「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

11/30 競馬学特論 「G1予想・阪神ジュベナイルフィリーズ編(簡易版)」
11/28 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(11月第4週分)
11/27 歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(21)
11/25 ギャンブル社会学「toto(サッカーくじ)売上げ低迷、その原因を探る」(2)
11/24 ギャンブル社会学「toto(サッカーくじ)売上げ低迷、その原因を探る」(1)
11/23 競馬学特論 「G1予想・ジャパンカップ編」
11/22 競馬学特論「G1予想・ジャパンカップダート編」
11/21 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(11月第3週分)
11/20 歴史学(一般教養) 「学校で教えたい世界史」(20)
11/18 競馬学概論 「仮想競走・20世紀名馬グランプリ」(3・終)
11/17 特別演習「第2回世界漫画愛読者大賞への道」(2)
11/16 競馬学特論  「G1予想・マイルCS編(簡易版)」

 

11月30日(土) 競馬学特論
「G1予想・阪神ジュベナイルフィリーズ編(簡易版)」

 こんばんは。今日の競馬学特論は、明日の式典準備のため、駒木1人による簡易版で行います。

 まずは出馬表と予想印をご覧下さい。

阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神・1600・芝

馬  名 騎 手
    ソルティビッド 蛯名
× × アドマイヤテレサ 武豊
× ワナ 柴田善
× オースミハルカ ペリエ
ピースオブワールド 福永
    ユキノスイトピー 須貝
    マイネラベンダー 小牧太
シーイズトウショウ 池添
  ブランピュール 本田
    10 テイエムトキメキ 牧田
    11 リリーキャスケード 小林淳
    12 プラントパラダイス 和田
    13 ヤマカツリリー 安藤勝
    14 トーセンリリー 村田
    15 メイプルロード 芹沢
    16 グランドサファイヤ 松永
17 トーホウアスカ 四位
    18 ホワイトカーニバル 小野

《駒木ハヤトの見解》

 秋の牡牝混合重賞レース(府中3歳S、デイリー杯、京王杯)の勝ち馬がいない点から考えると、全体的なレヴェルは昨年並程度のやや低調なものと考えた方が良さそう。1勝馬や裏街道からの参戦馬、または条件次第で爆走するクセ馬にも注意を払うべきと申し上げておく。

 展開は、ソルティビッドかマイネラベンダーがハナを切り、やや縦長の隊列で平均ペースになるのではないか。余程のハイペースでないと先行〜中位で決まってしまう傾向のあるレースだけに、差し馬の過信は禁物だ。

 2歳戦ゆえ、手掛かりが少なくて困惑するばかりだが、本命は正攻法で3戦3勝のピースオブワールドに。他の馬に絡まれてゴチャついた時は心配も、現時点での地力そのものは抜きん出ている。全幅の信頼は置けないにしても、馬券の中心にせざるを得ないだろう。
 対抗には、休養明けのブランピュールを危険承知で抜擢した。余裕残しで1800mのコスモス賞を完勝したパフォーマンスはここでも通用するものと見たい。主なメンバーと全く対戦が無いのが逆に魅力と言えるかも。
 三番手評価は迷ったが、ペリエ鞍上のオースミハルカ。前走−18kg減の反動が怖いが、まともなら上積み十分。ただし、堅実無比のシーイズトウショウも差は無い。
 この他、ワナの巻き返しやアドマイヤテレサの強襲など警戒すべき馬は多くいて混戦模様。とにかく2、3着争いは、ちょっとした事で大きく結果が変わりそうだ。
 ちなみに、実績や調子ならトーホウアスカも優勝圏内だが、17番枠はあまりに過酷。阪神芝1600mの16番枠以降は、キョウエイマーチ級の名牝でなければ克服不可能なだけに、今回は様子見に留めたい。

 駒木の買い目…5、9、4の馬連BOX及び3連複
 珠美の買い目…5-8、3-8、3-5、5-17、4-5、2-5の馬連6点

 ……それでは皆さんの健闘を祈ります。頑張って下さい。

 


 

11月28日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(11月第4週分)

 どうやら、「ジャンプ」だけでなく「サンデー」も打ち切り作品が決定したと思われる微妙な時期にお送りする(笑)、今週の「現代マンガ時評」です。

 今週はレビュー対象作品が本来1作品だけだったんですが、受講生さんからのリクエストにお応えする形で、急遽もう1作品レビューする事となりました。ですので今週は2本のレビューと“今週のチェックポイント”という構成でお送りする事になります。

 さて、今週は情報系の話題が多くありますので、早速そちらから紹介したいと思います。

 まず初めの話題は、「少年ジャンプ」系の新人マンガ賞・「手塚賞」「赤塚賞」の02年下期分結果発表がありましたので、受賞者&受賞作を紹介しておきましょう。

第64回手塚賞&第57回赤塚賞(02年後期)

 ☆手塚賞☆(応募総数421編)
 入選=該当作なし
 準入選=2編
  ・『弘法大地』
   佐藤雅史(27歳・千葉)
  ・『ドーミエ〜エピソード I 』
   高橋一郎(19歳・北海道)
 佳作=3編
 
 ・『甲殻キッド』
   梅尾光加(21歳・埼玉)
  ・『長崎 !!!』
   サトウ純一(24歳・群馬)
  ・『日輪侍』(評点22/40)
   落合沙戸(23歳・東京)
 最終候補=5編
  ・『CANDY』
   石川晋(19歳・東京)
  ・『ユメツブ』
   大民彰(22歳・埼玉)
  ・『復讐屋くろねこ』
   すのうちよしこ(22歳・東京)
  ・『MASK』
   乾昌代(24歳・奈良)
  ・『DASH DRUNKARD』
   佐藤奈緒(22歳・埼玉)

 ☆赤塚賞☆(応募総数210編)
 入選=該当作なし
 準入選=該当作なし
 佳作=3編

  ・『サムライジェネレーション』
   大鶴曜介(19歳・神奈川)
  ・『ぐるぐるハザード』
   外丸ナオミ(24歳・群馬)
  ・『純情ハート 乙女道』
   新妻克朗(24歳・東京)
 最終候補=2編
  ・『感想文─白亀と毛宝─」
   J.O.S(23歳・福岡)
  ・『ペーパー親父』
   ちゃきちゃきはかたっこ(15歳・東京)

 ざっと調査して判明した受賞者の過去の受賞歴は以下の通り。他に受賞歴を発見された方がいらっしゃれば、ご指摘ください。
 ・手塚賞佳作の梅尾さん…「天下一」02年2月期最終候補
 ・手塚賞最終候補の石川さん…「天下一」02年2月期編集部特別賞
 ・手塚賞最終候補の大民さん…「天下一」01年12月期最終候補
 ・手塚賞最終候補の佐藤さん…「手塚賞」02年上期最終候補

 ……応募総数は昨年の下期とほぼ同じ。そして手塚賞の入賞作品の数もほぼ同じなのですが、赤塚賞の方は最終候補作品からして5作品のみという低調に終わってしまったようです。
 ここしばらくの受賞作のレヴェルから考えますと、手塚賞の準入選は「赤マルジャンプ」に載せるに耐える作品が多いですから、まずまずの豊作と言えるでしょう。
 ただ、赤塚賞の佳作は「天下一漫画賞」の最終候補作と同じか少し下程度のクオリティ(=ギリギリ代原で載せられるレヴェル)であることが多いので、こちらは編集部にとっては痛い結果になった感じですね。
 この内の何作品かは「赤マルジャンプ」や本誌の代原で掲載されることもあるでしょうから、その時には詳しくレビューをさせてもらうつもりです。どうぞお楽しみに。

 さて、次に「ジャンプ」と「サンデー」の連載打ち切り&新連載の情報を。

 では「週刊少年ジャンプ」から。「ジャンプ」では来週号(03年1号)から冬季の新連載シリーズが始まります。今回のシリーズも新連載は2作品とやや少なめで、現在の「ジャンプ」における打ち切り候補作の少なさと、新連載を立ち上げるに足る人材の不足ぶりを象徴する形になっています。
 まず、来週(03年1号)から新連載となるのが『グラナダ─究極科学探検隊─』作画:いとうみきお)で、これは今年6月の29号に掲載された読み切り・『ジュゲムジュゲム』のマイナーチェンジ版と思われます。当ゼミではB評価だったのですが、一説によると、その週のアンケートでは全作品中4位だったそうで、それも後押ししての連載獲得となりました。前作『ノルマンディーひみつ倶楽部』では、人気低迷にも関わらず、他にもっと人気低迷する作品が現れて1年弱もその命脈を保ち、一部では“ノルマン現象”という言葉まで生んだのでありますが、果たして今回はどうなるのでしょうか。内容ともども注目ですね(笑)。
 そして次々号(03年2号)からは、『TATTOO HEARTS』作画:加治佐修が新連載となります。これも約2年前(00年45号)に掲載された同名読み切り作品の連載版ですね。元・岸本斉史さんのアシスタントでもある加治佐さんは、これが初の連載作品ということに。現状、色々あって打ち切り“ボーダーライン”が上がっていて、新人作家さんには厳しい環境が続いているのですが、是非とも頑張ってもらいたいと思いますね。
 で、この2作品と入れ替わりに打ち切りとなるのが、既に先週号で最終回を迎えた『SWORD BREAKER』作画:梅澤春人)と、もう1作品。早売り読者から『A・O・N』作画:道元宗紀が次号で終了したという情報がリリースされたようですが、さて──?


 次に「週刊少年サンデー」の打ち切りと新連載の情報を。
 これは作家さん本人の公式ウェブサイトや主なニュースサイトで報じられていたので、既に多くの方がご存知だと思いますが、『一番湯のカナタ』作画:椎名高志)が次々号の03年2号で打ち切り最終回となります。
 確かに数話目からダレ気味の展開で人気低迷→大幅テコ入れとなったのですが、ここ数週は大きく持ち直し気味だっただけに、これは非常に残念な報せとなりました。最近は「サンデー」も打ち切り決定までのスピードが早くなっているようで、結果的にはタッチの差で、打ち切り決定までに人気上昇が間に合わなかったという事のようです。
 それにしても最近の「サンデー」では、作家さん本人がウェブサイトで数週間後の打ち切りを告白するケースが増えていますね。個人的には作家さん本人の“敗戦の弁”が聞けて、それなりに興味深いのですが、賛否両論出て来そうな現象ですよね。
 また、これはまだ未確定ですが、どうやら問題作『旋風の橘』作画:猪熊しのぶも次号かそれに近いところで打ち切られるムードになって来ました。メチャクチャな話の展開が論議を醸した作品でしたが、果たしてどのような最終回となるのでしょうか。楽しみにはしてませんが(苦笑)、注目はしたいと思います。 
 これらの打ち切り作品に代わる新連載作品はまだ未定のようですが、今のところは来年の1月8日発売号(03年5号又は5・6合併号)から安西信行さんによる連載がスタートする事のみ判明しています。ただ、先に挙げた他にも、ここ最近ショートギャグの連載作品が続々と終了しており、ギャグマンガの補充があるかも知れませんね。

 ……というわけで、個人的な感想を挟みすぎて長くなりましたが、以上が今回提供させてもらった情報でした。

 では、3週間ぶりのレビューへ。今週は「ジャンプ」から代原読み切り1本、そして受講生さんのリクエストに応じる形で、「少年サンデー超増刊」12月号から、新人さんの読み切りを1本、都合計2本レビューすることになります。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年52号☆

 ◎読み切り『怨霊英雄物語』作画:新井たみ重

 今週は『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也)が休載のため、代原が掲載されました。どうも最近、鈴木さんの体調が優れないようですので、ひょっとしたらこれからも頻繁にこういう事があるかも知れません

 さて、この作品ですが、「天下一漫画賞」02年7月期最終候補作の同題名作品のようですね。ペンネームが変わってますが、これはたまにある事なので、まぁ同一人物でしょう。新井さんはまだ19歳。これから力をつけていく途中の新人さんというわけですね。まぁ、これを励みにして頑張って頂きたいものです。

 では早速レビューへと移りましょう。

 まず絵柄からですが、キャリアがゼロに近い新人ギャグ作家さんにしては頑張っている方ではないでしょうか。技術的なレヴェル云々は別の話になりますが、背景や機械類の描き込みもそれなりに出来ていますし、色々なタッチの絵を描いてみようとする向上心のようなものが窺えます。ジャーマン・スープレックスのシーンなんかは、下手なプロレスマンガよりも上手く描けているくらいです。
 …まぁ総合的に見て、ギャグマンガとしては十分及第点は出せる出来なのではないかと思います。

 次にギャグについて述べてゆきましょう。
 これについても、中身はともかくとして意欲だけは評価できるものになっています。19ページの中に出来るだけ多くのギャグを、それも様々なパターンのギャグを詰め込もうという気持ちが作品中に現れていますね。
 ただ残念な事に、それらのギャグのほとんどが“下手な鉄砲も数打ちゃあ……”という程度のレヴェルに留まってしまっています。ギャグの基本は、読者の意表を突いて違和感を笑いに昇華させることなのですが、提示されたギャグの大半が読者の想定内の出来事に収まっているために、なかなか笑わせる事が出来ないのでしょう。色々なギャグの型を試すのが精一杯で中身まで吟味する余裕が無かったのでしょうね。
 それでも見所のあるポイントもありました。5ページ1〜3コマ目の辺りや14ページ1〜2コマ目辺り。この2点に関しては“間”で笑いを取る素質のようなものを感じさせてもらいました。今の向上心を維持したままで、この辺りを磨いてゆけば、あるいはモノになるのではないか…と思いますが、どうでしょうか。

 この他、細かい所で気になったのが15ページ最終コマと16ページ1コマ目の繋がりです。ここでのギャグはページをめくらせてしまうと、それが妙な間になってしまうのでギャグの威力が半減してしまうのです。
 プロの作家さんなら、ページをめくる時の効果まで計算して描きます。つまりはマンガの“文法”です。せっかく意欲を持って描いているのですから、こういう細かくて重要な所まで研究をしてもらいたいものです。まぁこれは次回作以降の課題ですね。

 ……というわけで、何よりも意欲と向上心が感じられる清々しい習作原稿でした。しかし、プロのギャグ作家を目指すならば、もっとギャグの“打率”を上げる努力をしないと、一線級には届かないで終わってしまうでしょう。ギャグ作家のギャグマンガとは、読者を笑わせ“なければならない“マンガなのですからね。
 評価ですが、やや厳しいかもしれませんがB寄りのB−という事にしておきましょう。これからも頑張って下さい。

 では、次に「ジャンプ」の“今週のチェックポイント“を。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介第12回掲載時の評価:/雑感】

 いやー、最後の3、4ページはゾクゾクしました。久しぶりに「うわ〜、こりゃヤラれたなぁ」って気分にさせられましたね。
 ただ、もうこの時点で主人公は人間の限界レヴェルまで成長しちゃったわけで、これ以上の能力のインフレは出来なくなっちゃいましたよね。これからどういう風に話を創り上げてゆくんでしょうか。稲垣さんの腕の見せ所ですが、さて──?

 ◎『シャーマンキング』作画:武井宏之【開講前に連載開始のため評価未了/雑感及び個人的見解】

 これは最近の『NARUTO』作画:岸本斉史)にも思う事なんですが、ストーリーの進行とバトルを同時並行させると、テンポが極端に鈍くなって良くないように感じてしまうんですが、皆さんはどう思われますか? 
 喋ってはちょっと戦い、戦ってはちょっと喋り…では冗長に感じてしまうのです。ストーリーの進行は最大限早く飛ばしていって、バトルはバトルだけで濃密にやった方が、結果的には出来が良くなるような気がするんですが……。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希【第3回掲載時の評価:/雑感】

 まぁ10代の内はまだワカランのですよ。男は気持ち次第で、同時に複数の女性を愛する事が簡単に出来るということを(笑)。
 最後に出てきた新キャラは第4のヒロインでしょうか。ならばこれで東南西北東西南北が揃う事になるんですかね。

☆「週刊少年サンデー」2002年52号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 ◎『MAJOR』作画:満田拓也【開講前に連載開始のため、評価未了/雑感】

 このマンガって、ナニゲに“『プロゴルファー猿』方式”が採用されてるんですよねぇ。主人公側に理不尽なまでの幸運と奇跡が舞い込むってパターン。まぁ、そうでもしないと勝てない力量差ですから仕方ないんですが、問題はそれをどう読者に悟らせないかでしょうね。
 しかし、もうすぐ連載8年なんですが、まだ全く話の結末が見えて来ないというのも凄い話ではありますね。とはいえ、日本には『なんと孫六』作画:さだやす圭)というトンデモ大河ドラマがありますが(笑)。なにしろ、駒木が高校生の時からマンガ内時間で1年経ってないんですから。

 ◎『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫【第3回掲載時の評価:B/雑感】 

 な、なんか凄くあざとい展開なんですが(苦笑)。これって、21世紀の少年マンガで合ってますよね?(苦笑)
 ここまでやって、大して嫌らしさが出ないのが絵柄と言うか作風と言うか。例えば「少年マガジン」系の絵柄と作風でコレをやられたら、気持ちが萎えて仕方が無いと思いますが、いかがでしょうか? 

