素晴らしい文章が書ける能力」なんか良いですね。うん、欲しいですこの能力(笑)。

 さて、作品についてもコメントを少々。
 今週は『MÄR(メル)』スカスカ感溢れるバトルシーンがネガティブな意味で話題沸騰のネット界隈でしたが、個人的に一番頭を痛めたのは『ワイルドライフ』でした。何と言うか、『風のシルフィード』のデキの悪い時を思い出すというか薄っぺらい取材内容だけを頼りに、付け焼刃の知識でネームを書き殴っているのが丸判りで不快感を禁じ得ませんでした。
 少し前の牛肉ネタもそうですが、最近のこの作品は取材内容を何の工夫も無くマンガの形で紹介して一丁上がり…みたいなパターンが多いんですよね。スーパーで買った惣菜を客に出す三流居酒屋じゃあるまいし、貴方にプロとしての矜持は無いのですか? …と質問したくなります。まぁ担当が担当(あの冠茂編集)ですから、どこまで作家さんにイニシアティブがあるのか判りかねる部分もあるのですが……。

 苦言ばっかりで終わらせるのもアレなので、最後に今回も見事な後付けが炸裂した『からくりサーカス』で口直しを。
 「本当の天才とは生まれながらに備わった、優れた才能のことではない。努力し続ける才能のことを言うのだ」……という“天才の定義”ですが、各分野の“天才”の人たちの話を聞くと、まさにこの定義に当てはまる人たちばかりなんですよね。最も素質に恵まれた人が他の誰よりも真剣に仕事に取り組んでいるんですから、そりゃあ業界の第一人者になるわなぁ…といったところです。
 そういう人たちの話を聞くにつけ、自分の凡人ぶりを思い知らされますね、いやホントに。もっともっと精進しないとイカンです。

 ……と、自己反省したところで今週はこれまで。来週も体調と相談しながらの講義実施となりますが、どうか何卒。

 


 

2004年第14回講義
5月11日(火) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(4)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回第3回

 世間様よりも長かった駒木のGWも今日で終了。これだけ休んでおいて言うのもバチ当たりですが、非常に憂鬱であります(苦笑)。どうあがいても解決不能な問題が横たわっていると、仕事って本当にキツいですよね。
 まぁそういうわけで、結局積み残しの講義シリーズはほとんど消化出来ず終いでした。講義そのものは結構やってた感覚があるんですが、マンガ時評と競馬ばかり……。
 楽しみにしてらっしゃった方、申し訳無いです。スキを見て時間を確保したいのですが、果たしてどうなる事やら……。最悪、夏休み(高校の期末考査終わりで突入なので7月中旬〜)までズレ込む事を覚悟しておいて下さい。

 ──それでは、今日のレポートは旅行初日(3月22日)の午前11時過ぎ、高知競馬場のスタンド内・前売馬券販売窓口前から再開します。例によって文中は常体でお送りします。


 ハルウララの単勝馬券を求めて開門直後から前売り発売窓口に並んだものの、発売開始から1時間経っても順番が回ってこない。何故だ?

 ……ここで「坊やだからさ」という答えが頭を掠める貴方は年がバレますよという事はさておき(笑)、しばし予想の手を止めて前の様子を窺ってみた。すると、すぐに謎は解けた。

 皆さんもご存知のように、ハルウララの単勝馬券は、ギャンブル用の勝馬投票券としてではなく、一種のグッズとして認識されている。だから、1000円分の馬券を買うとしても、額面1000円の馬券を1枚ではなくて、1枚100円の単勝馬券を10枚購入するという形になる。
 実はこの馬券の買い方、現在のユニット馬券が導入される以前──昭和50年代前半までのスタイル(買い目1つごとに窓口に並び、購入金額分だけの枚数の馬券を買っていく)とよく似ているのだが、このやり方が非常に効率が悪いのは、競馬シロウトの方でも少し考えればお分かりになるだろう。同じ金額の馬券を買うのに、10枚発行するのを待つのと1枚発行するのを待つのとでは、単純に考えても時間は1/10だ実際、「もっと効率的に馬券が買えんのか」という長年のニーズに答える形で導入されたのがユニット馬券なのだ。
 しかもこのユニット馬券、1枚発行までに時間がかかる。機械でマークシートを読み込んで、そのデータを競馬場内のメインコンピューターに送信し、更にその場で1枚ずつ印刷して発行する…という手順を踏むので、どうしても時間を要する事になるのだ。特に高知競馬場の場合、約10年前の旧型・マークシート導入初期の機械が未だに使われているために余計時間がかかる。1枚発行するのに要する時間、およそ4秒
 何だ、たかが4秒で大袈裟な…と言うなかれ。今回の場合、特に希少価値のある馬券という事で、1人あたりの購入枚数がハンパじゃなかったのである。駒木はプレゼント用、頼まれた分含めて15枚ほど購入したのだが、これでも随分と少ない方だった。20、30は当たり前50枚以上という人も結構いて、酷いのになると100とか200とか、アンタそれは「買う」というより「仕入れる」じゃないのか、と言いたくなる枚数をオーダーする猛者までいる始末である。そりゃあ、いつまでたっても順番が回って来ないはずである。

 ……ここまでの話でピンと来ない人のため、実際に計算式を立てて説明する事にする。
 1枚あたりの馬券発行に要する時間は4秒、そして1人平均の購入枚数を30枚とする(実際の所はよく判らないが、駒木が実際に確認した限りはこれくらい)。そして馬券発行以外の手続き(マークシート、馬券の受け渡し、代金の遣り取り等)にかかる時間として1人あたり15秒を加算しよう。
 ……以上の事を踏まえて式を立てるとこうなる↓ 

1人あたりの所要時間=4秒×30枚+15秒=135秒(2分15秒)

 1人あたり2分15秒ということは、10人で22分30秒20人で45分30人で1時間7分30秒になる。駒木の前に並んでいたのは20〜30人ほどだから、これだと多少の誤差を考えると辻褄が合う。
 しかし、たった30人の待ち客を消化するのに1時間。いやはや、とんでもない話だ。

 結局、あと3人で駒木の順番というところで1レースの締め切りを迎えたが、前後に並んでいた人の厚意により、直前にすぐ側の当回売馬券発売窓口(直前のレースの馬券のみを売る窓口。この場合は1レースの馬券)に駆け込んで事無きを得た。ハルウララ馬券を買うために並んでいる人が多過ぎて、当回売の窓口はガラガラだったのだ。
 言うまでもない話だが、行列の中モニターテレビで観戦した1レースの馬券は当然のように外れた。今回のように駆け込みで馬券を買って外す事を「飛び込み自殺」と言うのだが、まったく上手い事を言う人がいたものだ。「お馬で人生アウト」もそうだが、ネガティブなキャッチコピーを作らせたら競馬ファンの右に出る民族はいないだろう。

 ……というわけで、第1レース終了後間もなくして順番が回って来て、ようやく馬券購入を達成。この旅行最大の難問が午前中に解決して、とりあえずは目出度い。
 しかしこの馬券には「ハルウララ」という馬名が印刷されていない。今は大抵の競馬場では馬名入り(中には騎手名入りも)の馬券が購入できるようになっているのだが、先述の通り高知競馬は財政難により未だに旧型の機械を使っているので、馬券には馬のゼッケン番号しか印刷されないのだ。
 せっかくの馬券もこれでは……というわけで、高知競馬場では、番号しか印刷されていない馬券でもハルウララの単勝馬券だと判るようにするために、「ハルウララ」の馬名スタンプを用意している。その情報をあらかじめ知っていた駒木も、近くに立っていた競馬場職員を捕まえてスタンプの押せる場所が資料展示室だと教えてもらい、そこへ向かう事にした。

 その資料展示室は入場ゲートの脇にある。よって一旦スタンドを出て、入場ゲート付近まで逆走しなくてはならないわけだが、スタンドを出るなり駒木は目に映った光景の物凄さに思わずのけぞった。

「えぇっ!? ここって、東京ビッグサイト?」

 勿論違うここは確かに高知競馬場だ。しかし、この行列は何だ? もう何百人というレヴェルじゃないのかこの列の長さは。赤松健の同人誌売ってるんじゃないんだぞ。
 この日、高知競馬場では「ハルウララ関連馬券専用窓口」なるモノまで用意してニーズに対応しようとしていたのだが、ハッキリ言って焼け石に水にもなっていない。いくつもある窓口全てに数十メートルの行列が出来上がり、もはや収拾不可能な状況に陥ってしまっていた。
 先程の所要時間計算式からすると、行列100人を消化するのに3時間45分かかってしまう。200人だと7時間30分だが、それでは文字通り日が暮れてしまう。あと5時間もすればハルウララの出走する最終レースは終わってしまうのだ。
 この行列を見ると、もし判断を誤ってハルウララ馬券購入を後回しにしていたら…と思うと、正直言って背中が凍えた。こんな行列に参加していたら、せっかくの高知競馬が列に並んでいるだけで終わってしまう。
 しかし、その行列と同じくらい目に付くのが、まるで普通の平日開催のごとく閑散とした当回売窓口である。競馬場はあくまで競馬場であってハルウララ馬券売場でないわけで、建前として当回売窓口を多く配置していたわけだが、結果的に完全に客の行動を読み間違えたと言わざるを得ない。まるでモーニング娘。のサイン会の横で森三中のサイン会をやってるようだった。
 まぁ、高知競馬場サイドとしては、ハルウララで客を釣って来て、何とかハルウララ関連以外のレースでも馬券を買ってもらおうと思っていたのだろうが、全ては水泡に帰したわけだ。いかに今日の客が普通の競馬ファンと違うのかというのが、これだけを見てもよく判る。競馬マスコミは今回の騒動に色々苦言を呈していたようだが、ンなもん、誰も聞いちゃいねえ苦言を耳にしなくてはならない人たちは、競馬マスコミの存在そのものを知らないのだ。

 さて、資料展示室には、いくつかの机と椅子のセットが置いてあり、その机ごとに1つずつ♥ハルウララという文字がスタンプ出来る、極めてチープ感溢れるゴム印が置かれてあった。これが“公式”馬名スタンプである。
 ……正直言って、現物を見た誰もが一瞬は「うわ、値打ち無ぇ〜」と思ってしまう代物だが、壁には「スタンプを持ち出さないで下さい。新しいスタンプの補充は出来ません」という注意喚起が貼られていた。しかし、気持ちは判らんでも無いが、持ち帰る奴も持ち帰る奴だよなぁ。100円ショップで売ってる年賀状用スタンプより数段ショボいぞ、これ。
 馬名スタンプの案内が不徹底なのと、まだ馬券を買えた人は少ないためか、室内は机1つごとに2〜3人の順番待ちにとどまっていた。ジックリと時間をかけてスタンプを押す。馬券プレゼントに当選したラッキーな貴方、あの取って付けたようなスタンプは、こうやって駒木が1枚1枚押したものなのである。大事にしてやって下され。

