「社会学講座」アーカイブ
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講義一覧
8/29(第30回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第4週分)
8/23(第29回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第3週分) 8/17(第28回) 人文地理「駒木博士の05年春旅行ダイジェスト」(1) 8/11(第27回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第2週分) 8/9(第26回) 人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(11・最終回) 8/6(第25回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第6週/8月第1週分) 8/3(第24回) 人文地理「駒木博士の東京旅行記04’冬 コミケ67サークル参加挑戦の旅」(10) |
2005年度第30回講義 |
いつにも増して公私共にバタバタしておりまして、またしてもゼミの実施が1週間遅れ……。元々そんなのありませんが面目ありません。 今回は講義実施日基準で先週分、つまり8/22発売の「ジャンプ」関連のゼミです。「サンデー」関連は、読み切りも新連載も連載回数キリ番も無いので、今週もお休みですね。若手作家さんの読み切りが載ってもアレなケースが多い「サンデー」なんで、それはそれで平和だという気もするんですが、ここまで凪の状態が続くとやっぱり寂しいもんですね。 ──では、今週分のゼミに参りましょうか。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ※もうここで情報を扱った“次号”は既に発売されているんですが、備忘録代わりに掲載しておきます。 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では、次号(39号)に「第2回金未来杯」エントリー作として、『バカ
in the CITY!!』(作画:大石浩二)が掲載されます。 ◎「週刊少年サンデー」では、次号(40号)より『クロスゲーム』(作画:あだち充)が第2部連載開始(再開)となります。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年38号☆ ◎読み切り(第2回『金未来杯』エントリー作品)『スマッシングショーネン』(作画:大竹利明) ●作者略歴 ●ストーリー・設定についての所見 ただ、ストーリーの内容に関しては、主人公の特殊設定に固執し過ぎて、作品全体の軸となるテーマ性がボヤけてしまったかな…という感じです。スポーツを描いたわけでも、主人公の求めた“青春”を描いたわけでもなく、「鳥がメチャクチャやって来る頭」を描いた話になってしまったような気がするんですよね。主客が転倒していると言えば良いのでしょうか。 ●現時点の評価
──というわけで、短いですが8月4週分のゼミをお送りしました。多分、何年か後にこの週のアーカイブを見たら「ああ、この週の『ジャンプ』と『サンデー』は平和だったんだなぁ」と思う事でしょう(笑)。 なお、8月5週/9月1週分のゼミは週内実施を最低限の目標に準備作業を進めて行きます。どうぞ今しばらくをお待ちを。 |
2005年度第29回講義 |
年に3度の「赤マル」レビューのお時間がやって参りました。大変ですけど、最後まで頑張ります。 ……さて、戯言はそれくらいにして、レビューへと参りましょう。今回も現役連載作品の番外編の類はレビューから除外します。また、完結が4ヶ月順延した『武装錬金』は、作品の性格上“チェックポイント”扱いで感想を述べるに留めます。 ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ◆「赤マルジャンプ」05年夏号レビュー◆ ◎『武装錬金ファイナル』(作画:和月伸宏) “ファイナル”にも関わらず「冬号へ続く」という、大人の事情が機能した痕跡丸出しの展開となりました(笑)。ファイナルなのに終わらないのは、「ファイナルファンタジー」とアントニオ猪木・ファイナルカウントダウンぐらいなものだと思っておりましたが、まさかこんな所から……。 また、こうしてページ数が大幅に増えた事によって、この完結編の持つ性格も大きく変わることになりました。即ち、“打ち切り作品の敗戦処理”から“長編連載作品のエピローグ”への大転換です。 