 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため、評価未了/雑感】

 「ここがあなたの終着駅ですか?」
 この言葉を浴びせ掛けたいマンガ家さんが、次から次へと脳裏に浮かんで来て仕方ないんですが(笑)。終着駅が「連載作品ヒット」で、その前の駅が「パ○リ」という……。
 ひょっとしたら久米田さん、そういうネタもネーム段階では仕込んでいたかも知れませんね。でもまぁ、「サンデー」も偉そうにネタに出来る立場ではありませんからね(苦笑)。 


《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り『サブ・ヒューマンレース』作画:小澤淳/少年サンデー超増刊02年12月号掲載)

 さて、今日2本目のレビューです。
 この作品は「サンデーまんがカレッジ」の02年6月期入選作なんですが、この度、受講生さんからリクエストを頂きまして、レビューを実施する事にしました。まぁ、以前から「増刊掲載でも、評価によってはレビューする」と言ってたんですけどね。

 では、時間も詰まってますし、早速レビューの方に。

 まずこの作品の細かい点を語る前に言っておかなくてはならないのは、「この作品は凄いパワーを秘めている」ということです。とにかく読者の目を次のコマへ、次のページへと引き込んで行くのです。これはコマ割りの構成力と演出力、それと言語感覚がずば抜けているからでしょう。
 このレビューでは、ある意味必要以上に内容を細かく読み込んでいく作業をするので、この後いくつかの欠点を指摘もしますが、普通に読んでいる限りは全く気にならない、気になっても妙な違和感を感じる程度で終わると思います。つまり「長所が短所を圧倒してる状態」になっています。そういう才気溢れる作品である事を前提として、レビューをお聴き下さい。

 ではまずから。 
 いわゆる“引き”の構図では気にならないんですが、人物のアップになるとデッサンの歪みや荒さが目立って来ます。これに関しては、出来るだけ早い改善を求めたいと思います。
 でも、新人さんなら逆(人物のアップだけ上手い)のケースが多いんですけどね。小澤さんは、数少ないマンガ専門学校出身組なんですが、凡百のマンガ家志望者とは違う何かを持っているのは間違いないようです。
 その一方で、先に述べた通り、大胆なコマ割りとスピード感の表現は大きな才能を感じさせてくれます。ある種、『アイシールド21』の村田雄介さんと似た部分がありますね。

 次にストーリー関連について。

 まず、シナリオ及び設定の構築やその説明を、必要最低限なものに抑えてクオリティを高め、限られたページを最大限に利用しようというスタンス非常に好感が持てますね。
 新人の読み切りでは、“複雑な設定を延々と説明した挙句、肝心のシナリオは中身の薄い勧善懲悪”というパターンが多いんですが、これとは対極にあります。いかにも新人賞の審査員が好みそうな作品と言えそうです。
 しかし何よりも優れているのは、セリフやアオリ文句などの言語感覚です。頭の中で音読した時のリズムがとてもシックリ来るんですよ。これ、出来るようで大半のマンガ家さんが出来てない事なんですよね。だから正直、この感覚の良さには大変驚きました。

 ただし、深く読み込んで行くと、まだ改善するべき点も残っています。
 まず1点目。これは先ほど挙げた言語感覚の素晴らしさと表裏一体なんですが、話の展開を言葉に頼り過ぎているような感が否めないのです。
 この作品の最大の見せ場は、力尽きてヘタれた主人公に謎の仮面の男が「何にせよ熱くなる事の素晴らしさ」を説き、その主人公の心境を熱いモノに変える…という場面なのですが、この作業がほとんどセリフだけで行われてしまうんですね。これが勿体無いんですよ。
 一応、これだけでもストーリー上の“お約束”を満たす程度の説得力は持っているので違和感は無いのですが、セリフだけでなく行動による動機付けをするのが、本当の姿だと思います。まぁ、レヴェルの高い要求でしょうけど……。
 そして2点目いくつかのシーンにおいて、やや独り善がり的な要素が認められる点です。プロの描くエンターテインメントである以上、全てのシーンにおいて「読者がどう受け取るか」とか「この描写によって読者に与える効果はどんなものか」…という事を考えなければなりません。
 が、この作品の何ヶ所かにおいて、必然性の無い場面や、「何が何でも描きたいから、読者に与える効果も考えずにとにかく描いた」…と思える描写がありました。この辺り、まだキャリアの浅さが出てしまったようですね。

 ……とまぁ問題点もありますが、デビュー作としては間違いなく高水準にあると言っていいでしょう。絵の不味さを減点材料としても、A−寄りのB+は進呈しても良いと思います。これからの活躍に期待しましょう。

 ──というわけで、今週のゼミは以上です。今週末は1周年記念式典で「仁川経済大学コミックアワード」もありますので、是非ご来場下さいますよう、よろしくお願いします。

 


 

11月27日(水) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(21)
第3章:地中海世界(2)〜エーゲ文明に生涯を捧げた学者たち

※過去の講義レジュメ→第1回〜第19回第20回

 いよいよ古代ヨーロッパのエピソードに入ったこの講義、前回は地中海世界の黎明期・エーゲ文明時代の歴史について概説してゆきました。
 本来ならば、今回からいよいよ古代ギリシア史に話題を進めてゆくのでありますが、ここでやや寄り道をさせて頂きまして、エーゲ文明の遺跡発掘や文字解読に生涯を捧げた人たちの人生の軌跡について、いくつかのサイドストーリーをお話してみたいと思います。

 エーゲ文明時代の遺跡発掘に携わった人の中で、一番の有名人と言えば、これはもう、ドイツ出身の大富豪・ハインリヒ=シュリーマンをおいて他に出ないでありましょう。
 彼の波乱万丈の人生は1822年1月6日、ドイツ帝国(当時)北部のノイエ・ブコーなる小村から始まります。プロテスタントの牧師を父に持つシュリーマンは、幼い頃から伝説や昔話が大好きな夢見がちの子供だったそうで、実際、その人生を決定付けたのも1冊の昔話の絵本でありました。
 その本とは、父親が8歳(7歳の説もあり)の誕生日のプレゼントに買い与えてくれた、「子供のための世界史」という古代史や伝説をモチーフにした子供向けの本。シュリーマン少年はその本を貪るように読みふけり、やがて、その中に収録されていたトロヤ戦争のエピソードに深く心を魅了されるようになりました。そして、シュリーマン少年は心に決めました。
 「大人になったら、トロヤの城跡を掘り当ててみせる」
 …それを聞いた大人は勿論のこと、昔話と現実の区別がつき始めていた周囲の子供たちも彼をバカにしました。しかし、そんな中でただ1人、ミンナという少女が、「私も将来、一緒にトロヤに行ってあげるから」と、シュリーマンの味方をしてくれたこともあり、彼は「今に見ていろ」とばかり、ますます情熱を燃やしたのでありました。

 しかし、そんなシュリーマン一家に不幸が訪れます。牧師の父親が不祥事を起こし、一家離散の上、村から立ち退かなければならなくなったのです。シュリーマン少年は、唯一の理解者・ミンナとも離れ離れとなり、オランダの雑貨屋へ奉公に出されることになったのです。当然のことですが、彼の「トロヤ遺跡を掘る」という夢も中断を余儀なくされました
 余談ですが、皆さんが恐らくご想像した通り、シュリーマン少年にとって、唯一の理解者・ミンナは初恋の相手であったようです。
 彼は人生設計のメドが立った24歳になって、純情にも長らく音信不通になっていた彼女にプロポーズをしたのでありますが、折悪しく彼女はその数日前に別の男と結婚した後だったそうです。その時のシュリーマンの落胆振りは見るに見かねる程であったようです。ただし、彼は後に人生最大の理解者・ソフィアと出会い、幸せな家庭を築く事になりますが──。

 それからのシュリーマンの人生は、まさに波乱万丈としか言い表せない程の起伏に富んだものでありました。
 雑貨屋の丁稚修行で辛い少年期を過ごし、その後も病気に倒れたり失業したりで貧困に苦しんだりもしました。しかしその後には、独立して個人で始めた商売が大成功して、最後には巨万の富を築き上げる“一発逆転”を実現したりもします。(もっとも、その間も船の難破事故で奇跡的に助かったり、全財産を注いで買い入れた商品を危うく全焼させる羽目になりかけるなどの酷い目にも結構遭っているのですが……)

 ところで、この商売の成功には裏がありました。彼は多くの国で貿易を成功させるために、独学でヨーロッパだけでも7ヶ国の言語(英語、オランダ語、ロシア語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語)を習得していたのです。特に、西ヨーロッパ人の大半が喋れなかったロシア語が堪能であったことが有利に働いたようです。
 彼の語学学習法は全くのオリジナルなものでした。
 まず、学習したい言語で書かれた本を購入します。安くて出来るだけ分厚い本を古本屋で買って来ることが多かったそうです。
 で、本を買って来ると、その本を何度も何度も大声を張り上げて音読し、それを何週間も何ヶ月も、本の文面を全て暗誦出来るまで続けます。それがあまりにも熱心だったため、近所迷惑のカドで下宿を追い出される事も度々だったと、後にシュリーマンは語っています。また、ただ暗誦するのは張り合いがないので、わざわざ耳の不自由な人を雇って来て、誰かに聞いてもらっているつもりになって暗誦の練習に勤しんだとのことであります。今なら眉をひそめられるような話でありますが、それくらい熱心だったということは間違いありません。
 そうやって読む方が完全になると、今度は本の中の文章について単語を入れ替えて別の文を作り、それをネイティブの人に添削してもらって正確な語法を学習してゆきました。この学習法によって、シュリーマンは多くの言語の読み書きを完全にマスターしただけでなく、類稀な記憶力を手に入れる事ができたそうです。最後には1つの言語をマスターするのに6週間かからなかったと言いますから凄い話です。
 と、そうやって数多くの言語を習得したシュリーマンでしたが、「この言語にだけは手を出すまい」と心に決めていたものがありました。
 その言語とはギリシア語。そう、トロヤ文明に関する文献を読むためには欠かせない言語です。彼は「ギリシア語を勉強してしまったら最後、自分はトロヤに関するギリシア語文献を片っ端から読みふけってしまい、商売が疎かになってしまうに違いない」と考え、我慢に我慢を重ねてギリシア語には手を出さずにいたのでありました。流浪の人生を歩んでもなお、彼はトロヤ文明の発掘を諦めていなかったのです。

 1864年、一生の裕福な生活が保証されるほどの富を築いたシュリーマンは、42歳にして実業界から身を引いて、己の夢のために余生を捧げる決心をしました。
 まず彼は、妻・ソフィアと共に3年間の世界漫遊旅行に出てゆきました。そのコースの中には開国間もない幕末の江戸も含まれていたそうですから、正に世界一周旅行だったようです。
 そして1868年、ついにシュリーマンは遺跡発掘に乗り出します。彼の波乱万丈の人生も、いよいよ最終段階を迎えていたのでした──。

 こんないい所で切ってしまうのは心苦しいのですが、今回はここまで。次回はシュリーマンの遺跡発掘と、その他の功績者たちのエピソードも紹介したいと思います。(次回へ続く

 


 

11月25日(月) ギャンブル社会学
「toto(サッカーくじ)売上げ低迷、その原因を探る」(2)

 ※前回までのレジュメはこちらから→第1回

 サッカーくじ(toto)の不振をテーマにしたギャンブル社会学講義の2回目です。
 前回は、サッカーくじの現状を説明し、集客と売上げの望めるギャンブルの条件についてお話をしました。
 そして今回は、低迷の続くサッカーくじが、果たしてその条件を満たしているかどうかの検証を行います。

 ではここでもう1度、集客と売上げの望めるギャンブルの条件をおさらいしておきましょう。その内容については第1回の講義レジュメを参照して下さい。

 1.“一獲千金”性
 2.達成感喚起力
 3.資金の回収期待値
 4.戦略性
 5.中毒性
 6.とっつき易さ
 7.ファンサービスの充実度

 ……では、これらの条件にサッカーくじがどれくらい合致するかを検証してゆきましょう。

 1.“一獲千金”性
 サッカーくじの当せん金の上限は1億円で、宝くじのロト6とほぼ同等のレヴェルに達していますが、問題は当せん金の実態です。極端な話をすれば、競馬などの公営ギャンブルには払戻金の上限は無いのですから。
 2002年のデータ(ただし第69回まで)を考慮してみますと、1等(全試合的中)の平均当せん金額は47,331,640円(当選者ゼロの時は除外)となります。これは、シーズン後半に波乱が続き、上限の1億円が頻繁に飛び出した結果でしょう。
 これだけならば、かなり高水準の“一獲千金”性と言えますが、サッカーくじは当せんの口数によって当せん金が大きく左右されます試合結果が順当に収まった際には当せん金額も大きく抑えられ、事実、第33回(2002年度第2回)では1等19,216円という超低額となっています。そこまで極端ではなくても、全体的に見れば1等当せん金が数百万〜2千万円前後となるケースが多く、本場イタリアでも1等当せん金が100円辺り数百万に収まる事が多い事から、どうやらこの辺りが標準的な金額と言えそうです。
 この“数百万〜2千万前後”という金額は、「高額だけど人生が変わるほどではない」という微妙な額ですが、一応この条件を満たすレヴェルは「高い」と言えるのではないでしょうか。ただし、それだけで集客と売上げが望めるほどの域には達していないと思われます。

 2.達成感喚起力
 駒木も経験しているので分かるのですが、サッカーくじのようなスポーツベッティングの場合、予想が当たった時の達成感は堪えられないものがあります。そういう意味では、くじが的中した時に得られる達成感の高さは凄まじいものがあると想像出来ます。 
 しかし、サッカーくじは基本的に当たらないものです。普通に1回数口〜数十口購入しているだけでは年に1、2度低額の2等(13試合中12試合的中)や3等(13試合中11試合的中)が的中する程度で、1年間全く的中しないというのもザラです。これでは素晴らしい達成感も絵に描いた餅です。
 そういうわけでサッカーくじは、勝った時に得られる達成感の高さは見逃せないものがありますが、肝心の勝利頻度が低いために、その達成感を得る事が非常に難しいのが現状です。よって、この条件を満たす度合いは「低い」とせざるを得ないでしょう。

 3.資金の回収期待値
 サッカーくじの理論上の回収期待値は47%(数年後に50%となる予定)です。これは宝くじの46.8%に次ぐ超低率で、ある種、国家的詐欺事業とも言える酷いものです。どうも主催者側は、この低期待値を「サッカーくじが“くじ”であってギャンブルでない」理由の1つとして正当化している節があり、これは言語道断です。
 しかも当せん金は、1等50%、2等20%、3等30%の割合で分配されるため、「引き分け予想を無くした少額投資で3等を狙い、資金回収を図ろう」…という、ギャンブルとして現実的な策を採る場合などは更に分が悪くなります。
 逆に一時的に期待値が上がる場合としてキャリーオーバー(当せん口数が少なくて払戻し予定額が余った場合、その全額が次回に持ち越されること)が出た場合が挙げられますが、キャリーオーバーが出現するのは、ほぼ1等に限られていますので、現実問題として大した“お得感”は無いでしょう。
 ……というわけで、この条件に関しては到達度が「極めて低い」としなくてはなりません
 
