「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

10/31(第81回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第5週分・合同)
10/26(第80回) 
競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第3戦・菊花賞」
10/24(第79回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第4週分・合同)
10/19(第78回) 
社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(8)
10/18(第77回) 
競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第2戦・秋華賞」
10/17(第76回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第3週分・合同)
10/14(第75回) 
社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(7)
10/10(第74回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(10月第2週分・合同)
10/8(番外) 人文地理「続・駒木博士の東京旅行記」(2)
10/6(第73回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・後半)
10/4(第72回) 競馬学特論「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第1戦・スプリンターズS」

10/2(第71回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・前半)

 

2003年第81回講義
10月31日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第5週分・合同)

 今週は久々にレビュー対象作ゼロか…という感じでしたが、ネット界隈のネタバレ情報の通り、『スピンちゃん』が本誌再登場となりました。
 しかし謎なのが、代原でもないのに前号の「次号予告」で告知が無かった事ですよね。これまでは、取材休み分穴埋めのための“準代原”でもキチンと告知がされていたんですが……。
 ひょっとして、『風天組』の取材休みが急遽決まってしまい、次号予告の締め切り時点では掲載作品が決まってなかったとか……? 『スピンちゃん』作者の大亜門さんによる巻末コメントも大人の事情を匂わせるモノでしたし、そんなドタバタ劇が起こった可能性もゼロじゃないと思うんですが、どうなんでしょうか。

 さて、それでは情報系の話題から……なんですが、先週に引き続いて今週も確定情報は無し。ちょっと寂しいですね。
 ただ、「サンデー」次号予告にあった、『モンキーターン』の“スーパー特報”予告は、どうやらアニメ化の告知になりそうですね。ちょっと前にスポーツ新聞でフライング情報が流れていたこともありますし、多分間違いないと思います。これで「“純”、痛恨のフライングでパパに!」とかだったら、それはそれで大爆笑なんですけど。
 ……しかし、このマンガ、主人公の憲二はもう25歳なんですが、結構モテるクセに全然その手の出来事があった雰囲気を感じられないのは、直接的なエロ表現はご法度の河合克敏作品(笑)だとしても、さすがに不自然な感じがしますよね。まぁ、悪い先輩に色々な遊び場に連れ回されている情景は容易に目に浮かぶので、その道のプロのお姉(以下自粛)。


 ──などと、つまらない事を言ってないで、レビューとチェックポイントへ参りましょう。先に述べましたが、今日のレビュー対象作は「ジャンプ」からの“準代原”読み切り1本のみです。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年48号☆

 ◎読み切り『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門

 「赤マル」春号の2本立てで颯爽とデビューした『スピンちゃん』も、細かくタイトルを変えつつも今回が本誌2回目・都合3回目の登場。前回の登場から2ヶ月しかたってませんし、読み切りって感じがしませんね。
 で、そういう事情もありますので、作者の大亜門さん(“大”が苗字で“亜門”が名前みたいです。『BASTARD!!』の登場人物・ダイ=アモンの当て字でしょうか)のプロフィールは、9月2日付講義での前作『超便利マシーンスピンちゃん』のレビューを参照してもらう事にして、今回は割愛させて頂きます。

 それでは本題へ。しかし、今回の作品は果たしていつ描かれたのか判らないので、前作との比較対照がし難いですね(苦笑)。下手すりゃ前作執筆前に描かれた原稿かも知れませんし、ここは「前作に比べると」云々という言い方は止めた方が良いかも知れません。

 そう言った事も踏まえながら、まずはについてから。普段は「ギャグマンガにしては許容範囲だが改善の余地アリ」という感じで素っ飛ばしていますが、今日は少し詳し目に述べる事にしましょう。
 1コマ1コマ丹念に眺めてみますと、とりあえず感じるのは作者のスピンちゃんに対する愛情ですね(笑)。まぁ笑いをとる手段として、という意味合いもあるんでしょうが、他のキャラクターと比べると表情の変化などの描き込みが全然違います。「どんな社会性のないダメ人間でも、ロボットと小さい女の子は大好きですから」というセリフは、作者が読者経由で自分自身へ向けて放った、ブーメランのようなセリフなのでしょうか。
 ただ、そうなると他のキャラクターの描き方が物足りなく感じてしまうわけで……。特に12ページ目の5コマ目のような、同じコマで表情の変化を表現する所などには、まだまだ技術が不足している所が露呈されています。
 また、画力不足によって絵が全体的に止め絵っぽく見えてしまうのも、今後の改善の余地でしょうね。部分部分では動的表現も出来ているのですが、さりげない会話シーンなどで口を止めたまま喋っているように見えてしまうのです。作者本人もそれを判っているようで、意識的に正面を向いて喋るシーンを少なくしたりしているのですが、そういう“逃げ”の姿勢は余り好ましくないですね。
 代原作家スタートでせっかくここまで頑張ったのですから、来るべき連載獲得に向けて、もうちょっと画力の向上を目指してみては如何かと思うのですが……。

 しかし一方、ギャグについては、ほとんど文句のつけようのない良いデキになっています。連載作品級です。完全に主役級の3人(スピン、じいさん、透瑠)のキャラを掴んでいるようで、今後もネタ切れの心配も無さそうですし、既に熟練の域に達しようとしています。また、ギャグの“命”である間も絶妙で、相変わらず高いセンスを窺わせてくれますね。
 それに加えて今回は、「違和感で笑わせる」という、ギャグにおける基本というべきスタンスから出て来たネタ(簡単に言えば“ベタ”なネタを中心にまとめられており、非常に好感が持てます。「ジャンプ」の旧作からのマニアックネタも良いんですが、やはり元ネタを知らないと素直に笑えないギャグというのは諸刃の剣ですからね。
 ただ、惜しむらくは今回も最後のオチが弱かった事でしょうか。ラストが決まるか決まらないかで印象度が大分違ってくるはずですので、ここはもっと力を注いで欲しいポイントです。

 評価は少し甘いかも知れませんが、今回もA−ということにしておきましょう。これだけの作品、もうボチボチ連載化も考えないと、ちょっと可哀想な気もします。もう少し画力がついたらゴーサインを出しても良いんじゃないでしょうか?

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週の掲載順、『BLACK CAT』の直後に『HUNTER×HUNTER』ですか。ほんの数ページ差でシビアさ違い過ぎですがな(苦笑)。
 最近は『NARUTO』『武装錬金』もシビアな命の遣り取りを展開していましたが、やはりこういうシーンって、作者の個性と言うかポリシーのようなモノが一番ハッキリと現れますよね。

 ◎『武装錬金』作画:和月伸宏【現時点での評価:A−/中間まとめ】 

 今回で第1エピソード・“蝶野編”が終了。分量的には、これでピッタリ単行本2巻分になるんでしょうか?

 それにしても、自他共に認める“ハッピーエンド至上主義者”の和月さんらしく、カタルシス十分のエンディングでしたね。“ラスボス”の蝶野攻爵にまで救いを与えて、主人公側の主要キャラには犠牲者ゼロハリウッド式エンターテインメントの王道ですね。
 あと、今回のラストシーンですが、本来なら「斗貴子さんが助かるかどうか」という部分にスポットを当てがちなんですが、どうせミエミエの展開になるなら…と、敢えて先にハッピーエンドを確定させたのが成功でしたね。これで読者が何の邪念も無くカズキに感情移入する事が出来るようになりました。さすがです。

 さて、以前お約束した通り、“蝶野編”終了時点での中間暫定評価をしておきましょう。
 世界観やキャラクターの設定は文句無しの満点レヴェル。先述したラストシーンも大変素晴らしいです。ただし、戦闘シーンが冗長であること──最後の蝶野との戦闘シーンを大幅カットするなどして改善の兆しが窺えますが──と、ギャグの挟み方がやや過剰過ぎ、肝心なシーンでの緊張感を欠いてしまった…などの問題点もあります。
 結局はそれらの長所と短所、どちらを重く見るかという話ですが、当ゼミとしては「長所の素晴らしさが短所を何とかフォローしている」という見解のもと、A−の評価を出す事にしました。ただしこれは作品の持つポテンシャルからすれば最低ランクの評価であり、今後短所が改善された場合は大幅な評価アップをする余地も残されています。なので、この作品については今後も“要観察”ということにしておきたいと思います。

 
 ◎『ごっちゃんです!!』作画:つの丸【現時点での評価:保留/現時点での評価確定】 

 さて、こちらもどういった作品かが固まって来たようですので評価を出しておきましょう。
 全体的には、派手さは無いものの、ソツの無いスポ根マンガに仕上がっていると思います。この辺は、『みどりのマキバオー』時代に鍛えられた重厚なストーリーテリング力が、今なお活きているということなのでしょう。『マキバオー』の後、短期打ち切りが続いたにも関わらず、根強いファンが多く残っていると言うのもこの辺に理由があるのかも知れませんね。
 しかし、この作品のネックは主人公の“ごっちゃん”こと後藤で、彼だけが作品の世界観から完全に浮き上がってしまってるんですよね。まぁ、ここで正統派の熱血系主人公を配置したらしたで、今度は平凡なだけのスポ根になってしまうので難しいところなんですが……。ホント、つの丸さんという作家は、自分から敢えてハンデを背負うのが好きですよね。

 ……そういうわけで、まとめです。基本的には地味ながら重厚なストーリーを評価できるものの、主人公の設定に大きな構造的欠陥を抱えている…ということで、評価B+としておきます。


 

☆「週刊少年サンデー」2003年48号☆ 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「住んでみたいと思う国」。
 圧倒的支持を受けたのは日本でした。皆さん現実的過ぎ(笑)。まぁ気持ちは判りますけどねー。日本に住んでいるけど、気の向いた時に海外へ行って長期滞在も……っていうのが一番の理想かも知れません。ただ、日本は税金高いですよね(苦笑)。登記上の本社はグランドケイマン諸島に……って、それはソフトバンクBBのダミー子会社でしたか(笑)。


 ◎『金色のガッシュ !!』作画:雷句誠【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 作品最強のギャグメーカー・ナゾナゾ博士&キッドが一転して感動の嵐の中、永遠の別れ
 こういうシーンを見ていると、雷句さんは“泣かせ”のテクニックをデジタルに理解しているんだな…とつくづく思いますね。読者の喜怒哀楽を自由自在に操れるっていうのは正に天賦の才能だと思います。最近、やっとこの作品がクオリティに見合った評価をされるようになって、駒木個人としても嬉しく思いますね。


 ◎『売ったれ ダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治現時点での評価:保留中/解説など】
 
 先週に引き続いて、デジタルな観点からギャンブル講座を。

 今回出て来た、「ルーレットで6回赤が出た後に、もう一度赤が出て7連続になる確率」は2分の1か2の7乗分の1か…という話について少々お話を。まずこの場合、単独の結果はその前後の出目と全く関係が無いはずですので、確率はダイキチの言う通り、2分の1が正解です。ディーラーさんは何か言ってますが、少なくともデジタルな観点からは答えは出ています(笑)。
 また、7回ルーレットを回して7回連続で赤が出る確率は1/128。確かに珍しいと言えるかも知れませんが、この程度の確率の出来事は当たり前のように起きてますので、賭けるのを躊躇するような場面ではありません。30回連続で赤、とかだったらさすがに気色ばみますが、それならそれで「このルーレットは赤に出目が偏るようになっているのではないか?」と疑わなくてはならない所です。

 まぁこの作品では、“運の流れ”のようなオカルト的視点からギャンブルを描いていますので、あんまり口を挟むと逆に興醒めですかね。でも、このマンガって、商売のノウハウをデジタル的な観点からレクチャーするマンガだったような気がするんですが(笑)。


 ……それでは今日はここまで。今週は明日に「ジャンプ」が発売になりますので、皆さん買い逃しの無いよう。「あれ? もう『ジャンプ』出てたの?」とか思ってる内に、ネタバレ話に巻き込まれたら不幸ですもんね(笑)。

 


 

2003年第80回講義
10月25日(土) 競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第3戦・菊花賞」

 秋のG1予想第3弾をお送りします。
 この講義の趣旨を計りかねている方もいらっしゃると思うのですが、要は内輪での学習活動を兼ねた、様々な予想スタイルの比較実験だと解釈してもらえば良いと思います。まぁ、「結局ビギナーズラックが一番強い」なんてことになったら、それはそれで困ってしまうんですがね(笑)。

第3戦・菊花賞(京都3000芝外)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

     ×   ニシノシンフォニー 江田照
セントライト記念は格上挑戦で良績。しかし更なる相手強化とスピード面での課題は余りにも大きくて。
  ×   リンカーン 横山典
前走で3強に肉薄して一気に台頭。休み明け2走目の上積み次第では一角崩しまであるか?

 

      サウスポール 武英

捨て身の逃げ宣言。スタミナ、スピード共に足りないが、自分のレースでベストを尽くす。

ゼンノロブロイ ペリエ

オーナーを説得してまで出走に漕ぎ付けた藤沢和師の勝算は如何ほど? デザーモ→ペリエの豪華リレーで三冠阻止狙う。

        トリリオンカット 佐藤哲

秋2走の不振は深刻。ここに来て体調良化の兆しはあれど、果たして逆転までは……?

        マーブルチーフ 池添
差しタイプも瞬発力に難。有力馬と真っ向勝負を強いられる今回は苦戦必至。
        ペルフェット 吉田稔

オープン特別4着の経歴はあれど、本質的にはダート馬。目先の結果より将来を見据えてのチャレンジ?

  ザッツザプレンティ 安藤勝

レースごとの善戦光るが、重賞での好走は重・不良馬場に限定。あと一歩の差を埋めるには、晴れの天気予報が恨めしい。

        コスモインペリアル 武幸

弥生賞でのハナ差3着が思い出されるが、G1成績は全て9着以下。格の差は火を見るよりも明らかで……。

× 10 サクラプレジデント 武豊

大敗のダービーは不利によるもので度外視可能。万全と言えぬまま夏〜秋を好成績で戦い抜いたのは立派の一言。距離さえ克服すれば、念願の一冠奪取も。

        11 マイネルダオス 武士沢

一叩きで体調良化も、芝のG1では入着争いが精一杯。

        12 シルクチャンピオン

オープン実績がいかにも不足。まだ絞り切れぬ馬体も持て余し気味で、勝負気配には程遠く。

        13 チャクラ 後藤

勝ち味遅いが堅実な差し脚は重賞クラスでも通用。しかし一線級との力比べでは格の差見せつけられそうで。

        14 テイエムテンライ 小池

長距離戦のキャリアは随一も、条件戦すら粘り切れぬ現状では……。

        15 アスクジュビリー 四位

変則的なローテーは「なんとか間に合った」という感じ。地力は勿論、マイル戦からの転戦にも不安視避けられず。

      × 16 ヴィータローザ 蛯名
“夏の昇り馬”の王道ルート歩んで来たが、ここに来て追い切りの動きに不満。本番直前に失速気配?

17 ネオユニヴァース デムーロ

三冠達成を期してベストパートナーが勇躍来日。2連敗のダメージは完全に抜け、万全の体調で堂々と大偉業に挑む。

 

    × 18 マッキーマックス 藤田

ネオユニヴァースを苦しめた春シーズンの力強さが蘇った。キャリア不足は隠し切れぬが、ノーマークの強みで一発狙う。

 

●展開予想(担当:駒木ハヤト)

 逃げ馬候補は何頭かいるが、スムーズなら、逃げ宣言をしているサウスポールがハナに立つだろう。普通のレースをしてもどうにかなるような話でも無いので、ひょっとするとナリタブライアンの時のスティールキャストを思わせるような大逃げになるかも知れない。
 先行馬には人気薄・実力下位と見られる馬が固まっているが、ペース次第では、ザッツザプレンティやリンカーンあたりも前々でのケイバをするかも知れない。
 ネオユニヴァースら“3強”は、中団以降、思い思いの位置に控えて仕掛けどころを窺う。先に動いた方が不利になるため、2周目第3コーナー付近までは競輪の周回中のような静かなせめぎ合いが続きそう。
 坂の下りあたりから一気にレースが動き出す。世界に名だたる名手たちのことだ。よもや牽制し過ぎて前の馬に残られるなどという事はあるまい。直線半ばで3頭の争いになって、後は気の遠くなるような追い比べ。波乱があるとすれば、漁夫の利狙いでジッと脚を貯めているような馬。

●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:ゼンノロブロイ》

 なんて贅沢なレースなのだろう。
 三冠の懸かったレースであり、春シーズンの主役級がほとんど欠ける事もなく揃い踏みしたレースであり、しかもその主役級の馬に跨っている騎手は日仏伊のトップジョッキーたちなのだ。こんなレース、そうそうあるものではない。リアルタイムで観られる我々は幸せモンである。
 で、予想だが、ご覧の通り人気上位3頭の組み合わせに絞らせてもらった。誰にでも打てるような印に甘んじてしまうのは不本意ではあるが、実力馬3頭の三つ巴に逆らうわけには行かない。この際、馬券は観戦チケットと思って開き直る。
 先週のパターンから考えると、今週も三冠か…という流れではあるのだが、本命は敢えてゼンノロブロイに打った。あの藤沢和雄調教師が、ここまでして菊花賞にこだわる以上は何か確信めいたものがあるのだろう。勝負気配は三冠を狙うネオユニヴァースと比較しても、なお互角以上と見ている。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 2.7
馬連 4-17 200円 2.9
  4-10 200円 9.4
  10-17 200円 8.2
  ── ──
  ── ──
  ── ──
馬単 4→17 100円 5.6
  4→10 100円 14.9
三連複 4-10-17 100円 5.0


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:サクラプレジデント》

 去年の菊花賞のことは、1年経った今でも明確に覚えています。いえ、これからも一生忘れないでしょう。あの、武豊騎手のノーリーズンに手持ちのお金を全額注ぎ込んだ菊花賞のことは……。
 そして今日、ようやくリベンジを果たす日が来ました。馬券の中心は、もちろん武豊騎手のサクラプレジデント。ネオユニヴァースとゼンノロブロイに隠れる形で少し影が薄くなっていますが、これはレースをする上では逆にプラスなんじゃないでしょうか。2頭のマッチレースになるかと思われた時に、後から一気に突き抜けるような展開が理想ですね。
 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 6.1
馬連 10-17 200円 8.2
  4-10 100円 9.4
  4-17 100円 2.9
  8-10 100円 40.2
  2-10 100円 28.8
  ── ──
馬単 10→17 100円 18.2
  10→4 100円 21.6
三連複 4-10-17 100円 5.0


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:ザッツザプレンティ》

 今週は本当に頭痛かったですよ〜。なかなか穴予想が考えつかなくて、困っちゃいました。「ゴメンナサイ。今回だけはガチガチの馬券買わせてください」ってお願いしようか、なんて思ったりもしましたよ(笑)。
 でも、結局は穴予想。人気の3頭がけん制しすぎて仕掛けが遅れて、前でレースをしていた馬が流れ込むんじゃないかっていう考えです。無茶だって分かってるんですけどね(苦笑)。でも、これでいきます。馬券が当たっちゃったら、だいたい三冠はダメになっちゃったってことになるんですけど、だからと言ってわたしを恨まないで下さいね(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 17.0
馬連 2-8 100円 49.5
  8-17 100円 21.5
  2-17 100円 15.7
  4-8 100円 21.3
  8-10 100円 40.2
  1-8 100円 153
馬単 8→2 100円 143
  8→17 100円 68.0
三連複 2-8-17 100円 48.8

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:ネオユニヴァース》

 先週のスティルインラブのトリプルクラウンは、すごくエキサイティングでした。来日1年目にいきなりあんな大記録が観られて、本当にハッピーです!
 なので、今週もまたトリプルクラウンが観たくなっちゃいました。だから予想もネオユニヴァースからです。あと、駒木博士から「長距離レースは騎手の腕がモノを言うんだよ」って聞いたので、あとは騎手で印つけちゃいました。また当たったら嬉しいんですけど……。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 17 100円 2.4
馬連 4-17 100円 2.9
  10-17 100円 8.2
  4-10 100円 9.4
  8-17 100円 21.5
  17-18 100円 58.8
  16-17 100円 34.0
馬単 17→4 100円 5.3
  17→10 100円 12.4
三連複 4-10-17 100円 5.0

 以上が予想です。今年の菊花賞は、本当に見応えのある良いレースになると思いますので、くれぐれもお見逃しなく。では、またレース回顧でお会いしましょう。


菊花賞 成績

  1着 ザッツザプレンティ
  ×   2着 リンカーン
3着 17 ネオユニヴァース
4着 ゼンノロブロイ
      × 5着 18 マッキーマックス

単勝8 2020円/馬連2-8 5540円/馬単8-2 17080円/三連複2-8-17 4900円

 ※駒木ハヤトの“敗戦の弁”(不的中)
 いやー、やっぱり「競馬に絶対は無い」って本当だ(苦笑)。サクラプレジデントは気性難で競馬以前。ゼンノロブロイは4コーナーで大きく後手を踏まされてアウト。で、ネオユニヴァースは、そんな消えた敵を意識し過ぎてロングスパートに出て沈没。何て言うか、別の意味でお見事(笑)。
 でもまぁ、何がどうあれ、直線で二冠馬を競り落として後続も完封したんだから、この条件でのザッツザプレンティは強かったって事だろうね。純粋なスピード勝負にならなきゃ世代トップクラスと互角以上に戦える実力はあるわけだ。でも、こういう曲者が1頭いると馬券作戦が格段に難しくなるんだよなぁ。嫌な馬を出世させてしまったよ(苦笑)。

 ──しかし、馬券の方は順子ちゃん恐るべしだなぁ。馬単万馬券を2点で、50倍の三連複を1点で当てるなんて、こんなのきっと一生に何度もないよ(笑)。それがこういう時に炸裂するんだから参った。で、もし来年だったら三連単も当たってたのか。何倍つくんだよ、この三連単は(苦笑)。
 それにしても、あと7戦でどうやって追いつこう(苦笑)。こんな形で企画倒れになりかけるとは想像してなかったぞ……。 

 ※栗藤珠美の“反省文”(不的中)
 ああ、今年も無残な結果に……(絶句)。
 第3コーナーまで引っ張られるくらいなら、今年もゲートで競走中止してくれた方が気が楽でした(苦笑)。ホント、このレースは私にとって鬼門ですね……。
 こっちの馬券レースの方は順子ちゃんの大活躍で大変なことになっているみたいですけど、とりあえず来週は自分のペースを取り戻すことに専念したいと思います。今年の安田記念(馬連万馬券的中)のこともありますし、とにかく最後までベストを尽くすつもりです!

