「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

4/28(第14回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・後半)
4/25(第13回) 社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(2)
4/21(第12回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・前半)
4/20(第11回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・後半)
4/19(第10回) 競馬学特論「G1予想・皐月賞編」
4/18(第9回) 
社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(1)
4/16(第8回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・前半)
4/14(第7回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・後半)
4/12(第6回) 競馬学特論「G1予想・桜花賞編」
4/10(第5回) スポーツ社会学「4・4ゼロワン・神戸サンボーホール大会観戦記」(2)
4/8(第4回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・前半)
4/7(第3回) スポーツ社会学
「4・4ゼロワン・神戸サンボーホール大会観戦記」(1)
4/4(第2回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第1週分・後半)
4/2(第1回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(4月第1週分・前半)

 

2003年第14回講義
4月28日(月) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・後半)

 さて、世間では『ヒカルの碁』最終回でパニクっている人も多くいらっしゃるでしょうが(笑)、とりあえず今日は先週の「サンデー」についてのゼミを行います。
 いや、本当に申し訳有りません。やっぱりこういう講義は週を跨いじゃいけませんね(苦笑)。

 ……というわけで、まずは取り急ぎ情報系の話題を。今週は新連載の話題が入っています。

 次号(22・23合併号)から、『売ったれダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治)の連載が始まります。
 この作品は、昨年春に短期集中連載された『ダイキチの天下一商店』の大幅リメイク版と思われます。短期集中連載作品の長期連載化は、通常なら短期連載の終了後間もなく始まるケースが多いだけに、この作品の場合は“一旦連載ボツ→大幅設定変更でネーム再提出→敗者復活で連載獲得”……というコースを辿ったのでしょう。執念の勝利と言うべきでしょうか。
 次号予告での絵柄を見た感じでは、主人公の見た目がリメイク前に比べて相当幼くなっており、恐らくはそれに合わせて性格などの設定も変更になっているであろうと推測出来ます。主人公の年齢を読み切り版から下げて結果的に失敗した『鳳ボンバー!』の替わりにこの作品が新連載…という辺り、如何ともし難い縁起の悪さを感じてしまいますが(笑)、どうにか健闘してもらいたいと思います。


 ……それではレビューに移りましょう。今週は読み切り1本のみのレビューになります。「チェックポイント」も併せてどうぞ御清聴下さい。

☆「週刊少年サンデー」2003年21号☆

 ◎読み切り『結界師』作画:田辺イエロウ

 “新鋭ビッグ読み切り”シリーズ第2弾は、新人・田辺イエロウさん『結界師』が登場です。
 ここでいつもなら作家さんのプロフィール紹介に移るのですが、恥ずかしながら「サンデー」系新人さんの情報源が少ない当ゼミでは、なかなか田辺さんの経歴を調べる事が出来ませんでした。それでも少ない情報を掻き集めたところ、「ジャンプ」の「赤マル」にあたる「ルーキー増刊」でデビューした後、増刊での読み切り掲載を経て、今回の本誌デビューに到達した…との事です。そして、増刊で発表した作品が、今回の『結界師』の“前日談”であったようですね。(誤りがあればご指摘下さい。早急に訂正いたします)

 さて、それでは例によって、“絵→ストーリー&設定”の順でレビューをしてゆきましょう。

 に関しては、とりあえず文句の付け所はありませんね。線に無駄が無く、様々な容姿の人物の描き分けや動物・妖怪の描写に関しても、新人さんにしては非常に達者です。デフォルメや格闘などの動的表現もソツなくこなしており、極めて完成度の高い画力と言えそうです。来週から即連載を任せても大丈夫な気にすらさせてくれます
 正直言って、これほどの実力の持ち主がデビュー数作目の新人とは考え辛く、別ペンネームでのプロ活動経験が有るのではないかとすら疑ってしまいます。果たしてどうなんでしょうね?

 そしてストーリー&設定の面についてですが、こちらも文句無く合格点を出せる良い出来に仕上がっています
 (実質上の第2話なのに読み切り扱いになったので仕方ないですが)やや設定過多の嫌いこそあるものの、その説明の仕方が非常に上手く、鬱陶しさを全く感じさせません。話の中に主人公のモノローグを挟むタイミングや、そのモノローグやセリフ等の文章力もかなり秀逸です。
 また、キャラクターの設定・キャラ立てもバランス良く出来ていますし、更には行動の動機付けや伏線の処理という高度な技術を要するファクターも、無さ過ぎるくらいソツ無くクリア出来ています。
 ただ惜しむらくは、そこまで完成度の高いシナリオ構成を実現していながら、読者に大きな感銘を与えるようなインパクトのある見せ場や決めセリフに乏しかった事ですね。野球で言えば、ホームラン性の当たりながらフェンスギリギリのツーベースで終わってしまった…という感じで、決して悪くない結果ながらも「惜しい、残念」という贅沢なネガティブ感情を禁じえません。

 評価はA寄りA−ということにしておきましょう。田辺さんの実力そのものは既にA評価クラスだと思いますが、“ソツ無く”で終わってしまった分の減点をしておきました。
 それでも、久々に連載で読んでみたい作品に出会えたような気がします。全ては今回のアンケート結果で決まるのでしょうが、良い方向へ向かう事を祈っておきたいと思います。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 今週は「サンデー」も「マガジン」も上戸彩が巻頭グラビアでしたね。こういうケースって珍しいんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう?

 ◎『名探偵コナン』作画:青山剛昌開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 あっちこっちでドンデン返しが連発の今週でしたが、やっぱり最大のビッグサプライズはジョディ&新出両先生の正体でしたねぇ。これって前もって決めてたんでしょうか、それとも後付け?
 これが藤田日出郎さんなら間違いなく後付けで決着出来るんですけどね(笑)。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感

 まぁ、この作品ですからクソ真面目にツッコミ入れてもアレなんですが、こんな実習生いませんって(笑)。
 しかし、ドラマを回想するシーンで『スクールウォーズ』だけ異様に似てないのはどういう事か(笑)。まぁ、この実習生が4〜5歳の時のドラマですから、その分記憶が曖昧って事にしておきましょうか。

 ◎『天使な小生意気』作画:西森博之開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 今週のエピソード、良い感じですね。弱い人間が弱い人間なりにカッコよく立ち回って消えていく。少年マンガでなかなか出来そうで出来ない表現ですよね。

 ◎『鳳ボンバー』作画:田中モトユキ【現時点での評価:B+/連載総括

 先週お知らせした通り、無念の打ち切りとなりました。タイミング的には、“あやや投入”の時点で打ち切りが決まってたのかも知れませんね。
 結局、ダラダラとキャンプ編、二軍生活編をやってしまったのが致命傷になった感じですね。さっさと一軍で活躍させて、その後スランプに陥って二軍落ち→“恋女房”と出会って復活──というパターンでやっていれば、多少異なる結果になったかも知れません。
 田中さんには、とりあえず今しばらくは静養と充電に務めてもらって、近い将来に別の作品でリベンジを果たして欲しいと思います。
 

 ……というわけで、やや駆け足でしたが今日はこれまで。また明日か明後日には今週の前半分をお送りしたいと思います。では。

 


 

2003年第13回講義
4月25日(金) 社会調査
「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(2)

◎前シリーズ(「潜入レポ」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回
◎今シリーズ(「現場報告」)のレジュメはこちらから→第1回

 「現場報告」の講義の2回目をお送りします。
 前回の講義の際にはまたしても各方面で紹介して頂き、有り難い話です。まぁ多少、有り難くない解釈のされ方もしているようですが(苦笑)、これだけ受講者数が膨れ上がってしまった以上、それも致し方ない事だと思っています。大多数の方達には、キチンとこの講座のコンセプト(事実を基にしたエンターテインメント)を理解して頂いているみたいですしね。
 そういうわけで、これからも肩の力を抜いて気楽な気持ちで受講してもらえると嬉しいです。まぁソフトバンク関係者や現役SVの人とかは気楽になれないでしょうけれども(笑)。

 
 ……さて、今日は前回にお約束した通りに、ヤフーBBスタジアムのオープン初日(3/31)に行われたモデム配りの顛末をメインにお話するはずだったのですが、この1週間にモデム配り関連の最新ニュースが入ってきましたので、急遽そちらをメインに切り替えてお話したいと思います。

 その最新ニュースとは、先週に「ほぼ確定」のニュアンスでお伝えした5月以降のキャンペーンについて。結局と言いますか、当たり前と言いますかキャンペーンは続行する事に決定しました期間はとりあえず6月末までとのこと。
 実はもう既にスタッフの5月前半分のシフトも出来上がっていまして、ソフトバンク界隈に天地がひっくり返るような異変(孫正義社長の禿頭に突如フサフサと毛が生え始めるとか)が無い限りは5月から新キャンペーンがスタートする事になります。

 で、その5月からのキャンペーンですが、これまでの「3つの0円キャンペーン」改メ、その名も、

「15コの0円キャンペーン」

 ……という事になりました。いや、「冗談は止めて下さい」とか言われても困ります本当なんですから仕方ありません。当の駒木ですら、「数が多けりゃ良いってモンじゃねぇぞ」…という、TVの大家族モノ番組や通販番組の押入れ収納ケースに大して向けるようなセリフを吐きかけてグッと堪えたのですから。
 で、その数5倍に膨れ上がった“0円キャンペーン”の中身ですが、これがまたツッコミ所満載というか、淫乱系AV女優の“全身性感帯”よろしく、“全編ツッコミ所”と言うべき香ばしい匂いが湧き立つモノに仕上がってます。さまぁ〜ずの三村にツッコミを依頼したら過労死してしまうんでないかと思います。
 それでは早速、そんな15コの“0円”をご覧頂きましょう。なお、これらの内、月額基本料金と電話通話料に関するサービス期間は、従来通り最大2ヶ月(=利用開始月&翌月)です(追記4/26:各項目により、1〜3ヶ月の無料期間が設定されているようです。ただし、ややこしくなっただけで実質は対して変わらないので、以下の文脈に不整合は起こらないと思います)

1:インターネットサービスプロバイダ利用料
2:BBフォン通話料(最大2カ月間で50,000円まで)
3:Yahoo! BB ADSL利用料
4:接続機器(モデム)レンタル料
5:NTT ADSL回線使用料金
6:無線LANパック利用料
7:「しっかり」接続サポート料初回費用
8:PC用無線LANカードレンタル料
9:(ごまんぞく保証)NTT初期費用
10:Yahoo! BB初期登録費用
11:BBフォン初期登録費用
12:BBフォン月額基本料
13:ダイヤルアップISP利用料
14:接続用ビデオ・CD-ROM
15:Yahoo! BBモバイル利用料

 まさに並べも並べたり……というような感じですが、実はこれらの“0円”は、全て従来の「3つの0円キャンペーン」で提供されて来たサービス、しかも一部内容の縮小まで含むモノだったりするのですから呆れ果てる他有りません。
 前回の講義で駒木は、ソフトバンクにも「盛者必衰」と「思慮分別」をいう四字熟語を覚えて欲しいものだ…と冗談交じりに言いましたが、残念な事にこの会社が覚えたのは「羊頭狗肉」という四字熟語だったようです。

 ──ではこれから、ヤフーBBの事情に詳しくない健全な環境にいらっしゃる受講生さんたちのために、月からの「15コの0円キャンペーン」と従来の「3つの0円キャンペーン」との関連性について、ここで少しばかり解説をしておきましょう。
(便宜上、これより「15コの0円キャンペーン」を新キャンペーン、「3つの0円キャンペーン」を旧キャンペーンと呼ぶ事にします)

 それではまず、旧キャンペーンで「ADSL最大2ヶ月お試し0円」とされていた部分の内容にあたる、新キャンペーンの“0円”は以下の通りです。

 1:インターネットサービスプロバイダ利用料
 3:Yahoo! BB ADSL利用料
 4:接続機器(モデム)レンタル料
 5:NTT ADSL回線使用料金
 10:Yahoo! BB初期登録費用

 この内、通常“ISP利用料”と略された表記が一般的で、3のADSL利用料と併せて“接続料金”などと称されます。ヤフーBBの場合、ここの料金を目一杯下げる代わりにモデムレンタル料を釣り上げて誤魔化していた…という事は以前お話した通りです。
 で、そのモデムレンタル料が4で、これと5のNTT回線使用料金を“接続料金”に含めたものがよく雑誌などで紹介されている諸々込みのお値段です。要するに、旧キャンペーンでは、この1、3、4、5の費用を最大2ヶ月0円にする事で、「ADSL最大2ヶ月お試し0円」と謳っていたわけですね。
 そして10の初期登録費用に至っては、この度の新キャンペーンのため無理矢理に作り出されたモノであって、これまでは存在すらしませんでした。有り体に言ってしまえばこれは捏造です。
 つまり、ここで紹介した5つの“0円”とは、旧キャンペーンの“0円”1つを5倍に希釈したモノだと考えて下さい。早い話がカルピスウォーターで水割りを作ったようなモンですね。


 次に、旧キャンペーンの「BBフォン最大2ヶ月通話料0円」に相当する新キャンペーンでの“0円”を抜き出してみましょう。

 2:BBフォン通話料(最大2カ月間で50,000円まで)
 11:BBフォン初期登録費用
 12:BBフォン月額基本料

 をご覧になれば分かりますように、旧キャンペーンでは上限ナシの“0円”だったBBフォン通話料無料キャンペーンが、最高50,000円までの条件付きとなりました。どうやら旧キャンペーンでは、調子に乗って2ヶ月で10万円分以上も電話をかけた強者が結構な数いたようで、さすがのソフトバンクも「ゴメンナサイ」状態に追い込まれたようです。(携帯電話への通話は1分20〜25円なので、アツアツのカップルなどが調子に乗って長電話ばかりしていると、平気でそれくらいはかかってしまいます)
(追記4/26:これに関しては、個人名で申し込んだ法人組織が業務用電話を掛けまくった……との説もあります)
 しかし、この「電話通話料が無料」は、スタッフにとって勧誘するための最大の武器でして、これに足枷をつけられてしまうのは大打撃です。ちょっと古い表現で恐縮ですが、「モデム配りは会議室でやっているんじゃない! 量販店と駅でやってるんだ!」…と叫びたくなるような内容の“改悪”になってしまいました。
 あと、1112に関しては、先程の10と同様に従来からずっと無料だった内容でして、ただの数合わせ以外の何でもありません。
 というわけで、こちらの方は“これまで生ジュースを使っていたのを、予算の都合で『ミニッツメイド』を使う事に切り替えた上に水で薄めたスクリュードライバー”…と喩えるのがベストではないかと思います。


 そして旧キャンペーンの3つ目・「ADSL出張サポート0円」も、新キャンペーンの7:「しっかり」接続サポート料初回費用に引き継がれています。
 まだ駒木の手元に詳しい資料が無いのですが、これで無線LANの設定が別料金であったならば、内容は旧キャンペーンと全く同じモノになるはずです。


 さて、これで紹介した“0円”は9つ。残る“0円”は6つも残っていますが、これらに関しても、旧キャンペーンでのオプショナルプランや“標準装備”されていたサービスの内容と全く同じです。
 例えば以下の3つの“0円”
  
 6:無線LANパック利用料
 8:PC用無線LANカードレンタル料
 15:Yahoo! BBモバイル利用料

 ……これらは全て旧キャンペーンの“無線LANパック”の中に含まれていたサービスで、無料期間終了後は月額990円追加されてしまいます。
 ちなみにYahoo! BBモバイルとは、全国の(ごく限られた数の)マクド、スタバ、ミスドなどで無線LAN接続が出来る…という無料サービスです。ヤフー側は今後もモバイル可能な店舗を増やすつもりだそうですが、飲食店が客の回転率を著しく下げるようなサービスを積極的に採用しようとするのかは、極めて怪しい話だと思います。まぁ公営ギャンブル場やホテルに広まっていけば面白いとは思うんですけれども、鉄筋・コンクリート建の建物は無線LANの電波を跳ね返してしまう事もあるので、難しいかも知れませんね。

 あと、残る3つの“0円”についても少し触れておきましょう。

 9:(ごまんぞく保証)NTT初期費用
 13:ダイヤルアップISP利用料
 14:接続用ビデオ・CD-ROM

 は、ADSLへ切り替えるための局内工事費用3,850円の事ですね。旧キャンペーンと同様、これは無料期間中に解約した場合のみに無料が適用されるようです。
 13のダイヤルアップに関してはあまり知られていませんが、実はヤフーBBのADSLは以前からダイヤルアップ接続サービスも無料でセットになっていました。ADSLの開通待ち期間に、どうしてもインターネットに接続したいという人のためにコッソリとサービスを提供していたのです。
 14接続用ビデオとは、簡単に言えばガイダンスビデオです。この手のビデオはDIONが以前から無料配布していたのですが、今月に入ってヤフーBBも同様のモノを作成し、モデム一式が納められている箱に封入されるようになりました(同時にモデムの縦置きスタンドも追加)。


 ……まぁそういうわけでして、5月からの新キャンペーンは、パッと見には旧キャンペーンからグレードアップしたように見えますが、事実上はその逆だったりするわけです。何と言いますか、然るべき所からいつお叱りがあるか分からないような新キャンペーンと言えそうですね。まったく、ホンマモンのアホンダラであります。

 
 さてさて、新キャンペーンについて長々と喋ってしまったので、今日のメインテーマのはずであった「ヤフーBB球場オープン日のモデム配り話」をする時間が削られてしまいました。とはいっても、ここでまた次回へ先送りするのもアレですので、これから簡単にお話してしまいたいと思います。