 資料展示室を出て、再びスタンドへ。当然の事ながら行列は全く消化されてはいない。断続的に雨が降り、ただでさえ物憂げな空気が漂う高知競馬場。間もなく第2レースを迎える場内は、得も言われぬ微妙な雰囲気に支配されようとしていた──。 


 ……というわけで、相変わらず内容が進んじゃいませんが、とりあえず1つのヤマ場が消化できたかな、という感じです。しばしのお休みを頂きますが、どうか気長にお待ち下さいませ。(次回へ続く

 


 

2004年第13回講義
5月8日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・第6戦・NHKマイルC」

 ついに「暫定」の文字を取りました。いや、最後までやれる目処がついたわけではなくて、もはやいつでも「今回で打ち切り」と言ってもいい回数になってしまったので……(笑)。
 まぁそれはさておき、「この成績じゃ優勝者該当ナシだろ」と言われないように頑張ります。

第6戦・NHKマイルC(東京・1600・芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

コスモサンビーム 四位
一見長距離血統ながら、実績はマイル前後中心に。朝日杯でメイショウボーラーを葬り去ったあの豪脚が復活すれば一気に台頭。過密ローテーがどうかだが、調教の動きは絶好。
        トラッドスキーム 江田照
500万下脱出に時間がかかり、前走でようやく平場を勝ち上がり。ここに入るとスピード不足に悩まされそう。
        ダイシンチャンス 太宰

芝初挑戦の前走は全く勝負にならず完敗。最大限プラス思考で考えても、入着一杯がいいところ。

  × ×   ナイストップボーイ 岡部幸

展開がハマったとは言え、前走は久々の芝でキッチリ結果を出せた。再度展開が向きそうな今回も期待持てるが、臨戦過程には若干の疑問が……。

シーキングザダイヤ 武豊

有力馬でほぼ唯一、このレースを最大の目標に据える馬。初めての強敵相手、微妙に狂った調整過程に不安残るも、展開を味方につけてトライアルに続く差し切りを窺う。

  メイショウボーラー 福永
距離不安が囁かれた中、弥生賞〜皐月賞を大健闘。地力アップも窺わせる春シーズンとなった。2ハロン短縮の今回は当然更に期待できそう。驚異的な粘り腰は今回も健在だ。
      × アポインテッドデイ 柴田善

キツい展開でも相手なりに粘りこむのが魅力だったが、ここに来てややジリ貧気味。先行脚質が展開上不安も、得意の府中コースに戻って巻き返しを狙う。

        ダイワバンディット 北村宏
新潟2歳チャンピオンも、なかなか復調の糸口掴めず。得意の左回りに望みをかけるが、まずは休み明けで減っていた馬体の回復が絶対条件。
  ×     タイキバカラ 蛯名
クリスタルCまで3連勝の快足馬。テンのスピードは随一だが、一本調子では通用しない府中のマイル戦には少なからず不安が残る。道中で後続にどこまで脚を使わせられるかがカギ。
    ×   10 ビッグファルコン 吉田豊

展開の産物とはいえ、クリスタルCの2着は立派な実績。しかし、ニュージーランドTの惨敗が“フロック感”を滲ませて……。

        11 ロードインザスカイ 後藤浩

オープン入り後の2走が共に惨敗。500万条件の勝ち星もローカル線の人気薄でマークしたものだけに強調できず。ここは苦戦。

×     12 シゲルドントイケ 赤木
一走ごとにオープン慣れして、ついに前走の勝利へ。実績では明らかに見劣りするも、人気薄と展開利、そして抜群のデキでどこまで食い込めるか。
× 13 キングカメハメハ 安藤勝
青葉賞3着のシェルゲームらを文字通り一蹴した毎日杯のインパクトが強烈。大目標はダービーだが、一応の態勢は整った。マイルで皐月賞組との地力比べになってどうなるか見もの。
        14 ハードランドカフェ 武幸
条件戦ながら、前走の勝ち時計1分33秒5は出色。しかし逃げが理想の瞬発力に欠ける脚質はここではマイナス。どこまで新味が見出せるかだが……。
×       15 エイシンマルカム 渡辺
ここまで今一歩の成績ながら、相手なりに走れるのは一つの魅力。ハイペースで上がりのかかる泥仕合になれば上位に雪崩れ込む目も……?
        16 ムーンシャイン オリヴァー
時計を1秒以上詰めるも、クラスの壁にブチ当たった前走。調整過程は順調だが、更なる強調材料は見出し難くて……。
        17 ローランジェネルー 田中勝
条件戦で仕切り直して再度のオープン挑戦。しかし相手は余りにも手強く、陣営も弱気ムードに終始し……。
      18 フリーダムホーク 横山典

先行馬に厳しい流れでも大崩れしなかった前走は一応の評価が出来る。ただし、再び先行馬に厳しそうなのは今回も同じ。2勝目を挙げた時の差し競馬が出来れば少しは楽しめそうだが。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 ハナを叩くのはメイショウボーラーだろうが、テンのスピードならタイキバカラが抜群なだけに、抑えが利かないと行ってしまう可能性もある。どちらにしろ、2〜3番手を欲しがる先行馬が揃っているのでペースが落ち着くケースは考え辛い。
 有力馬には先行脚質が揃ってはいるが、脚質に融通の利く馬なら中団以降に待機して直線勝負に賭けたいと思うのが人情。前に行く2頭の他はガツガツ行かずに5〜6番手以下で我慢するのではないか。
 今開催の東京コースは全開催日Aコースでこの日が6日目。いわゆるグリーンベルト地帯は存在せず、直線は各馬内外大きく横に広がってのダイナミックな追い比べになるはず。最大の見所は、府中初見参のメイショウボーラーがどこまで粘れるかという事になるだろう。
 逃げ馬の連対は01年2着のグラスエイコウオーだけで、先行馬もエルコンドルパサーとウインクリューガーの2頭のみ。府中でも特に追い込みが決まり易い条件だけに、伏兵を狙うなら差し・追い込みから。 

 ちなみに東京競馬場の天気だが、発走時刻あたりまではギリギリ曇で持ち応えそうな気配

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:コスモサンビーム》
 

 毎年、確固たる実力馬不在(若しくは2番手候補不在)で頭を痛めさせられるこのレースだが、今年は期せずして皐月賞組とダービー目標の実力馬が参戦し、なかなかの粒揃いとなった。しかし、これらの馬はこのレースが最大の目標というわけではないだけに、取捨選択が極めて悩ましい所だ。かと言って、典型的な短距離血統でここ目標のシーキングザダイヤにしてみても、経験不足と手緩い調整過程を見るに本命までは推し辛い。
 そこで逡巡した挙句、皐月賞の結果を踏まえて急遽ダービーからこちらに目標を切り替えた、朝日杯の覇者・コスモサンビームを狙ってみる事にした。幸いにも体調のピークを上手く持って来れたようだし、微妙に人気の盲点にもなっているのでレースもし易いだろう。
 対抗にはメイショウボーラー。このレースで逃げ馬を狙うのはタブーに近いが、2000mのレースでもゴール寸前まで食い下がった粘り腰を見ると、とても軽視は出来ない。超ハイペースになった場合がどうかだが、逆に平均ペース程度まで落ち着くと逃げ切りも十分だ。
 進境著しいキングカメハメハだが、大目標・ダービーを前に無茶なレースは出来ない上に人気が被り過ぎた嫌いもある。アッサリ勝たれても驚かないが、馬券戦略上では脇役に留めたい。
 あとは地力不足を承知で追い込み馬で穴狙い。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(9日未明時点)
単勝 100円 7.5
馬連 1-6 100円 11.9
  1-13 100円 13.7
  6-13 100円 11.7
  1-5 100円 12.1
  1-15 100円 311.8
  1-12 100円 316.5
馬単 1→6 100円 24.7
  1→13 100円 31.9
三連複 1-6-13 100円 16.9


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:シーキングザダイヤ》

 最近ずっと不調でちょっと困ってます(苦笑)。でも、そういう時こそ自分の基本に立ち返って、展開重視・実績重視で予想を立ててみることにしました。でも、展開と実績を組み合わせると余計にややこしくなってしまい……(苦笑)。
 というわけで結構迷ってしまったのですが、最後はここが大目標で差し馬というシーキングザダイヤに決めました。ニュージーランドトロフィーの時のように、ゴール前寸前でピッタリ差し切ってくれるのではないかと期待しています。
 2番手以下も迷いながら、有力馬に絞って印をつけてゆきました。これで流れが変わってくれると嬉しいんですけど……。 
 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(9日未明時点)
単勝 100円 4.2
馬連 1-5 100円 12.1
  5-13 100円 7.9
  1-13 100円 13.7
  5-6 100円 10.0
  5-9 100円 20.2
  4-5 100円 21.4
馬単 5→1 100円 20.3
  5→13 100円 14.6
三連複 1-5-13 100円 15.6


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:シゲルドントイケ》

 さんざん前からアオっておいてアレなんですけど、今年のこのレース、穴馬らしい穴馬があんまりいなくて、ホント最後まで迷っちゃいましたよ〜(苦笑)。普通に印つけたら穴でも何でもなくて本命サイドになっちゃうので、何度も予想をボツにしちゃいました。
 で、結局本命にしたのは、ちょっと名前がアレな(笑)シゲルドントイケ。展開ハマって、チャンスに飢えている赤木騎手が直線追いまくって差し切り……! と行けばいいんですけどねー。
 本音を言うとコスモサンビーム本命で……って、それは博士と一緒ですか。いよいよ八方ふさがりですね(苦笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(9日未明時点)
単勝 12 100円 46.8
馬連 1-12 100円 316.8
  5-12 100円 194.4
  1-5 100円 12.1
  12-13 100円 210.5
  4-12 100円 365.0
  10-12 100円 1924.6
馬単 12→1 100円 829.0
  12→5 100円 650.7
三連複 1-5-12 100円 344.1

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:シーキングザダイヤ》

 最近、他の人に質問とかして勉強しながら予想しているせいか、「ぜんぜんビギナーズの予想じゃない」とか言われるようになってしまいました(苦笑)。こっちはこっちでガンバってるんですけどね。
 そういうわけで、今回は自分だけで、しかも出来るだけいい加減に予想してみました(笑)。このレースで一番たくさん勝っている武豊ジョッキーのシーキングザダイヤを◎にして、2着が一番多い横山典ジョッキーのフリーダムホークを○に。で、あとは名前を知ってる馬から(笑)。
 これで当たったら本当に競馬って面白いですね(笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(9日未明時点)
単勝 100円 4.2
馬連 5-18 100円 104.9
  5-6 100円 10.0
  6-18 100円 171.7
  1-5 100円 12.1
  5-7 100円 41.7
  5-13 100円 7.9
馬単 5→18 100円 137.7
  5→6 100円 17.4
三連複 5-6-18 100円 160.1