 ※一色順子の“的中失礼しました〜!”(単勝、馬連、馬単、三連複と完全的中!)
 ……御無礼!(ニヤリ)
 …あ、すいません、万馬券的中した時、これをやってみたかったんです(笑)。
 自分でもイマイチ信じられないんですが、お財布の中がギッシリ詰まってるので本当なんでしょう(笑)。なんだか結果オーライな勝ち方でしたけど、元々穴馬券なんて結果オーライなんで、どうでもいいです……ってこれはさすがに怒られちゃいますね(笑)。
 さーて、優勝の特典何にしてもらおうかな〜。今から暮れまでかけてジックリ考えとこっと。

 ※リサ=バンベリーの“イッツ・ア・ハードラック・デイ”(不的中)
 最後のコーナーでワタシが印つけた馬を探してたら、何が何だか判らないうちにレースが終わっちゃってました(苦笑)。ネオユニヴァース、せっかくここまで頑張ってきたのに少しかわいそうですね……。
 駒木博士に聞いてみたら「三冠馬なんて、阪神タイガースが優勝するようなペースでしか出て来ないんだから、こういうこともあるさ」ですって(笑)。ということは、19年ぶりになるまで、あと10年くらい三冠馬は出ないってコトですか?(苦笑)。それまで待てるかな〜?(苦笑)

第3戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント
(暫定順位)
今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 2640
(1位)
0 2640
(2位)
栗藤珠美 1840
(2位)
0 1840
(3位)
一色順子
(4位)
29540 29540
(1位)
リサ=バンベリー 1390
(3位)
0 1390
(4位)

 (ポイント・順位の変動について)
 波乱の菊花賞を上位4頭まで印通りに的中させた一色順子が3万ポイント近い大量得点で一気に暫定首位浮上! 2位の駒木ハヤトに27000ポイント近い大差をつけ、早くも独走態勢へ。30000ポイントとは、シリーズ全戦残り全て不的中でも回収率が300%になるということなのだから、逆転は容易ではない。他の3人の動向に注目だが、早くも興味は最下位争いに絞られたか……?

 


 

2003年第79回講義
10月24日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第4週分・合同)

 今週もゼミは前・後半合同版でお送りします。また、今後も他の講義との兼ね合いで、こういうケースが増えそうな感じですね。以前からの受講生さんは、今年の春までのパターンに戻ったものだと考えて下さっても結構です。

 さて、そういうわけで、今日も今週発売の「ジャンプ」と「サンデー」両誌の内容について、ゼミを実施します。
 で、まずは情報系の話題……といきたいところなんですが、今週は両誌とも読み切り、新連載ともに公式の告知がありませんでした。一応、2ch経由の情報として、次号の「ジャンプ」に大亜門さん『スピンちゃん』が再登板…という話を聞いているのですが、駒木が実際に確かめたわけではありませんので断言は避けておきますね。(まぁほぼ確実な感じですけど)

 ──では、無駄に引っ張ってもアレなんで、早速レビューとチェックポイントに行きましょう。今週のレビュー対象作は「ジャンプ」から読み切り1本、「サンデー」から新連載1本の計2本です。チェックポイントも一緒にどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年47号☆

 ◎読み切り『NOW AND ZEN』作画:加治佐修

 今週の「ジャンプ」読み切り枠は、初の週刊連載が1クール打ち切りに終わってしまった加治佐修さんの復帰作です。
 加治佐さんは「赤マルジャンプ」99年夏号でデビュー。その後「赤マル」00年冬(新年)号、本誌00年45号に読み切りを発表しますが、その後は岸本斉史さんのスタジオでアシスタントを務め、キャリアが一時中断されます。
 しかし、加治佐さんは昨02年の年末新連載シリーズで突如抜擢され、03年2号から『TATTOO HEARTS』の連載を開始します。2年も前に発表した読み切りの連載化ということで注目を集めましたが、残念ながら14回で打ち切りに。“粋”をテーマにした作品でありながら、粋じゃない結末を強いられる屈辱に甘んじてしまいました。
 そして、先ほど述べましたが、今回のこの作品がそれ以来の復帰作。リスタートはどのような塩梅になったのでしょうか?

 まずについては、全く問題ないですね。先の連載の時から画力は「ジャンプ」連載作家の水準に達していましたので、当たり前と言えば当たり前ですが。また、今回は“岸本斉史色”が若干薄れたような感じで、加治佐さんオリジナルの味が出て来て良いんじゃないでしょうか。
 敢えて注文をつけるなら、全体的に言って絵柄がやや華やかさに欠けるところでしょうか。特に今回はキャラクターの大半が男(しかも非美男子系)だった事もあって、それがより一層際立ってしまった気がします。次回作では、読者の目を惹き付けるようなヒロインが見てみたいですね。

 ストーリー&設定についても、大きな減点材料は有りませんね。プロット自体は「ジャンプ」の読み切り王道パターンなんですが、そこに色々な設定や伏線を散りばめて、“ありきたり感”を和らげる事に成功しています。特に、この手のプロットで最も描き方の難しい“擬似超サイヤ人化”の部分を、ただ主人公が激昂するだけではなく、工夫を凝らしてまとめたのは高ポイントです。
 欠点を挙げるとすれば、タイムスリップの描写に既存の作品の影響が色濃く現れている点や、集中力という地味な能力を強さの指標にしてしまったために、今一つインパクトを欠けさせてしまった点が挙げられるでしょう。
 ただ、これらが作品の完成度を大きく損ねているかと言えば、それは違うと思います。いくら既存作品の影響が濃いって言っても、タイムスリップを絡めた話はどうしても藤子F作品っぽくなってしまいますし、「ジャンプ」で秒単位のタイムワープの描写をすると、絶対に「キング・クリムゾン」って言われてしまいますしね(笑)。

 ……そういうわけで、評価は少し高めにB+寄りA−ということにしておきます。ぶっちゃけた話、駒木の個人的な「面白い、面白くない」で言ったら後者の方になってしまうんですが、それで評価を落とさないのが当ゼミのスタンスですので、この評価を献上いたします。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】 
 
 今週号、本当はこの作品のネタで平和に盛り上がって終わって欲しかったんですけどねぇ(苦笑)。

 しかしまぁ、今回も恐ろしいくらい芸が細かくて中身の濃い19ページでした。以下、見所を箇条書きで。

●最近またグングン絵が上手くなってますね、村田さん。
●テレビ中継がBSデジタル放送だったり、(観客が)すごい入ったね」と栗田に言わせる割に、客席後方が空席だらけだったりするあたりが、悲しいくらいアメフト界の現状を表現しててリアリティ満点(苦笑)。
●まもり姉ちゃん、さりげなく各所で萌え担当。
●グルービーだぞ、『取り返しのつかない入れ墨』
ヒル魔とアポロ監督の悪口合戦を、映画の字幕風に意訳するとこうなる↓
 「まー、お前の小っちぇえナニじゃあ、ションベン垂れ流すくらいしか使い途無ェか!」
 「何だと? 我が“アポロ号”は、日本の発射も出来ない貧相なロケットと違ってモノが違うんだよ!」
 「ほー、じゃあよ〜く見せてもらおうじゃねぇか!? そのペンシルロケット“アポロ号”とかをよォ!」
 「ふざけるな! クソしてる時に勢い余ってナニが便器に“着水”する悩みも分からんくせに偉そうな口叩くな!」
 「何言ってんだ、そこのメス蟻さんも『アンタみたいな短小なんて願い下げよ』っておっしゃってるぞ、オイ!」
 ……ちょっと長すぎますが、こんな感じでしょうか。しかしヒル魔、結構英語出来るんですな。ただし、実用性は高いようで低そうですが。

 
 ◎『いちご100%』作画:河下水希現時点での評価:/雑感】

 少年誌ラブコメの定番、寸止めキター!(笑) いやー、やっぱりコレがあってこその少年誌ですよ。ええ。

 昔、コージィ城倉さんが「近代麻雀」で描いたマンガで、ラブコメを描いている作家とアシスタントが、麻雀で次回分のシナリオ制作権を争う……という話がありました。
 主人公とヒロインを早いところHさせたいアシスタントが暴走させたシナリオを、作家がギリギリのところで寸止めに持っていく…という筋で話が展開していくんですが、最後の最後、もうどうにも“イン”を阻止出来ないような所でバトンを受け取った作家がとった寸止め作戦は、「2人がHしようとしている所にセスナを墜落させる」でした。ラストシーンは、呆然と自分の家の消火活動をを眺める全裸に毛布だけの主人公とヒロイン…というシュールな絵。

 ……で、何が言いたいのかと言うと、河下さんも、どうせやるならそこまでやってくれと(笑)。東城とのH阻止するためなら空襲警報鳴らすくらいの覚悟でお願いしたいと思います(笑)。


 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
 
 まぁ、アレですよ。ポンズが死んだか死なないかで騒いでた我々は甘かったと。自分の好きなアイドルがまだ処女だと言い張るくらい甘かったと。トルコ風アイスクリーム・メイプルシロップ&練乳かけくらい大甘だったと。そういうわけですよ、ええ。

 とにかくこの作品が異様なのは、“キャラクター生死のボーダーライン”が極めて低い事ですね。普通のお話なら間違いなく死なない、もし死なせるならストーリーのヤマ場で感動的に死なせるキャラを、いとも簡単に舞台から消してしまうんですよ。なので、危機一髪の場面で助っ人が現れて命が助かる…という、“ご都合主義だけど、カタルシスの大きさ故に許されるお約束”も一切ありません。「普通に考えたら、死ぬよな」という場面で本当にキャラクターを殺してしまうんですね。
 以前の“ポンズ生死不明事件”や今回のポックル虐殺が話題になっているのは、知らず知らずの内に我々読者が抱いている、「ポックルくらいの“ランク”のキャラクターなら、命だけは助かるだろう」という固定観念みたいなものを、冨樫さんが本気で揺るがしにかかっているからなんでしょうね。言ってみれば、普通のエンターテインメント系のお話に、スプラッタやホラー専用の特殊な“ボーダーライン”──主人公を含めて全員死亡も厭わない──を持ち込もうとしているわけです。
 でも多分冨樫さんは、「何を今更。このマンガがそんなマンガだって事は前々から作品の中で言ってきたでしょ」とか思ってるはずですよ、きっと(笑)。何のために、これまであれだけ人をバタバタ殺したと思ってるんだ…とかボヤいているかも知れません。

 でも普通、こんな危ない事を考える作家さんはいないんですけどね(笑)。作家にとって頭痛めて考えたキャラっていうのは、言ってみれば女の人がお腹痛めて生んだ赤ちゃんみたいに可愛いものですし。もし“割り切り上手”な人がそんな危ない考えをしたとしても、そんなシナリオ作りのための“切り札”を1つドブに捨てるような芸当、なかなか出来るものではないんですよ。
 そういう意味では、冨樫さんは本当の天才なのか頭脳回路の配置がおかしい人なのか、どちらかだと思います(笑)。まぁ、包丁で一刀両断される瞬間のポックルの手の描き方なんかを見ると、恐らく両方なんじゃないかとか思ってしまいますが。

 で、以上の点から推測すると、今後はゴンとキルア以外のキャラクターは、いつ誰が死んでもおかしくないと思います。
 キルアはゴンというキャラを引き立たせるために便利過ぎる存在ですので簡単には殺せないでしょうが、現在大ピンチのカイトは勿論、「グリードアイランド編」に登場しなかったクラピカレオリオ、さらにはヒソカ旅団メンバー、ハンター協会のお歴々なんかも“危ない”ですね。
 この作品の世界観が“そういうモノ”だと分かった以上はもう、何があっても驚けません。そもそも「ジャンプ」という雑誌の初代看板作品の一角が、主人公含む小学生を大量虐殺して救いようの無いエンディングを迎えた『ハレンチ学園』だったわけなんですから、何でもアリと言えばアリなんですよね。 


「週刊少年サンデー」2003年47号☆

 ◎新連載『結界師』作画:田辺イエロウ

 さて今週の「サンデー」は、これがこの雑誌、今年の新連載第4弾になる『結界師』の登場です。
 田辺さんは昨年の「ルーキー増刊」でデビューした後、増刊と本誌で今回の連載のプロトタイプとなる同タイトルの読み切り作品を発表し、その実績が認められての連載獲得となりました。サンデー作家の連載獲得までの道のりとしては、トントン拍子と言って良いでしょうね。
 あ、詳しいプロフィールは、もうすぐ田辺さんのページが出来るであろう、「サンデー」公式ウェブサイト内の「まんが家バックステージ」で公開されると思います。

 では、内容へ。
 については、読み切り版の時にも言いましたが、田辺さん、本当に達者です。無駄な線が全く無く、新人ながら絵の法は既に完成の域ですね。とりあえずは減点材料全くナシです。
 しかもこの作品、キャラクターの表情が穏やかなせいでしょうか、いかにも「サンデー」っぽい絵柄に感じるんですよねぇ。何だか、初日からクラスに溶け込んでる転校生を見てるみたいで、妙な感覚に陥ります。

 設定は、過去2回の読み切り版をほぼ踏襲して来ましたね。特に問題のあるモノではなかったので、変にイジるよりは逆に良かったんではないかと思います。というか、主人公がまたショタ笑顔だったらどうしようかと思いましたが、杞憂に終わって幸いです(笑)。
 ストーリーの方は、読み切り版では回想シーンとしてしか描かれていなかった“過去編”からスタートさせて来ましたね。登場人物のキャラ立ちには過去を語らせるのが一番手っ取り早いんですが、それをプロローグを兼ねて、ストーリーに絡ませるアイディアは秀逸だと思います。
 シナリオそのものも、既に形としてあったものに肉付けしたわけですから、高い完成度に仕上がっています。「敵を倒す」という目的のその先にヤマ場を持って来たのは、盛り上げ方としても良いやり方だと思いますし、また、登場人物の行動や動機付けに全く無理な点が見られなかったのも素晴らしいんじゃないでしょうか。

 とりあえず今回は、読み切り版で作った“貯金”を非常に上手く活用して最高のスタートダッシュが切れたのではないでしょうか。勿論、マンガ家としての基礎能力の高さも特筆すべき物だと思います。
 ただし気になるのは、この作品の世界観のスケールが非常に小さいで、これからどうやって話を長編向けのシナリオへ広げて行く事が出来るのか、現状ではそれが心配です。
 よって、今回限りという区切りでは十分A評価に値するだけのデキではあるものの、第3回以降まで慎重に様子を見るという意味も込めて、ここでは評価保留としておきます
 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「むちゃくちゃ眠くなったらどうしますか?」。
 ほとんど皆さんが「寝ます」という回答。まぁごもっともですね。
 これは駒木も毎日朝5〜6時まで研究室で講義の準備やってるから分かるんですが、そういう状態になったら寝るしかないんですよね(苦笑)。「ここで寝たら人生終わり」という時以外は、眠気と戦うよりも少し寝た方が結局は効率的だったりします。
 では「人生終わり」の場合はどうするか。これは安西さんの「モカ(=眠気覚まし薬「エスタロンモカ」飲んだ後に熱い緑茶」でしょうね。薬の効き目が切れた後には倍増した眠気地獄が待ってますので多用は禁物ですが……。
 しかしこれが昭和20年代前半とかだったら、やっぱり回答の大半は、「ヒロポン。よい子はマネしちゃだめだぞー」…とかになるんでしょうか。

 ◎『売ったれ ダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治現時点での評価:保留中/解説など】

 今週から『100万$キッド』というサブタイトルがつきましたこの作品ですが(嘘)、ここでカジノ……じゃなかったカシノ・ミニ講座と参りましょうか。

 今回のクリア条件はチップを5倍に増やすこと。具体的に言えば銅チップ1000枚を5000枚にするというわけですね。当講座の昨年12月18日付講義でも採り上げた通り、元来カシノのギャンブルは“一攫千金”性が低くて短期決戦に向いていませんから、これはなかなか厳しい条件と言えます。
 この場合、やはり一番大事なのは種目選択ですね。賭け金の回収期待値は勿論のこと、「賭け金を一晩で5倍にする」という条件に適したギャンブルを選ばなくてはいけません。例えばスロットマシーン。まず他の種目に比べて回収率が低いですし、“数万倍の大当たりか、あっという間の大ハズレ”という性質のギャンブルは条件に全くマッチしておらず、この場合では最も選んではいけない種目の1つ、という事になります。

 では、今回の条件に向いている種目は何が挙げられるでしょうか? まず、一番確実にチップが増やせる種目ならばブラックジャックでしょう。やはりカードカウンティングという必勝法(=期待値が100%を超えるプレイ方法)が存在するというのは非常に大きいです。この必勝法を実践できるだけの技術と知識があることが前提ですが、まずはこれを選択してチップを増やしておきたいところです。幸いにもバカヅキが来れば一気にクリアまで狙えます。逆にツキが無くても取り返しのつかない大負けは考え難く、最初のステップとしては最適の種目と言えそうですね。
 一気に5倍程度までチップを増やすというのなら、最も向いている種目は、恐らく瞳子がチョイスしたクラップスでしょう。実質的な回収期待値99%以上という数字も魅力ですし、カシノ系ギャンブルの中では比較的チップの変動が激しい(=大勝ちしやすい)のも魅力です。瞳子のようにある程度出目がコントロール出来るのならば(とは言っても、そんなもんマンガの中だけですが。)今回のチャレンジに最も向いた種目と言えるかも知れません。
 で、大吉が選んだルーレットはどうでしょう? ネコ先生が「これだけはダメ」と言うように、回収期待値はカシノ系種目で最低ランク(95〜97%)な上に戦術性に乏しく、ギャンブルとしてはかなり分の悪いモノと言えそうです。しかし、ルーレットは最高で36倍の配当が望める、つまり賭け金次第では課題の一発クリアが狙える“ハイリスク・ハイリターン”な種目でもあります。大吉のように知識も技術も無いプレイヤーにとっては、下手に無い知恵を絞るよりはルーレットでイチかバチかの勝負に出た方が良いかも知れません
 そういうわけで、一見無謀にも思える“ルーレット36倍一点勝負”というのは、実は意外に有効な作戦だったりします。ただし、この作戦は1回の大当たりでクリア出来なければ意味がありません。期待値の低いギャンブルで勝つには超短期決戦しか道は無いのです。(そういう意味では、チマチマと賭ける大吉のやり方は最悪です)
 36倍狙いを実行するとして、配当チップ5000枚を受けるのに必要な賭けチップは139枚。1000枚の“軍資金”では、チャンスは7回しかありません。理論上の勝率は18.42%(17.03
%の間違いでした)さぁ、皆さんならどうしますか? 

 ……え、駒木ならどうするか、ですか? そうですねー。自分はギャンブルをプレイする事以外でチップを増やす事を考えますね。ルールはあくまでも「チップを増やす」ことであって、「チップをギャンブルで増やす」ことではないのですから、いくらでも方法はあるはずですよ(ニヤリ)

 
 ◎『モンキーターン』作画:河合克敏【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 トビラの女子王座ベスト6揃い踏み、現実の競艇でもこんな美人揃いなら、もっとお客さん増えると思うんですけどねぇ(禁句)。

 
 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 「ちなみにサンデー編集部でも編集長派と副編集長派ってのがいてね、骨肉の権力争いをしてるのよ」
 ……って、本当に生々しい!(笑) いや、これはマジでシャレにならんような気がするんですが、大丈夫なんですか久米田センセイ(と、その担当さん)!


