「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

12/15 ギャンブル社会学「憲法違反の身分差別規定についての諸問題」
12/14 
法学(一般教養)「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(3)
12/12 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第3週分)
12/11 
法学(一般教養)「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(2)
12/10 法学(一般教養)「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(1)
12/8  集中講義・競馬学特論「G1予想・朝日杯フューチュリティS編」
12/7  後期試験「続・或るモー娘。ファンからの手紙」
(出題篇)

12/6  
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第2週分)
12/3  比較文化論「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(3)
12/2  比較文化論「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(2)
12/1  集中講義・競馬学特論「G1予想・阪神ジュベナイルフィリーズ編」
11/30 比較文化論「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(1)
11/29 
マス・コミュニケーション論「マンガ新人賞の新しい姿」
11/25 (オープンキャンパス)競馬学特論「G1プレイバック」

 

12月15日(土)ギャンブル社会学
「憲法違反の身分差別規定についての諸問題」

 突然ではありますが、世に存在する法律というものは、多くの矛盾に満ちています。
 古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、悪法もまた法であるから、と言って自ら死刑の毒杯を仰ぎました。
 ドイツ第三帝国のヒトラーが、国内の全ての権限を掌握して独裁政権を築いたのも、よりによって“最も民主的”と謳われたワイマール憲法の矛盾を突いて生まれたものでありました。
 そして、現代の日本もまた、数多くの法律が、矛盾を秘めたまま放置されています。

 例えば、“高校生はアダルトビデオが観られないけれども、正月の深夜などに夜通しTVでやっている洋物ポルノは観放題”という問題。

 また、田代まさし事件で露呈した“スカート盗撮はパンツ覗いただけで痴漢と同じ罰金刑だけど、風呂場を覗くのは、いくら風呂場で本番行為が行われていようと軽犯罪法違反に留まる”という問題。

 さらに、“裏ビデオは何本所持しても、ましてや裏ビデオのレビューサイトを立ち上げて、広告収入で飯が食えるくらい稼いでいても合法なのに、友達にテープ代金と送料だけでダビングしてあげても違法である”という問題。

 そして、“あと1日で18歳なのに男性経験100人を超える、まるで整形前の飯島愛みたいな阿婆擦れギャルとでも、援助交際したのがバレれたが最後、逮捕されて人生メチャクチャに。しかし、16歳になったばかりの処女を、結婚を前提で肉奴隷に調教し、陵辱の末に妊娠させ、挙句の果てには中絶までさせてもバリバリ合法という正視するに耐えない矛盾まであります。

 ……何だか、喩えがシモに限定されている気がしますが、受講生の皆さんに理解しやすい喩えを列記したら自然とこうなっただけです。不可抗力ですので、ご了承を。
 しかし、日本の法律には、もっと矛盾に満ちた法律が跋扈しています。それらの法律は、なんと憲法違反の疑いが濃く、どうして違憲立法審査にかけられないのか不思議で仕方が無いものなのです。

 それは、俗に“3競オート”と呼ばれる公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇、オートレース)に関する法規にある、「投票券(馬券、車券、舟券)購入に関する制限」です。
 競技によって定められている法律は違いますが、内容は全く同じです、即ち、
 「学生生徒又は未成年者は、投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」
 という条文です。(競馬法第28条、自転車競技法第7条の2、モーターボート競走法第9条の2、小型自動車競走法第10条の2)
 この条文の問題点は、「学生・生徒」と「未成年」が同等に扱われているという点。いくら年齢を重ねていようと、また、職業を持っていようといまいと、高校や大学に籍を置いている人は馬券等を購入する事が出来ない、というわけなのです。
 例えば、自民党所属の参議院議員プロレスラー、さらには自ら個人事務所を経営する実業家でもある大仁田厚氏は、明治大学二部に在籍しているので馬券等を購入する事は出来ません。しかし、20歳以上で学籍が無ければ、ギャンブルで借金まみれだろうが、強姦魔だろうが、オサマ=ビンラディンであろうが馬券は買えます。
 社会的に成功し、さらには国権の最高機関の一員に名を連ねる人がダメで、社会不適合者でも成人で学籍が無ければギャンブルし放題という現実。これを矛盾と呼ばずに何と呼べばよいのでしょうか?
 加えて、先にも述べましたが、この条文は多分に憲法違反の疑いが濃いのです。

 日本国憲法第14条第一項

 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 ギャンブルは健全な娯楽とはいえ、場合によっては高額の金銭を扱う行為です。そこを考慮すれば、経済力の無い低年齢者のギャンブル参加を制限すること、これは公共の福祉の観点からも、合憲とする理由に足るものでしょう。
 しかし、年齢・職業や経済力に関係なく、「学生・生徒」なる社会的身分によって、「馬券の購入」という経済的行為を制限する事は、これは明らかに公共の福祉の範疇を超えた身分差別です。そう、これは明らかに違憲なのです。

 この“「学生・生徒」差別規定”は、他の合法&違法ながら黙認されているギャンブルと比べると、その矛盾がさらに浮き彫りになって来ます。以下の表をご覧下さい。

各ギャンブルの年齢・身分規定 

3競オート 学生・生徒・未成年者が不可
toto(サッカーくじ) 19歳未満が不可
宝くじ 制限なし
パチンコ&パチスロ 18歳未満、または18歳以上でも高校生は不可。(風俗店扱い)
麻雀(フリー雀荘)

 3競オートと同じ、「最小100円、100円単位で上限無制限」のギャンブルであるtoto(サッカーくじ)が、かなり緩やかな制限となっていることが目に付きます。
 さらに恐ろしい事には、賭けの最小額が事実上200円以上で、実質“レート”が3競オートの倍以上である上、控除率(胴元の取り分)が極めて高く危険性の高いギャンブルである宝くじに至っては、一切の制限が存在しないのです。事実、僕が塾講師のバイトをしていた時、当時中1の生徒が有り金叩いて年末ジャンボ宝くじを購入するという暴挙を働いた事がありました。暴挙ではありますが、これは当然合法です。
 受講生の中には、「totoや宝くじはギャンブルじゃなくて、クジだよ」などと言う方がいるかも知れませんが、その認識は危険な誤解です。
 totoは「スポーツベッティング」、宝くじは「富くじ」というカテゴリに属する立派なギャンブルです。ギャンブルは健全な娯楽ではありますが、他の娯楽と同様に、バカがのめり込むと扱い方を間違えると一生傷痕が残る“大ヤケド”を負う危険だってあるのです。特に宝くじ。ジャンボ宝くじを10万単位で買う人々の映像がTVで頻繁に流れますが、あれを競馬場での馬券購入シーンに置き換えてみてください。その行為がどれだけ恐ろしい行為か、想像がつくというモノです。しかも、改めて言いますが、宝くじの控除率は競馬より遥かに危険な設定です。
 また、パチンコやフリー雀荘での麻雀についても一言触れておきましょう。これらは、賭け金の最高額こそ限界がありますが、事実上の掛け金最小額は少なくとも1000円単位。3競オートの10〜数10倍なのです。一応、18歳未満禁止という制限はありますが、普通の学生には少々荷の重いレートと言えるでしょう。

 このように、3競オートと同じ、もしくはそれ以上の危険性のあるギャンブルが、緩やか過ぎるくらい緩やかな制限に留まっているのに対し、遊び方によってはゲームセンターより健全であるはずの3競オートには不必要なほど厳しい制限が設けられている。これが現状です。
 それにしても、どうして3競オートだけが不当な“差別”を受けているのでしょうか? 
 実は、これは明治時代にまで話が遡ります。

 明治時代の開国・文明開化と共に、あらゆる西洋文化が怒涛の如く日本に押し寄せて来ましたが、その中にイギリス生まれの近代競馬の姿がありました。
 始めは外国人居留地のみで行われていた競馬ですが、“世界に通用する良質の軍馬の育成”という目的から、日本各地で競馬が行われるようになります。
 もちろん、競馬といえば馬券がツキモノ。しかし、ギャンブルが合法化されているイギリスと違い、日本でギャンブルをすることは「賭博行為」となり、違法。本来ならば馬券を売る事は不可能です。
 しかし、馬券を売らない競馬では一向に盛り上がりませんし、第一、競馬開催にかかる莫大な費用が捻出できません。どうにかして馬券販売を実行しなくてはなりません。正に板挟みの状態。世にも泥臭いハムレット的状況であります。
 と、ここでさすがは“妥協の国”日本。この難しい状況下で、とんでもない打開策を実行します。
 それは「馬券黙許制度」
 本来なら馬券は賭博行為でありご法度である。ご法度であるがしかし、馬券を売る事で人々が真剣に馬を見るようになり、それが相馬眼、つまり能力の高い馬をみる目を養う事になるならば、国は敢えてこれを黙って見逃す(=黙許する)ことにしよう……
という、いかにも日本人が考えそうな制度ですね。 
 そしてこの時、「学生生徒又は未成年者は勝馬投票券(馬券)を購入する事が出来ない」という規定が生まれたのです。
 この規定の根拠は、タテマエでは「学徒や未成年者は、相馬眼を養うにはまだ未熟であるから、知的・身体的に成熟するまでは粛々と学業に専念すべし」というものでしたが、ホンネを言えば、当時売られていた馬券の最小発売額が、現在の10万円以上にあたる10円だったからでした。「ガキや学生風情が、そんな大金で賭博を働くなど10年早いわ」というわけです。事実、この時は馬券で身を持ち崩す人間が続出し、あっという間に馬券黙許は中断の憂き目に遭いました。その意味では、この厳しい規定も的を得ていたということになります。
 それから随分後になって馬券は再び許可、しかも今度は公認されます。その時も馬券購入に関する規定は明治時代のものが適用され、それが何と2001年の現在まで、しかも競輪・競艇・オートまで巻き込んで生き残りつづけたのです。
 確かに19世紀の明治時代には有効な規定だったでしょう。しかし今は21世紀の平成時代です。馬券の最小額も、当時で言えば銭単位の100円になりました。これほど社会や競馬を取り巻く環境が変わったのに、依然として法律だけは変わらない。これはおかしい、と言うより異常事態です。数年前の刑法改正と同様に、この規定も改正する時期を迎えているのです。
 ですが、現在の日本におけるギャンブルを取り巻く極悪な状況の下、この規定が改正される望みは極めて低いと言わざるを得ません。しかし、1人1人がこの規定の違法性を自覚し、社会における認知度を高めて行けば、いつか法改正も実現する時が来るでしょう。今日のこの講義がそのきっかけの1つになるならば、僕は大変幸せであります。
 予定の時間を大幅に過ぎました。これで今日の講義を終わります。 (この項終わり)

 


 

12月14日(金)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(3)

 昨日……と、今日も失礼しました。
 せっかく受講者が増えている時に休講するのはもったいないと、自分でも思っているんだけどねえ…。まあ、こればかりは二足の草鞋の限界だということで、どうも。

 さて、真面目なテーマをとりあげたこの「法学」の講義もいよいよ佳境です。笑いの少ない文章ですが、もう一日お付き合いを。

 「法学」前回の講義は、各国の君主継承権事情の途中で時間切れとなったのでしたね。それでは、今日はヨーロッパの続きから話を進めることにしましょう。

 じゃあ、前回、簡単に触れた古代ローマ帝国の事情をもう一度、今度は詳しくお話しましょうか。
 古代ローマは、建国からしばらくの間は王国、その後、国王が追放されて共和国になっていました。あのジュリアス=シーザー(ユリウス=カエサル)が活躍した時代も、実は共和国時代です。彼は共和国のルールに従って、行政や軍隊の司令官を終身任期で務めていただけの話です。
 ローマが世界史学の上で、共和国から帝国に変わったのは紀元前27年。(前回の講義で後30年と述べましたが、誤りでした。レジュメは既に訂正済みです)シーザーの甥であるオクタヴィアヌスが、シーザーの後継者争いに勝利し、ローマの実権を握ったところから始まります。
 彼は、アウグストゥス(尊厳者)という称号を得て、広大なローマ帝国のあらゆる統治権を委ねられます。ただし、この時も国のシステムは共和国のまま。彼は、あくまでも共和国のルールに則って、全ての権限を握ったに過ぎません。ですからこれを厳密な意味で言う帝政ではないとして、「元首政」と言ったりします。
 普通、君主制の権限は世襲で親から子、孫へとア引き継がれますが、形式上は共和制であるローマに、元首(皇帝)の権限が世襲で引き継がれる、との規定は無く、君主交代の規定は「先代皇帝の指名、それが無い場合は有力者の推薦による」という暗黙の了解が成り立っていたのです。
 この状況で選ばれる後継者は、先代皇帝の中で後継者に足る息子、もしくは軍隊の将軍に限られてきます。その上、隣国と緊張状態にあった当時の状況では、女帝の誕生などは夢のまた夢、といったところでしょう。
 その後、284年から“専制帝政”と呼ばれる、皇帝の権限が極めて強い時代がやって来ますが、皇位の継承規定は変化が無く、しかも隣国からのプレッシャーが強まる一方と言う当時の状況から、女帝誕生を許すムードは生まれませんでした。

 古代ローマ帝国はやがて東西に分裂。東に現在のギリシャや中欧を中心とした東ローマ(ビザンツ)帝国、西欧には短い西ローマ帝国時代の後、ゲルマン系諸民族が築き上げた国家群が成立します。

 まず東のビザンツ帝国ですが、国そのものは古代ローマをそのまま引き継いでいますので、皇位継承のルールも変わりません。ただ、このビザンツ時代には、エイレネ、ゾエ、テオドラという3人の女帝が誕生しています。
 エイレネ息子の目をくりぬいて皇位に登りつめたと言う女傑ですが、他の2人は日本の女帝と同じようなピンチヒッター的存在でした。結局のところ日本や中国と同様に、男顔負けの女傑が皇位を“強奪”するか、さもなければ祭り上げられての形式的な君主になる以外は、女性が君主になる道はありませんでした。