 ……というわけで、予想が出揃いました。しかし当たる気しませんなあ(苦笑)。果たしてどうなる事か、レースをどうかお楽しみに。


NHKマイルC 成績

× 1着 13 キングカメハメハ
2着 コスモサンビーム
  3着 メイショウボーラー
        4着 ダイワバンディット
    ×   5着 10 ビッグファルコン

単勝13 360円/馬連1-13 1340円/馬単13-1 2140円/三連複1-6-13 1580円

 ※駒木ハヤトの“勝利の雄叫び”(馬連、三連複的中)
 馬単でウラを喰ったので、馬券的には全然雄叫べないわけですが(苦笑)、まぁ三連複フォーカス1点的中は嬉しいよね。
 それにしてもキングカメハメハのワンマンショーだったねぇ。確かに内ラチ沿い数頭分の馬場が微妙に悪くなっていて、その差が出たとも言えるんだけど、それにしても1番人気背負って大マクリで5馬身じゃあ問答無用の強さと言っていい。ナリタブライアンみたいだったもの。
 これでダービーでは更にギリギリの仕上げで勝負に来るわけだから、これはダイワメジャーの二冠とか、コスモバルクの雪辱とか言ってる場合じゃなくなったんじゃないだろうか。菊花賞終わってみて、「どうして皐月賞出さなかったんだ」というバッシングが噴出するにウーロン茶50本(笑)。
 シーキングザダイヤ以下、短距離戦線組は純粋に力不足だった感じ。やっぱり本物のG1級の馬がここに来ると格違いだね。

 ※栗藤珠美の“喜びの声”(馬連のみ的中)
 
○▲のいわゆるタテ目的中。ちょっと素直に喜べない気もしますけど、ま、良い結果は出せたのでホッとしています。
 それにしても、ここ数回のG1レースは、ずっと武豊騎手が最後の直線を諦め半分で追っている様子を見てばかりのようで、何だか胸が詰まる思いですね(苦笑)。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 う〜ん、今度は1番人気の1着で決着……。
 何だかヤな流れですね〜。何とか親のリーチをしのぎ切って、「よしこの局は和了るぞ!」と思ったら、配牌が十三不塔寸前だった…みたいな(苦笑)。
 あとはオークス、ダービー……うわー、これは一番人気強そうですねー(苦笑)。安田記念と宝塚記念で挽回できるようにがんばります。というか、そこまで博士の体力が続くように祈ります(笑)。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 やっぱりいい加減な予想じゃダメっていう、当たり前の結果になっちゃいましたね(笑)。次からはせめて、マジメに予想することにします(笑)。

第6戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 4080
(1位)
2920 7000
(1位)
栗藤珠美 1440
(2位タイ)
1340 2780
(2位)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(2位タイ)
0 1440
(3位)

 (ポイント・順位の変動について)
 首位の駒木ハヤトが、本命2着ながらも渋太く馬連、そして3連複のボーナスを獲得してリードを広げた。セーフティリードではないが、本命サイドの的中ではなかなか追いつかれない程度の差は広げた。
 2番手から追う栗藤珠美も、タテ目で馬連を的中させて食い下がる。なかなかリズムに乗れない前回覇者・一色順子の大逆転は果たしてあるのか……?

 


 

2004年度第12回講義
5月7日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(5月第2週・合同)

 何やかんやでやっぱりやってしまう、合併号休み恒例の「赤マルジャンプ」全作品レビューをお送りします。

 毎回疲れた頭と体にムチ打って全部の作品にレビューをつけてはネット界隈の顰蹙を買うの繰り返しで、本当自分でも大概考えろと思うんですが、やっぱり何やかんやで全部の作品に一言以上言いたくなってしまうんですよね。特に今回は毎年A級評価の作品が出る春号ですし。……まぁそれだけ作家さんからの(正&負もしくは腐の)パワーがこちらに伝わって来るだけの何かが「赤マル」にあるという事なんでしょう。
 で、「赤マル」に構っている分だけ「サンデー超増刊」の方はワリを食ってしまうわけなんですが、こちらは今まで通り、傑作・注目作を中心に通常カリキュラムの中で紹介する事にしたいと思います。今回発売のGW号でもいくつかそういう作品も見つけていますしね。

 ……というわけで、「赤マルジャンプ」04年春号のレビューを始めます。いつものように連載作品の番外編はレビューから除外させてもらいます。あと、講義準備時間短縮のため、レビューはいつもよりアッサリ風味な部分もあると思います。

 ※7段階評価の一覧表はこちらから。

◆「赤マルジャンプ」04年春号レビュー◆

 ◎読み切り『ALL THE WAY DOWN』作画:森田まさのり

 ●作者略歴
 1966年12月22日生まれの現在37歳
 84年上期「手塚賞」で佳作を受賞(森田真法名義)し、受賞作『IT'S LATE!』が「フレッシュジャンプ(注:80年代に出版されていた、「ジャンプ」版「月刊サンデー超増刊」のような若手作家の登竜門的月刊誌)に掲載されてデビュー。その後、85年上期「手塚賞」でも佳作を受賞し、86年から87年にかけて当時の「少年ジャンプ」季刊増刊で3回の掲載を果たす。
 週刊本誌初登場は87年50号掲載の『BACHI−ATARI ROCK』。これがリメイク、改題の末に連載化されたのが『ろくでなしBLUES』で、8年9ヶ月間・422回(88年25号〜97年10号)にも及ぶ長期連載に。
 その後、1年ほど読み切り中心のマイペースな活動を続けた後、98年より『ROOKIES』を連載(98年10号〜03年39号、途中中断あり。通算239回)
 今回は連載終了以来初の作品発表。ちなみに『ろくでなし──』連載終了後にも「赤マル」でオールカラー5ページの読み切りを発表した事がある。   

 についての所見
 
「自分にこの人の絵をどない語れっちゅうんや!」…と逆ギレしたくなりますね(笑)。人物作画といい、見る人が見れば一発で後楽園ホールと判る背景描写といい、こういう企画モノ的な作品でも一切手抜きナシ。さすがです。
 ただ、どうでもいい話ですが、ボクシングの興行では後楽園ホールがギッシリ超満員になる事はありません(笑)。まぁこのへんはストーリーも含めてファンタジーなのかな…とも思ったり。

 ストーリー&設定についての所見
 5ページという条件上、ギリギリまでネームを削り、何とかストーリーを詰め込もうとした努力の跡が窺えますね。モノローグとイメージ映像を駆使して最小限のコマ数で設定とシナリオの消化を狙っています。ただ、さすがにこの内容で5ページは厳しかったような気もしますが……。

 ところで今回のシナリオ、何だか既視感があったので記憶を巡らせて見ると、どうやら名作・『まんが道』に出てくる“作品中作品”の1つと題材やプロットが似ていました。まぁ細かい内容は全然違うので、偶然似たアイディアが数十年のタイムラグで天から降って来たのでしょう。
 ちなみにその“作品中作品”、足塚先生が「漫画少年」の加藤編集長から「一晩で2ページ代原描いてくれ」という無体な注文を受けて描いたもの。ちなみにこの『まんが道』では、若き日の石ノ森章太郎さんが一晩で32ページの別冊読み切りを描いたりとか強烈なエピソードが満載です。もし冨樫義博さんが昭和30年代の作家さんだったら、トキワ荘から過労死する若手作家が出てたかも知れません(笑)。

 あ、余談ついでに今回のストーリーについて述べておきますが、実際のプロボクシングでは、今時こんな面倒臭い八百長は一切行われていないはずです。(八百長で連敗中の)落ち目な日本人ボクサーよりも、タイあたりの国内ランカー選手を呼んで来て噛ませ犬やらせた方が手堅いですし(東南アジア人噛ませ犬ボクサーのお仕事振りは閉口するくらい徹底してます)、勝たせた選手の出世にも効果的ですからね。
 まぁこの辺は“素人目にはリアリティのあるファンタジー”という事で不問とするべきなのでしょう。ただ、熱心なボクシングファンの森田さんがこんな安易なネタ作りをするというのは如何なものかとは思いますが。

 今回の評価
 プロのお仕事が為された作品で、完成度も高いのですが、A級評価を出すには躊躇する……ということでA−寄りB+とします。

 
 ◎読み切り『ゴーウエスト!』作画:いとうみきお

 作者略歴
 1973年3月26日生まれの現在31歳
 和月伸宏門下のいわゆる“和月組”出身で、デビューは「赤マル」98年夏号掲載の西部劇・『ロマンタジーノ』(伊藤幹雄名義)。  
 週刊本誌進出は99年10号(デビュー作の同名続編)で、同年49号にも西部劇・『トランジスター』を発表。
 翌00年には『ノルマンディーひみつ倶楽部』で初の週刊連載を獲得(00年24号〜01年20号、46回)
 その後1年のブランクがあって、02年29号に読み切り・『ジュゲムジュゲム』で復帰。この作品が改題・連載化されたのが『グラナダ ─究極科学探検隊─』(03年1号〜16号、1クール16回打ち切り)
 今回は約1年ぶりの復帰作となる。

 についての所見
 
2度の連載を経験した作家さんですから、作画の粗がどうこうといった点は無いですね。
 ただ、スタジオの台所事情がアレだったのでしょうか、背景の描きこみが若干甘く、心なしか若干大味な印象を受けてしまいました。

 ストーリー&設定についての所見
 戦いに生きる格闘バカを主人公にした、いわゆるB級アクション映画的、直球勝負なシナリオですね。確かに中途半端な趣向を凝らして消化不良に終わるよりも、こちらの方が逆に完成度が上がる場合もあります。
 ただ、シナリオに技巧を凝らす努力を放棄する以上は、その“直球”の球速を上げる、つまり読み手のカタルシスを最大限引き出さない事には単なる「単純なお話」で終わってしまいます。そしてこの作品はまさにその「単純なお話」で終わってしまった感が強いです。

 “敗因”となったのは、恐らくキャラクターの数を必要以上に増やし過ぎ、そのせいで“ラスボス”との戦闘が淡白になってしまった所でしょう。このせいで“直球”の球速が落ち、単なるハーフスピードの棒球になってしまったのではないでしょうか。
 また、メインアイディアである“ロトン”の設定が、作品の魅力を増す方に活かされず、ストーリー展開の潤滑剤の役割に留まってしまったのも大きな問題だったと思います。これがもし“格闘バカが拳一つで語り合う話”であれば、ベタながら良い意味でのバカさ加減が出て来て印象も大きく違って来たのではないかと思うのですが……。

