「特集」アーカイブ(2001年11月)

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11/18 廃止決定・西宮競輪場レポ
11/16 田原成貴調教師覚せい剤所持&使用で逮捕・後日談(後編)
11/15 田原成貴調教師覚せい剤所持&使用で逮捕・後日談(前編)
11
/14 「コロちゃんのコロッケ屋」がローソンを提訴
11/12 特別企画・駒木ハヤト、大いに語る
11/10 ニュース解説:公務員の兼職禁止規定について
11/9  アメリカで18歳の市長誕生
11/8  自衛隊、アフガン方面へ派遣へ
11/7  寸劇・駒木政治経済研究所(3)
11/5  寸劇・駒木政治経済研究所(2)
11/4  寸劇・駒木政治経済研究所(1)

11/2  寸劇・駒木政治経済研究所(プロローグ)
11
/1  ニュース解説「塾の元生徒にストーカー」


11月18日(日) 

 「今日の特集」廃止決定・西宮競輪場レポ

 世の中のほとんどの方はご存知無いと思いますが、日本各地には競輪場が50場もあります。競輪は昭和21年に小倉競輪場で産声を上げて以来、大衆娯楽として大いに繁栄しました。特に現在の東京ドーム付近にあった後楽園競輪場が栄えていた頃などは、競輪は公営ギャンブルの王様として君臨していたものです。
 しかし、“地域別のライン”などという、他の公営ギャンブルに無い複雑なレース形式が敬遠されたのか、人気の面でも収益の面でも競馬や競艇の後塵を拝するようになり、今では過剰気味の競輪場と競輪選手を持て余し気味。全国の競輪場では次々と赤字収益に転落し、施行主である地方公共団体の悲鳴が聞こえて来る現状です。
 と、そんな中、かつては全国でも一、二を争う繁栄を誇った西宮競輪場と甲子園競輪場が、ついに来春一杯での廃止が決定してしまいました。最近では観客動員も収益も激減。名物の、「アホ」「ボケ」「コジキ」などといった、日本一汚いヤジも湿り気味という惨状で、数年前から定期的に来場していた駒木も危機感を募らせていたのですが、ついにこの度、文字通り力尽きてしまう格好となりました。

 さて、今回の「特集」は、そんな廃止の決まった直後の西宮競輪場の模様を、普段は競輪に縁遠いであろう皆さんに紹介します。これも何かの縁。なりたくも無い生き証人になって頂きます。

 西宮競輪場(西宮スタジアム)は、阪急電鉄神戸線の西宮北口駅から徒歩5分弱の所にあります。特急停車駅から目と鼻の先にあるという好立地。それにも関わらず客入りが伸びずに廃止が決定してしまった辺りに、この問題の根深さが見え隠れします。
 この日は割と競輪客と思しき人々が見受けられたのですが、いつだったか、午前中で学校の仕事を終え、正午過ぎに西宮北口駅に降り立った時など、競輪場に入るまで人っ子1人見えず、「本当に今日は競輪をやっているのか?」と心配になった事もあったりしました。
 駅から競輪場までの短い距離を歩き、敷地内に入ります。敷地に入ってからスタジアムまでには、競輪新聞の売店や売り子ならぬ売りババア、文化祭の模擬店のようなホルモン焼きの屋台、さらには街頭の占い師のように見向きもされない予想屋などといった“露天商”が出ていて哀愁をそそります。
 特に競輪新聞売りの方々は客数に比べて過当競争気味で、1人あたりの売上は2万円前後と推測され、売りババアのお姉さん方、及び競輪新聞の会社の経済状態を悲観してしまい、競輪を始める前からブルーになる事請け合いです。

 競輪新聞を既に購入済みの駒木は、ブルーな心境のまま、それらをやり過ごします。骨董品のような自販機で入場券(50円!)を買い、いよいよ入場です。
 入場口では、異様に場違いな妙齢のコンパニオンが、デパートガールのような「いらっしゃいませ」の挨拶と共に切符をもぎってくれます。実はこれ、今年から始まったサービス(?)で、企業努力を全くしない西宮競輪としては異例の出来事でした。それまでは仏頂面のオッサンがもぎっていたので、格段の進歩だったのですが……

 さて、場内の様子です。駒木は、もうかれこれ6年ほど通っていますから慣れましたが、恐らく初めて来場された人は、その異様な光景に驚かされるのではないかと思います。
 なにせ、場内にいる人間の半分以上が老人なのです。
 平日開催が中心の競輪は、時間が比較的自由になる自営業者が客層の中心で、それに作業服姿の若者や、店を息子に譲った後のご隠居老人が脇を固める、といった具合なのですが、客の新陳代謝に失敗した西宮競輪は、今やご隠居がマジョリティとなってしまっています。ご隠居老人は、時間こそ自由ですがお金は自由になりません。よって、1人あたりの車券購入金額はかなり低いものになってしまうのです。
 駒木が競輪場に初めて足を踏み入れた頃は、まだ不景気も生ぬるいものでしたので、場内には万札を突っ込む自営業者の姿もチラホラ見受けられたのですが、今では夏目漱石1〜2枚が限界。見事なまでにデフレ社会を体現していますね。 

 では、駒木も車券を買う事にしましょう。
 車券の発売窓口は無数にあり、往時の繁栄を偲ばせるものがありますが、現在は全体の1/4程度しか使用されていません。それでも行列が出来る事は稀で、これでも十分すぎるくらいです。実は今年の3月まではこの倍程度の窓口が稼動していたのですが、収益の赤字転落を受けて大リストラを敢行。人員削減と給料大幅カット(通説では5割減とか)された結果が現在の姿なのです。
 西宮競輪場は職員の労働組合が強く、中央競馬や園田競馬などが先んじて人員整理を行う中でも、首切りが出来なかったという経緯があります。
 それがどれくらい酷かったかと言うと、各競馬場では馬券販売や的中馬券の払戻しが次々と機械化・自動化される中、西宮競輪場での車券販売は、全てが職員による対面方式。しかも数年前までは払戻しもそうでしたし、さらには両替のための窓口が設置されていたりしました。えげつないことに、その両替窓口に意味を持たせる為、車券販売の窓口では対面販売なのにお釣りが出ないという狼藉振り。一体誰のために車券を売っているのか分からなくなったりしたものでした。
 しかし、何を言っても今では空しいばかり。とっとと車券を購入して、観客席へと向かいましょう。

 西宮競輪場は、西宮スタジアム(旧西宮球場)のグラウンドに組み立て式のバンク(レース場)を設置して運営されているので、観客席は即ち野球場の客席、ということになります。
 当然キャパシティも大きく3万人以上。それでも全盛期は立錐の余地が無かったと聞きますから、当時の繁盛振りが偲べます。
 しかし、今では1日の入場者数が3000人程度。入場者は絶えず入れ替わりますから、実際に場内にいるのは1000人台というところでしょう。
 ですから、観客席は悲しいくらいにガラガラです。
 リストラが実施された今年の3月から、場内の半分程度のスペースは閉鎖されたのですが、それでも不便さを感じるどころか、まだまだ空間を持て余しているといった具合です。
 駒木はゴールに最も近いバックネット裏に陣取るのを常としていますが、ここはゴール前の攻防が観やすい変わりに、最後の勝負所である3〜4コーナーが死角になってしまっているので人気がありません。観客の多くはバンクの全体が見渡せ、なおかつ選手に野次を飛ばしやすい外野スタンドで観戦しています。今日は気候が良いせいか、観客のテンションも高く、不甲斐ない選手に対する野次がバックネット裏まで届いてきて、うららかな陽気を台無しにしてくれます。
 さぁ、レースが始まる時刻となりました。バックネット下の職員控え室から、審判委員などがゾロゾロと隊列を組んで出てきました。やはり今年の3月までは、この列の中に“選手紹介の時に旗を振るため”だけに雇われていたレースクイーン(?)がいたのですが、これもリストラの対象になりました。「セクハラ」という言葉が無かった十数年前までは、アンダースコートが見えることを前提にしたようなミニスカの女性が旗を振っていたりしたのですが、このあたり、文化も経済も何もかもひっくるめて隔世の感といった感じがします。
 その後、選手が入場してきてレースが始まります。いくら寂れた競輪場とはいえ、レースの質自体は悪くありません。もっとも、車券売上の少ない競輪場は賞金も安いので、選手の気合も、首都圏の競輪場で走る時と比較すれば、やや消沈気味というところなのでしょうが。

 レースは3分強で終わります。それから次のレースまでは数十分間。つまり予想するための時間というわけです。では、その時間を利用して、場内をブラブラ歩いてゆきましょう。
 スタジアムの内外には、食べ物や酒を売る売店や食堂が建ち並んでいます。競輪場によっては暴動防止のため(!)、アルコール類の販売が未だに解禁されていないところもあるそうですが、西宮ではビールやカップ酒も売っています。アルコールが禁止されていた(いる)理由と言うのは、今では客も老いさらばえてそんな気力もありませんが、昭和20年代などはしょっちゅう暴動が起き、放火騒ぎまで起こっていたからなのです。そんなわけで、未だに火を恐れて酒を自粛したりしているわけです。もっとも、そんなこんなの内に業界そのもののケツに火が点いてしまっては皮肉にもならないのですが。
 さて、スタンドの外にある売店で売っているものをざっと挙げてみますと、ホルモン焼き(1串100円)、焼餅(1つ100円〜)、ごぼう天(2つ100円)、お好み焼き(普通のもの400円と、具がほとんど無いもの200円)、天ぷら(1つ120円)……などなど。あとは食堂などで普通のご飯類や定食やサンドイッチ類なども置いています。ただし、ジャンクフードを除いては少々割高です。駒木は、バクチをしている時はホルモン焼きを齧ったりする他は食事を摂ったりしないので詳しくレポートできないのが残念です。ちなみに、そのホルモン焼きは、入場門入ってすぐの売店で売っている“固いほう”のものが美味です。たっぷりとタレを付けて食べましょう。元々捨てるような肉ですので、タレで味を変えないと食べていられません。そんなので美味いのか、というと何故だか美味いのです。いつも食ってて不思議で仕方ありませんが。
 あと、飲み物はお茶が無料サービスとなっています。がぶ飲みすると腹を壊しそうな味ですが、せめて入場料の50円分くらいは飲んでおきたいところです。

 また、場内の至る所には主催者公認の予想屋が立っています。相当昔から新規出店が規制されているらしく、予想屋の平均年齢は極めて高いです。というか、客の誰より年をとっている人ばっかりです。多分、自民党が結党された頃に開業した人ばかりだと思います。なので、そういう人から予想を買うのは、なんだか香典を先払いするみたいで大層気が滅入ります。
 さらに、最近は寄る年波に勝てず引退する人も多いので、1つ、また1つと予想屋の数が減っています。しかし、それが果たして、ただ隠居しただけなのか、それとも人間そのものを引退したのか判らないのが非常に困るところでもあります。

 さて、スタジアムを壁沿いに外野の方まで歩いてゆきますと、突然近代的な建物が姿を現します。スタジアムそのものは築数十年という年季の入りようなのですが、数年前にスタジアムの一部を取り壊して新しいスタンドを建設したのです。随分昔から、「特別観覧席付きのスタンドがあればなあ」などと言われてはいましたが、着工された頃には既に手遅れで、「西宮競輪もいつまで保つか」などと言われていた時でしたので、たかが数年使うためだけに10億単位の金を注ぎ込んだことになります。そんな事を考えながらスタンドを観ていると、小泉改革がもう少し早ければ……などと、恨み言の一つでも呟きたくなります。
 特別観覧席の入り口には、もう午後だと言うのに「残り席数244」などという絶望的な数字が並んでいました。なんだか、「良い団体ほど高いチケットから売れてゆく」というプロレス業界のセオリーを思い出してしまいました。

 それにしても余りにもブルーになる光景ばかりですね。気の弱い人なら鬱病になってしまうんじゃないかと、また余計な事で心配になってきます。

 ……あまりに心配しすぎたせいでしょうか、この日は肝心の車券の方は調子が悪く、配当の安いレースを2つばかり的中させただけでした。そして、年金を使い果たしたお爺さんたちと一緒に駅へ向かう帰りの道中が、この日一番ブルーな場面でした。

 すいません。最後の最後にこんな記事で。

 


11月16日(金)

  「今日の特集」田原成貴調教師覚せい剤所持&使用で逮捕・後日談(後編)

 前編はこちら。また、後日談以前の顛末を知りたい方はこちらから。

 さて、昨日は田原成貴被告の留置場での、無謀と言うべきか、それともただのアホと言うべきか、という行状、及び警察並びに検察の心証が最悪であるという事をお送りしました。
 まぁ、結果的に逆効果になったとはいえ、田原被告が考えている事は己の保身、この一言に尽きます。まるで『北斗の拳』で、秘孔を突かれた後に命乞いをする小悪党みたいな見苦しさでありますが、彼がそこまでして自分を庇おうとしたのには理由があります。
 以下は日刊スポーツのウェブサイトの11月15日付記事からの引用です。 