 では、次に西欧諸国。西欧諸国のほとんどは君主国でしたが、その中でも、他国の影響が少なかった君主国を優先して紹介してゆきましょう。

 トップバッターは、現在も“現役”の王国、イギリスです。現在の正式名称を“大ブリテン及び北アイルランド連合王国”といいます。サッカーやラグビーファンにはお馴染でしょうが、今のイギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの連合王国なのです。
 さて、イギリス──厳密に言うと、今のイングランド地方のみですが──は古代ローマの影響が無くなって以来、現地勢力と外部からやって来た民族との攻防戦が数百年続き、現在の王国の前身であるノルマン朝イングランド王国が建国されたのは1066年のことでした。
 中世イギリスの王位継承のルールは、現在の日本の皇位継承規定で言うところの「六」にあたる「皇(イギリスでは王)兄弟とその子孫」までで、男子限定です。また、王子であっても、王家から独立して諸侯(「〜公」や「〜伯」など)になっていた場合は継承権は無くなります
(※ただし例外有り)
 しかしこれだと、王位継承資格者が無くなってしまうケースも発生します。現に、ノルマン王朝は建国から90年弱で王位継承者がいなくなってしまいました。
 この場合、イギリスでは「王家断絶」ということになり、“臨時ルール”が発動されます。
 この“臨時ルール”は単純明快で、「最後の国王の血縁者の中から最も(血縁的・実力的に)適した人物を選び、新王朝の初代国王とする」というものです。これにより、新しい王家の下、イングランド王国は生き続けることになります。日本で無理矢理喩えると、幕府が変わっても日本という名前は変わらない、みたいなものでしょうか。
 こんなややこしいルールになった理由は不明ですが、
 「もともと国王は選挙で選ばれるものだったが、それが段階的に世襲化した。しかし、世襲制は大きく強化されず、兄弟とその子孫までに限定された。そして世襲が出来なくなった時だけ臨時的に選挙制が復活する(“臨時ルール”発動)こととなった」
 ……という有力な説があり、僕もこれを支持しています。
 このようなルールの下、国王と王朝の交代が粛々と、時には戦争の種となりながら、それでも粘り強く維持されます。
 しかし、時代が進むにつれて、「男子限定」という規定が歴代国王の悩みの種になって来ます。
 何せ、いくら子どもが生まれても男子でなければ、待っている道は王家断絶。また、男子が生まれたとしても、まともに育つかどうかは分からない。実際、多くの子どもは夭折してしまう時代です。近親結婚も多いので虚弱体質や精神薄弱の子が生まれることも少なくありません。
 これがアジア王朝のように一夫多妻制ならば「数打ちゃ当たる」で済むのですが、ヨーロッパは一夫多妻どころか離婚もままならないキリスト教国家。王家存続への道は絶えず綱渡りだったのです。
 もちろんこの「男子限定」規定は、国を賭けた戦争になれば、陣頭指揮に立って国中の猛者どもを率いる義務のあった中世のイングランドには必要な規定でした。が、時代が進むと、戦争における戦力が国王・騎士から傭兵・民兵に変わったのです。「国王=最高司令官」の意味合いが薄くなってしまいました。こうなると、「男子限定」規定は王家存続にとっての足枷以外の何物でもありません。
 その結果、15世紀に成立したテューダー朝の時代、国王の権力がかつて無いほど増したのを利用して、「男子限定」規定の廃止に成功します。これにより、王女であっても、国王の子や兄弟姉妹であるならば、男子の後継者がいない時に限って王位継承の権利を得ることになりました。正式なルールとして女王を認めた画期的な改革の成功です。
 これ以後、イングランド及びイギリスでは6人の女王が誕生します。即位順に、メアリ1世、エリザベス1世、メアリ2世、アン、ヴィクトリア、エリザベス2世です。イギリスの女王には名君が多く、歴史上でも評価の高い人物が少なくありません。
 そして20世紀末に王位継承権は男女同権となり、男女に関わり無く長子が王位を相続することとなりました。無軌道に王位継承権を拡大すると、王室費の拡大や争いの火種となり、国家問題化しかねません。が、王位継承権が直系子孫に限られていて王家の人数が大して増えないことと、イギリス王家が未だ形式とはいえ国家元首であることなどが、男女同権化の実現に繋がったのだと思われます。

……

 と、次にフランスの事情を説明する予定だったのですが、どうやらこの講義、おそろしく長文になってしまうことが、ここにきて判明してしまいました(遅!)。
 いつまでもこの堅苦しい話題で受講生の皆さんを引っ張るのは心苦しいので、この「法学」の講義は、次回以降週1ペースで不定期に実施する、ということにします。皆さんには気長に受講してもらえれば、と思います。それでは、今日の講義はここまでにします。(この項続く

 


 

12月12日(水)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第3週分)

 さて、毎週水曜日は「現代マンガ時評」
 週刊マンガ誌(少年ジャンプ・サンデー中心)の新連載作品と読み切り作品のレビューを行い、マンガ界のこれからを展望すると言う演習(ゼミ)です。
 ところで、先週に第1回の「現代マンガ時評」を行ったのですが、後からレジュメを読み返してみると、突然口調が「だ、である」口調になっていて、かなり偉そうな感じになってしまいました。ちょっとマンガ家さんに失礼だったかと反省しております。今回からは口調を改めますので、ご理解ください。

 では、今回のゼミを始めます。
 まず、今週分のレビューに移る前に、先週・今週で発表された新人賞(少年ジャンプ・サンデー系)の受賞者・受賞作を掲載しておきましょう。備忘録的なものですが、後々にこの「演習」でレビューする際に役に立つと思われますので。

第62回手塚賞&第55回赤塚賞(01年後期)

 ☆手塚賞☆(応募総数415編)
 入選=該当作なし
 準入選=2編
  ・『戦斧王伝説』(評点28/40)
   イワタヒロノブ(24歳・東京)
  ・『MONONOFU─モノノフ─』(評点25/40)
   ゆきと(22歳・高知)
 佳作=3編
 
 ・『ゼアミ』(評点25/40)
   小涼あぐり(20歳・兵庫)
  ・『うそごと』(評点24/40)
   結城ゆうき(22歳・東京)
  ・『JET SMASH─ジェットスマッシュ─』(評点22/40)
   守屋一宏(22歳・東京)
 最終候補=4編
  ・『空の下のココロのカタチ』(評点23/40)
   長谷川和志(25歳・兵庫)
  ・『WANNA BE A BE BOY』(評点18/40)
   伊藤史織(18歳・大阪)
  ・『想気獣』(評点18/40)
   中西真智子(16歳・京都)
  ・『ZERO』(評点16/40)
   山田大樹(17歳・埼玉)

 ☆赤塚賞☆(応募総数224編)
 入選=該当作なし
 準入選=該当作なし
 佳作=3編

  ・『まげちょん』(評点19/35)
   浅上えっそ(24歳・東京)
  ・『抽選内閣』(評点19/35)
   田代剛大(17歳・栃木)
  ・『SAVE THE WORLD』(評点18.5/35)
   堀たくみ(19歳・埼玉)
 最終候補=7編
  ・『魔術紳士(マジックジェントルマン)健三郎」(評点17/35)
   中根知之(23歳・愛知)
  ・『パーフェクトデブ』(評点16.5/35)
   佐藤治(22歳・埼玉)
  ・『キンダカートンポップ』(評点16/35)
   新妻克朗(23歳・東京)
  ・『女子高生はエキスパート』(評点16/35)
   高沢圭祐(26歳・群馬)
  ・『マネーイズマネー』(評点15/35)
   坂崎允柄(20歳・栃木)
  ・『Power BOY』(評点14/35)
   川村憲二(23歳・神奈川)
  ・『笑術バキューン!!』(評点14/35)
   大宅教史(24歳・北海道)

少年サンデーまんがカレッジ(01年9・10月期)

 入選=該当作なし
 佳作=4編

  ・『はりぼて』
   落合博和(26歳・栃木)
  ・『Body Complex』
   なるみなる(26歳・千葉)
  ・『どろんPA!』
   えんとっくん(25歳・埼玉)
  ・『ドリームらんちきゾーン』
   池田結香(25歳・東京)
 努力賞=3編
  ・『けろにょろ』
   深田マシュー(25歳・埼玉)
  ・『スルタンの弟』
   中道裕大(22歳・広島)
  ・『金好きこんちゃん』
   永沢明(24歳・東京)
 あと一歩で賞(選外)=1編
  ・『魔女戦記』
   小川正人(22歳・福島)

 ……赤塚賞の審査委員に、4連載3打ち切り岡野剛が入っているのは、個人的には納得行かないのですが、まぁ人材難ということで仕方ないんでしょうか……。

 では、レギュラー企画の「新連載・読みきりレビュー」に移ります。文中の7段階評価はこちらを。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年新年2号☆

 ◎新連載第3回『ソワカ』作画・東直輝

 このレビューを書くために、改めて第1回から読み直してみたんですが、この第3回の時点で、既に随分と絵のクオリティが落ちているのが非常に気になってしまいます。このあたりの回数だと、普通はまだ連載前に書き溜めしている原稿のはずなので、こんなところでクオリティが下がっているのは大問題です。そう言えば、作者あとがきで「時間を下さい、お願いします」と懇願していましたね。何かトラブルがあったのかもしれません。
 しかし、何があろうと一定の仕事をするのがプロのマンガ家であるはずなので、評価は厳正に下します。
 まず、ストーリーがかなり間延びしている印象があります。最初の2回分を圧縮して第1回にするくらいでちょうど良かったのではないかと。『ONE PIECE』が最高に面白かった初期の、展開が恐ろしいまでにハイテンポで進む部分と実に好対照なので、単行本をお持ちの方は見比べてみて下さい。
 あと、やはり絵のクオリティ。アクションシーンが多いのに、動きに躍動感が無いのには閉口させられます。『忍空』『幕張』と似たような印象を受けたのですが、どうでしょうか? 例に挙げた2作品は、内容が良かったので絵のクオリティは目をつぶれましたが、こちらの方は展開が間延びしている上でのことですから、やっぱり読んでいて辛くなってしまいますね。
 と、いうところで7段階評価は
B−。今のところ、次回打ち切り候補最右翼、と申し上げておきましょう。しかし、こんな壮大な設定を打ち上げておいて……。

 ◎読み切り『SAVE THE WORLD』作画・堀たくみ

 例によって、『HUNTER×HUNTER』の代原です。今回はなんと、今日の冒頭で紹介した、赤塚賞の佳作受賞作が掲載されました。異例の本誌デビューです。
 しかし、内容は……(汗)。
 本当ならノーコメントで済ませたい気分なのですが、そうもいきませんから書きますが、「全てにおいて下手」としか言いようがありませんね。この作品で赤塚賞佳作なら、僕の友人S君が小学生時代に描いたマンガで準入選が獲れます。
 とにかく、シュールでもなんでも良いので、1回くらいは笑わせて下さい。評価は当然最低ランクの
C

☆「週刊少年サンデー」2002年新年2.3合併号☆

 ◎新連載『旋風(かぜ)の橘』作画・猪熊しのぶ

 スポーツ物少年マンガの主人公は、大きく分けて2つのパターンがありまして、
 「劣等生だが、人一倍努力を重ねるうちに、才能を開花させてゆく主人公。→物語の序盤では負けっぱなしだが、中盤辺りからメキメキ力をつけ始め、終盤には無敵状態に。
 ……と、いうパターンと、
 「物凄い才能を持ってはいるが、世間とズレていたりするために、周囲と色々な問題を起こしてしまう主人公。→物語の序盤から、エリートタイプのライバルを翻弄しまくり、たいした挫折も無く快進撃を続けてフィニッシュ
 ……と、いうパターンがあります。少年ジャンプでは前者のパターンが多く、サンデーでは後者のパターンが目に付くのですが、打ち切りまでの回数が短いジャンプで、カタルシスを得るまでに時間のかかる前者のパターンが多いのは興味深い話と言えますね。
 ちなみに、マガジンはこの中間と言えるのですが、マガジンには「ご都合主義」という悪しき伝統があり、“努力もせず弱いくせに、何故か勝ってしまう”という主人公が多かったりもします。
 さて、閑話休題。この作品は典型的な後者のパターン、しかもコメディタッチの作品です。しかし、実はこのタイプの作品、今のサンデーでは飽和気味なのです。特に『ファンタジスタ』『DAN DOH!! Xi』の2作品と傾向がダブっていて、読み手を非常に疲れさせてしまいます。しかも現時点では、様々な面で先発の2作品を上回るまでには至っておらず、これはかなりの苦戦を強いられると言わざるを得ません。決して悪い作品ではないのですが、連載開始の間が悪すぎたかな、という気がします。7段階評価は
B。平均点です。

 ◎読み切り『川口能活物語』作画・草葉道輝

 噂をすれば影ではありませんが(笑)、『ファンタジスタ』の草葉道輝氏によるノンフィクション・コミックです。
 しかしこの作品、「スポーツノンフィクションの『○○××物語』に名作なし」「週刊連載作家が同時進行で描いた読み切りに名作なし」のジンクスを地で行くような、典型的な凡作になってしまいました。これは作者の草葉氏が悪いのではなく、企画が悪いのです。仕方ありません。連載、頑張ってください(苦笑)。評価は、読み飛ばすのに苦ではないので
Bということで。

《その他、今週の注目作》

 ◎新連載『サユリ1号』(週刊ビッグコミックスピリッツ掲載)

 主人公の妄想と瓜二つの女の子との出会いや、幼馴染の女の子との恋愛感情も絡んだ軋轢など、いかにもスピリッツらしい“ライトにドロドロした”恋愛物語ですね。
 この作品、何かに似ているなと思ったら、初期の山本直樹作品(『はっぱ64』や『あさってDANCE』)と雰囲気が似てるんですね。ちょっと先が楽しみであり、怖い作品でもあります。
 期待度を込めて、評価は
B+

