「社会学講座」アーカイブ
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講義一覧
7月31日(水) 文化人類学 |
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今日は「2002年度フードファイター・フリーハンデ(以下、FFハンデと略)中間レイト」の2回目、「スプリント・早食いの部」をお送りするのですが、その前に一昨日お届けしました「早飲みの部」(レジュメはこちら)で訂正がありましたので、先にお伝えしておきます。 まず、詳細な記録が不明であった事によりレイティングを控えておりました、青木建志選手の「ペットボトル早飲み」カテゴリのポイントですが、その記録が判明しましたので、レイティング58を追加しています。
このカテゴリ分けは、いわゆる“早食い”と“大食い”との間に引くべき境界線を設定する…という意味合いがあります。 ……と、いうわけで今日は“早食い”系競技を対象にした2つのカテゴリについて、各選手のレイティングとその解説をお届けします。解説文は選手名敬称略、及び文体を常体(だ、である調)に変更します。 「2002年度・FFフリーハンデ・中間レイト」
※主な競技結果※
〜早食いカテゴリ〜
※主な競技結果※
昨年から日本のフードファイト・シーンで急速に進めれられた競技の高速化・記録のインフレ化の流れは、昨年末の時点で記録のインフレ化が一応の限界を迎えた辺りから、今度は競技の高速化のみに絞られてレヴェルの向上が図られるようになった。即ち、競技の早食い化からスプリント化への転換である。 総合レイティング値では小林尊に及ばなかったものの、国内メジャータイトル4連覇の偉業を成し遂げて、最強の王者の名を欲しいままにするに至ったのが白田信幸であった。 さて、“2強”の前に圧倒される形になってしまったが、3番手以下の選手たちも着実にレヴェルアップを果たして奮闘している。 一方、土門健らの登場で話題を呼んだ早飲み系競技とは対照的に、早食い系競技においてはルーキーが大不作であったと言わざるを得ない。 最後に外国勢。「フードバトルクラブ」の外国人招待枠が消滅したため、国内における外国人の活躍は見られなかった。だが、それでもネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権において、中嶋広文・新井和響全盛期の世界記録に相当する好記録をマークしたエリック=ブッカー(記録26本)とオレッグ=ツォルニツキー(記録25本1/2)が現れて、アメリカにおけるフードファイトのレヴェルアップが窺えたのは収穫だった。いずれ、彼らのような実力者の何人かが日本のメジャー大会に逆上陸して来る日も近いであろう。 以上、「早食い・スプリントの部」をお送りしました。次回は大食い系競技のレイティング「早大食い・大食いの部」をお送りします。お楽しみに。(次回へ続く) |
7月30日(火) 教育実習事後指導(教職課程) |
これまでのレジュメはこちらからです。↓
以前から色々な講義でお話しておりますように、駒木は教育実習の時点で、既にキャリア3年のアルバイト塾講師でありました。 そんなわけで、他の実習生にとっては泣きを見るほどの試練である授業実習も、教壇に立って喋ったり板書する事だけに限って言えば、駒木にとってはそれほど大した苦労ではありませんでした。 「えー、細かい事ばかりで恐縮なんですが……」 T先生は恐縮した口調でこのような前置きをすると、次から次へと上級編のダメ出しを連発なさいました。 こうなれば、駒木の目標は「めざせ! ダメ出しゼロ」であります。50分間の授業に耐えうるだけの大量かつ正確な知識を求めて、連日複数の本屋を彷徨い歩くことになりました。 それでも苦労の甲斐あってか、日を追うごとにT先生からのダメ出しは減っていきました。
……結局、駒木がダメ出しゼロを達成したのは一番最後の授業の時でした。今から思えば、これはT先生が駒木にくれた“卒業証書”だったのかも知れません。 さて最後に、世界史の授業に関しては一切の妥協を許さないT先生ならではのエピソードを1つ。 「とりあえず、通史のシリーズ(『世界の歴史』全24巻みたいなヤツ)を3種類読破して下さい。それで知識のバックボーンが出来ますから」 駒木がこのアドバイスを実践するのに丸2年かかりました(何しろ、3シリーズ合わせて70冊ありますので)。そのおかげで採用試験1次通過も果たしたりしたので、アドバイスに従って良かったと思っているのですが、ただ、この話を他の世界史の先生に話すと、その度に引き攣った笑みを浮かべられるんですが、何故? ひょっとして自分は、ガチンコファイトクラブから世界チャンピオンを目指すような事してないか? ……などといった疑問を抱きつつ、次回に続きます。 |
7月29日(月) 文化人類学 |
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今日から週1〜2回ペースの不定期で、「2002年度・フードファイター・フリーハンデ中間レイト」をお送りします。 この企画は、今年の2月にお送りした「2001年度・フードファイター・フリーハンデ」の続編にあたるもので、本来、競走馬の客観的な絶対能力比較に使用される「フリーハンデ」を、フードファイター(早飲み、早食い、大食い選手)の能力比較に応用しようとする試みです。 まず、元々の「フリーハンデ」とは、その能力比較をしたい競走馬たちを、とある条件で全て同時に走らせた場合、ゴール前で全馬が横一線になるにはどうすれば良いのかを想定して各馬に負担重量を設定し(例:芝2400mでのハンデ…馬A:61kg、馬B:59.5kg、馬C:57kg)、その数値の高さで各馬の能力を測定・比較できるようにするものです。 ──というわけで、この企画の内容、及び意義がご理解頂けましたでしょうか? それでは、以下に「フードファイター・フリーハンデ(以下:FFフリーハンデとする)」を編集するにあたっての規定を記しますので、あらかじめよくお読み下さい。