 なお、田原被告は拘留中の10月中旬、夫人を通じ、平成14年度の調教師免許の更新の申請を行ったことが判明。競馬の世界へ残ることを希望しているもようだが、厳しい状況にあるのは間違いない。

 日本では社会通念上、不祥事を起こした時に出すのは辞表か進退伺と相場が決まってますが、この男、リーチの一発目に初牌のドラ役牌をシレっと出すように、調教師免許の更新願いを出しています。
 見苦しいというか、往生際が悪いというか……とにかくみっともない話ではありますが、別の見方をすれば、それだけ競馬に対する思いが深いということでもあるのでしょう。「泥を被ろうがなんだろうが、俺は競馬が好きなんだ」、と。まぁ、泥ならともかく、今回の件はセメントを頭から被ってるような気がしますが、ここではコレ位にしておきましょう。

 と、ここで問題になってくるのは「日本中央競馬会競馬施行規定」なる法令です。

 第37条 次の各号のいずれかに該当する者は、調教師又は騎手の免許を受けることができない。
 (1) 成年被後見人、被保佐人及び破産者で復権を得ない者
 (2) 禁錮以上の刑に処せられた者
 (3) 法、日本中央競馬会法、自転車競技法、小型自動車競走法又はモーターボート競走法の規定に違反して罰金の刑に処せられた者
 (4) 令第14条第1項第4号の規定により本会、都道府県又は指定市町村が行う競馬に関与することを禁止され、又は停止されている者
 (6) 本会の役員及び職員
 (7) 審査会の委員
 (8) 馬主

 第40条の3 調教師又は騎手が次の各号のいずれかに該当するときは、その免許を取り消す。
 (3) 第37条第1号から第4号まで又は第6号から第8号までの規定のいずれかに該当することとなつたとき。

 覚せい剤取締法違反は10年以下の懲役、となっていますので、このまま公判で有罪判決が下った場合、当然「禁固以上の刑に処せられた」ことになります。執行猶予が下った場合はどうか、ということですが、執行猶予が付けられる場合も、判決文では、

 「被告人○○を懲役2年に処す。ただし、その刑の執行を4年の間猶予する」

 ……という言い方をしますので、「刑に処せられた」ことには違いありません。つまり、田原被告は公判で有罪判決が確定した瞬間、自動的に調教師免許は取り消されてしまうわけです。
 日本では覚せい剤に対する司法の態度は厳しいものがあります。
 他の罪ならば、例えば街角で流血を伴う殴り合いをしたところで、初犯なら間違いなく起訴猶予になります。しかし、覚せい剤犯罪の場合は、たとえ土下座をしようが、入手ルートその他をベラベラ喋ろうが、初犯では執行猶予付がせいぜい、再犯では9割以上実刑になります。下手をすると、一般人がヤクザを殺した時よりも重い量刑になる事もある、それが覚せい剤取締法違反という罪なのです。
 ですから、田原被告が30日以上も罪を認めなかったのは、
 「素直に認めたところで免許取り消しなら、トコトン戦ってやる。だって俺だもん
 と、思っての事だと思います。ご理解いただけたでしょうか?

 ご理解いただいたところで、「すいません。古臭い言葉で恐縮ですが、『逝ってよし』って言っていいですか?」という声が聞こえてきそうではありますがね。

 ところで、今回の件に対する田原成貴ファンの反応はどんなものだったのでしょうか?
 既に事件から1ヶ月余。google検索で「田原成貴 覚せい剤」などと検索してみれば、日本中の田原ファンの日記サイトが焙り出されてくるようになりました。
 田原ファンといえば、熱狂的かつ盲信という印象があるのですが、さすがに今回の一件は、そんなファンにとっても重大すぎるようで、大多数の人は「ただただショックの一言です」と意気消沈。ただ、駒木が確認した限り1件だけ「私は信じない。だって、発信機のことも厩務員がやったんでしょ? 今回の事もきっと濡れ衣」というものがありました。ただ、これは全モー娘。ファンにおける保田圭派のくらいの割合のものと思われますので、気にしないでおきましょう。
 そんな意気消沈するファンのために焼け石に水窮余の策でしょうか、田原成貴厩舎公式ウェブサイト「田原成貴調教師に関する請願署名ご協力のお願い」というコンテンツを立ち上げています。
 その内容を見てみますと……

 先日、銃刀法違反、覚せい剤取締法違反で起訴された田原成貴調教師に関する請願署名ご協力のお願いです。
 今後、JRAの裁定委員会によって同師の処遇が決定されるにあたり、チーム田原サテライト事務局は、以下の二点を同委員会に請願する署名を集め、提出する所存です。

(1)

田原成貴調教師の処遇に関する裁定委員会は、司法の判断が下されてから実施していただくようお願いします。

(2)

裁定委員会による田原成貴調教師の処遇の決定にあたっては、同師のこれまでの日本中央競馬会に対する貢献度、ならびに、すでに報道などで社会的制裁を受けていることを考慮していただき、馬房削減・一定期間の調教停止・過怠金などの制裁にとどめていただくことをお願いします。

 

 駒木は、マスコミの報道が“社会的制裁”になると初めて知りました。しかし、それだと、ほぼ全ての犯罪者が社会的制裁を受け、情状酌量の対象になってしまうのですが、はてさて。
 本来、社会的制裁というのは、今回の件では「調教師免許取り消し」そのものを指すような気がするのですが、「まぁ、日本語って難しいからね」という言葉と共に、力ない笑いを付け加えるにとどめたいと思います。

 しかし、それよりも脱力してしまうのが、このコンテンツの最後の部分にあります。

 なお、JRAの競馬施行規程では、「禁錮以上の刑に処せられた調教師、または騎手は、その免許を取り消す」とされています。したがって、田原師が司法の判断で禁錮以上の刑に処せられた場合、また、裁定委員会が早期に実施された場合、この請願署名は意味をなさなくなりますが、ご賛同いただいた方々の人数は当サイトにてご報告させていただきます。

 ……。

 すいません、しばしの暴言をお許しください。

 

お前ら、アホやろ。

 

 ……
 この類の署名運動というものは、超法規的措置をお願いするためにやるものであるのに、既に事実上の敗北宣言です。この「特集」ではお馴染みの松下幸治候補並の泡沫と言ってもいい、全く馬鹿馬鹿しい署名活動です。
 当の本人が馬鹿だと、それを支える人たちまで馬鹿になるんでしょうかね。

 全国の田原成貴ファンの皆さんは、こんな署名運動をするよりも、彼の裁判費用及び、刑務所に入った時のためのカンパ金を募った方が建設的だと思いますので、そうしていただくようお勧めいたします。

 ファンの人は、絶対こんな記事読んでないでしょうが。

 ※さらに後日談
 この直後、JRAの意見聴取に、弁護士と共に訪れた田原被告は、前日までとは一転して調教師の免許取り消しを申請したようです。つまりは辞職願いというわけですね。
 しかし、JRA側はこれを保留。懲戒処分が下る前に辞職を容認するわけにはいかない、ということらしいです。
 それにしても、急な転向です。理由は当然知る由はありませんが、あの田原被告が謝ったり反省したりする事はまずありませんので、どうにも「実刑逃れのアクション」という臭いがプンプンします。調教師の身分を守るためにダンマリを押し通そうとして失敗したら、今度は実刑逃れのために調教師の身分をポイ。一体、何なのでしょうか、この男は。


11月15日(木)

 「今日の特集」田原成貴調教師覚せい剤所持&使用で逮捕・後日談(前編)

 この「特集」記事をスタートさせてから早2ヶ月半。一向に伸びないアクセス数に呪詛を唸りながら様々なニュースを扱い、様々な人について、色々と言ってはいけないことを述べてきました。
 しかし、扱っているニュースがいわゆる不祥事ネタが多いこともあり、その後が杳として知れない人がほとんどだったりします。「あの、男子学生を全裸にさせた男性助教授はどうしたのだろう?」とか、「セクハラグランドスラム教員は今?」などと考えてみたりはするのですが、そんなこと、駒木に知る由もありません。本当のところはどうでもよかったりもしますし。
 中には、スワジランドの国王みたいに、自分から後日談を提供してくれる、テキストサイト管理人にとって神様みたいな人もいますが、それはごく少数派なのです。

 と、そんな中で、後日談を提供してくれるだけでなく、さらに一ネタ提供してくれる非常に貴重な人が現れました。
 それは、10月22日から28日まで、5回にわたって取り上げた田原成貴JRA調教師その人です。 
 詳しい話は改めてこちらを見ていただくとして、事件の顛末を簡単に振り返って見ますと、彼、田原成貴は、今年の10月8日に羽田から北海道へ向かう飛行機に乗る際、理由を明らかにせず刃物を機内を持ち込もうとしたことによる銃刀法違反容疑と、ボディーチェックの際に覚せい剤の水溶液を持っていたことによる覚せい剤取締法違反容疑(所持)で逮捕されました。元一流騎手であり、現役調教師の不祥事とあって、各マスコミで一斉に取り上げられ、特に競馬界で大きな話題になったのでした。

 ところで、この類の事件報道は、逮捕された時には大きく取り上げられるものの、その後は公判の判決が小さく報道されるくらいで、ニュースとしては尻すぼみになってしまうものです。例えば、同時期に大麻所持で逮捕されたカルーセル真紀は、いつの間にか処分保留で事実上の不起訴となっており、あれほど犯罪人扱いしていた新聞各紙でも、いつの間にか「さん」付けに戻してたりしました。いくら稲垣吾郎メンバーのように「メンバー」呼ばわりするわけにはいかないとはいえ、余りの報道姿勢の豹変振りに失笑してしまったものでした。

 で、田原成貴調教師の話に戻ります。
 彼は逮捕され、東京空港署の留置場(いわゆる代用監獄)に放り込まれてから、当然のように覚せい剤の入手ルートや使用歴などについて取調べを受けました。
 しかし取調べはかなり難航したようです。
 例によってあまり多くない報道を集約させると、彼はといった感じ雑談には応じるものの、肝心の話になると黙秘するか、巧妙にはぐらかすばかりだったようです。まるでヤクザ子飼いでベテランの企業舎弟のようなしたたかさですね。
 日本の法律では、逮捕されて“容疑者”となった場合、48時間以内に検察へ送検し、10日以内(裁判所の許可を得た場合のみ20日以内)に起訴しなくてはなりません。つまり、合計22日間が取調べのタイムリミットなのですが、田原容疑者(当時)は、この22日を、ナイフ持込の件以外は容疑認否保留のままやり過ごしてしまいます。普通ならその筋の“シロウト”には出来ない芸当ですが、恐らく彼にはこのタイムリミットの事が念頭にあったものと思われます。ただ、物的証拠が挙がってるのに黙秘を貫いたところで、検察と裁判所の心証を損ねるだけだというところまで考えが及ばなかった辺り、やっぱりシャブ中で脳が死んでたのか、やっぱり元からアホだったのかのどちらかではないか、という気がしますが。
 しかし、そんなことで引き下がる警察ではありません。それまでで既に容疑が固まっていたはずの“覚せい剤取締法違反(使用)”容疑での再逮捕を敢えて遅らせ、1回目の逮捕のタイムリミットが切れる当日にようやく逮捕を執行。これで22日間タイムリミット延長となりました。
 これは“本職”の犯罪者でもかなり応えるらしく、“現役”時代は「ダンマリの浅」として警察を閉口させた小説家・浅田次郎さんも、このタイムリミット延長を3度、4度と連発された時には、かなり追い詰められたといいます。
 ですから当然、所詮は“なんちゃってアウトロー”の田原容疑者には、これは相当応えたようで、逮捕から36日目の11月13日、ついに覚せい剤の所持と使用の件についても供述し、起訴。「容疑者」から「刑事被告人」となって、拘置される必要が無くなったため、保釈されました。これであとは来月から始まる公判で司法の審判を仰ぐ事になります。
 通常、覚せい剤取締法の案件では、初犯は執行猶予付の判決が出ることが不文律になってします。あのいしだ壱成被告(当時)にも先日執行猶予付の判決が出たことを記憶されている方もいらっしゃるかと思います。しかし、それはあくまでも被告人の検察や裁判官に対する心証が良かった場合の話。物的証拠が挙がっているのに完全黙秘を続けた場合などは、「反省の色が無い」、「然るべき場所での更正が必要」、「こんな馬鹿を執行猶予にしたら、世の中のシャブ中がますますつけ上がる」…などといった理由で実刑判決が下る可能性があります。
 では、この田原被告の心証はどうなのでしょうか。まあ、答はわかりきっている感じがしますが、万全を期して日刊スポーツのウェブサイトから記事を引用して検証しましょう。以下の記事は11月14日付のものです。

 3件の容疑で起訴された後も、主に覚せい剤の入手先について取り調べを受けていたが、相変わらずあいまいな供述しか行わなかったもよう。今回の保釈で、覚せい剤を譲渡した相手に捜査が及ばない可能性も出てきた。

 捜査関係者は「逮捕当時からのらりくらりで、真実とは思えない供述を続けていた。入手先はもちろん、(覚せい剤を)1度なめただけ、というのも、あいまいな供述だ」と話す。実際に「蚊にさされたような跡があった」(捜査関係者)と、注射したことを思わせる状況証拠はあるという。