さて、そんなヤヤコシい話はさておき、今回の「ファイナル」の内容は実に素晴らしいモノであったと思います。 幸か不幸か、全ての面において完結編に突入してからピークを迎えてしまった感がある『武装錬金』ですが、ここまで来たら、せめて最高のエンディングを我々に見せて貰いたいですね。主人公・カズキが絶望的な状況で“冬号に続く”となった今回の『ファイナル』ですが、果たしてハッピーエンド至上主義者の和月さんが、どのようにしてケリをつけるのか。最後の最後まで、熱く注目したいと思います。 ◎読み切り『妖怪学校オルフェノ・ライフ』(作画:夕樹和史) ●作者略歴 ●絵についての所見 ただ、逆にストーリー面では少々「どうせ子供向けだから」という部分に甘えてしまったように感じました。心象描写や行動の動機付けといった作品の“奥行き”を広げる努力を怠り、予定調和に偏り過ぎたのではないでしょうか。 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 あと、「このマンガは専門的・本格的なボクシング物です」というのをアピールするためかどうか知りませんが、一般的には殆ど知名度の無い外国人選手の名前(だけ)を連発するのは、ボクシングに興味の無い読者を敬遠させるだけなので避けるべきでしょう。せめてタイソン級の知名度を持った伝説の強豪、それかむしろ、フィクションの強みで架空の日本人世界王者をでっち上げた方が説得力も増したのではないでしょうか。 ●今回の評価 ◎読み切り『サムライスラッシュ』(作画:加持君也) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ストーリー&設定についての所見 前々から思っていた事ですが、加持さんは“王道”──過去作の優れた部分を踏襲する──と“陳腐”──過去に使い古された要素を使い回す──の区別がついていないように思えてなりません。どうせ真似するなら、良い所だけ真似て欲しいものです。 ●今回の評価 ◎読み切り『キャッチクラブ』(作画:宮本和也) ●作者略歴 ●絵についての所見 話の組み立て的には、一応は起承転結が完成しており、伏線も上手く使えていて、評価出来る点も有るんですが……。今回は先に述べた通り、それを評価しようの無い別の大きな問題が重く圧し掛かっている感がありますね。 ●今回の評価
●作者略歴 ●絵についての所見 これで小ネタをもう少し増やしてページ辺りのネタ密度を濃くし、登場人物にもう少しキツめの個性が持たせられるようになれば、週刊本誌で活躍するチャンスも生まれて来るでしょう。 ●今回の評価 ◎読み切り『闘魂パンダーランド 〜あんたパンダの何なのさ〜』(作画:ポンセ前田) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『オウルサムス』(作画:安藤英) ●作者略歴 ●絵についての所見 作品全体を俯瞰すると「人間たちが、ただ何となく命がけで怪物を倒すお話」とまとめる他無く、残念ながら完全な失敗作と断ぜざるを得ません。 ●今回の評価 ◎読み切り『HAND’S』(作画:板倉雄一) ●作者略歴 ●絵についての所見 ただし、いくらコメディ要素で誤魔化しているとはいえ、やや話が出来過ぎで無理があったり、余りにも物騒で現実感の無いヤクザたちの描写など、ツッコミ所というか、読み手が白けてしまう可能性のある要素も少なからずありました。これはやはり若干の減点材料となるでしょう。 しかしそれが作品全体の完成度・クオリティを大きく押し下げるかというと、そこまで厳しく見る必要も無いのではないか…というのが駒木個人の判断です。 ●今回の評価 ◎読み切り『なぞなぞの魔法!』(作画:沖田修治) ●作者略歴 ●絵についての所見 しかし、非常に残念だったのが、この良く出来ていたはずのストーリーが、クライマックスから急失速してしまった事ですね。 ●今回の評価 ◎読み切り『トラ!! the goal-d Gravi-ruler』(作画:石岡ショウエイ) ●作者略歴 ●絵についての所見 ●今回の評価 ◎読み切り『Strength』(作画:彩崎廉) (受講生の皆さんへ:この作品は評価Cとなりました。結果的に読み手の感情を損ねる論調のレビューになっている恐れがあります。この作品のレビューをご覧になるかどうかは皆さんでご判断下さい。) ●作者略歴 ●絵についての所見 ただ、この辺は今後アシスタント修行や色々な経験を積む事によって改善されて来ると思います。今回は低い評価を付ける他無いですが、次回作以降の成長に期待します。 ──と、いろいろ述べてきましたが、一言にまとめると、文字通り「お話になってない」という状態です。