 今回の評価
 典型的な“プロの作家が描いた凡作”ということでB評価とします。この作品に価値を見出すとすれば、前作『グラナダ』で患ってしまった“設定過多病”から立ち直るリハビリ効果ぐらいでしょうか。……まぁとにかく全てをリセットしたいとうさんの次回作に期待しましょう。 

 
 ◎読み切り『窯神』作画:岩本直輝

 ●作者略歴
 
1985年8月5日生まれの現在18歳
高校卒業したばかりですね。
 02年1月から「ジャンプ」への投稿活動を開始、02年3月期及び7月期「天下一漫画賞」で最終候補に残って“新人予備軍”入り。その後、リニューアル第1回の「十二傑新人漫画賞」03年4月期で佳作&十二傑賞を受賞し、受賞作『黄金の暁 ─GOLDEN DAWN─』でのデビュー権を獲得
 実際にデビューを果たしたのは「赤マル」03年夏号。今回はそれ以来2度目の作品発表となる。

 についての所見
 
前作に比べると、大分無駄な線が無くなってスッキリして来ましたね。さすが10代、進歩が早いです(笑)。
 ただし、プロ作家の絵として評価した場合、まだまだ粗い部分も見られます。特に人物作画、しかも顔の部分が歪んでいるものも見受けられ、このあたりは未だ改善の余地を残していると言えそうです。

 ストーリー&設定についての所見
 先程の『ゴーウエスト!』と同じく“直球勝負”系、しかも随分と使い古されたストーリーラインをベースにしたシナリオですね。全くの他人である男性を勝手に片想いの相手の恋人と誤解する…というプロットの、余りの手垢の付き具合に閉口した読み手もいただろうと思います。

 ただ、この作品はそういった欠点だけが目立つ作品ではなく、セールスポイントもあるのが嬉しい所です。
 特筆すべきなのが、ヤマ場での主人公の心情描写。これも昔から使われているパターンだと言われればそうなのかも知れませんが、しかし人間の弱い部分と強い部分をリアルに、そして堂々と描き出した技量は積極的に評価しなければならないと思います。
 また、設定を下手な説明ナシに物語の中へ溶け込ませた事、そして安易なバトルに頼らず人間ドラマを描いた事なども評価すべき点だと思います。ベタで単純な話に見えて、なかなか奥の深い作品です。

 今回の評価
 未だキャリア不足を主因とする課題も残されているものの、順調に才能が育っているのが窺えますね。
 評価は、少々甘めかも知れませんが、心情描写の出来の良さを買ってB+寄りA−とします。まだ週刊連載を任せるには時期尚早かも知れませんが、地道に実力をつけ、未来の看板作家目指して頑張ってもらいたいものです。

 
 ◎読み切り『爆走妖精ロンタ』作画:岩渕成太郎

 ●作者略歴
 1982年11月21日生まれの現在21歳
 03年上期の「赤塚賞」で佳作を受賞し、“新人予備軍”入り。今回がデビュー作。

 についての所見
 
デビュー作、しかもギャグ作品という事を考えると大目に見たくなるのですが、それでもやはり未熟な点が目立ちますね。
 特に動的表現や、集中線などの特殊効果の使い方にぎこちなさが残っており、根本的な画力の無さがそれを更に際立たせてしまっている…という感じです。
 そもそもが幼さを感じさせる画風ですので、もうちょっと洗練されたタッチが描けるようにしてゆくべきだと思います。

 ギャグについての所見
 まず評価出来るのは、とにかくギャグの密度を上げようとする姿勢と、セリフ回しで笑わせるギャグの技術でしょうね。不発に終わったネタもあって手放しで褒める事は出来ないのですが、なかなかの言語感覚の持ち主だと思います。
 ただ、裏を返せば、読み手を笑わせるのに言葉に頼り過ぎの面があり、間やアクションで笑わせる方の技術には幾らかの物足りなさが残ります。それでも、進むべき方向性は間違っていないように思えるので、今後の技術向上に期待する余地はあるでしょう。

 今回の評価
 全く見所ナシというわけではないのですが、やはり未熟な面が目立ってしまいますね。画力の減点を差し引いてB寄りB−としておきます。こちらは少し厳しいかな?
 あと、言語センスで笑わせる作品を追求する場合、問題になってくるのが空知英秋さんとの作風バッティングでしょうね。特に空知さんの場合は人情噺を交えて単なるギャグで終わらせないだけの技量があるだけに、現状の岩渕さんでは正直相手にならないのでは…と思ってしまいます。道半ば、先は未だ遠し…といったところでしょうか。

 
 ◎読み切り『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』作画:西義之) 

 ●作者略歴
 西義之名義での活動歴は、『アイシールド21』初期のアシスタントとしてのものが確認されるだけで、作家としてのキャリアは確認できず。ただし、手塚賞・赤塚賞の告知ページに載っていた「第57回(99年上期)手塚賞準入選」という経歴から、99年デビューの若手作家・多摩火薬さんと同一人物と考えられる。もしそれが事実なら、手塚賞受賞(99年春)当時22歳なので、現在26〜27歳ということになる。  
 《付記:多摩火薬さんのプロフィール》
 99年上期「手塚賞」準入選を受賞し、受賞作『サバクノオオクジラ』が「赤マル」99年夏号に掲載され、デビュー。その後、小畑健さんのスタジオでアシスタントを務めつつ執筆活動を続け、「赤マル」01年春号で『ARROWS』を発表。しかし、その後の活動は不明。

 についての所見
 
多少粗さも感じますが、それ以上に「個性的」という印象の方が強いですね。作品の系統にもよりますが、今の絵柄をベースに線を洗練させてゆくと、現在の「ジャンプ」作家さんでは他にいないような作風だけに、これは大きな武器になると思います。
 「せっかくのサービスシーンもこの絵柄では……」という声もあるようですが、個人的には、今回のような“エロを感じさせないサービスシーン”の方が、世界観にマッチしているような気がしないでもないです。

 ストーリー&設定についての所見
 主人公2人(ムヒョ&ロージー)のキャラクターと魔法律関連の世界観が大変に秀逸です。それぞれの設定は全くのオリジナルというわけではないのですが、“偽悪人の弁護士と良識派の助手が主人公の法律相談モノ”をオカルト風味に変換する…というアレンジが極めて独創的で、それがそのまま作品のオリジナリティに繋がっていますね。
 また、設定や世界観の描写もスムーズで、それもシナリオ上の伏線としても利用するなど、若手離れした技巧も感じられます。少なくとも「赤マル」で甘んじるレヴェルの作品ではありません。手塚賞の佳作受賞作を週刊本誌に載せるぐらいならこっちを…と思ってしまうくらいですね。

 欠点としては、ページが足りなくなったのでしょうか、依頼人である女生徒の心理描写が不足しており、クライマックスの展開がやや強引になってしまった所でしょうか。シナリオの持っていき方自体は問題なかったのですが、そのせいで説得力を欠いてしまいました。そこを押さえていればほぼ完璧だっただけに惜しかったですね。 

 今回の評価
 先述の欠点のせいで画竜点睛を欠いた印象がありますが、それでも総合的に見て非常に高い水準にある作品だと思います。とりあえずの評価はA寄りA−ということにしておきましょう。
 長編としてのプロットを上手く練られれば、十分週刊連載に耐え得る作品だと思いますので、あと1〜2回読み切りで試運転した後、順調なら連載に踏み切るのもアリだと思います。


 ◎読み切り『天空の司書』作画:やまもと明日香

 ●作者略歴
 1980年7月10日生まれの現在23歳
 プロとしての活動履歴は無いが、インターネット上での情報によると、数年前から「ジャンプ」への投稿活動をしていたという説も。今回がデビュー作で、恐らくは持ち込み作品が編集会議を通過したのだろうと思われる。  

 についての所見
 
「技術はまだまだですが、勢いに任せて描き切りました」という作者の声が聞こえてきそうな作画でしたね(笑)。全体的に見て、ちょっと稚拙な面が目立ってしまいましたか
 具体的に指摘すると、線の細い太いにメリハリが無いのと、本来細かい描写が必要な部分の仕上げが特に荒っぽくなっているのを感じますね。その結果、見辛さ、読み辛さを感じてしまうのではないかと思います。

 ストーリー&設定についての所見
 本の世界の中に入って冒険する…とか、いわゆるエリート養成学校モノとかいった、よくあるパターンを寄せ集めて作ったプロットですね。ただ、その割に手垢がついた感じが余りしないのは、恐らく主人公の「体育会系から文化系(しかもガリ勉メガネ系)への転身」…という設定が新鮮だったからでしょう。
 そのシナリオの展開そのものは悪くないのですが、主人公が司書を志した動機となる回想シーンを後回しにしたのはハッキリ言って失敗だったと思います。主人公の言動に本来あるはずの説得力が感じられず、せっかくのセリフに説教臭さが感じられてしまいました(もっとも、セリフ回し自体も少々カッコつけ過ぎだと思いますが……)。
 この際、最初に回想シーンを持って来て主人公の思想・行動に説得力を持たせ、クライマックスで更に回想シーンのヤマ場を持って来てシナリオを盛り上げる…という形にすれば印象も見違えたのではないかと思います。

 今回の評価
 決して悪い作品とは思わないのですが、絵の見辛さと前半の説教臭さが足を引っ張って、読み手の印象を損ねる作品になってしまった感じですね。評価はB寄りB−ということにしておきましょうか。

 
 ◎読み切り『新地球人ひゅう』作画:吉田真

 ●作者略歴
 99年下期「手塚賞」で準入選を受賞し、その受賞作『キンダガーデン ─KINDERGARDEN─』が「赤マル」00年冬(新年)号に掲載されてデビュー。受賞当時25歳ということなので、現在は29〜30歳。 
 その後、やや空白期間があって、週刊本誌02年1号に『桃太郎の海』が代原掲載「赤マル」02年夏号に読み切り『UN☆TURBO』を発表した。今回はそれ以来、1年9ヶ月ぶりの新作発表となる。

 についての所見
 
リアルタッチとディフォルメの使い分けがさりげなく出来ていたり、動物の作画もソツなくこなせていたりと、ナニゲに技術を感じさせてくれますね。
 注文をつけるとすれば、人物の顔の輪郭にもう少しバリエーションを持たせれば良いんじゃないかという事と、所々で背景やディティールに粗い部分が見られるという事でしょうか。

 ストーリー&設定についての所見
 まず、ナンシーのような生徒(さすがに顔はヤマンバではありませんが)を多数抱える所に勤務する身としては非常に心の痛い作品でした(苦笑)。