 最悪です。

 「このヤロウ、裁判で覚えてろよ」という刑事さんと検事さんの心の咆哮が聞こえてきそうな気がしますね。

 と、まぁ反省の色ナシ、のらりくらり、という、喫煙容疑で生徒指導室に連行された高校生のような態度で保身を図る田原被告ですが、現在彼が「被告人」以外に持っているもう1つの肩書きである「調教師」の身分の方は、既にのっぴきならないところまで来ていました。

 と、今日のところはお時間がやってまいりましたので、それは次回に……(続く)   


11月14日(水)

 「今日の特集」「コロちゃんのコロッケ屋」がローソンを提訴

 皆さんは、街角で「コロちゃんのコロッケ屋」という看板を上げたプレハブの建物を見たことはありませんか? そう、コロッケ1個50円という、現在のデフレ競争を先取りしたような低価格で、300以上のフランチャイズを店を全国展開するコロッケ専門店チェーンのことです。
 このフランチャイズを統括する「コロちゃん株式会社」という会社──「ハイ! こちらコロちゃん株式会社です!」と電話応対するのが嫌で退職する人が後を絶たなさそうな名前ですが──が、大手コンビニエンスストアのローソンを訴えた、というニュースがありました。毎日新聞で報じられた記事がこちらです。

 無断で自社の商品名を使ってコロッケを販売したのは不正競争防止法違反だとして、コロッケ店フランチャイズ事業経営会社「コロちゃん」(岐阜県恵那市)が12日、大手コンビニエンスストア「ローソン」を相手に、6650万円の損害賠償と謝罪広告掲載などを求めて岐阜地裁多治見支部に提訴した。

  この提訴は、今年の5月より1ヶ月間、コロちゃん株式会社のチェーン店で使用している「コロちゃんのコロッケ」という商標を無断で使って、ローソンが店頭でコロッケ(「コロちゃんのコロッケ屋」の物と全く別物)を販売した事に対するものです。
 要はパクった上に中身がグダグダというわけで、日本が誇る名作アニメ「ふしぎの海のナディア」とディズニー映画「アトランティス」の関係に似た問題なのですね。
 というわけで、日本中の「ナディア」ファンが怒りに燃えるのと同じように、コロちゃん株式会社も怒り心頭の様子で、わざわざ公式ウェブサイトに「お知らせ」としてコメントを表明しています。

 コロちゃんのコロッケ屋」をご利用いただいておりますお客様の皆様へ、日頃のご愛顧を心より御礼申し上げます。
    さて、この度私ども「コロちゃんのコロッケ屋」にとりまして、大変憤りを覚える事件が発生しました。日頃ご支援いただいておりますお客様に対し、ご報告・ご案内を申し上げます。
    コンビニエンスストア「ローソン」におきまして、去る5月22日より約1ヶ月に渡り、ローソンのオリジナルコロッケを「コロちゃんのコロッケ」と偽り、継続的販売をしていたことが判明いたしました。その販売方法は“「コロちゃんのコロッケ」新登場”なるポップを店頭に掲示し、また、そのコロッケが「コロちゃんのコロッケ」であることを販売員の方が口頭でPRしながらのものでありました。(弊社社員が千葉県のローソン店舗にて購入し、状況を確認)
    ローソンで販売されていたコロッケは、コロちゃんコロッケとは味、量、質(使用原料)いずれも全く異なる異質なものであり、購入されたお客様がどうお感じになったかを考えますと憤懣やるかたない気持ちでいっぱいであります。
    このページをご覧のお客様の中で、もしローソンのコロッケを「コロちゃんのコロッケ」と思い購入されたお客様がいらっしゃれば、是非とも本当の「コロちゃんのコロッケ」を召し上がっていただき、その上でコロちゃんの評価を賜りたく存じます。
    今後はローソンの対応如何により法廷での争いも辞さない覚悟であります。この問題に結論が出ましたら、当サイトにて再度ご報告申し上げたいと思います。
    私ども「コロちゃんのコロッケ屋」は、皆様の暖かいご支援を頂きながら、人にやさしい、人のためになる会社を目指し、社員一丸となり頑張っております。今後とも、末永いご指導・ご支援を賜りますよう切に、お願いを申し上げます

 要約しますと、

 「名前パクった上に不味いコロッケ売りやがって。迷惑なんじゃ。出るとこ出たろかゴルァ!」

 と、言ってるわけですね。まぁ、そりゃマクドナルドで「モスバーガー」を売られたら、モスバーガーも怒りますよね。あ、いや、深読みは禁止ですよ。
 駒木もかつて元祖「コロちゃんのコロッケ」を食べた事がありますが、確かに50円と言う値段の割には非常に美味だったのを覚えています。ローソンの方は食べた事はありませんでしたが、本家「コロちゃん」にしてみれば、いたくプライドを傷つけられてしまったのでしょう。

 そう言えば、駒木が「コロちゃんのコロッケ」を購入したのは一昨年の春でした。
 当時駒木は、大学を卒業し、教員免許を取得したものの職を確保できず、フリーターというか、半無職という状態に甘んじていた頃のお話です。
 週2日の家庭教師以外は仕事も無く、歴史の勉強をする他は時間を持て余していた駒木は、しょっちゅう近所を散歩して回っていたのですが、その散歩コースに、ある日突然、小さなプレハブ建ての「コロちゃんのコロッケ屋」が現れたのです。
 その場所では少し前までクリーニング店を経営していたのですが、その店舗兼住宅を遮るようにプレハブが建てられたところをみると、不況で売上減を被ったクリーニング店を見限って、コロッケ屋に転身したのだと推察できました。
 普通、この手の商売変えというのは、慣れない事を準備不足のままやってしまうがために、得てして大失敗に終わるものなのですが、その店は違っていました。
 年の頃、30〜40歳と思しき女性2人が切り盛りしていたその「コロちゃんのコロッケ屋」は、その店員2人にとても活気があって雰囲気が良く、買い物時の夕方などには惣菜を求める人がひっきりなしに訪れていました。駒木もまた、そんな明るい雰囲気に釣られて店頭へ足を運び、乏しい懐から50円玉なり100円玉なりを取り出してコロッケを購入したものでした。先に書きましたが、そのコロッケの味も大変美味でした。
 そうこうしている内に数ヶ月経ち、季節も変わり、駒木はマンガ喫茶でのバイト生活を始め、近所の散歩も途絶えがちになりました。それがまた数ヶ月。
 年が明け、2000年の1月。マンガ喫茶アルバイトから3ヶ月限定で中学校の非常勤職員に転じた駒木は、久しぶりにかつての散歩コースを歩いてみました。
 すると、かつて客足が途絶えていなかった「コロちゃんのコロッケ屋」にはシャッターが閉ざされていて、ノボリも撤収。なんと潰れていたのです。
 嘘だろ? あんな繁盛店が何故……!?
 駒木は思わずその場に立ち尽くしてしまいました。閉店の理由を知りたかったのですが、アカの他人の駒木にそれを知る由はありません。
 しかし、その後、色々と思案を巡らせた結果、一つの事にハタと気付かされました。

 繁盛してる事はしていたが、1個50円のコロッケを売ったところで、一体どれだけ儲かるのだろう? と。

 「コロちゃんのコロッケ屋」はフランチャイズチェーンです。自営の店と違い、材料は自前でなく本部からの買い切り、さらにロイヤリティーも払わなくてはなりません。そんな状態で1個50円のコロッケを売って、果たして働いていた2人にどれだけの利益が残ったと言うのでしょうか。

 以下に転載したのは、「コロちゃんのコロッケ屋」公式サイトに載っていた「標準売上試算表」です。 こちらをしばしご覧下さい。

   1日の販売個数      
500個
     
1,000個
   
 1日あたり売上    
34,000
   
68,000
 
 1月あたり売上    
850,000
   
1,700,000
 
 仕入原価(51.5%)    
437,750
   
875,500
 
     
21,887
(別途消費税5%)  
43,775
(別途消費税5%)
 販売管理費(月)    
282,500
   
381,000
 
   内訳) 人件費  
192,500
   
245,000
 
    油代  
32,000
   
63,000
 
    パッケージ  
15,000
   
30,000
 
    電気・ガス  
13,000
   
13,000
 
    ロイヤリティ  
30,000
   
30,000
 
 純利益(月)    
107,863
   
399,725
 

 まず目に付くのが純利益の少なさです。この試算表ではパート社員を雇う事を前提にしていますが、もし店主とその家族だけでやりくりした場合でも、売上500個/日の場合で、純益は月30万円。1000個/日としても65万円の純益というところです。
 しかも、この表を見ると、あたかも「少なくとも500個は売れるよ」とでも言いたそうなニュアンスが感じられますが、1日平均コンスタントに500個のコロッケを売るというのは大変な話です。事実、「コロちゃんのコロッケ屋」チェーンが250店の時点で、チェーン全体の月間コロッケ販売数は「300万個以上」とされていたようです。表現上「以上」とはありますが、この手の公式発表はアテに出来ないのが通例ですので、正確に実情を把握するとすれば、「ひいき目にみて300万個」とするのが妥当と思われます。
 と、なれば…

 300万個÷250店=12000個(月間平均売上数)
 12000個÷30〜26日(週1定休を想定)=400個〜461個(1日平均売上数)

 ……というわけで、平均売上数は想定の下限である500個を割り込んでしまうことになります。ちなみに1日400個売上、無休営業で試算した場合、人件費がゼロとしても純益は25万程度。これでは初期投資金の約300万円の回収どころか、日々の生活もままなりません。
 駒木が通っていた店は、繁盛していたように見えましたが、よくよく考えてみれば近くにコンビニ3軒、スーパー2軒を抱える激戦地。果たして地の不利をどこまでカバーできたかは疑問です。恐らく平均かそれよりやや上程度の売上だったと思われます。
 一所懸命働く。店も繁盛する。
それでも生活は楽にならない。
 …これでは労働意欲も衰えるというものです。何せ、2人で必死に休み無しで店を切り盛りするより、同じ時間だけ会社勤めをしていた方が余程儲けになるのですから……。

 いつもの駒木なら、「店を始める前に気付けよ」、などと毒づいてしまうのですが、店自体は非常に良い店だっただけに、今回ばかりは責める気にはなりません。むしろ、儲からないチェーン店を平気な顔をして展開している本社の方に怒りの矛先が向いてしまいます

 コロちゃん株式会社には「提訴するエネルギーを、フランチャイズ店救済に向けんかい」と苦言を呈す一方、皆さんには「コロちゃんのコロッケ屋」を見かけたら、是非、店主の生活を救うためと思って、コロッケを大人買いして頂くようお願い申し上げたいと思います。

 と、いうわけで、今日の特集・「親類縁者が『コロちゃんのコロッケ屋』を開こうとしていたら、何が何でも止めなさい」を終わります(あれ?) 


11月12日(月) 

 「今日の特集」特別企画・駒木ハヤト、大いに語る

 いよいよ、「特集」にまで進出してきました、モー娘。ネタです。
 ソロソロこれを読んでいる知り合いや友人から、「いよいよ駒木もヤキが回ったな」などと囁かれそうな気がしてきました。正直、自分もやや不安になって来てます。
 まぁ、そうなった時は「俺モニ。」さんみたいに開き直ればいいと覚悟は決めてますが。

 さて、最近駒木は、TVでプッチモニが、新曲「ぴったりしたいX'mas」を歌っている映像を観ていると、楽しくて仕方がありません。気が付いたら、顔が自然にニヤけている時があって、自分でも結構不気味だと思います。

 とはいえ、駒木の楽しみ方は普通のモー娘。ファンのそれとは少し趣が違います。
 確かに、狙ってるとしか思えない振り付けに爆笑したり、「あぁ、やっぱりよっすぃーの笑顔は値千金だなあ」などといった、ありきたりの感慨にふけってみたりもしますが、それよりもやはり、普通のファンは避けて通りたい現実的な感想を抱く方が圧倒的に多いわけです。

 「吉澤、やっとこさ歌が歌っぽくなってるけど、まあ、口パクだよな。ひょっとして、録音やり直しは数百回?