いくら「十二傑賞」受賞作とは言え、これは商業誌に載せる作品ではないと、個人的には思っています。 ●今回の評価 ◎読み切り『JIKANGAE』(作画:普津澤画乃新) ●作者略歴 ●絵についての所見 ひょっとすると、かつての藤崎竜さんのように、必要以上に絵柄で読者層を狭める可能性もありますが、純粋な力量的には週刊本誌の連載陣に混じっても遜色ないレヴェル。さすが、15歳から5年間弛まぬ努力で腕を磨いて来ただけの事はありますね。これだけの実力でまだ20歳、将来に期待が持てそうです。 ●今回の評価 ◎読み切り『weisse Maria』(作画:René Scheibe) ●作者略歴 ●絵についての所見(※8/24、27に、事実誤認によりそれぞれ一部修正しました。お詫びいたします) では、具体的に画力を評価するにあたってのポイントを羅列しておきます。 ……まぁともかくも今回は、オリンピックで言うところの「参加する事に意義がある」的な“記念出場”という解釈をするのが妥当ではないでしょうか。 ●今回の評価 ※総評…『武装錬金』が良過ぎて、それと否応なしに比べられてしまう新人さんは可哀想でしたね(笑)。それでもA−評価が1作品、そして近い将来の飛躍が期待できるB+評価作品がいくつかあり、全体的なレヴェルとしてはマズマズだったのではないでしょうか。 ──ということで、大変遅くなりましたが、以上「赤マル」夏号レビューでした。なお、今週分のゼミも遅れる可能性があります。詳しくは“観察レポート”をご覧下さい。 |
2005年度第28回講義 |
先日の東京旅行でお会いしたり、「駒木研究室」スペースに来訪下さった皆さん、どうも有難うございました。席を外していた早い時間帯にいらっしゃった方、ご挨拶出来ずですいませんでした。せめて差し入れのお礼ぐらいは申し上げたかったのですが……。 ──さて、今日からお送りするのは、その数日前に終わった最新の旅行……ではなく、今年3月のコミケットスペシャルに合わせて敢行した春の弾丸旅行のレポートです(苦笑)。いや本当にスイマセン。 とりあえず今日は“殴り書いていたモノ”の範囲まで。次回以降は書き下ろしですが、全2回か3回で終われるように努力します。なお、例によって文中においては文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。 3月18日午後8時過ぎ、いつも通りJR三ノ宮駅で「青春18きっぷ」の入鋏を受けて、2泊5日の旅をスタートさせる。米原で乗り換えて、とりあえずはMLながら出発の地・大垣駅まで。 往路では、万が一に備えて余裕を持ったタイムスケジュールを採用したため、大垣駅で小一時間の待ち合わせ。ただ、MLながら愛好者ならご存知だろうが、この大垣駅周辺は暇潰しスポットが極めて少ない。22時以降になると、それこそコンビニと本屋1軒ずつくらいしか開いていないので大変往生する。 2度目の訪問とあって、築地市場へ向かう足取りも極めてスムーズ。慣れた足取りで、業者さんが慌しく出入りする市場正門をくぐって市場の中へ。 さて、松戸競輪場の知られざる名物といえば、「山口国男ガイダンスコーナー」であろう。かつて弟・健治選手と共に関東、そして全国にもその名を轟かせた名選手が、一般の競輪客に懇切丁寧にアドバイスをしてくれるという、他の業界では考えられないほど気安過ぎる、非常に贅沢な企画である。中央競馬で言えば、PRコーナーかスタンド食堂あたりに全身ユニクロで固めた柴田政人が客と一緒にモニターテレビ見ながら予想と解説してるようなものだ。 翌日(3/20)は風呂の営業時間(〜9:00)に合わせて8時過ぎ起床。以前の旅行記でも書いたが、旅行中で何が幸せかと言って、この朝風呂が一番の至福タイムである。今回は連休中だが、平日の朝なんかだったりするともっと幸せを感じてしまう。 池袋ビッグカメラの程近く、とあるビルの地下1階に「談話室・滝沢」はあった。今となっては過去形というのが物悲しい。しかしこの、地上からは全く店の様子が窺い知れないという店の構造が、余計に「滝沢」を世間から隔絶させていたのだな、と思う。まぁ都会の喧騒から隔絶した環境を作り出すためには、そこまでしなければならなかったのだろうけれども。 |
2005年度第27回講義 |