 ──前シリーズの「潜入レポ」の最終回でもチラッとお話したこの球場前モデム配りキャンペーン。スタッフ同士のネットワークを通じて聞いたところによりますと、通常スタッフとBBガール(キャンギャル)合わせて20人規模での大キャンペーンだったそうです。
 当日は花火イベントがある上に内・外野の自由席を無料開放という事もあって、普段は閑古鳥が寂しく鳴き声を上げているこの球場にも実数で1万人以上の観衆が詰め掛けました。普通に考えれば新規契約大量ゲットのチャンスと言える状況です。
 ところがフタを開けてみれば、お客さんの大多数はブースの前を素通り。いくらスタッフが大声を張り上げても人の波の前に全く意味無しで、勧誘どころの話ではなかったそうです。まぁよくよく考えてみれば、野球を見に来たお客さんが悠長にブースに立ち止まって説明を聞くはずなんてないわけで、球場でモデム配りなんて場違い以外の何物でもないわけなのですが。
 一応はキャンペーン側もお客さんの関心を惹くために“豪華特典”を用意したりしたのですが、それがこともあろうにハワイのABCストアTシャツ並に着るのが恥ずかしいヤフーBBスタジアムTシャツだったりしましたので、全く効果がありませんでした。まったく、どういう発想でそんな特典を企画するに至ったのか、担当者の思考回路を精密検査してみたい気分にさせられます。

 ……結局、この時のキャンペーンは“惨敗”だったとのこと。色々な噂話を総合すると、あれだけの集中した人通りの中で、恐らく(新規契約が)20件程度といったところではないでしょうか
 まぁ、新聞各紙などに採り上げられて宣伝効果は莫大なものがあったとは思いますが、契約件数などの上では大失敗に終わったキャンペーン・イベント…という結論になりそうです。


 ──といったところで、今回はこれまで。次回は5月に入り、いくつかお話できる材料が揃った頃にお届けする予定です。それでは、また。 (次回へ続く

 


 

2003年度第12回講義
4月23日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第4週分・前半)

 「応募者全員大サービスの『アイシル』グッズ、もうちょっとどうにかならなかったのか、編集部!」…と直訴したい駒木です、こんばんは(笑)。

 ……さて、今週の前半戦はとにかくレビューが大変ですので、早いところ本題に突入したいと思います。

 まずは読み切り作品についての情報から。次号(22・23合併号)に樋口大輔さん『dZi:S』(←「ジーズ」と発音)が掲載されます。樋口さんはご存知、昨年まで『ホイッスル!』を長期連載していた中堅の女流作家さんですが、いよいよ次の連載獲得へ向けて本格的に始動する事になったようです。
 次号予告の紹介文を読む限りでは、今回の作品は現代劇の伝奇モノのようです。あまり「ジャンプ」では馴染まないジャンルですが、構成力には定評のある作家さんだけに期待したいところです。

 なお、次号は号数を見ても分かりますように、ゴールデンウィーク合併号となります。公称発売日が火曜でなくて月曜ですので、地方在住の方や早売りゲッターの方はご注意下さい。

 それでは、今週のレビューへ。今週は新連載第3回の後追いレビューが1本と、読み切りレビュー2本の計3本となります。その後の「チェックポイント」もどうぞ宜しく。

 

☆「週刊少年ジャンプ」2003年21号☆

 ◎新連載第3回『★SANTA!★』作画:蔵人健吾【第1回時点での評価:

 先週の『闇神コウ』に引き続いて、今週は『★SANTA!★』がセンターカラーでの“打ち切り審査”に臨みます。

 まず第1回からの変化ですが、絵の完成度が第2回からガクンと下がってしまったのが大変に気になります。獣人のキャラ・デザインが物凄くぞんざいですし、主人公・サンタの描写ですら稚拙なものが目立ちます。連載ペースに対応出来ずに絵が荒れているのか、それともこれまでパッと見だけ誤魔化して来たが出来なくなったのかは判りませんが、どっちにしてもこれは大きなマイナスポイントです。
 また、元々コマの密度が薄いところに背景や特殊効果の無いコマがやたらと多かったりするのも、あまり褒められたモノでは有りませんね。このパートは作家さんが指示を出してアシスタントさんに委ねる部分なのですが、蔵人さん、まだアシスタントさんの使い方に戸惑っているんでしょうか……?

 ストーリー面では、省略すべき所と詳述すべき所の区別が余りついていないような気がします。冗長で世界観を壊しかねないマッタリとした会話がダラダラ続くのに、肝心のアクションシーンは敵キャラの悲鳴だけ…という展開が多過ぎるんですよね。
 この作品は、悲愴な運命を背負った主人公の少年が、行く手を阻む凶悪な獣人たちを倒してゆくドラマのはずなのですが、3話までのストーリーを見る限りでは、凶悪なはずの獣人は漏れなく間抜けで弱っちいですし、気が付いたら人間のライバルが出現している…と、場当たり的に迷走しているように思えます。

 評価はランクを落としてB−とします。最近の掲載順を俯瞰すると、このクールの新連載は『シャーマンキング』あたりと打ち切り争いを演じなければならないわけで、それを考えればかなり厳しい状況に置かれていると考えてよいのではないでしょうか……。
 新連載が全滅すると、次の新連載は生き残りのハードルが更に高くなってしまうんですよね(時間が経つと、打ち切り争いを演じるアンケート下位の作品の完成度が増して来たり固定ファンが付いたりするので)。どこでこの悪循環が断ち切れるのか。ちょっとシビアな問題になって来ましたね。
 
 
 ◎読み切り『LIVEALIVE 〜はじまりの歌〜』作画:天野洋一

 今週は読み切りが2編。まずはストーリー物のこちらからレビューをしてゆきましょう。
 作者の天野洋一さんは、02年上期の手塚賞で準入選受賞し、その時の受賞作『CROSS BEAT』で本誌デビューとなった、キャリア1年の新人作家さん。この作品がデビュー2作目となります。「赤マル」ではなく本誌に連続して発表の機会を与えられているところを考えると、同じように『だんでらいおん』『しろくろ』で本誌連続掲載を果たした空知英秋さんと同様、編集部から大きな期待が寄せられているようですね。新人・若手による連載獲得レースのトップグループ疾走中…といったところでしょうか。

 さて、それでは内容についてレビューしてゆきましょう。

 に関しては、現在の本誌連載陣に混じっても遜色無いほどの高い完成度に達していると思います。少年、青年、中年男性の描き分けもキチンと出来ていますし、ディフォルメ表現も多少クセは有るものの水準に達しています。今回は女性キャラが出て来なかったのが(評価を出す上で)少し残念でしたが、今くらいの力が有るならば、多少苦手だとしても苦手なりに描き切れるでしょう。

 次にストーリー・設定ですが、今回もデビュー作に引き続いて、ソツなく“スタンダード・ナンバー”的シナリオで47ページをまとめ切っていますキャリアを考えれば上出来でしょう。
 しかし、その“まだ浅いキャリア”という部分を抜きにして考えると、物足りない所があるのもまた事実です。音楽モノの“肝”とも言える演奏シーンの表現にしろ、根本的なストーリーにしろ、天野さんならではの独自色があまり感じられないんですよね。ネット界隈で『BECK』を引き合いに出されるのもこの辺りに原因があるような気がします。
 また、主人公がいわゆる“天才型”で、特に苦労も無くて才能だけで観衆を魅了してしまう…という部分も、読者の感情移入というファクターから考えると少々減点しなければならない材料だと思います。

 現在の天野さんのポジションは、“新人以上、連載作家未満”というところでしょうか。連載を獲得し、その上で成功を収めなければ価値が見出せない少年マンガ作家さんにとっては一番居辛いポジションではないかと思います。
 天野さんがこのまま停滞してしまうのか、それともここから飛躍して将来の「ジャンプ」を引っ張ってゆく存在になるのか、これからもつぶさに観察を続けてゆきたいと思います。
 今作の評価は、高い画力の分だけオマケしてB+としておきましょう。


 ◎読み切り『キャプテン』作画:鉄チン28cm

 今週2本目の読み切りは17ページのショート・ギャグ作品です。
 この作品がデビューとなる作者の鉄チン28cmさんは、昨年度の「ストーリーキング」で最終候補という経歴が残っています。言うなれば、これまで“デビュー予備軍”だった人という事になるのでしょうか。
 「ストーリーキング」の受賞歴があってデビューがギャグ作品というのも異色ですが、もっと異色なのがその年齢で、鉄チンさんはなんと今年34歳少年誌では異例の遅咲きデビューと言っていいと思います。

 それでは、異色尽くめのこのデビュー作についてレビューしてゆきましょう。

 まず衝撃的なのが、その脱力感満ち溢れる(?)スカスカの絵ですよね(苦笑)。小学校の文集に載ったイラストかと錯覚するようなお粗末な出来で、鉄チンさん本人が「穴があったら入りたい」と言うのも大いに理解できます。
 ただ、よく見てみると人物の輪郭は結構マトモに描写できていたり、ナニゲに女の子が可愛く描けていたりします。ですので、ちゃんとした画材を選んだり背景等に手間をかけさえすれば、ギャグマンガとしては見られるところまでは上達するのではないか…と思ったりもします。この辺りは(発表する機会が有れば)次回作でもう一度ジャッジしてみたいところですね。
 まぁ、少なくとも今回の作品に関しては“画力は問題外”という事で、評価に下方修正をせざるを得ないでしょう。

 そしてギャグの方ですが、こちらは一見下らないだけの下ネタしか描けないように見えて、一部分ながらキラリと光る部分を見つける事が出来ました。
 「ジャンプ」本誌で言えば408〜411ページにあたる場面ですが、クソ真面目なように見えて結構ヒドい事を言っているモノローグや、そのモノローグと全くシンクロしない間抜けな遣り取り絶妙のシュール・ギャグになっていました。
 唯一の見せ場がシュールギャグという事で、ここが笑えなかったら「単に絵が酷いだけの笑えないマンガ」になってしまうのが辛い所ですが、駒木はこのシーンで「荒削りながらギャグセンス有り」と認めてあげたいと思います。(ギャグマンガは読み手の感性で評価がズレるので、本当に難しいんですけどね)
 ただし、他の部分は狙いすぎて意味不明なギャグや、年齢を感じさせる時代遅れの下ネタが続いてしまい、総合的には代原レヴェルに留まってしまったと思います。

 さて評価ですが、先に述べた通り画力で大幅減点してC寄りB−とします。ただし、今回一瞬垣間見えたシュールギャグのセンスが開花すれば、将来的にはブレイクする可能性も有るでしょう。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 しかし、『いちご100%』『プリティフェイス』は毎週毎週「ジャンプ」の限界に挑戦してますなー(笑)。そのせいで、『闇神コウ』がどれだけ頑張ってサービスしても全然目立ちません(苦笑)。

 ◎『Ultra Red』作画:鈴木央【現時点での評価:/雑感】
 しかし鈴木さんは、一度負けた敵キャラは容赦なくヤムチャ化させますねぇ(苦笑)。まぁこれも少年マンガの常ですし、トーナメント戦では使い捨てしないと収拾がつかないくらいキャラクターが出るから仕方ないんですけどね。
 気が付けばもう連載半年。いつの間にか打ち切りボーダーライン上のままで安定しちゃいましたね。

 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 いくら冨樫作品とは言え、主人公の少年キャラが腕を吹っ飛ばすというのはショッキングです。不謹慎な話ですが、コレ、イラク戦争が長引いていたら論議を醸したかも知れませんですね。
 そう言えばこの作品、大怪我はいくらでも治るんですが、「ジャンプ」作品お馴染みの“死人生き返り”が無いんですよね。この辺りは冨樫さんなりのポリシーなんでしょうか?

 

 ……というわけで、長丁場のゼミになりましたが、今日はここまで。後半はまた週末〜週明けになるかと思います。我が事ながら大変だ……(苦笑)。

 


 

2003年度第11回講義
4月20日(日) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・後半)

 このゼミが“分割版”になって3週間、「1週間って早いなぁ」…と思うようになりました(笑)。特にここ最近はレビュー対象作が多い事もあるのですが、とにかく「ジャンプ」と「サンデー」に追いまくられているような気がします(苦笑)
 まぁでも、今週なんか分割していなければレビュー4本という修羅場だったわけで、それなりに効果はあったのかな……とも思っていますが。

 では、時間も差し迫っていますし、早速ゼミを始めましょう。

 まずは情報系の話題からですが、今日はまず始めに連載終了のお知らせからしなければなりません。
 次号(21号)で、『鳳ボンバー』作画:田中モトユキが最終回という事になりました。タイミング的にも連載回数的にも明らかな打ち切りで、残念な結果になってしまいました。
 もともとこの連載は、既にバレーボールマンガの佳作として定評のあった『リベロ革命!』を打ち切ってまでして立ち上げたものだけに、関係者の皆さんもショックが大きいと思います。とにかく今は「次回作に期待」としか言いようがないですね……。

 また、次号では“新鋭ビッグ読み切り”の第2弾として、田辺イエロウさん『結界師』が掲載されます。田辺さんは「ルーキー増刊」からデビューし、ここ最近は増刊にも顔を出している“期待の新鋭”作家さん。次号予告に掲載されたカットからも高い画力の一端が窺え、大変期待させられます。勿論、この作品については次週のこの時間でレビューさせてもらいます。

 

 ──それでは、本日分のレビューへ。今日は短期集中連載の第1回レビューと、読み切りレビューの計2本をお送りします。ただし、「チェックポイント」は都合により休ませて頂きます。

☆「週刊少年サンデー」2003年19号☆

 ◎新連載(短期集中連載)『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹

 『少年サンダー』作画:片山ユキオ)、『電人1号』作画:黒葉潤一)に続く、ギャグ作家さんの短期集中連載シリーズ第3弾が今週からスタートします。
 作者の水口尚樹さんは、昨年の“特選GAG7連弾”という企画でプロデビューを果たし、そのすぐ後から増刊ながら連載を獲得し、順調にステップを踏んで来た期待の若手作家さんです。
 ……実は水口さんは、プロデビュー前に『普通えもん』という(色んな意味で)凄い作品を発表しています。この作品、今後水口さんがどれだけ伸び悩んだとしても、「まだまだこんなもんじゃないよ、この人は」…と許せてしまうくらいの傑作ですので、皆さんも参考資料として是非ご一読下さい。
(リンク先の『ホームレスのホーム』さん、ありがとうございます。貴方は勇者だ!)

 さて、とりあえず皆さんに腹筋を痙攣させてもらったところで(笑)、真面目な話に移りたいと思います。

 まずはについてですが、ギャグ作品としては及第点だと思います。ただし女性キャラを描くのが上手くないようなので、その辺りがこれからの課題になってくるでしょう。(もっとも、今の「サンデー」の萌え路線から敢えて逆らうのも手でしょうが)

 そして肝心要のギャグについてですが、こちらの方は多少ムラを残しながらも、『普通えもん』で発揮された優れたセンスを見事に発揮しています
 現時点での水口さんの“武器”は2つありまして、1つは“動と静のコントラスト”が非常に上手いという事で、もう1つはコマとコマの間の省略の使い方がダイナミックで秀逸であるという事です。
 これらは共にマンガという表現媒体の特徴を利した表現であり、そういう意味では水口さんは生粋のギャグマンガ家ということになるのかも知れません。

 ただし問題点もあります。“動から動へ”というドタバタ系ギャグのインパクトが薄いのがまず気になりますし、言葉で笑わせるギャグも打率が低そうです。(個人的に「溶けるぜ!」だけは超特大ホームランでしたが)
 また、『いでじゅう!』モリタイシさんと異なり、水口さんは理詰めでギャグを構成する事にやや不得手なところがあると思われるので、作品や一話ごとの出来不出来の差が大きくなりそうなのも心配材料です。

 ……とまぁ、色々述べてみましたが、結論を言えば「センスは十分。完成度はまだまだ」という事になるでしょう。現時点の評価は少し甘めですがB+寄りA−というところにしておきましょう。


 ◎読み切り『竹の子ドクター十五郎』作画:川久保栄二

 今週から始まった“新鋭ビッグ読み切り”シリーズ。第一弾は現在増刊で『医術師 十五郎』を連載している若手作家・川久保栄二さん。今回が本誌初登場です。
 今回の作品は連載中の『医術師 十五郎』を本誌用読み切りにアレンジしたもので、晴れて連載獲得となった『史上最強の弟子ケンイチ』作画:松江名俊)など、いくつかの作品で試みられているパターンです。ここで反応が良ければ連載、悪ければ単行本化もままならないまま、間もなく増刊連載も終了…という“天国と地獄”を地で行く修羅の道だったりするのですが、さて今回はどうでしょうか?