 とか、さらには、

 「後藤もなあ…。せっかくここまで来たのに、どうして○○○○○○の○○なんかとHしちゃうのかねえ。安売りはイカンよ。安売りは」
 などなど。
 
※伏字の答が知りたい方はメールにて。ただし、後藤ファンの方は決死の覚悟
  
 しかし、映像を見ていて、何とも気になって仕方ないのが、ユニット最年長・保田の存在です。
 そう。13人体制になってからというもの、全員が同じフレームに収まる事が無くなり、真っ先に撮影の対象から切られてしまう保田。
 そう。「あなたの中の『モー娘。ランキング』を作ってください」と出題した場合、誰もがとりあえず彼女を13位にランク付けするところから始めるであろう保田。
 そう。何の権限も無い副リーダーという、まるで“株主代表訴訟になった時、莫大な賠償金だけ負わされるためだけに存在する、代表権の無い平取締役”のようなポジションにいる、あの
保田圭のことです。

 何故、駒木はそんな保田が気になってしまうのでしょうか。
 色々考えた結果、その理由を、プッチモニ内部での勢力関係の中に見出しました。
 プッチモニは、1999年に誕生した、後藤真希、保田圭、市井紗耶香による3人組ユニットで、2000年からはモー娘。を脱退した市井に代わって吉澤ひとみがメンバーになっています。
 モー娘。について、ある程度の知識を持っておられる方はお分かりでしょうが、このユニットは、当時モー娘。内1番人気の後藤を、モー娘。の中でも一際パッとしないバイプレーヤーの市井と保田がサポートするという構成になっていました。つまり、後藤を頂点とし、他の2人を底辺にした三角形のような勢力図が自然と出来る。これがプッチモニというユニットの特徴でした。この時点では、目立つのはあくまでも後藤であり、保田はいてもいなくても良い存在として埋没目立たないながらも脇役としての役割を全うしていたわけです。
 ところが、市井と吉澤がメンバーチェンジとなり、さらに吉澤がここに来てメキメキと頭角を現して来るに至って、その勢力図が一変してしまいました。
 即ち、後藤と吉澤を上辺とし、保田を底頂点とする逆三角形になってしまったのです。底とはいえ、頂点ですから嫌でも目立ちます。ただし“ミソッカス”としてですけど。

 それでもこれをご覧の方の中には、「いや、そんなことないよ。錯覚でしょ? それとも妄想?」なんて思われている人もいるかと思います。しかし、それは駒木にとっては、やはり心外。ですので、論より証拠。新曲「ぴったりしたいX'mas」において、保田がどういう状態にあるか考察していきましょう。

 最大の問題は、1番のAメロでいきなりやって来ます。ここは3人がそれぞれ短いソロパートを担当する部分であり、さらに「L・O・V・E・LOVELY○○」と名指しでコーラスが入る部分でもありますので、歌の冒頭にして、かなりの見せ場になります。

 さて、それでは歌詞を追ってゆきましょう。

 来週中には、バイトを決めたい
 (L・O・V・E・LOVELY後藤)

来々週には彼氏も決めたい
(L・O・V・E・LOVELYひとみ)

 「バイト」、次いで「彼氏」と来ました。盛り上がって来ましたね。次はいよいよ保田の順番です! 


 …と、思ったら………

 ま。そういうこっちゃで、ドタバタする〜わ

 …などと、水を差されてしまいます。
 ああ、せっかくの流れが台無し
じゃないですか。

 

 いや、それでも、気を取り直して行きましょう。ついに保田の順番です…!

 パンストはかなきゃ、案外冷える
(L・O・V・E・LOVELY保田)

 うわ。 

 ババくさ。

 

 ……な、何なのでしょうか、この落差は。しかも、ちっともLOVELYじゃないし。
 そりゃ確かに、他の2人と違って、アイドルとしては耐用年数の切れつつある年齢ですよ、彼女は。「ハローモーニング」の中のコントで演じる老婆役も見事にハマってますよ。でも、いくらなんでもこれは酷すぎです。
 しかもよく見てみたら、衣装も彼女のだけ、何だかパッとしません。
 他の2人はピンクを主体にして、耳当て&ミニのタイトスカート(吉澤)やホットパンツ(後藤)と、若さを全面に出しているのと対照的に、保田の衣装は、まるで体育のジャージみたいな上着長ズボンの組み合わせ。なんだか、「もうエエから、キミは大人しくしときなさい」という、つんく♂のコメントが聞こえてきそうです。

 しかし、そんな過酷な状況下に置かれても、彼女は決して挫けません。いや、そういう逆境の中でこそ彼女は燃えるのです。何せ、TVで自分がアップで映るためには、カメラの前に顔だけ捻じ込むような人なのですから……。
 だから、保田は歌っている間、とにかく頑張ります。振り付けも他の2人よりもオーバーに踊ったり、カメラの前で目一杯の笑顔を作ってみたり。この時ばかりは、普段の自分のキャラクターが、「新宿2丁目のゲイバーで、タバコを吹かしながら、ニューハーフショーを狂喜乱舞して鑑賞」といったものであることも忘れて頑張ります。
 その頑張りようは、「頑張ってます」とか、「はりきってます」…などといった、平坦な表現では言い表せません。それはまさに「ハッスル! ハッスル!」という、人類が20世紀に置き去りにしてきた遺物のような言葉こそ、今の彼女に相応しいものと言えるでしょう。

 …ですが、悲しいかな。彼女がハッスルすればするほど、彼女が抱えている負の部分が目立ってしまうのです。
 駒木がTVのプッチモニを観ながら、自然と顔がニヤけて来るというのは、実はこの保田のハッスルぶりを眺めての失笑という要素が大きかったりします。

 それにしても、ここまでくると、今度は彼女がいつプッチモニをクビになるのか心配でなりません。先日放送されたTBS系「うたばん」では、モー娘。の新規加入メンバーが、プッチモニなどのユニット内ユニットへの加入を希望していると報じられました。その中でも、プッチモニには小川真琴が加入を希望。小川の発言を受けて石橋貴明が、
 
「それじゃ、代わりに保田が脱退か?」
 ……なんて言っていましたが、メンバー内に「シャレになってないよ、タカさん」という空気が漂っていて、ただただ痛々しかったです。

 これからのプッチモニ、そして保田はどうなってしまうのでしょうか? これからも駒木は彼女たちを注視してゆきたいと思います。

 ★特別付録:駒木の現時点での極私的モー娘。ランキング表


11月10日(土)

「今日の特集」ニュース解説:公務員の兼職禁止規定について

 皆さんはご存知かどうか分かりませんが、公務員は原則として兼職、つまり他の仕事をして報酬を得ることを、法律によって禁じられています
 もっとも、原則には例外があるのが当然で、例えば教員は、上司の許可を条件に教育に関係する仕事を兼務する事が可能ですし、また、本を書いて原稿料や印税を得ることは“黙認”されているという格好です。ちなみに駒木のような非常勤講師は、身分の上では公務員ではなく、嘱託職員という扱いになっています。拘束時間は授業の時間だけなので、それ以外の時間にはどんな仕事をしていようが、全く自由です。まぁ、他に何かしてないと満足な暮らしが出来ない収入なんですけどね。スキャナが買えないほどの薄給ゆえに、明細をお見せできないのが残念です。

 閑話休題。
 とまあ、公務員法には、このような「兼職禁止規定」が存在するのですが、それでも中には足を踏み外してしまう人もいます。例えば、このニュースの人などです。

 ハイ。この先生が“兼職”したというのは、政治的及び社会的事情により言葉は濁してありますが、某大手マルチ(まがい)商法の販売員ですね。(注:マルチ商法は違法なので、実際にはそれに酷似した商法がほとんどです。これを「マルチまがい商法」と言います)
 マルチ商法と言うと、「ああ、某18禁ゲームのキャラクターグッズ販売か」、などのたまう人がいらっしゃいますが、そのような方は即刻パソコンのスイッチを切って社会復帰して下さい。社会復帰後の早いお帰りを心からお待ちしております。

 さて、マルチ商法を言葉で説明するのはなかなか難しいものがあります。ああアレね、と言って下さる方や、もう嫌と言うほど思い知ってます、という方は簡単なのですが、そうもいかない人もいらっしゃるでしょう。無い知恵と語彙を振り絞って解説させて頂きます。マルチ商法についての知識がある方は読み飛ばして頂いて構いません。ただでさえ長い文章ですので。

 マルチ(まがい)商法とは、「店舗販売のコストを無くし、無店舗で販売を展開する事によって、消費者に安価で良質な商品を提供する」ことを目的に行われています。
 通常の商品流通では、商品が生産されてから消費者の手に渡るまでに幾つかの仲介業者、いわゆる問屋と販売店を経ることになります。それぞれの業者は店舗や会社を経営しているので、それに伴うコストが商品の価格に上乗せされてゆきます。その結果、消費者は原価よりも相当高い値段で商品を買う事を強いられるのです。
 その点、無店舗商法の場合は流通で発するコストが非常に安く抑えられます。無店舗商法の場合も、商品は「総代理店」、「代理店」、「営業所」などを経由して消費者に渡されますが、これらは「店」や「営業所」などと言っても、流通を円滑に行うためのものであって、あくまでも個人が店舗を持たずに小規模で経営しているため、店舗の賃貸料や従業員の人件費などは一切発生しません。従って流通コストは手数料程度ですので、消費者は安価で商品を購入する事ができるわけです。
 また、もっと安価で商品を手に入れる方法もあります。
 その方法とは、入会金を支払って、前記した「営業所」などの仲介者になることです。
 入会金を支払うと、まず「営業所」となります。「営業所」になると、「代理店」からの仕入れ値で商品を購入する事が可能になります。「営業所」開設のために商品を仕入れたりしますので、入会金は少々高いと思われるかもしれませんが、普通の人では手に入れられないような安価で商品を手に入れることが出来るのですから、これはむしろお得といえるでしょう。
 また、「営業所」となれば当然、商品を他の人(例えば友人)に販売する事も出来ます。もちろん仕入れ値と販売定価の差額はあなたのものです。その上、あなたから商品を買った人が「営業所」になった場合、“奨励金”が本部から支給されます。優良な商品が安価で買えるだけでなく、なんとお小遣い稼ぎも出来るのです!
 そしてさらに、あなた経由で入会した「営業所」さんが一定の数に達した場合、あなたはその「営業所」さんを統括する「代理店」に昇格します。そうすると、もっと安い値段で商品が手に入ります。さらに、あなたは直接仕事をしなくても、「営業所」さんたちが販売した商品の利益の一部が手に入りますし、「営業所」さんが新「営業所」を開拓した時には、「代理店」のあなたにも“奨励金”が支給されます。「代理店」になれば、あなたはこの仕事だけで生活できるようになるでしょう。
 「代理店」として実績を積み、あなたの統括する「営業所」さんが「代理店」に昇格するようになって来たら、ついにあなたは「総代理店」に格上げです。ここまで出世した場合、あなたはほとんど何もしなくても十分すぎる収入を得ることが出来るでしょう。
勤め人時代には考えられない、お金に不自由しない暮らしが手に入るのです……!

 

 ……と、いうような甘い言葉であなたを誘ってくるのがマルチ(まがい)商法です。 

 

 先ほどから長々と説明してきたのは、マルチ(まがい)商法のタテマエです。
 先の説明では、商品の販売が主体であるように思えますが、実態は会員勧誘(先の説明で言うと、「営業所」にさせること)が主体です。
 何故なら、会員になるための入会金が法外に高いので、いくら商品を販売してもペイしないからです。入会金以上の利益を得るには、会員を勧誘できた時の“奨励金”をせっせと稼ぎ、不労所得を得られるまで頑張る以外に無いのです。
 「いや、良い商品が安く手に入るんでしょ? 私、それで十分だから」と言う貴方、残念ながらそれも期待できません。マルチ(まがい)商法で取り扱われる商品は、バカみたいに高い上にカス同然というのが相場です。例えば、「20年前の型と思しきファクシミリ:30万円」とか、「ノーブランドで普通のアナログ時計:10万円」などなど。我が家にも、フリーマーケット経由でやって来た、某最大手マルチ商法会社の電磁調理器がありますが、これが使えない使えない。フリマで購入した時は1000円程度でしたからシャレで済みますが、定価はおそらく、ゼロを2つ増やして数倍した数字だと思われます。こんなポンコツ電磁調理器で、1人の人間がサラ金地獄に沈んだのかと思うと、何だか背筋が凍るような思いですね。

 と、そういうわけですから、マルチ(まがい)商法の会員勧誘は激烈を極めます。学生時代に一度でも同じクラスやゼミに所属した人にアポを取っては軟禁し、あの手この手であなたを会員にしようとして来ます。

 駒木の友人である#12さんも、このマルチ(まがい)商法に勧誘された経験があります。
 彼は「相談したい事がある」と、初対面同然の同窓生に呼び出されてワンルームマンションに連れ込まれました。そこにはワンルームだというのに20人前後がひしめいていて、壁には「ノルマ20!」だの「目指せ、エリアマネージャー」だのといった張り紙。そんな部屋で人の輪の中に放り込まれて、延々と数時間入れ替わり立ち代り勧誘を受けたそうです。幸いその日は印鑑を持っていなかったため、契約書にはサインさせられたものの、正式な契約には至らなかったそうです。

 まあ、彼の場合はまだ断りきれる相手だったから良かったのですが、厄介なのが職場の上司だとか、恋人から勧誘を受けた場合です。結局のところマルチ商法は「人間関係を金に替えてぶち壊す仕事」ですので、こういう場合は実に悲惨です。気が付けば恋人は姿を消し、残ったのはサラ金の借用書…なんて話ではシャレにもなりません。

 しかしこういう場合、勧誘された相手がどんなに親しい人間であろうと、勧誘されてしまってはいけません。どうせ早かれ遅かれ壊れる人間関係なのですから、涙を飲んで即刻縁を切りましょう。
 また、先述した#12さんのように、親しくも無い知人からマンションなどに連れ込まれて、しつこい勧誘を受けた場合は毅然とした態度で対応しましょう。この場合、特に以下の2つのパターンが効果大と思われます。