 ──ふう。今日は疲れました(苦笑)。カリキュラムが遅れに遅れてご迷惑おかけしていますが、出来れば懲りずに明日も来校して頂ければ幸いです。

 


 

2003年第78回講義
10月22日(水)
 社会調査
「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(8)

◎前シリーズ(「潜入レポ」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回
◎今シリーズ(「現場報告」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回 

 以前告知しました通り、このシリーズは今回で一旦休止ということにさせて頂きます。まぁ単純に題材が切れただけですんで、香ばしい新事実が発覚し次第、随時講義を実施してゆく…ということになると思いますが。

 しかし、当講座ではソフトバンク〜ヤフーBBのラインを叩く…というか茶化し続けて早7ヶ月なわけですが、最近はソフトバンクよりも派遣先の家電量販店の実態に憤りを感じさせられる事が多いですね(苦笑)。実際、既に「モデム配り現場報告・外伝」が出来そうなほど題材は溜まっていたりしますし。特に店長と呼ばれる人たちの大半が性格的にアレなのが問題で、大体の量販店のバックヤードでは、人間関係が絶えずギスギスしていたりしますからねぇ。
 まぁとりあえず、これから就職活動を予定している新卒の皆さんにアドバイスどれだけ切羽詰っても、家電量販店に就職するのはよくよく考えた方が良いと忠告させて頂きます。件のクソゲーム屋にアルバイトとして入社するようなモンだと考えて下さい。余程神経が図太くて、体が丈夫で、営業・販売の才能に長けている人でもない限り、全ての面において路上でモデム配ってる方がまだマシです。また、そういう天賦の才を持っている人は、もっと別の分野で才能を発揮した方が何かと幸せのような気がします(笑)。


 ──と、この話題はこれで「さておき」という事にしまして、モデム配り話に移りましょう。今回は、数ヶ月前に我々スタッフを震撼させたある騒動について、そして、かの悪名高き派遣会社・ネクサスの路上キャンペーンの裏側についての2件についてお話したいと思います。

 では、まずは数ヶ月前に起こったお話から。実はこの話、今でこそ中島みゆきの「時代」をBGMにして淡々と語る事が出来るのですが、その当時は全くもってシャレにならないモノでありました。
 この講義シリーズを受講してらっしゃる方なら既にお判りの通り、駒木がスタッフとして参加しているパラソルキャンペーンは、今年の2月を境にして、新規契約獲得の手段としては非常に効率の悪いものになってしまいました。大の大人が2人(場所によっては数人かそれ以上)タチの悪い会社の新人研修のように作り笑顔で大声を張り上げまくって、それで1日の申し込み受付数は1件か2件。時には全くのゼロという場合すらあると言う次第。
 しかも、そんな効率の悪いキャンペーンにかかる費用は半端ではなく、例えば駒木のいる神戸地区だけで1週間に数億円もの経費がソフトバンクの金庫から消え失せていたとかいないとか。正直なところ、ソフトバンクは道行く人にモデム配っていると言うよりも、むしろ関係者各位にカネを配って回っているだけ…と言った方がシックリと来るような状況になっていたのです。
 勿論、こんな状況が正常であるはずはありませんし、誰しもが「これはアカン」と認識してはいました。しかし、需要そのものが頭打ちになっているというのに、低迷を打破する“特効薬”などあるはずがありません。そんなものがあったら、とっくの昔に日本は不景気から脱し、雇用事情も好転し、駒木もモデムなんぞ配らずに学校現場に復帰しているわけです。消費者も「無料で試せるブロードバンド」なんてケチくさい事言わず、「景気がエエんやから、光ファイバーや!」という話になってヤフーBBは窮地に立たされているはずなのです……って、あれ? 結果は同じですか。

 ……それに加え、そもそも末端スタッフの9割以上がソフトバンクとヤフーBBを嫌いで、「一刻も早く仕事を辞めたいが、とりあえず給料だけは良いので続けてる」人であるため、現場の士気は総じて高くありません。外見上は元気で頑張っているように見えるブースでも、彼らの心的世界を覗けば、そこには『高校アフロ田中』に出て来る部室のような、それはもう澱みきった気だるい空気が沈殿していたりするのです。
 たとえ、たまにイキの良い新入りが来たとしても、屈辱的なモデム配りの仕事を続けるうち、間もなくして古株たちに同化されてしまいます。現場の雰囲気を表現するのに適切な喩えを探せば、上からの締め付けがキツくて、形だけ接客が良くなっている中国の国営食堂みたいなもの…と言えば良いでしょうか。実績に関わらず、原則的に給料が変わらないというところまで共産主義みたいです。

 しかし、そういう状況が許されるのも、当然の事ながら永遠ではありません。全国的に低調な成績が数ヶ月続くに及んで、ソフトバンクは金食い虫と化してしまった我々スタッフに大鉈を振りかざします
 まず、問題の共産主義的な給与体系を撤廃し、基本給賃下げ+歩合給」からなる能力給制度を導入しようとしました。また更に、士気と能力の低い不良スタッフを淘汰するために、勤務日数と獲得契約件数に応じた“首切りライン”の設定が告知されました。それまでも一部の派遣会社で「0件が○日でクビ」などというローカルルールがありましたが、それを全国的に採用するというわけです。
 ……まぁ客観的に見て、発想そのものは真っ当なものでありましょう。日本は資本主義国家です。市場経済の社会です。働かざる者食うべからず、やる気の無い者は去れ。人気の無い新連載マンガは3ヶ月で突き抜ける社会、それが日本でなのであります。それはこのモデム配りでも例外ではありません。
 が、この改革案がソフトバンクから提示された時は、その告知が出た瞬間から轟々たる非難の声が巻き起こり、派遣会社各社も猛烈な抗議をするに至って、この改革案は全面撤廃の憂き目に遭いました。実害を被るスタッフだけでなく、本来なら「依頼先の意向だから」と尻尾を振ってしまう派遣会社までが強硬な態度に出るのは結構珍しい話と思われます。 

 何故、そういう話になってしまったのか。答えは簡単です。物事には適したやり方というモノがあり、ソフトバンクはそれを間違えたのです
 例えば、いくら経済的とは言え、痔持ちに向かって安物のトイレットペーパーを使えと言い放ったらどうなると思いますか? ダブルの意味で血の海ですよ! 
 ……ああ失敬、テンションを上げるところを間違えました。いや、駒木もこの講座を始めた頃、長時間の着席生活のため、危うく痔を罹患するところだったんで結構切実なのですよ(苦笑)。今でも予防の為にホットカーペット座布団が手放せません。尻を暖めると良いそうです。
 あ、今、開講以来一番タメになる話をした気がしますね世のため、人のため、尻のため。そんな貴方の社会学講座です。

 閑話休題。
 そもそもの問題は、ソフトバンク側が「新規契約獲得数はスタッフの士気と能力に比例する」という誤った認識を抱いていたところにありました。
 実は違うのです。スタッフの士気と能力が高くて増えるのは、強引な勧誘で申込まされてキャンセルする人と苦情件数だけ。現状において、契約獲得数は場所と日時に比例します。言い換えれば、「ブースの前を通行する人の数×インターネットに興味のある人のいる確率」に比例するのです。
 熱意があり、ある程度の営業スキルを持った人でも平日の閑散とした街角ではどうにもなりませんし、駒木のように先天的に営業に向かず士気の低いスタッフでも、休日の繁盛している量販店に立っていれば数は取れます。これは、祭りの屋台などに喩えれば非常に判り易い話ではあるのですが、当時のソフトバンクの皆さんはそれすらお分かりでなかったようです。

 また、このモデム配りの仕事は“個人戦”というよりも“チーム戦”であり、同じブースに配置された2〜数人のスタッフが協力して契約獲得のため動きます。一応個人別の成績管理はありますが、ほとんどの場合において、1日の獲得件数はスタッフの数で頭割りして“結束の証”とします。
 こんな所まで共産主義っぽくてアレですが、こういう一見どうでもいい所こそ、人間関係にとっては大事なものだったりするのです。ですから、そこの件数を分けていないスタッフの貴方、大丈夫ですか? 自分の知らないところで呑み会とか企画されてたりしませんでしたか?

 まぁそういうわけで、初手からこのモデム配りは個人単位の歩合給にあまり向かない仕事なんですね。ですから、このソフトバンクから提示された“新・給与体系”は、「給料はシフトに入った日と勤務場所に左右され、些細な歩合給を巡って人間関係は急速に冷戦模様へ」…という事態を引き起こす、何とも強烈な改悪案だったわけです。
 事実、この案が提示された時、駒木が“主戦場”にしているブースのスタッフたちと深刻な議論になりました。結果、「月に1〜2度、全員が近くのファミレスに歩合給を持ち寄って、人数と勤務日数に応じて比例配分する」というサザンオールスターズ方式を採用する事に内定したのですが、ファミリーレストランやのに、ちっともファミリーやない話をせなアカンのやな」と、スタッフ一同非常に陰鬱な気持ちになったのを記憶しております。

 ただ、この給与案だけなら派遣会社的には“セーフ”だったかも知れません。が、2つ目の案・“首切りライン”が完全に“アウト”でした。有栖川宮記念奉祝晩餐会くらいの大アウトだと申し上げておきましょう。もっと言うなら、その晩餐会で祝儀まで包んだ上にスピーチまでやらされてしまった石田純一くらいの特大アウトと言っても過言ではありません。
 この“この首切りライン”、実際の数値を挙げるのは差し控えますが、喩えて言うなら「横綱昇進ラインは3場所で50勝」くらい無茶なもので、実際にこれを強行実施した場合、2ヶ月も経たない内に全てのスタッフが解雇されるという、スターリンや毛沢東も真っ青の恐るべきものでした。適当な言葉を探せば「粛清」というフレーズが一番ピッタリ来ます。
 これが本当の共産主義国での出来事なら、派遣会社がいくら抵抗しようとしても運動はことごとく粉砕され、やってくるのは人民公社と大躍進だったりするわけですが、さすがに資本主義下の一企業ではそこまでの力は無く、その案は全面撤回されて現在に至る……というわけです。
 しかしこの一連の騒動、もうちょっとやり方を間違えさえしなければ、スタッフ基本給の1〜2割引き下げくらいは実現したはずなんですよね。ですので、ソフトバンク的には、せっかくの経費削減の機会を強引にやりすぎて逃してしまったかな…という感がありますね。初デートで女の子に「なぁ、ええやろ、ええやろ」とやらかしてしまった男のようなトホホ感が否めません。
 ですから、最近になってソフトバンク株がストップ高を連発していると聞いても、駒木にはピンと来ないんですよね。何だか、学生時代に学園祭の模擬店で大赤字を計上したようなヤツが、ビジネス誌でカリスマ社長と持て囃されているような違和感を感じてしまうのです。

 
 ──まぁそういうわけで、皆さんの見えない所では、このような事になっていたのですよ。ホント、裏では何が起こってるか判りませんね。
 で、裏では何が……という話をした勢いで、もう1つばかり裏話を。お約束の「ネクサス路上キャンペーンの秘密」についてお話しましょう。こっちの話は守秘義務が全く無い(=駒木はネクサス所属じゃない)ので、思う存分お話が出来ます。元ネクサスのスタッフから聞いた話をそのまんま紹介しましょう。

 当講座談話室(BBS)でも、受講生の皆さんから苦情が寄せられているように、夏から規模縮小になった今でも、件数の稼げる休日や繁華街を中心に、首から名札を下げたネクサスのスタッフによる路上キャンペーンが継続されています。中にはほんの数十m間隔で数件のブースが乱立する迷惑極まりない地域もあり、これには道を歩く時は一般人の駒木も辟易します。麻雀や競馬でヤラれて機嫌の悪い時などは、ハンドインされたモデム入り袋を奪い取って車道に放り投げてやろうか…という良からぬ衝動すら脳裏をよぎります。
 さて、この路上キャンペーン、皆さんの中には、
 「何故、道端でキャンペーンが出来るのか? 近くの店は迷惑じゃないのか?」
 「何故、あんな至近距離にいくつもブースが設置されているのか?」
 ……というような疑問を抱かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 

 この疑問を解くカギ、なんと意外と簡単なところにありました。実はこの路上キャンペーンの場所は、ネクサスが雇ったそれ専門の営業スタッフが開拓しているものなのです。
 営業スタッフは、目ぼしい場所を見つけると、その前にある店のオーナーに「店の前にブースを置かせてもらうだけで1日○○円お支払いしますので是非」と交渉。そこでO.Kを貰った場所にブースが設置されるわけです。この謝礼金は、店の規模や諸条件によって1日あたり数千円〜数十万円の差があるそうです。
 まぁこれで一応は「何故、道端で?」という疑問は解けるかと思います。ただし、中には「ゲリラ」と呼ばれる無許可での小規模キャンペーンも行われていたりするようなので、タチが悪いんですよね。どうしても迷惑なら、最寄の交番に通報するという手もあるでしょう。露天のアクセサリー売りみたいに素早く撤収してくれます。

 しかしこれだけでは、2つ目の「何故、至近距離で?」という疑問は残ったままですね。ですが、これもネクサスの営業たちの仕業なのです。
 モデム配りの末端スタッフのほとんどが“アンチ・ソフトバンク”であるように、ネクサスの営業スタッフも“アンチ・ネクサス”です。愛社精神ゼロの彼らの思考から導き出される答えはただ1つ、「適当に最低限のノルマだけ達成して、給料だけ貰おう」というものだったりします。
 そういう事情ですから、営業スタッフはそこが果たしてモデム配りに適した現場であるかどうかなどお構いなし。ブース設置を許可してくれる店を本当に適当に探してノルマ(週に1〜2件)を達成したら最後、あとは屁をこいて寝るなりパチンコや麻雀に興じるなどして時間を潰し、時給8時間分×週5日をネクサスからもぎ取ります。
 そんな大雑把な新規開拓の結果が、至近距離でのブースのバッティング…というわけです。営業スタッフにしてみれば、実際にそこで1日何件の新規契約がゲットできるかなんて他人事。不運なスタッフが4日連続0件でクビになろうが、知ったこっちゃないわけです。ましてや、通行人がどれだけ迷惑を被っているかなんて、認識外もいいところだったりするわけですね。

 ──以上、今日は一般の方には知る由も無い、モデム配り現場のバックヤード話をお送りしました。
 講義をするたびに、各所で反響の声を頂くこのシリーズですが、冒頭でも申し上げた通り、しばらくお休みを頂きます。どうかご了承ください。
 あ、今回は情報不足で採り上げませんでしたが、最近になってヤフーBBのエリアが拡大された影響で、電話による強引な勧誘、押し売りにも似た個別訪問営業が増えているようです。こういう輩に対処する方法はただ一つ。交渉の余地を与えず、「ウチには必要ありません。いりません」と繰り返して撃退して下さい。最大限の失礼をされているのですから、断るのに礼儀もクソもありません。何なら「ウチにはモデム配りのスタッフをやってる者がいますので、入る時はそっちに頼みます」と言ってやるのも良いでしょう。

 では、長くなりましたが今日の講義を終わります。明日には「現代マンガ時評」を実施する予定です。(次回へ続く)

 


 

2003年第77回講義
10月18日(土) 競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第2戦・秋華賞」

 早くも今年の秋のG1シリーズは1つの山場へ。2週続けて三冠達成を賭けた重要なレースが続きます。今週は牝馬路線の秋華賞。さぁ、早速予想へ移りましょう。

第2戦・秋華賞(京都2000芝内)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

        トーセンリリー 藤田
逃げ馬にとって最高の枠をゲット。しかし末の脆さは如何ともし難く。
    ピースオブワールド 福永
いよいよ正念場。復調なるか、もしくは早熟ゆえの惨敗か……?

 

  ×   オースミハルカ 川島

恵まれたとはいえ、古牝馬トップ2を完封した前走は立派。今回はゴチャつく流れの中で控えて力を出し切れるかがカギ。

 

  ×   メイショウバトラー 武幸

純国産&純“メイショウ”血統に感慨あるも、急激な相手強化に対応どこまで?

        マイネサマンサ 大西

春はオークス直前で無念のリタイヤ。何とか間に合ったが、幾分仕上がり途上の感あって。

        レマーズガール 佐藤哲
G3クラスのダートなら大威張りも、芝のG1では場違いか。
×       ヤマニンスフィアー 二本柳

勝ち味の遅さが大成妨げたが、多頭数のレースに適応出来るのは、今回の強調材料。

    レンドフェリーチェ 中館

健闘のマーメイドSが奥の深さを物語る。決め脚あるだけに、馬群が捌き切れれば怖さはある。

×     チューニー 後藤

オークス2着馬も秋緒戦で評価急降下。実績は凡百の穴馬のそれではないだけに、叩いての上積みあれば侮れないが…

10 アドマイヤグルーヴ 武豊

改めて地力の凄さを知らしめた前走。唯一かつ最大の懸念材料の気性面克服なれば、三冠阻止はすぐ近く。

      × 11 メモリーキアヌ 角田

ハマった時の追い込みは鮮やかだが、この秋は精彩欠き…

        12 ミルフィオリ 柴原

叩いて幾分か良化気配も、春に比べて一変という雰囲気も無く。

        13 スターリーヘヴン 池添

牝馬限定の条件戦が精一杯の身では…

    14 ヤマカツリリー 安藤勝

大逃げで沸かせたローズSは印象的だったが、それでも勝ちきれなかった上に同じ手の使えぬ今回は? アンカツの手綱捌きに注目だが。

        15 タンザナイト  秋山

前走は大健闘の部類。直前気配絶好調でイケイケムードだが、実力的には入着が精一杯か?

×   16 ベストアルバム 渡辺
恵まれたとは言え、前走の3着は説得力十分。その時よりも展開が向きそうなだけに、無欲の一発は非常に怖い。

× 17 スティルインラブ

秋華賞ルート初の牝馬三冠に向けて抜かりなし。前走は度外視して良く、持ち前の勝負強さに偉業達成の期待十分。

 

      18 タイムウィルテル 吉田豊

血統的な魅力と渋太さは買えるが、このメンバーで大外枠は余りにも厳しい条件で。

●展開予想(担当:駒木ハヤト)

 最内枠のトーセンリリーが逃げ宣言。控えてはお話にならないタイプだけに、妥当ではある。しかしハナを切れる馬は他にたくさんいるだけに、スタート次第では別の馬がペースメーカーを務める可能性も。道中のラップは速めの平均ペースからハイペースか。
 後続には好位〜中団が欲しい馬が多く、こちらも序盤の位置取りで明暗が大きく分かれそう。正確な通過順位予測は困難で、「とにかく位置取りに成功した馬が有利」としか言いようが無い。ただし、シビアな位置取り争いを演じなくて済む分だけ差し・追い込みタイプが若干有利か。
 有力馬では意外とスムーズなレースが出来そうなのがアドマイヤグルーヴ(ただしスタート五分以上が条件)。スティルインラヴは外枠を利して良い位置が欲しいところ。
 また、京都芝の内回り2000mは本来内枠有利だが、このレースでは案外外枠の健闘が光る。微妙な年頃の牝馬にとっては、距離損しても揉まれないで済む展開の方が有利に働くと見える。

●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:スティルインラブ》

 本当に久々の“牝馬三冠リーチ”。前にリーチをかけた馬は故障明け・ぶっつけ本番のベガ(3着)だったが、今回のスティルインラブは至極順調に夏を越し、トライアルを犠牲にしてまでして、ここを目標にキッチリ仕上げられて来た。恐らくは全てがこの日から逆算しての調整のはずで、「これでダメなら首をくくる」くらいの覚悟で挑んでいるだろう。巷の下馬評はさておき、本命にはこの馬が最も相応しい。
 問題は相手探し。実力はアドマイヤグルーヴが図抜けているものの、18頭立てのレースではマトモなレースをさせてもらえる確率の方が低いだろう。よって今回も手広く行く。最後の直線で馬群の隙間からジリジリ伸びて来そうな馬数頭を、実力不足は承知で2着候補にピックアップしてみる事にする。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 17 100円 3.0
馬連 10-17 100円 4.8
  16-17 100円 20.6
  10-16 100円 15.9
  2-17 100円 21.0
  9-17 100円 59.5
  7-17 100円 57.2
馬単 17→10 100円 10.8
  17→16 100円 29.4
三連複 10-16-17 100円 13.7


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:アドマイヤグルーヴ》

 今週の競馬ニュースを見ていると、事あるごとにアドマイヤグルーヴの武豊騎手が弱気なコメントを。でも、武豊騎手が弱気な時って、実は内心自信を持っている事が多いんですよね。意外と(?)策士なんですよ、武豊騎手って。
 ……そういうわけで、トライアルの再現と読んでアドマイヤグルーヴ本命です。本当は、牝馬三冠が達成する瞬間も観てみたいんですけどね(苦笑)。
 展開は差し有利と思うんですが、実力馬は大抵が先行タイプだったりするので困ってしまいます。多分、10-17で大丈夫だと思っているんですけど……。 

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 2.8
馬連 10-17 200円 4.8
  2-10 100円 17.1
  2-17 100円 21.0
  10-14 100円 23.1
  10-16 100円 15.9
  ── ──
馬単 10→17 100円 8.7
  10→2 100円 25.0
三連複 2-10-17 100円 14.5


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:チューニー》

 今週は秋華賞。秋華賞と言えば大穴! ……というわけで来ましたよ、来ましたよ! わたしにうってつけのレースが来ましたよ! いや〜、悪いですね、第2戦で優勝決まっちゃいますよ?(笑)
 このレース、荒れる時は1、2番人気が揃ってアウトになっちゃうものですから、わたしの予想も本命─対抗は穴馬2頭で勝負です! 狙いはオークス2着馬なのに評価の低すぎるチューニーから。穴馬は忘れた頃に走るものなんです。10-17が来たら、またわたしだけハズレですけど、それはそれであきらめることにします(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 44.4
馬連 8-9 100円 159
  9-17 100円 59.5
  8-17 100円 23.1
  9-10 100円 42.2
  3-9 100円 148
  4-9 100円 199
馬単 9→8 100円 514
  9→17 100円 193
三連複 8-9-17 100円 254