 まず真っ先に目に付くのが独特過ぎると言っても良い絵柄ですね。
 勿論、絵柄が個性的なのは悪い事ではありませんが、ただそこに画力が伴っていないとマズい事になってしまいますよね。表情の変化やアングルのバリエーションに乏しく、単調かつインパクトの弱いパッと見になってしまった感があります。
 また、医療マンガなのにマトモな手術シーンが出て来ないというのはどういう事なんでしょうか。そりゃあ本物の医者だった手塚先生が描くようなレヴェルのリアルさは求めていませんが、難しい描写を“描かない”のではなくて“描けない”と思わせてしまうような構成はいかがなものかと思います。

 ストーリー・設定の方も残念ながら問題アリですね。

 中でも一番痛いのは、『ブラックジャック』以来の医療マンガの根幹である、「高度に専門的な医療知識に基づくシナリオ」及び「超人的なオペ技術を持つ主人公」の両方ともが水準に至っていないという点ですね。
 まぁ中には『ブラックジャックによろしく』作画:佐藤秀峰)のように、後者の方を逆手に取って現実の絶望感を赤裸々に描く事に成功した傑作もありますが、それはあくまで例外ですし、前者の条件はキチンと満たしています。
 しかしながら、この作品で提示した「高度な医療知識」とは、「寒天は胃の中で固まる」とか、「ブロックサインを決めておけば手術もスムーズ」…のようなトンデモ系のものばかり。シナリオ中に“どんな医者でも出来る手段で”という縛りを自ら入れてしまったのですから仕方ないとも言えますが、かのブラックジャック先生は数十人同時に手術するという離れ業をやってのけたわけですから、十五郎先生もそれに匹敵するくらいの力技を持って来ても良かったような気がします

 また、シナリオの展開が少年マンガ黎明期(昭和20〜30年代)のような超高速&ご都合主義なのも違和感が否めません。
 50年前の少年マンガはページ数が少なかった(連載で10ページ前後、読み切りでも長くて60ページ強)ために、そうせざるを得なかった、そして読者の目も今ほど肥えていなかったからそれでも許されたのですが、現代ではやはり通用しないでしょう。
 特に気になったのが、十五郎が「国からお墨付きを貰っている」というだけで“凄い奴”と認定させてしまった部分です。やはりここは、何らかの手段で医術の腕前を見せ付け、その上でクライマックスで前人未到の大難事に挑む──! …という形が良かったのではないかと思うのですが……。

 評価はB−がせいぜいでしょう。ハッキリ言って本誌に載っていいレヴェルではありません。ただ、増刊の連載をウォッチしている人の中には、「今回は連載版の魅力が完全に失われている」…という意見を出されている方もいらっしゃるので、これで川久保さんの技量を決め打ってしまうのは危険とも言えそうです。とにかく次回作での巻き返しに期待しましょう。


 ……う〜ん、また最近レビューが長くなりがちですね。丁寧かつ簡潔にレビューできないものか、もう少し試行錯誤してみたいと思います。では、また。

 


 

2003年度第10回講義
4月19日(土) 競馬学特論
「G1予想・皐月賞編」

 今週も時間の都合で駒木単独の短縮版講義となりました。業務縮小して余計に時間に追いまくられるとは変な話ですが、どうかご了承下さい。

 ではまず、早速出馬表と予想印をご覧下さい。

皐月賞 中山・2000・芝

馬  名 騎 手
    ビッグコング 後藤
    ラントゥザフリーズ 藤田
ネオユニヴァース デムーロ
    ダイワセレクション 菊澤徳
    エースインザレース 石崎隆
× サクラプレジデント 田中勝
  × スズノマーチ 横山典
×   テイエムリキサン 池添
    クレンデスターン 吉田豊
    10 ブラックカフェ 蛯名
  11 ザッツザプレンティ 安藤勝
12 サイレントディール 武豊
    13 チキリテイオー 勝浦
14 エイシンチャンプ 福永
    15 コスモインペリアル 柴田善
    16 ブルーコンコルド 秋山
    17 タイガーモーション  江田照
×   18 ホシコマンダー 四位

 先週に引き続いて、またも本命が珠美ちゃんとカブってしまいました(苦笑)。でもまぁ、今回は仕方ないような気がしますが。でもこれでネオユニヴァースが飛んだら、また何か言われそうだなぁ(笑)。

 さて、それでは本題に。まずは全体的なレヴェルなどについてからですが、やや上位の層が薄いものの“平年並み”程度にはあるのではないかと思います。これで年明けに本格化した馬がもう少し多ければ更に良かったんですが……。
 ステップレースに関しては、スプリングSの上位組が一番格上で、弥生賞のトップグループがそれに続く形になるのではないかと思います。若葉Sはやはり少し見劣りしてしまいますね。それ以外のレースでは、きさらぎ賞と京成杯のレヴェルがやや高めだったのでは…と考えています。

 展開は逃げ馬2頭の他は、半数以上の馬が「中団かその少し後ろ」を希望していて、序盤の位置取りで命運が分かれそうな気がします。非常に読み難くて嫌な感じですね(苦笑)。道中はやや遅めの平均ペースで推移して、直線で迫力のある力勝負が繰り広げられそうです
 皐月賞の傾向としては、「人気薄の追い込み警戒」というのが一番のポイントでしょう。実力のある馬はあらゆる脚質の馬が連対を果たしていますが、人気薄はほぼ差し・追い込みに限定されています。逆に言えば「人気薄の先行馬は消し」というのがセオリーになるのでしょうか。

 あとについてですが、今年は週末にしょっちゅう雨が降っていたので、雨や重馬場を苦にしない馬が多いようなのが幸いです。ドロドロの不良馬場になってしまうと追い込み馬の不発が心配になりますが、そうでない限り大きく予想を変更する必要は無いのではないかと思われます。

 ……では今日も1頭ずつ簡単に解説していきます。

 1番・ビッグコング。若葉S2着馬。前走はスローペースながら上がり3ハロン33秒9のタイムで好走となりましたが、一気に相手強化となる今回では苦戦が避けられないでしょう。
 2番・ラントゥザフリーズ。共同通信杯1着馬ですが、このレースは実績馬のデキ不足などに助けられた側面が大きかったような気がします。若葉Sでの完敗や2000mのレースで2戦2着外なのも気になるところです。
 3番・ネオユニヴァース。きさらぎ賞、スプリングSで強豪を捻じ伏せて一躍、このレースの主役となりました。特に前走は古馬G1ホースのような堂々たるケイバで正に圧巻。騎手に名手・デムーロを迎え、万全の状態でまずは一冠を目指します。
 4番・ダイワセレクション。4番人気に支持された前走・スプリングSで5着完敗。それ以前の実績にも乏しく、強く推せるだけのセールスポイントは無いのが現状です。
 5番・エースインザレース。本職はダートですが、現状、ダートの大レースまで間がある事もあって、芝のG1に挑戦する事となりました。スローで逃げて粘り込みたいところですが、展開と相手に恵まれた若葉Sでも粘りきれなかったのに、ここでそれ以上のパフォーマンスが出来るとは考え難いですね。
 6番・サクラプレジデント。迷走した騎手選びですが、結局は元の鞘に収まったようですね。前走では完敗を喫しましたが、休み明けであれほどのレースが出来ればむしろ上々だったかも分かりません。追い切り当時のデキが維持できていれば、ひょっとすると逆転まであるかも知れません。まずは出遅れの無いスムーズな競馬をお願いしたいものです(笑)。
 7番・スズノマーチ。駒木は泣く泣く無印にしましたが、このレースにおける“特注馬”の1頭です。マイジョーカーを破り、弥生賞で歴戦の強者と堂々渡り合ったパフォーマンスはここでも通用する可能性が高いです。ただ、問題は自分のレースがさせてもらえるかどうかですが……。
 8番・テイエムリキサン。弥生賞では一旦先頭に立つも、ソラを使って4着まで後退してしまいました。かと言って差し戦法をするには瞬発力が足りず、本当に乗り辛い馬と言えるでしょう。実力は上位と遜色ないだけに、勝ち負けは池添騎手がこの馬をどこまで御せるかに懸かっているのではないでしょうか。
 9番・クレンデスターン。休み明け緒戦のスプリングSがどうにも物足りませんでした。上積みも乏しそうで、勝ち負けに絡むには色々なモノが不足していると考えざるを得ません。
 10番・ブラックカフェ。以前は随分と期待された馬だったのですが……。でもこういう馬って、時々いますよね(笑)。オープン入りしてからの実績がイマイチの上、今回は休み明けですし、強調材料が探し辛い状況です。
 11番・ザッツザプレンティ。クラシックの登龍門・ラジオたんぱ2歳Sの勝ち馬。前走は落鉄に泣き6着に敗れましたが、未だに人気は健在のようです。ただ、この世代のラジオたんぱ2歳Sは、例年に比べると随分とレヴェルが低そうな気がします。まだ完調には至っていないデキであるとの情報もありますし、ここで人気に応えるほどの成績を残すとは考え辛いのですが……?
 12番・サイレントディール。差し馬に脚質転換してから本当に強くなりました。今回は休み明けですが、調整は万全で更に相手関係もこのメンバーでは間違いなく上位クラス。よほどの不良馬場やアクシデントが無い限りは上位に顔を出してくるのではないでしょうか。
 13番・チキリテイオー。2歳末になって本格化したように思えましたが、その後がどうにも振るいません。陣営のトーンも下がり気味ですし、今回は見送りが妥当な感があります。
 14番・エイシンチャンプ。勝つにしろ負けるにしろ、本当にこの馬は接戦になりますね。堅実で渋太いラストスパートがそうさせるんでしょう。で、今回は朝日杯組との再会の他に、更なる強敵との初顔合わせもあり、なかなか骨の折れるレースになりそうです。自分の意図する位置取りが出来るかどうかがポイントでしょう。
 15番・コスモインペリアル。地味ながら着順をまとめ、ここに出走を果たしました。人気薄の差し馬が警戒という事で、この馬にも2〜3着くらいのチャンスは有りそうなのですが、敢えてこの馬を選ぶだけのセールスポイントにやや欠けている気がしないでもありません。
 16番・ブルーコンコルド。2歳時に重賞勝ち、そして休み明けのスプリングSで4着。ただ、陣営はしきりに「良馬場希望」とコメントしており、そこに足を引っ張られてしまいそうな気がします。
 17番・タイガーモーション。2歳時はトップクラスをも窺う勢いがありましたが、どうもここしばらくは不振に陥っているようです。とりあえず今回は見送りが適切でしょう。
 18番・ホシコマンダー。ここ2走スローペースに泣かされていますが、差し・追い込み勢の中ではサイレントディールに次ぐ実力を持っているでしょう。素の力では上位どころに及ばないものの、何かアクシデントが有れば台頭の機会もありそうです。

 ……というわけでフォーカスですね。駒木は馬連3、6、12の3点ボックスを基本に、大穴狙いとして馬連3-18も狙ってみたいと思っています。珠美ちゃんは馬連で3-12、3-14、12-14、3-11、3-6、3-7の6点とのこと。

 では、駆け足でしたが講義を終わります。日曜にも簡単に回顧を行う予定ですので、どうか宜しく。


皐月賞 結果(5着まで)
1着 ネオユニヴァース
2着 サクラプレジデント
3着 14 エイシンチャンプ
4着 ラントゥザフリーズ
5着 18 ホシコマンダー

 ※駒木ハヤトの“勝利宣言”
 ハイ、来ました。配当が低い時に限って会心の的中(笑)。ホシコマンダーがどこにいるか、一瞬探してみたんだけれども、あっという間に無意味なものとなりました(苦笑)。まぁ5着なら上出来でしょう。陣営はダービー出走権(4着まで)に届かなかったのが痛恨だったそうですが。
 ネオユニヴァースは、いかにもデムーロらしいレースでしたね。あれが中堅クラスの騎手だったらイン突きを一瞬躊躇してしまって2着止まりだったのは間違いないところなので、このレースは馬じゃなくて騎手が走っていたレースだったと言う事なんでしょう。デムーロ本人はダービーだけのために1ヶ月免許を使うのに難色を示しているようですが、こんなチャンス滅多に無いのですから外国人初の三冠ジョッキー目指して頑張ってみるのも手ではないかと思います。
 サクラプレジデントのパフォーマンスにも驚きでした。やっぱり強かったんですね、この馬は。マトモに行けば、ダービーもネオユニヴァースとの一騎討ち模様でしょう。ただ、そうなったらそうなったで追込み馬の強襲が怖いんですが……。
 以上、勝った時は心の余裕か丁寧語になってしまう駒木ハヤトでした(笑)。

 ※栗藤珠美の“喜びの声”
 またしても押さえ馬券での的中になりました(笑)。金額的には的中しても損です(苦笑)。
 でも、今から考えるとサクラプレジデントをどうしてこんなに低い評価にしてしまったのか、その経緯が全く思い出せないんですよね……。まだ22歳なんですけど、脳細胞の老化が始まってしまったのかも知れません(苦笑)。

 


 

2003年度第9回講義
4月18日(金) 社会調査
「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(1)

 ◎前シリーズ(「潜入レポ」)はこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回
 
※うっかりしていて、アーカイブの更新を怠っていました。第5回、第6回を読めなかった方、申し訳有りませんでした。

 珠美ちゃんと順子ちゃんの「観察レポート」をチェックされている方は既にご存知の事と思いますが、学校現場へ戻り損ねた駒木は、研究費及び活動費稼ぎのために4月10日からモデム配りの現場に復帰しています。
 この現場復帰、孫正義ソフトバンク社長に言わせると、「歴史を変える大事業を底辺から支える精鋭部隊の一員」への“復員”という事になるのでしょうか。まぁ精鋭部隊と言っても、米軍のグリーンベレーから最大の得意技が“私服に着替えて敵前逃亡”であるイラク共和国防衛隊までピンからキリまでありますので、まぁあながちその表現も誇張ではないと思われますが。

 ──というわけで、今回からは「現場報告」とタイトルを改めまして、不定期でモデム配りの最前線に舞い戻った駒木から現場の状況推移についてお話する事になります
 ただ、前シリーズの「潜入レポ」で基本的な事は全て述べてしまった感もありますし、“取って出し”の情報をお伝えする形式では系統立った講義の展開も不可能ですので、果たしてどこまで皆さんを満足させる事が出来るか、皆目不明だったりします。こんな事を言うのは反則かも知れませんが、どうか温かい目と耳で御清聴下さいますようお願い申し上げます。

 
 ……さて、それでは今日はまず現状報告をお送りしましょう。前シリーズ・「潜入レポ」では2〜3月の状況を中心にお伝えしたのですが、それからもう1ヶ月以上経っています。ですので、とりあえず4月に入ってからの現場の状況やムードについてお話しておくことにします。

 いきなり核心から話を始めますが、パラソル(ブース)1つ辺りの新規獲得契約件数(=モデムを配った台数)に関しては、意外な事に2〜3月と大して変わっていないようです。
 駒木は最近、前シリーズ・“閑散編”に登場したような量販店のパラソルで働く事が多いのですが、平日で平均2件程度、日曜・祝日でその数倍というペースは復帰前のままです。ただし、それまで数を稼いでいた繁盛店では目に見えてペースが落ちている所もあり、“横ばい〜やや衰勢”といった表現が最も適切なのではないか…と思っています。
 もっとも、今となってはもうピーク時(昨秋〜年末)のような爆発的な状況の進展は望めそうにありませんので、5月から始まる新キャンペーンの内容に相当な目新しさが無い限りは、このジリ貧傾向が続くと思われます。

◎モデム配りアルバイト 豆知識・9◎

 モデム配りキャンペーンはいつまで続くの?

 ここ最近、スタッフの間で毎日のように話題になるのが、「一体、このキャンペーンはいつまでやるんだろう?」…という事です。まぁ我々スタッフにとって、キャンペーンの終了は食い扶持の喪失に直結しますから、これはかなりの重大事なのです。
 また、パラソルを訪れるお客さんからも「これって、いつまでやるの?」…などと尋ねられる事も多く、この話題は部内・外問わずに関心を持たれているものであると言えるでしょう。

 現在行われている「3つの0円キャンペーン」4月30日までで終了しますが、この後もキャンペーンが続行するであろうというのは、現キャンペーンが始まって間もない2月から既に囁かれ始めていました
 勿論、キャンペーン終了間際の駆け込み需要を期待するソフトバンクサイドは、5月以降のキャンペーン展開に関しては実施の有無を含めて現在に至るまで公式発表を控えています。しかしながら、実際に現場で働く立場から見ますと、「ここで撤退は有り得ない」という認識でいます。

 まず、他のプロバイダーが“打倒・ヤフーBB”を掲げて無料キャンペーンや業務提携で包囲網を形成しつつあるこの時期に、今更言い出しっぺのヤフーBBが撤退するのはどう考えても不自然だ…という事実があります。
 前シリーズでもお話したように、ヤフーBBは数字上でこそADSL業界最大手の座に立ちましたが、未だに東西のNTTを併せたADSL加入者数には足りていません。更に第三勢力の契約者数を考慮すると、シェアの過半数獲得には程遠いのが現状です。また、Bフレッツなどの光ケーブル通信事業がここ数ヶ月で急成長し、ADSLオンリーのヤフーBBにとっては大きなライバルとなっています。
 ソフトバンクが推定で月間数十億(!)の赤字を算出しながらこの事業を続けているのは、「ありったけの資金を投下して独占的なシェアを獲得し、その後でたっぷりと大儲けする」ため。それを考えると、現時点で引くわけにはいかないのです。始まってしまったチキンレースは最後までお付き合いしなくてはなりません。

 また、この事業に携わって来た人材派遣各社が4月下旬になっても新規スタッフの募集を続行しているという事もまた、重大な証拠の一つです。これはどう考えても5月以降の新キャンペーン要員の募集としか思えないのです。
 この他、3月下旬になって備品やユニフォームが一新されるなど、もうどう考えても「これで止めるわけがない」という情勢になって来ています。まぁ「潰れかけの会社ほど最期まで威勢がいい」という事を考えると、逆にXデーが近いのかと思わせる節もありますが(笑)、少なくとも5月からしばらくの間はキャンペーンは続行するはずです。一節によれば9月末までは確定している…などとも聞きますが、状況次第では年内一杯あの手この手のキャンペーンをやるような気もします。

 しかしながら、ソフトバンク=ヤフーの“悪の枢軸”もジリ貧の現状をただ傍観するわけもいかないようで、次から次へと新しい作戦を考案しては実行に移しています。そのハイペースたるや、まるで福本伸行のマンガみたいです。もっともそれが、『アカギ』なのか『カイジ』なのか『最強伝説黒沢』なのかは各人の解釈に委ねられるわけですが。

 新作戦のまず1つ目は、コンビニでの新規契約キャンペーンです。
 既に皆さんも目にした事があるかも知れませんが、コンビニ各店舗にチラシを置いて、店頭もしくは専用フリーダイヤルにて申し込みを受け付けするようになりました。
 これは、数ヶ月前にやって大失敗に終わったコンビニ店頭でのパラソルキャンペーンのリベンジというか代替的プランで、噂によれば発生するバックマージンもパラソルキャンペーンに比べてかなり低く抑えられているのだとか。ようやくソフトバンクも“経費節減”という簡単な四字熟語の存在に気付き始めたみたいです。この調子で“盛者必衰”“思慮分別”などといった四字熟語も勉強してもらいたいと思います。
 ……さて、今、駒木の手元に近所のローソンからせしめて来たチラシが1枚有るのですが、それを見ると、コンビニのキャンペーンで契約をすると、パラソルの“3つの0円キャンペーン”の内容に加え、5ヶ月以上(=有料3ヶ月)利用した契約者にはプリペイドカード1000円分がプレゼントされる…とあります。「ハァ、そうですか」としか言いようのない極めて微妙な額面がいい味出してますね。大口勝負で負けの込んだギャンブラーが、気分転換に1$単位のスロットマシーンに座っているような哀愁が感じられて失笑を禁じ得ません
 あと、気になるのはチラシに書かれている内容が極めて大雑把で、肝心の“ADSLが繋がらない場合”の諸条件が全く記されていないところです。これはどう考えてもクレームと無料期間中解約の温床になるような気がしてならないのですが……。