 1.自分はマルチ商法に詳しい事をアピールする

 説明される前に、自分から「こういうことでしょ?」と喋ってしまいましょう。会話の主導権を握る事が大切です。そして、「自分はネタも裏も全部わかってるんだから、他のカモを探してきた方が手っ取り早いよ」とでも言ってしまいましょう。「これから新しいネットワークを作るって言うんなら話は別ですけど。今の状態じゃ旨みがありませんから失礼します」などと言って、勧誘してきた知人の不安を煽るのも良いでしょう。

 2.ブラフで揺さぶりをかける

 人を1人、部屋に連れ込んで帰さない場合、それは「監禁」で犯罪となります。
 ですので、相手が自分を帰さないようにしようとした場合、
 「これって……監禁ですか? 俺、帰って良いんですよね? 監禁じゃないなら」
 この一点張りで行きましょう。ここまで言って帰さないということは「監禁してます」と言ってるも同然ですから、それでもゴネる時は、携帯電話で速やかに110番。これでほぼ大丈夫でしょう。

 とにかく会話の主導権を握ることが大事です。もしも握れる自信が無かったら、契約書にサインだけして、安全な場所から即刻クーリングオフしましょう。 

 ……などと、タイトルとは全く関係ない話に終始した感もありますが、皆さんもマルチ(まがい)商法にはくれぐれも気をつけていただきたいと思います。


11月9日(金)

 「今日の特集」アメリカで18歳の町長誕生

 人口問題が、看過出来ないものとして世界中に注目されるようになって、既に久しい話となりました。
 ついに今年には人口は61億人を突破したと発表され、人口過剰の中で食糧危機が叫ばれるアフリカやアジア各国がこれからどうなってゆくのか懸念されるところです。
 その一方では、日本の農村部などでは過疎が問題になっています。非常に少ない人口で廃止の危機に脅かされる自治体も少なくありません。高齢化社会を通り越し、高齢社会となって、町や村全体が老いてゆく様は見ていて辛いものがあります。

 そんな中、日本の過疎の自治体を勇気付けるようなニュースが、アメリカのペンシルヴェニア州にある人口87人の町・マウントカーボンから日本に届きました。
 このマウントカーボンで行われた町長選挙において、この秋大学生になったばかりの18歳、ジェフリー・ダンケル氏が当選したのです。18歳の町長は全米最年少とのこと。
 87人の町とはいえ、民主主義と二大政党制が染み付いているアメリカです。このダンケル新町長は、まず民主党予備選で現職相手に勝利を収めています。その後、本選挙に臨み、そこで圧勝して晴れて当選となったわけで、無投票当選ばかりの日本の町長選とは一味違います。
 勝因は、出馬前に町内の全家庭を訪問して意見を聞き、それを公約にまとめると言う究極のドブ板選挙。「警察官の常駐化」と「他町村との合併撤回」を唱えて支持を集めたとのこと。駒木などは「隣の町と合併したら、自然と警官も常駐する事になるんじゃねえの?」などと思ってしまうのですが、それは浅はかな考えなのでしょう。

 と、こんな風に見事な若返りを果たしたアメリカの過疎の町・マウントカーボン。では、日本の過疎の村はどうでしょうか?

 我が日本にも過疎の村は多くありますが、その中で最も人口が少ない村が、東京都にある青ヶ島村です。
 同村の人口は、今年10月現在で205人。その内の8割が成人。若者は高校進学と共に島を出てゆく状況での数字ですので、かなり過疎が進行しているようで心配です。若年人口の増加が望まれるようですが、それもなかなか果たせず、4年前から比べても人口は微減という状況です。
 しかし、それも仕方がありません。島外への交通手段は、1日1往復の連絡船とヘリコプター。それも行き先は八丈島で、その上、悪天候による欠航、欠便は当たり前。

 「いやぁ、本土に行こうと思ったら八丈島で3日間足止めさ。これがホントの『島流し』。…なんつって」 

…なんてオヤジ居酒屋トークをかまそうにも、島内には食堂すら無いので、それも果たせません。何せ、島内の娯楽施設はサウナ1軒だけです。唯一の娯楽とあって、月あたりの利用者数が人口の倍以上になる月もあり、逆に痛々しい思いを抱いてしまいます。7年前に温泉が見つかったそうですが、予算の都合か、どうにもならずに放置プレイされています。

 そんな青ヶ島を支える産業は、村の歌「モーモー牛さん」でも知られる肉牛生産が主ですが、昨今の狂牛病騒ぎで行く末が懸念されます。他には、数年前から補助金を得て始めた製塩業と、10年前に壊滅的打撃を受けて復旧中のパッションフルーツ生産、さらに“漁業にするほどじゃないけど、一応釣れる”という規模の磯釣りと、それに乗っかる形で経営される6軒の民宿からなる観光事業が挙げられますが、焼け石に水な印象が否めません。
 この“惨状”を見るにつけ、早急な大幅テコ入れが望まれるところです。そのためには村長以下、行政スタッフの大幅な若返りが急務ともいえますが、折悪しく、今年に村長と村議会議員の改選が実施されてしまいました。先に挙げたマウントカーボン町長のような超若手首長の誕生は4年後に持ち越しとなります。
 普通、過疎の村というと保守的なイメージがあるのですが、不思議とこの青ヶ島村は変革を求める人が多いようです。それを如実に物語っているのが2年前の東京都知事選挙の開票状況です。

石原 慎太郎  51票
明石 康     25票
桝添 要一     9票
鳩山 邦夫     8票
柿沢 弘治     7票
ドクター・中松   7票
三上 満      6票
川上 俊夫     1票

 「目が笑ってないぞこの人」とか「『フロッピーディスクを発明した』って、実はほとんど嘘やんけ」といった負の部分敢えて無視してまで、ドクター中松に都政を委任しようとするパワーの大きさ! これこそ真の革新思想ではありませんか! まぁ、中にはその革新思想を向けているベクトルを間違っている方が1名いらっしゃいますが。
 …と、まぁ、こんな感じですので、4年後の選挙には期待大ですね。4年後の今頃には25歳の新村長の誕生が見られることでしょう。

 ただ、松下幸治氏が出馬してしまわないか、非常に心配なんですけどね。
 
「都庁所在地青ヶ島。現村長を助役に指名」とか嫌過ぎ


11月8日(木)

「今日の特集」自衛隊、アフガン方面に派遣へ

 オサマ=ビンラディン率いるイスラム原理主義過激派テロ組織・アルカイーダが起こした全米同時多発テロを端に発する、アメリカとタリバーン(アフガニスタン実効支配政府)との戦争は、事実上の開戦から早くも1ヶ月が経過しました。
 約10年前、湾岸戦争の時に「金だけ払って、働かないのか」『渡る世間は鬼ばかり』の赤木春恵のようなネチネチとしたイヤミを言われた我が日本は、同じ轍を踏まないために、海上自衛隊所属の自衛艦を、情報収集と非戦闘地域での後方支援をするという目的で、インド・アフガニスタン方面へ派遣することにしました。
 まぁ、言ってみれば「本当は出たくないんだけど、陰で悪口を言われるのもシャクだから、一応参加しとくか。忘年会。」みたいなノリでの参加(参戦ではなくて)なのですが、いわゆる平和主義者の方々にしてみれば、これは徴兵制と特攻隊復活の前触れだそうであります。まぁ、あまり思想的な事を偉そうに語っていると、せっかくの読者様が離れかねませんので、詳細なコメントは差し控えさせて頂きます。が、「徴兵制・他国を攻めるための軍隊」である旧日本軍と、「志願制の職業軍人・敵から一発カマされるまで丸腰同然」の自衛隊を同じモノとして考えるなんて、モーニング娘。とココナッツ娘。を混同するようなものだと思いますね。
 さて、今回のアメリカとタリバーンとの戦争は、かなり長期化する様相を呈して来ました。元々がゲリラ戦による耐久戦を得意とするアフガニスタン陣営ですから、空爆では致命的な打撃を与える事が出来ず、かといって下手に地上戦に突入してしまうと、これはヴェトナム戦争の二の舞になりかねません。というわけで、アメリカにしてみれば優勢に事を進めながらも攻めあぐねているというのが実情のようです。
 とはいえ、アフガニスタンでは日々の空爆で一般市民の生活が脅かされるなど、懸念される事態も起こっており、“罪の無い人々”の被害が心配されています。命の危険に晒されながら、彼らはどのようにして生き抜こうとしているのか? ……この事に世界中の関心が集まっていると言っても過言ではありません。

 ……と、そんなところへ、現地の人々の生活について、大変気になる情報が得られました。こちらのニュースをご覧下さい。

 タリバーン統治下・厳格な戒律主義のため、日常生活から行動に数多の制約を課されているアフガニスタン市民ですが、やはり男は本能に逆らえず、悶々とした日々を送っている、という微笑ましいエピソードです。
 これを読まれている男性諸氏はお分かりになられると思いますが、ワタクシ、この記事を読んでいて中学生時代を思い出しました
 どんな些細な猥談でも、心を邪にときめかせながら飽きずに延々と語り明かしたあの日々。今では何とも思わない水着写真や深夜放送で、青白いリビドーを発散させることのできた、想像力豊かだったあの日々を。嗚呼、少年時代。

 それにしても、アフガニスタン市民の精神構造は、まさに日本の男子中学生そのものです。 

 「『女とやったことあるか』と聞かれ、『ある』と答えたら、『うらやましい』とみなに尊敬された」

 そ、尊敬……。
 恐らくそれ以後、このアフガニスタン人は、日本人女性を見るたび、「コイツら、澄ました顔して、裏ではヤリまくってんねや!」と思っているに違いありません。いや、心の中とはいえ、関西弁は使わないでしょうけど。

 しかし、いくら不憫だからといって、日本人もアフガニスタン人に親切に接しすぎです。

 松井さんは、ある中年男性から「男女の性器を日本語で何というのか」と聞かれ、その単語を教えると、男はニタニタ笑いながら、単語をつぶやき続けた。

 ホラ、何処に出しても恥ずかしい大人を作ってしまったではないですか!
 この中年男性、日本に亡命する時が心配です。入国審査の時、ニヤニヤ笑いながら「チンコ、マンコ、チンコ、マンコ」と呟いていたら、どんな事情があろうとも強制送還は間違い無しですので。

 また、アフガニスタン人男性の想像力の豊かさも報告されています。

「各地で裸の女の絵を書いてくれと頼まれた。下手な裸体像を書いた紙切れを渡すと、彼らは心から喜んでくれた」

 恐らく、彼らはW・X・Yを縦に書くだけで幾度となく果てる事が可能でしょう。ヘアヌードや過激なアダルトビデオに慣らされた日本人が忘れた心があるような気がしますね。
 でも、裸のイラストを喜んで見るって、タリバーンの解釈だと偶像崇拝だと思うんですが、その辺りはどうなっているのでしょうか

 何はともあれ、こんな具合に、アフガニスタン人男性はかなりテンパっていることは間違いないようです。この記事では、

 ポルノはおろか、女性の肌すら見ることのできない厳格な規律があるアフガンでも、一般の人々は洋の東西を問わず下ネタが健在なのだ。むしろ、厳しいからこそ、こうしたギャグで憂さを晴らしているのかもしれない。

 ……なんて小奇麗にまとめてますが、駒木は、彼らはただ単にヤリたいだけなんだと思います。

 とまあ、万事がこんな感じです。
 度重なる戦争や内戦、そして今回の空爆にも屈せぬ強靭な神経を持ったタリバーン兵士も、所詮はエロには目が無いアフガン人です。恐らくエロパワーの前にはアッサリと転ぶ事が予想されます。なので、アメリカ軍は直ちに空爆を停止して、その代わりに空からエロ物件を散布するべきでしょう。「タリバーンが滅びれば、Hし放題」…などといったスローガン付で。
 ただこの場合、アメリカの過激な無修正写真は刺激が強すぎるでしょうから、散布するのは日本が生んだ中学生向けお色気マンガが適当でしょう。「電影少女」、「バスタード!」の2巻、「りりむキッス」、黒岩よしひろさんのパンチラマンガetc…。これなら武力行使ではありませんから憲法問題もクリアできます。その上、国際平和にも貢献できますし、正に一石二鳥。
 問題は国会で「お色気マンガ散布法案」が通るかどうかですが、これも桂正和作品の「I's」のファンで知られる鳩山由起夫氏率いる民主党が賛成に回れば大丈夫でしょう。民主党にしてみてもこれはチャンスですので、二大政党制への道も開けると言うものです。お色気マンガで二大政党制実現! 実現すれば非常に画期的な出来事です。

 この場合、唯一の問題は、  

 さらに、松井さんは「男から痴漢の被害に遭いました」と、次のような驚くべき体験も語ってくれた。

 「相乗りのバスやレストランで雑魚寝をしているとき、男に何度もケツを触られました。バーミヤンのNGO(非政府組織)施設では、20代後半の男に別室へ呼ばれたことがあった。最初は腕をマッサージしてくれたが、だんだん手がアソコへ…。やばい雰囲気になり、丁重にそんな気はないと断りました」