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:アドマイヤグルーヴ》

 ローズSのアドマイヤグル−ヴは、テレビでレースを観ててビックリ仰天でした。どうしてあんなに強い馬が春のG1レース勝てなかったのかなって思いましたよ!
 ……というわけで、本命はアドマイヤグルーヴ。そこから、もう1つのトライアルレースを勝った馬と、ローズSで上位に来た馬を狙ってみます。
 え? メモリーキアヌ? ……ワタシ、キアヌ=リーブスのちょっとだけファンなんです(笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 10 100円 2.8
馬連 8-10 100円 17.8
  10-14 100円 23.1
  8-14 100円 74.1
  10-16 100円 15.9
  10-17 100円 4.8
  10-11 100円 160
馬単 10→8 100円 27.0
  10→14 100円 31.7
三連複 8-10-14 100円 76.9

 今回は期せずして印がかなりバラけました。結果次第では4人のポイント差が相当広がりそうなフォーカスになりましたが、果たしてどうなりますか。15時40分の発走時刻をお楽しみに。


秋華賞 成績

× 1着 17 スティルインラブ
2着 10 アドマイヤグルーヴ
    3着 14 ヤマカツリリー
    4着 ピースオブワールド
        5着 マイネサマンサ

単勝17 320円/馬連10-17 450円/馬単17-10 930円/三連複10-14-17 1880円

 ※駒木ハヤトの“勝利宣言”(単勝・馬連・馬単的中)
 まずはスティルインラブの関係者の皆さん、牝馬三冠達成おめでとうございます。
 それにしても強い勝ち方だったねぇ。1番人気の実力馬に終始マークされながらの完封勝ち。3/4馬身の着差だけでは計れない諸々の差が、少なくともこのレースではあっただろうね。これならメジロラモーヌと並んで語られる資格も十分じゃないかな。
 馬券的にちょっと焦らされたのは、ヤマカツリリーとマイネサマンサ。こういう、大一番になって新味が出て来る馬っていうのが怖いんだよね。今日は実力通り決まって助かったけど、下手すりゃ5-14とかで決まってただろうね。おー、怖。 

 ※栗藤珠美の“喜びの声”(馬連2口的中)
 馬券の上ではちょっとだけ残念でしたけど、私にとっては会心の予想でした♪ 強い馬がみんな良いレースをしてくれたので、観てて楽しいレースでしたね。
 そしてスティルインラブと松元省一調教師、幸騎手、並びに関係者の皆さん、牝馬三冠達成おめでとうございます! 私が競馬を観るようになってから、牡馬・牝馬通じて初めての“リアルタイム三冠”なので、私にとっても思い出のレースになりそうです。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 10-17で決まったらあきらめることにします、って言ったら本当にそうなっちゃいましたねー(苦笑)。でも、1番人気と2番人気の決着になっちゃったら、わたしのような穴党は用ナシですからね、仕方ないです。
 わたしの本命チューニーは13着。直線に入るところまでは夢を見させてくれたんですけど、他の印をつけた穴馬と一緒にズルズルと下がっちゃいました。来週も強くて人気になりそうな馬がいっぱいいるんですけど、5種5牌から国士狙う覚悟でアグレッシブにガンガン狙いたいと思います!

 ※リサ=バンベリーの“ハッピー・ハッピー・グッドラック”(馬連のみ的中)
 今日はスティルインラブがメチャクチャ強かったですね〜。ローズSは一体何だったんでしょう? なんだか競馬がわからなくなって来ちゃいました(苦笑)。でも、一応は予想が的中したので良かったってコトいしたいです。

第2戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント
(暫定順位)
今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 940
(1位タイ)
1700 2640
(1位)
栗藤珠美 940
(1位タイ)
900 1840
(2位)
一色順子
(4位)

(4位)
リサ=バンベリー 940
(1位タイ)
450 1390
(3位)

 (ポイント・順位の変動について)
 馬連1番人気の決着ながら、ただ一人スティルインラブに◎を打った
駒木ハヤトが、単勝・馬単のボーナスを加点して暫定首位に立った。2位には馬連のフォーカスを5点に絞り、10-17を渋く200円分的中させた栗藤珠美が続き、とりあえずは駒木研究室“競馬班”の威信を守ったというところ。しかし3位・リサ=バンベリーも450ポイントを上積みして僅差でマークしており、まだまだ予断を許さない。
 穴狙いで攻める一色順子は、今回も人気サイドの決着に泣いた格好。しかし2640ポイント差は穴党にとっては並んでいるも同じで、逆に不気味さが漂う。

 


 

2003年第76回講義
10月17日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第3週分・合同)

 今週の「サンデー」の表紙と巻頭を飾った星井七瀬さんが、その勢いで「うたばん」にまで進出して1stシングル・「恋愛15シミュレーション」を唄いましたが、いやぁ強烈でしたね皆さん。
 何て言ったら良いんでしょう。浅田美代子二世と言いますか、安倍麻美・ザ・グレートと言いますか、歌の形を借りた合法ドラッグと言いますか。もう、とにかく凄かったですね。また、楽曲のクオリティまで歌い手の歌唱力に合わせてメルトダウンしてるのも脅威的でした、ハイ。
 コレはもう、星井七瀬がもっと売れっ子になった後、バラエティ番組で“恥ずかしい過去”としてネタにされるためだけに発売されたCDと解釈した方が良いですね。まぁこんな小ネタのために、莫大な宣伝費用が蕩尽されたり担当者数名が左遷されたりするのかと考えると、思わず般若心経を唱えながら拍手を打ち、十字を切った後に合掌したくなりますが。
 とにかく駒木は、この曲を聴いてたら涅槃へ逝っちまいそうで怖いです。飲食店など、職場で有線放送がかかる場所でお勤めの方は、しばらくの間警戒態勢をお取りになるよう、忠告申し上げます。

 ──以上、挨拶。今週のゼミを始めます。諸々の事情により、今週分は前後半合同でお送りします。

 まずは情報系の話題から。今週は「ジャンプ」・「サンデー」両誌で月例新人賞の審査結果発表がありましたので、受賞作等を紹介しておきましょう。

第5回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年8月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作なし
 十二傑賞=1編
 ・『サクラ前線北上中』
(=本誌か増刊に掲載決定)
  森田和博(22歳・岡山)
 
《許斐剛氏講評:話の展開、絵も含めてスピード感がピカイチ。バトルシーンに卓球を使ったアイディアも面白かった》
 
《編集部講評:設定は面白いのだが、それを生かしきれずに単なるバトルになってしまっている。何を描きたいのかハッキリさせて欲しい。画力はあるが、もっと線をソフトにして見やすい絵を)
 審査員(許斐剛賞)特別賞=1編
  ・『聖火』
   大前貴史(22歳・兵庫)
 最終候補(選外佳作)=5編

  ・『レイニーレイニー』
   吉田純也(17歳・福岡)
  ・『APOLLO』
   川田暁生(25歳・東京)
  ・『武心略記』
   高山憲弼(22歳・大阪)
  ・『サッカー』
   松井優征(23歳・埼玉)
  ・『BUTTLE KUN-FU GENERATION』
   成瀬奏(23歳・東京)

少年サンデーまんがカレッジ
(03年8月期)

 入選=該当作なし  
 佳作=1編
  ・『ハルのアメ』
   田村光久(23歳・埼玉)
 努力賞=1編
  ・『真心 ─マシン─』
   清水元英(17歳・埼玉)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『理想はおあずけ。』
   中崎しいな(19歳・福岡)
  ・『to pick a fight』
   牧俊介(25歳・神奈川)
  ・『人がいい人が好き』
   町田哲也(27歳・東京)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ※「ジャンプ十二傑新人漫画賞」
 ◎最終候補の川田暁生さん…00年12月期「天下一漫画賞」で最終候補。
 ◎最終候補の高山憲弼さん…03年2月期「天下一」で編集部特別賞
 ◎最終候補の成瀬奏さん…03年1月期「天下一」に投稿歴。本誌の懸賞当選者発表ページのカット描き経験あり。

 ※「サンデーまんがカレッジ」
 ◎佳作の田村光久さん…99年に「にいがたマンガ大賞」で入選
(普通のマンガ賞で言う選外佳作)の経験あり?
 ◎あと一歩で賞の町田哲也さん…02年6月期「まんがカレッジ」でも“あと一歩で賞”

 ……「十二傑漫画賞」8月期の審査員は許斐剛さん。先月の矢吹健太朗氏のように、講評で身の程をわきまえない発言連発か……と思いきや、ギリシアのデルフォイ神殿で“汝自身を知れ”と教わったかのように、全ての入賞作を徹頭徹尾褒め倒し。それともこの人、本気で「うわー、この人たち本当に俺より上手い」と思ったんでしょうか。
 まぁただ、「許斐先生総評」の「もっと簡潔にすればよりよい作品になるはずです」…という所に何かを感じなくもないわけですけどね(笑)。

 ──さて、今日は新作の話題も2つあります。まずはおめでたい新連載の話題から。「週刊少年サンデー」の次号・47号より、田辺イエロウさん『あやかし方陣伝 結界師』がスタートします。
 この作品は、かつて増刊・本誌に掲載された読み切り・『結界師』の長期連載化。本誌掲載時には、当ゼミで“A寄りA−”の評価を出した作品だけに、駒木ハヤト個人的にも非常に期待の一作です。最近の「サンデー」の新連載のアレがナニで、特に『楽ガキ』が著しくナニだったしする現状、「サンデー」の近未来を賭けた新連載と言っても過言では無いと思います。初の連載ですからプレッシャーも大きいでしょうが、何とか頑張って欲しいものですよね。

 最後に「ジャンプ」の読み切り情報を。次号・47号に『NOW AND ZEN!』(作画:加治佐修)が掲載されます。
 皆さんご存知でしょうが、加治佐さんは今年、長年の苦労が実って『TATTOO HEARTS』で初の連載獲得を果たすも、1クール突き抜けとなった若手作家さん。さすが「ジャンプ」と言いますか、短期ブランクでの再出発となりました。
 現在の「ジャンプ」連載陣でも、初連載が短〜中期の打ち切りに終わった人が半数くらいいるわけですので、加治佐さんにはここからが本当のスタートだと思って、奮起してもらいたいですね。

 
 ──それでは、レビューとチェックポイントへ。今週の対象作は「ジャンプ」から読み切り1本のみです。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年46号☆

 ◎読み切り『人造人間ガロン』作画:中島諭宇樹

 今週の読み切りは、デビュー2作目にして本誌初登場となる中島諭宇樹さんの『人造人間ガロン』です。

 中島さんは佐賀県出身の24歳。珍しい名前ですが、これが本名とのこと。高校時代から本格的にマンガ家を志し、同人誌を作るなどしていたらしいですね。
 そして大学進学と共に上京し、大学の漫研を拠点に本格的な創作活動へ。学生生活を続けつつプロを志向し、01年11月期に「天下一漫画賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りを果たした後、02年度「ストーリーキング」マンガ部門で準キングを受賞その時の受賞作『天上都市』は「赤マルジャンプ」03年春号に掲載され、これがデビュー作となりました。このデビューと前後して、つい最近まで村田雄介さんのスタジオで『アイシールド21』のアシスタントを務めていたのも一部で有名な話ですね。

 ……実は、今回のレビューにあたっては、中島さんの学生時代の知り合いとおっしゃる方が2人も情報を提供して下さいました。非常に興味深いエピソードや履歴も教えて下さったのですが、この中には“作家・中島諭宇樹”というよりも“人間・中島諭宇樹”についての、いわゆるプライバシーに関わったものが多く、今回は紹介を見合わせて頂いた情報もありました。
 しかしこの手の情報は、知名度が上がって“公人度”が増してゆくに従い、なんとなく解禁されてゆくものですので、時期を見計らって紹介してゆければ…と思います。中島さんはそれくらい(=有名になってゆく)だけのポテンシャルを持った作家さんだと思いますしね。

 ……では、作品の内容へ話を進めてゆきましょう。

 は、最近流行の作風からは外れているものの、それがかえって独特の雰囲気を生み出していてプラスに働いているのではないかと思います。
 キャラの顔の表情とアングルが単調、また所々で雑な箇所が見受けられる…など、未完成な面もまだいくつかありますが、一応基礎的なスキルが出来上がっているのと、巧みにカモフラージュされているのとで、大きなキズにはなっていません。ただ、欠点が目立たないからといって、「もういいや」と現状に甘える事なく、更なるスキルアップを目指してもらいたいものです。
 あと、これは個人的な印象なのかも知れませんが、ヒロインはもう少し可愛い(美人系でも可)キャラにした方が作品の雰囲気が華やかになって良かったんではなかったと思います。どうもこの作品の主役級キャラは、外見・性格共に、他の作品のキャラをモデルにしているみたいなんですが、少なくとも外見は若干ミスマッチだったような気がしないでもありません。

 次にストーリー・設定に関して。
 中島さんの最大の持ち味と言えば、前作『天上都市』で見せつけた、他の新人・若手とはスケールの違う“世界観構築能力”ですが、今作もこれが見事に発揮されています。「世界観」と言っても、なかなか判り辛いところがあるでしょうが、誤解を恐れず端的に言えばそれは「物語世界におけるオリジナルな常識」というヤツです。ヘンな世界観が舞台ではヘンな話でも大丈夫…みたいなもんで、世界観は使い方によっては凄まじい武器になります。ただし、これを「設定の集合体」と誤解してしまうと、いわゆる“設定厨”状態になってしまうんですよね。
 この作品で言えば、冒頭で人間味溢れる思考回路を持ったロボット(アンドロイド)が、如何に人間の生活に溶け込んでいるか…という風景が描写されていたりしますが、このシーンが世界観描写の最たるものですね。ここで呈示された諸々の“常識”が作品のテーマと直結し、作品全体の魅力に繋がっているわけです。
 ただし、今回に限って言えば、そこまで世界観を構築していても、「アンドロイドにも心がある」という重いテーマを消化しきれず、結果、作品の完成度が今一つだったような気がします。細かい設定を巧みにセリフのやり取りで素っ飛ばし、シナリオ上でかなりの無茶もしたりしているわけですが、それでも散漫な印象が否めませんでした。特にヒッツァー博士の思考が理解し辛く、クライマックスの盛り上がりを若干欠いてしまった感がありましたね。

 ですから、この作品は(少なくとも中島さんレヴェルでは)凡作ということになります。もっとも、これが凡作というのはかなり贅沢な話ではあるのですが。
 評価は迷うところですが、“傑作・良作”とまではいかないとして、A−寄りB+というところにしておきます。この中島さんの持ち味が次回作以降、もしくは長編連載になってどう生かされるのか、今後の動向にも注目ですね。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントでは岸本斉史さんの結婚報告が。披露宴に出席したらしい武井宏之さんからも祝辞コメントが掲載されました。先週号の休載は結婚準備と新婚旅行休みだったんですかね。だとしたら編集部も粋な計らいをするものです。
 しかし、超多忙な生活を4年もやっている岸本さんが、どうやって結婚するまで愛を育む余裕があったのか、下世話な話ながら尋ねてみたいものでありますね(笑)。

 ◎『テニスの王子様』作画:許斐剛【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
 
 普段、このコーナーでは極力批判めいた言動は避けるようにしてるんですが、それにしても凄いですなここ数回は
 どう考えてもガムじゃなくて本当の風船に見える何かを膨らませたまま、いっこく堂真っ青の腹話術で対戦相手を毒づく丸井とか、ネットを支えるポールを通過した後、その真横にある審判台を通過して相手コートに突き刺さる意味不明の魔球を操るジャッカルとか、常勝テニス軍団と言うより大道芸人大集合ですがな、こりゃ。
 当講座談話室(BBS)でも話題にしましたように、この作品、実は小・中学生男子人気がメインなのですが、今のファンが10年くらい経って、本棚から単行本を引っ張り出して来たら、どんな心境になるんでしょうかね(笑)。

 ◎『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ついでにこっちもやっちゃいましょうか(笑)。
 高校野球モノでは、予選の勝ち上がり過程で暴力野球チームが出て来る事はよくあるんですが、ただしこの作品ではハッキリ言って引っ張り過ぎです。こういう相手は2〜3回でチョチョイとやっつけちゃうから爽快感があるんであって、大層に描かれても間延びするだけだと思うんですがねぇ……。
 まぁこれでアンケートが少し落ちてきたら、嫌でも試合進行は早くなると思うんで(笑)、とりあえずその辺に期待しましょうか。


「週刊少年サンデー」2003年46号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「人に言われた心に残る言葉」。結構色々なバリエーションの回答が寄せられて、なかなかの良問でしたね。中でも、「おまえが休んでいた間は、本当に授業しやすかった」(あおやぎ孝夫さん)「お前と遊ぶなってウチの親に言われたよ」(井上和郎さん)…といった自虐ネタが個人的にヒットでした。
 駒木はやっぱり、生徒から言われた「先生、1年間有難うございました」でしょうね。あと、初任校の教頭から言われた「PTAの会議で会った保護者の人が、『ウチの子が駒木先生の授業が面白いと言ってます』…って言うとったぞ」でしょうか。教職って努力が報われないのが当たり前の仕事ですので、ごく稀に褒められた時はとても嬉しいもんです。

 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 「登場人物のキャラ立ちについて」という、制作現場での最重要事項をネタにしてしまう発想が素晴らしいですね(笑)。しかもそこにライトお色気を挟んで人気取りにも抜かりなし、という良い意味でのあざとさが出て来ました。
 今ふと思ったんですが、今の「サンデー」でアニメ化が一番近い作品って、案外コレかも知れないですね。元々が『ハイスクール奇面組』のオマージュ的作品なのですから、十分にその素地はあると思いますが……。
 あーあと、今回一番笑えたのは冒頭の「ヘンな夢」でしたね。5日連続モデム配りで死んだ頭では、一瞬、本当にマイナーチェンジしたのかと錯覚しましたよ(笑)。

 ◎『WILD LIFE』作画:藤崎聖人【現時点での評価:B+/雑感】

 宝生さん、いくら切羽詰ってるからっていっても、
 「このホースをマンコウ(公)に!」
 ……は如何な物かと。そりゃ鉄生も「え…」とか躊躇しますわな。こんな非常時にそんな過激なプレイなんてねぇ。
 でもそこで「じゃ、ちょっと失礼して」だったら、即日評価をA−に格上げしようと思いましたが、残念でした(冗談です)。

 
 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 駒木もあります、ダメフィルター。
 「ラブソングを歌っていても、ちっともラブ感が出ないフィルター」
 と、
 「ジッと瞳を見つめているつもりが、何かの理由で怒ってて睨んでいるようにしか見えないフィルター」
 が。ぶっちゃけ、深刻なフィルターです(苦笑)。特に前者は本気で萎えます。一度、熱唱してる側で女の子全員に歌本読まれてみなさい。生ビールをピッチャーで注文したくなりますから、ホントに。

 
 ……といったところで、いつもなら「失礼」になるところですが、今日は久しぶりに「読書メモ」をやってみたいと思います。採り上げる作品は、ある意味で当講座とよく似た雰囲気のあるあの作品です。

◇駒木博士の読書メモ(10月第2週)◇

 ◎単行本『銭』1巻作画:鈴木みそ/「月刊コミックビーム」02年11月号〜03年8月号収録分

 開講当時から左フレームのリンク集に氏のウェブサイト『ちんげ教』を(勝手に)載せている事で既にお分かりかも知れませんが、駒木は随分以前(中学生の頃)から、まだコラムニスト兼イラストレーターだった頃からの鈴木みそさんのファンだったりします。本当に凄く面白ぇんですよ、当時のコラム。単行本化されてないのが不思議なくらいで。(ちなみに駒木が一番好きなコラムは、「ドンブリ一杯のウンコをいくらなら食うか」というテーマについて社会学的に考察した一本。しかもイラスト付
 で、そんな文字書きとしても十分すぎる才能がある人が達者な絵でルポマンガを描いたら駄作になるはずがないわけで、この作品も文句無しの傑作に仕上がってます。何と言いますか、「駒木博士の社会学講座」ならぬ「鈴木博士の経済学講座&ドラマ劇場」みたいなモンでして、駒木のやってるような単なるウンチク語りだけじゃなく、そこにエッセンスとしてドラマが入っているのが凄いんですよね。遥か格下とは言え、似たような事を続けている立場としては、もう感服するしかありません。
 で、また劇中の台詞回しがさりげなく上手いんですよ。特に1巻の最後の方で、グレた娘が仕事中毒の父親にキツい事言うシーンが秀逸です。よく出来すぎてて、ある意味リアリティが無くなりかける位に素晴らしいやり取りが展開されていますので、是非単行本を買って確かめて下さいまし。大型書店かマンガ専門店で探してみればあると思いますんで。
 連載開始が昨年11月ということで、残念ながら今年の「仁川経済大学コミックアワード」の対象作からは外れてしまうんですが、評価つけるなら勿論Aです。

 
 ……というわけで、今週はここまで。今後も木曜あたりに前後半合同でやる機会が多くなると思いますが、どうぞご理解の程を。

 


 

2003年第75回講義
10月14日(火)
 社会調査
「ヤフーBBモデム配りアルバイト現場報告」(7)