 しかし、これはまだ序の口だったりします。もう1つの新作戦はちょっとキナ臭い香りがします
 その名も“お友達紹介キャンペーン”と名付けられたこの新作戦は、その名の通り、知り合いをヤフーBBに紹介して契約が成立し、利用3ヶ月目(=有料期間突入最初の月)の料金(工事費+基本料金+通話料=7400円強以上)の入金が確認されればバックマージンが紹介者に支払われる…というものです。バックマージンと言っても商品券5000円分ですが、金券ショップに持っていけば、ほぼ同額の現金を手にする事が出来ますので、現金を配っているのと大して変わりません。
 この作戦のキナ臭いところは、紹介者はヤフーBB会員でなくても良く、電話番号が違う家族以外の人間であれば“紹介者”になってしまう点にあります。更に凄いのは、申し込みをする際にこの“紹介者”は、身分照会どころか全く何もしなくても良い(確認の電話だけ来る)という点です。
 つまり、このルールを悪用すると、以下のような事が出来ます。

●本来は紹介者がいないのに、自分で“紹介された人”として、紹介者には適当に気心の知れた友人の名前と電話番号を書き込む。→“紹介者”宅に送付される商品券を申込者が受け取る、又は“紹介者”と山分け。→ウマー(゚Д゚)

 このパターンは、駒木の担当SVから「信用できるお客さんなら、“最後の一押しで”使って良いよ」とまで言われていますので(しかもそれを言われた日の内に、駒木と一緒に入っていたスタッフが実行)、恐らくは全国各地で行われているのではないかと思います。
 金の有り難みを判っちゃいないソフトバンクから無駄金をせしめるのは確かに痛快ではありますが、「世の中には法律やルールに関わらず、やって良い事といけない事がある」…というのは講師時代に生徒に何度も言って来た事ですので、駒木は絶対にこのような事には手を染めないつもりでいます。第一、このポンカスSVが言った「まさかの時は僕が責任取りますから」というセリフが、延長10回表・一死ランナー1、2塁の場面で年に1度しか打席に立たないような抑え投手が試みる送りバントくらい信用出来ませんので、たとえ駒木が如何な悪人だったとしても、そんな自分の利益にならない事など絶対にやらないと思いますが。

 ……こういう話を聞かされた受講生の皆さんは、「こんなので大丈夫か、ソフトバンク?」…と思われるかも知れませんが、当然、大丈夫ではありません
 何しろ、この“お友達紹介キャンペーン”、当のソフトバンクも認める見切り発車でして、「まだ内容に関しては細かく詰めている途中」なのだとか。さすがはADSL事業もIP電話事業も見切り発車で飛び出したソフトバンクですね。行き当たりばったりにも年季が感じられます
 まぁ、駒木もそんなソフトバンクの下部組織で働いている以上、偉そうな事は余り言えませんが、株主の皆さんには「そろそろソフトバンク株は投げ売りしてしまった方が良いんではないか」とアドバイスさせて頂きます(念のため注:このアドバイスにしたがって生じた損失には当然ながら一切責任は取れませんので悪しからず)

 ──とまぁ、こういった状況の中で、スタッフたちは今日もカラ元気を振り絞ってモデムを配り、貴重な1日の時間を1万円札と小銭少々に換金して過ごしています。

 ただ、少し気になるのはモデム配りキャンペーンをやっている量販店が、入学&引越しシーズンの終わったこの4月からエアコン商戦が本格化する6月までは“シーズン・オフ”になる事でして、事実、“閑散編”の舞台になりそうな駒木の勤務先では、ここ数日は終日客より店員の方が多いクソゲーム屋状態”が続いています。休憩室に入るたび、販売員さんたちが口々に「ヒマでヒマでどうしようもないわ」とか、「この店も、もう終わりやな」とか言ったりしてますので、本当にヤバいんだと思います。
 そんな有様では勧誘は勿論、声をかけるお客さんすら滅多に現れず、こちらもヒマを持て余す事になります。そうなると、これまでは暇潰しにペアを組んでいるスタッフとの雑談が始まっていたのですが、最近では売上低迷で自分の地位がヤバくなった店長がストレスの捌け口をこちらに求めるようになっており、状況が変わってしまいました。つい先日には、
 「今後、スタッフは店内で別々に活動するように。同じ場所にいる所を見たら怒るよ」
 …などという理不尽な達しがカマされてしまい、今では業務関連の会話すらままならない状態です。しかし立場の差は如何ともしがたく、「『怒る』と『叱る』の区別がつかない上司は間違いなく無能である」という言葉を飲み込みながらも、校則の厳しい全寮制の女子校の如く、周囲の目を気にしながらヒソヒソ話をする毎日であります。

 ……それにしても、体験するとよく分かるのですが、1日中ずっとヒマを持て余し、ただ時間を浪費する日々を過ごす…というのは、人間にとってこの上ない苦痛ですね。禁固刑で収監された服役囚の大半が労役を志願するのも分かる気がします。
 「贅沢言うな。こっちは忙し過ぎて死にそうなんだ」とおっしゃる方も一度、“折れそうな心の支えが、前方に立っている仲間由紀恵さんの等身大ポップだけ”…という状況を体験してみれば理解して頂けると思います。現在の駒木などは、もしも本物の仲間由紀恵さんに、auのCMの逆パターンで「貴方は頑張ってるわ。最高よ!」…なんて言われた日には「私はユキエに血と魂を捧げます」とアラビア語で熱唱しながらバグダッド市内を練り歩くぞ!──という
妄想に浸れるくらいテンパっています。

 この仕事、長く続けるもんじゃないなぁと、毎日思います。まぁでも、他に日給1万以上の仕事なんてそうそうありませんから、人生の乗換駅で電車の待ち合わせをしているつもりで、もう少し講義の題材を発掘してみたいと考えています(笑)。
 さて、もうちょっと情報は仕入れているのですが、この時点で長引いてしまったので次回は来週あたりに。話題になったヤフーBBスタジアムでのモデム配りのちょっとした内幕などについてお話したいと思います。ではでは。 (次回へ続く

 


 

2003年度第8回講義
4月16日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第3週分・前半)

 さて、今日からは第3週分の「現代マンガ時評」をお送りします。
 一昨日の講義が遅れたため、やや混乱されている方もいらっしゃるかも知れませんが、一昨日の講義は先週の「サンデー」について、今日は今週発売の「ジャンプ」についての講義となります。

 ではまず情報系の話題ですが、今日は次号の「ジャンプ」に掲載される読み切り作品の情報についてお知らせしておきましょう。
 次号では、ここ最近展開されている“期待の若手読み切り作品攻勢”に、『ROOKIES』(作画:森田まさのり)取材休みの穴を埋めるための作品を加えた、都合2作品の読み切りが掲載されます。

 まず“期待の若手枠”なのが天野洋一さん『LIVEALIVE 〜はじまりの歌〜』です。天野さんは02年上期の手塚賞で準入選(最高評点)を受賞し、受賞作『CROSS BEAT』で本誌デビューを果たした、新進気鋭の作家さんですね。今回も前作に引き続いて音楽モノ作品のようですが、果たしてどんな進歩の跡を見せてくれるのでしょうか。
 そして“穴埋め枠”の方が『キャプテン』作画:鉄チン28cm)。鉄チンさんは昨年度の「ストーリーキング」で最終候補まで残った人で、なんと今年34歳になる異色のルーキー。この作品が(別のペンネームで以前から活動していない限り)デビュー作となるようですが、こちらも注目です。

 噂では、近々更に長期連載作が終了すると言われている「ジャンプ」ですが、どうやら捨て身ともいえるアグレッシブな姿勢で新人の発掘・育成を目指す態勢を固めたようですね。確かにここしばらくの「ジャンプ」では看板作品級のメガヒット作に恵まれていませんから、手遅れになる前にハイリスク・ハイリターンの賭けに出るのも悪くない選択かも知れません。
 ただ、問題はその賭けの勝敗を握っている新人・若手作家さんたちの実力でしょう。ここしばらくの「ジャンプ」では、「期待をかけた新人が伸び悩み→仕方なく、打ち切り作家やキャリアを重ねて、とりあえずソツの無い作品が描ける若手作家に連載枠が回ってくる→結局突き抜け」…というパターンが続いている感が否めません。果たして、編集部の過大な期待に応えられるだけの力を持ったルーキーが現れるのかどうか。問題はこの点に集約されて来るのでしょうね。

 ……それでは、今週もレビューとチェックポイントをお届けします。今週のレビュー対象作は、新連載の後追いレビューと読み切り各1本ずつで、計2本となります。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年20号☆

 ◎新連載第3回『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』作画:加地君也第1回時点での評価:B−

 ここ最近定番となった感のある、新連載第3回のセンターカラー&ページ増ですね。敢えて目立つ位置に掲載してアンケート人気の最大値を計り、その結果に従って“突き抜け”か否かを決断する…というわけです。見た目とは裏腹にエグいイベントですよねぇ。

 ──で、この作品の内容の方ですが、有り体に言ってしまうと第1話から大きな変化はありません。指摘した長所も短所もそのままといった感じですね。
 ただ、それに加えて何か新しいポイントを指摘するならば、加地さんは、いわゆる“黄金パターン”を踏襲するのは非常に長けているものの、魅力的に見せたり、そこにオリジナルなものを加えたりするような技量が足りていない…というところでしょうか。

 ストーリーを構築する上で“黄金パターン”、つまり話作り上の定石を利用する事は悪い事ではありません。……というより、どんなにオリジナリティのある名作と言われる作品にしても、その大半は“黄金パターン”の塊にほんの少し独自色を塗りつけたモノに過ぎないわけで、むしろこれはストーリーテラーにとって大切な才能であると言えます。
 しかしながら、“黄金パターン”は先に言ったように定石ですから、既存の作品の中で数え切れないほど使い古されています。そしてその中には、作者の技量によってピカピカに磨かれた文字通りの“黄金”となったものもあるわけで、ただ“黄金パターン”を使っただけでは読者の高い支持は得られはしません。「この作品は、ただの“黄金パターン”じゃないな。奥が深いぞ」…と思わせるような何かが無ければいけないわけです。

 ところがこの『闇神コウ』では、その部分が明らかに欠如してしまっています。なるほど、ヒロイン(?)路蔭の二面性をアピールしてキャラクターを立てようする意欲は窺えますし、シナリオ上の起承転結の骨組みもしっかりしています。
 が、そのキャラ立ては“意外性の無い意外な素性”止まりに終わってしまっていますし、起承転結にしても、それだけを優先してしまったがために、ストーリー展開の起伏が浅くなってしまっています。読者がストーリーに没入する前に主人公・コウがブチ切れて勝手にシナリオが進行し、そのコウのピンチに際しては、読者がスリルを感じる前に路蔭が予定調和的に現れてアッサリとそれを解決してしまう……といった具合です。
 どうやら現在の加地さんは、作品の体裁を整えるために膨大なエネルギーを注いでしまい、結果的に読者を無視してしまっているように思えてなりません。ネット界隈の評判では、「ギリギリ“突き抜け”だけは回避できるんじゃないか」という声が多数を占めているようですが、果たしてどうでしょうか。作品が“殻”を突き抜けない内に作品そのものが突き抜けてしまってはシャレにもなりません
 もしも今週で“突き抜け”が確定してしまったならば、もう何を言っても無駄ですが、もしもまだチャンスが残っているのならば、何らかのテコ入れを施す事をお薦めしたいと思います。とりあえずは今の1話完結形式を改めて、ページ数をジックリ使ったドラマを見てみたいと思います。
 評価はB−で据え置きとします。しかし、路蔭の第1話の服装って何だったんだ。コスプレ?(笑)


 ◎読み切り『SELF HEAD』作画:原哲也

 今週の“期待の若手枠”は03年1月期「天下一漫画賞」の佳作受賞作原哲也さん『SELF HEAD』です。原さんは現在24歳で、これがデビュー作のようですね。少年誌ではやや遅めのデビューでしょうか。
 しかし、原さんの名前、某御大と2/3一致してるのが非常に紛らわしいんですが(苦笑)。編集部もペンネーム使わせた方が良いんじゃないかなぁと思ったりします。

 ……では、早速内容に話題を移してゆきましょう。

 まずはについてですが、単刀直入に言えば、「まだまだ発展途上で荒っぽい」…という感じでしょうか。これは今後の努力で何とかなる余地は残っているでしょうが、現状で連載作家さんたちと比べると見劣りは否めないでしょう。
 あと、キャラクターの髪型や服装などがやたらと古臭いのが気になります。主人公が「俺」とプリントされたタンクトップ(というかランニングシャツで、他のキャラクターの服装も、「田舎臭い」と言ったら田舎の人が激怒しそうなほど現実感の無いアレな格好です。
 で、こういう不用意な描写が絵柄を泥臭いものに感じさせてしまい、結果的に作品全体の雰囲気をややマズくしてしまったような気がしてなりません。これからプロを名乗るわけですから、そういう細かい部分にも気を使ってもらいたいものです。少年たちの世界を舞台にしたTVドラマや映画で研究するなり、ファッション雑誌を買ってみるなり、出来る事はたくさんあるはずです。

 そしてストーリー・設定の方ですが、こちらは「設定過多で消化不良」という言葉が一番適当ではないかと思います。

 シナリオの大まかな骨組みは「子分の仇討ちのために主人公が敵と喧嘩する」だけで、本来なら31ページでも多過ぎるくらいなんですよね。ところが、そこへ余計な設定や、いてもいなくても良いような脇役をジャイアンシチューの食材のようにドカドカ放り込んでしまったのが問題でした。単純で分かりやすいはずの話が変に回りくどくなって、単純なストーリーならではの爽快感が削がれてしまいましたね。

 また、受賞の決め手となった、床屋(理容師)VS美容師というテーマも十分に活かしきれていなかったのではないかと思います。
 ストーリー作品にするのなら、敢えて現実感を一切排した奇抜な発想(例えば理容師と美容師がハサミ捌きの技術で戦う格闘大会とか)で“バカバカしい事をクソ真面目にやる”路線で勝負するべきでしたでしょうし、もっと笑いの要素を交えてナンセンス・ギャグ作品にしてしまう手もあったでしょう。とにかくこの作品は何においても中途半端だったのが残念でした。
 あと、こんな事を言ってしまってはミもフタも無いのですが、「今更『カリスマ美容師』ってどうよ?」(笑)。そもそも大阪エリアでは「シザースリーグ(でしたっけ?)」の放映そのものが無かったんで、余計に「どうよ?」と思ってしまいますね(笑)。
 ……関係ないですが、「たまごっち」とか「アムラー」みたいな恥ずかしさがありますよね、「カリスマ美容師」という言葉には(苦笑)。

 では評価を。「天下一」の佳作(手塚賞で言えば準入選クラス)としては物足りない印象が否めず、B−といったところでしょうか。僭越ながらアドバイスさせてもらうと、原さんはもっと21世紀の風俗・流行についてもっと勉強するべきだと思います。
 余談ですがこの作品、「しまぶー(島袋光年)の作品みたいだ」とか、色々言われていますが、個人的には岩田康照さんの『神光援団紳士録』に近いように思えます。まぁ突き抜けマンガに似ててもアレなんですが(苦笑)。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『プリティフェイス』作画:叶恭弘【現時点での評価:B+/雑感】

 巻末コメントでは、作中の時間経過について「普通に進めます」と言及あり。確かに難しいんですよね、学園モノの場合は。特にこういう続けようと思えばどこまでも続けられるような作品の場合は……。
 まぁ、「ジャンプ」には“作者がタイムマシンで1年前に戻る”という離れ業が許された前例がありますから、どうとでもなるでしょう。それよりも来年まで連載が続けられるように頑張って欲しいものです。

 ◎『ピューと吹く! ジャガー』作画:うすた京介【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ギタリストトーナメント編終了。ピヨ彦の新境地が見えた意欲的なシリーズでしたねぇ。少年マンガの“黄金パターン”をことごとく裏切る事をギャグに結び付けた技量には唸らせられっぱなしでした。
 しかし、今回の後半からのジャガーさんの顔。どうして楳図かずおタッチなんだよ、しかも中途半端に(笑)。

 
 ……というわけで、今日のゼミはこれまで。後半はまた週末か週明けになってしまいそうですが、どうぞ宜しく。

 


 

2003年度第7回講義
4月14日(月) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・後半)

 本当に、本当にお待たせしました。4月第2週分後半の「現代マンガ時評」です。つい2週間前までとは雲泥の差のヘタレぶりですが、どうかご容赦下さい。今がサボっているわけではなくて、先月までが異常だったんです(苦笑)。

 ……それでは、まずは「サンデー」関連の情報から。

 はじめに、月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の2月期審査結果発表がありましたので、受賞者を紹介しておきます。

少年サンデーまんがカレッジ
(03年2月期)

 入選=該当作なし
 佳作=2編
  
・『ぼくたち上等!』
   山川コージロー(26歳・京都)
    ・『食材屋(めしや)』
   石厳當(23歳・沖縄)
 努力賞=2編
  ・『SAMURAI WIND』
   村神渓一(19歳・長野)
  ・『バイシクル』
   我孫子有希(24歳・東京)
 あと一歩で賞(選外)=2編
  
・『ぱそ・かの』
   平山昌吏(28歳・東京)
  ・『拓福招来 弁天丸!!』
   川村好永(24歳・埼玉)

 受賞者の過去の経歴ですが、「あと一歩で賞」の川村好永さんと同じ名前の方が、「ジャンプ」の月例新人賞・「天下一漫画賞」の2000年6月期で最終候補に残っています。結構変わった名前ですので、恐らく同一人物ではないかと思われるのですが……。