 ◎読み切り(月イチシリーズ連載)『せんせい・藤本義一編』(週刊コミックバンチ掲載/作画・岸大武郎

 岸大武郎氏といえば、かつて週刊少年ジャンプの専属マンガ家でした。しかし、この手の伝記物や、時には恐竜紀行物などという、どう考えてもジャンプ読者に受け入れられようが無い作品ばかり手がけていて、確かその後、ジャンプ系列誌に幾つか作品を描いていたのですがいつの間にか姿を消していたように記憶しています。
 それが、この『せんせい』という作品でコミックバンチに“拾ってもらって”いたのを発見して吃驚させられたのですが、それ以上に、マンガの腕が大層上がっていることに驚かされました。不遇にもめげず、弛まぬ努力。素晴らしい話ではないですか。
 今回の作品も見事なストーリーテリングで、見せ場の演出等も水準以上の出来。かつての岸氏の失敗でも分かるように、マンガでは難しい伝記物を見事に描ききっています。あの横柄で偉そうで中身の無い藤本義一が、岸氏の手にかかったら人情家の好人物に変身してしまうのですから大したものです。
 今回に関しては
A−評価。シリーズ全体でもA−に近いB+のランクを進呈します。

 ……

 と、今週は6作品をレビューしました。これからも、物理的事情の許す限り、レビューを掲載したいと思います。それでは今週の「演習」を終わります。明日は「法学」の続きを講義する予定です。(今日の講義終わり)

 


 

12月11日(火)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(2)

 それでは今日も同じ話題で講義を行います。昨日の講義を受けていない人はレジュメをちゃんと読んでおくように。(レジュメはこちらに)

 前回は、世界の君主国では独自の伝統的な皇位(王位)継承権を持っている。これらの伝統は、君主の権力が衰えた今日でも、ごく最近を除いて頑なに守られてきた。日本もその中の一つである……という話をしました。
 今日はその皇位(王位)継承、特に女性の継承について実際に、日本とその他の国の事情を具体的に解説します。その上で、日本の事情と外国の事情を比較対照し、考察を加えてみたいと思います。

 では早速、日本国天皇の皇位継承規定について解説してゆきましょう。
 この講義を受講されている皆さんも、おそらく「天皇の男の子孫が、血縁の濃い順番に継承してゆく」といった感じで、大まかには把握されていると思いますが、ここでは厳密なルールを紹介します。
 まず、皇位継承の有資格者は、
 「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」(皇室典範第1条)、
 「皇位は、左の順序により(注:後述)、皇族に、これを伝える」(同第2条)
 …と、以上の規定で、男子の皇族に限ってその資格があるとされています。また、男子が皇族になるための規定としては、
 「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする」(同第5条)
 「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする」(同第6条)
 「天皇及び皇族は、養子をすることはできない」(同第9条)
 「皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない」(同第15条)
 ……と、いうものがあります。少々ややこしいので詳しく説明しますと、男子の皇族には親王がありますが、その親王や王になるには天皇の嫡出系の(正式の后から生まれた)子や孫でなくてはなりません。養子は認められず、一般男性と皇族女子の結婚で産まれた子どもは皇族になれません。さらに、天皇の子であっても、庶子、つまり后以外の女性から生まれた子も皇族にはなれません。これは、世界の君主国の中でも、かなり厳格な資格制限と言えるでしょう。
 そして、その有資格者の中で、先に挙げた皇室典範第2条の規定に従って、皇位の継承順位がつけられてゆきます。

 一 皇長子(天皇の嫡子で最も年長の男子)
 二 皇長孫
皇長子のさらに皇長子)
 三 その他の皇長子の子孫
 四 皇次子及びその子孫
(皇長子の次に年長である天皇の嫡男と、その男子の子孫)
 五 その他の皇子孫
 六 皇兄弟及びその子孫
(天皇の兄弟と、その男子の子孫)
 七 皇伯叔父及びその子孫
(先代の天皇の兄弟と、その男子の子孫)
特例 各号の皇族がない時は、それ以上で最近親の系統の皇族
 ※同順位の場合は年長者、及び年長者の子孫が優先。

 ちなみに現在(2001年12月11日)で、男子皇族を皇位継承順に挙げてゆきますと、以下のようになります。

1位 皇太子(旧称:浩宮)(皇長子)
2位 秋篠宮
(皇次子)
3位 常陸宮
(皇兄弟…天皇の弟)
4位 三笠宮《父》
(皇叔父)
5位 三笠宮《子》
(皇叔父の長男)
6位 桂宮
(皇叔父の次男)
7位 高円宮
(皇叔父の三男)

 人数が殊のほか少ないのは、皇位継承の有資格条件が厳しく、また、戦後すぐに遠縁の皇族は身分を返上しているためです。このことも今回の女帝待望論に大きな影響を与えているのですが、それはまた次回以降の講義で詳しく扱いたいと思います。
 ちなみに、現在と戦前との規定の違いとして、嫡子が存在しない時に限り、庶子にも継承権があったことなどがありますが、現在の社会通念上、天皇が側室を持って、事実上の重婚をすることは考えられませんので、これは考慮しなくても良いと思います。

 ……と、いうように、日本の皇位継承に関する規定は、天皇の権威に価値を持たせるためか、厳しい規定が千数百年の永きにわたって維持されてきました。確かに、激しい政治的争いなどの有事には、継承順位がないがしろにされたりしたこともありました。数少ない女性天皇も、そのような時に、緊急避難的措置で実現したものでした。ですが、それでもこの厳格な規定が、根本から大きく揺らいだことは無かったのです。

 では、日本の皇室の比較対照となる、他の君主国の事情はどのようなものだったのでしょうか? ここは思い切って古代まで戻って、世界各国の皇位(王位)継承の規定と女性君主の有無について振り返ってみることにします。 

 まず、同じ東アジアの中国から話を始めましょう。
 中国は黄河文明発祥の頃から1912年の辛亥革命に至るまでの約4000年間、皇帝による専制君主制度が維持されました。後継者は一貫して男子限定であるなど、皇位継承の規定そのものは日本のそれに似ています。(というか、こちらが本家です)
 
しかも中国の皇帝は多くの妻(后、側室)を抱えることが常でしたから、後継者は余ることはあっても不足することはありませんでした。また、数年〜数百年に一度のペースで戦争・侵略による王朝の交代があり、皇帝の血統が先細りすることも無かったのです。規定に則った女帝の出現などは、夢のまた夢、といったところでした。
 しかし、中国の長い歴史の中でただ1人、則天武后(在位690〜705)という女帝がその名を残しています。ただ彼女は、皇帝である夫や我が子から、強引にその地位を奪って皇帝となったため、あくまで例外的存在です。むしろ、多くの有力者を向こうに回して、夫や息子から皇帝の座を奪うような女傑でなければ皇帝になれなかった、と解釈した方が良いでしょう。
 他のアジアの君主国も、事情は似たり寄ったりでした。中にはモンゴル帝国のように男子末子相続、つまり君主(カン、またはカァン)の子の最年少者が家督を継ぐ国もありましたが、女性君主が登場した、という話はほとんど聞きません。かろうじて、古代西アジアの小国家で数名の女王が存在したり、西アジアとエジプトを拠点としたイスラム国家のマムルーク朝で、臨時的措置で数年間女性君主(スルタン)が存在した程度です。
 アジア史における女性君主不在の要因としては、一夫多妻制と男尊女卑思想、さらに目まぐるしい国家の興亡などが挙げられます。女性が君主になることは状況が許さなかった、と考えて良いでしょう。

 では、アジアから遠く離れたヨーロッパではどうだったでしょうか?
 ヨーロッパでも、紀元前27年から始まる古代ローマ帝国を筆頭に、大小さまざまな君主国が存在しました。 しかし古代には女性君主は少なく、プトレマイオス朝エジプト(当時エジプトは、ヨーロッパに近い存在でした)からはクレオパトラという超有名な女王が出たものの、彼女は例外的な存在の上に、(当時頻繁に行われていた)近親結婚の相手である弟との共同国王でした。古代のヨーロッパもアジアと同じような理由で女性君主が誕生する余地が小さかったと考えられます。
 また、古代ローマ帝国の皇帝位は、そもそも今で言うところの大統領に近い存在でした。世襲によらずとも実力があれば誰でも皇帝に就けたために、皇帝に就いた人物は軍隊出身の者が多く、その意味でも女性君主の実現性は薄かったと考えれなければなりません。

 しかし、中世から近世、近代と時代が移り行く中で、事情が変わってきます。やがてヨーロッパには、女性君主が他国の男性君主を翻弄するという時代が訪れるのです。
 ……が、ここで今日は時間となってしまいました。次回はヨーロッパの君主継承権事情の続き、そしてそれを踏まえた上で日本の制度に話を戻し、女性天皇復活に向けての諸問題について追求してゆきたいと思います。
 また、明日は水曜日ですから、「演習」があります。この「法学」の次回講義は木曜日ということになりますので、注意してください。
 それでは、今日の講義を終わります。(この項続く

 

12月10日(月)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(1)

 さて、昨日は休講失礼しました。一部で助手よりも影が薄いと評判の駒木です。
 何やら突然受講生が増えたみたいで驚いています。驚いたついでに、一見さん向けでない講義を準備していたために、講義内容の差し替えがあってバタバタしております。そんなこともあって、今日はそれなりの講義しか出来ませんが、そういうわけですのでご了承を。
 ……
 さて、今日からは3回にわたって、最近にわかに現実味を帯びてきた、わが国の女帝──即ち女性天皇──問題について講義をしてゆきたいと思います。講義の題材の関係上、いつものような毒や笑いの要素は随分と抑えられてしまいますが、ご理解を。お笑いネタをお望みの方は、アーカイブから僕の著書「今日の特集」でも引っ張り出して読んでもらえれば、と思います。
 また、この講義は、一応の形式上は、法学・社会学・歴史学に関する学術的なものですので、文章中の敬称(陛下、殿下等)は、原則的に省略しております。別に駒木はアカでも左翼でも「愛国戦隊大日本」の敵役でも何でも有りません。読売以上産経未満の中道右派ですので、誤解なきよう。

 では、本題に移ります。
 皆さんもご存知の通り、先日、わが国の皇室に内親王(敬宮愛子さま)が誕生しました。「内親王」とは皇族の女性でも位の高い皇女に与えられる称号で、現在は皇室典範第6条の中の「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする」という条項に従って使用されています。分かりやすく言えば、「天皇の正式の后から産まれた子、またはその子の正式の后から産まれた子の中で女性を『内親王』とする」というわけで、正式の皇太子妃雅子さまから産まれた愛子さまは、当然、内親王となるわけですね。

 ……と、初めから非常に堅苦しい法律の条文の話から始まりましたが、日本の皇室は、全てこの皇室典範という堅苦しい法律によって規定されています。
 この度の女性天皇を認める是非についての問題も、皇室典範第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」という条文を巡っての論争に行き着くわけなのです。
 この皇室典範は、昭和22年5月の日本国憲法制定と共に成立した法律なのですが、これは明治憲法成立と同時に制定された旧皇室典範をマイナーチェンジして作られたもので、そのため、至る所に帝国時代の名残が残っています。この、天皇を男子に限るとする第1条も、天皇が国家唯一の主権者として君臨していた時代の傷痕にも似た名残というわけです。男女同権が常識となり、「女は旦那が帰ったら三つ指ついて出迎えろ」などと言うのは、桂ざこばくらいになった昨今、確かに「天皇を男性に限る」という条項は時代錯誤と言えるかもしれません。

 しかし、君主制の国において皇位(王国では王位)継承に関するルールというのは、国家の根幹と言っても良いようなもので、非常に存在そのものが“重たい”のです。
 もちろん、現在の世界では、世襲の君主が国家の支配権を握っている例はごくわずかです。ほとんどの国では、君主の主権を大幅に制限する憲法が制定され、事実上の主権は国民や民選の議会・内閣に委任されています。中には、「10代の女性とセックスしてはならない」というトンデモ法律を制定し、しかも自分がその法律違反で罰金ならぬ罰牛を納める羽目になり、今年B級ニュースマニアの知るところになったスワジランド国王のような例外的な絶対君主もいますが、まぁ、世界中の“王様”の大多数は既に形式的な存在になっていると言ってしまってよいでしょう。
 ですが、だからと言って、それらの国で君主継承のルールも形式的でグダグダになっているか、というと決してそうではありません。確かにここ数年で、ヨーロッパの君主国では王位継承権の男女同権化が相次いでいますが、それでも数百年から千年以上も前からつい最近に至るまで、時代錯誤的なルールが厳守されてきたことには間違いありません。
 どうしてこんなことになっているのかというと、これは少し難しい話ですが、君主が権力を失い、不安定な権威だけを有する存在になったことで、逆に、その権威の源である伝統(時には時代錯誤的な)を守る必要性が出ていたからではないでしょうか。誤解を恐れず喩えれば、「家庭で威厳の無くなったオヤジほど家族に威厳を示そうとする」のと似ているかもしれません。やたら電気の消し忘れに五月蝿いとか。

 ですから、我が日本の場合も事情は同じなわけで、権力の無くなった今だからこそ、時代遅れの伝統に固執してしまう、というわけです。
 よく、“女帝賛成派”の意見として、「昔、日本にも女帝がいたではないか。昔に戻せ」というものがありますが、それは歴史を全く理解していない証拠でして、普通の人ならいざ知らず、いかにも「私は勉強してますよ」とエリート面した社民党のクソババアオバサマがそんな事をのたまわっているのを聞くと、さしもの温厚な駒木も、「お前ら○○だけやなくて脳味噌も終わっとるのか」と罵りたくなってしまいます。
 かつての日本の女帝に関しては、またこの講義の3回目で詳しく扱いますが、あくまでも例外的な存在でして、「出来ることなら女帝はナシで」というのが王朝誕生以来の伝統でありました。ですから、現在の皇位継承に関するルールは、実のところ明治どころか古墳時代や飛鳥時代からの伝統なのです。これがいかに“重たい”ルールか、分かってもらえるでしょうか?