 4.戦略性
 スポーツベッティングの魅力と言えば、本来はこの戦略性にあります。対戦するチームや選手の能力や技量などを分析し、試合やレースの内容をシミュレートしてその勝敗を見極めて“勝ち馬に乗り”、ギャンブルでの勝利を目指すわけです。これは競馬などの予想作業を思い浮かべて頂ければよく分かると思います。
 しかし、サッカーというスポーツは余りにも波乱の要素が大きく、「チーム全体の総合力が上回る方が勝つ」というスポーツベッティングの大前提となるセオリーがほとんど通用しないのです。これは、今年開催されたサッカーW杯の1試合ごとの結果(特に1次リーグ)を見て頂ければ実感して頂けるでしょう。
 また、「引き分けを予想する」という作業が予想の難しさに拍車を掛けます。特に日本のプロサッカーは長年完全決着方式を採用して来た事もあり、“戦略的な引き分け”というものがほどんど見られません。つまり、引き分けの大半は不可抗力の結果なのです。しかもその不可抗力による引き分けが相当数に及び、ますます戦略性を削いでしまっているのです。
 更に、です。サッカーの結果予想は、1試合ごとですら難しいのに、サッカーくじは13試合の結果を同時に予想し、最低でも11試合分を的中させないと勝ちとはならないのです。その上、今年のサッカーくじでは、数千万〜1億円という、常識的に考えて有り得ない結果が出た時にしか出現しない高額配当が頻繁に出てしまいました。サッカーくじの戦略的な的中など、夢のまた夢です。
 有り体に言えば、サッカーくじは結果を熱心に予想するだけ無駄な競技とほぼ言い切って良く、その実態としては戦略性が低い“運任せ”のギャンブルであると言わざるを得ません。来年以降導入が検討されている、点数差を含めた勝敗予想をする新式くじなどでは、更にその傾向が強まる事でしょう。
 ただ、未だに「サッカーは戦力分析や試合内容のシミュレートの精度を増せば完璧な予想は可能である」という認識を持つ人も多いのです。少なくともそういう人たちにとっては「サッカーくじは戦略性の高いギャンブルである」という事になりますから、それも考慮に入れなければなりません。
 よって、サッカーくじの戦略性については、実態はともかくとして、顧客層の抱いている認識も考慮すると、「中程度は条件を満たしている」とするのが妥当と言えるのではないでしょうか。

 5.中毒性
 ここでもう1度、中毒性の高いギャンブルに見られる傾向について振り返っておきましょう。今回の講義で駒木が指摘した3つの傾向は以下の通りでした。

 ・勝利した時の達成感・快感が大きく、敗北した時の屈辱感が大きい。
 ・ゲーム1回の時間が数分〜数十分と短く、プレイ終了後、すぐに次のゲームに移れる
 ・そのギャンブルがプレイ出来る場所や日数が多い。

 ……まずこの中で、最初に挙げた要素(達成感と屈辱感の落差が激しい)についてなら、一応は適合していると認められます。もっとも、多くのギャンブラーは大した達成感も味わう事なく屈辱感や敗北感ばかり味わっていますので、果たしてどこまで本当に機能しているかは別の話になりますが。
 ただし、他の2つの要素に関しては全くと言って良い程適合していません
 まず、2つ目に挙げた要素(ゲーム1回の所要時間とゲームごとの間隔が短い事)については、1回の結果が出るまで丸1日〜2日かかる上、次の結果が出るまで最低数日のタイムラグが有ります
 そして最後に挙げた要素(プレイできる場所の数や日数)に関しては致命的な欠陥があります。何しろ、シーズンオフの数ヶ月間は全くの休眠状態になってしまうのですから……。よしんば“中毒症状”にかかっていた人がいたとしても、その間に症状が消えてしまうか、もしくは他のギャンブルに鞍替えしてしまう事でしょう。
 以上の事から考えると、この条件への適合度は「低い」ということになりそうです。

 6.とっつき易さ
 私事で恐縮ですが、駒木はサッカーくじの全国発売が開始された頃、短期間ですが熱心に予想活動を行い、同じく短期間ですが、当時運営していたウェブサイトにおいてサッカーくじ予想コンテンツを公開していた時期がありました。そしてこの時の経験が今回の講義に深く影響を与えている事は申し上げるまでも無いでしょう。
 そんな短い活動期間の中で、駒木にとって最も印象に残っていたのが、全国発売第2回──その前週に1等1億円が飛び出し、サッカーくじが巷の話題の的となった時──のサッカーくじ販売所の光景でした。
 この時は「100円が1億円に」という噂が噂を呼び、これまでサッカーやギャンブルとは縁の無かったようなビギナー層の人たちが販売所に詰め掛け、あちこちで大混雑となっていました。が、そんな人々の大半は、どのように予想用のマークシートを埋めていいか分からずに右往左往していたのです。そうです。この人たちにとって、ほとんど見聞きした事も無いJリーグの試合を13ゲームも予想するのは容易な作業では無かったのです。
 それからしばらく経つと、あの時、発売窓口の周りを右往左往していた人たちのほとんどは姿を消し、くじの売上げ額も低下していました。つまり、ビギナー層の取り込みに失敗したわけです。

 前回の講義でも述べましたが、初心者に受け入れられ易いギャンブルとは、“試しに1回”が簡単に出来、しかもその結果がすぐに出て、“じゃあもう1度、今度はもう少しじっくり考えて”…という風に段階を踏んでゆけるという類のものです。その中でビギナーズラックが炸裂し、“わぁ、当たった(勝った)! これ楽しいな”…となれば完璧になります。
 しかしサッカーくじは、ビギナーを取り込む際に、最初の“試しに1回”の段階で躓いてしまうのです。一応、初心者向けに“クイックピック”という、予想をコンピューターのランダム抽選に委ねる運任せの買い方が用意されているのですが、果たしてそれが、ビギナー層にサッカーくじの魅力を伝える事に繋がるかと言えば、疑問と言わざるを得ません。「どうせ完全な運任せだったら、宝くじの方がまだ分かりやすい」ということになってしまうのがオチでしょう。
 …というわけで、この条件についても、適合している度合いは「低い」としなければならないでしょう。

 7.ファンサービスの充実度
 サッカーくじにおけるファンサービスのお粗末さは、全国発売開始の以前から盛んに叫ばれて来た事でありました。

 まず、最もお粗末な実態としては、サッカーくじの販売店の数が少ないという事が挙げられます。
 くじの販売業務を行っているのは、金券ショップや宝くじ売り場、携帯電話ショップ、そしてガソリンスタンドなどですが、その多くが都市圏の繁華街に偏在しています。地方によっては、車で数十キロ行ったガソリンスタンドに行かなければならず、その上に「ガソリンも入れずにサッカーくじだけ買いに来たのか」と店員から文句を言われて嫌な思いをする人も少なからずいるようです。
 これには、当初予定されていたコンビニの販売店化が、「青少年の育成に悪影響」という、抵抗勢力の馬鹿げた反対で頓挫してしまった影響があります。同種のギャンブルである宝くじを全くの野放しにしておいて、青少年に悪影響もクソもないのですが、この辺りがギャンブル後進国ニッポンの泣き所でしょう。

 そして更にもう1点としては、的中時の当せん金払戻しの煩雑さがあります。
 実際にサッカーくじを購入した経験のある方以外はほとんどご存知無いと思われますが、サッカーくじの払戻し業務を行っているのは全国に散らばる信用金庫です。しかも、全ての信用金庫で払戻業務を行っているわけではなく、あらかじめ公式ウェブサイトなどで場所と店名を確認しておかなければなりません何という不親切さでしょうか。
 しかも、最近になってやや改善されましたが、(宝くじで見られる)少額当せん金の販売窓口での払戻しも、原則として行われていません。たとえ当せん金額が100円台であろうと、わざわざ平日の昼間に信用金庫まで出向いて手続きを踏まなければ払戻金が受け取れないのです。

 これらの体たらくは、正直言って運営サイドの神経と能力を疑ってしまうものであり、大きな課題と言わざるを得ません。申し訳程度に、インターネット上でサッカーくじの購入予約(あくまで予約)が出来たり、払戻金が口座振替で受け取れる会員サービスがありますが、全くと言って良い程PRがなされておらず、存在しても無きが如しというのが現状です。
 以上の事からも分かりますように、サッカーくじのファンサービス充実度は「極めて低い」と指摘しなければならないでしょう。

 ……と、これで7つの条件に対する分析が終了しました。これを1つの表にまとめて見ますと、以下のようになります。

  一獲千金 達成感 期待値 戦略性 中毒性 とっつき易さ サービス
サッカーくじ 極低 極低

 高い“一獲千金”性を持ち、ある程度の戦略性を認識されているものの、他の要素が思い切り足を引っ張っている…という現状がよく分かります。特に“とっつき易さ”と“ファンサービス充実度”が低いのが厳しいところです。
 サッカーくじの運営サイドは、この現状から“一獲千金性”を大幅アップし、“ファンサービス充実度”をある程度改善することで低迷の打破を目論んでいるようです。つまり、運営サイドが求めているサッカーくじの理想の姿は以下のようになります。

  一獲千金 達成感 期待値 戦略性 中毒性 とっつき易さ サービス
サッカーくじ(理想型) 極高 極低

 なるほど、長所を伸ばし、最悪の部分を改善する事で魅力を増そうという作戦です。まぁ現実的な策と言えなくもありません。
 しかしどうでしょうか? 日本にはサッカーくじ以外にも様々な種類のギャンブルが合法・非合法的に行われていますいくらサッカーくじが(運営サイドの考える)理想的な姿に達しても、他のギャンブルと比較して優れたものでなければ支持を伸ばす事は出来ないはずです。
 それでは、日本で行われている他のギャンブルは、今回採り上げている7つの条件にどれ位合致しているのでしょうか? 次回はこの点について検証してみたいと思います。(次回へ続く

 


 

11月24日(日) ギャンブル社会学
「toto(サッカーくじ)売上げ低迷、その原因を探る」(1)

 受講生の皆さんはご存知無いか、もしくは記憶が忘却の彼方に追いやられているであろうと思われますが、この講座は競馬学とギャンブル社会学を専門とする社会学講座なのです
 いつの間にか「現代マンガ時評」の方が有名になってしまい、世間的にはそちらがメインのように思われているようですが、本当は違うんです。ユースケ・サンタマリアの本業が実は歌手だ…みたいな話ですが、どうか認識を新たにして頂きたいと思います(笑)。

 で、今日からは開講1周年を直前に控えて初心に返ろう…ということで、久々にギャンブル社会学のシリーズ講義を実施します。
 今回の講義は、サッカーくじ(toto)の売上げ不振問題に主題とします。そしてその内容としては、まず1つのギャンブルが売上げを伸ばすための条件を提示し、その条件に照らし合わせながら、サッカーくじと日本で行われている他のギャンブルとを比較対照してゆきます。そうしてサッカーくじ不振の原因に迫り、そこから脱却するための方策を提言して締めくくりたいと考えています。笑い控えめの骨太の講義になると思いますが、どうぞお付き合い下さい。


 ──さて、今回の講義の主題として採り上げましたサッカーくじ(toto)は、正式名称を「スポーツ振興くじ」と言う文部科学省を“胴元”とする異色の公営ギャンブルです。
 このギャンブルは、文字通りプロサッカー試合の勝敗を当てるというもので、スポーツベッティングの王道とも言える存在です。日本では様々な競技について賭けをする事をトトカルチョと言ったりしますが、それはイタリアのサッカーくじ「トトカルチョ」が語源であるのは有名な話ですね。東南アジアで小型バイクが“ホンダ”と呼ばれたり、西アジアの盛り場でポン引きが日本人を“ナカソネ”と呼んだりするようなものでしょうか。

 そんなわけで、外国では随分浸透していたサッカーくじですが、日本では販売の実現までに相当の年数を要しました。サッカーくじを販売する構想そのものは、実はJリーグ創設の頃からたびたび浮上していたのですが、そのたびに子供の無菌培養を目論むPTA諸団体や、憲法改正論議と同じくらいギャンブルを嫌悪する革新系政党などによる、「ギャンブルは悪。悪いものは悪いからダメ」…といったヒステリックで的外れな抵抗のために立ち消えになってしまっていたのです。
 それでも保守系国会議員を中心とした“サッカーくじ推進派”は、「サッカーくじはギャンブルでなくて“くじ”である。だから悪くない」といった、“毒をもって毒を制す”的な、事実誤認と偏見と妄言のクロスカウンター激烈な抵抗を打破。2000年の一部地域テスト販売を経て、2001年からは遂に全国販売の開始に漕ぎ着けたのでした。

 ……こうしてデビューを果たしたサッカーくじは、販売所が極めて少ないという大きな問題点を抱えながらも、全国発売1回目の1等に最高賞金の1億円が飛び出したこともあって、その直後から売上額は急上昇。マズマズのスタートダッシュを切りました。
 しかしその後はシーズンを追うごとに売上げ額は次第に先細りとなり、結局1年目は目標812億円に対して実売604億円という結果に。楽観的な展望では「年間売上げ2000億円」という見込みもあっただけに、これは大惨敗と言えるものでした。
 この結果を受けた運営サイドは、平均当選金額をアップするためのルール一部改訂を実施。万全を期して2年目に臨んだのですが、依然として低迷は続きます。シーズン開幕当初、ほんの一時はやや持ち直したものの、6〜7月のW杯明けからは売上げが急落。まだ今年度最終販売が終わっていませんが、このままでは昨年度比65%前後の超大惨敗ということになりそうです。昨春に複数発刊されたtoto専門誌も既に全て休刊するなど、民間からサッカーくじをバックアップする体制は既に崩壊しつつあり、この悪い状況が改善されるメドは全く立っていません

 そして、このような危機的事態について運営サイドは、

 (1)低額配当が多い
 (2)同じ試合が2回のくじの対象となる重複指定など、販売方法が分かりにくい
 (3)販売店が近くにない

 ……といった問題点を挙げ、来年からは販売店の増設や当選金上限の値上げ・新式くじの創設などの打開策を採る予定であるとしています。

 ですが、サッカーくじ低迷の原因は、果たしてそんな表象的なものだけだけなのでしょうか?

 どうも現状のサッカーくじには、もっとギャンブルとして根本的な部分──他のギャンブルと比べて魅力的なギャンブルであるかどうか──に問題点があるのではないかと思えてなりません。つまり、運営サイドに「客と売上げが呼べるギャンブルとはどんなものか?」といった部分の認識が欠けているのではないか…ということです。これには、先程述べましたように、運営サイドが「サッカーくじはギャンブルでなくて“くじ”だ」という謝った認識を抱いている事にも原因があると思われますが、この辺の理解が無ければ、何をどうしてもサッカーくじの低迷は続くと言わざるを得ません。

 では、“客と売上げが呼べるギャンブル”とは、一体どのようなものなのでしょうか? 
 とりあえずこの講義はこの点から論を進めていきたいと思います。

 さて、1つのギャンブルが顧客の支持を得る条件としては大小様々なものが挙げられるでしょうが、今回の講義では特に大きな条件7つを採り上げ、これをベースにして話をしていきます。
 それでは以下、この7つの条件を紹介してゆきましょう。

 1.“一獲千金”性
 文字通り、少ない元手で莫大な利益をあげる事が出来るかどうかの度合いです。ギャンブルというものが「資金を投資し、それ以上の利益を回収する試み」である以上、これはギャンブルにとって最も基本的で重要な条件といえます。
 この“一獲千金”の魅力は極めて強力で、たとえ他の6つの条件をほとんど満たしていなくても、この条件さえ満たしていれば“客と売上げの呼べるギャンブル”となることさえ出来るくらいです。

 2.達成感喚起力
 簡単に言えば、ギャンブルに勝つ(=払戻しを受ける)頻度と、その際に浸れる快感・達成感の大きさです。
 一見、ギャンブルはお金儲けをするだけのゲームに見えますが、実はそうではありません。ギャンブル愛好家にとってギャンブルとは、ゲームに勝利して得られる(時に優越感にも似た)達成感を求めるためのもの…という側面も確かにあるのです。
 ギャンブル愛好家の中には、お金よりもこの達成感を求めてギャンブルを楽しむ人も少なからずいます。「儲かるお金は少ないが、勝てる回数は多い」というギャンブルは、そういう人にとって大きな魅力となることでしょう。

 3.資金の回収期待値
 統計学上、投資した資金がどのくらいの確率で回収できるか、というパーセンテージです。例えば、100円投資して回収できる平均払戻金額が99円の場合、「このギャンブルの期待値は99%である」となります。
 この期待値が高いギャンブルは、それだけで多くの顧客を得ることが出来、特にプロ・セミプロと自称する人たちからは絶大な人気を得ます
 もちろん期待値が高い分だけ“薄利多売”を強いられますが、期待値が100%を割っている限りは、長い目で見れば必ず胴元が儲かる仕組みになっていますので赤字にはなりません。例えば大規模カジノのように、1年365日24時間営業しているような施設では十分な利益があげることができるのです。