 次に、新連載と読み切りの情報を。

 今週で突然最終回を迎えた『電人1号』作画:黒葉潤一)に代わり、来週からまたギャグ作品の短期集中連載として、水口尚樹さん『黒松・ザ・ノーベレスト』がスタートします。
 水口さんは、昨年「サンデー」本誌で行われた、若手・新人ギャグ作家さんたちによる競作企画・“サンデー特選GAG7連弾”でメジャー誌デビュー。その後は増刊で連載を獲得するなど、「サンデー」系新人作家さんの王道的ルートを歩んで来ましたが、いよいよ長期連載の“最終試験”の時を迎えたようです。
 (余談ですが、その“GAG7連弾”からは『いでじゅう!』のモリタイシさんが本誌連載を獲得しています)
 
 そして、この短期集中連載攻勢と平行する形で、次週から“新鋭ビッグ読切”なる企画がスタートします。こちらはどうやらストーリー作品の競作企画のようで、やはり後の本誌連載枠を賭けた大事なイベントということになりそうです。昨年、同様の仕掛けを連発して、やや不発に終わった「サンデー」ですが、今年もまだまだ積極的に新人・若手の育成を実施してゆくようです。
 …で、次週に掲載されるのは川久保栄二さん『竹の子ドクター十五郎』。ほぼ1年前にあたる「少年サンデー超増刊」02年3月号で同タイトルの作品が掲載されていますが、さすがに転載という事は考え辛いですので、恐らくはそれを土台にした新作ではないかと思われます。
(追記:久々の大失態です……。川久保さんはその後、現在に至るまで、この読み切りを元にした『医術師!! 十五郎』を「少年サンデー超増刊」で連載中でした。不勉強で申し訳ありませんでした)

 この2作品については、当然ながら次週のこの時間にレビューをお送りします。

 ……では、今週もレビューをお送りします。本日分のレビュー対象作は、先程お伝えしたように、今週で最終回を迎えた短期集中連載・『電人1号』の総括レビュー1本だけという事になりますね。
 その後、「チェックポイント」、そして「読書メモ」もお届けします。最後までどうぞよろしく。

☆「週刊少年サンデー」2003年19号☆

 ◎短期集中連載総括『電人1号』作画:黒葉潤一第1回時点での評価:B−

 先週、「終わる気配が見えないんですが……」などと言った直後に終了です(苦笑)。このゼミではこういう事が頻繁に起きるので困ってしまいます。まぁ自業自得なんですが。

 では、総括に移るわけですが、ここでは第1回で指摘した点を振り返りながら、新しく発見した点なども含めつつお送りする事にします。

 まずは最初に指摘した「間の悪さ」からですが、やはり全8回の連載中、ここが一番気になってしまった部分でした。短いページに可能な限り中身を持たせようとした反作用と言いますか、大半のコマが小さい上にその中でキャラがバタバタばかりしていて、いわゆる“静と動”のメリハリが利かなくなってしまった感がありました。
 以前は“静”のオンパレードで読者をニヤリと笑わせるようなギャグを得意としていた黒葉さんですが、“動”の方は今一つ上手く表現出来なかったみたいですね。

 次に「意外性の無さ」「ワンパターン」ですが、これは同じ原因から露呈した問題だったのではないかと考えています。
 それはキャラクター不足です。主要キャラが電人1号・2号とミノルの3人(?)だけで、あとは使い捨て気味のゲストキャラが毎週1〜2程度。これではギャグの起点がほぼ全て電人1号のボケからになってしまいますから、当然の事ながらワンパターンになり、意外性も無くなります。
 全てとは言いませんが、ギャグ作品におけるヒット作のほとんどでは、いわゆる“ボケ担当”だけでも系統の違う数人のキャラクターが配置され、更にそのボケをイジるキャラがいて、最後に主人公格のキャラがツッコミを入れる…というパターンが確立されています。そうする事でギャグのバリエーションが増し、また1人のキャラをクローズアップする事で連載1話単位のメリハリも出て来るわけです。ちなみに、主人公格のキャラがツッコミ担当なのは、その役回りが読者の感情移入を一番引き受けやすいからですね。ツッコミ役が“読者の代弁者”になるわけです。
 もともと「サンデー」のギャグマンガというのは、主要キャラが少ない作品が多く、恐らくはこの作品もその影響を多分に受けたものなのでしょうが、それにしても苦しい設定にハマり込んでしまったとしか言いようがありません。

 せっかく1号とか2号みたいな設定を作ったのですから、せめて5号くらいまで出せば展開もまた変わって来たのではないかと思います。(勿論、それで良い作品にするためには、それなりの技量が求められますが)

 評価はB−寄りBとしておきましょうか。全くダメとは思えないんですけどねぇ。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 「ジャンプ」のパンチラ攻勢を受けてか、最近は以前にも増して男子読者サービスが強化された気がしますね(笑)。しかし、いくら乳首が見えようが、擬似精液がぶっかけられようが、『モンキーターン』の“キノコ頭カップル”の会話に見える生々しさこそが、他の何よりもエロい気がしてなりません(笑)。

 ◎『焼きたて!! ジャぱん』作画:橋口たかし【現時点での評価:/雑感】

 ……とか言いつつ、やっぱり注目は最終ページですね(笑)。
 まぁ、脱がせるのは良いとして、何故にヒモパン?(笑) ちょっと橋口さん、最近欲求不満なんじゃないのかと変な心配をしてしまいますよね(苦笑)。

 ◎『DAN DOH !! Xi』作:坂田信弘/画:万乗大智【開講前に連載開始のため、評価未了/連載終了にあたっての総括】

 『Xi』になる前も含めると、足かけ8年にもなる長編でしたが、今回で爽やかに幕。最終回は典型的なエピローグ形式でしたね。まぁ先週に話そのものはケリがついてましたし、他にどうしようもないですけれども。

 作品全体の印象としては、普通の少年を主人公にして、『あした天気になあれ』のシナリオで『プロゴルファー猿』をやり、オマケに万乗パンツをトッピングしたもの…といった感じでしょうか(どんなんじゃ)。
 ストーリーの途中で許容範囲スレスレまで読者にストレスを強いるのが苦痛と言えば苦痛でしたが、その分のカタルシスも保証されているのが強みでしたね。特にダンドーが子供離れした実力を身に付けてからは爽快感の勝る作品になり、素直に楽しめたような気がします。
 評価はB+といったところでしょうか。当ゼミの基準では、どうしても“トンデモ系”の作品には点が辛くなってしまうのですが、この評価は褒め言葉として受け取ってもらえれば幸いです。

 ◎『鳳ボンバー』作画:田中モトユキ【現時点での評価:B+/雑感】

 やっぱり最終回が近いんですかねぇ。もしそうなったら総括で評価を下方修正しなくちゃいけないんですが……。
 で、ここでも注目はやっぱりラスト直前の見開きになっちゃうんですよね(笑)。あややが絶頂ですよ、絶頂!
 しかし、抱えているギターは完全にメタファー(暗喩)なんでしょうなぁ、アレの(苦笑)。何というか、キャラクター以上に作品の方向性がボンバーしてますね(笑)。

駒木博士の読書メモ(4月第2週後半)◇

 ◎『ORANGE』「週刊少年チャンピオン」連載/作画:能田達規【開講前に連載開始のため、評価未了/雑感】

 実は、今一番駒木が楽しみにしているサッカーマンガがこれです。奇をてらわず、かといってエンタテインメントの精神も忘れずに、2部リーグの世界を等身大かつ卑小にならないように描ききった、バランス感覚抜群の良作です。
 特に今回は凄いです。12人目のプレイヤーたるサポーターが、チームの得点に直接貢献する様子を全くリアリティや説得力を損なうこと無く描き切るなど、そうは出来るものではありません。少なくとも某直訳すれば『空腹の心』になる作品と作者さんには無理でしょう。
 「ジャンプ」だと魅力が発揮される前に突き抜けそうで、「マガジン」だと連載以前に企画が通らなさそうで、「サンデー」だとサッカー以上に女子高生オーナーのパンチラ&お色気シーンだけを延々と展開してしまいそうなこのマンガ、「チャンピオン」連載で本当に良かったと思います(笑)。


 ……というわけで、今日のゼミを終わります。次回のゼミは、とりあえずは水曜日付でお送りする予定です。

 


 

2003年度第6回講義
4月12日(土) 競馬学特論
「G1予想・桜花賞編」

 駒木ハヤトです。今週の競馬学講義は、時間の都合により、駒木が単独で短縮版の講義を行います。珠美ちゃんの登場を楽しみにしていた受講生さんには御迷惑をおかけしますが、彼女にはレース後の回顧で登場してもらうつもりです。

 では、まずは出馬表をご覧頂きましょう。例によって駒木と珠美ちゃんの印もついています。

桜花賞 阪神・1600・芝

馬  名 騎 手
×   レイナワルツ 福永
    メイプルロード 渡辺
    センターアンジェロ 蛯名
    チューニー デムーロ
    ヘイセイピカイチ 加藤和
    オカノハーモニー 熊沢
ヤマカツリリー 安藤勝
  モンパルナス 松永
スティルインラブ
×   10 トーホウアスカ 岩田
× 11 オースミハルカ 藤田
  × 12 チアズメッセージ 吉田稔
    13 シーイズトウショウ 池添
14 アドマイヤグルーヴ 武豊
    15 マイネヌーヴェル 横山典
    16 ホワイトカーニバル 小野
    17 ワナ  四位
    18 ヤマニンスフィアー 二本柳

 ちなみに珠美ちゃんからは、
 「ここまで博士と印が同じになると、正直言ってとても不安です(苦笑)」
 …という、ちょっと失礼なコメントを預かっています(笑)。まぁここまで不調が続いていると反論する気持ちも湧いてきませんけれども(苦笑)。

 では、レースの分析と予想に移ります。

 全体的な概況としては、「大混戦、ただしレヴェルは高くない方で」…といったところでしょうか。よくプロ野球なんかで“2強4弱”とか言ったりしますが、今回の桜花賞はさしずめ“11並7弱”という感じになりますか。
 後で解説しますように、半歩から1/4歩程度先に出ている馬が少しばかりいますが、それも些細なアクシデント1つでどうにでもなってしまいそうな頼りないリードです。桜花賞のような王座決定戦的なレースはただでさえ不確定要素が大きいのですから、どんな予想にしても過信は禁物とご忠告申し上げます。
 また、ステップレースのレヴェルですが、メンバー的にはチューリップ賞が一番上ながら、フィリーズレビュー組も上位2頭は同等以上の水準でしょう。他の重賞勝ち馬はステップレースの3着相当くらいの解釈が妥当と思っています。あと、若葉Sに関してはアドマイヤグルーヴの解説で述べます。

 次に展開予想ですが、桜花賞にしては珍しく逃げ馬が1頭しかおらず、大半の馬が先行〜中団のポジションを欲しがるというメンバー構成になっています。特に5〜6番手争いは結構熾烈になりそうで、最初に下手を打つとリズムを崩したままレースにならない…なんて事もあり得そうです。どの馬がそうなるのかは全く読めないのが苦しいところですが……。
 桜花賞の最近の傾向としては、意外にも先行馬やや有利というデータが出ています。目標にされてしまう逃げ馬はさすがに苦しいですが、ハイペースのレースでも追い込み馬はなかなか前まで届かないようです。今回はペースも落ち着きそうですし、後方待機組は不利が生じるかも知れません

 ……というわけで、これらを踏まえて1頭ずつ簡単に解説を付けて行きます。

 1番・レイナワルツ。とにかく調子が良く絶好調。前走は、やや力負けした形の3着で、それ以前の実績も物足りませんが、一応の連対圏内には入っているでしょう。
 2番・メイプルロード。能力面云々は別にして、今回は臨戦過程が悪すぎます。差し馬不利の展開も影響しそうですし、苦戦は免れないでしょう。
 3番・センターアンジェロ。アネモネS勝ち馬。レースの内容はしっかりしていましたが、メンバー構成が余りにも楽すぎました。いきなり一線級に混じる今回は環境の変化に戸惑ってしまうのではないかと懸念しています。
 4番・チューニー。クイーンC勝ち馬ですが、やや展開がハマった上にメンバー構成も相当楽でした。上位グループには入っていますが、馬券の圏内に食い込むには色々な助けが必要でしょう。
 5番・ヘイセイピカイチ。クイーンCを人気薄で2着。ただし、ハイペースの前に為す術無く敗退したフィリーズレビューの戦い振りを見る限りでは、上位との力の差が相当あると思われます。この馬も苦戦ですね。
 6番・オカノハーモニー。賞金が足りたので、とりあえず出てみた…といった感じでしょうか(苦笑)。常識的に考えて、通用する見込みはほとんど無いでしょう。
 7番・ヤマカツリリー。フィリーズレビュー勝ち馬。息の入らない流れを先団〜中団で追走して、直線では見事な差し切り。どうしても先行有利の阪神1400mでそういうレースが出来たのは収穫でしょう。勝った相手が、紅梅賞でスティルインラブに0.1秒差だったモンパルナスというのもセールスポイントですね。今回は展開も向きますし、体調もピーク。実力をフルに発揮できれば間違いなく上位争いに顔を出すでしょう。
 8番・モンパルナス。先程から話に出ているフィリーズレビュー2着馬。実力的にもなかなか奥の深いところを見せていますが、今回は有力馬から目標にされる単騎逃げ。やや展開面で不利なような気がします。逆に言えば、これで勝てれば本物でしょう。
 9番・スティルインラブ。チューリップ賞は不利に泣いて僅差の2着。阪神JF未出走組ではアドマイヤグルーヴと並んで評価されていますね。確かに相対的に見て、この馬が出走馬中の上位にランクされるのは間違いないと思います。問題は、アドマイヤやヤマカツの後ろからレースをしなければならないこと。瞬発力で相当勝っていないと、3着はあっても先頭に突き抜けるのは難しいのではないでしょうか。
 10番・トーホウアスカ。最近着順を落としていますが、前々走は不利な外枠で、前走は復調途上で全くレースにならず。度外視していいでしょう。問題は函館2歳S2着とファンタジーS3着の実績をどこまで評価したら良いのかということでしょう。ここでは一応、2着候補の一員という評価をしています。
 11番・オースミハルカ。チューリップ賞勝ち馬ですが、やや影が薄い感じ。でも逆にそれが馬券的な狙い目になるかも知れません。地力が無ければ、あんな勝ち方なんか出来ないでしょうしね。イレコミが激しいのが難点ですが、スムーズなら一発逆転があってもおかしくないでしょう。
 12番・チアズメッセージ。チューリップ賞3着馬。ただ、それ以前の実績が寂しいのでどうしても見劣りしてしまいますよね。2番手をキープして抜け出すという、去年のアローキャリーみたいなパターンがあったら怖いですが……。
 13番・シーイズトウショウ。とにかく堅実な馬ですね。戦績だけ見れば、これほど人気が薄いのが不思議になってしまいます。ただ、致命的なまでに末脚が甘いのが難点で、そのためか陣営の意気もなかなか上がりません。掲示板はあるかも知れませんが、馬券的には3連複の3着要員が精一杯でしょうか。
 14番・アドマイヤグルーヴ。皐月賞トライアルの若葉S1着で賞金を上乗せして滑り込みました。その若葉Sですが、牡馬の一線級とはいかないものの、一流半クラスが2頭ほど混じっており、その中を、しかも休み明けのレースであそこまで走るのですから、やっぱりこの馬は牝馬にしては強いんでしょう。果たして桜花賞を目標に据えているのかは微妙ですが、体調さえ万全なら桜花賞馬候補の最右翼でしょう。
 15番・マイネヌーヴェル。フラワーC勝ち馬。余りにも鮮やかな追い込み勝ちのインパクトが強かったのでしょう、相当穴人気しているみたいですね。ただし、あのレースはあくまでハイペースがハマったものですし、今回は逆に追い込みは不利のレースになりそうですから、連続の活躍は難しそうです。
 16番・ホワイトカーニバル。いつもソコソコは走るのですが、やはり一線級と比べると一枚以上格下の感が否めません。それに加えてこの外枠は相当厳しいでしょう。
 17番・ワナ。どうも調子が上向いて来ませんね。ひょっとしたら早熟タイプだったのかも知れません。17番枠も厳しいですし、今回は見送りが妥当でしょう。
 18番・ヤマニンスフィアー。アネモネS2着馬。本来なら相当マークすべき馬なのでしょうが、差し馬の上に大外18番枠。この条件で勝ったとしたら、名牝・女傑クラスの実力の持ち主という事になるでしょう。駒木のジャッジは「そこまではいかないだろう」という事になるのですが……。

 ……では、最後にフォーカスを。
 印の上位3頭が頭の先っぽが出ているような感じですね。それに先行勢の穴馬が続く…といったところでしょうか。買い目は、馬連で7-14、9-14、7-9、11-14、そして万馬券狙いで10-14まで手を伸ばしてみたいところです。
 ちなみに珠美ちゃんは馬連で7-14、9-14、7-9、8-14、11-14、12-14です。こちらも万馬券狙いが入ってますね。

 ということで、慌しいですがこれで講義を終わります。レース回顧は日曜深夜に更新の予定です。ではでは。


桜花賞 結果(5着まで)
1着 スティルインラブ
2着 13 シーイズトウショウ
3着 14 アドマイヤグルーヴ
4着 ヤマカツリリー
5着 モンパルナス

 ※駒木ハヤトの“敗戦の弁”
 すいません。時間の都合がつかなくて、通常通りの簡単な回顧になってしまいました。
 それにしても、う〜ん……。シーイズトウショウかー……。「忘れた頃の一発」というのは穴狙いの鉄則なんだけど、本当にちょうど忘れた頃にやって来るなぁ(苦笑)。
 しかし、ヤマカツリリーがシーイズトウショウに競り負けたのが不思議で不思議で……。いくら馬場とコースの差とは言ってもねぇ。まぁ、それが競馬のダイナミズムと言えばそれまでだけれども。
 アドマイヤグルーヴの出遅れに関しては、あれは騎手よりも馬のやる気が無かったというような気が(笑)。いかにも「え〜、もう走るの? 超ウザーイ」みたいなスタートに見えたのは気のせいだろうか(苦笑)。まぁ最後に一脚見せたし、オークスではやってくれるでしょう。いや、出遅れじゃなくて1着の方(笑)。
 あ、勝ち馬の事を忘れていた(笑)。スティルインラブは想像以上の強さ。アクシデントが無ければオークスも主力級ではないかな。