 ……
 と、ここで時間が来ました。(実時間で朝の5時を回ってます^^;)今日の講義はここまでにして、次回(明日)は、日本や各国の“伝統”、君主継承に関してのルールに着いて検証してみたいと思います。
 それでは講義を終わります。(この項続く

 


 

12月8日(土)集中講義・競馬学特論
「G1予想・朝日杯フューチュリティS編」

 ええと、まず今日の講義に入る前に……。
 受講記録(アクセス解析)を見てて気になったんですが、皆さんは昨日の後期試験の時に配布したプリント(リンクをつなげたページ)4枚を読みましたか? 読んでくれていればいいのですが、そうでない場合は、こちらの出題の意図が全く伝わらないと思いますので、絶対に読んでください。よろしいですか?
 ……
 では、今日の講義です。G1レースのある週の土曜日は「競馬学特論」。G1レース予想です。ただ、いつもなら、珠美ちゃんと一緒に出馬表を見ながらじっくりと予想をしてゆくのですが、今日は諸事情により時間がありません。ので、出馬表を省略し、印を打った馬とその解説にとどめたいと思います。ご了承ください。(明日の夜、出馬表を追加して補完したいと思いますが、それまでは新聞等に掲載された出馬表を参考にして、講義を受講してください)

 さて、それでは早速、予想に移りましょう。
 このレースは、各地の地方チャンピオンが集合してのグランドチャンピオン決定戦のような意味合いが強いレースです。今日行われた、K-1グランプリの決勝大会みたいなものですね。
 こういうレースは、かなりギャンブル性が強くて、推理ゲームというよりもクジ引きと言った方が良いかもしれません。各馬の強さを直接比較する材料が限りなく少ないので、それぞれの前哨戦の中で、どのレースを重視するかにかかって来ます。実は、僕はこういうレースの予想が一番苦手だったりします(苦笑)。まぁ、それでも目一杯脳細胞を動員して頑張ってみることにしますね。
 このレースは18頭が出走するのですが、その中で重賞レース勝ち馬が5頭、さらにオープン特別を勝った無敗の馬が2頭います。馬番だけで失礼しますが、1番・6番・7番・10番・11番・14番・15番の7頭です。まず、これを第1集団としましょう。余程のことが無い限り、この中から勝ち馬が出ると思って良いでしょう。
 次に、第1集団の7頭と同じレースに出て2着や小差3着の経験がある馬たち。この敗者復活を期す馬たちを第2集団としましょう。馬番が3番・4番・5番・9番・12番・13番の6頭ですね。ここからも2着に滑り込んだり、大番狂わせを演じる可能性のある馬がいると考えて良いでしょう。
 有力候補がこの13頭(多!)。あとの5頭は残念ながら、力が若干足りないかな、と思われます。
 で、この多くの有力候補から、さらに絞っていったのですが、僕の予想は以下の通りになりました。

10番 ヤマノブリザード
1番 アドマイヤドン
6番 カフェボストニアン
7番 シベリアンメドウ
× 14番 バランスオブゲーム
× 13番 スターエルドラード

 ……まず第1集団からは、体調に問題がある15番を切り、また、デイリー杯2歳Sはレヴェル的に問題があると考え、11番も除外しました。これで5頭。
 後は展開予想などを加味して序列を付けました。では、1頭ずつ簡単な紹介を加えましょう。
 本命はヤマノブリザード。北海道競馬からの転厩緒戦になります。第1集団の中で、最も展開的に恵まれそうだという点を買って抜擢しました。ここ2年で、地方競馬所属馬が2着、3着していますので、地方競馬出身という点もマイナスにはならないでしょう。
 対抗に1番人気が予想されるアドマイヤドン。日本競馬界でも有数の良血馬で、オープン特別の京都2歳Sを圧勝して勇躍参戦してきました。この馬の問題点は、「果たして能力の絶対値がG1クラスかどうか?」の1点に尽きます。圧勝か惨敗かどちらかが予想されるため、安定性という面を考慮して本命から外しました。
 3番手にはカフェボストニアン。どのような作戦でレースに臨むか分からないのですが、差し脚に賭けるレースに出た時に、台頭する可能性が十分あります。
 シベリアンメドウバランスオブゲームは先行馬。超ハイペースが予想されるレースだけに、バカ正直なレースをしていては勝ち目は薄いでしょう。また、シベリアンメドウがダートや芝の不良馬場でしか走っていないことを不安視する向きもありますが、デビュー2戦目のプラタナスSのタイムを見る限り、スピード勝負に出ても通用するだけの能力を持っていると思われます。全ては展開次第です。
 第2集団からは1頭、スターエストラードだけに印を打ちました。これは、第1集団と第2集団の力量差が、ことのほか大きいと解釈したからです。スターエストラードだけ印を打った理由は、前走の大敗からの立て直し気配が見えることと、ノーマークの馬にはうってつけの、後方一気の展開が望めそうだということです。騎手のデムーロJKも魅力ですね。
 買い目は1-10、6-10、1-6の3点を中心に、7-10、枠連の5-7を押さえに買うかどうか、といったところです。

 ちなみに助手の珠美ちゃんにも予想をしてもらってます。彼女の予想も掲載しておきましょう。

1番 アドマイヤドン
10番 ヤマノブリザード
7番 シベリアンメドウ
14番 バランスオブゲーム
× 3番 アグネスソニック
× 11番 ファストタテヤマ
× 6番 カフェボストニアン

 ……彼女は、かなり手広く馬券を買うみたいですね。さて、今週はどうなることか、皆さんもご注目ください。それでは今日の講義を終わります。(この項終わり)


 ※駒木博士の“勝利宣言”
 ジャパンカップダートと同じような、○−◎の的中でした。先行するはずのシベリアンメドウとバランスオブゲームが差しに回って、中位から差すだろうと思っていたカフェボストニアンが先行した時はどうしようかと思いましたが、何とか形だけは整ってくれました。辛勝だったので、勝利宣言も湿り気味ですね(苦笑)
 残る平地G1は有馬記念。良いフィナーレを飾れるよう、今から研究に取り掛かりたいと思います。

 ※栗藤珠美の“喜びの声”
 やりました♪ ◎−○の完全的中です。スターエルドラードが伸びてきた時はちょっと怖かったですけど、それでも上位2頭の力を信じてましたよ。
 この調子で有馬記念も頑張ります。応援してくださいね♪

 


 

12月7日(金)後期試験
「続・或るモー娘。ファンからの手紙」(出題篇)

 さて、今日は一風変わった講義をやりたいと思います。
 既に、私の著書である「今日の特集」を読んだ受講生の方は、もうご存知だと思われますが、僕の研究室には不定期で、少し変わったメールが到着します
 なぜかコンピューターウィルスが猛威を振るっている時期に、しかも送付ファイル付きでメールが来るのが困りモノなのですが、それでも内容が面白いので、迷惑どころか楽しみにしている始末なのですが……。
 それがどういうモノか、というのは、実際見てもらえれば面白さが分かると思います。では、ちょっと珠美ちゃん、プリントを皆さんにお配りして下さい。

 プリント1プリント2プリント3

 ……さて、読んでもらえましたか?
 まぁ、初めてこのメールを受け取った時、僕がどれくらい困惑したかは容易に想像できるかと思います(笑)。これをどう扱ったらよいのか? そもそもこれはどのような意図で書かれたものなのか? ……とね。
 始めは「ちょっとアブない人からのメールかな?」とも思ったんですが、読んでみると、なかなか練られた構成になっている。少なくとも、“電波”を受信して書き殴ったものではなさそうだと思われるんですね。
 では、良質のパロディなのか? ……まぁ、これが一番確率としては高いんでしょう。モー娘。とプロレスの話をリンクさせたパロディだと…。ちょっと詳しく見てみますと、既存の女子プロレス団体・アルシオンの設定と似通っている点も有りますしね。「レスラー(個人)の強さ=タレントとしての活躍度・つんく♂のお気に入り度」と考えたら、合点が行きますし。
 でも、現実のモー娘。とリンクしていない点もある。例えば、現実では天然ボケの大人しい女の子キャラであるはずの石川梨華が、悪役のリーダーになっていますし、細かい話ですが、売れ線でないユニット(メロン記念日・シェキドル)が勝手に追放処分になったりもしてます。これはどう解釈すればよいのか?
 ……とまあ、謎だらけではあるんですが、とにかく面白いから良いかな、と思っています。もし、SFみたいに異世界からのメールが、何らかの理由で紛れ込んできた、なんて話だったら、それはそれで楽しいですし。浅田次郎さんの「地下鉄に乗って」で、地下鉄と過去の世界がリンクする、という設定がありましたが、インターネットと電話回線を通じて、異世界とリンクしている、なんてのも、想像してみれば楽しいものですしね。

 さて、ここまで長い前振りをしたわけですから、もうお分かりでしょう。そう、今回また、僕の手元に“彼”からのメールが届いたのです。またしてもウィルスが流行っている時に送付ファイル付きで(苦笑)。
 今回のメール部分は以下の文面でした(一部編集)。

 まずはサイト新設、おめでとうございます。何かとお忙しいでしょうが、これからも頑張ってください。
 また、先日は「今日の特集」で破格の扱いをして頂き、ありがとうございました。喫茶店の店員に睨まれながら、深夜までかかってレポートを書いた甲斐があったと、大変嬉しく思います。

 さて、今回もまた、ハロープロジェクトの大イベントについてのお知らせです。添付したHTML文書の方に詳しい情報が載っていますが、今回も駒木さんに興味を持っていただければ幸いです。もしよろしければ、今回も観戦レポートを提供させて頂きますので、またメールにてお知らせください。

 それでは、「社会学講座」のますますの発展を期待しています。

 この通り、常識的な文章です。少なくともアブない人だとは思えませんよね。
 そして、肝心の「お知らせ」はこちらのプリントです。珠美ちゃん、また皆さんに配ってください。

 今回のプリント

  ……さて、読んでもらえましたか?
 今回もなかなかの“力作”です……と言ってよいものかどうかは分かりませんが、よく出来ているとは思います。
 それでですね、今回はこれを使って、少し早めの後期試験を行いたいと思います。まぁ、当講座には単位認定はありませんので、自由参加としておきますが……。
 試験の内容はもちろん、この“リーグ戦”と“試練の七番勝負”の勝敗と内容の予想です。
メール談話室などで発表してもらえれば、と思います。締め切りは2週間後の21日までとします。それでは皆さん、頑張ってください。 (数週間後の解答篇へ続く

 

 

12月6日(木)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第2週分)

 え〜、まずはこの2日間、予告無く休講してしまったことをお詫びします。
 今後も、諸事情により休講することが少なからずあるとは思いますが、その時は、可能な限り前日までに予告させてもらいますんで、どうぞご了承を。
 ……
 さて、毎週水曜日──今週は水曜休講だったので木曜日ですが──はゼミを開講します。僕の本来の専門分野は競馬学とギャンブル社会学なんですが、土曜日に競馬学の講座を既に開講してますので、ゼミは別のテーマを設定しました。
 当講座のゼミは「現代マンガ時評」と題しまして、日々発行されるマンガ雑誌に掲載されたマンガの時評をしてゆきます。現在はまだ、通常の講義形式ですが、近い将来には双方向のゼミが出来れば、などと考えています。
 このゼミのコンセプトは、“これからのマンガ界を担うマンガ家と作品を発掘する”こと。その週の雑誌に掲載された、読み切り作品や新連載の作品をレビューして、その作品や作者の今後を占ってみたいと思います。
 もちろん、主な週刊マンガ誌の読み切り&新連載作品を網羅することが理想ではありますが、物理的な事情もありますので、当面の間は「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」に掲載された作品を中心に、その他の雑誌でも、特に注目すべき作品があれば随時取り上げてゆきたいと考えています。
 もしも、「マガジン」「チャンピオン」や青年各誌の読み切り&新連載作品のレビューを寄稿してくれる受講生がいらっしゃったら、是非申し出てください。詳しくはメール
談話室(BBS)にて。
 
 さて、それでは早速、今週分のレビューを行います。対象は読み切り作品と、新連載第1回ですが、さらに新連載第3回の作品についても“後追いレビュー”を掲載します。これは、新連載第1回で抱いた印象を修正する機会を得ると共に、第3回──ちょうど連載を打ち切るか否かを決定する分岐点とされている──の時点で総括することによって、その作品の今後を占う意味も含んでいます。
 また、それぞれの作品には、「A+」から「C」までの7段階評価を付け加えます。それぞれの評価の基準はこちらの通りです。
 最後に、レビューは出来るだけ客観的な姿勢で臨みますが、当然のことながら、若干の主観が混じることは否定できませんあくまでも一方向の角度から見たレビューと受け取ってもらえれば、と思います。

 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年新年1号☆

 ◎新連載作品『サクラテツ対話篇』作画・藤崎竜

 前作『封神演義』で、メジャー作家の仲間入りを果たした藤崎竜の新連載。病的なまでにハイテンションな登場人物たちによるドタバタ劇、という、いかにも藤崎竜らしい作品。タイトルを決めた時点で一般ウケは諦めている節が無きにしも非ずだが、これが果たして支持基盤のマニア層に受け入れられるかは、現時点では疑問。……というか、初回で51ページも貰っているのに、話のコンセプトすら見えてこないのだからレビューのしようが無い(笑)。とりあえず、話の道筋が見えるまで詳しい評価は保留させていただく。とりあえず、読んでいて不快感は無かったので、7段階評価はB

 ◎新連載第3回『もののけ! ニャンタロー』作画・小栗かずまた

 どうやら前作の『花さか天使テンテンくん』と違い、完全なギャグマンガではなくストーリー(コメディ)路線で話を進めていくようだ。
 しかし、どうも『テンテンくん』と『地獄先生ぬ〜べ〜』を足して2で割った印象がするのだが、どうだろうか? まぁ、それはそれで構わないのだけれど、この作者が様々な意味において、前作から全く進歩が見られないのは大きな問題と言わざるを得ない。
 3週前からの連載3作品入れ替えで、前回の入れ替えで新連載になった作品が全て討ち死にしたように、現在のジャンプ連載陣はかなり粒が揃っている。このまま大きなインパクトを与えられないと、この作品も当然打ち切りの対象になりかねない。作者には前作の成功に奢らず、更なる進歩を強く求めたいと思う。7段階評価は、
Bに近いB−。 