◎前シリーズ(「潜入レポ」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回
◎今シリーズ(「現場報告」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回 

 先月から始まった“積み残し講義精算シリーズ”も、いよいよこの「モデム配り現場報告」でラストとなりました(まぁこのシリーズは完結ではなく、数ヵ月後までの長期中断になりますが)
 最近はちょっと駒木個人の趣味・嗜好に走りすぎた講義を続けて来たような気がしますので、ここらで一つ気を引き締めて、このシリーズを締め括りたいと思います。どうぞ宜しく。

 
 ──さて、9月にお送りした講義では「週刊文春」に掲載されたバッシング記事検証をお送りしました。が、元々この講義は、一般の方には全く知りようのないモデム配り現場の様子や、バックヤードの噂話を皆さんに紹介するためのもの。そろそろ本分に立ち返る時期でしょう。

 ……というわけで、文字通りの「現場報告」をしてゆくわけですが、まずは駒木のウォーミングアップの意味合いも込めまして、ヤフーBB無料キャンペーンの内容が春以降どのような変遷を遂げていったかについて、ここで振り返っておきましょう。講義の後半に繋がっていく部分もありますので、お聞き逃しなく。

 では、以下に5月以降の主なキャンペーン内容(月額基本料金&BBフォン通話料の無料サービス、初期費用請求猶予期間)をまとめましたので、そちらからご覧頂きます。

 ●「15コの0円キャンペーン」(5月〜6月)

 月額基本料金最大2ヶ月(=実際に利用開始した月とその翌月)全額無料、及び3ヶ月目の料金割引
 BBフォン通話料最大2ヶ月、50,000円まで無料
 ごまんぞく保証(初期費用請求猶予期間)…最大2ヶ月間

 ……このキャンペーンに関しては、この「現場報告」の第2回で詳しくお話したので簡単にしておきますが、ポイントになるのはBBフォン通話料の無料サービスに上限が設定された事です。(4月以前は最大2ヶ月全額無料)
 それまで幼稚園くらいの男の子が「ウンコ、チ○コ」と連呼するように「無料、無料」とアホみたいに連呼して来たヤフーBBが、事実上ついに無料サービスを中止したわけで、これはまさに1つの画期的な出来事でありました。実際、これ以降のキャンペーンでは徐々に「無料」の内容が削られてゆきます

 で、どうしてBBフォンの通話料無料に制限がついたのかと申しますと、以前にも紹介しましたが実に簡単な理由です。要はコストがかさみすぎてニッチもサッチも行かなくなったからなんですね。
 諸事情によりソースは明かせませんが、通話料を最大2ヶ月完全無料にしていた頃、ソフトバンクが無料利用者に代わり負担していた無料期間の通話料は1人あたり12000円程度にまで膨れ上がっていたとのこと。中には通話料100万円を遥かに超える国際電話をかけまくった猛者もいたらしく、さすがのソフトバンクもこれにはお手上げ状態だったそうです。何しろ1人の有料利用者から回収できる粗利が2000円程度なのですから、100万円となれば実に粗利41年8か月分高速道路の工事費みたいな話です。
 ソフトバンクは、このヤフーBBのADSL事業をして、「これは社会への貢献でもある」みたいな事を主張していますが、思わず「40年分の粗利を吐き出すなんて、いやー、確かに素晴らしい社会貢献でございますわね」、などと田中康夫長野県知事のような口調で言いたくなってしまいます。

 ●「最大3ヶ月無料体験キャンペーン」(7月〜8月)

 月額基本料金最大3ヶ月(=ADSL回線開通月とその翌月&翌々月)全額無料
 BBフォン通話料最大2ヶ月、通話料3分7.5円の通話(固定電話相手の国内通話&アメリカ本土・ハワイ・アラスカへの通話)のみ全額無料
 ごまんぞく保証(初期費用請求猶予期間)…最大2ヶ月間

 このキャンペーンから無料期間の算定基準が変わりましたこれまでの無料期間スタート日は「利用者が実際にモデムの電源を入れてモジュラージャックと接続した日」で、利用者は無料期間のスタートを申込み翌月の1日に調整することも可能だったのですが、これ以降はNTT局内工事日、つまりADSLの回線が繋がった日が無料期間算定の基準日となり、利用者側が無料期間の起算日をコントロールする事が出来なくなりました。
 これは、局内工事まで済んでおきながらモデムを使わずに放置している人が意外と多く、しかもそういう人に限ってアッサリと解約してしまう(つまり、ヤフーにとってはカネと時間の無駄遣いになる)…という現実を鑑みたもの。まぁそれはそれで良いのですが、問題はこの局内工事日をヤフーBBや利用者が指定出来ないということで、下手をすると月末開通、無料期間ほぼ1ヶ月無駄…なんてことになり、これが非常に厄介なのです。
 しかも、このキャンペーンの頃から、申込みから開通までの日数が異様に短くなりまして、ごく稀に最短2日とか3日で開通してしまう事すらあるようになりました。その事自体は素晴らしい事ではあるんですが、反面、「まぁ開通は翌月だろう」と考えて26日に申込みを受理したら30日に開通してしまい、スタッフが申込者からクレームを頂戴する…というケースにも繋がってしまいました。まぁハッキリ言いまして、現場サイドとしては完全に有り難迷惑です。
 開通が遅ければ遅いで迷惑をかけ、早ければ早いで迷惑をかける。人間でも天然かつ絶望的に要領の悪いヤツがいますが、ヤフーBBもそれに近いところがあるのかも知れません。

 あと、このキャンペーンになってから、更にBBフォンの通話料無料サービスが後退しています。通話料の高い携帯電話・PHSへの通話やアメリカ以外への国際通話が1ヶ月目から実費負担ということになりました。
 この再度の通話料サービス後退から考えると、天下のソフトバンクもようやく、「無料通話をウリにしても、寄って来るのは無料期間限りの解約を前提にした“便乗犯”だけ」…ということに気が付いたようです。が、それまでに肩代わりした通話料は推定でざっと100億円以上恐ろしく高い授業料でしたね。
 ちなみに100億円を1本120円のバニラコーク350ml缶に換算すると、約8333万本。量にして約2900万リットルになります。凄いですね、2900万リットルのバニラコーク。ここまで来ると、清涼飲料水というよりむしろ兵器というような気がします。……あ、いや、どうでもいい話なんですが。

 このキャンペーン、現場の人間としては「とにかく説明がやり難かった」…という印象がありますね。そのせいか、契約獲得数も伸び悩み、苦労が絶えなかった覚えがあります。

 ●「26M・ワイヤレスADSL最大3ヶ月無料キャンペーン」(9月〜)

 月額基本料金最大3ヶ月(=ADSL回線開通月とその翌月&翌々月)全額無料
 BBフォン通話料無料サービス廃止
 ごまんぞく保証(初期費用請求猶予期間)…最大3ヶ月間

 ──と、そんな前キャンペーンの反省を踏まえ、単純に「インターネットは3ヶ月無料。電話は最初から通常料金」と、内容をリストラ&簡略化したのが、現在のキャンペーンです。
 またこれに先立つ8月には、ソフトバンク株主の猛バッシングを受ける形で、なにかと評判の悪かった路上キャンペーンの規模を大幅に縮小されており、代わりに電機量販店での店内キャンペーンを強化するようになっていました。言ってみればこれもリストラの敢行ですね。
 こうして、新規契約獲得に関わるコストの中で、これまで特に無駄だったものをバッサリと削ったわけです。

 そして、このリストラで浮いた資金は当然ながら別の所へ回されます。孫正義ソフトバンク社長にしてみれば、「カネが余ったからプールする」などという考えは、とっくの昔に毛根と共に頭から消え失せています。
 …ではどこへ回されたか、と言う話なのですが、あの広末涼子を起用した広告費用を除けば、どうやら量販店ブース限定の“オプション特典”強化に注ぎ込まれているのではないかと思われます。
 この“オプション特典”とは、電機量販店でヤフーBB加入と同時にパソコン等の買い物をしたお客さんに、いくらかの割引をする…といったもの。まぁ有り体に言えば「割引で釣ってヤフーBBに引き込む」というわけですね。
 “オプション特典”そのものは随分前から存在していたのですが、9月あたりからソフトバンク主導でその割引額が吊り上げられ始めています。特に契約数が稼げそうな連休などには、「無線LANパック加入で、合計10000円以上お買い上げの方は10000円割引」…などという、正気の沙汰とは思えない特典をつける事も。10100円の商品をレジに持っていって、100円玉1つで会計が済むわけですからエゲつないです。で、この10000円のうち、どのくらいソフトバンクが出しているのかは不明ですが、量販店の取り分を考えると、恐らく半額以上は負担しているのではないかと思います。
 ただ、この特典強化、つまるところは通話料無料サービスがお会計割引サービスに移行しただけだったりするわけで、行き着く所も全く同じ所になってしまいます。すなわち、通話料無料サービスの頃に無料期間限りでの解約が続出したように、この場合でも無料期間限りで解約を前提とする申込みや、開通不可能な環境(電話線が光ファイバー化しているマンション等)でありながら特典目当てで申込みをする人も相当数いたりするのです。
 しかもこの場合、手段を選ばず商品を売りたい量販店サイドや、とりあえず新規契約をゲットしておきたいキャンペーンスタッフとの利害が完全に一致してしまっており、誰も止める人がいません。いやむしろ、お客さんが「こんな事してホントに良いの?」と言っても、目標未達成のペナルティに怯える量販店の販売員が、「いや大丈夫です。何だったら、明日にでもキャンセルの電話をかけてもらえれば」などと言ってプッシュする始末。言い方は悪いですが、よってたかってソフトバンクの金を食い物にしている状態ですね。「知らぬはソフトバンクばかりなり」…といったところでしょうか。

 そういうわけでして、前々から問題になっている新規契約1件あたりの獲得コストは、依然として相当な額に及んでいます。この事業の最終損益が黒字に転じるのは一体いつになるのか誰も判っていないでしょう。
 ……というかですね、最初の3ヶ月基本料金無料にして、量販店に約5か月分の粗利に相当する額のインセンティブを払っておいて、更にスタッフの人件費を負担している時点で「ホラ、何かおかしいだろ、気付けよ!」…と言いたくなるんですが。なんだか最近、メカ沢を眺めるクロマティ高生有志の気分がよく判ります。

 
 ……と、以上がキャンペーン内容の変遷でした。相変わらず余計な話も混じっていますが、気にしないようにお願いします。
 さて、それでは次の話題に参りましょう。先ほどからお話した内容を踏まえて、恐らくはソフトバンク&ヤフーBB支持派の方も、あるいは否定派方も気になっているであろう、現場レヴェルにおける“活動の手応え”、つまりブース1箇所あたりの新規契約獲得状況をお話しておきましょう。
 以前、この件についてお話したのは5月末の講義だったと記憶しています。2月から右肩上がりならぬ右肩下がりで落ち込み始めた数字が、新キャンペーンの始まった5月になって更に急降下したようだ……と、その時は述べたはずです。
 そして、それから4ヶ月。先に結論を言ってしまうと、「5月以来、若干の上下動を繰り返しながらも全体的には横ばい傾向」…といった感じになりますか。具体的に言えば、キャンペーンの変わり目の月には消費者の戸惑いと無料キャンペーン内容後退のため)ガクンと数字が落ち、パソコンの新製品が量販店に並び始める時期には、パソコン購入と同時に申込む人が増えて一時的に盛り返す…の繰り返しで今まで来ています。ええ、正直言って、ヤフーBBは結構踏ん張ってます。
 こう言ってしまうと、春まで「この事業はもう終わり」みたいに叩きまくっていた論調は一体何だったんだ…と言われてしまいそうですが、いや、確かに春頃には「加入したい人のほとんどは加入してしまった」…という雰囲気があったのです。目の前を通る人にいくら声をかけても、ピクリとも反応せず、それどころか肥溜めにハマって糞まみれになった出川哲郎を見るような目で蔑まれる始末。マトモな人間の扱いをしてもらえません。当然、スタッフの神経も磨り減るばかりで、現場の人間の大半は、「無料キャンペーンの内容もどんどん落ちているし、このままだと、どう考えても夏まで保たない」…と思っていたはずです。
 が、の夏に入ってから多少事情が変わって来ました。先ほど話題に出ました“オプション特典”の効果もそうですが、知名度の上昇に伴って、サービス開始当初のヤフーBBの惨状を知らない層の方々がヤフーBBを知り、興味を持ち始めるようになって来たのも大きいですね。決して数は多くありませんが、スタッフが執拗な勧誘をしなくても、自ら「申し込みたいんですが」と言うお客様がブースを訪れるようになって来ています。いや、むしろ今では積極的な勧誘はかえって逆効果…というのが定説化しつつあります。
 ですので、恐らくは今後もしばらくの間は、現在のペースで新規契約者が増加してゆくのではないかと思います。莫大な経費を垂れ流しているのは相変わらずですが、それに比例するように契約者数も増えていく事でしょう。パラソルキャンペーンも、このまま2度目の年越しをする線が濃厚ですね。

 ……あ、そう言えば、8月の契約者数増加ペースがイビツだった(月前半の増加ペースが極端に遅く、後半に突然盛り返した)事に疑問を持つ“ヘビー・ウォッチャー”の方も、この中にいらっしゃると思いますが、これは別にソフトバンクが数字を誤魔化していたわけではないと思います。実は8月は路上キャンペーン大幅縮小もあって、前半にはガクンと数字が落っこちていたのですが、最後の30・31日で一気に前月並にまで盛り返したんですよね。
 というのも、そもそも現在の無料期間算定方式では月末に申し込むのがベストである上に、この8月末は「全国的にピーカンでレジャー日和なのに、月曜から学校が始まるために遠出できない」…という事情があったんですね。それで、「遠出は出来なくても、せめて近場でお出かけを」…とばかりに、家族連れやカップル・若夫婦が市街地へ郊外へとショッピングに殺到。お買い物ついでにヤフーBBに申込む人たちが続出したのです。 
 これなど、パラソルキャンペーンにしてみれば、棚からボタモチがナイアガラの滝のようにバラバラと落っこちて来たようなもの。その甲斐あって、晴れて月前半の不振を帳消しに出来た…というわけなのでした。
 ──納得していただけましたか?


 さてさて、講義も長引いて来ましたので、今日はこのくらいにしておきましょう。とりとめもない話が延々と続きましたが、ご勘弁下さい。
 なお、次回は“今だから笑って話せるキツい話”や、“派遣会社が違うから、思う存分話せる裏話”を、これまたとりとめもなくお送りするつもりです。ではでは。(次回へ続く

 


 

2003年第74回講義
10月10日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第2週分・合同)

 お待たせしました。今週分のゼミを実施します。もう「ジャンプ」の内容などは既に記憶が薄れている方もいらっしゃるでしょうが、もう一度古新聞・古雑誌の山の中から引っ張り出して頂ければと。

 ではまず、情報系の話題を1本。日付的には明日発売になる次号(46号)の「週刊少年ジャンプ」に掲載される読み切り情報です。
 その作品は『人造人間ガロン』作画:中島諭宇樹)。作者の中島さんは、今年ゴールデンウィーク発売の「赤マルジャンプ」春号で鮮烈なデビューを果たした期待の新人作家さん。つい最近までは『アイシールド21』のアシスタントも務めている事で知られていました。「ストーリーキング」マンガ部門の準キング受賞者でもありますね。
 今回のアンケート結果次第では連載獲得も考えられるでしょうから、非常に重要な意味を含んだデビュー2作目と言えそうです。果たしてどうなりますか──?

 さて、今日は合同版でやらなければならない事も多いですし、無駄口利かずにレビューとチェックポイントへ参りましょう。ちなみに今回もチェックポイントはショートバージョンで失礼します。
 レビュー対象作は「ジャンプ」が新連載第3回と読み切りが各1本の計2本、「サンデー」が読み切り1本の計3本となります。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年45号☆

 ◎新連載第3回『神撫手』作画:堀部健和【第1回掲載時の評価:B

 今回の新連載シリーズ関連のレビューも、いよいよこれで最後になります。
 新連載と言えば、第3話までで続行か打ち切りかの判断が下されるというのは有名な話ですが、アンケートが誌面構成(掲載順)に反映され始めるのは8話目くらいからなんですよね。なので、ここからしばらくは誰の目から見ても打ち切り確実な作品が掲載順上〜中位をキープするため、色々な憶測が飛ぶ期間でもあるんです。
 まぁ、ここは「次回打ち切り作品予想期間」と思って、色々な考察を深めてみてはいかがでしょうか。

 あー、結局余談をしてしまいました(苦笑)。『神撫手』について述べてゆきましょう。

 新連載から3週間。一部で「絵が真っ白になって来た」と言う非難も出ていますが、やはり問題があるのはストーリーと設定についてだと思われます。

 とにかく設定とストーリーの整合性が杜撰なのが頂けません。特に第2話で公開された「神撫手の能力は1日1度まで」という設定と第1話の内容(1日に2回も能力が使用されている)が矛盾している点は、「いくらなんでも」なボーンヘッドです。
 また、シナリオも大局観を欠いていてダメです。設定を説明するためだけや、脈絡もなく新キャラを1人増やすためだけにチープな内容のストーリーを組んでおり、既に「2手パス」の状態です。本来なら“怪盗モノ”の醍醐味になるであろう、攻める方(怪盗)と守る方(美術館・警察)の駆け引きや捕物劇もこれまで皆無に近く、善悪の概念を超えるような“生涯のライバル”も不在とあっては、前途多難どころか難破寸前といったところではないでしょうか。

 評価はほぼ1ランク落としてC寄りB−とします。まだ結果は判りませんが、結局のところ読み切り版のレビューで警告した通りになってしまいそうですね。


 ◎読み切り『URA BEAT』作画:田村隆平

 今週の読み切りは「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の6月期佳作・十二傑賞作品の掲載です。「十二傑」受賞作の本誌掲載は初とのことですが、秋は「赤マル」が発行されないシーズンですから、時期的にも恵まれたんでしょうね。
 作者の田村隆平さん23歳「ジャンプ」系新人としては遅咲きの部類だと思います。駒木がデータとして把握できている受賞歴は、この「十二傑」佳作03年2月期の「天下一漫画賞」審査員(武井宏之)特別賞だけなのですが、「ジャンプ」の紹介ページによると以前「ストーリーキング」ネーム部門で最終候補まで残った経験があるとのこと。
 しかし駒木が調べたところによると、一昨年(第7回、『アイシル』がキング受賞)までの受賞者リストに“田村隆平”の名前はありません。となるとペンネームを変えたか、3年以上前に投稿していたかのどちらかになるわけですが……。ひょっとしたら高めのデビュー年齢というのも、この辺りに理由があるのでしょうか?