 ……まぁそれはさておき、シナリオと設定の完成度はかなりの水準に達していると思います。特に主人公の能力(動物と会話できる)がストーリーによく活かされているのが良く、スムーズに読み込んでいけます。また、設定やその描写についても上手くまとめられていますね。
 ただ、惜しかったのが最後にナンシーが改心する場面。後者の屋上から落ちそうになった時に隠していた弱みが出る…というのは良いのですが、そこからウサギを持って帰って飼うところまで改心するというのは飛躍し過ぎじゃないでしょうか。ストーリー上はお約束のパターンだけに、読み飛ばしていると誤魔化されてしまいそうですが、こういう“甘え”は、特に若手の内は今後のためにも良くないと思います。

 今回の評価
 長所、短所それぞれということで評価はB+に。もともと淡々としたストーリーになる作風の人だけに、今回のように主人公のキャラが淡々としている方が良いですね。「少年マンガは主人公が熱血していないといけない」…なんてセオリーに惑わされず、独立独歩でやってもらいたいものです。

 
 ◎読み切り『Kick!コータ!!』作画:村瀬克俊

 ●作者略歴
 03年11月期「十二傑新人漫画賞」で佳作&十二傑賞を受賞(受賞当時24歳)し、その受賞作『福輪術─ふくわじゅつ─』が04年2月発売の「青マルジャンプ」に掲載されてデビューしたばかり。

 についての所見
 
「十二傑」受賞時から画力の高さには定評のある作家さんだけあって、今回もなかなか見事な作画を見せてくれました
 ただ、ちょっと気になるのが人物の表情の硬さと、動的表現のぎこちなさ。特に動的表現に関しては、全身の動きを表現しなければならない所で手や足のパーツしか動いているようにしか見えない場面もあり、これは今後の課題と言えそうですね。
 あとは格闘シーン、絵だけで表現出来ない部分をセリフで補完させるのはセオリーですが、せめてそのセリフの内容と絵に矛盾が無いように描写してもらいたいものです。どう見てもパチョレック・スミスがローキックをマトモに喰っている場面があるんですよね。

 ストーリー&設定についての所見
 格闘技好きの駒木から見ると、細かい部分で指摘したい所は山ほどあるのですが、まぁマンガの世界のお話ですし、明らかな事実誤認でも無い限りは不問とすべきなんでしょうね(笑)。ただし、もうちょっとディティールを補強するような取材や勉強に励んで下さい…とは申し上げておきます。

 で、シナリオについてですが、オーソドックスな格闘技モノ読み切りのストーリー──伸び悩んでいる主人公が、リング内外で苦闘の末に怖いもの知らずの強豪に逆転勝ちする──ですね。随分と使い古されたパターンですが、“偉大なるマンネリ”という言葉もありますし、キッチリと読み手のカタルシスを喚起するシナリオになっていますから、これはこれで良いんじゃないでしょうか。むしろ、デビュー2作目にしては手堅くまとめた方だと思います。
 ただし、主人公・孝太の心理描写がやや甘く、気持ちと行動が一致していない部分が見られる事など、何気ないところで割と大きな欠点もあったりします。冒頭とクライマックスを繋げる「こんなもんだぜ俺の可能性」の伏線も、意味が有るようで実はほとんど意味が無く(しかも微妙に語呂が悪い)、自己満足に終わってしまっているのも残念な部分です。
 シナリオにヒネりを利かせようという意欲は買えるのですが、それは諸刃の剣である事をもっと意識して、シナリオの完成度を上げる努力を怠らないようにしてもらいたいものです。 

 今回の評価
 オーソドックスながら好感度の高いシナリオ、ある程度しっかりしている作画と、いわゆる「『面白い』と感じさせる作品」にはなっているのですが、当ゼミ独特の採点基準では減点材料もままあり、評価はB+寄りBになってしまいます。

 
 ◎読み切り『吉野くんの告白』作画:坂本裕次郎

 ●作者略歴
 1980年4月18日生まれの現在24歳
 01年5月期「天下一漫画賞」で最終候補に残り、“新人予備軍”入り。その後、03年上期「手塚賞」で準入選を受賞し、週刊本誌03年29号に受賞作『KING OR CURSE』が掲載されてデビュー
 その後、04年2月の「青マルジャンプ」で『デス学!!!』を発表し、今回はそれ以来3度目の作品発表となる。

 についての所見
 
今回がデビュー3作目ですが、すっかりアカ抜けて来ましたね。特に今回は少年、マッチョ、変態2種(笑)、美少女と、色々なパターンの人物作画が出来ていて、これはポイント高いですね。
 全体的に線が細い上、ちょっとコマの中の空き部分が大きくて、“スカスカ感”があるのが気になる部分ですが、これももうちょっと絵柄が洗練されて来たら一種の個性になってゆくのでしょう。

 ギャグについての所見
 コメディかギャグがジャンル分けが難しい作品ですが、公式にはスラップスティック(=いわゆるドタバタ喜劇)という事ですので、ストーリーよりギャグの要素を重要視すべきだと判断しました。

 というわけで、ギャグについてですが、わざわざスラップスティックと“公式発表”しているだけあって、非常に小気味良いテンポで話やギャグが展開していってますね。しかも時には間を持たせて緩急をつけてもいますので、一本調子に陥る事も避けられています。
 しかも勢いだけではなくて技術的な面にも裏付けがあります。ページをまたいでオチを持って来る手法や、ツッコミを強行突破してのボケの畳み掛けも上手く使われていますね。
 そして特筆すべきは大ゴマの使い方。本来なら小さいコマを幾つも使わないと出来ない遣り取りを、1つの大ゴマの中で済ませているのでテンポが良いんですよね。
 そんな中で課題を挙げるならツッコミでしょうか。今回はボケのキャラが濃すぎたので致し方ない部分もありますが、もうちょっとツッコミで転がす笑いも追求して欲しかったです。

 ちなみに個人的に爆笑モノだったのは、「この銃弾がヤツを貫く確率100%ォオオオ!!!」でした。そんな「青マル」読者にしか判らんようなネタをわざわざ織り込まんでも(笑)。

 今回の評価
 デビュー以来、色々なタイプの作品にチャレンジしているみたいですが、その甲斐あってか、ストーリー系でもギャグ系どちらでも通用する“スイッチヒッター”に成長しつつありますね。今後に期待です。
 さて、今回の作品の評価ですが、技術点を高く見てA−としましょう。ただ、読者を選びそうな作品ではあるので、この評価に不満な方もいらっしゃいそうですが……。

 
 ◎読み切り『鳥獣奇画』作画:角石俊輔) 

 ●作者略歴
 03年4月期「十二傑新人漫画賞」で最終候補に残り、“新人予備軍”入り。当時21歳で、現在は22〜23歳。 デビューは04年2月発売の「青マルジャンプ」に発表した『歌歌』今回がデビュー2作目となる。  

 についての所見
 
「青マル」掲載のデビュー作の時にも絵の稚拙さを指摘しましたが、今回もやはり難アリですね。少しはマシになった部分もあるのですが、動的表現、集中線などの背景処理が上手く出来ていない場面が多く見受けられます。これをどうにかしない事には、週刊連載云々を言える所まで行けないでしょうね。

 ストーリー&設定についての所見
 前作の時も思ったのですが、角石さんの描く世界観は、原則的に性善説なんですね。今回の敵役妖怪はさすがに例外でしたが、普段は悪事を働いている連中でも、いざとなったら心のアツい部分が顔を覗かせて、主人公の味方をしてくれる……というパターンが多いようです。
 確かにこのパターンは、ドラマなどでもよく使われたりするのですが、読み手に爽快感を与える反面、善意や正義のバーゲンセール状態になってしまうので、作品を安っぽく見せてしまう側面もあると思います。あらかじめキャラクターの内面を丹念に描いておかないと、急に悪役が善玉にクラスチェンジしても値打ちが出て来ないんですよね。
 あと、主人公の“擬似スーパーサイヤ人化”の発動条件が「自分の料理にケチを付けられる事」というのも如何なものかと。……まぁ説得力の無い説教臭い正義についてのご高説をブチ上げられるよりはマシなのですが、これも作品の値打ちを安くしてしまっている感が否めません。

 「こういう話を描けば読み手は良い気持ちになれる」というところのセンスはバッチリなのですから、今後はそのシナリオに説得力と重厚さを増す努力をしてもらいたいと思います。

 今回の評価
 サジ加減が難しいですが、ストーリー・設定は『ゴーウエスト!』と同等と見るも画力の分だけ減点、しかし『天空の司書』よりは総合的に上という事で、B−寄りBくらいでしょうか。もうちょっと微妙なクラス分け基準が欲しくなってきますね(笑)。

 
 ◎読み切り『スカイフィッシャー楽丸』作画:阿部国之

 作者略歴
 1980年7月24日生まれの現在23歳
 02年7月期の「天下一漫画賞」で最終候補に残り、“新人予備軍”入り。今回デビュー
 追記:河下水希さんのスタジオでアシスタントの経験があるそうです)

 についての所見
 
デビュー作とは言え、1年半の“予備軍”期間が活きているのか、「赤マル」作品としては及第点以上のデキにはあると思います。もうちょっと個性というかインパクトの強い絵柄になれば更に良いと思いますが、これは次回作に向けての“宿題”ですね。

 ストーリー&設定についての所見
 冒頭の世界観や設定の描写、そしてキャラクターと行動の整合性といったストーリーテリングの技術には目を見張るものが感じられます。特に悪役の予定調和を排したキレっぷりには、ある種のセンスを感じましたね。悪役の悪っぷりは、ある一線を超えると逆に嫌らしさが無くなったりするんです。
 ただ、今回はシナリオに注文がつきますね。被害者である“海の神”が加害者的な扱われ方に終始してしまったために違和感が抜けませんし、せっかく整合性を保って描かれた主人公たちのキャラクターが、単なる悪ガキの域を抜け出していないので、微妙に感情移入し辛かったりもします。また、ラストシーンで何の理由も無く主人公が旅に出るというのは如何なものかと。“お約束”の展開にも多少の理由をつけないと、とても強引に感じてしまいます。

 今回の評価
 一定以上の技術は備わっているのですが、今回はその使い方を間違えてしまった…という所でしょうか。今度は仲間や編集さんとも相談して、良いシナリオを練ってもらいたいと思います。力はある人です。
 今回の評価はBとしておきます。

 
 ◎読み切り『GIMMICK』作画:森本尚司

 ●作者略歴
 1979年11月27日生まれ、現在24歳
 新人賞の受賞歴は無く、「赤マル」02年夏号で『MAP’s』にてデビュー。今回はそれ以来1年9ヶ月ぶりのデビュー2作目となる。  