 ……などというホモ兵士への対応ですが、この場合もやおい同人誌を一緒に撒いておけば大丈夫かと思えます。この問題に関しては、無類の同人好きと言われる紀宮さまが働きかけて頂ければ、右翼ルートから国会を動かす事が出来るので、これも大丈夫です。

 ………こんな事を書いていると、国会は大丈夫でも、このサイトは大丈夫じゃない気がしてきましたが、とにかく国際貢献はまずお色気マンガから。少年マンガ各誌のお色気強化を期待したいと思います。


11月7日(水)

 「今日の特集」寸劇・駒木政治経済研究所(3)

 プロローグはこちら、第1回はこちら、第2回はこちらからどうぞ。

 ◇───◆

 「この写真(こちらを参照)を見てくれるかな」
 駒木は、クリアファイルからさらに、一枚の写真を取り出した。
 「これは……長野県知事選の時に撮られた田中康夫の写真じゃないですか?」
 佐藤誠が即答した。これくらい分からないとニュース研究員はやっていられない、というところだった。
 「まぁそうなんだが、この場合、大事なのは田中康夫の方じゃない。彼の右側に着ぐるみが立っているだろう?」
 「ああ、ハイ。確か“よっしー”とかいう名前でしたね」
 「そう。カモシカをモチーフに、イラストレーターでソラミミストの安西肇がデザインしたキャラクターなんだが」
 「それが何か?」
 「その中に入っていたのが松下幸治だ」
 「えええっ!?」
 佐藤は、部屋一杯に響く大きな驚きの声をあげた。完全に意表を突かれた形だった。
 「正確に言うと、入っていたメンバー4人の中の1人ということらしいがね。これに関しては、田中康夫本人の証言も含めて、複数の証拠が見つかっているから間違いない」
 「……どうしてまた、そんなことを? いや、どうして彼が田中康夫知事と接点を?」
 「これも資料になるんだが、こういうことだ」
 と、また駒木がファイルから1枚の紙を取り出す。その様子を見ながら、佐藤は「まるでドラえもんの四次元ポケットだな」などと思う。
 駒木から手渡された紙は、またもウェブサイトをプリントアウトしたものだった(こちらを参照)。
 「それの真ん中からやや上の辺りを見てもらえるかな?」
 その言葉に従って、佐藤は視線を移す。するとそこには確かに、以下のような文章が書かれていた。

 まず、田中氏自身、一新塾3期、6期の講師でした。また、今回、選挙参謀とその後、知事特別秘書になった杉原佳尭氏には今期のアドバンストコースの講師として道州制をテーマに講義をして頂きました。それから、選挙期間中、田中氏が演説するすぐ脇で「やっしー」の着ぐるみの中に入っていたのが、大阪から駆けつけた6期通信科の松下幸治さん。

 「大阪市長選“惨敗”の後、彼は何か思うところあって大前研一の政策学校、『一新塾』の通信コースに入校している。ひょっとしたら、彼は彼なりに本気で政治家を目指していたのかもしれないね。あくまで『彼なりに』だけれども。
 通信コースとはいえ、予約さえすれば実際の聴講も可能らしいから、彼はそこで田中康夫と直接対面していたんだろうね。そこで『実は僕、大阪市長選に出まして』なんて話になっても全くおかしくない。いや、むしろ松下幸治の方から積極的にアピールに出たという可能性すらある。
 そこで一応のコネクションを作った松下は大阪から…この記事では『駆けつけて』とあるが、実際は多分『押しかけて』とした方が正しいだろう。そこで勝手連ボランティアの1人として選挙活動を体験した。まあ、着ぐるみ着てるだけなんだが。
 そして彼は、完全無党派・政治家経験ゼロの田中康夫が知事選に圧勝するところを目の当たりにした。その時、彼は着ぐるみの中から何を思ったことだろう?」
 「『田中康夫でも当選するなら、俺でも』……とか?」
 「ああ、多分ね。少なくとも、大阪市より長野市の方が戦い易いと思った事は確かだろう。だから今回、敢えて長野の市長選挙に出馬したわけだ」
 「なるほど……。事の外、深い話でしたね」
 「ああ。調べてて、正直驚いたよ。まさかここまで複雑なドラマが隠されているとはね」
 そう言って、駒木は1つ大きな溜息を吐いた。
 「それじゃですね、長野市長選での松下幸治候補はどんな感じだったんですか? 政策学校で勉強していただけに、相当実力をつけていたのでは?」
 「それだ」
 駒木は、先刻よりもさらに大きな溜息を吐き出した。そしてまたファイルから資料を取り出して佐藤に手渡す。
 「佐藤君、これが今回の選挙公報だ(こちらを参照)。見た目はマシになっているが、じっくりと読んでごらん。詳細な政策を発表している分、さらに酷くなっているから」
 さすがに“選挙公報疲れ”の否めない佐藤だが、これが最後だと思って懸命に眼を凝らした。するとどうだろう、確かに駒木の言う通り、見た目の体裁こそマシになってはいるが、肝心の政策はというと、目を覆うばかりの出来であった。
 「………先生、大前研一は、一体何を教えてたんですか?
 「ハハハ。少なくとも、最後の『長野大使館』の全国展開は教えてないと思うがね。……まあ、何はともあれ、これで晴れて彼も正統派の泡沫候補にステップアップしたわけだ」
 「それで結局、彼はどうなったんですか?」
 「うん。今回は結構まともに選挙運動をしていたらしい。街頭演説を始めたものの、人が全然集まらずに、泣く泣くポスター貼りに切り替えたところを報道されたりしていたようだ。何故だか分からないが、地元マスコミも結構注目していてね。選挙直前には田中康夫にコメントを求めたりしている」
 「そりゃ凄い。で、どんな反応でした?」
 「それがだ。『あ、前から、何かそういうことを言っているみたいだけど…。ナントも分かりませんねー。選挙を応援してくれたことには感謝しているけども…』だとさ。まぁ、アレだね。自分の打ち切りになったマンガが犯罪に利用された宮下あきらみたいな気持ちだったんじゃないかな。正直なところ、『忘れた』と言いたかったんじゃないかね。
 で、結果なんだが、当然のように最下位落選。2287票という、何とも言えない数字を残している。しかも落選決定の時には、別の泡沫候補の事務所で雑談しているところをマスコミで取材を受けている。どうやら自前の事務所を置く資金が無かったようなんだ。そりゃあフリーターに100万円の供託金はキツいだろうが、だからといって他人の事務所でなあ……」
 話している内に堪え切れなくなったのだろう。駒木は口を手で押さえて声を殺して苦笑してしまった。10数秒の悪戦苦闘の後、なんとか笑いを堪え切れるようになって、さらに言葉を繋げた。
 「……いや失礼。まぁ、そういうわけなんだよ。僕がこうして神戸に滞在していたのはね。調べていく内にどんどん深みにはまってしまって、東京に戻るのがズルズル伸びてしまったわけさ。まあ、勘弁してくれ」
 「……まあ、事情を知ってしまったら、仕方が無いとしか言いようが無いですね」
 佐藤も苦笑いするしかなかった。
 「けど、先生」
 「ん? なんだい?」
 「泡沫候補の人たちって、どうして敢えて当選が難しい選挙ばっかりに出てくるんですかね? せめて市会議員選挙くらいなら、供託金も安いし当選の確率だってゼロじゃないのに」
 「ああ、それはアレじゃないか」
 手持ち無沙汰になったのか、駒木はそう言った後、既に空になっていたコーヒーカップを口に運んでしまい、やや気まずそうな顔をした。
 「…ほら、新宿界隈によくいるじゃないか。怪しい宗教団体の車に乗って、何やら講義めいたことをしている男が。あの手の連中は、いつも自分の話を聞いてもらいたがっているくせに、いざ目の前に人が集まると、急に口ごもって、そそくさと逃げてしまったりするだろう? 泡沫候補たちもそれと同じなんだと思うよ、多分。政治家にはなりたいけれど、それ以上に、本当に政治家になってしまうのが怖いのさ」
 「ははぁ、なるほど。さすが先生、見事な分析ですね」
 「よせよ。あくまでも政治経済研究所の方は道楽半分なんだ。誉められると照れてしまうじゃないか」
 「いやいや。そんなこと言わずに、どうです? 先生も選挙に出ては?」
 「やめてくれよ。僕が政治家なんて考えられない」
 「どうしてです? 泡沫候補の連中とか、地元企業の癒着ばかり考えてる議員のセンセイ方よりは、まだ駒木先生の方がマシだと思いますけど?」
 「ははは。マシって言い方は酷いな。でもダメだね。考えられないよ」
 「本当にイヤなんですか?」
 「そりゃそうさ。だって、政治家なんかになってみろ。僕はいつ競馬場に行って、フリー雀荘に行って、古本屋巡りをして、ニュースの研究をしたらいいんだい?」
 「…はぁ。本当に駒木先生って変わり者ですね」
 「君に言われたくないよ」
 駒木がそう言った後、どちらからともなく笑いが起き、それがいつまでも続いた。
 (完) 


11月5日(月) 

「今日の特集」寸劇・駒木政治経済研究所(2)

 プロローグはこちら、第1回はこちらへ。

◇───◆

 「佐藤君、君は松下幸治という名前の泡沫候補を聞いたことがあるかい?」
 駒木は、クリアファイルから見つけたお目当てのプリントを取り出しながら、そんなことを尋ねた。
 「いえ。ちょっと聞いたことがないですねえ」
 そう答えながら、佐藤は自分が選挙関係のニュースのマークが手薄だった事を今更ながらに後悔していた。普段は東京に住んでいる関係上、東京都知事選や国政選挙の政見放送や選挙公報は一応押さえてはいるが、それ以外の地域となると、資料入手の難しさからお手上げ状態になっていたのが正直なところだった。
 「いや、別に構わないんだ。むしろ知らないでいてくれた方が話がやり易い」
 駒木の手から、テーブルの上に4枚のプリントをホッチキス止めしたものが置かれた。それはどうやら選挙公報をコピーしたもので、3枚組の一番上のものの右隅には、小さく「大阪市長選・1」と書かれている。その下に「2」と「3」が続いているのだろう。
 「大阪市長選……?」
 「ああ。今から2年前のね。大阪市に住んでる知人を片端から当たってコピーを取らせてもらった。なかなか保存しておいてくれるような好事家がいなくてね。大分苦労したのを覚えているよ」
 「でも先生が追いかけてるのは長野市長選でしょう? それと2年前の大阪市長選と何が?」
 「おいおい、君らしくないな。話を急がせちゃいけない。今は松下幸治っていう泡沫候補の話をしてるんだよ。彼はね、今回の長野市長選に出る前、大阪市長選にも出ていたんだ。しかも僕のような人間からしたら極上の選挙公報を残してね」
 そう言って、駒木は卓上のプリントをガサガサと無造作にめくり、一番後ろにあった「大阪市長選・3」にあたるプリントを表にした。
 「ほら、これを見てご覧よ」
 「…ぐぁ………」
 佐藤はその選挙公報のコピー(こちらを参照)を見て、カエルの断末魔のような声をあげたっきり、絶句してしまった。
 「強烈だろう? 汚い字で手書きという、泡沫候補の選挙公報としての十分条件を満たしている上に、この簡潔かつ見事な壊れっぷり。しかもこの時彼は無職で大阪市内の実家に引き篭もり、選挙期間中もほどんど選挙活動はしていなかったらしい。そんな彼がどうやって供託金を捻出し、どういう思いでそれを手放したのか。そもそも立候補した理由は何だったのか? …どうしたってそんな事を考えずにはいられない。まさに泡沫候補の理想型だね、彼は」
 「……しかし…」
 駒木が一しきりまくし立てた後、ようやく佐藤は搾り出すような思いで声を出すことが出来た。大抵のニュースには耐性が出来ている彼も、さすがに尾を引くショックを抱かされるようなものだったのだ。
 「…しかし、先生、彼は何がしたかったんですかね?」
 「さあ、それだよ」
 佐藤がそう言うのを予想していたのだろう。駒木は即座に相槌を打った。
 「いいかい、佐藤君。普通、泡沫候補というのはだ。高い供託金を支払ってでも聞いてもらいたい主義主張というものがある。たとえそれが選挙と全く関係ないものにしても、それは何故か尊く感じてしまうから不思議なんだが。
 まぁ、そんな主義主張といっても、右翼、左翼、反ユダヤとかにカテゴライズされる、言わば“正統派”のものが大半を占めるんだが、時折、とんでもない“逸品”が出るんだ。例えば、一応政治に関係がある選挙公報の中で国宝クラスのものがこれだ」
 駒木は、今度はウェブサイトのコンテンツをプリントアウトしたものをクリアファイルから取り出して、そのまま佐藤に差し出した。(こちらこちらを参照)
 「……ひぃぃぃぃ」
 今度は引きつり気味の悲鳴をあげて硬直する佐藤。しかし駒木はそんなことにも我関せず、といった風に言葉をつなぐ。
 「彼は、一部では『京都の斎藤さん』と言われていて、非常に有名な泡沫候補なんだがね。無鉄砲にもこの『斎藤さん』にインタビューを試みた無鉄砲な大学生もいたなぁ。その時の話によると、言ってる事は選挙公報のままだが、特に電波系の人間っぽいところもなかったそうだから、彼は静かに、淡々と壊れてるんだろうね。
 それから、こちらは“選挙に関係ないけど切実な願い系”の逸品だ。今や泡沫候補業界では伝説の人になっている、泉がぼう氏の広報だよ。ほら、見てごらん」(こちらを参照)
 「
…ううぅぅ……」
 免疫の無い佐藤は、立て続けに“濃い”モノを見せられ続けて、少し精神的に参ってしまったようだった。まぁ、無理も無い話だとも言えるのだが。
 「ちょっと刺激が強かったかな? まあ落ち着いてくれ。
 とりあえず、泡沫候補の選挙公報における本来の姿は分かってくれたんじゃないかと思う。それで、話は今回の松下幸治に戻るんだが、彼は泡沫候補にしては余りにもその辺りの主義主張の面が淡白なんだな。そりゃ「首都大阪」とか「現市長を助役に指名」とかインパクトは強いんだが、『斎藤さん』や泉氏のような情念というか執念といったものが著しく欠けていたんだ。だから、僕なんかは、彼は二度と選挙に出てこないんじゃないかと思っていた」
 「…でも、彼はまた、出てきた」
 佐藤は、やっとのことで落ち着きを取り戻したようだった。
 「そう。僕は不思議に思ってね、この研究所にしばらく篭って色々調べてみたんだ。そうしたら、とんでもない事が分かったよ。彼は僕の想像の範疇を大きく凌駕した人間だということが判明した。いやあ、まさかこんな事になっていたとはね……」
 駒木は感慨深げにそう言うと、マグカップに残ったブルーマウンテンの最後の一口を飲み干した。  (次回へ続く)。