◎数値は本家の「フリーハンデ」に倣って、競走馬の負担重量風のものを使用します。重量の単位は、最近ではポンド換算が主流ですが、ここでは旧来のキロ換算の数値を使用します。ただし、競馬と違って、キロという単位に意味は有りませんので、「〜ポイント」と呼ぶ事にします。数値は0.5ポイント刻みです。 また、選手間のポイント差については、 ◎今回の「FFフリーハンデ・中間レイト」の対象となる競技会は、以下の通りです。 ◎最終的に各選手に与えられるポイントは、「FFフリーハンデ」対象競技会における、ベストパフォーマンスの時の数値を採用します。 ◎ハンデは以下に挙げる7つのカテゴリに分けて設定します。 ◎最終的に各選手へ与えられるポイントは、7つのカテゴリの中で最高値となったポイントを採用します。 ◎他、細かい点については、その都度説明します。
──それでは、今日はこれから「瓶早飲み」と「ペットボトル早飲み」のフリーハンデ及びその解説を掲載します。なお、解説文中では、人物名を敬称略、文体を常体に変更してお送りします。
「2002年度・FFフリーハンデ・中間レイト」
※主な競技結果※
〜ペットボトル早飲みカテゴリ〜
※主な競技結果※
早飲み系競技が初めてメジャー級のフードファイト競技会に採用されたのは、昨年末の「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」だった。しかし、その時の早飲み系競技の位置付けは、まだ早食い系・大食い系競技の補助的な役割に過ぎず、早飲みだけに長けた選手が活躍できる余地は与えられていなかった。 だが、事態はわずか4ヶ月で急転を迎えた。 もともと早飲み系競技は、早食い系・大食い系競技とは求められている能力が全く違う。それ故、これまでのレギュレーションでは台頭しようにも出来なかった早飲み系の選手たちが、この「フードバトルクラブ3rd」で多数“発掘”される事になったのである。
さて、そんな時代の要請によってフードファイト界に現れ出でた多くの早飲み系スペシャリストの中で、早くもフードファイトの歴史にその名を残す大偉業を達成する者が現れた。土門健である。 そんな土門健のセンセーショナルなデビューに、やや影が薄くなってしまったが、早食い系・大食い系の選手たちの中にも、いち早く早飲み競技に適応し、好パフォーマンスを見せつける選手も少なからずいた。 人間と言うものは、ひょっとした弾みで隠されていた才能が表に出てくる事があるものだが、「フードバトルクラブ3rd」における加藤昌浩の“早飲み開眼”は、まさにそれにあたるだろう。 さて、ここで昨年度の「FFフリーハンデ」の「早飲みカテゴリ」で高いレイティングを獲得した選手たちの動向を俯瞰しておこう。 この他の若手・ベテラン選手たちの中では、見事に苦手の早飲みを克服した射手矢侑大や、以前から早飲みが得意であると公言していた駿河豊起が目立ったところだろうか。予選では高橋信也や新井和響もある程度の記録を残して気を吐いたが、トップクラスとは水を開けられてしまう格好になった。 話題をルーキーたちに戻そう。土門健ばかりが目立ってしまった感のある早飲み系スペシャリストのルーキーたちだが、それでも特筆すべき活躍を残した選手たちは他にもたくさんいた。 ……と、いうわけで今回は以上です。また次回の「スプリント・早食いの部」をお楽しみに。(次回へ続く) |
7月28日(日) 社会経済学概論 |
ここ数日、特編カリキュラムにより中断していたシリーズを次々と再開させているわけですが、この社会経済学概論もまた、2週間ぶりのシリーズ再開となります。 さて今回は、この講義の本筋から飛び出して、“オークション(セリ市)による投資にまつわる悲喜こもごも”を述べる予定だったのですが、採り上げる予定の題材について、講義に向けて下調べをしていたところ、その題材において行われる投資が、原則的にはオークション形式で行われる投資ではない事が判明してしまいました。我ながら物凄い杜撰さだったと思います。申し訳有りません。 ……で、どうしようかと(笑)。 いや、本来はどうしようもクソもなくてお蔵入りなのですが、その題材、調べれば調べるほど当社会学講座の講義スタイルに合っていまして、お蔵入りさせるのは非常に勿体無いんです。それに、「投資による悲喜こもごも」という部分だけは、確かに前2回分の講義と関連性があるんですね。 ──と、いうわけで話を始めます。 先日、駒木は映画館で『少林サッカー』を観て来ましたが、この映画はご存知の方も多いように香港映画、つまり海外から日本に輸入された外国映画です。 さてさて。受講生の皆さんは、よく外国映画の紹介で「○○配給」とか、「配給会社:○○」…などといった言葉が書かれているのを目にしませんか? そんな配給会社の仕事はまず、外国映画を外国の製作者から日本での上映権やビデオ・DVDの販売権などの諸権利を買い付けるところから始まります。つまり、日本国内に限定はされていますが事実上の映画の買い取りですね。 そして、買い付け契約が成立次第、映画のフィルム(業界用語で『プリント』と言う)は海を渡って輸入されます。 映倫…つまり、映画の内容を倫理的な観点からチェックするこの団体は、実は業界の自主規制団体であり、法的な拘束力はありません。(外国映画の場合、法律上のチェックは既に税関でクリアしていますし) ……と、ここまで紆余曲折を経て、ようやく劇場公開の準備が整った事になりますが、ここでようやく配給会社の本業である“配給”の仕事になります。 