 ◎読み切り『桃太郎の海』作画・吉田真

 今や当たり前になった『HUNTER×HUNTER』休載に伴う“代原”。しかし、これまで多くの代原が掲載されているが、そこから連載作家に出世した作家が皆無というのも寂しい話だ。
 さて、この作品はというと、題名のとおり、おとぎ話『桃太郎』のパロディなのだが、この作品は一体どう解釈すればよいのか? 
 ギャグマンガとしては、あまりにもギャグがお粗末だし、幼年向けの“絵本マンガ”としては、ちょっと対象年齢が高すぎる気がする。
 それ以上に問題なのは、一度通読しても、ストーリー(特にラストの辺り)がよく理解できないということ。こう言っては何だが、駒木に理解できないマンガが子どもに理解できるはず無いぞ。しかし、代原とはいえ、よくデスクや編集長が本誌掲載にゴーサインを出したものだ。この作者には、『まんが道』に出て来る、つのだじろうのデビュー秘話のくだりを読んで出直して来い、と申し上げておく。7段階評価は、甘めで
B−

☆「週刊少年サンデー」2002年新年1号☆

 ◎読み切り(前後編)II(ツヴァイ)』作画・石渡治

 読み切りなのに異様に多い登場人物、収拾不可能と思えるくらい大きなスケールのストーリー、説明セリフを多用しないと解説しきれない膨大な設定etc……。
 石渡治ともあろう大ベテラン作家が、これほどまで読み切り作品における禁忌(タブー)を犯しておいて、それでもギリギリ読める作品に仕上がっているというのが凄い。無意味に凄い。何というか、キャッチャーが決して捕れない140km/hのナックルボールのような作品だ。ベテランだからこそ許される、という微妙な作品で、恐らくこんなところで扱わない限り、あっという間に記録からも記憶からも消されてしまうのだろう。そういう意味では貴重なレビューとは言えまいか(笑)。7段階評価は
B

 ……

 と、いうわけでいかがでしたか? 今週は辛口のレビューが続きましたが、本当に良い作品であれば、どんどん褒めてゆきたいとも思っています。
 また、「私は駒木博士と違ってこう思った」というような意見をお持ちの受講生は、どうぞ談話室に書き込んでください。それでこそゼミというものですので。
 それでは、今日の講義はこれまで。(この項終わり)

 


 

12月3日(月)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(3)

 比較文化論のこのテーマも、今日で3回目。一応、今日で最終回にする予定でいます。
 ちなみに、過去2回分のレジュメは、こちら(第1回)と、こちら(第2回)にあるので、欠席していた人は読んでおくように。

 さて、前回までで、最近ギター担当が自殺を図ったことで、かなり久しぶりに一般マスコミに大きく扱われたバンド・ヒステリックブルー(以下:ヒスブル)は、ジュディマリの模倣をしたら「パクりだ」と顰蹙を買い、リンドバーグ風味を加えたら「でもやっぱり声はジュディマリ風。技量は比べるまでもないけど」と、呆れられ、心機一転レベッカの模倣をしたら「お前ら、ものまね王座決定戦か」と怒りを買いその結果、完全に人気を失ってしまった、というところまでお話しました。今日はその続きからとなります。

 ……

 さて、昨日までで、いかにヒスブルが多くの人の顰蹙や嫌悪感や怒りを買っているか、ということを、真剣に彼らを応援している人に刺されそうな勢いで皆さんに語ってきました。
 要は、デビュー以来ずっと、他のバンドの真似ばっかりやってるから嫌われた、ということなのですが、でも果たしてそれだけでしょうか?

 と、言うのはですね、日本のミュージックシーンで、他のアーティストの模倣をしている人は、ヒスブル以外にもかなりの数に上るのです。
 ヒスブルと同じように、“パクリアーティスト”として非難を浴びた経験のある倉木麻衣矢井田瞳はもちろん、あのB’zも「エアロスミスとそっくりじゃないか」という指摘を再三受けていますし、某大物歌手に至っては「ああ、あの曲? 作曲は実は俺じゃないよ。作曲・ボブ=デュラン」と豪語しています。ましてや、つんく♂の作った一連のアイドルソングなどは言わずもがなです。
 しかし、彼らはヒスブルほど叩かれたり、人気が下がったりしていない。これはどうしたことでしょうか?

 その理由を導き出す資料が、以下に挙げるものです。これは、「パクリ」と叩かれた経験のある、ヒスブルを含む3組のアーティストに対する巷の声で、多いもの上位3つをそれぞれ挙げたものです。(資料は駒木研究室調べ)

 ★矢井田瞳の場合

1位  椎名林檎のパクリだった人だよね。最近は似てないけど。
2位  最近は椎名林檎より頑張ってる気がする。歌も下手ではないし。いや、むしろ上手い方?
3位  どうして実力あるのにパクリなんかしてたんだろう?

 ※少数意見……楽曲と歌はともかく、作詞はまだ椎名林檎に全然及ばないんでは?

 ★倉木麻衣の場合 

1位  宇多田ヒカルのパクリやってた人だよね。最近はあんまりそう感じないけど。
2位  やっぱり宇多田と歌唱力比べると、ちょっと可哀想かなあ? でも、下手ではないよね。
3位  お父さんが監督したAVキボンヌ

 ※少数意見……立命館大学入学って、エレベーターじゃねえか。

 ★ヒスブルの場合

1位  ジュディマリのパクリじゃねえか。実力は遠く及ばないけど。
2位  レベッカのパクリでヒットしたバンドだ。実力は遠く及ばないけど。
3位  リンドバーグのパクリもやってたよね。声はどう聞いてもジュディマリだったけど。

※少数意見……よく聞いたら、ジッタリンジンのパクリもやってる。/よく聞いたら、ELTのパクリっぽい曲まである。

 矢井田瞳倉木麻衣は、未だ“前歴”を引きずりながらも、その後は独自の路線を歩みだし、また、歌唱力などで一定の評価を得ています。倉木麻衣は比べられている相手が相手ですので、若干損をしているように思えますが、それでも、もう彼女をただのパクリ歌手と言う人はごく少数でしょう。
 模倣から始め、やがて一歩先の創造を。これはこの「社会学講座」が目指す道でもあります。
 一方、問題のヒスブルはというと……あらら、こりゃまた随分無残な結果になったもんですね。
 結局のところ、彼らは他人の模倣から脱皮できず、実力の方も頭打ちになったために、曲を聴いた印象が「他のアーティストに酷似」としか残らないからなんでしょうね。この辺り、デビューまでがトントン拍子に行き過ぎた反動が出てしまっている、と取れないことも無いかと思います。

 では、そもそもヒスブルは、実力もオリジナリティも無いくせにどうしてトントン拍子にメジャーデビュー出来たのでしょうか?
 この「比較文化論」の第1回で、ヒスブルは、恐ろしいまでの豪運を発揮して関係者にデモテープを聞いてもらった、という話をしました。しかし、よく考えてみれば、たとえデモテープを聞いてもらえても、アマチュアに毛の生えたようなレヴェルの、ジュディマリのパクリバンドプロとしては未熟な発展途上のバンドが、アッサリとメジャーレーベルからデビューできるなんて、よく考えてみたら普通はあり得ない話です。当然、この話には裏があるのです。

 ここまで敢えて伏せてきましたが、ヒスブルの編曲とプロデュースを務めているのは、佐久間正英氏。なんと、ヒスブルとは余りにも因縁のあるジュディマリ(JUDY AND MARY)のプロデューサーでもある、業界の大物です。
 さらに、これも伏せてきましたが、ヒスブルはアマチュア時代、ジュディマリ好きが高じて、ジュディマリのコピーをやっていた、という過去があります。もちろん、佐久間氏にデモテープを送ったのは偶然ではありません。それどころか、「僕たちはジュディマリが大好きなんです」という手紙を添えてテープを送ったという話もあるくらいです。
 そしてもう1つ伏せてきましたが、ヒスブルが佐久間氏に見初められた1998年後半というのは、ちょうどジュディマリが、メンバーの仲が悪くなりすぎて活動休止していた時で、担当のアーティストが1つ空白になった佐久間氏が、“ポスト・ジュディマリ”を探していた時でもありました。
 ついでに1つ付け加えますと、業界の噂では、この佐久間氏、「1人のミリオンセラーを出すよりは、10人の10万枚クラスの歌い手を売り出した方が確実」と考えるタイプの人だそうです。

 ……ハイ、よろしいですか? 
 以上の事をまとめますと、こうなるわけです。
 「佐久間氏は、1998年当時、活動休止中だったジュディマリの代わりをしてくれるような、売上10万枚クラスのバンドを探していた。そこへたまたまジュディマリの廉価版のようなバンド・ヒスブルが目に留まり、とりあえず中継ぎとしてデビューさせることにした」 と。
 ちょっと飛躍し過ぎた喩えかもしれませんが、
 「四国で讃岐うどん屋のオーナーをやっていた人がいた。しかし雇っていた店長から休業の申し出があり、仕方ないので東京で『本場の味・讃岐うどん』の店を開いた。新たに雇われた店長は、讃岐うどん好きの若者」
 といったところでしょうか。もっとも、ヒスブルは肝心のジュディマリ調の曲が売れなかったわけですから、
「『讃岐うどんの店』として出店したが、肝心のうどんはサッパリ売れず、うどん屋なのにカレーライスと中華そばが主力になってしまったうどん屋。しかもレシピが他の評判店から盗んだものだったので、業界から大顰蹙」
 ……と表現した方が的確でしょうけど。 

 しかし、こういう喩えをしておいて何なんですが、これは別に恥ずかしいことでもなんでもありません。矢井田瞳も倉木麻衣も、ここからスタートしたのです。
 彼女たちは、外野から「パクリだ」と叩かれながらも地力の強化に努め(うどん屋の喩えで言うなら、やがて独立するために、和食全般の腕を磨き)、しばらく後には独自の路線を切り開いて、自分の力だけで大ブレイクを果たしたわけです。
 ですから、ヒスブルも、ここから自力でブレイクするように精進を重ねなければならなかったのです。
 特に彼らは、「ジュディマリが戻ってくるまでの代役」というキャラでデビューしたわけですから、そこから脱皮しない限りは、ジュディマリの復帰後には“御役御免”で退場、という末路が待っています。そういう意味ではタイムリミットまでも設定されていた、ということなのです。
 でも、彼らはどうだったか。結局、目立った技術向上は果たさぬまま、既成アーティストの模倣にばかり走って目先の利益を追い続けました。まさに「アリとキリギリス」のキリギリスです。キリギリスが冬の到来と共に息絶えたように、彼らもまた、ジュディマリの活動再開と共にJ−POP界からフェードアウトしてゆく運命に立たされたのでした。(現に、ジュディマリが復帰した途端、CDセールスは激減しています)
 先刻のうどん屋の喩えで言い表せば、
 「肝心のうどんがちっとも売れないまま、他店のレシピで作ったカレーとラーメンで食いつないでいたら、すぐ近所に元祖の『讃岐うどんの店』が復活してしまい、客を根こそぎ奪われた。次第に頼みのカレーとラーメンも売れなくなって、店は閑古鳥」
……と、なりますね。

 結局、ヒスブルが売れなくなったのは、実力不足と努力不足、という至極当然の結果に落ち着いてしまうわけです。
 もちろん、だからといって自殺未遂したナオキに向かって、「自業自得なんだから、死にたきゃ死ね」と言って良いわけではありません。ただ、他の音楽を志す若者たちに比べて、格段のチャンスを得ておきながら、それをみすみすフイにしたことを考えると、どうしても同情心が薄れがちになってしまいますよね。

 さて、講義の残り時間も少なくなってしまいました。

 先日、TVを見ていましたら、エンディングテーマがヒスブルの新曲でした。
 売れない時期を耐え忍んで、少しは彼らも変わったかな、などと考えつつ曲に耳を傾けますと、Aメロからジュディマリの曲に酷似したメロディーラインが流れてまいりました。
 頭の中で、いかりや長介の「だめだこりゃ」と、愛川欽也の「ハイ、消えた!」が交錯して、非常に陰鬱な気分にさせられました。

 ……

 この「比較文化論」では、これからもヒステリックブルーを追いかけてみたいと思いますが、次に取り上げる時、彼らが芸能界にいるかどうか分からないというのが、何だか生々しくて嫌ですね。
 とにかく、日々精進、オリジナリティこそ命。このことを僕も皆さんも心がけて、一日一日を過ごしてゆきたいものです。
 と、そんな教訓めいたことを口にしたところで、今日の講義を終えたいと思います。(この項終わり)


 

12月2日(日)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(2)

 それでは、30日(土曜日)の続き、比較文化論の2回目の講義を行います。
 前回欠席している人は、レジュメだけでも読んでおくように。
 ……
 さて前回は、最近自殺を図ったメンバーのいるヒステリックブルー(以下:ヒスブル)が、“友達が全くいなくて、来た年賀状がメガネ屋のDMだけだったのに、クジで1等当たってしまったオタクのような豪運”を発揮してメジャーデビューしたはいいが、買ってもらったのはCDじゃなくて顰蹙だった、という話をしたところで時間が来てしまいました。今日はその続きから進めましょう。

 ………

 1stシングルの失敗から約3ヶ月、ヒスブルは1999年の1月に2ndシングル・「春〜spring〜」をリリースします。タイアップは、テレ朝系「目撃! ドキュン」のエンディング曲。今から考えると、かなり意味深なタイアップです。
 前作「Rush!」が、余りにもジュディマリ(JUDY AND MARY)に似ていると罵られた反省からか、この「春」では、アレンジを変えて勝負に出ました。その結果、オリコン最高位5位・100位以内ランクイン19週のロングヒットで、66万枚のセールスを達成します。いきなりのブレイクです。
 では、この時の巷の声を聞いてみましょうか。 

 ジュディマリに似てると聞いてたけど、この曲は似てないと思う。むしろ、リンドバーグに似てる。

 あれ?

 でも、やっぱり声はジュディマリだよね。歌の上手さは数段劣るけど。

 あれあれ? 