 謎はさておき、内容についてお話してゆきましょう。

 まず、受賞時から散々指摘されているについてからですが……。
 まぁ確かに稚拙な面も多く目立つものの、それほど酷くはない…という印象です。むしろ、マンガ独特の表現技法は既に連載作家レヴェルと言って良いほど突出しており、総合的に評価すればギリギリ及第点くらいは出せます。普通の読者ならともかく、プロの編集者が「画力がついていってない」とコメントするのは如何な物かと思いますが。
 少なくとも田村さんに根本的な絵の才能が無いというわけでは無さそうで、今後アシスタント経験を積み、一線級のプロの人から知識やテクニックを学べば、少なくとも「連載作家としては下手な方」位のレヴェルにまでは辿り着けると思います。現在画力に定評のある作家さんで、デビュー作の絵がグダグダだった人なんてゴマンといますので、ここは次回作以降に期待したいところです。

 次にストーリーと設定について。こちらも判断が非常に難しいですね。評価出来る部分と出来ない部分が複雑に絡み合っていて、果たして総合的にどのような評価を下したら良いのか、その落とし所が難しい…と言うのが第一印象です。
 そんなややこしい話の前に、現在の田村さんを一言で表現すると、「才能はあるが、実力が足りない」という事になります。RPGに喩えて言えば、現在のパラメータは並以下だとしても、“レベル”が上がっていくにつれてグングンとその値が伸びてゆくと予想される人…といったところでしょうか。
 もう既にネット界隈を中心に色々指摘されているように、シナリオにはかなりの穴が見受けられます。張りっぱなしで処理しきれていない伏線、ご都合主義的な設定など、修正すべき点は多く存在します。
 しかし、田村さんの優れている所は、「良く出来たマンガとはこういうものだ」ということが感覚的に(←ここ重要)理解&習得出来ている点です。具体的に言えば、ストーリーの展開させ方、演出、台詞回しなどが天才的に上手い、ということになります。現在はシナリオの不備が目立って「良く出来た作品っぽい作品」に終わってしまっていますが、これにストーリーテリング力がついてくるようになると、本当の「良く出来た作品」が描けるようになるでしょう。
 紹介ページによると、好きな作家は冨樫義博さんとゆうきまさみさんという事ですが、確かに玄人好みの作品を志向しているような感じですよね。

 とりあえず、今回の作品は加点・減点激しく相殺させてB+ということにしておきます。今後に注目の作家さんがまた1人増えた…というところでしょうか。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『武装錬金』作画:和月伸宏【現時点での評価:A−/雑感】

 談話室(BBS)でも指摘があったように、この作品、世界観ぶち壊し寸前になるくらいギャグが挟まれているんですよね。
 結局のところ推測するしかないんですが、ひょっとしたら和月さん、『金色のガッシュ』みたいな爆笑ギャグと感動的ストーリーの融合を意識しているんじゃないかと思うんですが。ただ『ガッシュ』では、主人公は基本的にギャグメーカーではなく、“ギャグ担当”のキャラがボケるのを傍観しながら静かにツッコむ…みたいな感じでバランス取ってるんですが、『武装錬金』は主人公が最強のギャグメーカーになっちゃってますからね。そのせいで一番白熱しているシーンに水を差してしまったりと、多少損している部分があるかも知れません
 まぁ、最近の掲載順低迷を考慮しても打ち切り候補になるのは次期以降でしょうから、今後の軌道微調整に期待しましょう。

「週刊少年サンデー」2003年45号☆

 ◎読み切り『大蛇(オロチ)』作画:夏目義徳

 さて、今日のメインイベントですね。既に作者の夏目さん実施の“コラボレーション企画”にビックリされた方もいるかも知れませんが、駒木もビックリしています(笑)。いや、「社会学講座のパロディをやります」とは聞かされていたんですが、雰囲気似過ぎです(笑)。

 ──では、こちらは“本家”らしく正調・「現代マンガ時評」といきましょう。

 夏目さんの経歴についてですが、今回は夏目さんから“公式”のプロフィールを提供して頂きましたので、そちらを紹介しておきます。

1994年:『ダンクシュートは打てないけれど』が「少年サンデーまんがカレッジ」10月期にて佳作受賞(ちなみに受賞が発表された号の『MAJOR』は、おとさんがギブソンから頭にデッドボールを受けた回。)
1995年:『雨天笑遊記』が「小学館新人コミック大賞少年部門」で入選受賞。「増刊少年サンデー超」9月号に掲載され、デビュー。
1996年:『雨天笑遊記 稲穂の章』が週刊少年サンデー8号に掲載/『スパナ』が「増刊少年サンデー超」8月号に掲載
1997年:『止めれるモンなら』が「増刊少年サンデー超」3月号に掲載

---アシスタント(メインは皆川亮二さんのスタジオ)・大学の卒業制作・就職(コナミ関連企業でTVゲームのデバッグやデザインなど担当)などでしばし活動中断---

2000年:『ひらき屋OPEN』が「増刊少年サンデー超」1月号に掲載/『トガリ』を「サンデー」本誌にて、短期連載を経て本格連載開始
2002年:『トガリ』連載終了&『ブカツ』を「サンデー」本誌に掲載

 ……ここで下手な感想を述べてしまうと、またご本人からご指摘を受けそうなので止めておきますが(苦笑)、『MAJOR』って、色々な意味で凄い作品だと思いました。

 では、いよいよ内容の方へ。作者ご本人が見ているのを知っててレビューするのはこれが初めてなんですが、「本人の前で出来ないようなレビューはしたくない」と言う事は以前から考えていましたので、臆する事なく全力でぶつかっていきたいと思います。

 まずはから。明らかに他の掲載作品とは“色”の違う、暗い(黒い?)絵柄が非常に印象的です。こういう場では目立ってナンボという部分もありますので、こうして差別化を図るのは良い考えだと思います。ただ、残念ながらやっぱりこの紙質では見難い箇所が出てしまいますよね。
 あと、バックボーンの豊かな作家さんですから、当然画力そのものは問題ないのですが、今回はアクションシーンで多少分かり辛い場面があったのが気になりました。具体例を挙げれば、“大蛇(オロチ)”が犬を助けたシーンで肝心の犬をキャッチした瞬間が抜けていた点、または戦闘中に敵がヒロインを狙ったシーンで、ヒロインがコマから外れていたために距離感が掴めず、本当に敵がヒロインを狙っているように見え難い点などでしょうか。
 この作品はテンポが非常に速く、限られたコマ数で多くの場面の描写をしなければならないので、確かに描き辛い部分はあったと思います。が、ただでさえ黒が勝った見難い絵柄だっただけに、もう少しその辺に気を遣ってもらえれば良かったのではないか…と思います。

 次にストーリーと設定について。“原案”は別の人が担当したとのことですが、それでもストーリーに関する最終的な責任は夏目さんにあると思いますので、ここではそういう扱いをさせてもらいます。
 一読後、まず思ったことは「よくここまで“贅肉”を削ぎ落としたもんだなぁ……」という事でした。「シナリオを破綻無く仕上げた」と言うよりも、「シナリオを破綻しようが無い所まで仕上げた」といったところでしょうか。これは簡単に見えて、実は相当なエネルギーを要する作業ですので、こういった部分は“キチンとしたプロの仕事”として認めなければならないと思います。
 ただ、残念ながら「いくら何でも削り過ぎ」といった感も否めず、序盤は展開が早すぎて戸惑ってしまいましたし、“大蛇”を追う組織やそのリーダーが全く正体不明のまま終わったのも如何なものかと思います。後者については、ヒロインの一人称的視点ならそれでも構わないんですが、三人称的視点にしている以上は、ある程度世界観の呈示をやっておかないと不親切だと思います。
 また、シナリオそのものがオーソドックス過ぎるくらいにオーソドックスな、厳しい言い方をすれば“徹頭徹尾どこかで見たようなお話”だっただけに、どこかワンポイントでも“これが夏目義徳オリジナルだ!”…というような要素を混ぜる必要があったのではないかとも思います。

 評価の方はB+ということにしておきます。お世辞抜きで、作品の完成度には「さすが」と思わせるモノがあったと思いますので、今度はもっとスケールの大きさを感じさせるような作品が見てみたい…というのが、一読者としての願望です。


 時間の都合で「サンデー」のチェックポイントはお休みとします。巻末コメント(「1日だけ他の人に変身出来るなら、誰になりたいですか?」)夏目さんの「連載作家になりたい」がMVPでしょうね(笑)。久米田康治さんのお株を奪うような“自虐ネタ”はお見事でした。
 しかし、他人が変身したいと思うような人物って、実は華やかさの裏で物凄くキツい努力をしているはずなんですよね。それを考えると、そうそう軽はずみに「○○になりたい!」って言えなかったり。

 以上、1日だけ変身したいのは「仲間由紀恵さんの付き人、またはマネージャー」の駒木ハヤトでした(笑)。

 


 

番外編
10月8日(水)
 人文地理
「続・駒木博士の東京旅行記」(2)

 この講義、本当なら10月3日に実施予定だったんですが、色々有りましてこの日に。達成不可能なカリキュラムを設定するクセを直さないといけませんね、ホントに。

 ……そんなわけで、今日は東京旅行記の第二夜です。予定を組み込むだけ組み込んだら、こんな旅行になっちまいました…みたいなスカタンレポートです(笑)。まぁ番外編ですし、肩の力を抜いて読んでいただければと思います。
 それでは、以下よりレポート。レポートの性質上、文体は常体にしています


 ※前回のレポートはこちらから

 ◎初日・4:ホテル オオイマチ

 コンサートの余韻も覚めやらぬまま、JR大井町駅に到着。ここまで来ると“お土産”の白手提げ袋を持つ人間も皆無になる。武道館公演って言ったって、来てたのはせいぜい1万人。人口との比率から考えたらゼロに近いんだな…という当たり前の事をしみじみ痛感する。
 そういや、神戸に住んでるのに、駒木はこの前ポートピアランドであったサザンオールスターズのライブに行った人に会った事が無い。サッカーのワールドカップを生で観に行ったってのも無い。まぁ桜花賞と宝塚記念生で観たってのは腐るほどいるので、根本的な問題は駒木の人脈にあるのかも知れないが。

 さておき、今回の投宿先は大井町駅から至近距離にあるこちら
 リンク先を見てもらったら分かるが、とにかく交通の便が良い上に宿代が安い。それなら以前から定宿にしていれば…という話なのだが、このホテルは便利なだけに予約の埋まるスピードも結構早く、日程確定が遅いのが定めの駒木の東京旅行では、これまでなかなか縁が無かったというわけ。今回は(ビジネスホテルの閑散期である)週末の上、この日に一泊する事だけは最初から固定されていたので、何の問題も無く予約を取ることが出来たという理屈だ。

 2階にあるフロントは、ビジネスホテルに似合わぬ豪華仕様。受付をしているホテルマンが軒並み60歳を超えているところを見ると、ひょっとしたらここが阪急グループの“定年退職者再就職引き受け所”になっているのかも知れない。もしそうなら人件費も削れるし、安い宿泊費も納得がいくというモノだ。
 チェックインを済ませて客室へ。各階に酒類・ソフトドリンクの自販機(しかも定価)が3台ずつ配置してあるのは好感。階下にはローソンが併設されていて肴も買えるので、寝る前に1人でチビチビ酒を呑むには何の不自由も無い。東京のビジネスホテルでは、意外とこういうサービスがアレな所が多いので、ちょっと嬉しい。普段は呑み会以外では酒を飲まない駒木も、社会学講座の事を忘れられる時くらい、気ままに酒の1杯でも呑んでみたいものなのだ。

 室内は至って普通のビジネスホテル。ただ、風呂を大浴場に一括しているので、個室にはユニットバスが無い所だけが他と違う所だろう。まぁ個人的には、ビジネスホテルの狭いユニットバスは勘弁願いたいタイプなので、これは不都合というより逆に好都合。
 テレビもコイン式じゃなくて一般放送は無料で観られたり(東京の安ビジネスホテルは未だに1時間100円取る所が多い)、トイレはウォシュレットだったりと施設的にも文句は無い。ただ、壁がかなり薄く、普通に話している声が隣の部屋に平気で聞こえるほど。よって自室での携帯電話使用は禁止されていて、不便と言えばそれくらいか。まぁ全室シングルのホテルだし、超豪華版のカプセルホテルだと思えば、それくらいは十分耐えられる……と思ったのだが、この後ちょっとした出来事がありゲンナリする。

 荷物を置いて身軽になったところで、まずは晩飯。新幹線の中で軽くメシを食ってから7時間くらい経っているので、とりあえず何か食いたい。
 この界隈は比較的遅くまで食い物屋が開いているみたいだが、さすがに22時半ともなると店仕舞い済みか閉店間際で、結局は立ち食いソバ屋に毛の生えたようなドンブリ飯屋で寂しく済ます。一人旅最大の欠点は、とにかく晩飯が侘しいという事だ。こうした一人旅を頻繁にやっているくらいだから単独行動には慣れっこの駒木だが、さすがに晩飯くらいは賑やかに食いたいところなんだが……。
 部屋に戻った後は、ホテル最上階にある大浴場へ。不規則な生活をしているせいで、最近はなかなか温かい風呂にありつけないでいたので、こういうのは少し嬉しい。温泉ではなく水道水を沸かしているので、全体的に少しカルキ臭かったのがアレだったが、足を伸ばして小一時間ほどゆっくりできたので、まぁ良し。
 風呂から上がった後、ロビーで小休止。生ビール自動販売機という珍しい物があったので、試してみる。野球場で使われるようなデッカイ紙コップに生ビールが並々と注がれて1杯400円。一見味気なさそうに見えて、これが美味い。
 ロビーには他に数人が休んでいたが、何故かそこに置いてあるカップヌードル自販機が大人気。真夜中の風呂上りに集団でカップラーメンを食ってる姿はかなりの違和感がある。旅先では何か変わった事をしたいんだろうけど、太るぞ(笑)。
 部屋に帰るエレベーターでは、駒木と同年代の女性とバッティング。そのヒトが結構美人で、しかも風呂上がり独特の色気が出てるので、年甲斐も無く結構ドキドキ(笑)。いやぁ、このホテル、良いわ。

 部屋に戻ってから、もう1本チューハイなど呑みつつテレビを眺めていたら、突然猛烈な眠気が襲って来て意識を失う。相当な強行軍だったとはいえ、旅先では途端に夜に弱くなるのは何故だろう? 普段は朝5時を回らないと眠くならない廃人のクセに。
 目が覚めたのは午前4時ごろ。隣に泊まってたオヤジのイビキで起こされたいくらなんでも壁薄過ぎ。改めて就寝準備をしてベッドに潜り込むが、隣室からの音波攻撃はいつまで経っても止まず、今度はなかなか寝つけない。壁を蹴って叩き起こしてやろうかと思ったが、さすがに止めておく。次にここを利用する時は耳栓が必要だろうなぁ。


 ◎2日目・1:一路、水道橋へ
 
 朝は8時起床。せっかく大浴場があるのだから…ということで、早々に朝風呂を満喫。昨夜よりも利用者がいたところを見ると、考える事は誰も一緒らしい。
 チェックアウトは10時までなので、比較的朝もノンビリ。少ない荷物を整理して、悠々と退出。
 朝食はホテルの1階テナントに入っているマクドナルドで朝マック。昨日、新大阪駅のホームで仕入れておいた関西版の「競馬ブック」を開いて競馬予想。どうせ全国の馬券が買えるのだから、慣れ親しんだ阪神競馬場のレースで勝負した方が有利に決まってる……と思ったのだが、この日の馬券戦線は芳しくなかった(苦笑)。神戸新聞杯はゼンノロブロイ◎で的中したんだけどね。

 そこで1時間ほど時間を潰して駅へ。今日の目的地・後楽園ホールのある水道橋へJRで向かう。
 沿線在住の方ならご存知だと思うが、この日は中央線の混乱があった日で、道中には通勤ラッシュ並の混雑を呈している区間も。まるで競馬場帰りの阪急電車みたいだなぁと思っていたら、駒木の隣に立っていた2人組客「競馬場の帰りでもねェのに、どうして日曜日に電車が混んでんだよ」と愚痴をこぼし合っていた(笑)。

 で、何とかJR水道橋駅に到着。西口から東京ドームシティ方面へ向かう。プロ野球とプロレスと競馬の場外発売が同時に行われているだけあって、客層もてんでバラバラ。
 しかし、ここまでレジャー施設が集中しているスポットは京阪神には無いので羨ましい。敢えて挙げるなら、ウインズと府立体育館が至近距離にある大阪・難波くらいだろうか。昔は大阪球場もあったわけだし。ただ、難波は神戸から通うとすると不便なんだよなぁ。

 方向音痴の駒木にも迷う余地を与えず、数分で後楽園ホールに到着。今日はここで昼興行を行うDDTプロレスを観戦する。
 DDTは原則的に首都圏しか興行をやらないドマイナー団体だし、そういう団体にとって後楽園ホール大会というのは年に数度の大一番なので、まさにジャストタイミングと言える。旅行のスケジュールを決める段階では、中山競馬場や江戸川競艇などの旅打ちも考えたのだが、最近、駒木の中でプロレス・格闘技熱が復活しつつある今、やはり目指すべきは聖地・後楽園ホールだろうという事になったわけだ。
 到着時は折り良く、ちょうど当日券発売開始時刻。10数人の行列に並び、チケットを購入。しかし開場時刻までには間があるので、しばらく付近を“探索”。「おぉ、ここが格闘技系コラムに度々出て来る山下書店か」とか、「あぁここが、ターザン山本が会社の金をしこたま注ぎ込んだウインズ後楽園か」とか感慨にふける。

 ◎2日目・2:格闘技の聖地にて

 開場時刻にホールへ戻り、入場。B5用紙に試合カードがコピー印刷された簡素なパンフレットが配られる。ボクシングの草興行みたいだが、某団体みたいにワケの分からない写真集みたいなパンフを2000円で売られても困るので、ある意味こちらの方がファンに優しいのかも知れない。
 ホールの中は、噂で聞いた通り、収容人数(実数2000人弱)の割に見易い席配置が成されていた。うーむ、羨ましい。こんなのが神戸にも欲しい。首都移転とかはどうでも良いけど、東京ドームシティだけでもこっちに移転してくれんかな。
 席に着くと、さすがプロレスの聖地だけあって、濃いお方たちがあちこちに。DDTプロレスのこれまでのアングル(試合の結果を絡めたストーリー展開)を一から解説している奇特なお方がいたり(勉強になりました。有難う)、駒木ですら知らなかったプロレス裏情報を当たり前のように世間話として語る人たちがいたり。そういう光景を目にすると、駒木ですら「うはー、東京って凄い所だー」と、上京したての田舎者みたいな心境に至る。

 DDTプロレスは、ビデオ映像をふんだんに織り込んだ、アメリカのWWEを意識した(とは言えスケール的には桁違いに小さいが)エンターテインメント重視路線。プロレスの試合だけではメジャー団体のそれに及ぶべくもないので、それを他の手段でどうカバーするかという事に意識が置かれている
 で、その開き直りが功を奏して、首都圏限定ながら固定客の取り込みに成功しているようだ。今回の後楽園も、ギッシリとは言わないが、満員マークを出しても怒られないくらいの入りにはなっている。(注:プロレス業界の客入りを表す用語は、満員→超満員→超満員札止めの順に出世する。勿論最後以外は空席がある)

 試合内容を色々と話し出すとキリが無いので泣く泣く割愛するが、1人だけ紹介しておかなければならないレスラーがいる。観客にとっては、ある意味タイガージェット・シンやザ・シークよりも怖い存在。その名も……

男色ディーノ

(↑クリックすると写真が出ます。ただしお子様閲覧不可)


 ──ダジャレと下ネタの融合、しかも一目で芸風ファイトスタイルが理解出来てしまうリングネームで察してしまう方もいるだろうが、この人は学生プロレス出身のレスラーである。上記リンク先の写真も学生時代のモノだ。
 学生プロレス出身のプロレスラーは案外多いハヤブサ(学生時代のリングネーム:肥後ずいき←笑)MEN'Sテイオー(同:テリーファック)など、中規模団体で主力の一角を占めたレスラーも複数存在する。ただし、学生時代のリングネームとファイトスタイルの両方をそのまんまプロのリングに持ち込んでしまった人は極めて珍しい
 この人がどういうレスラーなのかを詳しく説明する時間も無いので手抜きさせてもらうが、こんな必殺技を得意とした、相手レスラーにとっても客にとっても恐ろしい色物レスラーである。しかも、普通にプロレスをやらせても、学生プロレスなら無敵の王者、プロでもマイナー団体クラスのレスラーとなら互角以上に戦えてしまうので、余計に凄いというか始末が悪いというか。
 で、この日の試合でも、U−FILE CAMPという総合格闘技系団体の新人・若手レスラーを相手に、自分の持ち味を活かしながらオンリーギブアップルールという難しい試合形式に対応して正に独壇場。詳しくはこちらのリンク先を読んでもらえれば…と思うが、まぁ本当に凄いよ。泣く子も更に泣き叫ぶというか、そんな感じ。
 何が怖いって、後楽園ホールは椅子が固定式なので、襲われたら逃げられないんだよ(苦笑)。だから退場時は必死に目線を合わせないようにしていた。

 全体的に言って、この興行は大満足。正直、団体の運営もカツカツの現状なんだろうけど、ここまで頑張っている団体なんだから、もっと出世してもらいたいと思う。ただ、団体の外に出て、エンターテインメント色が薄れた時にどう魅せるかという問題はあると思うが。

 
 ◎2日目・3:はじめての“ギャル雀”探訪

 プロレスが終わったのが午後3時過ぎ。この日は初めから昼飯抜きという事に決めていたので、後楽園ホールを出るなり、早速この日第2の目的地へ
 鋭い人はお判りだと思うが、駒木の目的地はいつも一貫して「東京にあって神戸・大阪にない施設」である。7月は立川競輪(と横の駐車場で女子プロレス)、9月1回目の時は大井競馬場浅草演芸ホール。で、今回の後楽園ホール。恐ろしく傾向が偏っているのが我ながらアレだが、だからこその一人旅。
 で、今日の目的地その2だが、小見出しにもあるように“ギャル雀”店員が10代後半から20代前半のギャルで占められたフリー雀荘である。これが京阪神にほとんど無いので、一度「ものは試し」と訪れてみたかった…という次第。どうせ初めて行った雀荘では慣れない環境で麻雀やるだけで精一杯なので、別にヘンな気持ちで言ったわけじゃないので念のため。要は後学のためというか、ギャンブル社会学のフィールドワークというわけだ。

 訪れた店の名前は敢えて秘す水道橋の有名店、と聞いたら判る人には余裕で判ってしまうが、あんまり良い印象を抱けなかったので書かない。各所の評判では「ギャル雀の中では接客・店内環境トップクラス」という声が聞かれたのだけれども、駒木には「ヤフーBBのモデム配りより業務態度の悪い女の子が店内をうろついてるだけの雀荘」にしか思えなかった
 何て言うかね、若い女の子が接客する事がウリのクセに、全身から“お仕事でやってます”感が漂うのがどうも受け付けんのよね。いや、そりゃお仕事でやってるのは判るよ、判る(苦笑)。んだけれども、それを客に見せたらアカンでしょうという事。というか、せめて半荘が終了して客が「ラストー!」と呼んだら駆け足で来いよと。せめて雀荘のメンバーの仕事くらいはやれやこのバカチンが! …と、近くに黒板があったらデカデカと「人」という文字を書きそうな勢いで思ってしまった。
 あと許せないのが、飲み物が不味い事。フリードリンクだから贅沢は言えないんだけど、せめて水道水よりは美味いドリンク出してくれよと泣きそうになる。ウーロン茶なんて、後味に強烈な薬品系の臭いがして吐きそうになった。半荘1回目の後半で既に神戸の雀荘が恋しくなって来た。俺に美味いアイスオーレを飲ませてくれ〜。