と、こうして上映する映画館も決まったところで、次は宣伝活動です。広報の仕事も配給会社が受け持つんですね。本当に色々な仕事をやらされるものです。便所用の柄付きタワシを作ってる会社が、便器とウォシュレットもまとめて作って出荷しているようなもので、本当に頭が下がります。 そうやって万事を尽くしてついに劇場公開の時がやって来ます。やっと投資したお金を回収する時なのですが、やはりというか、ここから更に厳しい現実が待っています。 劇場公開が終わると、映画館と入場料金の分配をして、今度はビデオやDVDの販売をすることになります。中にはビデオなどの販売権(二次使用権)を売りに出して手堅く資金を回収する場合もあるそうですが、どちらにしろ、ヒットした映画では大儲けできて、大コケした映画では傷口に塩を刷り込まれるケースが多いようです。
……とまぁ、これが外国映画に資金が投資されてから、それを回収するまでのお話だったわけですが、いかがだったでしょうか? ところで、この外国映画の配給会社の中で、歴史に残る大コケと大ヒットを立て続けにやってのけたという、非常に珍しい会社があります。 |
7月27日(土) 競馬学特別講義 |
駒木:「さて、今週から毎週土曜日の競馬学講義を復活させる事にするよ。……と、いうわけで、珠美ちゃんも今週から競馬学講義のアシスタントに復帰ということになるね。」 基礎編1:自分の馬券収支を必ずつけよう! 駒木:「これは珠美ちゃんはもうクリアしてるんだけどね」 基礎編2・馬券戦略の基礎は頭に入っているか再確認しよう! 駒木:「これも珠美ちゃんはクリアしてるのかな?」 基礎編3:競馬新聞はくまなく読もう! 駒木:「これは、出来ているようで出来ていない人が多いんじゃないかな。僕も昔はそうだったんだけど、予想印見て、ここ何走かの着順をザッと見て、調教欄をチラっと見て、コメント一通り読んだらハイおしまい…こんな人、結構多いんじゃないかと思う」 基礎編4:自信の無いレースはスルーする勇気を持とう! 駒木:「さて、基礎編もいよいよ最後だね。……あれ? 珠美ちゃん、どうしたの頭抱えて?(苦笑)」 |
7月25日(木) 演習(ゼミ) |
さて、今週もゼミの時間となりました。 実は今週、採用試験明けという事で、色々な企画やら『エンカウンター』の再レビューやらも考えていたんですが、この忙しさの前に全てご破算になってしまいました(苦笑)。 まぁ、とりあえず今週はレビュー3本ということで、どうぞよろしく。ではまず、情報系の話題を軽く。 先週にも少し触れましたが、「週刊少年ジャンプ」の打ち切り2作目は、やはり『NUMBER10』(作画:キユ)でした。 ……今週の情報系ネタはこれくらいでしょうか。それでは時間も切羽詰ってますから、早速レビューへと移りましょう。 今週のレビュー対象作は「週刊少年ジャンプ」からの2本と、「週刊少年サンデー」からの1本です。今週から前・後編で掲載の『まじっく快斗』は、来週の後編掲載を待って2回分まとめてのレビューを行います。 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年34号☆ ◎新連載『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介) 「ストーリーキング」ネーム部門大賞受賞→3月に前・後編で本誌掲載…という経路を辿って週刊連載となりました、若手作家さん2人による大型新連載のスタートです。 さて、お2人のプロフィールや読み切り版『アイシールド21』のレビューなどは、以下のリンクを辿ってご覧下さい。 ◆村田雄介さんのプロフィールと、村田さんの読み切り『怪盗COLT』のレビュー……2月20日付レジュメ ……長い間サボらずに仕事してると、いざという時に役立って、我ながらイイ感じです(笑)。 では、レビューに移りましょう。 まず絵柄に関しては何も注文つけなくてもいいと思います。むしろ、アシスタントを動員しているためか、以前よりもクオリティが上がっています。 そして肝心のストーリーですが……。 ただ、ここに来て新たな問題点も浮上しています。 評価は、とりあえずB+としましょう。これからしばらく後には、いくつかの長期連載が終わりそうな気配ですので、あまり打ち切りの心配はしなくて済みそうです。それを考えると、キユさんってのは本当に間が悪い人ですねぇ……。 ◎読み切り『もて塾恋愛相談』(作画:大亜門) 今週は『シャーマンキング』の原稿が落ちて休載ということで、代原が掲載されました。 さて、それではレビューへ。 まずは絵柄からですが、新人のギャグ作家さんにしてはなかなか作画が手慣れていますね。ギャグ作家としてなら十分プロで活動していける力は備えていると思います。大亜門さんの年齢が24歳という事を考えると、アマチュアなどで活動の経験があるのかもしれませんね。 そしてギャグ全般の評価ですが、まず驚かされるのは、構図とテンポの巧みさですね。コマ割りやセリフ回しにおけるギャグマンガの基本形は完璧にマスターできています。ちゃんと見せ場では表現をオーバーにするなど、その辺りのセンスも非凡なものを持っていますね。あまりにも上手くまとめているので、やや古臭く感じてしまうほどです。新人なのに既にいぶし銀というのは非常に珍しいと思われます。 評価は新人さんの習作としては高評価のBを進呈。比べちゃアレですが、『シュールマン』のクボヒデキ氏よりはよっぽど将来性がありそうです。