 ジュディマリに似てるけど……ボーカルの顔は似てませんね。ダメです。

 イタタタタタタタ。

 ……確かにヒットはしましたが、CDが売れた分だけ、叩かれ方も半端じゃありませんでした。というか、パクった相手を変えただけじゃ、顰蹙買って当たり前です。
 べた褒めしてる人もいないではないですが、そういう人は、ジュディマリとリンドバーグを知らなかった、または、まるで「元AV女優・しかも村西とおるの愛人」という過去を持つ野坂なつみと、全てを受け入れて結婚した野村義男のような慈愛に満ちた人たちだけだったみたいです。

 ですが、どういう形であれ、ヒスブルは一気にJ-POPのメジャーシーンに登場し、知名度も一気に上がりました。
 その余勢を駆ってリリースされた1stアルバム「baby Blue」売上53万枚と、大きめのスマッシュヒットを達成します。
 では、このアルバム発売に際しての巷の評価を紹介しましょう。

「春」を除くと全部ジュディマリ。
「春」が好きな人はシングル買った方が正解かも。
ジュディマリ好きは正解かも。

 もはや、当時活動休止中だったジュディマリの代用品扱いです。 しかも、しれっとアルバム不要論まで囁かれていたりしてます。

 ただしこのアルバムには、「春〜Spring」以外にそれほど目立った作品はありません。粒選りな曲が揃っていますが、「春〜Spring」以外には、際だった個性を感じる作品がありません。

 要約すると、「1曲除いてジュディマリのパクリ」ということでしょうか。まぁ、その1曲もリンドバーグのパクリなんですけど。

 ヒットしてもヒットしても、いや、ヒットすればするほど叩かれてしまうヒスブル。しかし、当の本人たちは余りそんな自覚が無かったみたいで、この1stアルバムから「Little Trip」をシングルカットして、3rdシングルとして発売します。
 しかし、この曲はオリコン最高位27位、売上3.5万枚と大不発ジュディマリ路線の限界を露呈する結果となったのです。
 さすがにここに至って学習能力が働き出したのか、ヒスブルはここで慣れ親しんだジュディマリ路線と決別。全く新しい試みで4thシングル「なぜ……」をリリースします。路線変更が功を奏したのか、この曲は58万枚のヒットを記録。再びメジャーシーンへ復帰します。
 さて、それでは、また例によってこの頃の巷の声を紹介しましょう。 

 ジュディ風バンド・ヒスブル、今度の曲はレベッカ風です。「フレンズ」が流行ったからレベッカ風、、、まあ、いいんすけどね。
 
歌い方もレベッカなりきってます。
 
作曲の「たくや」(ドラム。どうでもいいけど名前までジュディマリ風)曰く、「ぼくドラム以外の楽器出来ないから鼻歌で作るんですよ」・・・ま、まあいいや。
 まあ、個人的にはレベッカ的アレンジは嫌いじゃないんでギリギリ赤点セーフって感じ。

 

 なぜ・・・、ヒスブルはあんなことするんだ。「春〜Spring〜」を聴いたとき、歌い方、声はジュディマリの真似だと、多くの人が思ったはずだ。(曲は「リンドバーグ」そっくりと私は思った。どうでしょうか。)現に「J−POP批評」にもそう書かれてある。そっくりでも、しっかりとポリシーをもっていればよい。ところが、「なぜ・・・」である。すっかり変わってしまった。これは「レベッカ」ではないか。「フレンズ」のリバイバルヒットに便乗したのか、あきれた限りである。(怒っているので文体は「常態」となって威張っている。)ものまね大賞じゃないんだから、おいしいとこばっかりつまみぐいしてCDをつくるのはよしてほしい。きっと数多くの人がそう思っているはず。

 

 ジャケット写真は、なんかブリグリっぽい

 最低です、こいつら。

 この「なぜ……」という曲、確かにサビの部分のコードが、レベッカの「フレンズ」のサビと酷似しています。まるで「ビックリマンチョコ」と「ガムラツイスト」の関係みたいです。

 結局、どう転んでも先発アーティストと酷似した楽曲しか出せないことが白日の下にさらされたヒスブル。これ以後は、とある大きな理由(次回で触れます)もあって、一気に人気は下降線の一途をたどります。CDをいくら出しても売れなくなり、次第にプロモーションもさせてもらえなくなります。
 そして、ブレイクから2年半後にあたる今年の10月に出された11thシングル「フラストレーションミュージック」に至っては、発売週にオリコン53位に顔を出したっきりで売上枚数4200枚。まさに地に墜ちた、という凋落振りを露呈させてしまいました。
 そして、ギタリストのナオキが自殺を図ったのは、ちょうどこのCDの出る直前あたりになります。きっと、全てが行き詰まった感じ、つまり人生に対する閉塞感が彼を自殺衝動へと追い込んだものと思われます。
 ……
 さて、今日も時間が来ました。次回はこの話題の最終回。どうしてヒスブルはダメなのか、というところをもう少し掘り下げてみたいと思います。
 では、また明日。  (この項続く


12月1日(土)集中講義・競馬学特論
「G1予想・阪神ジュベナイルフィリーズ編」

駒木:「G1レースがある週の土曜日は、競馬学特論として、レースの予想をやることにします。オープンキャンパスの時と同様、競馬学特論では助手の珠美ちゃんと一緒に講義をやってゆきます」
珠美:「ハイ。皆さんよろしくお願いします♪」
駒木:「さて今週のG1は、中央競馬唯一の2歳牝馬G1・阪神ジュベナイルフィリーズだね」
珠美:「阪神競馬場の芝1600m、来春の桜花賞と全く同条件で争われますので、その行く末を占う上でも重要なレースになりますね。事実、去年の勝ち馬は、後の桜花賞馬・テイエムオーシャンですし」
駒木:「でも、波乱に終わる年も多いから、扱いが難しいレースでもあるよね。当然、予想も難しいレースでもあるね」
珠美:「ハイ。では、出馬表をご覧頂きましょう」

阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神・1600・芝

馬  名

騎手

    シーバスビコー エスピ
    アローキャリー ファロン
  × オースミコスモ 常石
    チャペルコンサート 熊沢
    ミニーチャン 松永幹
    ワイドパッション 渡辺
ヘルスウォール デムーロ
× × タムロチェリー ペリエ
× ブライアンズイブ
    10 シェーンクライト 福永
11 キタサンヒボタン 須貝
    12 カネトシディザイア 池添
    13 オメガグレイス 蛯名
14 マイネヴィータ 中館
    15 テイエムハーバー 宝来
    16 フォルクローレ 四位
    17 マイネノエル 河内
× 18 ツルマルグラマー 武豊

珠美:「あら、私と博士では、印をつけた馬はほどんど一緒なんですけど、印の種類が全然違いますね」
駒木:「うん。今回はかなり“狙って”印を打ったんでね。珠美ちゃんの印はオーソドックスな打ち方をしてるみたいだから、珠美ちゃんの印の順に展望していこうか」
珠美:「ハイ。では私の本命、6枠11番のキタサンヒボタンから。デビュー以来4戦4勝、前走の重賞・ファンタジーS(G3)を勝っての参戦になります。出走馬の中ではダントツの実績と勢いがあると思うんですが、博士は○印なんですね」
駒木:「確かに、常識的に言えば、◎を打たなきゃいけない馬だとは思ってるんだけどね。でも、どうにも騎手が気になって仕方が無い
珠美:「須貝騎手、ですね?」
駒木:「そう。正直言って、大きなレースでは、あまり活躍していない騎手なんだ。大レースの人気馬にマイナー騎手っていうパターンは、波乱が起きるケースがとても高い。やっぱり平常心じゃいられないんだろうね。それに前走のファンタジーSは、騎手の技量が関係ないくらい楽に勝たせてもらってるだけに、今回シビアな戦いになった時、余計に不安がつきまとう。まぁ、実力は文句ナシに最右翼だから、今回も楽勝してしまう可能性も十分あるよ。でも、こればっかりはギャンブルだから仕方が無い。僕は勝てない方に賭ける」
珠美:「…分かりました。では、次はヘルスウォール。私が○印で、博士が△印です。私は休み明け2走目での変わり身に期待しました。前走は調教不足気味のようでしたし」
駒木:「問題は地力だね。2走前のオープン勝ちをどれだけ評価するか。どうもそれほど強調できるレースでもないような気がするんで、評価を下げたんだ」
珠美:「印が違うから当たり前なんですけど、今日は全然意見が合いませんね(苦笑)。では次はツルマルグラマー。絶対不利の大外枠ですけど、私は前走2着を評価して▲に。博士は×印ですね」
駒木:「一応印は打ったけど、多分馬券は買わない。まず、阪神1600mの大外18番枠は致命的。それに、どうも前走は上手く行き過ぎた感じがするんだ。人気している割には、ちょっとリスクが高すぎる感じがする」
珠美:「私のお奨めの馬、全部文句をつけられてしまいました(苦笑)。では、次からは立場逆転。私よりも博士の評価が高い馬が続きます。まず、私が△印で、博士が▲印のマイネヴィータ。物凄く強い馬かも知れないですけど、不安定な要素が多すぎるので、私は順番を下げたんですが……?」
駒木:「本当は◎にしようかとも思ったんだよ。でも、珠美ちゃんの言う通り、確かに不安定要素が多すぎる。かなり前の方で競馬をする馬だから、展開もちょっと向かない感じだし。ナリタブライアンの仔だから頑張ってほしいんだけどねえ」
珠美:「では、次は博士の◎印、ブライアンズイブです。私は、念のため、という感じの×印なんですけど、これはどうして?」
駒木:「さっき、ヘルスウォールの時に、地力を疑問視して評価を下げたって言ったけど、今度は逆。前走の3着をかなり重く見た結果がこの印につながったということ」
珠美:「でも、デビュー間もない頃の成績が随分悪いように思えるんですけど…?」
駒木:「夏場の成績が悪いことなんて、ブライアンズタイム産駒では頻繁にあることだし、しかも厩舎は、レースを使いながら仕上げていくことで有名な大久保正陽厩舎だからね。あのナリタブライアンとは、同じ父馬で同厩舎の関係なんだけど、あの馬だって、2歳の夏から秋にかけては随分といいかげんなレースをしてる。それが一変して、一躍、一流馬へのステップを踏み出し始めたのが、12月の朝日杯3歳Sだった。そういうことを考えると、この馬だって、ここからサクセスストーリーが始まっても全然不思議じゃない
珠美:「なるほど、そういうわけなんですね」
駒木:「もっとも、サクセスストーリーが始まらなくても全然不思議じゃないんだけどね(苦笑)。ま、イチかバチかの穴狙いということで」
珠美:「分かりました。それでは私と博士が共通して印を打った最後の馬、タムロチェリーです。騎手は先週、博士がベタ褒めしていたペリエ騎手。私は騎手の名前で印を打ったようなものなんですけど」
駒木:「厳密な意味で言う差し馬の中では、一番力がある馬でね。開幕週の芝だから、なかなか追い込みは利かないと思うけど、やっぱり怖いね」
珠美:「では、有力馬最後の1頭、オースミコスモはどうですか? 博士は無印ですけど」
駒木:「怖くないといったら嘘になるけど、でも多分来ない気がするね。条件戦とG1じゃあ、何もかもが違うはずだし。典型的な『消える穴人気馬』とみている」
珠美:「ハイ、ありがとうございました。では最後に、私たちが実際に買う馬券を紹介しましょうか。私は7-11、11-18、7-18、11-14、9-11、8-11、3-11の7点です」
駒木:「外れる可能性が高いから、あまり買いたくないんだよね(苦笑)。まぁ、とりあえず、9-11、9-14、11-14の3点。あとは枠連4-5と、9-18を押さえるかどうか。悪いけど、自信無いね、今回は」
珠美:「というわけで、予想をお送りしました。皆さんも頑張ってくださいね♪ 博士もお疲れ様です」
駒木:「はい、珠美ちゃんお疲れ様。では、今日の講義はここまでにします。それでは、また明日」 (この項終わり)


 ※駒木博士の“敗戦の弁”
 ブライアンズイブのサクセスストーリーは、やっぱり始まりませんでした(苦笑)。狙いすぎだったかな、と反省。しかし、もっと反省しなくちゃならないのは、「多分買わない」と言ってた9-18の馬券を買ってしまったこと。
 ま、キタサンヒボタンを◎から蹴飛ばしたのだけは正解でしたね。ここぞという時には、やっぱり騎手の差が出ちゃうよなあ…

 ※栗藤珠美の反省文
 私が上位に推薦した馬、全滅状態になってしまいました……。
 今から思えば、博士から指摘されたウィークポイントが全部当てはまってることに気付いて、愕然としています、私。
 でも、その博士も的中には程遠い成績ですから、やっぱり今日のレースは難しかったんですよね……。
 また来週、頑張ります。


11月30日(金)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(1)

 さて、2日目の講義を始めます。
 いやぁ、昨日の講義は、助手の珠美ちゃんに文句言われちゃいましたよ。いきなり一発目からあんな講義はどうか、と。……え? 違う? そんな下品な言い方してませんって? ああ、「1回目の講義から、このテーマはどうかと思いますけど」か。ゴメンゴメン。
 …まぁ確かに、ちょっと砕けすぎた話題だったかもしれませんね。今日はもう少しだけ真面目な内容にしようと思います。
 ……
 え〜、J-POPに詳しい方も、そうでない方も、“ヒステリックブルー”なるバンドの名前くらいは聞いたことがあると思います。そう、“音楽業界の「アトランティス」”と異名をとるあのバンドです。
 この3人構成のバンド、まぁ、メジャーデビュー前に抹殺されたメンバーがいそうな生々しい人数なんですが、そのギタリストのナオキが自殺を図って未遂に終わった、という報道が2週間ほど前にありました。その時の、サンケイスポーツ11/16付の記事を以下に引用します。

 3人組ポップバンド「ヒステリック・ブルー」のギタリスト、ナオキ(22)が自殺未遂騒動を起こしていたと、16日発売の写真週刊誌「フライデー」が報じた。

 目撃者の話として同誌が報じたところによると、ナオキは10月上旬に都内の自宅内にガスを充満させ、左手首を切り、自ら119番通報したという。この報道に関して、所属事務所とレコード会社は、「やかんをかけていた火が消え、ガス漏れふうになった。さらに室内で転倒し、ケガを負ったため119番したと聞いてます」と説明している。