 4.戦略性
 そのギャンブルの成績が、プレイヤーの技量によって左右される度合いです。簡単に言えば、どれくらい“上手い・下手”や“強い・弱い”が分かれるギャンブルなのかどうか…ということになります。
 戦略性が高いギャンブルになると、技量の高いプレイヤーがそのギャンブルをした場合の期待値は統計学上の数値を超え、時には期待値100%をオーバーする“必勝法”を会得する場合もあります。勿論、そこまで達することが出来る人はほんの一握りなのですが、負け続けている人でも「いつか自分も…」という願望を持って分の悪い勝負を続けるため、多くの顧客と高い収益を期待する事が出来るのです。
 また、実は戦略性が全く(又はほとんど)介在しないギャンブルでありながら、胴元側のイメージ戦略やプレイヤー側の幻想によって、「このギャンブルには戦略性がある」と認識されているギャンブルもあり、その場合は戦略性があるギャンブルと考えます

 5.中毒性
 プレイヤーが、そのギャンブルにどれ位のめり込めるかどうかの度合いです。
 この中毒性が高いギャンブルだと、勝っても負けてもプレイを止められなくなり、結果的に莫大な金額をそのギャンブルに投じる事になってしまいます。あまり褒められたものではありませんが、この条件を満たすギャンブルは熱狂的な愛好者に支えられて多くの収益を得る事が出来ます
 どのような要素を含むギャンブルに中毒性が高くなるかは、未だ研究の余地を残していますが、以下の要素を含むギャンブルは間違いなく中毒性が高いものと言えます

 ・勝利した時の達成感・快感が大きく、敗北した時の屈辱感が大きい。(止めるに止められなくなる)
 ・ゲーム1回の時間が数分〜数十分と短く、プレイ終了後、すぐに次のゲームに移れる(「もう1回くらい良いか」となりやすい)。
 ・そのギャンブルがプレイ出来る場所や日数が多い。(常習性が増す)

 6.とっつき易さ
 とある1つのギャンブルについて何も知らないビギナーに対し、その魅力がどれくらい簡単に伝えることが出来るかを示す度合いです。つまりは新規顧客の獲得し易さです。
 この条件を満たすためには、ギャンブルのルールが簡単であったり、本来は複雑なルールであるにしても“入門編”的な参加手段がある必要があります。そして、初心者でも比較的勝ちやすい──ビギナーズ・ラックが成立しやすい──ギャンブルであれば尚良いでしょう。特にこの条件と他の条件が複合的に組み合わさった時は、集客的にも売上げ的にも絶大な威力を発揮する事は間違いありません。

 7.ファンサービスの充実度
 ギャンブルのプレイヤーに対する、胴元側のサービス度です。快適な空間を整備して顧客に居心地の良さを提供し、「また今度来よう」という気にさせます。この条件を満たすギャンブル又は施設は、リピーター、特に女性の顧客を多く獲得する事が出来るでしょう。
 サービスの手段は様々ですが、清掃の徹底男女別トイレ・空調設備の設置から始まって、湯茶・ドリンク・アルコール・食事の提供や常連客向けのマイレージサービス、更にはVIPルーム(特別席)の設置・接待にまで及びます。
 サービスの質が極めて高い施設などでは、“一獲千金性”や回収期待値が低いギャンブルでも高水準の集客や売上げを見込めます


 ──と、これらが“客と売上げが呼べる”ギャンブルの条件と言うわけです。
 これらの条件の中にはお互いで相反するものもあり、全ての条件を完璧に満たすことは不可能なのですが、それでも1つ以上の条件を高いレヴェルで満たしているならば、それは成功する可能性の高いギャンブルと言えるでしょう。

 では、今回主題に挙げましたサッカーくじは、果たしてこれらの条件を満たしているのでしょうか? 

 今回は時間の都合上ここまでとしますが、次回の講義はこの点に注目してお送りしたいと思います。(次回へ続く

 


 

11月23日(土・祝) 競馬学特論
「G1予想・ジャパンカップ編」

駒木:「というわけで、今日も競馬学特論講義だね」
珠美:「今日はまず先に、今日行われましたジャパンカップダートの簡単な回顧を行います。ジャパンカップダート、1着から5着までの着順は以下の通りになりました」

ジャパンカップダート 結果(5着まで)
1着 イーグルカフェ
2着 リージェントブラフ
3着 アドマイヤドン
4着 プリエミネンス
5着 ゴールドアリュール

駒木:「珠美ちゃん、この他、有力馬の着順を紹介してくれるかな?」
珠美:「ハイ。えーと、人気どころでは6着トーホウエンペラー、8着ハギノハイグレイド…といったところでしょうか。
 それにしても大波乱ですねー。馬連、ワイド、馬単、3連複と、4種類の万馬券が飛び出しました。馬単に至っては10万馬券ということに……(溜息)」

駒木:「配当聞いてたまげたよ。リージェントブラフが人気しなさ過ぎだったんだね。凄い人気の盲点だったなぁ……。今日の馬券、穴党の人なら的中している人が案外多いんじゃないかな。玄人向けの穴馬券だったね」
珠美:「それでは簡単に上位馬の回顧をしていただきたいんですが、まずは1着のイーグルカフェデットーリ騎手の好騎乗が光った形でしょうか?
駒木:「いや、まったく。あのイン突きにはシビれた。追い込み馬の競馬を好位でやられたら、他の馬はひとたまりも無いよね。やっぱりヨーロッパの騎手はイン突きが上手いなぁ。
 今日のレースを観てて、昔、競馬場で知り合ったセミプロの人が、勝負馬券を的中する度『このレースは馬じゃなくて人(騎手)が走ってるんだよ』って言ってたのを思い出した。今日のレースはまさにそれだね。馬には悪いけど、デットーリの騎乗が無かったら今日の勝ちは無かったはず。いやはや、恐れ入りましたって感じ」
珠美:「そして、2着にはリージェントブラフ。ゴール直前で順位が変わった形の2着でした」
駒木:「このレース、3〜4コーナーでアドマイヤドンとゴールドアリュールが早仕掛けしたせいか、最後の直線でペースがバタッと鈍ってるんだよね。まさに展開がハマった形で、他力本願が実った感じ。この馬も実力以上の着順が出せてるんじゃないのかな」
珠美:「1番人気・3着のアドマイヤドンのレース振りはいかがでしたか?」
駒木:「5着のゴールドアリュールもそうだけど、ちょっと乗り役さんが馬の実力を過信してたかなって気がする。まぁ、これまでのレース振りから考えると、それも仕方ないと思うんだけど。
 多分、直線入口でもっと後続を千切れるって感覚があったんじゃないかな。ひょっとしたら、4コーナーあたりまでの手応えは抜群だったかも知れない。けど、それが出来なかったわけだね。
 とりあえず、アドマイヤもゴールドもクロフネにはなり損なったわけだ。後はこれからの成長次第だけど、競馬界全体のことを考えたら、ちょっと残念な話ではあるね」
珠美:「プリエミネンスは4着に健闘しました」
駒木:「そうだね。でも、勝負が決まってからの流れ込みって感じがしないでもない。やっぱり中央のG1だと入着級で終わっちゃうのかな」
珠美:「先ほども少しお話していただきましたが、5着に沈んでしまったゴールドアリュールはいかがでしょう?」
駒木:「懸念してた2つの問題──これまで対戦して来たメンツとのレヴェルの違い、脚を貯めるレースをした時の手応え──が一気に噴出しちゃった感じだね。これならまだハイペースで逃げた方が諦めがついたかも知れない。とはいえ、単勝2倍台の人気じゃ無理か…。まぁ、今日のところは縁が無かったんだろうね
珠美:「そして私たちの馬券も縁が無かったわけですね(苦笑)」
駒木:「僕なんかは後腐れの無い外れ方でスッとしたけどね(苦笑)」

 

珠美:「……さて、それではいよいよ明日のジャパンカップの予想に移りましょう。今年は中山2200mという変則的な条件で開催されます」
駒木:「施行条件が発表になる前は2500mかと思ったんだけど、同条件に有馬記念があるし、コーナーが多くて変なコースだから敬遠されたのかもね。でも、それなら1年くらい京都開催でやってもバチ当たらないと思うんだけどなぁ。2400mでキチンとしたレースが出来るし。…まぁ、東西の縄張り争いが激しいのは、どの業界も一緒だから仕方ないかな」
珠美:「……では、改めて出馬表をご覧いただきましょう」

ジャパンカップ 中山・2200・芝外

馬  名※赤字は外国馬 騎 手
× ファルブラヴ デットーリ
    インディジェナス サンマルタン
  ゴーラン ファロン
    イリジスティブルジュエル スマレン
    アメリカンボス 江田照
    アグネスフライト 後藤
シンボリクリスエス ペリエ
    サラファン ナカタニ
×   ノ−リーズン 蛯名
10 ジャングルポケット 武豊
    11 テイエムオーシャン 本田
× × 12 ブライトスカイ テュリエ
13 ナリタトップロード 四位
    14 ストーミングホーム ヒルズ
  15 マグナーテン 岡部
    16 エアシャカール 田中勝

珠美:「今回のメンバーの、全体的な印象はいかがですか? 下馬評では『日本馬優勢』ということですが……」
駒木:「まず日本勢に関しては、昨日のダートと同じように上位勢の地盤沈下が気になるところだね。去年のメンツからテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ステイゴールドが抜けたのに、“新規参入”はシンボリクリスエスだけ。その上、今回はジャングルポケットが休み明けだからねぇ。去年は“5本柱”くらいあったんだけど、今年は弱含みの“3本柱”ってところかな。
 それに対して、外国馬は全般的には去年並ってところかな。最有力馬って言われてるブライトスカイが3歳牝馬っていうのは気になるけど、去年体調最悪だったゴーランが今年は順調にやって来て相殺してるって感じ。
 まぁ、日本馬優勢には違いないけど、去年ほどじゃないね。油断するとヤラれる…くらいの気持ちで考えた方がいいんじゃないのかな」
珠美:「あと、予想が難しいかも知れませんが、展開の方はどうなるでしょうか?
駒木:「うん、難しいなぁ(苦笑)。ダートの方も予期せぬ展開だったしね。
 先行馬が少ないんで、多分、マグナーテンがハナに立って平均ペースじゃないかと思うんだよ。同厩舎のシンボリクリスエスが人気してるから変なレースはできないだろうし、かと言って岡部騎手が乗ってまでペースメーカーやらないだろうってのもある。後は人気馬の動向が複雑に絡み合ってきそうだから、詳しくは何とも言えないね」
珠美:「下手に決め付けると後々大変そうですものね(苦笑)。
 ……では、今日も1頭ずつ解説をしていただきましょう。まずは1枠の2頭から。いきなり外国馬2頭が登場ですね。しかも、デットーリ騎手の馬までいますね。難しいところでしょうが。いかがですか?」

駒木:「ファルブラヴだね。あんな鮮やかなイン突きを決めて見せたデットーリ騎手の馬が最内枠。しかも今、インコースは“グリーンベルト”で走りやすいんだよね。物凄くキナ臭い存在になっちゃったよ(苦笑)。
 馬の実力は、“レヴェルの低いイタリアでG1連勝→フランス遠征失敗”…という、G1挑戦に失敗した昇り馬みたいな存在。勝ったレースの時計が速いところまで“その手”の馬みたいで面白いね。
 展開は、やっぱり内々のインで待機して直線手前で進出…ってところだろうね。ただ、ダートと違って今回は他の馬もインを狙ってるし、2日連続で出し抜かれるもんかって他の騎手もデットーリ騎手をマークして来るだろうからね。そうそう2匹目のドジョウは泳いでない気がするんだけど、う〜ん……」
珠美:「悩ましいところですね(苦笑)」
駒木:「そうだね。穴狙いで一考ってところかな。僕は×印だけ打っておくことにしたよ。
 …さて、1枠のもう1頭、インディジェナスはもうお馴染みだね。日本馬が出走する香港の国際レースでいつも善戦するのが印象に残ってる人も多いんじゃないかな。でも、さすがに今回は荷が重そうだね。もう9歳…昔なら10歳だから、上がり目も薄いだろうし」
珠美:「続いての2枠も外国馬2頭ですね。前売り人気は今ひとつといったところですが……?」
駒木:「まずは外国勢の実績馬ゴーランから。去年も出走したけど、6着に終わって○印を打った珠美ちゃんをガッカリさせてしまった馬だね(笑)」
珠美:「そういうこともありましたね(笑)。何とか押さえで的中したから良かったんですけど」
駒木:「その惨敗振りから印を落としてる競馬記者の人も多いんだけど、去年のこの馬は体調が最悪だったからね。全く度外視していい成績なんだ。前走のブリーダーズCも馬場が合わなくての惨敗だったって言うし、良馬場なら去年以上のパフォーマンスが期待できると思うよ。下手をすれば久々の外国勢優勝かも…とまで、僕は思ってるけど」
珠美:「博士期待の1頭というところですか。でも、最近の博士の期待は……(苦笑)」
駒木:「それが一番心配なんだよね(笑)。まぁ、騎手も日本で実績のあるファロン騎手だし、何とかしてくれる事を祈ってるよ。
 で、次のイリジスティブルジュエル…噛みそうな名前だな(笑)。この馬は3歳牝馬で、後に紹介するブライトスカイに完敗した馬。成長度に賭けたいところだけど、かなり劣勢だね。何といってもこのレースはジャパンカップだからね」
珠美:「3枠から日本馬登場です。実績の割には人気薄の2頭ですが、どうでしょうか?」
駒木:「アメリカンボスは確かに油断ならない馬なんだけど、能力が秀でてるわけじゃないからね。他の有力馬を凡走させる魔力みたいなのを持ってる馬だけど、常識的に考えると劣勢
 アグネスフライトは確かにこの中間、かなりの変わり身を見せているんだけど、元々“谷間世代”のダービー馬だからね。この馬も地力的に問題がありそう。入着級かな」
珠美:「4枠、1番人気のシンボリクリスエスが登場です。博士の◎馬ですね」
駒木:「迷いに迷って…って感じだけどね。僕の見立てでは、天皇賞時点での地力ならジャングルポケットにやや劣る程度だと思ってるんだけど、今回は展開や順調度で勝ってるし、何だか想像以上に成長を続けてる気がするんだよね。ペリエ騎手の起用もメイチ勝負を考えての事だろうし、思い切って狙ってみたよ。早め早めの進出から抜け出して粘り込む形もペリエ騎手に合ってる。
 4枠もう1頭のサラファンは、今年のアメリカ芝中距離では相当上位の馬らしいんだけど、ここ数年、国際的にアメリカ勢の不振が続いてるみたいだし、追込み一辺倒っていう不器用な脚質もプラスじゃないよね。見送りが賢明かな」
珠美:「では次、5枠の2頭…あ、思い出したくない光景が……(苦笑)」
駒木:「大丈夫だ、珠美ちゃん。今度は武豊騎手が乗ってない(笑)。
 ノーリーズンは実質2ヶ月ぶりのレースになるね。まぁ、一度途中で仕上げてるから休養明けって程じゃないだろうけど。ただ、どうだろうなぁ。神戸新聞杯の負かされ方がキレイ過ぎた気がするし、ジャングルポケットやナリタトップロードと互角以上に戦えるとも思えないし……。まぁ、日本勢の4番手ってところじゃないかな。展開やらが紛れた時にはチャンスがありそうだけどねぇ。
 ジャングルポケットは、休み明けだけどまぁ実力の9割方は発揮できそうな感じじゃないかな。ただし、去年の優勝馬を捕まえて言うのもアレだけど、日本最強の看板背負うにしては小粒な印象が無きにしもあらずだなぁ。まぁ、十分強いんだけどね。オペラオーの全盛期には届かない…程度の不満だね。今回も、気がついたら豪脚一閃して差し切ってるかもしれないし」
珠美:「ノーリーズンの調教が今ひとつだと聞きましたが、どうなんですか?」
駒木:「らしいね。実戦タイプだから大勢に変化なし…と言いたいところなんだけど、プラス材料ではないだろうね」
珠美:「一抹の不安が…という感じでしょうか。では、次に6枠の2頭日仏の牝馬代表が揃いましたね」
駒木:「まずテイエムオーシャンは、ここでは力不足だろうと思う。最近じゃ、『テイエムオーシャンには負けないけど、ファインモーションには勝てないね』…みたいな感じで引き合いに出される事が多くなってしまった可哀想な馬だ(苦笑)。未だに結構人気してるのが不思議なんだけど、苦戦は間違いないね。
 問題のブライトスカイ。確かにフリーハンデ値も高いし、フランスでもトップクラスの馬であることは間違いないんだけど、3歳牝馬って事が大きなポイントだね。
 3歳牝馬チャンプって言っても、メジロドーベル・ダンスパートナー級なのかエアグルーヴ級なのかで全然意味合いが違うだろ? しかも今回は初の飛行機輸送だからね。条件は思ったよりも厳しい。まぁ、その辺をよく分かってる人も多いみたいで、意外と人気は伸び悩んでるね」
珠美:「博士は、ブライトスカイをどの位の能力に見立ててますか?
駒木:「メジロドーベルとエアグルーヴの中間ってところかな。これに長距離輸送を差し引いて、やや苦戦という見通し。一応×印は打ったんだけどね」
珠美:「そういえばペリエ騎手も合同記者会見で『能力は高いけど輸送とコンディション維持が心配」っておっしゃってましたね。
 では、7枠の2頭もお願いします。私はナリタトップロードを本命にしたんですが、博士は△印ですね。そのあたりはどうなんでしょうか?」