☆「週刊少年サンデー」2002年34号☆ ◎読み切り『カラス〜the master of GAMES〜』(作画:佐藤周一郎) 新人・若手読み切りシリーズ「荒ぶれ昇龍!」の第4弾は、これが本誌2度目の登場となる新人さん・佐藤周一郎さんです。 佐藤さんが以前本誌に登場したのは「サンデー特選GAGバトル7連弾」の時で、『ピー坊21』という作品を発表しています。 絵柄はまだ、以前からの課題であるタッチの堅さ…というかアマチュア臭さが抜けきれていないのですが、5ヶ月前よりは幾らかレヴェルアップしています。あとは、前作はゆうきまさみさんの影響が見てとれたのに、今回はそれがほとんど無くなっているのが気になりますね。この間、他の作家さんのアシスタントなどをして画風が若干変わったのかも分かりません。 そしてストーリー。まず、かなりストーリーの引っ張り方が強引なのは否定できませんね。舞台設定もかなり無茶ですし、状況説明も不足しすぎです。ただ、話そのものは比較的分かりやすい流れになっているので、読み難いという事はありません。これに関しては一応の評価が出来ると思います。あ、オチはとても面白かったですね。ここも評価できるポイントです。 評価は一応Bを進呈しましょう。現時点では連載までの道は遠いと思いますが、どんどん才能を磨いていって欲しいと思います。 ……と、いうわけで今日のゼミは以上で終わります。来週のゼミをお楽しみに。ではでは。 |
7月24日(水) 教育実習事後指導(教職課程) |
さてさて、約2週間ぶりの再開となりましたこのシリーズですが、今回含めてあと3回で終了の予定です。残り短いですが、どうぞご愛顧の程を。 これまでのレジュメはこちらからです。↓ 中断期間が長いですので、時間に余裕のある方は復習される事をお薦めします。ただ、各回ごとの関連性は薄いですから、前回までの講義内容はサッパリ知らない、覚えていないという方でも大丈夫だと思います。
──では、今日は授業実習の話の続きを。 高校の場合、例外を除いて授業時間は一律50分です。当たり前の話ですが、チャイムが鳴ってから、もう一度チャイムが鳴るまで授業が行われます。 ……とまぁ、一度プロになってしまうと、授業時間も個性の内だったりするのですが、実習生だと、やはりそうはいきません。始業チャイムが鳴り終わると同時に教室に入り、終業チャイムが鳴り終わるまでは授業を続けなければ担当教諭に注意されるでしょう。これはまぁ、自動車教習所に通っている内は制限時速を必要以上に遵守しなきゃいけない、みたいなものです。 授業終わりのチャイムが鳴りますと、当然、生徒は休み時間に入ります。そして、通学途中に駅のキヨスクで買った「週刊少年ジャンプ」を読み始めたり、友人と「今年の有馬記念はどの馬が有力か」とか「三沢と武藤が試合をやったらどっちが強いか?」…などといった話題に花を咲かせたりします。 ──それは何故かと言うと、担当教諭からのダメ出しタイムが始まるからなのです。 授業実習中の担当教諭は、教室の最後方から、じぃ──っと、教壇に立つ実習生を見ています。 そういうわけで、実習生にとっては、トッティが「少林サッカー」のように御無体な展開で退場した後のイタリア代表のように辛い時間帯であるのが、このダメ出しタイムです。が、今こうして現役教員の立場になってみると、このダメ出しの大切さが身に沁みて分かるようになります。 と、駒木が出て来たところで、ここから話は駒木の実習体験に展開してゆくわけなのですが、時間の都合で今日はここでひとまず講義を終える事にします。何だかプロローグ的な話をしただけで終わるのは心苦しいのですが、まだ平常カリキュラム復帰から調子が戻りきれていないという事に免じて、どうかお許しください。ではでは。(次回へ続く) |
7月23日(火) 教科教育法(高校地歴) |
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さて、予定をオーバーして第3回に突入してしまいました。やっぱり腹に溜まってるモノがあるせいか、講義のボリュームがやたらに大きくなってしまいました。ちょっと反省です。 今日はいよいよ採用試験の正念場・専門教養試験についてのレポートです。昨日までに増して大きなボリュームの講義になりますが、どうか最後までお付き合いを。 では、以下は文体を常体(だ、である調)にして、レポートの開始です。どうぞよろしく… 専門教養試験が近付くにつれ、ますます体調がおかしくなる。 まず胃の鈍痛。これは毎年出て来る症状で、昼休みから専門教養の試験開始までが痛みのピークであり、試験が終わって重圧から解放されると、いつの間にか痛みが消えている。ストレス性の胃痛なんだろうが、それよりも脳味噌に入りきらなくなった知識が胃に溜まってるような感じ、というのが実感だ。…って、俺は3年前まで売られてたメモリ32MBの特売パソコンか。 で、脳味噌がそんな風に歴史だけに特化されてしまうので、考える事も自然と日常生活から乖離してしまうようにもなる。 昔、受験勉強しすぎて大学入ってから心や頭がおかしくなった人の話を聞いた時などは、「そこまで勉強しなくてもいいじゃないねぇ」…などと笑っていたものだが、まさか自分がその立場になるとは思ってもみなかった。本当、採用試験なんてロクなものじゃない。 この試験は制限時間90分で、大雑把に分けて前後半に分かれている。 そして後半は、専門教科(駒木の場合は世界史)の問題が延々と続く。前半の共通問題もそうだが、問題のほとんどは論述問題なので、半端な知識では全く通用しない。特に後半の専門問題は付け焼刃では全くダメで、現時点での知識量を丸裸にされてしまう。 世界史の採用試験は1次試験段階でも厳しくて、倍率は15〜25倍程度にもなる。上位5%くらいに入っておかないとボーダーラインに乗らないのだから大変だ。専門外の共通問題で失点を最小限度に留め、世界史の問題をパーフェクトに近いデキでまとめるくらいでないと勝負にならない。 「──それでは、始めてください」 さぁ、今年も賽は投げられた。頼むぞ、共通問題──!