 ※栗藤珠美の“反省文”
 嫌な予感が的ちゅ……いえ、何でもありません(苦笑)。
 それにしても、どうして私が武豊騎手の馬に◎印を打った時に限って何か起こるんでしょうか(苦笑)。今日のスタートで菊花賞の悪夢を思い出してしまいました……。
 あと気になった点は、博士も採り上げてらっしゃいましたが、やっぱりシーイズトウショウですねー…。私、阪神JFの時は○印を打っていたんです。それを今度は無印にしてしまって……。本当に、競馬って難しいです。
 また来週、苦手な皐月賞ですけど頑張りますので応援して下さいね。

 


 

2003年度第5回講義
4月10日(木) スポーツ社会学
「4・4ゼロワン・神戸サンボーホール大会観戦記」(2)

 ※過去のレジュメはこちらから…第1回

 さて、前回はしみったれた長文&試合開始前に講義終了で御迷惑をおかけしました。
 今回からは試合回顧を中心に進めてゆきます。

 しかし、今週の「週刊プロレス」見たら、神戸大会の試合レポートは活版1/4ページのさらに半分くらい……(苦笑)。こっちがネタバレ無しでレポートがお送りできるのは良いんですが、メチャクチャ寂しかったり(笑)。
 まぁ、コアなファンの方は「何で、大谷と藤原組長が抗争始めちゃったの?」…という部分の謎解きも含めて、どうぞお楽しみ下さい。もっとも、メインイベントの試合レポは次回以降になっちゃうんですが(苦笑)。

 ……では無駄話はこれ位にして、試合レポに移りましょう。レポート中の文体は常体(だ、である調)を更に崩したものになります。他の諸注意は前回の冒頭の通りです。どうか宜しくご理解を。


◎第1試合◎
シングルマッチ(30分1本勝負)

ヴァンサック・アシッド 
VS 
山笠Z”信介

 《選手紹介》
 ヴァンサック・アシッドは、ムエタイスタイルの外国人選手。ただし、グローブは着けずにバンテージのみ着用。アナウンスによると体重94kgなので、ボクシングで言えばヘビー級、プロレスならジュニアヘビー級のウェイト。
 ムエタイ系の打撃を中心とするファイトスタイルだが、決め技は何故か空中殺法。そういうスタイルがウケたのか、最近は専門誌でも採り上げられるようになって知名度上昇中。
 山笠Z”信介(やまがさ・ぜっと・しんすけ)は、ゼロワン初の生え抜き新人選手。180cm90kg、今月14日で26歳になる。現在は第1試合が主な活躍の場。

 《試合観戦記》
 アシッドは、リングインしてから神に祈る踊りをする、ムエタイではお馴染みの入場スタイル。ただ、いきなり出て来たレスラーがキックボクサーみたいだわ変な踊りを踊るわで、プロレス慣れしていないお客さんたちはしばし呆然(苦笑)。
 そう言えば、大仁田&デスマッチ全盛期のFMWで一度、ボクサーとキックボクサーのタッグマッチしかもプロレスルール…という凄いシチュエーションが地方興業で実現したのだけれど、あの時は会場の反応はどうだったのだろう? やっぱり「ポカーン」状態だったのだろうか。
 さて、一方の山笠は、新人らしいシンプルな黒ショートタイツ&リングシューズという格好。「巨人の星」の主題歌がテーマ曲で、これが不思議と良く似合う。リングに上がると“第1試合名物”という触れ込みのうさぎ跳びでパフォーマンス。こちらは余りのバカバカしさにか、チョイウケ。

 試合開始。
 前半戦は、打撃系の技で試合を組み立てたいアシッドと、下手なりにグラウンド(寝技系)の展開に持ち込みたい山笠のファイトスタイルがイマイチ噛み合わず膠着模様。
 まぁ、新人で持ち技の少ない山笠にしてみれば、打撃系の選手に道場でシゴかれながら習った寝技で対抗したくなったんだろうなぁ。でもお互いがお互いの持ち味消した上に試合を引っ張れないんじゃあ、やっぱりプロレスとしては辛いよなぁ。
 やっぱりここは、「打撃技でボコボコにされる山笠→しかし一瞬の隙をついて関節技で反撃」という図式が一番観てて面白いと思うのだけれどもどうか。まぁでも、それは国籍の違う若手と新人の試合には酷な注文かな。

 で、2回ほどそんな膠着状態があった後、アシッドが一旦攻勢に。打撃技をバシバシ決めた後、「イクゼ!」とか「サヨナラ!」とか片言の日本語で場内にアピールしてはトップロープからの空中技で攻め立てる。
 しかし、決め技のムーンサルトプレスを交わされてから山笠に主導権が交代。またもグラウンドから逆エビ固めなどで攻め、現時点でのフィニッシュ技と思われるダイビングボディアタックで3カウントを狙う。が、アシッドは余裕を持ってカウント2でフォールを跳ね返す。
 そこから再びアシッドが主導権を握り、今度は一方的な展開へ。最後はルチャリブレ系の大技・スワントーンボム(トップロープからの一回転式セントーン)が綺麗に決まって3カウント。

○アシッド(7分15秒 片エビ固め)山笠●
※スワントーンボム

 前座の試合としてはマズマズ、しかし興業の勢いをつけるための第1試合としてはイマイチの出来。まぁ、2人ともキャリアが浅いんだから、少しずつ勉強して強く、上手くなって欲しいもの。


◎第2試合◎
タッグマッチ(30分1本勝負)

富豪夢路&佐々木義人
VS
ドン荒川&葛西純

 《選手紹介》 
 富豪夢路(ふごふごゆめじ)は、96年にインディー系弱小団体・レッスル夢ファクトリー(現在活動休止)にて本名・藤崎忠優でデビューし、同団体のエース格として活躍。ゼロワンには旗揚げ時から参戦し、昨年3月に現在のキャラクター&リングネームに変身。金色に染めた髪と長いアゴヒゲ、そして入場時の“フゴフゴダンス”で、すっかり前座の名物レスラーに。175cm97kg、33歳。
 佐々木義人は、インディー系では大手の団体・FMW(02年に倒産・消滅)出身の若手レスラー。00年にデビューしたが、同団体の経営悪化などによりゼロワンに移籍。タックルやアルゼンチン・バックブリーカーなどを得意技にするパワー系志向のファイター。176cm95kg、21歳。

 ドン荒川は、ご存知・新日本プロレス出身の大ベテランレスラー。“前座の力道山”の異名を取り、“ひょうきんプロレス”と呼ばれるスタイルで、真剣勝負志向の客が多い新日本プロレスの会場を笑いの渦に巻き込んだ凄い人。現在では、NOAHの永源遙と並ぶコミック・レスラーの重鎮的存在。170cm100kg、58歳。
 葛西純は、インディー系中堅団体・大日本プロレス出身のデスマッチ系レスラー。大日本時代は、猿をモチーフにしたコミカルなキャラクターと、連日生傷の絶えないハードコアな試合スタイルで人気を博していたが、試合中に大ケガをし、更にその時の補償問題(要は大日本が貧乏で入院費用が出せなかった)がこじれて02年に退団。数ヶ月のブランクの後、ゼロワンにて復帰を果たす。ブランクの後遺症と選手層の厚さゆえ、大日本の時のような活躍はまだ望めないが、それでも人気は未だ根強い。173cm84kg、28歳。

 《試合観戦記》
 この試合はメンバーを見ても分かるように、大抵の団体にある前座の“お笑いプロレス”枠
 しかしお笑いとはいえ、侮る無かれ。客を和ませ、笑わせて“空気”を作り、後半戦に繋げるという結構重要な役割を担っているのだ。分裂前の全日本プロレスであった“ジャイアント馬場ファミリー軍団”VS“悪役商会”の試合などは、下手をすればメインを食ってしまうような完成度とインパクトを誇っていた。

 さて、入場シーン。まずは富豪夢路&佐々木から。「サンバ・デ・ジャネイロ」に乗って、富豪夢路が“フゴフゴダンス”(どういう踊りか説明が難しい。往年のドリフで早口言葉をやる時にしてたような振り…としか言いようが無い)を踊りながら華やかな入場。
 そんな中、硬派で売る佐々木は最初こそ仏頂面で傍観していたが、富豪
に促され、お客におだてられて2人一緒に“フゴフゴダンス”。しかしいざ始めてみると思い切り息が合っていて、どう考えても控室で練習していたとしか思えない(笑)。まぁお約束の寸劇な訳なんだけど、こういう報われるんだか報われないんだか分からない努力をしている姿勢は結構好きである。
 一方、荒川&葛西組は、葛西のテーマ「モンキーマジック」で入場。葛西の首には首輪とロープが繋がっていて、その先を“飼い主”の荒川が持ち、客席にチョッカイをかける“飼い猿”をリングへ誘導する…というスタイル。よく見たら葛西の尻には猿の尻尾がぶらさがっていて、試合前のボディーチェックではその尻尾もチェックされていた。芸が細かいなぁ(笑)。

 で、試合は、「ゴング前に葛西が富豪夢路を挑発→いきり立った夢路が先発を買って出る→さっさと葛西が引っ込んで荒川が先発→それを見た夢路が『オイ!』と絶妙の間でツッコミ」…という、いかにもお笑いプロレス的な遣り取りからスタート。その後も口八丁手八丁といった感じで笑いの要素満載の楽しい試合に。
 4人の中で目立ったのは、やっぱり重鎮・ドン荒川。大して技も出さないのに、ほんのちょっとしたパフォーマンスで会場からドッカンドッカン笑いを取る。さすがだ。ただ、エアプレーンスピンを「20回回すぞ!」と言って始めたのに、回数を数えなきゃいけないはずの観客が黙って見てしまったため、「お〜い、今何回だ〜?」間抜けな悲鳴をあげていたのはちょっと可哀想だった(笑)。仕方ないから駒木が「もう20回いったで〜」と間抜けな声をかけてやりましたとも(苦笑)
 葛西と夢路の2人も、キャリアの割にはなかなかのセンスを見せる。お笑いだけじゃなくて、本物の技を見せる所ではちゃんと見せていたのもグッジョブ。まぁ2人とも小さい団体とは言えトップを張っていた人間なのだから、その辺りのセンスは鍛えられているんだろう。残る佐々木はお笑いキャラじゃないし、役回り的にそういう事を求められている訳でもないので、この試合では脇役に徹していた感じ。

 そんな11分の“喜劇”を締めたのはやはり荒川。葛西にブレーンバスターを仕掛けようとした夢路の尻に説得力抜群のカンチョー攻撃(ちなみにこの日2回目)。「グアー」と悲鳴をあげる夢路を葛西がクルリと丸め込み、これまたほぼお約束通り(笑)の3カウント。

 ○葛西(11分15秒 小包固め)富豪夢路
※ドン荒川のカンチョー攻撃

 しかし、なんちゅうフィニッシュホールドじゃ(笑)。
 でもまぁ試合は面白かった。さすがに“ファミリー軍団”VS“悪役商会”クラスのレヴェルを求めるのは酷にしても、ちゃんとお金の取れる試合にはなっていたかな…と言う感じ。


◎第3試合◎
タッグマッチ(30分1本勝負)

高岩竜一&星川尚浩
VS
坂田亘&日高郁人


 《選手紹介》 
 高岩竜一は、新日本出身でゼロワン初期メンバーの1人であるデビュー12年目の中堅レスラー。団体移籍前から日本を代表するジュニアヘビー級レスラーで、今のところ唯一のIWGP、GHC両ジュニアヘビー級チャンピオン経験者。軽量級ではずば抜けたパワーを活かした迫力満点の攻めっぷりが最大の魅力。178cm95kg、29歳。
 星川尚浩は、ルチャリブレ団体・みちのくプロレスでデビュー後、大阪プロレスを経てゼロワンの創設メンバーとなる。ルチャリブレと打撃技をミックスした攻撃的なファイトスタイルが売り物。173cm90kg、デビュー11年目の28歳。
 坂田亘は、総合格闘技団体リングス(消滅)出身で、現在は個人ジムを経営しながら、総合と掛け持ちでプロレスもこなすという異色のファイター。先日ゼロワンで実施された「第1回天下一Jr.トーナメント」で優勝し、初のベルト獲得を果たした。175cm87kg、30歳。
 日高郁人(ひだかいくと)は、格闘技スタイルのプロレス団体・バトラーツ出身だが、同団体が事実上休眠状態に至った後はみちのくプロレスを中心に活動中。ゼロワンにはゲスト的な参戦か。172cm85kg、30歳。

 《試合観戦記》
 お笑いプロレスがあったと思ったら、今度は対戦カードからして相当ハードでシリアスなタッグマッチ。このコントラストがまたプロレス興行らしくて良い感じ。
 15分弱の試合のなかで判った事は、「高岩と坂田、やっぱり凄ぇ」ということ。伊達に新日やリングスみたいな厳しいところで新人〜若手時代を過ごしていないなぁとしみじみ実感させられた。1発1発の攻撃が、蹴りにしろ何にしろ、とにかく的確で重い
 プロレスって、半分失敗したような攻撃でも技を受ける方が“ジャストミートしたフリ”をして体裁を整えてしまうのだけれども、この2人からは「そんなのには甘えません」という気持ちが技から溢れ出ている。特に高岩の動きには全く無駄が無く、もう体がプロレスというものを覚えている感じ。こういうレスラーばかりが揃ってるんだから、そりゃあ新日のジュニア戦線は盛り上がるというものだ。
 一方、「おや?」と思わせたのが星川の動き。全体的に動きが雑なのが気になって仕方が無い。ドロップキック系の技を得意にしているはずなのに、放った技が軒並み“ファウルチップ”状態。にも関わらず、蹴りがヒットする瞬間に太腿を手でパチンと叩いて効果音を出す“小技”をやらかすもんだから、余計にミスが目立ってしまう。まぁそこまであざとい見方をしてる客なんて1割にも満たないんだろうけど(苦笑)。
 この“太腿を手でパチンの小技”、要は(リングシューズの裏みたいに)ヒットしても音が鳴らない部分で蹴る技に少しでも迫力を持たせるための手段なのだけれども、コレ、駒木はどうにも好きになれない。確かに痛そうな音が出れば客席は沸くんだけれど、それは技じゃなくて音に沸いてるわけで、「それでいいのかい?」…と思ってしまうのだ。ちなみにトップクラスのレスラーたちの場合だと、音以前に技が出た瞬間から物凄い歓声が沸いてしまうので、そんな小細工は端から不要。逆に言えばそんな小細工に頼っている内は「まだまだ」だと思うのだけれども、いかがなものだろうか?

 試合の方は星川と日高の絡みが中心で、そこへ要所要所で高岩と坂田が入ってビシッと引き締める…というパターン。攻守交代も頻繁に見られて、ちゃんとタッグマッチの形にはなっていた。
 あと、強烈な技を喰らいまくって高岩の凄みを際立たせた日高の受身の上手さもさりげなく映えていたし、坂田も“専門外”の場外乱闘に付き合うなど懐の深さを見せた。リングス出身の選手が場外フェンスに激突するシーンが観られるなんて、時代も変わったなぁと思う
 フィニッシュは、星川が場外に坂田を隔離している内に、高岩が餅つき式パワーボム2発からデスバレーボムに繋げて文句なしの3カウント。

○高岩(14分42秒 片エビ固め)日高●
※パワーボム2発からデスバレーボム

 駒木は完全な“馬場・三沢派”なのだけれども、この試合は新日本育ちの素晴らしさを心から堪能。そりゃ三沢もGHCのベルトを預けようって気になるわな。


 お、終わらない……(汗)。
 これでも手短にまとめようと思ってはいるんですが、全然まとまってませんね(苦笑)。
 とりあえず、あと1〜2回で何とかまとめますんで、それまでどうかお付き合い下さいませ。 (次回へ続く

 


 

2003年度第4回講義
4月8日(火) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第2週分・前半)

 業務縮小にも関わらず、多くの方に引き続き受講して頂いて、嬉しく思うと共に恐縮しております(苦笑)。
 とりあえず先週みたいに、1週間でゼミ2回+他1回のパターンを基本にボチボチやって行こうと思いますので、どうか何卒。新ネタが入ったらモデム配り関連の講義もイレギュラーにやりますんで、そちらも宜しく。ここでは広告ナシの利点を活かして自由な活動をさせてもらいます(笑)。

 さて、それではゼミを始めましょう。まずは「ジャンプ」関連の情報から。今週は月例新人賞・「天下一漫画賞」の審査結果発表がありましたので、受賞作等をここでも紹介しておきましょう。

第79回ジャンプ天下一漫画賞(03年2月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し  
 審査員(武井宏之)特別賞=1編
  
・『イツカノミヤコ』
   田村隆平(22歳・滋賀)
 編集部特別賞=1編
  
・『ギャンブルドット』
   高山憲弼(21歳・大阪)
 最終候補(選外佳作)=4編

  ・『鬼子と忌み子』
   本間純一(20歳・北海道)
  ・『少年A』
   葛西仁(23歳・東京)
  ・『ありがとう先生』
   夏田統(25歳・宮崎)
  ・『キュプロクス』
   高木友勝(16歳・岐阜) 

 今回の受賞者に、過去の受賞歴等は見当たりませんでした。編集部特別賞の高山さんの絵柄なんて、かなりプロっぽく思えたので、てっきりベテランの投稿者さんかと思ったんですけどね。
 ところで最終候補作の『鬼子と忌み子』の講評の、

 「画力は抜群に高いが、全体的に個性に欠け、ありがちな印象。妖怪というよくある題材にもっと深みが欲しいし、それぞれの登場人物も、まだ設定の域を出ていない。読者の心に何か特徴が強く残るキャラ作りに専念して」