 についての所見
 
02年夏号のデビュー作の際にも指摘したのですが、一見上手そうに見える絵柄ながら、実は動的表現や表情の変化にかなり難があるんですよね。2年弱の空白期間に何も出来なかったのか…と、ちょっと苦言を呈したくなってしまいますね。

 ストーリー&設定についての所見
 いやー、見事なまでに『武装錬金』第1話ですね(まぁ『武装錬金』第1話のプロットもオリジナリティ満点の話じゃないんですが)。それは言い過ぎにしても、いかにも「ジャンプ」のトレンドを追いかけたシナリオと言えそうです。
 まぁプロですから、トレンドに迎合するのも一つの立派な見識だと思います。ただし、それをするならシナリオ、設定を練る方にもエネルギーを費やしてこそ本当のプロだとも思うんですよね。
 あからさまに怪しい人物がそのままラスボスだったり、一人相撲を取るだけとって主人公の足を引っ張る特殊工作員(必然性の無い変装と、その変装をする意味すら無くす無責任な言動、戦ってもこの上無く役立たず)の暴走など、工夫の足りない所が多過ぎます。 

 率直な感想を言わせて頂くと、今回のお話は『武装錬金』矢吹健太朗イワタヒロノブ合作で描いたようなシナリオだったと思います。そういうのが好きな人には申し訳ないですが、当ゼミの評価基準に照らし合わせると最低に近い点数をつけざるを得ません。 

 今回の評価
 売れセンを追求するなら存分にやって頂いて良いと思います。ただし、するならするでもっと絵柄を磨き、読み手のカタルシス、読後爽快感、好感度を高めるような手法を身につけないと苦しいんじゃないでしょうか。
 今回の評価は赤点ギリギリのC寄りB−です。

 
 ◎読み切り『HURL KING』作画:新井友規

 ●作者略歴
 1983年3月12日生まれの現在21歳
 02年11月期「天下一漫画賞」で審査員(鈴木信也)特別賞を受賞し、“新人予備軍”入り。その後、03年12月期「十二傑新人漫画賞」で十二傑賞を受賞し、受賞作デビュー権獲得。今回はその権利を行使してのデビュー第1作となる。  

 についての所見
 
ミもフタも無い表現で言うと、『スラムダンク』を目指したが、実力が足りなくて『キックスメガミックス』に似てしまった……みたいな感じでしょうかね(笑)。もうちょっと画力全般を磨かないと、今後の活動では厳しい面もあろうかと思います
 とはいえ、かの井上雄彦さんもデビュー当時と今では全然絵柄が違いますからね。日々憧れの人目指して精進してもらいたいものです。 

 ストーリー&設定についての所見
 こちらもネット界隈では主人公が『スラムダンク』丸パクリ…なんて評価もありましたが、どちらかと言えば『美鳥の日々』の沢村ではないかと(笑)。
 プロットとしては、これもかなり手垢のついた“不良素人運動部入部モノ”なんですが、このお話としてはヒロインも適度に性格が悪いのが、かえってプラス要素になったのかな、という気がします。これが真面目なストーリーだと居た堪れませんが、コメディだとノリが軽くなって素直に楽しめるようになるのではないかと。
 ただし、シナリオは単純で内容も薄いですし、柔道マンガのようで全然柔道していない…といった弱含みの要素もありますね。まぁ一長一短といったところでしょう。

 今回の評価
 評価はとしておきます。デビュー作、しかも月例新人賞の受賞作掲載ならこのレヴェルでも御の字でしょう。
 ちゃんとプロのマンガ家としてのお仕事が出来ていますから、「十二傑」受賞も肯けます。ただ、ここから連載級の実力を身につけるまでには、高いハードルをいくつも越えなければならないでしょうが……。

 
 ◎読み切り『ごっちゃんです!! ─完結編─』作画:つの丸

 ●作者略歴
 連載作品の完結編ということで、ここでは割愛します。詳しくは『ごっちゃんです!!』第1回レビューのレジュメ(03年6月20日付講義)をご覧下さい。

 についての所見
 
既に過去のレビューで述べた事も多いので、細かい話は割愛しますが、やっぱりこの人、絵は上手いですよね。特に動的表現が達者で、相撲シーンがとても迫力があってしかも見易いです。『マキバオー』で培った実力というのは、かくも凄かったのかと改めて認識させられます。

 ストーリー&設定についての所見
 登場人物や世界観、設定の描写・説明を一切しないで済む完結編ですから、他の「赤マル」掲載読み切りと比べるのはアンフェアですが、よくぞ限られたページ数でここまでボリュームのあるシナリオを詰め込んだな…と素直に感心します。
 ラストシーンの国技館で、平成27年5月場所で純太が横綱として優勝している写真の額が登場するんですが、こういうさりげない部分を使って状況描写や後日談を入れているのが心憎い演出です。

 ただまぁ、こういう特殊な事情で超高速ストーリー展開したからこそ、これだけレヴェルの高い完結編になったとも言えるわけで、ケガの功名と言えば良いのか、エネルギーを注ぐベクトルが違うと言えば良いのか……。

 今回の評価
 これが番外編的ストーリーなら、今回のエピソードの単独評価も出来るのですが、今回は週刊連載の延長上にある完結編ですからねぇ……。敢えて評価は差し控えさえてもらいます。その代わり、週刊連載終了時点でB寄りB+とした作品通じての評価をB+に上方修正しておきましょう。


 ※総評…毎年ハイレヴェルにある春号ということもあって、A−評価3作品と豊作でした。そこまでいかない作品でも及第点以上の技術が感じられるものも多く、全体的なレヴェルは今年もかなりの高水準だったと思います。
 ただ、あと少し工夫をすれば、もっと完成度が高くなったのに…という惜しい作品も目立ちました。「ジャンプ」系の若手作家さんは、年に何度も作品を発表出来るわけでもないですから、少ないチャンスを生かすためにも、トコトンまで内容や設定の練り直しをしてもらいたいところですね。 


 ……というわけで、今回も何とか乗り越えられました(笑)。来週からの、いつもの内容のゼミもどうか宜しく。ではでは。

 


 

2004年第11回講義
5月4日(火・休) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(3)

 ◎前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回

 お待たせしました。1ヶ月ぶりに復活の高知旅行記です。当社会学講座の常とはいえ、すっかりタイムリーさを逸してしまい恐縮ですが、まぁ素直に楽しんで頂ければ幸いです。
 なお、旅行当時の駒木はまだギリギリでモデム配りやってる頃ですので、原則的に当時の状況に即した内容になります。皆さんも今年3月末にタイムスリップした感覚で受講してもらえると幸いです。

 ──それでは、レポート本文へと参りましょう。時は旅行初日(3月22日)の午前7時40分過ぎ、場所はJR高知駅前です。……しかし、レポート2回で旅行初日の午前7時台までしか行ってないってどういう事だ(苦笑)。


 高知駅に着いたはいいが、競馬場行き無料バスの臨時始発は午前8時半。まだ小一時間ほどの余裕がある。
 この時間を無駄に過ごす手は無いだろうという事で、駒木は雨降りしきる中、駅から歩いてすぐの所にある高知中央郵便局へ向かった。目的は言うまでもなく、昨夜の麻雀で時間以上に潰してしまった財布の中身の補充である。
 いくら地方とはいえ、県庁所在地の中央郵便局クラスなら7時台からATMも動いているだろう…とチェックを入れておいたのだが、果たしてビンゴ。行動に不自由しない程度の金額(ギャンブル場に行く時は余分な金を持っていかないのがセオリー)を引き出す事に成功し、速やかに駅前へ戻る。
 それにしても、早朝・夜間、土・日・祝日問わず手数料ナシで貯金を引き出せるから郵便局のATMは有り難い。これまでも公営ギャンブル場や雀荘近くの郵便局に何度お世話になった事だろうか。いやまぁ、お世話にならないのがベストなのだが。

 そして場所は再び高知駅前。雨の中立ち尽くすのもアレなので、長距離バスのチケットセンターを兼ねた簡素な待合室で時間を潰す
 同じ事を考える人も多く、待合室はかなり混み合っていたが、それでも長椅子に1人座れるスペースを確保し、腰を下ろす。待ち時間で何かやりたいところだが、月曜の早朝では「ジャンプ」も売っておらず、駅売りの競馬新聞も早々に完売で、全くの手持ち無沙汰に追いやられてしまった。
 こうなると、やる事と言えば周囲の観察ぐらいしか残されていない。そこで、挙動不審にならない程度に高知競馬場へ向かうであろう人々の構成や動向をチェックしてみる事にした。
 まず客層連休明けの平日という事で、ちょうど春休みの真っ最中である学生客が多いのではと予想していたのだが、それほど多くない。どうやら高知という、本州の大都市圏からは気軽に行けない地理的条件がネックになったのだろう。
 意外と多いのは20代後半〜40、50代の女性グループ客。いわゆる主婦の皆さんである。なるほど、ハルウララの話題を採り上げたTV番組──朝〜昼のワイドショー、夕方の情報番組──を一番よく観ているのはこの人たちだ。本来は競馬場に最も縁遠い層なのだが、これぞハルウララ効果というヤツなのだろう。もっとも、この人たちがハルウララ抜きでリピーターになってくれる見込みは、ヅラを取った高橋克実の頭くらい薄いのだが……。
 次に会話等から遠方からの来客を探ってみたのだが、やたらと関西弁が聞こえて来て思わず苦笑。近畿圏の人間は、どこへ行っても躊躇無く関西弁で、しかも大声で会話するのでとにかく目立つ。そのせいで関西弁以外の会話があまり聞き取れず、参考にならなくなる(笑)。……まぁ実際、高知競馬にやって来る県外からの客の内訳を見ると、交通の便の悪い四国3県からよりも、長距離バスが充実している京阪神圏からの人の方が多いくらいだったりするのだけれども。
 で、勿論、そんな一見客に混じって地元のオッチャンたちもパラパラとは確認できる。ただ、さすがにこんな大混雑が予想される日に、しかも朝イチで競馬場へ向かおうという人は少なそうだ。ただ、そもそも高知競馬の固定客の絶対数からして今日の予想来場者数の1/10程度で、普段は送迎バスも乗客10人未満らしいから、“地元勢劣勢”になるのは自明の理ではある。