問題見た瞬間、目の前真っ暗。 ……が、半泣き状態で答えを書いていく内に、1つの考えが頭をよぎって来た。 そうなれば、もう解けない問題にいつまでも固執していられない。これに時間を取られて肝心の世界史問題が答えきれないなんて事になったら、そっちの方がシャレにならないじゃないか。
今度は日本史と地理専門の受験生の心の慟哭が聞こえてきそうな問題だ。ホントに意地悪だなぁ、兵庫県。 しかし、これは世界史を専門にするならば、どうにかしてパーフェクトを取りたい問題。古代史は覚えなくてはならない用語や出来事が少ないので、勉強さえしておけば簡単に答えられる。だからここは満点かそれに近い成績でないと上位5%には入れないだろう。
思わず出そうになった言葉を何とか飲み込んだ。 2の問題も、答えるべきポイントを勉強していたので大楽勝。3も完全でないにしろ、かなりの部分点は期待できる答は書けたはず。これで日本史の失点はいくらかフォローできた感じだろう。しかし、色々あるなぁ、今回の試験は…。 …そんな状況の中、いよいよ試験は後半戦の世界史専門問題を迎えた。 それではまず、大問4から。範囲は近世〜近代のイタリア×ヨーロッパ関連史。吉本若手芸人で言えばケンドーコバヤシのような、「通でないと存在すら知らない」というような渋い出題である。出題者の悪意を感じるぞ、ホントに。
野球で言えば、145km/hの直球と、135km/hのスライダーで攻めて来る、プロの一流半投手みたいな問題の連発。プロ対応の勉強をしていないと1問も答えられないものばかりで、教員採用試験としては良問と言えるのかもしれない。一般の方は1問でも正答できれば大したもの、と言っておこう。 ただ、それはそれで良かったのだけれど、この辺りから別の悩みが出てきてしまった。 さぁ、サクサク行こう。次は大問5。
この社会学講座で「マルコ=ポーロは実在してなかった(と思われる)」なんて講義をした直後にこんな問題にブチ当たったものだから、思わず全身から脱力する。こんな不勉強な方々が作った問題に自分が裁かれるのかと思うと、デビ夫人に説教されるゴージャス松野になった気持ちがした。 1の(1)は「東京フレンドパーク2」のクイズコーナーみたいな問題だが、答えを3つ書かなくてはならないのがミソ。答えになるべき候補は4つ(イスラム教、ゾロアスター教、マニ教、ネストリウス派キリスト教)しかないので、うろ覚え状態では苦しい。
十字軍問題だ。ここまで古代ヘレニズム、ヨーロッパ近世&近代、アジア文化交流史ときているから、中世ヨーロッパ史にあたる十字軍問題ならば、まぁバランスがとれているんだろう。ただ、今年はサッカーW杯日韓共催の年だから、朝鮮半島史で攻めてくるかな…とも思ったのだが、さすがにそれは無かったか。 それにしても、十字軍問題とか言って、十字軍について訊いてるのは1だけじゃないか(苦笑)。普通、十字軍問題と言えば、1095年の第1回十字軍結成にまつわる話とか、第3回の欧州君主ドリームチームVSサラディン世紀の対決だったりするんだけど、よりによって、第4〜7回とは……。
そして、その巨大な解答欄に対して与えられた問題は以下の通りだった。
まさにシンプルイズザ・最強。 だが実はこの分野、駒木は結構力を入れて勉強してきたところでもあるのだ。年号も一通り頭に入っている。問題見た瞬間に答えは浮かんで来た。ただし、時間切れになると全く点数がもらえないだけに、あとは時計との勝負になる。最大の敵は歴史でも兵庫県でもなくて、時間。相手に不足は無しである。 そこからの20分は、まさに戦争映画のクライマックスシーンにも匹敵するスリル満点の大スペクタクルな戦いであった。
……結局、全ての回答を終えたのは試験終了1分前であった。多少、文章に気になるところはあるが、もう直しているヒマも無い。多分、全部の問題をくまなく答えようとしたら時間が5分くらい足りなかったはずだ。 簡単な事後指導の後、受験生は晴れて放免と相成った。会場から出てゆく途中、受験生達が口々に感想を述べ合っている。やはり、他の受験生にとっても時間不足は厳しかったようで、最後の大問7を書く余裕が無かった者も結構な数いたようだ。それを考えると、少なくとも答えを書ききった駒木は恵まれていると言えるのだろう。 ……と、ここまで長々と3日に渡ってお送りしてきたレポートもこれで終わりです。 |
7月22日(月) 教科教育法(高校地歴) |
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今日の講義は、前日に引き続いて教員採用試験レポです。昨日付講義を未受講の方はこちらからレジュメの閲覧を済ませてください。 指摘が出そうなので先に述べておきますが、「平成15年度」というのは誤りではありません。平成15年4月1日付採用の教員を選抜する試験ですので、これで正しいのです。 また、今回のシリーズは高校地歴(専門・世界史)の問題を公開し、その問題を解いた過程などをお伝えする事になると思います。で、その中に、非常にマニアックな内容が含まれる事になると思いますが、気にしないで読み飛ばしてもらって結構です。別に知らなかったら恥ずかしい、というようなものではありませんので。ただ単に「住んでる世界が違うんだなぁ」という事が分かってもらえれば、それで十分です。 というわけで、以下、レポートの続きです。独白形式という事で、文体を常体(で、ある調)に変えてお送りします。 さぁ、いよいよ筆記試験のスタートであるが、ここで受講生の皆さんに今回の1次筆記試験の概要について少し解説しておこう。 まず兵庫県という自治体には、毎年毎年採用試験の内容を大幅に変えて来るという厄介な習性がある。どのくらい大幅な変化かと言うと、田舎のごく普通の娘さんが、上京して1年経ったらAV女優になってた…という位の変化と言えば分かり易いだろうか。 ……と、他の自治体の話は別にして話を兵庫県のものに戻そう。 もう1つの大きな変更点は、一般教養試験の英語ヒアリングが廃止され、その代わり英語文章読解が新たに導入された事だろう。 やや説明が長引きすぎた。ここらへんで今年の試験内容に話を移そう。 しかもその長文読解形式の問題は、形式通りに国語の問題というわけではなくて、全くのノンジャンルだったりする。結局、回りくどい事をして、他の自治体と同じようにジャンルバラバラの一問一答だったりするのは武士の情けで指摘しないでおこう。 例えば、その「プロジェクトX」から出題された大問2はこんなものであった。一部を紹介しよう。