 ご覧の通り、事務所サイドは、イメージダウンを恐れてか、自殺未遂を否定しています。しかし、もしもこの釈明通りの行動をしていたとしたら、それはそれで「お前はマンガに出てくる、家事がサッパリダメなヒロインか」という恥ずかしいツッコミを受ける事は必至なので、ここは本人の名誉のために自殺未遂と言う事にしておきましょう。
 しかし、それにしても自殺未遂とは穏やかではありませんね。確かに、ここしばらくヒステリックブルー(以下、ヒスブル)をTVで観ていないとは思っていましたが、その陰でこういう事が起こっていようとは……。

 一体、彼とヒスブルに何があったというのでしょうか? ……それを分析するためにも、まずはヒスブルの経歴を振り返るところから始めましょう。

 ヒスブルことヒステリックブルー(Hysteric Blue)は1997年7月に、当時17〜18歳だったメンバー3人(tama、たくや、ナオキ)が出会って結成。翌月から、あのシャ乱Qを生んだ大阪城公園前でストリートライブを開始し、活動をスタートさせます。
 彼らは身分不相応にもプロ志向が強く、間もなくデモテープ作りを開始します。普通、この手のデモテープは何十本、何百本作ろうとも、聞いてもらえずに燃えないゴミと化すものなのですが、ここで彼らは恐ろしいまでの強運を発揮。テープが音楽関係者の耳に届き、彼らはプロへの階段を歩み始めることとなります。
 それから準備期間を置いて、メジャーデビューを果たしたのが翌1998年の10月31日。なんと結成から1年3ヶ月でのメジャー進出です。まるで春風亭小朝の真打ち昇進のようなゴボウ抜きっぷり。恐らく、マンガ『無頼男』(梅澤春人作画)も真っ青のサクセスストーリーを見て、思わず殺意を抱いたアーティスト予備軍は数百人じゃ利かなかったと思います。
 そんな彼らのデビューシングルは「RUSH!」。これからJ-POPシーンにラッシュをかけてゆくぞ! という意気込みが感じられる題名です。
 しかし、この1stシングルは、TV番組のタイアップを得たにも関わらず、オリコン最高位61位、推定売上約2万枚(記録は全て2001年11/30現在)と、ラッシュどころか、かろうじてジャブが当たっただけに終わります。
 しかも、セールスが伸びず、一般層には名前すら知ってもらえないような状況でありながら、マニア層には「ジュディマリのまんまパクリじぇねえか」と罵詈雑言を浴びせられるという散々な内容で、まさに音楽業界の「アトランティス」の面目躍如。この時点での彼らの前途は、福留功男の腹の中くらい真っ暗だったのです。

 しかし、この後、彼らはまたも持ち前の強運を発揮する事になります。

……

 と、いったところで今日は時間が来てしまいました。
 この続きは次回の「比較文化論」で。カリキュラムの都合で、次回の比較文化論は日曜になります。それまでに復習をちゃんとしておくように。では、今日の講義を終わります。 (この項続く

 


11月29日(木)マス・コミュニケーション論
「マンガ新人賞の新しい姿」

 突然ですが、栗藤珠美です。
 この日の講義内容には、人によっては著しい不快感を感じるような内容(特に性に関する話題)が扱われている箇所があります。その点をご承知の上で受講してくださいませ。

    では、第1回目の講義を始めます。
 記念すべき1回目ということで、何をテーマにしようかと迷いました。しかしまぁ、いきなりお堅いテーマから入ってもね、皆さん息が詰まってしまうでしょう? ですから、今日はライトな路線で、マンガ業界のお話でもをしてみようと思います。だから、肩の力を抜いて受講してもらって結構ですよ。
 第1回ということで超ロングバージョンとなりますので、どうぞ時間をかけて受講してください。
 では、始めます。
 ……
 さて、日本には膨大な数のマンガ雑誌がありますが、そのほぼ全ての雑誌でいわゆる新人賞が行われています。
 これは、日本全国に埋もれている有能な新人作家を発掘し、その雑誌の将来に繋げたい、という出版社・雑誌側の思惑の表れというわけです。例えば、創刊当初から新人発掘に力を注いでいる「週刊少年ジャンプ」では、月例の「天下一漫画賞」、入選すれば即デビュー確実の「手塚賞」「赤塚賞」(年2回)、さらに最近では、ネーム部門を設置して原作者の発掘も図る「ストーリーキング」(年1回)など、複数の賞を設置して、数多くの新人を発掘しているわけです。まぁ、発掘した新人の9割以上は飼い殺しですが。

 しかし、この各種新人賞、特にマイナーな雑誌ほどそうなのですが、“大賞”の賞金と副賞がやたらと豪華な割には、賞金5万円と副賞・原稿用紙セットの“奨励賞”しか出ない、という傾向があります。しかも、その“奨励賞”からのデビュー率が著しく低く、何を奨励しているんだか皆目分からない、という悲しい現実も見え隠れします。
 こんな様子を見た時、我々の脳裏には「マイナーな雑誌だから、高い賞金が払えないんじゃないか」なんて疑念が湧いてきたりするのですが、それは大部分正しいとしても一応は間違いのようです。それを証拠に、創刊以来、休刊と存続の境界線を「キャプ翼」の滝くんのようなライン際ドリブルで駆け抜けているマンガ雑誌「コミックビーム」編集長の奥村氏は、以前新人賞の講評でこのようなことを述べられています。

 あー。あかん。べつによぉ、俺はゼニけちってんじゃねえぜ。俺のハートのビーンときた新人にゃあ、ポーンとゼニ払ってやろうと思ってんのよ。挙句の果てにゃあ、ソープ1回くれえオゴっちゃおうとまで思ってんのよ、マジで。次回は頼むよ、ヨロシク!!

 そのソープは大衆店なのか、高級店なのか。また、女性が受賞者の場合は出張ホストに変更になるのかどうかは分かりませんが、奥村氏の意気込みはビンビン伝わって来ます。伊達に慰安旅行のたびに沖縄のソープに行ってません、この人。
 …とまぁ、雑誌側には、少なくとも「本当に凄い新人だったら、街金から金借りてでも大賞を出す」という考えはあるようです。ただ、その場合は、大賞を受賞した新人が、いつの間にか手形の裏書人になったりしないかと、また余計な心配が沸いてきたりするのですけれども。

 ただ、雑誌側にどれだけ意気込みがあったとしても、結果的に「大賞、入選、佳作に該当作なし、奨励賞2作品」では、いつまで経ってもソープご招待大物新人発掘は、ままなりません。受賞者が少ない、または出ない賞では、どうしても応募者側のモチベーションが維持できず、ますます有能な人材は大手雑誌に流れていってしまいます。これでは悪循環です。

 しかし、そんな冬の時代に、厳しい現況を打破しようとするマイナーマンガ雑誌が現れました。
 その雑誌名は「カラフルBee」実用性に富んだ成年向マンガ雑誌として定評があり、また、ストリップ劇場で言うところの幕間コントにあたる、ショートギャグマンガの「ゲノム」が、ごく一部で絶大な人気を誇っています。競馬場で喩えれば、笠松競馬場、プロレス団体で言えば大日本プロレスのようなポジションでしょうか。
 そんな「カラフルBee」が、今年からスタートさせた新人賞が「カラフルトライアル」です。この賞は年3回実施され、必ず1作入選作(しかも本誌掲載)を出すことが公約されています。つまり「該当作なし」を撤廃した画期的な新人賞と言うわけです。
 もちろん、これにはカラクリがありまして、この賞には賞金が存在しません。入選作が掲載される際に支払われる原稿料が賞金の代わりとなります。
 原稿料の相場は、残念ながら詳しく知り得ませんが、小学館や講談社といった大手出版社では「新人は1ページ1万円」という相場らしいですので、マイナー誌ではページ数千円というところでしょう。ですから、この「カラフルトライアル」入選者に支払われる原稿料は、ページ数にもよりますが、平均して5〜10万円程度だと思われます。マンガ新人賞の賞金としてはかなり低いランクであると思われますが、その代わりに、雑誌掲載と掲載作のアンケート調査という貴重な体験をさせてもらえるのですから、賞金が低くても応募する価値は高いと言えるでしょう。

 また、この「カラフルトライアル」の素晴らしいポイントとして、受賞作に対する講評が異様に懇切丁寧である、ということが挙げられます。
 普通、雑誌に掲載される受賞作の講評は、あくまで簡潔にまとめられてしまうものです。例えば、先日「週刊少年ジャンプ」51号に結果が掲載された「第7回ストーリーキング」では、他の新人賞で言うところの大賞にあたる「キング」が1作品選出されたのですが、この作品に対しての講評は以下のようなものでした。

 アメフトという、スポーツ漫画ではわりと手垢のついていない競技を題材に選んだのが正解。しかも荒々しい競技に挑む主人公の軟弱少年にも味がある。完全に原作者のレベルに達しているという好評価。

 確かに、選者が言いたいことは分かるのですが、文字数の関係か、どうしても抽象的な印象が否めません。「味がある」というのは一体何をもって「味がある」とするのか、この講評だけでは全く理解出来ないのです。
 その点、「カラフルトライアル」の講評は、その辺りが一味違います。
 
まずは第1回の受賞作の講評をご覧頂きましょう。受賞作は2作品ありますが、1つずつ取り上げていきたいと思います。(講評は、明らかな誤字を除いて原文ままですが、赤字強調は駒木によります)

作品名:「正しい合格の祝い方」

 子どもっぽいし、料理も不得意、それほど美人でもないけど、可愛くていつもそばにいてくれる…。そんな女の子との「純情」で「ひたむき」なHが、ありがちな設定ながらも強く下半身にうったえて、編集部内での高い評価につながりました。ただ、もう少し挿入シーン以外のHシーンに力を入れ、「ついに彼女を手に入れたんだ!」という勢いがあれば、もっと良くなったと思います。

 …非常に具体的ですね。受賞の決め手が「理屈抜きで下半身を反応させた」こと、問題点は「前戯の描写をもっとしつこくする」ことだと一目瞭然です。この際、「審査員を勃たせたら、内容はどうでもエエんかい」というツッコミは差し控えましょう。
 また、もう1作品の講評は以下のようなものでした。

作品名:「僕 hold out!」

ページ数が4ページと短いものの、とにかく女の子のキャラクターの可愛さが目を惹きました。また、4ページの中に、大きなリボンの巨乳の少女、エレベーターガール、肉球つきのロリコン少女など「これでもか」というほど萌え要素の高い女の子が登場し、それが入選の大きな材料となりました。次は、このキャラクターの魅力を生かした長編を期待しています。

 これも非常に具体的な講評です。審査員諸氏の「よくぞ萌えさせた!」というスタンディングオベーションが聞こえてきそうな名文だと思います。これも、「萌えさせたら後はどうでもエエんか? あぁ?」と、ヤカラを入れたくなりますが、そんな瑣末な事を気にしていては、物事の本質を見失ってしまうので、これも差し控えておきましょう。

 そして4ヵ月後、第2回の「カラフルトライアル」では、この具体的な講評がさらにグレードアップします。

作品名:「ましゅまろ☆はねむ〜ん」

二人きりでの温泉旅行。そこで妹のような女の子とHする…。精一杯奉仕してくれる彼女と、可愛すぎる彼女に欲情を押さえきれない主人公。ストーリーから「彼女にこういうHな事をしてもらいたい、したい」という欲情が素直に感じられ、またその主人公の欲情に読者も感情移入しやすく、素直に「ヌケル」マンガになっていたのが非常に良かったです。こういう「こんな女の子(妹、メイド、猫耳、コスプレ、などの萌え要素)と、こんなH(処女貫通、アパートの自室で、などH行為の状況・場所)をしたい、させたい!」という具体的な物(夢)が見える作品は編集部での好評価につながります。ただ、途中でいくつか挿入されているCG作画の部分が、絵にぼやけた印象を与えてしまいました。また、Hシーンでは、「妹のような女の子」という設定をよりいかすために、「彼女の方からもっと甘えるシーン」があれば、さらに萌えたと思います。

 凄いですね。

 まず、作者に「いつもこんな事考えて欲情してるんだぁ。いよっ! このスケベ!」とチャチャを入れつつ、返す刀で選者自身も「思わずトイレに持ち込んでオカズにさせて頂きました」とカミングアウトしています。マリナーズ・イチロー選手のレーザービーム送球も真っ青の、見事な言葉の連携と言えましょう。
 また、見逃せないのは、この講評は次回以降に応募する人に対しての指針を示していると言う事です。つまり、
 「アパートに一人暮らしの兄の下へ妹がやってきて、猫耳メイドのコスプレをして処女貫通」
 というストーリーで応募すれば、入選間違いなしというわけです。こんな親切な講評、これまでにあったでしょうか? 素晴らしいの一言ですね。

 しかしこれもまだ、つい先日発表された第3回の「カラフルトライアル」講評の前奏曲に過ぎません。
 この第3回の講評は、もう講評の域を越え、散文詩の世界に突入していると言っても過言ではありません。

 まず、全体の講評から。今回はかなりの接戦だったらしく、審査が難航した様子が伝えられています。

 5人の方の作品は、入選作と一緒に、どれを掲載するのか最後まで編集委員の意見が分かれました。これらの作品は「H度」「ストーリー性」「画力」などにおいて、入選作をしのぐ部分も多かったのですが、「最後に全ての作品を思い浮かべたときに、すぐにキャラクターの絵が浮かんだ」というところで「Sugar SUGAR」を入選とさせて頂きました。本当に僅差でしたが、やはり「Hで印象に残るキャラクター」の強さが最後の最後で発揮されたと思います。