 ……という文言なんですが、これ、画力についての部分以外は先週連載が始まった『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』作画:加地君也にそのままあてはまっちゃう気がするんですが(苦笑)。
 こう言っちゃあアレかも知れませんけど、作品が世に出るかどうかなんて、結局は運次第なんでしょうねぇ。小説の世界でも、後に傑作として評価される作品が新人賞の2次選考あたりでハネられたりする事もありますし。

 この「天下一漫画賞」は次回の3月期(既に応募は締め切り)で最後となり、翌月からは「ジャンプ十二傑新人漫画賞」にモデルチェンジされます。というか、3月期に間に合ってしまった応募者の人って、結構可哀想なんですが(苦笑)。

 ──それでは、今週もレビューとチェックポイントの方へ。今週のレビュー対象作は新連載レビュー1本のみとなります。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年18号☆

 ◎新連載『★SANTA!★』作画:蔵人健吾

 「ジャンプ」の新連載シリーズ第2弾は、先週の加地君也さんに続いて初の連載獲得となった蔵人健吾さん『★SANTA!★』です。
 蔵人さんは今から8年前の95年に「月刊少年ジャンプ」の「MJ少年漫画大賞」で佳作を受賞し、同年発行の「月刊ジャンプ」の増刊号でデビュー。しかしその後はしばらく伸び悩み、97年からは「週刊少年ジャンプ」系の新人賞に応募するようになります。そして98年に「赤塚賞」準入選と「手塚賞」佳作を同時受賞し、同年の「赤マル」春号で再デビューを果たします。
 その後は年1〜2回のペースで「ジャンプ」本誌や「赤マル」に作品を発表し、昨年にはエニックスの「ガンガンパワード春季号」でも読み切りを発表しています。
 そして今回の『★SANTA!★』は、昨年の「赤マル」春号で発表した『SANTA! ─サンタ─』のリメイク版となります。苦節8年、ともすれば「ジャンプ」よりも「世界漫画愛読者大賞」の方が似合いそうな経歴の蔵人さん、果たして第1回の出来はどんなものだったでしょうか──?(蔵人さんの詳細な経歴については、「シェルター」さんの『蔵人健吾作品データ』を参考にさせて頂きました)

 例によってまずからですが、多少クセはあるものの力量はかなりのものが認められます。駒木は以前──この作品の読み切り版が掲載された頃から、蔵人さんの画力には注目していたのですが、連載にあたってアシスタントを使えるようになったせいか、ここに来て更に上積みがあったようです。
 ただ、どうにも“あまりにも「ジャンプ」っぽ過ぎる”という点が玉にキズといった感じです。このせいで、絵柄のインパクトという面で損をしている印象が否めないんですよね。誤解を恐れず喩えて言えば、バストのサイズ以外にこれといった特徴の無いソコソコ可愛いB級グラビアアイドルみたいなんですよね。

 で、次にストーリー・設定面

 第1回のシナリオそのものは少年マンガ……というか「ジャンプ」作品の王道的シナリオで、有り体に言って“目新しさは無いが、手堅い印象を与える”…という感じでしょうか。
 ただ、ネット界隈では「『ONE PIECE』の焼き直しにしか見えない」という厳しい声も出ており、読み手によって評価がかなり分かれているようです。

 しかし、駒木がそれ以上に気になるのはセリフやモノローグにおける言葉遣いの拙さです。この点に関しても駒木は読み切り版の頃から指摘させてもらっていたのですが、残念ながら1年を経た今でも大幅な改善は出来なかったようです。
 これは『アイシールド21』『ヒカルの碁』といった原作者付き作品と直接比較してもらえるとよく分かるのですが、とにかく蔵人さんの書くセリフは説明的で回りくどいですし、砕けた喋り言葉に硬い表現の接頭語や接続語が多用されているのもマイナスポイントです。舞台演劇の脚本ならそれでも良いんですが、マンガという表現手段は映画やドラマに近いモノですから、セリフはとにかく自然じゃないといけないんですよね。
 そんな不自然さが最も目立ってしまったシーンが、よりによって最大の見せ場である「オレの目的は世界征服だ!」というフレーズです。「目的」という言葉って、決めゼリフにはかなり格好悪いんですよね。語呂も悪いですし。ギリギリ合格点で「オレの野望は世界征服だ!」…じゃないですかね。これならまだ言い易いですし、セリフっぽい感じがします。
 あとは、そのフレーズを引っ張り出した敵キャラのセリフ、
 「え゛!? お…おいちょっと待て!! その左手の印…!? なんだよお前の目的って…!!」
 ……これも悲惨なほどカッコ悪いです。普通、殺されようとしてるヤツが「なんだよお前の目的って」…とか言わないですよねぇ。
 で、これらの失点がシナリオ・ストーリーの魅力を肝心なところで少しずつ削いでしまっているわけです。こういうクドい作風もジャンルや見せ方を工夫すれば評価される道も残されていると思うのですが(典型例は『鉄鍋のジャン』正統派冒険モノではちょっと通用し辛いかな…といったところです。

 ……というわけで、少なくとも第1回を読んだ限りでは、この作品は「ソコソコ美味い素材なのに、それをソースで台無しにしてしまった失敗作のフランス料理のようなもの」…と言わざるを得ません。暫定評価は、画力やある程度の手堅さを考慮してもB−寄りBというところでしょう。せっかくのチャンスを1クールで手放さないためにも、早急な改善策を練ってもらいたいものです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週で『ストーンオーシャン』作画:荒木飛呂彦)が打ち切り気味の(?)最終回。アンケート人気万年最下位クラス&単行本売り上げ低迷という状態では、さすがの“優遇作品”も立場が弱くなっちゃうんでしょうなぁ。
 まぁこの作品に関しては、駒木よりももっと的確に論評出来る方が多くいらっしゃるでしょうし、途中読んでいない時期もあったりしましたので、総括するのは止めておきますね。
 
 ◎『ボボボーボ・ボーボボ』作画:澤井啓夫【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ホントに凄い人出たー!(爆笑)。
 その次のコマの「悲しい事に澤井の画力が追いついてねー!!!!」ってセリフの「悲しい事に」という部分に色々なモノが詰まってるように思えて更に爆笑。いやー、久々にホームランですなぁ。企画モノをやるなら、これくらいの威力を持たせないといけませんよね、やっぱり。

 ◎『プリティフェイス』作画:叶恭弘【現時点での評価:B+/雑感】

 巻末コメントでは平謝りの叶さん。しかし、「ジャンプ」で原稿落とした事を謝られると、「あぁ、やっぱりこれってマズい事なんだなぁ」って思わされてしまいますよね(笑)。
 で、ネタの方は……これもスゲぇな(苦笑)。
 というか、読者の大半を占める男子小学生・中学生のほとんどは、アレの形を「チ○コ」だと言われてもなかなか理解できないんじゃないかと思うんですが(笑)。第一、人前でアレをナニだと認識してパニクっている女子高生の集団って、とても強烈な光景だと思うんですけれども(笑)。あと、人知れず、ああいう方面には極めて疎そうな理奈ちゃんまで赤面してるんですが、一体どこで知識を仕入れたんでしょう?(苦笑)


 ……というわけで、ちょっと短いですが今日の講義はこれにて終了です。
 最後がチ○コネタってのもアレですが、『エンカウンター』の写真ぺージについて喋る方がもっとアレな感じがしますし(苦笑)。まぁ、ピラミッドの呪いに関しては当講座の「学校で教えたい世界史」を参照して下さい(笑)
 では、また週の後半でお会いしましょう。

 


 

2003年度第3回講義
4月7日(月) スポーツ社会学
「4・4ゼロワン・神戸サンボーホール大会観戦記」(1)

 業務縮小後、初の新シリーズ立ち上げです。
 本当は、業務縮小した後にはしばらく新シリーズを立ち上げない方針だったんですが、つい発作的にやる気になってしまいました(苦笑)。
 まぁ、賞味期限が切れない程度にボチボチと進めていきますので、どうか気長に宜しく。

 あと、これからこの講義では観戦記に交えて、駒木のプロレス論的なモノも展開していきます。
 しかしながら、駒木はファン歴12年半甘いも酸いもケーフェイも噛み分けたコアなファンですので、喋る内容もそれなりのキワどい話になると思われます。ですので、「プロレスはガチンコ真剣勝負の格闘技だ!」…と熱血されている方などはどうぞお気をつけ下さい。(というか、受講して怒るくらいなら自主休講して下さい^^;;)
 あと、プロレスファン以外の人にはチンプンカンプンな内容かも知れませんが、知らない固有名詞は見なかった事にすると、ある程度は楽しめると思います。

 ※講義の内容上、文体は常体(だ、である調)かつ、やや荒っぽい表現になります。ご理解下さい。


 神戸・サンボーホールはJR・各私鉄の三宮駅から徒歩で約15分、貿易センタービルなどがあるビル街の程近くにひっそりと建っている2階建ての小じんまりとしたイベントホールである。
 プロレスファンの方には、神戸のプロレス会場と言えば真っ先にワールド記念ホールが思い浮かぶだろうが、実は興業の頻度からすればここサンボーホールの方が多かったりする。これはキャパシティ1000人がやっとという手頃な会場規模や、その規模ゆえの安い会場使用料(どうやら50万円程度で大丈夫らしい)が特にインディーズ団体にウケているからで、過去にはJWPバトラーツ、さらには世界のプロレス(!)といった、およそプロレスファンでも存在を知らないような団体まで興業を打った事がある。言わば“隠れたプロレス名所”といったところだろうか。
 ちなみに「サンボー」とは、あのロシア生まれのマイナー格闘技のことではなく、「産業貿易交流」の省略形とのことだ。(全くの余談だが、初期のFMWでメインイベンターを務めていたサンボ浅子氏が、つい最近糖尿病のために両足を切断してしまったらしい。一時期は現役復帰して頑張っていたのだが、残念の一言に尽きる。浅子氏はひとかどの資産家で、生活に困らないであろうという事が唯一の救いだが……)

 かく言う駒木も、このサンボーホールでは色々な思い出がある。
 今は亡き冬木弘道金村キンタローの同門対決を観て、しかもメイン終了後には私服姿のハヤブサと冬木の乱闘までお目にかかったり、花道を通らず直接控え室から出て来たスタン=ハンセンにブルロープでドツかれそうになったり、果てにはあのザ・ロードウォリアーズにサイン&握手してもらったりと、一地方都市在住のファンには勿体無いくらいのレアな体験ばかりをしているような気がする。

 ただ、玉にキズなのは、この会場の天井は異様に低く、ヘビー級の選手がトップロープ上に立つと頭がぶつかりそうになってしまうのだ。実際、駒木が観た中でもハヤブサが豪快に天井へ衝突した事があった。
 そんなわけで、スーパーヘビー級レスラーを多数抱えるメジャー団体にとっては、この会場は使い辛いことこの上ないのである。かなり前に現在のNOAH勢が脱退する前の全日本が興業を打った時があったのだが、その時は選手がトップロープに立つたびに観客席から「天井、気をつけて!」と警告が飛ぶ始末だった(事実、ウルフ=ホークフィールドなどはセカンドロープに立ってバンザイしただけで天井に手が届いていた)。
 この時に一番災難だったのはエロ社長三沢光晴で、よりによってハンセン&ベイダー組を相手に飛び技無しで試合をする羽目になり、見せ場も無いまま一方的にボコボコにされて6分強でフォールを奪われてしまった。過去とその後も含めて、あれほどに精彩を欠いた三沢はほとんど見た事が無く、それで懲りたのだろうか、NOAHを興してからは満員にならないのを承知でワールド記念ホールの方を使い続けている。

 さて、とりあえず思い出話はそれくらいにして当日の見聞に話題を移そう。

 まずは会場到着から試合開始まで
 試合開始18時半のところ、余裕を持って18時前会場に到着し、最安値の“指定席”6000円を当日券で購入。サンボーホールのような小会場では、一番安いチケットを買って最後列の更に後ろから立って観戦するのが鉄則なのである。勿論、ベストスポットは特別リングサイド最前列だが、そんな席は一般ファンには手が届かないし、最後列と言っても10列目程度なので、その後ろから立見していても普通の会場ならリングサイド席のようなものである。
 しかし一番安い席で6000円はハッキリ言って高い。FMWの時は3000円だったし、先に話した全日本プロレスの時ですら4000円だった。まぁ台所事情が苦しいのも分かるのだけれど……。

 会場に入ると、すぐ近くに臨時の売店が設営されていて、所狭しとTシャツなどのグッズが並べられていた。「ライブの時にTシャツとか売ってみると、それで結構な小遣い稼ぎになるんスよ!」…とラジオで大槻ケンヂが言っていたが、多分プロレス界でもそうなのだろう。で、売店の中には大谷晋二郎、田中将斗両選手がいて、自分名義のTシャツを買ったお客さんにサインをしてあげていた
 そう言えば、全日本プロレスの売店でも、ジャイアント馬場さんが健在だった頃は同じようなサービスをやっていた。その頃の駒木は本当に貧乏な学生だったので、ついに馬場さんからサインを頂いた事は無かったのだけれども、今になって「一度くらい奮発しておけばよかった」と激しく後悔している。まさかあんなに早く逝ってしまわれるとは思わなかった。当時の全日ファンなら理解してくれると思うが、当時の駒木とって、馬場さんは「死」というものとは余りにもかけ離れた存在に思えたのだ。

 ……さてさて、残念ながら切迫する財政は今回も容赦なく、駒木はパンフレット(1500円)だけ購入して座席に着くことになった。そんな状況下でもパンフレットを買ったのは、折り込まれている“本日の対戦カード”を入手するためだ。生観戦経験のある人はご存知だろうが、プロレス業界の慣習として、その日の対戦カードを一覧表にしたものはパンフレット購入者にしか渡してくれないのである。
 まぁ試合開始直前にリングアナウンサーが口頭で教えてくれるのだけれど、初めて観戦する団体などは選手名(特に外国人レスラー)を告げられても誰が誰だか分からない。なので、正直言ってこれも割高な買い物だけれども、駒木は“初物”の団体に関しては漏れなくパンフを買うことにしている。
 で、今日の対戦カードを見てみると、これがなかなかの好カード揃いでビックリした。メインで橋本真也が大谷&田中と6人タッグで対戦するし、他にもJr.ヘビー級のタイトルマッチや、高岩竜一&星川尚浩組VS坂田亘&日高郁人というファン好みの対戦が何と第3試合に組まれていて、少なくとも地方都市の小会場でやるようなマッチメイクではない。チケットの値段を上げた分だけ試合でお返ししようという事なのか知らないが、とにかくこれは大歓迎である。

 と、ここで気がつけば時計の針は18時半を回ろうとしている。えらくノンビリしてるなぁと思っていたら、案の定「試合開始が少々遅れます」とのアナウンスが。
 プロレス業界には「試合開始時刻が守れない団体は二流以下」という通説があって、こういう遅刻は本来御法度なのだけれども、雨のせいもあって思い切り出足の良くない客入りの様子を見回せば納得するほか無い。
 何しろ、この時点の観衆は実数でおよそ200。あらかじめ少なめに設定した客席数でも四分程度の入りで、インディーズ団体にも及ばないような寂しい会場風景になってしまっていた。ここ神戸は、ゼロワン主要メンバーの古巣である新日本プロレスの営業が非常に強い地域で、その縁でゼロワンもイケイケか…と思っていたのだけれど、現実は厳しいようだ。
 結局、15分くらい粘って、仕事帰りのサラリーマン客が数十人来場したところでオープニングのゴングが鳴った。駒木は荷物を座席に残して、予定通りリングのど真ん中から立見出来るスペースを確保する。何度生観戦しても、この第1試合が始まる直前の瞬間はとてもエキサイトするものだ。もっとも興業によってはこの時が一番エキサイトした瞬間になってしまうのだが(苦笑)
 さて、果たして今日はどうなるのだろうか──? (試合も始まらないまま恐縮しながら、次回へ続く

 


 

2003年度第2回講義
4月4日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第1週分・前半)

 一昨日の“前半”に引き続き、今日は“後半”です。
 “前半”は何やかんやでこれまでと同じぐらいのボリュームになっちゃったんですが、今回ははさすがに分割版らしい長さになってしまうと思います。
 短い講義だと「サービスが足りない!」…とか思ってしまうんですが、それだと業務縮小した意味無いんで(苦笑)、徐々に慣らしていくことにします。

 で、“後半”「週刊少年サンデー」関連の情報やレビュー、チェックポイントを中心に、更には“前半”と同じように、他の雑誌などに掲載された作品のレビューや「読書メモ」などをお送りします。

 今週は「サンデー」関連の情報は特に無いのでお休み。レビュー対象作もありませんので、「チェックポイント」だけお送りします。

☆「週刊少年サンデー」2003年18号☆

 最近気になってるのが、“短期集中連載”中の『電人1号』。今週でもう7話目なのに、まだ終わる気配が見えません。一体、どうするつもりなんでしょうかねぇ……?