 ※このコンテンツ作成にあたり、モンゾウさんのホームページ「ズズ黒リスナーのページ」さんを参考にさせていただきました。


11月4日(日) 

「今日の特集」寸劇・駒木政治経済研究所(1)

 プロローグを未読の方はこちらへ。(ちょっと加筆訂正してます)

◇───◆

 「本当に随分探したんですよ、駒木先生」
 自分の苦労を少しは察してくれ、という思いを語気に含めながら、佐藤誠はキッチンの陰に姿を隠してしまっている駒木に声をかけた。
 「もういいじゃないか。何回謝らせたら気が済むんだい? 悪かったと思ってるよ。携帯の充電器を東京に置き去りにしたまま電池を切らしてしまったことはさ」
 キッチンから駒木の声だけが佐藤の耳に届いた。駒木は今、お詫びの印として、とっておきのブルーマウンテンNo.1を振舞う羽目になっていたのだった。
 「だから、怒ってるのはそんな事じゃないって先刻から言ってるじゃないですか。どうして一言だけでも言い残してくれなかったのかと訊いてるんです」
 「そんなこと言われてもねえ。別にパキスタン国境の難民キャンプに行くわけでもなし、何かあったら携帯にかけて来るだろうって思うじゃないか。しかも少し姿をくらませただけで、わざわざ東京から神戸まで押しかけて来るという発想を抱く人間がいるなんて、それこそ想像がつかないってもんさ。……ホラ、コーヒー淹れたからこれで落ち着いてくれよ。興奮されたままじゃ、せっかくのブルマンが台無しだ」
 左右それぞれの手に1つずつマグカップを持って、駒木がキッチンから姿を現した。持ち方が拙かったのか、「熱い熱い」などと言いながら小走りで、佐藤の待つソファーセットのガラステーブルに2つのカップを置く。
 そんな駒木の様子を見て毒気を抜かれたのか、佐藤は苦笑してマグカップを手に取った。どうやらもう駒木を責めようという気はないらしい。その代わり、キョロキョロと室内を見回し始める。
 住居も兼ねた「駒木政治経済研究所」は、いわゆる1DKの部屋で、ダイニングはカーペットを敷き、事務所風に改装されていた。もっとも、10畳程度の大きさしかないために、部屋の真ん中にソファーセットと事務用デスクを置き、壁際に本棚を置いてしまったら、もう何も置く余裕は無い感じだった。残りの一部屋は駒木の居間兼寝室として使われているのだろうが、佐藤の視点からでは、その様子は窺えない。
 「先生は神戸に戻られたらいつもここへ?」
 「ん? ああ、実家と半々ってとこかな。まぁ、仕事絡みの時はここに入り浸る事が多いんだが。実家は未だにアナログ回線でね。ネットで調べ物をするのにも一苦労さ」
 「じゃあ、今回の神戸行は何か研究を?」
 「ああ、うん。ちょっと興味深い選挙があったもんでね。選挙関係の資料はこちらに置きっ放しだったから、『ニュース研究所』じゃ手に負えなくなったんだよ」
 「選挙? ああ、そう言えば神戸市長選があったんでしたっけ」
 と、佐藤が何気なく口にした言葉に、駒木は露骨に顔をしかめた。
 「冗談は止めてくれよ。神戸市長選なんて、腹立たしくはなっても興味を抱く事なんて有り得ないさ」
 「そうなんですか?」
 「他の地方都市で市民派の知事や市長が誕生してるこのご時世に、相変わらずの相乗り三昧さ、神戸市は。いつだって現職やその後継には、『自民・民主・公明・社民推薦』ってなもんさ。てんでお話にならない。
 今回の選挙も立候補者5人で盛り上がったように見えて、結局は助役から転じた後継候補が相乗り推薦で、選挙前から勝ったも同然さ。対立候補は4人とも似たような市民派候補でね。せめて2人までに絞れば勝負になったかもしれないけれども、4人じゃあ票が割れてしまってどうしようもない。おまけに一番の有力候補を共産党と新社会党が押しかけ女房的に推薦してしまって、票割れに拍車をかけてしまったんだよ。これでどうしろって言うんだい?」
 「へえ。そんなに酷いんですか、神戸市の状況は」
 「こんなことなら8年前の選挙の方がまだ笑えただけマシだった。現職候補に、右は自民党から左は共産党まで、全ての政党が相乗りして推薦したんだよ。信じられるかい? 全ての政党がだよ。自民党と社会党ならともかく、公明党と共産党が同じ候補を推すなんて、常軌を逸してる話だよ。
 だから、他に対立候補がなかなか現れず、あわや無投票当選かってところだった。そうしたら、どこから噂を聞きつけたのか泡沫候補が1人出馬してね。仕方なく、何とも締まらない選挙戦が始まった。選挙運動なんかしなくても現職の当選は決まってるんだけど、でも一応選挙になっちゃったんだから選挙カー走らせて、街頭演説して。何とも滑稽な選挙戦だったよ。投票率も結局20%ソコソコだったし、今から考えると、税金の無駄遣い以外の何物でもなかった。ここまで来ると一種のテロ行為だね。国と市と市長の金庫から金を吸い取るテロ活動
 駒木は皮肉っぽい笑みを浮かべ、嘲り口調になっていた。
 「これで神戸空港なんていう、世にも馬鹿馬鹿しい公共事業の権化が建設される事が決まっちまった。総工費諸々含めて1兆円さ。近くに2つ空港があるってのに、さらに空港を建てて、しかもそれが地方空港って言うんだから笑わせる。それですっかり寂れてしまった神戸港の代わりをさせようって言うんだからね。もう怒りも失笑も何もかも通り越して涙が出そうになる。
 数年後には財政破たんするかもって説もあるくらいだ。そうなったら税金や公共料金は当然跳ね上がる。そうしたら僕もこの神戸からはおさらばさ。どこか神戸に近い所に引っ越そうと思ってるんだ。今でも結構暮らしにくい街だったりするんだよ。市内に色々な施設は多いけど、そこまで行く市営地下鉄の運賃が馬鹿みたいに高い。高速道路もあることはあるが、通行料はともかくとして、市街地の駐車場料金が目を剥くほど高い」
 その意見には他所者の佐藤にも賛同できる点があった。彼は今日、新幹線で新神戸駅に着き、そこからキー駅の三ノ宮に行くため地下鉄に乗ったのだが、初乗りが200円で、同じ市内だというのに400円近くの運賃になっている区間すらあって、少々面食らったのであった。駐車場は至る所にあったが、料金が高いせいか閑古鳥が鳴いていて、車はすぐ目の前の路上に路上駐車されていた。レッカー移動を示すチョークの後が生々しく残っていたが、そのリスクを考えても路上駐車の方に軍配が上がるようであった。
 「……何とも勿体無い話ですね」
 「ああ。いい街なんだがな。神戸ってのは」
 それからしばしの間、本当に質量を伴っているかのような重苦しい空気が室内を支配した。コーヒーをすする音だけが耳に入ってくる。
 「…ところで先生、それじゃあ先生が興味深いとおっしゃってる選挙は何処の選挙なんです?」
 その沈黙に耐え切れなくなった佐藤が、駒木に話を振った。
 「ああ、長野だよ。長野市長選
 「長野?」
 「ああ。とびっきりの泡沫候補が見つかってね」
 そう言って駒木は年齢を感じさせない無邪気な笑みを満面に浮かべた。
 「ははぁ。それじゃあここで泡沫候補の研究をされているわけなんですね?」
 「そう。日本の政治文化の仇花だからね、泡沫候補は
 「それだったら、今年の参院選の自由連合なんて、先生には垂涎モノだったんじゃないですか?」
 「いや、あんなのは泡沫候補とは言わんよ」
 また駒木の表情がにわかに曇りだした。それを見た佐藤は「しまった」と心中で舌打ちをする。どうして自分は先生の機嫌を損ねてばかりいるんだろう、と自虐的な感情を抱きつつ。
 「いいかい、泡沫候補ってのはね」
 駒木は、諭すような口調で佐藤に語りかけていた。
 「泡沫候補ってのは、悲壮感が無きゃいけない。新聞に載った略歴を見ただけで、『どうしてこの人、出る気になったんだろう?』とか、『この人、普段は何してるんだ?』とか、『供託金、どうやって都合つけたんだろう?』とか、『選挙終わった後、この人どうするつもりなんだろう。社会復帰できるのかな?』とか、しなくてもいい心配をしたくなる、そんな雰囲気が漂ってないとダメなんだよ。だから、タレント崩れが政党から支度金を貰って出馬したところで面白くも何とも無い。
 まあ、唯一、元大相撲関取の荒勢だけは例外だったけどね。選挙活動してたら、有権者じゃなくて債権者が集まってきて選挙カーで逃亡しなくちゃならなかったり、TVのインタビューで、『国会で何をするつもりですか?』と訊かれて『相撲で培った暴力で国会をぶっ潰す!』なんて放言をかましたりとか、随分楽しませてもらったからね」
 「今頃、どうしているんでしょうかね?」
 「荒勢がかい? どうだろうね。選挙の後、行方が杳として知れなくなるのが泡沫候補だからね。選挙公報が遺書代わりみたいなもんさ」
 「遺書ですか…」
 「まあ、そんなものだよ。“もののあはれ”っていうか、儚ささえ感じるね、泡沫候補には。とはいっても、実際に選挙公報やら政見放送やらを観ると、そんな気持ちなんて吹き飛んでしまうけれども」
 と言って、駒木は苦笑いを浮かべた。
 「じゃあ先生、今度の長野市長選もそんな泡沫候補が?」
 「ああ。今回のは傑作だよ。……そうだな、まずはこれから見てもらおうか」
 駒木はそう言うや、すくっと立ち上がり、本棚にかけてあったクリアファイルを取り出して、パラパラとページをめくり始めた。
 「これこれ。これだよ。これを見てもらわないと……」
 しばらく後、お目当てのモノを見つけたのだろう。満足げな笑みを浮かべて駒木は佐藤の方を向き直った。
   (次回へ続く) 


11月2日(金)

「今日の特集」寸劇・駒木政治経済研究所(プロローグ)