駒木:「確かに天皇賞は2着とはいえ内容はあったからね。状態も生涯最大のピークと言っていいくらいだし、ここで狙わないでいつ狙うって感じなんだけど……。
 ただ、この馬は注文が多いんだよね。好走までの条件が厳しすぎる。荒れ馬場がダメだとか、馬群に包まれるとヤバいとか。少頭数の前哨戦では強いのに、多頭数の本番ではイマイチなのは、どうもこの辺りから来てるみたい。
 馬券の対象にはなるけど、軸馬にするには、ちょっと慎重にならないといけないかなってのが僕の見解」
珠美:「私は、有馬記念はもう馬場が荒れてしまうので、このレースで目一杯仕上げて来ると読んだんですが?」
駒木:「鋭いね。多分そうだろうと思うよ。ただ、それが勝ちに結びつかないのがこの馬でね(苦笑)。まぁ、走ってみないと分からないか。
 おっと、ストーミングホームを忘れてた。実績はジャパンカップ出走馬にしては低い方だけど、ここ2走はブリンカーみたいな矯正具を着けてレース振りが一変してる。そう考えると怖い部分もあるんだけど、どうも走り方が日本の馬場向きじゃないらしい。それをどう考えるかだね」
珠美:「では最後、8枠の2頭についてお願いします」
駒木:「マグナーテンかぁ。微妙な馬だよねぇ。でもこの馬、本質的にはマイラーだろうから2200mは微妙に長い気がするなぁ。展開はメチャクチャ有利なんだけど、それを活かせるだけの能力があるかどうか。僕はちょっと疑問だね。
 エアシャカールの前走は、生涯最高の末脚を駆使したけど、またも及ばず4着。でも、ギリギリまで脚を貯めたら相当の末脚が使えることだけは確かになったね。
 でも、騎手がテン乗りの田中勝騎手というのがどうかなぁ。悪い騎手じゃないけど、乗り慣れた武豊騎手とは比べられたくないところだろうね。地力面も含めて、少しだけ劣勢
珠美:「……というわけで、全馬の解説をして頂きました。最後に買い目を紹介していただきます」
駒木:「7-10、3-7、3-10、7-13の馬連4点だね。(注:申し訳有りません。予想のみ公開中の際は数字が間違ってました)今回はナリタを絞りきれずに4点買いにさせてもらったよ。これで10-13とかで決まったらアツいだろうなぁ(苦笑)」
珠美:「私は7-13、10-13、7-10、13-15、1-13、12-13の馬連6点です。」
駒木:「それじゃ、後は天命を待つだけだね。何とか当たって欲しいよ(苦笑)」
珠美:「と、博士が不安を吐露したところで講義を終わりにしたいと思います。お疲れ様でした」
駒木:「珠美ちゃんもご苦労様」


ジャパンカップ 結果(5着まで)
1着 ファルブラヴ
2着 サラファン
3着 シンボリクリスエス
4着 15 マグナーテン
5着 10 ジャングルポケット

 ※駒木博士の“敗戦の弁”
 うー、凄すぎるぞデットーリ!
 今日も馬じゃなくて人が走ってるレースでした。ゾッとさせられました。武豊とかペリエとかデムーロよりも格段に上手い騎手がいるという、信じ難い事実を突きつけられてしまいましたなぁ。
 しかし、惜しかったのはシンボリクリスエス。出遅れるか〜、こんな時に限って……。せめて2着には突っ込んで欲しかったなぁ。

 ※栗藤珠美の“反省文”
 えーと、ナリタトップロードはどこにいましたか?(苦笑)
 先週から全く冴えなくなっちゃいました。やっぱりまだまだ勉強不足ですね。来週から気を引き締めて頑張ります!

 


 

11月22日(金) 競馬学特論
「G1予想・ジャパンカップダート編」

駒木:「さぁ、今週はジャパンカップウィークだ。土・日にレースがあるので、講義はどうしようかと思ったんだけど、結局両方やる事にした。去年、オープンキャンパスで扱ったレースだけに思い出深いものがあるしね」
珠美:「そうですね。でも、自信のほどはいかがですか?」
駒木:「それがあんまり(苦笑)。一応、ジャパンカップダートは過去2回とも的中させてるんだけど、難しさは群を抜いているレースだからねぇ」
珠美:「それはどうしてでしょう? やはり外国調教馬が出走するからでしょうか?」
駒木:「それもあるけど、どちらかと言えば、日本馬の力関係を探る方が難しい。何しろどの馬も、思い思いの競馬場へ地方行脚しちゃってるから。実力の比較対照が難しいんだよねぇ」
珠美:「確かに、ダートはG1競走だけでも色々な競馬場の色々なレースがありますものね」
駒木:「そうなんだよね。まぁ、詳しい話は後でするとして……」
珠美:「そうですね、それでは出馬表をご覧いただきましょう」 

ジャパンカップダート 中山・1800・ダ

馬  名※赤字は外国馬 騎 手
  プリエミネンス 柴田善
アドマイヤドン 藤田
× × リージェントブラフ 吉田
×   トーホウエンペラー 菅原勲
    カネツフルーヴ 松永
    レッドサン コーツィー
    リーバズゴールド フローレス
ゴールドアリュール 武豊
× イーグルカフェ デットーリ
× 10 ダブルハピネス 河内
    11 アブリーズ ミグリオーレ
    12 アルアラン 本田
    13 パプウス スポリクス
14 ハギノハイグレイド ペリエ
    15 スマートボーイ 伊藤直
    16 ビーマイナカヤマ 鹿戸

駒木:「あれ? 2人とも結構似た印になっちゃったねぇ」
珠美:「そうですねー。ハギノハイグレイドが▲でダブったのは、少しビックリしました。
 ……ではまず初めに、出走メンバーをパッと見ての第一印象は何かありますか?」

駒木:「まず去年の上位4頭がゴッソリ抜けちゃったね。で、5着のプリエミネンス以下、去年の入着級の馬や、それらの馬とドッコイドッコイのレヴェルの馬が揃った感じ
 それで終わったら寒い話なんだけど、新しく3歳馬からゴールドアリュールとアドマイヤドンの2頭が去年のクロフネの代役を務める勢いでのし上がって来た。この2頭をどう扱うか…つまり、どのくらい強いと見て予想するかがポイントになって来るんだろうね。
 外国馬に関しては、去年のリドパレスのような大物がいなくて劣勢は否めないところだろうね。ただ、日本のダートコースは独特だから、祖国では発揮されようのなかった日本ダート適性が目覚めて爆走するケースも考えられる。一昨年のロードスターリング(3着)みたいなパターン」
珠美:「じゃあ、3連複の3着要員なんか、面白いかも知れませんね」
駒木:「そうなるね。ただ、3連複だからと言って手広く20点も30点もバラバラと買うのはお薦めしないけど。だって当たらんもん、3連複なんて(笑)」
珠美:「それは博士の話じゃないですか(苦笑)。ま、でも、多点数買いが危ないのは夏の馬券学講座でも指摘されてましたものね」
駒木:「そうだね。まぁでも、第一線で活躍してる競馬記者の人たちにも『50点買いで48倍当たって取りガミ』って人がいたりするくらいだから、その誘惑たるや物凄いものがあるだろうけど(笑)」
珠美:「それでは、いつも通り枠順に沿って博士に1頭ずつ解説をして頂きます。まずは1枠の2頭からお願いします」
駒木:「いきなり難しい枠からだね(苦笑)。1番のプロエミネンスは、さっき言った通り、去年のこのレースの5着馬。出走取消明けだったから同情の余地はあったけれども、最後の一押しが足りなかった辺りに上位との格の差が見えなくも無かった。
 今回は、その時に先着された馬がゴッソリ抜けたけど、代わりにアドマイヤドンとゴールドアリュールがいるんで、やっぱり3番手グループかな。
 脚質的には、3〜4番手に待機してジンワリと攻めるのがベストなんだけど、今回は逃げ馬が多くてそれじゃ潰れてしまいそうだ。ただ、6番手あたりから差して勝ったケースもあるし、次善の策くらいは採れそう。それで前がどこまで止まってくれるかにかかってるね。実力はあるけど他力本願ってところかなぁ。少なくとも2強の片割れが凡走してくれないと話にならないね。
 で、そのプリエミネンスを1秒以上千切ったアドマイヤドン。差の広がりやすい盛岡競馬場とはいえ、あのパフォーマンスにはビックリさせられたね。去年のクロフネもそうだったけど、意外なところに才能が埋もれてたもんだ。芝である程度活躍した馬がダートでバケモノみたいに走るケースは、言ってみれば最近のトレンドだから、何ら違和感は無いんだけど……。
 とりあえず、前走のパフォーマンスを地力の現れと認める事にすると、今回も有望だね。クロフネ以上とまではいかないけれども、ヒケをとらないところまでは力がありそうだ。今回は激しい先行争いを直後で眺めつつ仕掛けどころを窺える位置取りが狙えそうだから展開も向く。少なくとも、直線入って既に勝負権ナシってのは考えられないね」
珠美:「では、2頭とも有望ということですね。次は2枠の2頭。どちらもダートG1勝ち馬ということになりますが……?」
駒木:「この枠も扱いに困るんだよなぁ(苦笑)。実力的には、さっきのプリエミネンスと同じ位か、ほんの少し下あたりなんで、3番手グループにいることになるんだけどね。
 まずリージェントブラフ。公営競馬場の深くて重いダートが得意で、今年は冬に川崎記念を勝っている。ただし、その後は堅実ながら少し足りないレースが続いてて、少々心許ない。まぁ前走は馬体重−24kg というのが響いていたと思うけどね。作戦は多分、脚を貯めての後方追い込みだろう。この馬も他力本願で前の馬がタレるのを待つしかないね。
 公営岩手のトーホウエンペラー。東京大賞典と南部杯を勝っている、これも3番手グループの馬だね。ただ、最近の成績を見ると、ちょっとピークが過ぎた感が無くも無いって感じかな。展開に関してはプリエミネンスとほぼ同じ。次善策でどこまで喰い込めるかだろう」
珠美:「リージェントブラフとは逆に、トーホウエンペラーは中央のダートも大丈夫なんでしょうか?
駒木:「去年、札幌の重賞・エルムSで2着に来てるから、こなせないことは無いと思う。この馬、左回りが苦手だったはずだから、中山競馬場に変更されて好都合じゃないのかな」
珠美:「…ハイ、分かりました。では次、3枠の2頭についてお願いします。いよいよ外国馬の登場ですね」
駒木:「その前に、まずはカネツフルーヴからね。今年の春に準オープンを脱出したばかりなんだけど、帝王賞でミラクルオペラに2馬身1/2の差をつけて勝ってるから、力だけなら3番手グループ以上かも知れない。でも、今回は余りにも展開が厳しすぎるよね。逃げるか2番手じゃないと味が無いし、かといって先行争いに巻き込まれると辛いし……。今回はちょっと巡り合わせが悪くて苦戦だと思ってる。
 香港のレッドサンだけど、もともとはアルゼンチンの馬で、向こうのダートG1を勝ってる。とはいえ、アルゼンチンのダートはアメリカ並に軽いから全く参考にならない。むしろ、最近の不振を心配した方が良いだろうね」
珠美:「…それでは続いて4枠を。外国馬とゴールドアリュールという構成ですね」
駒木:「まずはアメリカのリーバズゴールド。逃げ・先行のレースで向こうのG2の3着争いをするくらいの馬。よっぽど日本のダート適性が無いと苦戦だろうけど、強調材料は見当たらないなぁ。展開もキツいしね。
 さて、珠美ちゃんお待ちかねの武豊・ゴールドアリュールだ。僕はこの馬、ダービーの時にはクロフネの廉価版みたいな言い方をしてしまったんだけど、これは訂正しないといけないね(苦笑)。いくら相手が大して強くないとはいえ、ブッちぎりの連続は相当の実力を持っている証だよ」
珠美:「気になるのは、アドマイヤドンとの盛岡2000mコースの持ちタイムの差(2秒5)なんですけど……」
駒木:「まず、馬場が全然別物っていうくらいに違ってたらしい。砂か地盤の入れ替えをやったんだろうね。あと、レースの展開が全然違う。ゴールドアリュールのダービーGPは、前半の1000mを極限までかっ飛ばして全部の馬をバテバテにしてしまったという無茶苦茶なレースだったんだ。で、最後には逃げたこの馬自身も大バテしちゃったんだけど、それ以上に他の馬が超大バテしてた。タイムなんか関係無いよ。
 ただし、今回もその時と同じレースをやったとしたら、多分差し馬の餌食になっちゃうだろうね。武豊騎手もそれは分かってるだろうから、多分中団に控えるレースになるんじゃないかな。ひょっとしたら去年のクロフネの再現を狙ってるかも知れないよ。
 問題は、そうやって道中抑えて脚を貯めた時に、逃げた時と同じようなスピードが出せるかどうか。いわゆる脚質転換のリスクってやつだね。弱点と言えばそこになるだろうねぇ」
珠美:「なるほど、騎手次第ってわけですね。私は特に期待させてもらいます(笑)。
 …では、次に5枠の2頭について解説を……」

駒木:「イーグルカフェは去年の武蔵野S2着。まぁ力的には3番手グループの一員なんで、あとはデットーリの手綱捌きと追い込みが届く展開になるかどうかだね。
 ダブルハピネスは今年の武蔵野S1着馬。現実問題として、地力は若干足りない馬なんだけど、この馬も前崩れの時には脚を伸ばしてきそうな馬だよね。先週のトウカイポイント的存在の馬。大穴党の人は狙うなら狙ってみてはどうだろうか」
珠美:「さぁ、時間がありません。6枠の2頭をお願いします」
駒木:「アメリカのアブリーズは、日本では絶滅寸前の“特攻逃げ馬”。向こうではかなり過酷な展開も克服して結果を残しているみたいだけど、日本式の展開だと、無理して逃げた馬は次から次へと後続馬が襲いかかって来る形になるから大変だろうね。
 アルアランは2〜3番手に控えてもソコソコやれるはずなんだけど、切れ味のある末脚は望めないし、ここ2走の成績が酷すぎる。余程のことが無い限り、先行グループで埋もれてしまってオシマイじゃないかな」
珠美:「それでは次に7枠の2頭を」
駒木:「ドイツのパプウスは、一応ダート実績はあるんだけど、ヨーロッパのダート競馬はまだまだ“オマケ”的存在だからねぇ。ダートのG3が2つ3つあっただけの頃の日本よりもまだマイナーのはず。芝の戦績も冴えないし、苦戦は必至だろうなぁ。
 ハギノハイグレイド。一応、僕は▲を打ったけど、△以下の印がついた馬とはほぼ横一線だと思ってる。展開有利の差し馬にペリエ騎手、それから3番手争いをしている馬の中で若干地力が勝ってそうな印象がある。前走は休み明けのせいか、枠入りの時にてこずって、随分追いムチでヤラれちゃったらしい。今度はそんな事も無いだろうし、プラス思考で考えると有力になって来るんだよなぁ」
珠美:「私は展開が有利なのと、やっぱりペリエ騎手が大きいかなって思いました。
 ……では、最後に8枠の2頭を」