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 ◎『ファンタジスタ』作画:草場道輝【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 イタリア編が一区切りついて、今回からオリンピック編。どこまで連載続くか分かりませんが、舞台もてっぺいも日本とイタリアを往復し続けるみたいですね。
 で、今回はプロローグ的エピソードなんですが、「10代でACミラントップチーム所属」っていう肩書きが、実態以上に日本で評価されているっていうのが妙にリアルで唸らされました。マスコミって、「若者+重みのある肩書き」に弱いですからね。女子高生が芥川賞候補! ……とか(笑)。

 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 “5階建てビル編”は3回で完結。まぁギャグマンガですし、これくらいでまとめるのが正解でしょう。しかし、知らない内に絵柄が随分変わった気がするんですが、錯覚でしょうか?
 注目は最終ページ(特にラスト2コマ)の林田と桃里の様子でして、何だか今回のエピソードが2人の関係にとってのターニングポイントになった感がありますね。これからどんな感じでラブコメ風味が出てくるのか、個人的に少し楽しみです(意外とラブコメ好きなんです)

 ◎『からくりサーカス』作画:藤田和日郎【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 こちらも“一時閉幕”。いよいよ次回から“からくりサーカス編”が始まるってことになるんでしょうか。それにしてもこれだけ長期間、テンション下げずにこれだけのエピソードを描き切る技量っていうのは本当に凄いですよね。
 今週は藤田さんお得意の(?)、主要キャラクターがまた1人天に召されていくシーン。あ、今回のは地に召されたんですよね。それにしても、あんな幸せに地獄へ堕ちてゆくカップルってのもまた凄いですよね。

 ◎『モンキーターン』作画:河合克敏【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 こういうリアル系のスポーツ物っていうのは必殺技とか魔球の類の超能力とか出せないわけですが、スペシャルぺラとかVモンキーとかでその“代用品”を作ってるのが見事ですよね。競艇なんて、レースシーンもワンパターンで結構地味なのに、よく演出できてると思います。

 ◎『DAN DOH !! Xi』作:坂田信弘/画:万乗大智【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 いよいよ次回最終回。来週には簡単な総括をさせてもらいます。
 で、今週。ガラスの破片が刺さったボールを思い通りにコントロールする事が「真のゴルフの世界」だと初めて知りました。坂田先生、有難う御座います!(笑)
 ……というかこの作品、本当に最後まで坂田氏が原作描いてたんでしょうかね(苦笑)。 

 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感?】

 1年半かけてウェブサイトを成功させた事で、ネット以外の社会生活をボロボロにした駒木は勝ち組なんでしょうか、負け組なんでしょうか?(苦笑)。


 ……というわけで、「サンデー」のチェックポイントは以上。最近の「サンデー」は比較的中身が濃いんで、見どころが結構ありますよね。


 では、今日の後半戦、「第2回世界漫画愛読者賞」の総括に移りたいと思います。まずは、今回のエントリー作8作品と当ゼミでの評価を振り返っておきましょう。

作品名 作者 評価
『軍神の惑星』 谷川淳 B+
『鬼狂丸』 新堂まこと (C寄り)B−
『摩虎羅』 茜色雲丸/KU・SA・KA・BE (B−寄り)B
『華陀医仙』 曾健游 B+
『極楽堂運送』 佐藤良治 (B寄り)B−
『大江戸電光石火』 弾正京太 B+
『東京下町日和』 山口育孝 (B寄り)B−
『ちゃきちゃき江戸っ子花次郎の基本的考察』 赤川テツロー (C寄り)B−

 まぁ当ゼミの評価なんて、ゴマンとある意見の1つに過ぎないわけですが、それでも他に確固たる判断材料もありませんので、とりあえずそれで振り返ってみますと、8作品中B+評価が3作品ある一方で、B−評価、またはそれに近いB評価も5作品ある…という結果になりました。
 当ゼミの評価でのB+“連載作品として及第点”B−評価“いわゆるスカ・ハズレ”ですので、そういう意味では、エントリー作のデキがかなり上下極端に分かれたかな……という印象です。
 ただこれは、応募作数が少なかったために最終審査進出のボーダーラインが極端に下がってしまった…という見方もでき、そういう意味では仕方がない話かも知れません。むしろ、応募総数100作品程度の中から“見ていられる”作品が数点でもあったのは、普通のマンガ新人賞と比較すれば上出来とさえ言えるでしょう。

 ですが、この賞が「賞金総額1億円、グランプリには連載1年保証」というケタ外れの特典を売り物にした、看板作品発掘のための賞である事を考えると、やはり今回のエントリー作品は物足りなさが否めません
 昨年の第1回の時も同様の喩えをしたのですが、この賞は、野球で言えばドラフト1〜2巡目クラスの、松坂や松井クラスの選手を求めた特殊な“入団テスト”なんですよね。
 ところが、そんな入団テストに集まって来るのは、
 「全国大会出られるかどうかの社会人チームで8番ライト打ってましたが廃部になっちゃいました。28歳、妻子持ちですけど頑張ります」
 …とか、
 「高校時代はエースで4番、センバツに21世紀枠で出て3回戦まで行きました。卒業の後は家業の酒屋を手伝ってたんですが、25を過ぎてこれからの人生を考えたら、どうしてもプロになりたくなって……」
 …とかいった、“能力の伸びしろが無い”年齢的にも問題のある二流選手ばかり。たまに将来性のある若手選手が現れても、あまりに荒削りすぎて二軍で鍛えないと話にならなかったりして、ちっとも即戦力として使えなかったりするわけです。で、去年は“29歳、都市対抗野球で準決勝進出経験アリ”みたいな選手を無理矢理に採用した挙句、シーズン途中で不振の上にアキレス腱断裂…みたいなパターンに終わってしまったと(苦笑)。

 ……元々、この「世界漫画愛読者賞」のグランプリ選出方式には、以前「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」で指摘したような重大な問題点がいくつもあるわけですが(グランプリ信任投票のみその後に改善)去年と今年の応募者の顔ぶれを見る限り、“問題以前の問題”を抱えているように思えてなりません。つまり、グランプリに相応しい作品を読者投票で適正に選び出す以前に、グランプリに相応しい作品そのものが存在しないんです。
 今後、この賞を存続させてゆくのならば、グランプリに相応しい作品が書ける現役プロ作家をスカウトするか、若しくは賞金額と連載確約期間を削減して新人賞っぽくするべきでしょう。「連載確約+賞金200万&連載期間中のスタジオ維持費用(家賃、アシスタント給与など)最高1年負担」ぐらいが適正だと思うのですが……。

 最後に「総合人気投票」の投票行動公開ですが、駒木は以前から予告していた通り、『大江戸電光石火』に投票することにしました。
 完成度では『軍神の惑星』も捨て難く、更には『摩虎羅』にも「ひょっとしたら大化けするのでは……?」と思わせるものがありましたが、ある程度のプレッシャーを受けつつ長期連載するにあたって、最もハズレる可能性が低いと思われる作品を選ぶと、このような結果になりました
 しかし、グランプリ信任投票では、『大江戸電光石火』も含めて、いかなる作品が候補に選出されようと「不信任」で投票するつもりでいます。グランプリは“連載作品として及第点”の作品では格不足であるという判断です。
 

 
 ……というわけで、今回のゼミはこれで終了です。来週もお楽しみに。ではでは。

 


 

2003年度第1回講義
4月2日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(4月第1週分・前半)

 業務縮小後1回目の講義をお送りします。
 しかし、月曜に講義を、火曜日休んで水曜にまた講義…ってパターン、よく考えたら以前と全然変わってないんですが(苦笑)、まぁこれからも講義はちゃんとやりますよ…というアピールになれば良いと思います。

 さて、装いも新たに“分割版”として帰って来ました「現代マンガ時評」ですが、タイトルの通り、今後はこれまでの内容を週2回に分割してお送りする事になります。正直言って、これまでのボリュームだと一晩で講義の準備するのはかなりキツいんですよね。ですので、講義回数を水増しする意味も込めて(苦笑)分割させて頂く事にしました。
 今後は、“前半”では「週刊少年ジャンプ」のレビューとチェックポイントを中心に、そして“後半”では「週刊少年サンデー」のレビューとチェックポイントを中心にお送りする事になります。勿論、その他の雑誌で発表された良作・注目作に関しても、レビューや「一口読書メモ」(今回から開始しました)の中で随時紹介してゆきたいと思っています。

 どうぞ、新しくなった「現代マンガ時評」をこれからも宜しくお願いします。

 ……それでは早速、本題に移りましょう。まずはいつも通り情報系の話題からです。

 今週号(18号)の「週刊少年ジャンプ」誌上において、同誌の月例新人賞・「天下一漫画賞」が、03年度4月期から「ジャンプ十二傑新人漫画賞」へリニューアルされる事が発表されました。

 この「ジャンプ十二傑新人漫画賞」は、各賞の賞金が「天下一」に比べて大幅増額(入選50万円→100万円、準入選30万円→50万円、佳作20万円→30万円、最終候補3万円→5万円)され、その月の最優秀作品に贈られる“十二傑賞”(賞金10万円加算+受賞作掲載確約)も新設されました。
 従来の規定では「佳作以上の作品の掲載確約」でしたので、これは新人に対する大幅な“門戸開放政策”と言えるでしょう。新人育成部門の強化は「ジャンプ」伝統のスタイルですが、ここまで月例賞が重視された事は恐らくこれまでなく、茨木新編集長の新人発掘における並々ならぬ意欲が窺えようと言うものです。

 懸念材料としてはデビューまでのハードルを低くした事で低水準の作品が掲載されてしまうかもしれない事でしょうか。でも、現在の“新人・若手枠”である「赤マルジャンプ」や代原作品のレヴェルを考慮すると、「どうせ駄作を載せるなら、埋もれた若手より可能性のあるド新人」…という気がしないでもないですね(苦笑)。
 しかし、これで困るのは“連載予備軍”の新人・若手さんたち。これまでに比べて掲載枠が狭まるのは目に見えてますし、“十二傑賞”受賞者が随時新たなライバルとして名を連ねるわけですから大変です。でも、編集部サイドはそうやって新人・若手のライバル心を煽るのが狙いなんでしょうね。いやはや、マンガ家さんも大変です。某パクリ作品とか某底抜け脱線スポーツ作品とか読んでると、「こんなので年収億単位か。オイシイ商売だな、オイ」…とか言いたくなるんですけどね。

 
 ──情報系の話題は以上です。それでは「週刊少年ジャンプ」関連のレビューと「チェックポイント」へ。
 今週は、新連載レビュー1本と代原読み切りレビューが1本の計2本のレビューをお送りします。そしてその後に「チェックポイント」です。どうぞ宜しく。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年18号☆

 ◎新連載『闇神コウ 〜暗闇にドッキリ〜』作画:加地君也

 今年の「ジャンプ」は変則的な連載入れ替えをするようで、4月になってようやく今年最初の新連載シリーズが開幕することになりました。
 その第1弾は、加地君也さんの『闇神コウ』昨秋に掲載された読み切り・『暗闇にドッキリ』をプロトタイプとした作品ですね。加地さん6年前の「天下一漫画賞」で佳作を受賞し、デビューを果たした古参の若手作家さん。長い間チャンスに恵まれていませんでしたが、ここに来てワンチャンスを掴んで連載デビューとなりました。
 ただこの作品、読み切り掲載時にはネット界隈では当ゼミも含めて芳しい評判を聞かなかっただけに、連載化に当たって不安も付き纏います。果たして、出来の方はどうだったでしょうか──?

 まずですが、アシスタントさんを確保したためか、読み切り時よりは完成度が上がっています。特にカラーページの色塗りはなかなかの腕前で、さすがにキャリアを感じさせてくれますね。
 ただ、デッサン力やキャラの描き分けなど、マンガにとって肝心な部分が未だ“発展途上”──有り体に言えばプロっぽくない印象を与えるレヴェルに留まっており、他の連載作品と比較すれば見劣りは否めないところです。
 これで個性的な絵柄ならば誤魔化しが利くのですが、残念ながら加地さんの場合はそうではありませんので、結果的に絵で随分と損をしているような気がします。

 次にストーリー、設定面についてですが、まず連載化にあたって舞台を平安時代から現代に修正したのは良かったと思います。作品の“ノリ”からして、時代物長編にするには無理がありましたので。
 しかし、肝心のストーリーテリング能力は、かなりの問題ありと言わざるを得ません。一言で言うと、加地さんは伏線を張るのが極端に下手で、ストーリー展開に唐突感と行き当たりばったり感が見え隠れしてしまうのです。
 例えば、突如敵役に変貌するヒロインの伯父。「実は極悪人だった」というシーン以前に、それをほのめかす伏線が張られていないんですよね(性格が悪いとの伏線はありますが、その後に主人公・コウが『姪思いの人』と発言して逆の伏線を張ってしまっています)。なので肝心のシーンで大変な違和感を感じてしまうのですね。
 また、準主役の骸錬師・芦屋路蔭のキャラ造型が非常に甘いのも気になるところです。恐らく作者の意向としては、このキャラを『アイシールド21』のヒル魔のような、“一見乱暴なだけに見えて実は良いところもある”偽悪人にしたいのでしょうが、現時点では「単なる悪人がストーリー展開に合わせて気紛れに何故か良い事をしている」風にしか見えません要は読者が感情移入出来ないキャラになってしまっているわけで、これは大きなマイナスポイントと言えるでしょう。

 総合すれば、絵は連載作品として平均以下、ストーリー面でも問題アリと、前途多難の船出になってしまいました。果たして短期間で弱点を修正する事が出来るのでしょうか。その辺り、再来週の後追いレビューで再度検討してみたいと思います。
 暫定評価は“連載作品落第”のB−としておきます。


 ◎読み切り『みんなで暮らせばいいじゃない』作画:ゴーギャン

 今週は『プリティフェイス』が締め切りに間に合わず、代原の掲載となりました。

 今回の代原作品・『みんなで暮らせばいいじゃない』の作者・ゴーギャンさん2人組の合作ペンネームで、第52回(2000年上期)赤塚賞の佳作受賞者。その受賞作を含めて2000年に2回代原による本誌掲載を果たしています。今回はそれ以来、約2年半ぶりの復帰作ということになりますね(代原ですが)。
 ちなみに、この2000年上期に手塚賞・赤塚賞を受賞した人たちは、尾玉なみえさん、小林ゆきさん、クボヒデキさんという、打ち切り作家か埋もれた代原作家ばかりという非常にアレなラインナップ。大丈夫でしょうか。

 ……まぁどうでもいい話はさておき、作品の内容に話題を移しましょう。

 まずですが、パッと見には小奇麗に見える絵柄ではないかと思います。ギャグ作家としてなら許容範囲内と言えるかも知れません。
 ただ、作画担当の方がイラスト畑からの出身なのでしょうか、主人公やライコスといった、いかにも一枚イラストに出て来そうなキャラクターの描写は比較的上手い一方で、モンスターやオバサンのような、いかにもギャグ作品的なキャラの描写が明らかにお粗末な仕上がりになっているのが気になります
 また、1コマごとの描き込みがゴチャゴチャしている上に、微妙にキャラと背景の寸法がズレているのも問題です。そういう点が読み難さに繋がり、更にそれがギャグの切れ味を鈍らせてしまう結果になってしまいました。

 ギャグの方も問題アリと言わざるを得ません1つ1つのネタに意外性が足りませんし、ボケとツッコミの間が異様にせっかちで、読者にしてみれば笑うに笑えないのです。何だか、売れない若手グループが緊張の余りネタを上滑りさせながらコントをやっているみたいで、ちょっと読んでいて辛かったです。
 少ないページになるべく沢山のギャグを放り込もうとする姿勢は評価できるのですが、無理に底の浅い大量のギャグを詰め込んでもそれは逆効果というものです。

 評価はC寄りB−としておきましょう。新人・若手ギャグ作家の人材不足が深刻な現在の「ジャンプ」、望まれているのはゴーギャンさんのような若手作家さんが“大化け”する事であるはずなのですが……。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感というか雑談】  

 いーなぁ、ワイルドガンマンズのハーフタイムショー(笑)。
 まぁ高校の試合はともかくとして、大学以上の試合ではハーフタイムショーも試合の重要な要素の1つですからね。アメフトの選手と共に鍛錬を積んで来たチアリーダーたちの晴れ舞台なんですよ。
 ハーフタイムショーなんて、TV中継だとまずカットになっちゃう部分なんで、もし良かったら皆さんも生観戦される事をお薦めします。野球をショーアップしたみたいな雰囲気でとても楽しめますよ。

 ◎『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 喘息持ちで、たびたび原稿の遅れる鈴木さん、巻末コメントによると今回も未完成原稿を載せる羽目になってしまったとか。でも、『HUNTER×HUNTER』で慣らされているせいか、全然違和感ないんですけどね。あ、いや、全く躍動感の無いアクションシーンにはいつも違和感感じまくってますが(苦笑)。

 ◎『ピューと吹く! ジャガー』作画:うすた京介【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 今やってるギター大会シリーズ、奥が深いなぁ(笑)。60〜70年代の熱血マンガの可笑しい部分だけを抽出して、その上で21世紀で通用するギャグマンガに仕上げてますからねぇ。特に端役キャラの台詞がいちいちレトロな雰囲気で笑えて仕方ないです。


 ……「ジャンプ」関連の講義は以上です。いつもならここで終わりになるのですが、ここで今回から始まる新コーナーをお送りします。タイトルは「駒木博士の一口読書メモ」。要は色々な雑誌の「チェックポイント」と考えて頂ければ結構です。

駒木博士の読書メモ(4月第1週前半)◇

 ◎『エンカウンター 〜遭遇〜』作:小林ユウ/画:木之花さくや連載中断前の評価B−/雑感】

 このコーナーを新設するにあたって、やはりこの作品を真っ先に採り上げないわけにはいきませんね(笑)。「世界漫画愛読者大賞」グランプリと、当講座選定「ラズベリーコミック(年間最悪マンガ)賞」の二冠(苦笑)に輝いた『エンカウンター』、ついに半年の休載を経て再登場です。
 今回からクレジットに追加された原作者・小林ユウさんとは、元ゲーム雑誌編集者でライターの渡辺浩弐さんの別ペンネームとのこと。これは渡辺さんの著書『アンドロメディア』の登場人物から採ったそうで、その辺りの自己満足的な小細工は相変わらず……いやいや、止めときましょう(笑)。

 で、問題の内容ですが、原作者を入れ替えた甲斐があって、明らかにストーリーの体を成していなかった休載前よりはマシになっていますね。
 ただ、身分証1つで丸め込める警備員を気絶させた上に反撃を食らってピンチに陥るといったマッチポンプ的展開や、戦争相手国を呪いでやっつけるために何故か陸上選手に目をつけるという、「ショッカーが世界征服のために幼稚園送迎バスを襲撃」的なストーリーには苦笑を浮かべざるを得ませんでしたが。
 まぁ、問題外から“問題内”には潜り込めた感はありますので、今しばらくチェックを続けていきたいと思います。


 ……というわけで、今日の講義は全て終わりです。こんな感じで週2回ゼミをやっていこうと思いますので、どうか何卒。
 今週の後半分は金曜か土曜あたりにお届けする予定です。内容は「サンデー」のチェックポイントと「世界漫画愛読者大賞」の総括になると思います。それでは、また。


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