 駒木が乗って来た電車から、無料バスの発車までに到着する電車が少ない(平日の朝だというのに、上り・下り合わせて僅かに3本。さすがこの辺がローカル線)こともあって、バスを待つ人の数はそれほど増えてはいないようだった。しかし、外のバス停から待合室に伸びる列に並ぶ人以外にも近くでバラバラに雨宿りをしている人も多くいて、実際にはどれくらいの人数がバスを待っているのか分からない。人員整理をする人もいないようで、これはちょっと危ない気がする
 他の公営ギャンブル場ならばバス乗り場に警備員が2人くらい常駐しているものなのだが、そもそも危機管理の必要がない競馬場だけに、どうやらそこまで頭が回らなかったらしい。幸いにもパニックになるほどの人数ではなかったので良かったが、事故が起こるのはこういう主催者側がタカを括った対応をしたケースの時が多いだけに、今後は気をつけてもらいたいものだ。高知競馬に限らず、公の機関が万単位の人を集めるイベントをする際は、職員を一度コミケに派遣して人員整理の実地研修させるべきだと思う。これは真面目な話。
 果たして、午前8時半前に1台のバスがやって来た時、ホラー映画で主人公たちに迫るリビングデッドのように、ゾロゾロと人がバスに群がり始めた。しかもバスがバス停ではなくロータリーの中途半端な位置に止まってしまったからタチが悪い。これでは早い者勝ち、ヨーイ・ドンの競走ではないか。
 こうなったら、もうどうにもならない。鉄火場の掟は「トロい奴はバカを見る」だ。乗り遅れた後で「俺は40分前からキチンと並んでいたのだ」と文句を言っても聞いてくれる相手すらいない。かくなる上は待合室を飛び出し、バス乗降口めがけてダッシュ。2000年の有馬記念のテイエムオペラオーのように群集を掻き分けて、どうにか車内へ乗り込んだ。バスはギリギリまで乗客を詰め込んだが、それでもかなりの積み残しが出たようだ。次のバスまで30分。後から起こった出来事を考えると、この差は非常に大きかった

 バスは市街地を抜け、郊外を延々とひた走る。所要時間約25分と聞いていたが、雨の平日通勤時間帯という事で、更に時間がかかっているようだ。窓ガラスが曇っていて外の様子が見えないのがもどかしい。
 車内の会話を聞いていたが、やはり目立つのは関西弁。偶然隣に立っていた中年女性も「尼崎から来た」ということで、何だか園田競馬場行きの送迎バスに乗ったような感じだ(笑)。それでも客層が“薄い”のがこの日の特徴で、その女性は昨日の阪神大賞典で武豊(リンカーン号)が勝った事を「今日の景気付けになる」と素直に喜んでいた。馬連1.5倍のレースで心底喜べるのは競馬初心者しかいない。ちなみに、こちらはザッツザプレンティから馬単流しで2着−1着、3着、4着で手痛い不的中を喫していたので、心中はジャイアンとしずかちゃんにまでソッポを向かれた時のスネ夫の顔みたいに複雑に歪んでいたと申し上げておく(笑)。

 やがてバスは競馬場から数百m離れた道路に停車。どうやらここから歩けと言う事らしい。「何だよ、入口前まで乗り付けるんじゃないのか」と思ったが、すぐに理由が判った。既に入場待ちの列が物凄い長さになっていて、競馬場前に乗り付けても混乱を招くだけだったのだ。
 始発バスに乗れば普通に“先頭集団”だろうと思っていたが甘かった。バスの運行前にタクシーでやって来たグループ夜中に自家用車でやって来た徹夜組、それに加えて「観戦バスツアー」の参加客と思しきオバチャンの集団が既に開門待ちの列を作っており、駒木たちバスで来た客は完全な“後発組”であった。
 確かに競馬ブーム全盛期の中央競馬場には、指定席やゴール前最前列の席を狙った徹夜&始発組の客が大勢いた。けれども、まさか(ハルウララ&武豊目当てとはいえ)雨の高知競馬場でこういう事態になるとは思ってもみなかった。いくらなんでも必死過ぎないか?(笑)

 仕方なく列の最後尾に着くと、間もなくして客入れが始まったらしく、行列が大きく動き始めた。後から聞いた話によると、警察から「これ以上の放置は危険」という勧告が出て開門時刻前倒しに踏み切ったそうだが、これは英断だったと思う。雨も降っていたし、行列客の体調を考えれば、もっと早くても良かったくらいだろう。
 行列で駒木の1つ後ろに並んでいた男性客2人の会話が聞こえて来る。片方は5年がかりで全国競馬場制覇を達成したサラリーマン、もう片方はサッカーファンもやっている若者で、週末に関東でJリーグ公式戦を生観戦したその足で高知までやって来たのだと言う。うわ、“薄い”客ばかりだと思っていたら、やっぱり局地的には恐ろしい“濃度”のファンがいるもんだ。

 やがて辿り着いた入場門付近では、外向馬券前売発売所(入場門前にある場外馬券売場)で既にハルウララ馬券を求める列が出来ていて、その脇には特観(特別観覧席)の入場券を求める行列もある。ダメモトで特観の空席状況を聞いてみたが、今から並んでもタッチの差で間に合わないとの事。特観を確保出来れば、こういう日でも余裕を持って観戦出来たのだが残念だ。
 入場はコイン式ゲート方式。電車の自動改札で切符の代わりに100円玉を入れる…と言えば判りやすいか。最近の公営ギャンブル場では主流になって来ているが、高知競馬で大枚叩いてこれを導入しているとは思わなかったので、正直意外。ただ、この日のシチュエーションで入場券を買ってもぎってもらう方式だったら混乱必至なので、これは非常に助かった。まぁそうなったらそうなったで、ゲートで箱にでも100円を投げ入れてもらって入場する事になったのだろうが(事実、この日も混雑時には自動ゲートを止めてそうしていたそうだ)

 さて、いよいよ入場だ。時刻は午前9時30分頃だったろうか。
 競馬場に入ったからには、より一層効率的な行動が求められる。ここは観光地じゃなくて鉄火場だ。先に述べたように、ギャンブル場ではトロい奴はバカを見る。何事も迅速に行わなければならないのだ。
 まずは競馬新聞の購入から。他の競馬場と同様、入場ゲート付近に売店が出ており、そこで専門紙を購入する。「専門紙はシェアの高い物を買え」というポリシーに則って、高知では有名である(らしい)、日本最古の競馬新聞・『中島競馬号』を購入する。普通の競馬新聞と違い、中綴じの小冊子形式で扱いやすい。馬柱も横組みで、普段「競馬ブック」派の駒木には大変有り難いのだけれども、やはり「所変われば品変わる」で微妙に読み辛い。
 競馬新聞を購入した後、小走りでスタンドへ。向かうは朝から最終レースの馬券まで発売する、前売馬券発売窓口だ。そう、場内がまだそれほど混み合わない第1レース前にハルウララの馬券を確保してしまおうというわけである。
 駒木が窓口前にやって来ると、既に前方には20〜30人くらい並んでいただろうか。それでも入場で幾分出遅れた事を考えると許容範囲だ。その直後から列が異様に伸び始めて、あっという間にカウント不能な長蛇の列に成長してしまったので、かなり危なかったと言える。この辺は競馬場慣れしていない“薄い”客層に助けられたところだろう。この日はマークシートの塗り方や馬券をどこで買うのかすら知らない人も大勢いたようだ。
 順番が来るまでは、先程購入した競馬新聞でレースの予想。競馬では場ごとに馬や騎手の顔触れ等が全く異なるので、初参戦の時は予想に手間取り困惑するものだ。……が、第1レースの馬柱に思わぬ馬名を見つけた途端、そんな困惑は一気に吹き飛んだ。

NHK杯(G2)2着馬
マイネルガーベ

しかも御年12歳
 

 ……いやあ、ビックリしたねぇ。12歳にもなって現役を続けている事も知らなかったが、最果ての地・高知競馬の、しかも下級条件で入着一杯のレースを続けているとは全く思いもしなかった。何しろ野球で言えば、50代も半ばを過ぎた往年の大リーガーが、独立リーグの破産寸前のおんぼろチームで敗戦処理投手をやっているようなものなのだ。
 「うあぁぁ……」
 思わず呻き声が漏れる。ナリタブライアン世代以前からの競馬ファンにはこの気持ちが判ってもらえると思う。そうでない方にも、昔お世話になったバイト先の社長が偶然乗ったタクシーの運転手をやっていたシチュエーションとか、高校の時に世界史を教えてもらった学校の先生がヤフーのモデム配ってた……ってそれは俺か

 そんな感慨にふけりながらも、駒木はレース予想を進めていった。涙を飲んでマイネルガーベは予想から叩き切った。2レース、3レースと時間をかけながらもフォーカスを定めてゆく──っておい、何分待たせるんだ?
 午前10時くらいから馬券の発売自体は始まっているのだが、1時間経っても列が進まない。今は昔、旧社会党の牛歩戦術みたいだ。気がついたら第1レースの締切時刻が迫っているではないか。おいおい、一体どうなってるんだ──? (次回へ続く

 


 

2004年第10回講義
5月1日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第5戦・天皇賞(春)」

 いつの間にか折り返し地点。そろそろ何とかしないと寒い結果になりそうな第2回馬券ラリーを今回もお届けできました。
 いつまで「暫定」なんだ、という声が聞こえて来そうですが、あともうちょっとお待ちを。多分次辺りには外せると思うんですけどね。まだ自分の体調に自信が持てないのです。申し訳無い。

暫定第5戦・天皇賞(春)(京都・3200芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

ザッツザプレンティ 安藤勝
収穫と課題の両方を得た阪神大賞典をステップに、菊花賞以来のG1勝利を目指す。大敗癖は気になるが、長距離戦での実力はメンバー中最右翼。
        ナリタセンチュリー 吉田稔
年明け時点は1000万条件だったが、今やバリバリの重賞クラス。しかし大阪杯は一線級の壁にブチ当たった感があり、更なる相手強化はやはり大きな不安材料に。
        ダービーレグノ

近走ではチャンピオンディスタンスでの健闘ぶりが光る。今回はデキも最高潮だが、G1レースで何度となく大敗重ねた馬だけに過度の期待は?