 まぁそういうわけで、そこまで精神的にリズムを崩して麻雀が勝てるはずも無く、昨日のホテル代くらいが軽く吹っ飛ぶ。ただ、これくらいの負けは一応予定の範囲内という事になっているのが、これまた我ながら悲しいが。

 
 ◎2日目・4:再会は突然に
 
 ほうほうの体で雀荘を出たら、既に時刻は19時過ぎ。帰りは21時ジャスト東京発の夜行バスなので、今の内にメシを食っておかないとさすがに帰りまで保たない。
 晩飯は、同じく水道橋にある「DDTステーキ」。そう、昼間観に行ったプロレス団体・DDT(の某有力レスラー)が経営しているステーキ屋さんだ。小さな雑居ビルの1階にあり、スナックバーの止まり木のような椅子席が5〜6席と、4人掛けのテーブル席が1組。まぁ小じんまりとした店である。

 この店のウリは勿論ステーキなのだけれども、それよりもマニアの間で喜ばれているのは、DDTの若手レスラーの皆さんが日替わりでコックを務めているという事。早い話が、ドマイナー団体の出すファイトマネーだけでは生活できないレスラーや練習生が、この店のバイト代を生活の足しにしている…という世にも悲しい話なわけだ。ただ、こういうレスラーの副業とファンサービスを兼ねるというのは面白い試みではある。
 で、この日の“日替わりシェフ”は、後楽園ホール大会のメインイベント・“第4回KO-Dタッグリーグ戦”で優勝し、CMLL認定KO-Dタッグ新チャンピオンになった橋本友彦選手。ドマイナー団体とは言え、天下のチャンピオンが戴冠4時間後に背中丸めてステーキ焼いたり大根の皮剥いたりしているという物凄い光景が眼前に展開され、頭がクラクラする。「プロレスじゃ、ベルトで飯は食えんのだよなぁ」…などと痛感し、ステーキを頬張りながら、何だか複雑な心境になって来る。いつの間にか、頭の中では一青窈の「もらい泣き」が流れていた。

 あ、でもステーキは値段の割には本当に美味かったので、ここはお薦めの店。駒木も次行く時は「麻雀で負けたので一番安いセットで」なんて事にならないように気をつけて、腹一杯食ってみたいと思う。


 ◎2日目・5:さらば東京。こんばんは夜行バス。

 夕食後、もう一度東京ドームシティに戻り、山下書店で立ち読みして時間を潰した後、いよいよ帰途へ。

 行きで贅沢した分、帰りの交通手段は超節約モードでJR夜行バス。しかも、乗り心地が激悪という事で名高い(?)、片道5000円の「青春ドリーム号」である。
 夜行バスと聞けば、伝説の深夜番組「水曜どうでしょう」を連想する人も多いと思うが、あの番組でも再三語られているように、夜行バスはとにかくキツい。なかなか寝れないし、揺れるし、何よりも腰とケツが痛む。「ケツの肉がもげそうになる」という表現は大袈裟じゃない。おまけにこの「青春ドリーム号」と来たら、普通の夜行バスより座席が物凄く狭く、しかも前後の座席間隔が小さいのでリクライニングもままならない。普通の夜行バスに備え付けられていて、腰クッション代わりになる毛布も置いてない。言っちゃ悪いが生き地獄だ。
 東京から神戸まで、行程は約9時間。途中2回ほど休憩があるのが唯一の救いで、この時は思う存分体をほぐす。ストレスが溜まっているのは駒木以外の乗客も同じらしく、朝4時過ぎについたサービスエリアでは夜明け前からカレーだのカツ丼だの食う人が続出。確かに朝イチで食う脂っこい食事は美味いんだが……。
 そんな駒木も、「カレー味ソフトクリーム」という、味以上に形と色が心配な代物に興味をそそられたのだが、残念ながらソフトクリームマシンが故障中で試食叶わず。壁には「大好評! カレーソフトクリーム」なんて張り紙があったが、それは絶対にウソだと思う。

 神戸到着までにどれくらい眠れただろうか。いや、何とか数時間まどろむ事が出来た……という方が正確な表現だろう。未だに東京と大阪を結ぶ寝台急行「銀河」が割高な運賃の割に健在なのは、バスだと寝れなかったり、疲れが翌日まで残って取れない人が多いに違いないからと思う。


 ◎3日目:生還

 予定の時刻よりやや早く、午前5時50分に三ノ宮駅着。さすがの繁華街もこの時間帯は閑散としている。開いているのは24時間営業の店くらいなものだ。徹夜カラオケ明けでダルそうにしている若者たちを横目で見ながら、家路を急ぐ。あ、途中に松屋で朝定食を食べたかな。隣に座ったヤツが朝から牛めし大盛を食ってて、こっちが胸焼けしそうだった。

 通勤ラッシュに逆行し、ちょっと引け目を感じながら自宅へ。とりあえず風呂に入って、然る後爆睡。しかし寝ても寝ても疲れが取れないのには参った。朝まで起きてるのはいつもの事なのに、これがやっぱり旅疲れというやつなのだろう。でも、この疲れが取れる頃には、また旅行したくなっちゃうんだよねぇ。次は冬かな。


 ……というわけで、デタラメな東京旅行記でした。よい子の皆さんは真似しないように。いい年した大人の皆さんは更に真似しないように。疲れが残ったまま職場復帰して溜まった仕事をこなす羽目になって、間違いなく廃人になりますので(苦笑)。

 それでは、番外編講義を終わります。最後まで有難うございました。(この項終わり)

 


 

2003年第73回講義
10月6日(月) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・後半)

 前回のゼミでの大失策について、受講生さんからもいくつかの叱咤や激励を頂きました。
 いやしくもメディアリテラシーについての講義を受け持っておいて、自分がそれに失敗したというのは本当に情けない限りで、穴が有ったら入りたいとは正にこの事でありました。
 今後はこれまで以上に情報の取り扱いには留意して講義を行ってまいりますので、どうか今後とも宜しくお願い申し上げます。

 では、日付の上では先週となってしまいました、9月最終週&10月第1週のゼミ後半分をお届けします。

 まずは今日も情報系の話題から。
 既に先週のゼミでも簡単にお知らせいたしましたが、「週刊少年サンデー」次号03年45号に、夏目義徳さんの新作読み切り・『オロチ』が掲載されます。
 「サンデー」の公式ウェブサイトから“夏目義徳”の名前が消え、同誌と夏目さんとの絶縁が取り沙汰されたのが今年の5月。この噂を紹介した当講座に、実は以前から当講座をチェックして下さっていた夏目さんご本人から、「『サンデー』とは絶縁したわけではなく、一旦距離を置いただけ。専属契約の無いフリーの立場なので、他誌での活動も目指しているところなのです」…という旨のメールを直接頂いたのは記憶に新しいところですが、その言葉(『サンデー』と絶縁したわけではない)の通り、本誌の読み切り枠で「サンデー」に再登場ということになりました。
 今回の“復帰”にあたり、またも夏目さんからわざわざメールを頂きましたこの件で当ゼミの情報の信憑性が損なわれるのを懸念されたということで、本当に有り難いお話です。(そうやって守って頂いた信頼を自分で壊してりゃ世話ないですが)
 ネット上のメールに関するマナー上、夏目さんからのメールの文面全てを紹介するわけにはいかないのですが、今回の読み切り発表については、
 「フリーの立場で色々な雑誌での活動を模索して来たが、結果として一番早く話がまとまったのが『サンデー』の読み切りだった」
 ……という事だそうです。「サンデー」とは一旦距離を置いたとはいえ、これまでの経緯(夏目さんがデビュー以来『サンデー』一筋だった事など)を考えると、それでもまだ「サンデー」が他の雑誌に比べて関係が深い雑誌であろうという事は容易に想像がつくところですし、この“復帰”も妥当と言えば妥当な話なのかも知れませんね。
 まぁ本当に詳しい事情は駒木にも知る由はありませんし、もし知ってても公にする事ではないでしょうから、これ以上の詮索は止めておきますが、とりあえず今は「ブランクを余儀なくされていた元メジャー少年誌の連載作家さんが、無事活動再開を果たした」という事実を喜びたいと思います。
 なお、駒木が夏目さんに「受講生の皆さんに何かメッセージがあれば」とお願いしたところ、快くコメントを下さいましたので、紹介させて頂きます。

 漫画は載せるまでは漫画家の仕事ですが、載ってからは読者のものですので自由に判断してください。批判も結構。だって読んだ人だから。一番イタイのは、やっぱ読まれないことですからねー。
 読者の皆さんの意見を聞いて参考にするので、よろしくお願いします。

 駒木にも「遠慮なく自由にレビューして下さい」と言って下さってますので、全力で審美眼を研ぎ澄まし、ガチンコ勝負させてもらいたいと思います。その上でA評価を出せれば本当に嬉しいですね。期待して発売日を待ちたいと思います。

 ……それでは今日もレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は読み切り1本のみ。カリキュラム遅延のため、チェックポイントも少なめでご容赦を。
 

☆「週刊少年サンデー」2003年44号☆

 ◎読み切り『PUMP☆IT★UP』作画:大和八重子

 突如として始まった、元連載作家さんによる読み切りシリーズ、今週は大和八重子さんのビーチバレー物作品が登場です。
 つい先日「まんが家バックステージ」から名前が消えてしまい、詳しいプロフィールが分からなくなってしまったのですが、大和さんは90年代後半から「サンデー」系雑誌でプロ野球実録モノの読み切りを数作品発表していたようです。その後は「サンデー」本誌で本格的な創作活動へシフト。00年に柔道マンガ『タケル道』で短期集中連載、更には長期連載を獲得します。
 しかしこの連載は半年ほどで無念の打ち切り。それからは増刊で散発的な活動をしていましたが、本誌には『タケル道』の連載終了以来2年半ぶりの登場になりますね。

 元連載作家さんですから当たり前と言えば当たり前ですが、に関しては何も問題は無いですね。ただ、顔の輪郭のバリエーションが乏しくて違和感を感じるのですが、まぁそれは些細な事でしょう。

 しかし、ストーリーと設定かなり問題が多いような気がしますね。

 まず注文をつけたいのはキャラクターデザインの面ですね。よりにもよって「週刊少年サンデー」で、頭が悪いジャニーズ系アイドル的な男受けの悪いキャラを主役に据えるのは正直どうなんだろうと。
 しかも、本来なら男子・男性読者の感情移入を引き受けるはずのバレー部主将・山之内が、実は性格が捻くれてるだけのヘタレで、全く共感出来ない人物になってしまっていますからねぇ……。これでは、「“お近づきになりたくない”キャラが勝手に砂にまみれてるだけ」の48ページです。
 
 また、シナリオ面でも大きな問題があります誰が主役なのかイマイチ分からないボヤけたフォーカス一体何を読者に見せたいのか分からない軸の無いプロットなど、ストーリーテリング面ではごく基本的な内容が出来ていないんですよね。
 多分、大和さん的には「努力」をテーマにしたかったのでしょうが、話を全体的に俯瞰してみると、「チャラチャラした男前のアイドルは、ビーチバレーの天才だった」「努力してもダメなヤツはダメ」という部分しか伝わって来ないんですよね。これじゃイカンですよ。

 こんな偉そうな事を言うのはアレだと思うんですが、この作品、もうちょっとネームを練る余地があったんじゃないかと思います。評価はB寄りB−としておきます。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「学生時代の部活は何でしたか?」。美術部漫研が多いのは当たり前(しかも漫研より美術部が多いのが重要)として、運動部経験者が大半だというのは興味深いですね。やっぱり積極的な学校生活を経験していないと、リアリティのある人間関係はなかなか描けないという事なんでしょうか。
 駒木は、まず小・中とバスケ旧日本軍の空爆用爆弾のような使い道の無い秘密兵器に終始しました。
 で、高校に入ってからは体力の限界を感じて運動部から離れ、SF研究部という名のマンガ&ライトノベル&テーブルトークRPG同好会に。週3回の活動の帰りはヲタトークをしながら集団下校…という、我ながら香ばしさを感じるクラブでした(笑)。
 ……まぁそれだけ仲が良かったって事なんですけどね。女子比率が高いクラブでしたから、ある程度は華やかさもありましたし。

 ◎『金色のガッシュ !!』作画:雷句誠【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 今週の話、コレ凄いですよ。
 要は「惚れた女のためなら命を張れる」って事なんですが、これは当たり前と言えば当たり前の話だけに、見せ方が難しいんですよね。で、このお話の場合は、どう頑張っても悲劇にしか辿りつかないんですが、その悲劇のヒーローとヒロインが他の誰よりも強い。しかも自分の弱さをパートナーを想う力でカバーしているので余計に強いんです。
 事前にあったキャラ設定が後から作ったシナリオと噛みあい、しかも優れたネーム力がそれを補強する。まさに物語の理想形ですね。

 
 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 ヤキチと桃里の“いい雰囲気”描写、上手いなぁ(笑)。バイトの職場とかで必ずありますよね、こういうのって。
 しかし、ヤキチって28歳で駒木と同い年なんですが、高校生から見たら28歳ってこんな頼もしい感じに見えるんですかねー。だって、駒木ってこんなですよ?(苦笑) まー、こんなだから自分の家族どころか彼女も随分長い間いないんでしょうが。

 
 ……さて、今日はこんなところで。次回のゼミは水曜か木曜に実施したいと考えてます。では。

 


 

2003年第72回講義
10月4日(土) 競馬学特論
「第1回・駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜03年秋・第1戦・スプリンターズS」

 10月に入り、中央競馬もいよいよ秋競馬本番。今週から年末までぶっ通しのG1レース攻勢が続きます。
 分かる方はよくお分かりでしょうが、競馬ファンにとっては、このG1シリーズが始まるともう年末になったも同じです(笑)。怒涛のように次から次へと大レースがやって来て、予想にレースに四方山話に花を咲かせている内に1週間が経ち、1ヶ月が経ち、そしていつの間にか街角のクリスマスツリーに灯りが点っているという次第。
 そして、それは我々駒木研究室メンバーも同じです。先月から準備を進めて参りました、研究室メンバー全員参加によるG1レース予想ラリーが、今日からいよいよ開幕の運びとなりました。

 今大会の“公式戦”となるレースは、秋シーズンのG1レースのうち土曜開催のジャパンカップダートと中山大障害を除外した全10戦。その際行われる各々の予想の成績は、下記の規定に従ってポイントに換算され、その合計ポイントで総合順位が争われます。
 なお、まだ詳細は決めていませんが、優勝者には特典を、最下位の者には罰ゲームを与える予定でいます。ちなみに、ウチの3人娘による下馬評では、最下位候補筆頭はダントツで駒木だそうですが(苦笑)。

●ルール及びポイント算出方法● 

 ・各メンバーは、レースの結果を予想し、有力馬(馬券の対象になると思われる馬)に印をつける。印は上位から順に◎、○、▲、△が各1頭まで、×が2頭までとする。ただし、▲を使用しない場合は×を4頭まで使う事が出来る。

 ・ここでつけられた予想印に対応してフォーカス(馬券の買い目)が以下のように自動的に設定され、各自1レースあたり1000円分の馬券を購入する(と仮定する)。

 ※単勝…◎をつけた馬のみ1点(=100円分)
 ※馬連(頭数8頭未満の場合は枠連)…◎−○、◎−▲、○−▲、◎−△、◎−×の組み合わせ各1点・計6点(=100円×6点=600円分)
 もしも印をつけた馬が少なく、組み合わせ数が6点に満たない場合は、余った分を上位の組み合わせに重複させる。
 《例:つけた印が◎○▲△の4頭だけの場合……◎−○200円、◎−▲200円、○−▲100円、◎−△100円買ったことになる》
 ※馬単…◎→○、◎→▲の組み合わせ各1点・計2点=100円×2点=200円分)
 予想の際に▲印を使用しなかった場合は、◎→○と◎→△の組み合わせを100円ずつ、△印も使用してなければ、◎→○の組み合わせを200円買ったことになる。
 ※三連複…◎−○−▲の組み合わせ1点(=100円)

 ・フォーカスが的中した場合は、その払戻金の金額がそのままそのレースでの獲得ポイントとなる。

 ……まぁ、文字で説明しただけでは分かり辛いでしょうが、とりあえず1回やってみたら分かると思いますので、どうか宜しく(笑)。

 ──というわけで、それでは、もう早速予想の方へと参りましょう。予想のフォーマットはプレシーズンマッチと変わりありません。

第1戦・スプリンターズS(中山1200芝外)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

× テンシノキセキ 横山典
飛ぶ鳥を落とす勢いとは、まさにこの馬の事。斤量差の恩恵が無くなり予断を許さぬが、実力はメンバーでもトップクラス。

 

    × ハッピーパス 田中勝

1着の前走は時計に恵まれた感も有り。今回デキ良好も、一気の相手強化が果たしてどうか?

 

      キーゴールド 二本柳

休養明け緒戦はこれまで4連続着外。実力面でも不安残すし、ここは大苦戦必至。

        ショウナンタイム 吉田豊

準オープン勝ちもままならぬ現状でG1は……。

×     サーガノヴェル 木幡
極度の気性難も、潜在能力は一線級。気分良く先行できれば波乱の立役者に?
× × レディブロンド 柴田善

異例づくめのルートを経て、デビュー以来5連勝でG1初挑戦。前走でオープンでも通用する力見せたが、果たして勢いはG1でも通用するのか?

        ゴッドオブチャンス 蛯名

なかなか往時の力を取り戻せずにいる現状。展開も厳しくて。

× デュランダル 池添

差し一辺倒も、末脚の鋭さはメンバー中随一。今度こそ前に届くか……?

        カルストンライトオ 村田

このレースのペースメーカー。調子は戻りつつあるが展開は厳し過ぎる。

  ×     10 アグネスソニック 四位

NHKマイル2着の成績は威張れるが、最近デキ下降気味か。

11 ビリーヴ 安藤勝

引退レースを優勝で飾るべく、ギリギリかつ最高潮の仕上げで臨む。当然実力、実績ともメンバー中最右翼。

        12 イシノグレイス

江田照

中山コースは大の苦手? 1000mならオープンでも通用するが……。

  13 アドマイヤマックス 武豊

短距離のスピードには対応できそう。問題はジリ脚だけ。

        14 ナムラマイカ 中館

年齢的にもそろそろ能力的な限界が見える頃。デキも冴えず、ここは静観が適当。

 

  ×   15 イルバチオ 後藤

武器は追い込みだけ。このメンバーで他力本願な戦法は、少々ムシが良すぎるか?