駒木:「スマートボーイは逃げなくちゃ話にならないんだけど、それじゃこのレースは話にならない(苦笑)。
 ビーマイナカヤマは、さすがに8歳では上積みは難しいかな。もともとG3クラスの短距離馬のはずだから、ちょっとここでは辛いだろうね」
珠美:「というわけで、結論ですが……」
駒木:「アドマイヤドン、ゴールドアリュールの2頭が半歩リード。ただし凡走の可能性もあるので、3番手グループから“ヘルプ”が必要になってくるんだが、3番手グループから何を選んでくるのかが難しい。一応、僕はさっき挙げた理由でハギノハイグレイドをその筆頭に据えたんだけど、実力は拮抗しているので、何があってもおかしくない。難しい選択が迫られるレースだよね」
珠美:「…ハイ、ありがとうございました。それでは、改めて買い目を紹介して終わりにしましょうか」
駒木:「僕はいつも通り、上位3頭のBOXだね。馬連BOXと3連複の2、8、14」
珠美:「私は馬連2-8、8-14、2-14、8-9、3-8、8-10…の以上6点です」
駒木
:「それじゃ、また明日だね。明日のジャパンカップ(ターフ)も難しいんだよなぁ(苦笑)」
珠美:「お疲れ様です(笑)。では、また明日お会いしましょう♪」(レース回顧は翌日の講義にて

 


 

11月21日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(11月第3週分)

 さて、今週もゼミの始まり…なんですが……。
 いやー、参りました。レビュー対象作どころか、今週は「週刊少年サンデー」が他の雑誌に先立って年末合併号で“チェックポイント”の題材にも事欠く始末です。
 本来ならば、他の雑誌を根こそぎ漁ってでもレビュー対象作を引っ張って来るべきなんですが、今週に限って体調が悪かったり世を忍ぶ仮の本業が忙しかったりで、マンガ喫茶にも行けませんでした。
 申し訳ないんですが、今週は情報と「ジャンプ」の“チェックポイント”だけで勘弁して下さい。来週は「ジャンプ」の代原があったりするらしいんで、1週間の辛抱という事で…。

 ──ところで。
 ほとんどの受講生の方には無関係な話でアレなんですが、よく最近このゼミのレビューに対して、「客観的にレビューするとか言っておいて主観が入ってる」という批判があるんですよね。
 まぁ、こういうのはいちいち反応してたらキリが無いんで無視する方向でいたんですが、どうも中には「駒木は客観的に見てると言ってウソついてるからダメだ」という論調の人までいて、ちとコレは困ったなぁと。
 あのですね、ワタクシ、このゼミの1回目(2001年12月6日付講義)で以下のように述べとるわけですよ。

 レビューは出来るだけ客観的な姿勢で臨みますが、当然のことながら、若干の主観が混じることは否定できませんあくまでも一方向の角度から見たレビューと受け取ってもらえれば、と思います。

 お分かり頂けましたか?(苦笑)
 第一、マンガの良し悪しについて、全ての人が納得出来る客観的な基準が存在しない以上、完璧に客観的な評価なんて出来るはずがないんです。デジタルに分析した内容でも、善悪のフィルターを通す時には必ずレビュアーの主観が混じってしまいます。これはどうしようもないんですよ。

 ただし、また別の批判である、「駒木のレビューは感情が入り過ぎてる」というもの対しては、反省すべき点も有るかな…と思っています。
 このゼミのレビューって、どんなマンガでも最低5回、多い時は10回以上熟読しないとあそこまで詳しく出来ないんですね。ですから、C評価を付けなければならないような酷い作品の場合、どれだけ先入観を抜いて読み始めても、繰り返し読んでる内に、最後にはどうしてもストレスが溜まっちゃうんですよね。で、そのストレスがレビューで発散される方に向かっちゃうと(苦笑)。
 ただし、「好き嫌いを善し悪しにすりかえてる」のではなくて、「悪い作品だから、自然と嫌いになって来る」というわけなんです。不味いラーメンがどうして不味いのかを分析するために5杯、10杯と食ってる…みたいなものなのです。辛いんですよ。分かって頂けます?(分かって頂けないかな^^;;)
 ただ、感情的なレビューは確かに見苦しいので、今後はレビューの内容が感情的にならないよう、これまで以上に留意するつもりです。どうぞよろしくお願いします。

 ……さて、それではまず情報系の話題を少し。

 今週は「週刊少年ジャンプ」系の長編ストーリー作家新人賞・「ストーリーキング」の結果発表がありましたので、受賞者と受賞作を紹介します。

第8回ストーリーキング(2002年度)

 ◎マンガ部門
 キング=該当作無し
 準キング=1編
 ・『天井都市』(=「赤マルジャンプ」掲載)
  中島諭宇樹(23歳・千葉)
 《講評:今回最終候補に残った作品中では頭一つ抜けた完成度だった。絵柄・ストーリーともに、まだ既存の作家の影響が若干見受けられるが、この先どれだけ個性を出していけるか非常に楽しみだ!》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=5編
  ・『神鳴と北風』
   アサノユキコ(20歳・京都)
  ・『BEAST!』
   柳澤未月(20歳・栃木)
  ・『真剣白羽取り』
   鉄チン28cm(33歳・岡山)
  ・『CROSS BLADE』
   大沢祐輔(19歳・愛知) 
  ・『思い出屋 』
   多田浩介(16歳・徳島)

 ◎ネーム部門
 キング=該当作無し
 準キング=該当作無し
 奨励賞=3編
  
・『犬と僕』
   和田美句(16歳・静岡)
  ・『4年越しの挑戦者達』
   久保咲(17歳・宮崎)
  ・『FIRE8!』
   池田薫(23歳・千葉)
 最終候補(選外佳作)=4編
  ・『エドワード黒太子』
   藤崎美甫(19歳・千葉)
  ・『アメイジング・ヒーロー』
   黒岩基司(23歳・宮崎)
  ・『啓馬と歩むのボウリング・クレイジー』
   黒犬のしっぽ(36歳・東京)
  ・『湖畔の刺客』
   麻湧(22歳・北海道)

 マンガ部門準キングの中島さんは、01年11月期の「天下一漫画賞」で最終候補まで残っていました。その後の努力が実を結んだ形ですね。
 また、最終候補の多田さんも02年2月期の「天下一」で最終候補に残っていますね。

 今回の「ストーリーキング」は全体的に不作だったようですが、それでも『ヒカルの碁』に続く『アイシールド21』の成功で編集部も勢いづいたのか、次回から「ストーリーキング」は年2回開催になるそうです。「ジャンプ」は本腰で原作者の発掘と育成に力を入れているみたいですね。
 このゼミ、マンガ家志望の方も受講されているようなんですが、ネームが描ける程度の画力がある人で腕に覚えのある方は、一度応募してみては…と思いますがどうですか?

 ……それでは、今週の「週刊少年ジャンプ」チェックポイントに行ってみましょう。

 

☆「週刊少年ジャンプ」2002年50号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介第12回掲載時の評価:/雑感】

 先週は桜庭について述べたんですが、今週はやっぱりヒル魔ですよねぇ。「悪いヤツなんだけど情は人並以上にある」って性格が完全に固まりました。しかし、どうしてそこまで絶妙なキャラ設定が出来るのか、稲垣さん。読みきり版の頃とは雲泥の差です。
 ヒル魔みたいなキャラっていうのは、悪漢小説(ピカレスク)の主人公で良く出て来るパターンなんですが、これを助演男優にしたところがミソなんですよね。主役張れるキャラが脇を固めるというのは「ジャンプ」伝統のメガヒット方程式の1つでもありますし、これは行けるところまで行ってしまうかも知れませんね。

 ◎『A・O・N』作画:道元宗紀第3回掲載時の評価:B−/雑感】

 露華の必殺飛び技、どう考えてもイヤミの「シェー!」なんですけど(苦笑)。多分、卍形ってことなんだろうなぁ……。
 ちなみに早売り情報によると、次回で掲載順が実質最後方(『──ジャガー』の1個前)に転落する模様で、次々号あたりでの打ち切りがほぼ見えて来てしまいました。今週いきなりアオンのマスク剥がれてますし、急展開で最終回とみて間違いないでしょう。 
 この作品の総括は最終回の際にやりますが、本当に技が見辛いんですよね、この作品……

 ◎『SWORD BREAKER』作画:梅澤春人【第3回掲載時の評価:B−/雑感】

 そして、こちらは一足先にデストロ〜イと(苦笑)。
 一応、辻褄は合った終わり方なんですが、やはり間の中抜きが酷すぎて、全体としては悲惨な出来になってしまいましたねぇ(まぁ打ち切りですから当たり前なんですが)
 どうしてここまで無理して話を収拾させたのか先週までは判らなかったんですが、最終回を見る限り、どうやら梅澤さんとしては、どうしてもあのラストシーンが描きたかったから無茶したんじゃないかと思うようになりました。気持ちは分かるんですが、これなら潔く「戦いはこれからだ!」型で締めた方が逆にまとまったかも知れませんね。
 やっぱりファンタジーは鬼門ですね。偶然と言うか奇跡に近い何かが無いと、なかなかヒットには繋がらないようです。


 ……というわけで、今週は以上です。何だか普通の「ジャンプ感想サイト」みたいになってしまいましたが、どうかご勘弁を。では、また来週。

 


 

11月20日(水) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(20)
第3章:地中海世界(1)〜エーゲ文明

 ※過去の講義レジュメ→第1回〜第19回

 お待たせしました。今回から歴史学講義を再開します。
 今後は週1〜2回の、ややゆったりしたペースで進行させてゆきたいと思います。ただ、お約束していた来春までの講義完結は、どう考えても無理な状況になってしまいました。まさかオリエントまででこれほどのロングランになるとは予測していませんでしたので……。
 春以降、このサイトがどうなるかは全く未定なのですが、この企画は何らかの形でライフワーク的に続けてゆきたいと考えていますので、どうかご理解下さい。

 さて、今回からは舞台を地中海世界に移し、古代ギリシアアレキサンダー大王の事績、さらには古代史最大のトピックとも言える古代ローマの歴史についてお送りします。
 そしてまず今日は、古代ギリシア世界の成立に先立って、ギリシア南部と、その更に南に浮かぶクレタ島に成立したエーゲ文明のお話をしてゆきましょう。

 まず、現在のギリシア及びエーゲ海地方に、農耕・新石器文化を持った人々が定住し始めたのは紀元前7000〜6000年頃だと言われています。ただし、その文化を構成していた人々は、後のギリシア人の直接の祖先ではなかったようであります。
 そのギリシア人の祖先がこの地方に姿を現したのは、紀元前2000年前後と言われていますが、最近の研究では、そこから最高1000年程度遡って考える事も可能である…とされているようです。恐らく、確定までには相当の検証の余地が残っているのではないかと思われます。
 彼らは恐らくアナトリア半島から時間をかけて移り住んで来た人々で、各地で青銅器文化を築き上げてゆきました。ギリシア地方では青銅器の材料である銅と錫は調達出来ませんので、アナトリア半島や、その近くに位置するキプロス島まで船を出して輸入していたのでありましょう。後に地中海世界一帯に植民都市を建設してゆくギリシア人ですが、その萌芽はこの時代に認められるということになりますね。

 この文化が文明と言える段階まで発展したのが紀元前20世紀でした。オリエント史で言えば、ウル第3王朝の滅亡があった時期やエジプト中王国時代の初期にあたります。
 まず、文明が成立したのは、ギリシアから100キロほど南にあるクレタ島でした。そして、この文明を島の名前からクレタ文明と呼びます。
 大陸から隔絶された島で文明が開かれたというのは意外かも知れませんが、エーゲ地方のすぐ近くには航海技術を持ったオリエント人住んでいましたし、この地域における青銅器文化に航海技術が必要不可欠であった事を思い出してもらえれば納得して頂けるでありましょう。
 クレタ島は東西に細長い(約270km)の島で、四国の半分程度の面積をしています。この文明では、その初期からいくつもの宮殿が建てられましたが、特に有名なものは、この文明の最盛期(紀元前1600〜1400年頃)に栄えたクノッソス宮殿で、クレタ文明のあらゆるエッセンスが凝縮された建造物になっています。
 クノッソス宮殿は城壁らしい城壁が無くこの時代には文明を脅かす外敵が存在しなかったことを現しています。
 そして、そんな平和の恩恵でしょうか、この時代の文化は極めて開放的。数多く描かれ、遺されている絵画なども、写実的かつ躍動感に満ち溢れた素晴らしい物が多いのであります。ここで資料をお見せ出来ないのが残念ですが、壷一面に描かれたタコの絵や、魚やイルカが伸び伸びと泳いでいる壁画などが大変印象的です。戦争にまつわる絵が皆無だというのも“お国柄”を体現しています。
 ちなみに専門家によると、これらの絵は古代エジプト文明の影響が色濃いとの事。クレタ文明に、先発のオリエント文明が与えたものは少なからずあったようです。
 このクノッソスは、宮殿の他に、一説によれば人口10万人弱の大きな都市が築かれて大いに栄えたと言われています。島国ゆえ、産業の発展は限られていましたが、それを補って余りある対外貿易による利益のお蔭で非常に豊かな都市経営がなされていたようです。
 使用されていた文字は、後に“絵文字”“線文字A”と分類される事になる象形文字ですが、余りにもサンプルと対訳のための資料が少ないために未だ解読が為されていません。ただし、最近の研究成果では、この文字も絵画同様、古代エジプト文明の影響を受けているというところまでは判明しています。
 
 ところで半ば余談になりますが、このクノッソス宮殿はとにかく部屋の数が多く(300程度)、それも大・小デザインが不規則なのが有名であります。その、どう考えても住人を迷わせるためとしか思われない設計は、まさに“迷宮”と呼ぶに相応しく、また事実、この宮殿はギリシア神話に登場する「ミノタウロスの住む迷宮」のモデルとされています。
 ここではこの神話の内容を詳述する事は避けますが(検索エンジンで『ミノタウロス/ギリシア神話』などと検索すれば、駒木よりその手の分野で博識な方の話がいくらでも閲覧できますので)この神話に出て来るクノッソスの王・ミノスの名を取って、この文明をミノス文明と呼ぶ事もあるという事だけは言い添えておきます。

 さて、過去の講義でも散々述べました通り、どれだけ栄えた国や文明も滅びる時がやって来ます。クレタ文明にも崩壊の時がやって来ました。

 紀元前16〜15世紀頃でしょうか、先にギリシア地方に定住していたアカイア人がクレタ島にも進出し、やがてこの文明の内部に深く根を張っていきました。
 そして遂に紀元前1400年頃このアカイア人の手によってクノッソス宮殿は戦火に焼かれ、姿を消してしまうのです。これ以後、クレタ島は地中海世界の辺境に過ぎなくなります。

 クレタに変わってこのエーゲ文明の中心地になったのは、現在のギリシア中南部、アテネから西に100kmほど離れた場所にあったミケーネという都市でした。ゆえに、この地方に栄えた文明をミケーネ文明と呼びます。
 ミケーネ文明は、クレタ文明の滅亡より以前、大体紀元前1600年頃に形成されたアカイア人の文明で、ミケーネの他にもギリシア南部一帯に、ティリンス、ピュロス、オルコメノスといった都市が建設されていました。
 この文明は、クレタ文明とは対照的に軍事色が濃く、城は堅固な構造で、高い城壁によって敵の侵攻を阻むように設計されていました。また、クレタ文明の技術をベースに、これらの築城で培われた高度な建築技術は大変に素晴らしいもので、それは、各種の遺跡──獅子門と呼ばれる城門や石造りの墳墓など──から窺い知る事が出来ます。
 ミケーネ文明の栄えた地域では、(これ以後の時代でもそうなのですが)麦などの主食となる作物が育ち難い替わりに、オリーブブドウなどの商品作物が栽培できる、いわゆる地中海式農業が盛んでした。ですから、やはりこの時代も貿易が盛んで、かなりの荒稼ぎをしていたようです。それは各地の遺跡で発掘された黄金製の財宝によって証明されています。
 ただ、軍事色の強かった彼らですから、貿易とは言っても平和的なものではなく、時には恫喝、略奪まがいのこともやってのけたようです。そのため、時代が経つにつれてミケーネ文明では貿易が奮わなくなり、文明滅亡の遠因となってしまったようです。まさに因果応報を巡る…といったところであります。
 ミケーネ文明でも文字が使用されていました。これはクレタ時代の文字と区別するために“線文字B”と呼ばれていて、解読も済まされています。この言語は現在のギリシア語によく似ています。ですから、その後の文明との連続性がかなりある事が分かりますね。