肝心の国語の問題がほとんど存在しないのはどうしたものか…とは思うが、よくぞ「プロジェクトX」からここまで話を広げてくるものである。 ……下品な話はさておき。次は大問3だ。こちらはオーソドックスなノンジャンルの一問一答方式だった。長文読解形式では盛り込みにくいタイプの問題をここに集めて来たようだ。ここも一部を紹介することにする。
この他、省略した問題も含めて、結成当初のモーニング娘。メンバー間の心の距離くらいバラバラなノンジャンル問題が10題。 ……続く大問4は、3年前から実施されているコンピューター関連問題だ。
最後の問題など、10年程前にはたまに見受けられた、上司が部下のOLに、「オイ、○○クン、今送ったFAXは今日中に届くかね?」と言ってオフィスを吉本新喜劇みたいな雰囲気にしてしまうようなやり取りが思い出されたりして微笑ましい。 そして最後の大問5は、先に述べた英語の文章読解。どんなレヴェルの問題が出て来るのか少しビビっていたが、何のことはない、メチャクチャ簡単な大学入試みたいな問題であった。
意外と歯ごたえの無い問題に戸惑いつつも、「どうせなら、“The examination is like a devil's work”で、『教員採用試験』が答、ってのはどうだろう」…などと思ったりした。 時計は正午を回ったあたり。にわかに胃の奥から鈍痛がやって来た。体が「助けてくれ」と訴えかけている。昼食の握り飯を頬張りながら、「ホントに俺、命削ってるよな」…と心の中で呟き、1つ大きな溜め息をついた。(次回へ続く) |
7月21日(日) 教科教育法(高校地歴) |
今月に入ってから、当講座は「駒木が教員採用試験に専念するため」という理由により、休講・短縮講義中心の特別編成カリキュラムで進行してまいりました。 それでは、以下はレポートの性格上、文体を常体(で、ある調)に変えてお送りします。 採用試験当日、受験生の朝はマサイ族並に早い。 ……さて、そんなわけで、時間にたっぷり余裕を持っての出発となった。休日の朝7時、人生に疲れた不倫旅行のカップルと出くわしそうな弛緩した雰囲気の電車に乗り、会場へ向かう。 …そうこうしながら電車を何度か乗り替えて、試験会場に近付いてゆく内、徐々に“それ”らしい雰囲気の人たちが見受けられるようになった。別にハッキリした目印があるわけではないのだが、何故だか雰囲気だけで「この人は採用試験を受けるんだな」というのが分かってしまう。 ルーキーたちと対照的なのが、ベテラン受験生たちである。彼らの特徴は、夏らしい軽装をしていること。フォーマルな方でもノーネクタイ・開襟シャツで、中にはアロハに短パンという信じられない格好の豪傑もいる。 それから試験会場までの話は、受講生の皆さんには面白くないだろうから割愛。案内標識があったので無事辿り着けた、とだけは言っておく。 図らずも順調な行程で到着したため、駒木が会場である伊丹高校に到着したのは受付開始時刻の30分前だったが、既に多くの受験生が周囲に散らばっていた。この会場は、中学社会科&高校地理歴史科および公民科という、倍率のクソ高い上に女子受験生が少ない校種・教科の受験生だけを数百人集める、まるで無間地獄のような会場である。(他校種・教科は同日同時刻に県内の別会場で試験を実施) 受験生の集まりが早すぎたため、受付開始が前倒しになっていて、駒木も到着してすぐに受付を済ませて会場へ。まだ試験開始までに1時間半の余裕が有るため、校舎内に入って所定の席に着くと、すぐに世界史・地理・日本史の教材を広げて1時間弱かけて最終調整。何だか勉強をやってもやっても足りない感じがするのだが、経験上、そういう時は良い結果が出る事が多いので、仕上がり自体は良いのだろう。あとは気持ちを落ち着ける事に専念するだけだ。 Aさんと別れたところで試験まであと15分ほど。何をするにも中途半端なので、受付の時に配られた会場分けのプリントを見て受験者数の確認なんかをして時間潰しをする。 すっかり気分がダークネスとなったところでようやく事前説明の時刻になり、試験官が教室にやって来た。 ……と、教室中に人を何人殺せるか分からないようなストレスが充満したところで、いよいよ戦闘開始である。今年も天下分け目ならぬ人生分け目の戦いの火蓋が切って落とされた。(次回へ続く) |
7月19日(金) 歴史学(一般教養) |
採用試験直前の苦し紛れで始めたこのシリーズですが、一応今回でひとまずの区切りとさせて頂きます。 覚え書き4・ギリシア正教がロシアの宗教になった理由とは? 日本のように宗教色の薄い国は別にして、大抵の国には国教や、国民の多くが入信している宗教なんてものがあります。アメリカやイギリスにとってのそれは勿論キリスト教ですし、イスラエルを除く中東のアラブ諸国の多くはイスラム教が国教とされています。 当時の君主であるキエフ大公・ウラジミール1世は、我が手によって着実に成長しつつある自分の国を誇らしく思いつつも、1つだけ気になって仕方ない事がありました。 で、一度決めたら話は早い。ウラジミールは様々な宗教の宣教師と面会してセールストークをさせる一方で、自分からも各国へ使いを出し、どの宗教の国が反映しているかリサーチを掛け始めました。 「お前の話を聞いておると、イスラム教を信じてしまうと豚肉と酒を口にする事が出来んようだが、それは真か?」 ……というわけで、ロシアはイスラム教国にならなかったんですね(苦笑)。 結局決め手になったのは、東ローマ帝国の首都・コンスタンティノープルとその宮殿が非常に華やかで豪華絢爛だったこと。そのリサーチ結果を聞いたウラジミールは、 結局、キエフ公国はロシア帝国に名を変えた後もギリシア正教の国として栄え、総本山の東ローマが滅亡した際には、最後の東ローマ皇帝の姪をロシア皇后として迎え、東ローマとギリシア正教の正統な後継者となることになったのでした。世の中、何がどうなるか分からないですね…というところで、今日はこれまでにしたいと思います。ではでは。 |