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11日夜から恒例の東京旅行へ出発する関係上、ゼミを早々に水曜日から準備を始めて、この木曜午後に実施する事になりました。幸いにも「サンデー」にレビューとチェックポイント対象作が無かったので、何とかなりそうです。 しかし、東京から帰って来ると、今度は「赤マル」レビューですか……。しんどいなぁ(ぼそ)。 まぁその辺は実際に本見りゃ判るってことで、とりあえずお盆直前のゼミをお送りしましょう。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では、次号(38号)に「第2回金未来杯」エントリー作として、『スマッシングショーネン!』(作画:大竹利明)が掲載されます。 ★新人賞の結果に関する情報
受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい) ◎十二傑賞の松本直也さん…05年1月期「十二傑」で最終候補。 ……今回の「十二傑」は、十二傑賞受賞者の松本さん以外は、これが初めての入賞というフレッシュな顔触れでした。編集部の評価や講評を見ると、やや低水準かなという気もしますが、ここから荒削りの才能を編集者の力で細かく研磨していくという事なんでしょうね。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年36・37合併号☆ ◎新連載第3回『太臓もて王サーガ』(作画:大亜門) ●絵についての所見 ●ギャグについての所見 問題点を挙げるとすれば、ページ跨ぎの大ゴマで決める一発ギャグが、結構な確率でインパクト不足気味に感じられる事でしょうか。前々から薄々感じていた傾向ではありますが、ちょっと顕著になって来たかな…という感じです。 あと、今回からやたらに増えたパロディネタも賛否が分かれるでしょうね。この辺は読み手によって評価が完全に分かれてしまうでしょうから、非常に評価が難しいところです。 ●今回の評価 ◎読み切り(第2回『金未来杯』エントリー作品)『カメとウサギとストライク』(作画:天野洋一) ●作者略歴 ●絵についての所見 少し気になる点としては、基本的にリアルタッチな絵柄であるのに、人物の顔の造型で目だけが不自然に大きいという事でしょうか。読み手によっては違和感を感じるかも知れません。そして些細な点ですが、静物の細部の描き込みを、光の効果を効かせまくって誤魔化しているのも、ちょっと残念でした。煮込みうどんが透明感有り過ぎます(笑)。 ●ストーリー&設定についての所見 そういう意味で、この作品の付加価値に当たる部分はどうかというと、残念ながら「成功」と自信を持って推せる水準には達していないように思われます。
──日程の問題もありますし、今日はここまでとしておきます。それでは皆さん、有明でお会いしましょう。 |
2005年度第26回講義 |
◎前回までのレジュメはこちらから→ 第1回/第2回/第3回/第4回/第5回/特別番外編/第6回/第7回/第8回/第9回/第10回 長期中断を挟んで半年以上も引っ張ってしまったこの企画も、漸く最終回を迎える事となりました。本当ならもう少し時間を頂いて思う存分語りたいんですが、時期的な事情もありますし、やや駆け足ではありますが今日お話できる分までで一応の幕とさせて頂きます。 それでは、早速レポート本文へ参りましょう。12月30日の午前11時、東京ビッグサイト東館「駒木研究室」スペース内からスタートです。なお、文中においては文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。 11時を回ると、「駒木研究室」のある評論・情報エリアにも人通りが多くなって来た。とりあえず大手サークルでの買い物を終えた人が増えたのだろう。 来訪者の多くは、やはり当講座の受講生さんが多くを占めるのだが、中には“一見さん”が足を止めて下さる事もあった。ただ、これは間違いなく流麗な表紙絵の力である。 そう言えば、受講生さんたちにも色々な方がおられた。本を手に取るなり即座に「1部下さい」とおっしゃる方。少しパラパラとページをめくって楽しそうに中身を確かめた後、本を所望される方。そして、かなり念入りに内容をチェックされ、こちらが「おや、一見さんかな?」と思った所で「いつもウェブサイト見てます」とおっしゃる方(笑)。 基本的にこの日は終日スペースに張り付いていたが、昼過ぎに小一時間だけ抜け出して自分の買い物をさせてもらった。藤井さんご夫妻が駐在しているスペースへご挨拶とか、島本和彦さんの新刊やここで買い逃すと入手困難な評論系の同人誌を買ったりとか……あと、ちょっとだけ、あんまり人前で話すべきでもない事とか(笑)、最低限の時間で最大限の用事をこなす。 スペースに復帰してからも、ほとんど衰えないペースの来訪者さんとの応対が続く。余部は贈答用にキープしておく事にしていたので、200部で“完売”という事になるのだが、14時を過ぎた辺りで既にそれがハッキリと視界に入って来たような感じ。