 そんなミケーネ文明の滅亡紀元前1200年頃教科書や参考書では、ドーリア人という、アカイア人と共に後のギリシア人を構成する民族に攻め込まれた…とされていますが、最近の学説では否定されているようです。知ったかぶりして教科書や参考書の内容のままギリシア史を語ると恥をかきますので、どうぞお気をつけ下さい。
 滅亡の原因には諸説あるようですが、滅亡の100年ほど前から内的な原因──例えば貿易の衰退──によって文明そのものが衰え出し、そこへオリエントのヒッタイト王国をも滅ぼした“海の民”に侵略されたために滅亡した…というのが有力な説のようです。
 この後、ギリシア地方はしばらく“暗黒時代”と呼ばれる、文化活動がほどんど見られない時期が続くことになります。この“暗黒時代”のギリシアについて述べられた史料は極めて少なく、残念ながらこの講義でも「わけの分からない時代が数百年続いた」としか申し上げる事が出来ません。

 さて、エーゲ文明に属する諸文明として、かなり異色なものとして挙げられるのが、ほとんどオリエントと言って良いような地域、アナトリア半島西北端に栄えたトロヤ文明です。
 この文明、困った事に、有名な割には考古学的な発見が多くありません。むしろ、この遺跡を発掘した考古学者・シュリーマンの人生活劇の方が語る部分が多いくらいです(次回以降、エーゲ文明の遺跡発掘などに携わった人たちの人生を追いかけます)
 分かっていることは、恐らく紀元前2500年前後に都市が築かれて文明が形成され、それが紀元前1200年頃まで続いたこと。そして滅亡の原因となったのは大規模な戦争で、これはどうやらギリシア神話の1エピソードである“トロヤ戦争”のモデルになったものであるらしい…ということであります。
 神話のトロヤ戦争は、トロヤの王子がギリシアのスパルタから王妃を誘拐した事から始まるギリシア連合軍VSトロヤの大戦争。トロヤの宮殿に大きな木馬を造らせて兵士を潜ませ、油断したところを不意打ちした…という“トロイの木馬”の話が非常に有名です。また、この神話に登場する英雄の中に、古代ローマの建国者ロムルスの祖先と言い伝えられるアエネイスがいます。エーゲ海を跨いで、時代をも跨いだ壮大な神話でありますね。

 ……というわけで、今回はエーゲ文明の姿について概説をしてまいりました。固有名詞が登場しない歴史ゆえ、かなりダルいものだったと思いますが、どうかご容赦下さい。
 この後は、“暗黒時代”を脱したギリシアに、アテネやスパルタなどのポリス(都市国家)が成立し、栄える事になるのですが、これはまた次の機会のお話となります。
 さて次回は、今回お話しましたエーゲ文明の遺跡発掘や文字解読に人生を捧げた人たちのエピソードを幾つか紹介したいと思っています。大きく横道に逸れますが、興味深い話も多くある部分ですので、どうぞお付き合い下さい。(次回へ続く

 


 

11月18日(月) 競馬学概論 
「仮想競走・20世紀名馬グランプリ」(3・終)

 ※前回までのレジュメはこちらから→第1回第2回

 今週は対談形式ではなく、レースやそれまでの仮想ドキュメント形式でお送りします。出馬表と駒木研究室の仮想予想は以下の通りです。

20世紀グランプリ 中山・2500・芝

馬  名 騎 手
    エアグルーヴ ペリエ
× エルコンドルパサー 蛯名
× × オグリキャップ 安藤勝
    グラスワンダー 的場
    サイレンススズカ 河内
  シンザン 栗田勝
シンボリルドルフ 岡部
  スペシャルウィーク 武豊
  × テイエムオペラオー 和田
  10 テンポイント 鹿戸明
    11 トウカイテイオー 安田隆
12 ナリタブライアン 南井克
    13 ハイセイコー 増沢
    14 マヤノトップガン 田原
×   15 メジロマックイーン 内田浩
    16 ライスシャワー 田中勝

 


 レースを3日後に控えた木曜日。美浦、栗東の東西両トレセンで騎手を対象にした合同インタビューが実施された。

 栗東トレセンの会見場で初めに姿を現したのは、このレースのためだけに来日したオリビエ=ペリエ。彼はいつも通り、大きな目をパチクリと見開き、愛想良く笑顔を浮かべながらリラックスした様子で席に着いた。

 ──ペリエ騎手が騎乗されるエアグルーヴは、唯一の牝馬ということになりますが、他の馬たちとの相手関係についてはどう思われていますか?

 この質問に対しペリエは、「質問の意図は理解したよ」というニュアンスの表情を作った後、ややたどたどしい英語で淡々と話し始めた。
 「──まず僕が言いたいのは、こんなエキサイティングなレースに出る事が出来て、とても幸せだということなんだ。だってそうだろう? 日本の100年間分のチャンピオンを決めるレースに、外国人の僕が参加することが出来るんだよ。しかも、日本人以外で参加しているのは僕1人だけだ。それだけでも僕はとても幸せなんだ。
 そして、エアグルーヴのことだけれども、このレースには16頭の馬がエントリーしていて、エアグルーヴもその中に入っている。勝つチャンスはどの馬にも均等にあるんだから、当然エアグルーヴにも勝てるチャンスはあるはずだよ」
 ペリエは一瞬言葉を区切った後、「それで十分だろう?」と満足げな笑みを浮かべた。

 その後、全ての質問を終えるとペリエは、次にインタビューを受けるために待機していた親友・武豊の前に歩み寄り、笑顔のまま握手をして、それからマスコミ連に手を振って退席した。
 代わって武豊が着席。いつもながらの自然な微笑が印象的である。

 ──先程のペリエ騎手との握手はエールの交換ですか?
 「(笑)。まぁ、そういうことだと思います」
 ──出走馬の中には随分と武騎手のお手馬がいますが、他にも乗りたい馬がたくさんいるんじゃないですか?
 「まぁ、でも体は1つしか有りませんからね。それにスペシャルウィークは僕に初めてダービーを取らせてくれた馬ですから、この馬に乗ることには全く不満はありませんよ。
 けれども、出来れば全部の馬に乗ってみたいっていうのは、確かに本音ですけどね(微笑)」

 その他の騎手のインタビューでも“お祭り”ならではのリラックスムードが漂う中、1人気を吐いたのは田原成貴であった。席に着いた彼は、いかにも気合の入った表情を見せていた。

 ──レースを3日後に控えた、今の意気込みを聞かせて下さい。
 「それがどんなレースであれ、勝たなきゃ意味が無いと思ってますよ。相手がブライアンでもルドルフでも、それは変わらない」
 ──今、ナリタブライアンの名前が出ましたが、今回はあの阪神大賞典のリベンジを果たすためのチャンスですね。
 「いや、それは全然関係無い。とにかく15頭いる他の馬に勝つことが問題であって、ブライアン云々は全く別の話だから」
 ──騎乗されるマヤノトップガンの調子はいかがですか?
 「絶好調。言う事なし。これで負けたら乗り役がヘボという事なんでしょう。まぁそういう事で、以上」

 田原は一方的にインタビューを打ち切ると、足早に会場を去って行った。それまで弛緩していたムードが一気に引き締まる。やはりこのレースは“お祭り”である以上に真剣勝負なのだという事が痛いほど伝わって来た場面であった。

 一方、美浦トレセンでは、シンボリルドルフに騎乗する岡部幸雄がインタビュー席に着いていた。いつもはポーカーフェイスを崩さない彼の表情も、騎手人生で最愛のパートナーに再び跨ることが出来るという幸福感が滲み出ている。

 ──今回、岡部騎手はシンボリルドルフに騎乗されるわけですが、その仔であるトウカイテイオーも出走します。複雑な心境なのではないですか?
 「体が2つ欲しいよねー(笑)。でも、どちらか選ばなきゃいけないし、そうなると、どうしてもルドルフになっちゃうよね」
 ──親子対決という事になりますが?
 「そうだね。でも、こういう勝負って言うのは親の方が子に対してガツンと言わせた方が面白いからね。今回もそれを狙ってるけどね」
 ──作戦はどのように?
 「いや、なんもなんも。その辺は当のルドルフが一番よく分かっているだろうから、自分は彼の機嫌を損ねないように気をつけて跨るだけ。とにかく楽しみにしてるよ」
 ──勝った時の口取りは8本指でガッツポーズですか?
 「(笑)。まぁ、そうなれば良いね」

 再び、栗東トレセン。この会場で最後にインタビューを受けたのは、サイレンススズカに騎乗する河内洋だった。

 ──河内騎手は、サイレンススズカには久しぶりの騎乗ということになりますが?
 「まぁ、今回ワシは代打やから。この馬の持ち味を損なわんようにするだけやね」
 ──ということは、レースではハナを切って逃げると?
 「そうなるんと違うか。それがこの馬にとってもベストやと思うしな。まぁ、他の馬の出方次第やけど、気持ちよく先行させたいわな」

 それから2、3の遣り取りでインタビューが終了した後、河内は最後にボソッとこんな事を漏らした。
 「でもこのレース、出来たら(福永)洋一さんに乗って欲しかったんやけどなぁ。まぁ、仕方ないんやけど、何か勿体無いわな」
 福永洋一の名前が出たその瞬間、マスコミ席のベテラン記者たちから嘆息が漏れた。20世紀の名馬たちによる夢の対決に欠けた夢のひと欠片。もしも競馬の神がいるのだとするならば、その所業は余りにも意地悪である。

◆──────◇

 レース当日。会場となる中山競馬場には、空前の競馬ブームに揺れた1990年代前半を髣髴とさせるような大観衆が詰め掛けた。
 メインレースまでのプログラムは滞りなく消化され、いよいよ出走馬がパドックへと姿を現す。それは既に芸術品の展覧会といった風情で、完成され尽くしたサラブレッド16頭が己の姿を誇示するように威風堂々と歩を進めていた。

 そしてパドック脇のTV中継用ブースでは、パドック解説の生中継が始まろうとしていた。アナウンサーの横には競馬評論家・大川慶次郎の姿があった。
 「──えー、それでは大川さんに“バカに良く見える馬”を1頭ピックアップして頂きましょう。どれもこれも素晴らしい馬ばかりで目移りして仕方ないと思うんですが……」
 「……“バカに良く見える馬”は、シンボリルドルフです」
 大川は力強く答えた。
 「私はね、生涯見た馬の中で、ずっとこの馬が一番素晴らしい馬だと思っていたんですよ。でもね、正直言って、こうしてパドックで16頭の馬を見比べるまでは不安で仕方なかったんですよ。さしものルドルフも、最近の名馬たちと比べると見劣りしてしまうんじゃないかと。しかし、今こうして姿を見て確信しました。やっぱりこの馬が一番素晴らしいです」
 「そうですか。では、そのシンボリルドルフを1番だと言えるポイントを教えていただけますか?」
 「ルドルフの素晴らしさはね、歩いた姿を見ないとよく判らないんです。立ち姿ではパッとしない馬なんだけれども、一度歩き出すと、全く違う馬に見えるんですよ。この歩く時の体全体の流れるような動き。これが素晴らしいんです──」

◆──────◇

 パドックで騎手を鞍上に迎えた16頭が、いよいよ本馬場に入場する。入場テーマは昔ながらのサラブレッド・マーチ。先導役を務めるのは、今回は出走が叶わなかったシービークロスやビワハヤヒデなど、新旧・芦毛の名馬たち。嫌が応にも場内のテンションが高まる中、1枠1番のエアグルーヴから順次、返し馬に移ってゆく。

 場内アナウンスから、1頭ずつ丁寧な紹介が述べられる。本来ならこのような事は無いが、今回はファンサービスの一環として行われるらしい。

「名だたる英雄の中に光り輝く紅一点。男どもを蹴散らして、中山に勝利の凱歌奏でるか。エアグルーヴと、鞍上はフランスのオリビエ=ペリエです」

「七冠馬にも果たせなかった海外G1制覇。胸を張って威風堂々、これが世界のエルコンドルパサーです」 

「鞍上に安藤勝己、稀代のアイドルホースが笠松の怪物としてターフに舞い戻りました。あの奇跡よ今一度、オグリキャップです」

「グランプリ3連覇を達成した思い出の舞台。脅威的な末脚で20世紀のグランプリも制するか、グラスワンダー」

「このメンバーでも高らかに逃げ宣言。今日も抜群のスピードで名馬の群れを捻じ伏せてしまうのか、サイレンススズカ

「いかなる強豪もバッサリ切り捨てたナタの切れ味は未だ健在。最強の三冠馬の称号目指して、シンザンがターフに足を踏み入れました」

「無敗での三冠達成、G1レース7勝。“皇帝”と呼ばれ、常に勝利を義務付けられてきたこの馬、今日は一体どんなレースを見せてくれるのでしょうか? シンボリルドルフです」

「数多くの騎乗馬の中から、天才・武豊が選んだのはこの馬でした。今まで獲り損ねてきたグランプリのタイトルを、今日ここで戴くか、スペシャルウィーク」

「20世紀最後の、そして21世紀最初の名馬。世紀を跨いだ七冠馬。鞍上に若武者・和田竜二を迎えて、大先輩たちに真っ向勝負を挑みます。テイエムオペラオー」

「トウショウボーイと繰り広げたマッチレースは、21世紀の今でも語り草。今日は出走を果たせなかったライバルの分まで戦います。テンポイントと鹿戸明です」

「夢の親仔対決が遂に実現しました。偉大なる父を越え、目指すは日本競馬100年の頂点。トウカイテイオー、今日はダービー制覇のパートナー・安田隆行とのレースになります」

「20世紀の名馬・ファン投票第1位。今、誘導馬を務めた兄・ビワハヤヒデと一瞬視線を交わしました。史上5頭目の三冠馬から、史上ただ1頭の20世紀グランプリホースへ。トレードマークのシャドーロールが緑のターフに映えています。ナリタブライアンと、鞍上はベストパートナー・南井克巳です」

「元祖アイドルホースと人は言います。人気ならば、どの馬にも負けないと人は言います。しかし今日は、実力でも負けないところを証明したいところ。皐月賞を制した中山競馬場を舞台に他馬を蹴散らすか。ハイセイコーと増沢末夫です」

「逃げて良し、追い込んでなお良し。脚質自在の名ステイヤーが、勝負師・田原成貴の手綱捌きで乾坤一擲の大舞台に挑みます。マヤノトップガン」

「親仔3代天皇賞制覇を果たした偉大なる血筋も、グランプリ制覇だけは果たしていません。世代を超えた夢を果たすために、いざ出陣。メジロマックイーンと、今日のパートナーは内田浩一です」

「狙った獲物は逃さない。幾多のライバルたちを葬り去ってきた豪脚で、今日はどの馬をターゲットに定めたか。大外枠から虎視眈々、ライスシャワーです。
 ……以上16頭。史上最大のドリームレース・20世紀グランプリ、本馬場入場をお送りしました──」

◆──────◇

 ──いよいよ発走間近。ゲート前で出走馬16頭が輪乗りを続けている。超満員に膨れ上がったスタンドからは引っ切り無しに喚声が沸き上がっている。既にレースが始まっているかのようなボルテージの高さ。
 その観衆を見下ろすようにして、スタンド最上階の実況ブースで1人のアナウンサーがゲート前の様子を窺っている。数多くの名実況を残して来た実況アナ・杉本清である。
 彼はディレクターのキューサインを横目で確認して、おもむろに口を開いた。

 「……あなたの、そして私の夢が走る20世紀グランプリ。あなたの夢はナリタブライアンか、それともシンボリルドルフか。私の夢はテンポイントです」

 ──間もなくして、ウイナーズサークルに整列したブラスバンドが演奏するファンファーレが鳴り、場内は手拍子や歓声が響き渡る。その音たるや、大地を揺るがす程の大音響だが、さすがに歴戦の名馬、全く動じる事なくゲートに吸い込まれてゆく。
 最後にライスシャワーがゲート入り。素早く厩務員がゲートを飛び出して、「出ろう〜」の合図。
 次の瞬間、小気味よい金属音と共に、ゲートが開け放たれた。