        ウインブレイズ 木幡

6歳冬に本格化した超晩成型。このメンバーでも入着以上の期待は持てる地力はあるが、大型馬の休み明けはやはり大きなマイナス。

      サンライズジェガー 福永

昨年の2着馬。スピードでは見劣り否めぬも、スタミナ・底力勝負の泥仕合になれば父・リアルシャダイの“ステイヤー力”で台頭する。現状、有力馬の凡走待ちだが侮れぬ。

        イングランディーレ 横山典
今やダートグレード競走の常連も、“本職”は芝のステイヤー。昨年9着完敗の過去は気になるが、さりとて完全無視は出来ぬスタミナはあって……。
      × ウインジェネラーレ 蛯名

前走の日経賞で大金星。人気薄で強いタマモクロス産駒の面目躍如だった。今回はマイペース逃げで後続になし崩しに脚を使わせたいところだが、やや厳しい注文か。

  ×   × シルクフェイマス 四位

このシーズン最大の昇り馬。5連勝&G2レース連勝で一躍表舞台の住人に。一気の相手強化と2ヵ月半のブランクをどう克服するか。今回が今後を占う試金石に。

        チャクラ 後藤浩

昨年末のステイヤーズS覇者。有馬記念、日経賞のパフォーマンスは不満だが、「天皇賞がこの春最大の目標」と陣営の士気は高い。好位〜中団からどこまで食い下がるか。

    ×   10 ファストタテヤマ 安田

阪神大勝典は見せ場十分。菊花賞2着の実績を思い出させる好走だった。メンバー強化で厳しいレースになるが、展開向くペースなら一気に怖い存在へ。

× 11 ネオユニヴァース デムーロ

大阪杯は辛勝も格好はつけた。三冠阻止された淀の長距離戦だが、挑戦者に立場を変えて攻撃的な競馬でライバルたちの隙を窺う。ただし3200mの距離は適性ギリギリか。

        12 マーブルチーフ 池添

日経新春賞、京都記念と好走したが、このメンバーに混じると瞬発力不足は明らか。出来の良さで果たしてどこまで。

        13 ナムラサンクス 渡辺

万葉S、ダイヤモンドSと連勝して上り調子だったが、阪神大賞典の完敗で一線級との力関係が疑われる結果に。スローペースの決め手勝負になれば強い馬だが、果たして……?

14 リンカーン 武豊

阪神大賞典の走りは、もう人気薄のフロックとは呼ばせないほどのインパクトだった。1番人気、2kg増、相手強化と克服すべき条件はいくらでもあるが、勿論優勝候補の一角だ。

        15 カンファーベスト 藤田

掲示板を決して外さぬ堅実さ、相手なりに食い下がる底力は十分に感じられる。懸念材料は、これまで2200m戦までしか経験の無いキャリア。

16 ゼンノロブロイ オリヴァー
最後の直線での伸びあぐねが目立つ最近だが、力関係上位は明らか。比較的マークの緩い気楽な立場を利して、ライバルたちを出し抜く。
        17 ヴィータローザ 岩田

セントライト記念後、煮え切らない結果が続いていたが、前走でようやく弾みが。相手関係は厳しく苦戦は必至だが、デキそのものはメンバー中随一。

        18 アマノブレイブリー 小牧太

ドンカスターSの覇者で、距離適性は問題なし。しかし58kg定量戦でこの相手。地力の差は大きそう。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 ハナはウインジェネラーレかイングランディーレが濃厚。しかし多頭数の長距離戦、序盤の位置取りはかなり流動的だろう。有力馬では、ザッツザプレンティ、リンカーンが好位から、ネオユニヴァースとゼンノロブロイは中位から勝負どころで捲り気味に追い上げる。
 ペースそのものは比較的ゆったりした流れで、道中は淡々と進んでいくと思われる。ただし、決め手勝負を望む馬よりロングスパートの底力合戦を好む馬が多く、3〜4コーナーあたりからレースが一気に動き出しそうだ。逃げ馬だけはさすがに不利だが、他の脚質なら能力次第で何とか勝負になりそう。ただし、ギリギリまでエネルギーを温存できる好位組が一番有利には違いない。

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:ザッツザプレンティ》
 

 多頭数でレヴェルの低さが指摘されそうだが、昨年の末期状態のメンバーに比べると雲泥の差。昨年の菊花賞1〜4着馬を中心に、現時点では最高に近いメンバーが集まった。これならハイレヴェルの攻防を期待できるだろう。
 さて、今回本命に抜擢したのは菊花賞馬・ザッツザプレンティ。前哨戦は2着に敗れたものの、斤量2kg差、苦手だった折り合いをつけての決め手勝負…という厳しい条件が揃っていた。人気をやや落として気楽な立場になった今回は期待出来る。安藤勝己騎手のこの馬に対する気持ちも高まっているし、ここは勝負駆けとみた。
 相手はやはり菊花賞上位組。印をつけた4頭が、やはり地力の上で図抜けている。ネオユニヴァースもゼンノロブロイも、まだ長距離戦で見限るには材料不足。むしろ今回は“買い”の時だとみる。ただし分不相応な“暫定チャンピオン”の格でマークが厳しくなるリンカーンはギリギリの2着候補までと考えた。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(2日未明時点)
単勝 100円 5.2
馬連 1-11 200円 10.3
  1-16 200円 21.6
  11-16 100円 14.8
  1-14 100円 4.9
  ── ── ──
  ── ── ──
馬単 1→11 100円 22.3
  1→16 100円 43.6
三連複 1-11-16 100円 27.2


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:リンカーン》

 予想するにあたって、色々と難しい材料の多いレースになりましたが、こういう時こそ基本に立ち返って実績重視、阪神大賞典組重視ということで。
 本命はリンカーン。昨年の段階ではまだフロックかなと思っていたのですが、前走の様子を見るとどうやら本格化のようですね。武豊騎手の手綱捌きにも期待大です。
 面白そうな穴馬が見付からなかったのは残念ですけど、何かと物入りなGW、ここはとりあえず手堅くお小遣いを増やしておきたいですよね(笑)。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(2日未明時点)
単勝 14 100円 2.1
馬連 11-14 200円 5.3
  1-14 100円 4.9
  1-11 100円 10.3
  14-16 100円 9.8
  8-14 100円 15.4
  ── ── ──
馬単 14→11 100円 8.7
  14→1 100円 7.7
三連複 1-11-14 100円 6.1


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:サンライズジェガー》

 こういった、本命サイドでガッチガチなレースはあんまり好きじゃないんですよねー。……でも、似たような雰囲気の菊花賞で万馬券を当てたりしてますので、アグレッシブさを忘れずにガンガン攻めて行きたいです。
 ……というわけで本命は去年の2着馬サンライズジェガー。人気馬がボロボロ凡走した場合、この馬に出番が回るんじゃないかと思うんですよね。
 流す相手は、やっぱり4頭もいたらどれか来そうな菊花賞組の4頭に、サンライズジェガーと同じくヒシミラクルの片棒を担いだファストタテヤマを。でも、ちょっとムリヤリ国士狙いにいったような感じかな?(苦笑) 本当はさんざんお世話になって来たリンカーンに本命打ちたいんですけどねー。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(2日未明時点)
単勝 100円 62.4
馬連 5-14 100円 66.6
  5-16 100円 278.8
  14-16 100円 9.8
  1-5 100円 101.1
  5-11 100円 137.3
  5-10 100円 242.2
馬単 5→14 100円 304.8
  5→16 100円 928.8
三連複 5-14-16 100円 191.2

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:ネオユニヴァース》

 距離が3200m、メルボルンカップの日本版みたいな感じで、春の天皇賞とても好きなレースです♪
 でも予想は相変わらずどうしていいのか……(苦笑)。ちょっと強そうな馬を色々教えてもらって、で、「ガイジンの騎手って、大一番で良い騎乗するよ」って博士が言ってたのも参考にして、デムーロ&オリヴァー狙いということにしました。あとは相変わらず競馬新聞見て、強そうな馬を選んでみたりしました。ワタシなりに一生懸命ガンバった予想なので当たって欲しいです。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(2日未明時点)
単勝 11 100円 4.7
馬連 11-16 100円 14.8
  11-14 100円 5.3
  14-16 100円 9.8
  1-11 100円 10.3
  8-11 100円 27.4
  7-11 100円 45.6
馬単 11→16 100円 26.2
  11→14 100円 11.5
三連複 11-14-16 100円 10.6

 やはりというか、微妙に偏った予想になりました、駒木研究室(笑)。しかしリンカーン絡みの馬券、安過ぎませんか?(苦笑) 点数絞っても絞っても儲からないような気がするんですが……。
 まぁ駒木は別に困らないんですけどね。あ、リンカーンが1着に来られたら困るのか(笑)。
 ……そういうわけで(?)、またレース後に。


天皇賞 成績

        1着 イングランディーレ
2着 16 ゼンノロブロイ
  ×   × 3着 シルクフェイマス
        4着 チャクラ
        5着 ナリタセンチュリー

単勝6 7100円/馬連6-16 36680円/馬単6-16 75650円/三連複6-8-16 211160円

 ※駒木ハヤトの“負け犬の遠吠え”(不的中)
 また展開大外し。申し訳無いです。ウインジェネラーレの騎手のアレな部分を失念してました(苦笑)。
 でもまぁペース云々よりも、2番手、3番手に勝ち目の無い馬がいた事の方がイングランディーレの勝因としては大きかったと思いますよ。逃げ馬の天敵は、勝負どころでプレッシャーをかけて来る先行馬ですから、それが逆にバテてくれるのは天の助けです。
 有力馬はゼンノロブロイ、シルクフェイマス以外は惨敗。まぁあそこまで惨敗してくれると、逆にノーカウント扱い出来て気が楽なんですけどね。実力負けじゃないんで、また人気が微妙に下がったところを狙い撃ちさせてもらう事にします。

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 レース直後、「このやるせない気持ちはどこかで……」
と思ったら、2週間前の皐月賞の時でした(苦笑)。
 ……何を言っても反省どころか愚痴にしかなりませんので、今日は布団を被って寝てしまうことにします(笑)。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 あー、そっちだったかー……というのが率直な感想ですねー……って先々週も言いましたっけ?(苦笑)。
 追い込み馬じゃなくて、逃げ馬だったんですねー、◎印つける馬はー。あーあ、そっちだったら10万点追加だったんですけどねー。
 でもまぁ、ハナからこのレースは捨ててましたから、来週頑張ります。NHKマイルCは穴党の出番だと思ってますので!

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラックデイ”(不的中)
 ん〜〜〜〜〜(頭を抱えている)
 どうしてどの馬もイングランディーレを追いかけて行かないのか、不思議で不思議で……。駒木博士とか珠美サンに質問したら、色々と教えてくれたんですけど、ワタシの知識では何がなにやら……(苦笑)。
 あ、順子サン、どうしてイングランディーレは……え? どうしようもなくハズれたレースを後からグジグジ考えてもムダ? そうですね、そういうコトにしときます(笑)。

暫定第5戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 4080
(1位)
0 4080
(1位)
栗藤珠美 1440
(2位タイ)
0 1440
(2位タイ)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 1440
(2位タイ)
0 1440
(2位タイ)

 (ポイント・順位の変動について)
 前回に続いて的中者ゼロ。イングランディーレの“怪走”の前に、またも4者討ち死にとなった。これでついに全員の回収率が100%を割り、昨年の天皇賞(春)並の低レヴェル混戦ムードということに……。


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