まさかまさかの慶事である。 15時を過ぎると、さすがに人の数はガクンと減り、多くのサークルスペースでは店仕舞いを始めていた。こうなると気になるのが宅配便の申し込みだ。駒木は、あと数冊で200部完売すると言う状況のスペースを離れ、申込書とダンボール箱を入手するため宅配便の受付所へ。 「完売しました」 ──こうして、肝心要の瞬間に立ち会えないという、超絶な間抜けっぷりを披露して、駒木のコミケサークル参加は終わったのだった。何故あと数部売れるのが待てんか自分。 閉会宣言を聞く頃には撤収を完了し、宅配便のダンボールに、贈答用の余部や手荷物にするには厄介なアイテムを詰めて自宅へ発送。ビッグサイト内でするべき全ての作業を終え、駒木は最後まで手伝ってくれたMさんと共に会場を後にした。人の殆どいなくなった東館は何とも言えない心細さを覚える程に広かった。 さて、22時過ぎに宴を打ち上げた後は特筆すべき事も無し。本屋で適当に時間を潰してから品川駅へ移動し、ホームに入線したばかりの「ムーンライトながら」の臨時便に乗車した。 |
2005年度第25回講義 |
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日程も詰まり気味ですので、早速ゼミを始めます。来週は木曜日から東京へ出発しますので、カリキュラムは多少流動的です。「サンデー」にレビュー対象作が無いので、水曜実施も可能だとは思いますが……。 「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」関連の公式アナウンス情報 ★新連載&読み切りに関する情報 ◎「週刊少年ジャンプ」では、次号(36・37合併号)から若手作家による読み切り競作企画・「第2回・週刊少年ジャンプ金未来杯(ゴールドフューチャーカップ)」が開催されます。 さて、ではここでエントリー作家・作品と、掲載スケジュールを紹介しておきましょう。
今年のエントリーは昨年より1つ増えて6作品。ただ、個人的な印象としては、昨年度エントリー5作品の作者の皆さん(福島鉄平、坂本裕次郎、田坂亮、西義之、中島諭宇樹、以下エントリー順敬称略)に比べると、やや小粒な印象もありますね。期待半分、不安半分…といったところでしょうか。 ※今週のレビュー&チェックポイント ※7段階評価の一覧表はこちらから。よくあるご質問とレビューにあたってのスタンスは04年1月14日付講義冒頭をご覧下さい。 ☆「週刊少年ジャンプ」2005年35号☆ ◎新連載第3回『みえるひと』(作画:岩代俊明) ●絵についての所見(第1回時点からの推移) ●ストーリー&設定についての所見(第1回時点からの推移) 全体としては「悪くない」作品ではあるのですが、「悪くない」程度では生き残れないのが現在の「ジャンプ」。打ち切りが近そうな作品が1つ2つある今の内に、テコ入れと読み手の望む方向性への舵取りをしていってもらいたいものです。 ●今回の評価 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 今週の「チェックポイント」は、まず『切法師』の連載10回評価見直しから。 ◎『切法師』(作画:中島諭宇樹) 掲載順も徐々に低迷しつつあるこの作品ですが、当ゼミでの評価も実質1.5ランクのダウンとさせてもらいます。 果たして20回の評価見直しがあるのかどうか微妙な情勢ですが、何とかテコ入れが間に合う事を祈りたいですね。実力のある作家さんだけに、短期打ち切りは見たくないものです。 ──そして今週号では『いちご100%』が完結を迎えました。当講座開講間もない頃に連載が始まった作品ですが、いつの間にか長期連載の部類に入る作品になっていましたね。そりゃ当講座スタッフもみんな年とるわけですね(苦笑)。 (※ところで、実はこの最終回総括は第2稿です。当初は普通のストーリー系作品と同様のスタンスからクソ真面目に総括評価をしたのですが、「そうして見る作品ではないですよ」という至極ごもっともなご指摘を受け、修正をしております) さて、この作品は連載当初は正統派の青春ラブストーリーとして出発し、新連載時の評価もそういうスタンスで出しました。しかし、最終回を迎えた時点で作品全体を俯瞰すると、確信犯的にシナリオ・設定の内容充実を犠牲にし、その分商業的成績を意識した、いわゆる「名作崩れの人気作」的作品と考えた方がしっくり来るようです。複数の女の子に対して一生心の傷になりそうな事をした真中が最後までモテモテ…という御都合主義的なエンディングも、そういう解釈をすれば納得も出来ますし。 ☆「週刊少年サンデー」2005年36号☆ ◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 今週のチェックポイントは、『見上げてごらん』の連載20回評価見直しをお送りします。 ◎『見上げてごらん』(作画:草場道輝) 連載20回の区切りですが、今回も評価は据え置きとします。現在、部内での5対5対抗戦が進行中ですが、試合シーンの内容が、どうにも薄味かな…という感じですね。高度に専門的な技術論や内容の深い駆け引きではなく、根性論や「正義は勝つ」というような根拠薄弱な精神面の部分ばかりをクローズアップしてしまったため、ストーリーや作品全体の説得力に悪い影響を与えているように思えます。 この作品、とりあえずあと10回様子を見て、それで内容が変わらないようでしたら、それで評価確定としたいと思います。
──といったところで、今週分のゼミはこれまで。また来週お会いしましょう。では。 |
2005年度第24回講義 |
◎前回までのレジュメはこちらから→ 第1回/第2回/第3回/第4回/第5回/特別番外編/第6回/第7回/第8回/第9回 冬旅行記も10回目。長ったらしい回想シーンも終わり、いよいよ今日から2〜3回に分けて冬コミ2日目の模様をお送りする事になります。この旅行のハイライトシーン、どうぞじっくりとご覧下さい。 それでは、今回のレポートは12月30日の午前8時ごろ、りんかい線国際展示場駅からスタートです。なお、文中においては文体は常体、人物名は現地で実際にお会いした方以外は原則敬称略とします。 昨日とは一転して晴天に恵まれた、この日の東京。駅前から慌しく歩を進める参加者の足取りも軽そうだ。 そんな絶好のコミケ日和の中、駒木は同行をお願いしたMさんと共に東京ビッグサイトへと向かう。自然と早足になってしまうのは、抑えきれないテンションが足の先まで漏れてしまっているからだろうか。 偽造防止のため、今や日本銀行券真っ青の精巧な印刷が施されているサークルチケットを、入口担当のスタッフさんに手渡し、いよいよ入場。「駒木研究室」のスペースがある東1〜3ホールへ直行する。 「駒木研究室」が配置されていたのは、参加者の間では“島”と呼ばれる、原則縦・机6本分×横・机2本分の大きさで作られた長方形のエリアのど真ん中。マンガ『げんしけん』で、主人公たち現視研メンバーがサークル参加した時に配置された場所と、ほぼ同じ位置関係である。混雑・事故防止のために大手・有力サークルは端へ端へと配置されるコミケにおいて、“島”のど真ん中という事はすなわち……まぁ、これ以上は言うまい(笑)。駒木は実績ゼロのルーキーなのだから、この配置はスタッフさんの準備が正常に機能している証なのだ。 さて、この時点でまだ時刻は9時を回ったかどうかといったところ。少々時間を持て余したかな、とも思ったが、次回の参加申し込み書を買いに行ったり、スタッフさんの巡回と見本誌提出を済ませたりしている内に結構な時間になって来た。 しかし、ここで予期せぬ来訪者が。開会に先立って目当てのサークルを下調べ(開会前の販売は禁止。だから「開場前会場内行列」が発生する)していると思われる方から、何と「駒木研究室」の頒布予定部数の問い合わせを受けたのだ。 やがて会場内のデジタル時計は10時を指し、「ただ今より、コミックマーケット67、2日目を開催いたします」の館内アナウンス。ホール全体から細波のように拍手が沸き起こり、あちこちから指笛の音も聞こえる。と同時に、ホール入口の方からは五臓六腑に染み渡る重低音を響かせて、一般参加者たちが場内に雪崩れ込ん出来た。これぞ年2回、夏と冬に東京は有明で自然発生的に起こるオタク民族の大移動である。かつてアンドレ・ザ・ジャイアントの入場を「一人民族大移動」と表現した古館伊知郎がこの様子を実況したら、その口から果たしてどのようなフレーズが発せられるのであろうか。 そんな中、駒木は相変わらず呑気に壁際やシャッター前の様子を遠巻きに観ながら、「おぉおぉ、やっぱり凄い人だぁ」…などと、田舎から集団就職で上京して上野駅前に降り立った昭和時代の“金の卵”のような感想を呟いていた。一般参加の時には最前線で戦う一兵卒だったのだが、今回のように立場が変わってしまえばまるっきり他人事である(笑)。 そうやって1〜2分おきに同人誌を所望しに来られる受講生さんの応対をしている内に、気が付けば時刻は早くも11時。販売した部数は30冊で、平均するとちょうど2分に1冊のペースになる。このまま行けば、閉会までに150冊は売れる勘定になる。望外のハイペースだ。 閉会まで、まだあと5時間。これから何回嬉しさと有り難さを噛み締める事が出来るのだろうかと、そんな事を考えながら、31冊目の同人誌を、また両手を添えて手渡したのだった。(次回へ続く) |