7月18日(木) 演習(ゼミ) |
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特編カリキュラム中でも、ゼミだけは平常実施です。今週に入ってから受講生の数がジリジリ減っていて、メチャクチャもどかしい気分なんですけれども、これで休んでる受講生さんが復帰してくれれば……と思っています。どうぞよろしく。 さて、まずは情報系の話題を手短に。 作品別のポイントも挙げておきますね。まず『アイシールド21』は、読み切りではイマイチ踏み込んでいなかったアメフトシーンをどう描ききるかで完成度が随分と変わって来るでしょう。 新連載に伴って、入れ替わりに最終回を迎える作品も2つ。1つは以前から打ち切りが確実視されていた『少年エスパーねじめ』(作画:尾玉なみえ)で、今週もう最終回を迎えてしまいました。また、もう1作品は、どうやら紆余曲折の上に『NUMBER10』(作画:キユ)で落ち着きそうな感じに。『世紀末リーダー伝たけし』も一時期は人気的にヤバそうだったんですが、ここまで来たら今のエピソードが完結するまで思う存分描いてもらう方針のようです。 次に、「週刊少年サンデー」の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の結果発表がありました。
1ヵ月分のみの発表ということで、やや低調な結果に。やっぱりこの辺に、「サンデー」の「ジャンプ」との新人開拓力の違いが出てしまっている気がします。こればっかりは構造的な問題なのでしょうね。 さて、それでは今週のレビューへ。今週のレビュー対象作は、「サンデー」から2作品と、「週刊ビックコミックスピリッツ」から高橋しんさんの読み切り『LOVE STORY, KILLED.』をお送りします。 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。 ☆「週刊少年サンデー」2002年33号☆ ◎新連載『いでじゅう!』(作画:モリタイシ) 先週のゼミでもお伝えしました通り、「サンデー」では今週から新連載とベテラン作家さんの読み切りシリーズが始まりました。今週はその第1弾ということになります。 この作品の作者・モリタイシさんは、「少年サンデー超増刊」出身の若手作家さん。今年の2月に本誌で読み切りが掲載されていますので、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。モリさんのプロフィールや、その作品の詳しい評価、さらに画力についてのコメントは、こちらのレジュメを参照してください。 …というわけで今回は、作品全体の完成度などに限定して話を進めて行きたいと思います。 まず、この作品はコメディに近いギャグマンガですね。ごく普通の学校が舞台で、ごく普通の少年を主人公にし、そこへ変態チックな脇役を多数絡ませることで笑いを呼ぶ…という手法がとられています。 では、この作品も同じような経路を辿って、マズマズの成功を収めるのか、というと、現時点ではやや疑問が残ります。 もちろんこの不利なスタイルでも、その不利さを覆して、爆発的な笑いを期待できる破壊力十分のギャグが出来ていれば問題ないわけですが、この『いでじゅう!』の現時点の完成度では、「悪くない」程度の評価は出来るものの、残念ながら爆発的な笑いが期待できるレヴェルには至っていないようです。 ただ、モリさんは理詰めでギャグが作れる知性派のギャグ作家さんですし、余り描かないだけで女の子の絵も上手です。これから上手くテコ入れ出来れば、作品の質が大きく変わってきそうな余地も残っているはずですので、もう少し様子をジックリ見てみたいと思います。 現時点の評価はBということに。あと2週で評価が大きく変わる可能性がありますので、次々回のレビューもお楽しみに。
◎読み切り『ニポリの空』(作画:小山愛子) この作品は、5週連続の若手・新人読み切りシリーズ「荒ぶれ昇竜!!」の第3弾という事になります。 そんな小山さんの絵柄ですが、どことなく師匠の西条さんの影響も見受けられますが、ペンタッチそのものの個性が強いため、よくある“絵柄を見るだけで誰が師匠か判ってしまう”というパターンには陥っていません。「模倣から始めて一歩先を」を上手く実現できているのではないかと思います。 そしてストーリーの方ですが、こちらは“とにかく若さに任せて勢い良く突っ走ってしまおう”という、良い意味にも悪い意味にも取れる開き直りを感じさせますね。 評価はオリジナリティを買って、B+寄りのBという事にしておきましょう。とりあえずもう1作品読んでみたいと思わせてくれる作家さんだと思います。