 「──さぁ、ゲートが開いた」

 いつもの文句で杉本清の実況が始まった。

 「ハナを切るのは何でしょうか。お、やはり行った行った、赤い帽子、栗毛の馬体が踊って、サイレンススズカがハナに立とうとしている。おっと、そこへ更にもう1頭、おお、これはテンポイントだ。ゼッケン10番・テンポイントが外からサイレンススズカに競りかけていく形。あの昭和52年の有馬記念で、スタートからトウショウボーイと競っていったのと同じように、テンポイントが今日も先頭へ競りかけていきました。
 ……この2頭を見る形、3〜4馬身切れまして3番手にシンボリルドルフが虎視眈々とマークする形。その内側からエルコンドルパサー、半馬身ほど遅れて外からハイセイコー。ライスシャワーも今日は前々での競馬です。ナリタブライアンは……現在馬群の中、7番手8番手といったところ。そのナリタブライアンをマークするようにしてシンザンが控えています。
 ……さぁ、ホームストレッチ、正面スタンド前。超満員の大観衆から盛んに拍手、声援が沸きます。世紀の一戦・20世紀グランプリ、果たして栄冠に輝くのはどの馬でありましょうか。
 ……先頭を走る2頭、サイレンススズカとテンポイントは依然として競り合ったままで、他の馬を引き離す形で早くも第1コーナーを回って行きました。これは相当のハイペースになりましたが、果たしてこれは作戦なんでしょうか?
 それではここでもう一度先頭から整理しておきましょう。前を走る2頭、5番のサイレンススズカと10番テンポイント。5〜6馬身ほど切れまして、シンボリルドルフ、エルコンドルパサー、ハイセイコー、この辺りはほとんど差がありません。外からライスシャワーが上がって行きました。これはシンボリルドルフをマークするということなんでしょうか。ミホノブルボンの三冠を阻止し、メジロマックイーンの春の天皇賞3連覇を阻止したヒットマン・ライスシャワー。その存在が何とも不気味であります。
 その後ろ、オグリキャップとメジロマックイーンの芦毛2頭。さらにインコースを通ってエアグルーヴ、唯一の牝馬。スペシャルウィークはここにいました。並んでトウカイテイオー、そしてそのすぐ後ろにナリタブライアン、上手く外に出しました南井克巳。
 その後は後方グループ、シンザン、テイエムオペラオーがいて、さらに外からグラスワンダーがジワジワと上がって行きます。そして、おお、後方に1頭ポツンとマヤノトップガンが最後方待機。今日は末脚勝負に賭ける田原成貴、直線の短い中山のコースでいつゴーサインを出すのか。今はジッとして動きません。
 縦長の展開、先頭から最後方までは20馬身から25馬身と開きました。依然としてサイレンススズカとテンポイントの2頭が競り合う形。果たしてこれでスタミナは温存出来ているのでしょうか。レースは早くも勝負処の第3コーナーを迎えました。
 さあ、ここで早くも馬群が詰まって来たかな? おお、馬群が詰まってまいりました。シンボリルドルフが、エルコンドルパサーが、ハイセイコーが一気に差を詰めて行きます。そして、さあナリタブライアンが例によって大外からグングンと上がって行きます。おお、この歴戦の名馬たちも一気に飲み込んでしまうのかナリタブライアン。グングングングン上がって行きます。さらにはグラスワンダーも大外を回ってスパートを開始。その内を通って、オグリキャップ、メジロマックイーン、スペシャルウィーク、トウカイテイオー、シンザンは馬群を縫う形。テイエムオペラオーも、和田が懸命に手綱をしごいて仕掛けようといったところ。マヤノトップガンも集団の後方に取り付きました。
 さぁ、最後の直線に入りまして心臓破りの坂! 先頭は依然としてサイレンススズカとテンポイント。しかしその外からシンボリルドルフ、エルコンドルパサー、ライスシャワー、ハイセイコーも食い下がる。間を割って芦毛の2頭、マックイーンとオグリも来た! おーっと、さらに外からナリタブライアン来たぞーッ! ナリタブライアンが先頭に立つか! いやしかし、大外からもう1頭、グラスワンダーも懸命に差を詰める。インコースから場群を割ってシンザンか、シンザン来たか? スペシャルウィーク、エアグルーヴ、トウカイテイオーも来ている来ている。そして外ラチ一杯から並ぶようにしてテイエムオペラオー、マヤノトップガンも来た! 分からない、まだ分からない。果たして勝つのはどの馬か──?」


 勝つのは果たしてどの馬か? しかし、それをこの場で決めてしまうのは野暮というもの。答えは、貴方たち1人1人にお任せしておきます。

 あなたの、そして私の夢が走っています── (この項終わり)

 


 

11月17日(日) 特別演習
「第2回世界漫画愛読者大賞への道」(2)

 ※前回までのレジュメはこちらから→第1回

 「週刊コミックバンチ」系の新作コンペテイション・イベント・「世界漫画愛読者大賞」を検証してゆく不定期企画の第2回目をお送りします。
 しかし「バンチ」誌上での予備審査レポート無茶苦茶な引き伸ばしですよね。何というか、もはや柏原芳恵の乳首出し惜しみセミヌードの様相です。既に予備審査は終了し、昨日・今日あたりに読者審査会が開かれているはずなので、これは「レベルが高いゆえの審査難航」などではなく、ただ単にネタ切れ故の時間繋ぎとしか思えません。
 しかし、現時点で作品が残っている応募者の方は、さぞかし心臓に悪い日々を過ごしていらっしゃるんでしょうねお察し申し上げます。

 さて、今回は前回の最後に予告しました通り、「バンチ」49号で急遽発表になった、読者投票による最終審査のシステム一部改訂についての講義をお送りします。読者投票のシステムと言えば、この賞の根幹と言える部分でもありますので、大変に興味深いところでありますね。

 では、まずここで従来の「世界漫画愛読者大賞」の最終審査(読者投票)のシステムをおさらいしておきましょう。


 1.個別人気投票

 審査用読み切り作品が掲載された週の綴じ込みアンケート葉書に「この作品を支持するかどうか」という旨の質問欄を設け、YESかNOで読者に回答してもらう形式。文字通り、作品個々の良し悪しを判断する絶対評価。
 返送されたアンケート葉書の内、YESと投票されたもの1通ごとに1ポイントが加算される。NOと投票されたものに関してはノーカウント扱い。

 2.総合人気投票

 審査用読み切りの掲載と個別人気投票の実施が全作品終了した後に専用アンケート葉書を綴じ込み、全作品の中で最も優秀な作品を選んで投票してもらう形式。こちらは言わば相対評価。
 返送されたアンケート葉書に回答された「最も良い作品」にそれぞれポイントが与えられるが、アンケート葉書は、応募券(審査用読み切りが掲載された週の「コミックバンチ」に印刷されている)の枚数によって“1票の価値”が異なる。その“価値”は、応募券が貼られていない状態で2ポイント、7〜9枚で3ポイント、10枚全て貼られている状態で5ポイントとなる。

 3.グランプリ信任投票

 最高ポイント獲得作品(つまり投票結果が第1位の作品)がグランプリを獲得するに相応しいかどうかを判断する、最終的な絶対評価。
 グランプリ信任投票は総合人気投票と同時に行われ、アンケート記入者が「最も良い作品」と投票した作品を「グランプリに支持するかどうか」についてYES、NO形式で答えさせる方式。
 読者投票第1位作品に投票された総合人気投票用アンケート葉書の中で、「グランプリに支持するか」の質問にYESと回答されたものが2/3以上に達すれば、グランプリ信任となる。

 この3段階の投票システムには様々な構造的欠陥があり、当講座でも5月の「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」の際に指摘させて頂きました。

 例えば個別人気投票では、NOに投票された票数をノーカウントとしたために、支持率とポイントの逆転現象が起きる可能性があります。(例:投票数2000の支持率60%よりも、投票数2500の支持率55%の方がポイントが高い
 また、総合人気投票は、個別人気投票に比べてポイント総数の比率が高すぎる(大体、総合2:個別1)上に、全ての作品を読んでいない読者にも2ポイント分の投票権があり、極めて公正さを欠いているという欠点があります。

 そして最も酷いシステムだったのがグランプリ信任投票でした。何故なら、この時のグランプリ信任投票“有権者”は、読者投票第1位作品が「最終審査に残った作品の中で最も良い作品」だと思っている読者に限定されてしまったからです。
 これでは、他の作品をグランプリに推したいと思っていた読者は勿論のこと、「どの作品もグランプリに支持しない」と考えている人の意志を完全に無視したものになってしまいます。特に“全作品不支持層”の人が意思表示するのは極めて困難で、大量の棄権者を出すことになってしまったのは間違いないところです。
 第一、個別人気投票の際に純粋な支持率を問うていながら、もう1度、今度は支持率が極めて上がり易い形で信任投票を実施するというのは明らかに変です。まるで北朝鮮やイラクなど独裁国家の“民主主義選挙”のように、信任される事を前提とした信任投票と言っても言い過ぎではないでしょう。事実、「この賞を成功させるためには、第1回で必ずグランプリを出す必要があったので、この方式を敢えて採用したのだ」という推測があちこちで聞かれましたし、駒木も同じ事を考えたことがあります。
 で、その結果、読者投票第1位作品・『エンカウンター 〜遭遇〜』は、96%という異様とも言える高支持率を獲得し、グランプリを受賞しましたが、その後の“支持率96%作品に似合わない顛末”についてはご存知の通りです。


 ……というわけで、前回の読者投票システムには大きな問題があったわけですが、今回は先に述べた通り投票システムに一部見直しがあり、最も問題のあった“グランプリ信任投票”のシステムが大幅に変更されました
 その“グランプリ信任投票”の新システムは以下の通りです。

 ◎グランプリ信任投票新システム

 グランプリ信任投票は総合人気投票と完全に分離
 まず、個別人気投票と総合人気投票で読者投票第1位作品を選出し、その作品が“グランプリ候補作”となる。
 そこで改めて全読者を対象にした、“グランプリ候補作”に対するグランプリ信任投票を実施し、支持率が2/3以上に達すればグランプリ獲得となる。

 ご覧の通り、ハッキリ言って大改革です。信任投票の“有権者”が全読者に開放された事によって、少なくともグランプリを選出するか否かの審査に関しては、前回の問題点が一気に解消されました。よって、このシステム改訂は素直に評価するべきだと思います。

 しかし、このシステム改訂について気になる点もあります。それはこの改訂の内容と、それが発表になったタイミングの関係についてです。

 先に見て頂いた通り、今回のシステム改訂によって、グランプリ獲得までのハードルが一気に高くなりました。ただ「面白い」と思ってもらえるだけでなく、「5000万円の賞金と連載を1年続けるに相応しい」と思ってもらえる人を全体の2/3以上確保しないといけないわけで、これは至難の業とさえ言えます。
 例えば、この基準を使って、現在メジャー系マンガ誌に連載されている作品で投票を実施した場合、果たしてどれくらいの割合で“グランプリ信任”が獲得出来るかとなれば、これは極めて微妙なところでしょう。つまり、この新システムは“グランプリを滅多な事では出さない”システムというわけです。従来のグランプリが出る事を半ば前提にしたような“北朝鮮・イラク方式”とは全く別物だと考えて良いでしょう。

 ところが、この新システムが発表になったのは作品募集が締め切られ、予備選考が開始されてからでした。つまり、応募を締め切った後になって、突然全く別物の投票システムを採用すると一方的に宣言したわけです。これはいかがなものでしょうか?
 これは言い方は悪くなりますが、「今年もグランプリを絶対出すよ〜」とエサを撒いておいて、いざ“獲物”が釣れた途端に「ああ、あれウソ」とやるみたいなもんで、応募者の立場に立てば騙し討ちも良い所です。
 更に、予備選考が開始されてからシステム改訂がアナウンスされたと言うことは、応募された作品や応募者の経歴をチェックした後にシステム改訂を最終決定した疑いが濃く、これは極めて公正さを欠いた行為であると言わざるを得ません。こんな事が罷り通ってしまえば、今後は編集部サイドがグランプリを出したい(作家の)作品が応募された時にはグランプリ選出の条件を緩くし、そうでない時には今回のように厳しくするという事が自由自在に出来てしまいます。これでは出来レースです。
 特に今回は応募総数が極端に減少し、全体的なレヴェルの低下が危惧されている状況にあります。そんな時に予備選考が開始されてからグランプリへのハードルが高くするなんて、これは「どうぞ疑って下さい」と言っているようなものです。システム改訂そのものは評価できるだけに、今回の「バンチ」編集部の軽率な行動は残念でなりません。是非、これからは本当の意味で公正な運営を心がけてもらいたいと思います。

 それでは今回はこの辺りで。次回は賞レースに新たな進展があってからということにしたいと思います。(次回へ続く

 


 

11月16日(土) 競馬学特論
「G1予想・マイルCS編(簡易版)」

 急遽時間が取れましたので(とはいえ、完徹明けなんですけれども^^;;)、簡単なものですがG1予想を実施します。どこまで役に立つか判りませんが、まぁ後から結果を見て笑い者にするくらいの事は出来ると思いますので、どうぞよろしく。

マイルチャンピオンシップ 京都・1600・芝外

馬  名 騎 手
    リキアイタイカン 武幸
    ミツワトップレディ 角田
  × モノポライザー 武豊
    テレグノシス 勝浦
×   ディヴァインライト 田中勝
× エイシンプレストン 福永
    デュランダル 四位
    エイシンスペンサー 安田
    テンザンセイザ 安藤勝
    10 トウカイポイント 蛯名
    11 ゼンノエルシド ペリエ
12 アドマイヤコジーン 後藤
    13 ミデオンヒット
    14 メイショウラムセス 柴田善
× 15 グラスワールド 藤田
16 ブレイクタイム 松永
    17 アローキャリー 熊沢
18 ダンツフレーム 池添

 《駒木ハヤトの見解》

 昨年からのマイル路線低レヴェル傾向に変化無く、全体的に混戦模様。止むを得ず印は絞ったが、穴党の方はアグレッシブに大穴狙いでチャレンジして欲しい。

 展開は、エイシンスペンサーかミデオンヒットがハナを切って、平均かやや早めのペースか? 後ろはやや縦長の展開で特に有利不利など無く淡々と流れそう。但し、有力な先行馬にも決め脚がある馬が多く、後ろから行く馬は、相当の展開の恵まれがないと不利は否めないのでは。

 とりあえずの最有力候補は春のマイル王者・アドマイヤコジーン。スプリント戦線での実績も目立つが、恐らくこの馬はマイラータイプ。ベスト距離に戻って叩き2走目と上積みは十分で、直線早めに抜け出して粘りこみを図る。調教が相変わらずイマイチなのが気になるが、前走もそれで走っているのだから大幅な減点材料とするのはどうか?
 2番手はダンツフレームの復調に賭ける。地力ならこのメンバーでは一枚上なのは多くが認めるところで、攻め馬の様子が抜群という評価となれば秋2戦の凡走は度外視して良さそう。馬単なら逆転まで有り。
 3番手以下は大混戦だが、地味ながら実績を積み上げて来たグラスワールドを抜擢したい。ブレイクタイムエイシンプレストンも捨て難いが、前者は記録上の実績に中身が伴っていないように感じるし、人気も被りすぎた感。後者は暮れの香港に射程を合わせている感があり、ここでは強く推せない。
 面白いところでは古豪・ディヴァインライトが面白い。上手くインコースを掬うレースが出来れば、かつての高松宮記念2着の再現も。単は難しいが2着候補として狙い目有り。

 駒木自身の買い目は、上位3頭(12,18,15)の馬連BOX3連複1点買い。○−▲的中なら万馬券となるのだが、果たしてどうなるやら……。

 


マイルCS 結果(5着まで)
1着 10 トウカイポイント
2着 エイシンプレストン
3着 リキアイタイカン
4着 テレグノシス
5着 14 メイショウラムセス

 ※駒木博士の“敗戦の弁”
 本当に笑い者になっただけだったなぁ(苦笑)。やるんじゃなかった、こんな無茶な講義。お蔭で風邪気味になっちゃったし……。
 しかし、有力馬まとめて凡走ってパターン、もう勘弁して頂きたいです。それが競馬って言われればそれまでだけど、絶好の手応えで上がって来た人気馬・実力馬が直線でバッタリ止まってしまうと全身から力が……。
 中穴党の僕にとっては、こういうレースはもうお手上げ。お力になれずに申し訳有りませんでした。ところで3連複当てた穴党の方、ご祝儀下さい(笑)。

 ※栗藤珠美の“反省文”
 やっぱり調子に乗るといけませんね。完敗でした(苦笑)。博士と本命・対抗がダブった時点で覚悟はしてたんですけどね(笑)。
 来週はG1レースが2つあることですし、頑張って挽回したいです。


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