 シリーズ前作の「寸劇・駒木ニュース研究所」を先に読まれた方がお楽しみになれるかと思います。

◇───◆

 いつの間にか秋になっていた、という形容がふさわしい気候だった。
 眩しさだけをそのままに、熱気がすっかり抜けてしまった、まるで年老いた老人の眼差しのように優しい陽光。
 それに加え、微風ながらも確実に冷たさを空から運んで来る秋の風が全身をすり抜けてゆくと、まるで間もなく巡り来る冬の声を、ずっと遠くから耳にしているような気分になる。
 11月、神戸──
 そんな秋の空の下、佐藤誠は、住所だけ判明している目的地を求め、車から持ち出した地図を片手にただ1人さまよい歩いていた。閑静な住宅街、しかし決して“地方”という言葉を与えるにふさわしくない近代的な雰囲気。佐藤は辺りを見回しながら、誰かが本に書いていた「神戸は田舎と都市の長所を融合させた特殊な街だ」という言葉を反芻して噛みしめていた。
 「ええと、北はこっちでいいんだよな……」
 佐藤は、自分の前方に緑の濃い山があるのを確認して足を速めた。今彼が歩いている神戸南部の場合、必ず北側には山、南側には海がある。
 『山の中にあるホテルから、日帰りで悠々と海水浴が出来るんだよ。欲張ればその後、プロ野球やJリーグだって観に行ける。宝塚や大阪に行くのも難しい話じゃない。飯も美味くて安いし、まぁ贅沢な街だね、神戸ってのはさ』
 これから自分が向かう場所にいるはずの男が、いつかそんな事を言っていたのを思い出した。確かにそうだと佐藤も思う。今日の昼前、神戸に着いてまず驚いたのが神戸牛ステーキの安さだった。もちろん、最高級店に行くと目を剥くようなチェックを突き付けられるんだろうが、街中にある大衆店の表に出ている価格表を見ると、東京の相場に対して半額か、それに近い金額が書かれていて、思わず眼をこすってしまったものだった。(とはいえ、その額でも彼の懐具合では厳しくて、結局は東京でも散々目にしている牛丼屋チェーンのお世話になったのだが)
 佐藤はそれから電車とバスを乗り継ぎ、ようやく目的地の徒歩圏内にやって来たのだった。時計は14時過ぎ。日中で最も気温の高い時間帯だが、やや服の中で汗がにじむ程度に収まっている。東京都の気温差を考え、合服のスーツの下に着ているカッターシャツを半袖にしたのは正解だった。
 「……4丁目8−5、マンション弓月…ここか」
 地図とメモ書きに記された住所が示す場所がそこであることを確認すると、佐藤は「ふぅ」と、長旅の疲労と、それを終えることの出来た安堵の入り混じった溜息をつき、目の前に立っている建物を見上げた。
 マンションというには少々小さいビルである。しかし「コーポ」や「アパート」という冠をかぶせるには垢抜た近代的なたたずまいであることも確かだ。白く塗られた壁に覆われた、シンプルなデザインの3階建てビルで、部屋は全部で9室。ワンルームではないようだが、部屋数は多くはないだろう。
 メモに記された部屋番号は302。自動ドアで仕切られた小じんまりとしたエントランスを入ると、すぐ脇に階段がある。それがどうやら2階と3階に繋がっているようだった。佐藤は殺風景なエントランスの中に一瞥をくれ、出入り口付近の壁に設置されている郵便受けの「302」と書かれたものに表札がかかっていない事を訝りながら階段に足をかける。
 住人が歩いている気配は無い。規模から考えて、独身男性向けのマンションだろうから、この時間帯に人がいないというのは当然といえば当然といえた。
 やがて佐藤は3階までたどり着いた。1フロアあたり3部屋だから302号室は3つあるドアの内、真ん中のそれということになる。彼は迷わずそこまで歩を進め、ドアの側に掲げてある表札を見た。先刻見たポストには何も書かれていなかったが、さすがにここには然るべき名称が──しかも一時期アニメ作品の影響で随分流行った太字明朝体で──記されていた。

 駒木政治経済研究所

 「…まったく、あの人はいくつ研究所を持ってるんだろう?」
 佐藤はそんな事を呟きながら、インターホンのボタンを押した。ピンポーン、という小気味良い音。それからしばらく間があって、インターホンのスピーカーから、佐藤の耳に馴染んだ男の声が聞こえて来た。
 「……はい、駒木ですが……?」    (続く


11月1日(木)

 「今日の特集」ニュース解説「塾の元生徒にストーカー」

 久々にニュースを題材にした特集です。いつの間にか、有名人の知られたくない過去や恥部を白日の下に晒すコンテンツになりつつありますが、本来はニュースサイトなんですよ。まぁ、「『ドカベン』が実は柔道マンガだったんですよ」というような、最早どうでもいい話なんですが。

 さて、今日皆さんに紹介するニュースは、「学生時代に塾講師をやっていた男が、その時教えていた女子生徒が忘れられずにストーカーをして逮捕された」というものです。余りにもどうでもいいニュースのせいか、大手地方紙「神戸新聞」に載ったっきり、ネットニュースでは取り上げられていないので、下に記事を引用させて頂きます。(引用先は神戸新聞11/1付朝刊《15版》です。)

 兵庫県警生活安全企画課と西宮署は31日、ストーカー行為規正法違反の疑いで、神戸市○○区○○○○、大学院生○○幸司容疑者(26)を逮捕した。
 調べでは、○○容疑者は昨年12月2日から今年10月19日までの間、西宮市在住の私立高校女子生徒宅にわいせつな内容の手紙や写真などを44回送りつけた疑い。同容疑者は1996年から99年まで同市内の学習塾で、この女子生徒を教えており、好意を持っていたという。
 同法違反の逮捕者は、施行後、県内で8人目。
 (注:文中の赤字強調は筆者・駒木ハヤトによる)

 現在高校生の女の子を5年前から2年前まで教えていた、ということは、この件の容疑者は、その女の子が12歳頃から15歳頃になるまで担当していた、ということになりますね。
 「なんだ、それじゃただのロリコン学生じゃないか。こんなの例外じゃないの?」と思われる方、いらっしゃるでしょう。しかし、そうではありません
 ワタクシ駒木も学生時代、3年9ヶ月にわたって塾業界に籍を置いていましたのでよく分かるのですが、この手の話は日常茶飯事なのです。ロリコン云々、という話ではなく、「(一方的とはいえ)愛さえあれば年の差は関係ない」と表現した方が的確だと言えましょう。
 どことは申しませんが、当サイトも参戦している「Read Me!」の上位に、女子中学生とのプラトニックラブについてダラダラダラダラ書き連ねているサイトがありますが、あのレヴェルの話は全国津々浦々、どこの学習塾にもある話なのです。ただ、大多数の“当事者”たちは、テキストサイトを運営する時間が無いか、「そんな恥ずかしい事敢えて書きたくも無い」と思っているだけなのです。

 そもそも塾の講師という商売は、昼間から深夜という勤務時間のために、大変不規則な生活を強いられますので、なかなか“他の世界”の異性との出会いが得られず、恋愛感情の対象はどうしても勤務先の中という非常に狭いエリアに限られてきます。

 そこから常識的に考えた場合、まず真っ先に恋愛の対象になるのは同僚ということになります。一部の管理職を除いて、現場で働く講師の大半は10代後半から30代前半までの恋愛・結婚適齢期ですので、塾で働くと言う事は即ち、超長期戦のねるとんパーティをしながら勤務しているようなものなのです。
 しかも駒木の経験上、何故だか分かりませんが女子の若手社員やバイト学生は、総じて美人・スタイル良好の方が揃っております。そんな人たちと“同じ釜の飯を食う”わけですから、男が女子職員の意に添うようなことがあれば、意気投合することも少なくないわけなのです。
 というわけで、複数の教室を運営し、多数の職員を抱えているような大規模な学習塾などになりますと、至る所に職場恋愛、職場結婚、及び
穴兄弟が大量発生する穴兄弟が大量発生するわけです。ちなみに、不思議と穴姉妹は聞いた事がありません。
 余談ですが、駒木はこの話題に関して、卒業退社の間際に旧日本軍サイパン島攻防戦並の玉砕を経験しております。これは、また詳述する機会があるでしょう。

 とまぁ、大抵の男性塾講師は“健康的に”職場恋愛に走るわけなのですが、そうも行かない場合もあります。
 しかし、小規模教室で講師同士の出会いが少ない場合、女子職員が“完売御礼”状態の場合(先述の通り、女子職員の多くは美人・スタイル良好であります)、もしくは女子職員をつまみ食いした挙句にブラックリストに掲載されてしまった場合など、職場恋愛が困難、または不可能な状態に陥る事もあるわけです。
 そうなってしまうと、それまで大脳新皮質に築いていた“モラル”という精神防壁が、本能と海綿体の総攻撃を受けて敢え無く崩壊してしまいます。そう、担当している女子生徒へのターゲット移動です。

 この文をお読みの中で大多数を占めるはずの塾業界未経験者の方は、「女子中学生」という言葉から想像力を働かせた場合、「精神的にも肉体的にも未発達の女の子」という姿を思い浮かべてしまうでしょうが、それはあくまでも平均的な姿です。この年頃の女の子は成長度合いの個人差が極めて大きく中3にもなってまるで小学生中学年程度という“少女”がいる一方で、既に全ての面で完成の域に達しようとしている“オンナ”もたくさんいるのです。
 ですので、前者のタイプの生徒に手を出してしまうような男、これは確かにロリコンの謗りを免れないでしょうが、後者のタイプの生徒などは、若くて肌の艶が良い分だけ、むしろ同年代の女性よりも上位にランクされることだってあるわけなのです。
 もちろん、「教師と生徒の恋愛」はご法度でありますから、万が一、肉体関係が発覚した場合など、男子職員は即刻懲戒免職、女子生徒は塾を辞めさせられて、厳重な監視下に置かれる事になります。
 しかし不思議なもので、生徒が卒業式を終えた翌日からは、まるで鮎釣りのように全国一斉解禁となり、春休みの遊園地や映画館などに不釣合いな若カップルが見受けられたりするようになるわけです。また、それがめでたく発展していくと、数年後には華燭の典、なんてことも。そんな場合、披露宴の二次会での「新郎新婦へのインタビュー」なんて企画で、

 「新婦さんにお聞きします。ダンナさんとの初キッスはいつですか?」

 …などという質問に対して、

 「ハイ、6年前の夏でした」

 なんてことを20歳の新婦が答えるに及び、「20−6」という単純な引き算の答を知ってしまった新郎側の同僚・上司たちが騒然となって、「今の事は聴かなかったことに」と、秘密条約を結ぶ事になってしまったりします。
 結婚までは行かなくてもデート程度、または「Bまでなら」なんてのは結構あるようで、慰安旅行のクイズ大会で「X課長が付き合った卒業生の人数は?」などといった問題が出た時、当のX課長は、両手の指を使って人数を計算しておられました。ところでこのX課長、慰安旅行のたびに現地の女性と仲良くなる事で有名で、「一人三都物語」という異名を欲しいままにしておりました。彼は将来の重役候補でありまして、女性関係のトラブルで窮地に陥らない限りは出世が約束されております。まぁ、「念のため、コンドームはいつも2枚重ね」と10年前から駒木に語っていたX課長のこと、決して下手を打つ事は無いと思われますが。

 ……話がどうでもいい方向に逸れました。どうでもいい方向の割にはエラい事を暴露している気もしないではないのですが、まぁ所詮はお笑いサイトということで。

 さて、ここまで述べてきませんでしたが、男子職員と生徒との恋愛で問題なのは“男子職員の片思いはシャレにならん”ということです。
 そもそも男は殊、恋愛については非常に勘違いしやすい動物であります。女性の何気ない仕草に反応して、文字通り儚い恋心を抱いてしまう。これは“有性生殖を命題とする動物のオス”としては好都合ではありますが、人間として生きていくには不都合な事もあるわけです。
 性格にもよりますが、女子生徒は結構無邪気に若い男性講師に懐いて来るものでして、何度も何度もスキンシップに及んでゆくうち、生徒の方にはその気が無くても、男の方がその気になってしまう事が少なからず発生します。
 こうなってしまうと悲劇です。傍から見ていて、13〜4歳の女の子に20歳を過ぎた男が良いように翻弄されている様は惨めそのものです。そして、今回の事件はそんな悲劇の最たるものでしょう。記事からでは全然状況が伝わってきませんが、被害者の女子生徒は相当人懐っこい娘さんで、おそらく女性に免疫の無かった男性容疑者が翻弄されてしまった。で、女の子が卒業した後も大学院に進んだ男には出会いが全く無く、思い出とが膨らむ余り、妄想と下半身まで膨らませてしまい、今回の事件に発展したのでしょう。「わいせつな手紙と写真」ということですから、「○○たん、ハァハァ」な文面の手紙と、己のブツが大写しになったポラロイド写真を送りつけていたのでしょう。もうここまで来たら悲劇なんだか喜劇なんだか判断がつきませんね。もっとも、被害者の女の子にしてみたらたまったもんじゃないですが。

 そう言う駒木は、塾業界に入って間もなく、先輩が中3の女の子に入れ揚げ、簡単にあしらわれるという滑稽な情景を目にしていましたので、自分自身はこのような事態に陥る事はありませんでした。つくづく、良い反面教師に恵まれたと感謝しております。
 だってですよ、女の子がその男性職員がいない時に職員室へやって来て、
 「……あの先生、
『膝枕してくれるか?』なんて言うんよ。なんか、もう醒めてきちゃった」
 と、職員一同に暴露してるところに遭遇しているところを思い浮かべて下さいよ。堅く自分自身に戒めるってもんでしょう?

 というように、とりとめも無く、それでいて当り障りの有ることばかり述べてきましたが、いかがでしたでしょうか? 
 塾業界とは、少なくとも裏側ではこういう部分も存在するのです。ですから、もし年頃の女の子をお持ちの方がいらっしゃいましたら、一言くらいは「あんまり先生に馴れ馴れしくするなよ。先生だって男なんだからな」と注意しておいた方が、何かと都合が良いと思われます。また、幸か不幸か関係が両思い、つまり恋人同士に発展してしまった場合、塾業界は斜陽産業で、これからは落ちていく一方、とだけは認識しておいて頂ければ、と思います。  (この項終わり)


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