《その他、今週の注目作》 ◎『LOVE STORY, KILLED.』(ビッグコミックスピリッツ33号掲載/作画:高橋しん) 今回の注目作は、高橋しんさんの『最終兵器彼女』外伝、『LOVE STORY, KILLED.』です。 有名な作家さんですから、プロフィールや絵柄についての説明は不要でしょう。レビューはストーリーについての評価を中心にしてゆくことにしますね。 ではレビューを始めるんですが、この作品、まずは話全体の完成度は極めて高い、という事を先に述べておきましょう。 ……さて、で、この作品なんですが、高橋さん本人も暗に認めてますように、マンガとしては極めて異色な作品だと思います。 まず1点目としては、「この作品は極めて文学的(小説的)である」という事が挙げられます。しかも、まるでエンターテイメント色の無い写実主義的な内容となっています。 もともと高橋さんはネーム力・話の構成力のある作家さんですが、今回はそれをとことんまで突き詰めたような仕上がりになっていますね。無機物を語り手とする事で徹底的にモノローグを増やし、それをストーリーテリングの中心に据えています。その結果、極めて3人称小説に近いマンガという形になりました。 そして2点目は、“死”の概念の描き方についてです。 第一線で活躍している作家さんは、個々それぞれの“死”の描き方に対するスタンスを持っています。 例えば、アニメ版『エヴァ』や『ふしぎの海のナディア』の監督を務めた庵野秀明さんは、“死”をとことんまで重たく描くことに長けた人で、どの作品においても、「人が死ぬ」=名場面と言ってもいいほどです。 で、この『LOVE STORY,
KILLED.』はどうかといいますと、滅亡寸前の地球、しかも戦場が舞台ということもあって、かなり命を軽く扱っているように見えます。勿論、それはそれでいいんですが、何だか、どうにも作品全体から漂う違和感が拭えないのです。 あと、この作品では“死”、つまり“殺す”描写の他に“犯す”描写も随所に見受けられます。戦争では殺人と強姦が付き物ですからそれはそれで正しいんですが、あくまでも事象としての重さは「殺人>強姦」でなければならないんですよ。物の理として。 今まで述べた事を一言で表現すると、「こんな重たいテーマの作品なのに、それを描くにあたっての作者の覚悟が足りない」というところでしょうか。そのため、話自体は素晴らしいのに、演出方法でズレを生じさせてしまって、読者にストレスを与えるものになってしまいました。非常に勿体無いと思います。 タラタラと述べてきましたが、ここで評価を。
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7月17日(水) 歴史学(一般教養) |
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覚え書き3・もう1つの歴史教科書問題!? 学校現場で歴史に関わっていると、時々思いがけない事態に遭遇してしまったりします。 「世界史用語集」をお持ちの方はご存知でしょうが、現時点で刊行されている世界史B(普通の世界史と考えてください)の教科書は、全部で18冊もあります。 ところが、教科書によって、内容が大きく違う歴史の一分野が存在するんです。年号、登場人物、歴史上の出来事、もう全てが大違い。どっちを覚えれば受験に対応できるのか、非常に頭を悩ませる羽目に陥ってしまってます。 そんな人騒がせなのはどの分野かといいますと、それは中世モンゴルの歴史なんです。そう、チンギス某とかフビライ某とかが出て来るモンゴル帝国の歴史です。 どうしてこんなヤヤコシイ事が起こったのかというと、それには深いようで結構単純な理由が潜んでいたりします。 理由をごく簡潔に言うと、実は今、モンゴルの歴史は大胆に書き換えられている真っ最中なんです。 おそらくここ10〜20年くらいの話だと思うんですが、日本の歴史学界でモンゴル史を深く研究しようという気運が高まり、しかもその中で重要な史料が次々と研究対象になっていって、これまでは全く知られていなかった事実が色々と判明して来ました。 しかしこうした混乱も、モンゴル史学者の先生方の頑張りのおかげで、新発見された事実が歴史業界内に浸透したためようやく終息へ。 でも、それで「メデタシメデタシ」にならないのが歴史業界の辛いところ。これだけモンゴル史が見直されたりしても、一部の教科書は未だに旧来の定説がそのまんま載っていたりするんですね。だから冒頭で述べたようなイタい出来事が起こったりするんです。 あまり知られてませんが、歴史教科書って結構いい加減に作られてるんです。 駒木は幸いにも大学時代に新しいモンゴル史を1年間受講していたので、旧説の教科書を使って新しい説のモンゴル史を教える…なんていう力技も出来たりします。ただ、それにしても「受験用には教科書の内容も覚えておけよ」なんて注意もしなきゃいけないんですけどね。いやはや、全くムチャクチャな話ですよ。 ……ところで、新しく塗り替えられたモンゴル史の中で、特に旧来の説から大転換されたものがあります。 それは、西欧からやって来た大商人・マルコ=ポーロについてのお話です。 皆さんもご存知ですよね? マルコ=ポーロと彼の著書である『東方見聞録(世界の記述)』。知らないとは言わせませんよ。義務教育ですからね。
……というもの。そのリアルな経歴の内容に加え、マルコの精密な肖像画まで残されていたため、長年にわたってマルコ=ポーロと『東方見聞録』に関する話はマジ話として伝えられて来ました。 しかししかし、最近の研究で、大元王朝時代に残された大量の歴史資料(中国において歴史編纂は国家事業なので史料は掃いて捨てるほどある)を調べてみたところ、意外な事実が判ったんです。 じゃあ、“マルコ=ポーロ著『東方見聞録』”とはどんな本なのかといいますと、これはどうやら当時の旅行家たちが掻き集めてきたアジアの情報や見聞をまとめた本のようなのです。つまり、マルコ=ポーロとは合作のペンネームだったわけですね。今で言えばCLAMPさんみたいなものですか。 …と、とりとめもなくダラダラとお話しましたが、今日はこれまで。このシリーズはとりあえずあと1回くらいで一区切りにしたいと思います。ではでは。(次回へ続く) |