 なんと決め手は念写です。

 ううむ、この人たちなら、あの「マインドシーカー」も一発クリア出来そうな気がします。

 しかし、これからが本番です。では、究極の講評の世界をご堪能あれ。

作品名:「Sugar SUGAR」

 編集部員全員の一致した意見が「とにかく猫耳召使いがかわいくてH」ということでした。ふさふさの猫耳や、裸エプロンに近い格好は、「こんな召使いが欲しい! Hしたい!」と思わず叫びたくなりました(笑)。それに、SEXの最中の感じている顔、半開きの口から突き出た舌、流れ落ちる唾液、涙ぐんだ瞳がイヤラシサを倍増させています。この「猫耳召使い」が、今回の入選の最大の理由になりました。
 ただ、錬金術師と猫耳召使いのドタバタHは、前半部分(Hではないシーン)が「料理失敗→おしおきH」というパターンの割にはいささか冗長になってしまいました。もっとはやくHに持っていき、その分Hシーンを濃厚にした方が良かったと思います。また、「どじな召使い」を「おしおきする」タイプのHですので、「スライムH」などよりも、もっと猫耳召使いを「いじめる」Hが欲しかったです。例えば「乳首を強くつまむ」とか、「お尻の穴に指を入れる」「挿入をじらして、猫耳召使いに挿入を懇願させる」など、「カワイイ娘を思うがままに蹂躙する」快感があれば、もっともっと読者にサービスできたと思います。
 その他にも「男性キャラクターの描き込みをもっと丁寧に」とか、「性器の描写をもっとリアルに」などが反省点として挙げられます
 このように修正すべき点も多かったのですが、「キャラクターのかわいらしさ」がそれらの欠点を圧倒する力を持っていました。これからは、「キャラクターの良さが、どうしたら最大限に生きるか」にこだわって作品を作っていってほしいと思います。

 いかがでしたでしょうか。まるで夜中に1人で、リモコン片手にアダルトビデオを見ながら呟いているような思いの数々。これこそ、人間の本能と欲望の赴くままに劣情を爆発させた芸術大作、まさしく公私混同の極みであります。某大麻常習犯の父親「不倫は文化だ」とのたまいましたが、ここに至っては、この講評こそ文化だと言えはしないでしょうか、ねぇ皆さん。

 不況にあえぐマンガ業界に現れたウルトラスーパーデラックスマン救世主、「カラフルトライアル(の講評)」。この出来て間もない新人賞が、これからのマンガ業界の未来を作り上げてゆく、そんな予感がする……と、そうまとめたところで、今日の講義を終わりたいと思います。長時間、お疲れ様でした。 (講義終了)

 

 

11月25日(日)競馬学特論
「G1プレイバック」


駒木:「さて、オープンキャンパスの講義だけれども、仁川経済大学らしく、競馬学でいこうと思います。今週は、ちょうどG1が2つあるジャパンカップウィークだったし、その2レースを振り返ってみよう、と。なお、競馬学特論の講義の時には、助手の珠美ちゃんにも手伝ってもらいます。それじゃ、挨拶して」
珠美:「ハイ。助手の栗藤珠美です。皆さん、どうかよろしくお願いします♪ でも、博士。実はこの講義では、昨日のお昼にジャパンカップ2レースの予想をする予定だったんですよね」
駒木:「そうなんだ。でも結局、昼は時間的に間に合わなかったし、夜もサーバーの不調で講義が出来ない状態になってしまったんだ。」
珠美:「2レースとも予想が的中したのに残念でした」
駒木:「でもまぁ、当たったって言っても、配当は安いしねぇ。人気サイドで終わったレースの予想記事ほど面白くない記事も無いから、結果的には良かったんじゃないのかな?」
珠美:「そうなんですか?」
駒木:「そういうことにしておこう。でないと、あまりの幸先の悪さに泣けてくるじゃないか」
珠美:「………ハイ
…(涙)

ジャパンカップダート 東京・2100・ダート

着順

(馬番)馬名

着差

1

(9)クロフネ

2

(8)ウイングアロー

 

×

3

(1)ミラクルオペラ

1/2

 

 

4

(3)ノボトゥルー

3/4

 

 

5

(4)プリエミネンス

1

 

 

6

(11)リージェントブラフ

1

 

 

7

(2)ワールドクリーク

1 1/2

8

(14)リドパレス

1 3/4

 

 

9

(10)ジェネラスロッシ

3/4

 

×

10

(16)ハギノハイグレイド

3/4

 

 

11

(7)ディグフォーイット

クビ

 

 

12

(5)ミツアキサイレンス

3

 

 

13

(6)オンワードセイント

4

14

(15)レギュラーメンバー

9

 

 

15

(12)アエスクラップ

6

 

 

16

(13)キングオブタラ

10

珠美:「2分05秒9のレコードタイムでクロフネの圧勝でした。強かったですね」
駒木:「強かったねえ。武豊JKも、全然上手に乗ろうと考えてないもの。外、外を回って、しかも早仕掛け。馬の走る気さえ損ねなければ勝てるって確信してたんだろうね。全盛期のホクトベガを髣髴とさせる圧勝だったね。…って、珠美ちゃんは世代的に知らないか」
珠美:「いえ。リアルタイムで見てたわけではないですけど、学生時代に講義で観ましたよ、ホクトベガの南部杯。アナウンサーが興奮して『女王様とお呼び!』って叫んだレースですけど」
駒木:「…………」
珠美:「……? 博士、どうかしました?」
駒木:「……あぁ。いや、女の子から『女王様と…』って言われると、ちょっとね(微笑)」
珠美:「……コホン(ちょっと赤面)。話を戻しましょう。
博士はクロフネに、本命じゃなくて対抗の○印だったんですね。これはどうしてだったんですか?」

駒木:「ん〜、同じように圧勝してた前走の武蔵野Sがね、ちょっと相手が弱過ぎたんじゃないかな、と。格下相手にレコードタイムで圧勝した馬が、次のG1で惨敗するって、結構あることだからね。まぁ、ここでも圧勝されたから、説得力は皆無になっちゃったけど」
珠美:「なるほど。…ええと、クロフネはこれからはどうなるんでしょう?」
駒木:「来年はドバイWCとブリーダーズCクラシックが目標だろうね。スピード競馬にも対応できるし、何より来年4歳で、まだ若い。ひょっとするとひょっとするかもしれないよ」
珠美:「そうですか。期待大ですね♪ ……それじゃ、次いきます。2着には、熾烈な競り合いを制してウイングアローが滑り込みました」
駒木:「ん〜、2着争いにはシビれたね。たかだか5倍チョイの配当のために大声が出た(笑)」
珠美:「私は、配当が安い方が(2着に)来ちゃって、別の意味で声が出ちゃいましたけど(苦笑)。ああ、そっか。博士はこの馬が本命だったんですね。私は他の馬に目移りして△印しか付けてなかったんですが…」
駒木:「本当の意味での実績は、やっぱりこの馬が一番だったからね。明らかにこのレースを目標にして仕上げてきたような感じだったし。ただ、今回は相手が悪すぎたとしか言いようが無いね。去年このレースを勝った時のパフォーマンスは見せているんだから。去年はクロフネがいなくて、今年はいた。それに尽きるね。この馬も強いよ」
珠美:「ハイ。じゃあ次に行きますね。3着はミラクルオペラでした。個人的に残念な着順です(苦笑)」
駒木:「典型的な昇り馬というやつだったね。実績は足りないけど、勢いが物凄いって馬。この手の馬は、大抵G1だと頭打ちになっちゃうんだけど、やっぱり少し足りなかったね。健闘はしてるから、これ以降の成長力如何では、ウイングアローと互角以上に戦えるようになるかもしれないよ」
珠美:「次は2頭いっぺんにいきましょう。4着はノボトゥルー。春のフェブラリーSを勝った後、不振が続いてましたけど、今日のレースは見せ場十分でしたね。5着のプリエミネンスも2着争いに参加してましたね」
駒木:「ノボトゥルー、調教も悪かったんだよね。2100mの距離も長いし、最後に失速したのは当然といえば当然なんだけど、やっぱりこの馬も力があるよね。プリエミネンスもよく頑張ってるけど、ゴール前に突き放された辺りに、格の差が出てる気がしないでもない」
珠美:「次は人気を裏切った有力馬について。アメリカ最強ダート馬と言われたリドパレスは8着でした。これはどうしたんでしょう?」
駒木:「クロフネが仕掛けて行った時に付いていけなかったものねえ。敗因としては、やっぱり日本と外国のダートの違いがあるでしょう。日本の場合、名前こそダートだけど、実際は砂、サンドコースだから。アメリカとかドバイのダートはスピード優先で、日本のダートはパワー優先。求められてるものが違うんだよ」
珠美:「あらら、それは可哀想でしたね」
駒木:「でも、クロフネは、そういう馬場で芝並みのタイムを叩きだしてるわけだからねえ。リドパレスの関係者も言ってたらしいよ。『13馬身も負かされたら、何も言う事はありません』って。本音じゃないかな、それが。アメリカの馬場で同じレースをやったとしても、1着クロフネ、2着リドパレスだね」
珠美:「馬場が半分、実力が半分ってことですね。それじゃあ、次は14着に惨敗したレギュラーメンバーなんですけど、これは実力負けじゃないですよね?」
駒木:「うん。3コーナー手前でバテてたからねえ。中途半端な位置取りになったとはいえ、いくらなんでも負けすぎだ。これは度外視して良いね。事実上のノーカウント」
珠美:「最後に、他の外国馬を総括してください」
駒木:「ジェネラスロッシは、力不足以前にデキ不足。調整の失敗だね。鼻出血も発症していたようだし。あとの2頭はダート適性かな? ヨーロッパの芝馬だから、力の要る日本のダートは向くかも、と思われたんだけど、全然ダメみたい。やっぱり馬場適性は一筋縄じゃ行かないね」
珠美:「ハイ。ありがとうございました。次は芝のジャパンカップの回顧に移ります」

ジャパンカップ 東京・2400・芝

着順

(馬番)馬名

着差

×

1

(6)ジャングルポケット

2

(4)テイエムオペラオー

クビ

 

×

3

(10)ナリタトップロード

3 1/2

4

(8)ステイゴールド

クビ

5

(1)メイショウドトウ

3/4

 

6

(7)ゴーラン

ハナ

 

 

7

(11)インディジェナス

1/2

 

 

8

(9)ホワイトハート

1 1/4

 

 

9

(13)ウィズアンティシペイション

3

 

 

10

(2)アメリカンボス

1

 

 

11

(15)ダイワテキサス

2

 

 

12

(3)ギャグニー

2 1/2

 

 

13

(14)パオリニ

ハナ

×

 

14

(5)トゥザヴィクトリー

大差

×

×

15

(12)ティンボロア

2 1/2

珠美:「なんと、日本調教馬が掲示板(上位5頭)を独占しました。これは史上初ですよね」
駒木:「そうだね。でもまあ、今年の外国勢のレヴェルとかを考えてみれば、それも納得できる結果なんだけれどもね」
珠美:「そうですか。それでは、また上位から1頭ずつ振り返ってください。まずは、1着のジャングルポケットから」
駒木:「なんだかんだ言って、結局、この馬の実力がオペラオー級だったってことに尽きるんだろうけど、1着になった要因とすれば、チャレンジャー精神だろうね。自分から勝ちに行かずに、勝ちに行った馬を負かすレースをしたんだ。それと、ペリエJKの騎乗技術。やっぱり凄いわ、この人」
珠美:「つまり、馬にも勝てる力はあるけれど、今回勝てたのは、騎手の力と時の運ってことですか?」
駒木:「そういうこと」
珠美:「では次、宝塚記念、天皇賞・秋に続いて、G1レース3連続で2着になったテイエムオペラオーです。私たち、2人とも◎印を打ってました。私は、素直にこれまでの実績を評価したんですけど、博士は?」
駒木:「こっちも似たようなものだけれど、敢えて言うなら、皆がオペラオーから浮気をし始めた頃だから、その逆を突いて。ギャンブルは、他人の裏をかくことが鉄則だからね。まぁ、一番人気だから、そこまで力説できるわけでもないんだが」
珠美:「それにしても、勝てなくなりましたね、オペラオーは」
駒木:「そうだね。でも、よく考えたら、今年春までの危なっかしい勝ち方よりも、随分と安定したレースをしているんだよ。確かに、ほんの少しずつ全盛期から衰え始めてるのかもしれないけれど、それでもまだまだG1を勝てる力は充分持ってるさ。ここしばらくは時の運に恵まれていないだけ。有馬記念に期待だね」
珠美:「分かりました。では、次は3頭まとめていきましょう。3着ナリタトップロード、4着ステイゴールド、5着メイショウドトウ
駒木:「ナリタトップロードは……。確かに3着なんだけど、全然勝ちに行ってないんだよねえ。言い方は悪いけど、オコボレを貰っただけってところ。それならむしろ4着のステイゴールドの方が見せ場十分だったね。ナリタは、渡辺JKがあんなレースをやってる内は、いくら頑張ったって勝てないね。2着も無理。あと、5着のメイショウドトウは、かなり道中で不利があったみたい。あれでリズムを狂わせたのなら、災難としか言いようが無いね」
珠美:「ナリタトップロードに関しては、ちょっと辛口の分析でしたね。じゃあ、あとは外国馬を。最高位は6着のゴーランでした。私は○印を打っちゃったんですけど、全然ダメでしたね」
駒木:「いくらなんでも体調が悪すぎたね。10年位前の日本馬なら、それでも相手になったんだろうけど、今の日本馬のレヴェルだったら、ちょっとお話にならないってところだろう。やっぱり凱旋門賞からジャパンカップってのは鬼門なのかな」
珠美:「他の外国馬はどうでしたか?」
駒木:「ほとんどが流れ込みだね。外国の準一流馬が、まともなレースをさせてもらえないなんて、日本の競馬のレヴェルが上がったんだなぁと、しみじみ思うよ。あと、ティンボロア、あのベイリーJKの騎乗は何だったんだろう? 引っかかった馬を追いかけて行くなんて正気の沙汰じゃないよ。ちょっと酷すぎだね。何か原因があったのかもしれないけれど」
珠美:「ハイ。以上で終了ですね。博士、ありがとうございました」
駒木:「珠美ちゃんもお疲れ様。さて、今日は『競馬学特論』として、真面目に競馬のレース回顧をやったわけですが、これはあくまでも色々ある講座の1つにすぎません。正式開講の折には、もっとバリエーションに富んだ、様々なカリキュラムを組んでゆきますので、どうぞよろしく。では、今日の講義を終わります」(終)


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