●展開予想(担当:駒木ハヤト)

 逃げたい馬は何頭もいるが、ハナを切らなければお話にならないカルストンライトオが無理矢理にでも前に行きそう。そうなれば他の馬は自滅を避けて控え気味に。ハイペースが予想されているが、展開がスンナリ流れると、前半の600mを33秒チョイの平均ペースに落ち着く可能性も。
 有力馬の位置取りを予想してみる。テンシノキセキは内々の3番手、それをすぐ後ろから見るように、馬群の中にビリーヴがいて、中団からやや後方にアドマイヤマックスとレディブロンド。デュランダルは後ろから2頭目あたりを追走して直線に賭ける。
 勝負の行方は前半のペース次第だろう。もしも平均ペース程度に落ち着いた場合は差し・追い込み勢全滅の可能性もあるし、ハイペースになればその逆もある。だが、どちらにしても絶好位につけたビリーヴは、キチンと一仕事してくれるはず。


●駒木ハヤトの「逆張り推奨フォーカス」●
《本命:ビリーヴ》

 このレース限りでの引退を表明しているビリーヴが生涯最高のコンディションに仕上がった。相手も昨年のメンバーより一枚落ちる気がするし、ここはもう黙って信頼する一手だろう。コンディションが良過ぎて馬体が大幅増になったり、レースで大きなアクシデントが起こってグチャグチャになったりしない限りはキチンと決めてくれるはず。
 その分だけ困ってしまったのは相手候補。前走を参考にすればテンシノキセキが最右翼なのだが、頭数が増えて思うようなレースが出来ない可能性があり、ここは手広く狙いたい。
 注目のレディブロンドは、非凡な才能は認めるものの、典型的な凡走する穴人気タイプに見える。あくまで押さえが妥当だろう。逆に人気の盲点になっているサーガノヴェルの一発にかける手が面白い。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 11 100円 2.5
馬連 1-11 100円 6.9
  11-13 100円 7.8
  1-13 100円 18.2
  8-11 100円 10.9
  5-11 100円 53.0
  6-11 100円 9.6
馬単 11→1 100円 10.1
  11→13 100円 13.2
三連複 1-11-13 100円 12.6


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:ビリーヴ》

 「面白くない予想だなあ」……って言われてしまいそうですけど、それでもビリーヴ以外の馬で本命馬って見当たらないんですよね。唯一のG1馬、しかもスプリントG1を2連勝中とあっては、逆らうわけには行きません。前走はテンシノキセキに負けてしまってますけど、今回は斤量差が3kg縮まりますし、展開もこっちの馬の方が有利でしょう。
 問題は……多分、博士と本命が被ってしまっていると思うんですが、そうなると「駒木博士と栗藤珠美の本命が重なると予想は外れる」というジンクスが発動してしまうんですよね(苦笑)。そうなった時は、どうか6番13番で決まってくれますように(笑)。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 11 100円 2.5
馬連 11-13 100円 7.8
  6-11 100円 9.6
  6-13 100円 18.0
  8-11 100円 10.9
  1-11 100円 6.9
  10-11 100円 32.1
馬単 11→13 100円 13.2
  11→6 100円 17.0
三連複 6-11-13 100円 16.7


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:サーガノヴェル》

 ガッチガチの本命ムードですけど、当然穴狙いで行きますよ〜! ここはサーガノヴェルの先行押し切りを期待して◎です。
 最近この馬ボロ負けが多いんですけど、どうも弱いから負けてるんじゃなくて、ご機嫌が悪くてレースに集中できなくて負けてるみたいなんですよね。ということは、キチンと走ったら良いレースが出来るわけですよね。実際、3レース前には中山1200mを1分7秒1で走ってますしね。
 で、あとはセントウルSの時にお世話になったテンシノキセキとビリーヴと一緒にワン・ツー・スリーを決めてもらって、第1戦で優勝を決めちゃいたいと思います(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 100円 18.5
馬連 1-5 100円 77.4
  5-11 100円 53.0
  1-11 100円 6.9
  5-6 100円 87.7
  5-8 100円 77.0
  5-15 100円 219
馬単 5→1 100円 199
  5→11 100円 142
三連複 1-5-11 100円 66.0

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:ビリーヴ》

 セントウルSに出てた馬がいっぱい出てますねー。それじゃ、ということでまた「奇跡を信じて」に賭けてみたいと思います(笑)。こういうのを「ゲンをかつぐ」って言うんでしたっけ。
 他に印つけた馬も、セントウルSで上位に来た馬にしました。でも、それだけだと面白くないから、「みんなでハッピーになりましょう!」ということでハッピーパスを。
 ……でもまたこれで当たっちゃったら、また博士から何か言われちゃうんでしょうねー(笑)。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 前売り
オッズ
単勝 11 100円 2.5
馬連 1-11 100円 6.9
  8-11 100円 10.9
  1-8 100円 21.2
  11-13 100円 7.8
  6-11 100円 9.6
  2-11 100円 48.8
馬単 11→1 100円 10.1
  11→8 100円 16.6
三連複 1-8-11 100円 15.0

 四者四様の予想が出揃いました。結果は果たしてどうなるのか、皆さんもレースの結果に注目していて下さい。では、またレース後に。


スプリンターズS 成績

× 1着 デュランダル
2着 11 ビリーヴ
  3着 13 アドマイヤマックス
× × 4着 レディブロンド
× 5着 テンシノキセキ

単勝8 810円/馬連8-11 940円/馬単8-11 2320円/三連複8-11-13 1170円

 ※駒木ハヤトの“勝利宣言”(馬連のみ的中)
 的中の仕方が少々気に入らないけど、まずは早速片目が開いたという事でホッとしています。さすがに全10戦的中ゼロとかだったら面目無いからねぇ。
 しかし、あそこまで頑張ったならビリーヴに勝たせたいレースではあった感じかな。1番人気ではあったし、前走で大事に行き過ぎて2着に負けた反省もあったんだろうけど、あんなナリタブライアンみたいな競馬をしたら、やっぱり最後は止まっちゃうよねぇ。レース全体のラスト200mのラップタイムが12秒9だから、差し馬に差して頂戴って言ってるみたいなもんだ。
 でも一番可哀想だったのは、内枠が災いして逃がされる羽目になったテンシノキセキかもね。いくら平均ペースでも、あんなにガシガシ競られたら保つスタミナも保たないでしょう。
 第2戦は秋華賞か……。相性悪いんだよなぁ。まぁ、全G1レースの大半と相性が悪いんだけど、僕は(苦笑)。  

 ※栗藤珠美の“喜びの声”(馬連のみ的中)
 駒木博士と同じ印の組み合わせで的中。ジンクスもやっと解消されたのでしょうか(笑)。でも、デュランダルがいなければ完全的中だった事を考えると、まだ少しは効き目が残っているのかも知れませんね。
 でも、デュランダルの末脚は凄かったですね。印をつけておいて言うのもおかしいですけど、これまでG1レースでは余り目立った成績を残しているわけでもなかったので、ここまで活躍するのはちょっと意外な感じでした。
 次回以降も頑張ります。皆さんよろしければ応援して下さいね♪

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 ◎をつけたサーガノヴェルは7着でした。直線で少しだけ見せ場があったんですけど、テンシノキセキに差し返されるくらいヘタれちゃってましたから、今日は仕方ないですねー。◎と○で5着争いしてたら世話ないです(苦笑)。
 いきなりから最下位スタートですけど、いつか今日のデュランダルみたいに追い込んでみせますから、どうかよろしく!

 ※リサ=バンベリーの“ハッピー・ハッピー・グッドラック”(馬連のみ的中)
 ワーオ、また当たっちゃいました! スプリントレース大好きです!(笑)。でもホントはビリーヴが1着だったらもっとハッピーだったんですけど、そこまで欲張りしたらバチ当たっちゃいますよね。
 これからも優勝目指してガンバりますので、応援ヨロシクです!

第1戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 940 940
(1位タイ)
栗藤珠美 940 940
(1位タイ)
一色順子
(4位)
リサ=バンベリー 940 940
(1位タイ)

 (ポイント・順位の変動について)
 駒木ハヤト、栗藤珠美、リサ=バンベリーの3名がそれぞれ馬連を100円分的中させ、940ポイントを獲得。しかし、◎印の集中したビリーヴが2着に敗れたこともあって、それ以上のポイント上積みはならず。特にビリーヴ1着なら馬単も的中だったリサにとっては、非常に大きなハナ差となった格好だ。
 一方、1人出遅れた形の一色順子だが、3人との差はまだ小さく、いつでも挽回可能な位置ではある。
大穴狙いが成功すれば逆に大差をつける事も可能なだけに、今後の動向にも注目と言えよう。

 


 

2003年第71回講義
10月2日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・前半)

 講義の実施が予定より遅れております。
 折からの体調不良の上に、例の金とネタ目当ての虚業が最近立てこんでおりまして、講義に費やせる時間とエネルギーが思い切り削られてしまっている現状です。
 そういうわけで、大変申し訳ないんですが、予定していたカリキュラムはしばらく遅延する事になると思います。この状態に満足していないのは駒木も同じですので、どうかご理解下さい。

 で、今日はゼミの今週前半分を実施します。本当なら合同版でお送りしたいところなのですが、今週はレビュー対象作が多くて、なかなかそうも行きません。本当、忙しい時に限ってやらなくちゃいけない仕事量が増えるんですよねぇ。しかもあんなクズみたいな作品に(ぼそ
 

 まずは軽く情報系の話題から。先の改変で連載枠が1つ増えたものの、今度はローテーションで連載陣に取材休みを入れて連載枠を確保するようになった「ジャンプ」。次号も新人さんの読み切りが掲載されます。
 次号(45号)に掲載されるのは、03年6月期「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の佳作&十二傑賞受賞作・『URA BEAT』(作画:田村隆平)です。この回の審査員を務めた冨樫義博さんが「伏線の使い方が分かっている」と評した作品だけに、シナリオ面に期待が持てそうですね。
 しかし予告イラストは『テニスの王子様』をちょっと上手くしたような感じですね(笑)。これで編集部の講評は「せっかくのストーリーが画力について行ってないのが惜しい」なのですから、この回の講評を書いた編集者は、各方面に色々な意味で余りにも失礼だと思います。まるでかの人気連載作品は、ストーリーがダメだから絵がダメでも関係無い…と、言っちゃいけない本当の事を言っているのがバレバレじゃないですか! 

 ──さてここで問題です。この件で一番失礼なのは誰でしょう?

 
 それでは取り急ぎレビューとチェックポイントへ。先ほど紹介した通り、今日のレビュー対象作は3本あります。新連載第3回の後追いレビューと、読み切りレビュー、代原読み切りレビューがそれぞれ1本の構成です。

 
☆「週刊少年ジャンプ」2003年44号☆

 ◎新連載第3回『サラブレッドと呼ばないで』作:長谷川尚代/画:藤野耕平【第1回掲載時の評価:B

 恐らくここ数年の連載作品の中で、「タイトルだけではどんなマンガか分からない作品第1位」に輝きそうな柔道マンガ・『サラブレッドと呼ばないで』が連載第3回を迎えました。
 いや、でもこのタイトルは正直イカンですよ。タイトルだけで内容が判らないだけならまだしも、明らかに別ジャンルの作品と誤解されてしまいますからね、これでは。
 だって、逆に『ジュードーボーイ』という題名の、そういう名前の競走馬が活躍する競馬マンガがあったらどう思います?(苦笑)

 まぁそれはとりあえずさておき、内容についてです。
 ここまで3回を見る限り、1回ごとのエピソードを構成する力は確かに感じられます。随所に散りばめられているコメディ的パートもなかなかの出来ですし、なるほど、雑誌の1作品として軽く読み飛ばす限りでは、なかなか好感度の高い作品に仕上がっていると言えるでしょう。
 しかし、その1回単位のエピソードの構成やギャグを成立させようとする余り、作品全体を支える設定や世界観、更にはシナリオの重厚さを次々にブチ壊してしまっているのは大変な問題です。特に、第1回であれほど「サラブレッドと呼ばないで」と柔道を嫌っていた主人公が、この第3回では既に柔道大好き少年になってしまっているのが不自然でなりません。これでは「サラブレッドと呼んでくれ」です。

 そういうわけで、現状では「ストーリーキング・ネーム部門出身作品」という肩書きとは程遠い内容になっていると言わざるを得ません。少なくともストーリーテリングの面では、この部門の“先輩”である『ヒカルの碁』や『アイシールド21』には及ぶべくも無いというのが、この作品の今の姿です。
 よく巷では「ストーリーキング・ネーム部門出身作家の作品は当たる」と言われています。駒木も以前はそう思っていたのですが、どうやら違うのではないかと最近思い始めました
 というのも、この部門出身で成功した原作者さんは『ヒカルの碁』原作者・ほったゆみさんと『アイシールド21』の原作者・稲垣理一郎さんだけなのですが、このお2人は“受賞時点で既にプロのマンガ家だった”という共通項があるのです。特に『ヒカ碁』の場合は、ほったゆみ(=堀田かよ)さんと夫──手塚治虫先生のアシスタント出身でキャリア20年クラスの現役作家・堀田あきおさん──との事実上の合作だったと言いますから、バックボーンの豊かさはケタ違いです
 (追記:複数のご指摘を頂きまして、上記の情報はガセネタだと判明しましたので、訂正させて頂きます。関係各位にお詫びいたします。申し訳ありませんでした。)
 ですから、結局のところ凄いのは「ストキン・ネーム部門」ではなく、作品を成功させた作家ご本人…という事になるわけなんですよね。で、この「サラブレッドと呼ばないで」は、その作家ご本人が(少なくとも現時点では)どないにもならんというわけなのでしょう。

 最後に評価ですが、長所・短所を差し引きしてみると、やはり初回のB−寄りB評価のまま据え置きということになりますか。初回の評判が良かったので、1クール生き残りはあると思いますが、長期連載となると疑問符がつくでしょうね。


 ◎読み切り『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ

 さぁ、この時間が遂にやって参りました。当ゼミでは『シュールマン』のクボヒデキ氏と並ぶ“駄作メーカー”・イワタヒロノブさんの登場です(苦笑)。このレビューに関しては、ちょっと私情じみた文言が混じるかも知れませんが、どうか大目に見て下さいまし。

 イワタさんは01年3月期「天下一漫画賞」で最終候補まで残り“新人予備軍”入りを果たした後、01年下期「手塚賞」で準入選を受賞同年末の「赤マルジャンプ」でデビューを果たしています。ちなみにこの時の受賞作は、今回の作品のプロトタイプとなった作品です。
 その翌年には「赤マル」02年春号と本誌02年49号でそれぞれ読み切りを発表するなど、精力的な活動を続けましたが、そこから約1年にもわたるブランクへ突入。今回が復帰作という事になりますね。

 それでは作品について述べてゆきますが、まぁ結論からハッキリ言いますと1年前から進歩ゼロですね(苦笑)。絵、ストーリーテリング、歴史考証、全てがグダグダなまんまです。まぁ今頃デビュー作の焼き直しを持って来るという発想からして既に進歩が無いわけなんですけれども……。

 まずですが……どこから指摘してゆきましょうか(笑)。全体的に下手なので、挙げだすとキリが無いんですよねぇ……。
 一番いけない部分としては、動きがあるようで特殊効果と絵が噛み合っていないので、ダイナミックさを狙ったシーンが“チープな止め絵+集中線”になってしまってるところでしょうか。数年前の予算不足な地上波深夜アニメみたいな感じがします。
 これ以上具体的な話をするのは止めておきますが、出来損ないの『バスタード』みたいな作風はそろそろどうにかした方が良いでしょうね。

 ストーリー&設定に関しても、満遍なくダメダメです。
 あんまり詳述してしまうのもアレですので簡潔にまとめますが、コメディとギャグの区別がついていない点そのために、本来ならシリアスなはずのストーリー全体が吉本新喜劇的な“ドタバタギャグ+申し訳程度の人情噺”になってしまっている点意味もなくトリッキーなコマ割りで大ゴマを不用意に乱発している点“起承転結”の“起承”が長過ぎてクライマックスの盛り上がりが圧迫されている点(ページ配分の失敗)キャラクターの行動や動機付けが極端過ぎてリアリティを欠いてしまっている点バトルシーンが単調な点などが問題のあるポイントです。
 「自分が面白いと思うものを描いてゆく」という志は大変立派ではありますが、それならもっと他人に伝わるように努力するのが商業作家というものでしょう。

 最後に、当講座らしく歴史考証についても言及しておきましょう。

 まず、ドイツの伯爵令嬢だというのに、主人公の名前・マーガレットは英語読みになっちゃってますね。まーたやっちゃってますよ、この人は(失笑)。しかもセリフのあちこちに英語がバンバン出て来ますし。まぁ映画『ジャンヌダルク』もフランスが舞台の英語劇でしたけれどもね(笑)。

 また、歴史上根本的なミスとして、「祖父・都市エビスハイムの市長/父・伯爵(貴族)」という家族関係は100%あり得ません
 都市というのは、そもそも貴族制・封建制から独立した存在として生まれたものですので、都市の市長は有力市民(大商人など)から選挙等で選ばれます。つまりは庶民代表ですね。都市は市長の指揮による自治を許される代わり、領主たる貴族や皇帝に忠誠と納税の義務を負いますが、この領主と市長というのは全くの別物です。日本で言えば天皇と県知事くらい違います。
 で、その庶民の家筋から生まれた子が、いかに戦功を上げたとは言え、たった一代で大貴族の範疇に入る伯爵にまで出世するなんて、これもあり得ません。庶民出身の傭兵となると、出世街道のスタートラインは食い詰めた下級貴族(田舎の弱小領主クラス)率いる傭兵隊の平隊員ぐらいになります。で、その隊の中で出世して副長になり、さらに隊長が作り話のような活躍をして大出世したオコボレにあずかって、ようやく城代か領主クラスでしょう。爵位なんて夢のまた夢です。貴族と言うのは生まれ育ちで人を判断するからこそ貴族ですので、そもそも大出世というのは起こり難いメカニズムになっています。

 次に時代背景から考証を加えてみましょう。「17世紀」、「ヨーロッパ中を巻き込んだ大戦」と言うと、三十年戦争(1618〜1648)以外に有り得ませんから、その2年後ということは、この話の舞台は1650年のドイツという事になりますね。
 ここで注目してもらいたいのが、「当時のヨーロッパでは常備軍が確立しておらず、アルバイト制で戦う兵士…『傭兵』がたくさんいた!!」という言葉です。これが実は高校教科書クラスの初歩的な大凡ミスです。
 この時期はヨーロッパ的には既に絶対主義時代に突入しており、王権が強大だったフランスには強固な常備軍が存在していました。第一、三十年戦争でドイツを破ったのは、ルイ13世が築き上げたフランス常備軍です(笑)。もっとも、ドイツは領邦国家(ミニ国家の集合体)だったために常備軍は存在しえず、また三十年戦争は元々ドイツの内戦だった事もあり、皇帝はヴァレンシュタインら腕利きの傭兵を重用しました。ですから「ドイツの戦争は傭兵頼みだった」くらいの記述が適当だったと思います。

 また、細かい話ですが、この頃の都市は、人口過剰の為に市街地が城壁の中に収まり切らない事が多々ありました。ですから当時の実態を厳密に採用すると、このお話自体が成立しなくなってしまいますね(苦笑)。
 更に細かい話を言うと、傭兵崩れの群盗が都市や村を襲うのは、実は14世紀の百年戦争からの日常茶飯事的出来事だったりします(この辺は佐藤賢一さんの歴史小説に詳しいです)。ですから、マーガレット嬢も、普通に暮らしていれば傭兵がただそれだけで危険人物だというのは判ってるはずなんですけどね。
 まぁそんな事を言い出したら、そもそも1000人規模の群盗なんて存在するはず無いんですが。(普通に暮らすだけで、一体どれくらいの食料や消費財が必要になるのか!)

 ──これらの事は、読者である受講生の皆さんは知らなくて良い事ばかりです。が、実在の歴史を扱った作品を描こうとする作者ならば、必ず勉強しておかなければならない事です。歴史の知識があるからこそ描けるディティールの描写が、作品のリアリティやストーリーを際立たせてくれるのです。付け焼刃の知識をバックボーンにお話を作っても、結局はそれ相応のクオリティにしかならないのです。現実にそうなっているでしょう?

 評価は当然Cです。僭越ながらイワタさんには「マンガ家辞めるか、死ぬほど勉強するかどっちかにしろ」と言わせてもらいたいと思います。


 ◎読み切り『ハガユイズム』作画:越智厚介

 先ほどのレビューで力尽きた感もありますが(苦笑)、今週は『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合休載のため、代原が掲載されました。
 作者の越智厚介さんは、03年上期「赤塚賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入りを果たした21歳。今回が代原ながら暫定デビューという事になりますね。
 今回の作品、「赤塚賞」の応募作と同じ題名なのですが、ページ数が明らかに違うため、同名別内容の作品と考えた方が自然でしょうね。ひょっとしたら、応募作から“使えそう”な7ページをより抜いたのかも知れませんが。

 については、画力そのものはギャグマンガなら十分合格点でしょう。ただ、コマ内に余白が多すぎる事が影響しているのか、画力の割には妙な違和感を感じる回数が多かったように思えます。ちょっと残念ですね。

 ギャグの方は、有り体に言って「まだまだ」といったところでしょう。“オチのコマまで長いネタ振り→ネタ振りとのビジュアルの落差で笑わせようとするオチ”のオンパレードで、さすがに最後の方には飽きが来ます。また、ネタの構成を考えると、わざわざ1ページ1ネタにする必要は無かったように思えます。前フリを濃縮して4コマにまとめるか、または前フリを2〜3ページまで引っ張ってオチを強調した方が良かったでしょうね。あと、オチのバリエーションも増やすべきでしょう。

 一応はギャグマンガの体を成しているので、評価はB−くらいが妥当だと思います。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】 

 あちこちの「ジャンプ」評論サイトで評判の今回ですが、確かに原作、作画とも良い出来ですよね。パンサーの設定描写はほぼ完璧ですし(アニメの古典・空中走りは少々やり過ぎですがw)、アメリカ人キャラの描き分けもリアリティが感じられて好感が持てます。アメリカの青春スポーツ物映画って、こういうキャラ出てきますよね(笑)。
 あと、梅雨時の天気予報並にアテにならない事で有名な巻末の次回予告に、「米戦決戦前夜! 栗田がムサシの過去を語る!」などと。さぁ、このエピソードはいつ公開されるのか!(笑)

 
 
『BLEACH』作画:久保帯人【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ここ最近ずっと思ってるんですが、久保さんの演出力は「ジャンプ」連載陣の中でも目立って来てますね。シナリオそのものが行き当たりバッタリ&単純&どこかで見たような話であるために、残念ながら傑作までには届かないんですが、そういう話をここまで面白く見せるというのは皮肉じゃなくて素晴らしいです。
 レビュアーとしてではなく、一読者としては本当に楽しませてくれる作品になりましたね。かつて打ち切り候補だったのがウソみたいです。


 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 で、もっと凄いのがこのお方ですよ(笑)。冨樫さんの凄いところは、上手く演出しているところを「こんなの当たり前に出来ますよ」という風にサラリとやってしまう事なんですよね。
 更に言えば、そもそも主人公のゴンというキャラクターは、少年マンガの主人公としてはかなり珍しいタイプなんですよね。「正義の心を持つ少年」ではなくて、「『正義』という言葉が意味するところに近い性質の心を持つ少年が、実は正義も悪も意識ぜず天然のまま生きている」という設定なんですよ。こういうキャラって本当に手綱捌きが難しいんですけど、よく矛盾なく動かせてるもんです。駒木も小説書く時は、こういう所を真似できるようになりたいと思いますね。


 ──というわけで、今回は以上。イワタヒロノブ作品については、今後は原則的にスルーした方が良いかも知れませんね。史上2人目の逆殿堂入りです。
 次回ゼミは……多分週末になりますかね。どうかしばしお待ちを。


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